JP2021138560A - エッチングレジスト組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】基板に対する密着性に優れ、エッチング液における長時間の浸漬にも優れた耐薬品性を示すエッチングレジスト組成物を提供する。【解決手段】(A1)アスファルト、(A2)塩素化ポリプロピレンおよび(A3)塩素化ゴムのいずれか少なくとも一種と、(B)環化ゴムと、(C)塩素化パラフィンと、(D)有機溶剤と、を含み、無機フィラーを含まないか、又は含んだとしても、無機フィラーの含有率が組成物中の固形分の全量あたり10質量%以下であることを特徴とするエッチングレジスト組成物が得られた。【選択図】なし

Description

本発明は、エッチングレジスト組成物、特にガラス基板に対する密着性に優れ、かつ容易に除去可能なエッチングレジストを形成することができる熱乾燥型エッチングレジスト組成物に関する。
ガラスおよびセラミックなどの表面等の形状加工には、従来よりエッチング技術が用いられている。エッチングとは、フッ化水素酸や、フッ化水素酸と強酸との混合物などのエッチング液で、ガラスやセラミック等の材料(被加工基板または基板ともいう)を腐食させることにより、基板の表面や端面などの一部を所望の形状に加工する技術である。エッチング処理では、腐食から保護すべき基板の部分に、エッチングレジスト組成物を印刷等により施し、これを硬化させたエッチングレジスト(レジストまたは硬化物ともいう)が施される。エッチングレジスト組成物を基板に塗布する工程は、簡便なスクリーン印刷を用いて行われるが、スクリーン印刷によると比較的薄膜層として得られることが多く、エッチング液がレジストを浸透して、基板のエッチング精度に影響を与えることがある。
このような状況下、エッチング液に対する耐性が良好な、アスファルト、塩素化ポリプロピレン、塩素化ゴムと、環化ゴム、無機フィラーと、有機溶剤とを含有するエッチングレジスト組成物に関する発明が提案されている(特許文献1参照)。このような提案にかかるエッチングレジスト組成物によれば、エッチングレジストの強酸に対する耐性が向上し、かつ基板に対するエッチングレジストとの密着性も高いことから、その膜厚に関わらず、精度に優れたエッチングを行うことが可能である。
特開2019−172971号
しかしながら、特許文献1に記載のエッチングレジスト組成物では、無機フィラーが比較的多く含まれており、剥離後に残渣が残り、一方、所定量の無機フィラーを含まないと十分な密着性が得られず、フッ酸耐性が低下することがあった。これを解決するためには、より高温(180℃)での乾燥を実施すると所定量の無機フィラーを含まなくても密着性は良好となるが、エッチングレジストが基板に焼き付いてしまい、エッチング後の基板からのエッチングレジスト除去の際にレジスト残渣が発生する。
そこで、本発明の目的は、ガラス基板に対する密着性に優れ、かつ容易に除去可能なエッチングレジストを形成することのできるエッチングレジスト組成物を提供することにある。
本発明者は、鋭意研究の結果、本発明の上記目的が、(A1)アスファルト、(A2)塩素化ポリプロピレンおよび(A3)塩素化ゴムのいずれか少なくとも一種と、(B)環化ゴムと、(C)塩素化パラフィンと、(D)有機溶剤と、を含み、無機フィラーを含まないか、又は含んだとしても無機フィラーの含有率が、エッチングレジスト組成物中の固形分の全質量あたり10質量%以下であることを特徴とするエッチングレジスト組成物により達成されることを見出した。
本発明のエッチングレジスト組成物は、(B)環化ゴムを、(A1)アスファルト、(A2)塩素化ポリプロピレンおよび(A3)塩素化ゴムのいずれか少なくとも一種の100質量部に対して15から50質量部含むことが好ましい。
また、本発明のエッチングレジスト組成物は、ガラスのエッチングに用いられることが好ましい。
本発明のエッチングレジスト組成物は、基板への密着性に優れ、フッ酸、水酸化ナトリウム等の強塩基を含むアルカリ水溶液又は硝酸、硫酸、塩酸等の強酸を含むエッチング液に対して優れた耐性(耐薬品性)を有するレジストとされるのみならず、エッチング処理後には基板から容易に除去される。
以下、本発明の実施の形態を、詳細に説明する。
本発明のエッチングレジスト組成物(以下、レジスト組成物ともいう)は、基板をエッチング加工から保護するための組成物であり、(A1)アスファルト、(A2)塩素化ポリプロピレンおよび(A3)塩素化ゴムのいずれか少なくとも一種(これら(A1)、(A2)、(A3)成分を総称して(A)成分ともいう)と、(B)環化ゴム((B)成分ともいう)と、(C)塩素化パラフィン((C)成分ともいう)と、(D)有機溶剤((D)成分ともいう)と、をと含有し、熱により乾燥してレジストを構成する。
すなわち、本発明のエッチングレジスト組成物は、所定の基板(処理対象)、例えば、ソーダガラス(ソーダライムガラス)、クリスタルガラス、硼珪酸ガラス等のガラスまたはセラミックに対し、所定のパターン状にスクリーン印刷等により塗布される。その後、エッチングレジストによりパターン状に被覆された基板は、所定時間加熱される。これにより乾燥したエッチングレジストは、エッチング処理の際の基板の保護膜(レジスト)となる。
本発明のエッチングレジスト組成物は、スクリーン印刷等の印刷適性を有し、優れた耐薬品性を有する他、基板に対する密着性が高くエッチング処理後には残渣を生ずることなく容易に除去される。
以下、本発明のエッチングレジスト組成物の成分を説明する。
[(A1)アスファルト、(A2)塩素化ポリプロピレンおよび(A3)塩素化ゴムのいずれか少なくとも一種]
本発明のエッチングレジスト組成物は、(A1)アスファルト、(A2)塩素化ポリプロピレンおよび(A3)塩素化ゴムのいずれか少なくとも一種を含む。すなわち、(A)成分として、(A1)アスファルト、(A2)塩素化ポリプロピレンおよび(A3)塩素化ゴムの一種類を用いるか、これらのうちの2種類以上の混合物を用いることができる。
本発明に用いられる(A1)アスファルトとしては、スレートアスファルトまたはブローンアスファルト等の石油アスファルト、レイクアスファルト、ロックアスファルト、オイルサンド、アスファルトタイト等の天然アスファルト、およびポリマーなど添加した改質アスファルト、乳化や粉末化したアスファルト、すなわち公知のアスファルトのいずれも使用可能である。
上記のうち、ブローンアスファルトおよびスレートアスファルトが好ましく、ブローンアスファルトが特に好ましく用いられる。
本発明で使用する(A1)アスファルトは、針入度(JIS K2207(1996)に準ずる)が20以下、さらに10以下であるものが好ましく、軟化点(JIS K2207(1996)に準ずる)が55℃以上、さらには95℃以上、特に110℃以上のものが好ましく使用される。
(A1)アスファルトの針入度が20以下であることにより、これを含むレジスト組成物から得られるレジストの塗膜が柔らかくなりすぎることはなく、所定の硬度を有するレジストとして形成され、レジストに傷等の欠陥が生ずることや、レジストの傷を通して不必要な箇所がエッチングされるような懸念が回避される。
また、軟化点が55℃以上とすることにより、エッチング液によるレジストの軟化、損傷が回避され、高温でのエッチングに耐性を有するレジストの形成が可能とされる。
ブローンアスファルトは、針入度および軟化点のバランスに優れ、本発明の(A1)アスファルトとして特に好ましく使用される。
本発明では、(A1)アスファルトを単独又は複数種類の組み合わせとして使用することができる。2種類以上のアスファルトの組み合わせ使用により、針入度および軟化点の調整のとれた混合物としてもよい。
(A1)アスファルトは、一般に室温で固体であるため、有機溶剤に溶解させて用いることが好ましい。これにより、レジスト組成物の製造、被加工基板に対する塗布、及びレジスト除去(剥離)を、それぞれ円滑に行うことが可能となる。
本発明の(A1)アスファルトの溶解に用いられる有機溶剤の例は、後述の(D)有機溶剤の例と同様であり、2種類以上の混合溶媒とすることもできる。さらに、レジスト組成物に悪影響を与えない限り、アスファルトの溶解用の溶媒と、(D)有機溶剤とは異なる溶媒としてもよい。
[(A2)塩素化ポリプロピレン]
本発明のエッチングレジスト組成物では、(A1)アスファルトに代えて、または(A1)アスファルトに加えて(A2)塩素化ポリプロピレンが用いられる。
本発明において、(A2)塩素化ポリプロピレンとしては、ポリプロピレン(単独重合体)の塩素化物の他、プロピレンと、その他の低級オレフィン(例えばエチレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン)との共重合体の塩素化物のいずれも使用可能であるが、ポリプロピレン単独重合体(特に鎖状の化合物)の塩素化物が好ましく用いられる。
塩素化ポリプロピレンの製造方法は、従来より各種のものが提案されているが、本発明で使用される塩素化ポリプロピレンは所望の特性を有する限り、いずれの製造方法により得られたものであってもよい。
例えば、本発明で使用される(A2)塩素化ポリプロピレンは、固相で塩素化する方法、またはポリプロピレンを塩素系溶媒(例えばクロロホルム)、水性溶媒(例えば水)、またはその双方の混合物に溶解または懸濁させて塩素化する方法等の液相で塩素化する方法等により製造可能である。
本発明で使用する(A2)塩素化ポリプロピレンの重量平均分子量はGPC分析(ポリスチレン標準)で10,000から120,000、好ましくは30,000から80,000であることが好ましい。(A2)塩素化ポリプロピレンの重量平均分子量が10,000以上であると、乾燥後のレジスト組成物のべたつきが抑制される。また、重量平均分子量を120,000以下とすることにより、レジスト組成物中に含まれる環化ゴムとの相溶性が良好となる。
さらに、(A2)塩素化ポリプロピレンの塩素化率は、塩素化ポリプロピレンの全質量に対して、30質量%から70質量%の範囲であることが好ましい。塩素化率30質量%以上の塩素化ポリプロピレンを用いることにより、得られるエッチングレジスト組成物の耐薬品性が特に向上する。一方、塩素化率70質量%以下では、後述の(D)有機溶剤に対する塩素化ポリプロピレンの溶解性が良好であり、均質なレジスト組成物が得られる。
さらに、本発明で用いる(A2)塩素化ポリプロピレンの軟化点は、60から250℃、特に80から200℃の範囲であることが好ましい。軟化点60℃以上の(A2)塩素化ポリプロピレンを用いると乾燥後のレジスト組成物のべたつきが抑制される。軟化点が250℃以下であると環化ゴムとの相溶性が良好となる。
(A2)塩素化ポリプロピレンの具体例としては、スーパークロン814HS、スーパークロン390S、スーパークロンHP−215(いずれも日本製紙株式会社製)、ハードレン526P、ハードレン523P(いずれも東洋紡株式会社製)を挙げることができる。
[(A3)塩素化ゴム]
塩素化ゴムは天然ゴムや合成ゴム(ポリイソプレン)を塩素化して得られる樹脂で、化学的に安定で酸・アルカリに強くまた耐候性に優れ、トルエン等の芳香族系溶剤やエステル・ケトン類の有機溶剤に容易に溶解する。このため塗料・インキ・接着剤に使われ、特に重防食塗料等に多量に使われ、古くから工業的に製造されている。
工業的に塩素化ゴムを製造するには、天然ゴムや合成ゴム等の原料を塩素に不活性な塩素系溶剤である四塩化炭素に溶解させ、この溶液に塩素ガスを通じて塩素化を行う「溶液法」という方法が知られているが、本発明に使用する塩素化ゴムは、所望の特性が得られれば、本製造方法に限定されるものではない。
本発明で使用する(A3)塩素化ゴムの重量平均分子量はGPC分析(ポリスチレン標準)で10,000から120,000、好ましくは30,000から80,000であることが好ましい。(A3)塩素化ゴムの重量平均分子量が10,000以上であると、乾燥後のレジスト組成物のべたつきが抑制される。また、重量平均分子量を120,000以下とすることにより、レジスト組成物中に含まれる環化ゴムとの相溶性が良好となる。
本発明で使用する(A3)塩素化ゴムの塩素化率は、塩素化ゴムの全質量に対して、30質量%から80質量%の範囲であることが好ましい。塩素化率30質量%以上の塩素化ゴムを用いることにより、得られるエッチングレジスト組成物の耐薬品性が特に向上する。一方、塩素化率80質量%以下では、後述の(D)有機溶剤に対する(A3)塩素化ゴムの溶解性が良好であり、均質なレジスト組成物が得られる。
さらに、本発明で用いる(A3)塩素化ゴムの軟化点は、50から250℃、特に60から150℃の範囲であることが好ましい。軟化点60℃以上の(A3)塩素化ゴムを用いると乾燥後のレジスト組成物のべたつきが抑制される。軟化点が250℃以下であると環化ゴムとの相溶性が良好となる。
(A3)塩素化ゴムの具体例としては、YURON CR−10、CR−20(いずれもFENGHUA YURON CHEMICAL INDUSTRY製)を挙げることができる。
(A1)アスファルトと同様に、(A2)塩素化ポリプロピレンおよび(A3)塩素化ゴムも、それぞれ単独種類又は複数種類の組み合わせとして使用することができる。
[(B)環化ゴム]
本発明のエッチングレジスト組成物は(B)環化ゴムを含む。
(B)環化ゴムとしては、共役ジエンゴムの環化物またはその誘導体である限り、特に制限されるものではない。(B)環化ゴムの原料として用いられる共役ジエンゴムは、共役ジエン単量体のみの重合体であっても、共役ジエン単量体とその他の単量体との共重合ゴムであってもよい。また、共重合ゴムはランダム共重合ゴム、ブロック共重合ゴムのいずれであってもよい。
上記の共重合ゴムを構成する共役ジエン単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエンなどが挙げられる。
また、上述の「その他の単量体」としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、o−クロルスチレン、m−クロルスチレン、p−クロルスチレン、p−ブロモスチレン、2−メチル−1,4−ジクロルスチレン、2,4−ジブロモスチレン、ビニルナフタレンなどの芳香族ビニル単量体;
エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの鎖状オレフィン単量体;
シクロペンテン、2−ノルボルネンなどの環状オレフィン単量体;
1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンなどの非共役ジエン単量体;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。 前記共役ジエン単量体及びその他の単量体は、単独でも2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)環化ゴムは、天然ゴム、合成ゴムを酸で処理することにより、ゴム分子中の鎖状分子の一部を環化して得られる。その製造方法は、各種のものが提案されているが本発明での(B)環化ゴムは、その何れかに特定されるものではない。
具体的には、天然ゴム又は合成ゴムに対し、例えば、濃硫酸やp−トルエンスルホン酸のような有機スルホン酸類、クロロスルホン酸等、あるいはTiCl4等のルイス酸を直接作用させるか、或いは天然ゴム又は合成ゴムを溶剤に溶解することにより得られたゴム溶液に作用させることにより、ゴム分子中の鎖状分子の一部を環化して2重結合を減少させる方法等で製造される。この場合の溶剤も、後述の(D)成分と同様の材料が使用可能である。
使用する(B)環化ゴムに分子量は、GPC分析(ポリスチレン標準)で重量平均分子量5,000〜50,000、好ましくは10,000〜30,000とされる。
重量平均分子量が5,000の(B)環化ゴムを使用することにより、エッチングレジスト組成物の耐薬品性が良好となる。重量平均分子量が50,000以下の(B)環化ゴムを使用することにより、(B)環化ゴムと、(A1)アスファルト、(A2)塩素化ポリプロピレンおよび(A3)塩素化ゴムのいずれか((A1)〜(A3)成分のうち使用するすべて)との相溶性が良好とされる。
本発明で使用する環化ゴムは、軟化点が60〜200℃、好ましくは、100〜150℃であることが望ましい。(B)環化ゴムの軟化点が60℃以上であることにより、指触乾燥性が良好となり、作業効率が向上する。また、(B)環化ゴムの軟化点が150℃以下の場合には、(A1)アスファルト、(A2)塩素化ポリプロピレンおよび/または(A3)塩素化ゴムとの相溶性が良好となり、エッチングレジスト組成物の均一化に寄与する。
環化ゴムの具体例としては、アルペックスCK−514、アルペックスCK−450等(いずれも日本サイテックスインダストリーズ株式会社製)が挙げられる。
(B)環化ゴムの配合量は、(A1)アスファルト、(A2)塩素化ポリプロピレンおよび/または(A3)塩素化ゴムの合計の100質量部に対して3〜60質量部、好ましくは15〜50質量部、特に好ましくは20〜40質量部である。(B)環化ゴムの配合量を3質量部以上とすることにより、基板に対するエッチングレジスト組成物の接着性が十分となり、15質量部以上とすることにより、エッチングレジスト組成物が均質化して基板に対する印刷性が向上する。また、(B)環化ゴムの割合を60質量部以下、特に40%以下とした場合に、(A1)アスファルトとの相溶性が良く、印刷した塗膜のレベリング性、消泡性も良好に得られる。
(A1)アスファルトと(A2)塩素化ポリプロピレン若しくは(A3)塩素化ゴムとの質量比を(65:35)〜(55:45)とし、上記の配合量の(B)環化ゴムを用いることにより、レジストのエッチング耐性を向上させることができる。
[(C)塩素化パラフィン]
本発明のエッチングレジスト組成物は(C)塩素化パラフィンを含む。
(C)塩素化パラフィンとは、直鎖状または分岐状のパラフィン(双方を合わせてパラフィンという)の水素原子が塩素原子により置換された構造を有する化合物である。本発明では、炭素数10〜30のパラフィンのいずれかが塩素化(塩化)した塩素化パラフィンを使用することができる。(C)塩素化パラフィンの塩素化率は、一般に塩素化パラフィン全質量の30〜80質量%の範囲とされ、35〜70質量%、更に好ましくは40〜50質量%の範囲で適宜選択される。なお、上記の炭素数及び塩素化率は平均値であり、(C)塩素化パラフィンは上記の炭素数および塩素化率を有する各化合物の混合物として使用することができる。
本発明では、室温(25℃)で液状の(C)塩素化パラフィン、例えば室温で0.1〜350Pa.sの範囲の(C)塩素化パラフィンを用いることが好ましい。室温で液状の(C)塩素化パラフィンはエッチングレジスト組成物に可塑化効果を与え、レジスト組成物の基板に対する密着性の向上に寄与するために好ましく使用されるものである。
(C)塩素化パラフィンの市販品としては、トヨパラックスA−40、A−5−、145、150、A−70(東ソー株式会社製)を挙げることができる。
(C)塩素化パラフィンの配合量は、(A1)アスファルト、(A2)塩素化ポリプロピレンおよび/または(A3)塩素化ゴムの合計の100質量部に対して、5〜40質量部、好ましくは、10〜30質量部である。(C)塩素化パラフィンの使用量が(A)成分100質量部に対して5質量部以上とすることで、エッチングレジスト組成物の基板に対する密着性の効果が顕著に発揮されることとなり、30質量部以下とすることで、エッチングレジスト組成物の塗膜のベタツキが少なく、タックフリー性が良好となる。
[(D)有機溶剤]
本発明で使用する(D)有機溶剤としては、アスファルトやその他の成分を溶解させることができるものであればよい。例えば、メチルエチルケトンやシクロヘキサノン等のケトン類、トルエンやキシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、石油エーテルや石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤類などが挙げられる。
ソルベントナフサ等の石油系溶剤類、芳香族炭化水素系溶剤、またはこれら相互の混合溶剤が好適に使用でき、これらを用いることにより、特に(A1)アスファルトの良好な溶解性が得られる。
芳香族炭化水素系溶剤のうち、150℃以上の沸点を持つ芳香族炭化水素系溶剤が特に好ましい。
150℃以上の沸点を持つ芳香族炭化水素系溶剤としてはスワゾール(登録商標)1000、1500、1800(丸善石油化学株式会社製)、T−Sol (登録商標)100、150、200(エクソンモービル社製)、カクタスファインSF01、SF−02(JXTGエネルギー株式会社製)等が挙げられる。150℃以上の沸点を持つ芳香族炭化水素系溶剤を使用すると、特に(A)〜(C)成分の溶解性、および印刷適性が良好となり、表面状態の優れた印刷物が得られる。また、引火点が高いため取り扱い上、安全性が高いという利点がある。
本発明においては、150℃以上の沸点を持つ芳香族炭化水素系溶剤を単独で用いるか、もしくは150℃以上の沸点を持つ芳香族炭化水素系溶剤を含む溶媒混合物、すなわち当該芳香族炭化水素系溶剤と相溶性の高い溶媒(例えばメチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒)とを含むもの等、(A)〜(C)成分の溶解性の高いものを併用することができる。
(D)有機溶剤は、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。また、(D)有機溶剤の配合量は、目的に応じた任意の量とすることができるが、本発明のレジスト組成物における20質量%〜80質量%、特に30〜60%とされることが好ましい。
[無機フィラー]
本発明のエッチングレジスト組成物は、無機フィラーを含まないことが好ましい。無機フィラーを含む場合、その含有率は、エッチングレジスト組成物中の固形分の全質量あたり、10質量%以下の割合で用いることが好ましい。この範囲であれば、密着性と剥離性に共に優れるエッチングレジスト組成物を提供することができる。
上記のフィラーの具体例としては、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、タルク、クレー、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウムの無機フィラー等が使用可能であり、好ましくは硫酸バリウムまたはタルクが、単独または2種以上の組み合わせで使用される。
無機フィラーの平均一次粒径は15μm以下であることが好ましく、更に好ましくは10μm以下である。平均一次粒径(D50)は、レーザー回折/散乱法により測定することができる。
すなわち、本発明のエッチングレジスト組成物を用いると、無機フィラーを使用しなくても基板に対する密着性を確保することができる。また、上記の範囲内であれば、無機フィラーを用いても、残渣が残らず剥離性に影響を与えず、密着性と剥離性が共に優れるエッチングレジスト組成物を提供することができる。さらに、130℃以上、例えば140〜190℃での乾燥によっても、基板からの剥離が容易なエッチングレジスト組成物を得ることができる。
[その他の成分]
この他、本発明のエッチングレジスト組成物には、必要に応じて、増粘剤、流動性改質剤、表面張力調整剤、密着性付与剤またはカップリング剤、界面活性剤、着色剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤およびレベリング剤、マット剤、の少なくとも1種を、さらに配合することができる。上記成分は、各(A)〜(D)成分の性能を損なわず、添加による所望の効果が得られる範囲で、適宜使用量を調節して使用される。なかでも、着色剤は、エッチングレジスト組成物中の固形分の全質量あたり、5質量%以下の割合で用いることが好ましい。この範囲内であれば、着色剤を用いても、残渣が残らず剥離性に影響を与えることはない。
使用可能な消泡剤の例としては、シリコーン系消泡剤、フッ素系消泡剤、アクリル系消泡剤が挙げられる。シリコーン系の消泡剤としてはビックケミー・ジャパン株式会社製のBYK(登録商標)−063、−065、−066N、−081、−141、−323、および信越化学株式会社製のKS−66、KS−69、X−50−1105G等、フッ素系消泡剤としてはDIC株式会社製のメガファックRS、F−554、F−557等、アクリル系消泡剤としては楠本化成株式会社製のディスパロンOX−880EF、OX−70などが挙げられる。
このほか、着色剤としては、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックを、
増粘剤としては、ベントナイト、微紛シリカを含む公知慣用の増粘剤を、
シランカップリング剤としては、γ−クロロプロピルメトキシシラン等のハロゲン含有シランカップリング剤、ビニルエトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン等のビニル基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイルイ含有シランカップリング剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のグリシジル基含有シランカップリング剤、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト含有シランカプリング剤、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤を挙げることができる。
上記添加剤のなかでも特に消泡剤及び/又はレベリング剤を配合することにより、表面平滑性の劣化を防止し、ボイドやピンホールによる層間絶縁性の劣化も防止することができる、シランカップリング剤を配合することにより基板表面との密着性を向上させることができる。
本発明のレジスト組成物の25℃における粘度は、1から1,500dPa・sの範囲、特に10から1,000dPa・sの範囲にあると好ましい。エッチングレジスト組成物の粘度が1dPa・s以上であると、レジスト組成物が加熱乾燥により、エッチングレジストとして基板を良好に保護可能な膜厚で塗膜になる。一方、エッチングレジスト組成物の粘度が1,500dPa・s以下であると、組成物が扱いやすく、スクリーン印刷等による印刷に好適であり、エッチング後のレジスト剥離処理も簡単かつ経済的に行われる。
なお、本発明のエッチングレジスト組成物は、主に熱乾燥型に好適に用いられるが、必要に応じ熱硬化性材料、例えばエポキシ化合物、硬化剤等、又は光反応成分を含んでいてもよい。
また、本発明のエッチングレジスト組成物を用いた基板の製造方法においては、上述のエッチングレジスト組成物を均一な溶液又は分散液として調整後、ガラス基板等の基板に対してスクリーン印刷等により、5〜100μm、好ましくは30〜90μm、より好ましくは45〜85μmの膜厚で、所望のパターン状に印刷する。更に、パターン状のエッチングレジスト組成物は、例えば、80〜250℃、好ましくは100〜200℃にて5〜90分、好ましくは20〜60分の乾燥炉等における加熱により有機溶剤を蒸発させて乾燥させ、乾燥塗膜を形成することができる。乾燥塗膜の膜厚は、エッチング液の性状に応じて、3〜70μm、特に30〜60μmの範囲が好ましい。この範囲の膜厚を有するエッチングレジストは、エッチング液に対して十分な耐性を有するため、エッチング処理における基板の保護の観点から有効である。ただし、本発明のレジスト組成物は、乾燥温度および乾燥時間の要求を満たせば、70μmを超過する膜厚としてもよい。上記膜厚は、一般的な印刷条件により得られるものである。
ここで本発明のレジスト組成物は、スクリーン印刷法の他、グラビア法、グラビアオフセット法などの印刷方法においても適用可能である。また、レジスト組成物は複数回に分けて塗布することもできる。その際の塗布方式としては、従来より知られる2コート1ベークなどのウエットオンウエット印刷や、2コート2ベークなどのドライオンウエット印刷が可能である。
その後、所望のパターンで乾燥したレジストで被覆された基板は、エッチング液によりエッチング処理に付される。エッチング処理により、レジストに被覆されていない基板部分がエッチングされる。これにより所定パターンのガラス成型品を得ることができる。
エッチング液としては、フッ化水素酸単独若しくはフッ化水素酸を含むエッチング液(例えば、フッ化水素酸と、鉱酸(硝酸、リン酸等)との混合物、場合により酢酸等の弱酸のいずれか1種以上を含む)の他、硝酸、硫酸、塩酸等の強酸および水酸化ナトリウム等の強塩基を含むアルカリ水溶液が挙げられる。
本発明のレジスト組成物から得られるレジストは、上述の熱乾燥後にはエッチング液に対して優れた耐性を有することから、エッチング処理中に基板からの剥離が生じずに、基板を高精度でエッチング処理することができる。
本発明のエッチングレジスト組成物は加熱による乾燥を行えば、光硬化ないし熱硬化を行わなくとも、基板に良好に密着したレジストを形成することができ、基板をエッチング液から良好に保護する。更には高精度のエッチングを可能とし、エッチング完了後にはケトン類、エステル類、芳香族炭化水素類、石油系溶剤類等の溶剤を用いて短時間で容易に除去可能である。エッチングレジスト除去用には、特に、溶解性の観点と経済性の観点より石油系溶剤を用いることが好ましい。
なお、本発明のエッチングレジスト組成物は、フッ化水素酸系エッチング液だけではなく、強酸系、弱酸系、強アルカリ系、弱アルカリ系、腐食性物質系の各種エッチング液によるエッチングにおいても非常に優れた耐薬品性と基板に対する優れた密着性示し、かつエッチング後の剥離性も優れている。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない限り、「部」および「%」は質量基準によるものとする。
[実施例1〜5及び比較例1〜4]
I.エッチングレジスト組成物の作製
表1に示す成分をそれぞれ記載した割合(単位:部)にて配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで分散および混練して、実施例1から5(本発明の組成物)、および比較例1から4(比較組成物)の各エッチングレジスト組成物を得た。
II.テストピースの作製
厚さ80μmのソーダライムガラス(基板)(4×9cm)をあらかじめアルコールで洗浄し、表面を乾燥させ、次いで、実施例1から5、および比較例1から4の各レジスト組成物を、上記ソーダライムガラス(基板)上に250メッシュのポリエステル製のバイアススクリーンを用い、一辺が20mm、パターン幅が5mmの正方形として印刷した。このように印刷された各組成物を、熱風循環式乾燥機(ヤマト科学社製DF−610)を用い、以下の条件で乾燥することによりエッチングレジスト(膜厚50μm)を形成した。
乾燥条件1 180℃ 30分
乾燥条件2 150℃ 30分
III.密着性評価 上記製造方法に基づいて作製した実施例1〜5、比較例1〜4のそれぞれのテストピースの密着性を、JIS K5400碁盤目試験に準じて評価した。まず、各テストピースに、カット間隔1mmで、基板に到達する100マスの碁盤目状のクロスカット(切り込み)を入れ、次いでこのテストピース上に幅15mmのセロハンテープを消しゴムでこすりつけて付着させ、付着から2分以内に、テストピースに対して直角の角度となるようにセロハンテープを保持して瞬時に引き離した。ピーリング試験後の剥がれの状態を目視で確認した。以下の評価基準を用いた。
◎・・・剥がれ無し
〇・・・マス目自体の剥がれはないが、1カ所以上の切込み線の際が僅かに盛り上がった
△・・・ 1〜50のマス目の剥がれが観察された
×・・・51〜100のマス目の50〜99のマス目の剥がれが観察された
IV.剥離性評価
超音波洗浄機(US−CLEANER 型番USK−4R、アズワン社製)の槽内に水を張り、350mlのプラスチック容器にキシレン200ml入れたものに、実施例1〜5、比較例1〜4のそれぞれのテストピースを順次投入した。各テストピースがキシレンに浸漬した後、超音波洗浄機を、発振パワーHigh、発振周波数 40kHz、出力160Wで稼働させた。超音波洗浄機稼働開始から塗膜が溶解するまでの時間を測定した。以下の評価基準を用いた。
◎・・・20秒以内に、残渣なくレジストが完全に剥離した
〇・・・21〜60秒で、残渣なくレジストが完全に剥離した
△・・・60秒以内に、レジストがほぼ全体的に剥離したが、若干の残渣が残った
×・・・60秒以上経過後にも、剥離が不十分であり、多くの残渣が残った
評価結果を表1に示す。
Figure 2021138560
表中の材料の詳細は以下のとおりである。
KB−2:アスファルトピッチ、九重電気株式会社製(ブローンアスファルト系:針入度6〜10、軟化点110℃)
スーパークロンHP−215:塩素化ポリプロピレン、日本製紙株式会社製(重量平均分子量約80,000、塩素化率68%、軟化点200℃)
スーパークロン814HS:塩素化ポリプロピレン、日本製紙株式会社製(重量平均分子量約40,000、塩素化率41%、軟化点80℃)
YURON CR−20 塩素化ゴム(FENGHUA YURON CHEMICAL INDUSTRY製)(塩素化率68%、軟化点200℃)
ALPEX(登録商標)CK−450:環化ゴム(重量平均分子量約23000、軟化点約130℃)。
トヨパラックスA−40S:塩素化パラフィン、東ソー株式会社製
イプゾール150:芳香族炭化水素(炭素数10)混合溶剤、出光興産株式会社製
KS66:ジメチルポリシロキサン、信越化学工業株式会社製
MA−100:カーボンブラック、三菱化学株式会社製
オルベンM:ベントナイト、白石工業株式会社製
KBM−403:シランカップリング剤、信越化学工業株式会社製
実施例の結果より、本発明のエッチングレジスト組成物は、(A1)アスファルト(A2)、塩素化ポリプロピレン、および(A3)塩素化ゴムのいずれか少なくとも1種と、(B)環化ゴムと、(C)塩素化パラフィン、(D)有機溶剤とを組み合わせて使用することにより、無機フィラーを含まないか、または含んだとしても所定の配合量以下の無機フィラーであれば、残渣が残ることなく基板に対する良好な密着性を有することがわかる。さらに、180℃で乾燥させたエッチングレジストであっても、残渣が残らず剥離性に優れることがわかる。
本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
例えば、上記実施例では、主にガラス基板のエッチングについて記載したが、本発明のレジスト組成物は、金属基板や合成ゴム等を含むプラスチック基板のエッチング等にも使用することができる。
以上説明したように、本発明のエッチングレジスト組成物は、ガラスエッチング耐性、保存安定性及びレジスト除去性に優れ、タッチパネル、光学材料、および計測器等のガラスまたはセラミック躯体(基板)のエッチングに適用される。
また、本発明のレジスト組成物の基板への高い密着性により、基板上に描画された所望のレジストパターン通りの高精度のエッチングが行われるため、携帯電話等、意匠性を重視した製品への適用にも有用である。

Claims (3)

  1. (A1)アスファルト、(A2)塩素化ポリプロピレンおよび(A3)塩素化ゴムのいずれか少なくとも一種と、
    (B)環化ゴムと、
    (C)塩素化パラフィンと、
    (D)有機溶剤と、
    を含み、
    無機フィラーを含まないか、又は含んだとしても、その含有率が、エッチングレジスト組成物中の固形分の全質量あたり10質量%以下であることを特徴とするエッチングレジスト組成物。
  2. 前記(B)環化ゴムを、前記(A1)アスファルト、(A2)塩素化ポリプロピレンおよび(A3)塩素化ゴムのいずれか少なくとも一種の100質量部に対して15から50質量部含む、請求項1に記載のエッチグレジスト組成物。
  3. ガラスのエッチングに用いられることを特徴とする請求項1または2に記載のエッチングレジスト組成物。
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