JP2021161093A - イオン液体を用いたbpa製剤およびbpaを構成物質とするイオン液体 - Google Patents

イオン液体を用いたbpa製剤およびbpaを構成物質とするイオン液体 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、BNCT療法に好適な高濃度のp−ボロノフェニルアラニンを含有する水溶性製剤を提供することを目的とする。【解決手段】p−ボロノフェニルアラニンを有効成分とし、コリン塩をカチオンとし、アミノ酸またはクエン酸のアニオンから構成されるイオン液体を含むことを特徴とする液状医薬組成物を提供する。【選択図】図11

Description

本発明は、イオン液体とBPAを含む放射線治療に用いる増強剤、BPAの体内分布をPETで画像化するための標識化剤、高濃度のBPAを溶解した医薬品原料に関する。
癌のホウ素中性子捕捉療法(以下「BNCT」ともいう。)は、あらかじめ腫瘍組織に取り込ませた10B核と生体にほぼ影響を及ばさない熱中性子線の捕捉反応によって生じるα粒子および7Li粒子によって腫瘍細胞を障害する放射線療法である。BNCTに用いる薬剤としてp−ボロノフェニルアラニン(BPA)が知られており、既に臨床でも用いられている。
しかしながら、BPAは、生理的pHでの溶解性が極めて乏しく、実用上の大きな問題となっている。このため、BPAの溶解を促進させるために、BPAのフルクトース錯体を形成させる方法(特許文献1)、BPAにアルカリ溶液中で、単糖またはポリオールを添加し、イオン交換樹脂により無機塩を除去する方法(特許文献2)という方法、ソルビトールを添加する方法(特許文献3)が知られている。
しかしながら、特許文献1記載の方法はBPAフルクトース錯体の水溶性は不十分であり、例えば体重60kgの患者用にBPAの30g相当量を室温でフルクトースとの錯体水溶液として調製すると、溶液量は少なくとも1.2L程度と、極めて大きな液量を必要とし実用上問題がある。また、フルクトース錯体法と比較して、特許文献3記載のソルビトール法では溶解度はあまり向上せず、特許文献2記載のポリオールを添加し、イオン交換樹脂により無機塩を除去する方法もフルクトース錯体法の4倍程度しか溶解度が向上していない。また、特許文献2の方法は操作が煩雑で有り実用に適しておらず、特許文献1の方法は細胞毒性の点で問題があった。
2000年以降、イオン液体は触媒、電気化学等の分野で用いられるようになり、製剤分野では経皮吸収促進等の目的で用いられている(非特許文献1)。また、バイオマス系の研究では、コリンーアミノ酸イオン液体が、稲わらからリグニンを選択的に可溶化することが知られている(非特許文献2)。また、難溶性薬物の溶解法として、メグルミンと脂肪酸が構成するイオン液体を用いた難溶性薬物の溶解方法が知られている(特許文献4)。
しかしながら、イオン液体とホウ素製剤の関係は全く知られていない。
田原義朗、後藤雅弘、Drug Delivery System(ドラッグ デリバリー システム)33巻、4号(2018年)303〜310頁 Lorenzo Contrani(ロレンゾ コントラニ)Biophysical Reviews(バイオフィジカル レビュー)10巻、3号(2018年)873−880頁
米国特許第5492900号 米国特許第6169076号 特開2013−173804号 特許第5468221号
本発明は、BNCT療法に好適な高濃度のp−ボロノフェニルアラニンを含有する水溶性製剤を提供することを目的とする。
本発明は、
〔1〕p−ボロノフェニルアラニンを有効成分とし、イオン液体を含むことを特徴とする液状医薬組成物、
〔2〕イオン液体がコリン塩のイオン液体であることを特徴とする〔1〕記載の液状医薬組成物、
〔3〕コリン塩のイオン液体が、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシドのカチオンと、アミノ酸またはクエン酸のアニオンから構成されることを特徴とする〔1〕または〔2〕記載の液状医薬組成物、
〔4〕アミノ酸が、グリシン、セリン、プロリンまたはフェニルアラニンであることを特徴とする〔1〕から〔3〕のいずれかひとつに記載の医薬組成物、
〔5〕p−ボロノフェニルアラニンをホウ素濃度として5000〜30000ppm含むことを特徴とする〔1〕から〔4〕のいずれかひとつに記載の液状医薬組成物、
〔6〕〔1〕から〔5〕のいずれかひとつに記載の液状医薬組成物を有効成分として含むことを特徴とする腫瘍の放射線治療に用いる増強剤、
〔7〕〔6〕記載の放射線治療が、中性子捕捉療法であることを特徴とする増強剤、
〔8〕PETによる画像診断に用いることを特徴とする〔1〕から〔5〕のいずれかひとつに記載の液状医薬組成物。
図1は、コリン−セリンイオン液体のH−NMRの結果である。 図2は、コリン−セリンイオン液体のFT−IRの結果である。 図3は、コリン−プロリンイオン液体のH−NMRの結果である。 図4は、コリン−プロリンイオン液体のFT−IRの結果である。 図5は、コリン−グリシンイオン液体のH−NMRの結果である。 図6は、コリン−グリシンイオン液体のFT−IRの結果である。 図7は、コリン−フェニルアラニンイオン液体のH−NMRの結果である。 図8は、コリン−フェニルアラニンンイオン液体のFT−IRの結果である。 図9は、コリン−クエン酸イオン液体のH−NMRの結果である。 図10は、コリン−クエン酸イオン液体のFT−IRの結果である。 図11は、イオン液体に溶解したBPAとフラクトースを用いて溶解したBPAに対する細胞生存率を示したものである。
本発明に使用するp−ボロノフェニルアラニンは、フェニルアラニンをホウ素(10B)で標識したボロノフェニルアラニン(BPA)であればどのようなものでも良いが、BPAの特性を利用したボロノフェニルアラニンの誘導体も含まれる。ボロノフェニルアラニンの誘導体としては、BPAの体内分布をPETで画像化するために、BPAを放射性核種18Fで標識した化合物フルオロボロノフェニルアラニン(FBPA)等が含まれる。
p−ボロノフェニルアラニンの光学異性体としては、L−体,D−体,L−体およびD−体のジアステレオマーのどのようなものでも良いが、とりわけL−体が好ましい。
p−ボロノフェニルアラニンを有効成分とする液状医薬組成物とは、p−ボロノフェニルアラニンの腫瘍細胞への集積性を利用し、ホウ素(10B)と熱中性子との核反応で生じる高LET放射線のα粒子(ヘリウムイオン)を用いて癌細胞のみを破壊する効果を主薬効とする液体状の医薬組成物を示す。
イオン液体とは、幅広い温度範囲で液体として存在する塩であり、イオンのみからなる液体を示す。イオン液体のカチオンとしては、アンモニウム、イミダゾリウム、コリン、スルホニウム、ピラゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ホスホニウムが挙げられ、そのカチオンに組み合わされるアニオンとしては、CHCOO,CFCOO,NO3−,Br,Cl等が挙げられる。また、カチオンとしてメグルミンを用いる場合は、好適なアニオンとしてオレイン酸、デカン酸、イソステアリン酸等の脂肪酸を用いることができる。
本発明の場合、イオン液体の中でもカチオンが安全性の高いコリン塩のイオン液体であることが好ましい。本発明に用いるイオン液体は、コリン塩のイオン液体であればアニオンは前述のアニオンを使用することができるが、好ましくはアニオンとしてアミノ酸を用いるコリン−アミノ酸イオン液体、コリン−クエン酸イオン液体を用いる。
コリン−アミノ酸イオン液体のカチオンであるコリンとしては、N、N,N−トリメチルエタノールアンモニウム、2−ヒドロキシ−N、N,N−トリメチルエタン−1−アンモニウム、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド が挙げられ、アニオンとして用いるアミノ酸としては、グリシン、フェニルグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、シスチン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、リシン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミンまたはオルニチン及びこれらの誘導体が挙げられるが、セリン、プロリン、フェニルアラニン、グリシンを用いることが好ましい。
コリンークエン酸イオン液体のカチオンであるコリンとしては、N、N,N−トリメチルエタノールアンモニウム、2−ヒドロキシ−N、N,N−トリメチルエタン−1−アンモニウム、等が挙げられ、アニオンとしてはクエン酸およびその誘導体が用いられる。
本発明における液状医薬組成物とは、難溶性のp−ボロノフェニルアラニンが溶解している状態の液体状組成物であって、前記医薬用途に用いられる組成物を示し、p−ボロノフェニルアラニンを常温で5000ppm以上、5000〜30000ppm、好ましくは10000〜30000ppm、とりわけ好ましくは12000〜20000ppm含むことを特徴とする。
液状組成物に含まれるイオン液体は、液体の構成の全てがイオン液体であっても良く、必要により水に分散させても良い。
本発明の液状組成物のpHは、生体への投与を考慮して、中性付近のpHであることが好ましい。より具体的には、6.5から7.5の範囲であり、特に好ましくは7.4付近である。pHの調節には必要に応じて、当該技術分野で用いられる適当なpH調節剤(塩酸、炭酸水素ナトリウムなど)、緩衝剤などを使用してもよい。
本発明の液状組成物の浸透圧比は特に限定されないが、生理食塩水対比で、1から2までの範囲内にあることが好ましい。より好ましくは、1.1から1.4の範囲である。この範囲にある場合には、注射剤の場合、痛みの軽減や投与時間の短縮が可能になる。
本発明の液状組成物中には、その生体内外での安定性を高めるため、必要により生体に含まれるナトリウム、マグネシウム等各種金属イオンが含まれていてもよい。ナトリウムイオンの場合その濃度は、細胞内液と細胞外液の電解質バランスが大きく崩れないように体液のナトリウムイオン濃度範囲に近い数値範囲であることが好ましい。
本発明の液状組成物には、必要に応じて、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、酢酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液等の緩衝剤を加えてもよい。これらの緩衝剤は、製剤の安定化や刺激性の低下に有用な場合がある。
さらに本発明の組成物には、液体製剤の添加物として医薬医薬品機器等法で許容される添加物を、必要に応じて含有させることができる。そのような添加物として、通常、液体、特に水性の組成物に用いられる添加剤、例えば、塩化ベンザルコニウム、ソルビン酸カリウム、塩酸クロロヘキシジン等の保存剤、エデト酸Na等の安定化剤、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の増粘剤、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、ショ糖、ブドウ糖等の等張化剤、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の界面活性剤、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン等の等張剤、塩酸、水酸化ナトリウム等のpH調整剤が挙げられる。
本発明の液状組成物がBNCTに用いられる医薬品である場合、p−ボロノフェニルアラニンを有効成分とし、イオン液体を含むことを特徴とする液状医薬組成物の投与方法は、腫瘍の近傍にp−ボロノフェニルアラニンを送達させる方法であればどのような物でも良いが、好ましくは静脈投与、腹腔内投与、経皮投与を用いる。また、本発明の液状組成物がPETに用いられる診断用医薬品である場合、投与方法として静脈投与が用いられる。
静脈投与、腹腔内投与等体内に直接注入する投与方法の場合は、イオン液体に溶解したp−ボロノフェニルアラニンに対して、必要により例えば、ポリソルベート80,ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60,ポリエチレングリコール,カルボキシメチルセルロース,アルギン酸ナトリウム等分散剤、メチルパラベン,プロピルパラベン,ベンジルアルコール,クロロブタノール,フェノール等の保存剤、例えば、塩化ナトリウム,グリセリン,D−マンニトール、グルコース等の等張化剤を加え、例えば、注射用蒸留水,生理的食塩水,リンゲル液等の水溶剤で希釈化し、p−ボロノフェニルアラニンを有効成分とし、イオン液体を含むことを特徴とする静脈投与、腹腔内投与に用いる液状医薬組成物を製造する。
また、経皮投与により腫瘍の近傍にp−ボロノフェニルアラニンを送達する場合は、必要により例えば、ポリソルベート80,ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60,ポリエチレングリコール,カルボキシメチルセルロース,アルギン酸ナトリウム等分散剤、メチルパラベン,プロピルパラベン,ベンジルアルコール,クロロブタノール,フェノール等の保存剤、例えば、塩化ナトリウム,グリセリン,D−マンニトール、グルコース等の等張化剤を加え、例えば、オリーブ油,ゴマ油,綿実油,トウモロコシ油等の植物油、プロピレングリコール等の油性溶剤に溶解、懸濁あるいは乳化することにより、経皮投与に用いるp−ボロノフェニルアラニンを有効成分とし、イオン液体を含むことを特徴とする液状医薬組成物を製造する。
なお、上記医薬品組成物の製造工程においては、所望により例えば、サリチル酸ナトリウム,酢酸ナトリウム等の溶解補助剤、例えば、ヒト血清アルブミン等の安定剤、例えば、ベンジルアルコール等の無痛化剤等の添加物、更に医薬品医療機器等法において認められているものであれば必要に応じて抗酸化剤、着色剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、防腐剤、ゲル化剤を用いても良い。
また、p−ボロノフェニルアラニンを有効成分とし、イオン液体を含むことを特徴とする液状医薬組成物は、必要により治療の際に例えば、注射用蒸留水,生理的食塩水,リンゲル液等の水溶剤または医薬品用のローション、クリームで希釈しても良い。
本発明のp−ボロノフェニルアラニンを有効成分とし、イオン液体を含むことを特徴とする液状医薬組成物は、以下の製造方法で製造することができる。
1.コリン−アニオンイオン液体の合成法
コリン−アニオンイオン液体の合成は、コウドリーらの方法〔Chowdhry et al.(コウドリーら)、Molecular Pharmaceutics(モレキュラー ファーマセウティックス)、15巻、6号(2018年)2484〜2488頁〕等を参考にして以下のように行った。
アニオンに関しては、アニオンとして使用される化合物を水に溶解し、0.1mol〜0.01mol、好ましくは0.05molの水溶液を調整する。
アニオンとして使用する化合物としては、CHCOO−,CFCOO−,NO−,Br−,Cl−等のアニオンの発生源となる化合物であればどのようなものでも良いが、本発明の場合はアミノ酸またはクエン酸およびこれらの誘導体を用いることができる。アミノ酸としてはグリシン、フェニルグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、シスチン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、リシン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミンまたはオルニチン及びこれらの誘導体が挙げられるが、セリン、プロリン、フェニルアラニン、グリシンを用いることが好ましい。
上記アニオンと等量のコリンの水溶液をアニオン水溶液に加え、15℃から25℃、好ましくは室温において、12〜36時間、好ましくは24時間撹拌する。更にオイルバス等を用い100〜140℃、好ましくは120℃の条件下でエバポレーター等により水分を除去する。得られた液体を徐々に冷却することにより目的とするイオン液体を得ることができる。
カチオンとして用いるコリンとしては、N、N,N−トリメチルエタノールアンモニウム、2−ヒドロキシ−N、N,N−トリメチルエタンー1−アンモニウム、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド が挙げられる。コリンは固体を水で溶解しても良いし、市販されているコリン水溶液〔2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(47〜50%水溶液)〕を用いても良い。
2.p−ボロノフェニルアラニンを有効成分とし、イオン液体を含むことを特徴とする液状医薬組成物の製造法
室温にて、p−ボロノフェニルアラニンを、必要により純水を加えた前記コリンアニオンイオン液体に添加して撹拌、溶解する。p−ボロノフェニルアラニンの終濃度は、5000〜30000ppmに調整する。必要により、前記医薬品製剤添加物を加え、p−ボロノフェニルアラニンを有効成分とし、イオン液体を含むことを特徴とする液状医薬組成物を製造する。
本発明に使用するp−ボロノフェニルアラニンは、フェニルアラニンをホウ素(10B)で標識したボロノフェニルアラニン(BPA)であればどのようなものでも良く、市販品を用いても良い。
p−ボロノフェニルアラニンを合成する場合は、特開平11−255773号、特開2000−212185号、米国特許5157149号記載の公知の方法を参考にして合成しても良い。
p−ボロノフェニルアラニンの光学異性体としては、L−体,D−体,L―体およびD−体のジアステレオマーのどのようなものでも良いが、とりわけL―体が好ましい。添加する純水としては、例えば市販のMiLLi−QWater(商品名)市販の純水を用いても良い。
以下に、p−ボロノフェニルアラニンを有効成分とし、イオン液体を含むことを特徴とする液状医薬組成の処方例を示す。
処方例1
BPAを含むイオン液体 36μL
tween80 15μL
エタノール 60μL
PBS 469μL
PBSに溶解させたクエン酸 20μL(1g/25mL)
実施例1
1−1 コリン−セリンイオン液体
アニオンとして市販の医薬品用高純度セリン(東京化成工業製)を、終濃度0.05mol濃度になるように純水(商品名:,MiLLi−QWater、メルクミリポア社製)に溶解した。カチオンとしてこれと等量になるようにコリン水溶液(2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、47〜50%水溶物:東京化成工業製)12.0mlを加え、室温で24時間撹拌した。撹拌終了後、混合溶液をオイルバスに移し、120℃の温度に加温し、エバポレーターで水分を除去した後、室温まで徐々に冷却した。
コリン−セリンイオン液体の生成を化学的に確認するために、サンプルをHNMR(図1)およびFT−IR(図2)で確認した。
HNMRの測定結果は文献値と一致し、FT−IRでは1555〜1593cm−1付近に現れるカルボキシレートの非対称性伸縮を確認したため、コリン-セリンイオン液体の生成が確認された。
1−2 p−ボロノフェニルアラニン含有コリン−セリンイオン液体組成物
コリン−セリンイオン液体338.1mgに純水(商品名:MiLLi−Q Water、メルクミリポア社製)100μLを加え溶解液を作成した。
p−ボロノフェニルアラニンを前記溶解液に対して添加し撹拌した。溶解しないp−ボロノフェニルアラニンを除去し、ボロン濃度の測定により、溶解しているp−ボロノフェニルアラニンの濃度を測定したところ、17672.245ppmであった。
実施例2
2−1 コリン−プロリンイオン液体
アニオンとして市販の医薬品用高純度プロリン(東京化成工業製)を、終濃度0.05mol濃度になるように純水(商品名:,MiLLi−QWater、メルクミリポア社製)に溶解した。カチオンとしてこれと等量になるようにコリン水溶液(2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、47〜50%水溶物:東京化成工業製)12.0mlを加え、室温で24時間撹拌した。撹拌終了後、混合溶液をオイルバスに移し、120℃の温度に加温し、エバポレーターで水分を除去した後、室温まで徐々に冷却し、コリンプロリンイオン液体を得た。
コリン−プロリンイオン液体の生成を化学的に確認するために、サンプルをHNMR(図3)およびFT−IR(図4)で確認した。
HNMRの測定結果は文献値(デユアンージアン タオ他、ジャーナル オブ ケミカル エンジニアリング データ、2013年、58巻、1542〜1548頁、コウドリー他、モレキュラー ファーマセウティカルス、2018年、15巻、6号、2484〜2488頁)と一致し、FT−IRでは特有のピークを確認したため、コリン-セリンイオン液体の生成が確認された。
2−2 p−ボロノフェニルアラニン含有コリン−プロリンイオン液体組成物
コリン−プロリンイオン液体297.5mgに純水(商品名:MiLLi−Q Water、メルクミリポア社製)100μLを加え溶解液を作成した。
p−ボロノフェニルアラニンを前記溶解液に対して添加し撹拌した。溶解しないp−ボロノフェニルアラニンを除去し、ボロン濃度の測定により、溶解しているp−ボロノフェニルアラニンの濃度を測定したところ、12500,139ppmであった。
実施例3
3−1 コリン−グリシンイオン液体
アニオンとして市販の医薬品用高純度グリシン(東京化成工業製)を、終濃度0.05mol濃度になるように純水(商品名:MiLLi−Q Water、メルクミリポア社製)に溶解した。カチオンとしてこれと等量になるようにコリン水溶液(2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、47〜50%水溶物:東京化成工業製)12.0mlを加え、室温で24時間撹拌した。撹拌終了後、混合溶液をオイルバスに移し、120℃の温度に加温し、エバポレーターで水分を除去した後、室温まで徐々に冷却し、コリングリシンイオン液体を得た。
コリン−プロリンイオン液体の生成を化学的に確認するために、サンプルをHNMR(図5)およびFT−IR(図6)で確認した。
HNMRの測定結果は文献値(デユアンージアン タオ他、ジャーナル オブ ケミカル エンジニアリング データ、2013年、58巻、1542〜1548頁、コウドリー他、モレキュラー ファーマセウティカルス、2018年、15巻、6号、2484〜2488頁)と一致し、FT−IRでは特有のピークを確認したため、コリン−セリンイオン液体の生成が確認された。
3−2 p−ボロノフェニルアラニン含有コリン−グリシンイオン液体組成物
コリン−グリシンイオン液体321.0mgに純水(商品名:MiLLi−Q Water、メルクミリポア社製)MiLLi−Q Water100μLを加え溶解液を作成した。
p−ボロノフェニルアラニンを前記溶解液に対して添加し撹拌した。溶解しないp−ボロノフェニルアラニンを除去し、ボロン濃度の測定により、溶解しているp−ボロノフェニルアラニンの濃度を測定したところ、7171.876ppmであった。
実施例4
4−1 コリン−フェニルアラニンイオン液体
アニオンとして市販の医薬品用高純度フェニルアラニン(和光純薬製)を、終濃度0.05mol濃度になるように純水(商品名:MiLLi−Q Water、メルクミリポア社製)に溶解した。カチオンとしてこれと等量になるようにコリン水溶液(2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、47〜50%水溶物:東京化成工業製)12.0mlを加え、室温で24時間撹拌した。撹拌終了後、混合溶液をオイルバスに移し、120℃の温度に加温し、エバポレーターで水分を除去した後、室温まで徐々に冷却し、コリンフェニルアラニンイオン液体を得た。
コリン−フェニルアラニンイオン液体の生成を化学的に確認するために、サンプルをHNMR(図7)およびFT−IR(図8)で確認した。
HNMRの測定結果は文献値(デユアンージアン タオ他、ジャーナル オブ ケミカル エンジニアリング データ、2013年、58巻、1542〜1548頁、コウドリー他、モレキュラー ファーマセウティカルス、2018年、15巻、6号、2484〜2488頁)と一致し、FT−IRでは特有のピークを確認したため、コリン−セリンイオン液体の生成が確認された。
4−2 p−ボロノフェニルアラニン含有コリン−フェニルアラニンイオン液体組成物
コリン−グリシンイオン液体280.9mgに純水(商品名:MiLLi−Q Water、メルクミリポア社製)100μLを加え溶解液を作成した。
p−ボロノフェニルアラニンを前記溶解液に対して添加し撹拌した。溶解しないp−ボロノフェニルアラニンを除去し、ボロン濃度の測定により、溶解しているp−ボロノフェニルアラニンの濃度を測定したところ、7342.104ppmであった。
実施例5
5−1 コリン−クエン酸イオン液体
アニオンとして市販の医薬品用クエン酸(和光純薬製)を、終濃度0.05mol濃度になるように純水(商品名:MiLLi−Q Water、メルクミリポア社製)に溶解した。カチオンとしてこれと等量になるようにコリン水溶液(2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、47〜50%水溶物:東京化成工業製)12.0mlを加え、室温で24時間撹拌した。撹拌終了後、混合溶液をオイルバスに移し、120℃の温度に加温し、エバポレーターで水分を除去した後、室温まで徐々に冷却し、コリン−クエン酸イオン液体を得た。
コリン−クエン酸液体の生成を化学的に確認するために、サンプルをHNMR(図9)およびFT−IR(図10)で確認した。
HNMRの測定結果は文献値(デユアンージアン タオ他、ジャーナル オブ ケミカル エンジニアリング データ、2013年、58巻、1542〜1548頁、コウドリー他、モレキュラー ファーマセウティカルス、2018年、15巻、6号、2484〜2488頁)と一致し、FT−IRでは特有のピークを確認したため、コリン−セリンイオン液体の生成が確認された。
5−2 p−ボロノフェニルアラニン含有コリン−クエン酸イオン液体組成物
コリン−クエン酸イオン液体に純水(商品名:MiLLi−Q Water、メルクミリポア社製)100μLを加え溶解液を作成した。
p−ボロノフェニルアラニンを前記溶解液に対して添加し撹拌した。溶解しないp−ボロノフェニルアラニンを除去し、ボロン濃度の測定により、溶解しているp−ボロノフェニルアラニンの濃度を測定したところ、10656.333ppmであった。
試験例1 p−ボロノフェニルアラニン含有コリンセリンイオン液体とp−ボロノフェニルアラニンフラクトース錯体(BPA−Flu)の細胞毒性の対比
BPA−ILとBPA−Fluの細胞毒性を対比するために以下の実験を行った。
V79−379A細胞(チャイニーズハムスター 肺、線維芽細胞:5000Cell/wellをCOインキュベーターの中で24時間培養した(5000Cell/well)。細胞培養液の中に、BPA−ILおよびBPA−FLU(ホウ素濃度7.8125ppm〜4000ppm)各10μLを添加し、更に1時間培養した。CCK−8溶液10μLをCOインキュベーターに添加した60分後に、450nmにおける吸収を測定することによりBPA−ILおよびBPA−FLUの各濃度における細胞の生存率を測定した(図9)。
その結果、BPA−FLUのIC50が633.3ppmであるのに対して、BPA−ILが1215ppmであり、本件発明の組成物が、従来の化合物よりも安全であることが示された。
本発明により、高濃度p−ボロノフェニルアラニンを内包し、かつ安全な腫瘍の放射線治療に用いる増強剤およびPETに用いる診断用医薬品が提供される。
Choline:コリン水溶液
Ionic Liquids:コリン−セリンイオン液体
BPA−IL:p−ボロノフェニルアラニン含有コリンセリン液体
BPA−Flu:p−ボロノフェニルアラニンフラクトース錯体
(a)コリン、(b)コリン−セリンイオン液体、(c)L−セリン
(d)コリン−プロリンイオン液体、(e)L−プロリン
(f)コリン−グリシンイオン液体、(g)L−グリシン
(h)コリン−フェニルアラニンイオン液体、(i)L−フェニルアラニン
(j)コリン−クエン酸イオン液体、(k)クエン酸

Claims (8)

  1. p−ボロノフェニルアラニンを有効成分とし、イオン液体を含むことを特徴とする液状医薬組成物。
  2. イオン液体がコリン塩のイオン液体であることを特徴とする請求項1記載の液状医薬組成物。
  3. コリン塩のイオン液体が、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシドのカチオンと、アミノ酸またはクエン酸のアニオンから構成されることを特徴とする請求項1または2記載の液状医薬組成物。
  4. アミノ酸が、グリシン、セリン、プロリンまたはフェニルアラニンであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  5. p−ボロノフェニルアラニンをホウ素濃度として5000ppm〜30000ppm含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の液状医薬組成物。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の液状医薬組成物を有効成分として含むことを特徴とする腫瘍の放射線治療に用いる増強剤。
  7. 請求項6記載の放射線治療が、中性子捕捉療法であることを特徴とする増強剤。
  8. PETによる画像診断に用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の液状医薬組成物。
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