JP2021147005A - 空力特性を改善する車両 - Google Patents
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Abstract
Description
しかも、本発明では、後部空力調整部材の上面には、複数の凹部を有する特殊加工面が形成され、下面には、平滑面が形成される。特殊加工面は、上凸曲面の全面に形成される。これにより、後部空力調整部材の上を後ろへ向かって流れる気流の一部は、特殊加工面に形成されている複数の凹部により微小な渦流を生成する。複数の凹部が形成されている特殊加工面の近くには、乱流境界層が形成される。その結果、後部空力調整部材の上面により上へ向かって流れようとする気流は、特殊加工面に近づいて、特殊加工面に沿って後部空力調整部材の後方へ流れるようになる。これに対し、後部空力調整部材の下を後ろへ向かって流れる気流は、その気流の流れのままに後部空力調整部材の後方へ流れるようになる。これらの気流は、後部空力調整部材の直後となる空間において、合流できる。
これに対し、仮にたとえば後部空力調整部材の上面が下面と同様に平滑面である場合、後部空力調整部材の上面により上へ押し上げられた気流は、後部空力調整部材の後上方へ流れようとする。この場合、後部空力調整部材の上側から後方へ流れる気流と、後部空力調整部材の下側から後方へ流れる気流とは、後部空力調整部材から後へ離れた空間において、合流する。後部空力調整部材の後端と合流位置との間には、死水域のような低圧領域が発生する。本発明では、後部空力調整部材の後側に、このような低圧領域が発生しにくい。
このように本発明では、後部空力調整部材によりCL値を改善しつつ、後部空力調整部材の後側における低圧領域の発生を抑制して、車両の空力特性を改善できる。
図2は、図1の自動車1の上面図である。
図3は、図1の自動車1の車体2の後面図である。
車体2は、乗員の乗員室3の前にエンジンや補器を収容するための前室4を突出させた、複数のボックスを組み合わせた基本形状を有する。
このため、自動車1では、車体2を、たとえば流線形にならった形状とすることが考えられる。流線形の車体2では、車体2の前面に当たる空気を止めることなくその向きを変えて車体2の側面や上面へ向かって流し、車体2の後方において気流の渦を形成しないように合流させることができる。これにより、自動車1のCD値について一定の改善効果を得ることができる。
図4には、車体2の後上部として、乗員室3の後部のトランクカバー5が図示されている。トランクカバー5は、走行可能な車体2についての乗員室3より後側の外表面としての後部上面を構成する。
車幅方向に長尺なスポイラ本体11は、スポイラ本体11の上側において上に凸となるように湾曲する上凸曲面13と、スポイラ本体11の下側において下に凸となるように湾曲する下凸曲面14と、を有する。上凸曲面13の前縁と、下凸曲面14の前縁とが一致して、スポイラ本体11の前縁となる。上凸曲面13の後縁と、下凸曲面14の後縁とが一致して、スポイラ本体11の後縁となる。スポイラ本体11の前後方向中央部分は厚さを有する。これにより、下凸曲面14と、上凸曲面13とにより閉じている断面を有する。
そして、上凸曲面13と下凸曲面14とにより閉じている断面を有するスポイラ本体11は、上凸曲面13の前部分が車体2の進行方向である前後方向に対して前下がりとなり、上凸曲面13の後部分が後下がりとなるように、トランクカバー5の上に固定される。この場合、スポイラ本体11の後端は、スポイラ本体11の前端より少しだけ上側に位置している。スポイラ本体11の後端は、スポイラ本体11の前端より大きく上に位置してはいない。
これに対し、スポイラ本体11の下面である下凸曲面14は、その全面が、凹凸のない平滑面に形成される。
図5(A)は、特殊加工面20を、その正面から見た図である。図5(B)は、特殊加工面20が形成されているリアスポイラ10のスポイラ本体11の上部の拡大説明図である。特殊加工面20は、スポイラ本体11の上凸曲面13の全面に形成される。
しかも、本実施形態では、リアスポイラ10の上面には、複数の凹部21を有する特殊加工面20が全面的に形成され、下面には、平滑面が全面的に形成される。特殊加工面20は、上凸曲面13の全面に形成される。これにより、リアスポイラ10の上を後ろへ向かって流れる気流の一部は、特殊加工面20に形成されている複数の凹部21により微小な渦流を生成する。複数の凹部21が形成されている特殊加工面20の近くには、乱流境界層31が形成される。その結果、リアスポイラ10の上面により上へ向かって流れようとする気流は、特殊加工面20に近づいて、特殊加工面20に沿ってリアスポイラ10の後方へ流れるようになる。これに対し、リアスポイラ10の下を後ろへ向かって流れる気流は、その気流の流れのままにリアスポイラ10の後方へ流れるようになる。これらの気流は、リアスポイラ10の直後となる空間において、合流できる。
これに対し、仮にたとえばリアスポイラ10の上面が下面と同様に平滑面である場合、リアスポイラ10の上面により上へ押し上げられた気流は、図4に実線の矢印で示すように、リアスポイラ10の後上方へ流れようとする。この場合、リアスポイラ10の上側から後方へ流れる気流と、リアスポイラ10の下側から後方へ流れる気流とは、リアスポイラ10から後へ離れた空間において、合流する。リアスポイラ10の後端と合流位置との間には、図4に破線枠で示すように、死水域のような低圧領域32が発生する。本実施形態では、リアスポイラ10の後側に、このような低圧領域32が発生しにくい。
しかも、本実施形態では、CL値とCD値とのバランスを改善でき、自動車1の空力特性を総合的に改善することができる。
これに対して、特殊加工面20に複数の凸部を形成する場合、特殊加工面20の表面近くに、乱流境界層31が形成されない。この場合、リアスポイラ10の上凸曲面13の上を流れる気流は、上凸曲面13の近くを、上凸曲面13へ再付着するように流れない。リアスポイラ10の上凸曲面13の上を流れる気流は、図4に実線の矢印の例で示すように、リアスポイラ10の後上方へ流れようとする。この場合、リアスポイラ10の上側から後方へ流れる気流と、リアスポイラ10の下側から後方へ流れる気流とは、リアスポイラ10から後へ離れた空間において、合流する。リアスポイラ10の後端と合流位置との間には、図4に破線枠で示すように、死水域のような低圧領域32が発生する。本実施形態では、リアスポイラ10の後側に、このような低圧領域32が発生しにくい。
ただし、互いに隣接する複数の凹部21の間に、平面部分を残さないようにするためには、正六角形の開口、または正四角形の開口とするのがよい。平面部分を残さないようにすることで、乱流境界層31の厚さを薄くできる。また、凹部21の内部において気流がスムースに安定的に流れるようにするためには、凹部21の内部を、凹湾曲面の形状、または図4(B)に示すように断面が台形となる形状に形成するとよい。
この他にもたとえば、特殊加工面20は、スポイラ本体11の上凸曲面13についての一部、たとえば後側半分に形成されてよい。ただし、特殊加工面20を形成する範囲を一部とした場合、特殊加工面20を形成した範囲と、特殊加工面20を形成していない範囲との境界部分において、気流の流れ方が変化し易くなる。気流の流れが変化すると、気流は、スポイラ本体11の上凸曲面13に沿って流れ難くなる。これに対し、特殊加工面20を、スポイラ本体11の上凸曲面13についての全面に形成する場合、境界部分が無いため、気流は、スポイラ本体11の上凸曲面13に沿って、上凸曲面13の近くをスムースに流れ易くなる。
この他にもたとえば、特殊加工面20は、車体2の乗員室3のルーフの後端部分において、ルーフの外表面から上へ離間して設けられるルーフクロスバーに設けられてもよい。特殊加工面20が形成されるルーフクロスバーは、上述したリアスポイラ10と同様に、CL値とCD値とのバランスを改善することができる。
Claims (5)
- 走行可能な車体を有する車両であって、
走行する前記車体についての後部上面の上に離間して、前記車体の車幅方向へ延在するように設けられる後部空力調整部材と、
前記後部空力調整部材の上面に形成される、複数の凹部を有する特殊加工面と、
前記後部空力調整部材の下面に形成される平滑面と、
を有する、
空力特性を改善する車両。
- 前記後部空力調整部材は、下側の下凸曲面と、上側の上凸曲面と、により閉じられる断面を有し、
前記特殊加工面は、前記上凸曲面に形成され、
前記平滑面は、前記下凸曲面に形成される、
請求項1記載の空力特性を改善する車両。
- 前記特殊加工面は、前記上凸曲面の全面に形成される、
請求項2記載の空力特性を改善する車両。
- 複数の前記凹部は、前記特殊加工面に全面的に形成される、
請求項1から3のいずれか一項記載の空力特性を改善する車両。
- 各前記凹部は、前記特殊加工面に、正多角形の開口、または正円の開口を形成する、
請求項1から4のいずれか一項記載の空力特性を改善する車両。
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