JP2021155846A - 表面処理粒子及びその製造方法、並びに表面処理粒子を含む導電性組成物 - Google Patents

表面処理粒子及びその製造方法、並びに表面処理粒子を含む導電性組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】保存安定性に優れる導電性組成物を得ることが可能な表面処理粒子を提供すること。【解決手段】本発明の表面処理粒子は、コア粒子と、その表面に配置された有機ポリシロキサン化合物を含む被覆層とを有する。コア粒子は、表面が銀で被覆された銅粒子である。前記有機ポリシロキサン化合物は、シロキサン結合を構成する酸素原子を除き、ケイ素原子に結合している基がアルキル基のみであるか、又はアルキル基及びアルコキシ基のみである。前記アルキル基は、炭素原子数が2以上17以下のアルキル基のみであるか、又は炭素原子数が2以上17以下のアルキル基及びメチル基のみである。また本発明は、表面処理粒子の製造方法、並びに、表面処理粒子、バインダ樹脂及び溶剤を含む導電性組成物も提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、表面処理粒子及びその製造方法、並びに表面処理粒子を含む導電性組成物に関する。
電極等の導電回路を形成するための材料として、銅粒子の表面をケイ素系化合物で被覆した表面処理粒子が種々知られている。例えば、特許文献1ないし3には、粒子の耐酸化性や分散性の向上を目的として、シランカップリング剤やオルガノシラン化合物を用いて表面を被覆した銅粒子が開示されている。
また特許文献4には、自動車のインダクタ及びモータ磁石固定材等に用いられる成形材料を高い成形性で製造することを目的として、プラズマ処理を施した金属粉とシランカップリング剤とを反応させて得られた表面処理金属粉が開示されている。
また特許文献5には、粒度分布中の狭い、単分散した球状銅微粉末を短時間に得ることを目的として、酸化銅粉末の表面をシランカップリング剤で被覆した酸化銅粉末をヒドラジンにより還元する銅微粉末の製造方法が開示されている。
特開昭57−155386号公報 特開2003−16832号公報 国際公開2013/125659号パンフレット 特開2018−135547号公報 特開平02−34708号公報
しかし、特許文献1ないし5の表面処理銅粒子は、いずれも銅粒子の表面に直接シランカップリング剤を付着させて形成されたものであるので、該銅粒子を含む導電性組成物をペースト等の態様で保存する際に、銅粒子から銅イオンが溶出する等に起因して組成物の粘度が高くなり、保存時の安定性が悪いものであった。また、保存安定性を高めることに加えて、導電特性を更に高めることができる材料が望まれている。
したがって、本発明の課題は、保存安定性に優れる導電性組成物を得ることが可能な表面処理粒子を提供することにある。
本発明は、コア粒子と、その表面に配置された有機ポリシロキサン化合物を含む被覆層とを有し、
前記コア粒子は、表面が銀で被覆された銅粒子であり、
前記有機ポリシロキサン化合物においては、シロキサン結合を構成する酸素原子を除き、ケイ素原子に結合している基がアルキル基のみであるか、又はアルコキシ基及びアルキル基のみであり、
前記アルキル基は、炭素原子数が2以上17以下のアルキル基であるか、又はメチル基及び炭素原子数が2以上17以下のアルキル基である、表面処理粒子を提供するものである。
また本発明は、コア粒子とアルキルアルコキシシランとを混合するとともに、該アルキルアルコキシシランを重合させて、該コア粒子の表面に該アルキルアルコキシシランの重合物である有機ポリシロキサン化合物を形成させる、表面処理粒子の製造方法であって、
前記コア粒子として、表面が銀で被覆された銅粒子を用い、
前記アルキルアルコキシシランとして、その分子量が150以上390以下であり且つアルコシキ基としてメトキシ基及びエトキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の基のみを有するものを用いる、表面処理粒子の製造方法を提供するものである。
更に本発明は、前記表面処理粒子、バインダ樹脂及び溶剤を含む導電性組成物を提供するものである。
本発明によれば、保存安定性に優れる導電性組成物を得ることが可能な表面処理粒子が提供される。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の表面処理粒子は、コア粒子の表面に配置された有機ポリシロキサン化合物を含む被覆層を有する。また、コア粒子は、銅粒子の表面が銀で被覆されている。すなわち、本発明の表面処理粒子は、銅粒子の表面が銀で被覆されたコア粒子と、該コア粒子の表面に隣接して配置された有機ポリシロキサン化合物を含む被覆層とを備える。
被覆層は、表面処理粒子の最外層をなすものであり、被覆層の外面、並びにコア粒子表面と被覆層との間にはいずれも他の層は存在していないことが好ましい。つまり、銀層が銅粒子の表面に隣接して形成され、且つ被覆層が該銀層の表面に隣接して形成されていることが好ましい。なお、表面処理粒子の具体的な用途に応じて、被覆層の外面、並びにコア粒子表面と被覆層との間に1層以上の他の層を設けることは妨げられない。
上述のとおり、コア粒子は、銅粒子と該銅粒子の表面を被覆する銀層から形成されている。コア粒子を構成する銅粒子は、銅のみから実質的に形成されており、不可避不純物を除き他の元素を含まないものであるか、又は銅及び銅以外の元素を含んで構成されている。後者の場合、銅以外の元素とは、銀層を形成している銀や、銅と合金や金属間化合物を形成し得る元素が挙げられ、その割合は、銅粒子全体の質量に対して35質量%以下であることが好ましい。このような含有割合であることによって、導電性組成物としたときの保存安定性の向上と銅の存在に起因する導電性向上とを両立して達成することができる。
また保存安定性の向上と銅の存在に起因する優れた導電性とを兼ね備える観点から、コア粒子における銅以外の金属元素の含有量は、コア粒子全体の質量に対して35質量%以下であることが好ましい。この場合のコア粒子は、銅及び不可避不純物からなる銅粒子の表面を被覆する銀層が形成された場合と、銅、銅以外の元素及び不可避不純物からなる銅粒子の表面を被覆する銀層が形成された場合との双方の形態を包含する。
銅との合金や金属間化合物を形成し得る銅以外の元素としては、例えば、銀層を形成しているAgの他に、Ni、Al、Sn、Cr及びZrから選ばれる少なくとも一種の金属元素が挙げられる。銅以外の元素が銅粒子中に更に含まれる場合、粒子の耐酸化性及び耐収縮性を一層高める観点から、銅以外の元素としてNi、Al、Snのうち少なくとも一種が含まれることが好ましく、Niが含まれることがより好ましい。
銅及び銅以外の元素の有無並びにその含有量は、例えばICP分析やXRF分析で測定することができる。
銅以外の元素としてNiを含む場合、コア粒子中におけるNi元素含有量は、好ましくは1質量%以上30質量%以下、より好ましくは5質量%以上25質量%以下、更に好ましくは10質量%以上20質量%以下である。このような含有割合であることによって、粒子の耐酸化性及び耐収縮性を一層高く発現させることができる。
銅以外の元素としてAlを含む場合、コア粒子中におけるAi元素含有量は、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下、より好ましくは1質量%以上8質量%以下、更に好ましくは3質量%以上7質量%以下である。このような含有割合であることによって、粒子の耐酸化性及び耐収縮性を一層高く発現させることができる。
銅以外の元素としてSnを含む場合、コア粒子中におけるSn元素含有量は、好ましくは1質量%以上30質量%以下、より好ましくは5質量%以上25質量%以下、更に好ましくは10質量%以上20質量%以下である。このような含有割合であることによって、粒子の耐酸化性及び耐収縮性を一層高く発現させることができる。
銅以外の元素としてCrを含む場合、コア粒子中におけるCr元素含有量は、好ましくは0.1質量%以上5質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上4質量%以下、更に好ましくは1質量%以上3質量%以下である。このような含有割合であることによって、粒子の耐酸化性及び耐収縮性を一層高く発現させることができる。
銅以外の元素としてCr及びZrを組み合わせて含む場合、コア粒子中におけるCr元素含有量は、好ましくは0.5質量%以上1.5質量%以下、より好ましくは0.6質量%以上1.4質量%以下、更に好ましくは0.7質量%以上1.3質量%以下である。また、コア粒子中におけるZr元素含有量は、好ましくは0.05質量%以上0.25質量%以下、より好ましくは0.05質量%以上0.20質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以上0.20質量%以下である。このような含有割合であることによって、粒子の耐酸化性を一層高く発現させることができる。
コア粒子の表面を構成する銀層は、銅粒子の表面の少なくとも一部を被覆するように形成されている。銀は、銅粒子の表面を不連続に被覆しているか、又は該銅粒子の表面の全域を満遍なく連続して被覆している。前者の場合、コア粒子の表面は、銀からなる部位と、下地である実質的に銅からなる部位とから構成される。後者の場合、コア粒子の表面は、その全域が銀のみからなり、下地である銅はコア粒子の表面に露出していない状態になっている。
従来と同等以上の導電性を有する粒子を得るとともに、該粒子を含み且つ保存安定性に優れた導電性材料を得る観点から、コア粒子は、銀が銅粒子の表面全体を満遍なく連続して被覆している態様であることが好ましい。銀層がコア粒子の表面全体を満遍なく連続して被覆して形成されているか否かは、例えば電子顕微鏡による観察、X線光電子分光法、オージェ電子分光法等の方法で判別することができる。
コア粒子の表面に位置する被覆層は、有機ポリシロキサン化合物を含む単一の層からなる。本発明において、有機ポリシロキサン化合物は、ダイマー、トリマー及びテトラマー等のオリゴマーや、ポリマー等のシロキサン結合を一つ以上有する重合体を指すものであり、モノマーを除く趣旨である。被覆層は、有機ポリシロキサン化合物のみから構成されていてもよく、有機ポリシロキサン化合物に加えて、シロキサン結合を生成可能なシラン化合物をモノマーとして含んでいてもよい。シラン化合物の詳細は後述する。
被覆層の被覆態様は、コア粒子の表面全体を満遍なく連続して被覆していてもよく、あるいは、コア粒子の表面の一部のみを被覆していてもよい。前者の場合、表面処理粒子は、コア粒子の表面全域が有機ポリシロキサン化合物によって完全に被覆されて、コア粒子の表面が露出していない状態になっている。後者の場合、表面処理粒子は、その表面がコア粒子である部位と、有機ポリシロキサン化合物からなる部位とから構成される。有機ポリシロキサン化合物がコア粒子の表面の一部のみを被覆している場合、有機ポリシロキサン化合物は連続した皮膜を形成していてもよく、海島状に不連続な皮膜を形成してもよく、又はこれらの組み合わせであってもよい。
表面処理粒子の保存安定性を更に高める観点から、表面処理粒子は、被覆層がコア粒子の表面全体を満遍なく連続して被覆された態様であることが好ましい。有機ポリシロキサン化合物の層がコア粒子の表面全体を満遍なく連続して被覆しているか否かは、例えばX線光電子分光法、オージェ電子分光法、赤外吸収スペクトル法、ラマン分光法、LC−MS測定、又は各種クロマトグラフィー測定で判別することができる。
有機ポリシロキサン化合物としては、例えばシランカップリング剤として知られるシラン化合物の脱水縮合物からなるポリシロキサン化合物等の重合体が挙げられる。
被覆層を構成する有機ポリシロキサン化合物は、特定の基がケイ素原子に結合していることを特徴の一つとしている。詳細には、有機ポリシロキサン化合物は、シロキサン結合を構成する酸素原子を除き、ケイ素原子に直接結合している基がアルキル基のみであるか、又はアルキル基及びアルコキシ基のみである。つまり、有機ポリシロキサン化合物は、シロキサン結合からなる主鎖と、アルキル基のみ又はアルキル基及びアルコキシ基のみからなる側鎖とを有する。
このような構成を有していることによって、従来と同等以上の導電性を有する表面処理粒子を得られるとともに、該粒子を導電性組成物の金属フィラーとして用いたときに保存安定性が向上したものとなる。有機ポリシロキサン化合物は、モノマーとして有機シラン化合物を用い、該シラン化合物を重合させることによって得ることができる。
なお、有機シラン化合物を重合させることによって得られた有機ポリシロキサン化合物は、理論上、シロキサン結合及び上述の各側鎖によって形成されるものであるが、モノマーや不完全な重合に由来するシラノール基が不可避的に微量存在することは許容される。
本発明における「アルキル基のみ」は、アルキル基を一種のみ有する態様と、同一の又は異なるアルキル基を二種以上有する態様とを包含する。同様に、本発明における「アルキル基及びアルコキシ基のみ」は、アルキル基を一種のみ及びアルコキシ基を一種のみ有する態様、同一の又は異なるアルキル基を二種以上有し且つアルコキシ基を一種のみ有する態様、アルキル基を一種有し且つ同一の又は異なるアルコキシ基を二種以上有する態様、並びに、同一の又は異なるアルキル基を二種以上有し且つ同一の又は異なるアルコキシ基を二種以上有する態様を包含する。
有機ポリシロキサン化合物にアルキル基を含む場合、該アルキル基は、好ましくは炭素原子数が2以上17以下、更に好ましくは3以上15以下の直鎖又は分枝鎖のアルキル基のみであり、一層好ましくは上述した炭素原子数を有する直鎖アルキル基である。これに代えて、前記アルキル基は、好ましくは炭素原子数が2以上17以下、更に好ましくは3以上15以下の直鎖又は分枝鎖のアルキル基と、メチル基とのみの組み合わせである。
また有機ポリシロキサン化合物にアルコキシ基を含む場合、該アルコキシ基は、好ましくは炭素原子数が1又は2である。つまり、アルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基又はこれらの組み合わせであることが好ましい。
有機ポリシロキサン化合物を構成するアルキル基及びアルコキシ基の有無、並びに各基の炭素原子数は、例えばTOF−SIMS、GC−MS(DI法)によって測定することができる。また、測定対象とする粒子の粉末をアルカリ性水溶液によって溶出させて、該溶出液をLC−MSに導入して測定することもできる。
被覆層を形成する有機ポリシロキサン化合物を生成可能なシラン化合物としては、例えば有機シラン化合物等が挙げられる。有機シラン化合物の具体例としては、一般式「(R−)Si(O−R4−X」で表されるアルキルアルコキシシラン等が挙げられる。R及びRはそれぞれ独立してアルキル基を示し、Xは1以上3以下の整数であり、好ましくは1又は2である。Rを複数有する場合、複数のRはそれぞれ同一の基であってもよく、あるいは異なる基であってもよい。また、Rを複数有する場合、複数のRはそれぞれ同一の基であってもよく、あるいは異なる基であってもよい。これらのシラン化合物は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
前記一般式においてXが1である場合、Rは、好ましくは炭素原子数が1以上18以下の直鎖又は分枝鎖のアルキル基であり、より好ましくは炭素原子数が2以上17以下の直鎖又は分枝鎖のアルキル基であり、更に好ましくは炭素原子数が3以上15以下の直鎖又は分枝鎖のアルキル基であり、一層好ましくは上述した炭素原子数を有する直鎖アルキル基である。Rの具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
前記一般式においてXが2又は3である場合、Rは、それぞれ独立して、好ましくは炭素原子数が1以上18以下の直鎖又は分枝鎖のアルキル基であり、より好ましくは炭素原子数が2以上17以下の直鎖又は分枝鎖のアルキル基であり、更に好ましくは炭素原子数が3以上15以下の直鎖又は分枝鎖のアルキル基であり、一層好ましくは上述した炭素原子数を有する直鎖アルキル基である。特に、Xが2又は3である場合、Rのうち少なくとも1つは炭素原子数が2以上17以下の直鎖又は分枝鎖のアルキル基であり、且つRのうち少なくとも1つはメチル基であることが好ましい。Rの具体例としては、上述した基が挙げられる。
は、それぞれ独立して、好ましくは炭素原子数が1以上2以下である。つまり、Rは、メチル基、エチル基又はこれらの組み合わせであることが好ましい。
上述したR及びRの各基を有するアルキルアルコキシシランとしては、例えばアルキルトリアルコキシシランや、ジアルキルジアルコキシシラン、トリアルキルアルコキシシラン等が挙げられる。
アルキルトリアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、tert−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、イソヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、n−ノニルトリメトキシシラン、イソノニルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、イソデシルトリメトキシシラン、tert−デシルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、イソドデシルトリメトキシシラン、tert−ドデシルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、イソヘキサデシルトリメトキシシラン、tert−ヘキサデシルドデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、イソオクタデシルトリメトキシシラン、及びtert−オクタデシルドデシルトリメトキシシラン等のアルキルトリメトキシシランや、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、tert−ブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、イソヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、n−ノニルトリエトキシシラン、イソノニルトリエトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、イソデシルトリエトキシシラン、tert−デシルトリエトキシシラン、n−ドデシルトリエトキシシラン、イソドデシルトリエトキシシラン、tert−ドデシルトリエトキシシラン、n−ヘキサデシルトリエトキシシラン、イソヘキサデシルトリエトキシシラン、tert−ヘキサデシルドデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、イソオクタデシルトリエトキシシラン、及びtert−オクタデシルドデシルトリエトキシシラン等のアルキルトリエトキシシラン等が挙げられる。
ジアルキルジアルコキシシランとしては、例えば、ジメトキシ(メチル)−n−オクチルシランが挙げられる。
トリアルキルアルコキシシランとしては、例えば、メトキシ(ジメチル)−n−オクチルシランが挙げられる。
有機ポリシロキサン化合物の形成に用いられるアルキルアルコキシシランは、その分子量が、好ましくは150以上390以下、より好ましくは190以上390以下、更に好ましくは230以上390以下である。これとともに、アルキルアルコキシシランを構成するアルコキシ基は、メトキシ基及びエトキシ基から選ばれる少なくとも一種の基のみを有していることが好ましい。特に、上述したアルキルアルコキシシランの一般式において、すべてのRがメチル基であるアルキルメトキシシランであるか、又はすべてのRがエチル基であるアルキルエトキシシランであることが更に好ましい。上述した分子量とアルコキシ基との双方の条件を満たすアルキルアルコキシシランを用いることによって、本発明の表面処理粒子は、該粒子を含む導電性組成物を長期間保存した場合であっても、該組成物の粘度の上昇が抑制され、粒子の導電性と保存安定性とに更に優れたものとなる。
本発明の表面処理粒子を構成するコア粒子は、該コア粒子に占める銀の割合が、好ましくは1質量%以上25質量%以下、更に好ましくは3質量%以上15質量%以下である。このような構成となっていることによって、銅と比較して高価な銀の使用量を低減して、表面処理粒子を安価に提供することができるとともに、表面処理粒子を含む導電性組成物を長期間保存した際に、コア粒子を構成する銅粒子からの銅の溶出を防いで、該組成物の粘度の上昇が抑制され、保存安定性に更に優れたものとなる。銀の割合は、例えば本発明の表面処理粒子については、該粒子を酸に溶解させた溶液を用いて、電位差滴定法によって銀を定量分析することができる。
表面処理粒子及び該粒子を含む導電性組成物の保存安定性を優れたものとする観点から、表面処理粒子における有機ポリシロキサン化合物の含有量は、ケイ素原子換算で、好ましくは0.002質量%以上0.3質量%以下、更に好ましくは0.005質量%以上0.1質量%以下である。上述のケイ素原子換算とは、測定対象の表面処理粒子をアルカリ溶液に溶解させ、該溶液をICP発光分光分析によって測定されたケイ素原子の質量を、本明細書における有機ポリシロキサン化合物の含有量とする趣旨である。これに加えて、当該溶液をLC−MSに供して、有機ポリシロキサン化合物の種類を特定することができる。また、測定対象とする表面処理粒子そのものをTOF-SIMSに供して、粒子表面に存在する化合物を特定することもできる。
本発明の表面処理粒子は、その形状が、例えば球状、多面体状、フレーク状(一対の主面と、両主面に交差する側面とを有する扁平な形状)、樹枝形、不定形等であり得る。同様に、表面処理粒子を構成するコア粒子は、その形状が例えば球状、多面体状、フレーク状、樹枝形、不定形等であり得る。特に、緻密な焼結体を得やすくする観点から、表面処理粒子はフレーク状の形状を有していることが好ましい。また、フレーク状の形状を有する表面処理粒子を簡便に得る観点から、コア粒子はフレーク状の形状を有していることが好ましい。表面処理粒子及びコア粒子の形状は、例えば後述するように、コア粒子を構成する銅粒子を押圧する等して得ることによって調整することができる。
表面処理粒子がフレーク状の形状である場合、表面処理粒子の厚さに対する長径の粒子径の比で表されるアスペクト比は、好ましくは1.0以上20未満、更に好ましくは3.0以上15以下である。アスペクト比の測定については、測定対象の粒子を電子顕微鏡にて観察したときに、該粒子の主面における最大差し渡し長さDと、該粒子の厚みTとを電子顕微鏡観察によって得られた画像データから計測し、DをTで除することによってアスペクト比(D/T)を算出する。この測定及び算出を100個以上の粒子を対象として行い、各粒子から算出されたアスペクト比の算術平均値を本発明のアスペクト比とする。
本発明の表面処理粒子は、その粒子径が、好ましくは2μm以上10μm以下、更に好ましくは3μm以上8μm以下である。このような粒子径を有していることによって、表面処理粒子を導電性組成物に含有させて用いたときに、充填性に優れ、また該導電性組成物を用いて例えば電子部品等を製造する際に、高い導電性を有し、薄層且つ小型化を達成できる電子部品を得ることができる。表面処理粒子の粒子径は、レーザー回折散乱法によって測定されたレーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50とする。このような粒子径に加えて、上述したアスペクト比を満たす表面処理粒子とすることによって、表面処理粒子を含む導電性組成物の保存安定性に優れたものとなる。
また、表面処理粒子を含む導電性組成物の保存安定性を高めるとともに、従来と同等以上の導電性を有する表面処理粒子を得る観点から、表面処理粒子の被覆層の厚みは、好ましくは1nm以上50nm以下、より好ましくは1nm以上30nm以下、更に好ましくは3nm以上30nm以下である。被覆層の厚みは、例えばX線光電子分光法にて測定できる。詳細には、X線光電子分光測定装置(例えばアルバック・ファイ社製、PHI Quantes)を用いて、出力を100μmφ、100Wにて設定したAlKα線にて、スパッタレート約12nm/min(SiO換算)で、試料表面から内部に向かう深さ方向にスパッタを行う。深さ方向のSi半定量プロファイルにおいて、Si半定量の最大値と試料内部におけるSi半定量の減少飽和値との中間値となる深さの位置をコア粒子と被覆層との界面とし、試料表面から該界面までの最短距離を被覆層の厚さとする。
以上の構成を有する表面処理粒子は、銅粒子の表面が銀で被覆されたコア粒子と、コア粒子の表面を被覆する有機ポリシロキサン化合物を含む被覆層とを備えているので、該表面処理粒子あるいは該表面処理粒子を含む組成物を保存する際に、金属イオンの溶出に起因して組成物の粘度が高くなることを抑制し、その結果、保存安定性に優れたものとなる。本発明者の検討によれば、銅粒子から溶出した銅イオンと、組成物に含まれる樹脂または溶剤等との相互作用に起因して、ゲル化や硬化が生じ、その結果、組成物の粘度が高くなることが推測された。この点に関して、本発明の表面処理粒子は、粘度上昇に寄与する銅イオンの溶出を銀層及び有機ポリシロキサン化合物を含む被覆層の双方によって抑制することができるので、組成物の粘度を製造時点のものと同等のレベルに維持することができ、保存安定性に優れたものとなると考えている。一方、従来技術の表面処理銅粒子は、銅粒子の表面にシラン化合物由来の層が直接形成されているので、銅粒子からの銅イオンの溶出を十分に抑制することができず、その結果、保存安定性に劣るものとなる。
また、本発明の表面処理粒子は、上述の保存安定性の向上に加えて、導電性が高く且つ銀と比較して安価な銅を用いているので、製造コストが低減され、且つ従来と同等以上の導電特性を有するものである。
次に、本発明の表面処理粒子の好適な製造方法について説明する。表面処理粒子は、銅粒子の表面に銀を被覆してコア粒子を製造する工程と、被覆層をコア粒子の外表面に形成する工程とに大別される。以下、それぞれの工程について説明する。
まず、コア粒子を製造する。コア粒子を構成する銅粒子は、種々の方法で製造することができる。例えば、ヒドラジン等の各種の還元剤を用い、酢酸銅や硫酸銅、酸化銅など二価の銅を有する化合物や、亜酸化銅等の一価の銅を有する化合物等の銅化合物を湿式で還元する湿式還元法によって銅粒子を得ることができる。あるいは、銅の溶湯を用いるアトマイズ法によって芯材粒子や得ることができる。更に、銅イオンを含む硫酸酸性の電解液に陽極と陰極とを浸漬し、これに直流電流を流して電気分解を行い、陰極表面に粉末状に銅を析出させる電解法によっても銅粒子を得ることができる。これらのうち、粒子径の制御を容易にし、不純物の少ない銅粒子を生成させる観点から、湿式還元法によって銅粒子を得ることが好ましい。
湿式還元法によって銅粒子を製造する方法としては、例えば特開2003−34802号公報、特開2015−168878号公報又は特開2017−179555号公報に記載の方法で製造することできる。すなわち、水と、好ましくは炭素原子数が1以上5以下の一価アルコールとを含む液媒体に、塩化銅、酢酸銅、水酸化銅、硫酸銅、酸化銅又は亜酸化銅等の一価又は二価の銅源を含む反応液を調製する。この反応液とヒドラジンとを、銅1モルに対して好ましくは0.5モル以上50モル以下の割合となるように混合し、該銅源を還元して、銅粒子を得る。得られた銅粒子は、必要に応じて、デカンテーション法や、ロータリーフィルター法等の洗浄方法により洗浄してもよい。本工程で得られる銅粒子は、その表面に銀層及び被覆層が形成されていないものであり、好ましくは球状の形状を有する。
次いで、得られた銅粒子に対して、銀を配置することで製造される。銀の配置方法としては、例えば特開2013−1917号公報又は2017−179555号公報に記載の方法で行うことができる。すなわち、硝酸銀等の水溶性銀化合物を銀源とし、該銀源から生成した銀イオンと、銅粒子とを水中で接触させて置換めっきを行い、該芯材粒子の表面に銀を析出させて前駆体粒子を得、次いで該前駆体粒子と、銀イオンと、銀イオンの還元剤とを水中で接触させて、該前駆体粒子の表面に更に銀を析出させる。このようにして、コア粒子を得ることができる。コア粒子に占める銀の割合は、反応時間や銀イオンの濃度を適宜調整することによって、制御することができる。
コア粒子の形状をフレーク状等の非球状の形状とするためには、例えば、球状の銅粒子を圧縮等によって塑性変形を行って、扁平形状等の非球形状にした後、その銅粒子表面に銀を配置して、非球形状のコア粒子としたり、あるいは、球状の銅粒子の表面に銀を配置した後、該粒子を圧縮して、非球形状を有するコア粒子としたりすることができる。コア粒子をフレーク状の形状とする場合、コア粒子の表面に銀層を均一に且つ満遍なく形成させる観点から、扁平状の銅粒子表面に銀を配置する工程を採用することが好ましい。
以上の工程を経て得られたコア粒子は、必要に応じて固液分離等を行って洗浄したあと、該コア粒子を水やアルコール等の有機溶媒等に分散させてスラリーの態様で、又はコア粒子を乾燥させて、コア粒子の集合体である乾燥粉の態様で、次の工程に供する。
続いて、上述の工程を経て得られたコア粒子と、シランカップリング剤として上述したアルキルアルコキシシランとを混合するとともに、アルキルアルコキシシランを重合させて、コア粒子の表面に、アルキルアルコキシシランの重合体である有機ポリシロキサン化合物を含む被覆層を形成させる。
コア粒子の集合体である乾燥粉を用いて、コア粒子とアルキルアルコキシシランとを混合させる方法、すなわち乾式による混合方法を例にとり、以下に説明する。
まず、アルキルアルコキシシランを所定の溶媒に溶解させて溶液とする。このとき、用いるアルキルアルコキシシランは、上述のとおり、その分子量が好ましくは150以上390以下であり、且つアルコキシ基が好ましくはメトキシ基及びエトキシ基から選ばれる少なくとも一種の基のみを有しているものを用いる。アルキルアルコキシシランを溶解させる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール等の低級一価アルコールや、アセトン及びメチルエチルケトン等のケトンを用いることができる。アルキルアルコキシシラン溶液におけるアルキルアルコキシシランの濃度は、ケイ素原子換算で、好ましくは1mol/L以上20mol/L以下、更に好ましくは3mol/L以上10mol/L以下とする。
次いで、コア粒子の集合体である乾燥粉を撹拌しながら、該乾燥粉にアルキルアルコキシシラン溶液を添加して、コア粒子とアルキルアルコキシシランとを混合させる。アルキルアルコキシシラン溶液を添加する方法としては、例えば滴下や噴霧等の方法が挙げられる。コア粒子の表面に均一な被覆層を形成しやすくする観点から、コア粒子を撹拌した状態で添加することが好ましく、噴霧による方法を採用することがより好ましく、アルキルアルコキシシラン溶液を複数回噴霧して、アルキルアルコキシシランを混合させることが更に好ましい。
また、コア粒子の表面に均一な被覆層を形成しやすくする観点から、コア粒子を撹拌した状態でアルキルアルコキシシラン溶液を添加する方法を採用する場合、撹拌方法はモータによって回転翼を回転させる方式が望ましい。
撹拌速度は、早ければ早いほど好ましいが、コア粒子の形状を維持する観点から、例えばコア粒子の撹拌に90φの容器を用いる場合、好ましくは10000rpm以上25000rpm以下、更に好ましくは15000rpm以上20000rpm以下とすることができる。
本工程におけるコア粒子とアルキルアルコキシシランとの混合条件、具体的には、モノマーとしてのアルキルアルコキシシランどうしを重合反応させつつ、コア粒子表面に接触させる条件は、反応開始時点から反応終了時点にわたって、好ましくは5℃以上60℃以下の温度を維持するように行われ、より好ましくは10℃以上60℃以下の温度を維持するように行われ、更に好ましくは50℃以下の温度を維持するように行われる。本工程の反応開始時点から終了時点までの時間は、好ましくは10分以上120分以下とする。被覆層がコア粒子の表面全域に均一に形成された表面処理粒子を効率よく得る観点から、反応開始時点から反応終了時点にわたって、反応系の撹拌を継続することも好ましい。
続いて、アルキルアルコキシシランの重合体を脱水縮合させながら、コア粒子表面に結合させ、粒子を被覆する。脱水縮合の反応条件は、反応開始時点から反応終了時点にわたって、好ましくは70℃以上200℃以下の温度を維持するように行われ、脱水に好適な条件とする観点から、より好ましくは100℃以上150℃以下の温度を維持するように行われる。本工程の反応開始時点から終了時点までの時間は、好ましくは10分以上120分以下とする。これによって、被覆層がコア粒子の表面全域に更に均一に形成されやすくなる。
上述の混合方法に代えて、湿式による混合方法を採用してもよい。例えば、撹拌又は超音波分散などの分散方法で、コア粒子を水等の溶媒に分散させてスラリーとしたあと、該スラリーにアルキルアルコキシシランを添加して、コア粒子とアルキルアルコキシシランとを接触させる。アルキルアルコキシシランの添加量は、スラリー中のケイ素原子換算の濃度として、好ましくは1mol/L以上20mol/L以下、更に好ましくは3mol/L以上10mol/L以下とする。また湿式による混合方法においても、上述の反応温度及び反応時間にて行うことも好ましい。
以上の各工程を経て、目的とする表面処理粒子が得られる。この表面処理粒子は、銅粒子の表面に銀層を有するコア粒子の表面にアルキルアルコキシシランの重合体からなる有機ポリシロキサン化合物を含む被覆層が形成されたものである。表面処理粒子は、固液分離等によって洗浄し、その後、所定の分散媒に分散させたスラリーとしてもよく、洗浄後の粒子を熱風の吹き付け等の公知の方法で乾燥して、該粒子の集合体である乾燥粉としてもよい。
表面処理粒子は、これをそのままで用いてもよく、あるいは、表面処理粒子と、バインダ樹脂及び溶剤とを含む導電性組成物の状態として用いることができる。導電性組成物は、導電性インクや導電性ペースト等の流動性を有する形態であることが好ましい。
本発明の表面処理粒子を含む導電性組成物は、表面処理粒子、バインダ樹脂及び溶剤を少なくとも含んで構成される。バインダ樹脂としては、金属粉を含む導電性組成物の技術分野においてこれまで用いられてきたものと同様のものを特に制限なく用いることができる。
バインダ樹脂としては、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、あるいはビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノールエポキシ樹脂、並びにノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂などの熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂、エチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等の樹脂成分が挙げられる。同様に、溶剤としては、ターピネオール及びジヒドロターピネオール等のテルペン系溶剤、エチルカルビトール及びブチルカルビトール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤等が挙げられる。これらのバインダ樹脂及び溶剤は、それぞれ独立して、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の導電性組成物には、必要に応じて、バインダ樹脂の硬化剤、上述した溶剤以外の有機溶媒、分散剤及びガラスフリットの少なくとも一種を更に添加することも好ましい。バインダ樹脂の硬化剤としては、例えば、フェノール系硬化剤が挙げられる。有機溶媒としては、例えば一価アルコール、多価アルコール、多価アルコールアルキルエーテル、多価アルコールアリールエーテル、ポリエーテル、エステル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、飽和炭化水素などが挙げられる。分散剤としては、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。ガラスフリットとしては、例えばホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸バリウムガラス、ホウケイ酸亜鉛ガラス等が挙げられる。
表面処理粒子を含む導電性組成物は、これを25℃、相対湿度60%の条件で1ヶ月間保存した後の粘度の上昇率が、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下であり、一層好ましくは0%、すなわち一層好ましくは保存前後で粘度が変化しない。このような粘度上昇率となっていることによって、表面処理粒子を含む導電性組成物を長期間保存した場合でも製造直後と同等の粘度を維持することができるので、保存安定性が高く、且つ導電性組成物の利便性も高いものとなる。導電性組成物の保存前後の粘度は、例えばB型粘度計を用いて、25℃で測定することができる。
導電性組成物の保存前における25℃での粘度は、好ましくは10Pa・s以上20Pa・s以下、更に好ましくは12Pa・s以上18Pa・s以下である。また、導電性組成物の上述の条件で保存した後の25℃における粘度は、好ましくは10Pa・s以上26Pa・s以下、更に好ましくは12Pa・s以上23Pa・s以下である。
本発明の導電性組成物は、これを基板等に塗布して塗膜とし、この塗膜を加熱して硬化させることによって種々の用途で使用できる。硬化後の塗膜は、例えばプリント配線板の回路形成や、セラミックコンデンサの外部電極の電気的導通確保、あるいは、2つの被接合体を接合するために好適に用いられる。基板としては、電子回路の種類に応じて、ガラスエポキシ樹脂等からなるプリント基板や、ポリイミド等からなるフレキシブルプリント基板が挙げられる。本発明の導電性組成物を硬化させることで、導電性が高く、且つクラック等の不具合が発生しにくいものが得られる。
導電性組成物を硬化する際の温度は、基板や被接合体の材質等にもよるが、80℃以上300℃以下とすることが好ましく、100℃以上290℃以下とすることが更に好ましく、120℃以上280℃以下とすることが一層好ましい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。以下の表において「−」で示す欄は、非含有であることを示す。
〔実施例1〕
(1)コア粒子
特開2002−115001号公報に記載の方法で製造した球状の銅粒子を、分散ミルにて塑性変形させて、フレーク状の形状とした。次いで、特開2004−52044号公報に記載の方法で、コア粒子に占める銀の割合が以下の表1に示す値となるように、フレーク状の銅粒子の表面に銀を析出させた。その後、洗浄、乾燥を経て、乾燥状態且つフレーク状のコア粒子を得た。このコア粒子の粒子径D50は5.7μmであり、粒子長さは4.95μmであり、粒子の平均厚みは1.5μmであり、粒子のアスペクト比は3.3であった。
(2)被覆層の形成
上述の乾燥状態のコア粒子50gをフォースミル(大阪ケミカル社製)に投入して、22000rpmにて撹拌した状態で50質量%アルキルアルコキシシランのアセトン溶液をコア粒子に対して複数回噴霧しながら、50℃で30分間混合して、アルキルアルコキシシランどうしの重合体を粒子表面に接触させた。その後、これらを120℃で30分間加熱して脱水縮合を行い、粒子を被覆した。これによって、アルキルアルコキシシランの重合体である有機ポリシロキサン化合物が被覆層として形成された表面処理粒子の集合体からなる乾燥粉を得た。この表面処理粒子は、フレーク状のものであり、粒子長さDは4.95μmであり、粒子の厚みTは1.5μmであり、粒子のアスペクト比(D/T)は3.3であった。表面処理粒子の被覆層の厚みは3nmであった。表面処理粒子における有機ポリシロキサン化合物の含有量、並びに用いたアルキルアルコキシシラン及びその分子量を、以下の表1に示す。
〔実施例2〜6及び比較例1〜2〕
銀含有量が以下の表1に示す値となるようにコア粒子を製造し、且つ使用するアルキルアルコキシシランを以下の表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様に表面処理粒子を得た。これらの表面処理粒子はいずれもフレーク状のものであり、粒子長さDは4.95μmであり、粒子の厚みTは1.5μmであり、粒子のアスペクト比(D/T)は3.3であった。各表面処理粒子の被覆層の厚みはいずれも1〜10nmの範囲であった。表面処理粒子における有機ポリシロキサン化合物の含有量を以下の表1に示す。
〔実施例7〕
特開2002−115001号公報に記載の方法で製造した球状の銅粒子の表面に銀を析出させて、球状のコア粒子を製造し、且つ使用するアルキルアルコキシシランを以下の表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様に表面処理粒子を得た。この表面処理粒子は球状のものであり、粒子長さDは3.1μmであり、粒子の厚みTは3.1μmであり、粒子のアスペクト比(D/T)は1.0であった。表面処理粒子の被覆層の厚みは6nmであった。表面処理粒子における有機ポリシロキサン化合物の含有量を以下の表1に示す。
〔実施例8及び9〕
電気銅(銅純度:Cu99.95質量%)90kgとニッケル板10kg(ニッケル純度:99.99質量%)を、1400℃に加熱して熔湯とした。次いで、水アトマイズ装置におけるタンディッシュ中に上記熔湯100kgを落下させながら、水アトマイズすることによって、ニッケル含有銅粒子を得た。この粒子は、ニッケルを以下の表1に示す割合で含む球状の粒子(平均粒径3.3μm)であった。
次いで、ニッケル含有銅粒子を分級したあと、特開2002−115001号公報に記載の方法で粒子の表面に銀を析出させて、球状のコア粒子を製造した。
最後に、使用するアルキルアルコキシシランを以下の表1に示すものを用い、これ以外は実施例1と同様の方法で表面処理粒子を得た。
これらの表面処理粒子はいずれも球状のものであり、粒子長さDは3.3μmであり、粒子の厚みTは3.3μmであり、粒子のアスペクト比(D/T)は1.0であった。表面処理粒子の被覆層の厚みは6nmであった。
各実施例の表面処理粒子における有機ポリシロキサン化合物含有量(ケイ素原子含有量)を以下の表1に示す。
〔実施例10及び11〕
実施例8及び9で得られたニッケル含有銅粒子を分散ミルで塑性変形させて得られた粒子の表面に、実施例8及び9と同様の方法で銀を析出させて、フレーク状のコア粒子を製造した。そして、使用するアルキルアルコキシシランを以下の表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様の方法で表面処理粒子を得た。
実施例10の表面処理粒子はフレーク状のものであり、粒子長さDは5.4μmであり、粒子の厚みTは1.2μmであり、粒子のアスペクト比(D/T)は4.5であった。表面処理粒子の被覆層の厚みは3nmであった。
実施例11の表面処理粒子はフレーク状のものであり、粒子長さDは7.8μmであり、粒子の厚みTは0.5μmであり、粒子のアスペクト比(D/T)は15.2であった。表面処理粒子の被覆層の厚みは3nmであった
各実施例の表面処理粒子における有機ポリシロキサン化合物含有量(ケイ素原子含有量)を以下の表1に示す。
〔導電性の評価〕
実施例及び比較例における表面処理粒子の導電性は、圧粉抵抗測定システム(三菱化学アナリテック社製 PD−51)と抵抗率測定器(三菱化学アナリテック社製 MCP−T600)を用いて評価した。詳細には、測定対象の表面処理粒子10gをプローブシリンダへ投入し、プローブユニットをPD−51へセットした。油圧ジャッキによって1000kgの荷重をかけたときの抵抗値を、抵抗率測定器を用いて測定した。測定した抵抗値と試料厚みから、体積抵抗率(圧粉抵抗:Ω・cm)を算出した。体積抵抗率が低いほど、導電性が高いことを示す。結果を以下の表1に示す。
〔保存安定性の評価〕
実施例及び比較例における表面処理粒子を含む導電性組成物の保存安定性は、以下の方法で評価した。詳細には、評価対象の表面処理粒子を70質量%、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキジレン社製)を10質量%、フェノール系硬化剤(ノボラック型フェノール樹脂、DIC社製)を2質量%、溶剤としてブチルカルビトールを残部として混合し、導電性組成物Aを得た。
また、これとは別に、評価対象の表面処理粒子を70質量%、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキジレン社製)を10質量%、フェノール系硬化剤(レゾール型フェノール樹脂、昭和高分子社製)を2質量%、溶剤としてジエチレングリコールモノブチルエーテルを残部として混合し、導電性組成物Bを得た。
導電性組成物A及びBを、それぞれ独立して、25℃、相対湿度60%の条件で1ヶ月間保存した。各導電性組成物の保存前後の25℃における粘度(Pa・s)をB型粘度計(ブルックフィールド社製、HBDV−1、14号)にてそれぞれ測定し、保存前の粘度(Pa・s)に対する保存後の粘度(Pa・s)の百分率を粘度上昇率(%)とした。粘度上昇率が低いほど、保存安定性が高いものである。結果を表1に示す。
Figure 2021155846
表1に示すように、各実施例の表面処理粒子は、従来と同等以上の導電性を有するものであることが判る。これに加えて、各実施例の表面処理粒子を含む導電性組成物は、長期間保存後も粘度変化が少なく、保存安定性が高いものであることが判る。特に、好適な範囲の分子量を有するアルキルアルコキシシランを用いた実施例4ないし9の表面処理粒子は、保存安定性に一層優れる導電性組成物を得ることが可能であることが判る。

Claims (9)

  1. コア粒子と、その表面に配置された有機ポリシロキサン化合物を含む被覆層とを有し、
    前記コア粒子は、表面が銀で被覆された銅粒子であり、
    前記有機ポリシロキサン化合物においては、シロキサン結合を構成する酸素原子を除き、ケイ素原子に結合している基がアルキル基のみであるか、又はアルコキシ基及びアルキル基のみであり、
    前記アルキル基は、炭素原子数が2以上17以下のアルキル基であるか、又はメチル基及び炭素原子数が2以上17以下のアルキル基である、表面処理粒子。
  2. フレーク状の形状をしている、請求項1に記載の表面処理粒子。
  3. 前記コア粒子に占める銀の割合が1質量%以上25質量%以下である、請求項1又は2のいずれか一項に記載の表面処理粒子。
  4. 前記アルキル基として、炭素原子数2以上17以下の直鎖アルキル基を有する、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の表面処理粒子。
  5. 前記有機ポリシロキサン化合物をケイ素原子換算で0.002質量%以上0.3質量%以下含んでいる、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の表面処理粒子。
  6. 前記銅粒子は、銅のみから実質的に形成されており、不可避不純物を除き他の元素を含まないものであるか、又は銅及び銅以外の金属元素を含んで構成されている、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の表面処理粒子。
  7. コア粒子とアルキルアルコキシシランとを混合するとともに、該アルキルアルコキシシランを重合させて、該コア粒子の表面に該アルキルアルコキシシランの重合物である有機ポリシロキサン化合物を形成させる、表面処理粒子の製造方法であって、
    前記コア粒子として、表面が銀で被覆された銅粒子を用い、
    前記アルキルアルコキシシランとして、その分子量が150以上390以下であり且つアルコシキ基としてメトキシ基及びエトキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の基のみを有するものを用いる、表面処理粒子の製造方法。
  8. 請求項1ないし6のいずれか一項に記載の表面処理粒子、バインダ樹脂及び溶剤を含む導電性組成物。
  9. 25℃の環境下に1ヶ月間保存した後の粘度(25℃)の上昇率が30%以下である、請求項8に記載の導電性組成物。

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