JP2021137745A - 塗装体およびコーティング組成物 - Google Patents

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Shunsuke Nishino
駿佑 西野
寛之 藤井
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寛之 藤井
猛 池田
Takeshi Ikeda
猛 池田
愛子 伊丹
Aiko Itami
愛子 伊丹
信 早川
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信 早川
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曜 島井
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惠介 鈴木
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Abstract

【課題】屋内でもカビ繁殖が抑制される機能や、屋外において優れたカビおよび/または藻の繁殖が抑制される機能を、長期にわたり発揮可能な塗装体およびコーティング組成物の提供。【解決手段】基材上に表面層を設けた塗装体であって、表面層が蛍石構造の酸素欠損を有する平均結晶子径が10nm以下の酸化セリウム粒子を含有し、この酸化セリウム粒子は、ラマン分光スペクトルにおいて、Ce−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークが、標準物質を測定して得られるCe−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークに対して、低波数側に2cm−1超ずれているものである。この塗装体は、長期にわたり屋内のカビの繁殖、屋外の藻の繁殖を極めて顕著に抑制する。【選択図】なし

Description

本発明は、塗装体、およびコーティング組成物に関する。とりわけ、屋内使用におけるカビ繁殖が抑制される機能や、屋外において優れたカビおよび/または藻の繁殖が抑制される機能を発揮する塗装体、およびコーティング組成物に関する。
光に感応することで防カビ機能や、防藻機能を発揮する塗装体として、光触媒粒子を表面層に含む塗装体が知られている。
光触媒粒子としては、従来、アナターゼ型酸化チタン粒子が広く用いられている。アナターゼ型酸化チタン粒子では、O(2p)軌道により形成される価電子帯と、Ti(3d)により形成される伝導電子帯との間のバンドギャップが3.2eVであり、387nm以下の紫外光が照射されることにより、バンド間遷移に基づく酸化還元反応が生じ、それにより防カビ機能や、防藻機能が発揮されることになる。
また、可視光により、光触媒反応が生じる光触媒も知られている。代表的な物質はルチル型酸化チタンが知られている。ルチル型酸化チタンではO(2p)軌道により形成される価電子帯と、Ti(3d)により形成される伝導電子帯との間のバンドギャップが3.0eVであるため、紫外線のみではなく、波長400〜413nmの可視光域の一部も利用できる。
一方、酸化セリウムは、紫外線吸収剤として知られている。O(2p)軌道とCe(4f0)軌道とのバンドギャップが3.1eVであることから、400nm未満の紫外線を有効に吸収する。
さらに、近年、酸化セリウムの光触媒特性の研究もなされており、酸素欠損型の酸化セリウムの研究では、バンドギャップが狭窄し、500nm以下の光をバンド間遷移により利用する光触媒性酸化セリウムが報告されている(非特許文献1)。
一方、酸化セリウムの防カビ作用は知られており、特許文献2には、「水と、該水の中に分散された水難溶性のセリウム化合物(A)から選ばれる1種または2種以上とを含有することを特徴とする親水化処理剤」が開示されており、かつ、上記水難溶性のセリウム化合物として、0.01μm〜2μmの粒径の酸化セリウムが利用できることが開示されている。
特開2000−237597号公報 特開2012−87213号公報 特開2011−56471号公報 特開2002−88275号公報 特開2018−145429号公報 特開2008−264747号公報
Chem. Cat. Chem., 2018, vol.10, 1267-1271
アナターゼ型酸化チタン粒子を表面層に含む塗装体では、屋内に存在する紫外線量が充分でない場合が多いため、屋内の防カビ機能が充分に発揮できないことがある。
また、ルチル型酸化チタン粒子を表面層に含む塗装体のような、従来知られている可視線光励起の光触媒では、利用可能な可視光域が限定的で充分でないため、屋内の防カビ機能が充分に発揮できないことがある。また、アナターゼ型酸化チタンのような高い光触媒活性を有しないため、屋外の防カビ機能や防藻機能を充分に発揮できないことがある。
さらに、酸化セリウムを利用する場合、3価のセリウム(Ce(III))あるいは酸素欠陥の導入によりバンドギャップを狭窄させた、500nm以下の光が利用可能な光触媒性酸化セリウム粒子を利用して塗装体を形成しても、白色電灯等での可視光照射では、場合により、充分な防カビ特性が得難い。
本発明は上記事情に鑑みてなされた。その目的は、屋内でもカビ繁殖が抑制される機能や、屋外において優れたカビおよび/または藻の繁殖が抑制される機能を、長期にわたり発揮可能な塗装体およびコーティング組成物を提供することにある。
本発明者らは、特定の酸化セリウム粒子を含有する表面層を備えた塗装体が、可視光、紫外光、日中に太陽光が照射される屋外環境下、または室内照明が照射される居住空間環境下での屋内において、カビおよび屋外の藻の繁殖を極めて顕著に抑制する事実を確認した。
すなわち、本発明による塗装体は、
表面に付着するカビおよび/または藻の繁殖を抑制するための塗装体であって、
基材と、該基材上に形成された表面層とを有し、前記表面層は、蛍石構造の酸素欠損を有する平均結晶子径が10nm以下の酸化セリウム粒子を含有してなり、この酸化セリウム粒子は、ラマン分光スペクトルにおいて、Ce−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークが、標準物質を測定して得られるCe−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークに対して、低波数側に2cm−1超ずれているものである。この塗装体は、長期にわたり屋内のカビの繁殖、屋外の藻の繁殖を極めて顕著に抑制する。
また、本発明によるコーティング組成物は、
蛍石構造の酸素欠損を有する平均結晶子径が10nm以下の酸化セリウム粒子を含有してなるコーティング組成物であって、
前記酸化セリウム粒子は、ラマン分光スペクトルにおいて、Ce−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークが、標準物質を測定して得られるCe−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークに対して、低波数側に2cm−1超ずれているものであり、
当該コーティング組成物を基材上にコーティングしてなる表面層を備えた塗装体は、当該塗装体の表面に付着するカビおよび/または藻の繁殖を抑制することを特徴とするものである。
上記塗装体におけるカビの繁殖の抑制の作用機序は、従来の光触媒や防カビ剤による機能とは全く異なるものと考えられる。以下に予想されるその機能を説明する。
例えば、従来の光触媒を利用した技術では、光触媒を単独でカビの胞子に作用させた場合、光触媒励起により生成した活性種の作用により細胞壁や細胞膜は損傷を受け、そのダメージによりカビ胞子を死滅させる。
また、従来のセリウム化合物としての防カビ剤の技術では、重金属であるセリウム金属イオンをカビ細胞に作用させてカビの繁殖を抑制する。この場合も、同様にカビ胞子を死滅させる。
それに対して本発明の塗装体に作用されても、カビ胞子の細胞壁や細胞膜は損傷を受けてない。実際、実験検証のために、本発明の塗装体に作用させた後に同胞子を発芽・繁殖に好適な培地に移し培養する実験を行ったところ、発芽・繁殖し、コロニーを形成する。この観察事実から、本発明に係る塗装体表面は、胞子を死滅させる作用を呈してはいない可能性が高いと結論できる。通常死滅すると、コロニーを形成することができなくなるためである。それでいながら、意外なことに、長期にわたるカビや藻の繁殖性を観察すると、本発明の塗装体のほうが、従来の技術と比較して、繁殖しにくいことが観察された。
本発明では、表面層に可視光や紫外線含む光が照射された後に、上述したように、カビ胞子の細胞壁や細胞膜はほとんど損傷を受けないが、ATP値は低く抑えられる。すなわち、代謝が抑制されている。また、発芽も抑制される様子が観察された。
本発明において、上記効果が実現される理由は定かではないが、以下のようなものではないかと考えられる。ただし、以下の説明はあくまで仮説にすぎず、本発明は何ら以下の仮説によって限定されるものではない。
本発明において、酸化セリウム粒子は酸素欠損を有する。さらに、本発明における酸化セリウム粒子は、ラマン分光スペクトルにおいて、Ce−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークの、標準物質を測定して得られるCe−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークに対するずれが、低波数側に2cm−1超であり、かつ、蛍石構造を維持できる範囲で、結晶に十分な構造欠陥が存在する。このような酸化セリウム粒子の表面では、おそらく、吸着酸素が(おそらく過酸化物等の状態に)活性化されると考えられる。そして、そのような酸化セリウム粒子は、カビの胞子や菌糸に死に至らない程度のストレス因子を与えると考えられる。
このように、大きなストレスが生じると、胞子はまずこのストレス解消を優先させる。そのために、エネルギー代謝反応や発芽反応が抑制され、長期にわたり屋内のカビの繁殖、屋外の藻の繁殖が抑制されると考えられる。
本発明が、従来の、光触媒を利用した技術や、セリウム化合物からなる防カビ剤よりも、長期にわたるカビや藻の繁殖が抑制される性質に優れるのは以下の理由と考えられる。
従来の光触媒単独の反応では、光触媒の光励起により酸化還元反応を生じ、その際、かなり強い酸化力が生じる。そのために、細胞壁や細胞膜は損傷を受け、そのダメージによりカビは死滅する。死んだカビ中のタンパク質は、細胞膜が損傷されていることから細胞組織外に滲みだした状態で残存し堆積する。それが新たに外部から付着するカビ胞子の足場になり栄養源となって、次第にカビや細菌等が含まれる堆積層が形成されて光の届きにくい部分が生じてしまい、特に屋内等では長期的には次第に効力を失う場合が生じると考えられる。
また、セリウム化合物からなる防カビ剤では、重金属イオンであるセリウムイオンをカビに作用させることになるが、その場合も基本的にはカビを死滅させることになるので、上記の光触媒の場合と同様の次第に効力を失う現象が生じると考えられる。
それに対して、本発明では、カビ胞子を死滅させないので、上記の効力を失う現象が生じることがなく、長期にわたるカビ等の繁殖性に優れるのである。
また、屋外での藻の付着機構につき、詳細に観察研究したところ、後述する実施例に示されるように、藻類は、カビ胞子が発芽し、次いで伸長したり分岐したりした菌糸に付着し繁殖することを見出した。したがって、カビの繁殖を抑制した結果、屋外での塗装面の藻類の繁殖も防止できたと推察する。
本発明の好ましい実施形態としては、上記酸化セリウム粒子は、ラマン分光スペクトルにおいて、さらに、O 2−に帰属されるピークを有する酸化セリウム粒子である。これにより、長期にわたる屋内のカビの繁殖、屋外の藻の繁殖抑制効果がより一層発揮される。
上記発明において、上記効果が実現される理由は定かではないが、以下のようなものではないかと考えられる。ただし、以下の説明はあくまで仮説にすぎず、本発明は何ら以下の仮説によって限定されるものではない。
2−に帰属されるピークを有する酸化セリウム粒子では、後述するように、吸着した酸素が活性化された状態で存在する。本実施形態では、より活性化された吸着酸素が、カビの胞子にストレスを与えると考えられる。
そのために、胞子はストレス解消に向けて防御機能を働かせるようになり、エネルギー代謝や発芽が抑制され、長期にわたり屋内のカビの繁殖、屋外の藻の繁殖が抑制されると考えられる。
本発明の好ましい実施形態としては、上記表面層に可視光が照射されるとともに、上記塗装体が、その表面にカビ胞子が付着する環境にさらされて使用される。
本発明者は、可視光照射後に、カビの細胞壁や細胞膜はほとんど損傷を受けないが、ATP値は低く抑えられること、および、結果として、可視光が照射されることにより、長期にわたる屋内のカビの繁殖、屋外の藻の繁殖抑制効果が向上することを見出した。
したがって、本実施形態では、長期にわたる屋内のカビの繁殖、屋外の藻の繁殖抑制効果がより一層発揮される。
上記発明において、上記効果が実現される理由は定かではないが、以下のようなものではないかと考えられる。ただし、以下の説明はあくまで仮説にすぎず、本発明は何ら以下の仮説によって限定されるものではない。
酸化セリウムは、紫外線吸収剤として知られている。O(2p)軌道とCe(4f0)軌道とのバンドギャップが3.1eVであることから、400nm未満の紫外光を有効に吸収する。さらに、近年、酸化セリウムの光触媒特性の研究もなされており、酸素欠損を有する酸化セリウムの研究では、バンドギャップが狭窄し、500nm以下の光をバンド間遷移により利用する光触媒性酸化セリウムが報告されている。ただし、酸化セリウムについては光触媒の視点からのカビの繁殖抑制に関する研究はなされていない。しかしながら、従来の酸化チタンに関する光触媒による防カビ機能は、多数報告されている。そこでは、光触媒の有する強い酸化力がカビを酸化分解し、それによりカビが損傷を受け、死滅に至るとされてきた。
ところが、本実施形態では、意外なことに、上記光触媒性酸化チタンの光励起反応で生じる強い酸化力によるカビの損傷や死滅は観察されない。
これは、おそらく、酸素欠損型の蛍石型の酸化セリウム結晶に可視光が照射されたときに、ドナー準位が介在したエネルギー遷移、あるいは、Ce(4f1)状態とCe(4f0)状態との間のエネルギー差により、生成する活性種が酸化セリウム結晶表面または内部に取り込まれてしまうためと考えられる。活性な酸素種が生成すれば酸素として結晶表面または内部に取り込まれる。また、正孔が生成する場合は、結晶表面で3価のセリウム(Ce(III))が4価のセリウム(Ce(IV))にエネルギー遷移する反応に消費され、その結果、結晶表面が酸素をより引き付ける状態となる。いずれの反応においても酸化セリウム結晶表面の酸素量が増加する状態になると考えられる。なお、Ce(4f1)状態とCe(4f0)状態との間のエネルギー差は約1.6eVなので、原理的には波長が500nmを超え760nm程度の光を照射することによっても上記の繁殖抑制効果が生じる可能性がある。
以上の現象がカビに対して直接的または間接的に作用することにより、酸化セリウムによるカビへのストレスが大きくなり、結果として、長期にわたる屋内のカビの繁殖、屋外の藻の繁殖抑制効果がより一層発揮されるようになると考えられる。
本発明の好ましい実施形態としては、上記表面層に紫外線を含む光が照射されるとともに、上記塗装体が、その表面にカビ胞子が付着する環境にさらされて使用される。
本発明者は、本発明の塗装体は、紫外線を含む光が照射された後に、カビの細胞壁や細胞膜はほとんど損傷を受けないが、カビのATP値は低く抑えられること、および、結果として、紫外線を含む光が照射されることにより、長期にわたる屋内のカビの繁殖、屋外の藻の繁殖抑制効果が向上すること、この効果は可視光照射よりも優れることを見出した。
したがって、この発明実施形態では、長期にわたり、屋内においてカビの繁殖が抑制される効果、または、屋外において藻の繁殖が抑制される効果がより一層発揮される。
上記発明において、上記効果が実現される理由は定かではないが、以下のようなものではないかと考えられる。ただし、以下の説明はあくまで仮説にすぎず、本発明は何ら以下の仮説によって限定されるものではない。
この実施形態でも、光触媒の光励起反応で生じる強い酸化力によるカビの酸化分解に基づく損傷が観察されない。
これは、おそらく、可視光照射の場合と同様に、酸素欠損を有する蛍石型の酸化セリウム結晶に紫外線を含む光が照射されたときに生成する活性種が酸化セリウム結晶表面または内部に取り込まれてしまうためと考えられる。活性な酸素種が生成すれば酸素として結晶表面または内部に取り込まれる。また、正孔が生成する場合は、結晶表面で3価セリウムが4価セリウムにエネルギー遷移する反応に消費され、その結果、結晶表面が酸素をより引き付ける状態となる。いずれの反応においても酸化セリウム結晶表面の酸素量が増加する状態になると考えられる。
以上の機構により、酸化セリウムによるカビへのストレスが大きくなり、結果として、長期にわたる屋内のカビの繁殖、屋外の藻の繁殖抑制効果がより一層発揮されるようになると考えられる。
なお、本実施形態による紫外線による効果が可視光照射時の効果よりも優れるのは、より安定なO(2p)軌道に由来する価電子帯とCe(4f0)軌道に由来する伝導帯とのバンド間遷移を利用することで、より多量かつ安定に酸化セリウム結晶表面の酸素量が増加する状態になるためと考えられる。
本発明では、屋内でもカビ繁殖が抑制される機能や、屋外において優れたカビおよび/または藻の繁殖が抑制される機能を長期にわたり発揮可能な塗装体およびコーティング組成物を提供することが可能となる。
菌糸の伸長度が「0:胞子が未発芽状態」を示す光学顕微鏡写真である。 菌糸の伸長度が「1:一部の胞子が発芽しているが、菌糸は数100 μm以下」を示す光学顕微鏡写真である。 菌糸の伸長度が「2:胞子が発芽が認められ、部分的に菌糸が数100 μm以上に伸長」を示す光学顕微鏡写真である。 菌糸の伸長度が「3:ほとんどの胞子が発芽し、一面に菌糸が伸長」を示す光学顕微鏡写真である。 ラボ試験におけるATP値とカビ繁殖との関係を示したグラフである。 ATP値におけるラボ試験と屋外試験との関係を示したグラフである。 ATP値と色差との関係を示したグラフである。
塗装体
本発明の塗装体は、表面に付着するカビおよび/または藻の繁殖を抑制するための塗装体であって、基材と、該基材上に形成された表面層とを有し、前記表面層には、蛍石構造の酸素欠損を有する平均結晶子径が10nm以下の酸化セリウム粒子を含有してなり、この酸化セリウム粒子は、ラマン分光スペクトルにおいて、Ce−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークが、標準物質を測定して得られるCe−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークに対して、低波数側に2cm−1超ずれているものであり、塗装体の表面に付着するカビおよび/または藻の繁殖を抑制することを特徴とするものである。
本発明の塗装体の一使用形態においては、前記表面層に可視光が照射されるとともに、カビ胞子が付着する環境にさらされて使用されるのが好ましい。
この塗装体の他の使用形態においては、前記表面層に紫外線を含む光が照射されるとともに、カビ胞子が付着する環境にさらされて使用されるのが好ましい。
ここで、可視光とは、波長400nm以上1000nm未満の波長帯を含む光であり、本発明では400〜760nmの波長の光を含有するのが好ましい。
光源としては、室内照明、街灯等の人工照明が利用可能である。また、紫外線を発する人工照明または太陽光を間接的に本発明の塗装体に照射する使用形態も含まれる。ここで間接的な光とは、任意の物体によって、反射、散乱、または透過された光であることを意味し、これにより紫外線の強度が減衰された光である。
室内照明としては、白熱灯、白色LED等が好適に利用できる。
可視光は、常時照射されていてもよいし、時折照射されてもよい。例えば、就寝時や不使用時には照射されないが時折照射される状況で使用される屋内の居住空間、車内空間等の壁、窓、床、天井、住宅設備等の利用や、屋外の、太陽光に間接的にさらされる環境での使用も含まれる。
また、紫外線を含む光とは、波長250nmを超え400nm未満、より好ましくは300nmを超え400nm未満の波長帯を含む光である。光源としては、紫外線LED、白色蛍光灯、ブラックライト等の人工照明、太陽光のいずれも利用可能である。
紫外線を含む光は、常時照射されていてもよいし、時折照射されてもよい。例えば、就寝時や不使用時には照射されないが時折照射される状況で使用される屋内の居住空間、車内空間等の壁、窓、床、天井、住宅設備等の利用や、屋外の太陽光にさらされる環境での使用も含まれる。
本発明の塗装体の一使用形態においては、表面層に可視光が照射される。そして、本発明の塗装体は、可視光照射後のカビ胞子の細胞膜損傷度が10%未満であり、かつ、可視光照射後のATP値が0RLU/cmを超え1000RLU/cm未満、より好ましくは0RLU/cmを超え500RLU/cm未満、最も好ましくは0RLU/cmを超え300RLU/cm未満である特性を備えるのが好ましい。
これにより、カビを死滅させることなく、発芽・繁殖を抑制することができる。
本発明の塗装体は、可視光照射後の生存胞子率が50%を超えるのが好ましく、より好ましくは70%超、最も好ましくは90%超とする。
本発明の塗装体の一使用形態においては、表面層に紫外線を含む光が照射される。そして、本発明の塗装体は、紫外線を含む光の照射後に、細胞膜損傷度が50%未満であり、かつ、紫外線を含む光の照射後のATP値が0RLU/cmを超え500RLU/cm未満、より好ましくは0RLU/cmを超え300RLU/cm未満である特性を備えるのが好ましい。紫外線を含む光の照射後の細胞膜損傷度は、30%未満であることが、より好ましく、10%未満であることが、特に好ましい。
これにより、カビを死滅させることなく、発芽・繁殖を抑制することができる。
本発明の塗装体は、上記表面に付着するカビ胞子の、紫外線を含む光が照射された後の生存胞子率が50%を超えるのが好ましく、より好ましくは70%超、最も好ましくは90%超とする。
そうすることで、より確実に、屋内でもカビ繁殖が抑制される機能や、屋外において優れたカビおよび/または藻の繁殖が抑制される機能を長期にわたり発揮可能となる。
本発明の好ましい実施形態としては、上記表面層には、さらにシリカ粒子を含んでなる。
そうすることで、酸化セリウム粒子を露出させると共に、結着させて表面層の強度を増すことができる。
本発明の好ましい実施形態としては、上記表面層中の、上記酸化セリウム粒子の含有量は、前記シリカ粒子の含有量を100質量部としたときに、1質量部超、より好ましくは10質量部超、さらに好ましくは20質量部超、最も好ましくは40質量部超であるようにする。
上記酸化セリウム粒子をその程度含有させることで、上記酸化セリウム粒子の機能と上記シリカ粒子の機能とをより確実に両立させることができる。
本発明の好ましい実施形態としては、上記表面層中の、前記酸化セリウム粒子の含有量は、被膜形成成分の合計量を100質量部としたときに、1質量部以上、より好ましくは5質量%以上、最も好ましくは10質量%以上であるようにする。ここで、好ましい上限値は、膜強度の観点から、50質量%、より好ましくは40質量%、最も好ましくは30質量%である。
そうすることで、より確実に、屋内でもカビ繁殖が抑制される機能や、屋外において優れたカビおよび/または藻の繁殖が抑制される機能を長期にわたり発揮可能となる。
本発明の好ましい実施形態としては、前記表面層は、さらに非粒子成分を含み、当該非粒子成分の含有量は、被膜形成成分の合計量を100質量部としたときに、10質量部未満である
そうすることで、表面層は、カビおよび/または藻が層中を貫通しない多孔質構造となりやすくなる。そして、被膜が多孔質構造であることで、上記酸化セリウム粒子の機能が発揮可能となる。
本発明の好ましい実施形態としては、上記表面層は多孔質構造であるが、その多孔の程度は前記カビおよび/または藻が層中を貫通しない多孔質構造であるようにする。
多孔質構造であることで、上記酸化セリウム粒子の機能が発揮されやすくなるとともに、貫通しない構造であることで基材との接触面を足場にカビおよび/または藻が繁殖することを抑止できる。
本発明の好ましい実施形態としては、前記表面層の表面に、さらにシリカ粒子を含有する透光性の最表層が形成されているようにする。ここで、透光性は、上記表面層に含有される上記酸化セリウム粒子に光が到達される程度の性質であることを意味する。
そうすることで、上記酸化セリウム粒子の機能と上記シリカ粒子の機能とをより確実に両立させることができる。
本発明の塗装体は、機能的な観点からは、表面に付着するカビおよび/または藻の繁殖を抑制するための塗装体であって、基材と、該基材上に形成された表面層とを有し、可視光照射後のカビ胞子の細胞膜損傷度が10%未満であり、かつ、可視光照射後のATP値が0RLU/cmを超え1000RLU/cm未満、より好ましくは0RLU/cmを超え500RLU/cm未満、最も好ましくは0RLU/cmを超え300RLU/cm未満である特性を備え、可視光が前記表面層に照射されるとともに、前記塗装体が、その表面にカビ胞子が付着する環境にさらされて使用される、塗装体の表面に付着するカビおよび/または藻の繁殖を抑制することを特徴とする塗装体である。
あるいは、表面に付着するカビおよび/または藻の繁殖を抑制するための塗装体であって、基材と、該基材上に形成された表面層とを有し、紫外線を含む光の照射後のカビ胞子の細胞膜損傷度が50%未満であり、かつ、紫外線を含む光の照射後のATP値が0RLU/cmを超え500RLU/cm未満である特性を備え、紫外線を含む光が前記表面層に照射されるとともに、前記塗装体が、その表面にカビ胞子が付着する環境にさらされて使用される、塗装体の表面に付着するカビおよび/または藻の繁殖を抑制することを特徴とする塗装体である。
なお、本発明における「ATP値」「カビ胞子の細胞膜損傷度」および「生存胞子率」について、定義および測定方法を以下に示す。
ATP値
本発明において、ATP値はカビ胞子の生理活性を示す値であって、塗装体表面がカビ胞子に及ぼす影響の程度を指標化したものとして扱っている。そして、ATP値は、ルシフェラーゼを利用した発光反応を計測して得られる値である。ATP値は次のように定義される。
ATP値の定義
本発明において、「ATP値」とは、ルシフェラーゼによる発光反応とピルベートオルトホスフェートジキナーゼを組み合わせた酵素サイクリング法を利用したATPおよびAMPの総量に比例した発光量と定義する。
可視光照射後のATP値(定義)
胞子濃度:1×10個/mLのカビ(Nothophoma sp.)の胞子液と10%ツァペックドックス液体培地とを当量混合した接種液を、清浄化された塗装体(25mm×25mm)の全面に0.1mL塗抹し、乾燥する。その後、気温28℃、相対湿度100%に調湿した環境下で可視光を照射する。次いで、ルシフェラーゼによる発光反応とピルベートオルトホスフェートジキナーゼを組み合わせた酵素サイクリング法を利用したATPおよびAMPの総量に比例した発光量を「可視光照射後のATP値」と定義する。ここで、可視光照射には、光源に白色蛍光灯(日立アプライアンス株式会社製、FLR40SW/M/36-B)を用いて、紫外線カットフィルターを通した波長400nm以上の可視光を、照度5000lx(トプコンテクノハウス社製の照度計:IM-5にて計測)で48時間照射するものとする。
紫外線を含む光の照射後のATP値(定義)
胞子濃度:1×10個/mLのカビ(Nothophoma sp.)の胞子液と10%ツァペックドックス液体培地とを当量混合した接種液を、清浄化された塗装体(25mm×25mm)の全面に0.1mL塗抹し、乾燥する。その後、気温28℃、相対湿度100%に調湿した環境下で可視光を照射する。次いで、ルシフェラーゼによる発光反応とピルベートオルトホスフェートジキナーゼを組み合わせた酵素サイクリング法を利用したATPおよびAMPの総量に比例した発光量を「紫外線を含む光の照射後のATP値」と定義する。ここで、紫外線を含む光の照射には、光源にBLBランプ(三共電気株式会社製、FL40SBLB)を用いて、紫外線強度0.5mW/cm(トプコンテクノハウス社製の紫外線強度計:UVR-2にて計測)で48時間照射する。
ATP値の測定方法
可視光照射後のATP値、または紫外線を含む光照射後のATP値は、以下の測定方法によって求められる。当該測定方法は、試料の準備、カビ胞子の接種、乾燥、光照射、光照射後のATP値の定量、の工程からなる。
(試料の準備)
予め試料となる塗装体は25mm×25mmにカットした後、水洗や殺菌により清浄化した後、乾燥して試料とする。殺菌処理は殺菌灯を照射する方法が好ましい。
(カビ胞子の接種)
現場から単離したカビ(Nothophoma sp.)をポテトデキストロース寒天斜面培地で28℃、7〜14日間前培養し、前培養によって得られた胞子を0.005wt%のTween80を含有させた滅菌精製水に懸濁させ、胞子濃度が1×10個/mLとなるように滅菌精製水で希釈して胞子液を調製する。この胞子液を10%ツァペックドックス液体培地と当量混合して接種液を調製する。試料の表面に接種液を0.1mL滴下した後、全面に塗抹する。なお、光照射直前のATP値が100±50RLU/cmとなるように、前培養の期間を適宜調整する。また、胞子液の調製から塗抹までの工程は、胞子液を調製した日に行うものとする。
(乾燥)
次いで、クリーンベンチ内に前記の混合液を塗抹した塗装体を静置して25℃で3時間乾燥させる。その際、クリーンベンチ内はファンで空気を攪拌した状態にする。乾燥後の塗装体を、気温28℃、相対湿度100%に調湿した環境下に静置する。
(光照射)
可視光の照射条件は上述の可視光照射後のATP値の定義に従う。紫外線を含む光の照射条件は上述の紫外線を含む光の照射後のATP値の定義に従う。
(ATP値の定量)
ATPの定量には、(株)キッコーマン製のATPふき取り検査システムを利用する。塗装体表面を同社製の「ルシパック(登録商標)Pen」でふき取り、同社製「ルミテスター(登録商標)PD−30」に挿入して、発光量を測定して、塗装体表面の単位面積当たりのATP値に換算する。
本発明において、カビおよび/または藻の繁殖が抑制される機能は、以下の指標(すなわち「カビ胞子の細胞膜損傷度」および「生存胞子率」によって評価することが可能である。
カビ胞子の細胞膜損傷度
本発明において、カビ胞子の細胞膜損傷度は以下のように定義する。
カビ胞子の細胞膜損傷度(定義)
本発明において、「カビ胞子の細胞膜損傷度」は、細胞膜透過性の核染色試薬による緑色蛍光を発する胞子数と、細胞膜非透過性の核染色試薬による赤色蛍光を発する胞子数を計測して、その合計数に対する赤色蛍光を発する胞子数の比率として定義する。なお、発芽の段階および菌糸伸長の段階に至った胞子が存在した場合にはそれを計測対象から除外して比率を算出することとする。
可視光照射後のカビ胞子の細胞膜損傷度(定義)
胞子濃度:1×10個/mLのカビ(Nothophoma sp.)の胞子液を、滅菌された塗装体(25mm×25mm)の全面に0.1mL塗抹し、乾燥後、気温28℃、相対湿度100%に調湿した環境下で可視光を照射した後の細胞膜損傷度として定義する。ここで、可視光照射には、光源に白色蛍光灯(日立アプライアンス株式会社製、FLR40SW/M/36-B)を用いて、紫外線カットフィルターを通した波長400nm以上の可視光を、照度5000lx(トプコンテクノハウス社製の照度計:IM-5)で48時間照射するものとする。
紫外線を含む光の照射後のカビ胞子の細胞膜損傷度(定義)
胞子濃度:1×10個/mLのカビ(Nothophoma sp.)の胞子液を、滅菌された塗装体(25mm×25mm)の全面に0.1mL塗抹し、乾燥後、気温28℃、相対湿度100%に調湿した環境下で紫外線を含む光を照射した後の細胞膜損傷度として定義する。ここで、紫外線を含む光の照射には、光源にBLBランプ(三共電気株式会社製、FL40SBLB)を用いて、紫外線強度0.5mW/cm(トプコンテクノハウス社製の紫外線強度計:UVR-2)で48時間照射する。
カビ胞子の細胞膜損傷度の測定方法
可視光照射後の、または紫外線を含む光照射後の、カビ胞子の細胞膜損傷度は、以下の測定方法によって求められる。当該測定方法は、試料の準備、カビ胞子の接種、乾燥、光照射、光照射後のカビ胞子の細胞膜損傷度の定量、の工程からなる。
(試料の準備)
上記のATP値の測定における試料の準備工程と同様である。
(カビ胞子の接種)
現場から単離したカビ(Nothophoma sp.)をポテトデキストロース寒天斜面培地で28℃、7〜14日間前培養し、前培養によって得られた胞子を0.005wt%のTween80を含有させた滅菌精製水に懸濁させ、胞子濃度が1×10個/mLとなるように滅菌精製水で希釈して胞子液を調製する。試料の表面に胞子液を0.1mL滴下した後、全面に塗抹する。
(乾燥)
上記のATP値の測定における乾燥工程と同様である。
(光照射)
可視光の照射条件は上述の可視光照射後のカビ胞子の細胞膜損傷度の定義に従う。紫外線を含む光の照射条件は上述の紫外線を含む光の照射後のカビ胞子の細胞膜損傷度の定義に従う。
(カビ胞子の細胞膜損傷度の定量)
定量手順は以下に従う。
(1)Thermo Fisher 社製の核染色キット「LIVE/DEADTM FungaLightTM Yeast Viability Kit, for flow cytometry 」を使用する。滅菌精製水に、SYTOTM9 Stain(細胞膜透過性の核染色試薬,以降SYTO9と表記)を濃度15μM、Propidium iodide(細胞膜非透過性の核染色試薬,以降PIと表記)を濃度75μMとなるように溶解して、2種類の染色試薬を溶解した蛍光染色液を調製する。
(2)塗装体表面に、前記蛍光染色液を50μL滴下する。蛍光染色液を滴下したサンプルを25℃、遮光下で30分間静置した後に、過剰な蛍光染色液を水洗し、共焦点蛍光顕微鏡を用いて、波長488nmおよび561nmのレーザー光を励起光として照射し、2種の核染色試薬が発する蛍光を観察する。SYTO9は493〜584nmの波長域に蛍光を発し、緑色を呈する。一方、PIは584〜627nmの波長域に蛍光を発し、赤色を呈する。
(3)倍率340倍で観察したカビ胞子のうち、発芽・菌糸伸長の段階に至ったものを除外し、緑色蛍光を発している胞子と赤色蛍光を発している胞子の数量を計測し、その合計を全胞子数とする。赤色蛍光を発している胞子を「膜損傷あり」として、全胞子数に対する「膜損傷あり」の胞子数の比率を算出して細胞膜損傷度とする。
生存胞子率
本発明において、生存胞子率は以下のように定義する。
生存胞子率(定義)
清浄化した塗装体と対照であるガラス板の各全面(25mm×25mm)に、胞子濃度:1×10個/mLのカビ(Nothophoma sp.)の胞子液を、0.1mL塗抹し、乾燥後、気温28℃、相対湿度100%に調湿した環境下で光照射した後、胞子を回収し、10%ツァペックドックス寒天培地で混釈し、28℃で7日間培養し、形成したコロニー数を生存胞子数とする。対照の生存胞子数に対する塗装体表面の生存胞子数の比率を生存胞子率として定義する。
可視光照射後の生存胞子率(定義)
上記生存胞子率の定義における「光照射」を可視光照射条件とする。その条件は、光源に白色蛍光灯(日立アプライアンス株式会社製、FLR40SW/M/36-B)を用いて、紫外線カットフィルターを通した波長400nm以上の可視光を、照度5000lx(トプコンテクノハウス社製の照度計:IM-5にて計測)で24時間照射するものとする。
紫外線を含む光を照射後の生存胞子率(定義)
上記生存胞子率の定義における「光照射」を、紫外線を含む光の照射条件とする。その条件は、光源にBLBランプ(三共電気株式会社製、FL40SBLB)を用いて、紫外線強度0.5mW/cm(トプコンテクノハウス社製の紫外線強度計:UVR-2にて計測)で24時間照射するものとする。
生存胞子率の測定方法
可視光照射後の、または紫外線を含む光照射後の、生存胞子率は、以下の測定方法によって求められる。当該測定方法は、試料の準備、カビ胞子の接種、乾燥、光照射、光照射後の生存胞子率の定量、の工程からなる。
(試料の準備)
上記のATP値の測定における試料の準備工程と同様である。対照としてガラス板を用意し、その処理は塗装体と同様に扱う。
(カビ胞子の接種)
上記のカビ胞子の細胞膜損傷度の測定におけるカビ胞子の接種工程と同様である。対照についても塗装体と同様の操作を行う。
(乾燥)
上記のATP値の測定における乾燥工程と同様である。対照についても塗装体と同様の操作を行う。
(光照射)
可視光の照射条件は上述可視光照射後の生存胞子率の定義に従う。紫外線を含む光の照射条件は上述の紫外線を含む光の照射後の生存胞子率の定義に従う。
(カビ胞子の生存胞子率の定量)
定量手順は以下に従う。
光照射した後の塗装体および対照を、回収液(ジオクチルスルホこはく酸ナトリウムを0.005wt%、塩化ナトリウムを0.891wt%、それぞれ含有する水溶液)4.5mlと共に、ストマッカー袋に封入し、超音波洗浄機(AS ONE社製、V-F100)を利用して、出力100W (50kHz) で5分間、超音波照射することで、塗装体表面からカビ・胞子を回収する。次いで、胞子を含んだ本回収液を、10%ツァペックドックス寒天培地で混釈し、28℃で7日間培養し、形成したコロニー数を生存胞子数とする。対照の生存胞子数に対する塗装体表面の生存胞子数の比率を生存胞子率とする。
基材
本発明の上記塗装体において用いられる基材は、金属、無機材料、有機材料およびそれらの複合材であることができる。その具体例としては、タイル、衛生陶器、食器、ケイ酸カルシウム板、セメント押し出し成形板、セラミック基板、半導体等のニューセラミックス、碍子、ガラス、鏡、木材、樹脂などが挙げられる。また、部材の用途として表したときの基材の例としては、建物外装材、建物内装材、窓枠、窓ガラス、構造部材、乗物の外装、物品の防塵カバー、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用防音壁、鉄道用防音壁、橋梁、ガードレール、トンネル内装および塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバー、台所用品、食器洗浄器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、保護フィルムなどが挙げられる。なお、上記部材は、印刷、塗装、被覆、または積層等による被膜が形成された部材も含まれる。
表面層
本発明の表面層は、蛍石構造の酸素欠損を有する平均結晶子径が10nm以下の酸化セリウム粒子であって、ラマン分光スペクトルにおいて、Ce−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークが、標準物質を測定して得られるCe−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークに対して、低波数側に2cm−1超ずれている酸化セリウム粒子を含有する表面層である。
本発明の塗装体の一実施形態においては、基材上に形成された表面層が、塗装体の最表面に位置する。
この本発明の一実施形態においては、表面層に可視光が照射される。そして、表面層は、可視光照射後のカビ胞子の細胞膜損傷度が10%未満であり、かつ、可視光照射後のATP値が0RLU/cmを超え1000RLU/cm未満、より好ましくは0RLU/cmを超え500RLU/cm未満、最も好ましくは0RLU/cmを超え300RLU/cm未満である特性を備えるのが好ましい。
本発明の一実施形態において、表面層は、上記表面に付着するカビ胞子の、可視光照射後の生存胞子率が50%を超えるのが好ましい。
本発明の他の実施形態においては、表面層に紫外線を含む光が照射される。そして、表面層は、紫外線を含む光の照射後のカビ胞子の細胞膜損傷度が50%未満であり、かつ、紫外線を含む光の照射後のATP値が0RLU/cmを超え500RLU/cm未満、より好ましくは0RLU/cmを超え300RLU/cm未満である特性を備えるのが好ましい。紫外線を含む光の照射後の細胞膜損傷度は、30%未満であることが、より好ましく、10%未満であることが、特に好ましい。
本発明の他の実施形態において、表面層は、上記表面に付着するカビ胞子の、紫外線を含む光の照射後の生存胞子率が50%を超えるのが好ましい。
本発明の表面層は、機能的な観点からは、可視光の照射後のカビ胞子の細胞膜損傷度が10%未満であり、かつ、可視光照射後のATP値が0RLU/cmを超え1000RLU/cm未満、より好ましくは0RLU/cmを超え500RLU/cm未満、最も好ましくは0RLU/cmを超え300RLU/cm未満である表面層である特性を備え、可視光を含む光が前記表面層に照射されるとともに、カビ胞子が付着する環境にさらされて使用されることが好ましい。
あるいは、本発明の表面層は、機能的な観点からは、紫外線を含む光の照射後のカビ胞子の細胞膜損傷度が50%未満であり、かつ、紫外線を含む光の照射後のATP値が0RLU/cmを超え500RLU/cm未満である特性を備え、紫外線を含む光が前記表面層に照射されるとともに、カビ胞子が付着する環境にさらされて使用されることが好ましい。
本発明の表面層には、さらにシリカ粒子が含有されていてもよい。また、シリカ粒子以外の、本発明の機能を害さない任意の成分を含有することが許容される。
本発明の表面層は、上記カビおよび/または藻が層中を貫通しない多孔質構造であるようにするのが好ましい。
そのためには、表面層中のマトリックス成分が30質量%未満、より好ましくは10質量%未満、さらに好ましくは0質量%であるようにするのが好ましい。
また、上記カビおよび/または藻が層中を貫通しない構造としては、クラック面積÷(クラック周囲長÷2)で算出される平均クラック幅が、好ましくは3μm未満、より好ましくは1μm未満とするのが好ましい。ここで、クラック面積およびクラック周囲長は、走査型電子顕微鏡による画像解析により測定される。
本発明の塗装体において、表面層は膜厚が0.1μm以上5μm以下、より好ましくは0.3μm以上3μm以下、最も好ましくは0.5μm以上2μm以下であることが、カビ繁殖の抑制と耐摩耗性との両立の観点から好ましい。ここで膜厚は電子顕微鏡による断面観察に基づき、計測可能である。
酸化セリウム粒子
本発明で利用される酸化セリウム粒子は、蛍石構造の酸素欠損を有する平均結晶子径が10nm以下の酸化セリウム粒子であって、ラマン分光スペクトルにおいて、Ce−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークが、標準物質を測定して得られるCe−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークに対して、低波数側に2cm−1超ずれている酸化セリウム粒子である。
本発明において、酸素欠損を有する酸化セリウムとは、CeO2−x(0<x<1)の非量論組成の酸化セリウムを意味する。
また、本発明において、平均結晶子径は、CuKα線をX線源とした粉末X線回折法により、蛍石構造の酸化セリウムの2θピークパターン(ICDDカード番号:01−078−5328)に記載された最強線ピーク(結晶面111に対応する)の積分幅を計測し、シェラー式により算出する。ここで、他の配合成分とピークが重なる場合は、結晶面200に対応するピークを用いることができる。なお、積分幅の計測においては、X線回折図形のバックグランドを除くパターンフィッティング処理を行うものとする。
本発明における酸化セリウムは、ラマン分光スペクトルにおけるCe−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークが、標準物質を測定して得られるCe−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークに対して、低波数側に2cm−1超ずれていることを特徴とする。ここで、標準物質は、高純度化学研究所製の酸化セリウム(IV),純度99.99%(CEO04PB)を使用する。標準物質を測定して得られるCe−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークは、下記の計測条件によれば、波数約460cm−1に現れる。本発明において、低波数側へのずれは、標準物質のCe−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークが検出される波数からのずれで定義することとする。
本発明において、上記ピークのずれ(シフト)は、好ましい下限値が4以上、より好ましくは6以上であり、好ましい上限値は10以下である。
前記酸化セリウム粒子は、ラマン分光スペクトルにおいて、さらに、O 2−(過酸化物種)に帰属されるピークを有する酸化セリウム粒子であるのが好ましい。ここで、O 2−に帰属されるピークとは、J. Phys. Chem. C 2017, 121(38), 20834-20849、および、J. Phys. Chem. B 2004, 108, 5341-5348に報告されており、具体的には800cm−1〜900cm−1に生じるピークである。
また、上述の過酸化物種は、J. Phys. Chem. B 2004, 108, 5341-5348によれば、そのような活性化された吸着酸素が種々の酸化反応を触媒することが記載されている。したがって、このピークは本発明において、カビ胞子の発芽抑制に係るストレスに関連していると考えられるピークである。
上記における、ラマン分光の測定値は、下記条件での計測に基づく。
装置:ナノフォトン製 RAMANTouch
レーザー波長:532nm
波数校正:シリコンウェハーにおけるSiのF2g振動モード(波数520cm−1を基準とする。
なお、試料によってラマン強度が適正範囲を超える場合は、レーザー出力を調整する。
本発明において、ラマン分光法による評価は、(1)塗装体から表面層を取り出して粉砕して得た粉体、またはコーティング組成物を乾燥して得た粉体から調製された試料を使用するか、または(2)塗装体を試料として使用することができる。
(1)における試料の調製は、次のいずれかを選択する。
・基材表面に形成された表面層を、超純水で洗浄し、乾燥した後、試料とする。洗浄は、洗浄後の水の電気伝導度が10μS/cm以下になるまで行う。
・塗装体から表面層をはがし、乳鉢等で粉砕した後、超純水で洗浄する。洗浄は、洗浄水の電気伝導度が10μS/cm以下になるまで行う。洗浄後の粉砕物を乾燥して試料とする。
・後述するコーティング組成物を乾燥し、得られた乾燥物を超純水で洗浄する。洗浄は洗浄後の水の電気伝導度が10μS/cm以下になるまで行う。洗浄後に乾燥して試料とする。
(2)における試料の調製は、次のいずれかを選択する。
・表面層の基材側の面よりも基材側に、すなわち、基材または基材と表面層との間に存在し、かつ表面層と接している中間層に、または、表面層と接している基材に、波数460cm−1付近のCe−O結合のF2g振動モードに近接するラマンピークを有する成分を含有しない塗装体の場合は、超純水で洗浄して乾燥した後に、そのまま試料とする。洗浄は、洗浄後の水の電気伝導度が10μS/cm以下になるまで行う。
・石英ガラス板またはソーダライムガラスを基材とする。当該基材を予め洗浄して清浄な基材の表面に、コーティング組成物を適用して表面層を形成する。基材および表面層からなる塗装体を、超純水で洗浄して乾燥した後に、試料とする。洗浄は、洗浄後の水の電気伝導度が10μS/cm以下になるまで行う。
上記表面層中の、上記酸化セリウム粒子の含有量は、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、最も好ましくは10質量%以上であるのが好ましい。
シリカ粒子
上記表面層は、さらにシリカ粒子を含んでいてもよい。そうすることで、酸化セリウム粒子を露出させると共に、結着させて表面層の強度を増すことができる。
上記酸化セリウム粒子に基づくカビ、藻の繁殖抑制の観点からは、上記表面層中の上記酸化セリウム粒子の含有量は、前記シリカ粒子の含有量を100質量部としたときに、好ましくは1質量部超、より好ましくは5質量部、さらに好ましくは10質量部、さらに好ましくは20質量部超、最も好ましくは40質量部超であるのがよい。
また、親水性維持の観点からは、上記塗装体の表面層中にシリカ粒子を含有する場合、上記酸化セリウム粒子の含有量が、前記シリカ粒子の含有量を100質量部としたときに、120質量部未満、より好ましくは80質量部未満、最も好ましくは100質量部未満であるのが好ましい。
上記シリカ粒子は、上記塗装体の表面層中に、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、最も好ましくは70質量%以上添加されているのがよい。そうすることで、親水性および表面層の耐磨耗性が良好となる。
上記シリカ粒子は、上記塗装体の表面層中に、好ましくは90質量%未満含有されるとよい。そうすることにより、上記親水性および表面層の耐磨耗性と、上記酸化セリウム粒子の機能と両立できる。
シリカ粒子の平均粒径は、好ましくは100nm未満、より好ましくは50nm未満、さらに好ましくは30nm未満がよい。そうすることで、表面層の耐磨耗性が良好となる。
なお、上記シリカ粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定した個数平均値として算出される。粒子の形状としては真球が最も良いが、略円形や楕円形でも良く、その場合の粒子の長さは((長径+短径)/2)として略算出される。
任意成分
上記表面層には、任意成分として、上記酸化セリウム粒子およびシリカ粒子以外の酸化物粒子および非粒子成分を含んでいてもよい。
上記酸化セリウム粒子およびシリカ粒子以外の酸化物粒子としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、ボロニア、ケイ酸塩等の単一酸化物の粒子、ホウケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、チタン酸バリウム等の複合酸化物の粒子等が利用できる。
(非粒子成分)
非粒子成分としては、例えば、マトリクス成分等が利用できる。
マトリクス成分としては、有機樹脂、有機無機複合樹脂、有機または無機の高分子等が利用できる。
有機樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂等の化合物が利用できる。
有機無機複合樹脂としては、例えば、ケイ素化合物と上記有機樹脂を構成する化合物との複合体が挙げられる。好適に利用可能な有機無機複合樹脂は、シリコーンと上記有機樹脂との複合体であり、具体的には、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂等が利用できる。
有機高分子としては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよびそれらのブロックポリマー等のポリオキシアルキレンが利用できる。
無機高分子としては、例えば、ケイ素、チタン、ジルコニウム、スズ等の金属の単酸化物や、これらの金属の複合酸化物や、あるいは、これらの金属とナトリウム、カリウム、またはリチウムとの複合酸化物が利用できる。これら化合物は、後述される分散媒に可溶性の前駆体化合物を適用して、表面層形成時に生成されることが好ましい。
最表層
本発明の塗装体は、上記表面層の表面に、さらに最表層を形成してもよい。最表層は透光性を有することで、表面層に含まれる酸化セリウムに可視光または紫外線を含有する光を照射することができる。そして、最表層は、厚みを1μm以下、0.5μm以下、または0.1μm以下とすることが好ましい。そうすることで、表面の親水性をより確実に向上させることができ、セルフクリーニング効果を高めることが可能となる。さらに、最表層は物質透過性を有することが好ましく、多孔質であることがより好ましい。最表層の好ましい実施形態としては、上記のシリカ粒子を含んでなる多孔質膜や、上記のシリカ粒子からなる多孔質膜が挙げられる。
塗装体の形成方法
本発明の塗装体は、基材に表面層を形成してなる。表面層の形成方法としては、乾式製膜、湿式製膜のいずれの方法も利用できる。
乾式製膜法としては、PVD、CVD、または、酸化セリウム粒子を含んでなる粉体を減圧環境下で基材に衝突させて、酸化セリウム粒子を堆積させる、いわゆる「Aerosol Deposition」法を利用できる。あるいは、これらの方法によって得られた被膜をポスト処理することで、本発明の酸化セリウムを調製することも可能である。
ここで、ポスト処理としては、不活性ガスまたは還元ガス(例:水素、窒素、一酸化炭素、アルゴン)雰囲気で加熱処理、真空加熱、メカノケミカル(圧力や摺動等の応力を表面層に加えて、本発明の酸化セリウムを作る)、放電処理、プラズマ処理、酸・アルカリ処理、のいずれか、または複数を利用できる。
湿式製膜法としては、後述するコーティング組成物を基材表面に適用する工程を含む方法が挙げられる。
コーティング組成物の基材への適用は、スプレー、ロールコート、ダイコート、またはフローコートによる塗布が好適に利用可能である。また、塗布は、手作業で行っても、機械によって行っても良い。
塗布による湿式製膜法では、工場の製造ラインで塗布してもよいし、現場で塗布してもよい。塗布後の乾燥または加熱条件も、上記酸化セリウム粒子の機能が損なわれない条件であればよく、例えば、常温〜500℃程度の温度条件が好適に利用できる。塗布前の基材のプレヒート、放電処理、プラズマ処理、酸・アルカリ処理等の前処理や、放電処理、プラズマ処理、酸・アルカリ処理、加熱等の後処理も適宜追加可能である。
塗装体の用途
本発明の塗装体は、カビや藻の繁殖を抑制する必要のある、屋内部材、屋外部材として広く利用可能である。
屋内部材としては、衛生陶器、洗面器、洗面鏡、ユニットバス、浴室鏡、キッチン、キッチンシンク、浴室壁、浴室床、浴室天井、局部洗浄装置等の水廻り機器、コンロ、レンジ、キッチンフード、換気扇、まな板、食器、冷蔵庫、食器洗浄器、食器乾燥器等の台所用品、屋内タイル、扉、内装紙、窓ガラス、窓サッシ、収納家具、家屋の収納部構造材、天井、床、壁等の建物内装材、寝具、椅子、机、照明器具、空調設備等の住宅設備、乗物設備等、およびそれらの表面に固定するフィルム等に好適に利用できる。
屋外部材としては、建物外装材、外壁、屋根、屋上設備、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニールハウス、窓ガラス、窓サッシ等、およびそれらの表面に固定するフィルム等に好適に利用できる。
コーティング組成物
本発明の一つの態様により提供されるコーティング組成物は、基材上にコーティングして上記した塗装体を形成可能なものである。したがって、本発明のコーティング組成物は、基材にコーティングするだけで、屋内でもカビ繁殖が抑制される機能や、屋外において優れたカビおよび/または藻の繁殖が抑制される機能を長期にわたり発揮可能となる。
コーティング組成物の実施形態においても、以下の実施形態については、上述した塗装体の実施形態と同様の理由で好ましい形態といえる。
したがって、本発明のコーティング組成物の一発明形態は、蛍石構造の酸素欠損を有する平均結晶子径が10nm以下の酸化セリウム粒子を含有してなり、この酸化セリウム粒子は、ラマン分光スペクトルにおいて、Ce−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークが、標準物質を測定して得られるCe−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークに対して、低波数側に2cm−1超ずれているものであり、このコーティング組成物を基材上にコーティングしてなる表面層を備えた塗装体は、この塗装体の表面に付着するカビおよび/または藻の繁殖を抑制することを特徴とするものである。
ここで、酸化セリウム粒子の平均結晶子径は、CuKα線をX線源とした粉末X線回折法により、蛍石構造の酸化セリウムの2θピークパターン(ICDDカード番号:01−078−5328)に記載された最強線ピーク(結晶面111に対応する)の積分幅を計測し、シェラー式により算出する。ここで、他の配合成分とピークが重なる場合は、結晶面200に対応するピークを用いることができる。なお、積分幅の計測においては、X線回折図形のバックグランドを除くパターンフィッティング処理を行うものとする。
本発明では、酸化セリウム粒子の酸素欠陥の評価をラマン分光法にて行う。本発明における酸化セリウムは、ラマン分光スペクトルにおけるCe−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークは、標準物質を測定して得られるCe−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークに対して、低波数側に2cm−1超ずれていることを特徴とする。ここで、標準物質は、高純度化学研究所製の酸化セリウム(IV),純度99.99%(CEO04PB)を使用する。標準物質を測定して得られるCe−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークは、下記の計測条件によれば、波数約460cm−1に現れる。本発明において、低波数側へのずれは、標準物質のCe−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークが検出される波数からのずれで定義することとする。
本発明において、上記ピークのずれ(シフト)は、好ましい下限値が4以上、より好ましくは6以上であり、好ましい上限値は10以下である。
前記酸化セリウム粒子は、ラマン分光スペクトルにおいて、さらに、O 2−(過酸化物種)に帰属されるピークを有する酸化セリウム粒子であるのが好ましい。ここで、O 2−に帰属されるピークとは、J. Phys. Chem. C 2017, 121(38), 20834-20849、および、J. Phys. Chem. B 2004, 108, 5341-5348に報告されており、具体的には800cm−1〜900cm−1に生じるピークである。
また、上述の過酸化物種は、J. Phys. Chem. B 2004, 108, 5341-5348によれば、そのような活性化された吸着酸素が種々の酸化反応を触媒することが記載されている。したがって、このピークは本発明に基づくカビ繁殖に関連するピークと考えられる。
上記における、ラマン分光の測定値は、下記条件での計測に基づく。
装置 :ナノフォトン製 RAMANTouch
レーザー波長 :532nm
波数校正 :シリコンウェハーにおけるSiのF2g振動モード(波数520cm−1を基準とする。
なお、試料によってラマン強度が適正範囲を超える場合は、レーザー出力を調整する。
また、上記ラマン分光測定のために準備する試料の作製手順は以下の通りである。
本発明において、ラマン分光法による評価は、(1)塗装体から表面層を取り出して粉砕して得た粉体、またはコーティング組成物を乾燥して得た粉体から調製された試料を使用するか、または(2)塗装体を試料として使用することができる。
(1)における試料の調製は、次のいずれかを選択する。
・基材表面に形成された表面層を、超純水で洗浄し、乾燥した後、試料とする。洗浄は、洗浄後の水の電気伝導度が10μS/cm以下になるまで行う。
・塗装体から表面層をはがし、乳鉢等で粉砕した後、超純水で洗浄する。洗浄は、洗浄水の電気伝導度が10μS/cm以下になるまで行う。洗浄後の粉砕物を乾燥して試料とする。
・後述するコーティング組成物を乾燥し、得られた乾燥物を超純水で洗浄する。洗浄は洗浄後の水の電気伝導度が10μS/cm以下になるまで行う。洗浄後に乾燥して試料とする。
(2)における試料の調製は、次のいずれかを選択する。
・表面層の基材側の面よりも基材側に、すなわち、基材または基材と表面層との間に存在し、かつ表面層と接している中間層に、または、表面層と接している基材に、波数460cm−1付近のCe−O結合のF2g振動モードに近接するラマンピークを有する成分を含有しない塗装体の場合は、超純水で洗浄して乾燥した後に、そのまま試料とする。洗浄は、洗浄後の水の電気伝導度が10μS/cm以下になるまで行う。
・石英ガラス板またはソーダライム板を基材とする。当該基材を予め洗浄して清浄な基材の表面に、コーティング組成物を適用して表面層を形成する。基材および表面層からなる塗装体を、超純水で洗浄して乾燥した後に、試料とする。洗浄は、洗浄後の水の電気伝導度が10μS/cm以下になるまで行う。
上記コーティング組成物中の、上記酸化セリウム粒子の含有量は、前記コーティング組成物中の被膜形成成分の合計量を100質量部としたときに、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、最も好ましくは10質量%以上であるのが好ましい。
ここで、被膜形成成分とは、本発明における表面層を構成する成分であって、必須成分として酸化セリウム粒子、任意成分として、シリカ粒子、酸化セリウム粒子およびシリカ粒子以外の酸化物粒子、ならびに非粒子成分である。コーティング組成物において、これらの成分の前駆体が存在する場合は、組成物が適用された後の生成物が被膜形成成分である。
なお、粒子成分および非粒子成分に有機成分を含まない場合は、コーティング組成物に含まれる分散媒や、非反応性かつ分散媒に可溶性の添加剤(例:界面活性剤、増粘剤、または高沸点溶剤、等)は被膜形成成分には該当しないものとする。この場合、被膜形成成分の定量はコーティング組成物の400℃で加熱後の強熱残分の恒量値から求めることする。
また、粒子成分および非粒子成分に有機成分を含む場合は、被膜形成成分の定量はコーティング組成物を110℃に加熱した後の恒量を求めることで行うものとする。
コーティング組成物中に被膜形成成分は0.1質量%以上80質量%以下含有することが好ましい。
上記コーティング組成物には、さらにシリカ粒子を含んでいてもよい。そうすることで、酸化セリウム粒子を露出させると共に、結着させて表面層の強度を増すことができる。
上記コーティング組成物中の、酸化セリウム粒子の含有量は、前記シリカ粒子の含有量を100質量部としたときに、好ましくは1質量部超、より好ましくは5質量部、さらに好ましくは10質量部、さらに好ましくは20質量部超、最も好ましくは40質量部超であるのがよい。
また、親水性維持の観点からは、上記コーティング組成物中にシリカ粒子を含有する場合、上記酸化セリウム粒子の含有量が、前記シリカ粒子の含有量を100質量部としたときに、120質量部未満、より好ましくは80質量部未満、最も好ましくは100質量部未満であるのが好ましい。
上記シリカ粒子は、上記コーティング組成物中の被膜形成成分の合計量を100質量部としたときに、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、最も好ましくは70質量%以上添加されているのがよい。そうすることで、親水性および表面層の耐磨耗性が良好となる。
上記シリカ粒子は、上記コーティング組成物中の被膜形成成分の合計量を100質量部としたときに、好ましくは90質量%未満含有されるとよい。そうすることにより、上記親水性および表面層の耐磨耗性と、上記酸化セリウム粒子の機能と両立できる。
シリカ粒子の平均粒径は、好ましくは100nm未満、より好ましくは50nm未満、さらに好ましくは30nm未満がよい。そうすることで、表面層の耐磨耗性が良好となる。
なお、上記シリカ粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定した個数平均値として算出される。粒子の形状としては真球が最も良いが、略円形や楕円形でも良く、その場合の粒子の長さは((長径+短径)/2)として略算出される。
上記コーティング組成物は、基材上にコーティングしてなる表面層を備えた塗装体を形成した後に、前記塗装体の表面に付着するカビおよび/または藻の繁殖を抑制する形態で利用される。
ここで、基材上へのコーティング方法として、乾式製膜法および湿式製膜法がある。
乾式製膜法に用いるコーティング組成物は、上記酸化セリウム粒子を含む粉体からなる。
アトラーター、ビーズミル等を利用して上記酸化セリウム粒子を含む所望の組成の粉体を作製し、コーティング組成物とする。
湿式製膜法に用いるコーティング組成物では、分散媒を含有させ、コーティング組成物とする。
上記コーティング組成物は、上記酸化セリウム粒子、および必要に応じて添加する他の固形成分やその前駆体を分散媒に分散させることで作製可能である。現場塗装では、この方法のほうが利便性に優れる。
上記コーティング組成物には、任意成分として、上記酸化セリウム粒子およびシリカ粒子以外の酸化物粒子、非粒子成分および添加剤から選択される少なくとも一つを含んでいてもよい。
上記酸化セリウム粒子およびシリカ粒子以外の酸化物粒子としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、ボロニア、ケイ酸塩等の単一酸化物の粒子、ホウケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、チタン酸バリウム等の複合酸化物の粒子等が利用できる。
本発明の好ましい実施形態としては、上記コーティング組成物中の全固形分を100質量部としたときに、非粒子成分が、10質量部未満であるようにする。
そうすることで、基材上に被膜を形成したときに、カビおよび/または藻が層中を貫通しない多孔質構造を作製することが容易となる。そして、被膜が多孔質構造であることで、上記酸化セリウム粒子の機能が発揮されやすくなるとともに、貫通しない構造であることで基材との接触面を足場にカビおよび/または藻が繁殖することを抑止できるようになる。
非粒子成分としては、例えば、マトリクス成分等が利用できる。
マトリクス成分としては、有機樹脂、有機無機複合樹脂、有機または無機の高分子、有機金属の重合体等が利用できる。
有機樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂等の化合物を、溶液または分散体の形態で利用できる。あるいは、これら樹脂を形成可能な前駆体、例えば、不飽和二重結合を有する単量体、イソシアネート化合物、アミン類、およびこれらのオリゴマー等も利用可能である。
有機無機複合樹脂としては、例えば、ケイ素化合物と上記有機樹脂を構成する化合物との複合体が挙げられる。好適に利用可能な有機無機複合樹脂は、シリコーンと上記有機樹脂との複合体であり、具体的には、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂等を、溶液または分散体の形態で利用できる。または、シリコーンを形成可能な前駆体および上記有機樹脂を形成可能な前駆体も利用可能である。
有機高分子としては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよびそれらのブロックポリマー等のポリオキシアルキレンが利用できる。
無機高分子としては、例えば、ケイ素、チタン、ジルコニウム、スズ等の金属の単酸化物や、これらの金属の複合酸化物や、あるいは、これらの金属とナトリウム、カリウム、またはリチウムとの複合酸化物を形成可能な前駆体が利用できる。このような前駆体としては、金属塩、ハロゲン化金属化合物、金属アルコキシド、およびこれらの加水分解物、または金属過酸化物を利用できる。
添加剤としては、公知のレベリング剤、消泡剤、分散剤、pH調整剤等が利用できる。
本発明の好ましい実施形態としては、上記コーティング組成物は、さらに分散媒を含有してなる。これにより、基材上に均質な被膜を形成しやすくなる。分散媒としては、水および/または非水溶剤を好適に利用可能であり、非水溶剤としては、公知の有機溶剤を利用可能であり、アルコール等の水溶性溶剤や、水難溶性または水不溶性の溶剤が好適に利用できる。
コーティング組成物の使用形態
上記コーティング組成物の一使用形態としては、基材上にコーティングしてなる表面層を備えた塗装体を形成した後に、上記表面層に可視光が照射されるとともに、前記塗装体の表面に付着するカビおよび/または藻の繁殖を抑制する形態で利用される。
上記コーティング組成物の他の使用形態としては、基材上にコーティングしてなる表面層を備えた塗装体を形成した後に、紫外線を含む光が照射されるとともに、前記塗装体の表面に付着するカビおよび/または藻の繁殖を抑制する形態で利用されるのも好ましい利用形態である。
カビ繁殖を抑制する方法
本発明では、カビ繁殖を抑制する方法であって、カビの胞子の細胞膜に損傷を与えることなく、カビの胞子の代謝を抑制する物質を、その胞子に作用させることを特徴とする、カビ繁殖を抑制する方法を提供する。この方法によれば、カビ繁殖が抑制される機能を長期にわたり発揮可能となる。
上記発明において、上記効果が実現される理由は定かではないが、以下のようなものではないかと考えられる。ただし、以下の説明はあくまで仮説にすぎず、本発明は何ら以下の仮説によって限定されるものではない。
カビの胞子の細胞膜に損傷を与える、または、死滅させる、一般的な防カビ方法では、カビ中のタンパク質が細胞組織外に滲みだした状態で残存・堆積し、それが新たに外部から付着するカビ胞子の足場になり栄養源となって、次第にカビや細菌等が含まれる堆積層が形成されて光の届きにくい部分が生じてしまい、特に屋内等では長期的には次第に効力を失うが、本発明では、カビの胞子の細胞膜に損傷を与えないために上記の一般の防カビ剤の短所を改善することができ、かつ、発芽・増殖をさせないためと考えられる。
本発明では、藻繁殖の抑制方法であって、カビの胞子の細胞膜に損傷を与えることなく、カビの胞子の代謝を抑制する物質をその胞子に作用させてカビの繁殖を抑制することによって、藻繁殖を抑制する方法を提供する。この方法によれば、屋外において優れた藻の繁殖が抑制される機能を長期にわたり発揮可能となる。
本発明者は、屋外での藻の付着機構につき、観察研究したところ、藻類は、カビ胞子が発芽し、次いで伸長したり分岐したりした菌糸に付着し繁殖することを見出した。したがって、カビの繁殖を有効に長期にわたり繁殖抑制できれば、屋外での塗装面の藻類の繁殖も防止できる。
上記カビ繁殖を抑制する方法、および、藻繁殖の抑制方法では、前記胞子の代謝の抑制は、それをATP値で表したとき、可視光照射後のATP値を0RLU/cmを超え1000RLU/cm未満、より好ましくは0RLU/cmを超え500RLU/cm未満、最も好ましくは0RLU/cmを超え300RLU/cm未満にするのがよい。
上記カビ繁殖を抑制する方法、および、藻繁殖の抑制方法では、前記胞子の代謝の抑制は、それをATP値で表したとき、紫外線を含む光の照射後のATP値を0RLU/cmを超え500RLU/cm未満、好ましくは0RLU/cmを超え300RLU/cm未満にするのがよい。
そうすることで、発芽・繁殖を有効に抑制することができる。
本発明では、表面に付着するカビおよび/または藻の繁殖を抑制するための塗装体であって、基材と、該基材上に形成された表面層とを有し、その表面は、可視光照射後に、表面に付着するカビ胞子の細胞膜損傷度が10%未満であり、かつ、可視光照射後のATP値が0RLU/cmを超え1000RLU/cm未満、より好ましくは0RLU/cmを超え500RLU/cm未満、最も好ましくは0RLU/cmを超え300RLU/cm未満である特性を備え、可視光が前記表面層に照射されるとともに、前記塗装体が、その表面にカビ胞子が付着する環境にさらされて使用される、塗装体の表面に付着するカビおよび/または藻の繁殖を抑制することを特徴とする塗装体を提供する。
そうすることで、屋内でもカビ繁殖が抑制される機能や、屋外において優れたカビおよび/または藻の繁殖が抑制される機能を長期にわたり発揮可能となる。
カビの胞子の細胞膜に損傷を与える、または、死滅させる、一般的な防カビ方法では、カビ中のタンパク質が細胞組織外に滲みだした状態で残存・堆積し、それが新たに外部から付着するカビ胞子の足場になり栄養源となって、次第にカビや細菌等が含まれる堆積層が形成されて光の届きにくい部分が生じてしまい、特に屋内等では長期的には次第に効力を失うが、本発明では、カビの胞子の細胞膜に損傷を与えないために上記の一般の防カビ剤の短所を改善することができ、かつ、発芽・増殖をさせないためと考えられる。
本発明では、表面に付着するカビおよび/または藻の繁殖を抑制するための塗装体であって、基材と、該基材上に形成された表面層とを有し、その表面は、紫外線を含む光の照射後のカビ胞子の細胞膜損傷度が50%未満であり、かつ、紫外線を含む光の照射後のATP値が0RLU/cmを超え500RLU/cm未満である特性を備え、紫外線を含む光が前記表面層に照射されるとともに、前記塗装体が、その表面にカビ胞子が付着する環境にさらされて使用される、塗装体の表面に付着するカビおよび/または藻の繁殖を抑制することを特徴とする塗装体を提供する。
そうすることで、屋内でもカビ繁殖が抑制される機能や、屋外において優れたカビおよび/または藻の繁殖が抑制される機能を長期にわたり発揮可能となる。
カビの胞子の細胞膜に損傷を与える、または、死滅させる、一般的な防カビ方法では、カビ中のタンパク質が細胞組織外に滲みだした状態で残存・堆積し、それが新たに外部から付着するカビ胞子の足場になり栄養源となって、次第にカビや細菌等が含まれる堆積層が形成されて光の届きにくい部分が生じてしまい、特に屋内等では長期的には次第に効力を失うが、本発明では、カビの胞子の細胞膜に損傷を与えないために上記の一般の防カビ剤の短所を改善することができ、かつ、発芽・増殖をさせないためと考えられる。
生物汚れの防止方法
本発明のカビ繁殖を抑制する方法は、カビの胞子の細胞膜に損傷を与えることなく、該胞子の代謝を抑制する物質を該胞子に作用させる方法である。
また、本発明の藻繁殖を抑制する方法は、カビの胞子の細胞膜に損傷を与えることなく、該胞子の代謝を抑制する物質を該胞子に作用させてカビの繁殖を抑制する方法である。
ここで、前記該胞子の代謝の抑制は、可視光照射後のATP値が0RLU/cmを超え1000RLU/cm未満であるのが好ましい。
または、前記該胞子の代謝の抑制は、紫外線を含む光を照射した後のATP値が0RLU/cmを超え500RLU/cm未満であるのが好ましい。
ここで、カビの胞子の細胞膜に損傷を与えることなく、該胞子の代謝を抑制する物質としては、上記酸化セリウムまたは上記酸化セリウムと同様の作用機序を奏する物質が好適に利用できる。
上記方法では、カビの胞子の細胞膜に損傷を与えることなく、該胞子の代謝を抑制する物質を作用させるとともに、可視光、または、紫外線を含む光をカビまたは藻に作用させるのが好ましい。
そうすることで、より効果的に表面に付着するカビおよび/または藻の繁殖を抑制できる。
本発明をさらに以下の実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
材料
基材
・a ソーダライムガラス板
・b 石英ガラス板
・c アルミ基材にエポキシ樹脂を主として含んでなるプライマーを塗装して常温で24時間乾燥した。その後、さらに、シリコーン変性アクリル樹脂および白色顔料を含むエナメル塗料を塗装して常温で24時間乾燥したものを、基材c とした。
酸化セリウム粒子
・1-1 酸化セリウムゾル(蛍石型、塩基性、酸化セリウム濃度10wt%、平均結晶子径6nm)
・1-2 酸化セリウムゾル(蛍石型、塩基性、酸化セリウム濃度10wt%、平均結晶子径8nm)
・1-3 酸化セリウムゾル(蛍石型、塩基性、酸化セリウム濃度10wt%、平均結晶子径10nm)
・1-4 酸化セリウム粉体(蛍石型、平均結晶子径78nm)
シリカ粒子
・2-1 水分散型コロイダルシリカ(Na分散、SiO2濃度30wt%、平均粒径25nm)
酸化チタン粒子
・3-1 酸化チタン水分散体(アナターゼ型、塩基性、TiO2濃度17.5wt%、平均粒径45nm)
分散媒:精製水
添加剤:ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤
コーティング組成物の調製
表1に記載の組成となるよう、(1)酸化セリウムゾルまたは酸化セリウムの粉体と、(2)水分散型コロイダルシリカと、(3)酸化チタン水分散体と、(4)分散媒と、(5)添加剤とを混合して、コーティング組成物を得た。コーティング組成物中の被膜形成成分の濃度は5.5質量%とした。ここで、被膜形成成分の濃度は、コーティング組成物中の(1)〜(3)の合計量(仕込み量)の濃度である。参考のため、コーティング組成物を400℃まで加熱した後、室温まで徐冷し、恒量となったときの濃度を測定したところ、得られた濃度は被膜形成成分の濃度と同等であった。
Figure 2021137745
試験1:酸化セリウムの物性評価
試料の作製
コーティング組成物C1〜C4を使用した。各コーティング組成物をフリーズドライにて乾燥させた。得られた乾燥物に、超純水を添加、攪拌、水の除去、再度フリーズドライにて乾燥の操作により、乾燥物を洗浄した。洗浄の操作を洗浄水の導電率が10μS/cm未満となるまで繰り返した。C1由来の洗浄物については、さらに、大気中で200℃、400℃、600℃、および850℃で1時間加熱処理したものも準備した。これらの加熱処理品および非加熱処理品をラマン分光測定用の試料とした。用いたコーティング組成物と加熱温度の組み合わせは表2に示されたとおりである。
Figure 2021137745
試験1(1):ラマン分光測定
表2に記載の試料を試料フォルダに厚さ1mmとなるように充填し、ラマン分光測定に供した。測定の条件は以下のとおりである。
装置:ナノフォトン製 RAMANTouch
レーザー波長:532nm
レーザー出力:1×10W/cm
ピンホールサイズ:50μm
回折格子:600gr/mm
測定波数:100〜2600cm−1 (中心波数を1500cm−1に設定することにより、当該測定波数の範囲を計測した。)
照射時間:10秒
積算回数:1回
対物レンズ:TU Plan Fluor×10(NA:0.30)
低波数側へのずれは、高純度化学研究所製の酸化セリウム:品番CEO04PB、ロット番号 4702411 を標準物質として、そのCe−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークが検出される波数と、試料を測定して得られた同モードに帰属されるピークが検出される波数との差分を求めた。
また、吸着酸素が過酸化物種として活性化されていることを、800cm−1〜900cm−1に生じるピークの有無により確認した。
結果を表3に示す。
Figure 2021137745
Ce−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークの低波数側へのずれが大きいものの中でも、試料番号1ないし3については、800から900cm−1の波数域に吸着酸素が活性化された状態を示すラマン散乱が確認され、カビ胞子に対してより強いストレスを及ぼすと考えられる。
試験1(2):光吸収特性
表2に記載の試料の光吸収特性を、日本分光株式会社製の紫外可視分光光度計を用い、専用の積分球ユニットを用いて、付属のPSH−002型粉末試料セルに粉体試料を充填して拡散反射スペクトルを評価した。拡散反射スペクトルは、横軸が波長で縦軸が反射率として表される。評価に用いた装置、及び測定条件を下記する。
装置:日本分光株式会社製 V−670型紫外可視分光光度計
積分球ユニット ISN−723型
測光モード:%R
測定範囲:1000nm〜200nm
データ取込間隔:1nm
UV/Visバンド幅:1nm
NIRバンド幅:8nm
レスポンス:Fast
走査速度:200nm/min
光源切換:340nm
光源:重水素ランプ(短波長側)/ハロゲンランプ(長波長側)
回折格子・検出器切換:850nm
得られた拡散反射スペクトルの反射率から式1に従い、波長600nmおよび800nmの吸収率を算出した。
A = 100−R ・・・ 式1
R: 実際に測定した反射率(%)
A: 吸収率(%)
波長500nmを超える波長域に、長波長側に向けて徐々に減衰する可視光吸収があるか否かを評価した。具体的には、式2に従い、波長800nmに対する波長600nmの吸収率の比を算出し、1.2を超えるものを「あり」とした。
吸収率の比 = A600/A800 ・・・式2
A600: 式1から算出した波長600nmの吸収率(%)
A800: 式1から算出した波長800nmの吸収率(%)
また得られた拡散反射スペクトルをクベルカ‐ムンク変換処理し、縦軸の反射率からクベルカ‐ムンク関数に変換した。さらに酸化セリウムを間接許容遷移型の半導体とみなした。Taucプロットにより、縦軸のクベルカ‐ムンク関数を1/2乗した。さらに、横軸の波長を、E=hνに基づき、エネルギーに変換した。以上の変換結果から、酸化セリウムのバンドギャップエネルギーと光吸収端波長とを、定法に基づいて算出した。この算出方法は、特許第5949567号公報を参照のうえ、決定した。結果を表4に示す。
Figure 2021137745
いずれの酸化セリウムにも500nm未満の可視光域にバンド間遷移による光吸収を有することを確認した。しかしながら、後述する試験結果に示されるように、バンド間遷移は、必ずしも発明の効果を奏する要件にはなっていないことを示している。
試験2:可視光照射による塗装体の評価
塗装体の作製
上記の基材aおよびbを洗浄・乾燥後、55℃に加温した基材の表面にコーティング組成物を、12.5g/mの塗布量でエアスプレーにて塗布し、室温にて乾燥させた。その後、試料によっては、電気炉を用いて所定の温度で、大気中に1時間保持させて、表面層を形成することによって、塗装体を作製した。こうして得られた塗装体を試験体とした。基材、コーティング組成物、および加熱温度の組み合わせは表5に示されたとおりである。ただし、塗装体10は、基材にコーティング組成物C1を塗布し、室温にて乾燥して表面層を形成後、表面層の上にコーティング組成物C8を塗布し、室温にて乾燥させて最表層を形成することによって、得られたものである。最表層形成における塗布条件および乾燥条件は、表面層形成における条件と同じとした。
Figure 2021137745
表5の塗装体について、以下の2(1)〜2(3)の試験を行った。
試験2(1):可視光照射後のATP値
現場から単離したカビ(Nothophoma sp.)をポテトデキストロース寒天斜面培地で28℃、7〜14日間前培養した。前培養によって得られた胞子を0.005wt%のTween80を含有させた滅菌精製水に懸濁させ、胞子濃度が1×10個/mLとなるように滅菌精製水で希釈して接種液を調製した。この接種液を10%ツァペックドックス液体培地と当量混合して混合液を調製した。予め殺菌灯照射で滅菌した塗装体(25mm×25mmにカット)の表面に混合液を0.1mL滴下した後、全面に塗抹した。なお、塗抹直後のATP値は70±20 RLU/cmであった。また、接種液の調製から塗抹までの工程は、接種液を調製した日に行った。
次いで、クリーンベンチ内に前記の混合液を塗抹した塗装体を静置して25℃で3時間乾燥させた。その際、クリーンベンチ内はファンで空気を攪拌した状態にした。乾燥後の塗装体を、気温28℃、相対湿度100%に調湿した環境下に静置して、光源に白色蛍光灯(日立アプライアンス株式会社製、FLR40SW/M/36-B)を用いて、紫外線カットフィルターを通した波長400nm以上の可視光を、照度5000lx(トプコンテクノハウス社製の照度計:IM-5にて計測)で48時間照射した。
ATP値の定量には、(株)キッコーマン製のATPふき取り検査システムを利用した。可視光照射した後の塗装体表面を同社製の「ルシパック(登録商標)Pen」でふき取り、同社製「ルミテスター(登録商標)PD−30」に挿入して、ルシフェラーゼが触媒する、ルシフェリン、酸素、およびATPの反応による発光量を測定して、塗装体表面の単位面積当たりのATP値に換算した。
試験2(2):可視光照射後の生存胞子率
試験2(1)同様に調製された接種液0.1mLを、予め殺菌灯照射で滅菌した塗装体(25mm×25mmにカット)の表面に滴下した後、全面に塗抹した。次いで、クリーンベンチ内に前記の接種液を塗抹した塗装体を静置して25℃で3時間乾燥させた。その際、クリーンベンチ内はファンで空気を攪拌した状態にした。乾燥後の塗装体を、気温28℃、相対湿度100%に調湿した環境下に静置して、光源に白色蛍光灯(日立アプライアンス株式会社製、FLR40SW/M/36-B)を用いて、紫外線カットフィルターを通した波長400nm以上の可視光を、照度5000lx(トプコンテクノハウス社製の照度計:IM-5にて計測)で24時間照射した。
可視光照射した後の塗装体を、回収液(ジオクチルスルホこはく酸ナトリウムを0.005wt%、塩化ナトリウムを0.891wt%、それぞれ含有する水溶液)4.5mlと共に、ストマッカー袋に封入し、超音波洗浄機(AS ONE社製、V-F100)を利用して、出力100W (50kHz) で5分間、超音波照射することで、塗装体表面からカビ・胞子を回収した。次いで、胞子を含んだ本回収液を、10%ツァペックドックス寒天培地で混釈し、28℃で7日間培養し、形成したコロニー数を生存胞子数とした。防カビ性を有しないガラス表面を対照とし、それに対する塗装体表面の生存胞子数の比率を生存胞子率とした。
試験2(3):可視光照射後のカビ胞子の細胞膜損傷度
試験2(1)と同様に調製された接種液0.1mLを、予め殺菌灯照射で滅菌した塗装体(25mm×25mmにカット)の表面に滴下した後、全面に塗抹した。次いで、クリーンベンチ内に前記の接種液を塗抹した塗装体を静置して25℃で3時間乾燥させた。その際、クリーンベンチ内はファンで空気を攪拌した状態にした。乾燥後の塗装体を、気温28℃、相対湿度100%に調湿した環境下に静置して、光源に白色蛍光灯(日立アプライアンス株式会社製、FLR40SW/M/36-B)を用いて、紫外線カットフィルターを通した波長400nm以上の可視光を、照度5000lx(トプコンテクノハウス社製の照度計:IM-5にて計測)で48時間照射した。
Thermo Fisher 社製の核染色キット「LIVE/DEADTM FungaLightTM Yeast Viability Kit, for flow cytometry 」を使用した。滅菌精製水に、SYTO9を濃度15μM、PIを濃度75μMで溶解して蛍光染色液を調製した。前段に記載の操作を行なった塗装体(すなわち、試料にカビ胞子を接種し、乾燥後、光照射した塗装体)の表面に、前記蛍光染色液を50μL滴下した。蛍光染色液を滴下したサンプルを25℃、遮光下で30分間静置した後に、過剰な蛍光染色液を除去した。次いで、共焦点蛍光顕微鏡を用いて、波長488nmおよび561nmのレーザー光を励起光として塗装体の表面に照射し、2種の核染色試薬が発する、緑色蛍光および赤色蛍光の様子を観察した。
観察は倍率340倍で行った。観察されたカビ胞子のうち、発芽・菌糸伸長の段階に至ったものを除外し、緑色蛍光を発している胞子と赤色蛍光を発している胞子の数量を計測し、その合計を全胞子数とした。赤色蛍光を発している胞子を「膜損傷あり」として、全胞子数に対する「膜損傷あり」の胞子数の比率を算出して細胞膜損傷度とした。
試験2(1)〜(3)の結果は表6に示されたとおりであった。
Figure 2021137745
試験3:紫外線を含む光の照射による塗装体の評価
塗装体の作製
試験2と同じ塗装体を使用して、以下の評価を行った。
試験3(1):紫外線を含む光を照射後のATP値
予め殺菌灯照射で滅菌した塗装体(25mm×25mmにカット)の表面に、試験2(1)と同様に調製された混合液を0.1mL滴下した後、全面に塗抹した。次いで、クリーンベンチ内に前記の混合液を塗抹した塗装体を静置して25℃で3時間乾燥させた。その際、クリーンベンチ内はファンで空気を攪拌した状態にした。乾燥後の塗装体を、気温28℃、相対湿度100%に調湿した環境下に静置して、光源にBLBランプ(三共電気株式会社製、FL40SBLB)を用いて、紫外線強度0.5mW/cm(トプコンテクノハウス社製の紫外線強度計:UVR-2にて計測)で48時間照射した。
次に、紫外線を含む光を照射した後の塗装体の表面について、ATP値の定量を、試験2(1)におけるATP値の定量と同様に行った。
試験3(2):紫外線を含む光を照射後の生存胞子率
試験2(1)と同様に調製された接種液0.1mLを、予め殺菌灯照射で滅菌した塗装体(25mm×25mmにカット)の表面に滴下した後、全面に塗抹した。次いで、クリーンベンチ内に前記の接種液を塗抹した塗装体を静置して25℃で3時間乾燥させた。その際、クリーンベンチ内はファンで空気を攪拌した状態にした。乾燥後の塗装体を、気温28℃、相対湿度100%に調湿した環境下に静置して、光源にBLBランプ(三共電気株式会社製、FL40SBLB)を用いて、紫外線強度0.5mW/cm(トプコンテクノハウス社製の紫外線強度計:UVR-2にて計測)で24時間照射した。
光照射した後の操作および生存胞子率の算出は試験2(2)と同様に行った。
試験3(3):紫外光照射後のカビ胞子の細胞膜損傷度
試験2(1)と同様に調製された接種液0.1mLを、予め殺菌灯照射で滅菌した塗装体(25mm×25mmにカット)の表面に滴下した後、全面に塗抹した。次いで、クリーンベンチ内に前記の接種液を塗抹した塗装体を静置して25℃で3時間乾燥させた。その際、クリーンベンチ内はファンで空気を攪拌した状態にした。乾燥後の塗装体を、気温28℃、相対湿度100%に調湿した環境下に静置して、光源にBLBランプ(三共電気株式会社製、FL40SBLB)を用いて、紫外線強度0.5mW/cm(トプコンテクノハウス社製の紫外線強度計:UVR-2にて計測)で48時間照射した。
光照射後の操作、観察、および細胞膜損傷度の算出は、試験2(3)と同様に行った。
試験3(1)〜(4)の結果を表7にまとめる。
Figure 2021137745
試験4:屋外曝露による防カビ性および防藻性の評価
塗装体の作製
上記の基材cを洗浄・乾燥後、55℃に加温した基材の表面にコーティング組成物を、12.5g/mの塗布量でエアスプレーにて塗布し、室温にて乾燥させて、塗装体を作製した。これらとは別に、上記の基材bを洗浄・乾燥後、55℃に加温した基材の表面にコーティング組成物を、12.5g/mの塗布量でエアスプレーにて塗布し、室温にて乾燥後、電気炉で850℃1時間加熱処理して、塗装体を作製した。得られた塗装体を試験体とした。基材、コーティング組成物、および加熱温度の組み合わせは表8に示されたとおりである。
Figure 2021137745
東海地区にある周囲を森林に囲まれた環境を曝露試験場所とした。表8に記載の塗装体を北向きに設置した。
防カビ効果を評価する曝露試験は3ヶ月間実施した。
曝露試験終了後の効果確認は、目視による外観観察と、反射照明型顕微鏡 (ECLIPSE LV100ND, Nikon)を使用して、カビ胞子の発芽、菌糸伸長の状態を倍率340倍で観察して行った。防カビ効果の評価は、以下の基準に基づいて点数化することにより行った。
0:カビによる汚れは視認できない。かつ、顕微鏡観察で、カビ胞子の発芽は認められない。
1:カビによる汚れは視認できないが、顕微鏡観察によれば一部の胞子に発芽が認められる。
2:カビによる黒ずんだ汚れを視認できる。かつ、顕微鏡観察によれば、大部分のカビ胞子は発芽しており、100μmを超えて菌糸が伸長している。
0点および1点を防カビ効果あり、2点を防カビ効果なしと判断した。
防藻効果を評価する曝露試験は1年間実施した。
曝露試験終了後の防藻効果の評価は、目視観察により以下の基準に基づいて点数化して行った。
0:藻の汚れは視認できない
1:藻の汚れは視認できるが緑色変化は確認できない
2:明らかに藻の汚れの視認が可能であり、緑色変化も確認できる。
0点および1点を防藻効果あり、2点を防藻効果なしと判断した。
防カビ効果および防藻効果を評価した曝露試験結果を表9にまとめる。
Figure 2021137745
実施例はカビ胞子の菌糸伸長を効果的に抑制しており、カビ繁殖由来の黒色汚れも視認できず、良好な防カビ効果を発揮した。また、藻由来の緑色の汚れを視認できず、良好な防藻効果を発揮した。
試験5:ATP値とカビ繁殖との関係
試験5(1):ラボ評価におけるATP値とカビ繁殖との関係
55℃に加温した基材cの表面に、コーティング組成物C8を、12.5g/mとなるようにエアスプレーにて塗布し、室温で乾燥して表面層を形成した。こうして得られた塗装体(塗装体19)を評価に用いた。試験2(1)と同様に調整した混合液を、25mm×25mmにカットして予め殺菌灯照射で滅菌した塗装体に0.1mL滴下した後、全面に塗抹した。塗抹後の塗装体を、気温28℃、相対湿度100%に調湿した環境下、暗所条件で静置して、カビを培養した。培養時間:0時間、17時間、24時間、および40時間の塗装体について、カビ繁殖の度合いの評価と、ATP値の定量を行った。
ATP値の定量は、上記試験2(1)のATP値の定量の記載と同じ方法で行った。
カビ繁殖の程度は、反射照明型顕微鏡 (ECLIPSE LV100ND, Nikon)を使用して、倍率340倍の視野で、カビ胞子の発芽、菌糸伸長の状態を観察し、菌糸伸長度を次の4段階に分類することにより、評価した。それぞれについて代表的なカビ繁殖の状態を図1から図4に示した。
(菌糸伸長度)
0:胞子が未発芽状態(図1)、
1:一部の胞子が発芽しているが、菌糸は短い(数10〜数100 μm)状態(図2)、
2:胞子の発芽が認められ、部分的には数100 μm以上菌糸が伸長した状態(図3)、
3:ほとんどの胞子が発芽し、一面に菌糸が伸長した状態(図4)。
なお、上記の菌糸伸長度:3では、カビ繁殖に伴って生じるサンプル表面のくすみ、もしくは黒色のカビ汚れが目視の観察でも認められる。
ATP値と菌糸伸長度の関係を図5に示す。
ATP値と菌糸伸長度には高い相関があり、ATP値が高いほどカビ菌糸が伸長していた。ATP値は、胞子状態から、発芽、菌糸伸長に至る、カビの繁殖程度と対応することがわかった。
試験5(2):ラボ試験後のATP値と屋外曝露試験後のATP値との関係
ラボ試験と屋外曝露試験におけるATP値を比較するために、コーティング組成物として、C1、C5、C7、およびC8を使用し、さらに、C9として、ルチル型の酸化チタン粒子の水分散体と、水分散型コロイダルシリカと、分散媒と、添加剤とを混合して、C9のコーティング組成物を得た。C9のコーティング組成物中の被膜形成成分の濃度は5.5質量%とした。 また、ルチル型の酸化チタン粒子10質量部に対してシリカ粒子は90質量部とした。これらのコーティング組成物を試用して、表面層の組成が異なる5種類の塗装体を作製した。塗装体の作成条件は上記試験5(1)と同じとした。塗装体と使用したコーティング組成物との対応を表10に示す。
Figure 2021137745
屋外曝露試験は上記試験4と同じ曝露場において1ヶ月間曝露し、ATP値を測定した。
ラボ試験は次の手順で行った。すなわち、試験2(1)と同様に調製された混合液を、25mm×25mmにカットして予め殺菌灯照射で滅菌した塗装体に0.1mL滴下した後、全面に塗抹した。塗抹後の塗装体を、気温28℃、相対湿度100%に調湿した環境下に静置し、塗装体表面の紫外線強度がトプコンテクノハウス社製の紫外線強度計:UVR-2を使用して0.5 mW/cmとなるようにBLBランプ(三共電気株式会社製、FL40SBLB)を12時間のインターバルで照射した。照射および不照射を合計48時間行った後に、ATP値の定量を行った。
ATP値の定量は、上記試験2(1)のATP値の定量の記載と同じ方法で行った。
ラボ試験後のATP値と屋外曝露試験後のATP値との関係を図6に示す。
1か月の曝露試験を実施したそれぞれの塗装体表面には藻類の付着や繁殖は認められず、カビ胞子の付着やその発芽、菌糸伸長のみが確認された。また、ラボ試験で確認したATP値は屋外曝露試験後のATP値と高い相関性を示した。
塗装体19は、ラボ試験でも屋外曝露試験でもATP値が著しく高い値を示した。一方、他の4サンプルは両試験ともにATP値は低く、ラボ試験のATP値の序列(塗装体19>>塗装体23>塗装体20>塗装体22≒塗装体21)は屋外曝露試験の序列とほぼ同じだった。
ATP値は、防カビ効果を測る指標として有効であり、塗装体表面がカビ胞子に及ぼす影響の程度を指標化したものとして取り扱うことができる。ATP値を低く抑制しうる塗装体表面は効果的に防カビ効果を発現する。
試験6:カビ繁殖(ATP値)と藻繁殖との関係
ラボ試験でのATP値と屋外曝露試験による藻の繁殖との関係を評価した。用いた塗装体は上記試験5(2)と同じ5サンプルであり、上記試験5(2)の曝露試験を6か月まで延長し、その経過観察および、6か月経過時の汚れによる変色程度を評価した。
ATP値の測定は、光照射条件を変更した以外は試験5(2)のラボ試験と同様に行った。光照射条件は次の通りであった。
BLBランプ(三共電気株式会社製、FL40SBLB)および白色蛍光灯(日立アプライアンス株式会社製、FLR40SW/M/36-B)を同時に12時間照射した。トプコンテクノハウス社製の紫外線強度計:UVR-2にて計測した塗装体表面の紫外線強度は0.5 mW/cmであり、トプコンテクノハウス社製の照度計:IM-5にて計測した塗装体表面の照度は5000lxだった。光照射の後、暗所条件を12時間とし、12時間間隔の間欠照射とした。
経過観察において、曝露が1か月経過した時点では、比較例に相当する塗装体はカビ胞子が発芽して、菌糸が一面に伸長した状態が観察されたが、藻類の付着は確認されなかった。本試験においては、比較例に相当する塗装体は、カビ菌糸伸長の後に藻類の付着が始まり、6か月経過時点で、緑色を帯びた汚れが視認される状況に至った。
6か月経過時点の汚れの程度の評価は、コニカミノルタジャパン株式会社製分光測色計CM−2600dを用いて行なった。JIS Z8730(2009)に準拠し、L表色系における、屋外曝露前と6か月経過時点の塗装面の色差ΔEとして定量した。
ラボ試験におけるATP値と屋外曝露試験後の色差との関係を図7に示す。
図7によれば、ATP値および色差は良好な相関性を示した。
ATP値を低く抑制できる塗装体は、防カビ効果の設計ばかりでなく、防藻効果の設計にも有効であることが示唆された。以上の知見と、屋外曝露試験での汚れの発生過程を鑑みると、防カビ効果と防藻効果には密接な関係があり、カビ胞子の発芽・菌糸伸長を抑制することが優れた防藻効果の発現に重要であると考えられる。したがって、ATP値は、塗装体表面がカビ胞子に及ぼす影響の程度を指標化したもの、すなわち、防カビ効果の指標として有効なだけではなく、防藻効果の指標としても有効であるといえる。
試験7:塗装体のラマン分光測定
表5に記載の塗装体をラマン分光測定に供した。測定の条件は以下のとおりである。
装置:ナノフォトン製 RAMANTouch
レーザー波長:532nm
レーザー出力:Ce−O結合のF2g振動モードの散乱強度が、測定可能の上限を超えない範囲でできるだけ高く(3000cps超と)なるように、レーザー出力を調整した。
ピンホールサイズ:50μm
回折格子:2400gr/mm
中心波数:460cm−1
照射時間:300秒
積算回数:1回
対物レンズ:TU Plan Fluor×100(NA:0.90)
Ce−O結合のF 2g 振動モードに帰属されるピークの波数特定
サンプル中の酸化セリウム量が少ないほど、また酸化セリウムが酸素欠陥を多く含有するほど、得られるピークはブロードになるため、ピークの波数が不明瞭になる場合がある。そこで、本発明においては、上記ピークに帰属される波数は次のようにして行った。
1)同一サンプルについて、5か所を測定した。
2)それぞれの測定結果について、450から470cm−1の波数範囲における最大強度に対して、95%以上の強度が得られる波数範囲を特定し、その中心の波数を算出して当該ピークの中心波数とした。なお、95%以上の強度が得られる波数範囲の特定は、95%以上の強度が得られる最小波数、および95%以上の強度が得られる最大波数を両端とすることで行った。得られたラマンスペクトルはノイズに由来する所定の振幅を有する。そのため、当該波数範囲内に95%未満の強度となるポイントが得られることがある。そのような場合は、95%未満の強度となるポイントを波数範囲内に含めて、波数範囲を特定した。
3)5か所の測定結果から求めた当該ピークの中心波数の内、最大値と最小値を除いた3か所の平均値を、サンプルのCe−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークの波数とした。
低波数側へのずれは、高純度化学研究所製の酸化セリウム:品番CEO04PB、ロット番号 4702411を標準物質として、そのCe−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークが検出される波数と、塗装体を測定して得られた同モードに帰属されるピークが検出される波数との差分を求めた。
結果を表11に示す。
Figure 2021137745

Claims (32)

  1. 表面に付着するカビおよび/または藻の繁殖を抑制するための塗装体であって、
    基材と、該基材上に形成された表面層とを有し、
    前記表面層は、蛍石構造の酸素欠損を有する平均結晶子径が10nm以下の酸化セリウム粒子を含有してなり、当該酸化セリウム粒子は、ラマン分光スペクトルにおいて、Ce−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークが、標準物質を測定して得られるCe−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークに対して、低波数側に2cm−1超ずれているものであり、
    前記表面層は、前記塗装体の表面に付着するカビおよび/または藻の繁殖を抑制することを特徴とする、塗装体。
  2. 前記酸化セリウム粒子は、ラマン分光スペクトルにおいて、さらに、O 2−に帰属されるピークを有する酸化セリウム粒子であることを特徴とする、請求項1に記載の塗装体。
  3. 前記表面層に可視光が照射されるとともに、前記塗装体が、その表面にカビ胞子が付着する環境にさらされて使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載の塗装体。
  4. 可視光照射後のカビ胞子の細胞膜損傷度が10%未満であり、かつ、可視光照射後のATP値が0RLU/cmを超え1000RLU/cm未満である特性を備えることを特徴とする、請求項3に記載の塗装体。
  5. 前記ATP値が、500RLU/cm未満、好ましくは300RLU/cm未満であることを特徴とする、請求項4に記載の塗装体。
  6. 可視光照射後の生存胞子率が50%を超えることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の塗装体。
  7. 前記表面層に紫外線を含む光が照射されるとともに、前記塗装体が、その表面にカビ胞子が付着する環境にさらされて使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載の塗装体。
  8. 紫外線を含む光の照射後のカビ胞子の細胞膜損傷度が50%未満であり、かつ、紫外線を含む光の照射後のATP値が0RLU/cmを超え500RLU/cm未満である特性を備えることを特徴とする、請求項7に記載の塗装体。
  9. 前記ATP値が、300RLU/cm未満であることを特徴とする、請求項8に記載の塗装体。
  10. 紫外線を含む光の照射後の生存胞子率が50%を超えることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1項に記載の塗装体。
  11. 前記表面層は、さらにシリカ粒子を含んでなることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の塗装体。
  12. 前記表面層中の前記酸化セリウム粒子の含有量が、被膜形成成分の合計量を100質量部としたときに、1質量部以上であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の塗装体。
  13. 前記表面層は、前記カビおよび/または藻が層中を貫通しない多孔質構造であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の塗装体。
  14. 蛍石構造の酸素欠損を有する平均結晶子径が10nm以下の酸化セリウム粒子を含有してなるコーティング組成物であって、
    前記酸化セリウム粒子は、ラマン分光スペクトルにおいて、Ce−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークが、標準物質を測定して得られるCe−O結合のF2g振動モードに帰属されるピークに対して、低波数側に2cm−1超ずれているものであり、
    当該コーティング組成物を基材上にコーティングしてなる表面層を備えた塗装体は、当該塗装体の表面に付着するカビおよび/または藻の繁殖を抑制することを特徴とする、コーティング組成物。
  15. 前記酸化セリウム粒子は、ラマン分光スペクトルにおいて、さらに、O 2−に帰属されるピークを有する酸化セリウム粒子であることを特徴とする、請求項14に記載のコーティング組成物。
  16. 前記表面層に可視光が照射されるとともに、前記塗装体が、その表面にカビ胞子が付着する環境にさらされて使用されることを特徴とする、請求項14または15に記載のコーティング組成物。
  17. 前記塗装体が、可視光照射後のカビ胞子の細胞膜損傷度が10%未満であり、かつ、可視光照射後のATP値が0RLU/cmを超え1000RLU/cm未満である特性を備えることを特徴とする、請求項16に記載のコーティング組成物。
  18. 前記ATP値が、500RLU/cm未満、好ましくは300RLU/cm未満であることを特徴とする、請求項17に記載のコーティング組成物。
  19. 前記塗装体が、可視光照射後の生存胞子率が50%を超える特性を備えることを特徴とする、請求項16〜18のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
  20. 前記表面層に紫外線を含む光が照射されるとともに、前記塗装体が、その表面にカビ胞子が付着する環境にさらされて使用されることを特徴とする、請求項14または15に記載のコーティング組成物。
  21. 前記塗装体が、紫外線を含む光の照射後のカビ胞子の細胞膜損傷度が50%未満であり、かつ、紫外光を含む光の照射後のATP値が0RLU/cmを超え500RLU/cm未満である特性を備えることを特徴とする、請求項20に記載のコーティング組成物。
  22. 前記ATP値が、300RLU/cm未満であることを特徴とする、請求項21に記載の塗装体。
  23. 前記塗装体が、紫外線を含む光の照射後の生存胞子率が50%を超える特性を備えることを特徴とする、請求項20〜22のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
  24. さらにシリカ粒子を含んでいることを特徴とする、請求項14〜23のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
  25. 前記酸化セリウム粒子の含有量が、前記コーティング組成物中の被膜形成成分の合計量を100質量部としたときに、1質量部以上であることを特徴とする、請求項14〜28のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
  26. さらに分散媒を含有してなる、請求項14〜25に記載のコーティング組成物。
  27. カビ繁殖を抑制する方法であって、
    カビの胞子の細胞膜に損傷を与えることなく、該胞子の代謝を抑制する物質を該胞子に作用させることを特徴とする、カビ繁殖を抑制する方法。
  28. 藻繁殖の抑制方法であって、
    カビの胞子の細胞膜に損傷を与えることなく、該胞子の代謝を抑制する物質を該胞子に作用させてカビの繁殖を抑制することによって藻繁殖を抑制することを特徴とする、方法。
  29. 前記胞子の代謝の抑制をATP値で表したとき、可視光照射後のATP値が0RLU/cmを超え1000RLU/cm未満であることを特徴とする、請求項27または28に記載の方法。
  30. 前記胞子の代謝の抑制をATP値で表したとき、紫外線を含む光の照射後のATP値が0RLU/cmを超え500RLU/cm未満であることを特徴とする、請求項27または28に記載の方法。
  31. 表面に付着するカビおよび/または藻の繁殖を抑制するための塗装体であって、
    基材と、該基材上に形成された表面層とを有し、
    可視光照射後のカビ胞子の細胞膜損傷度が10%未満であり、かつ、可視光照射後のATP値が0RLU/cmを超え1000RLU/cm未満である特性を備え、
    可視光が前記表面層に照射されるとともに、前記塗装体が、その表面にカビ胞子が付着する環境にさらされて使用される、
    前記塗装体の表面に付着するカビおよび/または藻の繁殖を抑制することを特徴とする、塗装体。
  32. 表面に付着するカビおよび/または藻の繁殖を抑制するための塗装体であって、
    基材と、該基材上に形成された表面層とを有し、
    紫外線を含む光の照射後のカビ胞子の細胞膜損傷度が50%未満であり、かつ、紫外線を含む光の照射後のATP値が0RLU/cmを超え500RLU/cm未満である特性を備え、
    紫外線を含む光が前記表面層に照射されるとともに、前記塗装体が、その表面にカビ胞子が付着する環境にさらされて使用される、
    前記塗装体の表面に付着するカビおよび/または藻の繁殖を抑制することを特徴とする、塗装体。

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