[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
一実施形態に係る描画システムは、赤色、緑色および青色の少なくとも一色のレーザ光を含む描画レーザ光を出力する光出力部と、前記描画レーザ光によって映像が描画される第1面、および前記第1面と反対側に位置する第2面を有する映像表示部であって、前記第1面側から前記第2面側の背景を視認可能である映像表示部と、前記光出力部から出力された前記描画レーザ光を前記第1面に向けて反射するとともに、映像を描画するように前記描画レーザ光を2次元的に走査する走査部と、前記映像表示部が有する前記第2面上に設けられる遮蔽部材であって、前記少なくとも一色のレーザ光を遮蔽する前記遮蔽部材と、を備える。
上記構成では、赤色、緑色および青色の少なくとも一色のレーザ光を含む描画レーザ光は、走査部によって映像表示部が有する第1面に向けて反射されるととともに、2次元的に走査される。これによって、第1面側から第2面側の背景を視認可能な映像表示部の第1面に映像が描画される。映像表示部が有する第2面上には、描画レーザ光に含まれる上記少なくとも一色のレーザ光を遮蔽する遮蔽部材が設けられている。そのため、第1面から入射した描画レーザ光の一部が映像表示部を通過しても、描画レーザ光に含まれる上記少なくとも一色のレーザ光は遮蔽部材によって遮蔽される。その結果、上記描画システムでは、描画システムの後方への不要なレーザ光抜けを抑制可能である。
前記映像表示部は、透明部材であってもよい。この場合、映像表示部が有する第1面側から背景を視認し易い。
前記映像表示部は、前記第1面を有しており、入射する光の一部を拡散または散乱する表示スクリーンと、前記表示スクリーンに対して前記第1面と反対側に設けられており、第2面を有する透明部材と、を有してもよい。
この場合、透明部材に対して遮蔽部材と反対側に表示スクリーンが配置されている。走査部によって反射された描画レーザ光は、表示スクリーンに入射する。表示スクリーンに入射された描画レーザ光の一部は拡散または散乱される。そのため、たとえば、透明部材に直接描画レーザ光が入射する場合より、映像を視認し易い。
前記映像表示部は、前記第1面を有する第1調光部材であって、透明度を制御可能な前記第1調光部材と、前記第1調光部材に対して前記第1面と反対側に設けられており、前記第2面を有する透明部材と、を有してもよい。
この場合、透明部材に対して遮蔽部材と反対側に第1調光部材が配置されている。走査部によって反射された描画レーザ光は、第1調光部材に入射する。第1調光部材は、透明度を制御可能な部材である。そのため、描画レーザ光によって映像を描画する場合に、入射された描画レーザ光の一部は拡散または散乱するように第1調光部材の透明度を調整しておくことによって、たとえば、透明部材に直接描画レーザ光が入射する場合より、映像を視認し易い。逆に、描画レーザ光によって映像を描画しない場合には、第1調光部材の透明度を、実質的に光を透過するように調整しておくことによって、映像表示部の第1面側から背景を視認し易い。
前記第1面に入射する前記描画レーザ光は、s偏光の描画レーザ光であり、前記遮蔽部材は、直線偏光フィルタであり、前記直線偏光フィルタは、前記s偏光の描画レーザ光を吸収するように配置されていてもよい。
この場合、第1面には、s偏光の描画レーザ光が入射する。遮蔽部材は、s偏光の描画レーザ光を吸収するように配置された直線偏光フィルタである。そのため、第1面に入射した描画レーザ光の一部が映像表示部を通過しても、描画レーザ光に含まれる上記少なくとも一色のレーザ光は遮蔽部材によって遮蔽される。その結果、上記描画システムでは、描画システムの後方への不要なレーザ光抜けを抑制可能である。一方、遮蔽部材に入射する光のうちs偏光成分以外の成分は遮蔽部材を透過する。したがって、上記構成では、映像表示部が有する第1面側から背景を視認し易い。
前記遮蔽部材は、前記少なくとも一色のレーザ光を選択的にカットする波長カット部でもよい。
この場合、映像表示部を抜けた描画レーザ光に含まれる上記少なくとも一色のレーザ光は、上記波長カット部で遮蔽される。波長カット部は、上記少なくとも一色のレーザ光の波長帯以外の光は透過する。そのため、映像表示部が有する第1面側から背景を視認し易い。
前記遮蔽部材は、透明度を制御可能な第2調光部材でもよい。
第2調光部材は、透明度を制御可能な部材である。そのため、描画レーザ光によって映像を描画する場合に、映像表示部を抜けた描画レーザ光を遮蔽可能な程度に第2調光部材の透明度を調整しておくことによって、描画レーザ光に含まれる上記少なくとも一色のレーザ光を遮蔽できる。逆に、描画レーザ光によって映像を描画がしない場合には、第2調光部材の透明度を、実質的に光を透過するように調整しておくことによって、映像表示部の第1面側から背景を視認し易い。
一実施形態に係る描画システムは、前記映像表示部が有する前記第2面側に設けられており所定の色のレーザ光をカットする波長カットフィルタを更に備え、前記映像表示部は、 前記第1面を有する第1調光部材であって、透明度を制御可能な前記第1調光部材と、前記第1調光部材に対して前記第1面と反対側に設けられており、前記第2面を有する透明部材と、を有し、前記遮蔽部材は、透明度を制御可能な第2調光部材であり、前記描画レーザ光は、赤色、緑色および青色の少なくとも2色のレーザ光を含み、前記所定の色は、前記少なくとも2色のうちの何れかの色であってもよい。
この場合、透明部材に対して遮蔽部材と反対側に第1調光部材が設けられている。したがって、走査部で反射した描画レーザ光は第1調光部材に入射する。第1調光フィルタは、透明度を制御可能な部材である。したがって、映像を描画する際、描画レーザ光の一部を拡散または散乱するように第1調光部材の透明度を調整しておくことによって、たとえば、透明部材に直接描画レーザ光が入射する場合より、映像を視認し易い。上記構成では、遮蔽部材は、第2調光部材である。第2調光フィルタは、透明度を制御可能な部材である。そのため、描画レーザ光によって映像を描画する場合に、映像表示部を抜けた描画レーザ光を遮蔽可能な程度に第2調光部材の透明度を調整しておくことによって、描画システムの後方への不要なレーザ光抜けを抑制可能である。波長カットフィルタは、所定のレーザ光の波長帯以外の波長帯の光は透過する。したがって、映像を描画しない場合には、第1調光部材および第2調光部材の透明度を、それらが実質的に透明である程度に調整しておくことによって、映像表示部の第1面側から背景を視認し易い。更に、上記構成では、たとえば、描画レーザ光が所定の色のレーザ光である場合、第1調光部材および第2調光部材の透明度を、それらが実質的に透明である程度に調整しておくことによって、背景に映像を重畳する映像表現も可能である。この場合でも、映像表示部を抜けた描画レーザ光は、波長カットフィルタによって遮蔽されるので、描画システムの後方への不要なレーザ光抜けを抑制可能である。
前記光出力部は、前記少なくとも一色のレーザ光を出力する少なくとも一つのレーザダイオードチップを備えてもよい。この場合、光出力部の小型化を図れる。
前記描画レーザ光は、赤色、緑色および青色のうち最大2色のレーザ光を含んでもよい。この場合、遮蔽部材は、上記最大2色のレーザ光を遮蔽するように構成可能である。したがって、たとえば、映像表示部の第1面側から背景を視認し易い。
前記描画レーザ光は、赤色のレーザ光、緑色のレーザ光、および青色のレーザ光を含んでもよい。この場合、三原色(赤色、緑色および青色)を用いて映像を表現可能である。
一実施形態に係る描画システムは、前記光出力部と前記走査部とを収容する収容部を備え、前記走査部は、MEMSチップでもよい。この場合、光出力部と前記走査部と収容部とによって構成される装置の小型化を図れる。
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る描画システムの構成を概略的に示す側面図である。図2は、図1に示した描画システムにおいて描画レーザ光の走査状態を示す模式図である。図1および図2に示したように、第1実施形態に係る描画システム1Aは、描画モジュールM1と、透明部材52と、偏光フィルタ(遮蔽部材)F1とを備える。描画システム1Aは、描画モジュールM1を制御する制御装置40Aを備えてもよい。以下では、断らない限り、制御装置40Aを備えた描画システム1Aを説明する。描画システム1Aは、描画モジュールM1が出力する描画レーザ光Lによって、透明部材52の前面(第1面)52aに映像100を描画するシステムである。
描画モジュールM1は、映像100を描画するために描画レーザ光Lを2次元的に走査しながら出力する。第1実施形態において描画レーザ光Lは、直線偏光光である。描画モジュールM1は、透明部材52に描画レーザ光Lがs偏光の状態で入射するように配置されている。したがって、透明部材52に入射する描画レーザ光Lは、s偏光のレーザ光である。たとえば、図2に示した描画レーザ光Lの電界の振動方向は、仮想平面P(前面52aに入射する描画レーザ光Lに対する入射面に相当)に対して直交する方向である。図2において映像100中の二点鎖線は、描画レーザ光Lの走査状態の例を示している。
映像100を見る観察者に対して描画モジュールM1が映像100を遮らないように、たとえば、描画モジュールM1は、下方または上方から描画レーザ光Lが透明部材52に入射するように配置される。
描画モジュールM1は、図3に示したように、光出力部10Aと、走査部20とを有する描画装置である。
光出力部10Aは、描画レーザ光Lを出力する。描画レーザ光Lは、赤色、緑色および青色の少なくとも一色のレーザ光を含むレーザ光である。赤色レーザ光の発振波長(或いは中心波長)の例は、波長620nm〜650nmである。緑色レーザ光の発振波長(或いは中心波長)の例は、波長510nm〜540nmである。青色レーザ光の発振波長(或いは中心波長)の例は、波長435nm〜465nmである。以下では、断らない限り、描画レーザ光Lは、赤色レーザ光、緑色レーザ光および青色レーザ光を含むレーザ光である。
光出力部10Aは、光源部11Aと合波部13Aとを有する。光源部11Aは、第1光源12a、第2光源12bおよび第3光源12cを有する。
第1光源12aは、第1レーザ光L1を出力する半導体レーザ素子である。第1レーザ光L1は、赤色レーザ光、緑色レーザ光および青色レーザ光のうちの何れかのレーザ光である。第2光源12bは、第2レーザ光L2を出力する半導体レーザ素子である。第2レーザ光L2は、赤色レーザ光、緑色レーザ光および青色レーザ光のうち第1レーザ光L1以外の何れかのレーザ光である。第3光源12cは、第3レーザ光L3を出力する半導体レーザ素子である。第3レーザ光L3は、赤色レーザ光、緑色レーザ光および青色レーザ光のうち第1レーザ光L1および第2レーザ光L2以外のレーザ光である。
第1光源12a、第2光源12bおよび第3光源12cの例は、レーザダイオード(LD)である。第1光源12a、第2光源12bおよび第3光源12cは、レーザダイオードチップ(LDチップ)でもよい。
以下の説明では、断らない限り、第1レーザ光L1、第2レーザ光L2および第3レーザ光L3は、次に示したレーザ光である。
第1レーザ光L1:赤色レーザ光
第2レーザ光L2:緑色レーザ光
第3レーザ光L3:青色レーザ光
合波部13Aは、第1レーザ光L1、第2レーザ光L2および第3レーザ光L3を合波可能に構成されている。図3に示した合波部13Aに基づいて、合波部13Aの一例を説明する。合波部13Aは、レンズ14a、レンズ14b、レンズ14c、フィルタ15a、フィルタ15bおよびフィルタ15cを有する。
レンズ14aは、第1レーザ光L1をコリメートするコリメートレンズである。レンズ14bは、第2レーザ光L2をコリメートするコリメートレンズである。レンズ14cは、第3レーザ光L3をコリメートするコリメートレンズである。
フィルタ15a、フィルタ15bおよびフィルタ15cは、たとえば波長選択性フィルタである。
フィルタ15aは、レンズ14aによってコリメートされた第1レーザ光L1をフィルタ15bに向けて反射する。フィルタ15bは、第1レーザ光L1を透過するとともに、レンズ14bによってコリメートされた第2レーザ光L2をフィルタ15cに向けて反射する。これにより、第1レーザ光L1および第2レーザ光L2が合波される。フィルタ15cは、第1レーザ光L1および第2レーザ光L2(すなわち、第1レーザ光L1および第2レーザ光L2の合波光)を透過し、レンズ14cによってコリメートされた第3レーザ光L3をフィルタ15bと反対側(図3における走査部20側)に反射する。これにより、第1レーザ光L1、第2レーザ光L2および第3レーザ光L3が合波された合波光である描画レーザ光Lが得られる。フィルタ15a〜15cを用いて合波される第1〜第3レーザ光L1〜L3は、コリメート光であるため、描画レーザ光Lもコリメート光である。
第1〜第3レーザ光L1〜L3が全て出力されている場合を例にして説明した。しかしながら、第1〜第3レーザ光L1〜L3のうち何れかが出力されていない場合、描画レーザ光Lは、出力されているレーザ光が合波された光である。
走査部20は、描画レーザ光Lを前面52aに向けて反射し、映像100を描画するように描画レーザ光Lを2次元的に走査する。これにより、透明部材52の前面52aに映像100が描画される。図3では模式的に走査部20を示している。走査部20は、描画レーザ光Lを反射するミラー(反射部)21と、ミラー21を2次元駆動する駆動機構22とを有する。走査部20の例は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いたMEMSチップである。この場合、ミラー21はMEMSミラーである。
光出力部10Aおよび走査部20は、電子冷却モジュール(以下、TEC(Thermo−Electric Cooler)と称する場合もある。)上に設けられてもよい。TECの例は、熱電クーラー、またはペルチェモジュール(ペルチェ素子)である。
描画レーザ光Lの光路において、合波部13Aと走査部20との間には、描画レーザ光Lを通すアパーチャーが設けられてもよい。これにより、描画レーザ光Lの径をより小さくしたり、描画に寄与しない不要な光をカットしたりすることが可能である。
光出力部10Aおよび走査部20は、パッケージ30内に収容されていてもよい。この場合、パッケージ30には、描画レーザ光Lを通す窓部31が形成される。窓部31は、たとえば、パッケージ30の壁面に形成された開口30aに窓部材32が取り付けられることよって形成され得る。一実施形態において、上記パッケージ30は、気密封止(ハーメチックシール)され得る。
制御装置40Aは、光出力部10Aおよび走査部20を制御する装置である。描画システム1Aでは、制御装置40Aは、外部から制御装置40Aに入力される映像入力信号に応じて、描画レーザ光Lが映像100を描画するように、光源部11Aおよび走査部20を駆動する。制御装置40Aは、たとえば、FPGA(field-programmable gate array)である。
映像入力信号は、描画すべき映像100の映像情報(各画素の位置情報、各画素の色情報など)を含む信号である。映像入力信号は、描画すべき映像100を作成する映像作成装置で作成される。映像作成装置は、たとえば、映像作成ソフトなどが組み込まれたパーソナルコンピュータである。
図4は、制御装置40Aの一例の機能ブロック図である。制御装置40Aは、信号入力部41、信号解析部42、走査制御部43、光源制御部44および記憶部45を有する。
信号入力部41は、映像入力信号を受け付ける。信号入力部41は、信号線などが接続されるポートを含む。
信号解析部42は、信号入力部41に入力された映像入力信号を解析する。信号解析部42は、映像入力信号を含まれる映像情報のうち、描画すべき映像100を構成する複数の画素の位置情報と色情報を光源制御部44に入力する。
走査制御部43は、規定の周波数に基づいて、描画レーザ光Lによって映像100を描画するように、走査部20を制御する。走査制御部43は、走査部20の駆動状態を検出し、上記複数の画素の位置情報に対応するタイミング情報を光源制御部44に入力する。
光源制御部44は、上記複数の画素の位置情報、色情報、タイミング情報に基づいて光源部11Aを駆動する。具体的には、光源制御部44は、第1〜第3レーザ光L1〜L3が各画素の色を実現するための出力強度を有するように、第1〜第3光源12a〜12cそれぞれを駆動する。
記憶部45は、コンピュータを、描画システム1Aの制御装置40Aとして機能させるためのプログラム、その他、描画システム1Aを制御するのに必要な情報等を保存する。
制御装置40Aは、たとえば、描画システム専用の装置でもよい。或いは、上記制御装置40Aの機能を実現するプログラムを実行することによって、パーソナルコンピュータなどを制御装置40Aとして使用し得る。
図1に戻って、透明部材52および偏光フィルタF1を説明する。
透明部材52は、描画レーザ光Lによって映像100が描画される部材である。第1実施形態では、透明部材52が映像100を表示するための映像表示部である。透明部材52は、前面(第1面)52aと背面(第2面)52bとを有する。前面52aは、描画レーザ光Lが入射される面である。背面52bは、前面52aと反対の面である。前面52aおよび背面52bは、たとえば平滑な面である。透明部材52は、たとえば透明板である。透明部材52の材料の例は、ガラス、透明樹脂等である。透明部材52は、前面52a側からみて、背面52b側の背景などを観察者が視認可能な透明度を有する。
本開示おける「透明度」は、可視光の波長帯に対する透過率(光透過性)によって評価され得る。透明部材52は、可視光の波長帯に対する透過率が70%以上である部材である。透明部材52の上記透過率は、80%以上でもよいし、90%以上でもよい。
偏光フィルタF1は、透明部材52の背面52b上に設けられている。偏光フィルタF1は、たとえば、背面52bに貼合され得る。偏光フィルタF1は、たとえばフィルム状の部材でもよい。偏光フィルタF1は、たとえば、透明部材52の厚さ方向からみて、前面52aに表示される映像100の大きさ以上の大きさを有する。偏光フィルタF1は、直線偏光フィルタである。偏光フィルタF1は、たとえば、ワイヤグリッド方式の偏光フィルタである。偏光フィルタF1は、s偏光の描画レーザ光Lを吸収するように透明部材52に設けられている。たとえば、偏光フィルタF1が有する吸収軸(透過軸である偏光軸に直交する軸)は、背面52bに直交する仮想面に直交している。
上記描画システム1Aでは、光出力部10Aが出力する描画レーザ光はL、走査部20によって、透明部材52に向けて反射される。走査部20は、描画レーザ光Lを2次元的に走査する。これにより、前面52aに映像100が描画される。透明部材52に入射した描画レーザ光Lの一部は、たとえば前面52aで反射されるので、前面52a側から観察者が透明部材52をみた場合、前面52aに映像100が表示される。描画レーザ光Lは、赤色レーザ光、緑色レーザ光および青色レーザ光を含むレーザ光であることから、映像100は三原色によって表現され得る。前面52aに入射された描画レーザ光Lの残りの部分は、透明部材52を通過する。
第1実施形態において、透明部材52に入射する描画レーザ光Lは、s偏光のレーザ光である。透明部材52の背面52bには、偏光フィルタF1がs偏光の光を吸収するように設けられている。そのため、透明部材52を通過した描画レーザ光Lは、偏光フィルタF1によって吸収される。換言すれば、透明部材52を通過した描画レーザ光Lは、偏光フィルタF1によって遮蔽される。一方、偏光フィルタF1は、s偏光の光以外は透過する。したがって、背景側から(すなわち、偏光フィルタF1の後方側から)の光のうちs偏光成分以外は偏光フィルタF1および透明部材52を前面52a側に向けて透過する。そのため、観察者は、前面52a側から背景を視認可能である。
すなわち、描画システム1Aでは、前面52aに映像100を描画する際には、描画システム1Aの後方(遮蔽部材からみて映像表示部と反対側)への不要な描画レーザ光Lの抜けを抑制できる。描画システム1Aでは、観察者は、透明部材52の前面52a側から背景を視認できる。
仮に、偏光フィルタF1を設けていない場合、描画レーザ光Lは、透明部材52の背面52bから出力される。このように描画レーザ光Lが、透明部材52を通過すると、通過した描画レーザ光Lによって、描画システムの後方に、映像100が表示される。したがって、たとえば、映像100が秘匿性(たとえば個人情報等)を含んでいると、その秘匿性を確保できない。
これに対して、描画システム1Aでは、背面52b側に抜けた不要な描画レーザ光Lを偏光フィルタF1によって遮蔽できる。そのため、描画システム1Aでは、映像100の秘匿性を確保できる。展示会などで透明部材52の背面52b側を人が通ったとしても、そのような通行人に描画レーザ光Lが照射されないので、安全性も向上する。
描画システム1Aでは、映像100を描画している際にも観察者は背景を視認できる。そのため、たとえば、描画システム1Aでは、背景に映像100を重畳させた表現形態(たとえば拡張現実)も実現できる。
第1〜第3光源12a〜12cがLDチップである場合、描画モジュールM1(或いは描画システム1A)の小型化を図れる。LDチップからは直線偏光の光が出力される。そのため、描画レーザ光Lの偏光状態を制御し易い。たとえば、LDチップである第1〜第3光源12a〜12cを基板上に実装する際に、LDチップの出力端面が基板の主面(第1〜第3光源12a〜12cが搭載される面)に直交するように第1〜第3光源12a〜12cを実装する。これにより、第1〜第3光源12a〜12cの偏光方向を揃えることが可能である。そのため、たとえば、図3に例示した偏光方向を維持可能な合波部13Aを上記基板に実装することによって、直線偏光光の描画レーザ光Lを容易に形成できる。その結果、s偏光の描画レーザ光Lを透明部材52に入射し易い。上記のように、第1〜第3光源12a〜12cおよび合波部13Aを基板に実装する場合、第1〜第3光源12a〜12cおよび合波部13Aたとえば、適宜、支持台(たとえばサブマウント)などを介して基板に実装されてもよい。
走査部20がMEMSチップであり且つ走査部20が光出力部10Aと一緒にパッケージ30内に収容されている場合、描画モジュールM1(或いは描画システム1A)の小型化を図れる。たとえば、走査部20がMEMSチップである場合、光出力部10Aが実装される基板上に、走査部20も実装できる。これにより、パッケージ30を小型化できる。更に、パッケージ30内に走査部20も収容されているため、走査部20の配置状態を維持し易い。そのため、光出力部10Aから出力される描画レーザ光Lの偏光状態を維持し易い。第1〜第3光源12a〜12c、合波部13AおよびMEMSチップ(走査部20)を同じ基板に実装する場合、それらは、たとえば、適宜、支持台(たとえばサブマウント)などを介して基板に実装されてもよい。
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態に係る描画システムの概略構成を示す側面図である。図5に示した描画システム1Bは、描画モジュールM1の代わりに描画モジュールM2を備える点おおよび偏光フィルタF1の代わりに波長カット部F2を備える点で、主に、描画システム1Aと相違する。相違点を中心にして、描画システム1Bを説明する。
描画システム1Bは、描画モジュールM2と、透明部材52と、波長カット部(遮蔽部材)F2とを備える。描画システム1Bは、第1実施形態の場合と同様に、描画モジュールM2を制御する制御装置40Aを備えてもよい。描画システム1Bは、描画モジュールM2が出力する描画レーザ光Lによって、透明部材52の前面(第1面)52aに映像100を描画するシステムである。
図6を利用して描画モジュールM2の一例を説明する。図6は、第2実施形態における描画モジュールM2の一例の構成を説明するための模式図である。
描画モジュールM2は、図6に示したように、光出力部10Bと、走査部20とを有する。走査部20は、第1実施形態において説明した走査部20と同じである。光出力部10Bは、非直線偏光状態の描画レーザ光Lを出力する点で、第1実施形態の光出力部10Aと相違する。
光出力部10Bは、光源部11Bと合波部13Bとを有する。
光源部11Bは、第1光源12a、第2光源12bおよび第3光源12cに加えて、第4光源12dおよび第5光源12eを有する点で、第1実施形態において説明した光源部11Aと相違する。
第4光源12dは、第4レーザ光L4を出力する半導体レーザ素子である。第4レーザ光L4は、赤色レーザ光、緑色レーザ光および青色レーザ光のうちの何れかのレーザ光である。第5光源12eは、第5レーザ光L5を出力する半導体レーザ素子である。第5レーザ光L5は、赤色レーザ光、緑色レーザ光および青色レーザ光のうちの第4レーザ光L4以外の何れかのレーザ光である。第4光源12dおよび第5光源12eは、第1〜第3光源12a〜12cの場合と同様に、レーザダイオード(LD)でもよい。第4光源12dおよび第5光源12eは、LDチップでもよい。
第2実施形態おける以下の説明では、断らない限り、第1レーザ光L1、第2レーザ光L2、第3レーザ光L3、第4レーザ光L4および第5レーザ光L5は、次に示したレーザ光である。
第1レーザ光L1:赤色レーザ光
第2レーザ光L2:緑色レーザ光
第3レーザ光L3:青色レーザ光
第4レーザ光L4:赤色レーザ光
第5レーザ光L5:緑色レーザ光
合波部13Bは、第1レーザ光L1、第2レーザ光L2、第3レーザ光L3、第4レーザ光L4および第5レーザ光L5を合波可能に構成されている。図6に示した合波部13Bに基づいて、合波部13Bの一例を説明する。
合波部13Bは、レンズ14a、レンズ14b、レンズ14c、フィルタ15a、フィルタ15bおよびフィルタ15cに加えて、レンズ14d、レンズ14e、1/2波長板16a、1/2波長板16b、フィルタ15dおよびフィルタ15eを有する点で、第1実施形態において説明した合波部13Aと相違する。相違点を中心して合波部13Bを説明する。
レンズ14dは、第4レーザ光L4をコリメートするコリメートレンズである。レンズ14dは第5レーザ光L5をコリメートするコリメートレンズである。
1/2波長板16aは、第4レーザ光L4の偏光面を90度回転させて透過する。1/2波長板16bは、第5レーザ光L5の偏光面を90度回転させて透過する。
フィルタ15a、フィルタ15bおよびフィルタ15cは、たとえば波長選択性フィルタであり、フィルタ15dおよびフィルタ15eは偏波フィルタである。
フィルタ15dは、レンズ14aによってコリメートされた第1レーザ光L1をフィルタ15dに向けて反射する。フィルタ15dは、第1レーザ光L1を透過するとともに、1/2波長板16aによって偏波面が90度回転され且つレンズ14dによってコリメートされた第4レーザ光L4をフィルタ15bに向けて反射する。これにより、第1レーザ光L1および第4レーザ光L4が合波される。
フィルタ15bは、第1レーザ光L1及び第4レーザ光L4を透過するとともに、レンズ14bによってコリメートされた第2レーザ光L2をフィルタ15eに向けて反射する。これにより、第1レーザ光L1、第4レーザ光L4および第2レーザ光L2が合波される。
フィルタ15eは、第1レーザ光L1、第4レーザ光L4および第2レーザ光L2を透過するとともに、1/2波長板16bによって偏波面が90度回転され且つレンズ14eによってコリメートされた第5レーザ光L5をフィルタ15cに向けて反射する。これにより、第1レーザ光L1、第4レーザ光L4、第2レーザ光L2および第5レーザ光L5が合波される。
フィルタ15cは、第1レーザ光L1、第4レーザ光L4、第2レーザ光L2および第5レーザ光L5を透過するとともに、レンズ14cによってコリメートされた第3レーザ光L3をフィルタ15eと反対側(すなわち、図6における走査部20側)に向けて反射する。これにより、第1レーザ光L1〜第5レーザ光L5が合波された合波光である描画レーザ光Lが得られる。フィルタ15a〜15eが反射する第1〜第5レーザ光L1〜L5は、コリメート光であるため、描画レーザ光Lもコリメート光である。
第1〜第5レーザ光L1〜L5が全て出力されている場合を例にして説明した。しかしながら、第1〜第5レーザ光L1〜L5のうち何れかが出力されていない場合、描画レーザ光Lは、残りの出力されているレーザ光が合波された光である。図6に示した合波部13Bの構成では、1/2波長板16aおよび1/2波長板16bを採用するとともに、偏波フィルタであるフィルタ15dおよびフィルタ15eを採用している。そのため、光出力部10Bからは非直線偏光状帯の描画レーザ光Lが出力される。なお、1/2波長板16aは、レンズ14dとフィルタ15dの間に配置してもよい。同様に、1/2波長板16bは、レンズ14eとフィルタ15eの間に配置してもよい。
図5を参照して、波長カット部F2を説明する。波長カット部F2は、描画レーザ光Lに含まれる赤色、緑色および青色の少なとも一色のレーザ光をカットする部材である。第2実施形態でも、描画レーザ光Lが、赤色レーザ光、緑色レーザ光および青色レーザ光を含む場合を説明する。したがって、以下では、断らない限り、波長カット部F2は、赤色レーザ光、緑色レーザ光および青色レーザ光をカットする部材である。波長カット部F2は、たとえば、背面52bに貼合され得る。波長カット部F2は、たとえば、透明部材52の厚さ方向からみて、前面52aに表示される映像100の大きさ以上の大きさを有する。波長カット部F2は、第1波長カットフィルタFr、第2波長カットフィルタFg、第3波長カットフィルタFbを有する。第1波長カットフィルタFr、第2波長カットフィルタFg、第3波長カットフィルタFbそれぞれは、たとえば、フィルム状の部材でもよい。
第1波長カットフィルタFrは、描画レーザ光Lに含まれる赤色レーザ光を選択的にカットする波長カットフィルタである。第1波長カットフィルタFrは、たとえば、上記赤色レーザ光の波長帯(たとえば発振波長±10nmの光をカットする。第1波長カットフィルタFrは、赤色レーザ光を吸収する吸収層でもよい。
第2波長カットフィルタFgは、描画レーザ光Lに含まれる緑色レーザ光を選択的にカットする波長カットフィルタである。第2波長カットフィルタFgは、たとえば、上記緑色レーザ光の波長帯(たとえば発振波長±10nm)の光をカットする。第2波長カットフィルタFgは、緑色レーザ光を吸収する吸収層でもよい。
第3波長カットフィルタFbは、描画レーザ光Lに含まれる青色レーザ光を選択的にカットする波長カットフィルタである。第3波長カットフィルタFbは、たとえば、上記青色レーザ光の波長帯(たとえば発振波長±10nm)の光をカットする。第3波長カットフィルタFbは、青色レーザ光を吸収する吸収層でもよい。
第1波長カットフィルタFr、第2波長カットフィルタFgおよび第3波長カットフィルタFbは、たとえば、透明部材52の厚さ方向からみて、前面52aに表示される映像100の大きさ以上の大きさを有していれば、同じでもよいし、異なっていてもよい。
波長カット部F2は、たとえば、第1波長カットフィルタFr、第2波長カットフィルタFgおよび第3波長カットフィルタFbが、厚さ方向に積層された積層体である。したがって、波長カット部F2に、描画レーザ光Lが入射すると、描画レーザ光Lに含まれる赤色レーザ光、緑色レーザ光および青色レーザ光は、それぞれ第1波長カットフィルタFr、第2波長カットフィルタFgおよび第3波長カットフィルタFbによって、カットされる。波長カット部F2は、赤色レーザ光、緑色レーザ光、青色レーザ光を同時にカットする1枚のフィルタとしてもよい。
制御装置40Aは、第1実施形態の場合と同様に、外部から制御装置40Aに入力される映像入力信号に応じて、描画レーザ光Lが映像を描画するように、光出力部10Aおよび走査部20を制御する装置である。
制御装置40Aの一例は、第1実施形態の場合と同様に、信号入力部41、信号解析部42、走査制御部43、光源制御部44および記憶部45を有する。制御装置40Aの機能は、光源制御部44が、第4光源12dおよび第5光源12eを制御する機能を更に有する点以外は、第1実施形態で説明した制御装置40Aと同様の機能を有する。
上記描画システム1Bでは、第1実施形態の場合と同様にして描画レーザ光Lによって、透明部材52の前面52aに映像100が描画される。透明部材52の背面52b上には、波長カット部F2が設けられている。そのため、透明部材52を通過した描画レーザ光Lは、波長カット部F2によってカットされる。換言すれば、透明部材52を通過した描画レーザ光Lは、波長カット部F2によって遮蔽される。
したがって、描画システム1Bは、少なくとも描画システム1Aと同様の作用効果を有し得る。たとえば、描画システム1Bでは、前面52aに映像100を描画する際には、描画システム1Bの後方(遮蔽部材からみて映像表示部と反対側)への不要な描画レーザ光Lの抜けを抑制できる。描画システム1Bでも、観察者が透明部材52の前面52a側から背景を視認できる。
第1〜第5光源12a〜12eがLDチップである場合、光出力部10Bおよび描画モジュールM2(或いは描画システム1B)の小型化を図れる。走査部20がMEMSチップであり且つ走査部20が光出力部10Bと一緒にパッケージ30内に収容されている場合、描画モジュールM2(或いは描画システム1B)の小型化を図れる。
波長カット部F2は、描画レーザ光Lに含まれる赤色レーザ光、緑色レーザ光および青色レーザ光を選択的にカットする。そのため、赤色レーザ光、緑色レーザ光および青色レーザ光の波長帯以外の波長帯の光は、波長カット部F2を透過する。したがって、前面52a側からは、背景をより明瞭に視認可能である。
波長カット部F2を使用することから、前面52aに入射する描画レーザ光Lの偏光状態はs偏光に限定されない。したがって、光出力部10Bの設計自由度が向上する。同様の理由で、光出力部10B、走査部20および透明部材52の配置関係の自由度も向上する。
図6に例示した光出力部10Bのように、たとえば、第1〜第3光源12a〜12cの他に、第4光源12dおよび第5光源12eを有する場合、映像100の輝度や色表現の自由度が向上する。
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態に係る描画システムの概略構成を示す側面図である。図7に示した描画システム1Cは、第1実施形態における透明部材(映像表示部)52の代わりに映像表示部50Aを備える点で、主に第1実施形態で説明した描画システム1Aと相違する。相違点を中心にして、描画システム1Cを説明する。
描画システム1Cは、描画モジュールM1と、映像表示部50Aと、偏光フィルタF1とを備える。描画システム1Cは、第1実施形態の場合と同様に、描画モジュールM1を制御する制御装置40Aを備えてもよい。以下では、断らない限り、制御装置40Aを備えた描画システム1Cを説明する。
描画モジュールM1、制御装置40Aおよび偏光フィルタF1は、第1実施形態の場合と同様であるため説明を省略する。
映像表示部50Aは、表示スクリーン51と、透明部材52とを有する。透明部材52は、第1実施形態において説明した透明部材52である。透明部材52の背面(第2面)52bが映像表示部50Aの背面である。
表示スクリーン51は、透明部材52の前面52a上に設けられている。表示スクリーン51は、たとえば、前面52aに貼合され得る。表示スクリーン51は、描画レーザ光Lが入射される前面(第1面)51aを有する。表示スクリーン51の前面51aが映像表示部50Aの前面である。表示スクリーン51は、映像100を表示可能な大きさを有する。表示スクリーン51は、たとえば、シート状の部材である。
表示スクリーン51は、入射する光の一部を拡散または散乱し、残りを透過する。たとえば、一実施形態において、表示スクリーン51は、可視光の約20%〜50%を拡散または散乱する一方、残りの約50%〜80%を透過する。すなわち、表示スクリーン51の可視光の透過率は、約50%〜80%である。表示スクリーン51は、たとえば、上記透過率を有する半透明スクリーンである。
表示スクリーン51は、たとえば、透明基材と、透明基材中に分散された複数の微粒子を有する。上記微粒子は、拡散(または散乱)粒子として機能する。透明基材は、透明部材52と同様の透明度を有する基材であってもよい。微粒子は、たとえば、透明基材中に均一に分散されている。
映像表示部50Aは、表示スクリーン51側からみて背面52b側の背景が視認可能な透明度を有する。たとえば、映像表示部50Aの可視光の透過率は、上述した表示スクリーン51の可視光の透過率に実質的に等しい。
描画システム1Cでは、第1実施形態の場合と同様にして描画レーザ光Lによって、表示スクリーン51の前面51aに映像100が描画される。表示スクリーン51は、入射した光の一部を拡散または散乱する一方、残りを透過する。そのため、表示スクリーン51に入射した描画レーザ光Lのうち拡散または散乱されなかった部分は、表示スクリーン51および透明部材52を通過する。透明部材52の背面52b上には、偏光フィルタF1が設けられている。更に、前面51aに入射する描画レーザ光Lの偏光状態はs偏光である。そのため、第1実施形態の場合と同様に、透明部材52を透過した描画レーザ光Lは、偏光フィルタF1によって遮蔽される。
したがって、描画システム1Cは、少なくとも描画システム1Aと同様の作用効果を有し得る。たとえば、描画システム1Cでは、前面51aに映像100を描画する際には、描画システム1Cの後方(遮蔽部材からみて映像表示部と反対側)への不要な描画レーザ光Lの抜けを抑制できる。描画システム1Cでも、観察者が表示スクリーン51の前面51a側から背景を視認できる。
映像表示部50Aは、表示スクリーン51を有する。表示スクリーン51に入射した描画レーザ光Lの一部は、拡散または散乱される。そのため、映像100の観察者は、たとえば、透明部材52に直接描画レーザ光Lが入射する場合より、映像100を視認し易い。表示スクリーン51は、入射した描画レーザ光Lの一部を観察者の方向に指向性を持って反射するようにしてもよい。観察者の方向に限定的に、映像100を視認し易くできる。
(第4実施形態)
図8は、第4実施形態に係る描画システムの概略構成を示す側面図である。図8に示した描画システム1Dは、映像表示部50Aの代わりに映像表示部50Bを備える点および偏光フィルタF1の代わりに第2調光フィルム(第2調光部材)F3を備える点で、第3実施形態に係る描画システム1Cと主に相違する。この相違点を中心にして第4実施形態に係る描画システム1Dを説明する。
描画システム1Dは、描画モジュールM1と、映像表示部50Bと、第2調光フィルムF3とを備える。描画システム1Dは、描画モジュールM1を制御する制御装置40Bを備えてもよい。以下では、断らない限り、制御装置40Bを備えた描画システム1Dを説明する。描画モジュールM1は、第1実施形態の場合と同様であるため説明を省略する。
映像表示部50Bは、表示スクリーン51の代わりに第1調光フィルム(第1調光部材)53を有する点で、映像表示部50Aと相違する。映像表示部50Bでは、透明部材52の前面52a上に第1調光フィルム53が設けられている。よって、第1調光フィルム53の前面(第1面)53aが映像表示部50Bの前面であり、透明部材52の背面52bが映像表示部50Bの背面である。
第1調光フィルム53は、透明度を制御可能なフィルムである。たとえば、第1調光フィルム53は、液晶を用いて構成される。第4実施形態において第1調光フィルム53は、第1調光フィルム53に印加される電圧によって透明度が制御される。第1調光フィルム53は、たとえば前面52aに貼合され得る。
以下、説明の便宜のため、第1調光フィルム53に電圧が印加されていない状態をOFF状態と称し、第1調光フィルム53に電圧が印加されている状態をON状態と称す。第4実施形態において、第1調光フィルム53のOFF状態は、第1調光フィルム53が半透明状態(たとえば、第2実施形態で説明した表示スクリーン51と同様の透明度を有する状態)である。第1調光フィルム53のON状態は、第1調光フィルム53が透明状態(たとえば、透明部材52と同様の透明度を有する状態)である。第1調光フィルム53は、映像100を表示可能な大きさを有する。
第2調光フィルムF3は、第1調光フィルム53と同様の調光フィルムである。第4実施形態において、第2調光フィルムF3のOFF状態は、第2調光フィルムF3が半透明状態(たとえば、第2実施形態で説明した表示スクリーン51と同様の透明度を有する状態)である。第2調光フィルムF3のON状態は、第2調光フィルムF3が透明状態(たとえば、透明部材52と同様の透明度を有する状態)である。第2調光フィルムF3は、たとえば、背面52bに貼合され得る。第2調光フィルムF3は、たとえば、透明部材52の厚さ方向からみて、前面53aに表示される映像100の大きさ以上の大きさを有する。
制御装置40Bは、第1実施形態の場合と同様に、外部から制御装置40Aに入力される映像入力信号に応じて、描画レーザ光Lが映像を描画するように、光出力部10Aおよび走査部20を制御する。制御装置40Bは、更に、第1調光フィルム53の透明度も制御する。
制御装置40Bの一例は、図9に示したよう、第1実施形態の場合と同様に、信号入力部41、信号解析部42、走査制御部43、光源制御部44および記憶部45を有する。信号入力部41、信号解析部42、走査制御部43、光源制御部44および記憶部45の機能は、制御装置40Aの場合と同様であるため説明を省略する。
制御装置40Bは、調光フィルム制御部46を更に有する。調光フィルム制御部46は、第1調光フィルム53および第2調光フィルムF3の透明度を制御する(第4実施形態では、ON/OFF状態の制御に相当)。
具体的には、描画レーザ光Lを描画モジュールM1から出力していない状態、すなわち、映像100を描画しない状態では、調光フィルム制御部46は、第1調光フィルム53および第2調光フィルムF3をON状態にセットする。一方、描画レーザ光Lを描画モジュールM1から出力する状態、すなわち、映像100を描画する状態では、調光フィルム制御部46は、第1調光フィルム53および第2調光フィルムF3をOFF状態にセットする。
描画システム1Dでは、第3実施形態の場合と同様にして描画レーザ光Lによって、第1調光フィルム53の前面53aに映像100が描画される。第1調光フィルム53および第2調光フィルムF3は、映像100が描画される場合、OFF状態である。すなわち第1調光フィルム53および第2調光フィルムF3は、半透明(たとえば、第2実施形態で説明した表示スクリーン51と同様の透明度)である。そのため、第1調光フィルム53に入射した描画レーザ光Lの一部は拡散または散乱され映像100を表示する一方、第1調光フィルム53に入射した描画レーザ光Lの残部は第1調光フィルム53および透明部材52を通過する。透明部材52の背面52b上には、第2調光フィルムF3が設けられている。映像100が表示される場合には、第2調光フィルムF3は、上記のようにOFF状態であり半透明である。したがって、第1調光フィルム53および透明部材52を通過した描画レーザ光Lは、第2調光フィルムF3で更に拡散または散乱される。これにより、透明部材52を通過した描画レーザ光Lは、第2調光フィルムF3によって遮蔽される。
したがって、描画システム1Dは、少なくとも描画システム1Cと同様の作用効果を有し得る。たとえば、描画システム1Dでは、前面53aに映像100を描画する際には、描画システム1Dの後方(遮蔽部材からみて映像表示部と反対側)への不要な描画レーザ光Lの抜けを抑制できる。
映像100を表示する際、第1調光フィルム53および第2調光フィルムF3は、上記のように半透明である。そのため、第1調光フィルム53によって描画レーザ光Lが乱反射されることで後方散乱が生じても、描画システム1Dでは、第2調光フィルムF3によって、第2調光フィルムF3側から映像100が視認され難い。
描画レーザ光Lによって映像100を描画しない状態では、第1調光フィルム53および第2調光フィルムF3はON状態であり、透明である。そのため、描画レーザ光Lによって映像100を描画しない状態では、観察者は、第1調光フィルム53の前面53a側から背景を明瞭に視認可能である。
第4実施形態において、第1調光フィルム53および第2調光フィルムF3がOFF状態におけるそれらの透明度は異なっていてもよい。たとえば、第2調光フィルムF3のOFF状態における透明度は、第1調光フィルム53のOFF状態における透明度より低くてもよい。
(第5実施形態)
図10は、第5実施形態に係る描画システムの概略構成を示す側面図である。図10に示した描画システム1Eは、第2調光フィルムF3上に波長カットフィルタF4を更に備える点で、主に第4実施形態に係る描画システム1Dと相違する。この相違点を中心にして第5実施形態に係る描画システムを説明する。
描画システム1Eは、描画モジュールM1と、映像表示部50Bと、第2調光フィルムF3と、波長カットフィルタF4とを備える。描画システム1Dは、描画モジュールM1を制御する制御装置40Bを備えてもよい。以下では、断らない限り、制御装置40Bを備えた描画システム1Eを説明する。
描画モジュールM1、映像表示部50B、第2調光フィルムF3および制御装置40Bは、第4実施形態の場合と同様であるため説明を省略する。
波長カットフィルタF4は、第2調光フィルムF3に貼合され得る。波長カットフィルタF4は、光出力部から出力可能な赤色レーザ光、緑色レーザ光および青色レーザ光のうちの所定の色のレーザ光をカットする波長カットフィルタ(或いは吸収フィルタ)である。以下、波長カットフィルタF4が、赤色レーザ光をカットするフィルタである場合(すなわち、上記所定の色が赤色である場合)を説明する。
描画システム1Eでは、映像100の表示方法として、以下の2つの形態を実現可能である。
(第1表示形態)
第1表示形態では、光源部11Aから出力可能な全ての色(赤色、緑色、および青色)のレーザ光を使用して映像100を描画する。
(第2表示形態)
第2表示形態では、波長カットフィルタF4でカットされる色(第5実施形態では赤色)のレーザ光のみを用いて映像100を描画する。
まず、第1表示形態を説明する。この場合、描画システム1Eは、波長カットフィルタF4を有する点以外は、描画システム1Dと同様の構成を有する。そのため、描画システム1Eは、描画システム1Dと少なくとも同様の作用効果を有する。たとえば、描画システム1Dでは、前面52aに映像100を描画する際には、描画システム1Dの後方(遮蔽部材からみて映像表示部と反対側)への不要な描画レーザ光Lの抜けを抑制できる。
次に、第2表示形態を説明する。この場合、制御装置40Bの調光フィルム制御部46は、映像100を描画する場合でも、第1調光フィルム53および第2調光フィルムF3をON状態、すなわち、透明状態にセットする。
第2表示形態においては、赤色レーザ光のみを含む描画レーザ光Lによって映像100を描画する。映像100を表示する場合、第1調光フィルム53は透明状態であるため、映像表示部50B全体が透明部材として機能する。そのため、第1実施形態の場合と同様に、描画レーザ光Lによって映像100が描画される一方、たとえば第1調光フィルム53の前面53aで反射されなかった描画レーザ光Lは、映像表示部50Bを通過する。映像表示部50Bの背面(透明部材52の背面52b)側には、波長カットフィルタF4が配置されているので、映像表示部50Bを抜けた描画レーザ光Lは、波長カットフィルタF4で遮蔽される。そのため、第2表示形態でも、第4実施形態(或いは第1実施形態)と少なくとも同様の作用効果を有する。たとえば、前面52aに映像100を描画する際には、描画システム1Eの後方(遮蔽部材からみて映像表示部と反対側)への不要な描画レーザ光Lの抜けを抑制できる。更に、観察者は、第1調光フィルム53の前面53a側から背景を視認できる。
第2表示形態では、映像100を表示する際、第1調光フィルム53及び第2調光フィルムF3が透明状態であり且つ描画レーザ光Lをカットするために設けられたフィルタは波長カットフィルタF4のみである。したがって、映像100を表示している場合であっても、観察者は、背景を視認し易い。そのため、たとえば、拡張現実のように、背景に映像100を重畳することが可能である。
波長カットフィルタF4が、赤色レーザ光のみをカットするフィルタである場合、映像100を表示しない場合において、背景をより視認し易い。これは、人に視感度が緑色の帯域により反応しやすく、緑色の波長帯の光は、波長カットフィルタF4を透過するからである。
波長カットフィルタF4は、たとえば、透明部材52と第2調光フィルムF3の間に配置されていてもよい。第2調光フィルムF3と波長カットフィルタF4との間には隙間が生じていてもよい。
以上、本開示による描画システムの種々の実施形態を説明したが、本開示による描画システムは、例示した種々の実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。
たとえば、第1実施形態で使用した偏光フィルタF1および第3,第4実施形態で使用した第2調光フィルムF3の代わりに第2実施形態で説明した波長カット部F2を使用してもよい。波長カット部F2は、描画レーザ光Lの偏光状態に依存せずに、描画レーザ光Lをカット(たとえば吸収)できる。そのため、描画システムの後方への不要なレーザ光抜けを一層抑制可能である。
遮蔽部材として偏光フィルタF1を使用しない形態では、直線偏光の描画レーザ光を出力する描画モジュールM1の代わりに、第2実施形態で説明した描画モジュールM2のように、非直線偏光の描画レーザ光Lを出力する描画モジュールM2を使用してもよい。
描画レーザ光は、赤色、緑色および青色のうち最大2色のレーザ光が合波されたレーザ光でもよい。たとえば、赤色および緑色で映像を表示する場合には、描画レーザ光は、赤色レーザ光および緑色レーザ光が合波されたレーザ光であればよい。具体的には、光出力部は、赤色レーザ光を出力する少なくとも一つの光源と、緑色レーザ光を出力する少なくとも一つの光源と、赤色レーザ光および緑色レーザ光を合波する合波部と走査部とを有する。赤色、緑色および青色のうち赤色および緑色以外の他の2色の組み合わせの場合も同様である。
描画レーザ光が、赤色、緑色および青色のうち最大2色のレーザ光が合波されたレーザ光である場合、赤色、緑色および青色のうち映像の描画に使用されない色を有するレーザ光については、遮蔽部材で遮蔽する必要がない。そのため、描画に使用されない色を有するレーザ光に対して高い透過率を有する遮蔽部材を使用できる。その結果、背景をより視認し易い。映像を1色(たとえば、赤色、緑色または青色)で表示する場合も同様である。
映像をたとえば赤色のみで表示する場合、描画レーザ光は赤色レーザ光である。この形態では、光出力部は、赤色レーザ光を出力する光源と、走査部とを少なくとも有する。光出力部が、赤色レーザ光を出力する光源を2つ以上有する場合、光出力部は、合波部を有する。映像を緑色のみまたは青色のみで表示する場合も同様である。
映像を赤色のみで表示する場合、赤色レーザ光(描画レーザ光)としては、発振波長が、たとえば645nm〜660nmである赤色レーザ光を使用してもよい。この場合、第1実施形態で例示した赤色、緑色および青色の波長帯に対する透過率が高い遮蔽部材を使用できる。その結果、背景をより視認し易い。
光出力部が有する光源(レーザ光源)の数は、3個または5個に限定されない。1つ、2つまたは4つでもよい。更に、6個以上の光源を使用してもよい。
映像表示部は、透明部材を有しなくてもよい。たとえば、第2実施形態における表示スクリーン51、第4実施形態および第5実施形態における第1調光フィルム53等が映像表示部でもよい。この場合、表示スクリーン51、第1調光フィルム53等の背面(第2面)側に遮蔽部材が配置されればよい。或いは、映像表示部が、表示スクリーン51または第1調光フィルム53を有する場合、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、表示スクリーン51または第1調光フィルム53と、透明部材との間に遮蔽部材が配置されてもよい。
第1調光部材および第2調光部材は、透明度を制御可能に構成されていれば、フィルム状の部材でなくてもよい。
遮蔽部材と、映像表示部との間に隙間が生じていてもよい。映像表示部が、透明部材とともに、表示スクリーン、第1調光部材などを有する場合、表示スクリーン、第1調光部材などと、透明部材との間には隙間が生じていてもよい。
以上説明した種々の実施形態および変形例は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わされてもよい。