JP2021145479A - 電気盤の温度異常監視方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電気盤内の温度異常を安価に、且つ早期に精度よく発見する。【解決手段】電気盤10からの排気温度T1、電気盤10の上面外側の盤外上面温度T2、電気盤10の上面内側の盤内上面温度T3のうちいずれか1か所の温度と、電気盤10への吸気温度T0との温度差ΔTを測定し、温度差ΔTが、予め設定した閾値Stに達した時に発報する。吸気温度T0に対する電気盤10内の温度の応答遅れを考慮して、吸気温度T0の上昇または下降に応じて閾値を上下に変動させたり、一定時間だけ前に測定した吸気温度T0との温度差を監視するようにしてもよい。【選択図】図3
Description
本発明は、電気盤内部の温度異常の有無を監視する監視方法に関するものである。
例えば圧延工場等の各種工場では、分電盤等の多くの電気盤が使用されている。発熱量の多い電気盤において、電気盤の内部温度が過剰に上昇すると、電気盤内の機器に異常が生じたり、機器の寿命が短くなったりするおそれがある。したがって、電気盤内部の温度を把握し、適切に換気等を行って温度を調整したり、必要に応じて機器の取り替えや修理等を行ったりする必要がある。しかしながら、多くの電気盤を有している大規模な工場等では、常時作業員が点検することは困難である。
特許文献1には、分電盤内の電気品の端子部に接続されているケーブルの先端近傍に光ファイバを設置し、光伝送損失の増大から温度異常を判定する分電盤端子部の温度監視装置が開示されている。
また、非特許文献1には、電気盤内に小型の熱画像センサを設置し、電気盤の内部の温度を常時監視する監視機器が開示されている。この監視機器は、温度上昇傾向から到達温度を予測する機能や、熱画像センサで周囲温度を測定し、測定対象機器との差温を常時計算し、機器の温度上昇を把握する機能などを有している。
オムロン株式会社、「盤内状態監視機器 K6PM」カタログ番号SGTD−085A
特許文献1の温度監視装置によれば、発熱部位を特定できるメリットはあるが、光ファイバ温度計システムは、コストが極めて高いという問題がある。また、光ファイバの曲率半径の制約等から、狭隘な電気盤内に取り付けるには適していない。
また、非特許文献1においても、発熱部位を特定できるメリットはあるが、熱画像センサ単体のコストは高い。しかも、視野範囲が限られるため、電気盤1面当たり複数台の熱画像センサが必要である。また、熱画像センサは、測定原理上、放射率を正確に設定することが重要であるが、これは極めて困難であり、そのため測定精度が悪いという問題がある。しかも、周囲温度の測定は測定対象機器の影響を受けることから、上記差温が正確に求められない。
そこで、上記事情に鑑み、本発明は、電気盤内の温度異常を安価に、且つ早期に精度よく発見することを目的とする。
上記問題を解決するため、本発明は、電気盤の内部の温度異常の有無を監視する方法であって、前記電気盤からの排気温度、前記電気盤の上面外側の盤外上面温度、前記電気盤の上面内側の盤内上面温度のうちいずれか1か所の温度と、前記電気盤への吸気温度との温度差を測定し、前記温度差が、予め設定した閾値に達した時に発報することを特徴とする、電気盤の温度異常監視方法を提供する。
前記閾値は、前記吸気温度が一定の間は第一の閾値とし、前記吸気温度が上昇している間は、前記第一の閾値よりも低い値である第二の閾値とし、前記吸気温度が下降している間は、前記第一の閾値よりも高い値である第三の閾値としてもよい。あるいは、前記温度差は、前記排気温度、前記電気盤の上面外側の盤外上面温度、前記電気盤の上面内側の盤内上面温度のうちいずれか1か所の温度と、その温度測定時刻に対して予め設定した一定時間だけ前に測定した前記吸気温度との差としてもよい。
前記排気温度、前記電気盤の上面外側の盤外上面温度、前記電気盤の上面内側の盤内上面温度のうちいずれか1か所の温度と、前記吸気温度とを、測定原理が同一の温度センサで測定することが好ましい。
本発明によれば、低コストで、電気盤内の温度異常の発生を早期に精度よく発見することができる。
以下、本発明の実施の形態を、図を参照して説明する。
配電盤等の電気盤において、吸気側の温度と排気側の温度との間に過剰な温度差が生じたときは、電気盤内で何らかの異常が発生していることが考えられる。そこで、電気盤の内部の温度異常を監視する際、排気側温度として測定する位置を設定するにあたり、予備実験を行った。予備実験としては、電気室内で稼働している電気盤の図1に示す位置において、吸気口11の吸気温度T0、排気口12の排気温度T1、電気盤10の上面13の外側の盤外上面温度T2を、それぞれ温度センサ30により3日間連続して測定し、吸気温度T0とそれ以外の位置の温度T1、T2との温度差(T1−T0、T2−T0)を調べた。温度センサ30としては、シース熱電対を用い、それぞれデータロガー40に接続して温度データを記録した。
図2に示すように、吸気温度T0、排気温度T1、および盤外上面温度T2は、それぞれ温度の絶対値が異なるものの、いずれも同様の温度変動を示し、吸気温度T0と排気温度T1との温度差T1−T0、および、吸気温度T0と盤外上面温度T2との温度差T2−T0は、吸気温度T0に不規則な変動が起きたときを除けば各々略一定であった。ただし、吸気温度T0に変動が生じたときには、排気温度T1および盤外上面温度T2は、吸気温度T0に対し、概ね10分程度の応答遅れがあった。この応答遅れ時間は、電気盤のサイズや電気盤内の収納機器の種類や数量によって変わってくる。
この予備実験より、電気盤10の内部の温度を推測する排気側温度として、内部機器との温度差や応答遅れを予め調べておけば、排気口12の排気温度T1、または電気盤10の上面13の外側の盤外上面温度T2のいずれでも適用可能であることがわかった。なお、電気盤10の上面13(図1参照)の内側の盤内上面温度T3を測定することができれば、より電気盤10の内部の温度を正確に把握できるが、温度測定手段を電気盤10の内部に設置することは、電気盤10内の他の機器との干渉等から避ける方が好ましい場合や、温度データを無線送信する際の通信障害が懸念される場合には、排気温度T1または盤外上面温度T2を排気側温度Tとすることができる。盤内上面温度T3を測定する場合には、例えば電気盤10の上面13に孔を開けて配線を取り出し、孔の隙間をパテ等で埋めるようにしてもよい。
本発明は、排気温度T1、盤外上面温度T2、盤内上面温度T3のいずれか一つを排気側温度Tとし、この排気側温度Tと吸気温度T0との温度差ΔTにより、電気盤10内部の温度異常の有無を監視するものである。詳細には、排気側温度Tとして測定する温度測定位置を決定し、その測定位置の温度と電気盤10の吸気温度T0との温度差ΔTを予め調べ、温度差ΔTの最大値ΔTmaxおよび変動幅を求める。次に、最大値ΔTmaxに、変動幅を考慮した値αを加えたΔTmax+αを閾値Stとして設定する。そして、温度差ΔTが、予め設定した閾値Stに達したときに、警告音や警告ランプ等により発報する。αの値は、小さすぎると過剰に発報し、大きすぎると発報が遅れる。温度差ΔTの変動状況によるが、αは、例えば変動幅の20%から100%程度とする。さらには、αを20%から200%程度までの間で複数段階設定して閾値Stを複数段階設け、それぞれ警告の種類を変えるようにしてもよい。
吸気温度T0が常に一定である場合や、吸気温度T0の変動に対する排気側温度Tの応答遅れの影響を無視できる場合は、排気側温度Tと吸気温度T0との温度差ΔTを一定の閾値Stと比較して監視すればよい。この場合、図3(a)に示すように、時間t3を過ぎて排気側温度が急激に上昇し、温度差ΔTが閾値Stに到達した時間t4に発報される。
ところが、前述のように、吸気温度T0が上昇あるいは下降し始めても、その温度変動が排気側温度Tの測定値に反映されるまでは、いくらかの時間差があることが多い。例えば、図3(b)に示すように、吸気温度T0が時間t1以降上昇しているものの、排気側温度Tが吸気温度T0に対応して上昇し始めるのは時間t2からであり、若干の応答遅れが生じている。ところが、この間、吸気温度T0は上昇しているため、温度差ΔTは小さくなる。したがって、閾値を一定にすると、温度差ΔTが閾値に達するのが遅れ、その結果、温度異常の検出が遅れる場合がある。そのため、吸気温度T0が上昇し始める時間t1以降、温度上昇が続いている間は、第一の閾値Stよりも低い値の第二の閾値Stuを閾値として用い、温度差ΔTを第二の閾値Stuと比較して監視することで、電気盤10の内部に過度な温度上昇が生じた場合、迅速に適切なタイミング(時間t4)で検出することができる。
一方、吸気温度T0が下降し始めても、排気側温度Tがそれに対応して下降するまでには若干の時間差がある。その間、例えば図3(c)に示すように、時間t1からt2の間、排気側温度Tが変化していないにも関わらず、温度差ΔTが大きくなり、閾値に早く到達して、所定の温度上昇が起こる前に発報してしまう場合がある。したがって、この場合には、吸気温度T0が下降し始める時間t1以降、温度下降が続いている間は、第一の閾値Stよりも高い値の第三の閾値Stdを閾値として用い、温度差ΔTを第三の閾値Stdと比較して監視することで、電気盤10の内部に過度な温度上昇が生じたタイミング(時間t4)を適切に検出することができる。
以上のように、吸気温度T0と排気側温度Tとの応答遅れを考慮して閾値を変動させることで、より精度よく監視することができる。
吸気温度T0および排気側温度Tの測定は、精度の面から、測定原理が同一の温度センサを用いることが好ましい。温度センサは、低コストで信頼性の高いシース熱電対が好ましく、例えば1か所に2つの熱電対を設置することが、より好ましい。1か所に2つの熱電対を設置することにより、測定結果を常時比較して異常の有無を確認でき、異常時には早期に発見できるため、電気盤10の温度異常の有無をより高い信頼性で検出することができる。なお、本発明において測定する温度は、例えば150℃程度までであり、熱電対よりも温度域の低い他の温度センサを用いることもできる。
本発明は、このような温度センサを、1つの電気盤10につき2か所に取り付ければよいので、低コストで実施することができる。さらに、熱電対等の温度センサを用いることで、例えば光ファイバや二次元撮像装置等を用いる場合に比べ、大幅にコストを抑制することができる。
図4は、本発明の異なる実施の形態を示し、吸気温度T0の変動が排気側温度Tの測定値に反映されるまでの時間差を考慮し、吸気温度T0の測定時刻から一定時間後に測定した排気側温度Tとの温度差ΔTを閾値Stと比較するものである。図4の例では、時間t1で吸気温度T0が上昇または下降し始めても、排気側温度Tがそれに対応して温度変動し始めるのが時間t2以降であるため、時間t2で測定した排気側温度Tと、時間t1で測定した吸気温度T0とを比較し、それらの温度差ΔTを閾値Stと比較する。これにより、吸気温度T0が上昇した場合(図4(a))も、下降した場合(図4(b))も、応答遅れを考慮して、電気盤10の内部に所定の温度上昇が生じたタイミング(時間t4)を適切に検出することができる。
なお、上記実施の形態において、図3に示す各閾値(St、Stu、Std)や図4に示す時間差の具体的な数値は、電気盤10の規模等により異なるため、電気盤毎に予備実験を行い、傾向を調べて設定すればよい。
以上のように、本発明によれば、閾値等を予め設定しておくことで、誰でも容易に、且つ、安価な装置で、電気盤10内の温度異常を早期に発見することが可能となる。これにより、盤内機器の異常を未然に防ぎ、操業安定に寄与できる。なお、本発明は、電気盤10内に温度異常が発生したかどうかのみを検出するものであり、温度異常が検出された際には、例えば電気盤10を開けて、別途可搬式の二次元放射温度計などを用いて内部を調査し、発熱の原因となる部位を特定すればよい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、電気盤10が設置された電気室の室温を吸気温度T0としてもかまわない。この場合、さらに温度センサを削減し、低コストで実施できる。
本発明は、配電盤等の電気盤の温度監視に適用できる。
10 電気盤
11 吸気口
12 排気口
13 上面
30 温度センサ
11 吸気口
12 排気口
13 上面
30 温度センサ
Claims (4)
- 電気盤の内部の温度異常の有無を監視する方法であって、
前記電気盤からの排気温度、前記電気盤の上面外側の盤外上面温度、前記電気盤の上面内側の盤内上面温度のうちいずれか1か所の温度と、前記電気盤への吸気温度との温度差を測定し、
前記温度差が、予め設定した閾値に達した時に発報することを特徴とする、電気盤の温度異常監視方法。 - 前記閾値は、
前記吸気温度が一定の間は第一の閾値とし、
前記吸気温度が上昇している間は、前記第一の閾値よりも低い値である第二の閾値とし、
前記吸気温度が下降している間は、前記第一の閾値よりも高い値である第三の閾値とすることを特徴とする、請求項1に記載の電気盤の温度異常監視方法。 - 前記温度差は、前記排気温度、前記電気盤の上面外側の盤外上面温度、前記電気盤の上面内側の盤内上面温度のうちいずれか1か所の温度と、その温度測定時刻に対して予め設定した一定時間だけ前に測定した前記吸気温度との差とすることを特徴とする、請求項1に記載の電気盤の温度異常監視方法。
- 前記排気温度、前記電気盤の上面外側の盤外上面温度、前記電気盤の上面内側の盤内上面温度のうちいずれか1か所の温度と、前記吸気温度とを、測定原理が同一の温度センサで測定することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気盤の温度異常監視方法。
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