JP2021154297A - 連続鋳造方法 - Google Patents

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【課題】低炭素鋼の鋳片を高スループットで連続鋳造する場合であっても、高品質の鋳片を安定して鋳造することが可能な、新規かつ改良された連続鋳造方法を提供する。【課題手段】上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、低炭素鋼の鋳片を3.0ton/min以上8.0ton/min以下の溶鋼スループットで連続鋳造する連続鋳造方法であって、鋳型上部の長辺面外側に設置された電磁撹拌コアを用いて鋳型内の溶鋼に交流磁場を印加する一方で、鋳型下部の長辺面外側に設置され、複数かつ異種の磁極が長辺面に対向する電磁ブレーキコアを用いて溶鋼に静磁場を印加し、電磁撹拌コアによる交流磁場の磁束密度を0.02T以上0.15T以下、電磁ブレーキコアによる静磁場の磁束密度を0.2T以上0.5T以下とし、複数かつ異種の磁極間の空間に対向する位置に浸漬ノズルを配置することを特徴とする、連続鋳造方法が提供される。【選択図】図1

Description

本発明は、連続鋳造方法に関する。
連続鋳造では、タンディッシュに一旦貯留された溶鋼を、浸漬ノズルを介して鋳型内に上方から注入し、そこで外周面が冷却され凝固した鋳片を鋳型の下端から引き抜くことにより、連続的に鋳片の鋳造が行われる。鋳片のうち外周面の凝固した部位は、凝固シェルと呼ばれる。鋳型から引き抜かれた鋳片は、連続鋳造機内で冷却されながら搬送され、連続鋳造機の機端で所望の大きさにカットされる。
ところで、家電、建材、自動車等の用途に使用される低炭素鋼は汎用の鋼材であり、大量生産が求められている。このため、低炭素鋼の鋳片を連続鋳造する際には、効率的に鋳片を鋳造(製造)する必要がある。
鋳片の鋳造効率(生産効率)を向上させる手段としては、溶鋼スループットの増加が考えられる。ここで、溶鋼スループットは、単位時間あたりに鋳造される鋳片の質量であり、ton/min単位の溶鋼スループット(ton/min)は、鋳型厚み(mm)×鋳型幅(mm)×鋳造速度(mm/min)×溶鋼密度(7.0×10−6kg/mm)/1000(kg/ton)で計算される。したがって、溶鋼スループットを高めるためには、例えば鋳造速度を高めればよい。鋳造速度は単位時間あたりに鋳造される鋳片の長さとして定義される。一方で、鋳造速度の物理的な限界条件の一つとして、連続鋳造機の機端までに鋳片を完全凝固させなければならないという条件がある。したがって、鋳片の鋳造効率を高めるという観点からは、この限界条件を満たす最速の鋳造速度(以下、このような鋳造速度を「機端限界速度Vc」とも称する)で連続鋳造を行うことが好ましい。
特開平11−156502号公報 特開平5−154623号公報 国際公開第2019/164004号
しかし、従来の連続鋳造機では、機端限界速度Vcでの連続鋳造を行うことができかった。これは以下の理由による。すなわち、鋳造速度を高めると、浸漬ノズルからの溶鋼の吐出流が強くなっていく。すなわち、吐出流の線流速が速くなる。このような強い吐出流が凝固シェルに衝突すると、凝固シェルが再溶解して表面疵が形成される可能性がある。さらに、凝固シェルが再溶解した箇所から溶鋼が流出(ブレイクアウト)する可能性もある。さらに、吐出流が凝固シェルに衝突して反転上昇することで、吐出反転流が形成される。吐出流が強くなると、吐出反転流も強くなるので、吐出反転流が鋳型内湯面(メニスカス)に到達しやすくなる。そして、鋳型内湯面に到達した吐出反転流により湯面が大きく変動する。
ここで、鋳型と鋳片との潤滑性を良好な状態に維持するために鋳型の上部からモールドパウダーが鋳型内に供給される。鋳型内に供給されたモールドパウダーは、湯面上に積層され、鋳型内の溶鋼から供給された熱により溶融し、鋳型と鋳片との間に流入する。そして、鋳型と鋳片との間に流入した液体のモールドパウダーによって、鋳型と鋳片との潤滑性が良好な状態に維持される。しかし、鋳型内湯面に到達した吐出反転流により湯面が大きく変動すると、湯面上に積層されたモールドパウダーの一部が溶鋼内に巻き込まれる可能性がある。モールドパウダーが溶鋼内に巻き込まれると、鋳片の表面品質が低下する可能性がある。また、このような湯面の変動により、鋳型と鋳片との間に液体のモールドパウダーが十分に流入しない可能性もある。モールドパウダーの流入が不足すると、鋳型と鋳片との摩擦力が大きくなり、ブレイクアウトが発生する可能性がある。したがって、従来の連続鋳造機では、機端限界速度Vcでの連続鋳造を行うと、高品質の鋳片を安定して鋳造することができない。このため、従来の連続鋳造機では、鋳造速度を機端限界速度Vcから大きく落とさざるを得なかった。したがって、従来の連続鋳造機では、溶鋼スループットを十分に高めることができなかった。
特許文献1には、連続鋳造に関する技術として、電磁撹拌及び電磁ブレーキを切り替えて行う制御装置が開示されている。特許文献2には、電磁撹拌及び電磁ブレーキを重畳して行う制御装置が開示されている。電磁撹拌は、溶鋼に交流磁場を印可することにより、当該溶鋼中にローレンツ力と呼ばれる電磁力を発生させる処理である。電磁撹拌により、溶鋼に対して、鋳型の水平面内において旋回するような流動パターンを付与することができるので、湯面の変動が抑制されることが期待される。電磁ブレーキは、溶鋼に静磁場を印可することにより、当該溶鋼中に制動力を発生させる処理である。電磁ブレーキにより、吐出流が制動されることが期待される。しかし、本発明者が特許文献1、2に開示された技術を詳細に検討したところ、これらの技術では上述した問題を十分に解決することができないことがわかった。具体的には、特許文献1、2では、電磁ブレーキ装置を構成する磁極が単一の磁極となっているため、浸漬ノズル近傍での制動力が過剰に大きくなる。このため、浸漬ノズル近傍で強い上昇流が発生し、このような上昇流により湯面の変動が大きくなる。そして、このような湯面の変動によりモールドパウダーの巻き込み等が発生しうる。
一方、特許文献3には、電磁撹拌装置及び電磁ブレーキ装置を併用する技術が開示されている。この技術では、鋳型の上方に電磁撹拌装置を設置し、鋳型の下方に電磁ブレーキ装置を設置する。さらに、電磁ブレーキ装置では、複数かつ異種の磁極が鋳型の長辺面に対向している。つまり、N極及びS極が少なくとも1つずつ鋳型の長辺面に対向している。そして、浸漬ノズルは、N極とS極との間に配置される。このため、浸漬ノズル近傍での制動力が適切に制御されるので、過剰な上昇流の発生が抑制される。したがって、このような上昇流による湯面の変動が抑制される。さらに、電磁撹拌装置により湯面の変動が抑制されることが期待され、電磁ブレーキ装置により、吐出流が制動されることが期待される。これらのことから、特許文献3に開示された技術により、上述した問題が解決するとも考えられる。しかし、本発明者がこの技術を低炭素鋼の連続鋳造に適用したところ、必ずしも上述した問題を解決できないことがわかった。
なお、上述した問題は、吐出流が凝固シェルに衝突する際の衝突強度が大きいほど、また、湯面変動が大きいほど生じやすくなる。そして、衝突強度及び湯面変動は、浸漬ノズルからの吐出流の線速度に大きく依存する。つまり、衝突強度及び湯面変動は、浸漬ノズルからの吐出流が強くなるほど大きくなる。したがって、浸漬ノズルに形成される吐出孔の開口面積を大きくすることで、溶鋼スループットを高めつつ吐出流を弱めることができるとも考えられる。しかし、単に吐出孔の開口面積を大きくしただけでは、以下の問題が生じうる。すなわち、連続鋳造の開始直後では、吐出流を徐々に強めていく必要がある。この過程では、吐出孔の開口面積に対して溶鋼スループットが小さくなるので、吐出孔周辺の圧力が不安定になる。このため、例えば吐出流が偏流したり、吐出孔内で負圧が発生し、吐出流が吐出孔内に逆流したりする可能性がある。なお、浸漬ノズルには複数の吐出孔が形成されることが多い。吐出流の偏流とは、吐出流の強さが吐出孔毎にばらつくことを意味する。吐出流の偏流または逆流が発生すると、鋳片の品質が低下する可能性がある。さらに、吐出孔の開口面積が大きくなると浸漬ノズルの強度が低下する場合があるので、ノズル設計上の制約から開口面積を十分に大きくすることができない。したがって、吐出孔の開口面積を単に大きくするだけでは、上述した問題を根本的に解決することができない。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、低炭素鋼の鋳片を高スループットで連続鋳造する場合であっても、高品質の鋳片を安定して鋳造することが可能な、新規かつ改良された連続鋳造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、C:0.01質量%以上0.07質量%以下、Mn:0.01質量%以上0.5質量%以下、Si:0.05質量%以上0.5質量%以下からなる元素群を含む鋳片を3.0ton/min以上8.0ton/min以下の溶鋼スループットで連続鋳造する連続鋳造方法であって、鋳型上部の長辺面外側に設置された電磁撹拌コアを用いて鋳型内の溶鋼に交流磁場を印加する一方で、鋳型下部の長辺面外側に設置され、複数かつ異種の磁極が長辺面に対向する電磁ブレーキコアを用いて溶鋼に静磁場を印加し、電磁撹拌コアによる交流磁場の磁束密度を0.02T以上0.15T以下、電磁ブレーキコアによる静磁場の磁束密度を0.2T以上0.5T以下とし、複数かつ異種の磁極間の空間に対向する位置に浸漬ノズルを配置することを特徴とする、連続鋳造方法が提供される。
本発明の上記観点によれば、低炭素鋼の鋳片を高スループットで連続鋳造する場合であっても、高品質の鋳片を安定して製造することが可能となる。
本実施形態に係る連続鋳造機の一構成例を概略的に示す側断面図である。 本実施形態に係る鋳型設備のY−Z平面での断面図である。 鋳型設備の、図2に示すA−A断面での断面図である。 鋳型設備の、図3に示すB−B断面での断面図である。 鋳型設備の、図3に示すC−C断面での断面図である。 電磁ブレーキ装置によって溶鋼に対して付与される電磁力の方向について説明するための図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
なお、本明細書に示す各図面では、説明のため、一部の構成部材の大きさを誇張して表現している場合がある。各図面において図示される各部材の相対的な大きさは、必ずしも実際の部材間における大小関係を正確に表現するものではない。
本発明者らは、特許文献3に記載されている技術を低炭素鋼に適用することを試みた。この結果、上述したように、単に特許文献3に記載されている技術を低炭素鋼に適用しただけでは、高品質の鋳片を安定して鋳造することができなかった。例えば、電磁ブレーキ装置の磁束密度が過剰に高い場合には、浸漬ノズル近傍での制動力が過剰に大きくなるので、上昇流が過剰に大きくなる。そして、このような上昇流は、電磁撹拌装置による電磁撹拌の効果を打ち消してしまう。この結果、湯面の変動が大きくなり、モールドパウダーの巻き込み、流入不足等が生じうる。このように、単に特許文献3に記載されている技術を低炭素鋼に適用しただけでは、高品質の鋳片を安定して鋳造することができない。すなわち、電磁撹拌装置と電磁ブレーキ装置とを単に併用して稼働させたとしても、必ずしも稼働分だけ効果を得られるというものではなく、むしろ両者の効果を打ち消しあう場合もありうる。そこで、本発明者は、電磁撹拌装置及び電磁ブレーキ装置の駆動条件、特に磁束密度を鋭意検討した。この結果、本発明者は、これらの装置の磁束密度を適切に制御することで、低炭素鋼の鋳片を高スループットで連続鋳造した場合であっても、高品質の鋳片を安定して鋳造することができることを見出した。本実施形態に係る連続鋳造機及び連続鋳造方法は、かかる知見によって完成されたものである。以下、本実施形態について詳細に説明する。
(1.連続鋳造機の構成)
図1を参照して、本発明の好適な一実施形態に係る連続鋳造機の構成、及び連続鋳造方法について説明する。図1は、本実施形態に係る連続鋳造機の一構成例を概略的に示す側断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る連続鋳造機1は、連続鋳造用の鋳型110を用いて溶鋼2を連続鋳造し、スラブ等の鋳片3を製造するための装置である。連続鋳造機1は、鋳型110と、取鍋4と、タンディッシュ5と、浸漬ノズル6と、二次冷却装置7と、鋳片切断機8と、を備える。
取鍋4は、溶鋼2を外部からタンディッシュ5まで搬送するための可動式の容器である。取鍋4は、タンディッシュ5の上方に配置され、取鍋4内の溶鋼2がタンディッシュ5に供給される。タンディッシュ5は、鋳型110の上方に配置され、溶鋼2を貯留して、当該溶鋼2中の介在物を除去する。浸漬ノズル6は、タンディッシュ5の下端から鋳型110に向けて下方に延び、その先端は鋳型110内の溶鋼2に浸漬されている。当該浸漬ノズル6は、タンディッシュ5にて介在物が除去された溶鋼2を鋳型110内に連続供給する。
鋳型110は、鋳片3の幅及び厚さに応じた四角筒状であり、例えば、一対の長辺鋳型板(後述する図2に示す長辺鋳型板111に対応する)で一対の短辺鋳型板(後述する図4〜図6に示す短辺鋳型板112に対応する)を両側から挟むように組み立てられる。長辺鋳型板及び短辺鋳型板(以下、鋳型板と総称することがある)は、例えば冷却水が流動する水路が設けられた水冷銅板である。鋳型110は、かかる鋳型板と接触する溶鋼2を冷却して、鋳片3を製造する。鋳片3が鋳型110下方に向かって移動するにつれて、内部の未凝固部3bの凝固が進行し、外殻の凝固シェル3aの厚さは、徐々に厚くなる。かかる凝固シェル3aと未凝固部3bを含む鋳片3は、鋳型110の下端から引き抜かれる。鋳型110は振動させてもよい。
なお、以下の説明では、上下方向(すなわち、鋳型110から鋳片3が引き抜かれる方向)を、Z軸方向とも呼称する。また、Z軸方向と垂直な平面(水平面)内における互いに直交する2方向を、それぞれ、X軸方向及びY軸方向とも呼称する。また、X軸方向を、水平面内において鋳型110の長辺と平行な方向として定義し、Y軸方向を、水平面内において鋳型110の短辺と平行な方向として定義する。また、以下の説明では、各部材の大きさを表現する際に、当該部材のZ軸方向の長さのことを高さともいい、当該部材のX軸方向を幅、Y軸方向の長さのことを厚みともいうことがある。
ここで、図1では図面が煩雑になることを避けるために図示を省略しているが、本実施形態では、鋳型110の長辺鋳型板の外側面(すなわち、長辺面外側)に電磁力発生装置が設置される。当該電磁力発生装置は、電磁撹拌装置及び電磁ブレーキ装置を備えるものである。本実施形態では、当該電磁力発生装置を駆動させながら連続鋳造を行うことにより、鋳片の品質を確保しつつ、より高速での鋳造が可能になる。当該電磁力発生装置の構成及び鋳型110に対する設置位置等については、図2〜図5を参照して後述する。
二次冷却装置7は、鋳型110の下方の二次冷却帯9に設けられ、鋳型110下端から引き抜かれた鋳片3を支持及び搬送しながら冷却する。この二次冷却装置7は、鋳片3の厚さ方向両側に配置される複数対の支持ロール(例えば、サポートロール11、ピンチロール12及びセグメントロール13)と、鋳片3に対して冷却水を噴射する複数のスプレーノズル(図示せず)とを有する。
二次冷却装置7に設けられる支持ロールは、鋳片3の厚さ方向両側に対となって配置され、鋳片3を支持しながら搬送する支持搬送手段として機能する。当該支持ロールにより鋳片3を厚さ方向両側から支持することで、二次冷却帯9において凝固途中の鋳片3のブレイクアウトやバルジングを防止できる。
支持ロールであるサポートロール11、ピンチロール12及びセグメントロール13は、二次冷却帯9における鋳片3の搬送経路(パスライン)を形成する。このパスラインは、図1に示すように、鋳型110の直下では垂直であり、次いで曲線状に湾曲して、最終的には水平になる。二次冷却帯9において、当該パスラインが垂直である部分を垂直部9A、湾曲している部分を湾曲部9B、水平である部分を水平部9Cと称する。このようなパスラインを有する連続鋳造機1は、垂直曲げ型の連続鋳造機1と呼称される。なお、本発明は、図1に示すような垂直曲げ型の連続鋳造機1に限定されず、湾曲型又は垂直型など他の各種の連続鋳造機にも適用可能である。
サポートロール11は、鋳型110の直下の垂直部9Aに設けられる無駆動式ロールであり、鋳型110から引き抜かれた直後の鋳片3を支持する。鋳型110から引き抜かれた直後の鋳片3は、凝固シェル3aが薄い状態であるため、ブレイクアウトやバルジングを防止するために比較的短い間隔(ロールピッチ)で支持する必要がある。そのため、サポートロール11としては、ロールピッチを短縮することが可能な小径のロールが用いられることが望ましい。図1に示す例では、垂直部9Aにおける鋳片3の両側に、小径のロールからなる3対のサポートロール11が、比較的狭いロールピッチで設けられている。
ピンチロール12は、モータ等の駆動手段により回転する駆動式ロールであり、鋳片3を鋳型110から引き抜く機能を有する。ピンチロール12は、垂直部9A、湾曲部9B及び水平部9Cにおいて適切な位置にそれぞれ配置される。鋳片3は、ピンチロール12から伝達される力によって鋳型110から引き抜かれ、上記パスラインに沿って搬送される。なお、ピンチロール12の配置は図1に示す例に限定されず、その配置位置は任意に設定されてよい。
セグメントロール13(ガイドロールともいう)は、湾曲部9B及び水平部9Cに設けられる無駆動式ロールであり、上記パスラインに沿って鋳片3を支持及び案内する。セグメントロール13は、パスライン上の位置によって、及び、鋳片3のF面(Fixed面、図1では左下側の面)とL面(Loose面、図1では右上側の面)のいずれに設けられるかによって、それぞれ異なるロール径やロールピッチで配置されてよい。
鋳片切断機8は、上記パスラインの水平部9Cの終端に配置され、当該パスラインに沿って搬送された鋳片3を所定の長さに切断する。切断された厚板状の鋳片14は、テーブルロール15により次工程の設備に搬送される。したがって、鋳片切断機8が設置される位置が連続鋳造機1の機端となる。
以上、図1を参照して、本実施形態に係る連続鋳造機1の全体構成について説明した。なお、本実施形態では、鋳型110に対して上述した電磁力発生装置が設置され、当該電磁力発生装置を用いて連続鋳造が行われればよく、連続鋳造機1における当該電磁力発生装置以外の構成は、一般的な従来の連続鋳造機と同様であってよい。従って、連続鋳造機1の構成は図示したものに限定されず、連続鋳造機1としては、あらゆる構成のものが用いられてよい。
(2.電磁力発生装置)
(2−1.電磁力発生装置の構成)
図2〜図5を参照して、上述した鋳型110に対して設置される電磁力発生装置の構成について詳細に説明する。図2〜図5は、本実施形態に係る鋳型設備の一構成例を示す図である。
図2は、本実施形態に係る鋳型設備10のY−Z平面での断面図である。図3は、鋳型設備10の、図2に示すA−A断面での断面図である。図4は、鋳型設備10の、図3に示すB−B断面での断面図である。図5は、鋳型設備10の、図3に示すC−C断面での断面図である。なお、鋳型設備10は、Y軸方向において、鋳型110の中心に対して対称な構成を有するため、図2、図4及び図5では、一方の長辺鋳型板111に対応する部位のみを図示している。また、図2、図4及び図5では、理解を容易にするため、鋳型110内の溶鋼2も併せて図示している。
図2〜図5を参照すると、本実施形態に係る鋳型設備10は、鋳型110の長辺鋳型板111の外側面(すなわち、長辺面の外側)に、バックアッププレート121を介して、2つの水箱130、140と、電磁力発生装置170と、が設置されて構成される。
鋳型110は、上述したように、一対の長辺鋳型板111で一対の短辺鋳型板112を両側から挟むように組み立てられる。鋳型板111、112は例えば銅板からなる。ただし、本実施形態はかかる例に限定されず、鋳型板111、112は、一般的に連続鋳造機の鋳型として用いられる各種の材料によって形成されてよい。
ここで、本実施形態では、低炭素鋼の鋳片の連続鋳造を対象としており、鋳片サイズは、例えば幅(すなわち、X軸方向の長さ)800〜2300mm程度、あるいは1000〜1800mm程度、厚み(すなわち、Y軸方向の長さ)150〜300mm程度、あるいは200〜270mm程度である。つまり、鋳型板111、112も、当該鋳片サイズに対応した大きさを有する。すなわち、長辺鋳型板111は、少なくとも鋳片3の幅(例えば800〜2300mm)よりも長いX軸方向の幅を有し、短辺鋳型板112は、鋳片3の厚み(例えば200〜300mm)と略同一のY軸方向の幅を有する。もちろん、鋳片サイズはこの例に限定されない。
また、本実施形態では、電磁力発生装置170による鋳片3の品質向上の効果をより効果的に得るために、Z軸方向の長さが可能な限り長くなるように鋳型110を構成することが好ましい。一般的に、鋳型110内で溶鋼2の凝固が進行すると、凝固収縮のために鋳片3が鋳型110の内壁から離れてしまい、当該鋳片3の冷却が不十分になる場合があることが知られている。そのため、鋳型110の長さは、溶鋼湯面から、長くても1000mm程度が限界とされている。本実施形態では、かかる事情を考慮して、溶鋼湯面から鋳型板111、112の下端までの長さが1000mm程度となるように、鋳型板111、112のZ軸方向の長さを当該1000mmよりも十分に大きくすることが好ましい。
バックアッププレート121、122は、例えばステンレスからなり、鋳型110の鋳型板111、112を補強するために、当該鋳型板111、112の外側面を覆うように設けられる。以下、区別のため、長辺鋳型板111の外側面に設けられるバックアッププレート121のことを長辺側バックアッププレート121ともいい、短辺鋳型板112の外側面に設けられるバックアッププレート122のことを短辺側バックアッププレート122ともいう。
電磁力発生装置170は、長辺側バックアッププレート121を介して鋳型110内の溶鋼2に対して電磁力を付与するため、少なくとも長辺側バックアッププレート121は非磁性体(例えば、非磁性のステンレス等)によって形成され得る。ただし、長辺側バックアッププレート121の、後述する電磁ブレーキ装置160の鉄芯(コア)162(以下、電磁ブレーキコア162ともいう)の端部164と対向する部位には、電磁ブレーキ装置160の磁束密度を確保するために、磁性体の軟鉄124が埋め込まれる。
長辺側バックアッププレート121には、更に、当該長辺側バックアッププレート121と垂直な方向(すなわち、Y軸方向)に向かって延伸する一対のバックアッププレート123が設けられる。図3〜図5に示すように、この一対のバックアッププレート123の間に電磁力発生装置170が設置される。このように、バックアッププレート123は、電磁力発生装置170の幅(すなわち、X軸方向の長さ)、及びX軸方向の設置位置を規定し得るものである。換言すれば、電磁力発生装置170が鋳型110内の溶鋼2の所望の範囲に対して電磁力を付与し得るように、バックアッププレート123の取り付け位置が決定される。以下、区別のため、当該バックアッププレート123のことを、幅方向バックアッププレート123ともいう。幅方向バックアッププレート123も、バックアッププレート121、122と同様に、例えばステンレスによって形成される。
水箱130、140は、鋳型110を冷却するための冷却水を貯水する。本実施形態では、図示するように、一方の水箱130を長辺鋳型板111の上端から所定の距離の領域に設置し、他方の水箱140を長辺鋳型板111の下端から所定の距離の領域に設置する。このように、水箱130、140を鋳型110の上部及び下部にそれぞれ設けることにより、当該水箱130、140の間に電磁力発生装置170を設置する空間を確保することが可能になる。以下、区別のため、長辺鋳型板111の上部に設けられる水箱130のことを上部水箱130ともいい、長辺鋳型板111の下部に設けられる水箱140のことを下部水箱140ともいう。
長辺鋳型板111の内部、又は長辺鋳型板111と長辺側バックアッププレート121との間には、冷却水が通過する水路(図示せず)が形成される。当該水路は、水箱130、140まで延設されている。図示しないポンプによって、一方の水箱130、140から他方の水箱130、140に向かって(例えば、下部水箱140から上部水箱130に向かって)、当該水路を通過して冷却水が流される。これにより、長辺鋳型板111が冷却され、当該長辺鋳型板111を介して鋳型110内部の溶鋼2が冷却される。なお、図示は省略しているが、短辺鋳型板112に対しても、同様に、水箱及び水路が設けられ、冷却水が流動されることにより当該短辺鋳型板112が冷却される。
電磁力発生装置170は、電磁撹拌装置150と、電磁ブレーキ装置160と、を備える。図示するように、電磁撹拌装置150及び電磁ブレーキ装置160は、水箱130、140の間の空間に設置される。当該空間内で、電磁撹拌装置150が上方に、電磁ブレーキ装置160が下方に設置される。つまり、電磁撹拌装置150は、鋳型上部の長辺面外側に設置され、電磁ブレーキ装置160は、鋳型下部の長辺面外側に設置される。
電磁撹拌装置150は、鋳型110内の溶鋼2に対して、交流磁場を印加することにより、当該溶鋼2に対して電磁力を付与する。電磁撹拌装置150は、自身が設置される長辺鋳型板111の幅方向(すなわち、X軸方向)の電磁力を溶鋼2に付与するように駆動される。図4には、電磁撹拌装置150によって溶鋼2に対して付与される電磁力の方向を、模擬的に太線矢印で示している。ここで、図示を省略している長辺鋳型板111(すなわち、図示する長辺鋳型板111に対向する長辺鋳型板111)に設けられる電磁撹拌装置150は、その自身が設置される長辺鋳型板111の幅方向に沿って、図示する方向とは逆向きの電磁力を付与するように駆動される。このように、一対の電磁撹拌装置150が、水平面内において撹拌流(旋回流)を発生させるように駆動される。電磁撹拌装置150によれば、このような撹拌流を生じさせることにより、湯面変動が抑制される。これにより、モールドパウダーの巻き込み及び流入不足が抑制される。さらに、凝固シェル界面における溶鋼2が流動するので、凝固シェル3aへの気泡や介在物の捕捉が抑制されるという洗浄効果も得られる。このため、鋳片3の表面品質を良化させることができる。
電磁撹拌装置150の詳細な構成について説明する。電磁撹拌装置150は、ケース151と、当該ケース151内に格納される鉄芯(コア)152(以下、電磁撹拌コア152ともいう)と、当該電磁撹拌コア152に導線が巻回されて構成される複数のコイル153と、から構成される。
ケース151は、略直方体形状を有する中空の部材である。ケース151の大きさは、電磁撹拌装置150によって溶鋼2の所望の範囲に対して電磁力を付与し得るように、すなわち、内部に設けられるコイル153が溶鋼2に対して適切な位置に配置され得るように、適宜決定され得る。例えば、ケース151のX軸方向の幅W4、すなわち電磁撹拌装置150のX軸方向の幅W4は、鋳型110内の溶鋼2に対して、X軸方向のいずれの位置においても電磁力を付与し得るように、鋳片3の幅よりも大きくなるように決定されることが好ましい。例えば、W4は1800mm〜2500mm程度である。また、電磁撹拌装置150では、コイル153からケース151の側壁を通過して溶鋼2に対して電磁力が付与されるため、ケース151の材料としては、例えば非磁性体ステンレス又はFRP(Fiber Reinforced Plastics)等の、非磁性で、かつ強度が確保可能な部材が用いられることが好ましい。
電磁撹拌コア152は、略直方体形状を有する中実の部材であり、ケース151内において、その長手方向が長辺鋳型板111の幅方向(すなわち、X軸方向)と略平行になるように設置される。電磁撹拌コア152は、例えば電磁鋼板を積層することにより形成される。
電磁撹拌コア152に対して、X軸方向を中心軸として導線が巻回されることにより、コイル153が形成される。当該導線としては、例えば断面が10mm×10mmで、内部に直径5mm程度の冷却水路を有する銅製のものが用いられる。電流印加時には、当該冷却水路を用いて当該導線が冷却される。当該導線は、絶縁紙等によりその表層が絶縁処理されており、層状に巻回することが可能である。例えば、一のコイル153は、当該導線を2〜4層程度巻回することにより形成される。同様の構成を有するコイル153が、X軸方向に所定の間隔を有して並列されて設けられる。
コイル153のそれぞれには、図示しない交流電源が接続される。当該交流電源によって、電磁撹拌コア152から鋳型内の溶鋼2に交流磁場を印加する。具体的には、隣り合うコイル153における電流の位相が適宜ずれるように当該コイル153に対して電流を印加することにより、溶鋼2に対して撹拌流を生じさせるような電磁力が付与され得る。なお、当該交流電源の駆動は、プロセッサ等からなる制御装置(図示せず)が所定のプログラムに従って動作することにより、適宜制御され得る。当該制御装置により、コイル153のそれぞれに印加する電流量や、コイル153のそれぞれに電流を印加するタイミング等が適宜制御され、溶鋼2に対して与えられる電磁力の強さが制御され得る。この交流電源の駆動方法としては、一般的な電磁撹拌装置において用いられている各種の公知の方法が適用されてよいため、ここではその詳細な説明を省略する。
電磁撹拌コア152のX軸方向の幅W1は、電磁撹拌装置150によって溶鋼2の所望の範囲に対して電磁力を付与し得るように、すなわち、コイル153が溶鋼2に対して適切な位置に配置され得るように、適宜決定され得る。例えば、W1は1800mm程度である。
電磁ブレーキ装置160は、鋳型110内の溶鋼2に対して静磁場を印加することにより、当該溶鋼2に対して電磁力を付与する。ここで、図6は、電磁ブレーキ装置160によって溶鋼2に対して付与される電磁力の方向について説明するための図である。図6では、鋳型110近傍の構成の、X−Z平面での断面を概略的に図示している。また、図6では、電磁撹拌コア152、及び後述する電磁ブレーキコア162の端部164の位置を模擬的に破線で示している。
図6に示すように、浸漬ノズル6には、短辺鋳型板112に対向する位置に一対の吐出孔が設けられ得る。これらの吐出孔から溶鋼2が鋳型110内に吐出される。溶鋼2の吐出流は、鋳型110の短辺側に向かって進み、短辺側に形成された凝固シェル3aに衝突する。その後、吐出流は、上方向(すなわち、溶鋼の湯面が存在する方向)へ向かう上昇流(反転吐出流)を形成する。なお、凝固シェル3aに衝突した吐出流は、下方向(すなわち、鋳片が引き抜かれる方向)へ向かう下降流を形成する場合もある。電磁ブレーキ装置160は、浸漬ノズル6の当該吐出孔からの溶鋼2の流れ(吐出流)を抑制する方向の電磁力を、当該溶鋼2に対して付与するように駆動される。図6には、吐出流の方向を模擬的に細線矢印で示すとともに、電磁ブレーキ装置160によって溶鋼2に対して付与される電磁力の方向を模擬的に太線矢印で示している。電磁ブレーキ装置160によれば、このような吐出流を抑制する方向の電磁力を生じさせることにより、吐出流が凝固シェルに衝突した際の衝撃を和らげることができる。これにより、凝固シェルの再溶融を抑制することができ、ひいては、表面疵及びブレイクアウトの発生を抑制することができる。さらに、吐出流に起因する反転吐出流の勢いが弱められるので、溶鋼の湯面変動が抑制される。これにより、モールドパウダーの巻き込み及び流入不足が抑制される。さらに、吐出流が凝固シェルに衝突した際に生じる下降流も抑制されるので、気泡や介在物の浮上分離を促進することもできる。これらの結果、鋳片3の品質が向上する。
電磁ブレーキ装置160の詳細な構成について説明する。電磁ブレーキ装置160は、ケース161と、当該ケース161内にその一部が格納される電磁ブレーキコア162と、当該電磁ブレーキコア162のケース161内の部位に導線が巻回されて構成される複数のコイル163と、から構成される。
ケース161は、略直方体形状を有する中空の部材である。ケース161の大きさは、電磁ブレーキ装置160によって溶鋼2の所望の範囲に対して電磁力を付与し得るように、すなわち、内部に設けられるコイル163が溶鋼2に対して適切な位置に配置され得るように、適宜決定され得る。例えば、ケース161のX軸方向の幅W4、すなわち電磁ブレーキ装置160のX軸方向の幅W4は、鋳型110内の溶鋼2に対して、X軸方向の所望の位置において電磁力を付与し得るように、鋳片3の幅よりも大きくなるように決定される。図示する例では、ケース161の幅W4は、ケース151の幅W4と略同様である。ただし、本実施形態はかかる例に限定されず、電磁撹拌装置150の幅と電磁ブレーキ装置160の幅は異なっていてもよい。
また、電磁ブレーキ装置160では、コイル163からケース161の側壁を通過して溶鋼2に対して電磁力が付与されるため、ケース161は、ケース151と同様に、例えば非磁性体ステンレス又はFRP等の、非磁性で、かつ強度が確保可能な材料によって形成される。
電磁ブレーキコア162は、略直方体形状を有する中実の部材であってコイル163が設けられる一対の端部164と、同じく略直方体形状を有する中実の部材であって当該一対の端部164を連結する連結部165と、から構成される。電磁ブレーキコア162は、連結部165から、Y軸方向であって長辺鋳型板111に向かう方向に突出するように一対の端部164が設けられて構成される。一対の端部164が設けられる位置は、溶鋼2に対して電磁力を付与したい位置、すなわち浸漬ノズル6の一対の吐出孔からの吐出流がそれぞれコイル163によって磁場が印加される領域を通過するような位置に設けられ得る(図6も参照)。電磁ブレーキコア162は、例えば電磁鋼板を積層することにより形成される。
電磁ブレーキコア162の端部164に対して、Y軸方向を中心軸として導線が巻回されることにより、コイル163が形成される。当該コイル163の構造は、上述した電磁撹拌装置150のコイル153と同様である。各端部164について、それぞれ、複数のコイル163が、Y軸方向に所定の間隔を有して並列されて設けられる。
コイル163のそれぞれには、図示しない直流電源が接続される。当該直流電源によって、各コイル163に直流電流を印加することにより、溶鋼2に対して吐出流の勢いを弱めるような電磁力が付与され得る。つまり、各端部164が磁極となり、一方の端部164がN極、他方の端部164がS極となる。したがって、2つの異種の(この例ではN極及びS極の合計2つの)磁極が長辺面に対向することとなる。さらに、2つの磁極間の空間164aに対向する位置に浸漬ノズル6が配置される(図6参照)。なお、他方の長辺にも同様の電磁ブレーキコア162が配置されるので、磁極は合計2対配置されることになる。また、当該直流電源の駆動は、プロセッサ等からなる制御装置(図示せず)が所定のプログラムに従って動作することにより、適宜制御され得る。当該制御装置により、各コイル163に印加する電流量等が適宜制御され、溶鋼2に対して与えられる電磁力の強さが制御され得る。この直流電源の駆動方法としては、一般的な電磁ブレーキ装置において用いられている各種の公知の方法が適用されてよいため、ここではその詳細な説明を省略する。
電磁ブレーキコア162のX軸方向の幅W0、端部164のX軸方向の幅W2、及びX軸方向における端部164間の距離W3は、電磁撹拌装置150によって溶鋼2の所望の範囲に対して電磁力を付与し得るように、すなわち、コイル163が溶鋼2に対して適切な位置に配置され得るように、適宜決定され得る。例えば、W0は1600mm程度、W2は500mm程度、W3は350mm程度であってもよい。
ここで、例えば上記特許文献1、2に開示された電磁ブレーキ装置は、単独の磁極を有する。単独の磁極が鋳型の長辺面外側に設けられており、当該磁極は、幅方向(つまり、長辺面の長さ方向)の両端に亘って伸びている。このような磁極から発生する磁場は、磁束密度が磁極の幅方向中央部分で最大となる特徴を有する。したがって、電磁ブレーキ装置から発生する磁場の磁束密度を高めた場合、浸漬ノズル6近傍の磁束密度が極端に高くなる。このため、浸漬ノズル6の吐出孔近傍で、静磁場による制動力が過大となり、吐出流は幅方向に広がることなくノズル近傍で上昇流となりやすい。このような上昇流によって湯面の変動が大きくなる。そして、このような湯面の変動によりモールドパウダーの巻き込み等が発生しうる。なお、特許文献1、2に開示された電磁ブレーキ装置と本実施形態に係る電磁撹拌装置150とを併用しても、このような問題は十分に解消されない。特許文献1、2に開示された電磁ブレーキ装置によって発生した上昇流は強すぎるので、電磁撹拌装置150による電磁撹拌を行っても、当該電磁撹拌の効果が上昇流による大きな湯面変動で打ち消されてしまう。
これに対して、本実施形態では、上記のように、2つの端部164を有するように、すなわち2つの磁極を有するように、電磁ブレーキ装置160が構成される。さらに、2つの磁極間の空間164aに対向する位置に浸漬ノズル6が配置される。かかる構成によれば、例えば、電磁ブレーキ装置160を駆動する際に、これら2つの磁極がそれぞれN極及びS極として機能し、鋳型110の幅方向(すなわち、X軸方向)の略中心近傍の領域の磁束密度が他の領域の磁束密度よりも低下するように、上記制御装置によってコイル163への電流の印加を制御することができる。したがって、浸漬ノズル6の吐出孔近傍で、静磁場による制動力を低減することができるので、過剰な上昇流の発生を抑制することができる。この結果、電磁ブレーキによって電磁撹拌の効果が損なわれにくくなり、ひいては、電磁ブレーキの効果及び電磁撹拌の効果をより高めることができる。したがって、より幅広い鋳造条件に対応することが可能となる。
なお、図示する構成例では、電磁ブレーキ装置160は磁極を2つ有するように構成されているが、本実施形態はかかる例に限定されない。電磁ブレーキ装置160は、3つ以上の端部164を有し、3つ以上の異種の磁極を有するように構成されてもよい。この場合、各端部164のコイル163に印加する電流量がそれぞれ適宜調整されることにより、電磁ブレーキに係る溶鋼2への電磁力の印加を更に詳細に制御することが可能となる。すなわち、磁極の数は浸漬ノズル6の近傍で生じる上昇流の程度等に応じて適宜調整されればよく、特に上限値の制限はない。磁極が3つ以上存在する場合であっても、複数の磁極間の空間に対向する位置に浸漬ノズル6を配置することが好ましい。また、この場合の磁極には、少なくともN極及びS極が少なくとも1つずつ含まれる。
(2−2.電磁力発生装置の設置位置及びサイズに関して)
電磁力発生装置の設置位置及びサイズは特に制限されず、例えば特許文献3に開示された設置位置を本実施形態に適用してもよい。例えば、電磁撹拌コア152の高さH1(電磁撹拌コア152の上端から下端までのZ軸方向の長さ)(mm)、及び電磁ブレーキコア162の高さH2(電磁ブレーキコア162の上端から下端までのZ軸方向の長さ)(mm)が、以下の数式(1)を満たし、さらに(2)または(3)を満たすように電磁力発生装置の設置位置及びサイズを設定してもよい。
H1+H2≦500mm (1)
0.80<H1/H2<2.33 (2)
1.00<H1/H2<2.00 (3)
(3.連続鋳造方法)
次に、上述した連続鋳造機1を用いた連続鋳造方法について説明する。本実施形態に係る連続鋳造方法は、C:0.01質量%以上0.07質量%以下、Mn:0.01質量%以上0.5質量%以下、Si:0.05質量%以上0.5質量%以下からなる元素群を含む鋳片3を3.0ton/min以上8.0ton/min以下の溶鋼スループットで連続鋳造する。したがって、鋳片3は低炭素鋼の組成を有する。鋳片3は、低炭素鋼の用途等に応じてさらに他の元素を含んでいてもよい。ここで、各成分の質量%は、鋳片3の質量(より厳密には、鋳片3の試料の総質量)に対する質量%を意味するものとする。鋳片3の残部は鉄及び不純物となる。不純物には不可避的不純物、すなわち溶鋼2の製造過程で不可避的に溶鋼2に混入した成分が含まれる。鋳片3の組成は、一般的な分析方法によって測定すればよい。例えば、鋼成分は、ICP−AES(Inductively Coupled Plasma−Atomic Emission Spectrometry)を用いて測定すればよい。なお、Cは燃焼−赤外線吸収法を用いて測定してもよい。
(C:0.01質量%以上0.07質量%以下)
低炭素鋼の強度を確保するため、C含有量は0.01質量%以上とする。一方、C含有量が多いと低炭素鋼の成形性が低下するのでC含有量は0.07質量%以下とする。
(Mn:0.01質量%以上0.5質量%以下)
Mnは低炭素鋼を強化する作用があるため、Mnは低炭素鋼の必要強度に応じて低炭素鋼に0.01質量%以上添加される。一方、Mn含有量が多すぎると成形性が低下するのでMn含有量は0.5質量%以下とする。
(Si:0.05質量%以上0.5質量%以下)
Siは低炭素鋼を強化する作用があるため、Siは低炭素鋼の必要強度に応じて0.05質量%以上低炭素鋼に添加される。一方、Si含有量が多すぎると成形性が低下するのでSi含有量は0.5%質量%下とする。
溶鋼スループットは3.0ton/min以上8.0ton/min以下とされる。ここで、溶鋼スループット(ton/min)は、鋳型厚み(mm)×鋳型幅(mm)×鋳造速度(mm/min)×溶鋼密度(7.0×10−6kg/mm)/1000(kg/ton)で計算される。本実施形態では、鋳造速度そのものではなく、鋳造速度を含むパラメータである溶鋼スループットに着目している。これは以下の理由による。
低炭素鋼の鋳片を連続鋳造する際に発生する問題(強い吐出流が凝固シェルに衝突することで表面疵またはブレイクアウトが発生する問題、強い吐出反転流が大きな湯面変動を生じることによってモールドパウダーの巻き込みまたは流入不足が発生する問題)は、吐出流が凝固シェルに衝突する際の衝突強度が大きいほど、また、湯面変動が大きいほど生じやすくなる。そして、衝突強度及び湯面変動は、浸漬ノズル6からの吐出流の線速度に大きく依存する。つまり、衝突強度及び湯面変動は、浸漬ノズル6からの吐出流が強くなるほど大きくなる。そして、浸漬ノズル6からの吐出流は、溶鋼スループットに比例して大きくなる。さらに、鋳造速度が一定でも鋳型厚みまたは鋳型幅が大きくなれば溶鋼スループットが増大し、浸漬ノズル6からの吐出流が強くなる。このような観点から、本実施形態では、鋳造速度そのものではなく、溶鋼スループットに着目している。これにより、より多様な連続鋳造に対応することができる。
後述する実施例で示される通り、本実施形態では、3.0ton/min以上8.0ton/min以下という高い溶鋼スループットで低炭素鋼の鋳片を連続鋳造しても、高品質の鋳片を安定して製造することができる。
なお、溶鋼スループットが3.0ton/min未満であれば、浸漬ノズル6からの吐出流が十分に弱く(線速度が十分に低く)、本実施形態で示される電磁力を溶鋼2に印加せずとも高品質の鋳片を安定して鋳造することができる。一方、溶鋼スループットが8.0ton/min超の領域では、浸漬ノズル6からの吐出流が極めて強くなり、本実施形態で示される電磁力を溶鋼2に印加しても高品質の鋳片を安定して製造することが困難になる。なお、このような場合であっても、別途の設備を準備して鋳片の品質を安定化させることは可能ではあるが、そのような設備は非常に高価であり、低炭素鋼のように低コストで大量生産が求められる鋼種にはそぐわない。
連続鋳造を行う際、電磁撹拌装置150(すなわち、電磁撹拌コア152)による交流磁場の磁束密度(以下、単に「電磁撹拌強度」とも称する)を0.02T以上0.15T以下とする。なお、特に断りが無い限り、電磁撹拌強度及び後述の電磁ブレーキ強度の単位「T」はテスラを意味するものとする。電磁撹拌強度が0.02T未満となる場合、撹拌による湯面変動の抑制が不十分で、モールドパウダーの巻き込みによる鋳片の表面品質の低下、モールドパウダーの流入不足によるブレイクアウトが発生しやすくなる。加えて、撹拌流が不十分であるために気泡や介在物の凝固シェル3aへの捕捉が抑制されず圧延キズが増加する。電磁撹拌密度が0.15Tより大きいときは撹拌流が過大となり、これによる湯面変動の影響が大きくなりモールドパウダーの巻き込みによる鋳片の表面品質の低下、モールドパウダーの流入不足によるブレイクアウトが発生しやすくなる。このことから電磁撹拌強度は0.02T以上0.15T以下が適正である。
一方、電磁ブレーキ装置160(すなわち、電磁ブレーキコア162)による静磁場の磁束密度(以下、単に「電磁ブレーキ強度」とも称する)を0.2T以上0.5T以下とする。電磁ブレーキ強度が0.2T未満となる場合、吐出流の制動が十分でないため、強い吐出流が凝固シェルに衝突する。このため、鋳片に表面疵が形成されやすくなり、また、ブレイクアウトが発生しやすくなる。さらに、強い反転吐出流によって大きな湯面変動が発生する。このため、モールドパウダーの巻き込みによる鋳片の表面品質の低下、モールドパウダーの流入不足によるブレイクアウトが発生しやすくなる。電磁ブレーキ強度が0.5Tより大きい場合、浸漬ノズル6近傍での制動力が過剰に大きくなるので、上昇流が過剰に大きくなる。そして、このような上昇流は、電磁撹拌装置150による電磁撹拌の効果を打ち消してしまう。この結果、湯面の変動が大きくなるので、モールドパウダーの巻き込みによる鋳片の表面品質の低下、モールドパウダーの流入不足によるブレイクアウトが発生しやすくなる。このことから、電磁ブレーキ強度は0.2T以上0.5T以下が適正である。すなわち、電磁ブレーキ強度を0.2T以上0.5T以下とすることで、吐出流が適切に制御されるので、表面疵及びブレイクアウトの発生が抑制される。ただし、このような場合であっても反転吐出流は発生しうる。このような反転吐出流によって生じる湯面変動を、電磁撹拌装置150による電磁撹拌によって抑制することになる。湯面変動の抑制は、電磁撹拌強度を0.02T以上0.15T以下に制御することで適正に行われる。詳細は上述した通りである。
なお、従来型の1極(単極)の電磁ブレーキコアを設置した条件では、電磁ブレーキ強度が0.2T以上になると浸漬ノズル6近傍での制動力が過剰に大きくなり、湯面変動が大きくなる現象が発生する。したがって、本実施形態のように電磁ブレーキ装置160が複数の磁極を有する場合、従来の単極型の電磁ブレーキ装置よりも幅広い磁束密度の範囲で鋳片の品質を向上させることができる。
ここで、電磁撹拌強度及び電磁ブレーキ強度は、鋳型110を溶鋼の存在しない冷間状態として測定されたコア中心部(すなわち、電磁撹拌コア152及び電磁ブレーキコア162の中心部)の磁束密度である。なお、電磁撹拌コア152による磁場は交流磁界であるので、磁束密度の時間変化の最大値を電磁撹拌強度の値とする。また、電磁撹拌強度及び電磁ブレーキ強度と、電磁撹拌装置150及び電磁ブレーキ装置160への印加条件(電流、周波数)との相関は予め特定できるので、実際の操業では、各装置への印加条件を調整することで、電磁撹拌強度及び電磁ブレーキ強度を調整すれば良い。
上記の操業条件以外は従来の連続鋳造方法と同様に連続鋳造を行えば良い。後述する実施例で示される通り、本実施形態による連続鋳造方法によれば、低炭素鋼の鋳片を高スループットで連続鋳造する場合であっても、吐出流が凝固シェルに衝突する際の衝突強度、及び反転吐出流によって生じる湯面変動を抑制することができ、ひいては、高品質の鋳片を安定して鋳造することができる。
本実施例では、低炭素鋼の連続鋳造方法に関する実機試験を行った。当該実機試験では、実際に操業に用いている連続鋳造機に、図2〜図5を参照して説明した本実施形態に係る電磁力発生装置を設置した。これにより、本実施形態に係る連続鋳造機を構築した。そして、溶鋼スループット、電磁撹拌強度、及び電磁ブレーキ強度等を様々に変更して低炭素鋼の連続鋳造を行った。ここで、鋳型は銅製水冷式(水冷銅鋳型)で高さ(鋳型の上端から下端までの長さ)が900mmの矩形断面を有する。連続鋳造機の形式は垂直曲げ式とした。また、C含有量が0.05質量%、Mn含有量が0.3質量%、Si含有量が0.15質量%、P含有量が0.012質量%、S含有量が0.0035質量%、Al含有量が0.02質量%、残部が鉄及び不可避的不純物の溶鋼を用い、二次冷却の比水量は1.5−2.5L/kg−steelとした。溶鋼スループット計算の際の比重は、7.0×10−6kg/mmとした。浸漬ノズルのアルゴンガスの吹き込み量は7NL/minとした。電磁撹拌コアの上端は鋳型の上端から100mmとし、電磁撹拌コア上端から下端までの高さ(鋳造方向距離)H1は250mmとした。電磁ブレーキコアの上端は鋳型の上端から500mmとし、電磁ブレーキコア上端から下端までの高さH2は200mmとした。また、鋳型を一定周期及び振幅で上下に振動させた。
連続鋳造後、トーチでカットした鋳片(スラブ)の表面を目視にて観察し、再溶融性ブレイクアウトの前兆となる再溶融性の表面疵の有無を確認した。また、鋳片表面のオシレーションマークを観察し、湯面変動の指標となるオシレーションマークの鋳造方向の間隔(オシレーションマークピッチ)を20か所測定した。そして、これらの箇所で測定されたオシレーションマークピッチに基づいて、オシレーションマークピッチの標準偏差を算出した。オシレーションマークは鋳型を上下に一定の振幅で振動させていることに起因し、鋳造方向に垂直に形成される鋳片の表面の模様となる。オシレーションマークピッチは、鋳型内の湯面が完全に平穏な状態であれば鋳型の振動の振幅に従った一定のピッチとなるが、湯面変動が生じるとオシレーションマークピッチは不均等となる。そして、湯面変動が大きいほどオシレーションマークピッチのばらつきが大きくなる。このため、オシレーションマークピッチの標準偏差は湯面変動を表していると考えられる。そこで、本実施例では、このオシレーションマークピッチの標準偏差が1.0mm以下であれば湯面変動が十分抑制できていると判断した。つまり、1.0mm以下の標準偏差を基準範囲(合格範囲)とした。
(発明例1)
発明例1は、以下の各発明例、比較例のベースとなるものである。発明例1では、鋳片厚み(スラブ厚み)、鋳片幅(スラブ幅)を薄板向け連鋳機で一般的なサイズである250mm厚、980mm幅とした。鋳造速度は、浸漬ノズルからの吐出流が撹拌に悪影響を及ぼし始めるとされる1.8m/minとした。この時の溶鋼スループットは3.09ton/minである。電磁撹拌強度、電磁ブレーキ強度はあらかじめ実施した流動解析(流動解析の具体的な方法は特許文献3の実施例1と同様とした)を基に設定し、吐出流が抑制できる条件(すなわち本実施形態の範囲内の値である)0.02T、0.2Tとした。電磁撹拌は交流磁場を溶鋼に印可することで行い、電磁ブレーキは静磁場を溶鋼に印可することで行った。電磁ブレーキコア数(すなわち、長辺面に対向する磁極の数)は、吐出孔付近の静磁場強度を小さくできる2個(長辺面の片面あたり2個。すなわち、両面で2対)とした。すなわち、N極、S極の磁極対が長辺面の両面のそれぞれに配置される。発明例1の操業条件は本実施形態の範囲内であり、再溶融性の表面疵の発生はなく、オシレーションマークピッチの標準偏差も基準範囲内の0.3mmであり良好であった。
(発明例2)
発明例2では、発明例1に対し鋳造速度を大きくし、電磁撹拌および電磁ブレーキ強度条件は発明例1と同様とした。発明例2では、スループットの増大により湯面変動が大きくなりやすいが、再溶融性の表面疵は発生せず、オシレーションマークピッチの標準偏差は基準範囲内であった。
(発明例3)
発明例3では、発明例1に対しスラブ幅、鋳造速度をともに大きくした。さらに、スループットの増加に伴い電磁撹拌および電磁ブレーキ強度を本実施形態の範囲内で共に大きくした。発明例3でも再溶融性の表面疵は発生せず、オシレーションマークピッチの標準偏差は基準範囲内であった。
(発明例4、5)
発明例4、5では、発明例1に対しスラブ幅を大きくし、鋳造速度をさらに大きくした。さらに、スループットの増加に伴い電磁撹拌および電磁ブレーキ強度を本実施形態の範囲内でさらに共に大きくした。発明例4、5でも再溶融性の表面疵は発生せず、オシレーションマークピッチの標準偏差は基準範囲内であった。
(発明例6、7)
発明例6、7では、発明例1に対しスラブ幅をさらに大きくし、鋳造速度をさらに大きくした。溶鋼スループットは本実施形態の上限値に近い7.22ton/min(発明例6)、7.94ton/min(発明例7)であった。発明例6、7では、溶鋼スループットの増大に伴い電磁撹拌、電磁ブレーキを本実施形態の範囲内で共に大きくした。発明例6、7でも再溶融性の表面疵は発生しなかった。オシレーションマークピッチは溶鋼スループットの増加に伴い他の発明例に比べてやや増加したものの、基準範囲内であった。
(発明例8)
発明例8では、発明例1に対しスラブ幅をさらに大きくし、鋳造速度をさらに大きくした。溶鋼スループットは本実施形態の上限値に近い7.94ton/minであった。一方で、電磁撹拌、電磁ブレーキ強度は発明例1と同等とした。このような条件下であっても、再溶融性の表面疵は発生しなかった。オシレーションマークピッチは溶鋼スループットの増加に伴い他の発明例に比べて増加したものの、基準範囲内であった。
(比較例1)
比較例1では、電磁撹拌装置のみを鋳型に設置した。つまり、電磁ブレーキ装置を鋳型に設置しなかった。比較例1では、吐出流によって凝固シェルに再溶融性の表面疵が発生した。また、湯面変動が大きくなり、オシレーションマークピッチの標準偏差が基準範囲を超えて大きくなった。
(比較例2)
比較例2では、電磁撹拌装置と電磁ブレーキ装置を鋳型に設置した。ただし、電磁ブレーキコアを両面で1対とした。つまり、各長辺面に単極の電磁ブレーキコアを設置した。比較例2の電磁ブレーキ強度は発明例1と同じ0.2Tである。しかしながら、比較例2では、再溶融性の表面疵は発生しなかったものの、湯面変動が大きくなり、オシレーションマークピッチの標準偏差が基準範囲を超えて大きくなった。比較例2では、電磁ブレーキコアが単極となっている。したがって、比較例2では、本発明例1等のように電磁ブレーキコアを2対とした場合と比べ、浸漬ノズル近傍での制動力が過剰に大きくなり、上昇流が過剰に大きくなると考えられる。そして、このような上昇流により湯面変動が大きくなり、上記の結果が得られたと考えられる。
(比較例3)
比較例3では、電磁撹拌装置と電磁ブレーキ装置を鋳型に設置した。ただし、電磁撹拌強度を本実施形態の範囲未満の0.01Tとした。このため、撹拌力が不十分で、湯面変動を抑制するのに十分な撹拌流が溶鋼に与えられず、オシレーションマークピッチの標準偏差が基準範囲を超えて大きくなった。
(比較例4)
比較例4では、電磁撹拌装置と電磁ブレーキ装置を鋳型に設置し、電磁ブレーキ強度を本実施形態の範囲内の0.2Tとした。ただし、電磁撹拌強度を本実施形態の範囲よりも大きい0.18Tとした。このため、比較例4では、電磁撹拌による湯面変動が大きくなり、オシレーションマークピッチの標準偏差が基準範囲を超えて大きくなった。
(比較例5)
比較例5では、電磁撹拌装置と電磁ブレーキ装置を鋳型に設置した。ただし、電磁ブレーキ強度を本実施形態の範囲未満の0.1Tとした。このため、吐出流に対する制動力が不十分で、再溶融性の表面疵が発生し、オシレーションマークピッチの標準偏差が基準範囲を超えて大きくなった。
(比較例6)
比較例6では、電磁撹拌装置と電磁ブレーキ装置を鋳型に設置し、電磁撹拌強度を本実施形態の範囲内の0.05Tとした。ただし、電磁ブレーキ強度を本実施形態の範囲よりも大きい0.6Tとした。このため、浸漬ノズル近傍での制動力が過剰に大きくなり、上昇流が過剰に大きくなった。そして、このような上昇流により湯面変動が大きくなり、オシレーションマークピッチの標準偏差が基準範囲を超えて大きくなった。
結果を表1にまとめて示す。発明例1〜8では鋳片の品質が良好となったが、比較例1〜6では鋳片の品質に問題が見受けられた。以上の実験結果により、本実施形態に係る連続鋳造方法は、低炭素鋼の鋳片を高スループットで連続鋳造する場合であっても、高品質の鋳片を安定して鋳造することができることがわかった。
Figure 2021154297
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1 連続鋳造機
2 溶鋼
3 鋳片
3a 凝固シェル
3b 未凝固部
4 取鍋
5 タンディッシュ
6 浸漬ノズル
10 鋳型設備
110 鋳型
111 長辺鋳型板
112 短辺鋳型板
121、122、123 バックアッププレート
130 上部水箱
140 下部水箱
150 電磁撹拌装置
151 ケース
152 電磁撹拌コア
153 コイル
160 電磁ブレーキ装置
161 ケース
162 電磁ブレーキコア
163 コイル
164 端部
165 連結部
170 電磁力発生装置

Claims (1)

  1. C:0.01質量%以上0.07質量%以下、Mn:0.01質量%以上0.5質量%以下、Si:0.05質量%以上0.5質量%以下からなる元素群を含む鋳片を3.0ton/min以上8.0ton/min以下の溶鋼スループットで連続鋳造する連続鋳造方法であって、
    鋳型上部の長辺面外側に設置された電磁撹拌コアを用いて鋳型内の溶鋼に交流磁場を印加する一方で、鋳型下部の長辺面外側に設置され、複数かつ異種の磁極が前記長辺面に対向する電磁ブレーキコアを用いて前記溶鋼に静磁場を印加し、
    前記電磁撹拌コアによる交流磁場の磁束密度を0.02T以上0.15T以下、前記電磁ブレーキコアによる静磁場の磁束密度を0.2T以上0.5T以下とし、
    前記複数かつ異種の磁極間の空間に対向する位置に浸漬ノズルを配置することを特徴とする、連続鋳造方法。
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