従来、この種のコンロ用バーナとして、バーナキャップの下面外周部に環状壁を垂設し、この環状壁に、環状壁の下端から上方に凹入する炎口となる炎口溝を周方向の間隔を存して複数形成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、コンロ用バーナとして、外周面に開口する上下2段の炎口を有するバーナキャップを備えるものも知られている。このもので、バーナキャップは、環状の下キャップ部材と環状の上キャップ部材とで構成され、バーナボディと下キャップ部材との間に下段炎口が画成され、下キャップ部材と上キャップ部材との間に上段炎口が画成される。このようなコンロ用バーナにおいて、下キャップ部材の上面外周部に第1環状壁を立設すると共に、上キャップ部材の下面外周部に、第1環状壁に着座する第2環状壁を垂設し、上段炎口を、上炎口部分と下炎口部分との上下2部分に分割して、第1環状壁に、第1環状壁の上端から下方に凹入する下炎口部分となる第1炎口溝を周方向の間隔を存して複数形成し、第2環状壁に、第2環状壁の下端から上方に凹入する上炎口部分となる第2炎口溝を周方向の間隔を存して、且つ、第1炎口溝に対し周方向に位置をずらして複数形成したものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
尚、上記の如く環状壁の下端から上方に凹入する炎口溝を形成する場合、環状壁の径方向内方から見た炎口溝の形状は、炎口溝の成形金型を下方に抜くための抜き勾配がついた台形、即ち、上底よりも下底が若干大きな台形になる。
ここで、コンロ用バーナの上方に位置する被加熱物たる調理容器の加熱効率を向上させるには、炎口における混合気の流量分布を炎口上部で多くなるようにし、炎口から噴出する混合気の燃焼で形成される火炎の上部での発熱量を大きくすることが望まれる。然し、上記従来例のコンロ用バーナでは、炎口溝に成形金型を下方に抜くための抜き勾配を付ける関係で、このような要望に応えることができない。
図1、図2を参照して、TPは、図示省略したガスコンロのコンロ本体の上面を覆う天板である。ガスコンロには、天板TPに開設したバーナ用開口TPaに臨ませて、天板TP上の五徳Gに載せる鍋等の調理容器を加熱するコンロ用バーナ1が搭載されている。
図3も参照して、コンロ用バーナ1は、混合気が供給される、上部が天板TPのバーナ用開口TPaを通して天板TP上に突出するバーナボディ2と、バーナボディ2上に載置されるバーナキャップ3とを備えている。バーナキャップ3の外周面には、上下2段の炎口4U,4Lが周方向の間隔を存して複数開口している。尚、五徳Gの複数の五徳爪Gaと同一方位に位置するバーナキャップ3の周方向複数箇所の部分には、五徳爪Gaに火炎が触れて不完全燃焼することを防止するため、上段炎口4Uを形成せずに下段炎口4Lのみを形成している。
より詳細に説明すれば、バーナボディ2は、外側の筒体21と内側の筒体22と中間の筒体23との内外3重の筒体を有している。バーナキャップ3は、内周部にバーナボディ2の中間筒体23に嵌合する筒部3Laを垂設した環状の下キャップ部材3Lと、内周部にバーナボディ2の内側筒体22に嵌合する筒部3Uaを垂設した環状の上キャップ部材3Uとで構成されている。そして、バーナボディ2の外側筒体21と下キャップ部材3Lとの間に下段炎口4Lが画成され、下キャップ部材3Lと上キャップ部材3Uとの間に上段炎口4Uが画成される。
上段炎口4Uは、上炎口部分4Uaと下炎口部分4Ubとの上下2部分に分割されている。具体的に説明すれば、下キャップ部材3Lの上面外周部には、第1環状壁311が立設され、上キャップ部材3Uの下面外周部には、第1環状壁311に着座する第2環状壁312が垂設されている。そして、第1環状壁311に、第1環状壁311の上端から下方に凹入する上段炎口4Uの下炎口部分4Ubとなる第1炎口溝321が周方向の間隔を存して複数形成されている。更に、第2環状壁312に、第2環状壁312の下端から上方に凹入する上段炎口4Uの上炎口部分4Uaとなる第2炎口溝322が周方向の間隔を存して、且つ、第1炎口溝321に対し周方向に位置をずらして複数形成されている。これにより、上炎口部分4Uaと下炎口部分4Ubは周方向に位置をずらして千鳥状に配置されることになる。
下キャップ部材3Lの下面外周部には、バーナボディ2の外側筒体21の上端部に着座する第3環状壁313が垂設されている。第3環状壁313には、第3環状壁313の下端から上方に凹入する下段炎口4Lとなる溝が周方向の間隔を存して複数形成されている。
また、コンロ用バーナ1には、点火電極11と火炎検知素子たる熱電対12とが付設されている。そして、下キャップ部材3Lの周方向1箇所には、点火電極11に対向するターゲット部33(図3参照)が突設されており、点火電極11とターゲット部33との間での火花放電により下段炎口4Lに点火される。また、上キャップ部材3Uには、点火電極11の設置部に合致する周方向1箇所に位置させて、点火電極11への煮こぼれの落下を防止する庇部34が突設されている。更に、バーナ用開口TPaとコンロ用バーナ1との間の隙間から煮こぼれが落下することを防止するため、バーナ用開口TPaを上方から覆うカバーリング13がバーナボディ2に外挿されている。
また、コンロ用バーナ1は、バーナボディ2の内側筒体22と中間筒体23との間の空間に連通する上段炎口4U用の第1混合管5Uと、バーナボディ2の外側筒体21と中間筒体23との間の空間に連通する下段炎口4L用の第2混合管5Lとを備える。第1混合管5Uには、共通のガス供給路6から分岐した第1分岐路6Uを介して燃料ガスが供給される。第2混合管5Lには、ガス供給路6から分岐した第2分岐路6Lを介して燃料ガスが供給される。そして、第1と第2の各混合管5U,5L内で燃料ガスと各混合管5U,5Lに吸い込まれる一次空気とが混合され、第1混合管5Uからの混合気がバーナボディ2の内側筒体22と中間筒体23との間の空間及び下キャップ部材3Lと上キャップ部材3Uとの間の空間を介して上段炎口4Uから噴出する。また、第2混合管5Lからの混合気がバーナボディ2の外側筒体21と中間筒体23との間の空間及び外側筒体21と下キャップ部材3Lとの間の空間を介して下段炎口4Lから噴出する。
ガス供給路6には、点火時に強制開弁され、熱電対12の起電力低下で失火が検知されたときに閉弁される電磁安全弁61と、点火時に開弁され、消火時に閉弁される元弁62とが介設されている。また、第1と第2の各分岐路6U,6Lには、図示省略した火力調節用のレバーや摘みから成る操作部材に連動して開度が変化する第1と第2の各流量調節弁63U,63Lが介設されている。操作部材は、弱火位置から強火位置まで操作できるようになっている。操作部材を弱火位置から強火位置まで操作すると、第2流量調節弁63Lの開度が最小開度から次第に増加する。一方、第1流量調節弁63Uは、操作部材が所定の中間位置に達するまで開弁されず、中間位置を超えたところで所定開度まで急に開き、その後の強火位置への操作で開度が次第に増加する。そして、操作部材を弱火位置から中間位置まで操作したときに、上段炎口4Uに混合気が供給されて、下段炎口4Lから上段炎口4Uに火移りする。
ここで、本実施形態では、第2環状壁312の内周面に、図4(a)に示す如く、上方に向けて縮径するテーパーが付けられている。更に、各第2炎口溝322は、図4(b)に示す如く、周方向幅が第2環状壁312の径方向内方に向かって次第に広くなっている。具体的には、第2環状壁312の内周面のテーパー角度θaが例えば40°に設定され、第2環状壁312の径方向内方に向けての各第2炎口溝322の周方向幅の広がり角度θbが例えば10°に設定される。そして、第2環状壁312の内周面に開口する各第2炎口溝322の入口部322aを第2環状壁312の径方向内方から見た形状が、図4(c)に示す如く、下底よりも上底が大きい台形になるようにしている。尚、図4(c)において、第2炎口溝322の入口部322aには、分かり易くするために網掛けしている。
これによれば、第2炎口溝322の入口部322aの上部の幅が下部の幅よりも広くなるため、入口部322aの上部に混合気が流入しやすく、上炎口部分4Uaにおける混合気の流量分布が上部で多くなる。従って、上炎口部分4Uaから噴出する混合気の燃焼で形成される火炎の上部での発熱量が大きくなり、調理容器の加熱効率が向上する。
ところで、第2炎口溝322には、成形金型を下方に抜くために、下方に向けて拡幅する1°程度の抜き勾配が付けられる。然し、第2環状壁312の内周面に上記テーパーを付けると共に、各第2炎口溝322の周方向幅を径方向内方に向けて拡幅することにより、第2炎口溝322に上記抜き勾配を付けても、径方向内方から見た第2炎口溝322の入口部322aの形状を下底よりも上底が大きい台形にすることができる。
尚、本実施形態では、第2炎口溝322の上底面を径方向外方に向かって上方に傾斜させている。これは、上炎口部分4Uaの火炎を上方に立ち上がらせ易くして、調理容器の加熱効率を高めるためであるが、第2炎口溝322の上底面を上記の如く傾斜させることは必須ではない。
以上、バーナキャップ3の外周面に上下2段の炎口4U,4Lが開口するコンロ用バーナ1について説明したが、バーナキャップの外周面に上下1段で炎口を開口させるようにしたコンロ用バーナにも同様に本発明を適用できる。以下、このようなコンロ用バーナについて図5を参照して説明する。
図5に示す第2実施形態のコンロ用バーナ1は、混合気が供給される、上部が天板TPのバーナ用開口TPaを通して天板TP上に突出するバーナボディ2と、バーナボディ2上に載置されるバーナキャップ3とを備えている。バーナボディ2は、外側筒体21と内側筒体22との内外2重の筒体を有している。バーナキャップ3は、環状であって、内周部にバーナボディ2の内側筒体22に嵌合する筒部3aが垂設されている。バーナキャップ3の下面外周部には、バーナボディ2の外側筒体21の上端部に着座する環状壁31が垂設されている。この環状壁31には、当該環状壁31の下端から上方に凹入する炎口4となる炎口溝32が周方向の間隔を存して複数形成されている。
ここで、環状壁31の内周面には、図6(a)に示す如く、上方に向けて縮径するテーパーが付けられ、また、各炎口溝32は、図6(b)に示す如く、周方向幅が環状壁31の径方向内方に向かって次第に広くなっている。環状壁31の内周面のテーパー角度θaは、上記第1実施形態のものと同様に例えば40°に設定され、環状壁31の径方向内方に向けての各炎口溝32の周方向幅の広がり角度θbも、上記第1実施形態のものと同様に例えば10°に設定される。そして、環状壁31の内周面に開口する各炎口溝32の入口部32aを環状壁31の径方向内方から見た形状が、図6(c)に示す如く、下底よりも上底が大きい台形になるようにしている。
これにより、上記第1実施形態のものと同様に、炎口溝32の入口部32aの上部に混合気が流入しやすく、炎口4における混合気の流量分布が上部で多くなる。従って、炎口4から噴出する混合気の燃焼で形成される火炎の上部での発熱量が大きくなり、調理容器の加熱効率が向上する。また、環状壁31の内周面に上記テーパーを付けると共に、各炎口溝32の周方向幅を径方向内方に向けて拡幅することにより、各炎口溝32に成形金型を下方に抜くための抜き勾配を付けても、径方向内方から見た炎口溝32の入口部32aの形状を下底よりも上底が大きい台形にすることができる。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記第1実施形態では、上段炎口4Uと下段炎口4Lとに第1と第2の各混合管5U,5Lから個別に混合気が供給されるようにしているが、上段炎口4Uと下段炎口4Lとに共通の混合管から混合気を供給するようにしてもよい。