定義
本発明の種々の実施形態および態様が本明細書で示され説明されるが、そのような実施形態および態様は例としてのみ提供されることは当業者には明らかである。この時点で、当業者には本発明から逸脱することなく数多くのバリエーション、変化および置き換えが思い浮かぶ。本明細書に記載される本発明の実施形態に対する種々の代替物を本発明を実行する際に用いることができることは理解されるべきである。
本明細書で使用される見出しは体系化目的のみのためであり、記載される主題を限定するものと解釈するべきではない。これらに限定されないが、特許、特許出願、記事、書籍、説明書、および論文を含む出願中に引用されるすべての文書、または文書の部分は、いかなる目的であれ参照によりその全体が明示的に本明細書に組み込まれる。
本明細書で使用される略称は化学および生物学の技法内でのそれらの従来の意味を有する。本明細書に記載される化学構造および化学式は、化学技法で公知である化学原子価の標準則に従って構成される。
他の方法で定義されていなければ、本明細書で使用される専門および科学用語は当業者により一般に理解されているのと同じ意味を有する。例えば、Singletonら、DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY 第2版、J. Wiley&Sons(New York、NY 1994年);Sambrookら、MOLECULAR CLONING、A LABORATORY MANUAL、Cold Springs Harbor Press(Cold Springs Harbor、NY 1989年)を参照されたい。本明細書に記載される方法、装置および材料に類似するまたは等価ないかなる方法、装置および材料も本発明の実行において使用することが可能である。以下の定義は本明細書で頻繁に使用されるある種の用語の理解を促進するために提供されるものであり、本開示の範囲を限定することを意味していない。
本明細書で使用される「核酸」または「オリゴヌクレオチド」または「ポリヌクレオチド」または文法的相当語句は、互いに共有結合されている少なくとも2つのヌクレオチドを意味する。用語「核酸」とは、一本鎖もしくは二本鎖形態のデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドおよびこれらのポリマー、またはこれらの相補体のことである。用語「ポリヌクレオチド」とはヌクレオチドの直鎖状配列のことである。用語「ヌクレオチド」とは典型的にはポリヌクレオチドの一単位、すなわち、モノマーのことである。ヌクレオチドはリボヌクレオチドでもデオキシリボヌクレオチドでもこれらの改変バージョンでも可能である。本明細書で想定されているポリヌクレオチドの例は、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖RNA(siRNAを含む)、ならびに一本鎖および二本鎖DNAおよびRNAの混合物を有するハイブリッド分子を含む。この用語は、合成である、天然に存在する、および天然には存在しない、基準核酸に類似する結合特性を有する、ならびに基準ヌクレオチドに類似する様式で代謝される、既知のヌクレオチド類似物または改変骨格残基もしくは連鎖を含有する核酸も包含する。そのような類似物の例は、これらに限定されないが、ホスホロチオエート、ホスホロアミド酸、メチルホスホン酸、キラルメチルホスホン酸、および2−O−メチルリボヌクレオチドを含む。
用語「ホスホロチオエート核酸」とは、1つ以上のヌクレオチド間連鎖がホスホロチオエート部分(チオホスフェート)部分を通じてである核酸のことである。ホスホロチオエート部分はモノチオホスフェート(−P(O)3(S)3−−)でもジチオホスフェート(−P(O)2(S)2 3−−)でもよい。実施形態において、ホスホロチオエート部分はモノチオホスフェート(−P(O)3(S)3−−)である。実施形態において、ホスホロチオエート核酸はモノチオホスフェート核酸である。実施形態において、ホスホロチオエート核酸のヌクレオシドの1つ以上がホスホロチオエート部分(例えば、モノチオホスフェート)部分を通じて連結されており、残りのヌクレオシドがリン酸ジエステル部分(−P(O)4 3−−)を通じて連結されている。実施形態において、ホスホロチオエート核酸のヌクレオシドの1つ以上がホスホロチオエート部分(例えば、モノチオホスフェート)部分を通じて連結されており、残りのヌクレオシドがメチルホスホン酸連鎖を通じて連結されている。実施形態において、ホスホロチオエート核酸のすべてのヌクレオシドがホスホロチオエート部分(例えば、モノチオホスフェート)部分を通じて連結されている。
ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド(ホスホロチオエート核酸)は典型的には約5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、40、50またはこれよりも多いヌクレオチド長から約100ヌクレオチド長までである。ホスホロチオエート核酸は長さがもっと長い、例えば、200、300、500、1000、2000、3000、5000、7000、10,000等でもよい。上記のように、ある種の実施形態において、本明細書のホスホロチオエート核酸は1つ以上のリン酸ジエステル結合を含有する。他の実施形態において、ホスホロチオエート核酸は代わりの骨格(例えば、ボラノリン酸、メチルホスホン酸、ホスホロアミド酸、またはO−メチルホスホラミダイト連鎖のような当技術分野で公知のリン酸ジエステルの模倣物または類似物)を含む(Eckstein、Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach、Oxford University Press参照)。ホスホロチオエート核酸は、ペプチド核酸モノマーもしくはポリマー、ロックド核酸モノマーもしくはポリマー、モルフォリノモノマーもしくはポリマー、グリコール核酸モノマーもしくはポリマー、またはトレオース核酸モノマーもしくはポリマーのような当技術分野で公知の1つ以上の核酸類似物モノマーも含み得る。他の類似物核酸は、米国特許第5,235,033号および米国特許第5,034,506号、ならびに6および7章、ASC Symposium Series 580、Carbohydrate Modifications in Antisense Research、SanghuiおよびCook編に記載される核酸を含む、陽性骨格、非イオン性骨格、および非リボース骨格を有する核酸を含む。1つ以上の炭素環式糖を含有する核酸も核酸の一定義内に含まれる。リボース−リン酸骨格の改変は種々の理由、例えば、生理的環境においてまたはバイオチップ上のプローブとしてそのような分子の安定性および半減期を増加させるために行うことができる。天然に存在する核酸および類似物の混合物を作成することが可能であり、代わりに、異なる核酸類似物の混合物、ならびに天然に存在する核酸と類似物の混合物を作ることができる。ホスホロチオエート核酸およびホスホロチオエートポリマー骨格は直鎖状でも分岐状でも可能である。例えば、分岐状核酸は繰り返して分岐されてデンドリマーおよび同類のもののような高次構造を形成する。
本明細書で使用されるように、「ホスホロチオエートポリマー骨格」は、少なくとも2つのホスホロチオエート連鎖(例えば、モノチオホスフェート)を有する化学ポリマーである(例えば、糖サブユニット、環状サブユニットまたはアルキルサブユニットを互いに連結する)。ホスホロチオエートポリマー骨格はホスホロチオエート糖ポリマーでもよく、このポリマーはペントース糖の鎖の1つ以上(またはすべて)が核酸中に通常存在する塩基(核酸塩基)を欠くホスホロチオエート核酸である。ホスホロチオエートポリマー骨格は2つ以上のホスホロチオエート連鎖を含むことが可能である。ホスホロチオエートポリマー骨格は、5、6、7、8、9、10、12、15、25、30、40、50またはこれよりも多い連鎖を含むことが可能であり、約100までのホスホロチオエート連鎖を含有することが可能である。ホスホロチオエートポリマー骨格は多数の連鎖、例えば、200、300、500、1000、2000、3000、5000、7000、10,000、および同等のものを含有することも可能である。
ホスホロチオエート核酸およびホスホロチオエートポリマー骨格は部分的にまたは完全にホスホロチオエート化されていてもよい。例えば、ホスホロチオエート核酸のヌクレオチド間連鎖の50%以上がホスホロチオエート連鎖であることが可能である。実施形態において、ホスホロチオエート核酸のヌクレオチド間連鎖の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%はホスホロチオエート連鎖である。実施形態において、ホスホロチオエート核酸のヌクレオチド間連鎖の50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%はホスホロチオエート連鎖である。実施形態において、ホスホロチオエート核酸のヌクレオチド間連鎖の75%、80%、85%、90%、95%、または99%はホスホロチオエート連鎖である。実施形態において、ホスホロチオエート核酸のヌクレオチド間連鎖の90%、95%、または99%はホスホロチオエート連鎖である。実施形態において、残りのヌクレオチド間連鎖はリン酸ジエステル連鎖である。実施形態において、残りのヌクレオチド間連鎖はメチルホスホン酸連鎖である。実施形態において、ホスホロチオエート核酸のヌクレオチド間連鎖の100%はホスホロチオエート連鎖である。同様に、ホスホロチオエートポリマー骨格中の糖間連鎖の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%はホスホロチオエート連鎖であることが可能である。実施形態において、ホスホロチオエートポリマー骨格中の糖間連鎖の50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%はホスホロチオエート連鎖であることが可能である。実施形態において、ホスホロチオエートポリマー骨格中の糖間連鎖の75%、80%、85%、90%、95%、または99%はホスホロチオエート連鎖であることが可能である。実施形態において、ホスホロチオエートポリマー骨格中の糖間連鎖の90%、95%、または99%はホスホロチオエート連鎖であることが可能である。実施形態において、残りのヌクレオチド間連鎖はリン酸ジエステル連鎖である。実施形態において、残りのヌクレオチド間連鎖はメチルホスホン酸連鎖である。実施形態において、ホスホロチオエートポリマー骨格中の糖間連鎖の100%はホスホロチオエート連鎖である。
核酸は非特異的配列を含むことが可能である。本明細書で使用されるように、用語「非特異的配列」とは、他のいかなる核酸配列とも相補的であるように設計されていなまたは部分的にのみ相補的である一連の残基を含有する核酸配列のことである。例として、非特異的核酸配列は、細胞または生物と接触した場合、阻害性核酸として機能しない核酸残基の配列である。「阻害性核酸」とは、標的核酸(例えば、タンパク質に翻訳可能なmRNA)に結合して標的核酸の転写(例えば、DNAからmRNA)を減少させるまたは標的核酸(例えば、mRNA)の翻訳を減少させるまたは転写物スプライシング(例えば、一本鎖モルフォリノオリゴ)を変更することができる核酸(例えば、DNA、RNA、ヌクレオチド類似体のポリマー)である。
「標識核酸またはオリゴヌクレオチド」は、核酸に結合している検出可能な標識の存在を検出することにより核酸の存在を検出できるように、リンカーもしくは化学結合を通じて、共有結合的に、またはイオン性、ファンデルワールス、静電気、もしくは水素結合を通じて非共有結合的に、標識に結合している核酸またはオリゴヌクレオチドである。代わりに、結合パートナーの対のうちの一方がもう一方、例えば、ビオチン、ストレプトアビジンに結合する高親和性相互作用を使用する方法は同じ結果を達成することができる。実施形態において、ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格は、本明細書に開示されるおよび当技術分野で一般に知られている検出可能な標識を含む。
単語「相補的な」または「相補性」とは、ポリヌクレオチド内の核酸が第2のポリヌクレオチド内の別の核酸と塩基対を形成する能力のことである。例えば、配列A−G−Tは配列T−C−Aに相補的である。相補性は、核酸の一部のみが塩基対合に従って適合する部分的でもまたはすべての核酸が塩基対合に従って適合する完全でもよい。
核酸は、それが別の核酸配列と機能的な関係に置かれている場合は「作動可能に連結されて」いる。例えば、プレ配列もしくは分泌リーダーのためのDNAは、それがポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合は、ポリペプチドのためのDNAに作動可能に連結されており、プロモーターもしくはエンハンサーは、それが配列の転写に影響を及ぼす場合には、コード配列に作動可能に連結されており、またはリボソーム結合部位は、それが翻訳を促進するように配置されている場合は、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、「作動可能に連結された」とは連結されているDNA配列が互いに近くにある、分泌リーダーの場合には、近接していてリーディング相にあることを意味する。しかし、エンハンサーは近接している必要はない。連結は都合の良い制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合には、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが従来の慣例に従って使用される。
用語「遺伝子」とは、タンパク質を産生することに関与しているDNAのセグメントを意味し、遺伝子はコード領域に先行するおよび後に続く領域(リーダーおよびトレーラー)、ならびに個々のコードセグメント(エキソン)間の介在配列(イントロン)を含む。リーダー、トレーラーならびにイントロンは、遺伝子の転写および翻訳中に必要な調節エレメントを含む。さらに、「タンパク質遺伝子産物」とは特定の遺伝子から発現されるタンパク質である。
遺伝子に関連して本明細書で使用される単語「発現」または「発現された」はその遺伝子の転写産物および/または翻訳産物を意味する。細胞におけるDNA分子の発現レベルは細胞内に存在する対応するmRNAの量またはそのDNAによりコードされ細胞により産生されるタンパク質の量に基づいて決定することができる。非コード核酸分子(例えば、siRNA)の発現レベルは当技術分野では周知の標準PCRまたはノーザンブロット法により検出することができる。Sambrookら、1989年 Molecular Cloning:A Laboratory Manual、18.1−18.88を参照されたい。
用語「組換えの」は、例えば、細胞または核酸、タンパク質またはベクターに関連して使用される場合、細胞、核酸、タンパク質もしくはベクターが異種核酸もしくはタンパク質の導入または天然の核酸もしくはタンパク質の変更により改変されていること、または細胞がそのようにして改変された細胞由来であることを示す。したがって、例えば、組換え細胞は細胞の天然(非組換え)形態内では見出せない遺伝子を発現するまたは他の方法では異常に発現される、低発現されるもしくは全く発現されない天然の遺伝子を発現する。トランスジェニック細胞および植物は、典型的には組換え法の結果として異種遺伝子またはコード配列を発現する細胞および植物である。
用語「異種の」は、核酸の部分に関連して使用される場合、核酸が天然には互いに同じ関係では見出せない2つ以上の部分配列を含むことを示す。例えば、核酸は典型的には、無関係な遺伝子由来の2つ以上の配列、例えば、1つの供給源からのプロモーターと別の供給源からのコード領域が新たな機能的核酸を作るように配置されて組換え的に生成される。同様に、異種タンパク質は、タンパク質が天然には互いに同じ関係では見出せない2つ以上の部分配列を含む(例えば、融合)ことを示す。
用語「外来性の」とは所与の細胞または生物の外側を起源とする分子または物質(例えば、化合物、核酸またはタンパク質)のことである。例えば、本明細書で言及される「外来性プロモーター」は、それが発現される植物を起源としないプロモーターである。逆に、用語「内在性の」または「内在性プロモーター」とは所与の細胞または生物原産の、またはこの内を起源とする分子または物質のことである。
用語「単離された」は、核酸またはタンパク質に適用される場合、核酸またはタンパク質が、天然の状態ではそれが会合している他の細胞成分が本質的にないことを表す。この用語は、例えば、均一な状態であることが可能であり、乾燥物でもまたは水溶液でもよい。純度および均一性は典型的には、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーのような分析化学技法を使用して決定される。調製物中に存在する優占種であるタンパク質は実質的に精製されている。
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は本明細書では互換的に使用され、アミノ酸残基のポリマーのことを指し、ポリマーは実施形態において、アミノ酸からなっていない部分にコンジュゲートすることができる。この用語は1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用する。「融合タンパク質」とは、単一部分として組換え的に発現される2つ以上の別々のタンパク質配列をコードするキメラタンパク質のことである。
用語「ペプチジル」および「ペプチジル部分」は一価ペプチドを意味する。
用語「アミノ酸」とは、天然に存在するおよび合成アミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸に類似する様式で機能するアミノ酸類似物およびアミノ酸模倣物のことである。天然に存在するアミノ酸は遺伝コードによりコードされているアミノ酸、ならびに後で改変されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γカルボキシグルタミン酸、およびO−ホスホセリンである。アミノ酸類似物とは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合しているα炭素を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムのことである。そのような類似物は改変R基(例えば、ノルロイシン)または改変ペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的化学構造を保持している。アミノ酸模倣物は、アミノ酸の一般的化学構造とは異なるが、天然に存在するアミノ酸に類似する様式で機能する構造を有する化学化合物のことである。用語「天然に存在しないアミノ酸」および「非天然アミノ酸」とは天然に見出されることのないアミノ酸類似物、合成アミノ酸およびアミノ酸模倣物のことである。
アミノ酸は本明細書では、その一般に知られている3文字記号により、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨されている1文字記号により指すことができる。ヌクレオチドは、同様に、その一般的に認められている一文字コードにより指すことができる。
「保存的に改変された変異体」はアミノ酸と核酸配列の両方に適用する。特定の核酸配列に関して、「保存的に改変された変異体」とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸のことである。遺伝コードの縮重のせいで、いくつかの核酸配列はいかなる所与のタンパク質でもコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUはすべてアミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより特定されているすべての位置で、コドンはコードされているポリペプチドを変更せずに、記載されている対応するコドンのいずれにも変更することが可能である。そのような核酸の変異は「サイレント変異」であり、これは一種の保存的に改変された変異である。ポリペプチドをコードする本明細書のあらゆる核酸配列は、その核酸の考えうるあらゆるサイレント変異も記載している。当業者であれば、核酸中のそれぞれのコドン(通常、メチオニンの唯一のコドンであるAUG、および通常、トリプトファンの唯一のコドンであるTGGは除いて)は改変して機能的に同一の分子を産生可能であることを認識している。したがって、ポリペプチドをコードする核酸のそれぞれのサイレント変動はそれぞれの記載された配列に潜在している。
アミノ酸配列に関しては、当業者であれば、コードされた配列中の単一アミノ酸またはわずかなパーセンテージのアミノ酸を変更する、付加するまたは欠失する核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質配列への個々の置換、欠失または付加は、変更によりアミノ酸が化学的に類似するアミノ酸と置換される「保存的改変変異体」であることを認識している。機能的に類似するアミノ酸を提供する保存的置換表は当技術分野では周知である。そのような保存的に改変された変異体は本発明の多形変異体、種間相同体および対立遺伝子に加えられるものであり、これらを排除しない。
以下の8つの群はそれぞれが互いに保存的置換であるアミノ酸を含有する。
1)アラニン(A)、グリシン(G)
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)
4)アルギニン(R)、ロイシン(K)
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)
7)セリン(S)、スレオニン(T)および
8)システイン(C)、メチオニン(M)
(例えば、Creighton、Proteins(1984)参照)。
用語「同一の」もしくはパーセント「同一性」は2つ以上の核酸もしくはポリペプチド配列という文脈では、同じである、または下に記載されるデフォルトパラメータでBLASTもしくはBLAST2.0配列比較アルゴリズムを使用してもしくはマニュアルアライメントおよび目視検査によって測定した場合(例えば、NCBIウェブサイト http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/または同類のもの参照)、指定されたパーセンテージ(すなわち、比較窓または指定された領域にわたって比較され最大一致に整列された場合に、指定された領域にわたって約60%同一性、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはこれよりも高い同一性)の同じであるアミノ酸残基もしくはヌクレオチドを有する2つ以上の配列もしくは部分配列のことである。次に、そのような配列は「実質的に同一である」と言われる。この定義は検査配列の相補体のことでもあり、またはこれに適用され得る。この定義には、欠失および/または付加を有する配列、ならびに置換を有する配列も含まれる。下記の通り、好ましいアルゴリズムはギャップおよび同類のものを説明することが可能である。好ましくは、少なくとも約25アミノ酸またはヌクレオチド長である領域にわたって、またはさらに好ましくは50−100アミノ酸またはヌクレオチド長である領域にわたって同一性が存在する。
「抗体」とは、免疫グロブリン遺伝子またはこの断片由来のフレームワーク領域を含み、抗原に特異的に結合してこれを認識するポリペプチドのことである。認識されている免疫グロブリン遺伝子には、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、エプシロンおよびミュー定常領域遺伝子、ならびに多数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖はカッパまたはラムダに分類される。重鎖はガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはエプシロンに分類され、これらは次に、それぞれ免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを定義する。典型的には、抗体の抗原結合領域は結合の特異性および親和性で最も決定的に重要になる。いくつかの実施形態において、抗体または抗体の断片は、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ラクダ、等を含む異なる生物由来であってよい。本発明の抗体は、抗体の所望の機能(例えば、グリコシル化、発現、抗原認識、エフェクター機能、抗原結合、特異性、等)を改良するまたは調節するために1つ以上のアミノ酸位置で改変されているまたは突然変異されている抗体を含むことができる。
例となる免疫グロブリン(抗体)構造ユニットはテトラマーを含む。それぞれのテトラマーは、それぞれの対が1つの「軽」(約25kD)および1つの「重」鎖(約50−70kD)を有するポリペプチド鎖の2つの同一の対で構成されている。それぞれの鎖のN終端は、主に抗原認識の原因である約100から110またはこれよりも多いアミノ酸の可変領域を定義している。用語可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)とは、それぞれこれらの軽鎖および重鎖のことである。Fc(すなわち、断片結晶化可能領域)は免疫グロブリンの「基礎」または「尾部」であり、典型的には抗体のクラスに応じて2つまたは3つの定常ドメインを提供する2本の重鎖で構成されている。特異的なタンパク質に結合することにより、Fc領域はそれぞれの抗体が所与の抗原について適切な免疫応答を生じることを保証している。Fc領域は、Fc受容体のような種々の細胞受容体、および補体タンパク質のような他の免疫分子にも結合する。
抗体は、例えば、無傷の免疫グロブリンとしてまたは種々のペプチダーゼを用いた消化により産生されるいくつかの特徴がはっきりした断片として存在する。したがって、例えば、ペプシンは抗体をヒンジ領域のジスルフィド結合の下で消化して、F(ab)’2、それ自体がジスルフィド結合によりVH−CH1に結合されている軽鎖であるFabのダイマーを産生する。F(ab)’2は穏やかな条件下で還元されてヒンジ領域のジスルフィド結合を切断し、それによりF(ab)’2ダイマーをFab’モノマーに変換する。Fab’モノマーは本質的にヒンジ領域の一部を有する抗原結合部分である(Fundamental Immunology(Paul編、第3版、1993年参照)。種々の抗体断片が無傷の抗体の消化の点から定義されるが、当業者であれば、そのような断片は化学的にまたは組換えDNA方法を使用することにより新規に合成することができることを認識している。したがって、用語抗体は、本明細書で使用されるように、ホール抗体の改変により産生される抗体断片、または組換えDNA方法を使用して新規に合成される抗体断片(例えば、一本鎖Fv)、またはファージディスプレイライブラリーを使用して同定される抗体断片(例えば、McCaffertyら、Nature 348:552−554頁(1990)参照)も含む。
一本鎖可変断片(scFv)は典型的には、10から約25アミノ酸の短いリンカーペプチドで接続された免疫グロブリンの重(VH)と軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。リンカーは通常、柔軟性のためのグリシン、ならびに可溶性のためのセリンまたはスレオニンが豊富であってよい。リンカーはVHのN終端をVLのC終端に接続する、またはその逆であることが可能である。
本発明の適切な抗体、例えば、組換え、モノクローナル、またはポリクローナル抗体を調製するため、および本発明に従って使用するため、当技術分野で公知の多くの技法を使用することが可能である(例えば、Kohler&Milstein、Nature 256:495−497頁(1975);Kozborら、Immunology Today 4:72頁(1983);Coleら、77−96頁 in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss、Inc.(1985);Coligan、Current Protocols in Immunology(1991);Harlow&Lane、Antibodies、A Laboratory Manual(1988);およびGoding、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice(第2版、1986)参照)。目的の抗体の重および軽鎖をコードする遺伝子は細胞からクローン化することが可能であり、例えば、モノクローナル抗体をコードする遺伝子はハイブリドーマからクローン化しこれを使用して組換えモノクローナル抗体を産生することが可能である。モノクローナル抗体の重および軽鎖をコードする遺伝子ライブラリーをハイブリドーマまたはプラズマ細胞から作成することも可能である。重および軽鎖遺伝子産物を無作為に組み合わせれば、異なる抗原特異性を有する抗体の大きなプールが作成される(例えば、Kuby、Immunology(第3版、1997)参照)。一本鎖抗体または組換え抗体の産生のための技法(米国特許第4,946,778号、米国特許第4,816,567号)を適応させて本発明のポリペプチドに対する抗体を産生することが可能である。トランスジェニックマウス、または他の哺乳動物のような他の生物を使用してヒト化またはヒト抗体を発現することもできる(例えば、米国特許第5,545,807号、米国特許第5,545,806号、米国特許第5,569,825号、米国特許第5,625,126号、米国特許第5,633,425号、米国特許第5,661,016号、Marksら、Bio/Technology 10:779−783頁(1992);Lonbergら、Nature 368:856−859頁(1994);Morrison、Nature 368:812−13頁(1994);Fishwildら、Nature Biotechnology 14:845−51頁(1996);Neuberger、Nature Biotechnology 14:826頁(1996);およびLonberg&Huszar、Intern.Rev.Immunol.13:65−93頁(1995)参照)。代わりに、ファージディスプレイ技術を使用すれば、選択された抗原に特異的に結合する抗体およびヘテロマーFab断片を同定することが可能である(例えば、McCaffertyら、Nature 348:552−554頁(1990);Marksら、Biotechnology 10:779−783頁(1992)参照)。抗体を二重特異性にする、すなわち、2つの異なる抗原を認識できるようにすることも可能である(例えば、WO93/08829、Trauneckerら、EMBO J.10:3655−3659頁(1991);およびSureshら、Methods in Enzymology 121:210頁(1986)参照)。抗体はヘテロコンジュゲートである、例えば、2つの共有結合抗体、または免疫毒素であることも可能である(例えば、米国特許第4,676,980号、WO91/00360;WO92/200373;およびEP03089参照)。
非ヒト抗体をヒト化するまたは霊長類化するための方法は当技術分野では周知である(例えば、米国特許第4,816,567号、米国特許第5,530,101号、米国特許第5,859,205号、米国特許第5,585,089号、米国特許第5,693,761号、米国特許第5,693,762号、米国特許第5,777,085号、米国特許第6,180,370号、米国特許第6,210,671号、および米国特許第6,329,511号、WO87/02671;欧州特許出願第0173494号;Jonesら、(1986)Nature 321:522;ならびにVerhoyenら、(1988)Science 239:1534)。ヒト化抗体は、例えば、WinterおよびMilstein(1991)Nature 349:293にさらに記載されている。一般に、ヒト化抗体は1つ以上のアミノ酸残基が非ヒトである供給源からそこに導入されている。これらの非ヒトアミノ酸残基はインポート残基と呼ばれることが多く、これは典型的にはインポート可変ドメインから取られている。ヒト化は、齧歯類CDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列の代わりに用いることにより、本質的にはWinterと共同研究者の方法(例えば、Morrisonら、PNAS USA、81:6851−6855頁(1984)、Jonesら、Nature 321:522−525頁(1986);Riechmannら、Nature 332:323−327頁(1988);MorrisonおよびOi、Adv.Immunol.、44:65−92頁(1988)、Verhoeyenら、Science 239:1534−1536頁(1988)ならびにPresta、Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596頁(1992)、Padlan、Molec.Immun.、28:489−498頁(1991);Padlan、Molec.Immun.、31(3):169−217頁(1994)参照)に従って実施することが可能である。したがって、そのようなヒト化抗体はキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)であり、無傷のヒト可変ドメインよりもかなり少ないドメインが非ヒト種由来の対応する配列で置き換えられている。実際には、ヒト化抗体は典型的には、いくつかのCDR残基およびおそらくいくつかのFR残基が齧歯類抗体の類似の部位由来の残基によって置き換えられているヒト抗体である。例えば、ヒト化免疫グロブリンフレームワーク領域をコードする第1の配列および所望の免疫グロブリン相補性決定領域をコードする第2の配列セットを含むポリヌクレオチドを合成的にまたは適切なcDNAとゲノムDNAセグメントを組み合わせることにより作成することが可能である。ヒト定常領域DNA配列は種々のヒト細胞から周知の手順に従って単離することが可能である。
「キメラ抗体」は(a)抗原結合部位(可変領域)が異なるもしくは変更されたクラス、エフェクター機能および/もしくは種の定常領域、またはキメラ抗体に新しい特性を授ける全く異なる分子、例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬物、等に連結されるように定常領域もしくはこの部分が変更されている、置換されているまたは交換されている、または(b)可変領域もしくはこの部分が異なるもしくは変更された抗原特異性を有する可変領域で変更されている、置換されているもしくは交換されている抗体分子である。本発明の好ましい抗体、および本発明に従った使用のための好ましい抗体はヒト化および/またはキメラモノクローナル抗体を含む。
治療薬を抗体にコンジュゲートするための技法は周知である(例えば、Arnonら、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」、in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy、Reisfeldら、(編)、243−56頁(Alan R.Liss、Inc.1985年);Hellstromら、「Antibodies For Drug Delivery」in Controlled Drug Delivery(第2版)、Robinsonら、(編)、623−53頁(Marcel Dekker、Inc.1987年);Thorpe、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review」in Monoclonal Antibodies‘84:Biological And Clinical Applications、Pincheraら、(編)、475−506頁(1985);およびThorpeら、「The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates」、Immunol.Rev.、62:119−58頁(1982)参照)。本明細書で使用されるように、用語「抗体−薬物コンジュゲート」または「ADC」とは抗体にコンジュゲートされたまたは他の方法で共有結合された治療薬にことである。本明細書で言及される「治療薬」はがんのような疾患を治療するまたは予防するのに有用な組成物である。
語句抗体に「特異的に(または選択的に)結合する」または、タンパク質もしくはペプチドに言及する場合はこれらと「特異的に(または選択的に)免疫反応性である」とは、多くの場合、タンパク質と他の生物製剤の不均一な集団においてタンパク質の存在を決定する結合反応のことである。したがって、指定された免疫アッセイ条件下では、特定の抗体は、バックグラウンドの少なくとも2倍、さらに典型的には、バックグラウンドの10から100倍よりも多く特定のタンパク質に結合する。そのような条件下での抗体への特異的結合は、特定のタンパク質に対するその特異性で選択される抗体が必要である。例えば、選択された抗原には特異的に免疫反応性であるが他のタンパク質にはそうではない抗体のサブセットのみを得るためにはポリクローナル抗体を選択することが可能である。この選択は、他の分子と交差反応する抗体を差し引くことにより達成できる。種々の免疫アッセイフォーマットを使用すれば、特定のタンパク質に特異的に免疫反応性の抗体を選択することができる。例えば、固相ELISA免疫アッセイはタンパク質に特異的に免疫反応性の抗体を選択するのに日常的に使用される(例えば、特異的な免疫反応を決定するのに使用することができる免疫アッセイフォーマットおよび条件の説明に関して、Harlow&Lane、Using Antibodies、A Laboratory Manual(1998)を参照されたい)。
「リガンド」とは、受容体に結合することができる薬剤、例えば、ポリペプチドまたは他の分子のことである。
「標識」または「検出可能な部分」は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的、または他の物理的手段により検出可能な組成物である。例えば、有用な標識は、32P、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(例えば 、ELISAにおいて一般に使用されているような)、ビオチン、ジゴキシゲニン、もしくはハプテンおよびタンパク質または例えば、標的ペプチドに特異的に反応性のペプチドまたは抗体に放射性標識を組み込むことにより検出可能にすることができる他の実体を含む。抗体を標識にコンジュゲートするための当技術分野で公知のいかなる適切な方法でも、例えば、Hermanson、Bioconjugate Techniques 1996年、Academic Press、Inc.、San Diegoに記載される方法を使用して用いることができる。
本明細書で提供される用語「ビオチン」とは、テトラヒドロチオフェン環と融合しているウレイド(テトラヒドロイミジザロン)環を特徴とする化合物のことである。本明細書に提供されるビオチンとは、5−[(3aS,4S,6aR)−2−オキソヘキサヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル]ペンタン酸のことであり、通常の意味では、CAS登録番号58−85−5のことである。本明細書で使用される「ビオチン結合ドメイン」はビオチンに結合することができるタンパク質ドメインである。ビオチン結合ドメインの非限定的例は、アビジン、ストレプトアビジンおよびニュートラアビジンを含む。
本明細書で提供される用語「アビジン」または「ストレプトアビジン」は、天然に存在する形態の活性を維持する(例えば、天然のタンパク質に対して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%活性以内)アビジンまたはストレプトアビジンの天然に存在する形態、相同体、変異体または誘導体(例えば、ニュートラアビジン)のいずれでも含む。いくつかの実施形態において、変異体は天然に存在する形態と比べて全配列または配列の部分(例えば、50、100、150または200連続アミノ酸部分)にわたり少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%アミノ酸配列同一性を有する。
「接触させる」はその平易な通常の意味に従って使用され、少なくとも2つの異なる種(例えば、生体分子または細胞を含む化学化合物)を反応する、相互作用するまたは物理的に接触するのに十分近位になるようにする過程のことである。しかし、得られる反応生成物は添加された試薬間の反応から直接にまたは添加された試薬の1つ以上由来であって反応混合物において生成されることが可能な中間体から生成することが可能であることは認識されるべきである。
用語「接触させる」は、2つの化学種を反応させる、相互作用させるまたは物理的に接触させることを含み、この2つの化学種は、例えば、本明細書に記載されるビオチンドメインおよびビオチン結合ドメインでもよい。実施形態において、接触させるは、例えば、本明細書に記載されるビオチンドメインをビオチン結合ドメインと相互作用させることを含む。
「対照」試料または値とは、検査試料との比較のための基準、通常は既知の基準としての働きをする試料のことである。例えば、検査試料は、例えば、検査化合物の存在下で検査状態から採取される、および、例えば、検査化合物の非存在下で(負の対照)、または既知の化合物の存在下で(正の対照)既知の状態由来の試料と比較することが可能である。対照は、いくつかの検査または結果から集めた平均値を表すことも可能である。当業者であれば、対照は任意の数のパラメータの評価のために設計可能であることを認識する。例えば、対照は、薬理学的データ(例えば、半減期)または治療手段(例えば、副作用の比較)に基づいて治療効果を比較するよう工夫することが可能である。当業者であれば、所与の状況においてどの対照に価値があるかを理解し、対照値との比較に基づいてデータを解析することができる。対照はデータの有意性を判定するのにも価値がある。例えば、所与のパラメータについての値が対照において広く異なる場合、検査試料の変動は有意であるとはみなされない。
「患者」または「これを必要とする対象」とは、本明細書で提供される組成物または医薬組成物の投与により治療することが可能な疾患または状態に罹っているまたはなりやすい生体のことである。非限定的例には、ヒト、他の哺乳動物、ウシ、ラット、マウス、イヌ、サル、ヤギ、ヒツジ、乳牛、シカ、および他の非哺乳動物が含まれる。いくつかの実施形態において、患者はヒトである。
用語「疾患」または「状態」とは、本明細書で提供される化合物、医薬組成物、または方法で治療が可能な患者または対象の状態または健康状態のことである。実施形態において、疾患はがん(例えば、肺がん、卵巣がん、骨肉腫、膀胱がん、子宮頸がん、肝臓がん、腎臓がん、皮膚がん(例えば、メルケル細胞癌)精巣がん、白血病、リンパ腫、頭頸部がん、結腸直腸がん、前立腺がん、膵臓がん、メラノーマ、乳がん、神経芽腫)である。疾患は、自己免疫、炎症性、がん、感染性、代謝性、発達、循環器、肝臓、消化器系、内分泌、神経性または他の疾患であることもある。
本明細書で使用されるように、用語「がん」とは、白血病、リンパ腫、メラノーマ、神経内分泌腫瘍、カルシノーマおよび肉腫を含む、哺乳動物で見出されるあらゆる種類のがん、新生物または悪性腫瘍のことである。本明細書で提供される化合物、医薬組成物または方法で治療が可能な例となるがんは、リンパ腫、肉腫、膀胱がん、骨肉腫、脳腫瘍、子宮頸がん、結腸がん、食道がん、胃がん、頭頸部がん、腎臓がん、メラノーマ、甲状腺がん、白血病、前立腺がん、乳がん(例えば、トリプルネガティブ、ERポジティブ、ERネガティブ、化学療法抵抗性、ハーセプチン抵抗性、HER2ポジティブ、ドキソルビシン抵抗性、タモキシフェン抵抗性、乳管癌、小葉癌、原発、転移性)、卵巣がん、膵臓がん、肝臓がん(例えば、肝細胞癌)、肺がん(非小細胞肺癌、扁平細胞肺癌、腺癌、大細胞肺癌、小細胞肺癌、カルチノイド、肉腫)、多形神経膠芽腫、グリオーマ、メラノーマ、前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、神経膠芽腫、卵巣がん、肺がん、扁平上皮癌(例えば、頭部、頸部、または食道)、結腸直腸がん、白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、B細胞リンパ腫、または多発性骨髄腫を含む。追加の例は、甲状腺、内分泌系、脳、乳房、子宮頸部、結腸、頭頸部、食道、肝臓、腎臓、肺、非小細胞肺のがん、メラノーマ、中皮腫、卵巣、肉腫、胃、子宮または髄芽腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽腫、グリオーマ、多形神経膠芽腫、卵巣がん、横紋筋肉腫、原発性血小板増加症、原発性マクログロブリン血症、原発性脳腫瘍、がん、悪性膵臓インスリノーマ、悪性カルチノイド、膀胱がん、前悪性皮膚病変、精巣がん、リンパ腫、甲状腺がん、神経芽腫、食道がん、尿生殖器がん、悪性高カルシウム血症、子宮内膜がん、副腎皮質がん、膵内分泌部または外分泌部の新生物、髄様甲状腺がん、髄様甲状腺癌、メラノーマ、結腸直腸がん、乳頭様甲状腺がん、肝細胞がん、乳頭のパジェット病、葉状腫瘍、小葉癌、乳管癌、膵星細胞のがん、肝星細胞のがん、または前立腺がんを含む。
用語「白血病」とは広くは、造血器官の進行性、悪性疾患のことであり、一般的には血液および骨髄における白血球およびその前駆体のゆがんだ増殖および成長を特徴とする。白血病は一般には、(1)疾患の持続期間および特徴−急性または慢性、(2)関与する細胞の種類;骨髄の(骨髄性の)、リンパ様(リンパ行性)、または単球性、および(3)血液中の異常細胞の数の増加または非増加−白血病性または無白血病性(亜白血性)に基づいて臨床的に分類される。本明細書で提供される化合物、医薬組成物、または方法で治療が可能な例となる白血病は、例えば、急性非リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性顆粒球性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性前骨髄球性白血病、成人T細胞白血病、非白血性白血病、白血球血症性白血病、好塩基球性白血病、芽細胞白血病、ウシ白血病、慢性骨髄性白血病、皮膚白血病、未分化細胞性白血病、好酸球性白血病、グロス白血病、ヘアリーセル白血病、血芽球性白血病(hemoblastic)、血球芽細胞白血病(hemocytoblastic)、組織球性白血病、幹細胞白血病、急性単球性白血病、白血球減少性白血病、リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病(lymphocytic leukemia)、リンパ球性白血病(lymphogenous leukemia)、リンパ様白血病、リンパ肉腫細胞性白血病、マスト細胞白血病、巨核球性白血病、小骨髄芽球性白血病、単球性白血病、骨髄芽球性白血病、骨髄性白血病、骨髄性顆粒球性白血病、骨髄単球性白血病、ネーゲリ白血病、形質細胞白血病、多発性骨髄腫、形質細胞性白血病、前骨髄球性白血病、リーダー細胞性白血病、シリング白血病、幹細胞白血病、亜白血性白血病、または未分化細胞白血病を含む。
用語「肉腫」とは一般的に、胚性結合組織のような物質で作られており、一般には原線維または均一な物質に包埋された密集した細胞で構成されている腫瘍のことである。本明細書で提供される化合物、医薬組成物、または方法で治療が可能な肉腫は、軟骨肉腫、線維肉腫、リンパ肉腫、黒色肉腫、粘液肉腫、骨肉腫、アベメシー肉腫(Abemethy’s sarcoma)、脂肪肉腫(adipose sarcoma)、脂肪肉腫(liposarcoma)、胞巣状軟部肉腫、エナメル上皮肉腫、ブドウ状肉腫、緑色腫肉腫、絨毛癌、胎児性肉腫、ウィルムス腫瘍肉腫、子宮内膜肉腫、間質性肉腫、ユーイング肉腫、筋膜肉腫、線維芽細胞肉腫、巨細胞肉腫、顆粒球性肉腫、ホジキン肉腫、特発性多発性色素性出血性肉腫、B細胞の免疫芽球肉腫、リンパ腫、T細胞の免疫芽球肉腫、イエンセン肉腫、カポジ肉腫、クッパー星細胞肉腫、血管肉腫、白血肉腫、悪性間葉腫肉腫、傍骨性骨肉腫、細網肉腫、ラウス肉腫、漿液嚢胞性肉腫、滑膜肉腫、または毛細血管拡張性肉腫が含まれる。
用語「メラノーマ」は皮膚および他の器官のメラニン細胞組織から生じる腫瘍を意味すると解釈されている。本明細書で提供される化合物、医薬組成物、または方法で治療が可能なメラノーマは、例えば、末端黒子型黒色腫、無色素性黒色腫、良性若年性黒色腫、クラウドマン黒色腫、S91黒色腫、ハーディング・パッセー黒色腫、若年性黒色腫、悪性黒子型黒色腫、悪性黒色腫、結節性メラノーマ、爪下黒色腫、または表在拡大型黒色腫を含む。
用語「癌」とは、周囲組織を浸潤して転移を引き起こす傾向がある上皮細胞からなる悪性新成長のことである。本明細書で提供される化合物、医薬組成物、または方法で治療が可能な例となる癌は、髄様甲状腺癌、家族性髄様甲状腺癌、腺房癌、小葉癌、腺嚢癌腫、腺様嚢胞癌、腺癌、副腎皮質の癌、肺胞癌、肺胞細胞癌、基底細胞癌(basal cell carcinoma)、基底細胞癌(carcinoma basocellulare)、類基底細胞癌、基底扁平細胞癌、気管支肺胞上皮癌、細気管支癌、気管支原性肺癌、大脳様癌、胆管細胞癌、絨毛癌、粘液癌、面皰癌、子宮体癌、篩状癌、装甲癌、皮膚癌、柱状細胞癌(cylindrical carcinoma)、円柱細胞癌(cylindrical cell carcinoma)、管癌(duct carcinoma)、管癌(ductal carcinoma)、カルシノーマデュラム(carcinoma durum)、胚性癌腫、髄様癌、類表皮癌、上皮性腺様癌(carcinoma epitheliale adenoides)、外向発育癌、潰瘍癌、線維性癌、ゼラチン状癌腫、コロイド腺癌、巨細胞癌(giant cell carcinoma)、巨細胞癌(carcinoma gigantocellulare)、腺癌、顆粒膜細胞癌、毛母癌、肝様腺癌(hematoid carcinoma)、肝細胞癌、ハースル細胞癌、ヒアリン癌(hyaline carcinoma)、副腎様癌、小児型胎児性癌、上皮内癌(carcinoma in situ)、表皮内癌、上皮内癌(intraepithelial carcinoma)、クロムペッカー癌(Krompecher’s carcinoma)、クルチツキー細胞癌、大細胞癌、水晶体癌、レンズ状癌(carcinoma lenticulare)、脂肪腫癌、小葉癌、リンパ上皮癌、髄様癌(carcinoma medullare)、髄様癌(medullary carcinoma)、黒色癌、軟性癌、粘液癌(mucinous carcinoma)、粘液分泌性癌(carcinoma muciparum)、粘液細胞癌(carcinoma mucocellulare)、粘表皮癌、粘液癌(carcinoma mucosum)、粘液性癌、粘液腫状癌、上咽頭癌、燕麦細胞癌、骨化癌(carcinoma ossificans)、類骨癌、乳頭癌、門脈周囲癌、前浸潤癌、有棘細胞癌、髄質様癌(pultaceous carcinoma)、腎臓の腎細胞癌、予備細胞癌、肉腫性癌(carcinoma sarcomatodes)、シュナイダー癌腫、硬性癌、陰嚢癌、印環細胞癌、単純癌、小細胞癌、ソラノイド癌、回転楕円面細胞癌腫、紡錘細胞癌、海綿様癌、扁平上皮癌(squamous carcinoma)、扁平上皮癌(squamous cell carcinoma)、ストリング癌腫、毛細血管拡張癌(carcinoma telangiectaticum)、毛細血管拡張症様癌(carcinoma telangiectodes)、移行上皮癌、結節癌(carcinoma tuberosum)、管状癌、結節癌(tuberous carcinoma)、疣状癌、または絨毛癌が含まれる。
本明細書で使用されるように、用語「転移」、「転移性の」、および「転移がん」は互換的に使用可能であり、増殖性疾患または障害、例えば、がんの1つの器官または別の隣接していない器官または身体部分からの伝播のことである。がんは始発部位、例えば、乳房で生じ、その部位は原発性腫瘍、例えば、原発乳がんと呼ばれる。原発性腫瘍または始発部位の一部のがん細胞は、局所領域の周辺正常組織に侵入し浸潤する能力および/またはリンパ系もしくは脈管系の壁を透過し、その系を通じて身体の他の部位および組織に循環する能力を獲得する。原発性腫瘍のがん細胞から形成される第2の臨床的に検出可能な腫瘍は転移性腫瘍または続発性腫瘍と呼ばれる。がん細胞が転移すると、転移性腫瘍およびその細胞は最初の腫瘍の細胞に類似すると推定される。したがって、肺がんが乳房に転移する場合、乳房の部位での続発性腫瘍は異常な肺細胞と異常ではない乳房細胞からなる。乳房の続発性腫瘍は転移性肺がんと呼ばれる。したがって、語句転移性がんとは、対象が原発性腫瘍を有するまたは有していたおよび1つ以上の続発性腫瘍を有している疾患のことである。語句非転移性癌または転移性ではないがんを有する対象とは、対象が原発性腫瘍を有するが1つ以上の続発性腫瘍はない疾患のことである。例えば、転移性肺がんとは原発性肺腫瘍を有するもしくは原発性肺腫瘍の病歴を有し、第2の位置にまたは複数の位置に、例えば、乳房に1つ以上の続発性腫瘍を有する対象の疾患のことである。
本明細書で使用されるように、「自己免疫疾患」とは、例えば、対象の身体中に通常存在する物質、組織および/または細胞に対して対象の免疫系による変化した免疫反応から生じる疾患または障害のことである。自己免疫疾患は、関節炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎、若年性特発性関節炎、強皮症、全身性強皮症、多発性硬化症、全身性エリトマトーデス(SLE)、重症筋無力症、若年発症糖尿病、1型糖尿病、ギラン・バレー症候群、橋本脳炎、橋本甲状腺炎、強直性脊椎炎、乾癬、シェーグレン症候群、血管炎、糸球体腎炎、自己免疫甲状腺炎、ベーチェット病、クローン病、潰瘍性大腸炎、水疱性類天疱瘡、サルコイドーシス、乾癬、魚鱗癬、グレーブス眼症、炎症性腸疾患、アジソン病、白斑、喘息、およびアレルギー性喘息を含むが、これらに限定されない。
本明細書で使用されるように、「炎症性疾患」とは異常なまたは変化した炎症を伴う疾患または障害のことである。炎症は、病原体、損傷を受けた細胞もしくは組織または刺激物質に応答した治癒過程の一部として免疫系により開始される生物学的応答である。慢性炎症は種々の疾患をもたらすことがある。炎症性疾患は、アテローム性動脈硬化症、アレルギー、喘息、関節リウマチ、移植片拒絶、セリアック病、慢性前立腺炎、炎症性腸疾患、骨盤内炎症性疾患、および炎症性筋疾患を含むが、これらに限定されない。
本明細書で使用されるように、「代謝障害」とは、例えば、炭水化物、アミノ酸、有機酸を含む種々の分子および物質の異常代謝を伴う疾患または障害のことである。代謝障害は、炭水化物代謝の障害、例えば、糖原病、アミノ酸代謝の障害、例えば、フェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、グルタル酸血症1型、尿素サイクル異常症または尿素サイクル欠損、例えば、カルバモイルリン酸合成酵素I欠損症、有機酸代謝(有機酸性尿)の障害、例えば、アルカプトン尿症、脂肪酸酸化およびミトコンドリア代謝の障害、例えば、中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症、ポルフィリン代謝の障害、例えば、急性間欠性ポルフィリン症、プリンまたはピリミジン代謝の障害、例えば、レッシュ・ナイハン症候群、ステロイド代謝の障害、例えば、先天性リポイド副腎皮質過形成(lipoid congenital adrenal hyperplasia)、先天性副腎皮質過形成、ミトコンドリア機能の障害、例えば、カーンズ・セイヤー症候群、ペルオキシソーム機能の障害、例えば、ツェルウェーガー症候群、ならびにリソソーム貯蔵障害、例えば、ゴーシェ病およびニーマン・ピック病を含むが、これらに限定されない。
本明細書で使用されるように、「発達障害」とは、言語障害、学習障害、運動性障害および神経発達障害を伴う小児期に始まることが多い疾患または障害のことである。例は、自閉症スペクトラム症および注意欠陥障害を含むが、これらに限定されない。
本明細書で使用されるように、「循環器疾患」とは、心臓、血管または両方に関連する疾患のことである。循環器疾患は、冠動脈心疾患、心筋症、高血圧性心疾患、心不全、不整脈、炎症性心臓病、末梢動脈疾患、脳血管疾患および炎症性心臓病を含むが、これらに限定されない。
本明細書で使用されるように、「肝疾患」とは、肝臓および/または肝機能の異常を伴う疾患のことである。肝疾患は、肝炎、アルコール性肝疾患、脂肪性肝疾患、肝硬変、バッド・キアリ症候群、ジルベール症候群およびがんを含むが、これらに限定されない。
本明細書で使用されるように、用語「腸疾患」とは、腸(小腸または大腸)の異常を伴う疾患または障害のことである。腸疾患は、胃腸炎、大腸炎、回腸炎、虫垂炎、セリアック病、クローン病、エンテロウイルス、過敏性腸症候群、および憩室性疾患を含むが、これらに限定されない。
本明細書で使用されるように、用語「内分泌疾患」とは、内分泌腺分泌不全、内分泌腺分泌過多および腫瘍を含む内分泌系の疾患または障害のことである。内分泌疾患は、アジソン病、糖尿病、コーン症候群、クッシング症候群、グルココルチコイド治療可能アルドステロン症、低血糖症、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、甲状腺炎、下垂体機能低下症、性腺機能低下症および副甲状腺障害を含むが、これらに限定されない。
本明細書で使用されるように、用語「神経障害」とは、構造的、生化学的または電気的異常を含む体神経系の疾患または障害のことである。神経障害は、脳損傷、脳機能不全、脊髄障害、末梢神経障害、脳神経障害、自律神経系障害、発作性障害、運動性障害、例えば、パーキンソン病および多発性硬化症ならびに中枢神経障害を含むが、これらに限定されない。
本明細書で使用されるように、用語「感染症」とは、宿主対象における病原体の感染、存在および/または成長を伴う疾患または障害のことである。感染性病原体は、ウイルス、細菌、真菌、原虫、多細胞寄生虫および異常タンパク質、例えば、プリオンを含むが、これらに限定されない。感染症を伴うウイルスは、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタインバーウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ヘルペスウイルス、水疱性口内炎ウイルス、肝炎ウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ポリオーマウイルス、ヒトパピローマウイルス、呼吸器多核体ウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、テングウイルス、ムンプスウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、ラウス肉腫ウイルス、黄熱病ウイルス、エボラウイルス、サル免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルスを含むが、これらに限定されない。感染症を伴う細菌は、M.チューバキュロシス(M.tuberculosis)、サルモネラ(Salmonella)種、E.コリ(E.coli)、クラミジア(Chlamydia)種、スタフィロコッカス(Staphylococcus)種、バシラス(Bacillus)種、およびシュードモナス(Psudomonas)種を含むが、これらに限定されない。
疾患(例えば、糖尿病、がん(例えば、前立腺がん、腎がん、転移性がん、メラノーマ、去勢抵抗性前立腺がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、神経膠芽腫、卵巣がん、肺がん、扁平上皮癌(例えば、頭部、頸部、または食道)、結腸直腸がん、白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、B細胞リンパ腫、または多発性骨髄腫))に関連する物質または物質活動または機能という文脈での用語「伴う」または「に伴う」とは、疾患(例えば、肺がん、卵巣がん、骨肉腫、膀胱がん、子宮頸がん、肝がん、腎がん、皮膚がん(例えば、メルケル細胞癌)、精巣がん、白血病、リンパ腫、頭頸部がん、結腸直腸がん、前立腺がん、膵がん、メラノーマ、乳がん、神経芽細胞腫)が、物質もしくは物質活動もしくは機能に(全体にまたは部分的に)より引き起こされる、または疾患の症状がこれらに(全体にまたは部分的に)より引き起こされることを意味する。
本明細書で使用される用語「異常な」とは、正常とは異なっていることである。酵素活性を記述するのに使用される場合、異常とは、正常な対照または正常な非疾患対照試料の平均よりも大きなまたは低い活性のことである。異常な活性とは疾患を生じる活性の量のことでもよく、異常な活性を正常なまたは非疾患関連量に戻すと(例えば、本明細書に記載される方法を使用することにより)、疾患または1つ以上の疾患症状が減少する。
本明細書で使用されるように、用語「細胞透過性の」または「細胞透過」とは、細胞外環境から細胞内に著しいまたは効果的な量で分子(例えば、タンパク質)が通過する能力のことである。したがって、細胞透過性コンジュゲートは細胞外環境から膜を通って細胞内に通過する分子である。
本明細書で使用されるように、用語「非細胞透過性の」または「非細胞透過」とは、細胞外環境から細胞内に著しいまたは効果的な量で分子が通過できないことである。したがって、非細胞透過性ペプチドまたはタンパク質は一般には、細胞の集団、器官または生物に対して著しい生物学的効果を達成するために細胞外環境から細胞膜を通じて細胞内に通過することができない。この用語は、わずかな数のペプチドまたはタンパク質の1つ以上が細胞に入る可能性を排除しない。しかし、この用語は、一般には細胞外環境から著しく細胞に入ることができない分子のことである。非細胞透過性分子および物質の例は、例えば、高分子量タンパク質のような大きな分子を含むがこれに限定されない。ペプチドまたはタンパク質は、当業者に公知の方法を使用して非細胞透過性であると判定することが可能である。例としては、ペプチドまたはタンパク質は蛍光的に標識することが可能であり、細胞外環境から細胞内に通過するペプチドまたはタンパク質の能力は、フローサイトメトリー分析または共焦点顕微鏡によりインビトロで判定することが可能である。いくつかの実施形態において、「非細胞透過性タンパク質」とは、細胞を透過するのがホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格に結合している同じタンパク質の約2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、6分の1、7分の1、8分の1、9分の1、10分の1、20分の1、30分の1、40分の1、50分の1、60分の1、70分の1、80分の1、90分の1、100分の1、200分の1、300分の1、400分の1、500分の1、600分の1、700分の1、800分の1、900分の1、1000分の1、10,000分の1、または100,000分の1以下であるタンパク質のことである。いくつかの実施形態において、「非細胞透過性タンパク質」とは、測定できるほどに細胞を透過しないタンパク質のことである。
本明細書で使用されるように、「分子量(M.W.)」または「分子質量」とは分子中のすべての原子の原子量の合計のことである。分子に関して、高分子量の分子は典型的には25kDa以上の分子量を有する。例としては、高分子量タンパク質は約25kDaから1000kDaまたはこれよりも多いM.W.を有することが可能である。
本明細書で使用されるように、用語「細胞内の」は細胞の内部を意味する。本明細書で使用されるように、用語「細胞内標的」とは、細胞の内部に位置している標的、例えば、核酸、ポリペプチドまたは他の分子(例えば、炭水化物)であり、本明細書で提供される非細胞透過性タンパク質が結合する標的である。結合は直接的でも間接的でも可能である。実施形態において、非細胞透過性タンパク質は細胞内標的に選択的に結合する。選択的に結合する、選択的結合、または特異的結合とは、薬剤(例えば、非細胞透過性タンパク質)が他の薬剤を部分的または完全に排除して1つの薬剤(例えば、細胞内標的)に結合することである。結合とは、アッセイ法のバックグラウンドの少なくとも約1.5倍検出可能な結合のことである。選択的または特異的結合では、そのような検出可能な結合は所与の薬剤について検出可能であるが、対照薬剤は検出可能ではない。代わりにまたはさらに、結合の検出は下流分子またはイベントの存在をアッセイすることにより判定することが可能である。
本明細書で使用されるように、用語「コンジュゲート」とは、原子または分子間の会合のことである。会合は直接的でも間接的でも可能である。例えば、核酸とタンパク質間のコンジュゲートは、例えば、共有結合により直接的に、または、例えば、非共有結合(例えば、静電気的相互作用(例えば、イオン結合、水素結合、ハロゲン結合)、ファンデルワールス相互作用(例えば、双極子−双極子、双極子誘導双極子、ロンドン分散)、リングスタッキング(pi効果)、疎水性相互作用および同類のもの)により間接的でも可能である。実施形態において、コンジュゲートは、求核置換(例えば、アミンおよびアルコールとアシルハロゲン化物、活性エステルの反応)、求電子置換(例えば、エナミン反応)ならびに炭素−炭素および炭素−ヘテロ原子多重結合への付加(例えば、マイケル反応、ディールス・アルダー付加)を含むがこれらに限定されないコンジュゲート化学を使用して形成される。これらのおよび他の有用な反応は、例えば、March、ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY、第3版、John Wiley&Sons、New York、1985年;Hermanson、BIOCONJUGATE TECHNIQUES、Academic Press、San Diego、1996年;およびFeeneyら、MODIFICATION OF PROTEINS;Advances in Chemistry Series、Vol.198、American Chemical Society、Washington、D.C.、1982年において考察されている。実施形態において、ホスホロチオエート核酸、ホスホロチオエート骨格ポリマーまたは非細胞透過性タンパク質は、ホスホロチオエート核酸、ホスホロチオエート骨格ポリマー(例えば、モノチオホスフェート)または非細胞透過性タンパク質の成分とビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインの成分(例えば、アミノ酸)の間の非共有化学反応を通じてビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインに非共有結合している。他の実施形態において、ホスホロチオエート核酸、ホスホロチオエート骨格ポリマーまたは非細胞透過性タンパク質は、1つ以上の反応性部分、例えば、本明細書に記載される共有結合反応性部分(例えば、ビニルスルホン部分(−S(O)2CH=CH2)のようなアミノ酸反応性部分)を含む。
本明細書のコンジュゲート化学のために使用される共有結合反応性部分または官能基を含む有用な反応性部分は、例えば、
(a)N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、N−ヒドロキシベンゾトリアゾールエステル、酸ハロゲン化物、アシルイミダゾール、チオエステル、p−ニトロフェニルエステル、アルキル、アルケニル、アルキニルおよび芳香族エステルを含むがこれらの限定されないカルボキシル基およびこの種々の誘導体;
(b)エステル、エーテル、アルデヒド、等に変換することが可能なヒドロキシル基;
(c)ハロゲン化物が後に、例えば、アミン、カルボン酸アニオン、チオールアニオン、カルボアニオン、またはアルコキシドイオンのような求核基で置き換えられ、それによりハロゲン原子の部位で新しい基の共有結合をもたらすことが可能であるハロアルキル基;
(d)例えば、マレイミド基のようなディールス・アルダー反応に関与することができるジエノフィル基;
(e)例えば、イミン、ヒドラゾン、セミカルバゾンもしくはオキシムのようなカルボニル誘導体の形成を介して、またはグルニャール付加もしくはアルキルリチウム付加のような機構を介してその後の誘導体化が可能になるようなアルデヒドまたはケトン基;
(f)それに続くアミンとの反応が、例えば、スルホンアミドを形成するスルホニルハライド基;
(g)ジスルフィドに変換され、アシルハロゲン化物と反応する、または金のような金属に結合させることが可能なチオール基;
(h)例えば、アシル化、アルキル化または酸化することが可能なアミンまたはスルフヒドリル基;
(i)例えば、環化付加、アシル化、マイケル付加、等を起こすことが可能なアルケン;
(j)例えば、アミンおよびヒドロキシル化合物と反応することが可能なエポキシド;
(k)ホスホラミダイトおよび核酸合成に有用な他の基準官能基;
(l)金属酸化シリコン結合;
(m)反応性リン基(例えば、ホスフィン)に結合して、例えば、リン酸ジエステル結合を形成する金属;ならびに
(n)スルホン、例えば、ビニルスルホン
を含む。
反応性官能基は、それが本明細書に記載されるタンパク質の化学的安定性に関与しない、または干渉しないように選択することが可能である。例としては、核酸はビニルスルホンまたは他の反応性部分を含むことが可能である。例えば、ビニルスルホン反応性部分を有する核酸はS−S−R部分を有し、Rは−(CH2)6−OHである核酸から形成することができる。ビニルスルホンを有する核酸は終端ホスフェート(PS)を有する核酸からさらに形成することができる。
「対照」または「標準対照」とは、検査試料、測定値、または値との比較のために、基準、通常は既知の基準としての働きをする試料、測定値、または値のことである。例えば、検査試料は所与の疾患(例えば、自己免疫疾患、炎症性自己免疫疾患、がん、感染症、免疫疾患、または他の疾患)を有すると疑われている患者から採取され、既知の正常な(非疾患の)個体(例えば、標準対照対象)と比較することが可能である。標準対照は、所与の疾患を持たない類似する個体(例えば、標準対照対象)、例えば、類似する医学的背景、同じ年齢、体重、等を有する健康な個体の集団(すなわち、標準対照集団)から集められた平均測定値または値も表すことが可能である。標準対照値は同じ個体から、例えば、疾患発病に先立って患者から以前に入手していた試料から得ることも可能である。当業者であれば、標準対照はいかなる数のパラメータ(例えば、RNAレベル、タンパク質レベル、特定の細胞型、特定の体液、特定の組織、滑膜細胞、滑液、滑膜組織、線維芽細胞様滑膜細胞、マクロファージ様滑膜細胞、等)の評価のためでも設計することが可能であることを認識する。
当業者であれば、どの標準対照が所与の状況において最適であるかを理解し、標準対照値との比較に基づいてデータを解析することができる。標準対照はデータの有意性(例えば、統計的有意性)を判定するためにも価値がある。例えば、所与のパラメータの値が標準対照において広く異なっている場合、検査試料における変動は有意であるとは見なされない。
用語「診断」とは、疾患(例えば、自己免疫、炎症性自己免疫、がん、感染、免疫、または他の疾患)が対象に存在する相対的確率のことである。同様に、用語「予後」とは、疾患状態に関してある種の将来の結果が対象において起こりうる相対的確率のことである。例えば、本発明という文脈では、予後とは個体が疾患(例えば、自己免疫、炎症性自己免疫、がん、感染、免疫、または他の疾患)を発症する可能性、または疾患の起こりうる重症度(例えば、疾患の持続期間)を指すことが可能である。医療診断の分野の当業者であれば認識するように、この用語は絶対的であることを意図していない。
「生体試料」または「試料」とは、対象または患者から得られるまたはこれらに由来する材料のことである。生体試料は、生検および部検試料のような組織の薄片、ならびに組織学的目的で採取された凍結薄片を含む。そのような試料は、血液および血液分画または製剤(例えば、血清、血漿、血小板、赤血球、および同類のもの)のような体液、痰、組織、培養細胞(例えば、初代培養物、移植片、および形質転換細胞)、糞便、尿、滑液、関節組織、滑膜組織、滑膜細胞、線維芽細胞様滑膜細胞、マクロファージ様滑膜細胞、免疫細胞、造血細胞、線維芽細胞、マクロファージ、T細胞、等を含む。生体試料は典型的には、霊長類、例えば、チンパンジーまたはヒト;ウシ;イヌ;ネコ;齧歯類、例えば、モルモット、ラット、マウス;ウサギのような哺乳動物、またはトリ;爬虫類;または魚類のような真核生物から得られる。
本明細書で使用される「細胞」とは、そのゲノムDNAを保存するまたは複製するのに十分な代謝または他の機能を実行する細胞のことである。細胞は、例えば、無傷の膜の存在、特定の色素による染色、子孫を生み出す能力、または、配偶子の場合は、第2の配偶子と結合して生存可能な子孫を生み出す能力を含む当技術分野で周知の方法により同定することが可能である。細胞は原核細胞および真核細胞を含むことができる。原核細胞は細菌を含むが、これに限定されない。真核細胞は酵母細胞ならびに植物および動物、例えば、哺乳動物、昆虫(例えば、スポドプテラ属)由来の細胞ならびにヒト細胞を含むがこれらに限定されない。細胞は、天然に非粘着性であるまたは、例えば、トリプシン処理により表面に粘着しないように処理されている場合は有用であり得る。
細胞透過性コンジュゲート
とりわけ、ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格に結合している非細胞透過性タンパク質(例えば、抗体)を含む細胞透過性コンジュゲートが本明細書では提供される。非細胞透過性タンパク質は非共有結合リンカーを通じてホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格に結合しており、このリンカーはビオチン結合対の第1のメンバーとビオチン結合対の第2のメンバーを含む。ビオチン結合対の第1のメンバーはビオチン結合ドメイン(例えば、アビジン、ストレプトアビジン)またはビオチンドメイン(例えば、ビオチン)でもよい。ビオチン結合対の第2のメンバーはビオチン結合ドメイン(例えば、アビジン、ストレプトアビジン)またはビオチンドメイン(例えば、ビオチン)でもよい。非共有結合リンカーはビオチン結合対の第1のメンバーとビオチン結合対の第2のメンバーの間の非共有結合を通じて形成される。実施形態において、ビオチン結合対の第1のメンバーはビオチン結合ドメイン(例えば、アビジン、ストレプトアビジン)であり、ビオチン結合対の第2のメンバーはビオチンドメイン(例えば、ビオチン)である。実施形態において、ビオチン結合対の第1のメンバーはビオチンドメイン(例えば、ビオチン)であり、ビオチン結合対の第2のメンバーはビオチン結合ドメイン(例えば、アビジン、ストレプトアビジン)である。
ビオチン結合対の第1のメンバーおよびビオチン結合対の第2のメンバーは、非細胞透過性タンパク質、ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格に共有結合していてもよいしまたは非共有結合していてもよい。実施形態において、非細胞透過性タンパク質はビオチン結合対の第1のメンバー(例えば、アビジン、ストレプトアビジン)に共有結合しており、ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格はビオチン結合対の第2のメンバー(例えば、ビオチン)に共有結合している。非共有結合リンカーを通じたホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格の結合は、透過により細胞に入ることができる本明細書に提供される非細胞透過性タンパク質を形成する。本明細書に提供されるコンジュゲートは、とりわけ、治療および診断目的の抗体の細胞内送達および細胞内標的(例えば、シグナル伝達タンパク質)のターゲティングに有用である。
一態様では、細胞透過性コンジュゲートが提供される。細胞透過性コンジュゲートは、(i)非細胞透過性タンパク質、(ii)ホスホロチオエート核酸および(iii)ホスホロチオエート核酸を非細胞透過性タンパク質に結合させる非共有結合リンカーを含む。非共有結合リンカーは、ビオチンドメインに非共有結合しているビオチン結合ドメインを含み、ホスホロチオエート核酸は非細胞透過性タンパク質の細胞内送達を増強する。
非細胞透過性タンパク質は非共有結合リンカーを通じてホスホロチオエートポリマー骨格に結合していてもよい。したがって、別の態様では、細胞透過性コンジュゲートが提供される。細胞透過性コンジュゲートは、(i)非細胞透過性タンパク質、(ii)ホスホロチオエートポリマー骨格および(iii)ホスホロチオエートポリマー骨格を非細胞透過性タンパク質に結合させる非共有結合リンカーを含む。非共有結合リンカーは、ビオチンドメインに非共有結合しているビオチン結合ドメインを含み、ホスホロチオエートポリマー骨格は非細胞透過性タンパク質の細胞内送達を増強する。上記のように、ポリマー骨格は通常核酸配列に存在する塩基を欠くという例外はあるが、ポリマー骨格は核酸配列と同じ構造を含有している(すなわち、2つ以上の糖残基が互いに連結している鎖を含有している)。細胞透過性コンジュゲートを含む細胞も提供される。
実施形態において、ビオチン結合ドメインはアビジンドメインである。実施形態において、ビオチン結合ドメインはストレプトアビジンドメインである。実施形態において、ストレプトアビジンドメインは複数のビオチンドメインに結合する。実施形態において、ストレプトアビジンドメインは約4つのビオチンドメインに結合する。実施形態において、ビオチン結合ドメインは非細胞透過性タンパク質に結合している。実施形態において、ビオチン結合ドメインは非細胞透過性タンパク質に共有結合している。実施形態において、ビオチン結合ドメインは非細胞透過性タンパク質に非共有結合している。実施形態において、複数のビオチン結合ドメインは非細胞透過性タンパク質に結合している。実施形態において、ビオチン結合ドメインはホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格に結合している。実施形態において、ビオチン結合ドメインはホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格に共有結合している。実施形態において、ビオチン結合ドメインはホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格に非共有結合している。実施形態において、複数のビオチン結合ドメインはホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格に結合している。実施形態において、ビオチン結合ドメインはビオチンドメインに非共有結合しており、それによって非共有結合リンカーを形成している。
実施形態において、ビオチンドメインはホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格に結合している。実施形態において、ビオチンドメインはホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格に共有結合している。実施形態において、ビオチンドメインはホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格に非共有結合している。実施形態において、複数のホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格はビオチンドメインに結合している。実施形態において、ビオチンドメインは非細胞透過性タンパク質に結合している。実施形態において、ビオチンドメインは非細胞透過性タンパク質に共有結合している。実施形態において、ビオチンドメインは非細胞透過性タンパク質に非共有結合している。実施形態において、複数のビオチンドメインは非細胞透過性タンパク質に結合している。実施形態において、ビオチンドメインはビオチン結合ドメインに非共有結合しており、それによって非共有結合リンカーを形成している。
上記のように、核酸、例えば、ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格は、ビオチン結合ドメイン(例えば、アビジン、ストレプトアビジン)およびビオチンドメインを含む非共有結合リンカーを通じて非細胞透過性タンパク質に結合している。核酸、例えば、ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格は、種々の機構を通してビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインに結合していてもよい。同様に、非細胞透過性タンパク質は種々の機構を通してビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインに結合していてもよい。ホスホロチオエート核酸、ホスホロチオエートポリマー骨格または非細胞透過性タンパク質はビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインに共有結合するまたは非共有結合することが可能である。非細胞透過性タンパク質はビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインに共有結合することができる。非細胞透過性タンパク質がビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインに共有結合している場合、ビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインはタンパク質のアミノ酸に共有結合する。実施形態において、非細胞透過性タンパク質は共有結合反応性部分を含み(上記の通り)、この反応性部分はビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインに反応する。実施形態において、ビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインは共有結合反応性部分を含み、この反応性部分は非細胞透過性タンパク質と反応する。
実施形態において、ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格は共有結合反応性部分を含み、この反応性部分はビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインと反応する。上記のように、共有結合反応性部分はタンパク質のリジン、アルギニン、システインまたはヒスチジンと(例えば、アミノ酸側鎖と)反応することができる。実施形態において、共有結合反応性部分はシステインと反応する。共有結合反応性部分はビニルスルホンであってよい。実施形態において、ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格は式S−S−Rを有し、Rは保護基である反応性部分を含む。実施形態において、Rはヘキサノール(一価の置換基)である。本明細書で使用されるように、用語ヘキサノールは式C6H13OHの化合物を含み、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、2,2−ジメチル−1−ブタノール、2,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、および2−メチル−1−ブタノールを含む。実施形態において、Rは1−ヘキサノールである。実施形態において、ホスホロチオエート核酸はビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインに共有結合している。実施形態において、ホスホロチオエート核酸は反応性部分を含む。実施形態において、上記のように、反応性部分はビニルスルホンまたは式S−S−Rを有する反応性部分である。実施形態において、Rはヘキサノール、例えば、1−ヘキサノールである。
実施形態において、複数のホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格がビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインに結合している場合、その複数のそれぞれが共有結合することもまたは非共有結合することも可能である。実施形態において、複数のビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインが非細胞透過性タンパク質に結合している場合、その複数のそれぞれが共有結合することもまたは非共有結合することも可能である。ホスホロチオエート核酸、ホスホロチオエートポリマー骨格または非細胞透過性タンパク質は、ビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインへのホスホロチオエート核酸、ホスホロチオエートポリマー骨格または非細胞透過性タンパク質の結合を促進する反応性部分、例えば、アミノ酸反応性部分または共有結合反応性部分を含有することができる。したがって、ホスホロチオエート核酸、ホスホロチオエートポリマー骨格または非細胞透過性タンパク質は、本明細書に記載される反応性部分を通じてビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインに結合することが可能である。
ビオチンドメインに非共有結合しているビオチン結合ドメイン(例えば、アビジンまたはストレプトアビジン)を含む非共有結合リンカーを通じてホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格に結合している非細胞透過性タンパク質を含む複数の細胞透過性コンジュゲートが提供される。ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格は非共有結合リンカーのビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインに共有結合しているまたは非共有結合している。実施形態において、この複数はビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインに共有結合しているホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格を含み、非共有結合ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格を有するビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインを含まない。実施形態において、ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格はビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインに非共有結合しており、その複数は共有結合ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格を有するビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインを含まない。いくつかの実施形態において、その複数は、非共有結合ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格を含むビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインの1つ以上または共有結合ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格を含むビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインの1つ以上を含む。したがって、その複数は、非共有結合および共有結合ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格を含むビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインを含むことが可能である。
実施形態において、ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格は約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100またはこれよりも多い核酸残基長である。実施形態において、ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格は約10から約30核酸残基長である。実施形態において、ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格は約20核酸残基長である。実施形態において、それぞれの核酸またはポリマー骨格の長さは少なくとも約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100またはこれよりも多い核酸残基または糖残基長であることが可能である。実施形態において、それぞれのホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格は独立して、5から50、10から50、15から50、20から50、25から50、30から50、35から50、40から50、45から50、5から75、10から75、15から75、20から75、25から75、30から75、35から75、40から75、45から75、50から75、55から75、60から75、65から75、70から75、5から100、10から100、15から100、20から100、25から100、30から100、35から100、40から100、45から100、50から100、55から100、60から100、65から100、70から100、75から100、80から100、85から100、90から100、95から100またはこれよりも多い残基長である。実施形態において、それぞれのホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格は独立して、10から15、10から20、10から30、10から40、または10から50残基長である。
実施形態において、1つのホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格の長さは別のホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格とは異なる。例として、2つのホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格が非共有結合リンカーを通じて非細胞透過性タンパク質に結合している場合、第1のホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格は1つの長さ(例えば、22残基)であり、第2のホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格は異なる長さ(例えば、25残基)であることが可能である。したがって、複数のホスホロチオエート核酸およびホスホロチオエートポリマー骨格が非共有結合リンカーを通じて非細胞透過性タンパク質に結合している場合、ホスホロチオエート核酸およびホスホロチオエートポリマー骨格はいくつかの異なる長さを有する、例えば、10から30残基長に及ぶことが可能である。
実施形態において、複数のホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格がビオチンドメインに非共有結合しているビオチン結合ドメインを含む複数の非共有結合リンカーを通じて非細胞透過性タンパク質に結合している。実施形態において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはこれよりも多いホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格がタンパク質に結合している。実施形態において、複数のホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格が非共有結合リンカーのビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインに結合している。実施形態において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはこれよりも多いホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格が非共有結合リンカーのビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインに結合している。実施形態において、複数のビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインがタンパク質に結合している。実施形態において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはこれよりも多いビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインがタンパク質に結合している。
実施形態において、非細胞透過性タンパク質は25kDを超える分子量を有する。実施形態において、非細胞透過性タンパク質は約25kDから約750kDの分子量を有する。したがって、非細胞透過性タンパク質は少なくとも約25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395、400、405、410、415、420、425、430、435、440、445、450、455、460、465、470、475、480、485、490、495、500、505、510、515、520、525、530、535、540、545、550、555、560、565、570、575、580、585、590、595、600、605、610、615、620、625、630、635、640、645、650、655、660、665、670、675、680、685、690、695、700、705、710、715、720、725、730、735、740、745、750またはこれよりも多いキロダルトン(kD)の分子量を有することが可能である。実施形態において、非細胞透過性タンパク質は、少なくとも約25から100kD、少なくとも約25から150kD、少なくとも約25から200kD、少なくとも約25から250kD、少なくとも約25から300kD、少なくとも約25から350kD、少なくとも約25から400kD、少なくとも約25から450kD、少なくとも約25から500kD、少なくとも約25から550kD、少なくとも約25から600kD、少なくとも約25から650kD、少なくとも約25から700kD、少なくとも約25から750kDの分子量を有する。
実施形態において、非細胞透過性タンパク質は抗体である。上でさらに詳細に考察したように、抗体はIgG、IgA、IgM、IgDもしくはIgE抗体またはそれらの断片のような完全長抗体であることが可能である。実施形態において、抗体はIgG抗体またはこの断片である。実施形態において、抗体はIgG抗体またはこの断片である。実施形態において、抗体はFv断片またはヒト化抗体である。実施形態において、抗体はIgA、IgM、IgDまたはIgE抗体である。実施形態において、抗体はFv断片である。実施形態において、抗体はヒト化抗体である。したがって、ビオチン結合ドメインおよびビオチンドメインを含む非共有結合リンカーを通じてホスホロチオエート核酸またはポリマー骨格に結合している抗体が提供され、ホスホロチオエート核酸またはポリマー骨格は細胞内への抗体の送達を増強する。実施形態において、抗体は治療抗体、すなわち、疾患の治療に使用される抗体である。したがって、1つ以上のホスホロチオエート核酸またはポリマー骨格に結合している治療抗体も提供され、抗体は細胞内標的に結合する。
実施形態において、非細胞透過性タンパク質は細胞内標的に結合する。細胞内標的は細胞内に位置する治療標的または診断標的または目的の他の標的、例えば、共焦点顕微鏡により撮像される、例えば、標的または構造、例えば、ヒストンであることが可能である。したがって、細胞内標的に結合している細胞透過性コンジュゲートが提供される。実施形態において、細胞内標的は、自己免疫疾患、炎症性疾患、代謝障害、発達障害、循環器疾患、肝疾患、腸疾患、感染症、内分泌疾患、神経障害およびがんからなる群から選択される疾患の標的である。細胞内標的の例は、これらに限定されないが、STAT3、Myc、NFκB、AP1、HIF、突然変異p53を含むがこれらに限定されない発癌性転写因子;Ras、Raf、MAPK、PI3キナーゼ、AKT、BTK、JAKs、SRCファミリーメンバーを含むがこれらに限定されない腫瘍性タンパク質;FOXp3、T−BET、GATA3、STAT1、2、3、4、5、6を含む免疫調節分子を含む。疾患の標的は、疾患に関連する診断標的または治療標的または目的の他の標的であることが可能である。がんの例となる細胞内標的は、STAT(例えば、STAT3)、NFκB、PKB/Akt、Mycファミリーメンバー、ステロイドホルモン受容体(例えば、エストロゲン受容体)、ステロイドホルモン受容体のリガンド(例えば、サイクリンD1)、受容体チロシンキナーゼ(RTK)、EGFR、VEGFR、PDGFR、Srcファミリーメンバー、Ras、Abl、BCR−Abl、NPM−Alk、ヤヌスキナーゼ(JAK)、ブルトンチロシンキナーゼ(BTK)、およびウイルス腫瘍性タンパク質(例えば、EBVタンパク質、またはHPVタンパク質、例えば、E6もしくはE7)を含むが、これらに限定されない。実施形態において、感染症の細胞内標的はウイルスタンパク質またはウイルス転写物である。したがって、細胞内標的は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルス、エプスタインバーウイルス、サイトメガロウイルス、ヒトパピローマウイルスまたは肝炎ウイルスのウイルスタンパク質またはウイルス転写物であることが可能である。実施形態において、細胞内標的は、転写因子、転写エンハンサー、転写リプレッサー、ヒストンまたは翻訳後修飾ヒストンを含むがこれらに限定されないDNA結合タンパク質である。実施形態において、細胞内標的は後成的に修飾されたDNA、例えば、メチル化またはヒドロキシメチル化シトシン(5mCまたは5hmC)、5−ホルミルシトシン(5fC)および5−カルボキシルシトシン(5caC)である。実施形態において、細胞内標的は核酸、例えば、核酸のRNA転写物である。例えば、細胞内標的は感染性病原体、例えば、寄生虫、ウイルスまたは細菌の核酸でもよい。実施形態において、細胞内標的はシグナル伝達分子または転写因子である。実施形態において、シグナル伝達分子はホスファターゼまたはキナーゼである。実施形態において、細胞内標的はがん標的またはがん細胞内に位置している。実施形態において、細胞内標的はSTAT、例えば、STAT3またはエキスポーチン7である。実施形態において、細胞内標的は、STAT3、エキスポーチン7およびSrcからなる群から選択される。実施形態において、細胞内標的はリン酸化Srcである。実施形態において、細胞内標的はFOXp3である。実施形態において、細胞内標的はT−BETである。実施形態において、非細胞透過性タンパク質はタンパク質に結合した標識、小分子または機能的核酸をさらに含む。実施形態において、細胞透過性コンジュゲートは細胞内標的に結合している。
細胞組成物
別の態様では、この実施形態を含む本明細書に提供される細胞透過性コンジュゲートを含む細胞が提供される。提供される細胞透過性コンジュゲートの1つ以上を含む細胞が提供され、例えば、細胞は複数の細胞透過性コンジュゲートを含むことができる。実施形態において、細胞はがん細胞である。実施形態において、細胞は非がん細胞である、実施形態において、細胞はT細胞である。実施形態において、細胞は調節T細胞である。実施形態において、コンジュゲートは細胞内で細胞内標的に結合している。例としては、細胞は、ビオチンドメインに非共有結合しているビオチン結合ドメインを含む非共有結合リンカーを通じて1つ以上のホスホロチオエート核酸またはポリマー骨格に結合している第1の非細胞透過性タンパク質および第2の非細胞透過性タンパク質を含むことが可能である。第1および第2の非細胞透過性タンパク質は細胞内で細胞内標的に結合していることができる。実施形態において、第2の非細胞透過性タンパク質は第1の非細胞透過性タンパク質に対して細胞内標的上の異なるエピトープに結合する。実施形態において、第2の非細胞透過性タンパク質は第2の細胞内標的に結合する。実施形態において、第1および/または第2の非細胞透過性タンパク質は抗体である。したがって、第1および第2の非細胞透過性タンパク質は同じタンパク質でもまたは異なるタンパク質であっても可能である。
医薬組成物
本明細書では、細胞透過性コンジュゲートおよび医薬として許容される担体を含む医薬組成物が提供される。提供される組成物は、とりわけ、インビトロまたはインビボでの処方および投与に適している。適切な担体および賦形剤ならびにその処方はRemington:The Science and Practice of Pharmacy、第21版、David B.Troy編、Lippicott Williams&Wilkins(2005)に記載されている。医薬として許容される担体とは、生物学的にまたは他の点で望ましくないことはない材料のことであり、すなわち、材料は望ましくない生物学的効果を引き起こすまたはそれが含有されている医薬組成物のその他の成分と有害な様式で相互作用することなく対象に投与される。対象に投与された場合、担体は、活性成分の分解を最小限に抑えるようにおよび対象において有害副作用を最小限に抑えるように選択されてもよい。
本発明により提供される医薬組成物は、活性成分(例えば、実施形態または実施例を含む、本明細書に記載される組成物)が治療的有効量で、すなわち、意図された目的を達成するのに効果的な量で含有されている組成物を含む。特定の適用に効果的な実際量は、とりわけ、治療されている状態に依存することになる。疾患を治療するための方法で投与される場合、本明細書に記載される組換えタンパク質は所望の結果、例えば、標的分子の活性を調節するおよび/または疾患症状を減少する、取り除く、またはその進行を遅らせる、を達成するのに効果的な活性成分の量を含有する。本発明の化合物の治療的有効量の決定は、特に本明細書に開示される詳細な点に照らせば、十分に当業者の能力の範囲内である。
別の態様では、この実施形態を含む本明細書に提供される細胞透過性コンジュゲートおよび医薬として許容される担体を含む医薬組成物が提供される。実施形態において、医薬組成物は、1つ以上のホスホロチオエート核酸を第2の非細胞透過性タンパク質に結合させる第2の非共有結合リンカーを含む第2の非細胞透過性タンパク質をさらに含む。実施形態において、非共有結合リンカーは、ビオチンドメインに非共有結合しているビオチン結合ドメインを含む。実施形態において、第2の非細胞透過性タンパク質は細胞内標的に結合する。実施形態において、第2の非細胞透過性タンパク質は、この実施形態を含む本明細書に提供される非細胞透過性タンパク質に対して細胞内標的上の異なるエピトープに結合する。実施形態において、第2の非細胞透過性タンパク質は第2の細胞内標的に結合する。実施形態において、第2の非細胞透過性タンパク質は抗体である。
提供される組成物は単一薬剤または1つを超える薬剤を含むことが可能である。いくつかの実施形態において、組成物は、ビオチンドメインに非共有結合しているビオチン結合ドメインを含む非共有結合リンカーを通じて1つ以上のホスホロチオエート核酸またはポリマー骨格に結合している第2の非細胞透過性タンパク質をさらに含む。したがって、本明細書では、第1のビオチンドメインに非共有結合している第1のビオチン結合ドメインを含む第1の非共有結合リンカーを通じて1つ以上のホスホロチオエート核酸またはポリマー骨格に結合している第1の非細胞透過性タンパク質を含む第1の細胞透過性コンジュゲートおよび第2のビオチンドメインに非共有結合している第2のビオチン結合ドメインを含む第2の非共有結合リンカーを通じて1つ以上のホスホロチオエート核酸またはポリマー骨格に結合している第2の非細胞透過性タンパク質を含む第2の細胞透過性コンジュゲートを含む組成物が提供される。実施形態において、第2の非細胞透過性タンパク質は細胞内標的に結合する。実施形態において、第2の非細胞透過性タンパク質は第1の非細胞透過性タンパク質に対して細胞内標的上の異なるエピトープに結合する。実施形態において、第2の非細胞透過性タンパク質は第2の細胞内標的に結合する。実施形態において、第1および/または第2の非細胞透過性タンパク質は抗体である。第1および第2の非細胞透過性タンパク質は同じタンパク質でもまたは異なるタンパク質でも可能である。
投与のための組成物は一般に、医薬として許容される担体、好ましくは水性担体中に溶解された本明細書に記載される薬剤を含む。種々の水性担体、例えば、緩衝生理食塩水および同類のものを使用することが可能である。これらの溶液は無菌であり一般に望ましくない物質がない。これらの組成物は従来の周知の殺菌技法により減菌することができる。組成物は、pH調整および緩衝剤、毒性調整剤および同類のもの、例えば、酢酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムおよび同類のもののような生理条件を概算するのに必要な医薬として許容される補助物質を含有することが可能である。これらの製剤中の活性剤の濃度は広く変動することが可能であり、選択された特定の投与様式および対象の要求に従って主に、液量、粘度、体重および同類のものに基づいて選択される。
遊離塩基または薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースのような表面活性剤と適切に混合した水中で調製することが可能である。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびこれらの混合物中でおよび油中でも調製することができる。通常の貯蔵および使用条件下では、これらの調製物は微生物の成長を妨げる保存剤を含有することが可能である。
医薬組成物は鼻腔内または吸入可能な溶液または噴霧剤、エアロゾルもしくは吸入剤を介して送達することが可能である。鼻腔液は、液滴または噴霧剤で鼻孔に投与するように設計された水溶液であることが可能である。鼻腔液は、多くの点で鼻分泌物に類似するように調製することが可能である。したがって、水性鼻腔液は通常等張性であり、5.5から6.5のpHを維持するようにわずかに緩衝されている。さらに、抗菌性保存剤は、眼科用薬剤および適切な薬物安定化剤に使用されている保存剤に類似しており、必要であれば製剤中に含むことができる。種々の商業的鼻腔調製物が知られており、例えば、抗生物質および抗ヒスタミン剤を含むことが可能である。
経口製剤は、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムおよび同類のもののような賦形剤を含むことが可能である。これらの組成物は溶液、懸濁液、錠剤、ピル、カプセル、徐放製剤または粉末の形態を取る。いくつかの実施形態において、経口医薬組成物は不活性希釈剤もしくは同化可能な食用担体を含むことになる、または硬もしくは軟シェルゼラチンカプセルに封入することができる、または錠剤中に圧縮することができる、または直接食事の食物と一緒に組み込むことができる。経口治療投与では、活性化合物は賦形剤と一緒に組み込まれ、経口摂取錠剤、バッカル錠、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ、カシェ剤、および同類のものの形態で使用することができる。そのような組成物および調製物は少なくとも0.1%の活性化合物を含有するべきである。組成物および調製物のパーセンテージは、当然のことながら、変化してよく、都合よくは、単位の重量の約2から約75%の間、または好ましくは25から60%の間でよい。そのような組成物中の活性化合物の量は適切な投与量を得ることが可能であるようにする。
水溶液での非経口投与では、例えば、溶液は適切に緩衝され、液体希釈剤は先ず十分な生理食塩水またはグルコースで等張性にしておくべきである。水溶液、特に、無菌水性媒体は、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与に特に適している。例えば、1投与量を1mlの等張NaCl溶液に溶解させ、1000mlの皮下点滴療法液に添加するまたは提唱されている注入部位に注射することができる。
無菌注射液は、活性化合物または構築物を必要な量で適切な溶媒中に取り込み、続いて濾過無菌化することにより調製することが可能である。一般には、分散液は、種々の無菌化活性成分を、基本的分散媒を含有する無菌のビヒクルに取り込むことにより調製される。活性成分プラス任意の追加の所望成分の粉末を産する真空乾燥および凍結乾燥技法を使用すれば、無菌注射液の再構成のための無菌粉末を調製することが可能である。直接注射のためのさらに、または高度に濃縮された溶液の調製も想定されている。DMSOは、高濃度の活性剤を小領域に送達する急速浸透のための溶媒として使用することが可能である。
化合物の製剤はアンプルおよびバイアルのような単位用量または多数回用量密封容器で提示することが可能である。したがって、組成物は単位剤形であることが可能である。そのような形態では、調製物は適切な量の活性成分を含有する単位用量に細分される。したがって、組成物は投与方法に応じて種々の単位剤形で投与することが可能である。例えば、経口投与に適した単位剤形は、粉末、錠剤、ピル、カプセルおよびロゼンジを含むがこれらに限定されない。
哺乳動物に投与される投与量および回数(単回または複数回投与)は、種々の要因、例えば、哺乳動物が別の疾患に罹っているかどうか、およびその投与経路;サイズ、年齢、性別、健康、体重、肥満度指数、およびレシピエントの食事;治療されている疾患の症状の性質および程度(例えば、がんの症状およびそのような症状の重症度)、併用療法の種類、治療されている疾患からの合併症または他の健康関連問題に応じて変動することが可能である。他の治療レジメンまたは薬剤は本発明の方法および化合物と併せて使用することが可能である。確立した投与量の調整および操作(例えば、回数および持続期間)は十分に当業者の能力の範囲内である。
本明細書に記載されるいかなる組成物(例えば、提供される細胞透過性コンジュゲート)でも、治療的有効量は最初に細胞培養アッセイから決定することが可能である。標的濃度は本明細書に記載されるまたは当技術分野で公知の方法を使用して測定した場合、本明細書に記載される方法を達成することができる1又は複数の活性化合物の濃度になる。当技術分野で周知のように、ヒトにおいて使用するための有効量は動物モデルから決定することも可能である。例えば、ヒトについての用量は動物において効果的であることが見出されている濃度を達成するように処方することが可能である。ヒトにおける投与量は、上記のように、有効性をモニターし投与量を上向きにまたは下向きに調整することにより調整することが可能である。上記の方法および他の方法に基づいてヒトにおいて最大の効力を達成するように用量を調整することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
投与量は、患者の必要条件および用いられている化合物に応じて変えることができる。患者に投与される用量は、本発明という文脈では、時間をかけて患者に有効な治療的応答を及ぼすのに十分であるべきである。用量のサイズも、任意の有害副作用の存在、性質、および程度により決定される。特定の状況に適切な投与量を決定することは当業者の能力の範囲内である。一般に、治療は化合物の最適用量未満であるさらに少ない投与量を用いて開始される。その後に、投与量は、状況下での最適効果に到達するまでわずかな増加量で増加させる。
投与量および間隔は、治療されている特定の臨床徴候に効果的な投与化合物のレベルを提供するように個々に調整することが可能である。これにより、個体の疾患状態の重症度と釣り合っている治療レジメンが提供される。
本明細書に提供される教えを利用して、実質的な毒性を引き起こすことはないが特定の患者が示す臨床症状を治療するのに効果的である有効な予防的または治療的療法レジメンを計画することが可能である。この計画は、化合物効力、相対的生物学的利用能、患者体重、有害副作用の存在および重症度のような因子を考慮することによる活性化合物の慎重な選択を伴うべきである。
「医薬として許容される賦形剤」および「医薬として許容される担体」とは、活性剤の対象への投与および対象による吸収を助け、患者への著しい有害毒性効果を引き起こさずに本発明の組成物に含めることが可能な物質のことである。医薬として許容される賦形剤の非限定的例は、水、NaCl、生理食塩水、乳酸リンゲル液、通常ショ糖、通常グルコース、結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、コーティング、甘味料、香料、塩類溶液(リンゲル液のような)、アルコール、オイル、ゼラチン、乳糖、アミロースまたはデンプンのような炭水化物、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、および着色料、ならびに同類のものを含む。そのような調製物は減菌し、必要に応じて、本発明の化合物と有害な反応をしない、潤滑剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼすための塩、緩衝剤、着色剤および/または芳香物質のような補助剤ならびに同類のものと混合することが可能である。当業者であれば、他の医薬賦形剤が本発明において有用であることを認識する。
用語「医薬として許容される塩」とは、当技術分野で周知の種々の有機および無機対イオン由来の塩のことであり、例としてのみ、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムおよび同類のもの、ならびに、分子が塩基性官能性を含有する場合は、塩酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩および同類のもののような有機または無機酸の塩が含まれる。
用語「調製物」は、他の担体と一緒にまたはなしの活性成分が担体に取り囲まれている、したがって、担体が活性成分と会合しているカプセルを提供する担体としてカプセル封じ材料を用いる活性化合物の製剤を含むことが意図されている。同様に、カシェ剤およびロゼンジが含まれる。錠剤、粉末、カプセル、ピル、カシェ剤、およびロゼンジは経口投与に適した固形剤形として使用することが可能である。
コンジュゲートを形成する方法
別の態様では、細胞透過性コンジュゲートを形成する方法が提供される。方法は、非細胞透過性タンパク質をホスホロチオエート核酸に接触させるステップと、ここで、非細胞透過性タンパク質はビオチン結合対の第1のメンバーに結合しており、ホスホロチオエート核酸はビオチン結合対の第2のメンバーに結合している、それによってビオチンドメインとビオチン結合ドメインの間に非共有結合を含む細胞透過性コンジュゲートを形成するステップとを含む。上記のように、ビオチン結合対の第1のメンバーはビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインでもよく、ビオチン結合対の第2のメンバーはビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインでもよい。実施形態において、ビオチン結合対の第1のメンバーはビオチン結合ドメインである。実施形態において、ビオチン結合対の第2のメンバーはビオチンドメインである。実施形態において、ビオチン結合対の第1のメンバーはビオチンドメインである。実施形態において、ビオチン結合対の第2のメンバーはビオチン結合ドメインである。実施形態において、ホスホロチオエート核酸は共有結合反応性部分を含む。実施形態において、ビオチンドメインに非共有結合しているビオチン結合ドメインは非共有結合リンカーを形成する。
送達方法
別の態様では、非細胞透過性タンパク質を細胞内に送達する方法が提供される。方法は、細胞をこの実施形態を含む本明細書に提供される細胞透過性コンジュゲートに接触させることを含む。実施形態において、非細胞透過性タンパク質は細胞質において核タンパク質に結合し、それによって非細胞透過性タンパク質−核タンパク質複合体を形成する。実施形態において、非細胞透過性タンパク質−核タンパク質複合体は細胞の核に入ることができない。
実施形態において、細胞透過性コンジュゲートは対象において疾患を診断するために使用される。したがって、本明細書に記載される細胞透過性コンジュゲートまたは細胞透過性コンジュゲートを含む組成物の有効量を対象に投与することを含む、対象において疾患を診断する方法が提供される。コンジュゲートの投与は対象中の症状または疾患の1つ以上の症状を診断する。開示された方法は、バイオマーカー、例えば、疾患の細胞内標的のレベルまたは活性を、検査試料から対照試料まで比較することを含む。上記のように、対照試料または値は、検査試料との比較のための基準、通常は既知の基準として働く試料のことである。対照は、類似する個体、例えば、類似する医学的背景、同年齢、体重、等を有するがん患者または健康な個人の集団から集めた平均値を表すことも可能である。対照値は、同じ個体から、例えば、疾患に先立って、または治療に先立って、以前に入手された試料から得ることも可能である。再び上記のように、診断とは疾患(例えば、自己免疫、炎症性自己免疫、がん、感染、免疫、または他の疾患)が対象中に存在する相対的確率のことである。
疾患リスク因子の決定に関して、比較する、相関するおよび関連したという用語は、個体におけるリスク因子の存在または量(例えば、疾患の細胞内標的の量)を疾患に罹っていることが分かっている、もしくは疾患のリスクがあることが分かっているヒトにおける、または疾患がないことが分かっているヒトにおけるその存在もしくは量と比較し、1又は複数のアッセイ結果に基づいて個体に疾患を有する/発症する増加したまたは減少した確率を割り当てることである。
検出方法
本明細書では、細胞をこの実施形態を含む本明細書に提供される細胞透過性コンジュゲートに接触させ、細胞透過性コンジュゲートの細胞内標的への結合を検出することを含む、細胞において細胞内標的を検出する方法も提供される。細胞は固定された細胞でもまたは生細胞でも可能である。実施形態において、細胞はインビトロまたはインビボに位置している。結合は直接的にまたは間接的に検出することが可能である。本明細書では、数多くの方法を使用すれば、細胞透過性コンジュゲートのその細胞内標的への結合を検出できることが理解されており想定されている。例えば、結合は細胞透過性コンジュゲートとその細胞内標的の間のカップリングをアッセイすることにより直接検出することが可能である。結合は、例えば、下に記載される、共免疫沈降アッセイ、共局在アッセイ、または蛍光分極化アッセイからなる群からアッセイを選択することにより決定することが可能である。アッセイは当技術分野では公知であり、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、NY(2001);Dickson、Methods Mol.Biol.461:735−44頁(2008);Nickels、Methods 47(1):53−62頁(2009);およびZinchukら、Acta Histochem.Cytochem.40(4):101−11頁(2007)を参照されたい。
実施形態において、結合は撮像法またはシステムにより判定される。したがって、この実施形態を含む本明細書に提供される細胞透過性コンジュゲートは、細胞内標的レベルおよび/または活性を分析するための撮像用途または他の用途においても使用することが可能である。例えば、提供される細胞透過性コンジュゲートは目的の細胞内標的のインビトロまたはインビボ撮像のために使用することが可能である。実施形態において、細胞透過性コンジュゲートは生細胞撮像のために使用される。例えば、生細胞撮像を使用すれば、生きた細胞の内側での細胞内標的分布および/または動態をモニターすることが可能であり、生細胞撮像は標的相互作用をモニターするのにも適用可能である。例えば、細胞透過性コンジュゲートは、免疫沈降および共免疫沈降アッセイにおいて使用すれば、細胞における、実施形態において、生きた細胞におけるタンパク質−タンパク質相互作用を研究することが可能である。実施形態において、細胞透過性コンジュゲートは、フローサイトメトリーによる細胞内標的の分析のために使用される。撮像用途では、細胞透過性コンジュゲートは、実施形態において、使用されている用途に適しているように標識される。上記のように、標識または検出可能部分は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的、または他の物理的手段により検出可能な組成物である。有用な標識は、32P、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAにおいて一般的に使用されているように)、ビオチン、ジゴキシゲニン、またはハプテンおよびタンパク質または、例えば、放射標識をペプチドもしくは標的ペプチドと特異的に反応性の抗体に組み込むことにより検出可能にすることが可能な他の実体を含むがこれらに限定されない。抗体を標識にコンジュゲートするための当技術分野で公知のいかなる方法でも、例えば、Hermanson、Bioconjugate Techniques 1996年、Academic Press、Inc.、San Diegoに記載される方法を使用して用いることができる。
治療方法
この実施形態を含む本明細書に提供される細胞透過性コンジュゲートおよびこの実施形態を含む本明細書に提供される細胞透過性コンジュゲートを含む組成物は、予防的治療と治療的療法の両方に有用である。予防的使用では、治療的有効量の本明細書に記載される薬剤は早期発症に先立ってまたはこの間に(例えば、自己免疫疾患の最初の徴候および症状により)対象に投与される。治療的療法は、疾患の診断または発症後に治療的有効量の本明細書に記載される薬剤を対象に投与することを含む。したがって、別の態様では、疾患の治療を必要とする対象において疾患を治療する方法が提供される。方法は、この実施形態を含む本明細書に提供される細胞透過性コンジュゲートの有効量を対象に投与し、それにより対象において疾患を治療することを含む。
実施形態において、方法は、1つ以上のホスホロチオエート核酸を第2の非細胞透過性タンパク質に結合させる第2の非共有結合リンカーを含む第2の非細胞透過性タンパク質を対象に投与することを含む。実施形態において、非共有結合リンカーはビオチンドメインに非共有結合しているビオチン結合ドメインを含む。実施形態において、第2の非細胞透過性タンパク質は、この実施形態を含む本明細書に提供されるコンジュゲートに対して細胞内標的上の異なるエピトープに結合する。実施形態において、第2の非細胞透過性タンパク質は第2の細胞内標的に結合する。実施形態において、この実施形態を含む本明細書に提供されるコンジュゲートと第2の非細胞透過性タンパク質は同時に投与される。実施形態において、この実施形態を含む本明細書に提供されるコンジュゲートと第2の非細胞透過性タンパク質は順次に投与される。
実施形態において、第2の非細胞透過性タンパク質は抗体である。実施形態において、方法は第2の治療薬を対象に投与することを含む。実施形態において、疾患は自己免疫疾患、発達障害、炎症性疾患、代謝障害、循環器疾患、肝疾患、腸疾患、感染症、内分泌疾患、神経障害、およびがんからなる群から選択される。実施形態において、疾患は自己免疫疾患である。実施形態において、疾患は発達障害である。実施形態において、疾患は炎症性疾患である。実施形態において、疾患は代謝障害である。実施形態において、疾患は循環器疾患である。実施形態において、疾患は肝疾患である。実施形態において、疾患は腸疾患である。実施形態において、疾患は感染症である。実施形態において、疾患は内分泌疾患である。実施形態において、疾患は神経障害である。実施形態において、疾患はがんである。実施形態において、コンジュゲートの非細胞透過性タンパク質は細胞内標的に結合し、細胞内標的はSTAT3、エキスポーチン7、またはSrcである。実施形態において、コンジュゲートの非細胞透過性タンパク質は細胞内標的に結合し、細胞内標的はリン酸化Srcである。実施形態において、コンジュゲートの非細胞透過性タンパク質はSTAT3に特異的に結合する抗体であり、第2の非細胞透過性タンパク質はエキスポーチン7に特異的に結合する抗体である。実施形態において、コンジュゲートの非細胞透過性タンパク質はSTAT3に特異的に結合する抗体であり、第2の非細胞透過性タンパク質はSTAT3の別のエピトープに特異的に結合する抗体である。
提供される治療方法では、治療されている疾患に適した追加の治療薬を使用することが可能である。したがって、いくつかの実施形態において、提供される治療方法は、対象に第2の治療薬を投与することをさらに含む。適切な追加の治療薬は、鎮痛薬、麻酔薬、興奮薬、コルチコステロイド、抗コリン剤、抗コリンエステラーゼ薬、抗痙攣薬、抗悪性腫瘍薬、アロステリック阻害剤、タンパク質同化ステロイド薬、抗リウマチ薬、精神治療薬、神経遮断薬、抗炎症薬、駆虫薬、抗生物質、抗凝固薬、抗真菌薬、抗ヒスタミン薬、抗ムスカリン剤、抗マイコバクテリア薬、抗原虫薬、抗ウイルス薬、ドーパミン薬、血液作用薬、免疫学的な薬剤、ムスカリン作用薬、プロテアーゼ阻害薬、ビタミン、成長因子、およびホルモンからなる群から選択される治療薬を含むがこれらに限定されない。薬剤および投与量の選択は、治療されている所与の疾患に基づいて当業者であれば容易に決定することが可能である。
薬剤または組成物の組合せは並行して(例えば、混合物として)、別々であるが同時に(例えば、別々の静脈ラインを介して)または順次(例えば、1つの薬剤が先ず投与され、続いて第2の薬剤が投与される)のいずれかで投与することが可能である。したがって、用語組合せは、2つ以上の薬剤または組成物の並行、同時または順次投与を指すのに使用される。治療過程は、対象の特定の特徴および選択される治療の種類に応じて個体に基づいて最もよく決定される。本明細書に開示される治療のような治療は、毎日、1日2回、2週間に1回、毎月または治療的に効果的であるいかなる適応可能な基準においても対象に施すことが可能である。治療は単独でまたは本明細書に開示されるまたは当技術分野で公知のいかなる他の治療と組み合わせても施すことが可能である。追加の治療は最初の治療と同時に、異なる時間に、または全く異なる治療スケジュールで施すことが可能である(例えば、第1の治療は毎日可能であり、追加の治療は毎週である)。
本明細書に提供される方法に従って、対象は本明細書に提供される薬剤の1つ以上の有効量を投与される。用語有効量および有効投与量は互換的に使用される。用語有効量は所望の生理的応答(例えば、炎症の減少)を生じるのに必要な任意の量と定義される。薬剤を投与するための有効量およびスケジュールは当業者であれば経験的に決定することができる。投与のための投与量範囲は、疾患または障害の1つ以上の症状が影響を受ける(例えば、減少されるまたは遅延される)所望の効果を生じるのに十分大きい範囲である。投与量は、望まれない交差反応、アナフィラキシー反応および同類のもののようなかなり有害な副作用を引き起こすほど大きくなるべきではない。一般に、投与量は、年齢、状態、性別、疾患の種類、疾患もしくは障害の程度、投与経路または他の薬物がレジメンに含まれているかどうかにより変動し、当業者が決定することが可能である。投与量は任意の禁忌症の場合には個々の医師が調整することが可能である。投与量は変動可能であり、1日または数日間、毎日1つ以上の用量投与で投与することが可能である。所与のクラスの医薬品に適した投与量については文献にガイダンスを見出すことが可能である。例えば、所与のパラメータでは、有効量は少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、または少なくとも100%の増加または減少を示す。効力は「−倍」増加または減少として表すことも可能である。例えば、治療的有効量は対照の少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、5倍またはそれよりも多い効果を有することが可能である。正確な用量および処方は治療の目的に依存し、当業者であれば公知の技法を使用して確かめることが可能である(例えば、Lieberman、Pharmaceutical Dosage Forms(1−3巻、1992年);Lloyd、The Art、Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999);Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Gennaro編(2003)、およびPickar、Dosage Calculations(1999)参照)。
開示された方法および組成物のために使用できる、それらと併せて使用できる、それらの調製において使用できる、またはそれらの産物である材料、組成物、および成分が開示される。これらのおよび他の材料が本明細書では開示され、これらの材料の組合せ、サブセット、相互作用、群、等が開示されると、これらの化合物のそれぞれの種々の個々のおよび集団の組合せと順列の特定の基準が明示的に開示されることはないが、本明細書ではそれぞれが具体的に想定され記載されていることが理解される。例えば、方法が開示され考察され、その方法を含むいくつかの分子に加えることが可能ないくつかの改変が考察される場合、特に逆の記載がない限り、方法のありとあらゆる組合せと順列、ならびに実現可能な改変が具体的に想定されている。同様に、これらのいかなるサブセットまたは組合せも具体的に想定され開示される。このような概念は、開示されている組成物を使用する方法におけるステップを含むがこれに限定されない本開示のすべての態様に当てはまる。したがって、実施することが可能な種々の追加のステップがある場合、これらの追加のステップのそれぞれが、開示されている方法の任意の特定の方法ステップまたは方法ステップの組合せと一緒に実施することが可能であり、それぞれのそのような組合せまたは組合せのサブセットが具体的に想定されており開示されていると見なすべきであることは理解される。
用語「対象」、「患者」、「個体」、等は限定的であると意図されておらず、一般に交換可能である。すなわち、「患者」と記載されている個体は必ずしも所与の疾患を有してはおらず、単に医師の診察を受けているだけの場合もある。
本明細書で使用されるように、状態、疾患もしくは障害または状態、疾患もしくは障害に伴う症状を「治療する」または「の治療」とは、臨床結果を含む有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチのことである。有益なまたは所望の臨床結果は、1つ以上の症状または状態の軽減または寛解、状態、障害または疾患の程度の縮小、状態、障害または疾患の状態の安定化、状態、障害または疾患の発生の予防、状態、障害または疾患の拡散の予防、状態、障害または疾患進行の遅延または緩徐化、状態、障害または疾患発症の遅延または緩徐化、状態、障害または疾患状態の寛解または緩和、および部分的であれ全体的であれ緩解を含むことが可能であるが、これらに限定されない。「治療する」は、治療を受けない場合に予想される生存よりも対象の生存を延長することも意味することが可能である。「治療する」は、状態、障害または疾患の進行を阻害し、状態、障害または疾患の進行を一時的に緩徐化することも意味することが可能であるが、いくつかの例では、「治療する」は状態、障害または疾患の進行を永久に停止することを含む。本明細書に使用されるように、治療、治療する、または治療することという用語は、プロテアーゼの発現を特徴とする疾患もしくは状態の1つ以上の症状の効果またはプロテアーゼの発現を特徴とする疾患もしくは状態の症状を減少させる方法のことである。したがって、開示された方法では、治療は、確立した疾患、状態の重症度、または疾患もしくは状態の症状の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の減少を指すことが可能である。例えば、疾患を治療するための方法は、対照と比べた場合、対象において疾患の1つ以上の症状に10%の減少がある場合は治療と見なされる。したがって、減少は、天然のまたは対照レベルと比べた場合、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%または10%と100%の間の任意のパーセント減少であることが可能である。治療は必ずしも、疾患、状態、または疾患もしくは状態の症状の治癒もしくは完全除去のことではないことは理解される。さらに、本明細書で使用されるように、減少、縮小、または阻害の基準は、対照レベルと比べた場合、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはこれよりも多い変化を含み、そのような用語は完全な除去を含むことは可能であるが、必ずしもこれを含まない。
併用治療が想定されている場合、本明細書に記載される薬剤(すなわち、リボ核酸化合物)がその組合せの特定の性質により限定されることは意図されていない。例えば、本明細書に記載される薬剤は単純な混合物ならびに化学的ハイブリッドとして併用して投与することができる。後者の例は薬剤が標的化担体にまたは活性医薬品に共有結合している場合である。共有結合は、例えば市販の架橋剤の使用のような、しかしこれに限定されない多くの方法で達成することが可能である。
本明細書で使用されるように、用語「医薬として許容される」は「生理的に許容される」および「薬理学的に許容される」と同義的に使用される。医薬組成物は一般に、緩衝および貯蔵の際の保存のための薬剤を含み、投与経路に応じて、適切な送達のための緩衝剤および担体を含むことが可能である。
「有効量」は、所定の目的を達成する(例えば、投与の目的である効果を達成する、疾患を治療する、酵素活性を減少させる、疾患または状態の1つ以上の症状を減少させる)のに十分な量のことである。「有効量」の例は、1又は複数の疾患の症状の治療、予防、または減少に貢献するのに十分な量のことであり、「治療的有効量」と呼ぶこともできる。1又は複数の症状(およびこの語句の文法的等価物)の「減少」とは、1又は複数の症状の重症度もしくは頻度の減少、または1又は複数の症状の除去を意味する。薬物の「予防的有効量」は、対象に投与された場合、意図された予防効果を有する、例えば、損傷、疾患、病態、もしくは状態の開始(または再発)を予防するもしくは遅延する、または損傷、疾患、病態、もしくは状態、もしくはそれらの症状の開始(または再発)の可能性を減少させる薬物の量のことである。完全な予防効果は必ずしも1用量の投与により生じるものではなく、一連の用量の投与後にのみ生じる場合がある。したがって、予防的有効量は1つ以上の投与で投与される場合がある。本明細書で使用される「活性減少量」とは、アンタゴニストの非存在に対して酵素またはタンパク質の活性を減少させるのに必要なアンタゴニストの量のことである。本明細書で使用される「機能破壊量」とは、アンタゴニストの非存在に対して酵素またはタンパク質の機能を破壊するのに必要なアンタゴニストの量のことである。所与のクラスの医薬品に適した投与量については文献にガイダンスを見出すことが可能である。例えば、所与のパラメータでは、有効量は少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、または少なくとも100%の増加または減少を示す。効力は「−倍」増加または減少として表すことも可能である。例えば、治療的有効量は対照の少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、5倍またはそれよりも多い効果を有することが可能である。正確な量は治療の目的に依存し、当業者であれば公知の技法を使用して確かめることが可能である(例えば、Lieberman、Pharmaceutical Dosage Forms(1−3巻、1992年);Lloyd、The Art、Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999);Pickar、Dosage Calculations(1999);およびRemington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、2003年、Gennaro編、Lippincott、Williams&Wilkins参照)。
本明細書で使用されるように、用語「投与する」とは経口投与、坐薬としての投与、局所的接触、静脈内、腹腔内、筋肉内、病巣内、くも膜下腔内、鼻腔内もしくは皮下投与または徐放装置、例えば、ミニ浸透圧ポンプの対象への埋め込みを意味する。投与は、非経口および経粘膜(例えば、頬側、舌下、口蓋、歯肉、経鼻、膣、直腸または経皮)を含む任意の経路による。非経口投与には、例えば、静脈内、筋肉内、細動脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内および頭蓋内が含まれる。他の投与様式には、リポソーム製剤、点滴静注、経皮パッチの使用、等が含まれるがこれらに限定されない。「同時投与する」とは、本明細書に記載される組成物が1つ以上の追加の療法、例えば、化学療法、ホルモン療法、放射線療法または免疫療法のようながん療法を施すのと同時に、直前にまたは直後に投与されることを意味する。本発明の化合物は単独で投与することが可能であるまたは患者に同時投与することが可能である。同時投与は、化合物の個別でのまたは併用して(1つよりも多い化合物)の同時または順次投与を含むことが意図されている。このように、調製物は、必要な場合(例えば、代謝分解を減らすために)には、他の活性物質と組み合わせることも可能である。本発明の組成物は経皮的に、局所経路により、アプリケータースティック、溶液、懸濁液、乳濁液、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、ゼリー、ペイント、粉末、および噴霧剤として処方して送達することが可能である。
本発明の組成物はさらに徐放性および/または快適さを提供するための成分を含むことができる。そのような成分には、高分子量アニオン性粘液模倣ポリマー(mucomimetic polymers)、ゲル化多糖類および微細化薬物担体物質が含まれる。これらの成分は米国特許第4,911,920号、米国特許第5,403,841号、米国特許第5,212,162号、および米国特許第4,861,760号でさらに詳細に考察されている。これら特許文献の全内容はあらゆる目的のために参照によりその全体を本明細書に組み込む。本発明の組成物は、身体での徐放のために微粒子として送達することも可能である。例えば、微粒子は、薬物含有微粒子の皮内注射を介して投与することが可能であり、これにより、生分解性注射用ゲル製剤として(例えば、Gao Pharm.Res.12:857−863頁、1995年参照)、または経口投与のための微粒子として(例えば、Eyles、J.Pharm.Pharmacol.49:669−674頁、1997年参照)皮下にゆっくり放出する(Rao、J.Biomater Sci.Polym編、7:623−645頁、1995年参照)。実施形態において、本発明の組成物の製剤は細胞膜と融合する、または飲食作用を受けるリポソームの使用により、すなわち、リポソームに結合している受容体リガンドであって、細胞の表面膜タンパク質受容体に結合する受容体リガンドを用いて飲食作用をもたらすことにより送達することが可能である。特にリポソーム表面が標的細胞に特異的な受容体リガンドを担持している、または他の方法で優先的に特定の器官に向けられる場合に、リポソームを使用することにより、インビボでの本発明の組成物の標的細胞内への送達に焦点を合わせることが可能である。(例えば、Al−Muhammed、J.Microencapsul.13:293−306頁、1996年;Chonn、Curr.Opin.Biotechnol.6:698−708頁、1995年;Ostro、Am.J.Hosp.Pharm.46:1576−1587頁、1989年参照)。本発明の組成物はナノ粒子として送達することも可能である。
本明細書に提供される教唆を利用すれば、かなりの毒性を引き起こすことはないがそれでも特定の患者が示す臨床症状を治療するのに有効である効果的な予防的または治療的療法レジメンを計画することが可能である。この計画は、複合的な効力、相対的生物学的利用能、患者体重、有害副作用の存在および重症度、好ましい投与様式ならびに選択された薬剤の毒性プロファイルのような要因を検討することにより活性化合物の慎重な選択を含むべきである。
「抗がん剤」はその明白な通常の意味に従って使用され、抗悪性腫瘍特性または細胞の成長もしくは増殖を阻害する能力を有する組成物(例えば、化合物、薬物、アンタゴニスト、阻害剤、調節剤)のことである。実施形態において、抗がん剤は化学療法薬である。実施形態において、抗がん剤はがんを治療する方法において有用性のある本明細書で同定された薬剤である。実施形態において、抗がん剤は、がんの治療のために、FDAまたはUSA以外の国の類似する規制機関により承認された薬剤である。
キット
別の態様では、この実施形態を含む本明細書で提供される細胞透過性コンジュゲートまたはこの実施形態を含む本明細書で提供される医薬組成物を含むキットおよび使用説明書が提供される。実施形態において、キットは1つ以上のホスホロチオエート核酸を第2の非細胞透過性タンパク質に結合させる第2の非共有結合リンカーを含む第2の非細胞透過性タンパク質を含む。実施形態において、第2の非共有結合リンカーは第2のビオチンドメインに非共有結合している第2のビオチン結合ドメインを含む。実施形態において、この実施形態を含む本明細書で提供されるコンジュゲートおよび第2の非細胞透過性タンパク質は別々の容器にある。実施形態において、第2の非細胞透過性タンパク質は、この実施形態を含む本明細書で提供される非細胞透過性タンパク質に対して細胞内標的上の異なるエピトープに結合する。実施形態において、第2の非細胞透過性タンパク質は第2の細胞内標的に結合する。実施形態において、第2の非細胞透過性タンパク質は、もう1つの非細胞透過性タンパク質および医薬として許容される担体を含む医薬組成物として処方される。実施形態において、第2の非細胞透過性タンパク質は抗体である。実施形態において、キットは疾患の1つ以上の症状を治療するまたは予防するための1つ以上の追加の薬剤を含む。実施形態において、キットは、例えば、注射器、針、管、カテーテル、パッチ、および同類のもののような組成物を投与する手段を含む。キットは、無菌化および/または使用に先立つ希釈を必要とする製剤および/または材料も含むことができる。
[実施例1]
出願者らは、20mer長のホスホロチオエート化(PS)DNAオリゴマーにより抗体は生細胞内に浸透し所期の抗原を認識することができるようになることを実証する。ホスホロチオエート化は、DNAオリゴの糖リン酸骨格において起こる。出願者らは、PS DNAオリゴが結合すると、抗体細胞内送達ならびに標的認識が効率的に促進され、20merのPS DNAオリゴが非常に効率的であることを実証する。DNAオリゴのペグ化、2’フルオロ−、2’メチルA−または2’メチルG−改変とコンジュゲートしても抗体細胞内取り込みは促進されず、PS RNAオリゴと結合しても細胞内送達は促進されない。上記の種々の改変を有するDNAオリゴ、およびPS改変したRNA(20mer)は、ビオチンを結合させて合成し、抗体は、抗体とオリゴの非共有結合を可能にするアビジン/ストレプトアビジンで標識した。
提供される方法および組成物は、この実施形態を含む本明細書に提供される細胞透過性コンジュゲートの精製に有用である。ビオチンドメインに非共有結合しているビオチン結合ドメインを含む結合した非共有結合リンカーは、非共有結合の非存在に対してコンジュゲートの分子量の増加を引き起こす。したがって、本明細書で提供されるコンジュゲートは、当技術分野で一般的に知られている標準サイズ排除法を使用して都合よく精製することが可能である。
構造
ストレプトアビジン/ビオチンを介してPS−DNAオリゴにコンジュゲートされた改変抗STAT3抗体は細胞透過が可能である。図4Aは、二次抗体を使用して送達された抗体、抗体−抗原複合体を検出するフローサイトメトリー分析を示している。U251細胞(ヒトグリオーマ幹細胞)を、ストレプトアビジン/ビオチンを介してPO−DNAオリゴ(20mer)(赤線)、PS−DNAオリゴ(20mer)(赤色領域)、1kPEG(青線)および30kPEG(破線)にコンジュゲートされた改変抗STAT3抗体で処置した。U251細胞は10μg/mlの特定の改変抗STAT3抗体で処置し、37℃で1時間インキュベートした。洗浄ステップ(PBS/1%BSA)後、細胞を収穫し500μlの2%パラホルムアルデヒド(15分間)で固定し、続いて洗浄ステップ(PBS/1%BSA)、続いて500氷冷メタノール(10分間)で洗浄した。洗浄(PBS/1%BSA)後、細胞は4℃で1時間、PBS/1%BSA/1%マウス血清を用いてブロックした。その後、細胞は洗浄し(PBS/1%BSA)、暗所で30分間二次抗体(抗ウサギAF647 PBS中1対4000)を用いて染色した。フロー分析は3回の最終洗浄ステップ(PBS/1%BSA)および300μlの洗浄緩衝液に細胞を収集後に実施した。非染色U251はブランク対照(灰色領域)として使用した。
図4Bは、送達された抗体−抗原複合体を検出する別のウェスタンブロッティング分析を示している。U251細胞を、ストレプトアビジン/ビオチンを介してPO−DNAオリゴ(20mer)(第1レーン)、PS−DNAオリゴ(20mer)(第2レーン)、PEG−1k−DNA(第3レーン)およびPEG−30k−DNAオリゴ(第4レーン)にコンジュゲートされた改変抗STAT3抗体で処置した。U251細胞は10μg/mlの指定された改変抗STAT3抗体で処置し、37℃で1時間インキュベートした。インキュベーションおよびPBS(2ml)を用いた2回の洗浄ステップ後、細胞は500μlのRIPA緩衝液中氷上でのインキュベーション(30分間)により溶解し、続いて強力にボルテックスした。完全細胞ライセートは遠心分離ステップ(10分間、13,000rpm、4℃)後上澄みを収集することにより収穫した。それぞれの完全細胞ライセートに、30μlの組換えプロテインGアガロースビーズを添加し、振盪台上、4℃で一晩インキュベートした。ビーズはペレット化し(2分間、2,400rpm、4℃)、500μlの氷冷PBSで2回洗浄した。乾燥アガロースビーズに30μlのLaemmli緩衝液を補充し、95℃で5分間インキュベートした。20μlを10%のSDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)に充填し125Vで実行した。ゲルをニトロセルロースブロッティング膜(0.45μm)に吸い取った後、膜は振盪台上、室温で1時間10%のBSA/TBS−T(0.1%のTween20)を用いてブロックした。その後、膜は振盪台上、4℃で一晩一次抗体(抗STAT3 TBS−T中1対1,000)と一緒にインキュベートした。TBS−Tを用いた3回洗浄ステップ(TBS−Tでの15分間、10分間、10分間)後、膜は振盪台上、4℃で2−4時間、ECLTM抗ウサギIgG、西洋ワサビペルオキシダーゼ(TBS−T中1対10,000)と一緒にインキュベートした。検出は、4回の最終洗浄ステップ(TBS−Tを用いて、それぞれ5分間)後、SuperSignal(登録商標)West Dura Extended検出キットを使用して行われた。
ストレプトアビジン/ビオチンを介してPS−DNAオリゴにコンジュゲートされた改変抗STAT3抗体は細胞透過および標的認識が可能である。図6は、送達された抗体−抗原複合体を検出する別のウェスタンブロッティング分析を示している。U251細胞を、ストレプトアビジン/ビオチンを介してPO−2’フルオロ−オリゴ(第1レーン)、PO−2’メチルA−オリゴ(第2レーン)、PO−2’メチルG−オリゴ(第3レーン)、PO−オリゴDNA(20mer)(第4レーン)、PS−オリゴDNA(20mer)(第5レーン)および非改変抗体(第6レーン)にコンジュゲートされた改変抗STAT3抗体で処置した。U251細胞は10μg/mlの指定された改変抗STAT3抗体で処置し、37℃で1時間インキュベートした。インキュベーションおよびPBS(2ml)を用いた2回の洗浄ステップ後、細胞は500μlのRIPA緩衝液中氷上でのインキュベーション(30分間)により溶解し、続いて強力にボルテックスした。完全細胞ライセートは遠心分離ステップ(10分間、13,000rpm、4℃)後上澄みを収集することにより収穫した。それぞれの完全細胞ライセートに、30μlの組換えプロテインGアガロースビーズを添加し、振盪台上、4℃で一晩インキュベートした。ビーズはペレット化し(2分間、2,400rpm、4℃)、500μlの氷冷PBSで2回洗浄した。乾燥アガロースビーズに30μlのLaemmli緩衝液を補充し、95℃で5分間インキュベートした。20μlを10%のSDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)に充填し125Vで実行した。ゲルをニトロセルロースブロッティング膜(0.45μm)に吸い取った後、膜は振盪台上、室温で1時間10%のBSA/TBS−T(0.1%のTween20)を用いてブロックした。その後、膜は振盪台上、4℃で一晩一次抗体(抗STAT3 TBS−T中1対1,000)と一緒にインキュベートした。TBS−Tを用いた3回洗浄ステップ(TBS−Tでの15分間、10分間、10分間)後、膜は振盪台上、4℃で2−4時間、ECLTM抗ウサギIgG、西洋ワサビペルオキシダーゼ(TBS−T中1対10,000)と一緒にインキュベートした。検出は、4回の最終洗浄ステップ(TBS−Tを用いて、それぞれ5分間)後、SuperSignal(登録商標)West Dura Extended検出キットを使用して行われた。
ストレプトアビジン/ビオチンを介してPS−DNAオリゴ(20mer)にコンジュゲートされた改変抗STAT3抗体は細胞透過が最も効率的である。図7A上パネルは、抗ウサギ抗体を使用して、送達された抗体を検出するフローサイトメトリー分析を示している。U251細胞(ヒトグリオーマ幹細胞)を、ストレプトアビジン/ビオチンを介して指示されたPS DNA−オリゴ(80mer)(点線)、PS−オリゴDNA(40mer)(破線)およびPS−オリゴDNA(20mer)(赤色領域)にコンジュゲートされた改変抗STAT3抗体(ウサギ)で処置した。図7A下パネルは、図7Aと同じものを示しているが、U251細胞をストレプトアビジン/ビオチンを介したPS−オリゴDNA(20mer)(赤色領域)、PS−オリゴDNA(10mer)(青線)、PS−オリゴDNA(5mer)(赤線)、PS−オリゴDNA(3mer)(橙色線)、PS−オリゴDNA(2mer)(薄緑線)およびPS−オリゴDNA(モノマー)(濃緑線)にコンジュゲートされた改変抗STAT3抗体で処置した。U251細胞は10μg/mlの指定された改変抗STAT3抗体(ウサギ)で処置し、37℃で1時間インキュベートした。洗浄ステップ(PBS/1%BSA)後、細胞を収穫し500μlの2%パラホルムアルデヒドで固定し(15分間)、続いて洗浄ステップ(PBS/1%BSA)、続いて500氷冷メタノール(10分間)で洗浄した。洗浄(PBS/1%BSA)後、細胞は4℃で1時間、PBS/1%BSA/1%マウス血清を用いてブロックした。その後、細胞は洗浄し(PBS/1%BSA)、暗所で30分間二次抗体(灰色線、上および下パネル)(αRb AF647 PBS中1対4000)を用いて染色した。フロー分析は3回の最終洗浄ステップ(PBS/1%BSA)および300μlの洗浄緩衝液に細胞を収集後に実施した。非染色U251はブランク対照(灰色領域、上および下パネル)として使用した。
図7Bは、送達された抗体−抗原複合体を検出する別のウェスタンブロッティング分析を示している。U251細胞を、ストレプトアビジン/ビオチンを介してPS DNA−オリゴDNA(80mer)(第1レーン)、PS−オリゴDNA(40mer)(第2レーン)、PS−オリゴDNA(20mer)(第3レーン)、PS−オリゴDNA(10mer)(第4レーン)、PS−オリゴDNA(5mer)(第5レーン)、PS−オリゴDNA(3mer)(第6レーン)、PS−オリゴDNA(2mer)(第7レーン)およびPS−オリゴDNA(モノマー)(第8レーン)にコンジュゲートされた改変抗STAT3抗体で処置した。U251細胞は10μg/mlの指定された改変抗STAT3抗体で処置し、37℃で1時間インキュベートした。インキュベーションおよびPBS(2ml)を用いた2回の洗浄ステップ後、細胞は500μlのRIPA緩衝液中氷上でのインキュベーション(30分間)により溶解し、続いて強力にボルテックスした。完全細胞ライセートは遠心分離ステップ(10分間、13,000rpm、4℃)後上澄みを収集することにより収穫した。それぞれの完全細胞ライセートに、30μlの組換えプロテインGアガロースビーズを添加し、振盪台上、4℃で一晩インキュベートした。ビーズはペレット化し(2分間、2,400rpm、4℃)、500μlの氷冷PBSで2回洗浄した。乾燥アガロースビーズに30μlのLaemmli緩衝液を補充し、95℃で5分間インキュベートした。20μlを10%のSDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)に充填し125Vで実行した。ゲルをニトロセルロースブロッティング膜(0.45μm)に吸い取った後、膜は振盪台上、室温で1時間10%のBSA/TBS−T(0.1%のTween20)を用いてブロックした。その後、膜は振盪台上、4℃で一晩一次抗体(抗STAT3 TBS−T中1対1,000)と一緒にインキュベートした。TBS−Tを用いた3回洗浄ステップ(TBS−Tでの15分間、10分間、10分間)後、膜は振盪台上、4℃で2−4時間、ECLTM抗ウサギIgG、西洋ワサビペルオキシダーゼ(TBS−T中1対10,000)と一緒にインキュベートした。検出は、4回の最終洗浄ステップ(TBS−Tを用いて、それぞれ5分間)後、SuperSignal(登録商標)West Dura Extended検出キットを使用して行われた。
ストレプトアビジン/ビオチンを介してPS−DNAオリゴ(20mer)にコンジュゲートされた改変抗STAT3抗体は細胞透過が可能である。図8Aは、ストレプトアビジン/ビオチンを介してPS−オリゴDNA(20mer)(第1レーン)およびPS−オリゴRNA(20mer)(第2レーン)にコンジュゲートされた改変抗STAT3抗体で処置したU251細胞の別のウェスタンブロッティング分析を示している。U251細胞は10μg/mlの指定された改変抗STAT3抗体で処置し、37℃で1時間インキュベートした。インキュベーションおよびPBS(2ml)を用いた2回の洗浄ステップ後、細胞は500μlのRIPA緩衝液中氷上でのインキュベーション(30分間)により溶解し、続いて強力にボルテックスした。完全細胞ライセートは遠心分離ステップ(10分間、13,000rpm、4℃)後上澄みを収集することにより収穫した。それぞれの完全細胞ライセートに、30μlの組換えプロテインGアガロースビーズを添加し、振盪台上、4℃で一晩インキュベートした。ビーズはペレット化し(2分間、2,400rpm、4℃)、500μlの氷冷PBSで2回洗浄した。乾燥アガロースビーズに30μlのLaemmli緩衝液を補充し、95℃で5分間インキュベートした。20μlを10%のSDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)に充填し125Vで実行した。ゲルをニトロセルロースブロッティング膜(0.45μm)に吸い取った後、膜は振盪台上、室温で1時間10%のBSA/TBS−T(0.1%のTween20)を用いてブロックした。その後、膜は振盪台上、4℃で一晩一次抗体(抗STAT3 TBS−T中1対1,000)と一緒にインキュベートした。TBS−Tを用いた3回洗浄ステップ(TBS−Tでの15分間、10分間、10分間)後、膜は振盪台上、4℃で2−4時間、ECLTM抗ウサギIgG、西洋ワサビペルオキシダーゼ(TBS−T中1対10,000)と一緒にインキュベートした。検出は、4回の最終洗浄ステップ(TBS−Tを用いて、それぞれ5分間)後、SuperSignal(登録商標)West Dura Extended検出キットを使用して行われた。
図8Bは、ストレプトアビジン/ビオチンを介してPS−RNAオリゴ(20mer)(黒線)およびPS−DNAオリゴ(20mer)(赤色領域)にコンジュゲートされた改変抗STAT3抗体で処置したU251細胞(ヒトグリオーマ幹細胞)のフローサイトメトリー分析を示している。U251細胞は10μg/mlの指定された改変抗STAT3抗体で処置し、37℃で1時間インキュベートした。洗浄ステップ(PBS/1%BSA)後、細胞を収穫し500μlの2%パラホルムアルデヒドで固定し(15分間)、続いて洗浄ステップ(PBS/1%BSA)、続いて500氷冷メタノール(10分間)で洗浄した。洗浄(PBS/1%BSA)後、細胞は4℃で1時間、PBS/1%BSA/1%マウス血清を用いてブロックした。その後、細胞は洗浄し(PBS/1%BSA)、暗所で30分間二次抗体(灰色線)(αRb AF647 PBS中1対4000)を用いて染色した。フロー分析は3回の最終洗浄ステップ(PBS/1%BSA)および300μlの洗浄緩衝液に細胞を収集後に実施した。非染色U251はブランク対照(灰色領域)として使用した。
5’−ビオチン脱塩基オリゴの構造
dR間のPS連鎖
dR間のPO連鎖
図9Aは、ストレプトアビジン/ビオチンを介してPO−ポリマー(20mer)(破線)、PS−ポリマー(20mer)(黒線)、PS−オリゴDNA(20mer)(赤色領域)にコンジュゲートされた改変抗STAT3抗体で処置したU251細胞(ヒトグリオーマ幹細胞)のフローサイトメトリー分析を描いている。U251細胞は10μg/mlの特定の改変抗STAT3抗体で処置し、37℃で1時間インキュベートした。洗浄ステップ(PBS/1%BSA)後、細胞を収穫し500μlの2%パラホルムアルデヒドで固定し(15分間)、続いて洗浄ステップ(PBS/1%BSA)、続いて500氷冷メタノール(10分間)で処置した。洗浄(PBS/1%BSA)後、細胞は4℃で1時間、PBS/1%BSA/1%マウス血清を用いてブロックした。その後、細胞は洗浄し(PBS/1%BSA)、暗所で30分間二次抗体(灰色線)(αRb AF647 PBS中1対4000)を用いて染色した。フロー分析は3回の最終洗浄ステップ(PBS/1%BSA)および300μlの洗浄緩衝液に細胞を収集後に実施した。非染色U251はブランク対照(灰色領域)として使用した。
図9Aは、ストレプトアビジン/ビオチンを介してPS−オリゴDNA(20mer)(第1レーン)、PS−オリゴRNA(20mer)(第2レーン)、PO−ポリマー(20mer)(第3レーン)およびPS−ポリマー(20mer)(第4レーン)にコンジュゲートされた改変抗STAT3抗体で処置したU251細胞の別のウェスタンブロッティング分析を描いている。U251細胞は10μg/mlの特定の改変抗STAT3抗体で処置し、37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞は500μlのRIPA緩衝液中氷上でのインキュベーション(30分間)により溶解し、続いて強力にボルテックスした。完全細胞ライセートは遠心分離ステップ(10分間、13,000rpm、4℃)後上澄みを収集することにより収穫した。それぞれの完全細胞ライセートに、30μlの組換えプロテインGアガロースビーズを添加し、振盪台上、4℃で一晩インキュベートした。ビーズはペレット化し(2分間、2,400rpm、4℃)、500μlの氷冷PBSで2回洗浄した。乾燥アガロースビーズに30μlのLaemmli緩衝液を補充し、95℃で5分間インキュベートした。20μlを10%のSDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)に充填し125Vで実行した。ゲルをニトロセルロースブロッティング膜(0.45μm)に吸い取った後、膜は振盪台上、室温で1時間10%のBSA/TBS−T(0.1%のTween20)を用いてブロックした。その後、膜は振盪台上、4℃で一晩一次抗体(抗STAT3 TBS−T中1対1,000)と一緒にインキュベートした。TBS−Tを用いた3回洗浄ステップ(TBS−Tでの15分間、10分間、10分間)後、膜は振盪台上、4℃で2−4時間、ECLTM抗ウサギIgG、西洋ワサビペルオキシダーゼ(TBS−T中1対10,000)と一緒にインキュベートした。検出は、4回の最終洗浄ステップ(TBS−Tを用いて、それぞれ5分間)後、SuperSignal(登録商標)West Dura Extended検出キットを使用して行われた。
[実施例2]
抗T−Bet細胞透過性抗体を通じてTh1免疫を調節する
T−bet(T−ボックス転写因子TBX21(TBX21))はTh1分化に極めて重要な転写因子である。T−Betの阻害剤は、2型糖尿病、肥満および他の炎症性疾患を治療することが可能である。これとは対照的に、T−Betを刺激すると抗腫瘍および抗ウイルス免疫を活性化することが可能である。しかし、T−bet調節剤はない。ここでは出願者らは、特定のT−bet抗体が、改変されると(アビジン/ストレプトアビジンを通じて20merのホスホロチオエート化(PS)DNAオリゴマーに非共有結合される)、効果的なT−betアゴニストとして働き、Th1免疫応答を刺激し、樹状細胞を刺激することを通じてCD8+T細胞を腫瘍に動員し、腫瘍成長を阻害することを明らかにする。
細胞透過性T−Bet抗体処置はマウスメラノーマ成長を制限する
改変細胞透過性T−Bet抗体の治療効力を試験するため、B16マウスメラノーマ腫瘍を一日おきに10μg/用量を用いて局所的に処置し、腫瘍成長をモニターした。PBS処置(ビヒクル対照)または改変非ターゲティングIgG処置群と比べると、改変抗T−Bet抗体の投与により腫瘍成長が有意に制限された(図10)。
改変T−Bet抗体は抗腫瘍適応免疫応答を活性化する
T−Betは異なる種類の免疫細胞、特に、T細胞、B細胞および樹状細胞(DC)において発現されることが知られている。腫瘍浸潤性リンパ球は、図10説明文に述べられる通りに処置されたB16マウスメラノーマから単離され、フローサイトメトリー分析にかけた。T−Bet抗体の処置により、Th1免疫応答ならびに機能的細胞障害性Tリンパ球は有意に増強された(IFNγ発現CD4+およびCD8+T細胞の増加)。さらに、T−Bet抗体のインビボ処置によりCD4+T細胞においてT−Bet発現が促進され、T−Bet抗体がT−betアゴニストとして働いてTh1免疫応答を刺激することを示している(図11)。
細胞透過性T−Bet抗体はDCも標的にし、その抗原提示機能を増強する
異なる免疫細胞におけるT−Bet抗体取込みの詳細な分析により、抗体はCD3−細胞によっても取り込まれることを明らかにし、これを出願者らはCD11c+DCとしてさらに同定した(データは示されず)。改変T−Bet抗体の処置は、CD86およびMHCIIの発現を通じてDCの抗原提示機能を促進することができた(図12Aおよび図12B)。
[実施例3]
FoxP3を細胞透過性抗体を用いてブロックすると腫瘍Tregおよび腫瘍進行が抑制される
Treg(調節性T細胞)は抗腫瘍/ウイルス免疫応答を阻害し、それによって種々の免疫治療を妨害する。Tregを減らす新規の免疫療法薬を開発することは極めて重要である。FoxP3はTregの維持および機能にとり不可欠である。しかし、FoxP3はその細胞内分布のせいで新薬の開発にはつながらないと考えられている。ここで出願者らは、PS改変FoxP3抗体がFoxP3陽性細胞を優先的に標的にすることができ、FoxP3および下流のエフェクター、CTLA4のレベルを阻害することを明らかにする。さらに重要なのは、改変FoxP3抗体を全身投与すると腫瘍浸潤性Tregおよび腫瘍成長を減少させることができた。
細胞浸透性FoxP3抗体はTregにより優先的に保持される
改変細胞透過性FoxP3抗体の特異性を評価するため、FoxP3−GFP−Tgマウスから新たに単離した脾細胞を、10μg/mlの改変FoxP3抗体と一緒にまたは対照としての働きをする10μg/mlの改変IgGと一緒に培養した。2時間後、細胞を収集し、洗浄し、抗体にコンジュゲートしたPSオリゴを標識するのに使用したCy5の検出のためのフローサイトメトリー分析にかけた。注目すべきことに、FoxP3+Tregは、非Tregよりもはるかに多くの改変FoxP3抗体を保持することができた。さらに、FoxP3抗体は対照の改変IgG群よりもはるかにTregにおいて検出可能であった(図13)。
改変FoxP3抗体を用いた全身処置はFoxP3陽性およびCTLA4陽性CD4+T細胞(Treg)を減少させメラノーマの成長を抑制する
T細胞に対する改変FoxP3の効果を調べるため、改変IgGまたはFoxP3抗体(10μg/マウス)を、B16腫瘍細胞接種直後11日目までの間一日おきにC57BL/6マウスに全身的に投与した。腫瘍量は1日毎にまたは2日毎にモニターし、すべての動物は19日後に安楽死させた。次に、腫瘍を収集し、FoxP3およびCTLA4陽性T細胞を検出するためのさらなるフローサイトメトリー分析のために腫瘍浸潤性リンパ球を単離した。改変非ターゲティングIgGと比べると、改変抗FoxP3抗体の全身投与はメラノーマの進行を有意に減少させた。腫瘍浸潤性リンパ球のさらなる分析により、FoxP陽性およびCTLA4陽性CD4+T細胞のパーセンテージは減少していることが明らかにされ、改変FoxP3抗体による腫瘍Tregの遮断を示していた(図14)。
実施形態
実施形態1.
(i)非細胞透過性タンパク質、
(ii)ホスホロチオエート核酸、および
(iii)前記ホスホロチオエート核酸を前記非細胞透過性タンパク質に結合させる非共有結合リンカー
を含む細胞透過性コンジュゲートであって、
前記非共有結合リンカーが、ビオチンドメインに非共有結合しているビオチン結合ドメインを含み、
前記ホスホロチオエート核酸が、前記非細胞透過性タンパク質の細胞内送達を増強する、細胞透過性コンジュゲート。
実施形態2.前記ビオチン結合ドメインがアビジンドメインである、実施形態1に記載の細胞透過性コンジュゲート。
実施形態3.前記ビオチン結合ドメインがストレプトアビジンドメインである、実施形態1に記載の細胞透過性コンジュゲート。
実施形態4.前記ストレプトアビジンドメインが複数のビオチンドメインに結合する、実施形態3に記載の細胞透過性コンジュゲート。
実施形態5.前記ストレプトアビジンドメインが約4つのビオチンドメインに結合する、実施形態4に記載の細胞透過性コンジュゲート。
実施形態6.前記ビオチン結合ドメインが前記非細胞透過性タンパク質に共有結合している、実施形態1−5のいずれか1つの細胞透過性コンジュゲート。
実施形態7.複数のビオチン結合ドメインが前記非細胞透過性タンパク質に結合している、実施形態1−6のいずれか1つの細胞透過性コンジュゲート。
実施形態8.前記ビオチンドメインが前記ホスホロチオエート核酸に結合している、実施形態1−7のいずれか1つの細胞透過性コンジュゲート。
実施形態9.前記ビオチンドメインが前記ホスホロチオエート核酸に共有結合している、実施形態8の細胞透過性コンジュゲート。
実施形態10.複数のホスホロチオエート核酸が前記ビオチンドメインに結合している、実施形態8または9の細胞透過性コンジュゲート。
実施形態11.前記ホスホロチオエート核酸が約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100またはそれよりも多い核酸残基長である、実施形態1−10のいずれか1つの細胞透過性コンジュゲート。
実施形態12.前記ホスホロチオエート核酸が約10から約30核酸残基長である、実施形態11の細胞透過性コンジュゲート。
実施形態13.前記ホスホロチオエート核酸が約20核酸残基長である、実施形態11の細胞透過性コンジュゲート。
実施形態14.前記非細胞透過性タンパク質が25kD超の分子量を有する、実施形態1から12のいずれか1つの細胞透過性コンジュゲート。
実施形態15.前記非細胞透過性タンパク質が約25kDから約750kDの分子量を有する、実施形態1から14のいずれか1つの細胞透過性コンジュゲート。
実施形態16.前記非細胞透過性タンパク質が抗体である、実施形態1から15のいずれか1つの細胞透過性コンジュゲート。
実施形態17.前記抗体がIgG抗体である、実施形態16の細胞透過性コンジュゲート。
実施形態18.前記抗体がIgA、IgM、IgDまたはIgE抗体である、実施形態16の細胞透過性コンジュゲート。
実施形態19.前記抗体がFv断片である、実施形態16の細胞透過性コンジュゲート。
実施形態20.前記抗体がヒト化抗体である、実施形態16から19のいずれか1つの細胞透過性コンジュゲート。
実施形態21.前記非細胞透過性タンパク質が細胞内標的に結合する、実施形態1から20のいずれか1つの細胞透過性コンジュゲート。
実施形態22.前記細胞内標的が、自己免疫疾患、炎症性疾患、代謝障害、発達障害、循環器疾患、肝疾患、腸疾患、感染症、内分泌疾患、神経障害、およびがんからなる群から選択される疾患の標的である、実施形態21の細胞透過性コンジュゲート。
実施形態23.前記細胞内標的が、シグナル伝達分子または転写因子である、実施形態21または22の細胞透過性コンジュゲート。
実施形態24.前記シグナル伝達分子がホスファターゼまたはキナーゼである、実施形態23の細胞透過性コンジュゲート。
実施形態25.前記細胞内標的ががん標的である、実施形態21の細胞透過性コンジュゲート。
実施形態26.前記細胞内標的がSTAT3、およびSrcからなる群から選択される、実施形態21の細胞透過性コンジュゲート。
実施形態27.前記細胞内標的がリン酸化Srcである、実施形態21の細胞透過性コンジュゲート。
実施形態28.前記非細胞透過性タンパク質が前記タンパク質に結合している標識、小分子または機能的核酸をさらに含む、実施形態1から27のいずれか1つの細胞透過性コンジュゲート。
実施形態29.前記細胞透過性コンジュゲートが細胞内標的に結合している、実施形態1から28のいずれか1つの細胞透過性コンジュゲート。
実施形態30.細胞透過性コンジュゲートを形成する方法であって、非細胞透過性タンパク質をホスホロチオエート核酸に接触させるステップと、ここで、前記非細胞透過性タンパク質はビオチン結合対の第1のメンバーに結合しており、前記ホスホロチオエート核酸は前記ビオチン結合対の第2のメンバーに結合している、それによってビオチンドメインとビオチン結合ドメインの間に非共有結合を含む細胞透過性コンジュゲートを形成するステップとを含む、方法。
実施形態31.前記ビオチン結合対の前記第1のメンバーがビオチン結合ドメインである、実施形態30の方法。
実施形態32.前記ビオチン結合対の前記第2のメンバーがビオチンドメインである、実施形態30の方法。
実施形態33.前記ビオチン結合対の前記第1のメンバーがビオチンドメインである、実施形態30の方法。
実施形態34.前記ビオチン結合対の前記第2のメンバーがビオチン結合ドメインである、実施形態30の方法。
実施形態35.前記ホスホロチオエート核酸が共有結合反応性部分を含む、実施形態30の方法。
実施形態36.実施形態1から29のいずれか1つの細胞透過性コンジュゲートを含む細胞。
実施形態37.実施形態1から29のいずれか1つの細胞透過性コンジュゲートおよび医薬として許容される担体を含む医薬組成物。
実施形態38.1つ以上のホスホロチオエート核酸を前記第2の非細胞透過性タンパク質に結合させる第2の非共有結合リンカーを含む第2の非細胞透過性タンパク質をさらに含む、実施形態37の医薬組成物。
実施形態39.前記非共有結合リンカーがビオチンドメインに非共有結合しているビオチン結合ドメインを含む、実施形態38の医薬組成物。
実施形態40.前記第2の非細胞透過性タンパク質が細胞内標的に結合する、実施形態38の医薬組成物。
実施形態41.前記第2の非細胞透過性タンパク質が、実施形態21から27のいずれか1つの前記非細胞透過性タンパク質に対して細胞内標的上の異なるエピトープに結合する、実施形態40の医薬組成物。
実施形態42.前記第2の非細胞透過性タンパク質が第2の細胞内標的に結合する、実施形態41の医薬組成物。
実施形態43.前記第2の非細胞透過性タンパク質が抗体である、実施形態38から42のいずれか1つの医薬組成物。
実施形態44.実施形態1から29のいずれか1つの細胞透過性コンジュゲートまたは実施形態37の医薬組成物および使用説明書を含むキット。
実施形態45.1つ以上のホスホロチオエート核酸を前記第2の非細胞透過性タンパク質に結合させる第2の非共有結合リンカーを含む第2の非細胞透過性タンパク質をさらに含む、実施形態44のキット。
実施形態46.実施形態1から29のいずれか1つの前記コンジュゲートおよび前記第2の非細胞透過性タンパク質が別々の容器にある、実施形態45のキット。
実施形態47.前記第2の非細胞透過性タンパク質が、実施形態1から29のいずれか1つの非細胞透過性タンパク質に対して細胞内標的上の異なるエピトープに結合する、実施形態45または46のキット。
実施形態48.前記第2の非細胞透過性タンパク質が第2の細胞内標的に結合する、実施形態45から47のいずれか1つのキット。
実施形態49.前記第2の非細胞透過性タンパク質が、第2の非細胞透過性タンパク質および医薬として許容される担体を含む医薬組成物として処方される、実施形態45から48のいずれか1つのキット。
実施形態50.第2の非細胞透過性タンパク質が抗体である、実施形態45から49のいずれか1つのキット。
実施形態51.細胞を実施形態1から29のいずれか1つの前記細胞透過性コンジュゲートに接触させることを含む非細胞透過性タンパク質を細胞内に送達する方法。
実施形態52.前記非細胞透過性タンパク質が細胞質において核タンパク質に結合し、それによって非細胞透過性タンパク質−核タンパク質複合体を形成する、実施形態51の方法。
実施形態53.前記非細胞透過性タンパク質−核タンパク質複合体が細胞の核に入ることができない、実施形態52の方法。
実施形態54.疾患の治療を必要とする対象において疾患を治療する方法であって、対象に実施形態1から29のいずれか1つの細胞透過性コンジュゲートの有効量を投与し、それによって前記対象において疾患を治療することを含む、方法。
実施形態55.1つ以上のホスホロチオエート核酸を前記第2の非細胞透過性タンパク質に結合させる第2の非共有結合リンカーを含む第2の非細胞透過性タンパク質を対象に投与することをさらに含む、実施形態54の方法。
実施形態56.前記非共有結合リンカーがビオチンドメインに非共有結合しているビオチン結合ドメインを含む、実施形態55の方法。
実施形態57.前記第2の非細胞透過性タンパク質が実施形態1から29のいずれか1つのコンジュゲートに対して細胞内標的上の異なるエピトープに結合する、実施形態56の方法。
実施形態58.第2の非細胞透過性タンパク質が第2の細胞内標的に結合する、実施形態57の方法。
実施形態59.実施形態1から29のいずれか1つのコンジュゲートおよび前記第2の非細胞透過性タンパク質が同時に投与される、実施形態55から58のいずれか1つの方法。
実施形態60.実施形態1から29のいずれか1つのコンジュゲートおよび前記第2の非細胞透過性タンパク質が順次に投与される、実施形態55から58のいずれか1つの方法。
実施形態61.前記第2の非細胞透過性タンパク質が抗体である、実施形態55から60のいずれか1つの方法。
実施形態62.第2の治療薬を対象に投与することをさらに含む、実施形態55から61のいずれか1つの方法。
実施形態63.前記疾患が、自己免疫疾患、発達障害、炎症性疾患、代謝障害、循環器疾患、肝疾患、腸疾患、感染症、内分泌疾患、神経障害、およびがんからなる群から選択される、実施形態55から62のいずれか1つの方法。
実施形態64.疾患ががんである、実施形態63の方法。
実施形態65.コンジュゲートの非細胞透過性タンパク質が細胞内標的に結合し、細胞内標的がSTAT3またはSrcである、実施形態55の方法。
実施形態66.コンジュゲートの非細胞透過性タンパク質が細胞内標的に結合し、細胞内標的がリン酸化Srcである、実施形態55の方法。
実施形態67.コンジュゲートの非細胞透過性タンパク質がSTAT3に特異的に結合する抗体であり、第2の非細胞透過性タンパク質がSTAT3の別のエピトープに特異的に結合する抗体である、実施形態55の方法。