JP2021151205A - サバ類の性識別方法 - Google Patents

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良輔 矢澤
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悟朗 吉崎
亘 川村
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亘 川村
玲央人 谷
Reoto Tani
玲央人 谷
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Abstract

【課題】サバ類の性を簡易かつ正確に識別し得る新たな技術的手段を提供する。【解決手段】配列番号2または3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド、そのヌクレオチド断片を含んでなる遺伝子またはそれらの変異体をサバ類の性識別マーカーとして用いる。【選択図】図7

Description

本発明は、サバ類の性識別マーカー、およびサバ類の性を識別する方法に関する。より詳細には、性決定遺伝子に基づくサバ類の性識別マーカー、性決定遺伝子を指標にしたサバ類の性を検査する方法に関する。
サバは、水産上重要種であり、マサバ、ゴマサバをはじめとする高付加価値のある種が存在するが、漁獲による生産が主である。一方で、近年、養殖生産による安全性の向上や高付加価値化が進んでおり、将来的にはサバも養殖対象種としても注目される可能性があり、完全養殖の実現には安定的な種苗生産が不可欠である。
安定的に養殖を行うためには、選抜飼育と早期の性差判別技術が重要である。例えば、限られた飼育スペースの中で、より多くの受精卵を得るためには雌親魚の割合が重要であり、成熟前の雌をより分ける必要がある。しかしながら、これまでサバでは、成熟後の卵の有無をカニュレーション(物理的に卵があるか確認する手法)で観察したり、多量の血液やヒレをカットし得られる抽出物中に存在する性ステロイドをELISA法により検出する方法が実際の現場で一般的に使用されており、成熟後に侵襲性の高い手法でしか雌雄を判別できず、未成熟な段階での選抜は困難であった。したがって、簡易かつ非侵襲的にサバの遺伝的な性を識別できる手法の確立が望まれている。
近年、安定的な養殖の実現の観点から、様々な魚の性の識別方法の報告されている。
例えば、特許文献1には、クロマグロの遺伝的性を判別するマーカーおよびそれを用いたクロマグロの遺伝的性判別方法が開示されている。
特許文献2には、成熟前のブリ類の遺伝的性を殺すことなく確実に判別するのに利用できるブリ類の遺伝的性に連鎖するSNP マーカー、この遺伝子マーカーを用いたブリ類の性判別法及び性判別法に用いるプライマーが報告されている。
特許文献3には、魚類の性判別をするため、魚の生体試料を用意し、該生体試料における、発現に性差のある遺伝子のmRNAの発現パターンを調べることにより、魚の性を判別する方が報告されている。
特許文献4には、魚、特に、それらの生体構造に起因して、非侵襲的な方法を使用することによっては雌雄を判別することのできない魚の雌雄を、雄と雌との間の差異に基づいて判定するための、方法および装置が開示され、生殖腺の内側にプローブを挿入して判別することが具体的に開示されている。
しかしながら、簡易かつ正確にサバの遺伝的な性を識別できる手法は依然として何ら報告されていない。
特開2019−88234号公報 特開2014−180233号公報 特開2000−60569号公報 特表2011−505794号公報
本発明者らは、サバの遺伝的性決定がヘテロ型であることを利用し、サバの雄または雌個体のゲノム配列を比較し、性染色体に関連する一塩基多型(SNP)を見出した。さらに、かかる遺伝子または該遺伝子のゲノム配列情報に基づいて、サバの性を簡易かつ正確に識別できることを見出した。本発明はかかる知見に基づくものである。
本発明は、サバ類の性を簡易かつ正確に識別し得る新たな技術的手段を提供することを目的とする。
本発明は、以下の発明を包含する。
[1]以下の(a)〜(h)のいずれか一つのポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片を含んでなる、遺伝子:
(a)配列番号2で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片であって、配列番号2における、第652番のチミン残基、第665番のチミン残基、第667番のチミン残基、第768番のシトシン残基、第2039番のアデニン残基、第2039番のアデニン残基、第2041番のアデニン残基、第2137番のアデニン残基、第2140番のアデニン残基、および第2143番のアデニン残基からなる群から選択される少なくとも1つヌクレオチド残基を保持してなる、ポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片、
(b)配列番号2で表される塩基配列と同一性が90%以上である塩基配列からなるポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片であって、
配列番号2における、第652番のチミン残基、第665番のチミン残基、第667番のチミン残基、第768番のシトシン残基、第2039番のアデニン残基、第2039番のアデニン残基、第2041番のアデニン残基、第2137番のアデニン残基、第2140番のアデニン残基、および第2143番のアデニン残基からなる群から選択される少なくとも1つヌクレオチド残基を保持してなる、ポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片、
(c)配列番号2で表される塩基配列において、1または数個の塩基が置換、欠失または付加されている塩基配列からなるポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片であって
配列番号2における、第652番のチミン残基、第665番のチミン残基、第667番のチミン残基、第768番のシトシン残基、第2039番のアデニン残基、第2039番のアデニン残基、第2041番のアデニン残基、第2137番のアデニン残基、第2140番のアデニン残基、および第2143番のアデニン残基からなる群から選択される少なくとも1つヌクレオチド残基を保持してなる、ポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片、
(d)配列番号2で表される塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片であって、
配列番号2における、第652番のチミン残基、第665番のチミン残基、第667番のチミン残基、第768番のシトシン残基、第2039番のアデニン残基、第2039番のアデニン残基、第2041番のアデニン残基、第2137番のアデニン残基、第2140番のアデニン残基、および第2143番のアデニン残基からなる群から選択される少なくとも1つヌクレオチド残基を保持してなる、ポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片、
(e)配列番号3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドであって、配列番号3における第1896番のグアニン残基を保持してなる、ポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片、
(f)配列番号3で表される塩基配列と同一性が90%以上である塩基配列からなるポリヌクレオチドであって、配列番号3における、第1896番のグアニン残基を保持してなる、ポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片、
(g)配列番号3で表される塩基配列において、1または数個の塩基が置換、欠失、挿入または付加されている塩基配列からなるポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片であって、
配列番号3における第1896番のグアニン残基を保持してなる、ポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片、
(h)配列番号3で表される塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片であって、
配列番号3における第1896番のグアニン残基を保持してなる、ポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片。
[2]サバ類の性識別活性を有する、[1]に記載の遺伝子。
[3]前記ポリヌクレオチドの鎖長が、100〜200残基である、[1]または[2]に記載の遺伝子。
[4][1]〜[3]のいずれかに記載の遺伝子または該遺伝子の発現産物を含んでなる、サバ類の性識別マーカー。
[5]前記遺伝子の発現産物が、該遺伝子のmRNA、または該遺伝子がコードするタンパク質である、[4]に記載の性識別マーカー。
[6]被検体サバ類から得られた試料において[1]〜[3]のいずれかに記載の遺伝子または該遺伝子の発現産物を検出する工程を含んでなる、サバ類の性を識別する方法。
[7]前記(a)〜(d)のいずれか一つのポリヌクレオチドを含んでなる遺伝子または該遺伝子の発現産物を検出する場合、サバ類の性を雌と判定する、[6]に記載の方法。
[8]前記(e)〜(h)のいずれか一つのポリヌクレオチドを含んでなる遺伝子または該遺伝子の発現産物を検出する場合、サバ類の性を雄と判定する、[6]または[7]に記載の方法。
[9]前記検出工程が、[1]〜[3]のいずれかに記載の遺伝子またはその相補的な遺伝子を核酸増幅法により増幅することを含んでなる、[6]〜[8]のいずれかに記載の方法。
[10]前記試料が、鰭、血液、粘液、うろこ、および体表(表皮)からなる群から選択される組織由来の試料である、[6]〜[9]のいずれかに記載の方法。
[11]サバ類が、マサバ(Scomber japonicus)またはゴマサバ(Scomber australasicus)である、[6]〜[10]のいずれかに記載の方法。
[12][6]〜[11]のいずれかに記載の方法に用いるための核酸分子であって、
[1]に記載の遺伝子、または該遺伝子のmRNA、もしくはcDNAを含むポリヌクレオチド、あるいはそれらに相補的なポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズしうる、核酸分子。
[13][6]〜[11]のいずれかに記載の方法に用いるためのプライマーペアであって、
請求項1に記載の遺伝子、または該遺伝子のmRNA、もしくはcDNAを含むポリヌクレオチド、あるいはそれらの相補的なポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズしうる、プライマーペア。
[14][12]に記載の核酸分子および/または[13]に記載のプライマーペアを含んでなる、サバ類の性の識別用キット。
本発明によれば、サバ類の性を簡易かつ正確に識別することができる。本発明は、サバ類の性の識別を非侵襲的に実施する上で有利である。また、本発明は、養殖のみならず、野生個体集団における被検体サバ類の性を高精度で識別する上で有利である。
マサバ(雌ヘテロ型)およびゴマサバ(雄ヘテロ型)に関して、性特異的SNP探索により得られたM/Ffst、雄特異的SNP、雌特異的SNPおよびM/F coverage情報を同心円状に配置した模式図である。 マサバ(雌ヘテロ型)およびゴマサバ(雄ヘテロ型)に関して、性特異的SNP探索により得られたM/Ffst、雄特異的SNP、雌特異的SNPおよびM/F coverage情報を同心円状に配置した模式図である。図2中の四角で囲った枠内に矢印は、マサバ(雌ヘテロ型)で発現が確認された雌のみに特異的なSNP、およびゴマサバ(雄ヘテロ型)で発現が確認された雄のみに特異的なSNPを示す。 マサバ(雌ヘテロ型)について、雌雄のDNAシークエンスの比較を行った際の模式図である。 配列番号2における第652番、第665番、第667番および第768番のヌクレオチド残基のSNPを含むヌクレオチド断片(以下、「Jap_F1」とも称する)を検出するためのプライマーの設計過程を示す模式図である。 配列番号2における第2039番、第2041番、第2137番および第2140番および第2143番のヌクレオチド残基のSNPを含むヌクレオチド断片(以下、「Jap_F2」とも称する)を検出するためのプライマーの設計過程を示す模式図である。 配列番号3における第1896番のヌクレオチド残基のSNPを含むヌクレオチド断片Aus_M(以下、「Aus_M」とも称する)を検出するためのプライマーの設計過程を示す模式図である。 マサバ(Scomber japonicus)およびゴマサバ(Scomber australasicus)の血液試料を用いて、性識別マーカーとして、SNPを含むヌクレオチド断片Jap_F1、Jap_F2、Aus_MをPCRにより検出した結果を示す写真である。
発明の具体的説明
本発明のサバ類とは、サバ属の魚類であり、サバ科(学名:Scombridae)と称される魚を含む。本発明の好ましい実施態様によれば、サバ類は、マサバ(Scomber japonicus)またはゴマサバ(Scomber australasicus)である。
本発明の一つの実施態様によれば、サバ類の性識別は、サバ類の性の違いに伴って生じる配列番号2または3で表されるポリヌクレオチド配列中のSNPに基づいて実施することができる。より具体的な態様によれば、雌に特異なSNPを含む配列番号2のヌクレオチド群(以下の(a)〜(d))または雄に特異なSNPを含む配列番号3のヌクレオチド(以下の(e)〜(h))をサバ類の性識別マーカーとして用いて、マーカーの発現の有無に基づき、被検体サバ類の性を識別することができる。ここで、「性識別マーカー」とは、サバ被検体の遺伝的な性の識別に使用することができるマーカーである。
したがって、本発明の好ましい実施態様によれば、以下の(a)〜(d)のいずれか一つのポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片からなる遺伝子が提供される:
(a)配列番号2で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片であって、配列番号2における、第652番のチミン残基、第665番のチミン残基、第667番のチミン残基、第768番のシトシン残基、第2039番のアデニン残基、第2039番のアデニン残基、第2041番のアデニン残基、第2137番のアデニン残基、第2140番のアデニン残基、および第2143番のアデニン残基からなる群から選択される少なくとも1つヌクレオチド残基を保持してなる、ポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片、
(b)配列番号2で表される塩基配列と同一性が90%以上である塩基配列からなるポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片であって、
配列番号2における、第652番のチミン残基、第665番のチミン残基、第667番のチミン残基、第768番のシトシン残基、第2039番のアデニン残基、第2039番のアデニン残基、第2041番のアデニン残基、第2137番のアデニン残基、第2140番のアデニン残基、および第2143番のアデニン残基からなる群から選択される少なくとも1つヌクレオチド残基を保持してなる、ポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片、
(c)配列番号2で表される塩基配列において、1または数個の塩基が置換、欠失または付加されている塩基配列からなるポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片であって
配列番号2における、第652番のチミン残基、第665番のチミン残基、第667番のチミン残基、第768番のシトシン残基、第2039番のアデニン残基、第2039番のアデニン残基、第2041番のアデニン残基、第2137番のアデニン残基、第2140番のアデニン残基、および第2143番のアデニン残基からなる群から選択される少なくとも1つヌクレオチド残基を保持してなる、ポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片、
(d)配列番号2で表される塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片であって、
配列番号2における、第652番のチミン残基、第665番のチミン残基、第667番のチミン残基、第768番のシトシン残基、第2039番のアデニン残基、第2039番のアデニン残基、第2041番のアデニン残基、第2137番のアデニン残基、第2140番のアデニン残基、および第2143番のアデニン残基からなる群から選択される少なくとも1つヌクレオチド残基を保持してなる、ポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片。
また、本発明の別の好ましい実施態様によれば、以下の(e)〜(h)のいずれか一つのポリヌクレオチドもしくはそのヌクレオチド断片からなる、遺伝子が提供される:
(e)配列番号3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドであって、配列番号3における第1896番のグアニン残基を保持してなる、ポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片、
(f)配列番号3で表される塩基配列と同一性が90%以上である塩基配列からなるポリヌクレオチドであって、配列番号3における、第1896番のグアニン残基を保持してなる、ポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片、
(g)配列番号3で表される塩基配列において、1または数個の塩基が置換、欠失、挿入または付加されている塩基配列からなるポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片であって、
配列番号3における第1896番のグアニン残基を保持してなる、ポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片、
(h)配列番号3で表される塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片であって、
配列番号3における第1896番のグアニン残基を保持してなる、ポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片。
(a)〜(h)において、保持されるヌクレオチド残基の数は、好ましくは1〜9個であり、より好ましくは1〜5個であり、より一層好ましくは1〜3固である。
(a)において保持されるヌクレオチド残基の組み合わせは、特に限定されないが、好ましくは第652番のチミン残基、第665番のチミン残基、第667番のチミン残基および第768番のシトシン残基の組み合わせであるか、第2041番のアデニン残基、第2137番のアデニン残基、第2140番のアデニン残基、および第2143番のアデニン残基の組み合わせである。
また、上記(b)または(f)において、配列番号2で表される塩基配列と同一性は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より一層好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上である。
本明細書において塩基配列の「同一性」とは、二つの塩基配列を整列(アラインメント)し、必要に応じてギャップを導入して、両者の塩基一致度が最も高くなるようにしたときに、配列番2で示される塩基配列の全塩基に対する二つの塩基配列間で同一塩基の割合(%)をいう。塩基配列の同一性は、ClustalWやBLASTにといった公知のソフトウェアを使用して決定することができる。
また、上記(c)または(g)において、置換、欠失、挿入または付加するヌクレオチドにおける「数個」とは、例えば、1〜20個が挙げられ、好ましくは1〜15個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜7個、さらに好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜4個、また、さらに好ましくは1〜3個をいう。
また、上記(d)または(h)において、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズ(する)」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件でハイブリダイズすることをいい、例えば、低塩濃度及び/又は高温の条件下でハイブリダイゼーションと洗浄を行うことが挙げられる。例えば、「ストリンジェントな条件」とは、「5×SSPE、5×Denhardt’s液、0.5%ドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate、SDS)、50%ホルムアミド、200μg/mL鮭精子DNA、42℃オーバーナイト」であってもよく、洗浄のための条件として、「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」の条件が挙げられる。また、「よりストリンジェントな条件」とは、ハイブリダイゼーションのための条件として、「5×SSPE、5×Denhardt’s液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、200μg/mL鮭精子DNA、42℃オーバーナイト」、洗浄のための条件として、「0.2×SSC、0.1%SDS、65℃」の条件が挙げられる。ストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件については、 Green, M.R. and Sambrook, J., 2012, Molecular Cloning: A Laboratory Manual Fourth Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York に記載されているので参考にすることができる。
また、(a)〜(h)に記載のポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片の鎖長は、特に限定されないが、好ましくは15〜450塩基、より好ましくは25〜450塩基、より一層好ましくは50〜150塩基である。
(a)〜(h)に記載のポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片は、上述の通り、サバ類の性識別マーカーとして好適に使用することができる。したがって、本発明の好ましい態様によれば、(a)〜(h)に記載のポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片は、サバ類の性識別活性を有するものである。ここで、「サバ類の性識別活性」の有無は、試験例2の手順に従いPCRを行い、性特異的にポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片のバンドが検出されるか否かにより決定することができる。
本発明の好ましい態様によれば、配列番号2または配列番号3で表されるポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片を含む遺伝子の発現産物をサバ類の性識別マーカーとして使用することができ、かかる発現産物としては、mRNA、cDNA、または、該遺伝子がコードするタンパク質等を挙げることができる。
配列番号2または配列番号3で表されるポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片を含む遺伝子の発現産物の具体的な例としては、FERMおよびPDZドメイン含有4様タンパク質(NW_019174360)、チロシン−タンパク質キナーゼPRAG1(NW_019175644)等の一部または変異体が挙げられる。
サバ類の性を識別する方法
検出工程
本発明の一実施態様によれば、サバ類の性を識別する方法は、(a)〜(h)のいずれか一つのポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片を含んでなる遺伝子または該遺伝子の発現産物の有無を検出することにより、当該サバの性を識別することができる。上述のように、(a)〜(d)の遺伝子は雄のみに存在し、(e)〜(h)の遺伝子は雌のみに存在することから、かかる遺伝子または該遺伝子の発現産物の有無は、サバ類の正確な雌雄判別の指標となると考えられる。
本発明では、例えば、被験体であるサバ類の個体の一部、例えば鰭(尾鰭、背鰭、胸鰭、腹鰭、尻鰭)、血液、うろこ、粘液、腎臓筋肉、受精卵等の核が存在する組織から試料を採取し、得られた試料からゲノムDNAやmRNA等の核酸試料を抽出し、必要であればmRNAから逆転写酵素によりcDNAを作製して得られた核酸試料を用いることができる。また、得られた核酸試料を鋳型として、例えば、後述するプライマーペアを用いて核酸増幅法を実施し、得られた核酸試料を用いることができる。
本発明の方法の好ましい一つの実施態様によれば、上述の(a)〜(h)のいずれか一つのポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片を含んでなる遺伝子領域を核酸増幅法により増幅することを含んでなる方法が提供される。かかる実施態様においては、当業者に広く知られた技術常識に従い、核酸増幅法に用いるプライマーおよび核酸増幅の反応条件を適宜選択することができる。核酸増幅法としては、例えば、ゲノムDNAまたはcDNAを鋳型とする場合には通常のPCR法等を用いることができ、mRNAを鋳型とする場合には、RT−PCR法、NASBA法等を用いることができる。ここで、該性識別マーカーとしては、上記(a)〜(h)のいずれか一つのDNAまたはそのヌクレオチド断片、または、該遺伝子の発現産物(例えば、mRNA)が挙げられる。
本発明の方法の好ましい一つの実施態様によれば、核酸増幅法は、(a)〜(h)のいずれか一つのポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片の一部または全部の領域を増幅対象とする性識別マーカー増幅用プライマーのペアを用いて実施することができる。このようなプライマーペアを構成する2本のプライマーは、増幅の対象となる領域の塩基配列に基づいて当業者が適宜設計することができる。例えば、プライマーペアの一方のプライマーを、増幅対象領域の塩基配列中における5’末端部分の塩基配列を有するものとし、他方のプライマーを、増幅対象領域の相補鎖の塩基配列中における5’末端部分の塩基配列を有するものとすることができる。本発明の方法の好ましい一つの実施態様によれば、核酸増幅方法に用いるためのプライマーペアとしては、上記(a)〜(h)のいずれか一つのポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片含んでなる遺伝子、または該遺伝子のmRNA、もしくはcDNAを含むポリヌクレオチド、あるいはそれらの相補的なポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズしうる、プライマーペアが用いられる。ここで、「特異的にハイブリダイズしうる」とは、上記ポリヌクレオチドに「特異的な」プライマーがストリンジェントな条件下でそのポリヌクレオチドに結合し、好ましくは雄雌を区別できるという意味を含む。プライマーの合成は、オリゴヌクレオチドの合成方法として知られる公知の方法を用いることができるが、より簡便には、DNAシンセサイザー(例えばApplied Biosystem社製)を用いて行うことができる。
本発明の方法において、核酸増幅法を用いる場合、プライマーの鎖長は15〜100ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも17ヌクレオチド、さらに好ましくは少なくとも18ヌクレオチド、さらに好ましくは18〜50ヌクレオチド、さらに特に好ましくは18〜40ヌクレオチドとされる。このような鎖長を有するプライマーは、特に夾雑物を含む核酸試料を用いて核酸増幅法を実施する上で好ましいものである。
より詳細には、核酸増幅法による性識別マーカーの検出には、性識別マーカーの一部または全部の領域を増幅し得るようなフォワードプライマー(5’側プライマー)とリバースプライマー(3’側プライマー)とからなる性識別マーカー増幅用プライマーのペアを用いることが好ましい。
上記の核酸増幅法により上記検出工程を実施する場合には、例えば、以下の配列を有するプライマーのペアが挙げられる。
フォワードJap_F1_F_648:TAGATGTTGTTAACTTGTGT(配列番号5)
リバースJap_F1_R_787:TACGTCTGATCCATGGTCAG(配列番号6)
フォワードJap_F2_F_2022:ACACCATCTCACTAGGAAGA(配列番号7)
リバースJap_F2_R_2156:GAGGAGGAGGTGGCGGTGGT(配列番号8)
フォワードAus_M_F1_1877:GTTTGATGGGGTCAGGTTGA(配列番号9)
リバースAus_M_R1_2031:CTGGAATCTTGATCTATGAG(配列番号10)
本発明の一実施形態によれば、マサバの性識別のため、配列番号5および6のプライマーのペアまたは配列番号7および8のプライマーペアが使用される。また、別の実施態様によれば、ゴマサバの性識別のため、配列番号9および10のプライマーのペアが使用される。上記の他、当業者であれば配列番号2または3の塩基配列に基づいて、他の適切な配列を容易に設計・合成することができ、これらのプライマーに限定されない。
増幅される性識別マーカーとしては、上記(a)〜(h)のいずれか一つのポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片含んでなる遺伝子、または該遺伝子のmRNA、もしくはcDNAを含むポリヌクレオチド、あるいはそれらの相補的なポリヌクレオチド等が挙げられ、好ましくは、mRNA、cDNA、またはそれらの相補的なポリヌクレオチドである。
本発明の一つの実施態様によれば、核酸増幅法は以下の方法で行われる。上記で得られたゲノムDNAやcDNAを鋳型とし、上記の性識別マーカー増幅用のプライマーペアを加えてPCRを行い、目的のDNA断片を増幅させる。PCRの温度条件は、当業者であれば適切に決定することができ、特に限定はされないが、好ましくは92〜96℃で0.25〜1分間(二本鎖DNAの解離)、52〜57℃で0.25〜1分間(プライマーのアニーリング)、70〜74℃で1〜3分間(相補鎖の合成)で順次反応させ、好ましくはこれを30〜40サイクル行う。上述の反応の温度設定にはヒートブロック式のプログラム温度制御装置を用いることができる。
次に、以上のようにして得られる反応混合物から、増幅された核酸を検出する。検出の方法としては、当技術分野で通常用いられる方法を用いることができるが、好ましくはアガロースゲル電気泳動およびそれに続くエチジウムブロミドによるゲル染色を行う方法を用いることができる。したがって、雄においてPCR増幅物が得られない試験系(マサバ等)においては、PCR増幅物が検出されれば、被検体サバには本発明の性識別マーカーが存在し、当該被検体サバは雌と評価することができる。一方、雌においてPCR増幅物が得られない試験系(ゴマサバ等)においては、PCR増幅物が検出されれば、被検体サバには本発明の性識別マーカーが存在し、当該被検体サバは雄と評価することができる。
さらに、得られたPCR増幅物の塩基配列をシークエンシング法等により決定してもよい。塩基配列の決定は当技術分野において周知で有り、例えば、市販のキットを用いて実施できる。
また、本発明の方法の別の好ましい実施態様によれば、プローブを用いたハイブリダイゼーション法等により、上記検出工程を実施することができる。本発明によるプローブとしては、ポリヌクレオチドである性識別マーカーの一部または全部の領域にハイブリダイズすることができるものが挙げられる。上記プローブとしては、例えば、(a)〜(h)のいずれか一つのポリヌクレオチド含んでなる遺伝子、または該遺伝子のmRNA、もしくはcDNAを含むポリヌクレオチド、あるいはそれらの相補的なポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズしうる、プローブが挙げられる。ここで、「特異的にハイブリダイズしうる」とは、上記ポリヌクレオチドに「特異的な」プローブがストリンジェントな条件下でそのポリヌクレオチドに結合し、好ましくは雄雌を区別できるという意味を含む。従って、本発明によれば、当該プローブと被検体であるサバ類の個体由来の核酸試料とのハイブリダイゼーションを行ない、次いでハイブリダイゼーション複合体の存在を検出する工程を含んでなる、サバ類の性を識別する方法が提供される。ハイブリダイゼーション複合体の存在は、サバ類の性決定遺伝子である(a)〜(h)のいずれか一つのポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片を含んでなる遺伝子の存在を示す。このハイブリダイゼーション法を用いる方法は、上述の核酸増幅法を用いる方法により得られる増幅産物である核酸試料に対して適用することもできる。
本発明の一つの実施態様によれば、プローブの鎖長は少なくとも10ヌクレオチドであり、好ましくは20〜1000ヌクレオチド、より好ましくは50〜700ヌクレオチド、さらに好ましくは100〜500ヌクレオチドとされる。本発明によるプローブの鎖長は、そのプローブの用途により適宜調整することができる。このような鎖長を有するプローブは、特に夾雑物を含む核酸試料を用いてハイブリダイゼーション法を実施する上で好ましいものである。
ハイブリダイゼーション法によるサバ類の遺伝的な性の識別に当たっては、ストリンジェントな条件下において、核酸試料と上述のプローブとのハイブリダイゼーション複合体の有無を検出し、存在する場合、被検体サバは雄と識別することができる。本発明のハイブリダイゼーション法における「ストリンジェントな条件」とは、上記に記載の条件が挙げられる。
本発明の一つの実施態様によれば、プローブは、ノーザンブロット法、サザンブロット法、in situハイブリダイゼーション等の公知の方法において、常法に従ってプローブとして使用することができる。
本発明の一つの実施態様によれば、本発明によるプローブは、本明細書に開示した塩基配列に基づき、製造できる。例えば、性識別マーカー検出用プローブは、クローン化された(a)〜(h)のいずれか一つのポリヌクレオチド(好ましくは、DNA)を含むプラスミドから、適当な制限酵素で所望のDNA断片を切り出したり、該プラスミドまたは雄サバから調製したDNAを鋳型とするPCRによって調製することができる。
本発明の一つの好ましい実施態様によれば、性識別マーカー検出用プローブとしては、mRNAのUTR配列に特異的にハイブリダイズしうるプローブが挙げられ、好ましくは、配列番号4で表される配列の5’−UTRまたは3’−UTR配列に特異的にハイブリダイズしうるプローブである。
判定工程
本発明においては、後述する実施例にも示されるように、本発明の性識別マーカーを指標にして、サバ類の性を判定することができる。
本発明の一つの実施態様によれば、(a)〜(d)のいずれか一つのポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片を含んでなる遺伝子が存在する場合、サバ類の性を雌と判定することができる。また、本発明の別の実施態様によれば、(e)〜(h)のいずれか一つのポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片を含んでなる遺伝子が存在する場合、サバ類の性を雄と判定することができる。
核酸分子/プライマーペア
本発明の別の態様によれば、本発明の方法に用いるための核酸分子が提供される。本発明の好ましい核酸分子は、例えば、サバ類の(a)〜(h)のいずれか一つのポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片含んでなる遺伝子、または該遺伝子のmRNA、もしくはcDNA、あるいはそれらの相補的なポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズしうる、ポリヌクレオチド断片を含んでなるものである。本発明の好ましい一つの態様によれば、本発明の核酸分子はハイブリダイゼーション法におけるプローブとして使用することができる。このようなプローブとして用いられる核酸分子は、当該領域の塩基配列に基づいて当業者が適宜設計することができる。ハイブリダイゼーション法におけるプローブとして用いられる場合の、核酸分子の鎖長は少なくとも10ヌクレオチドであり、好ましくは20〜1000ヌクレオチド、より好ましくは50〜700ヌクレオチド、さらに好ましくは100〜500ヌクレオチドとされる。本発明によるプローブの鎖長は、そのプローブの用途により適宜調整することができる。このような鎖長を有するプローブは、特に夾雑物を含む核酸試料を用いてハイブリダイゼーション法を実施する上で好ましいものである。
本発明の別の態様によれば、本発明の方法に用いるためのプライマーペアが提供される。
本発明の好ましいプライマーペアは、本発明のポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片の一部または全部の領域を核酸増幅法において増幅しうるものである。このような核酸増幅法に用いるためのプライマーペアは、当該領域の塩基配列に基づいて当業者が適宜設計することができる。核酸増幅法を用いる場合の、プライマーの鎖長は15〜100ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも17ヌクレオチド、さらに好ましくは少なくとも18ヌクレオチド、さらに好ましくは18〜50ヌクレオチド、さらに特に好ましくは1840ヌクレオチドとされる。このような鎖長を有するプライマーは、特に夾雑物を含む核酸試料を用いて核酸増幅法を実施する上で好ましいものである。
試薬/キット
本発明において、上記(a)〜(h)のいずれか一つのポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片を含んでなる遺伝子または該遺伝子の発現産物を含んでなるサバ類の性識別マーカーを指標としたサバ類の性の識別法を実施するために必要な試薬をまとめてキットとすることができる。したがって、一つの実施態様によれば、本発明のキットは、上記(a)〜(h)のいずれか一つのポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片を含んでなる遺伝子または該遺伝子の発現産物を含んでなるサバ類の性識別マーカーを検出しうる試薬を含んでなるものである。
本発明のキットは、上述の本発明による核酸分子および/または本発明によるプライマーペアを試薬として含んでなるものであってもよい。
また、本発明の別の実施態様によれば、キットは、上記(a)〜(h)のいずれか一つのポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片を含んでなる遺伝子が発現するタンパク質を識別し得る抗体を試薬として包含していてもよく、本発明にはかかる態様も包含される。
サバ類の性識別マーカーとしての使用
また、本発明の一実施態様によれば、上記(a)〜(h)のいずれか一つのポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片を含んでなる遺伝子または該遺伝子の発現産物をサバ類の性識別マーカーとして使用することができる。したがって、本発明の別の実施態様によれば、サバ類の性の識別用マーカーとしての、上記(a)〜(h)のいずれか一つのポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片を含んでなる遺伝子または該遺伝子の発現産物の使用が提供される。
以下の試験例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれらの試験例に限定されるものではない。
試験例1
天然マサバ(Scomber japonicus:雄30尾、雌30尾)、天然ゴマサバ(Scomber australasicus:雄30尾、雌30尾)の各固体のヒレからDNAを抽出し、DNAシークエンサー(イルミナMiSeq(商標)システム、イルミナ社−リード数:150塩基×2)を用いてゲノム解析を行った。取得データ量は以下の通りであった。
Figure 2021151205
サバの全DNA配列の情報は現在までのところ報告されていない。そこで、近縁種のカンパチのゲノムDNA配列(Assembly name: Sdu_1.0, Assembly accession: GCF_002260705.1)に対して、サバのデータリマッピングし、マサバおよびゴマサバの性特異的SNP探索を行った。
マサバ(Scomber japonicus)
図1および図2は、マサバ(雌ヘテロ型)およびゴマサバ(雄ヘテロ型)に関して、性特異的SNP探索により得られたM/Ffst(雌雄のマッピングデータ間での差:ピークがある箇所は雄または雌で特異的な箇所を示す)、雄特異的SNP、雌特異的SNPおよびM/F coverage(マッピングの被覆率:全体的に情報がカバーされていることが示されている)情報を同心円状に配置した模式図である。特に図2中の四角で囲った枠内に矢印で示す通り、マサバ(雌ヘテロ型)では雌のみに特異的に発現する複数のSNPの発現が確認され、ゴマサバ(雄ヘテロ型)についても雄のみに特異的に発現するSNPが確認された。
また、マサバ(雌ヘテロ型)およびゴマサバ(雄ヘテロ型)について、雌雄のDNAシークエンスの比較を行った。一例として、図3に、マサバ(雌ヘテロ型)について、雌雄のDNAシークエンスの比較を行った際の模式図を示す。
その結果、上記探索で得られたSNPについて、マサバ(雌ヘテロ型)の場合には雌のみで出現率が50%となり、ゴマサバ(雄ヘテロ型)の場合には雄のみで出現率が50%となった。出現率50%は、ヘテロ型特異的に発現するSNPであることと整合しており、見出されたSNP性別特異的SNPであることが示唆された。
マサバ(雌ヘテロ型)について、上記雌雄のDNAシークエンスの比較の結果、FERMおよびPDZドメイン含有タンパク質4様ゲノム(NW_019174360)において、以下の雌遺伝子に特異的に発現するSNPが見出された。
Figure 2021151205
ゴマサバ(Scomber australasicus)
ゴマサバ(雄ヘテロ型)について、チロシン−タンパク質キナーゼPRAG1ゲノム(NW_019175644)について、以下の雄遺伝子に特異的に発現するSNP変異が見出された。
Figure 2021151205
試験例2:PCR発現解析試験
プライマーの製造
マサバのSNPの検出のため、図4に示される通り、上記表2におけるSNP 652:C−t、665:G−t、667:G−tおよび768:G−cの検出用プライマーを以下の通り設計した。
フォワードJap_F1_F_648:TAGATGTTGTTAACTTGTGT(配列番号5)
リバースJap_F1_R_787:TACGTCTGATCCATGGTCAG(配列番号6)
また、後述する試験におけるSNPの検出のため、図5に示される通り、上記表2におけるSNP 2039:C−a、2041:G−a、2137:G−a、2140:T−a、2143:C−gを検出するためのプライマーを以下の通り設計した。
フォワードJap_F2_F_2022:ACACCATCTCACTAGGAAGA(配列番号7)
リバースJap_F2_R_2156:GAGGAGGAGGTGGCGGTGGT(配列番号8)
また、ゴマサバのSNPの検出のため、図6に示される通り、上記表2におけるSNP 1896:G−aの検出用プライマーを以下の通り設計した。
フォワードAus_M_F1_1877:GTTTGATGGGGTCAGGTTGA(配列番号9)
リバースAus_M_R1_2031:CTGGAATCTTGATCTATGAG(配列番号10)
マサバ(Scomber japonicus)のmRNAの発現の解析のために、未成熟な個体の血液(それぞれの性でn=3)をヒレから取得し、ゲノムDNAを抽出した。ゲノムDNAの抽出はDNeasy Blood and Tissue kit(Qiagen社製)を用いて行った。得られたゲノムDNAを、Takara Ex TaqDNAポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いたPCRに供した。PCRプライマーとしては、SNP 652:C−t、665:G−t、667:G−tおよび768:G−cを検出するためのプライマーとしてプライマーJap_F1_F_648フォワード:TAGATGTTGTTAACTTGTGT(配列番号3)とプライマーJap_F1_R_787リバース:TACGTCTGATCCATGGTCAG(配列番号4)のプライマーセット、SNP 2039:C−a、2041:G−a、2137:G−a、2140:T−a、2143:C−gを検出するためのプライマーとしてプライマーJap_F2_F_2022:ACACCATCTCACTAGGAAGA(配列番号5)とプライマーJap_F2_R_2156:GAGGAGGAGGTGGCGGTGGT(配列番号6)のプライマーセットを使用した。PCR反応は、95℃1分、(95℃30秒、55℃30秒、72℃2分)×35サイクル、72℃5分の条件で行った。その後、1%(w/v)アガロースS(ニッポン・ジーン社製)を用いてアガロースゲル電気泳動を行い、DNA断片を分離した。
また、ゴマサバ(Scomber australasicus)のmRNAの発現の解析のために、SNP 1896:G−aを検出するためにプライマーAus_M_F1_1877:GTTTGATGGGGTCAGGTTGA(配列番号7)とプライマーAus_M_R1_2031:CTGGAATCTTGATCTATGAG(配列番号8)のプライマーセットを用いる以外、マサバ(Scomber japonicus)と同様の手順でPCRを実施した。
結果は、図7に示される通りであった。
マサバ(Scomber japonicus)については、雌のみにSNP 652:C−t、665:G−t、667:G−tおよび768:G−cに対応するバンドJap_F1と、SNP 2039:C−a、2041:G−a、2137:G−a、2140:T−a、2143:C−gに対応するJap_F2が検出された。
ゴマサバ(Scomber australasicus)については、雄のみにSNP 1896:G−aに対応するバンドAus_M1が検出された。
試験例3:核酸増幅法によるサバの遺伝的な性の識別
北海道、新潟、鹿児島、大分および千葉に生息していたマサバの野生個体集団(雄66尾、雌72尾)について、試験例2と同様の手法により、プライマーJap_F1_F_648フォワード:TAGATGTTGTTAACTTGTGT(配列番号3)とプライマーJap_F1_R_787リバース:TACGTCTGATCCATGGTCAG(配列番号4)のプライマーセットを用いて、PCRによる性別判定を行った。また、同時に、カニュレーションにより卵巣の有無を確認することにより性別を確認した。
その結果、雌の性別の判定の正解率は、雌の場合98.5%であり、雄の場合100%であった。
鹿児島および千葉に生息していたゴマサバの野生個体集団(雄43尾、雌43尾)について、試験例2と同様の手法により、プライマーAus_M_F1_1877:GTTTGATGGGGTCAGGTTGA(配列番号7)とプライマーAus_M_R1_2031:CTGGAATCTTGATCTATGAG(配列番号8)のプライマーセットを用いて、PCRによる性別判定を行った。また、同時に、カニュレーションにより卵巣の有無を確認することにより性別を確認した。
その結果、雌の性別の判定の正解率は、雌の場合97.7%であり、雄の場合90.7%であった。
以上の結果から、野生個体集団でも、SNPの発現に基づき、雄雌の判別が可能であることが示された。

Claims (14)

  1. 以下の(a)〜(h)のいずれか一つのポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片を含んでなる、遺伝子:
    (a)配列番号2で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片であって、配列番号2における、第652番のチミン残基、第665番のチミン残基、第667番のチミン残基、第768番のシトシン残基、第2039番のアデニン残基、第2039番のアデニン残基、第2041番のアデニン残基、第2137番のアデニン残基、第2140番のアデニン残基、および第2143番のアデニン残基からなる群から選択される少なくとも1つヌクレオチド残基を保持してなる、ポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片、
    (b)配列番号2で表される塩基配列と同一性が90%以上である塩基配列からなるポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片であって、
    配列番号2における、第652番のチミン残基、第665番のチミン残基、第667番のチミン残基、第768番のシトシン残基、第2039番のアデニン残基、第2039番のアデニン残基、第2041番のアデニン残基、第2137番のアデニン残基、第2140番のアデニン残基、および第2143番のアデニン残基からなる群から選択される少なくとも1つヌクレオチド残基を保持してなる、ポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片、
    (c)配列番号2で表される塩基配列において、1または数個の塩基が置換、欠失または付加されている塩基配列からなるポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片であって
    配列番号2における、第652番のチミン残基、第665番のチミン残基、第667番のチミン残基、第768番のシトシン残基、第2039番のアデニン残基、第2039番のアデニン残基、第2041番のアデニン残基、第2137番のアデニン残基、第2140番のアデニン残基、および第2143番のアデニン残基からなる群から選択される少なくとも1つヌクレオチド残基を保持してなる、ポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片、
    (d)配列番号2で表される塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片であって、
    配列番号2における、第652番のチミン残基、第665番のチミン残基、第667番のチミン残基、第768番のシトシン残基、第2039番のアデニン残基、第2039番のアデニン残基、第2041番のアデニン残基、第2137番のアデニン残基、第2140番のアデニン残基、および第2143番のアデニン残基からなる群から選択される少なくとも1つヌクレオチド残基を保持してなる、ポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片、
    (e)配列番号3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドであって、配列番号3における第1896番のグアニン残基を保持してなる、ポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片、
    (f)配列番号3で表される塩基配列と同一性が90%以上である塩基配列からなるポリヌクレオチドであって、配列番号3における、第1896番のグアニン残基を保持してなる、ポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片、
    (g)配列番号3で表される塩基配列において、1または数個の塩基が置換、欠失、挿入または付加されている塩基配列からなるポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片であって、
    配列番号3における第1896番のグアニン残基を保持してなる、ポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片、
    (h)配列番号3で表される塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片であって、
    配列番号3における第1896番のグアニン残基を保持してなる、ポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片。
  2. サバ類の性識別活性を有する、請求項1に記載の遺伝子。
  3. 前記ポリヌクレオチド断片の鎖長が、100〜200残基である、請求項1または2に記載の遺伝子。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の遺伝子または該遺伝子の発現産物を含んでなる、サバ類の性識別マーカー。
  5. 前記遺伝子の発現産物が、該遺伝子のmRNA、または該遺伝子がコードするタンパク質である、請求項4に記載の性識別マーカー。
  6. 被検体サバ類から得られた試料において、請求項1〜3のいずれか一項に記載の遺伝子または該遺伝子の発現産物を検出する工程を含んでなる、サバ類の性を識別する方法。
  7. 前記(a)〜(d)のいずれか一つのポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片を含んでなる遺伝子または該遺伝子の発現産物を検出する場合、サバ類の性を雌と判定する、請求項6に記載の方法。
  8. 前記(e)〜(h)のいずれか一つのポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片を含んでなる遺伝子または該遺伝子の発現産物を検出する場合、サバ類の性を雄と判定する、請求項6または7に記載の方法。
  9. 前記検出工程が、請求項1〜3のいずれか一項に記載の遺伝子またはその相補的な遺伝子を核酸増幅法により増幅することを含んでなる、請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記試料が、鰭、血液、粘液、うろこ、および表皮からなる群から選択される組織由来の試料である、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. サバ類が、マサバ(Scomber japonicus)またはゴマサバ(Scomber australasicus)である、請求項6〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 請求項6〜11のいずれか一項に記載の方法に用いるための核酸分子であって、
    請求項1に記載の遺伝子、または該遺伝子のmRNA、もしくはcDNAを含むポリヌクレオチド、あるいはそれらに相補的なポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズしうる、核酸分子。
  13. 請求項6〜11のいずれか一項に記載の方法に用いるためのプライマーペアであって、
    請求項1に記載の遺伝子、または該遺伝子のmRNA、もしくはcDNAを含むポリヌクレオチドまたはそのヌクレオチド断片、あるいはそれらの相補的なポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズしうる、プライマーペア。
  14. 請求項12に記載の核酸分子および/または請求項13に記載のプライマーペアを含んでなる、サバ類の性の識別用キット。
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