JP2021148153A - 磁気軸受装置および低温液化ガス送液ポンプ - Google Patents

磁気軸受装置および低温液化ガス送液ポンプ Download PDF

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Abstract

【課題】発熱量を低減させつつ、安定に回転する磁気軸受装置と低温液化ガス送液ポンプを提供する。【解決手段】磁気軸受装置300は、第1磁石M1および第2磁石M2と、変位センサ121,122と、演算部100とを備える。第1磁石M1は、第1バイアス磁束を発生させる第1永久磁石76を含む。第2磁石M2は、第2バイアス磁束を発生させる第2永久磁石77を含む。第1バイアス磁束は、回転軸20に第1方向の力を発生させる。第2バイアス磁束は、回転軸20に第1方向と逆向きの第2方向の力を発生させる。演算部100は、回転軸の変位に基づいて、第1電磁石78および第2電磁石79について制御電流icを算出し、制御電流icの増減に応じて、第1電磁石78および第2電磁石79についてバイアス電流ibを算出し、制御電流icおよびバイアスib電流を加算して、コイル電流ic1,ic2を算出する。【選択図】図14

Description

この発明は、磁気軸受装置およびそれを備える低温液化ガス送液ポンプに関する。
磁気軸受は、回転体を磁気によって浮上させて支持する軸受であり、特殊環境下における回転機に利用されている。磁気軸受は、非接触支持を行なうため潤滑油が不要であり、軸受の寿命は半永久的である。潤滑油を必要としないため、従来の軸受では困難であった真空環境や超低温環境での運転が可能となる。
このような磁気軸受は、たとえば、特開2013−57250号公報および特開2004−162834号公報に開示されている。
特開2013−57250号公報 特開2004−162834号公報
玉軸受などの転がり軸受は、一定期間ごとに軸受のメンテナンスが必要であり、特に長期間連続運転が要求される超電導機器の冷却用に使用する低温液化ガスポンプには使用できなかった。そこで、特開2013−57250号公報では、低温液化ガスポンプの軸受に定期的なメンテナンスが不要な磁気軸受を採用した装置を開示する。
磁気軸受はインペラに発生する外乱に対応するため、一般的には最大負荷に応じた一定電流(バイアス電流)を常に磁気軸受の電磁石コイルに印加しておく必要がある。高吐出圧ポンプでは、インペラ周囲の圧力バランスからインペラの径方向に大きな負荷が掛かるので、負荷容量を大きくする必要がある。このため磁気軸受のバイアス電流を大きくする必要があり、この影響による電磁石部の消費電力が増大と発熱が課題であった。
また、特開2004−162834号公報に開示された磁気軸受は、永久磁石によるバイアス磁束方式で、主にホモポーラ型磁気軸受で永久磁石と電磁鋼板の接続部において渦電流の発生を抑制することを目的としている。永久磁石を用いることでバイアス電流を減らし損失を低減する効果も示している。バイアス電流をゼロとする場合には、設置した永久磁石によるバイアス磁束以上の負荷が発生した場合の安定性確保は出来ない。また負荷が大きい場合には永久磁石を大きくしなければならず、磁路の磁気抵抗が増加し制御電流が大きくなるという課題があった。バイアス電流を残す場合でも、負荷に対してどのようなバイアス電流としておくかについては検討の余地があった。
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、発熱量を低減させつつ、安定に回転する磁気軸受装置およびそれを備える低温液化ガス送液ポンプを提供することである。
この発明は、要約すると、回転軸を支持する磁気軸受装置であって、回転軸を挟むように配置された第1磁石および第2磁石を備える。第1磁石は、第1電磁石と、第1バイアス磁束を発生させる第1永久磁石とを含む。第2磁石は、第2電磁石と、第2バイアス磁束を発生させる第2永久磁石とを含む。第1バイアス磁束は、回転軸に第1方向の力を発生させる。第2バイアス磁束は、回転軸に第1方向と逆向きの第2方向の力を発生させる。磁気軸受装置は、回転軸の変位を検出するセンサと、第1電磁石および第2電磁石に流す電流を演算する演算部とをさらに備える。演算部は、(a)センサが検出した変位に基づいて、第1電磁石および第2電磁石について逆符号で同値の制御電流を算出し、(b)制御電流の増減に応じて、第1電磁石および第2電磁石について同符号で同値のバイアス電流を算出し、(c)制御電流およびバイアス電流を加算して、第1電磁石および第2電磁石の各々に対して流すコイル電流を算出する。
好ましくは、バイアス電流には下限値が規定されている。演算部は、制御電流の直流成分が増加し、かつ、制御電流の直流成分があらかじめ設定された第1しきい値より大きくなった場合に、バイアス電流を増加させ、制御電流の直流成分が減少し、かつ、制御電流の直流成分があらかじめ設定された第2しきい値より小さくなった場合に、下限値を下回らない範囲内でバイアス電流を減少させる。
より好ましくは、第1しきい値は、第2しきい値よりも大きく設定され、バイアス電流の増減特性は、ヒステリシスを有する。
好ましくは、バイアス電流には下限値が規定されている。演算部は、制御電流の交流成分の振幅が増加し、制御電流の交流成分の振幅があらかじめ設定された第3しきい値より大きくなった場合に、バイアス電流を増加させ、制御電流の交流成分の振幅が減少し、制御電流の交流成分の振幅があらかじめ設定された第4しきい値より小さくなった場合に、下限値を下回らない範囲内でバイアス電流を減少させる。
より好ましくは、第3しきい値は、第4しきい値よりも大きく設定され、バイアス電流の増減特性は、ヒステリシスを有する。
好ましくは、演算部は、バイアス電流を、予め設定した増減幅で段階的に変化させる。
好ましくは、演算部は、PID制御(比例積分微分制御)を実行して制御電流を算出し、バイアス電流の更新と同時にPID制御の制御パラメータを更新する。
より好ましくは、制御パラメータは、PID制御の一巡伝達関数のゲインである。演算部は、バイアス電流が予め設定した判定値を超えており、かつ、バイアス電流を増加させた場合、ゲインを大きくし、バイアス電流が予め設定した判定値を超えており、かつ、バイアス電流を減少させた場合、ゲインを小さくする。
より好ましくは、制御パラメータは、PID制御の積分ゲインである。演算部は、バイアス電流が予め設定した判定値を超えており、かつ、バイアス電流を増加させた場合、積分ゲインを小さくし、バイアス電流が予め設定した判定値を超えており、かつ、バイアス電流を減少させた場合、積分ゲインを大きくする。
この発明は、他の局面では、上記いずれかの磁気軸受装置を備える、低温液化ガス送液ポンプである。
本発明によれば、バイアス電流を適正な値に制御するので、発熱量を抑えつつ安定に回転させることができる。
磁気軸受を用いた低温液化ガスを送液する第1例のポンプ装置の構成を示す図である。 磁気軸受を用いた低温液化ガスを送液する第2例のポンプ装置の構成を示す図である。 アキシャル磁気軸受の回転軸を含む断面における構造を示す図である。 ラジアル磁気軸受(ホモポーラ型磁気軸受)の回転軸に直交する断面における構造を示す図である。 ラジアル磁気軸受(ホモポーラ型磁気軸受)の第1例の回転軸を含む断面における構造を示す図である。 ラジアル磁気軸受(ホモポーラ型磁気軸受)の第2例の回転軸に直交する断面における構造を示す図である。 ラジアル磁気軸受(ホモポーラ型磁気軸受)の第2例の回転軸を含む断面における構造を示す図である。 ラジアル磁気軸受(ヘテロポーラ型磁気軸受)の第1例の回転軸に直交する断面における構造を示す図である。 ラジアル磁気軸受(ヘテロポーラ型磁気軸受)の第2例の回転軸に直交する断面における構造を示す図である。 ラジアル磁気軸受(ヘテロポーラ型磁気軸受)の第3例の回転軸に直交する断面における構造を示す図である。 ラジアル磁気軸受(ヘテロポーラ型磁気軸受)の第4例の回転軸に直交する断面における構造を示す図である。 電磁石のコイル電流と磁力との関係を示す図である。 回転軸を挟んで電磁石を対向させた場合の電磁石のコイル電流と磁力との関係を示す図である。 磁気軸受装置のバイアス電流方式を適用した制御を説明するための制御ブロック図である。 アンプの内部回路とコイルの接続を示した図である。 バイアス磁束によってコイル電流と磁力との関係が線形化された状態を説明するためのグラフである。 バイアス電流を変化させた際のコイル電流と磁力との関係を説明するためのグラフである。 磁気軸受のバイアス電流と剛性の関係を示すグラフである。 バイアス電流の大きさによって制御対象の伝達関数が変化することを示したグラフである。 磁気軸受システムのブロック図である。 図20の磁気軸受システムの一巡伝達関数の周波数特性を示したボード線図である。 図21の状態からバイアス電流を大きくした場合の一巡伝達関数の周波数特性を示したボード線図である。 図22の状態から全体のゲインを大きくした場合の一巡伝達関数の周波数特性を示したボード線図である。 図22の状態から積分ゲインを下げ、低周波数側の位相への影響を小さくした場合の一巡伝達関数の周波数特性を示したボード線図である。 磁気軸受のメイン処理のフローチャートである。 図25のS2における電流指令値を決定する処理のフローチャートである。 図26のS12におけるバイアス電流指令値を決定する処理の第1例を示したフローチャートである。 図26のS12におけるバイアス電流指令値を決定する処理の第2例を示したフローチャートである。 バイアス電流指令値を決定する処理の第2例に対応するブロック図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
[ポンプ装置の全体構成]
図1は、磁気軸受を用いた低温液化ガスを送液する第1例のポンプ装置の構成を示す図である。図2は、磁気軸受を用いた低温液化ガスを送液する第2例のポンプ装置の構成を示す図である。
低温液化ガスは、例えば液体窒素である。図1に示すポンプ10は、電磁石部分がインペラ40から離れている構成であり、図2に示すポンプ10Aは、電磁石部分がインペラ40と近い構成である。ポンプ10Aは、サブマージドポンプという低温液体にポンプの筐体が浸漬されるタイプのポンプである。ポンプ10およびポンプ10Aは、低温液化ガスを貯留する容器の天板や蓋に装着され、容器内の液体を吸い上げ送り出す。
図1および図2を参照して、ポンプ10およびポンプ10Aは、インペラ40と、ポンプケーシング50と、駆動部(モータ)30と、回転軸20と、磁気軸受60,70,80とを含む。
インペラ40は、ポンプケーシング50に収容されている。ポンプケーシング50は、下部に吸入口が設けられ、回転軸の側方に吐出口が設けられている。インペラ40は、回転軸20の下端部に装着されている。回転軸20は、駆動部30によって回転駆動される。
磁気軸受60,70,80は、回転軸20を非接触状態で磁力によって支持する。磁気軸受60は、軸方向位置を支持するアキシャル軸受であり、磁気軸受70は、反ポンプ側ラジアル軸受であり、磁気軸受80は、インペラ側ラジアル軸受である。
図1、図2の構成とも、モータの熱がインペラに伝わるのを避けるように構成されている。ポンプは、遠心ポンプ型であり、インペラ40が回転すると下方から液体を吸入して、径方向外側の吐出口から吐き出す。
図1、図2に示したような低温液化ガスを送液するポンプにおいて、熱の液化ガス部への侵入を最小限にすることが望ましい。よって、断熱性能の向上と軸受部およびモータの発熱低減は重要である。
軸受に磁気軸受を採用した場合、想定される最大負荷からバイアス電流の大きさを設定する方法が一般的であるため、例えば、ポンプの動作点が高吐出圧、低流量時と低吐出圧、高流量時ではインペラに発生する流体力が異なる。高吐出圧、低流量時に合わせてバイアス電流を決定すると、低吐出圧、高流量時ではポンプ室内での圧力バランスの差が小さくインペラに印加させる外乱が小さいため余分なバイアス電流を流すことになる。
バイアス電流は磁気軸受の銅損を増加させるため、発熱低減のためには小さい方が望ましい。しかしながらバイアス電流を小さくすることは、磁気軸受の支持剛性を低下させる。従来はポンプの動作点に応じた最適化が図れていなかったが、本実施の形態では、変位や電流指令値の直流成分、交流成分から外乱の状態を検出し、外乱に応じてバイアス電流を変化させて制御の安定化を図る。また、バイアス電流を変更すると制御対象が変化するため、予めバイアス電流の制御幅を決めておき、バイアス電流の制御範囲で必要に応じて制御系のパラメータを切替えることで、広い動作範囲で安定した浮上制御が可能になる。
[各磁気軸受の構成]
図3は、アキシャル磁気軸受の回転軸を含む断面における構造を示す図である。図3を参照して、磁気軸受60は、回転軸20に固定されたスラストディスク61を挟むステータコア62,64と、ステータコイル63,65と、ギャップセンサ66とを含む。ステータコイル63に流す電流とステータコイル65に流す電流によって破線に示すように磁束が発生し、スラストディスク61を吸引する磁力のバランスを変化させることができる。ステータコイル63に流す電流とステータコイル65に流す電流を制御することによって、スラストディスク61の軸方向の位置、すなわち回転軸20の軸方向位置が制御される。
図4は、ラジアル磁気軸受(ホモポーラ型磁気軸受)の第1例の回転軸に直交する断面における構造を示す図である。図5は、ラジアル磁気軸受(ホモポーラ型磁気軸受)の第1例の回転軸を含む断面における構造を示す図である。図4、図5を参照して、磁気軸受70は、回転軸20を挟むステータコア72,74と、ステータコイル73,75と、図示しないギャップセンサとを含む。ステータコア72とステータコイル73は、第1電磁石を構成する。第1磁石M1は、第1電磁石(72,73)と、永久磁石76とを含む。ステータコア74とステータコイル75は、第2電磁石を構成する。第2磁石M2は、第2電磁石(74,75)と、永久磁石77とを含む。ステータコイル73に流す電流とステータコイル75に流す電流によって破線に示すように磁束が発生し、回転軸20を吸引する第1磁石M1、第2磁石M2の磁力のバランスを変化させることができる。ステータコイル73に流す電流とステータコイル75に流す電流を制御することによって、回転軸20の径方向の位置が制御される。なお、第1磁石M1、第2磁石M2とは90°回転した位置に、同様に第3磁石M3、第4磁石M4が配置されており、90°回転した径方向における回転軸20の位置が制御される。
本実施の形態では、ステータコア72に永久磁石76が挟持されており、ステータコア74に永久磁石77が挟持されている。これらの永久磁石によって、バイアス磁束が発生される。
図6は、ラジアル磁気軸受(ホモポーラ型磁気軸受)の第2例の回転軸に直交する断面における構造を示す図である。図7は、ラジアル磁気軸受(ホモポーラ型磁気軸受)の第2例の回転軸を含む断面における構造を示す図である。図4,図5に示す磁気軸受70ではステータコイルが2つに分かれてステータコアの端部に配置されていたが、図6、図7に示す磁気軸受70Aでは、ステータコイル73,75が中央部にそれぞれ永久磁石76,77を取り囲むように配置されている。
なお、磁気軸受70,70Aに代えてヘテロポーラ型磁気軸受を使用しても良い。図8は、ラジアル磁気軸受(ヘテロポーラ型磁気軸受)の第1例の回転軸に直交する断面における構造を示す図である。図8に示す磁気軸受70Bでは、断面の外周部が円形のステータコア72,74のヨーク部に永久磁石76,77が挟持されている。永久磁石76,77は破線で示すようにバイアス磁束を発生させる。
磁気軸受70Bは、ティース部で回転軸20を挟むステータコア72,74と、ステータコイル73,75と、図示しないギャップセンサとを含む。ステータコイル73に流す電流とステータコイル75に流す電流によって破線に示す磁束の強さが変化し、回転軸20を吸引する磁力のバランスを変化させることができる。ステータコイル73に流す電流とステータコイル75に流す電流を制御することによって、回転軸20の径方向の位置が制御される。
図9は、ラジアル磁気軸受(ヘテロポーラ型磁気軸受)の第2例の回転軸に直交する断面における構造を示す図である。図9に示す磁気軸受70Cでは、断面の外周部が四角形のステータコア72,74のヨーク部に永久磁石76,77が挟持されている。四角形の角部に永久磁石を配置することによって、同じ厚さでもバイアス磁束を大きくすることができる。
図10は、ラジアル磁気軸受(ヘテロポーラ型磁気軸受)の第3例の回転軸に直交する断面における構造を示す図である。図11は、ラジアル磁気軸受(ヘテロポーラ型磁気軸受)の第4例の回転軸に直交する断面における構造を示す図である。図10に示す磁気軸受70D、図11に示す磁気軸受70Eは、ともに永久磁石を配置するヨーク部分を回転軸中心に向けて太くしてその部分に永久磁石を配置している。これにより、同じバイアス磁束を発生させるのに必要な永久磁石の厚さを薄くすることができる。
図12は、電磁石のコイル電流と磁力との関係を示す図である。図12に示すように、コイル電流iの2乗に比例して回転軸を引き寄せる磁力Fが増加する。磁力Fは、式(1)に示すように電磁石のコイル電流iの2次関数である。
Figure 2021148153
式(1)において、Bは、磁束密度を示し、Sは磁路断面積を示し、Nはコイル巻き数を示し、iはコイル電流を示し、xはギャップ長を示し、μは真空の透磁率を示す。
永久磁石併用方式の磁気回路での起磁力を式(2)に示す。式(2)において、liは磁路長を示し、lpは永久磁石長を示し、Hは永久磁石内部の磁界の強さを示す。
Figure 2021148153
永久磁石の起磁力が加算され、磁束密度は(Ni‐Hlp)の関数となり、コイル電流で磁気力を制御することができる。磁石は、主にネオジム(Nd-Fe-B)磁石、サマコバ(Sm-Co)磁石、アルニコ(Al-Ni-Co)磁石等を使用することができる。
図13は、回転軸を挟んで電磁石を対向させた場合の電磁石のコイル電流と磁力との関係を示す図である。図12に示した構成を図13に示すように対向型にする。i>0の範囲では、ic2=0とし、i<0の範囲ではic1=0として、対向する一方の電磁石のコイルにのみ電流を流すと、磁力F(ic1),F(ic2)の合成磁力が非線形となり、i=0のごく近傍では電流を増やしても磁力Fがあまり増加しない。このため、i=0のごく近傍では、回転軸が中心からずれた場合に電流を流しても磁力が小さく、ずれを補正する力が弱い、すなわち剛性が低い状態になってしまう。
図13の構成では電流ゼロ付近での傾きが小さいため剛性が低くなり、また非線形のため制御系の安定性検証に用いられるボード線図が利用できないなどの問題がある。さらに、この場合では負荷が発生した際、コイルに制御電流が流れると、磁気軸受と磁気軸受で支持された回転軸からなる制御対象が大きく変化してしまうため、安定性を確保することが困難である。
[磁気軸受装置の制御]
電流ゼロ付近の剛性を高めるために、コイルにバイアス電流を流すことが行なわれる。
図14は、磁気軸受装置のバイアス電流方式を適用した制御を説明するための制御ブロック図である。図15は、アンプの内部回路とコイルの接続を示した図である。図14、図15を参照して、磁気軸受装置300は、回転軸20を挟むように配置された第1磁石M1および第2磁石M2と、回転軸20の変位を検出する変位センサ121,122と、第1磁石M1および第2磁石M2の電磁石78.79に流す電流を演算する演算部100とを備える。
第1磁石M1は、第1バイアス磁束を発生させる第1永久磁石76を含む。第2磁石M2は、第2バイアス磁束を発生させる第2永久磁石77を含む。第1バイアス磁束は、回転軸20に第1方向の力(吸引力)を発生させる。第2バイアス磁束は、回転軸20に第1方向と逆向きの第2方向の力(吸引力)を発生させる。
演算部100は、(a)変位センサ121,122が検出した変位に基づいて、第1電磁石78および第2電磁石79について逆符号で同値の制御電流icを算出し、(b)制御電流icの増減に応じて、第1電磁石78および第2電磁石79について同符号で同値のバイアス電流ibを算出し、(c)制御電流icおよびバイアスib電流を加算して、第1電磁石78および第2電磁石79の各々に対して流すコイル電流ic1,ic2を算出する。
本実施の形態の軸受装置は、磁気軸受の磁気回路の一部を構成する位置に配置された永久磁石76,77を含み、永久磁石76,77によってバイアス磁束を発生する。外乱が大きく永久磁石76,77のバイアス磁束より大きなバイアス磁束が必要な際、電磁石のステータコイル73または75に電流を印加することでバイアス磁束を増加させる。一般的にバイアス電流は最大負荷を考慮して予め決定した固定値としているが、本実施の形態では定常状態で発生する負荷に対して永久磁石76,77のみによるバイアス磁束でまかない、それ以上負荷が大きくなった場合、負荷に応じてバイアス電流ibによりバイアス磁束を調整する。このため、負荷が小さい動作条件ではステータコイル73,75の銅損を低減し発熱を抑制することができる。
図14、図15に示すように一対の電磁石のヨークには永久磁石76,77が組込まれており一定方向のバイアス磁束が印加されている。定常時は演算部のバイアス電流設定部の出力Vibはゼロで、永久磁石76,77のみでバイアス磁束を発生させている。コイル電流指令値Vic1,Vic2はプラス方向とマイナス方向を持ち、アンプ111,112によってコイルに印加される電流の向きが制御される。なお、定常時の演算部のバイアス電流設定部の出力Vibは必ずしもゼロでなくても良く、所定値(下限値)であってもよい。この場合でも永久磁石の磁束により定常時のバイアス電流を小さく抑えることができる。
磁気軸受70によって支持される回転軸20の中心からの変位が変位センサ121,122によって検出され、センサ回路120に入力される。センサ回路120は、中心からの回転軸のずれに相当する制御量を演算部100に出力する、演算部100はこれを受けてアンプ111,112にそれぞれコイル電流指令値を出力する。アンプ111は磁気軸受のステータコイル73にコイル電流ic1を供給し、アンプ112は磁気軸受のステータコイル73に対向するステータコイル75にコイル電流ic2を供給する。
演算部100は、センサ回路120の出力を受けて、ゲイン調整、位相補償、フィルタ処理を行ない、制御電流指令値Vicを出力する制御器101と、制御電流指令値Vicに応じてバイアス電流指令値Vibを出力するバイアス電流設定部102と、加算器103と、減算器104とを含む。
加算器103は、制御電流指令値Vicとバイアス電流指令値Vibとを加算したコイル電流指令値Vic1をアンプ111に出力し、アンプ111はステータコイル73にコイル電流ic1(=ib+ic)を出力する。減算器104は、バイアス電流指令値Vibから制御電流指令値Vicを減算したコイル電流指令値Vic2をアンプ112に出力し、アンプ112はステータコイル75にコイル電流ic2(=ib−ic)を出力する。
一般的な磁気軸受は、バイアス電流ibが一定で、外乱に応じた制御電流icを流すことで軸を回転中心に支持する。
図16は、バイアス磁束によってコイル電流と磁力との関係が線形化された状態を説明するためのグラフである。図13に示した状態からコイルにバイアス電流ibを印加すると、グラフF(ic1)は左にシフトし、グラフF(ic2)は右にシフトする。このため、バイアス磁束によりコイル電流と合成磁力Fの関係が線形化される。電磁石78で発生する磁力をF1とし、電磁石79で発生する磁力をF2とすると、F1とF2は逆向きであり合成磁力Ftは、式(1)から以下のように表される。なお、ギャップxは厳密には釣り合い位置において電磁石78,79について等しくx0であるとし、釣り合い位置からのずれをΔxとすると、電磁石78についてはx=x0+Δx、電磁石79についてはx0−Δxとすべきであるが、原点近傍の領域ではΔx=0として、ギャップ長は電磁石78,79で同じとした。
Ft=F1−F2=k(ib+ic)/x0−k(ib−ic)/x0
Ft=k・4ib・ic/x0 ∝ic
従って、合力Fは−ib<ic<ibの範囲では、制御電流icに比例する線形な関数となる。
図14に示した本実施の形態の演算部100は、バイアス電流設定部102がバイアス電流指令値Vibを制御電流指令値Vicに応じて変化させる。このため磁力の線形化の状態も変化する。
図17は、バイアス電流を変化させた際のコイル電流と磁力との関係を説明するためのグラフである。バイアス電流をib1,ib2,ib3に変化させることにより、バイアス磁束も変化する。バイアス磁束を大きくすると、図17に示すようにコイル電流に対する発生力の線形範囲が拡大し、コイル電流に対する力の傾きも大きくなる。バイアス電流の大きさをib1<ib2<ib3とすると、合成磁力Ftの大きさもFt1<Ft2<Ft3のように大きくなる。バイアス電流ibが大きいほど剛性も強くなり、回転軸の変位が生じたときに回転中心に引き戻す力が大きくなる。
図16、図17からわかるように、バイアス電流の2倍の領域までコイル電流と磁力の関係を線形化することができる。対向する電磁石のコイルに同値の電流を印加することでバイアス磁束をかけるバイアス電流方式において、回転軸に発生する負荷の大きさに応じてバイアス電流を可変させる。一般的にバイアス電流は最大負荷を考慮して予め決定した固定値としているが、本実施の形態では負荷に応じて変化させるため、負荷が小さい動作条件ではバイアス電流も小さくなりコイルの銅損や回転時の回転軸の鉄損を低減し発熱を抑制することができる。
回転軸20にかかる負荷(例えば流体力など)は、電磁石のコイル電流ic1,ic2や変位センサ121,122の出力から推定できる。コイル電流ic1,ic2は演算部100の出力であるコイル電流指令値Vic1,Vic2と等価であるため、演算部100はコイル電流ic1,ic2を知ることが出来る。磁気軸受70,80の電磁石諸元は既知であるため、電流値が分かれば磁気軸受部での負荷を推定することができる。また軸受の配置およびインペラ40の位置も既知であることから、インペラ40にかかるラジアル荷重も推定することが出来る。バイアス電流ibは、ラジアル磁気軸受毎(電磁石(M1〜M4)4個で1セット)を同じ値で可変させてもよいし、X軸、Y軸毎(対向する電磁石(M1,M2)2個で1セット、対向する電磁石(M3,M4)2個で1セット)に可変させてもよい。
また負荷が大きい場合も予め設定した最大電流の範囲まで大きくすることができ、線形範囲の拡大による制御安定性の向上や剛性向上が期待できる。
図18は、磁気軸受のバイアス電流と剛性の関係を示すグラフである。図18には、磁気軸受に変位センサをつけて、フィードバックループによって位置制御をした場合の、軸受剛性が示されている。周波数が高周波側の剛性は、軸の質量によって決まるためバイアス電流の影響は小さい。周波数が低周波側の剛性は、バイアス電流の影響を受け、バイアス電流が大きいほど、剛性は高くなる。剛性の式は下式(3)で表される。
Figure 2021148153
式(3)において、Fdは外乱、xは変位、mはロータの質量、KIFは、電流−力変換定数(電磁石の電流と発生する力の関係を示すゲイン)を示し、KGFは、ギャップ−力変換定数(ギャップと力の関係を示すゲイン)、Gsはセンサゲイン、Gaはアンプゲイン、Gcは制御パラメータ(PID)を示す。
図19は、バイアス電流の大きさによって制御対象の伝達関数が変化することを示したグラフである。ここでの制御対象は磁気軸受である。ここで図19の制御対象の伝達関数の縦軸Kは以下の式(4)で表される。
Figure 2021148153
式(4)において、KIFは、電流−力変換定数(電磁石の電流と発生する力の関係を示すゲイン)を示し、KGFは、ギャップ−力変換定数(ギャップと力の関係を示すゲイン)を示し、mはロータの質量を示す。KIFもKGFもバイアス電流によって値が変化するパラメータである。
図19に示すように、高周波側ではバイアス電流の大小は伝達関数に影響を与えないが、低周波側では、バイアス電流が小さいほど伝達関数は上がり、バイアス電流が大きいほど伝達関数は下がる。以下の式(5)にフィードバック系の一巡伝達関数の式を示す。
Figure 2021148153
式(5)において、mはロータの質量、KIFは、電流−力変換定数(電磁石の電流と発生する力の関係を示すゲイン)を示し、KGFは、ギャップ−力変換定数(ギャップと力の関係を示すゲイン)を示し、Gsはセンサゲインを示し、Gaはアンプゲインを示し、Gcは制御パラメータ(PID)を示す。
つまり一巡伝達関数は制御対象の伝達関数にセンサゲイン、アンプゲイン、制御ゲインを乗じたものである。系の安定性の判定では一巡伝達関数のボード線図においてクロスオーバー周波数(ボード線図で上から下に0dB(ゼロデシベル)を横切る周波数)で位相が-180度より遅れていない必要がある(位相余裕)。
一巡伝達関数のクロスオーバー周波数は制御対象の変化によって変わる。場合によって位相余裕がない領域にクロスオーバー周波数が移動したり、新たなクロスオーバー周波数が発生したりして不安定となる。
図20は、磁気軸受システムのブロック図である。図20において、アンプ204は、制御器203からの指令どおりに電流を出力する。制御対象205(回転軸)の変位は変位センサ206で検出され、目標値(中央位置)との差は減算器202によって算出される。制御器203は、PID制御(ゲイン調整、位相補償、フィルタ処理)を行なっている。
磁気軸受のコイル電流は図20に示すような電流フィードバックループを有している。制御電流icは、所定の周波数帯域までは電流指令値に追従するため、電流指令値から実際の制御電流の大きさを推定することが出来る。また、この制御電流にバイアス電流を加えることによって、バイアス磁束によって、磁気軸受の制御電流に対し、発生力を線形化することができる(図12〜図16)。
図21は、図20の磁気軸受システムの一巡伝達関数の周波数特性を示したボード線図である。ゲインが0dBを横切るときの周波数(クロスオーバー周波数fc)において、位相が−180°より上に来ていないと、系は発振してしまうことが知られている。図21では、fcにおいて位相φ>−180°で安定である。
図22は、図21の状態からバイアス電流を大きくした場合の一巡伝達関数の周波数特性を示したボード線図である。バイアス電流を大きくすると、軸の振れに対して剛性が上がる。しかし、ゲインが下がって新たなクロスオーバー周波数fc1を持ってしまう。図22では、クロスオーバー周波数fc1において位相φ<−180°で不安定である。
図23は、図22の状態から一巡伝達関数の全体のゲインを大きくした場合の一巡伝達関数の周波数特性を示したボード線図である。図23では、一巡伝達関数のゲインを大きくすることによって、図22のfc1がクロスオーバー周波数でなくなった。クロスオーバー周波数fcにおいては位相φ>−180°で安定である。
図24は、図22の状態から積分ゲインを下げ、低周波数側の位相への影響を小さくした場合の一巡伝達関数の周波数特性を示したボード線図である。図24では、積分ゲインを下げることによって、fc1における位相がφ>−180°に変化したので安定である。本実施の形態では、図23の処理、図24の処理のいずれか一方を実行しても良いし、図23の処理に加えて図24の処理も実行しても良い。
予め磁気軸受の安定性を検証しておき、バイアス電流の増減に応じて全体のゲイン、積分ゲインなどの制御パラメータも同時に可変させる。演算部100は、PID制御を実行して制御電流指令値Vicを算出し、バイアス電流の更新と同時にPID制御の制御パラメータを更新する。
バイアス電流を大きくすると図19に示すように制御対象の周波数特性(ボード線図:図21)で低周波数側のゲインが低下(図22)するため、ゲイン余裕から判断して、PID制御の全体のゲインを大きくする。
このときに更新する制御パラメータは、PID制御の一巡伝達関数の全体のゲインである。演算部100は、バイアス電流が予め設定した判定値を超えており、かつ、バイアス電流を増加させた場合、ゲインを大きくし、バイアス電流が予め設定した判定値を超えており、かつ、バイアス電流を減少させた場合、ゲインを小さくする。
具体的には制御器203において、全体のゲインの調整(図23)や積分ゲインにより低周波側の位相状態を変更(図24)する。図24の状態は制御対象の変化に対し不安定のため、図24の処理は図23の全体のゲインの調整と併せておこなう。
このときに併せて更新する制御パラメータは、PID制御の積分ゲインである。演算部100は、バイアス電流が予め設定した判定値を超えており、かつ、バイアス電流を増加させた場合、積分ゲインを小さくし、バイアス電流が予め設定した判定値を超えており、かつ、バイアス電流を減少させた場合、積分ゲインを大きくする。
図25は、磁気軸受のメイン処理のフローチャートである。図14、図25を参照して、ステップS1において演算部100はセンサ回路120を介して変位センサ121,122の信号を取得する。そしてステップS2において演算部100は対向する電磁石78,79の各々の電流指令値を決定する。そしてステップS3において、演算部100からの指令値によってアンプ111、アンプ112からステータコイル73,75にコイル電流ic1,ic2を印加する。メイン処理では、ステップS1,S2,S3の処理が繰り返し実行される。
図26は、図25のS2における電流指令値を決定する処理のフローチャートである。図14、図26を参照して、演算部100は、ステップS11において制御に係る位相補償、PID処理、ゲイン調整、フィルタ処理などの演算を行ない制御電流指令値Vicを決定する。演算部100は、制御電流指令値Vicの決定と並行してステップS12においてバイアス電流指令値Vibを決定する。さらにステップS13において、演算部100は、一方でバイアス電流指令値Vibに制御電流指令値Vicを加算し、他方ではバイアス電流指令値Vibから制御電流指令値Vicを減算して、コイル電流ic1,ic2に対応するコイル電流指令値Vic1,Vic2を決定し出力する。磁気軸受70は回転軸を挟んで対向する一対の電磁石78,79を含み、各々の電磁石のコイル電流ic1、ic2によって発生する合成磁力によって非接触に軸を支持する。
図27は、図26のS12におけるバイアス電流指令値を決定する処理の第1例を示したフローチャートである。図27に示すように、演算部100は、制御電流指令値の直流成分Vicdcが増加し、かつ、制御電流指令値の直流成分Vicdcがあらかじめ設定された第1しきい値Vth1より大きくなった場合に、バイアス電流を増加させ、制御電流指令値の直流成分Vicdcが減少し、かつ、制御電流指令値の直流成分Vicdcがあらかじめ設定された第2しきい値Vth2より小さくなった場合に、バイアス電流を減少させる。好ましくは、第1しきい値Vth1は、第2しきい値Vth2よりも大きく設定され、バイアス電流ibの増減特性は、ヒステリシスを有する。
図27のフローチャートに示すように対向する電磁石の制御電流指令値Vicの直流成分Vicdcを監視し、負荷が大きくなった際は(S23でYES)、対向する電磁石の制御電流指令値Vicの直流成分Vicdcが判定値Vth1より大きくなったタイミング(S24でNO)で、バイアス電流ibを増加させる(S25)。負荷が小さくなった際は(S23でNO)、対向する電磁石の制御電流指令値Vicの直流成分Vicdcが小さくなるため、判定値Vth2より小さくなったタイミング(S26でNO)で、バイアス電流ibを減少させる(S27)。判定値Vth1と判定値Vth2を異なる値とし、バイアス電流ibを増減させるしきい値にヒステリシスを設けることによって、負荷変動の交流成分において、不必要なバイアス電流の切替えを抑制する。
バイアス電流ibの初期値は無負荷時において、回転軸20を安定に浮上させることができる値ibLとし、バイアス電流ibの設定値はこの初期値より小さくしない。つまり、初期値をバイアス電流ibの下限値ibL(最小値)とする。また、バイアス電流の上限値ibU(最大値)は電磁石、アンプおよび電源の制約から決定される。ステップS21〜S27の処理によってバイアス電流が決定されるとステップS28のガード処理において、バイアスibが上限値ibUを超えていた場合にはバイアス電流ib=ibUとし、逆にバイアスibが下限値ibLより小さくなっていた場合にはバイアス電流ib=ibLとする。
バイアス電流ibを増減させると軸受剛性が変化する(図18)。バイアス電流ibが大きくなると軸受剛性が高くなり、バイアス電流ibが小さくなると軸受剛性は低下する。そのため、制御電流指令値Vicの直流成分Vicdcが一定値(Vth1)より高くなり、これに応じてバイアス電流ibを大きくすると、剛性が高くなる。剛性が高くなると、負荷が同じ場合であれば、制御電流指令値Vicの直流成分Vicdcは小さくなる。同様に制御電流指令値Vicの直流成分Vicdcが一定値(Vth2)より低くなり、バイアス電流ibを小さくすると、剛性が低下する。剛性が低下すると、負荷が同じ場合であれば、制御電流指令値Vicの直流成分Vicdcは大きくなる。
演算部100は、PID制御等を用いてバイアス電流ibを連続的に変化させてもよい。または、演算部100は、予め設定した増減幅(例えば0.1A等)で、バイアス電流ibを段階的に変化させてもよい。
図28は、図26のS12におけるバイアス電流指令値を決定する処理の第2例を示したフローチャートである。図29は、バイアス電流指令値を決定する処理の第2例に対応するブロック図である。なお図27の処理がメイン処理であり、図28の処理を行なうときは図27の処理と同時に適用される。図28、図29に示すように、演算部100は、制御電流指令値の交流成分Vicacの振幅が増加し、制御電流指令値の交流成分Vicacの振幅があらかじめ設定された第3しきい値Vth3より大きくなった場合に、バイアス電流を増加させ、制御電流指令値の交流成分Vicacの振幅が減少し、制御電流指令値の交流成分Vicacの振幅があらかじめ設定された第4しきい値Vth4より小さくなった場合に、バイアス電流を減少させる。好ましくは、第3しきい値Vth3は、第4しきい値Vth4よりも大きく設定され、バイアス電流の増減特性は、ヒステリシスを有する。この場合、バイアス電流設定部102は、センサ回路120の出力とVicの2ヶ所の信号を受ける構成となる。交流成分は制御部100Aの位相補償等の処理で、周波数によってゲインに重み付けされる。そのため主に高周波成分ではセンサ回路120の出力をバイアス電流設定部102内でフィルタ処理等して得られた値からVibが生成される。また交流成分の低周波成分はVicを用いた場合の方が判断しやすい場合があり、両方の出力を利用する。
直流成分と同様に、交流成分については、図28のフローチャートに示すようにセンサ信号もしくは対向する電磁石の制御電流指令値Vicの交流成分Vicacの振幅値を監視、抽出(S31,S32)する。負荷が増加中である場合は(S33でYES)、センサ信号もしくは対向する電磁石の制御電流指令値Vicの交流成分Vicacの振幅が判定値Vth3より大きくなったタイミングで(S34でNO)、バイアス電流を増加させる(S35)。負荷が減少中である場合は(S33でNO)、センサ信号もしくは対向する電磁石の制御電流指令値Vicの交流成分Vicacの振幅が小さくなるため、制御電流指令値Vicの交流成分Vicacの振幅が判定値Vth4より小さくなったタイミングで(S36でNO)、バイアス電流を減少させる(S37)。判定値Vth3と判定値Vth4を異なる値とし、バイアス電流を増減させるしきい値にヒステリシスを設けることによって、負荷変動の交流成分において、不必要なバイアス電流の切替えを抑制する。
交流成分Vicacの抽出には、回転同期成分と低周波領域を分離する。回転軸の回転速度の加減速時には回転同期成分の振れを監視し、回転軸のアンバランスによる振れが大きい場合には、バイアス電流を大きくして剛性を高める。また回転装置の設置環境や地震など外乱による振動は低周波領域(例えば50Hz以下)であるので、外乱の有無はセンサ信号もしくは対向する電磁石の制御電流指令値Vicの交流成分Vicacの振幅値から判断し、外乱発生時にはバイアス電流を大きくして剛性を高める。
バイアス電流の初期値は無負荷時において、回転軸20を安定に浮上させることができる値とし、バイアス電流ibの設定値はこの初期値より小さくしない。つまり、初期値をバイアス電流ibの下限値ibL(最小値)とする。また、バイアス電流の上限値ibU(最大値)は電磁石、アンプおよび電源の制約から決定される。ステップS31〜S37の処理によってバイアス電流が決定されるとステップS38のガード処理において、バイアスibが上限値ibUを超えていた場合にはバイアス電流ib=ibUとし、逆にバイアスibが下限値ibLより小さくなっていた場合にはバイアス電流ib=ibLとする。
バイアス電流を増減させると軸受剛性が変化する(図18)。バイアス電流が大きくなると軸受剛性が高くなり、バイアス電流が小さくなると軸受剛性は低下する。そのため、変位センサ121,122の信号もしくは制御電流指令値Vicの交流成分Vicacの振幅が一定値(Vth3)より大きくなり、これに応じてバイアス電流を大きくすると軸受剛性は高くなる。軸受剛性が高くなると、負荷が同じ場合であれば、センサ信号もしくは制御電流指令値Vicの交流成分Vicacの振幅は小さくなる。同様にセンサ信号もしくは制御電流指令値Vicの交流成分Vicacの振幅が一定値(Vth4)より小さくなり、これに応じてバイアス電流を小さくすると、軸受剛性が低下する。軸受剛性が低下すると、負荷が同じ場合であれば、センサ信号もしくは制御電流指令値Vicの交流成分Vicacの振幅は大きくなる。
バイアス電流ibはPIDなどの制御を用いて連続的に可変してもよい。もしくは予め設定した値、例えば0.1Aで段階的に変化させてもよい。
以上説明したように、本実施の形態に係る磁気軸受装置では、電磁石のバイアス電流を回転軸に発生する負荷に応じて可変するため、負荷が小さい動作条件ではコイルの銅損や回転時の回転軸の鉄損を低減し発熱を抑制することができる。さらに、本実施の形態では定常状態で発生する負荷に対して永久磁石76,77のみによるバイアス磁束でまかない、それ以上負荷が大きくなった場合、負荷に応じてバイアス電流ibによりバイアス磁束を調整する。このため、負荷が小さい動作条件ではステータコイル73,75の銅損を低減し発熱を抑制することができる。また負荷が大きい場合も予め設定した最大電流の範囲までバイアス磁束を制御電流に従って大きくすることができ、線形範囲の拡大による制御安定性の向上や剛性向上が期待できる。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10,10A ポンプ、20 回転軸、30 駆動部、40 インペラ、50 ポンプケーシング、60,70,70A〜70E,80 磁気軸受、61 スラストディスク、62,64,72,74 ステータコア、63,65,73,75 ステータコイル、66 ギャップセンサ、76,77 永久磁石、100,100A 演算部、101,203 制御器、102 バイアス電流設定部、103 加算器、104,202 減算器、111,112,204 アンプ、120 センサ回路、121,122,123,206 変位センサ、M1 第1電磁石、M2 第2電磁石。

Claims (10)

  1. 回転軸を支持する磁気軸受装置であって、
    前記回転軸を挟むように配置された第1磁石および第2磁石とを備え、
    前記第1磁石は、第1電磁石と、第1バイアス磁束を発生させる第1永久磁石とを含み、
    前記第2磁石は、第2電磁石と、第2バイアス磁束を発生させる第2永久磁石とを含み、
    前記第1バイアス磁束は、前記回転軸に第1方向の力を発生させ、
    前記第2バイアス磁束は、前記回転軸に前記第1方向と逆向きの第2方向の力を発生させ、
    前記磁気軸受装置は、
    前記回転軸の変位を検出するセンサと、
    前記第1電磁石および前記第2電磁石に流す電流を演算する演算部とをさらに備え、
    前記演算部は、
    (a)前記センサが検出した変位に基づいて、前記第1電磁石および前記第2電磁石について逆符号で同値の制御電流を算出し、
    (b)前記制御電流の増減に応じて、前記第1電磁石および前記第2電磁石について同符号で同値のバイアス電流を算出し、
    (c)前記制御電流および前記バイアス電流を加算して、前記第1電磁石および前記第2電磁石の各々に対して流すコイル電流を算出する、磁気軸受装置。
  2. 前記バイアス電流には下限値が規定されており、
    前記演算部は、前記制御電流の直流成分が増加し、かつ、前記制御電流の直流成分があらかじめ設定された第1しきい値より大きくなった場合に、前記バイアス電流を増加させ、前記制御電流の直流成分が減少し、かつ、前記制御電流の直流成分があらかじめ設定された第2しきい値より小さくなった場合に、前記下限値を下回らない範囲内で前記バイアス電流を減少させる、請求項1に記載の磁気軸受装置。
  3. 前記第1しきい値は、前記第2しきい値よりも大きく設定され、前記バイアス電流の増減特性は、ヒステリシスを有する、請求項2に記載の磁気軸受装置。
  4. 前記バイアス電流には下限値が規定されており、
    前記演算部は、前記制御電流の交流成分の振幅が増加し、前記制御電流の交流成分の振幅があらかじめ設定された第3しきい値より大きくなった場合に、前記バイアス電流を増加させ、前記制御電流の交流成分の振幅が減少し、前記制御電流の交流成分の振幅があらかじめ設定された第4しきい値より小さくなった場合に、前記下限値を下回らない範囲内で前記バイアス電流を減少させる、請求項1に記載の磁気軸受装置。
  5. 前記第3しきい値は、前記第4しきい値よりも大きく設定され、前記バイアス電流の増減特性は、ヒステリシスを有する、請求項4に記載の磁気軸受装置。
  6. 前記演算部は、前記バイアス電流を、予め設定した増減幅で段階的に変化させる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気軸受装置。
  7. 前記演算部は、PID制御を実行して前記制御電流を算出し、前記バイアス電流の更新と同時に前記PID制御の制御パラメータを更新する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁気軸受装置。
  8. 前記制御パラメータは、前記PID制御の一巡伝達関数のゲインであり、
    前記演算部は、前記バイアス電流が予め設定した判定値を超えており、かつ、前記バイアス電流を増加させた場合、前記ゲインを大きくし、前記バイアス電流が予め設定した判定値を超えており、かつ、前記バイアス電流を減少させた場合、前記ゲインを小さくする、請求項7に記載の磁気軸受装置。
  9. 前記制御パラメータは、前記PID制御の積分ゲインであり、
    前記演算部は、前記バイアス電流が予め設定した判定値を超えており、かつ、前記バイアス電流を増加させた場合、前記積分ゲインを小さくし、前記バイアス電流が予め設定した判定値を超えており、かつ、前記バイアス電流を減少させた場合、前記積分ゲインを大きくする、請求項7に記載の磁気軸受装置。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の磁気軸受装置を備える、低温液化ガス送液ポンプ。
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