JP2021143284A - アクリル系熱可塑性樹脂及びその製造方法、樹脂組成物、並びにフィルム - Google Patents

アクリル系熱可塑性樹脂及びその製造方法、樹脂組成物、並びにフィルム Download PDF

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Abstract

【課題】好ましい耐熱性が得られ、かつ所望の光学特性が得られるアクリル系熱可塑性樹脂及びその製造方法、樹脂組成物、並びにフィルムを提供すること。【解決手段】メタクリル酸エステル単位と、環状イミド単位と、を含み、1H−NMRスペクトルにおける0.70〜0.95ppmの領域で観測されるシグナルの面積(rr)と、0.95〜1.10ppmの領域で観測されるシグナルの面積(mr)との面積比であるrr/mrが1.15以上である、アクリル系熱可塑性樹脂。上記により、樹脂組成物の好ましい耐熱性が得られると共に、配向複屈折等の光学特性の調整が容易になる。【選択図】図1

Description

本発明は、アクリル系熱可塑性樹脂及びその製造方法、樹脂組成物、並びにフィルムに関する。
アクリル系熱可塑性樹脂は、高い光線透過率を有するなど、光学特性に優れることから、フィルム、光学レンズ、プリズム、ミラー、光ディスク、液晶ディスプレイ用シート、導光板等の光学用途に広く用いられている。また、アクリル系熱可塑性樹脂は、機械的強度、成形加工性、外観、表面硬度等にも優れており、自動車部品、家電製品等の各種工業製品、及び建築材における透明材料としても広く使用されている。
光学特性及び耐熱性に優れたアクリル系熱可塑性樹脂として、イミド環等の環構造を含むものが知られている。環構造を含むアクリル系熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度が高く優れた耐熱性が得られる(例えば、特許文献1参照)。
特開2017−061601号公報
特許文献1には、主鎖にイミド環構造を有するグルタルイミド樹脂及びその製造方法に関する技術が開示されている。具体的には、イミド環構造を導入するとともに、カルボン酸基及び/又は酸無水物基を有するアクリル系重合体をエステル化させることで、湿熱下での耐久性が向上する、とされている。しかし、特許文献1に開示された技術では、アクリル系樹脂の耐熱性を向上させるためにイミド化率を上昇させると、所望の光学特性が得られない場合があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、好ましい耐熱性が得られ、かつ所望の光学特性が得られるアクリル系熱可塑性樹脂及びその製造方法、樹脂組成物、並びにフィルムを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、アクリル系熱可塑性樹脂の立体規則性が所定の条件を満たす場合に、アクリル系熱可塑性樹脂の好ましい耐熱性と所望の光学特性とが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、以下に関する。
(I)メタクリル酸エステル単位と、環状イミド単位と、を含み、H−NMRスペクトルにおける0.70〜0.95ppmの領域で観測されるシグナルの面積(rr)と、0.95〜1.10ppmの領域で観測されるシグナルの面積(mr)との面積比であるrr/mrが1.15以上である、アクリル系熱可塑性樹脂。
(II)前記メタクリル酸エステル単位は、メタクリル酸アルキルエステル単位である、(I)に記載のアクリル系熱可塑性樹脂。
(III)前記メタクリル酸エステル単位は、メタクリル酸メチル単位である、(II)に記載のアクリル系熱可塑性樹脂。
(IV)前記環状イミド単位は、下記式(1)で示される構造を含む、(I)〜(III)のいずれかに記載のアクリル系熱可塑性樹脂。
Figure 2021143284

(式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Rは、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は炭素数5〜15のアリール基を示す。)
(V)前記rr/mrが1.3以上である、(I)〜(IV)のいずれかに記載のアクリル系熱可塑性樹脂。
(VI)ガラス転移温度が133℃以上である、(I)〜(V)のいずれかに記載のアクリル系熱可塑性樹脂。
(VII)(I)〜(VI)のいずれかに記載のアクリル系熱可塑性樹脂を含む、樹脂組成物。
(VIII)(I)〜(VI)のいずれかに記載のアクリル系熱可塑性樹脂を含む、フィルム。
(IX)配向複屈折の値が0.2×10−3以下である、(VIII)に記載のフィルム。
(X)イミド化率(%)/配向複屈折が1.5×10〜3.0×10である、(VIII)に記載のフィルム。
(XI)三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が55%以上のポリメタクリル酸エステルをイミド化するイミド化工程を含む、(I)〜(VI)のいずれかに記載のアクリル系熱可塑性樹脂の製造方法。
本発明によれば、好ましい耐熱性が得られ、かつ所望の光学特性が得られるアクリル系熱可塑性樹脂及びその製造方法、樹脂組成物、並びにフィルムを提供できる。
実施例及び比較例におけるイミド化率とガラス転移温度との関係を示すグラフである。 実施例及び比較例におけるイミド化率と配向複屈折との関係を示すグラフである。
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されない。
[アクリル系熱可塑性樹脂]
本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂は、メタクリル酸エステル単位と、環状イミド単位と、を含む。
(メタクリル酸エステル単位)
メタクリル酸エステル単位は、メタクリル酸エステル単量体に由来する構造単位であり、例えばメタクリル酸エステル単量体を重合又は共重合することで得られる。メタクリル酸エステル単量体としては、例えば、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、架橋環式メタクリレート、芳香族メタクリレート等が挙げられる。
メタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸へプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ヘキサデシル、メタクリル酸ヘプタデシル、メタクリル酸オクタデシル等が挙げられる。
メタクリル酸シクロアルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。
架橋環式メタクリレートとしては、例えば、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ジシクロペンタニル等が挙げられる。
芳香族メタクリレートとしては、例えば、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸o−トリル、メタクリル酸m−トリル、メタクリル酸p−トリル、メタクリル酸2,3−キシリル、メタクリル酸2,4−キシリル、メタクリル酸2,5−キシリル、メタクリル酸2,6−キシリル、メタクリル酸3,4−キシリル、メタクリル酸3,5−キシリル、メタクリル酸1−ナフチル、メタクリル酸2−ナフチル、メタクリル酸ビナフチル、メタクリル酸アントリル等のメタクリル酸アリールエステル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アラルキルエステル、メタクリル酸フェノキシエチル等のメタクリル酸フェノキシアルキル等が挙げられる。
メタクリル酸エステル単位を構成するメタクリル酸エステルは、ハロゲン基(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、グリシジル基等の置換基を有していてもよい。このような置換基を有するメタクリル酸エステルとしては、上記例示のメタクリル酸エステルに置換基が置換したメタクリル酸エステルであればよく、例えば、ハロゲン基を有するメタクリル酸クロロメチル等のメタクリル酸ハロアルキルエステル、アミノ基を有するメタクリル酸ジメチルアミノエチル等、ヒドロキシ基を有するメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等、アルコキシ基を有するメタクリル酸2−メトキシエチル等、グリシジル基を有するメタクリル酸グリシジル等が挙げられる。
メタクリル酸エステル単位を構成するメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル等の炭素数が1〜3のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルがより好ましい。特に、耐熱性、透明性の点から、メタクリル酸メチルが最も好ましい。
メタクリル酸エステル単位を構成するメタクリル酸エステルは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。メタクリル酸エステル単位を構成するメタクリル酸メチル単位は、メタクリル酸エステル単位を構成する全単位中に50重量%以上含まれることが好ましく、70重量%以上含まれることがより好ましく、90重量%以上含まれることが更に好ましい。メタクリル酸エステル単位を構成するメタクリル酸エステルとして、メタクリル酸メチルを単独で用いることが最も好ましい。
アクリル系熱可塑性樹脂中におけるメタクリル酸エステル単位の割合は、後述するイミド化率によって異なるが、低位相差の観点では90.0重量%〜99.0重量%であることが好ましく、92.0重量%〜98.5重量%がより好ましく、94.0重量%〜98.0重量%であることが特に好ましい。生産性の観点では40.0重量%以上であることが好ましい。
(環状イミド単位)
環状イミド単位は、環構造中にイミド基を有する構造単位である。アクリル系熱可塑性樹脂が環状イミド単位を含むことにより、アクリル系熱可塑性樹脂の耐熱性、硬度、強度、耐溶剤性、表面硬度、接着性、ガスバリア性、光学特性等を向上できる。環状イミド単位を含む環状イミド単位としては、例えば、マレイミド単位、グルタルイミド単位等が挙げられる。
マレイミド単位は、マレイミド構造を含む単量体を重合又は共重合することにより形成される。マレイミド単位を構成する単量体としては、特に限定されないが、例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−アルキル置換マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルフェニルマレイミド、N−エチルフェニルマレイミド、N−ブチルフェニルマレイミド、N−ジメチルフェニルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、N−メトキシフェニルマレイミド、N−4−ジフェニルマレイミド、N−2−クロロフェニルマレイミド、N−4−ブロモフェニルマレイミド、N−1−ナフチルマレイミド等のN−アリール基置換マレイミドが挙げられる。
グルタルイミド単位は、例えば上記メタクリル酸エステル単位における隣接するカルボニル基をイミド化剤によりイミド化することで形成される。上記以外に、上記メタクリル酸エステル単位がアミド基を有する場合、隣接するアミド基とエステル基とを環化縮合する方法でグルタルイミド単位を形成してもよい。本実施形態において、環状イミド単位は、グルタルイミド単位であることが好ましい。グルタルイミド単位は、例えば下記式(1)で表される。
Figure 2021143284
上記式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Rは、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は炭素数5〜15のアリール基を示す。
上記式(1)のR及びRにおいて、炭素数1〜8のアルキル基としては、特に制限されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、イソへキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。アクリル系熱可塑性樹脂の好ましい耐熱性及び光学特性を得る観点から、Rはメチル基であることが好ましく、Rは水素原子であることが好ましい。
上記式(1)のRにおいて、炭素数1〜18のアルキル基としては、特に制限されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、イソへキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。炭素数3〜12のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数5〜15のアリール基としては、例えば、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、2,6−キシリル基、3,4−キシリル基、3,5−キシリル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。アクリル系熱可塑性樹脂の好ましい耐熱性及び光学特性を得る観点から、Rは炭素数1〜18のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
グルタルイミド単位は、上記式(1)におけるR、R及びRが共通する単一のグルタルイミド単位から構成されていてもよい。上記以外に、グルタルイミド単位は、R、R及びRのうち少なくともいずれかが異なる複数の種類のグルタルイミド単位から構成されていてもよい。
アクリル系熱可塑性樹脂中における環状イミド単位の割合は低位相差の観点では2.5%〜5%であることが好ましい。耐熱性の観点ではイミド化率は特に限定されず、イミド化率が高い方が好ましいが、生産性の観点から60%以下であることが好ましい。上記イミド化率は、例えばNMR法により算出される。
本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂は、アクリル酸エステル単位を有していてもよい。アクリル酸エステル単位としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシルなども併用してもよいが、これらを併用する場合はアクリル酸エステル単位が1重量%未満である。アクリル酸メチル単位が0.5重量%未満であることがより好ましく、0.3重量%未満であることが更に好ましい。
本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂は、上記メタクリル酸エステル単位、環状イミド単位、アクリル酸エステル単位以外の、他の構造単位を有していてもよい。例えば、アクリロニトリル単位、スチレン等の芳香族ビニル単位、ビニルピリジンなどの複素環含有芳香族ビニル単位、無水マレイン酸単位等を有していてもよい。具体的には、上記構造単位は、本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂中に直接共重合されていてもよいし、グラフト共重合されていてもよい。アクリル系熱可塑性樹脂中における上記他の構造単位の割合は、40質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂の立体規則性は、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)及びアタクティシティ(mr)によって示される。シンジオタクティシティ(rr)は、連続する3つの構造単位の連鎖である三連子(triad)が有する2つの連鎖(diad)が共にラセモ(rr)である割合である。同様に、アタクティシティ(mr)は、三連子が有する2つの連鎖(diad)がメソ及びラセモ(mr)である割合である。なお、ポリマー分子中の構造単位の連鎖において立体配置が同じものをメソ(meso)、逆のものをラセモ(racemo)と称し、それぞれm、rと表記する。
アクリル系熱可塑性樹脂のシンジオタクティシティ(rr)比率及びアタクティシティ(mr)比率は、H−NMRスペクトルを測定し、対応するピーク面積を算出することにより得られる。本実施形態において、シンジオタクティシティ(rr)に対応する化学シフトは0.70〜0.95ppm、アタクティシティ(mr)に対応する化学シフトは0.95〜1.10ppmの範囲内で観測される。上記範囲内で観測されるピークの面積比により、シンジオタクティシティ(rr)とアタクティシティ(mr)との比であるrr/mrが算出される。H−NMRスペクトルの測定は、市販のNMR測定装置を用いて行うことができ、例えばBRUKER AvanceIII(400MHz)を用いて行うことができる。測定条件は例えば以下の通りである。
積算回数:32回
測定温度:23℃
溶媒:重水素化クロロホルム
本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂は、H−NMRスペクトルにおける0.70〜0.95ppmの領域で観測されるシグナルの面積(rr)と、0.95〜1.10ppmの領域で観測されるシグナルの面積(mr)との面積比であるrr/mrが1.15以上である。rr/mrが1.20以上であることが好ましく、1.25以上であることがより好ましく、1.30以上であることが特に好ましい。上記により、アクリル系熱可塑性樹脂の耐熱性が向上するため好ましい。rr/mrの上限は特に限定されないが、生産性の観点から3.5以下が好ましく、3.2以下がより好ましい。
本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂のガラス転移温度(以下、「Tg」と記載する場合がある)は、133℃以上であることが好ましい。Tgは、特に制限されないが、例えば示差走査熱量測定(DSC)により測定できる。
アクリル系熱可塑性樹脂のTgは耐熱性の観点から高い方が好ましく、133℃以上であることが好ましく、135℃以上であることがより好ましく、137℃以上であることが更に好ましい。
本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂の分子量分布、即ち数平均分子量に対する重量平均分子量の比であるMw/Mnは、1.0〜1.8であることが好ましい。Mw/Mnを1.8以下とすることで、アクリル系熱可塑性樹脂の粘度が低くなり取扱性が良好になる。また、アクリル系熱可塑性樹脂の強度を高めることができる。上記観点から、Mw/Mnは1.0〜1.4であることが好ましい。
本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂は、イミド化率が低い場合であっても、従来のものと比較してTgを高くすることができる。イミド化率とは、全カルボニル基中のイミドカルボニルの占める割合を指し、例えばアクリル系熱可塑性樹脂のH−NMRスペクトル又はIRスペクトルを測定することで得られる値である。具体的には、エステルカルボニル基に帰属されるピーク面積と、イミドカルボニル基に帰属されるピーク面積の比により算出される。イミド化率は、H−NMRスペクトルの測定により得ることが好ましい。
本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂は、例えば、イミド化率を5%以下とした場合であっても、好ましいTgが得られる。このため、イミド化に要するコストを低減できる。また、樹脂のイミド化率を上昇させた場合、成形体の黄色度(YI)が上昇することが知られている。黄色度(YI)が上昇することは、アクリル系熱可塑性樹脂を液晶ディスプレイ用等の光学用途に用いる場合に好ましくない。本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂は、低いイミド化率で好ましいTgが得られるため、成形体の黄色度(YI)を低くすることができる。
また、本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂は、イミド化率を変化させた場合のTgの変化率が従来よりも低い。このため、アクリル系熱可塑性樹脂のTgを所定の範囲内に調整しやすい。
本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂は、イミド化率に対し、得られる成形体の光学特性、例えば後述する配向複屈折の変化率が従来のものと比較して小さい。このため、本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂は、耐熱性を向上させる等の目的でイミド化率を変化させた場合に、所望の光学特性を得やすい利点がある。例えば、アクリル系熱可塑性樹脂を、偏光子保護フィルム等の光学用途に用いる場合、配向複屈折の値が0.2×10−3以下であることが好ましく、0.1×10−3以下であることがより好ましく、0.01×10−3以下であることが特に好ましい。このような場合に、本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂は、イミド化率を変化させることで、形成されるフィルムの配向複屈折を好ましい範囲に調整しやすい。従って、耐熱性と好ましい光学特性とを両立させたフィルムを形成できる。
[アクリル系熱可塑性樹脂の製造方法]
本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂の製造方法は、特に制限されないが、例えばメタクリル酸エステル単位を有するポリメタクリル酸エステルを溶融する加熱溶融工程と、上記ポリメタクリル酸エステルをイミド化剤で処理するイミド化工程と、を含む溶融混錬法を用いることができる。上記以外に、イミド化に対して不活性な溶媒にポリメタクリル酸エステルを溶解させ、得られた溶液にイミド化剤を添加して反応させるバッチ式反応法等を用いてもよい。以下、溶解混錬法を用いたアクリル系熱可塑性樹脂の製造方法について説明する。
加熱溶融工程で用いられるポリメタクリル酸エステルは、上記メタクリル酸エステル単位を含む単量体の重合体又は共重合体である。このようなポリメタクリル酸エステルとしては、例えば、ポリメタクリル酸メチル重合体(PMMA)が挙げられる。上記ポリメタクリル酸エステルにおける、メタクリル酸エステル単位のシンジオタクティシティ(rr)は55%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましい。
加熱溶融工程で用いられるポリメタクリル酸エステルは、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステルの単独重合体でもよいし、例えば、メタクリル酸メチルとそれ以外の単量体との共重合体でもよい。上記それ以外の単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、オレフィン、共役ジエン、芳香族ビニル化合物等が挙げられる。また、ポリメタクリル酸エステルは、必要に応じて、分子鎖中又は分子鎖末端に、ハロゲン基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、グリシジル基等の官能基を有していてもよい。
上記ポリメタクリル酸エステルの構造は、特に制限されず、ブロックポリマー等の線状ポリマーであってもよいし、コアシェルポリマー、分岐ポリマー、ラダーポリマー、架橋ポリマー等であってもよい。ポリメタクリル酸エステルの構造がブロックポリマーの場合、A−B型、A−B−C型、A−B−A型、及び上記以外のタイプのブロックポリマーの構造のうち、いずれであってもよい。ポリメタクリル酸エステルの構造がコアシェルポリマーの場合、単一層のコア及び単一層のシェルからなる構造であってもよいし、コア及びシェルの少なくともいずれかが多層の構造であってもよい。
上記ポリメタクリル酸エステルの製造方法としては、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、乳化重合法、乳化−懸濁重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法等を用いることができる。得られるアクリル系熱可塑性樹脂を光学用途に用いる場合、不純物が少ないとの観点から、塊状重合法、溶液重合法が特に好ましい。
加熱溶融工程における、ポリメタクリル酸エステルを溶融する方法としては、特に制限されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、固体状態のポリメタクリル酸エステルをフィーダー装置等で供給し、押出機内で加熱溶融する方法を用いることができる。フィーダー装置としては、特に制限されないが、定重量フィーダー、定容積フィーダー等が用いられる。押出機としては、単軸押出機、同方向噛合型二軸押出機、同方向非噛合型二軸押出機、異方向噛合型二軸押出機、異方向非噛合型二軸押出機、多軸押出機等各種押出機等が挙げられる。混錬、分散能力の観点から、各種二軸押出機を用いることが好ましく、同方向噛合型二軸押出機を用いることがより好ましい。
イミド化工程においては、例えば、上記加熱溶融工程により加熱溶融された溶融樹脂にイミド化剤を圧入して供給し、ポリメタクリル酸エステルのイミド化反応を行う反応押出法が用いられる。反応温度はイミド化反応を進行させ、かつ、過剰な熱履歴による樹脂の分解及び着色を防止する観点から、150〜400℃の範囲で行う。反応温度は180〜320℃が好ましく、200〜280℃がより好ましい。
イミド化剤の圧入圧力としては、特に制限されないが、イミド化反応を十分に進行させ、かつ酸化を抑制する観点から、4.5〜10MPaとすることが好ましく、5.5〜8MPaとすることがより好ましい。
イミド化工程における、ポリメタクリル酸エステルをイミド化するイミド化剤としては特に制限されないが、例えば、アンモニア又は一級アミンを用いることができる。一級アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、i−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン等のアルキルアミン、シクロヘキシルアミン等のシクロアルキルアミン、アニリン、ベンジルアミン、トルイジン、トリクロロアニリン等の芳香族アミン等が挙げられる。また、尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素、1,3−ジプロピル尿素等、加熱によりアンモニア又は第一級アミンを生成する尿素系化合物を用いることもできる。イミド化剤としては、コスト、物性の面から、アンモニア、メチルアミン、シクロヘキシルアミンを用いることが好ましく、メチルアミンを用いることがより好ましい。メチルアミンは常温で気体状態であるため、メタノール等の溶媒に溶解させた状態で使用してもよい。また、イミド化工程において、必要に応じて閉環促進剤を添加してもよい。
イミド化工程における、イミド化剤の添加割合を調整することにより、得られるアクリル系熱可塑性樹脂のイミド化率を調整できる。イミド化剤の添加量は、得られるアクリル系熱可塑性樹脂の用途に応じて適宜選択できる。イミド化率を上昇させると、Tgと共に、形成されるフィルムの位相差が上昇する。例えば、アクリル系熱可塑性樹脂を偏光子保護フィルム等の光学用途に用いる場合、面内位相差Rが5nm以下となるよう、イミド化剤の添加量を調整することが好ましい。
[樹脂組成物]
本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂に対し、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤からなる群から選ばれる、少なくとも1種を添加し、樹脂組成物とすることが好ましい。これにより、上記樹脂組成物の光劣化及び熱劣化を抑制できる。
紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、サリチレート系化合物、置換トリル系化合物、金属キレート系化合物等が挙げられる。
熱安定剤としては、特に限定されないが、例えば、リン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、ラクトン系化合物、チオエーテル化合物、ステアリン酸鉛、ステアリン酸バリウム、三塩基性硫酸鉛等が挙げられる。
光安定剤としては、特に限定されないが、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、トリス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)トリアジン−2,4,6−トリカルボキシレート等のような公知のヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。
本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂に対し、用途に応じて上記以外に従来公知の添加剤を添加して樹脂組成物としてもよい。例えば、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、収縮防止剤、ブルーライトカットを目的とした特定波長吸収剤もしくは特定波長吸収色素、位相差調整剤、着色剤、抗菌脱臭剤、蛍光増白剤、相溶化剤等を、本発明の目的を損なわない範囲で添加し、樹脂組成物としてもよい。上記は単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物は、アクリル系熱可塑性樹脂にその他の樹脂が混合されていてもよい。上記その他の樹脂としては、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂)、スチレン−無水マレイン酸共重合樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン−無水マレイン酸共重合樹脂(例えば電気化学工業製「レジスファイ」)、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
[フィルム]
本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂及びアクリル系熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物は、公知の方法によって成形することで、フィルムに成形できる。フィルムの成形方法は、特に制限されないが、例えば、Tダイ法、インフレーション法等の溶融押出成形法、溶液キャスト成形法、カレンダー法、プレス成形法等によって成形することができる。上記以外に、本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂を溶解可能な溶剤に溶解させた後、溶液流延法やスピンコート法を用いてフィルムに成形してもよい。
上記成形方法によって得られるフィルムを、偏光子保護フィルム、視野角補償フィルム、光拡散フィルム等の光学用途に用いる場合、フィルムを延伸して一軸又は二軸延伸フィルムとすることが好ましい。一軸又は二軸延伸フィルムとすることで、配向複屈折を調整でき、フィルムの位相差を小さくできると共に、機械的強度を向上できる。
延伸方法としては、従来公知の延伸方法が適用できる。例えば、自由幅一軸延伸、定幅一軸延伸等の一軸延伸、逐次二軸延伸、同時二軸延伸等の二軸延伸等を適用できる。延伸倍率については、1.5倍〜3.0倍であることが好ましく、1.8倍〜2.8倍であることがより好ましい。二軸延伸である場合はフィルムのMD方向、TD方向共に、延伸倍率を上記範囲内とすることが好ましい。これにより、延伸に伴うフィルムの機械的特性を充分に向上でき、かつ配向度が上がり過ぎないため好ましい。更に、フィルムを偏光子等に貼合した場合に、剥離強度が低下する可能性を低下させることができる。
延伸速度については、1.1倍/分以上で行うことが好ましく、5倍/分以上で行うことがより好ましい。また、100倍/分以下であることが好ましく、50倍/分以下であることがより好ましい。逐次二軸延伸の場合は、一段目の延伸速度と二段目の延伸速度が同じでも、異なっていてもよい。逐次二軸延伸において、通常、一段目の延伸は長手方向(MD方向)の延伸であり、二段目の延伸は幅方向(TD方向)の延伸である。
延伸温度は、特に限定されず、例えばアクリル系熱可塑性樹脂物のTgに対し+20℃とすることができる。延伸温度は、アクリル系熱可塑性樹脂物のTgに対し+5℃〜+30℃とすることが好ましい。
上記成形及び延伸されたフィルムは、高い耐熱性を有するため、ポリカーボネート等の他の有機層又は無機物により形成される導電層等の他の機能層との複層化を容易に行うことができる。
本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂を含むフィルムは、配向複屈折の値が0.2×10−3以下であることが好ましく、0.1×10−3以下であることがより好ましく、0.01×10−3以下であることが更に好ましい。配向複屈折(Δn)は、Δn=nx−ny=R/dで定義され、位相差計により測定することができる。面内位相差Rは、面内の屈折率が最大になる方向である面内遅相軸方向の屈折率をnx、面内遅相軸方向と面内で直交する方向である面内進相軸方向の屈折率をny、フィルムの厚みをdとしたときに、以下の式により算出される。
面内位相差R=(nx−ny)×d
配向複屈折Δn=R/d
面内位相差は、延伸フィルムに関しては、10nm以下であることが好ましく、6nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることが更に好ましい。
本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂を含むフィルムは、イミド化率(%)と配向複屈折との比であるイミド化率(%)/配向複屈折が、1.5×10〜3.0×10であることが好ましい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の記載に限定されるものではない。
<メタクリル酸エステル単位の立体規則性の測定>
実施例及び比較例のアクリル系熱可塑性樹脂の製造に用いるメタクリル酸エステル単位を含む原料樹脂の立体規則性について、H−NMR BRUKER AvanceIII(400MHz)を用い、重水素化クロロホルム中で測定を行った。rr(シンジオタクティシティ)及びmr(アタクティシティ)の比率を、rr(シンジオタクティシティ)を示す0.70〜0.95ppmの領域及び、mr(アタクティシティ)を示す0.95〜1.10ppmの領域でそれぞれ観測されるシグナルの面積比より求めた。実施例及び比較例のアクリル系熱可塑性樹脂の立体規則性についても、上記と同様の方法で測定及び算出した。結果を表1に示す。
<アクリル系熱可塑性樹脂の製造>
(実施例1)
原料樹脂としてシンジオタクティシティ(rr)が74.0%、アタクティシティ(mr)が24.0%のポリメタクリル酸メチル(原料樹脂A)を用い、押出機を用いて加熱溶融し、イミド化剤としてモノメチルアミンを用いてアクリル系熱可塑性樹脂を製造した。
押出機に関しては、直径が40mm、L/D(押出機の長さLと直径Dの比)が90の同方向噛合型二軸押出機を使用し、定重量フィーダー(クボタ(株)製)を用いて、押出機の原料供給口に原料樹脂を供給した。押出機における各ベントの減圧度は−0.095MPaとした。
押出機から吐出された樹脂(ストランド)は、水槽で冷却した後、ペレタイザでカッティングしペレットとした。ここで、押出機の樹脂吐出口の押出変動を見極めるために、押出機の吐出口に樹脂圧力計及び樹脂温度計を設けた。この際、押出機の最高温部の温度は280℃、スクリュー回転数は146rpm、原料樹脂供給量は73kg/時間、モノメチルアミンの添加量は原料樹脂100重量部に対して1.8重量部とした。モノメチルアミン圧入部圧力を8MPaになるようにスクリュー構成を設計した。
イミド化剤添加後、真空ベントで残存しているイミド化剤及び副生成物を脱揮したのち、ストランドダイから押し出し、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化することで、グルタミルイミド単位と、メタクリル酸エステル単位とを含む、実施例1のアクリル系熱可塑性樹脂を得た。
(実施例2)
原料供給量を30kg/時間へ変更し、モノメチルアミンの添加量を原料樹脂100重量部に対して7.6重量部とした以外は、上記実施例1と同様の条件及び方法で実施例2のアクリル系熱可塑性樹脂を得た。
(比較例1)
原料樹脂をrrが52.0%、mrが41.0%のポリメタクリル酸メチル(原料樹脂B)へ変更した以外は、上記実施例1と同様の条件及び方法で比較例1のアクリル系熱可塑性樹脂を得た。
(比較例2)
原料樹脂をrrが52.0%、mrが41.0%のポリメタクリル酸メチル(原料樹脂B)へ変更し、原料供給量を30kg/時間へ変更し、モノメチルアミンの添加量を原料樹脂100重量部に対して7.6重量部とした以外は、上記実施例1と同様の条件及び方法で比較例2のアクリル系熱可塑性樹脂を得た。
<Tgの測定>
実施例及び比較例のアクリル系熱可塑性樹脂のTg測定を、示差走査熱量分析装置(DSC)SSC−5(SHIMADZU製)を用いて行った。試料を一旦200℃まで25℃/分の速度で昇温した後10分間ホールドし、25℃/分の速度で50℃まで温度を下げる予備調整を経て、200℃まで20℃/分の昇温速度で200℃まで昇温する間の測定を行い、得られた階段状変化を示す曲線の始点、終点及び中間点からTgを求めた。結果を表1に示す。
<イミド化率の測定>
実施例及び比較例のアクリル系熱可塑性樹脂のイミド化率(%)を、H−NMR BRUKER AvanceIII(400MHz)を用いて測定した。3.5から3.8ppm付近のメタクリル酸メチルのO−CHプロトン由来のピークの面積Aと、3.0から3.3ppm付近のグルタルイミドのN−CHプロトン由来のピークの面積Bを算出し、次式によりイミド化率を求めた。
イミド化率(%)=B/(A+B)×100
<面内位相差(R)及び配向複屈折の測定>
実施例及び比較例のアクリル系熱可塑性樹脂を用い、80トン成形機(日精樹脂工業製)にて5cm×8cm×1.5mmのプレートを作成し、ガラス転移温度+20℃で長手方向に1軸2倍延伸して試験片を作製し、測定に用いた。
自動複屈折計(KOBRA−WR、王子計測機器(株)製)を用い、上記作製した実施例及び比較例の試験片を、波長590nm、入射角0°の条件で面内位相差を測定した。面内位相差は、以下の式により算出した。
(試験片の面内遅相軸方向の屈折率−面内進相軸方向の屈折率)×試験片厚み
面内位相差を試験片厚みで除して配向複屈折を算出した。結果を表1に示す。
Figure 2021143284
<イミド化率とTgとの関係>
図1は、上記実施例及び比較例のアクリル系熱可塑性樹脂のイミド化率とTgの関係を示すグラフである。なお、図1及び図2に示す「原料樹脂A」及び「原料樹脂B」は、それぞれ実施例及び比較例のアクリル系熱可塑性樹脂の原料であるポリメタクリル酸メチルを示す。図1のグラフより、実施例のアクリル系熱可塑性樹脂は、比較例のアクリル系熱可塑性樹脂と比較して、イミド化率が低い場合であってもTgを高くすることが可能である結果が示された。従って、実施例に係るアクリル系熱可塑性樹脂は、イミド化に要する原料コスト及び製造コストを低減できる。また、実施例のアクリル系熱可塑性樹脂は、比較例のアクリル系熱可塑性樹脂と比較して、イミド化率を変化させた場合であってもTgの変化率が小さい結果が示された。このため、実施例のアクリル系熱可塑性樹脂は、イミド化率を変化させてTgを調整する際に、所定のTgに調整しやすい。
<イミド化率と配向複屈折との関係>
図2は、上記実施例及び比較例のアクリル系熱可塑性樹脂成形体のイミド化率と配向複屈折との関係を示すグラフである。図2のグラフより、実施例のアクリル系熱可塑性樹脂は、比較例のアクリル系熱可塑性樹脂と比較して、イミド化率を変化させた場合の配向複屈折の変化率が低い結果が示された。このため、所定の配向複屈折、例えば0.2×10−3以下の配向複屈折を有するアクリル系熱可塑性樹脂成形体を作製したい場合に、実施例のアクリル系熱可塑性樹脂は、所定の配向複屈折に調整しやすい。

Claims (11)

  1. メタクリル酸エステル単位と、環状イミド単位と、を含み、
    H−NMRスペクトルにおける0.70〜0.95ppmの領域で観測されるシグナルの面積(rr)と、0.95〜1.10ppmの領域で観測されるシグナルの面積(mr)との面積比であるrr/mrが1.15以上である、アクリル系熱可塑性樹脂。
  2. 前記メタクリル酸エステル単位は、メタクリル酸アルキルエステル単位である、請求項1に記載のアクリル系熱可塑性樹脂。
  3. 前記メタクリル酸エステル単位は、メタクリル酸メチル単位である、請求項2に記載のアクリル系熱可塑性樹脂。
  4. 前記環状イミド単位は、下記式(1)で示される構造を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のアクリル系熱可塑性樹脂。
    Figure 2021143284
    (式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Rは、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は炭素数5〜15のアリール基を示す。)
  5. 前記rr/mrが1.3以上である、請求項1〜4のいずれかに記載のアクリル系熱可塑性樹脂。
  6. ガラス転移温度が133℃以上である、請求項1〜5のいずれかに記載のアクリル系熱可塑性樹脂。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のアクリル系熱可塑性樹脂を含む、樹脂組成物。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載のアクリル系熱可塑性樹脂を含む、フィルム。
  9. 配向複屈折の値が0.2×10−3以下である、請求項8に記載のフィルム。
  10. イミド化率(%)/配向複屈折が1.5×10〜3.0×10である、請求項8に記載のフィルム。
  11. 三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が55%以上のポリメタクリル酸エステルをイミド化するイミド化工程を含む、請求項1〜6のいずれかに記載のアクリル系熱可塑性樹脂の製造方法。
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