JP2021171697A - リサイクル有機溶剤の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
析出した不純物成分が蒸留装置中の熱交換器(ヒーターや蒸留器(リボイラ)などのような加熱部)に付着すると、熱交換効率の低下が起こる。その結果、蒸留(精留)操作に必要な加熱負荷量を確保できず、効率的な蒸留操作が行うことができない懸念がある。また、蒸留装置に付着した不純物成分を取り除く必要のため、蒸留装置を稼働させることが可能な時間が短くなってしまう。
リサイクル有機溶剤の製造方法であって、
不純物が第一溶剤中に溶解または分散している廃溶剤と、前記第一溶剤より沸点が高い液状物質とを混合した混合液を、前記第一溶剤の沸点以上の温度Tで蒸留する蒸留工程を含み、
前記液状物質は、前記蒸留工程において、前記不純物の固化、凝集および/または析出を抑える性質を有する、リサイクル有機溶剤の製造方法
が提供される。
図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
煩雑さを避けるため、同一図面内に同一の構成要素が複数ある場合には、その1つのみに符号を付し、全てには符号を付さない場合がある。
すべての図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応しない。
図1は、本実施形態のリサイクル有機溶剤の製造方法を実施することが可能な蒸留装置を模式的に表した図である。
以下、図1を参照しつつ、まずは一般的な(従来の)蒸留の流れについて説明する。その後、本実施形態について説明する。以下では、充填塔1Aと蒸留缶1Bとをあわせたものを「蒸留塔」と表記する。
ちなみに、連続式の蒸留装置であれば、図1の原料液入口7に示された位置から廃溶剤を投入することが通常であるが、パッチ蒸留の場合は、蒸留缶1Bに廃溶剤を投入することが通常である。
リボイラ2には、熱媒体入口10から熱媒体(通常は過熱水蒸気)が供給され、熱媒体出口11から熱媒体が排出される。
リボイラ2に熱媒体を供給しつつ、リボイラ2内に廃溶剤を通過させることで、廃溶剤は間接的に加熱される。加熱された廃溶剤は、蒸留缶1Bに戻る。
塔頂部に移動した気体状の廃溶剤は、コンデンサ6により凝縮されて凝縮液となる。通常、凝縮液の一部は留出液として留出液出口9から取り出され、凝縮液の残部は還流液として還流液入口8から充填塔1A内(蒸留塔の塔頂部)に戻される。この際の還流比は、所望の純度や許容される製造コスト等に応じて適宜設定すればよい。
液状物質は、蒸留工程において、不純物の固化、凝集および/または析出を抑える性質を有する。液状物質は、好ましくは、第一溶剤より沸点が高い第二溶剤である。また、液状物質は、好ましくは、不純物を良く溶解する溶剤(不純物の良溶媒)である。
ちなみに、温度Tが、液状物質の沸点以上であっても、理論段数が比較的大きい蒸留装置を用いたり、還流比を調整したりすることで、リサイクル有機溶剤を製造することは可能である。
廃溶剤中に含まれる不純物の種類は特に限定されない。本実施形態のリサイクル有機溶剤の製造方法は、特に、不純物が、ポリマー、オリゴマー、モノマー、熱硬化性化合物および無機化合物からなる群より選択される少なくともいずれかである場合に威力を発揮する。これらの不純物は、一般に固化、凝集および/または析出しやすいためである。
不純物は、通常、温度Tにおいて、実質的に揮発しない性質を有する。
熱硬化性化合物を含む廃溶剤は、例えば、電子デバイスの製造において、熱硬化性の樹脂組成物を除去/剥離する際に発生する。
無機化合物を含む廃溶剤は、例えば、リチウムイオン電池の正極材料やセラミックコンデンサを製造する際に発生する。
第一溶剤は、蒸留の際の加熱により実質的に分解しないものである限り、任意の溶剤であることができる。
液状物質(好ましくは第二溶剤)は、第一溶剤よりも高沸点であり、蒸留の際の加熱により実質的に分解せず、かつ、第一溶剤よりも第一溶剤中の不純物を溶解または分散しやすい(例えば、不純物の溶解度が第一溶剤よりも大きい)ものである限り、任意の液体(好ましくは溶剤)であることができる。
・油:グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなど。ただし、これらの物質の中には、粘度が大きいものが多いので、粘度が小さいものを選択することが好ましい。
・不飽和脂肪酸:オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸など。(これらは、温度Tにおいて液状であればよく、常温(例えば20℃)で液体であることがより好ましい。他の液状物質も同様。)
・可塑剤:具体的にはフタル酸エステル類、より具体的には、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチル等。
・アルカリ溶液:水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムなどから選択される1種以上のアルカリを含むもの。
・酸性溶液:塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、クエン酸、パラトルエンスルホン酸、リン酸溶液など。
・水
塩化メチレン(沸点39.6℃)
酢酸ブチル(沸点126℃)
エチレングリコールモノブチルエーテル(沸点171.2℃)
モノエタノールアミン(沸点170℃)
ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点230℃)
ジメチルスルホキシド(沸点189℃)
シクロヘキサン(沸点81℃)
N−メチルピロリドン(沸点202℃)
テトラヒドロフラン(沸点66℃)
ジエチルエーテル(沸点34.6℃)
ジブチルエーテル(沸点142℃)
ジイソプロピルエーテル(沸点69℃)
ジブチルエーテル(沸点142℃)
メチルプロピルエーテル(沸点39℃)
1,4−ジオキサン(沸点101℃)
シクロペンチルメチルエーテル(沸点106℃)
メタノール(沸点65℃)
エタノール(沸点78℃)
プロパノール
ブタノール
ペンタノール(沸点138℃)
ヘキサノール(沸点157℃)
トルエン(沸点111℃)
メチルシクロヘキサン(沸点101℃)
キシレン
ペンタン(沸点36℃)
ヘキサン(沸点69℃)
ヘプタン(沸点98℃)
オクタン(沸点125℃)
ノナン(沸点151℃)
アセトン(沸点56℃)
メチルエチルケトン(沸点80℃)
メチルイソブチルケトン(沸点118℃)
シクロプロパノン(沸点52℃)
シクロペンタノン(沸点131℃)
シクロヘキサノン(沸点156℃)
塩化メチレン(沸点40℃)
二塩化エチレン(沸点84℃)
三塩化エチレン(沸点87℃)
四塩化エチレン(沸点121℃)
クロロホルム(沸点61℃)
塩化アセチル(沸点51℃)
モノクロロベンゼン(沸点131℃)
臭化エチル(沸点38℃)
臭化プロピル(沸点71℃)
臭化ブチル(沸点101℃)
臭化ペンチル(沸点130℃)
HCFC:ジクロロペンタフルオロプロパン(沸点56℃)
HFE:ペンタフルオロジエチルエーテル(沸点56℃)
テトラフルオロエチルトリフルオロエチルエーテル(沸点50℃)
ノナフルオロブチルメチルエーテル(沸点61℃)
HFC:ペンタフルオロブタン(沸点40℃)
HFO:クロロトリフルオロプロペン(沸点39℃)
デカフルオロペンタン(沸点55℃)
エチレングリコールモノメチルエーテル(沸点124℃)
エチレングリコールモノエチルエーテル(沸点136℃)
プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点121℃)
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点146℃)
N,N−ジメチルホルムアミド(沸点153℃)
γ−ブチロラクトン(沸点204℃)
第一溶剤と液状物質(好ましくは第二溶剤)の沸点差が十分に大きいことで、留出液中に含まれる液状物質(好ましくは第二溶剤)の量をより少なくすることができる。また、理論段数が比較的小さい蒸留装置を用いた場合であっても、高純度のリサイクル有機溶剤を製造しやすい。
前述のように、廃溶剤(第一溶剤を含む)と液状物質とをあらかじめ混合して混合液としたものを蒸留塔内に投入する場合には、上記比率で混合液を作製しておくことが好ましい。
液状物質(好ましくは第二溶剤)は、第一溶剤との気液平衡曲線において共沸点を示さないものであることが好ましい。このような液状物質(好ましくは第二溶剤)を選択することで、留出液中に含まれる液状物質の量をより少なくすることができ、ひいてはより高純度なリサイクル有機溶剤を製造することができる。
共沸点の有無は、実験により確認してもよいし、公知の情報(気液平衡のデータ集など)に基づき確認してもよい。
第一溶剤の沸点における、液状物質(好ましくは第二溶剤)に対する第一溶剤の相対揮発度は、通常1.1以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは3.0以上である。この相対揮発度がある程度大きいことにより、留出液中に含まれる液状物質(好ましくは第二溶剤)の量をより少なくすることができる。また、理論段数が比較的小さい蒸留装置を用いた場合であっても、高純度のリサイクル有機溶剤を製造しやすい。
相対揮発度の上限は特にないが、現実的には相対揮発度は10以下である。
まず、オスマー型平衡蒸留装置に、第一溶剤を仕込み、それに同量の液状物質(好ましくは第二溶剤)を添加する。その後加熱し、第一溶剤の沸点で平衡状態にする。平衡状態に達したのち、装置内の液相と気相をそれぞれサンプリングし、ガスクロマトグラフィー(以下、「GC」という)により各相の組成を分析する。もし、GCで組成を適切に測定できない事情がある場合には、液体クロマトグラフィー−質量分析法(LC−MS)を利用する。
得られた液相と気相の分析値をそれぞれ以下式に代入することにより、第一溶剤に対する液状物質(好ましくは第二溶剤)の相対揮発度(第一溶剤の沸点における)を求める。
廃溶剤中の不純物の溶解性の観点で、SP値を第二溶剤の選択の指標とすることができる。
具体的には、ハンセン法による液状物質(好ましくは第二溶剤)のSP値は、好ましくは8〜15(cal/cm3)1/2、より好ましくは8.5〜12(cal/cm3)1/2である。適切なSP値を有する液状物質(第二溶剤)を選択することで、蒸留装置への不純物の付着を一層抑えることができる。
ハンセン法によるSP値の詳細については、例えば、特開2018−104637号公報の段落0023の記載を参照されたい。
図1に示された蒸留装置の理論段数は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上である。理論段数が大きな蒸留装置を用いることで、より高純度なリサイクル有機溶剤を製造することができる。
現実的な観点から、理論段数の上限値は、100程度である。
相対揮発度は、前述の方法により求めた。
(メタ)アクリル系ポリマーの重合反応が行われた反応釜の洗浄に使用されたアセトン(以下「廃アセトン溶液」という)を準備した。ガスクロマトグラフィー(GC)を用いてこの廃アセトン溶液を分析したところ、以下の表2のような組成であった。
(手順)
廃アセトン溶液550mLに対して、トルエンを50mLと、沸騰石を0.5g添加し、これを蒸留フラスコに投入した。ちなみに、蒸留フラスコは、工業的な蒸留装置においては蒸留塔の塔底部に相当する。
投入後、マントルヒーターによる加熱の設定温度を70℃(温度Tとみなして差し支えない)として、蒸留フラスコの加熱を開始し、蒸留操作を開始した。約1時間、全還流運転を行った後、還流比が2となるようにタイマーを設定して留出を開始した。なお、蒸留中の簡易蒸留装置の塔頂部の温度は約55℃となっていた。塔頂からの留出液がほとんど無くなったところで、蒸留操作を停止した。そして、装置全体が室温になるまで冷却を行った。
以上の蒸留の結果として、約500mLの留出液を得た。また、蒸留フラスコ中には、約40mLの液(以下、残留液)が残った。
留出液(主成分:アセトン)について、GCを用いて分析した。その分析結果、および、蒸留後の装置の目視観察に基づき、表4に記載の項目を評価した。
(念のため補足:蒸留前のフラスコ内には径600mLの混合液が含まれ、一方、結果物の合計は540mLである。この差分はホールドアップ(蒸留装置内の充填物の空隙や、その他装置内溜まる液)や、サンプリング時のロスに相当する。他の実施例においても同様である。)
(メタ)アクリル系ポリマーの重合反応で使用した反応釜の洗浄に使用した酢酸エチル(以下、「廃酢酸エチル溶液」という)を準備した。GCを用いてこの廃酢酸エチル溶液を分析したところ、以下の表5のような組成となっていた。
投入後、マントルヒーターによる加熱の設定温度を90℃(温度Tとみなして差し支えない)として、蒸留フラスコの加熱を開始し、蒸留操作を開始した。約1時間、全還流運転を行ったのち、還流比が2となるようにタイマーを設定して留出を開始した。なお、蒸留中の塔頂部の温度は約75℃となっていた。塔頂からの留出液がほとんど無くなったところで、蒸留操作を停止し、装置全体が室温になるまで冷却を行った。
以上の蒸留の結果として、約480mLの留出液を得た。また、蒸留フラスコ中には、約90mL液(以下、残留液)が残った。
この得られた留出液(主成分:酢酸エチル)についてGCを用いて分析した。その分析結果、および、蒸留後の装置の目視観察に基づき、以下の表6に記載の項目を評価した。
(メタ)アクリル系ポリマーの重合反応で使用した反応釜の洗浄に使用したメチルエチルケトン(MEK。以下、「廃MEK溶液1」という。)を準備した。GCを用いてこの廃MEK溶液1を分析したところ、以下の表7のような組成となっていた。
投入後、マントルヒーターによる加熱の設定温度を90℃(温度Tとみなして差し支えない)として、蒸留フラスコの加熱を開始し、蒸留操作を開始した。約1時間、全還流運転を行った。その後、還流比が3となるようにタイマーを設定して留出を開始した。なお、蒸留中の塔頂部の温度は約78℃となっていた。塔頂からの留出液がほとんど無くなったところで、蒸留操作を停止し、装置全体が室温になるまで冷却した。
以上の蒸留の結果として、約500mLの留出液を得た。また、蒸留フラスコ中には、約70mLの液(以下、残留液)が残った。
得られた留出液(主成分:MEK)についてGCを用いて分析した。その分析結果、および、蒸留後の装置の目視観察に基づき、以下の表8に記載の項目を評価した。
金型に付着したエポキシ樹脂を洗浄する工程で発生したMEK(以下、「廃MEK溶液2」という)を準備した。GCを用いてこの廃MEK溶液2を分析したところ、以下の表9のような組成となっていた。
投入後、マントルヒーターによる加熱の設定温度を90℃(温度Tとみなして差し支えない)として、蒸留フラスコの加熱を開始し、蒸留操作を開始した。約1時間、全還流運転を行った。その後、還流比が5となるようにタイマーを設定して留出を開始した。なお、蒸留中の塔頂部の温度は約78℃となっていた。塔頂からの留出液がほとんど無くなったところで、蒸留操作を停止し、装置全体が室温になるまで冷却した。
以上の蒸留の結果として、約500mLの留出液を得た。また、蒸留フラスコ中には、約70mL液(以下、残留液)が残った。
得られた留出液(主成分:MEK)についてGCを用いて分析した。その分析結果、および、蒸留後の装置の目視観察に基づき、以下の表10に記載の項目を評価した。
セラミックコンデンサの製造工程で発生した、チタン酸バリウムの微粒子を含むイソプロパノール(以下、「廃IPA溶液」という)を準備した。この溶液について、濾過したうえで(チタン酸バリウム粒子を除いたうえで)、GCを用いて分析したところ、以下の表11のような組成となっていた。なお、チタン酸バリウム粒子は、廃IPA溶液中に2.1質量%含まれていた。
投入後、マントルヒーターによる加熱の設定温度を90℃(温度Tとみなして差し支えない)として、蒸留フラスコの加熱を開始し、蒸留操作を開始した。約1時間、全還流運転を行った。その後、還流比が2となるようにタイマーを設定して留出を開始した。なお、蒸留中の塔頂部の温度は約80℃となっていた。塔頂からの留出液がほとんど無くなったところで、蒸留操作を停止し、装置全体が室温になるまで冷却を行った。
以上の蒸留の結果として、約520mLの留出液を得た。また、蒸留フラスコ中には、約50mL液(以下、残留液)が残った。
この得られた留出液(主成分:IPA)についてGCを用いて分析した。その分析結果、および、蒸留後の装置の目視観察に基づき、以下の表14に記載の項目を評価した。
実施例2で使用した廃酢酸エチル溶液を準備し、実施例1で用いた簡易蒸留装置を使用して、以下のようにして廃酢酸エチル溶液を蒸留した。
投入後、マントルヒーターによる加熱の設定温度を90℃(温度Tとみなして差し支えない)として、蒸留フラスコの加熱を開始し、蒸留操作を開始した。約1時間、全還流運転を行ったのち、還流比が2となるようにタイマーを設定して留出を開始した。なお、蒸留中の塔頂部の温度は約75℃となっていた。塔頂からの留出液がほとんど無くなったところで、蒸留操作を停止し、装置全体が室温になるまで冷却を行った。
以上の蒸留の結果として、約500mLの留出液を得た。また、蒸留フラスコ中には、約80mLの液(以下、残留液)が残った。
この得られた留出液(主成分:酢酸エチル)を、GCを用いて分析した。その分析結果、および、蒸留後の装置の目視観察に基づき、以下の表13に記載の項目を評価した。
実施例3で使用した廃MEK溶液1を準備し、実施例1で用いた簡易蒸留装置を使用して、以下のようにして廃MEK溶液1を蒸留した。
550mLの廃MEK溶液1に対して、フタル酸ジイソノニルを50mL、沸騰石を0.5g添加して混合物とした。この混合物を蒸留フラスコに投入した。
投入後、マントルヒーターによる加熱の設定温度を90℃(温度Tとみなして差し支えない)として、蒸留フラスコの加熱を開始し、蒸留操作を開始した。約1時間、全還流運転を行った。その後、還流比が3となるようにタイマーを設定して留出を開始した。なお、蒸留中の塔頂部の温度は約78℃となっていた。塔頂からの留出液がほとんど無くなったところで、蒸留操作を停止し、装置全体が室温になるまで冷却した。
以上の蒸留の結果として、約510mLの留出液を得た。また、蒸留フラスコ中には、約60mLの液(以下、残留液)が残った。
得られた留出液(主成分:MEK)をGCを用いて分析した。その分析結果、および、蒸留後の装置の目視観察に基づき、以下の表14に記載の項目を評価した。
図1に示されるような装置構成で、かつ、表15に記載の仕様の蒸留設備を準備した。この蒸留設備は、塔頂部に凝縮器(コンデンサ)、塔底部に蒸留釜(底辺部に多菅式熱交換器が設置されている)を備えた精留塔である。この蒸留設備を用い、以下のようにして蒸留操作を行った。
投入後、蒸留缶内にある液体の温度が56〜80℃、塔頂部温度が約55℃となるように温度制御を行いつつ、蒸留を開始した。なお、本実施例においては、還流を行わず、凝縮した溶剤の全量をそのまま回収した。
その後、塔頂からの留出液がほとんどなくなったところで、蒸留を停止した。
得られた留出液(アセトン)についてGCを用いて分析した。その分析結果、および、蒸留後の装置の目視観察に基づき、以下の表16に記載の項目を評価した。
トルエンを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、廃アセトン溶液を蒸留した。結果を下記の表17に示す。
トルエンを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にしつつ、留出液量、留出液(アセトン)の純度、回収率、フラスコ底部での樹脂成分等の析出状況につき、随時確認しながら蒸留を行った。
比較例2において、留出液(アセトン)の純度を測定する際のサンプリングは、全還流運転に切り替えることにより、留出液の回収を中断させて行った(サンプリング後は、再度、留出液の回収へと切り替えた)。
トルエンを添加しなかったこと以外は実施例8と同様にして、蒸留を行った。結果を下記の表19に示す。
実施例1〜8においては、高純度の溶剤を、高い回収率で回収することができた。つまり、実施例1〜8においては、不純物の残存や液体物質(第二溶剤)の混入が少ない高純度のリサイクル有機溶剤を、高い回収率で製造することができた。また、実施例1〜8においては、蒸留フラスコや熱交換器への固形分(樹脂等)の固着が確認されなかった。
つまり、実施例1〜8では、蒸留装置への不純物成分の付着を抑えることと、高収率でリサイクル有機溶剤を製造することとを両立させることがでた。
ちなみに、表18に示された比較例2の結果(回収率約66質量%では析出は無いが、回収率約76質量%では析出あり)から、液体物質(第二溶剤)を用いない場合は、回収率70%付近を境に不純物の析出(固化)が発生することが読み取れる。このことから、液体物質(第二溶剤)を用いない場合に不純物の析出(固化)を抑えようとすると、廃アセトン溶剤の30質量%程度を廃棄しなければならないといえる。
実施例1における蒸留終了後の蒸留フラスコ内の状態と、比較例1における蒸留終了後の蒸留フラスコ内の状態とを、図2に示す。実施例1においては、蒸留フラスコ内の残留物(缶出液)は流動性を有していた。一方、比較例1においては、蒸留フラスコ内の残留物は固化していた。
また、実施例8における蒸留終了後のリボイラ(多管式)の状態と、比較例3における蒸留終了後のリボイラ(多管式)の状態とを、図3に示す。実施例8においては、目立った不純物の付着は見られなかった。一方、比較例3においては、不純物(樹脂)の固着が見られた。
実施例1〜8以外に、好ましい第一溶剤と液体物質(好ましくは第二溶剤)の組み合わせを以下に示す。これら組み合わせにおいても、蒸留装置への不純物成分の付着を抑えることと、高収率でリサイクル有機溶剤を製造することとの両立が達成されることが期待される。
1B 蒸留缶
2 リボイラ
3 パイプ
4 循環ポンプ
6 コンデンサ
7 原料液入口
8 還流液入口
9 留出液出口
10 熱媒体入口
11 熱媒体出口
12 塔底液出口
リサイクル有機溶剤の製造方法であって、
不純物が第一溶剤中に溶解または分散している廃溶剤と、前記第一溶剤より沸点が高い液状物質とを混合した混合液を、前記第一溶剤の沸点以上の温度Tで蒸留する蒸留工程を含み、
前記第一溶剤は、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤またはエーテル系溶剤であり、
前記液状物質は、前記蒸留工程において、前記不純物の固化、凝集および/または析出を抑える性質を有する、リサイクル有機溶剤の製造方法
が提供される。
以下、参考形態の例を付記する。
1.
リサイクル有機溶剤の製造方法であって、
不純物が第一溶剤中に溶解または分散している廃溶剤と、前記第一溶剤より沸点が高い液状物質とを混合した混合液を、前記第一溶剤の沸点以上の温度Tで蒸留する蒸留工程を含み、
前記液状物質は、前記蒸留工程において、前記不純物の固化、凝集および/または析出を抑える性質を有する、リサイクル有機溶剤の製造方法。
2.
1.に記載のリサイクル有機溶剤の製造方法であって、
前記液状物質は、前記第一溶剤より沸点が高い第二溶剤である、リサイクル有機溶剤の製造方法。
3.
1.または2.に記載のリサイクル有機溶剤の製造方法であって、
前記不純物は、ポリマー、オリゴマー、モノマー、熱硬化性化合物および無機化合物からなる群より選択される少なくともいずれかを含む、リサイクル有機溶剤の製造方法。
4.
1.〜3.のいずれか1つに記載のリサイクル有機溶剤の製造方法であって、
前記液状物質の沸点は前記第一溶剤の沸点よりも10℃以上高い、リサイクル有機溶剤の製造方法。
5.
1.〜4.のいずれか1つに記載のリサイクル有機溶剤の製造方法であって、
前記第一溶剤の沸点における、前記液状物質に対する前記第一溶剤の相対揮発度が、1.5以上である、リサイクル有機溶剤の製造方法。
6.
1.〜5.のいずれか1つに記載のリサイクル有機溶剤の製造方法であって、
前記液状物質は、前記第一溶剤との気液平衡曲線において共沸点を示さないものである、リサイクル有機溶剤の製造方法。
7.
1.〜6.のいずれか1つに記載のリサイクル有機溶剤の製造方法であって、
ハンセン法による前記液状物質のSP値が8〜15(cal/cm 3 ) 1/2 である、リサイクル有機溶剤の製造方法。
8.
1.〜7.のいずれか1つに記載のリサイクル有機溶剤の製造方法であって、
前記蒸留工程は、理論段数が5段以上である蒸留塔を備える蒸留装置を用いて行われる、リサイクル有機溶剤の製造方法。
9.
1.〜8.のいずれか1つに記載のリサイクル有機溶剤の製造方法であって、
前記廃溶剤中に存在する前記不純物の質量をmとしたとき、前記混合液は、0.1m〜20mの質量の前記液状物質を含む、リサイクル有機溶剤の製造方法。
10.
1.〜9.のいずれか1つに記載のリサイクル有機溶剤の製造方法であって、
前記温度Tは、前記液状物質の沸点よりも低い温度である、リサイクル有機溶剤の製造方法。
リサイクル有機溶剤の製造方法であって、
不純物が第一溶剤中に溶解または分散している廃溶剤と、前記第一溶剤より沸点が高く、ハンセン法によるSP値が8〜15(cal/cm 3 ) 1/2 である液状物質とを混合した混合液を、前記第一溶剤の沸点以上の温度Tで蒸留する蒸留工程を含み、
前記第一溶剤は、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤またはエーテル系溶剤であり、
前記液状物質は、前記蒸留工程において、前記不純物の固化、凝集および/または析出を抑える性質を有する、リサイクル有機溶剤の製造方法
が提供される。
Claims (10)
- リサイクル有機溶剤の製造方法であって、
不純物が第一溶剤中に溶解または分散している廃溶剤と、前記第一溶剤より沸点が高い液状物質とを混合した混合液を、前記第一溶剤の沸点以上の温度Tで蒸留する蒸留工程を含み、
前記液状物質は、前記蒸留工程において、前記不純物の固化、凝集および/または析出を抑える性質を有する、リサイクル有機溶剤の製造方法。 - 請求項1に記載のリサイクル有機溶剤の製造方法であって、
前記液状物質は、前記第一溶剤より沸点が高い第二溶剤である、リサイクル有機溶剤の製造方法。 - 請求項1または2に記載のリサイクル有機溶剤の製造方法であって、
前記不純物は、ポリマー、オリゴマー、モノマー、熱硬化性化合物および無機化合物からなる群より選択される少なくともいずれかを含む、リサイクル有機溶剤の製造方法。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載のリサイクル有機溶剤の製造方法であって、
前記液状物質の沸点は前記第一溶剤の沸点よりも10℃以上高い、リサイクル有機溶剤の製造方法。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載のリサイクル有機溶剤の製造方法であって、
前記第一溶剤の沸点における、前記液状物質に対する前記第一溶剤の相対揮発度が、1.5以上である、リサイクル有機溶剤の製造方法。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載のリサイクル有機溶剤の製造方法であって、
前記液状物質は、前記第一溶剤との気液平衡曲線において共沸点を示さないものである、リサイクル有機溶剤の製造方法。 - 請求項1〜6のいずれか1項に記載のリサイクル有機溶剤の製造方法であって、
ハンセン法による前記液状物質のSP値が8〜15(cal/cm3)1/2である、リサイクル有機溶剤の製造方法。 - 請求項1〜7のいずれか1項に記載のリサイクル有機溶剤の製造方法であって、
前記蒸留工程は、理論段数が5段以上である蒸留塔を備える蒸留装置を用いて行われる、リサイクル有機溶剤の製造方法。 - 請求項1〜8のいずれか1項に記載のリサイクル有機溶剤の製造方法であって、
前記廃溶剤中に存在する前記不純物の質量をmとしたとき、前記混合液は、0.1m〜20mの質量の前記液状物質を含む、リサイクル有機溶剤の製造方法。 - 請求項1〜9のいずれか1項に記載のリサイクル有機溶剤の製造方法であって、
前記温度Tは、前記液状物質の沸点よりも低い温度である、リサイクル有機溶剤の製造方法。
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