JP2021152201A - すぐれた耐欠損性、耐塑性変形性を発揮する切削工具 - Google Patents

すぐれた耐欠損性、耐塑性変形性を発揮する切削工具 Download PDF

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Abstract

【課題】合金鋼等の断続切削加工において、すぐれた耐塑性変形性、耐欠損性を発揮するWC基超硬工具及び表面被覆WC基超硬工具を提供する。【解決手段】WC基超硬合金を基体とするWC基超硬工具において、Co:6.0〜14.0質量%、Cr3C2:0.1〜1.4質量%、残部はWC及び不可避不純物からなり、あるいは、さらにTaC、NbC、TiCおよびZrCのうちから1種以上を合計量で4.0質量%以下含有し、前記超硬合金の断面にて結合相の粒度分布を解析し、累積10%粒子面積をA10、累積90%粒子面積をA90とした際、A10が0.20μm2以上0.30μm2未満であり、かつ、A90/A10が5.0以上、8.0未満であることを特徴とするWC基超硬合金製切削工具。【選択図】 なし

Description

本発明は、合金鋼等の断続切削加工において、すぐれた耐欠損性を備え、すぐれた耐塑性変形性を発揮するWC基超硬合金製切削工具(「WC基超硬工具」ともいう)に関する。
WC基超硬合金は硬さが高く、また、靱性を備えることから、これを基体とするWC基超硬工具は、すぐれた耐摩耗性を発揮し、また、長期の使用にわたって長寿命を有する切削工具として知られている。
しかし、近年、被削材の種類、切削加工条件等に応じて、WC基超硬工具の切削性能、工具寿命をより一段と向上させるべく、各種の提案がなされている。
例えば、特許文献1では、炭化タングステンを主成分とする硬質相と、鉄族元素(コバルトを含み、コバルトの含有量は超硬合金中において8質量%以上であることが好ましい)を主成分とする結合相とを備える超硬合金において、炭化タングステンの粒子数をA、他の炭化タングステン粒子との接触点の点数が1点以下の炭化タングステン粒子の粒子数をBとするとき、B/A≦0.05を満たすようにすることで、超硬合金の耐塑性変形性を向上させ、その結果として、炭素鋼、ステンレス鋼の湿式連続切削加工において、WC基超硬工具の長寿命化を図ることが提案されている。
特許文献2では、Co量が10〜13質量%、Co量に対するCr量の比が2〜8%、TaCとNbCの少なくとも1種をTaCとNbCの総量が0.2〜0.5質量%となる範囲で含有し、残部がWCから成り、硬さが88.6HRA〜89.5HRAであるWC基超硬工具において、研磨面上の面積比におけるWC積算粒度80%径D80と積算粒度20%径D20の比D80/D20を2.0≦D80/D20≦4.0の範囲とし、また、D80を4.0〜7.0μmの範囲とし、かつWC接着度cを0.36≦c≦0.43とすることにより、ステンレス鋼に代表される難削材の切削加工において、被削材の凝着を防止し耐欠損性を向上させることが提案されている。
特許文献3では、WC基超硬工具において、WC基超硬合金の成分組成を、WC−x質量%Co−y質量%Cr−z質量%VCで表したとき、6≦x≦14、0.4≦y≦0.8、0≦z≦0.6、(y+z)≦0.1xを満足し、また、WC基超硬合金のWC接着度Cを、C=1−V α・exp(0.391・L)で表したとき、この式におけるWC基超硬合金の結合相体積率の値Vは0.11≦V≦0.25、また、(WC粒子の粒度分布の標準偏差)/(平均WC粒度)の値Lは0.3≦L≦0.7の範囲内であって、さらに、係数αが0.3≦α≦0.55の値を満足するWC接着度Cを有するWC基超硬合金とすることにより、Al合金、炭素鋼等の切削加工において、硬さと剛性を低下させることなく靱性を向上させ、耐欠損性を高めたWC基超硬工具が提案されている。
特許文献4では、WC基超硬工具において、WC−WC接着界面長さをL1とし、WC−Co接着界面長さをL2とした時、
R>(0.82−0.086×D)×(10/V)
の式を満足させることにより、Ni基耐熱合金の切削加工において、WC基超硬工具の耐熱塑性変形性と靱性を向上させることが提案されている。
なお、R=(L1)/((L1)+(L2))
D:WC面積平均粒径(μm)であって、0.6≦D≦1.7の範囲である。
ここで、前記Dは、WCの面積率が50%となるときのWCの粒径をいう。
V:結合相体積(vol%)であって、9≦V≦14の範囲である。
特許文献5では、重量%で、Crまたは/およびCr化合物:0〜4%(Cr換算で)、Vまたは/およびV化合物:0〜4%(V換算で)、TaC:0〜2%、TiC:0〜2%、Nまたは/およびN化合物:0〜1%(N換算で)、Co:0.1〜10%、WCおよび不可避不純物:残からなる組成を有し、かつ、0.06〜30ナノメータのCo平均厚み(CFP)を有し、焼結に際し、昇温途中900度C〜1600度Cの温度範囲の1部または全範囲において、気体を圧力媒体として3気圧〜200気圧の圧力を負荷して高密度化を図った切削加工工具用WC−Co系超硬部品が提案されており、このWC−Co系超硬部品、望ましくは、WCの平均粒径が1μm以下、CFPが0.06〜30nmの範囲の超微粒低Co超硬合金部品の靱性を高めることができるとされている。
ただし、CFPは、Co平均厚み(nm)であって、
CFP=0.58*A/(100−A)*R
から算出した値であり、A:Co(%),2R:WC平均粒径(nm)である。
特許第6256415号公報 特開2017−88999号公報 特開2017−148895号公報 特開2017−179433号公報 特開平7−305136号公報
前記特許文献1〜5で提案されている従来のWC基超硬工具によれば、WC−WC粒子相互の接触点数、WCの粒度、WC接着度あるいは製造条件等をコントロールすることによって、WC基超硬工具の切削性能、工具特性の向上が図られている。
しかしながら、前記従来の工具では、合金鋼のエンドミル加工のような断続切削加工においては、耐塑性変形性や耐欠損性が十分ではなく、WC−WC粒子の界面でのクラック伸展、あるいは、結合相への応力集中による亀裂の発生等による欠損や工具変形等の発生を十分に抑制することができず、そのため、工具寿命は短命であった。
そこで、本発明者らは、合金鋼のエンドミル加工のような断続切削加工において、すぐれた耐塑性変形性と耐欠損性を発揮するWC基超硬工具を開発すべく、WC基超硬合金の結合相の形態に着目し、鋭意研究を進めたところ、次のような知見を得た。
すなわち、前記特許文献1〜4に示されるWC基超硬工具においては、主として、WC粒子に着目した改善がなされ、また、前記特許文献5に示されるWC基超硬工具においては、主として、CFPに着目した改善がなされていたが、本発明者らは、従来の技術とは視点を変えて、結合相の形態に着目して研究を重ねたところ、WC基超硬合金の結合相粒子(主体は、Co粒子である)について、焼結条件を調整することによって、適度な大きさの結合相粒子を所定数有する場合、すなわち、累積10%粒子面積のときの結合相粒子一つが占める面積をA10、また、累積90%粒子面積のときの結合相粒子一つが占める面積をA90とした際、A10が0.20μm以上0.30μm未満であり、かつ、A90/A10が5.0以上、8.0未満である場合には、WCのスケルトン構造が強固に組まれ、耐塑性変形性が向上するとともに、さらに、Coの粒度分布が狭く、均粒の組織が得られることにより、あわせて耐欠損性が向上するため、かかるWC基超硬合金基体を用いたWC基超硬工具を合金鋼等の断続切削加工に供した場合には、靱性の向上、および、耐欠損性の向上により、工具の長寿命化が図られることを見出したものである。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「(1)WC基超硬合金を基体とするWC基超硬合金製切削工具において、
前記WC基超硬合金の成分組成は、結合相形成成分としてのCoを6.0〜14.0質量%とCrを0.1〜1.4質量%含有し、残部はWC及び不可避不純物からなり、前記WC基超硬合金の断面について結合相の粒度分布を解析し、累積10%粒子面積のときの結合相粒子一つが占める面積をA10、累積90%粒子面積のときの結合相粒子一つが占める面積をA90とした際、A10が0.20μm以上0.30μm未満であり、かつ、A90/A10が5.0以上、8.0未満であることを特徴とするWC基超硬合金製切削工具。
(2)前記WC基超硬合金は、TaC、NbC、TiC及びZrCのうちから選ばれる少なくとも1種以上を合計量で4.0質量%以下、さらに含有することを特徴とする(1)に記載のWC基超硬合金製切削工具。
(3) (1)または(2)に記載のWC基超硬合金製切削工具の少なくとも切れ刃には、硬質被覆層が形成されていることを特徴とする表面被覆WC基超硬合金製切削工具。」
を特徴とするものである。
なお、前記(1)、(2)におけるCr、TaC、NbC、TiC、ZrCの含有量は、WC基超硬合金の断面について測定したCr量、Ta量、Nb量、Ti量、Zr量を、いずれも炭化物換算した数値である。
本発明に係るWC基超硬工具および表面被覆WC基超硬合金製切削工具は、その基体を構成するWC基超硬合金の成分であるCo、Cr、あるいはさらに、TaC、NbC、TiC、ZrCが特定の組成範囲を有し、また、結合相の粒度分布を解析し、累積10%粒子面積のときの結合相粒子一つが占める面積をA10、累積90%粒子面積のときの結合相粒子一つが占める面積をA90とした際、A10が0.20μm以上0.30μm未満であり、かつ、A90/A10が5.0以上、8.0未満を満たすことにより、WCのスケルトン構造が強固に組まれる結果、耐塑性変形性が向上し、同時に、Coの粒度分布が狭く、均粒化が図られることにより、耐欠損性が向上するという効果を有する。
したがって、本発明のWC基超硬工具および表面被覆WC基超硬合金製切削工具は、合金鋼のエンドミル加工等の断続切削加工において、靱性の向上、耐欠損性の向上により、工具の長寿命化が図られる。
以下、本発明について詳細に説明する。
Co:
Coは、WC基超硬合金の主たる結合相形成成分として含有させるが、Co含有量が6.0質量%未満では十分な靱性を保持することはできず、一方、Co含有量が14.0質量%を超えると急激に軟化し、切削工具として必要とされる所望の硬さが得られず、変形および摩耗進行が顕著になることから、WC基超硬合金中のCo含有量を6.0〜14.0質量%と定めた。
Cr
Crは、主たる結合相を形成するCo中にCrが固溶し、硬質相を形成するWC相の成長を抑制して、WC相の粒径を微細化させ、WC基超硬合金を微粒・均粒組織とし、靱性を高める。しかし、この作用は、Cr含有量が、0.1質量%未満では不充分であり、一方、その含有量がCoの含有量に対し10%を超えると、CrとWの複合炭化物を析出し、靱性が低下し、また、欠損発生の起点となる。
本発明においてはCo含有量上限が14.0質量%であるため、Crの上限は
Co含有量上限の10%である1.4質量%である。
したがって、WC基超硬合金中のCr含有量は、0.1〜1.4質量%と定めた。
TaC、NbC、TiC、ZrC:
本発明のWC基超硬合金は、その成分として、さらに、TaC、NbC、TiC及びZrCのうちから選ばれる少なくとも1種以上を合計量で4.0質量%以下、さらに含有することができる。
Ta、Nb、Ti、Zrはいずれも、炭化物として存在し、耐熱性を高める効果を有するが、それらを炭化物換算した合計含有量が4.0質量%を超えると、比較的軟弱な炭化物が多量に存在することにより硬さを低下させ、耐摩耗性が不十分となる。
したがって、WC基超硬合金中の成分としてTaC、NbC、TiC及びZrCのうちから選ばれる少なくとも1種以上を含有させる場合には、その合計含有量は、4.0質量%以下とすることが望ましい。
なお、前記したCr、TaC、NbC、TiC、ZrCの含有量は、WC基超硬合金についてEPMAによって測定したCr量、Ta量、Nb量、Ti量、Zr量を、いずれも炭化物換算した数値である。
結合相の粒度分布
本発明は、WC基超硬合金において、結合相の粒度分布を所定の範囲に規定することにより、適度な大きさの結合相粒子を多数有し、WCのスケルトン構造が強固に組まれた、耐塑性変形性にすぐれた組織を得るものである。
具体的には、WC基超硬合金における結合相の粒度分布を解析し、累積10%粒子面積のときの結合相粒子一つが占める面積をA10、累積90%粒子面積のときの結合相粒子一つが占める面積をA90とした際、A10が0.20μm以上0.30μm未満であり、かつ、A90/A10が5.0以上、8.0未満と規定することにより得ることができる。
これに対し、A10が、0.20μm未満では、微細な結合相が多く存在し、粗大な結合相が不足することにより、耐塑性変形性が十分でなく、A10が0.30μm以上では、粗大な結合相が多く存在し、微細な結合相が不足することにより、耐欠損性が十分でないため、所望の効果を発揮できない。また、A90/A10が5.0未満では、結合相の粒度分布が狭く、WCのスケルトン構造が分断され、耐塑性変形性を発揮することが難しく、A90/A10が8.0以上では、粗大な結合相を一部含有し、それらが、破壊の起点となり、十分な耐欠損性を発揮できない。
SEM像からの結合相の抽出は、例えば、画像解析ソフトImageJを用いることができ、抽出した結合相各粒子の面積を、面積の小さい粒子から累積していき、累積面積率が結合相全面積の10%となったときに結合相一粒子の占める面積をA10、累積面積率が結合相全面積の90%となったときに結合相一粒子の占める面積をA90として求めることができる。なお、本発明ではWC基超硬合金の一枚の断面画像においてWCにより分断された各結合相領域を結合相粒子と称する。
本発明のWC基超硬工具は、例えば、以下の工程によって作製することができる。
まず、所定の平均粒径の粗粒WC粉末、細粒WC粉末、粗粒Co粉末、細粒Co粉末、および、Cr粉末からなる原料粉末、あるいは、必要に応じて、さらに、TaC粉末、NbC粉末、TiC粉末、ZrC粉末のうちの1種以上の粉末を含有する原料粉末を、所定の組成になるように配合・混合した混合粉末を作製する。
ついで、前記混合粉末を成形して圧粉成形体を作製し、この圧粉成形体を、加圧雰囲気中にて固相再配列工程(950〜1050℃にて60〜180分加圧)を経た後、低温焼結(1350〜1400℃、60〜120分)により、WC基超硬合金を作製する。
ついで、前記WC基超硬合金を、機械加工、研削加工し、所望サイズ・形状のWC基超硬工具を作製することができる。
また、前記WC基超硬工具の少なくとも切れ刃に、Ti−Al系、Al−Cr系等の炭化物、窒化物、炭窒化物あるいはAl等の硬質皮膜を、PVD、CVD等の成膜法により被覆形成することにより、表面被覆WC基超硬合金製切削工具を作製することができる。
なお、表面被覆WC基超硬合金製切削工具の作製にあたり、硬質皮膜の種類、成膜法は、当業者に既によく知られている膜種、成膜手法を採用すればよく、特に、制限するものではない。
本発明のWC基超硬工具および表面被覆WC基超硬工具について、実施例により具体的に説明する。
≪本発明WC基超硬工具≫
(a)まず、焼結用の粉末として、表1に示す平均粒径(d50)4.0〜8.0μmの粗粒WC粉末、平均粒径(d50)0.5〜2.0μmの微粒WC粉末、平均粒径(d50)1.2〜2.0μmの粗粒Co粉末、平均粒径(d50)0.5〜0.8μmの微粒Co粉末、および、平均粒径1.0〜3.0μmの範囲である、Cr粉末、TaC粉末、NbC粉末、TiC粉末、ZrC粉末を用意する。なお、粉末の平均粒径(d50)は体積基準で算出した。
これらの粉末を、表1に示す配合組成となるように配合して、焼結用粉末を作製した。
表1には、各種粉末の配合組成(質量%)を示す。
(b)表1に示す配合組成に配合した焼結用粉末を、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力でプレス成形して、所定の形状を有する圧粉成形体を作製した。
(c)ついで、表2に示す条件にて、固相再配列工程(950〜1050℃、60〜180分)、および、低温焼結工程を経て、WC超硬合金を作製した。
(d)ついで、前記WC基超硬合金を、機械加工、研削加工し、CNMG120408−GMのインサート形状を持ったWC基超硬工具1〜10(以下、本発明工具1〜10という)を作製した。本発明工具の作製条件及び組成を表3に示す。
≪比較例WC基超硬工具≫
比較のために、比較例のWC基超硬工具1〜10(以下、比較例工具1〜10という)を製造した。
その製造工程は、表4に示す原料粉末を用い、通常条件での焼結を行ったものであり、具体的には、表4に示す配合組成に配合した焼結用粉末を、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力でプレス成形して圧粉成形体を作製し、表5に示す、加熱温度:1360℃以上1500℃以下、かつ、加熱保持時間:30〜120分、真空雰囲気という通常の条件で焼結して、WC基超硬合金焼結体を作製し、これを機械加工、研削加工し、CNMG120408−GMのインサート形状としたものである。
≪結合相の面積割合および結合相の個数の測定≫
本発明工具1〜10及び比較例工具1〜10のWC基超硬合金の断面について、EPMAにより、その成分であるCo、Cr、Ta、Nb、Ti、Zrの含有量を10点測定し、その平均値を各成分の含有量とした。
なお、Cr、Ta、Nb、Ti、Zrは、それぞれの炭化物に換算して含有量を算出した。表3、表6、それぞれの平均含有量を示す。
つぎに、本発明工具1〜10及び比較例工具1〜10のWC基超硬合金の断面について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、例えば、倍率200〜500倍でWC基超硬合金の断面を観察して、画像サイズ120×96mm、pixel数1280×1024pixelでSEM像を取得し、これを画像解析ソフトImageJにて画像処理し、一つの観察視野内の個々の結合相の面積を測定し、結合相各粒子の面積を、面積の小さい粒子から累積していき、累積面積が結合相全面積の10%を超えたところでの結合相粒子一つが占める面積をA10、累積面積が結合相全面積の90%を超えたところでの結合相粒子一つが占める面積をA90として求める。
つぎに、得られたA90をA10で除することにより、A90/A10を得る。
なお、結合相の個数は、WC粒子により分断された個々の結合相を各々一つの結合相として計測する。
また、十分な数の結合相を画像内に含めるため、倍率200〜500倍での観察を行い、画像処理後に計測される結合相の個数が5000〜15000個の範囲に入るように観察倍率を選定した。
Figure 2021152201

Figure 2021152201

Figure 2021152201


Figure 2021152201



Figure 2021152201


Figure 2021152201

上記本発明工具1〜10、比較例工具1〜10について、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、以下の湿式連続切削加工試験を行った。
被削材:JIS・SUS304(HB170)の丸棒、
切削速度:95m/min、
切り込み:2.0mm、
送り:0.6mm/rev、
切削時間:5分、
湿式水溶性切削油使用。
上記湿式連続切削加工試験後の、切れ刃の逃げ面塑性変形量を測定するとともに、切れ刃の損耗状態を観察した。なお、切れ刃の逃げ面塑性変形量は、工具の主切れ刃側逃げ面について、切れ刃から十分離れた位置で主切れ刃側逃げ面とすくい面が交差する稜線上に線分を引き、同線分を切れ刃部方向に延伸し、延伸した線分と切れ刃部稜線間の距離(延伸した線分の垂直方向)が最も離れている部分を測定し、切れ刃の逃げ面塑性変形量とした。また、逃げ面塑性変形量が0.04mm以上であった時、損耗状態を刃先変形とした。
表7に、この試験結果を示す。
Figure 2021152201
また、前記本発明工具1〜4、比較例工具1〜4の切刃表面に、表8に示す平均層厚の硬質被覆層をPVD法あるいはCVD法で被覆形成し、本発明表面被覆WC基超硬合金製切削工具(以下、「本発明被覆工具」という)1〜4、比較例表面被覆WC基超硬合金製切削工具(以下、「比較例被覆工具」という)1〜4を作製した。
上記の各被覆工具について、以下に示す、湿式連続切削加工試験を実施し、切れ刃の逃げ面塑性変形量を測定するとともに、切れ刃の損耗状態を観察した。
切削条件:
被削材:JIS・SUS304(HB170)の丸棒、
切削速度:180m/min、
切り込み:2.0mm、
送り:0.5mm/rev、
切削時間:5分、
湿式水溶性切削油使用。
表9に、切削試験の結果を示す。
Figure 2021152201

Figure 2021152201
表7及び表9に示される試験結果によれば、本発明工具および本発明被覆工具は、欠損を発生することもなく、すぐれた耐欠損性に加え、耐塑性変形性を発揮するのに対して、比較例工具および比較例被覆工具は、欠損の発生もしくは塑性変形により工具寿命が短命であることがわかる。
以上のとおり、本発明工具および本発明被覆工具は、合金鋼等の断続切削加工に供した場合、すぐれた耐欠損性、および、耐塑性変形性を発揮し、他の被削材、切削条件に適用した場合にも、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を発揮し、工具の長寿命化が図られることが期待される。

Claims (3)

  1. WC基超硬合金を基体とするWC基超硬合金製切削工具において、
    前記WC基超硬合金の成分組成は、結合相形成成分としてのCoを6.0〜14.0質量%とCrを0.1〜1.4質量%含有し、残部はWC及び不可避不純物からなり 、前記WC基超硬合金の断面について結合相の粒度分布を解析し、累積10%粒子面積のときの結合相粒子一つが占める面積をA10、累積90%粒子面積のときの結合相粒子一つが占める面積をA90とした際、A10が0.20μm以上、0.30μm未満であり、かつ、A90/A10が5.0以上、8.0未満であることを特徴とするWC基超硬合金製切削工具。
  2. 前記WC基超硬合金は、TaC、NbC、TiC及びZrCのうちから選ばれる少なくとも1種以上を合計量で4.0質量%以下、さらに含有することを特徴とする請求項1に記載のWC基超硬合金製切削工具。
  3. 請求項1または請求項2に記載のWC基超硬合金製切削工具の少なくとも切れ刃には、硬質被覆層が形成されていることを特徴とする表面被覆WC基超硬合金製切削工具。
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