JP2021161674A - 捨石マウンド均し用重錘 - Google Patents

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Abstract

【課題】法面均し工程に要する時間の短縮が図れる技術を提供する。
【解決手段】起重機船のクレーンによって吊り上げた位置から、海底に投入された捨石によって形成された捨石マウンドに落下させて、当該捨石マウンドを突き固めて均す捨石マウンド均し用重錘であって、落下させたときに、捨石マウンドに衝突する底面が傾斜面に形成された法面均し部材を備え、この法面均し部材の底面が、突き固めて均す捨石マウンドの法面の傾斜角に応じた傾斜面である。
【選択図】図1

Description

この発明は、防波堤等の重量構造物を海上に敷設するために、海底に形成した捨石マウンドを突き固めて均す技術に関する。
従来、防波堤等の重量構造物(港湾構造物)を海上に敷設する場合、この重量構造物の基礎(海底基礎)を海底に施工する。海底基礎は、例えば、特許文献1に記載されているように、捨石マウンド形成工程、天端面均し工程、および法面均し工程の3つの工程で施工される。
捨石マウンド形成工程は、捨石を海底に投下し、捨石マウンドを海底に形成する工程である。捨石は、1個あたり、その重さが数十〜数千kg、周囲長が1〜2mである比較的大きな石である。
天端面均し工程は、捨石マウンドの天端面を重錘で突き固めて均す工程である。重錘は、鋼製のアングルでトラス状に組まれ、数m四方の底面を有する櫓の下端に鋼塊を取り付けた構成である。重錘の重量は、約50tである。重錘の上端を起重機船に搭載した起重機のクレーンに連結し、該起重機で重錘を捨石マウンドの天端面から数十cm上方に吊り上げ、そして吊り上げた重錘を天端面に落下させる工程を繰り返すことで、天端面を突き固めながら、予め定めた施工高さに均す。また、重錘を落下させる天端面の位置を変更することで、捨石マウンドの天端面全体を突き固めながら、予め定めた施工高さに均す。
法面均し工程は、捨石マウンドの法面を法面均し部材で突き固めて均す工程である。法面均し部材は、台座に対して回動自在に連結した板状の部材である。台座を捨石マウンドの天端面に載置し、法面均し部材を起重機船に搭載した起重機のクレーンに連結する。クレーンで、法面均し部材を法面から持ち上がる方向に吊り上げ、そして吊り上げた法面均し部材を法面に落下させる工程を繰り返すことで、法面を突き固めながら均す。
特開2013−221285号公報
しかしながら、特許文献1に記載された法面均し工程において、突き固めて均される法面の領域は、天端面における台座の載置位置に応じた領域である。このため、天端面における台座の載置位置を順次変更することによって、捨石マウンドの法面全体を突き固めて均していた。
天端面における台座の載置位置を変更するとき、
(1)起重機船に搭載した起重機のクレーンと、法面均し部材との連結の解除、
(2)起重機船に搭載した起重機のクレーンと、台座との連結、
(3)天端面における台座の載置位置を起重機船に搭載した起重機のクレーンで移動、
(4)起重機船に搭載した起重機のクレーンと、台座との連結の解除、
(5)起重機船に搭載した起重機のクレーンと、法面均し部材との連結、
という作業を行っていた。また、捨石マウンドの法面全体を突き固めて均すには、天端面における台座の載置位置を何度も変更しなければならない。このことから、法面均し工程に要する時間が長く、その短縮が要望されている。
この発明の目的は、法面均し工程に要する時間の短縮が図れる技術を提供することにある。
この発明の捨石マウンド均し用重錘は、上記課題を解決し、その目的を達するために、以下のように構成している。
この発明にかかる捨石マウンド均し用重錘は、起重機船のクレーンによって吊り上げた位置から、海底に投入された捨石によって形成された捨石マウンドに落下させて、当該捨石マウンドを突き固めて均すのに用いられる。また、捨石マウンド均し用重錘は、落下させたときに、捨石マウンドに衝突する底面が傾斜面に形成された法面均し部材を備えている。ここで言う傾斜面とは、捨石マウンド均し用重錘の落下方向とのなす角度が鋭角である平面である。
したがって、この捨石マウンド均し用重錘を用いることで、傾斜面である捨石マウンドの法面を突き固めて均すことができる。また、突き固めて均す位置は、捨石マウンド均し用重錘を吊り上げるクレーン側で調整できる。これにより、捨石マウンドの法面全体を突き固めて均す法面均し工程に要する時間の短縮が図れる。
また、法面均し部材の底面は、例えば、突き固めて均す捨石マウンドの法面の傾斜角に応じた傾斜面である。
また、法面均し部材は、捨石マウンド均し用重錘本体に対して着脱自在の構成にしてもよい。この場合、突き固めて均す捨石マウンドの法面の傾斜角に応じて、その傾斜角に応じた傾斜面が形成されている法面均し部材を装着することで、法面を適正に突き固めて均すことができる。すなわち、特定の傾斜角の法面の海底基礎だけでなく、法面の傾斜角が異なる海底基礎に対応できる。
また、落下させたときに、捨石マウンドに衝突する底面が平面に形成された天端面均し部材を備え、法面均し部材、または天端面均し部材が、捨石マウンド均し用重錘本体に対して選択的に装着される構成にしてもよい。このように構成すれば、天端面の均しも適正に行える。
この発明によれば、法面均し工程に要する時間の短縮が図れる。
図1(A)、(B)は、この例にかかる捨石マウンド均し用重錘を示す概略図である。 図2(A)は、法面均し部材を示す概略図であり、図2(A)は、天端面均し部材を示す概略図である。 図3(A)、(B)は、起重機船を示す概略図である。 海底基礎の施工工程を示すフローチャートである。 捨石マウンドを形成する工程を説明する図である。 天端面の均し工程を説明する図である。 天端面を均した捨石マウンドを示す図である。 法面の均し工程を説明する図である。 施工した海底基礎を示す図である。
以下、この発明の実施形態について説明する。
図1は、この例にかかる捨石マウンド均し用重錘を示す概略図である。図1(A)は、法面均し用部材3を櫓2の下端に取り付けた捨石マウンド均し用重錘1を示し、図1(B)は、天端面均し用部材4を櫓2の下端に取り付けた捨石マウンド均し用重錘1を示している。この例の捨石マウンド均し用重錘1は、鋼製のアングルでトラス状に組まれ、数m四方の底面を有する櫓2の下端に法面均し用部材3、または天端面ならし用部材4を選択的に取り付けられる。櫓2の高さは、数十m(10m〜30m程度)である。櫓2が、この発明で言う捨石マウンド均し用重錘本体に相当する。
図2(A)は、法面均し部材を示す概略図である。法面均し用部材3は、ボルトで櫓2の下端に固定される。法面均し用部材3の上面(櫓2の下端に対向する面)には、ボルト(不図示)で櫓2に固定するための雌ネジ31が形成されている。図2(A)では、雌ネジ31が4か所に形成されている法面均し用部材3の例(4本のボルトで櫓2の下端に取り付けて固定される例)を示している。法面均し用部材3の上面に形成される雌ネジの個数は、櫓2の下端に取り付けて固定するボルトの本数に応じて定めればよい。
なお、ボルトは、櫓2側から挿入される。
法面均し用部材3の上面と、この上面に対向する法面均し用部材3の底面とは、平行ではない。法面均し用部材3の上面と底面とのなす角度は、例えば5°〜20°程度である。法面均し用部材3は、上面を櫓2の高さ方向に略直交させた状態で、櫓2の下端にボルトで固定される。したがって、法面均し用部材3は、櫓2の下端に取り付けて固定されたとき、底面が櫓2の高さ方向に対して傾斜した傾斜面となる。
図2(B)は、天端面均し部材を示す図である。天端面均し用部材4も、上記した法面均し用部材3と同様に、ボルトで櫓2の下端に固定される。天端面均し用部材4の上面(櫓2の下端に対向する面)にも、ボルト(不図示)で櫓2に固定するための雌ネジ41が形成されている。図2(B)では、雌ネジ41が4か所に形成されている天端面均し用部材4の例(4本のボルトで櫓2の下端に取り付けて固定される例)を示している。天端面均し用部材4の上面に形成される雌ネジの個数は、櫓2の下端に取り付けて固定するボルトの本数に応じて定めればよい。ボルトは、櫓2側から挿入される。
天端面均し用部材4の上面と、この上面に対向する天端面均し用部材4の底面とは、平行である。天端面均し用部材4は、上面を櫓2の高さ方向に略直交させた状態で、櫓2の下端にボルトで固定される。したがって、天端面均し用部材4は、櫓2の下端に取り付けて固定されたとき、底面が櫓2の高さ方向に直交する平面となる。
次に、海底基礎の施工において使用する起重機船について簡単に説明しておく。図3(A)、(B)は、起重機船を示す概略図である。起重機船10には、起重機11が搭載されている。図3(A)では、グラブバケット8を起重機11が備えるクレーンのワイヤーロープの先端に取り付けた状態を示している。また、図3(B)では、捨石マウンド均し用重錘1を起重機11が備えるクレーンのワイヤーロープの先端に取り付けた状態を示している。また、図3(B)に示す捨石マウンド均し用重錘1は、法面均し用部材3を櫓2の下端に取り付けている。
海底基礎の施工は、
(1)海底に捨て石マウンドを形成する工程(捨て石マウンド形成工程)、
(2)捨石マウンドの天端面を突き固めて均す工程(天端面均し工程)
(3)捨石マウンドの法面を突き固めて均す工程(法面均し工程)
で行われる。
図3(A)に示す起重機船10は、捨石マウンド形成工程を行う。また、図3(B)に示す起重機船10は、捨石マウンドの法面を突き固めて法面均し工程を行う。起重機船10には、自船の位置(緯度、経度、高度)を測位するための測位装置(例えば、GPS装置)が搭載されている。
なお、捨石マウンドの天端面を突き固めて均す天端面均し工程は、法面均し用部材3にかえて、天端面均し用部材4を櫓2の下端に取り付けて行う。
クレーンの先端にも、GPSセンサ(不図示)が取り付けられている。このクレーンの先端に取り付けたGPSセンサによって、クレーンの先端の緯度、経度、高度の測位が行われる。捨石マウンド均し用重錘1を捨石マウンドに落下させたときに、法面均し用部材3(または天端面均し用部材4)が捨石マウンドに当接している高さは、GPSセンサを用いて測位した高度、クレーンのワイヤーロープの繰り出し量、櫓2の高さ、および法面均し用部材3(または天端面均し用部材4)の高さから算出できる。
上記したように、この例では、起重機船10の位置、および起重機船10に搭載されている起重機11のクレーンの先端位置の測位が行える。
なお、上記した特許文献1に記載されているように、反射プリズムを櫓2に取り付け、陸上から観測できるようにしてもよい。
図3(A)、図3(B)に示す起重機船10は、同じ起重機船10であってもよいし、異なる起重機船10であってもよい。すなわち、同じ起重機船10とする場合には、グラブバケット8、または捨石マウンド均し用重錘1を、選択的に、起重機11が備えるクレーンに取り付ければよい。また、図3では、捨石マウンドの天端面均し工程を行う起重機船10については図示していないが、上記したように、図3(B)に示す捨石マウンド均し用重錘1の櫓2の下端に取り付けている法面均し用部材3を、天端面均し用部材4に変更すればよい。
以下、海底基礎の施工工程について説明する。図4は、海底基礎の施工工程を示すフローチャートである。
まず、海底基礎を施工する場所に、捨石マウンドを海底に形成する(s1)。次に、s1で形成した捨石マウンドの天端面を突き固めるとともに、この天端面を均す(s2)。そして、最後に、捨石マウンドの法面を突き固めるとともに、この法面を均す(s3)。
s1にかかる捨石マウンド形成工程について詳細に説明する。s1で形成する捨石マウンドが、施工する海底基礎の元になる。図3(A)に示す、起重機11が備えるクレーンにグラブバケット8を取り付けた起重機船10で捨石マウンドを形成する。
s1では、海底基礎を形成する場所に、捨石マウンドを形成する。起重機船10には、GPS装置を設置しているので、このGPS装置で検知した自船の位置に基づいて、捨石マウンドを形成する場所を判断することができる。捨石マウンドは、周知のように1個あたり、その重さが数十〜数千kg、周囲長が1〜2mである比較的大きな石材(捨石)を海底に多数投入して形成したものである(図5参照)。海底に投入する捨石は、この起重機船10や、他の船に積載されている。
作業者は、起重機11を運転して、起重機船10や、他の船に積載されている捨石を、クレーンに取り付けたグラブバケット8で拾い上げて海底に投入する処理を繰り返し、海底に捨石マウンドを形成する。
s1では、施工する海底基礎の大きさに応じた大きさの捨石マウンドを形成する。具体的には、全体が、施工する海底基礎よりも数十cmから1m程度大きい捨石マウンドを形成する。また、s1では、形成した捨石マウンドに対して1m以上の大きな不陸を整正することも行う。具体的には、海中に潜った潜水士が、形成した捨石マウンドの目視確認を行い、1m以上の大きな不陸があれば、そのことを作業者(クレーンの運転者)に通知する。クレーンの運転者は、潜水士からの指示にしたがって、この不陸が生じている箇所に対して新たに石材を投入したり、この箇所の石材を取り除いたりする運転操作を行う。この後、さらに、鉄筋や水糸で丁張を設置する。
なお、図5は、天端面が海面よりも低く、全体が海中に位置している捨石マウンドの例であり、天端面を海面よりも高く形成することも可能である。
次に、s2にかかる捨石マウンドの天端面を突き固めて均す天端面均し工程について説明する。この天端面均し工程では、櫓2の下端に天端面均し用部材4を取り付けた捨石マウンド均し用重錘1(図1(B)に示す重錘)を用いる。図6に示すように、櫓2の下端に天端面均し用部材4を取り付けた捨石マウンド均し用重錘1を、クレーンのワイヤーロープの先端に取り付けた起重機船10で行う。この起重機船10は、上述した捨石マウンドを形成する工程で使用した起重機船10と同じであってもよいし、異なる起重機船10であってもよい。
捨石マウンドに対する天端面均し工程は、起重機11のクレーンで、ワイヤーロープの先端に取り付けた捨石マウンド均し用重錘1を吊り上げ、捨石マウンドに落下させる手順を繰り返す工程である。
作業者は、捨石マウンドの天端面の均し範囲を決定する。ここで決定する天端面の均し範囲は、落下させた捨石マウンド均し用重錘1の櫓2の下端に取り付けている天端面均し用部材4の底面を当接させて転圧する範囲である。すなわち、ここで決定する天端面の均し範囲は、天端面均し用部材4の底面の大きさである。捨石マウンドの天端面を突き固めて均す天端面均し工程では、天端面の均し範囲を変更しながら、捨石マウンドの天端面全体を突き固めて均す。
具体的には、作業者は、起重機11を操作して、捨石マウンド均し用重錘1の櫓2の下端に取り付けている天端面均し用部材4の底面を決定した均し範囲に合わせる。このとき、作業者は、天端面均し用部材4の底面の中心が、決定した均し範囲の中心位置の真上に位置するように起重機11のクレーンを運転する。そして、作業者は、天端面均し用部材4の底面が捨石マウンドの天端面に当接し、載置された状態になるまで、起重機11のクレーンに吊り下げている捨石マウンド均し用重錘1を下げる。
クレーンの先端に取り付けたGPSセンサによって測位されたクレーンの先端の高度、クレーンのワイヤーロープの繰り出し量、櫓2の高さ、および天端面均し用部材4の高さから、現時点での捨石マウンドの天端面の高さ(現在高さ)、天端面の現在高さと予め定めている施工高さとの差(残調整高さ)、および捨石マウンド均し用重錘1の吊り上げ高さをコンピュータ(不図示)で演算し、起重機11の運転操作を行っている作業者に通知する。この作業者は、通知された現在高さ、残調整高さ、吊り上げ高さを確認し、捨石マウンド均し用重錘1を吊り上げ、天端面に落下させる。捨石マウンドの天端面は、落下させた捨石マウンド均し用重錘1の櫓2の下端に取り付けられている天端面均し用部材4の底面によって転圧された箇所が突き固められる。
なお、起重機11の運転操作を行っている作業者は、コンピュータによって演算された残調整高さや、吊り上げ高さを目安にして、捨石マウンド均し用重錘1を吊り上げている。起重機11が、捨石マウンド均し用重錘1を吊り上げた実際の高さは、起重機11から、コンピュータに入力される。また、起重機11は、吊り上げた捨石マウンド均し用重錘1を落下させると、その旨をコンピュータに入力している。したがって、コンピュータは、起重機11が吊り上げた捨石マウンド均し用重錘1を落下させたタイミングを判断できる。
起重機11の運転操作を行っている作業者は、捨石マウンド均し用重錘1の吊り上げ、落下を繰り返し、捨石マウンドの天端面の現在高さが、施工高さになったと判断すると、この均し範囲に対する均しを完了する。また、起重機11の運転操作を行っている作業者は、捨石マウンドの天端面において、まだ均しを行っていない領域(未処理領域)が存在すれば、その未処理領域内に、均し範囲を決定し、上記した手順の処理を行う。起重機11の運転操作を行っている作業者は、未処理領域が無いと判断した時点で、捨石マウンドの天端面の均し工程が完了したと判断する。
ここで、コンピュータにおける、捨石マウンド均し用重錘1の吊り上げ高さの演算方法について簡単に説明しておく。
コンピュータは、捨石マウンド均し用重錘1を落下させると、今回捨石マウンド均し用重錘1を落下させた前後における、天端面の高さの差(以下、今回調整高さと言う。)を算出する。また、コンピュータは、上述したように、起重機11側から、今回捨石マウンド均し用重錘1を実際に吊り上げた高さが入力されている。
また、コンピュータは、捨石マウンド均し用重錘1を落下させた後における、捨石マウンドの天端面の現在高さと、施工高さとの差である残調整高さを算出する。
コンピュータは、捨石マウンド均し用重錘1を吊り上げ高さを、今回調整高さA、前回の吊り上げ高さB、残調整高さCを用い、
捨石マウンド均し用重錘1の吊り上げ高さ=(A×C)/B
により算出する。前回の吊り上げ高さBは、捨石マウンド均し用重錘1の落下により捨石マウンドに与えた(捨石マウンドの天端面を転圧した)エネルギ量に比例する。また、今回調整高さAは、捨石マウンド均し用重錘1の落下により与えられたエネルギ量に対して、転圧された捨石マウンドの天端面が低下した高さである。すなわち、A/Bは、捨石マウンド均し用重錘1の単位吊り上げ高さに対して、転圧された捨石マウンドの天端面が低下した高さである。
また、捨石マウンド均し用重錘1の落下による転圧を繰り返す毎に、捨石マウンドの天端面が突き固められていくので、天端面に加えられた単位エネルギあたりの、天端面の押し下げ量(低下量)が小さくなる。そこで、捨石マウンド均し用重錘1の吊り上げ高さの算出に、比例定数α(α>1)を用いる構成としてもよい。具体的には、
捨石マウンド均し用重錘1の吊り上げ高さ=α×(A×C)/B
による演算で算出してもよい。上述したように、Aは今回調整高さ、Bは前回の吊り上げ高さ、Cは残調整高さである。
また、αは、捨石マウンドの形成に用いた石材の硬度や、捨石マウンドを形成した海底の土壌の状態等によって異なるので、この比例定数αについては、固定値とせず、初期値(例えば、α=1.1程度)を定めておき、今回調整高さAと、前回の吊り上げ高さBと、を用いて変化させてもよい。
また、算出する吊り上げ高さについては、その上限値を定めておけばよい。例えば、上限値は、50cmと定めておけばよい。また、決定した天端面の均し範囲に対して、最初に捨石マウンド均し用重錘1を落下させるときの吊り上げ高さも、この上限値にすればよい。
なお、上記の説明から明らかなように、コンピュータで演算される捨石マウンド均し用重錘1の吊り上げ高さは、あくまでも、起重機11の運転操作を行っている作業者に対して、その目安を認識させるものであり、起重機11による捨石マウンド均し用重錘1の吊り上げ高さを制限するものではない。
このように、この例では、天端面均し工程において、作業者が捨石マウンド均し用重錘1を天端面に落下させる毎に、天端面の現在高さと残調整高さとを、起重機11の運転操作を行っている作業者に確認させるまでに要する時間を効率的に低減できる。
上記した天端面均し工程により、捨石マウンドの天端面は、図7に示すように、突き固められ、ほぼ均一な高さに均される。一方で、捨石マウンドの法面については、この時点では、均されていないので、引き続き、この法面を突き固めて均す法面均し工程を行う。
この法面均し工程では、櫓2の下端に法面均し用部材3を取り付けた捨石マウンド均し用重錘1(図1(A)に示す重錘)を用いる。図8に示すように、櫓2の下端に法面均し用部材3を取り付けた捨石マウンド均し用重錘1を、クレーンのワイヤーロープの先端に取り付けた起重機船10で行う。この起重機船10は、上述した天端面均し工程で使用した起重機船10と同じであってもよいし、異なる起重機船10であってもよい。天端面均し工程で使用した起重機船10と同じである場合には、櫓2の下端に取り付けられている天端面均し用部材4を、法面均し用部材3に交換すればよい。
捨石マウンドに対する法面均し工程は、起重機11のクレーンで、ワイヤーロープの先端に取り付けた捨石マウンド均し用重錘1を吊り上げ、捨石マウンドに落下させる手順を繰り返す工程である。すなわち、捨石マウンドに対する法面均し工程は、上記した捨石マウンドに対する天端面均し工程と同様の工程である。異なる点は、天端面均し用部材4ではなく、法面均し用部材3が捨石マウンド均し用重錘1の櫓2の下端に取り付けられている点である。
作業者は、捨石マウンドの法面の均し範囲を決定する。ここで決定する法面の均し範囲は、落下させた捨石マウンド均し用重錘1の櫓2の下端に取り付けている法面均し用部材3の底面を当接させて転圧する範囲である。すなわち、ここで決定する法面の均し範囲は、法面均し用部材3の底面の大きさである。捨石マウンドの法面を突き固めて均す法面均し工程では、法面の均し範囲を変更しながら、捨石マウンドの法面全体を突き固めて均す。
具体的には、作業者は、起重機11を操作して、捨石マウンド均し用重錘1の櫓2の下端に取り付けている法面均し用部材3の底面を決定した均し範囲に合わせる。このとき、作業者は、法面均し用部材3の底面の中心が、決定した均し範囲の中心位置の真上に位置するように起重機11のクレーンを運転する。そして、作業者は、法面均し用部材3の底面が捨石マウンドの天端面に当接し、載置された状態になるまで、起重機11のクレーンに吊り下げている捨石マウンド均し用重錘1を下げる。
クレーンの先端に取り付けたGPSセンサによって測位されたクレーンの先端の高度、クレーンのワイヤーロープの繰り出し量、櫓2の高さ、および法面均し用部材3の高さから、現時点での捨石マウンドの法面の高さ(現在高さ)、法面の現在高さと予め定めている施工高さとの差(残調整高さ)、および捨石マウンド均し用重錘1の吊り上げ高さをコンピュータ(不図示)で演算し、起重機11の運転操作を行っている作業者に通知する。このとき、コンピュータは、その時点における法面の均し範囲に応じて、法面の施工高さを判断する。法面の施工高さは、法面の均し範囲によって変化する。作業者は、通知された現在高さ、残調整高さ、吊り上げ高さを確認し、捨石マウンド均し用重錘1を吊り上げ、法面に落下させる。捨石マウンドの法面は、落下させた捨石マウンド均し用重錘1の櫓2の下端に取り付けられている法面均し用部材3の底面によって転圧された箇所が突き固められる。
法面均し用部材3の底面は、傾斜面であるので、法面均し用部材3の底面によって転圧された箇所は、傾斜面になる。捨石マウンドの天端面に対する法面の傾斜角は、法面均し用部材3の上面と、底面とのなす角度になる。したがって、この法面均し工程は、上面と底面とのなす角度が、施工する海底基礎の法面の傾斜角である法面均し用部材3を櫓2の下端に取り付けて行われる。
なお、起重機11の運転操作を行っている作業者は、上記した天端面均し工程と同様に、コンピュータによって演算された残調整高さや、吊り上げ高さを目安にして、捨石マウンド均し用重錘1を吊り上げている。
起重機11の運転操作を行っている作業者は、捨石マウンド均し用重錘1の吊り上げ、落下を繰り返し、捨石マウンドの法面の現在高さが、施工高さになったと判断すると、この均し範囲に対する均しを完了する。また、起重機11の運転操作を行っている作業者は、捨石マウンドの法面において、まだ均しを行っていない領域(未処理領域)が存在すれば、その未処理領域内に、均し範囲を決定し、上記した手順の処理を行う。起重機11の運転操作を行っている作業者は、未処理領域が無いと判断した時点で、捨石マウンドの法面の均し工程が完了したと判断する。
コンピュータにおける、現在高さ、残調整高さ、および吊り上げ高さを算出する演算については、上記した天端面均し工程と同様である。
このように、この例では、法面均し工程において、作業者が捨石マウンド均し用重錘1を法面に落下させる毎に、法面の現在高さと残調整高さとを、起重機11の運転操作を行っている作業者に確認させるまでに要する時間を効率的に低減できる。
また、均し範囲の変更は、起重機11の操作によって行える。したがって、法面全体を突き固めて均す法面均し工程に要する時間の短縮が図れる。
なお、この法面均し工程では、捨石マウンド均し用重錘1を落下させたときに、捨石マウンドを転圧する法面均し用部材3の底面の向きを、法面の傾斜に合せている。
上述した、s1〜s3にかかる処理を行うことで、天端面、および法面を突き固めて均した海底基礎を施工することができる(図9参照)。図9では、断面形状が台形形状である海底基礎を示している。施工する海底基礎は、この図9に示す形状に限らず、他の形状であってもよい。
このように、この例にかかる捨石マウンド均し用重錘1を用いることで、捨石マウンドの天端面の均し、および法面の均しが、ほとんど同じ工程で行える。また、法面全体を突き固めて均す法面均し工程に要する時間の短縮が図れるので、結果的に、海底基礎の施工にかかる期間の短縮が図れる。
なお、天端面均し工程、および法面均し工程において、起重機11が、コンピュータで演算された捨石マウンド均し用重錘1の吊り上げ高さに基づいて、捨石マウンド均し用重錘1を吊り上げ、落下させる自動運転機能を備える構成としてもよい。このようにすれば、天端面均し工程、および法面均し工程における作業者の作業負担を一層低減できる。この場合、コンピュータが、算出した残調整高さが0以下になったときに、その時点の均し範囲に対する均しが完了したと判定する構成とすればよい。
1…捨石マウンド均し用重錘
2…櫓
3…法面均し用部材
4…天端面均し用部材
8…グラブバケット
10…起重機船
11…起重機
31、41…雌ネジ

Claims (3)

  1. 起重機船のクレーンによって吊り上げた位置から、海底に投入された捨石によって形成された捨石マウンドに落下させて、当該捨石マウンドを突き固めて均す捨石マウンド均し用重錘であって、
    落下させたときに、前記捨石マウンドに衝突する底面が傾斜面に形成された法面均し部材を備え、
    前記法面均し部材の底面は、突き固めて均す前記捨石マウンドの法面の傾斜角に応じた傾斜面である、捨石マウンド均し用重錘。
  2. 前記法面均し部材は、前記捨石マウンド均し用重錘本体に対して着脱自在である、請求項1に記載の捨石マウンド均し用重錘。
  3. 落下させたときに、前記捨石マウンドに衝突する底面が平面に形成された天端面均し部材を備え、
    前記法面均し部材、または前記天端面均し部材が、前記捨石マウンド均し用重錘本体に対して選択的に装着される、請求項2に記載の捨石マウンド均し用重錘。
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