JP2021163968A - 光電変換素子用正孔輸送層、およびそれを用いた光電変換素子ならびにペロブスカイト型太陽電池 - Google Patents

光電変換素子用正孔輸送層、およびそれを用いた光電変換素子ならびにペロブスカイト型太陽電池 Download PDF

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Abstract

【課題】添加剤であるドーパントを含まない、あるいはドーパントの含有量を低減した光電変換素子用正孔輸送層および該光電変換素子用正孔輸送層を用いた、光電変換特性が良好であり、耐久性の高い光電変換素子ならびにペロブスカイト型太陽電池を提供する。【解決手段】導電性支持体、正孔ブロッキング層、電子輸送層、光電変換層、正孔輸送層、および対極を順に有する光電変換素子において、下記一般式(1)で表される化合物を正孔輸送材料として含有する光電変換素子用正孔輸送層。【選択図】なし

Description

本発明は、光電変換素子用正孔輸送層、およびそれを用いた光電変換素子ならびにペロブスカイト型太陽電池に関する。
近年、クリーンエネルギーとして、太陽光発電が注目を浴びており、太陽電池の開発が盛んに行われている。その中でも、低コストかつ溶液プロセスで製造可能な次世代型の太陽電池として、ペロブスカイト材料を光電変換層に用いた太陽電池(以下、ペロブスカイト型太陽電池と表記)の開発が注目を集めている(例えば、特許文献1、非特許文献1〜2)。
ペロブスカイト型太陽電池では、素子中に正孔輸送材料を使用することが多い。使用する目的として、(1)光電変換効率を向上させる、(2)水分や酸素からの影響を受けやすいペロブスカイト材料を保護する、ことが挙げられる(例えば、非特許文献3)。標準的な正孔輸送材料としてSpiro−OMeTADが使用されること多いが、当該材料より光電変換特性に高く寄与する正孔輸送材料の報告は少ない。
正孔輸送材料をペロブスカイト型太陽電池の素子に利用するとき、有機化合物を正孔輸送材料に用いて素子を作製する従来の方法では、正孔輸送材料に添加剤であるドーパントを加える。このドーパントは、正孔輸送材料の電気的な抵抗を減少させるために使用される(例えば、非特許文献3〜4)。
しかし、添加剤であるドーパントを使用することは、有機化合物を用いた光電変換素子の耐久性を下げ、素子全体の寿命を短くしてしまうことが懸念されるため(例えば、非特許文献3)、ドーパントを含まない、あるいはドーパントの含有量を低減した正孔輸送層を有する光電変換素子の開発が望まれている。また、ドーパントを含有しない、あるいは含有量を低減することができれば、添加剤コストの削減や、製造プロセスコストの削減が可能となる。
国際公開番号WO2017/104792
Journal of the American Chemical Society,2009年,131巻,P.6050−6051 Science,2012年,388巻,P.643−647 Chem. Sci.,2019年,10,P.6748−6769 Adv. Funct. Mater.,2019年, 1901296
本発明が解決しようとする課題は、添加剤であるドーパントを含まない、あるいはドーパントの含有量を低減した光電変換素子用正孔輸送層および該光電変換素子用正孔輸送層を用いた、光電変換特性が良好であり、耐久性の高い光電変換素子ならびにペロブスカイト型太陽電池を提供することである。
上記課題を解決するため、発明者らは、光電変換特性向上について鋭意検討した結果、特定の構造を有する化合物を光電変換素子用正孔輸送層として用いることにより、ドーパントを含まない、あるいはドーパントの含有量を低減して、高効率かつ高耐久性の光電変換素子ならびにペロブスカイト型太陽電池が得られることを見出した。すなわち、本発明は以下を要旨とするものである。
1.下記一般式(1)で表される化合物を正孔輸送材料として含有する光電変換素子用正孔輸送層。
Figure 2021163968
[式中、R〜Rは、それぞれ独立して、
水素原子、
置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3〜10のシクロアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18のチオ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアミノ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6〜36の芳香族炭化水素基、
または置換基を有していてもよい環形成原子数5〜36の複素環基を表す。
とR、RとRは互いに結合して環を形成していてもよい。]
2.前記一般式(1)で表される化合物のR〜Rが、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜36の芳香族炭化水素基である光電変換素子用正孔輸送層。
3.添加剤であるドーパントの含有量が、前記一般式(1)で表される化合物1当量に対して、0以上0.5当量未満であることを特徴とする光電変換素子用正孔輸送層。
4.前記記載の光電変換素子用正孔輸送層を含む光電変換素子。
5.前記記載の光電変換素子を用いたペロブスカイト型太陽電池。
6.下記一般式(2)で表される化合物。
Figure 2021163968
[式中、R〜R12は、それぞれ独立して、
水素原子、
置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3〜10のシクロアルコキシ基、
または、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアミノ基を表す。
とR、RとR、RとR10、R11とR12、RとR、R10とR11は、互いに結合して環を形成していてもよい。ただし、R、R、R、R12のうち、少なくとも1個は、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基である。]
7.前記一般式(2)のR〜R12が、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、または置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアミノ基である化合物。
本発明に係る光電変換素子用正孔輸送層によれば、ドーパントを含有しない、あるいはドーパントの含有量を低減しても、効率よく電流を取り出すことが可能であり、高効率か
つ高耐久性の光電変換素子およびペロブスカイト型太陽電池を得ることができる。
本発明実施例および比較例の光電変換素子の構成を表す概略断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明の光電変換素子用正孔輸送層は、光電変換素子ならびにペロブスカイト型の光電変換素子に用いられる。
〈光電変換素子〉
本発明の光電変換素子は、典型的には、図1の概略断面図に示すように、導電性支持体1、正孔ブロッキング層2、電子輸送層3、光電変換層4、正孔輸送層5、および対極6を有する。
以下に、光電変換素子用正孔輸送層に含有している正孔輸送材料である、一般式(1)で表される化合物について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
一般式(1)において、R〜Rは、それぞれ独立して、
水素原子、
置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3〜10のシクロアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18のチオ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアミノ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6〜36の芳香族炭化水素基、
または置換基を有していてもよい環形成原子数5〜36の複素環基を表す。
一般式(1)において、R〜Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」における「炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」としては具体的に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基などをあげることができる。また、置換基を有するアルキル基としては具体例に、アルキルリン酸基、アルキルカルボン酸基、アルキルカルボニル基などがあげられるが、これらに限られない。
一般式(1)において、R〜Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」としては具体的に、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、またはこれらのアルケニル基が複数結合した炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基などをあげることができる。
一般式(1)において、R〜Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数3〜10のシクロアルキル基」における「炭素原子数3〜10のシクロアルキル基」としては、具体的に、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基などをあげることができる。
一般式(1)において、R〜Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」における「炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」としては、具体的に、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、イソオクチルオキシ基、t−オクチルオキシ基、フェノキシ基、トリルオキシ基、ビフェニリルオキシ基、ターフェニリルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基、フェナントリルオキシ基、フルオレニルオキシ基、インデニルオキシ基などをあげることができる。
一般式(1)において、R〜Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数3〜10のシクロアルコキシ基」における「炭素原子数3〜10のシクロアルコキシ基」としては、具体的に、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などをあげることができる。
一般式(1)において、R〜Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18のチオ基」における、「炭素原子数1〜18のチオ基」としては、具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、フェニルチオ基、ビフェニルチオ基などをあげることができる。
一般式(1)において、R〜Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアミノ基」における「炭素原子数1〜20のアミノ基」としては、具体的に、一置換アミノ基としてエチルアミノ基、アセチルアミノ基、フェニルアミノ基など、また、二置換アミノ基としてジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、アセチルフェニルアミノ基などをあげることができる。
一般式(1)において、R〜Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数6〜36の芳香族炭化水素基」における「炭素原子数6〜36の芳香族炭化水素基」としては具体的に、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラセニル基(アントリル基)、フェナントリル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などをあげることができる。なお、本発明において芳香族炭化水素基には、「縮合多環芳香族基」が含まれるものとする。
一般式(1)において、R〜Rで表される「置換基を有していてもよい環形成原子数5〜36の複素環基」における「環形成原子数5〜36の複素環基」としては具体的に、ピリジル基、ピリミジリニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基(フラニル基)、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチルジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、オキサゾリル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボニリル基などをあげることができる。
一般式(1)において、R〜Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数3〜10のシクロアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数3〜10のシクロアルコキシ基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18のチオ基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアミノ基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数6〜36の芳香族炭化水素基」または「置換基を有していてもよい環形成原子数5〜36の複素環基」における「置換基」としては、具体的に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;シアノ基;水酸基;ニトロ基;ニトロソ基;カルボキシル基;リン酸基;
メチルエステル基、エチルエステル基などのカルボン酸エステル基;
メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基などの炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;
ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基など炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基;
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などの炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基;
フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基などの炭素原子数6〜30の芳香族炭化水素基;
ピリジル基、ピリミジリニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基(フラニル基)、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチルジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、オキサゾリル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボニリル基などの環形成原子数5〜30の複素環基;
無置換アミノ基(―NH)、エチルアミノ基、アセチルアミノ基、フェニルアミノ基などの一置換アミノ基、またはジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、アセチルフェニルアミノ基などの二置換アミノ基である、炭素原子数0〜18のアミノ基;
無置換チオ基(チオール基:―SH)、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ヘキサ−5−エン−3−チオ基、フェニルチオ基、ビフェニルチオ基などの炭素原子数0〜18のチオ基;
などをあげることができる。これらの「置換基」は、1つのみ含まれてもよく、複数含まれてもよく、複数含まれる場合は互いに同一でも異なっていてもよい。また、これら「置換基」はさらに前記例示した置換基を有していてもよい。
一般式(1)において、R〜Rは、上記で述べたとおりの置換基を表すが、RおよびR、RおよびRは、単結合、酸素原子、硫黄原子を介した結合もしくは窒素原子を介した結合によって互いに結合して環を形成していてもよい。
一般式(1)において、R〜Rは、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜36の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
一般式(1)において、R〜Rが置換基を有していてもよい炭素原子数6〜36の芳香族炭化水素基である場合、前記一般式(2)で表される。
一般式(2)で表される、R〜R12は、それぞれ独立して、
水素原子、
置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3〜10のシクロアルコキシ基、
または、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアミノ基を表す。
一般式(2)において、R〜R12で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」における「炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」としては、一般式(1)において、R〜Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」と同じものをあげることができる。
一般式(2)において、R〜R12で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」としては、一般式(1)において、R〜Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」と同じものをあげることができる。
一般式(2)において、R〜R12で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数3〜10のシクロアルキル基」における「炭素原子数3〜10のシクロアルキル基」としては、一般式(1)において、R〜Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数3〜10のシクロアルキル基」と同じものをあげることができる。
一般式(2)において、R〜R12で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」における「炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」としては、一般式(1)において、R〜Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」と同じものをあげることができる。
一般式(2)において、R〜R12で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数3〜10のシクロアルコキシ基」における「炭素原子数3〜10のシクロアルコキシ基」としては、一般式(1)において、R〜Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数3〜10のシクロアルコキシ基」と同じものをあげることができる。
一般式(2)において、R〜R12で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアミノ基」における「炭素原子数1〜20のアミノ基」としては、一般式(1)において、R〜Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアミノ基」と同じものをあげることができる。
一般式(2)において、R〜R12は、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアミノ基であることが好ましい。
一般式(2)において、R〜R12は、上記で述べたとおりの置換基を表すが、RとR、RとR、RとR10、R11とR12、RとR、R10とR11は、単結合、酸素原子、硫黄原子を介した結合もしくは窒素原子を介した結合によって互いに結合して環を形成していてもよい。本発明において、RとR、R10とR11は、単結合により環を形成していることが好ましい。
一般式(2)において、R、R、R、R12のうち、少なくとも1個は、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基である。
本発明の前記一般式(1)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、以下の例示化合物は水素原子、炭素原子等を一部省略して記載しており、存在し得る異性体のうちの一例を示したものであり、その他すべての異性体を包含するものとする。また、それぞれ2種以上の異性体の混合物であってもよい。
Figure 2021163968
Figure 2021163968
Figure 2021163968
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Figure 2021163968
Figure 2021163968
Figure 2021163968
Figure 2021163968
Figure 2021163968
Figure 2021163968
Figure 2021163968
Figure 2021163968
Figure 2021163968
Figure 2021163968
本発明の前記一般式(1)および一般式(2)で表される化合物は、特開2009−246139等公知の方法によって合成することができる。[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンをハロゲン化し、該当するアミン類と反応させることで前記一般式(1)に表される正孔輸送材料を得ることができる。
本発明の前記一般式(1)および一般式(2)で表される化合物の精製方法としては、カラムクロマトグラフィーによる精製、シリカゲル、活性炭、活性白土等による吸着精製、溶媒による再結晶や晶析等により行うことができる。あるいはこれらの方法を併用して、純度を高めた化合物を使用することが有効である。また、これらの化合物の同定は、核磁気共鳴分析(NMR)により行うことができる。
本発明の前記一般式(1)および一般式(2)で表される化合物は、正孔輸送材料として光電変換素子に用いることができる。以下、本発明の光電変換素子の好ましい態様について説明する。
本発明の光電変換素子は、図1に示す通り、導電性支持体1、正孔ブロッキング層2、電子輸送層3、光電変換層4、正孔輸送層5、および対極6を備えることが好ましいが、これに限定されるものではない。また、本発明の光電変換素子としては、ペロブスカイト型の光電変換素子であることが好ましい。本発明において、ペロブスカイト型の光電変換素子は、導電性支持体1、正孔ブロッキング層2、電子輸送層3、光電変換層(ペロブスカイト層)4、正孔輸送層5、および対極6をこの順に備えることが好ましいが、電子輸送層がなくてもよい。また、導電性支持体、正孔輸送層、光電変換層(ペロブスカイト層)、電子輸送層、対極の順で構成されていてもよい。
〈導電性支持体〉
本発明では、導電性支持体は、光電変換に寄与する光を透過可能な透光性を有する必要がある。また、導電性支持体は、光電変換層より電流を取り出す機能を有する部材であることから、導電性基板であることが好ましい。導電性材料の具体例としては、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープの酸化スズ(FTO)、インジウム−スズ複合酸化物などの導電性透明酸化物半導体などをあげることができるが、フッ素ドープの酸化スズ(FTO)薄膜をコートしたガラス基板を用いることが好ましい。
〈正孔ブロッキング層〉
本発明の光電変換素子においては、前記導電性支持体の上に、正孔ブロッキング層が形成されることが好ましい。正孔ブロッキング層の半導体の具体例としては、酸化チタン(TiO等)、酸化タングステン(WO、WO、W等)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニオブ(Nb等)、酸化タンタル(Ta等)、酸化イットリウム(Y等)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO等)、フラーレン誘導体、カーボンナノチューブ等の1種又は2種以上を用いることができる。本発明においては、酸化チタンであることが好ましい。
正孔ブロッキング層の厚みは、特に制限されず、光電変換層が上記導電性支持体と接して短絡することを防ぐ観点から、5〜100nm程度が好ましく、30〜90nm程度がより好ましい。
正孔ブロッキング層は、成形する材料に応じて、公知の製膜方法を用いて得ることができる。正孔ブロッキング層の作製方法としては、半導体微粒子を含む分散液のスピンコート法、加熱したホットプレート上に置いた導電性支持体に半導体の前駆体溶液をスプレーで吹き付けるスプレーパイロリシス法、前駆体を気化させて反応、堆積するALD法などがあげられるが、これらに限定されない。本発明において、半導体微粒子を含む分散液は市販品を用いてもよい。
市販品の半導体微粒子を含む分散液を用いる場合は、雰囲気中の水分による半導体微粒子の凝集を防ぐことで再現よく高効率ペロブスカイト型太陽電池を製造できる観点から、乾燥雰囲気下が好ましい。
〈電子輸送層〉
本発明の光電変換素子においては、前記正孔ブロッキング層の上に、電子輸送層が形成されることが好ましく、態様は特に限定されないが、多孔質構造を有する薄膜であることが好ましい。多孔質構造を有することにより、光電変換層の活性表面積を著しく増加させ、光電変換効率を向上させるとともに、電子収集に優れる電子輸送層とすることができる。
電子輸送層を形成する半導体の具体例としては、酸化チタン(TiO等)、酸化タングステン(WO、WO、W等)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニオブ(Nb等)、酸化タンタル(Ta等)、酸化イットリウム(Y等)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO等)などの金属酸化物;硫化チタン、硫化亜鉛、硫化ジルコニウム、硫化銅、硫化スズ、硫化インジウム、硫化タングステン、硫化カドミウム、硫化銀などの金属硫化物;セレン化チタン、セレン化ジルコニウム、セレン化インジウム、セレン化タングステンなどの金属セレン化物;シリコン、ゲルマニウムなどの単体半導体などをあげることができ、これらの半導体は1種または2種以上を用いるのが好ましい。本発明においては、半導体として酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズから選択される1種または2種以上を用いるのが好ましい。
電子輸送層は、成形する材料に応じて、公知の製膜方法を用いて得ることができる。電子輸送層の製膜方法としては、半導体微粒子を含むペーストのスピンコート法、ドクターブレード法、スキージ法、スクリーン印刷法などの湿式塗布法で導電性基板上に塗布した後、焼成により溶媒や添加物を除去して製膜する方法や、スパッタリング法、蒸着法、電着法、電析法、マイクロ波照射法などがあげられるが、これらに限定されない。製膜する雰囲気は特に制限されなく、大気中でもよい。
電子輸送層の膜厚は、特に制限されず、光電変換層からの電子をより収集できる観点から、10〜500nm程度が好ましく、50〜400nm程度がより好ましい。半導体粒子径は5〜500nmが好ましく、10〜100nmがより好ましい。
本発明において、半導体微粒子を含むペーストは市販品を用いてもよく、市販の半導体微粉末を溶媒中に分散させることによって調製したペーストなどを用いてもよい。ペーストを調製する際に使用する溶媒の具体例としては、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;n−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒をあげることができるが、これらに限定されない。また、これらの溶媒は1種または2種以上の混合溶媒として使用することができる。
本発明において半導体微粉末を溶媒中に分散させる方法としては、粉末を乳鉢などですりつぶしてから行ってもよく、ボールミル、ペイントコンディショナー、縦型ビーズミル、水平型ビーズミル、アトライターなどの分散機を用いてもよい。ペーストを調製する際には、半導体微粒子の凝集を防ぐために界面活性剤などを添加するのが好ましく、増粘させるためにポリエチレングリコールなどの増粘剤を添加するのが好ましい。
〈光電変換層〉
本発明の光電変換素子においては、前記電子輸送層の上に、光電変換層が形成されることが好ましい。
本発明において、ペロブスカイト型光電変換素子として用いる場合、光電変換層であるペロブスカイト材料は、具体的に、CHNHPbI、CNHPbI、CHNHPbBr、CNHPbBr、CHNHPbBr、CNHPbCl、CHNHPbCl、CNHPbCl、CsSnI、CHNHSnI、CNHSnI、CsSnBr、CHNHSnBr、CNHSnBr、CsSnCl、CHNHSnCl、CNHSnCl等のペロブスカイト材料を含有する層を用いることができるが、これらに限定されない。これらのペロブスカイト材料は、1種または2種以上を用いることが好ましい。また、ペロブスカイト材料以外の光吸収剤を含んでいてもよい。
光電変換層は、材料に応じて、公知の製膜方法であるアンチソルベント法や、2段階法を用いて得ることができる。本発明においては、アンチソルベント法により作製することが好ましいが、これに限定されるものではない。
本発明において、アンチソルベント法で光電変換層を製膜する場合、ペロブスカイト材料のペロブスカイト前駆体溶液を調製し、それを電子輸送層の上にスピンコートにより塗布する最中に、特定の溶媒を添加する。スピンコートの終了後、加熱することで光電変換層が得られる。
ペロブスカイト前駆体は、市販の材料を用いてもよく、本発明においては、PbI/MAI(1:1)−DMF コンプレックス(東京化成)を用いることが好ましいが、これに限定されない。なお、MAIはヨウ化メチルアンモニウムの略である。
ペロブスカイト前駆体溶液の溶媒は、前駆体の溶解性の観点から、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、γ-ブチロラクトン等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの溶媒は、1種または2種以上を混合して使用してもよく、ジメチルスルホキシドを使用することが好ましい。
ペロブスカイト前駆体溶液のスピンコート中に添加する特定の溶媒は、貧溶媒が好ましく、トルエン、ベンゼン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、ニトロベンゼン等の芳香族系有機溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール系溶媒;ヘキサン等の長鎖炭化水素系溶媒;ピリジン;アセトニトリルなどがあげられるが、これらに限定されない。これらの溶媒は、1種または2種以上を混合して使用してもよい。なかでも、芳香族系有機溶媒が好ましく、クロロベンゼン、トルエンがより好ましい。添加量は、スピンコートにより回転する、導電性支持体、正孔ブロッキング層、電子輸送層から構成される素子基板全体へ、十分に拡散すればよく、特に制限されない。
加熱の温度は、前駆体よりペロブスカイト材料を生成する観点から、50〜150℃が好ましく、70〜120℃がより好ましい。また、加熱時間は、10〜90分程度が好ましく、30〜60分程度がより好ましい。
ペロブスカイト材料の製膜時の雰囲気は、水分の混入を防ぐことにより再現よく高効率ペロブスカイト型太陽電池を製造できる観点から、乾燥雰囲気下が好ましく、グローブボックス等の乾燥不活性気体雰囲気下がより好ましい。また、脱水を行い、水分含量が少ない溶媒を用いることが好ましい。
本発明の光電変換層(ペロブスカイト層)の厚みは、欠陥や剥離による性能劣化をより抑制する観点から、50〜1000nmが好ましく、200〜700nmがより好ましい。
〈正孔輸送層〉
正孔輸送層は、正孔を輸送する機能を有する層である。正孔輸送層には、例えば、導電体、半導体、有機正孔輸送材料等を用いることができる。当該材料は、光電変換層(ペロブスカイト層)から正孔を受け取り、正孔を輸送する正孔輸送材料として機能し得る。正孔輸送層は光電変換層(ペロブスカイト層)上に形成される。本実施形態では、添加剤であるドーパントを含まなくても高効率であるが、正孔輸送特性をさらに向上させることを目的として、ドーパントが含まれていてもよい。ドーパントは光電変換素子の耐久性を下げ、素子全体の寿命を短くしてしまうことが懸念されることから、使用量を低減することが望ましい。
本発明の光電変換素子用の正孔輸送層は、前記一般式(1)で表される化合物を正孔輸送材料として含有する層である。本発明の光電変換素子用の正孔輸送層には、前記一般式(1)で表される化合物を1種または2種以上を併用してもよく、本発明に属さない他の正孔輸送材料等と併用することもできる。他の正孔輸送材料の具体例としては、例えば、CuI、CuInSe、CuS等の1価銅を含む化合物半導体;GaP、NiO、CoO、FeO、Bi、MoO、Cr等の銅以外の金属を含む化合物が挙げられ、有機の正孔輸送材料としては、例えば、ポリ−3−ヘキシルチオフェン(P3HT)、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体;2,2’,7,7’−テトラキス−(N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミン)−9,9’−スピロビフルオレン(Spiro−OMeTAD)等のフルオレン誘導体;ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール誘導体;ポリ[ビス(4−フェニル)(2,4,6−トリメチルフェニル)アミン](PTAA)等のトリフェニルアミン誘導体;ジフェニルアミン誘導体;ポリシラン誘導体;ポリアニリン誘導体等があげられる。正孔輸送層には、添加剤としてドーパント(酸化剤)を必要に応じて含有することができる。
本発明の光電変換素子用の正孔輸送層は、上記光電変換層(ペロブスカイト層)の上に、塗布及び乾燥することにより形成することが好ましい。製膜方法としては、具体的に、スピンコート、スクリーン印刷、ロールコート、ディップコート、スプレー、ナイフコート、バーコート、ダイコート、カーテンコート等の方法があげられ、本発明においては、スピンコート法が好ましい。なお、スピンコートの条件は、適宜設定することができる。
本発明において、製膜の際使用される溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン(1,2,3,4‐テトラヒドロナフタレン)、モノクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン等の芳香族系有機溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系有機溶媒;ベンゾニトリル、アセトニトリル等のニトリル系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、c−ペンチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、シクロヘキサノール、2−n−ブトキシエタノール等のアルコール系溶媒等があげられるが、これらに限定されない。また、上記溶媒は、1種または2種以上を混合して使用してもよく、構造により使用する溶媒を選択することができる。特に、芳香族系有機溶媒およびハロゲン化アルキル系有機溶媒を使用することが好ましい。
本発明において、正孔輸送層を上記の通り塗布後、乾燥する際の条件としては特に制限はないが、溶媒を除去できる程度行うことが望ましく、ホットプレート等により50〜120℃程度で加熱することが好ましく、加熱時間は、概ね10〜60分程度であることが好ましい。
本発明において、正孔輸送層の厚み膜厚は、光電変換効率をより向上させる観点から、10〜500nm程度が好ましい。
正孔輸送層の製膜時の雰囲気は、水分の混入を防ぐことにより再現よく高効率ペロブスカイト型太陽電池を製造できる観点から、乾燥雰囲気下が好ましく、グローブボックス等の乾燥雰囲気下がより好ましい。また、脱水を行い、水分含量が少ない溶媒を用いることが好ましい。
〈添加剤〉
本発明では、正孔輸送層の添加剤として、ドーパント(あるいは、酸化剤)や塩基性化合物(あるいは、塩基性添加剤)を含有していてもよい。正孔輸送層に添加剤を含有させ、正孔輸送層における正孔輸送材料のキャリア濃度を向上させること(ドーピング)は、光電変換素子の変換効率向上につながる。本発明において、光電変換素子用正孔輸送層に添加剤であるドーパントおよび塩基性添加剤を含有する場合、光電変換素子用正孔輸送層に含有する正孔輸送材料1当量に対して、添加剤0以上3.5当量未満であることが好ましい。
本発明において、正孔輸送特性をさらに向上させることを目的としてドーパントを含有させる場合、ドーパントの具体例としては、トリス(2−(1H−ピラゾール−1−イル)−4−tert−ブチルピリジン)コバルト(III)トリ[ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド](FK209)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド銀、NOSbF、SbCl、SbFなどをあげることができる。本発明において、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI)を用いることが好ましい。
本発明において、ドーパントを使用する場合、光電変換素子用正孔輸送層に含有する正孔輸送材料1当量に対して、0以上2.0当量未満が好ましく、0以上0.5当量未満であることがさらに好ましい。
また、正孔輸送層の添加剤として塩基性化合物(塩基性添加剤)を含有してもよい。本発明において、塩基性化合物を含有させる場合、具体例としては、4−tert−ブチルピリジン(TBP)、2−ピコリン、2,6−ルチジンなどがあげられる。塩基性化合物は、ドーパントを使用する際に併用して用いられることが多い。本発明においても、ドーパントを使用する際には、併用することが望ましい。
本発明において、塩基性化合物を使用する場合、光電変換素子用正孔輸送層に含有する正孔輸送材料1当量に対して、0以上5当量未満が好ましく、0以上3当量未満であることがさらに好ましい。
〈対極〉
対極は、導電性支持体に対向配置され、正孔輸送層の上に形成されることで、正孔輸送層と電荷のやり取りが可能である。本発明の光電変換素子においては、正孔輸送層状に対極として金属電極を備えることが好ましいが、正孔輸送層と対極との間に電子ブロッキング層を追加することもできる。
対極としては、使用される材料としては具体的に、白金、チタン、ステンレス、アルミニウム、金、銀、ニッケル等の金属又はこれらの合金があげられる。
本発明において対極は、蒸着等の方法で形成できる材料が好ましい。また、対極の膜厚は特に制限されず、例えば、50〜150nm程度とすることが好ましい。
本発明の光電変換素子においては、導電性支持体が陰極となり、対極が陽極となる。太陽光などの光は導電性支持体側から照射する方が好ましい。太陽光などの照射により、光電変換層(ペロブスカイト層)が光を吸収して励起状態となって電子と正孔が生成する。この電子が電子輸送層を、正孔が正孔輸送層を経由して電極へ移動することにより電流が流れ、光電変換素子として機能するようになる。
本発明の光電変換素子の性能(特性)を評価する際には、短絡電流密度、開放電圧、フィルファクター、光電変換効率の測定を行う。短絡電流密度とは、出力端子を短絡させたときの両端子間に流れる1cmあたりの電流を表し、開放電圧とは、出力端子を開放させたときの両端子間の電圧を表す。また、フィルファクターとは最大出力(電流と電圧の積)を、短絡電流密度と開放電圧の積で割った値であり、主に内部抵抗に左右される。光電変換効率は、最大出力(W)を1cmあたりの光強度(W)で割った値に100を乗じてパーセント表示した値として求められる。
本発明において、光電変換素子の耐久性を評価する際には、光電変換効率の乾燥雰囲気中での経時による光電変換効率の保持率(%)により評価を行う。乾燥雰囲気は、シリカゲル等の乾燥剤をデシケータ等の密閉容器中に設置し、湿度が5%RH以下となった状態である。
本発明の光電変換素子は、ペロブスカイト型太陽電池や各種光センサーなどに応用できる。本発明のペロブスカイト型太陽電池は、前記一般式(1)で表される化合物を正孔輸送材料として光電変換素子用正孔輸送層を含む光電変換素子がセルとなり、そのセルを必要枚数配列してモジュール化し、所定の電気配線を設けることによって得られる。
以上、好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲内で適宜変更してもよい。
以下、本発明を実施例により、図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、合成実施例において得られた化合物の同定は、H−NMR(1H−NMR(日本電子株式会社製核磁気共鳴装置、JNM−ECZ400S/L1型)により行った。
[合成実施例1]化合物(A−1)の合成
2,7−ジブロモ[1]ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェンの合成をCrystEngComm,2014,16,7389に記載の方法で行い、下記式(3)で表される2,7−ジブロモ[1]ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェンを1.1g得た。
Figure 2021163968
反応容器に上記式(3)で表される2,7−ジブロモ[1]ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェン(0.76g)、4,4’-ジメトキシジフェニルアミン(1.0g、Sigma−Aldrich社製)、ナトリウム tert−ブトキシド(0.61g、関東化学社製)、トリ−tert−ブチルホスフィン(33wt%トルエン溶液、0.27g、和光純薬社製)、酢酸パラジウム(47mg、関東化学社製)のトルエン溶液(25mL)をアルゴン気流下加熱還流にて3時間攪拌した。反応液を室温まで放冷後、セライト濾過し、ろ液を濃縮することで粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(担体:シリカゲル、展開溶液:トルエン)で精製後、再結晶(溶媒:トルエン、ヘキサン)した。吸引ろ過を行い、下記式(A−1)で表される化合物(収量:0.36g、収率:27%)を黄色固体として得た。
得られた黄色固体のNMR分析を行い、以下の34個の水素のシグナルを検出し、(A−1)で表される構造と同定した。
H−NMR(400MHz、DMSO−d):δ(ppm)=3.71(12H)、6.89−6.92(10H)、7.01−7.03(8H)、7.33(2H)、7.68(2H)。
Figure 2021163968
[合成実施例2]化合物(A−6)の合成
反応容器に上記式(3)で表される2,7−ジブロモ[1]ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェン(0.18g)、3−(4,4’-ジメトキシジフェニルアミノ)−4,4’-ジメトキシジフェニルアミン(0.42g)、ナトリウム tert−ブトキシド(0.40g、関東化学社製)、トリ−tert−ブチルホスフィン(33wt%トルエン溶液、48mg、和光純薬社製)、酢酸パラジウム(11mg、関東化学社製)のトルエン溶液(20mL)をアルゴン気流下加熱還流にて2時間攪拌した。反応液を室温まで放冷後、セライト濾過し、ろ液を濃縮することで粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(担体:シリカゲル、展開溶液:トルエン)で精製し、下記式(A−6)で表される化合物(収量:46mg、収率:9%)を黄色オイル状物質として得た。
得られた黄色オイル状物質のNMR分析を行い、以下の60個の水素のシグナルを検出し、(A−6)で表される構造と同定した。
H−NMR(400MHz、DMSO−d):δ(ppm)=3.57(6H)、3.67(12H)、3.75(6H)、6.78−6.83(13H)、6.92−6.94(3H)、6.96−6.99(1H)、7.04−7.09(6H)、7.44−7.7.45(7H)、7.79−7.81(2H)、7.93−7.95(2H)、8.10−8.11(2H)。
Figure 2021163968
[合成実施例3]化合物(A−20)の合成
反応容器に上記式(3)で表される2,7−ジブロモ[1]ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェン(0.25g)、N,N,N‘,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)−9H−カルバゾール−3,6−ジアミン(0.95g、東京化成社製)、ナトリウム tert−ブトキシド(0.18g、関東化学社製)、トリ−tert−ブチルホスフィン(33wt%トルエン溶液、84mg、和光純薬社製)、酢酸パラジウム(26mg、関東化学社製)のトルエン溶液(10mL)をアルゴン気流下加熱還流にて7時間攪拌した。反応液を室温まで放冷後、セライト濾過し、ろ液を濃縮することで粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(担体:シリカゲル、展開溶液:トルエン/酢酸エチル=50/1)で精製後、再沈殿(溶媒:トルエン、ヘキサン)を繰り返した。吸引ろ過を行い、下記式(A−20)で表される化合物(収量:0.04g、収率:4%)を黄色固体として得た。
得られた黄色固体のNMR分析を行い、以下の74個の水素のシグナルを検出し、(A−20)で表される構造と同定した。
H−NMR(400MHz、DMSO−d):δ(ppm)=3.75(24H)、6.83−6.91(34H)、7.40−7.42(4H)、7.77(8H)、8.35−8.38(2H)、8.56(2H)。
Figure 2021163968
[実施例1]光電変換素子の作製および光電変換特性評価
エッチング処理されている、フッ素ドープの酸化スズ(FTO)薄膜をコートしたガラス基板(導電性支持体1、Solaronix社製)をアセトンで超音波洗浄後、UVオゾン処理した。この基板上に、正孔ブロッキング層用酸化チタン(TiO)液(Ti−NanoxideBL/SC、Solaronix社製)をスピンコート法により塗布した。塗布後、電気炉を用いて500℃で1時間焼成し、膜厚50〜70nmのTiO薄膜(正孔ブロッキング層2)を得た。続けてこの基板上に、酸化チタン(TiO)ペースト(PST−18NR、日揮触媒化成社製):エタノール=1:4(重量比)に調製した電子輸送層用酸化チタン(TiO)分散液をスピンコート法により塗布した。塗布後、電気炉を用いて450℃で30分間焼成し、膜厚330nmのメソポーラス酸化チタン(TiO)薄膜(電子輸送層3)を得た。
次に、PbI/MAI(1:1)−DMF コンプレックス(東京化成社製)をジメチルスルホキシドに溶解し、1.5Mの溶液を調製した。室温にて、メソポーラス酸化チタン(TiO)薄膜上に、調製したジメチルスルホキシド溶液をスピンコートし、スピンコート中にクロロベンゼン0.3mLを滴下することにより製膜し、ホットプレートを用いて110℃で1時間加熱乾燥し、厚みが約500nmのCHNHPbI層(光電変換層4)を形成した。
次に、合成実施例1で得た正孔輸送材料である化合物(A−1)を用いて、50mMのクロロベンゼン溶液を調製し正孔輸送層溶液とした。室温にて、CHNHPbI層(光電変換層4)上に、正孔輸送層溶液をスピンコートし、ホットプレートを用いて70℃で30分間加熱乾燥し、厚みが約300nmの正孔輸送層5を形成した。
正孔輸送層上に、金を真空蒸着法にて真空度1×10−4Pa程度で、80〜100nm製膜することで金電極(対極6)を設置し、光電変換素子を作製した。
前記光電変換素子の透明電極側から、擬似太陽光照射装置(分光計器株式会社製OTENTO−SUN III型)で発生させた光を照射し、ソースメータ(KEITHLEY社製、Model 2400 General−Purpose SourceMeter)を用いて電流−電圧特性を、光の強度は100mW/cmに調整し測定した。電流−電圧特性値から得られた初期光電変換効率と比較例1で得られた初期光電変換効率との比(比較例1との初期光電変換効率比)を算出した。比較例1との比は、実施例の初期光電変換効率を、比較例1の初期光電変換効率で割った値を示す。初期光電変換効率の比較例1との比を評価した結果を表1に示す。評価は、光電変換素子として十分な光電変換効率であると考えられる0.8以上である場合を〇とし、0.8未満である場合を×とした。また、耐久性の評価として、シリカゲルを設置したデシケータ中で、初期変換効率測定から24時間保管後の光電変換効率の保持率(%)を下記式(a−1)より算出し、表1に示す。
Figure 2021163968
[実施例2]
添加剤の塩基性化合物である4−tert−ブチルピリジンが75mM、添加剤のドーパントであるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI、0.25当量)が12.5mMのクロロベンゼン溶液を調製し、ドーピング溶液とした。調製したドーピング溶液と上記化合物(A−1)を用いて50mMのクロロベンゼン溶液を調製し、正孔輸送層溶液とした。当該正孔輸送層溶液を使用したこと以外、実施例1と同様に光電変換素子を作製し、電流−電圧特性を測定することで、初期光電変換効率を得た。比較例1との初期光電変換効率の比(比較例1との初期光電変換効率比)を評価した結果を表1に示す。また、耐久性の評価として、初期変換効率測定から24時間保管後の光電変換効率の保持率(%)を表1に示す。
[比較例1]
添加剤の塩基性化合物である4−tert−ブチルピリジンが150mM、添加剤のドーパントであるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI、0.5当量)が25mMのクロロベンゼン溶液を調製し、ドーピング溶液とした。調製したドーピング溶液と下記式(B−1)で表される標準的な正孔輸送材料のSpiro−OMeTAD(Sigma−Aldrich社製)を用いて50mMのクロロベンゼン溶液を調製し、正孔輸送層溶液とした。当該正孔輸送層溶液を使用したこと以外、実施例1と同様に光電変換素子を作製した。電流−電圧特性を測定した結果、初期光電変換効率は5.85%であった。また、耐久性の評価として、初期変換効率測定から24時間保管後の光電変換効率の保持率(%)を表1に示す。
Figure 2021163968
Figure 2021163968
表1の結果から、本発明の化合物を含む正孔輸送層を用いることにより、添加剤であるドーパントを低減あるいは使用しなくても、十分な光電変換効率を示すことが判明した。このことから、本発明の化合物を含む光電変換素子は、ドーピング量の低減による製造コストの低減が可能であり、ドーピング操作を必要としない、より簡便なプロセスかつ低コストで作製することが可能である。
また、本発明の化合物を含む正孔輸送層を用いることにより、添加剤であるドーパントを低減あるいは使用せずに作製した光電変換素子の経時耐久性は、比較化合物(B−1)とドーパントを含む比較例1との光電変換素子よりも優れていることが判明した。
本発明による光電変換素子用正孔輸送層を用いることにより、高効率かつ高耐久性の光電変換素子ならびにペロブスカイト型太陽電池に有用であり、太陽光エネルギーを電気エネルギーに効率よく変換できる太陽電池として、クリーンエネルギーを提供することができる。
1 導電性支持体
2 正孔ブロッキング層
3 電子輸送層
4 光電変換層
5 正孔輸送層
6 対極

Claims (7)

  1. 下記一般式(1)で表される化合物を正孔輸送材料として含有する光電変換素子用正孔輸送層。
    Figure 2021163968
    [式中、R〜Rは、それぞれ独立して、
    水素原子、
    置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
    置換基を有していてもよい炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
    置換基を有していてもよい炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、
    置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
    置換基を有していてもよい炭素原子数3〜10のシクロアルコキシ基、
    置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18のチオ基、
    置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアミノ基、
    置換基を有していてもよい炭素原子数6〜36の芳香族炭化水素基、
    または置換基を有していてもよい環形成原子数5〜36の複素環基を表す。
    とR、RとRは、互いに結合して環を形成していてもよい。]
  2. 前記一般式(1)で表される化合物のR〜Rが、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜36の芳香族炭化水素基である請求項1に記載の光電変換素子用正孔輸送層。
  3. 添加剤であるドーパントの含有量が、前記一般式(1)で表される化合物1当量に対して、0以上0.5当量未満であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の光電変換素子用正孔輸送層。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の光電変換素子用正孔輸送層を含む光電変換素子。
  5. 請求項4に記載の光電変換素子を用いたペロブスカイト型太陽電池。
  6. 下記一般式(2)で表される化合物。
    Figure 2021163968
    [式中、R〜R12は、それぞれ独立して、
    水素原子、
    置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
    置換基を有していてもよい炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
    置換基を有していてもよい炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、
    置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
    置換基を有していてもよい炭素原子数3〜10のシクロアルコキシ基、
    または、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアミノ基を表す。
    とR、RとR、RとR10、R11とR12、RとR、R10とR11は、互いに結合して環を形成していてもよい。
    ただし、R、R、R、R12のうち、少なくとも1個は、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基である。]
  7. 前記一般式(2)のR〜R12が、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、または置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアミノ基である請求項6に記載の化合物。
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