JP2021154366A - H形鋼の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
なお、図2では、仕上圧延機5の入側に2つの冷却装置3、3’を設けた例を示しているが、仕上圧延機5の入側に設ける冷却装置は1つでもよい。
本明細書では、このような形状不良をフランジの反り(フランジ反り)と称し、フランジ1の反りの程度を、フランジの反り量d(又は、フランジ反り量d)=本来のフランジ1の位置から、本来のフランジ厚tFの方向にずれた最大距離として表す。そして、例えば、フランジ反りが外側に向いている外反りを+の符号で、フランジ反りが内側を向いている内反りを−の符号で表す。
例えば、特許文献1では、仕上圧延機の出側における、フランジ反りが発生しないフランジの仕上温度を実験により予め定めることを開示している。そして、特許文献1では、フランジの仕上温度が、予め定められた仕上温度±25℃以内となるように、フランジ外面を水冷する水量及び冷却時間を調整することで、フランジ反りを防止できるとしている。
また、より好適には、本発明は、上記温度差を所定範囲内に規定することにより、フランジ内面の冷却を行うことなく、フランジ外面の冷却を行うことのみで、良好なフランジ形状を有する高強度のH形鋼を製造可能な方法を提供することを目的とする。
更に、本発明者らは、上記温度差を所定範囲内に規定すれば、仕上圧延工程の入側及び出側でフランジの外面に対して冷却工程を行うことにより、フランジの内面を直接的に冷却せずとも、高強度なH形鋼におけるフランジの形状を制御可能であることも見出した。
1.鋼素材に熱間圧延を施してH形鋼を製造する方法であって、
前記熱間圧延の仕上圧延工程の入側及び出側において、前記H形鋼のフランジの外面に対して冷却工程を行うに際し、前記冷却工程のうち少なくとも一工程において次式(1)を満足する、H形鋼の製造方法。
To:仕上圧延工程の出側で行われる冷却工程の入側におけるフランジの外面温度[℃]
TI:仕上圧延工程の出側で行われる冷却工程の入側におけるフランジの内面温度[℃]
ΔTo:仕上圧延工程の出側で行われる冷却工程によるフランジの外面温度の降下量[℃]
ΔTI:仕上圧延工程の出側で行われる冷却工程によるフランジの内面温度の降下量[℃]
tF:フランジ厚[mm]
B:フランジ幅[mm]
σYP:フランジの外面温度に依存した降伏応力[MPa]
E:フランジの外面温度に依存したヤング率[MPa]
ここで、上記式(1)におけるTO及びTIは、例えば、図2の温度計9で測定した場合に得られると算出される、フランジの外面及び内面それぞれの目標温度を指す。
製造実績を記録する工程と、
記録された前記製造実績から、次回冷却するH形鋼に関するパラメータと類似するパラメータを有する複数の過去のH形鋼について、前記過去のH形鋼を製造するために用いた過去の冷却条件と、前記過去の冷却条件に応じた過去のフランジの反り量とを読み出す工程と、
読み出した前記過去の冷却条件と前記過去のフランジの反り量との関係を得る工程と、
得られた前記関係から、前記式(1)を満足する次回の冷却条件を決定する工程と、を含む、
前記1〜3のいずれかに記載のH形鋼の製造方法。
また、より好適には、本発明によれば、フランジ内面の冷却を行うことなく、フランジ外面を冷却することのみで、良好なフランジ形状を有する高強度のH形鋼を製造可能である。
To:仕上圧延工程の出側で行われる冷却工程の入側におけるフランジの外面温度[℃]
TI:仕上圧延工程の出側で行われる冷却工程の入側におけるフランジの内面温度[℃]
tF:フランジ厚[mm]
B:フランジ幅[mm]
ΔTI:加速冷却工程によるフランジの内面温度の降下量[℃]
E:フランジの外面温度に依存したヤング率[MPa]
の出側かつ加速冷却工程の入側におけるフランジの外面温度TO[℃]と、加速冷却工程の出側におけるフランジの外面温度TOa[℃]とを用いて、
ΔTo=TO−TOa ・・・(8)
よって算出できる。
同様に、加速冷却工程によるフランジの内面温度の降下量ΔTI[℃]は、仕上圧延工程の出側かつ加速冷却工程の入側におけるフランジの内面温度TI[℃]と、加速冷却工程の出側におけるフランジの内面温度TIa[℃]とを用いて、
ΔTI=TI−TIa ・・・(9)
よって算出できる。
なお、本明細書では、仕上圧延工程の入側における冷却工程と、仕上圧延工程の出側における加速冷却工程との両工程を指して、単に「冷却工程」と称する場合がある。同様に、仕上圧延工程の入側に設置された冷却装置と、仕上圧延工程の出側に設置された加速冷却装置との両装置を指して、単に「冷却装置」と称する場合がある。
また、搬送速度は、上述した水量密度も考慮して適宜調整することが一層望ましい。一例として、水量密度が比較的高く且つ搬送速度が比較的遅い場合、上記式(1)を満足しない過剰な冷却となることがある。この観点からは、例えば、1800L/m2min超と比較的高い水量密度に対しては、搬送速度を1.0m/s超に速める等して適宜調整することができる。
ここで、上記式(1)を満足する冷却を行うために、例えば、仕上圧延機5と;仕上圧延機5の入側に設けられた水冷装置等の冷却装置3と;仕上圧延機5の出側に設けられた加速水冷装置等の加速冷却装置4と;冷却装置3の入側及び出側、加速冷却装置4の入側及び出側にそれぞれ備えられた温度計6,7,8,9と;加速冷却装置4の出側に備えられた形状計10と;を用いることができる。ここで、冷却装置3は、H形鋼を仕上圧延するに先立ち、H形鋼のフランジ外面を冷却するために用いられる。また、加速冷却装置4は、仕上圧延されたH形鋼を高強度に仕上げるとともに、H形鋼のフランジ外面を再度冷却するために用いられる。更に、温度計は、フランジの外面温度及び内面温度を各設置箇所にて測定し、冷却条件の決定・調整に活用するために用いられる。そして、形状計は、仕上圧延後かつ加速冷却後のフランジの反り量を測定し、冷却条件の決定・調整に活用するために用いられる。
冷却条件を決定・調整するに際しては、上述のとおり、上圧延工程の出側におけるフランジの外面温度及び内面温度が式(1)を満足すべく、決定・調整することが肝要である。式(1)を満足させるにあたり、仕上圧延工程の入側における冷却条件を調整してもよいし、仕上圧延工程の出側における冷却条件を調整してもよいし、入側及び出側の両方における冷却条件を調整してもよい。冷却条件の決定・調整方法の一例として、以下の要領に従う。
(B)上記(A)において計算された搬送速度によっても、例えば、水温の変化、気温の変化、装置の状態の変化等といった想定外の要因により、フランジ内外面の温度差が所定の目標範囲内に収まらなかった場合は、上記(A)で計算された搬送速度の中で、フランジ内外面の温度差が所定の目標範囲に最も近づいた搬送速度を前提とした場合に、加速冷却装置4の入側及び出側におけるフランジ内外面温度TI、TO、TIa、TOaを所定の目標範囲内に収めることのできる、冷却装置3及び加速冷却装置4の冷却パターンを計算する。
(C)上記(B)において、フランジ内外面の温度差が所定の目標範囲内に尚収まらない場合は、上記(A)及び(B)で計算された搬送速度及び冷却パターンの中で、フランジ内外面の温度差が所定の目標範囲に最も近づいた搬送速度及び冷却パターンを前提とした場合に、温度計8,9で測定される、加速冷却装置の入側及び出側におけるフランジ内外面の温度を所定の目標範囲内に収めることのできる搬送速度を再び計算する。
形状計10としては、特に制限されることなく、例えば、一点の距離を測定可能なレーザ変位計を使用することができる。そして、レーザ変位計をフランジ幅Bの方向に走査してフランジ反り量dを算出することができる。或いは、複数のレーザ変位計をフランジ幅Bの方向に並列させてフランジまでの距離を測定し、得られた結果を二次曲線又は円弧に近似することにより、フランジ反り量dを算出してもよい。
また、記録部に大量のデータを保存可能な場合には、ニューラルネットワークなどの手法を用いて、製造実績、過去の冷却条件とフランジ反り量dとの関係を解析して、次回のH形鋼に対する適正な冷却条件を算出しても構わない。
後述する実施例及び比較例では、C:0.15wt%、Mn:1.3wt%を主な添加元素として含有し、ウェブ高さ:800mm、フランジ幅B:400mm、ウェブ厚:19mm、フランジ厚tF:40mmのサイズを有するH形鋼を製造した。また、以下に詳述する点を除き、後述する実施例及び比較例では、図2に示す配置の装置を用いてH形鋼を製造した。
なお、実施例及び比較例を通じて、冷却領域は、フランジの外面かつフランジ幅Bの中央からフランジ幅Bに沿って±50mm以内の部位とした。
ここで、表1における「α(TO−TI)−α(ΔTO−ΔTI)」は、以下の式(11)
(αO・TO−αI・TI)−{(αOTO−αOaTOa)−(αITI−αIaTIa)}
・・・(11)
に従って算出されたものである。
そして、表1の水量密度の欄には、上段に水冷装置3の水量密度を、中段に水冷装置4の水量密度を、下段に加速水冷装置4の水量密度を記載した。
同様に、表1の搬送速度の欄には、上段に水冷装置3を通る際の搬送速度を、中段に水冷装置3’を通る際の搬送速度を、下段に加速水冷装置4を通る際の搬送速度を記載した。
仕上圧延機5の入側に設置された水冷装置3及び3’を用いて、フランジ外面の冷却を行った後、粗圧延鋼を仕上圧延機5に通して仕上圧延を行った。仕上圧延機5の出側かつ加速水冷装置4の入側に設置された温度計8で測定された、フランジの外面温度Toは615℃、フランジの内面温度TIは713℃であった。次いで、仕上圧延機5の出側に設置された加速冷却装置4でフランジ外面を更に冷却し、加速冷却装置4の出側に設置された温度計9で測定された、フランジの外面温度TOaは512℃、フランジの内面温度TIaは630℃であった。このとき、加速水冷装置4の出側における、常温時のフランジ反り量dは−0.5mmであった。
なお、温度計8および9でフランジ幅Bの方向に沿った温度分布を測定した結果、フランジ幅方向に最大30℃の温度偏差が発生していた。これは、水冷装置3,3’および加速水冷装置4で使用した水量密度がいずれも490L/m2minであり、水量密度の好適下限である500L/m2minを下回っていたためである。
仕上圧延機5の入側に設置された水冷装置3’のみを用いて、フランジ外面の冷却を行った後、粗圧延鋼を仕上圧延機5に通して仕上圧延を行った。仕上圧延機5の出側かつ加速水冷装置4の入側に設置された温度計8で測定された、フランジの外面温度Toは736℃、フランジの内面温度TIは767℃であった。次いで、仕上圧延機5の出側に設置された加速冷却装置4でフランジ外面を更に冷却し、加速冷却装置4の出側に設置された温度計9で測定された、フランジの外面温度TOaは653℃、フランジの内面温度TIaは696℃であった。このとき、加速水冷装置4の出側における、常温時のフランジ反り量dは0.77mmであった。
仕上圧延機5の入側に設置された水冷装置3及び3’を用いて、フランジ外面の冷却を行った後、粗圧延鋼を仕上圧延機5に通して仕上圧延を行った。仕上圧延機5の出側かつ加速水冷装置4の入側に設置された温度計8で測定された、フランジの外面温度Toは773℃、フランジの内面温度TIは869℃であった。次いで、仕上圧延機5の出側に設置された加速冷却装置4でフランジ外面を更に冷却し、加速冷却装置4の出側に設置された温度計9で測定された、フランジの外面温度TOaは741℃、フランジの内面温度TIaは856℃であった。このとき、加速水冷装置4の出側における、常温時のフランジ反り量dは−1.2mmであった。
なお、温度計8および9でフランジ幅Bの方向に沿った温度分布を測定した結果、フランジ幅方向に最大5℃の温度偏差が発生していた。これは、水冷装置3,3’および加速水冷装置4で使用した水量密度がそれぞれ1100、1600、1000L/m2minであり、水量密度の好適下限である500L/m2min以上であったため、実施例1と比較して、フランジ幅方向の冷却均一性が向上した。また、H形鋼の搬送速度が4.0m/s〜6.0m/sであり、搬送速度の好適下限である1.0m/s以上であったため、実施例1及び2と比較して生産性が更に向上した。
仕上圧延機5の入側に設置された水冷装置3及び3’を用いて、フランジ外面の冷却を行った後、粗圧延鋼を仕上圧延機5に通して仕上圧延を行った。仕上圧延機5の出側かつ加速水冷装置4の入側に設置された温度計8で測定された、フランジの外面温度Toは766℃、フランジの内面温度TIは880℃であった。次いで、仕上圧延機5の出側に設置された加速冷却装置4でフランジ外面を更に冷却し、加速冷却装置4の出側に設置された温度計9で測定された、フランジの外面温度TOaは220℃、フランジの内面温度TIaは701℃であった。このとき、加速水冷装置4の出側における、常温時のフランジ反り量dは−2.2mmであった。
比較例1においてフランジ反り量を良好に抑制できなかったのは、温度計8および9で測定されたフランジ内外面の温度TO、TI、TOa、TIaから算出される「α(TO−TI)−α(ΔTO−ΔTI)=−0.0055」が、フランジ反り量を2mm以下に抑制するための条件である「(−16tF/B2−σYP/E)=−0.0053以上かつ(16tF/B2−σYP/E)=0.0027以下」の範囲を外れ、式(1)を満足しなかったためである。
冷却工程も仕上圧延工程も施す前の粗圧延鋼について、温度計6を用いてフランジ外面温度及び内面温度を測定したところ、ともに897℃であった。次に、上述した、次回の冷却条件を決定する手法に従い、3個の製造実績を用いて、図8に示すとおり、過去の冷却条件と過去のフランジの反り量との関係についてのグラフを得た。そして、このグラフから、フランジ反り量dが約0mmとなる搬送速度を1.2m/sと算出した。
なお、実施例4における、前回実施した冷却条件としては、前回搬送速度が2.0m/s、前回水冷装置3で使用したバンクが3/3個、前回水冷装置3’で使用したバンクが4/4個、前回加速冷却装置4で使用したバンクが3/6個であり、水冷装置3、3’及び加速水冷装置4で使用した前回水量密度がそれぞれ1100、1600、1000L/m2minであり、室温時の前回フランジ反り量が1.0mmであった。
搬送速度=(フランジ反り量dが0mmになると算出された目標搬送速度
− 前回搬送速度)× Kp + 前回搬送速度 ・・・(12)
上記式(12)に値を当てはめ、
(1.2−2.0)×0.6+2.0=1.5m/sとして、次回の搬送速度を算出した。
そして、算出された搬送速度=1.5m/sにてフランジ外面の冷却を行い、仕上圧延を行ったところ、形状計10で測定されたフランジ反り量dは0.1mmとなり、フランジ反り量が、前回フランジ反り量と比較して0mmに近づいた。
11 フランジの外面
12 フランジの内面
13 フランジ厚tF
14 フランジ幅B
2 ウェブ
21 ウェブ厚
22 ウェブ高さ
3 冷却装置
3’ 冷却装置
4 (加速)冷却装置
5 仕上圧延機
6 温度計
7 温度計
8 温度計
9 温度計
10 形状計
11 加速冷却装置の入側(仕上圧延機の出側)
12 加速冷却装置の出側(仕上圧延機の出側)
Claims (4)
- 鋼素材に熱間圧延を施してH形鋼を製造する方法であって、
前記熱間圧延の仕上圧延工程の入側及び出側において、前記H形鋼のフランジの外面に対して冷却工程を行うに際し、前記冷却工程のうち少なくとも一工程において次式(1)を満足する、H形鋼の製造方法。
To:仕上圧延工程の出側で行われる冷却工程の入側におけるフランジの外面温度[℃]
TI:仕上圧延工程の出側で行われる冷却工程の入側におけるフランジの内面温度[℃]
ΔTo:仕上圧延工程の出側で行われる冷却工程によるフランジの外面温度の降下量[℃]
ΔTI:仕上圧延工程の出側で行われる冷却工程によるフランジの内面温度の降下量[℃]
tF:フランジ厚[mm]
B:フランジ幅[mm]
σYP:フランジの外面温度に依存した降伏応力[MPa]
E:フランジの外面温度に依存したヤング率[MPa] - 前記仕上圧延工程の入側及び出側で行われる前記冷却工程における水量密度を500L/m2min以上2000L/m2min以下とする、請求項1に記載のH形鋼の製造方法。
- 前記仕上圧延工程の入側及び出側における前記H形鋼の搬送速度を1.0m/s以上6.0m/s以下とする、請求項1又は2に記載のH形鋼の製造方法。
- 前記冷却工程に先立ち、
製造実績を記録する工程と、
記録された前記製造実績から、次回冷却するH形鋼に関するパラメータと類似するパラメータを有する複数の過去のH形鋼について、前記過去のH形鋼を製造するために用いた過去の冷却条件と、前記過去の冷却条件に応じた過去のフランジの反り量とを読み出す工程と、
読み出した前記過去の冷却条件と前記過去のフランジの反り量との関係を得る工程と、
得られた前記関係から、前記式(1)を満足する次回の冷却条件を決定する工程と、を含む、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のH形鋼の製造方法。
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