JP2021161233A - 熱硬化性樹脂組成物、硬化物及び積層体 - Google Patents

熱硬化性樹脂組成物、硬化物及び積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】透明性に優れ、長期間にわたって良好な滑水性を維持できる硬化膜を形成できる熱硬化性樹脂組成物を提供する。【解決手段】主鎖又は側鎖にポリジメチルシロキサン構造及び活性水素基を有する重合体(X1)、1分子に2つ以上のブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する化合物(Y1)、並びに1分子に2つ以上の活性水素基を有する化合物(Z1)を含む熱硬化性樹脂組成物。主鎖又は側鎖にポリジメチルシロキサン構造及び活性水素基を有する重合体(X1)、並びに1分子に3つ以上のブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する化合物(Y2)を含む熱硬化性樹脂組成物。主鎖又は側鎖にポリジメチルシロキサン構造及びブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する重合体(X2)、並びに1分子に2つ以上の活性水素基を有する化合物(Z1)を含む熱硬化性樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は熱硬化性樹脂組成物、特に滑水性に優れた硬化膜を形成することができる熱硬化性樹脂組成物、当該組成物の硬化物、及び当該硬化物からなる層を有する積層体に関するものである。
ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂等の樹脂製の樹脂成形品は、軽量で耐衝撃性に優れ、透明性も良好であるため、自動車用の各種ランプレンズ、グレージング(樹脂窓)、外装、計器類のカバー等の部材の材料に用いられている。
また近年、自動車等の車両において、前方の障害物を検知したり、車間距離を測定したりするために、車両前面のエンブレムやフロントグリルの裏側にミリ波等の各種の電磁波を用いたレーダー装置が配置されている。これらの電磁波は水による減衰が大きいため、電磁波が通過するエンブレムやフロントグリル等の最表面は水滴が付着しにくく、また水滴が容易に滑落する滑水性という機能が求められている。
これらの要求を満足すべく、ポリジメチルシロキサン構造を有する樹脂を含む硬化性組成物で樹脂成形品の表面をコーティングすることにより滑水性を付与する方法が知られている。
例えば、特許文献1には、フルオロアルキル基を有する単量体、ポリジメチルシロキサン構造を有する単量体、及び多官能不飽和化合物の共重合体を含む硬化性組成物を基材に塗布し、過熱することで滑水性を有する硬化膜を形成する方法が開示されている。
また、特許文献2には、ポリジメチルシロキサン構造を有する単量体、及び水酸基を有する単量体の共重合体、並びに2官能イソシアネートを含む熱硬化性樹脂組成物を硬化させ、滑水性を有する硬化膜を形成する方法が開示されている。
しかし、特許文献1に記載の方法では、硬化膜にハジキ等の欠陥が生成することで硬化膜外観し、透明性も低下するという問題があった。また、特許文献2に記載の方法では、硬化膜の耐久性が低く、湿熱試験後に滑水性が大きく損なわれるという問題があった。
特開2013−185072号公報 特開2000−230060号公報
本発明の課題は、透明性に優れ、長期間にわたって良好な滑水性を維持できる硬化膜を形成できる熱硬化性樹脂組成物、当該組成物の硬化物、及び当該硬化物からなる層を有する積層体を提供することにある。
本発明の要旨は、次の[1]〜[9]に存する。
[1]主鎖又は側鎖にポリジメチルシロキサン構造及び活性水素基を有する重合体(X1)、1分子に2つ以上のブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する化合物(Y1)、並びに1分子に2つ以上の活性水素基を有する化合物(Z1)を含む熱硬化性樹脂組成物。
[2]主鎖又は側鎖にポリジメチルシロキサン構造及び活性水素基を有する重合体(X1)、並びに1分子に3つ以上のブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する化合物(Y2)を含む熱硬化性樹脂組成物。
[3]主鎖又は側鎖にポリジメチルシロキサン構造及びブロック化されていてもよいイソシアネート基を有し、さらに主鎖に芳香族ビニル単量体由来の構成単位を30質量%以上含む重合体(X2−2)。
[4]主鎖又は側鎖にポリジメチルシロキサン構造及びブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する重合体(X2)、並びに1分子に2つ以上の活性水素基を有する化合物(Z1)を含む熱硬化性樹脂組成物。
[5]さらに、1分子に2つ以上のブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する化合物(Y1)を含む前記[4]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[6]さらに無機微粒子を含む前記[1]、[2]、[4]及び[5]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[7]前記無機微粒子が、メルカプト基、水酸基、又はイソシアネート基のいずれかの官能基を有する化合物で表面修飾されている無機微粒子である前記[6]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[8]前記[1]、[2]、[4]乃至[7]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
[9]基材に前記[8]の硬化物からなる層を有する積層体。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、透明性に優れ、長期間にわたって良好な滑水性を維持できる硬化膜を形成できる。本発明の硬化物及び積層体は、透明性に優れ、長期間にわたって良好な滑水性を維持できる特性を有する。
[組成物(A1)]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、主鎖又は側鎖にポリジメチルシロキサン構造及び活性水素基を有する重合体(X1)[以下「重合体(X1)」という]、1分子に2つ以上のブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する化合物(Y1)[以下「化合物(Y1)」という]、並びに1分子に2つ以上の活性水素基を有する化合物(Z1)[以下「化合物(Z1)」という]を含む熱硬化性樹脂組成物[以下「組成物(A1)」という]である。
<重合体(X1)>
重合体(X1)は、主鎖又は側鎖にポリジメチルシロキサン構造及び活性水素基を有する重合体である。つまり、重合体(X1)には、その主鎖又は側鎖のいずれか若しくは両方にポリジメチルシロキサン構造含み、その主鎖又は側鎖のいずれか若しくは両方に活性水素基を含むことが必要である。
<ポリジメチルシロキサン構造>
ポリジメチルシロキサン構造は、重合体(X1)を含む組成物(A1)により形成される硬化膜の滑水性に寄与する。
重合体(X1)へのポリジメチルシロキサン構造の導入方法としては、例えば、(1)ポリジメチルシロキサン構造と不飽和結合を有するマクロモノマー[以下「マクロモノマー(M1)」という]を他の単量体と共重合する方法、(2)α,ω位にメルカプト基を有するポリジメチルシロキサンを連鎖移動剤として他の単量体と共重合する方法、(3)ポリジメチルシロキサン構造を有するアゾ化合物と他の単量体を共重合する方法、(4)末端に水酸基を有するポリジメチルシロキサンの当該水酸基をブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する重合体の当該イソシアネート基に付加する方法が挙げられる。
前記(1)の方法に用いられるマクロモノマー(M1)としては、例えば、JNC製のサイラプレーン(登録商標)FM−0711(数平均分子量カタログ掲載値:1000)、同サイラプレーンFM−0721(数平均分子量カタログ掲載値:5000)、同サイラプレーンFM−0725(数平均分子量カタログ掲載値:10000);信越化学工業製のX−22−174ASX(数平均分子量カタログ掲載値:900)、同X−22−174BX(数平均分子量カタログ掲載値:2300)、同KF−2012(数平均分子量カタログ掲載値:4600)、同X−22−2426(数平均分子量カタログ掲載値:12000)が挙げられる。中でも、サイラプレーンFM−072、サイラプレーンFM−0721、サイラプレーンFM−0725、X−22−174ASX、X−22−174BX、KF−2012、X−22−2426に代表されるモノ(メタ)アクリロイルオキシプロピル変性ポリジメチルシロキサンが工業的に入手しやすく好適である。
前記(2)の方法で連鎖移動剤として用いられるα、ω位にメルカプト基を有するポリジメチルシロキサンとしては、例えば、信越化学工業製のX−22−167B(数平均分子量カタログ掲載値:3400)、同X−22−167C(数平均分子量カタログ掲載値:4600)が挙げられる。
前記(3)の方法で用いられるポリジメチルシロキサン構造を有するアゾ化合物としては、例えば、富士フィルム和光純薬製のVPS−0501(商品名:ポリジメチルシロキサン系高分子アゾ開始剤、ポリジメチルシロキサン鎖長5000)、同VPS−1001(商品名:ポリジメチルシロキサン系高分子アゾ開始剤、ポリジメチルシロキサン鎖長10000)が挙げられる。
重合体(X1)へのポリジメチルシロキサン構造の導入方法としては、原料の入手のしやすさの観点から、前記(1)の方法が好ましい。
<活性水素基>
活性水素基は、化合物(Y1)のイソシアネート基と反応して、重合体(X1)が硬化膜に強固に固定され、滑水性の耐久性と耐傷付性に寄与する。重合体(X1)が有する活性水素基は、例えば、水酸基、メルカプト基、アミノ基等の官能基である。活性水素基はイソシアネート基を有する化合物(Y1)の当該イソシアネート基と反応してウレタン結合等の結合を形成することができる。
水酸基は1級、2級、3級のいずれでもよいが、1級又は2級が好ましい。メルカプト基及びアミノ基についても1級、2級、3級のいずれでもよいが、1級又は2級が好ましい。
重合体(X1)に活性水素基を導入するには、活性水素基を有する単量体[以下「単量体(M2)」という]を、ポリジメチルシロキサン構造の導入方法の前記(1)の方法における他の単量体として、マクロモノマー(M1)と共重合する方法が好ましい。
<重合体(X1)の製造>
以下、前記(1)の方法において、マクロモノマー(M1)と他の単量体として単量体(M2)との共重合により重合体(X1)を製造する方法について説明する。
<マクロモノマー(M1)>
重合体(X1)の製造に用いるマクロモノマー(M1)のポリジメチルシロキサン構造は、直鎖構造と分岐鎖構造のいずれであってもよい。またポリジメチルシロキサン構造は、末端にアルキル基を有していてよく、内部にアルキレン基を有していてもよい。例えば、不飽和結合を導入する場合や分岐鎖を形成する場合には、ポリジメチルシロキサン構造との間に炭素数1〜6のアルキレン基を介することがある。
マクロモノマー(M1)の不飽和結合は、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、(メタ)アクリルアミド基が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリロイル基が他の単量体との共重合のしやすさの観点から好ましい。
マクロモノマー(M1)の分子量は、500〜40000が好ましく、700〜30000がより好ましく、800〜20000がさらに好ましい。この分子量は、小さいほどマクロモノマー(M1)が他の単量体と相溶しやすくなるので、重合体(X1)を製造しやすくなる傾向がある。また、この分子量は大きいほど硬化膜の滑水性が良好になる傾向がある。
重合体(X1)中のマクロモノマー(M1)の導入量は、5質量%以上、70質量%未満が好ましく、10質量%以上、60質量%未満がより好ましく、20質量%以上、50質量%未満がさらに好ましい。この導入量は、多いほど硬化膜の滑水性が良好になり、少ないほど未重合のマクロモノマー(M1)を少なくすることができるので、硬化膜の透明性が良好になる傾向がある。
<単量体(M2)>
単量体(M2)は重合体(X1)に活性水素基を導入するために用いられる。単量体(M2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、N−置換(メタ)アクリルアミド、ビニル化合物のうち、水酸基、メルカプト基又はアミノ基を有する化合物が挙げられる。
水酸基を有する単量体(M2)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(1−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(1−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシブチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシブチル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシブチル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシブチル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシブチル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシブチル)メタクリルアミド等のN−置換(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。ここで(メタ)アクリル酸エステルとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましく、N−置換(メタ)アクリルアミドとしては、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド及びN−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミドが好ましい。特に好ましい水酸基を有する単量体(M2)としては2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。水酸基を有する単量体(M2)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
活性水素基は、共重合により重合体(X1)を製造する際に連鎖移動剤を用いることによっても導入することができる。このような連鎖移動剤としては、例えば、水酸基を有するメルカプタン、アミノ基を有するメルカプタンが挙げられる。
水酸基を有するメルカプタンとしては、例えば、メルカプトエタノール及びチオグリセロールが挙げられる。
アミノ基を有するメルカプタンとしては、例えば、2−アミノエタンチオール、2−アミノベンゼンチオール、4−アミノベンゼンチオール及びL−システイン、並びにそれらの塩酸塩が挙げられる。
重合体(X1)における活性水素基の導入量は、0.1mmol/g以上4.0mmol/g未満が好ましく、0.2mmol/g以上3.5mmol/g未満がより好ましく、0.3mmol/g以上3.0mmol/g未満がさらに好ましい。この導入量は、多いほど硬化膜の耐久性が向上し、少ないほど硬化膜の滑水性向上する傾向がある。
<その他の単量体>
重合体(X1)の製造において、マクロモノマー(M1)及び単量体(M2)以外に、性能を損なわない範囲でその他単量体を共重合することができる。その他単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、ビニルアントラセン及びビニルキシレン等の芳香族ビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、べへニル(メタ)アクリレート及びアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート又はアルケニル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート及びジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の脂環構造を有する(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート及びフェニル(メタ)アクリレート等の芳香環を有する(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート及びグリシジルメタクリレート等の酸素原子含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸及びフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル等のカルボキシ基含有メタクリル酸系単量体;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、イソプロピル(メタ)アクリルアミド及びジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のN−置換(メタ)アクリルアミド;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート及びヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート等のハロゲン原子含有(メタ)アクリレート;トリメチルシリル(メタ)アクリレート、3−(トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(メチルジエトキシ)プロピル(メタ)アクリレート及び3−(トリエトキシ)プロピル(メタ)アクリレート等のケイ素原子含有(メタ)アクリレート;2−(4−ベンゾキシ−3−ヒドロキシフェノキシ)エチルメタクリレート及び2−(2’−ヒドロキシ−5−メタクリロイロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等の紫外線吸収基を有する(メタ)アクリレート;テトラメチルピペリジニル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の窒素原子含有(メタ)アクリレート;等を挙げることができる。また、その他単量体としては、アルカン酸ビニル化合物、マレイン酸系単量体等の単量体を用いてもよい。
その他の単量体としては、ホモポリマーのガラス転移温度が30℃を超えるものが硬化膜の硬度向上の観点から好ましく、また、芳香環又は脂環構造を有する単量体が滑水性の観点から好ましい。中でもカルボニル基を含まない芳香族ビニル化合物は、水分子との水素結合性が低いので、硬化膜の滑水性向上の観点から好ましい。
重合体(X1)におけるその他単量体の共重合量は、マクロモノマー(M1)及び単量体(M2)の共重合量の残余であり、20質量%以上90質量%未満が好ましく、25質量%以上85質量%未満がより好ましく、30質量%以上80質量%未満がさらに好ましい。この共重合量は、多いほど共重合する際の共重合性が良好になり、低いほど滑水性が良好になる傾向がある。
<開始剤>
重合体(X1)の製造において、マクロモノマー(M1)と単量体(M2)とを共重合する際には開始剤を用いることが好ましい。
開始剤としては各種の開始剤を用いることができる。油溶性ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70、富士フィルム和光純薬製)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65、富士フィルム和光純薬製)2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(V−60、富士フィルム和光純薬製)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(V−59、富士フィルム和光純薬製)等のアゾニトリル化合物;オクタノイルパーオキシド(パーロイル(登録商標)O、日油製)、ラウロイルパーオキシド(パーロイルL、日油製)、ステアロイルパーオキシド(パーロイルS、日油製)、スクシニックアシッドパーオキシド(パーロイルSA、日油製)、ベンゾイルパーオキサイド(ナイパー(登録商標)BW、日油製)、イソブチリルパーオキサイド(パーロイルIB、日油製)、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド(ナイパーCS、日油製)、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド(パーロイル355、日油製)等のジアシルパーオキサイド;ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート(パーロイルNPP−50M、日油製)、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(パーロイルIPP−50、日油製)、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(パーロイルTCP、日油製)、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート(パーロイルEEP、日油製)、ジ−2−エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート(パーロイルOPP、日油製)、ジ−2−メトキシブチルパーオキシジカーボネート(パーロイルMBP、日油製)、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート(パーロイルSOP、日油製)等のパーオキシジカーボネート;t−ブチルヒドロパーオキサイド(パーブチルH−69、日油製)、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド(パーオクタ(登録商標)H、日油製)、等のヒドロパーオキサイド;ジ−t−ブチルパーオキサイド(パーブチル(登録商標)D、日油製)、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ(登録商標)25B、日油製)等のジアルキルパーオキサイド;α,α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(ダイパー(登録商標)ND、日油製)、クミルパーオキシネオデカノエート(パークミル(登録商標)ND、日油製)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート(パーオクタND、日油製)、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート(パーシクロ(登録商標)ND、日油製)、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート(パーヘキシル(登録商標)ND、日油製)、t−ブチルパーオキシネオデカノエート(パーブチルND、日油製)、t−ヘキシルパーオキシピバレート(パーヘキシルPV、日油製)、t−ブチルパーオキシピバレート(パーブチルPV、日油製)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(パーオクタO、日油製)2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ250、日油製)、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(パーシクロO、日油製)、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(パーヘキシルO、日油製)、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(パーブチルO、日油製)、t−ブチルパーオキシイソブチレート(パーブチルIB、日油製)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(パーヘキシルI、日油製)、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド(パーブチルMA、日油製)等のパーオキシエステル等の有機過酸化物等が挙げられる。開始剤は特にこれらに限定されるものではない。
重合体(X1)を製造する際の開始剤の好ましい添加量は、マクロモノマー(M1)及び単量体(M2)及びその他の単量体の総量に対し、0.1質量%以上10質量%未満が好ましく、0.3質量%以上6質量%未満がより好ましく、0.5質量%以上3質量%未満がさらに好ましい。開始剤添加量は、多いほど塗工性が良好になり、少ないほど滑水性が良好になる傾向がある。
重合体(X1)は、例えば、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、乳化重合等の重合方法により製造できる。開始剤は、重合方法ごとに適切な方法で使用すればよい。
<重合体(X1)の分子量>
重合体(X1)の重量平均分子量は5000〜400000が好ましく、5000〜300000がさらに好ましく、10000〜200000が特に好ましい。重量平均分子量は小さいほど熱硬化性樹脂組成物の粘度が下がるので塗工性が良好になり、大きいほど重合体(X1)が硬化膜に強固に固定化されることにより滑水性や耐傷付性が向上する傾向がある。
なお、重合体(X1)の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定した標準ポリスチレン換算よる重量平均分子量(Mw)である。
<重合体(X1)の含有量>
組成物(A1)中の重合体(X1)の含有量は、重合体(X1)、化合物(Y1)、化合物(Z1)の合計質量中、5〜95質量%が好ましく、8〜90質量%がより好ましく、10〜75質量%がさらに好ましい。この含有量は、多いほど硬化膜の滑水性が向上し、少ないほど硬化膜の耐擦傷性及び硬度が高くなる傾向がある。
<化合物(Y1)>
化合物(Y1)は、1分子に2つ以上のブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する化合物である。組成物(A1)を硬化する際、化合物(Y1)が有するイソシアネート基は、重合体(X1)が有する活性水素基、及び化合物(Z1)が有する活性水素基と反応して、これらの化合物及び重合体間でウレタン結合等の結合が形成される。これにより硬化膜等の硬化物は架橋密度が増大するので、耐候性及び耐汚染性を向上すると考えられる。
化合物(Y1)としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン及び4,4−ジシクロヘキシルジイソシアネート等の2官能のイソシアネート、並びにこれら2官能のイソシアネートを出発原料として合成されたビュレット体、トリメチロールプロパンアダクト体、イソシアヌレート体、アロファネート体等の3官能以上のイソシアネートが挙げられる。
また、化合物(Y1)としては、例えば、旭化成製のヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体(商品名:デュラネート(登録商標)22A−75P)、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体(商品名:デュラネートP−301−75E)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:デュラネートTPA−100)、ブロック型イソシアネート(商品名:デュラネートMF−K60X)、三井化学製の1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのトリメチロールプロパンアダクト体(商品名:タケネート(登録商標)D−120N)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌレート体(商品名:タケネートD−127N)、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(商品名:タケネートD−140N)、及び住化コベストロウレタン製のヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体(商品名:デスモジュール(登録商標)XP2679)等の3官能以上のイソシアネート及びブロック化イソシアネートが挙げられる。
化合物(Y1)としては、硬化膜の架橋密度の向上、並びに耐候性及び耐汚染性の向上の観点から3官能以上のイソシアネート[以下「化合物(Y2)」という]が好ましい。化合物(Y1)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
組成物(A1)中の化合物(Y1)の含有量は、重合体(X1)、化合物(Y1)、化合物(Z1)の合計質量中、5〜60質量%が好ましく、7〜50質量%がより好ましく、10〜45質量%がさらに好ましい。この含有量は多いほど硬化膜の耐擦傷性及び硬度が向上し、少ないほど滑水性が向上する傾向がある。
<化合物(Z1)>
化合物(Z1)は、1分子に2つ以上の活性水素基を有する化合物である。
前記活性水素基は、例えば、水酸基、メルカプト基、アミノ基等の官能基である。活性水素基はイソシアネート基を有する化合物(Y1)の当該イソシアネート基と反応してウレタン結合等の結合を形成することができる。水酸基は1級、2級、3級のいずれでもよいが、1級又は2級が好ましい。メルカプト基及びアミノ基についても1級、2級、3級のいずれでもよいが、1級又は2級が好ましい。
化合物(Z1)の活性水素基は、原料の入手のしやすさと、硬化膜の硬度に黄変しにくさの観点から、水酸基が最も好ましく、次いでメルカプト基が好ましく、その次にアミノ基が好ましい。
化合物(Z1)の活性水素基が水酸基である場合、特に限定なく公知のポリオール化合物を使用することができる。
<化合物(Z1)のうち1分子に2つの水酸基を有する化合物>
化合物(Z1)の活性水素基が水酸基である場合、特に限定なく公知のポリオール化合物を使用することができる。
前記ポリオール化合物のうち1分子に2つの水酸基を有する化合物の具体例としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の鎖状脂肪族グリコール;1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式グリコール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールF等のビスフェノール;ポリカーボネートジオール;ダイマー酸ジオール;前記グリコールを重合開始剤存在下でエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレン等のアルキレンオキシドを付加重合したポリエーテルポリオール;前記グリコールと多価カルボン酸を縮合して得られるポリエステルジオールが挙げられえる。
1分子に2つの水酸基を有する化合物の中では、硬化膜の硬度が高くなる点から分子量の大きなポリカーボネートジオールが好ましい。ポリカーボネートジオールの市販品として、例えば、クラレポリオールC−1015N、クラレポリオールC−1065N(クラレ製カーボネートジオール:2−メチル−1,8−オクタンジオール/1,9−ノナンジオール、数平均分子量約1000)、クラレポリオールC−2015N、クラレポリオールC−2065N(クラレ製カーボネートジオール:2−メチル−1,8−オクタンジオール/1,9−ノナンジオール、数平均分子量約2000)、クラレポリオールC−1050、クラレポリオールC−1090(クラレ製カーボネートジオール:3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール、数平均分子量約1000)、クラレポリオールC−2050、クラレポリオールC−2090(クラレ製カーボネートジオール:3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール、数平均分子量約2000)、DURANOL(登録商標)−T5650E(旭化成製ポリカーボネートジオール:1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール、数平均分子量約500)、DURANOL−T5651(旭化成製ポリカーボネートジオール:1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール、数平均分子量約1000)、DURANOL−T5652(旭化成製ポリカーボネートジオール:1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール、数平均分子量約2000)が挙げられる。
化合物(Z1)のうち1分子に3つ以上の水酸基を有する化合物は、1分子に2つの水酸基を有する化合物より硬化膜の硬度を向上させやすいので好ましい。
前記1分子に3つ以上の水酸基を有する化合物の具体例としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリカプロラクトントリオール、ポリカプロラクトンテトラオール等の3官能又は4官能の脂肪族アルコール;前記3官能又は4官能の脂肪族アルコール等を重合開始剤存在下でエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレン等のアルキレンオキシドを付加重合したポリエーテルポリオール;前記3官能又は4官能の脂肪族アルコール等と多価カルボン酸を縮合して得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
これらの1分子に3つ以上の水酸基を有する化合物の中でも、1分子に含まれる水酸基の数が5つ以上であり樹状の分岐構造を有する化合物群は、硬化膜の硬度や耐傷付性を向上する効果が最も高いため、特に好ましい。前記1分子に含まれる水酸基の数が5つ以上であり樹状の分岐構造を有する化合物群はデンドリマーやハイパーブランチポリマーと呼ばれることがある。
前記デンドリマーのうち末端に水酸基を持った化合物の市販品の例としては、例えば、Perstorp製のBoltorn(登録商標)H20(水酸基濃度8.73〜9.27mmol/g、分子量2100(カタログ値))、Boltorn H311(水酸基濃度4.10〜4.63mmol/g、分子量5300(カタログ値))、Boltorn H2004(水酸基濃度2.23〜2.67mmol/g、分子量3100(カタログ値))、Boltorn P500(水酸基濃度9.98〜11.23mmol/g、分子量1800(カタログ値))、Boltorn P1000(水酸基濃度7.66〜11.23mmol/g、分子量1500(カタログ値))、Boltorn U3000(水酸基濃度0.27mmol/g、分子量6500(カタログ値))、Boltorn W3000(水酸基濃度0.27mmol/g、分子量10000(カタログ値))が挙げられる。
前記ハイパーブランチポリマーのうち末端に水酸基を持った化合物の市販品の例としては、例えば、BASF製のBasonol(登録商標) HPE 1170B(水酸基濃度4.99mmol/g、分子量1800(カタログ値))、Basonol HPE 021(水酸基濃度3.39mmol/g、分子量1400(カタログ値))が挙げられる。
化合物(Z1)のうち1分子に2つのメルカプト基を有する化合物の具体例としては、例えば、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,7−ヘプタンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,9−ノナンジチオール、1,10−デカンジチオール、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)エーテル、ビス(メルカプトエチル)エーテル、ビス(メルカプトメチル)アミン、ビス(メルカプトエチル)アミン等が挙げれる。
化合物(Z1)のうち1分子に3つ以上のメルカプト基を有する化合物の具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、1,3,5−トリス(2−(3−スルファニルブタノイルオキシ)エチル)−1,3,5−トリアジナンー2,4,6−トリオン、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)が挙げられる。
化合物(Z1)のうち1分子に2つのアミノ基を有する化合物の具体例としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン等の、前記した低分子ジオールのアルコール性水酸基がアミノ基に置換されたものである低分子ジアミン類;ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンジアミン等のポリエーテルジアミン類;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の脂環式ジアミン類;m−キシレンジアミン、α−(m/pアミノフェニル)エチルアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、ジメチルチオトルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン等の芳香族ジアミン類;ヒドラジン;前記のポリエステルポリオールに用いられる多価カルボン酸において例示したジカルボン酸とヒドラジンとの化合物である、ジカルボン酸ジヒドラジド化合物が挙げられる。
化合物(Z1)のうち1分子に3つ以上のアミノ基を有する化合物としては、例えば、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等の脂肪族アミン等が挙げられる。
化合物(Z1)として、単独の化合物を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
化合物(Z1)の分子量は150〜30000が好ましく、600〜10000がより好ましく、800〜5000がさらに好ましい。この分子量は、高いほど硬化膜の硬度が向上し、低いほど硬化膜の外観が良好なものとなる。ここで分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定した標準ポリスチレン換算よる重量平均分子量(Mw)である。
化合物(Z1)の活性水素基濃度は、0.35〜18.0mmol/gが好ましく、0.90〜12.0mmol/gがより好ましい。この水酸基濃度は、多いほど硬化膜の硬度が高くなり、低いほど組成物(A1)中の化合物(Z1)の溶解性が良好になる傾向がある。
組成物(A1)中の化合物(Z1)の含有量は、重合体(X1)、化合物(Y1)、化合物(Z1)の合計質量中、3〜60質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましく、10〜45質量%がさらに好ましい。この含有量は、多いほど硬化膜の耐擦傷性及び硬度が高くなり、少ないほど硬化膜の滑水性が高くなる傾向がある。
<1分子に唯一のブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する化合物>
組成物(A1)には、1分子に唯一のブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する化合物を有していてもよい。前記1分子に唯一のブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、2−イソシアナトプロパン、2−イソシアナト−2−メチルプロパン、イソシアナトシクロヘキサン、1−イソシアナト−4−イソプロペニル−1−メチル−シクロヘキサン、4−(1−イソシアナト−1−メチルエチル)−1−メチル−1−シクロヘキセン、1,3−ジメチル−5−イソシアナトアダマンタン又は1−(1−イソシアナト−1−メチルエチル)−3−イソプロペニルベンゼン等が挙げられる。
組成物(A1)中の1分子に唯一のブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する化合物の含有量は、8質量%未満が好ましく、4質量%未満が好ましく、2質量%未満が特に好ましい。
<1分子に唯一の活性水素基を有する化合物>
組成物(A1)には、1分子に唯一の活性水素基を有する化合物を有していてもよい。
前記1分子に唯一のブロック化されていても活性水素基を有する化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ノナノール、デカノール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セタノール、パルミトレイルアルコール、ヘプタデカノール、ステアリルアルコール(異性体含む)等のアルコール類や1官能チオール、モノアミン類が挙げられる。
組成物(A1)中の1分子に唯一のブロック化されていてもよい活性水素基を有する化合物の含有量は、8質量%未満が好ましく、4質量%未満が好ましく、2質量%未満が特に好ましい。
<無機微粒子>
組成物(A1)にはシリカ微粒子等の無機微粒子を含んでいてもよい。無機微粒子は硬化膜の耐擦傷性の向上に寄与する。無機微粒子は、耐擦傷性がより向上するので、重合体(X1)若しくは化合物(Z1)の活性水素基又は化合物(Y1)のイソシアネート基と反応してウレタン結合等の結合を形成できる官能基を表面に有することが好ましい。このような官能基としては、例えば、メルカプト基、イソシアネート基、エポキシ基、水酸基、アミノ基及びカルバモイル基が挙げられる。活性水素基又はイソシアネート基との反応性が高いことから、メルカプト基、イソシアネート基及びエポキシ基が好ましい。
上記の官能基を導入する無機微粒子としては、導入しやすさの点からシリカ微粒子が好ましい。シリカ微粒子の表面に上記の官能基を導入する方法としては、例えば、シリカ微粒子の表面のシラノール基と、所望の官能基を有するシランカップリング剤とを反応させて処理する方法が挙げられる。
無機微粒子は分散液で配合するのが好適である。市販されているシリカ微粒子の分散液の具体例としては、例えば、CIKナノテック製のSIRMEK20WT%−M70、SIRMEK50WT%−E86、SIRMIBK15WT%−M96、SIRMIBK30WT%−S39、日産化学工業製のMEK−EC−2130Y、MEK−EC−6150P、MEK−EC−7150Pが挙げられる。無機微粒子は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機微粒子の平均粒子径は、硬化膜の透明性の点から、300nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、50nm以下がさらに好ましい。また、平均粒子径は、擦傷性向上の点から、2nm以上が好ましく、4nm以上がより好ましい。前記平均粒子径は、BET吸着法による比表面積測定値(JIS Z8830に準ずる)から換算した値である。
無機微粒子の好ましい含有量は、1〜60質量%が好ましく、3〜50質量%がより好ましく、5〜45質量%がさらに好ましい。無機微粒子の添加量が多いほど硬化膜の硬度が良好になる。
<硬化促進触媒>
組成物(A1)は、室温又は加熱して硬化させることができるが、必要に応じて硬化促進触媒を含んでいてもよい。硬化促進触媒としては、例えば、トリエチルアミン、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、ジラウリル酸ジ−n−ブチルスズ及び1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンが挙げられる。硬化促進触媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。組成物(A1)中の硬化促進触媒の含有量は、イソシアネート100質量部に対して0.001〜10質量部が好ましく、0.01〜5質量部がより好ましく、0.1〜1質量部がさらに好ましい。
<有機溶剤>
組成物(A1)は必要に応じて有機溶媒を含んでいてもよい。有機溶媒としては、例えば、メタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、ジアセトンアルコール、2−メトキシエタノール(メチルセロソルブ)、2−エトキシエタノール(エチルセロソルブ)、2−ブトキシエタノール(ブチルセロソルブ)及びターシャリーアミルアルコール等のアルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸ブチル及びギ酸ブチル等のカルボン酸エステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン及びシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジエチルエーテル、メトキシトルエン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、1,1−ジメトキシメタン、1,1−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン及びテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ペンタン、キシレン、トルエン及びベンゼン等の脂肪族及び芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<紫外線吸収剤、光安定剤>
組成物(A1)には、硬化膜に耐候性を付与するため、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候性付与剤を含んでいてもよい。耐候性付与剤としては、基材劣化を促進する紫外線波長領域に極大吸収スペクトルを有する紫外線吸収剤が好ましい。
紫外線吸収剤としてはトリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系及び安息香酸フェニル系化合物から誘導された化合物が好ましく、組成物中に多量に含有させることが可能という点からベンゾフェノン系の化合物が好ましく、ポリカーボネート等の基材の黄変を防ぐことができるという点からトリアジン系及びベンゾトリアゾール系の化合物が好ましい。紫外線吸収剤は、最大吸収波長が240〜380nmの範囲のものがさらに好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えば、BASF製の2−[4−(2−ヒドロキシ−3−ドデシロキシ−プロピル)オキシ−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−[ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン]及び2−[4−(2−ヒドロキシ−3−トリデシロキシ−プロピル)オキシ−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−[ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン]の混合物{商品名「チヌビン(登録商標)400」}、2−[4−(オクチル−2−メチルエタノエート)オキシ−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−[ビス(2,4−ジメチルフェニル)]−1,3,5−トリアジン{商品名:「チヌビン479」}、トリス[2,4,6−[2−{4−(オクチル−2−メチルエタノエート)オキシ−2−ヒドロキシフェニル}]−1,3,5−トリアジン]{商品名:「チヌビン777」}、その他、市販品の2−ヒドロキシベンゾフェノン、5−クロロ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニルサリシレート、3−ヒドロキシフェニルベンゾエート、フェニレン−1,3−ジベンゾエート、2−(2−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール及び2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ−ル物が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<組成物(A1)の他の成分>
組成物(A1)は、必要に応じて、酸化防止剤、黄変防止剤、ブルーイング剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、帯電防止剤及び防曇剤等の成分を配合してもよい。
[組成物(A2)]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、主鎖又は側鎖にポリジメチルシロキサン構造及び活性水素基を有する重合体(X1)、並びに1分子に3つ以上のブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する化合物(Y2)を含む熱硬化性樹脂組成物[以下「組成物(A2)」という]である。
<重合体(X1)>
組成物(A2)の成分である主鎖又は側鎖にポリジメチルシロキサン構造及び活性水素基を有する重合体(X1)は、前記組成物(A1)における重合体(X1)と同様のものである。
組成物(A2)中の重合体(X1)の含有量は、重合体(X1)、化合物(Y2)の合計質量中、5〜95質量%が好ましく、8〜90質量%がより好ましく、10〜75質量%がさらに好ましい。この含有量は、多いほど硬化膜の滑水性が向上し、少ないほど硬化膜の耐擦傷性及び硬度が高くなる傾向がある。
<化合物(Y2)>
化合物(Y2)は、1分子に3つ以上のブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する化合物である。組成物(A2)を硬化する際、化合物(Y2)が有するイソシアネート基は、重合体(X1)が有する活性水素基が有する活性水素基と反応して、これらの化合物及び重合体間でウレタン結合等の結合が形成される。これにより硬化膜等の硬化物は架橋密度が増大するので、耐候性及び耐汚染性を向上すると考えられる。化合物(Y2)としては、組成物(A1)の成分である化合物(Y1)のうち、1分子に3つ以上のブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する化合物であるので、詳細な説明は省略する。
組成物(A2)中の化合物(Y2)の含有量は、重合体(X1)、化合物(Y2)の合計質量中、10〜99質量%が好ましく、20〜97質量%がより好ましく、95〜30質量%がさらに好ましい。この含有量は多いほど硬化膜の耐擦傷性及び硬度が向上し、少ないほど硬化膜の滑水性が向上する傾向がある。
<無機微粒子>
組成物(A2)には、組成物(A1)と同様のシリカ微粒子等の無機微粒子を、同様の目的で、同様の含有量で含んでいてもよい。
<組成物(A2)の他の成分>
組成物(A2)には、重合体(X1)及び化合物(Y2)以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、組成物(A1)で説明した化合物(Y2)以外の化合物(Y1)、化合物(Z1)、1分子に唯一のブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する化合物、1分子に唯一の活性水素基を有する化合物、硬化促進触媒、有機溶剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、黄変防止剤、ブルーイング剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、帯電防止剤及び防曇剤が挙げられる。
[組成物(A3)]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、主鎖又は側鎖にポリジメチルシロキサン構造及びブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する重合体(X2)[以下「重合体(X2)」という]、並びに1分子に2つ以上の活性水素基を有する化合物(Z1)を含む熱硬化性樹脂組成物である。
<重合体(X2)>
重合体(X2)は、主鎖又は側鎖にポリジメチルシロキサン構造及びブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する重合体である。つまり、重合体(X2)には、その主鎖又は側鎖のいずれか若しくは両方にポリジメチルシロキサン構造含み、その主鎖又は側鎖のいずれか若しくは両方にイソシアネート基を含むことが必要である。
<ポリジメチルシロキサン構造>
ポリジメチルシロキサン構造は、重合体(X2)を含む組成物(A3)により形成される硬化膜の滑水性に寄与する。またイソシアネート基は、化合物(Z1)の活性水素基と反応して、重合体(X2)が硬化膜に強固に固定され、滑水性の耐久性と耐傷付性に寄与する。
重合体(X2)へのポリジメチルシロキサン構造の導入方法としては、重合体(X1)で説明した、(1)マクロモノマー(M1)を他の単量体と共重合する方法、(2)α,ω位にメルカプト基を有するポリジメチルシロキサンを連鎖移動剤として他の単量体と共重合する方法、(3)ポリジメチルシロキサン構造を有するアゾ化合物と他の単量体を共重合する方法、(4)末端に水酸基を有するポリジメチルシロキサンの当該水酸基をブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する重合体の当該イソシアネート基に付加する方法が挙げられる。
<ブロック化されていてもよいイソシアネート基>
重合体(X2)が有するブロック化されていてもよいイソシアネート基は、適宜脱ブロック化して活性水素基を有する化合物(Z1)の当該活性水素基と反応してウレタン結合等の結合を形成することができる。
重合体(X2)にブロック化されていてもよいイソシアネート基を導入するには、ブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する単量体[以下「単量体(M3)」という]を、ポリジメチルシロキサン構造の導入方法の前記(1)の方法における他の単量体として、マクロモノマー(M1)と共重合する方法が好ましい。ブロック化したイソシアネート基は、イソシアネート基を有する単量体を共重合して、得られた共重合体のイソシアネート基を公知の方法でブロック化してもよい。
<重合体(X2)の製造>
以下、前記(1)の方法において、マクロモノマー(M1)と他の単量体として単量体(M3)との共重合により重合体(X2)を製造する方法について説明する。
<マクロモノマー(M1)>
重合体(X2)の製造に用いるマクロモノマー(M1)は、重合体(X1)で説明したものと同様である。
重合体(X2)中のマクロモノマー(M1)の導入量は、5質量%以上、70質量%未満が好ましく、10質量%以上、60質量%未満がより好ましく、20質量%以上、50質量%未満がさらに好ましい。この導入量は、多いほど硬化膜の滑水性が良好になり、少ないほど未重合のマクロモノマー(M1)を少なくすることができるので、硬化膜の透明性が良好になる傾向がある。
<単量体(M3)>
単量体(M3)は重合体(X2)にイソシアネート基を導入するために用いられる。単量体(M3)としては、例えば、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、2−イソシアナト−1−メチルエチル(メタ)アクリレート、メタクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネートが挙げられる。これらの単量体に含まれるイソシアネート基は、アルコール、フェノール類、ラクタム、オキシム、アセト酢酸アルキルエステル、マロン酸アルキルエステル、フタルイミド、イミダゾール、塩化水素、シアン化水素、亜硫酸水素ナトリウム等のブロック剤でブロック化して用いてもよい。
ブロック剤の具体例を挙げると、アルコールとしてはメタノール、エタノール、ベンジルアルコール等;フェノール類としてはフェノール、クレゾール等;ラクタムとしてはカプロラクタム、ブチロラクタム;オキシムとしてはシクロヘキサノン、オキシム、メチルエチルケトオキシム等である。
重合体(X2)におけるイソシアネート基の導入量は、0.1mmol/g以上4.0mmol/g未満が好ましく、0.2mmol/g以上3.5mmol/g未満がより好ましく、0.3mmol/g以上3.0mmol/g未満がより好ましい。この導入量は、多いほど硬化膜の耐久性が向上し、少ないほど滑水性が向上する傾向がある。なお、ブロック化されたイソシアネートの場合のイソシアネート基の導入量は、脱ブロック化したときの導入量とする。
<その他の単量体>
重合体(X2)の製造において、マクロモノマー(M1)及び単量体(M3)以外に、性能を損なわない範囲でその他単量体を共重合することができる。その他単量体としては、重合体(X1)で説明したマクロモノマー(M1)及び単量体(M2)以外ものと同じものが挙げられるが、中でも、前記重合体(X2)を構成する単量体として、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、ビニルアントラセン及びビニルキシレン等の芳香族ビニル単量体が含まれていると、特に良好な滑水性を示すことができる。芳香族ビニル単量体由来の構成単位は、重合体(X2)に30質量%以上含むことが好ましい[以下「重合体(X2−2)」という]。
<開始剤>
重合体(X2)の製造において、マクロモノマー(M1)と単量体(M3)とを共重合する際には開始剤を用いることが好ましい。開始剤としては、重合体(X1)で説明した開始剤と同じものが挙げられる。
重合体(X2)を製造する際の開始剤の好ましい添加量は、マクロモノマー(M1)及び単量体(M3)及びその他の単量体の総量に対し、0.1質量%以上10質量%未満が好ましく、0.3質量%以上6質量%未満がより好ましく、0.5質量%以上3質量%未満がさらに好ましい。開始剤添加量は、多いほど塗工性が良好になり、低いほど滑水性が良好になる傾向がある。
重合体(X2)は、例えば、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、乳化重合の重合方法により製造できる。開始剤は、重合方法ごとに適切な方法で使用すればよい。
<重合体(X2)の分子量>
重合体(X2)の重量平均分子量は5000〜400000が好ましく、5000〜300000がさらに好ましく、10000〜200000が特に好ましい。重量平均分子量が400000より小さい場合、熱硬化性樹脂組成物の粘度が下がることにより塗工性が良好なものとなり、重量平均分子量が1000より大きい場合、重合体(X2)が硬化膜に強固に固定化されることにより滑水性や耐傷付性が向上する。なお、重合体(X2)の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定した標準ポリスチレン換算よる重量平均分子量(Mw)である。
<重合体(X2)の含有量>
組成物(A3)中の重合体(X2)の含有量は、重合体(X2)、化合物(Z1)の合計質量中、5〜95質量%が好ましく、8〜90質量%がより好ましく、10〜75質量%がさらに好ましい。この含有量は、多いほど硬化膜の滑水性が向上し、少ないほど硬化膜の耐擦傷性及び硬度が高くなる傾向がある。
<化合物(Z1)>
1分子に2つ以上の活性水素基を有する化合物(Z1)は、前記組成物(A1)における化合物(Z1)と同様のものであるので、詳細な説明は省略する。
組成物(A2)中の化合物(Z1)の含有量は、重合体(X1)、化合物(Z1)の合計質量中、3〜60質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましく、10〜45質量%がさらに好ましい。この含有量は多いほど硬化膜の耐擦傷性及び硬度が向上し、少ないほど硬化膜の滑水性が向上する傾向がある。
<無機微粒子>
組成物(A3)には、組成物(A1)と同様のシリカ微粒子等の無機微粒子を、同様の目的で、同様の含有量で含んでいてもよい。
<組成物(A3)の他の成分>
組成物(A3)には、重合体(X2)及び化合物(Z1)以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、組成物(A1)で説明した化合物(Y1)、1分子に唯一のブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する化合物、1分子に唯一の活性水素基を有する化合物、硬化促進触媒、有機溶剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、黄変防止剤、ブルーイング剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、帯電防止剤及び防曇剤が挙げられる。
[組成物(A4)]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、主鎖又は側鎖にポリジメチルシロキサン構造及びブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する重合体(X2)[以下「重合体(X2)」という]、並びに1分子に2つ以上の活性水素基を有する化合物(Z1)と1分子に2つ以上のブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する化合物(Y1)を含む熱硬化性樹脂組成物である。
<重合体(X2)>
組成物(A4)の成分である主鎖又は側鎖にポリジメチルシロキサン構造及び活性水素基を有する重合体(X2)は、前記組成物(A3)における重合体(X2)と同様のものであるので、詳細な説明は省略する。
組成物(A4)中の重合体(X2)の含有量は、重合体(X2)、化合物(Z1)及び化合物(Y1)の合計質量中、5〜95質量%が好ましく、8〜90質量%がより好ましく、10〜75質量%がさらに好ましい。この含有量は、多いほど硬化膜の滑水性が向上し、少ないほど硬化膜の耐擦傷性及び硬度が高くなる傾向がある。
<化合物(Z1)>
1分子に2つ以上の活性水素基を有する化合物(Z1)は、前記組成物(A1)における化合物(Z1)と同様のものであるので、詳細な説明は省略する。
組成物(A4)中の化合物(Z1)の含有量は、重合体(X2)、化合物(Z1)及び化合物(Y1)の合計質量中、5〜95質量%が好ましく、10〜80質量%がより好ましく、15〜50質量%がさらに好ましい。この含有量は多いほど硬化膜の耐擦傷性及び硬度が向上し、少ないほど硬化膜の滑水性が向上する傾向がある。
<化合物(Y1)>
1分子に2つ以上のブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する化合物(Y1)は、前記組成物(A1)における化合物(Y1)と同様のものであるので、詳細な説明は省略する。
組成物(A4)中の化合物(Y1)の含有量は、重合体(X2)、化合物(Z1)及び化合物(Y1)の合計質量中、5〜95質量%が好ましく、10〜80質量%がより好ましく、15〜50質量%がさらに好ましい。この含有量は多いほど硬化膜の耐擦傷性及び硬度が向上し、少ないほど硬化膜の滑水性が向上する傾向がある。
<無機微粒子>
組成物(A4)には、組成物(A1)と同様のシリカ微粒子等の無機微粒子を、同様の目的で、同様の含有量で含んでいてもよい。
<組成物(A4)の他の成分>
組成物(A4)には、重合体(X2)及び化合物(Z1)と(Y1)以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、1分子に唯一のブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する化合物、1分子に唯一の活性水素基を有する化合物、硬化促進触媒、有機溶剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、黄変防止剤、ブルーイング剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、帯電防止剤及び防曇剤が挙げられる。
[硬化物]
本発明の熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物は、例えば、前記熱硬化性樹脂組成物を基材に公知の方法で塗工して得られる。
<基材>
基材としては、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金メッキ鋼板、ステンレス鋼板、錫メッキ鋼板等の金属、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂及びポリアリルジグリコールカーボネート樹脂等が挙げられる。
特に、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂及びポリメタクリルイミド樹脂の表面の耐擦傷性向上に有効である。
<塗工方法>
基材への塗工は、ハケ塗り、グラビアコーター法、ダイコーター法、バーコーター法、スプレーコート法、ディップコート法、スピンコート法及びカーテンコート法等の公知の方法で行うことができる。また、必要であれば熱硬化性樹脂組成物は複数回に亘り塗工することができる。
<硬化方法>
本発明の塗料組成物を硬化させる温度は、基材の耐熱性や熱変形性等を考慮して適宜設定すればよいが、20℃以上200℃以下が好ましく、60℃以上150℃以下がより好ましい。硬化させる時間は、数分から数時間が好ましい。
<硬化膜の厚み>
本発明の熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜の厚さは、1〜50μmが好ましい。本発明の塗料組成物の効果が得られる点から1μm以上が好ましく、クラック低減の点から50μm以下が好ましい。
[積層体]
本発明の積層体は、基材に本発明の熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜からなる層を有する積層体である。本発明の積層体は滑水性及び透明性等に優れているので、自動車用の各種ランプレンズ、グレージング、並びに電磁波波レーダー装置の前面のエンブレム及びフロントグリル等のレドーム部に好適であり、ミリ波レーダーカバーに特に好適に用いることができる。
以下に実施例及び比較例を掲げ、本発明についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。説明中の「部」は「質量部」を表す。なお、測定及び評価は以下の方法で行った。
[測定・評価方法]
<分子量>
本発明で作製した重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により以下の条件で測定した標準ポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)である。
機器:Waters製「e2695」、
カラム:東ソー製「TSKgel Super H3000+H4000+H6000」、
検出器:示差屈折率検出器(RI検出器/内蔵)、
溶媒:テトラヒドロフラン、
温度:40℃、
流速:0.5mL/分、
注入量:10μL、
濃度:0.2質量%、
校正試料:単分散ポリスチレン、
校正法:ポリスチレン換算
<評価用サンプル>
熱硬化性樹脂組成物を、ポリメチルメタクリレート(PMMA)とポリカーボネートの2層積層シート(ShineTech(登録商標)AW−10U、総厚み1.0mm、PMMA層60μm)のPMMA側に硬化後の被膜が7μmになるようにバーコーター(#30)で塗工した。その後、110℃で、30分間加熱処理することにより基材上に熱硬化性樹脂組成物の硬化膜が形成された積層体を作製し、これを評価用サンプルとして以下の評価を行った。
<透明性>
評価用サンプルの透明性は、JIS K7136:2000に準拠してヘイズメーター(SH 7000、日本電色工業製)にて全光線透過率と拡散透過率(ヘイズ値)を測定することにより評価した。透明性の判定基準は次の通りである。
・判定基準
3:ヘイズ値が1%未満。
2:ヘイズ値が1%以上、5%未満。
1:ヘイズ値が5%以上。
<初期滑水性>
評価用サンプルについて、接触角計(DM−500、協和界面科学製)を用いて、滑落法により20μLの水の滑落角を測定することにより初期滑水性を評価した。初期滑水性の判定基準は次の通りである。
・判定基準
5:20μLの水の滑落角が 1°より大きく20°以下。
4:20μLの水の滑落角が20°より大きく50°以下。
3:20μLの水の滑落角が50°より大きく70°以下。
2:20μLの水の滑落角が70°より大きく80°以下。
1:20μLの水の滑落角が80°より大きい。
<湿熱試験後の滑水性>
評価用サンプルを、50℃、湿度99%条件下で24時間静置した後、評価用サンプルを取り出し、評価用サンプルの表面に付着した水滴を取り除いたのち、初期滑水性の評価と同様の方法で20μLの水の滑落角を測定することにより湿熱試験後の滑水性を評価した。湿熱試験後の滑水性の判定基準は次の通りである。
・判定基準
5:20μLの水の滑落角が 1°より大きく20°以下。
4:20μLの水の滑落角が20°より大きく50°以下。
3:20μLの水の滑落角が50°より大きく70°以下。
2:20μLの水の滑落角が70°より大きく80°以下。
1:20μLの水の滑落角が80°より大きい。
<耐擦傷性>
評価用サンプルは、平面摩耗試験機(KASAI製スクラッチ試験機)を使用し、スチールウール#000を評価サンプル上に置き、250g/1.1cmの荷重にてラビングテスターで20往復摩耗した後、ヘイズメーター(SH 7000、日本電色工業製)にて拡散透過率(ヘイズ値)を測定した。測定したヘイズ値から、初期へイズ値を引いた値(増加へイズ値(Δヘイズ値))により耐擦傷性の判定を行った。耐擦傷性の判定基準は次の通りである。
・判定基準
3:増加ヘイズ値が25%未満。
2:増加ヘイズ値が25%以上、40%未満。
1:増加ヘイズ値が40%以上。
<鉛筆硬度>
評価用サンプルの鉛筆硬度は、ISO/DIS 15184に準拠し、鉛筆硬度で評価を行った。試験後、全く傷のつかない硬度のうち、最も高い硬度を硬化膜の鉛筆硬度として採用した。鉛筆硬度の判定基準は次の通りである。
・判定基準
3:F以上。
2:B〜HB。
1:B未満。
[重合体の調製]
本発明の実施例及び比較例で使用した重合体の調製方法について説明する。以下の例において調製した、重合体(1−1)〜(1−4)は重合体(X1)に該当するものであり、重合体(2−1)〜(2−5)は重合体(X2)に該当するものであり、そのうち重合体(2−1)〜(2−4)は重合体(X2−2)に該当するものである。また、以下の例において調製した重合体(3−1)はポリジメチルシロキサン構造を有さない重合体であり、重合体(X1)及び重合体(X2)のいずれにも該当しないものである。
<重合体(1−1)の調製>
攪拌機、滴下ロート、冷却コンデンサー、温度計を備えた300mlの5つ口セパラブルフラスコに、トルエン18g、プロピレングルコールモノメチルエーテルアセテート18.5g、スチレン31.25g、アクリル酸0.75g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート3.0g、片末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(JNC製、サイラプレーンFM−0721)を20.0g、2−エチルヘキサンペルオキシ酸1,1,3,3ーテトラメチルブチル(日油製、パーオクタO)を0.25g投入した。また、滴下ロートへは、トルエン18g、プロピレングルコールモノメチルエーテルアセテート18.5g、スチレン31.25g、アクリル酸0.75g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート3.0g、片末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(JNC製、サイラプレーンFM−0721)を10.0g、2−エチルヘキサンペルオキシ酸1,1,3,3ーテトラメチルブチル(日油製、パーオクタO)を0.25g投入した。次いで、オイルバス中にフラスコをセットし、窒素雰囲気下にて撹拌を開始し、内温が85℃になるまで昇温した。内温が85℃になってから30分後に滴下ロートの原料を2時間かけて滴下し1時間保持した後、2−エチルヘキサンペルオキシ酸1,1,3,3ーテトラメチルブチル(日油製、パーオクタO)を0.1g投入し、この1時間後にさらに2−エチルヘキサンペルオキシ酸1,1,3,3ーテトラメチルブチル(日油製、パーオクタO)を0.1g投入し、5時間反応を行った後に冷却することで重合体(1−1)溶液を調製した。得られた溶液の固形分量及び固形分割合、並びに、重合体(1−1)の重量平均分子量(Mw)及び活性水素基(水酸基)の濃度を表1に示した。
<重合体(1−2)の調製>
攪拌機、滴下ロート、冷却コンデンサー、温度計を備えた300mlの5つ口セパラブルフラスコに、メチルイソブチルケトン36.5g、スチレン28.25g、アクリル酸0.75g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート6.0g、片末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(JNC製、サイラプレーンFM−0721)を20.0g、2−エチルヘキサンペルオキシ酸1,1,3,3ーテトラメチルブチル(日油製、パーオクタO)を0.25g投入した。また、滴下ロートへは、メチルイソブチルケトン36.5g、スチレン28.25g、アクリル酸0.75g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート6.0g、片末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(JNC製、サイラプレーンFM−0721)を10.0g、2−エチルヘキサンペルオキシ酸1,1,3,3ーテトラメチルブチル(日油製、パーオクタO)を0.25g投入した。この他の操作は重合体(1−1)の調製と同様にして重合体(1−2)を調製した。得られた溶液の固形分量及び固形分割合、並びに、重合体(1−2)の重量平均分子量(Mw)及び活性水素基(水酸基)の濃度を表1に示した。
<重合体(1−3)の調製>
攪拌機、滴下ロート、冷却コンデンサー、温度計を備えた300mlの5つ口セパラブルフラスコに、メチルイソブチルケトン36.5g、スチレン28.25g、アクリル酸0.75g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート6.0g、片末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(JNC製、サイラプレーンFM−0711)を20.0g、2−エチルヘキサンペルオキシ酸1,1,3,3ーテトラメチルブチル(日油製、パーオクタO)を0.25g投入した。また、滴下ロートへは、メチルイソブチルケトン36.5g、スチレン28.25g、アクリル酸0.75g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート6.0g、片末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(JNC製、サイラプレーンFM−0711)を10.0g、2−エチルヘキサンペルオキシ酸1,1,3,3ーテトラメチルブチル(日油製、パーオクタO)を0.25g投入した。この他の操作は重合体(1−1)の調製と同様にして重合体(1−3)を調製した。得られた溶液の固形分量及び固形分割合、並びに、重合体(1−3)の重量平均分子量(Mw)及び活性水素基(水酸基)の濃度の濃度を表1に示した。
<重合体(1−4)の調製>
攪拌機、滴下ロート、冷却コンデンサー、温度計を備えた300mlの5つ口セパラブルフラスコに、メチルイソブチルケトン36.5g、スチレン28.25g、アクリル酸0.75g、4−ヒドロキシブチルアクリレート6.0g、片末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(JNC製、サイラプレーンFM−0721)を20.0g、2−エチルヘキサンペルオキシ酸1,1,3,3ーテトラメチルブチル(日油製、パーオクタO)を0.25g投入した。また、滴下ロートへは、メチルイソブチルケトン36.5g、スチレン28.25g、アクリル酸0.75g、4−ヒドロキシブチルアクリレート6.0g、片末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(JNC製、サイラプレーンFM−0721)を10.0g、2−エチルヘキサンペルオキシ酸1,1,3,3ーテトラメチルブチル(日油製、パーオクタO)を0.25g投入した。この他の操作は重合体(1−1)の調製と同様にして重合体(1−4)を調製した。得られた溶液の固形分量及び固形分割合、並びに、重合体(1−4)の重量平均分子量(Mw)及び活性水素基(水酸基)の濃度の濃度を表1に示した。
<重合体(2−1)の調製>
攪拌機、滴下ロート、冷却コンデンサー、温度計を備えた300mlの5つ口セパラブルフラスコに、トルエン36.5g、スチレン29.0g、片末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(JNC製、サイラプレーンFM−0721)を20.0g、2−(アクリロイルオキシ)エチルイソシアナート(昭和電工製、カレンズ(登録商標)AOI)を6.0g、2−エチルヘキサンペルオキシ酸1,1,3,3ーテトラメチルブチル(日油製、パーオクタO)を0.25g投入した。また、滴下ロートへは、トルエン36.5g、スチレン29.0g、片末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(JNC製、サイラプレーンFM−0721)を10.0g、2−(アクリロイルオキシ)エチルイソシアナート(昭和電工製、カレンズAOI)を6.0g、2−エチルヘキサンペルオキシ酸1,1,3,3ーテトラメチルブチル(日油製、パーオクタO)を0.25g投入した。この他の操作は重合体(1−1)の調製と同様にして重合体(2−1)を調製した。得られた溶液の固形分量及び固形分割合、並びに、重合体(2−1)の重量平均分子量(Mw)及びイソシアネート基の濃度を表1に示した。
<重合体(2−2)の調製>
攪拌機、滴下ロート、冷却コンデンサー、温度計を備えた300mlの5つ口セパラブルフラスコに、トルエン37.0g、スチレン29.0g、片末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(JNC製、サイラプレーンFM−0721)を20.0g、2−(アクリロイルオキシ)エチルイソシアナート(昭和電工製、カレンズAOI)を6.0g、2−エチルヘキサンペルオキシ酸1,1,3,3ーテトラメチルブチル(日油製、パーオクタO)を0.5g投入した。また、滴下ロートへは、トルエン37.0g、スチレン29.0g、片末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(JNC製、サイラプレーンFM−0721)を10.0g、2−(アクリロイルオキシ)エチルイソシアナート(昭和電工製、カレンズAOI)を6.0g、2−エチルヘキサンペルオキシ酸1,1,3,3ーテトラメチルブチル(日油製、パーオクタO)を0.5g投入した。この他の操作は重合体(1−1)の調製と同様にして重合体(2−2)を調製した。得られた溶液の固形分量及び固形分割合、並びに、重合体(2−2)の重量平均分子量(Mw)及びイソシアネート基の濃度を表1に示した。
<重合体(2−3)の調製>
攪拌機、滴下ロート、冷却コンデンサー、温度計を備えた300mlの5つ口セパラブルフラスコに、トルエン36.5g、スチレン42.0g、片末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(JNC製、サイラプレーンFM−0721)を7.0g、2−(アクリロイルオキシ)エチルイソシアナート(昭和電工製、カレンズAOI)を6.0g、2−エチルヘキサンペルオキシ酸1,1,3,3ーテトラメチルブチル(日油製、パーオクタO)を0.25g投入した。また、滴下ロートへは、トルエン36.5g、スチレン42.0g、片末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(JNC製、サイラプレーンFM−0721)を3.0g、2−(アクリロイルオキシ)エチルイソシアナート(昭和電工製、カレンズAOI)を6.0g、2−エチルヘキサンペルオキシ酸1,1,3,3ーテトラメチルブチル(日油製、パーオクタO)を0.25g投入した。この他の操作は重合体(1−1)の調製と同様にして重合体(2−3)を調製した。得られた溶液の固形分量及び固形分割合、並びに、重合体(2−3)の重量平均分子量(Mw)及びイソシアネート基の濃度を表1に示した。
<重合体(2−4)の調製>
攪拌機、滴下ロート、冷却コンデンサー、温度計を備えた300mlの5つ口セパラブルフラスコに、トルエン36.5g、スチレン34.0g、片末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(JNC製、サイラプレーンFM−0721)を20.0g、2−(アクリロイルオキシ)エチルイソシアナート(昭和電工製、カレンズAOI)を1.0g、2−エチルヘキサンペルオキシ酸1,1,3,3ーテトラメチルブチル(日油製、パーオクタO)を0.25g投入した。また、滴下ロートへは、トルエン36.5g、スチレン34.0g、片末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(JNC製、サイラプレーンFM−0721)を10.0g、2−(アクリロイルオキシ)エチルイソシアナート(昭和電工製、カレンズAOI)を1.0g、2−エチルヘキサンペルオキシ酸1,1,3,3ーテトラメチルブチル(日油製、パーオクタO)を0.25g投入した。この他の操作は重合体(1−1)の調製と同様にして重合体(2−4)を調製した。得られた溶液の固形分量及び固形分割合、並びに、重合体(2−4)の重量平均分子量(Mw)及びイソシアネート基の濃度を表1に示した。
<重合体(2−5)の調製>
攪拌機、滴下ロート、冷却コンデンサー、温度計を備えた300mlの5つ口セパラブルフラスコに、トルエン36.5g、イソボルニルメタクリレート29.0g、片末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(JNC製、サイラプレーンFM−0721)を20.0g、2−(アクリロイルオキシ)エチルイソシアナート(昭和電工製、カレンズAOI)を6.0g、2−エチルヘキサンペルオキシ酸1,1,3,3ーテトラメチルブチル(日油製、パーオクタO)を0.25g投入した。また、滴下ロートへは、トルエン36.5g、イソボルニルメタクリレート29.0g、片末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(JNC製、サイラプレーンFM−0721)を10.0g、2−(アクリロイルオキシ)エチルイソシアナート(昭和電工製、カレンズAOI)を6.0g、2−エチルヘキサンペルオキシ酸1,1,3,3ーテトラメチルブチル(日油製、パーオクタO)を0.25g投入した。この他の操作は重合体(1−1)の調製と同様にして重合体(2−5)を調製した。得られた溶液の固形分量及び固形分割合、並びに、重合体(2−5)の重量平均分子量(Mw)及びイソシアネート基の濃度を表1に示した。
<重合体(3−1)の調製>
攪拌機、滴下ロート、冷却コンデンサー、温度計を備えた300mlの5つ口セパラブルフラスコに、トルエン36.5g、スチレン49.0g、2−(アクリロイルオキシ)エチルイソシアナート(昭和電工製、カレンズAOI)を6.0g、2−エチルヘキサンペルオキシ酸1,1,3,3ーテトラメチルブチル(日油製、パーオクタO)を0.25g投入した。また、滴下ロートへは、トルエン36.5g、スチレン39.0g、2−(アクリロイルオキシ)エチルイソシアナート(昭和電工製、カレンズAOI)を6.0g、2−エチルヘキサンペルオキシ酸1,1,3,3ーテトラメチルブチル(日油製、パーオクタO)を0.25g投入した。この他の操作は重合体(1−1)の調製と同様にして重合体(3−1)を調製した。得られた溶液の固形分量及び固形分割合、並びに、重合体(3−1)の重量平均分子量(Mw)及びイソシアネート基の濃度を表1に示した。
Figure 2021161233
表1中の略称は次の通りである。
FM−0721:JNC製サイラプレーンFM−0721(カタログ掲載数平均分子量5000)
FM−0711:JNC製サイラプレーンFM−0711(カタログ掲載数平均分子量1000)
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタアクリレート
4−HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート
AOI:昭和電工製カレンズAOI(2−イソシアナトエチルアクリレート)
St:スチレン
IBXMA:イソボルニルメタアクリレート
AA:アクリル酸
パーオクタO:日油製パーオクタO(2−エチルヘキサンペルオキシ酸1,1,3,3ーテトラメチルブチル)
[無機微粒子の調製]
<メルカプト基を有する無機微粒子(C−1)の調製>
攪拌機を備えたフラスコに東京化成工業製の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン12g、蒸留水6g、テトラヒドロフラン21gを仕込み、30℃で3時間撹拌して加水分解反応を行なった。次いで、この反応液(シラノール溶液)を滴下ロートに移した。
続いて、撹拌機、冷却コンデンサー、温度計を備えた2000mlの5つ口セパラブルフラスコに前記滴下ロートを取り付け、フラスコ内に日産化学工業製のメチルイソブチルケトン分散シリカゾル(商品名:「MIBK−ST」、溶媒:メチルイソブチルケトン、固形分濃度30質量%、平均粒子径:15nm)1000gを仕込み、70℃に昇温した。前記滴下ロート内の反応液(シラノール溶液)を2時間かけて滴下し、滴下終了後さらに1時間反応を行なうことでメルカプト基を有する無機微粒子(C−1)の分散液を得た。
[実施例1]
重合体(X1)として重合体(1−1)を158.6g(固形分92.0g)、1分子に3つ以上のブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する化合物(Y2)としてデュラネート22A−75P(旭化成製)を10.67g(固形分8.0g)g、触媒としてジブチルスズジラウレートを0.05g、有機溶剤としてシクロヘキサノンとメチルイソブチルケトンを質量比60:40で混合したものを330.9g配合し、固形分濃度20質量%の熱硬化性樹脂組成物を調製した。得られた熱硬化性樹脂組成物を用いて前記の方法で評価用サンプル(積層体)を作製し、評価した結果を表2に示した。
[実施例2〜14、比較例1〜3]
表2〜4に記載する固形分の質量比になるように各原料を配合した以外は、実施例1と同様に熱硬化性樹脂組成物を調製し、評価した。評価結果を表2〜表4に示した。
Figure 2021161233
表2中の略称等は次の通りである。
官能基濃度:水酸基又はイソシアネート基の濃度
配合量:溶剤を含む場合は固形分量
22A−75P:旭化成製デュラネート22A−75P
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
DBTDL:ジブチルスズジラウレート
総合評価:透明性、初期滑水性、湿熱試験後の滑水性、鉛筆硬度及び耐擦傷性の評価の値の合計値
Figure 2021161233
表3中の略称等は次の通りである。
官能基濃度:水酸基又はイソシアネート基の濃度
配合量:溶剤を含む場合は固形分量
C−1090:クラレ製のクラレポリオールC−1090
HPE 1170B:BASF製Basonol HPE 1170B
DBTDL:ジブチルスズジラウレート
総合評価:透明性、初期滑水性、湿熱試験後の滑水性、鉛筆硬度及び耐擦傷性の評価の値の合計値
Figure 2021161233
表4中の略称等は次の通りである。
官能基濃度:水酸基又はイソシアネート基の濃度
配合量:溶剤を含む場合は固形分量
C−1090:クラレ製のクラレポリオールC−1090
HPE 1170B:BASF製Basonol HPE 1170B
22A−75P:旭化成製デュラネート22A−75P
DBTDL:ジブチルスズジラウレート
Tinubin400:BASF製Tinuvin400
Tinubin123:BASF製Tinuvin123
表2〜4の評価結果から、実施例の熱硬化性樹脂組成物から得られた硬化膜は透明性に優れており、初期滑水性及び湿熱試験後の滑水性のいずれも良好であった。
これに対して比較例1の熱硬化性樹脂組成物から得られた硬化膜は、初期の滑水性は良好であったが、湿熱試験後の滑水性は低位であった。比較例2の熱硬化性樹脂組成物から得られた硬化膜は、ポリジメチルシロキサン構造を含まない重合体を用いているため滑水性を示さなかった。比較例3の熱硬化性樹脂組成物は重合体(X2)を含まないため、この組成物の硬化膜は滑水性を示さなかった。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、滑水性及び透明性等に優れているため、自動車用の各種ランプレンズ、グレージング、並びに電磁波波レーダー装置の前面のエンブレム及びフロントグリル等のレドーム部の表面のハードコートに好適であり、ミリ波レーダーカバーのハードコートに特に好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. 主鎖又は側鎖にポリジメチルシロキサン構造及び活性水素基を有する重合体(X1)、1分子に2つ以上のブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する化合物(Y1)、並びに1分子に2つ以上の活性水素基を有する化合物(Z1)を含む熱硬化性樹脂組成物。
  2. 主鎖又は側鎖にポリジメチルシロキサン構造及び活性水素基を有する重合体(X1)、並びに1分子に3つ以上のブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する化合物(Y2)を含む熱硬化性樹脂組成物。
  3. 主鎖又は側鎖にポリジメチルシロキサン構造及びブロック化されていてもよいイソシアネート基を有し、さらに主鎖に芳香族ビニル単量体由来の構成単位を30質量%以上含む重合体(X2−2)。
  4. 主鎖又は側鎖にポリジメチルシロキサン構造及びブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する重合体(X2)、並びに1分子に2つ以上の活性水素基を有する化合物(Z1)を含む熱硬化性樹脂組成物。
  5. さらに、1分子に2つ以上のブロック化されていてもよいイソシアネート基を有する化合物(Y1)を含む請求項4に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  6. さらに無機微粒子を含む請求項1、2、4及び5のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  7. 前記無機微粒子が、メルカプト基、水酸基、又はイソシアネート基のいずれかの官能基を有する化合物で表面修飾されている無機微粒子である請求項6に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  8. 請求項1、2、4乃至7のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
  9. 基材に請求項8の硬化物からなる層を有する積層体。
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