JP2009513479A - 抗菌性薄膜 - Google Patents
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Abstract
酸化銀ナノ粒子を含む二酸化チタンホストマトリックスからなる薄膜。
【選択図】なし
【選択図】なし
Description
本発明は、二酸化チタンホストマトリックス中に酸化銀ナノ粒子を含む薄膜に関する。本発明はまた、そのような薄膜の製造方法および抗菌用途におけるそれら使用に関する。
背景
二酸化チタンホストマトリックス中に銀ナノ粒子を含む、ナノコンポジット薄膜は公知である。そのような薄膜は、光触媒としての用途が見出されている。例えば白金などのような、他の金属ドーパントもまた、用いられてきた。
二酸化チタンホストマトリックス中に銀ナノ粒子を含む、ナノコンポジット薄膜は公知である。そのような薄膜は、光触媒としての用途が見出されている。例えば白金などのような、他の金属ドーパントもまた、用いられてきた。
以前の銀ナノ粒子/二酸化チタン薄膜は、アルゴン下、即ち、不活性雰囲気下で調製されていた。本発明者らは、空気中における調製が酸化銀ナノ粒子/二酸化銀薄膜を生み出し、驚くべきことに、これらの薄膜が抗菌的性質を有することを見出した。
発明の要約
本発明の一側面では、二酸化チタンホストマトリックス中に酸化銀ナノ粒子を含む薄膜が提供される。具体的には、本発明は、酸化銀ナノ粒子を含む二酸化チタンホストマトリックスからなる薄膜に関する。
本発明の一側面では、二酸化チタンホストマトリックス中に酸化銀ナノ粒子を含む薄膜が提供される。具体的には、本発明は、酸化銀ナノ粒子を含む二酸化チタンホストマトリックスからなる薄膜に関する。
本発明はまた、銀が酸化される条件下で、銀金属もしくは銀合金ナノ粒子と二酸化チタン薄膜とを堆積させること、または、銀が酸化されうる条件下で、銀ナノ粒子を含む二酸化チタンの薄膜を処理すること、あるいは、酸化銀ナノ粒子と二酸化チタン薄膜とを堆積させることによる、薄膜の製造方法を提供する。
発明の効果
理論にとらわれることなく、本発明者らは、薄膜が生成する間もしくは生成後に酸化される銀ナノ粒子、または、薄膜の製造に用いられる酸化銀ナノ粒子が、二酸化チタンを照射することによって生み出される電子正孔対を安定化させる役目を負うと信じている。そのような電子正孔対は、次いで例えば水などの表面結合種と反応して、例えばヒドロキシルラジカルおよび1重項酸素などの反応性ラジカルを形成することができる。これらのラジカルは、薄膜の抗菌効果の発揮に関与する。X線回折(XRD)は、これまでに調べられてきたそれら活性薄膜中の酸化銀の主な回折シグナルに対応するピークを示す。従って、酸化銀の存在が薄膜の有利な効果に関与すると考えられる。しかし、XRDのピークは、酸化銀以外の成分によるものかもしれない。効果に関与するものの、XRDのピークも酸化銀の存在も、該効果に必要不可欠であるとは最終的に確かめられていない。しかし、活性薄膜は、酸化条件下で、または、薄膜をアニーリング処理することによって、銀ナノ粒子を堆積させることにより、常に得られる。本明細書中で用いられる「酸化銀」とは、酸化条件下での、または、薄膜をアニーリング処理することによる銀ナノ粒子の堆積の結果を意味する。
理論にとらわれることなく、本発明者らは、薄膜が生成する間もしくは生成後に酸化される銀ナノ粒子、または、薄膜の製造に用いられる酸化銀ナノ粒子が、二酸化チタンを照射することによって生み出される電子正孔対を安定化させる役目を負うと信じている。そのような電子正孔対は、次いで例えば水などの表面結合種と反応して、例えばヒドロキシルラジカルおよび1重項酸素などの反応性ラジカルを形成することができる。これらのラジカルは、薄膜の抗菌効果の発揮に関与する。X線回折(XRD)は、これまでに調べられてきたそれら活性薄膜中の酸化銀の主な回折シグナルに対応するピークを示す。従って、酸化銀の存在が薄膜の有利な効果に関与すると考えられる。しかし、XRDのピークは、酸化銀以外の成分によるものかもしれない。効果に関与するものの、XRDのピークも酸化銀の存在も、該効果に必要不可欠であるとは最終的に確かめられていない。しかし、活性薄膜は、酸化条件下で、または、薄膜をアニーリング処理することによって、銀ナノ粒子を堆積させることにより、常に得られる。本明細書中で用いられる「酸化銀」とは、酸化条件下での、または、薄膜をアニーリング処理することによる銀ナノ粒子の堆積の結果を意味する。
別の側面では、本発明は、抗菌剤としての薄膜の使用を提供する。
発明の詳細な説明
本発明の薄膜は、銀が酸化される条件下で、銀ナノ粒子と二酸化チタン薄膜とを堆積させること、または、酸化銀ナノ粒子と二酸化チタン薄膜とを堆積させることにより製造することができる。
本発明の薄膜は、銀が酸化される条件下で、銀ナノ粒子と二酸化チタン薄膜とを堆積させること、または、酸化銀ナノ粒子と二酸化チタン薄膜とを堆積させることにより製造することができる。
例えば、薄膜は、ゾル・ゲル浸漬被覆技術を用いるか、または、エアロゾル支援化学気相堆積(AACVD)により、調製することができる。好ましい一側面において、薄膜は、AACVD以外によって製造される。
以下で用いられる場合、用語「銀ナノ粒子」は、銀金属、銀合金のナノ粒子、酸化した銀もしくは銀合金、すなわち酸化銀のナノ粒子を含む。用語「銀金属または銀合金ナノ粒子」は、まだ酸化されていないものを指す。最終産物中の「銀ナノ粒子」は、少なくともいくらかの酸化銀を含有しているはずであり、本明細書中では、「酸化銀ナノ粒子」と呼ぶ。好ましくは、ナノ粒子は、酸化物の層で囲まれた銀または銀合金の核を含む。あるいは、ナノ粒子は、完全に酸化銀からなる。
銀合金ナノ粒子は、例えば、市販されている銀合金ナノ粒子であってもよく、例えば
銅または周期律表のVIII群の金属および金、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウムまたはオスミウムなどの貴金属を含む。
銅または周期律表のVIII群の金属および金、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウムまたはオスミウムなどの貴金属を含む。
本明細書で使用される場合、用語「薄膜」は、二酸化チタンの連続した層を意味することを意図している。そのような薄膜(特に、比較的に厚い場合)は、顕微鏡スケールでは完全に連続的でないように、収縮亀裂受けていてもよい。気相堆積プロセスにより形成されるとき、チタン層は、多くのシードポイントから成長することができ、従って、薄膜は、分離したドメインまたはそのようなドメイン間の境界を有する二酸化チタンの「島」を含むだろう。それでもなお、薄膜は、巨視的スケールでは連続的に見える。それらは、粒子状またはナノ粒子状二酸化チタンと明確に区別される。酸化銀ナノ粒子は、二酸化チタン薄膜中または上に堆積する。
ナノコンポジット薄膜を調製するとき、前駆体溶液中の銀ナノ粒子の濃度は、堆積した二酸化チタンホストマトリックスが1〜4%の銀ナノ粒子を含むような濃度であることが好ましい。別の実施態様では、堆積した薄膜は、0.1〜20mol%あるいは最大25mol%もの酸化銀ナノ粒子を含むが、好ましくは、5〜10mol%、例えば、5mol%である。薄膜は二酸化チタンおよび酸化銀ナノ粒子以外の成分を任意で含んでいても良い。好ましい形態では、薄膜は、5〜10mol%の酸化銀ナノ粒子および95〜90mol%の二酸化チタンからなる。
ゾル・ゲル堆積
ゾル・ゲルプロセスにおいて、銀ナノ粒子懸濁液は、酸素源が提供されてもよいか、該プロセスが空気の存在下で行われてもよいことを除き、定法により製造される。これにより、ナノ粒子は、少なくとも、その表面が主に酸化銀となる。酸化は、粒子全体に広がってもよい。一回またはことによると数回、例えば、5回までの、懸濁液中での基材の浸漬被覆の後、次いで、アニーリングを行うことにより、ナノ粒子薄膜が形成される。アニーリング工程もまた、銀ナノ粒子の酸化を引き起こすか、または酸化を増大させる。
ゾル・ゲルプロセスにおいて、銀ナノ粒子懸濁液は、酸素源が提供されてもよいか、該プロセスが空気の存在下で行われてもよいことを除き、定法により製造される。これにより、ナノ粒子は、少なくとも、その表面が主に酸化銀となる。酸化は、粒子全体に広がってもよい。一回またはことによると数回、例えば、5回までの、懸濁液中での基材の浸漬被覆の後、次いで、アニーリングを行うことにより、ナノ粒子薄膜が形成される。アニーリング工程もまた、銀ナノ粒子の酸化を引き起こすか、または酸化を増大させる。
薄膜は、二酸化チタン前駆体溶液での最初の浸漬被覆、および次の銀ナノ粒子懸濁液での浸漬被覆により調製することができる。あるいは、銀ナノ粒子懸濁液と二酸化チタン前駆体溶液とを、浸漬被覆前に混合し、それにより、酸化銀ナノ粒子を含む二酸化チタンホストマトリックスからなる薄膜を直接形成することができる。適切な二酸化チタン前駆体溶液は、250〜500gL‐1、好ましくは、300〜400gL‐1の二酸化チタン前駆体を含む。銀ナノ粒子前駆体溶液は、適切には、300〜800gL‐1、好ましくは、500〜700gL‐1の銀ナノ粒子前駆体を含む。銀ナノ粒子前駆体溶液は、その次に、混合溶液が典型的には、250〜500gL‐1、好ましくは、300〜400gL‐1の二酸化チタン前駆体および5〜30、好ましくは、約10〜20gL‐1の銀ナノ粒子前駆体を含有するように、二酸化チタン前駆体溶液に加えられる。前駆体溶液中のナノ構造の分散は、10gL‐1を超える濃度では不安定となる傾向があるので、該溶液は、好ましくは24時間以内に、銀の沈殿を避けるために使用すべきである。
二酸化チタンホストマトリックス前駆体量に対する銀ナノ粒子の典型的なモル比は、1:1000〜1:4である。好ましくは、二酸化チタンホストマトリックス前駆体に対する銀ナノ粒子の比は、1:30〜1:5、より好ましくは、1:20〜1:10である。
浸漬被覆前に銀ナノ粒子を懸濁させる溶媒は、好ましくは、銀と錯体化する、例えば、配位リガンドを提供するのに適した溶媒であり、好ましくは、例えばアセトニトリル、プロピルニトリルまたはベンゾニトリルなどの含窒素溶媒である。例えばグリコールやポリエーテルなどのキレート酸素ドナー配位子と同様に、例えばビピリジン、テルピリジルおよびフェナントロリンなどの他のキレート窒素型塩基もまた適している。好ましくは、浸漬被覆前に銀ナノ粒子を懸濁させる溶媒は、アセトニトリルを含む。より好ましくは、二酸化チタン前駆体との混合前に、銀ナノ粒子前駆体を懸濁させる溶媒は、アセトニトリルからなる。この溶媒の使用は、粘着性、付着性の被覆を与える。
AACVD堆積
AACVDプロセスにおいて、銀ナノ粒子を含有する前駆体溶液が用いられる。これらは、定法により形成されてもよく、または、ゾル・ゲルプロセスにおける、少なくとも粒子の表面が主に酸化銀であり、銀がナノ粒子全体を通して酸化されていてもよいように、酸化条件下で形成されてもよい。
AACVDプロセスにおいて、銀ナノ粒子を含有する前駆体溶液が用いられる。これらは、定法により形成されてもよく、または、ゾル・ゲルプロセスにおける、少なくとも粒子の表面が主に酸化銀であり、銀がナノ粒子全体を通して酸化されていてもよいように、酸化条件下で形成されてもよい。
あるいは、酸化せずに、例えば、不活性雰囲気下で製造された銀ナノ粒子を、前駆体溶液中で用いることができる。この場合、装置、他の試薬または基材中の残余酸素は、少なくとも、ナノ粒子の表面において、銀を酸化するのに十分である。
前駆体溶液は、銀ナノ粒子を含む任意の溶液である。堆積のための銀ナノ粒子を提供するための、そのような前駆体溶液は、任意の適切な技術に従って調製されうる。ナノ粒子を製造するための周知の技術は、溶液中での還元である。例えば、金属ナノ粒子を含む金属コロイド溶液は、ブラスト二相還元法によって調製されてもよく、それは、金金属コロイドの調製に使用するために最初に記載されたものであり、以来、他の金属ナノ粒子の調製にまで拡張されてきた。
前駆体溶液はまた、二酸化チタンホストマトリックス前駆体を含む。二酸化チタンホストマトリックス前駆体溶液は、二酸化チタンを堆積させるために適切ないかなるものであってもよい。好ましい前駆体は、アルコキシド、アリールオキシド、CO、アルキル、アミド、アミニル、ジケトンから選択される少なくとも一つの配位子を有するチタン錯体である。
適切な配位子は、堆積したホストマトリックス中に組み込まれうる、酸素に付加されたR基を含む。R基は短く、例えば、C1‐4であるか、または良い脱離官能性を有していることが好ましい。
アルコキシド配位子の例は、例えばエトキシドなどのC1‐6アルコキシド、好ましくは、C1‐4アルコキシド、最も好ましくは、イソプロピルオキシド(OiPr)または第三級ブチルオキシド(OtBu)である。アリールオキシドは、好ましくは、置換されたまたは置換されていないフェノキシド、好ましくは、置換されていないフェノキシドである。アルキル基の例は、例えばメチルおよびエチルなどのC1‐4アルキルである。アミドの例は、R1CONR2 2であり、式中、各々のR1およびR2は、それぞれ独立にHまたはC1‐4アルキルである。アミニルの例としては、NR1 2であり、式中、R1は上記のように定義される。ジケトンの例は、ペンタン‐2,4‐ジオンが挙げられる。
好ましくは、全ての配位子は、これらの群から選択される。最も好ましくは、金属の周囲の配位圏は、すべて酸素を含有する。
適切な配位子は、堆積した二酸化チタンホストマトリックス中に取り込まれるための、酸素を含有してもよい。あるいは、二酸化チタンホストマトリックス前駆体を、例えばアルコール溶媒または酸素などの酸素の共源と共に用いてもよい。
ホストマトリックス前駆体の好ましい例としては、チタン(IV)イソプロポキシド([Ti(OiPr)4])が挙げられる。
前駆体溶液のために任意の適切な溶媒を用いることができ、水を用いてもよいが、好ましくは、有機溶媒である。好ましくは、溶媒は、プロパン‐2‐オール、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサン、塩化メチルまたはアセトニトリルである。溶媒が混和できるならば、2つ以上の異なる溶媒を用いてもよい。
堆積した薄膜中の銀ナノ粒子の濃度は、前駆体溶液中の銀ナノ粒子の濃度を変えることにより、容易に変えうる。前駆体溶液中の銀ナノ粒子の濃度は、1μgL‐1から10gL‐1まで変わってもよい。非常に低い(即ち、ドーパント)レベルの銀粒子を含む、ナノコンポジット薄膜を製造するには、通常、低濃度の銀ナノ粒子が、高濃度の二酸化チタンホストマトリックス前駆体と共に用いられるだろう。10gL‐1を越える濃度では、前駆体溶液中のナノ構造の分散が不安定になる傾向がある。
好ましくは、前駆体溶液中の銀ナノ粒子の濃度は、0.5〜1.5gL‐1、より好ましくは、0.7〜1.0gL‐1である。ナノコンポジット薄膜を調製する場合、前駆体溶液中の銀ナノ粒子の濃度は、堆積した酸化チタンホストマトリックスが1〜4%の銀ナノ粒子を含むような濃度であることが好ましい。別の実施態様では、堆積した薄膜は、0.1〜20mol%あるいは最大25mol%もの酸化銀ナノ粒子を含み、好ましくは、5〜10mol%、例えば、5mol%を含む。薄膜は二酸化チタンおよび酸化銀ナノ粒子以外の成分を任意に含んでいても良い。好ましい形態では、薄膜は、5〜10mol%の酸化銀ナノ粒子および95〜90mol%の二酸化チタンからなる。
二酸化チタンホストマトリックス前駆体量に対する銀ナノ粒子のモル比は、1:1000〜2:1であってもよい。二酸化チタンホストマトリックス前駆体量に対する銀ナノ粒子の典型的なモル比は、1:30〜1:5である。好ましくは、二酸化チタンホストマトリックス前駆体に対する銀ナノ粒子の比は、1:3〜1:10である。
好ましくは、銀ナノ粒子前駆体溶液は、ナノ構造の凝集を妨げるために、荷電安定化している。原理的には、例えばチオールキャッピング基などのキャッピング基を用いることができる。しかし、それは堆積した薄膜の汚染を引き起こすかもしれないため、好ましくない。
水以外の溶媒中の銀ナノ粒子溶液は、時間と共に分解していくため、調製から3週間以内にそのような溶液を使用することが好ましい。より好ましくは、該溶液は、調製から1週間以内、より好ましくは、2日以内に使用する。最も好ましくは、堆積は、同日に作られたコロイドを用いて行われる。
アニーリング
本発明の製法は、薄膜のアニーリングというさらなる工程を含んでも良い。アニーリングは、孔や隙間を除去することによって薄膜の密度を増加させることが知られており、従って、粒子の分離を減じることが期待されるだろう。ゾル・ゲル浸漬被覆技術を用いて調製された薄膜に対して、アニーリングは、ゾル・ゲル前駆体の分解によって結晶薄膜を得ることに寄与する。ゾルがナノ粒子を含有する場合、加熱処理もまた、ナノ粒子をキレート化および安定化するために用いられる残余有機化合物を除去する。
本発明の製法は、薄膜のアニーリングというさらなる工程を含んでも良い。アニーリングは、孔や隙間を除去することによって薄膜の密度を増加させることが知られており、従って、粒子の分離を減じることが期待されるだろう。ゾル・ゲル浸漬被覆技術を用いて調製された薄膜に対して、アニーリングは、ゾル・ゲル前駆体の分解によって結晶薄膜を得ることに寄与する。ゾルがナノ粒子を含有する場合、加熱処理もまた、ナノ粒子をキレート化および安定化するために用いられる残余有機化合物を除去する。
アニーリングの時間および温度は基材に依る。典型的には、300〜700℃、好ましくは、400〜600℃、より好ましくは、450〜550℃の温度で、20分と2時間との間で、薄膜を、空気中で加熱することによりアニールすることができる。
アニーリング工程は、しばしば、薄膜の不純物、残余水分または他の成分中のわずかな酸素を用いて、銀金属または銀合金ナノ粒子中の銀を酸化して、酸化銀ナノ粒子を製造する役割を果たす。
本発明の一実施態様では、後でのアニーリング工程に代わり、堆積と同時にアニーリングが効果的に行われるように、前駆体溶液が加熱された基材表面に適用される。この実施態様は、例えば、薄膜がエアロゾル堆積によって提供される場合は適切である。この実施形態では、担体表面は、典型的には、300〜700℃、好ましくは、400〜600℃、より好ましくは、450〜550℃の温度で前加熱される。より低い前加熱温度もまた想定され、例えば、50℃〜300℃、好ましくは、100℃〜300℃である。
基材
担体が、その表面に薄膜を堆積させることができる場合、該基材は、本発明にとって決定的な意味を持つものではない。基材は、例えば、ガラス基材、例えば、スライドガラス、フィルム、窓枠又は窓であってよい。ガラス基材は、イオンがガラスから堆積した薄膜に拡散することを防ぐための、二酸化珪素(SiO2)の障壁層を有しても良い。典型的には、二酸化珪素(SiO2)の障壁層は厚さ50nmである。
担体が、その表面に薄膜を堆積させることができる場合、該基材は、本発明にとって決定的な意味を持つものではない。基材は、例えば、ガラス基材、例えば、スライドガラス、フィルム、窓枠又は窓であってよい。ガラス基材は、イオンがガラスから堆積した薄膜に拡散することを防ぐための、二酸化珪素(SiO2)の障壁層を有しても良い。典型的には、二酸化珪素(SiO2)の障壁層は厚さ50nmである。
好ましい基材は、例えば金属、酸化金属、窒化物、炭化物、珪化物およびセラミックなど温度の影響を受けない物質である。そのような担体は、例えば、窓、タイル、洗面台または蛇口の形態であってもよい。
本発明の薄膜は、好ましくは、25〜1000nm、好ましくは、50〜500nm、より好ましくは、100〜400nmの厚さを有する。
抗菌効果
本発明の薄膜は抗菌効果を有しており、即ち、微生物の増殖を破滅させまたは阻害することができる。それらはまた、例えばプリオンなどの病原体に対しても有効でありうる。
本発明の薄膜は抗菌効果を有しており、即ち、微生物の増殖を破滅させまたは阻害することができる。それらはまた、例えばプリオンなどの病原体に対しても有効でありうる。
薄膜の抗菌効果は、光源への曝露によって活性化される。ある実施態様では、薄膜中の二酸化チタンのバンドギャップの範囲内またはそれに対応する、波長または波長の範囲を有する放射線を含む光源に薄膜を曝露することができる。一般に、385nm、好ましくは380nm、またはそれより低い波長を有する放射線が好ましい。例えば、太陽光は、その約2%が385nm以下の波長の放射線であり、適切な光源である。二酸化チタンバンドギャップ以下の波長を有する放射線を吸収するか薄膜に達するのを妨げるような、光源がプラスチックまたは他の物質に覆われていなければ、例えば室内光などのような、環境光に曝露することでも、抗菌効果を提供するのに十分である。
本発明の特に有効な薄膜は、非常に小さい接触角を有し、表面に良好な濡れ性を与える。それゆえ、そのような薄膜で被覆された表面は、良好な排水特性を有し、自己清浄応用に適している。好ましい薄膜は超親水性であり、10°以下、最小0の接触角を有する。
本発明の薄膜の自己清浄/抗菌性の性質から、病院または微生物学的清浄度が必要な他の場所、例えば、食品加工工場、食堂または遊び場における利用がありうる。食肉処理場での使用もまた、想定される。薄膜は、抗菌的性質を与えるために、任意の適切な表面、例えば蛇口および金属加工作品の表面などの金属の表面、例えば洗面台およびトイレなどのセラミックの表面、または例えば扉および窓などのようなガラスの表面に適用され得る。薄膜は、例えばベッドなどの家具、または医療用機器または装置に適用されうることも想定される。薄膜の好ましい用途は、例えばタイル、加工物の表面、ドアハンドル、蛇口およびベッドなどのような医療環境での使用を目的とする表面である。一側面において、本発明は、外科手術もしくは治療によるヒトまたは動物の身体の処置方法、またはヒトもしくは動物の身体に施される診断方法における薄膜の使用まで拡張されない。
実施例1
TiO2薄膜:チタンイソプロポキシド[Ti(OCH(CH3)2)4](6cm3,0.02mol)を、50cm3のプロパン‐2‐オールに加えた。その後、2M塩酸(0.2cm3)を目盛り付きシリンジから、この溶液に滴下して加えた。次に、溶液を1時間活発に攪拌した。その結果得られた無色かつ微かに不透明の溶液を覆い、一晩寝かせた。一晩寝かせた後、ゾルの外観は変化しておらず、沈殿も見られなかった。
TiO2薄膜:チタンイソプロポキシド[Ti(OCH(CH3)2)4](6cm3,0.02mol)を、50cm3のプロパン‐2‐オールに加えた。その後、2M塩酸(0.2cm3)を目盛り付きシリンジから、この溶液に滴下して加えた。次に、溶液を1時間活発に攪拌した。その結果得られた無色かつ微かに不透明の溶液を覆い、一晩寝かせた。一晩寝かせた後、ゾルの外観は変化しておらず、沈殿も見られなかった。
10%酸化銀(例、Ag2OまたはAgO)ドープされた二酸化チタン(TiO2)薄膜:本合成は、空気中で行い、銀ナノ粒子を酸化させるという手法を行うことを除き、Epifani et al [Epifani, M., Giannini, C, Tapfer, L. and Vasanelli, L. Journal of the American Ceramic Society, 83 [10], (2000) 2385− 93]の方法に従う。チタンn‐ブトキシド(17.02g,0.05mol)をブタン‐1‐オール(32cm3,0.35mol)中、ペンタン‐2,4‐ジオン(2.503g,0.025mol)の混合液でキレートした。透明な、麦わら色の溶液が、沈殿なしに生じた。これを時計皿で覆い、一時間攪拌した。蒸留水(3.6g,0.2mol)をプロパン‐2‐オール(9.04g,0.15mol)に溶解し、加えて、チタン前駆体を加水分解した。溶液は透明な麦わら色のままであり、沈殿もなかった。溶液をさらに一時間攪拌した。硝酸銀(0.8510g,0.005mol)をアセトニトリル(1.645g,0.04mol)中に溶解した。これを淡黄色のチタン溶液に加えて、一時間攪拌した。最終攪拌後、結果として得られたゾルは、わずかに黄色が深くなったが、透明で沈殿がなかった。ゾルは、24時間以内に銀沈殿が生じるので、30分以内に浸漬被覆に用いた。
浸漬被覆
標準低鉄顕微鏡用スライド(BDH)上で、薄膜を調製した。これらは清潔で磨かれて提供されたが、それでもなお、使用前には蒸留水で洗い、乾燥させ、プロパン‐2‐オールで洗い、空気乾燥した。顕微鏡用スライドガラスを浸漬被覆するため、寝かせたゾルを背が高く狭い50cm3のビーカーに移して、スライドのほとんどがゾルに浸されうるようにした。浸漬被覆装置を用いて、120cm‐1の一定の速さでゾルからスライドを引き抜いた。2回以上の被覆が必要なら、工程を繰り返す前に、前の被覆を乾燥させてもよい。
標準低鉄顕微鏡用スライド(BDH)上で、薄膜を調製した。これらは清潔で磨かれて提供されたが、それでもなお、使用前には蒸留水で洗い、乾燥させ、プロパン‐2‐オールで洗い、空気乾燥した。顕微鏡用スライドガラスを浸漬被覆するため、寝かせたゾルを背が高く狭い50cm3のビーカーに移して、スライドのほとんどがゾルに浸されうるようにした。浸漬被覆装置を用いて、120cm‐1の一定の速さでゾルからスライドを引き抜いた。2回以上の被覆が必要なら、工程を繰り返す前に、前の被覆を乾燥させてもよい。
全ての薄膜は、500℃で一時間、5℃min‐1の加熱および冷却率で、加熱炉中でアニールした。
抗菌活性
薄膜の抗菌活性を、スタフィロコッカス アウレウス(NCTC6571)、エシェリヒア コリ(NCTC10418)およびバシラス セレウス(CH70−2)に対して評価した。試料を一連の対照に対して、2回試験した(以下詳述)。試料被覆と対照を254nm殺菌UVランプ(Vilber Lourmat VL−208G VWR社製)の下、30分間照射して、薄膜を活性化かつ殺菌した。試料スライドを個々の湿潤チャンバー(底面に湿ったろ紙を有するペトリ皿から作られた)に移した。栄養性培地(Oxoid)中の一晩培養液をボルテックスし、培養液のアリコート25μlを各々の薄膜上に2つずつピペットで取り上げた。細菌上張層を不活性化するために、試料に不可視光青色UVランプ、365nm(Vilber Lourmat VL−208G VWR社製)を所望の時間照射した。所望の不活性期間の後、無菌のアルギン酸カルシウムの綿棒を用いて、細菌の液滴を表面から塗った。5から7つのガラスビーズを含有するガラスビジュー中のカルゴンリンガー溶液(Oxoid)4mlに無菌的に移した。全てのふき取り検体が溶けるまで、ビジューをボルテックスした。全てのビジューに対して、細菌懸濁液の連続的な10倍希釈により、リン酸緩衝生理食塩水(Oxoid)中に10‐6に調製した。各希釈液を、2つずつ寒天にプレートした。マンニトール塩寒天(Oxoid)をスタフィロコッカス アウレウスに、MacConkey寒天(Oxoid)をエシェリヒア コリに、栄養性寒天(Oxoid)をバシラス セレウスに用いた。植菌されたプレートを37℃で一晩培養した。培養後、最も可算できる数のコロニー(30から300コロニー)を持つ希釈に対して、コロニー数計測を行った。データを処理し、希釈要素および2回実験の平均値を考慮した。最終結果は、ガラス対照に対して、試料における、ミリリットル当たりの細菌の数の直接比較である。実験は少なくとも2回行い、各々のテストされた試料に対して4つのデータポイントを与えた。
薄膜の抗菌活性を、スタフィロコッカス アウレウス(NCTC6571)、エシェリヒア コリ(NCTC10418)およびバシラス セレウス(CH70−2)に対して評価した。試料を一連の対照に対して、2回試験した(以下詳述)。試料被覆と対照を254nm殺菌UVランプ(Vilber Lourmat VL−208G VWR社製)の下、30分間照射して、薄膜を活性化かつ殺菌した。試料スライドを個々の湿潤チャンバー(底面に湿ったろ紙を有するペトリ皿から作られた)に移した。栄養性培地(Oxoid)中の一晩培養液をボルテックスし、培養液のアリコート25μlを各々の薄膜上に2つずつピペットで取り上げた。細菌上張層を不活性化するために、試料に不可視光青色UVランプ、365nm(Vilber Lourmat VL−208G VWR社製)を所望の時間照射した。所望の不活性期間の後、無菌のアルギン酸カルシウムの綿棒を用いて、細菌の液滴を表面から塗った。5から7つのガラスビーズを含有するガラスビジュー中のカルゴンリンガー溶液(Oxoid)4mlに無菌的に移した。全てのふき取り検体が溶けるまで、ビジューをボルテックスした。全てのビジューに対して、細菌懸濁液の連続的な10倍希釈により、リン酸緩衝生理食塩水(Oxoid)中に10‐6に調製した。各希釈液を、2つずつ寒天にプレートした。マンニトール塩寒天(Oxoid)をスタフィロコッカス アウレウスに、MacConkey寒天(Oxoid)をエシェリヒア コリに、栄養性寒天(Oxoid)をバシラス セレウスに用いた。植菌されたプレートを37℃で一晩培養した。培養後、最も可算できる数のコロニー(30から300コロニー)を持つ希釈に対して、コロニー数計測を行った。データを処理し、希釈要素および2回実験の平均値を考慮した。最終結果は、ガラス対照に対して、試料における、ミリリットル当たりの細菌の数の直接比較である。実験は少なくとも2回行い、各々のテストされた試料に対して4つのデータポイントを与えた。
対照の適切な使用は、任意の観察された殺菌効果が、被覆自身、UV曝露自身またはその二つの組み合わせであるか否かを判断するのに不可欠である。試験下(即ち、UV光中の活性担体;L+S+)の各被覆に対して、以下の系の陽性および陰性対照が必要だった:UV光中の不活性担体(L+S−);暗中の活性担体(L−S+);暗中の不活性担体(L−S−)。「不活性担体」は、被覆されていないスライドガラスを指す。
スタフィロコッカス アウレウス(NCTC6571)
スタフィロコッカス アウレウスに対する実験は、2時間、4時間および6時間の照射時間で行った。酸化銀(例、Ag2OまたはAgO)またはドープされたおよびドープされてない二酸化チタン(TiO2)被覆の両者は、スタフィロコッカス アウレウスに対して抗菌活性を示したが、程度が異なった(表3)。2重被覆酸化銀(例、Ag2OまたはAgO)/二酸化チタン(TiO2)被覆は、スタフィロコッカス アウレウスに対して著しい効果があると分かり、365nmUV光の下で6時間照射後、約1.33×107cfu/mlのスタフィロコッカス アウレウスの接種材料に対して99.997%の効果があった。4重被覆二酸化チタン(TiO2)被覆は、同じ接種材料に対して、49.925%の効果を示した。
スタフィロコッカス アウレウスに対する実験は、2時間、4時間および6時間の照射時間で行った。酸化銀(例、Ag2OまたはAgO)またはドープされたおよびドープされてない二酸化チタン(TiO2)被覆の両者は、スタフィロコッカス アウレウスに対して抗菌活性を示したが、程度が異なった(表3)。2重被覆酸化銀(例、Ag2OまたはAgO)/二酸化チタン(TiO2)被覆は、スタフィロコッカス アウレウスに対して著しい効果があると分かり、365nmUV光の下で6時間照射後、約1.33×107cfu/mlのスタフィロコッカス アウレウスの接種材料に対して99.997%の効果があった。4重被覆二酸化チタン(TiO2)被覆は、同じ接種材料に対して、49.925%の効果を示した。
2時間および4時間の照射が行われた予備的研究により、被覆の種類間の相対的な抗菌活性、およびUV光量と抗菌活性との間の関係の解明が可能になった。考慮された照射時間のデータの試験は、UV光量と抗菌活性との間の典型的な量と反応関係を示す。全体の有効性のレベルは、酸化銀(例、Ag2OまたはAgO)ドープされた被覆に対してより大きく、これは、参照した二酸化チタン(TiO2)被覆よりもスタフィロコッカス アウレウスに対して、速く殺菌した。
スタフィロコッカス アウレウスに対して試験された全ての被覆の有効性比較を表4に示す。4時間の照射時間をこの評価に用いた。なぜならば、この時間は、最も活性な被覆でさえ、接種材料の完全な不活化に不十分であるからである。そのため、これは、スタフィロコッカス アウレウスに対して各々の被覆の種類の相対的有効性のための比較データをもたらす。
表4は明らかに、被覆の種類間の抗菌有効性におけるばらつきを表している。酸化銀(例、Ag2OまたはAgO)ドープされた薄膜では、有効性は、2重被覆>3重被覆>4重被覆の順番であり、4重被覆酸化銀(例、Ag2OまたはAgO)/二酸化チタン(TiO2)および二酸化チタン(TiO2)薄膜は同様の有効性であった。最も成功した被覆は、薄い(2重被覆)酸化銀(例、Ag2OまたはAgO)ドープされた薄膜であった。
エシェリヒア コリ(NCTC10418)
エシェリヒア コリに対して2重被覆酸化銀(例、Ag2OまたはAgO)/二酸化チタン(TiO2)で、6時間実験を行った。同照射時間でUV光に曝露された被覆されていないスライドに対して52%の有効性であったことと比べて、被覆は、約1.6×107cfu/mlのエシェリヒア コリの接種に対して、平均して69%の有効性を得た。
エシェリヒア コリに対して2重被覆酸化銀(例、Ag2OまたはAgO)/二酸化チタン(TiO2)で、6時間実験を行った。同照射時間でUV光に曝露された被覆されていないスライドに対して52%の有効性であったことと比べて、被覆は、約1.6×107cfu/mlのエシェリヒア コリの接種に対して、平均して69%の有効性を得た。
バシラス セレウス(CH70−2)
2重被覆酸化銀(例、Ag2OまたはAgO)/二酸化チタン(TiO2)被覆もまた、グラム陽性、胞子形成生物であるバシラス セレウスに対して試験した。2時間照射後、被覆は、この生物の99.9%殺菌に達し、4時間後もこの有効性レベルを維持した。バシラス セレウスの初期濃度は、約7.46×105cfu/mlバシラス セレウスだった。このことは、百万cfu/mlの範囲の接種に対しては、丁度2時間後に、被覆は著しく有効的であったことを示す。このレベルの細菌汚染に対する、被覆の成功は、病院環境での抗菌性被覆としてのその将来的な使用に対する更なる根拠となる。
2重被覆酸化銀(例、Ag2OまたはAgO)/二酸化チタン(TiO2)被覆もまた、グラム陽性、胞子形成生物であるバシラス セレウスに対して試験した。2時間照射後、被覆は、この生物の99.9%殺菌に達し、4時間後もこの有効性レベルを維持した。バシラス セレウスの初期濃度は、約7.46×105cfu/mlバシラス セレウスだった。このことは、百万cfu/mlの範囲の接種に対しては、丁度2時間後に、被覆は著しく有効的であったことを示す。このレベルの細菌汚染に対する、被覆の成功は、病院環境での抗菌性被覆としてのその将来的な使用に対する更なる根拠となる。
5%酸化銀(例、Ag2OまたはAgO)ドープされた二酸化チタン(TiO2)薄膜:2重被覆酸化銀(例、Ag2OまたはAgO)/二酸化チタン(TiO2)薄膜は、堆積された薄膜が5%の酸化銀を含むように、銀前駆体量が調整されたことを除き、上記されたように調製された。薄膜の抗菌活性は、6時間照射で40μlアリコートを用いて、上記したように、一連の対照に対するスタフィロコッカス アウレウスに対しての評価を行った。
薄膜は超親水性であるため、試料液滴がガラススライドの端から流れ出ないように、薄膜上に細菌の培養液アリコートを含有することが必要であった。以下の表5に記載されるように、3つの異なる封じ込め方法を用いた。
最初の実験を行った時、「酸化銀」は、「AgO」を指した。その後の実験は、関与する酸化物は実際にはAg2Oであると定めた。
実施例2:物質の更なる特性解析
走査電子顕微鏡法(SEM)、X線波長分散型分析(WDX)、X線光電子分光法(XPS)およびX線吸収端近傍構造(XANES)を行った。これらの技術により、これらの薄膜中に存在する酸化銀の種類の解析が可能となった。
走査電子顕微鏡法(SEM)、X線波長分散型分析(WDX)、X線光電子分光法(XPS)およびX線吸収端近傍構造(XANES)を行った。これらの技術により、これらの薄膜中に存在する酸化銀の種類の解析が可能となった。
SEM/WDX
被覆表面の組成および形態を研究するために、SEMおよびWDX技術を用いた。WDX解析は、Ti100部に対してAg1部の比率(またはより小さい)でAg/TiO2中のAgの存在を確認した。これは、開始ゾル中の銀:チタン比(1:10)より著しく低い。SEM研究の最後ではまた、薄膜の厚みの測定を行った。2重被覆質は、約150nmの厚みを持ち、4重被覆質はこの厚さの約2倍、約300nmであった。
被覆表面の組成および形態を研究するために、SEMおよびWDX技術を用いた。WDX解析は、Ti100部に対してAg1部の比率(またはより小さい)でAg/TiO2中のAgの存在を確認した。これは、開始ゾル中の銀:チタン比(1:10)より著しく低い。SEM研究の最後ではまた、薄膜の厚みの測定を行った。2重被覆質は、約150nmの厚みを持ち、4重被覆質はこの厚さの約2倍、約300nmであった。
XPS
X線光電子分光(XPS)測定法は、通過エネルギー20eVで収束(300μmスポット)単色Al‐kαX線放射を用いて、VG ESALAB 220i XL装置上で行った。50meVの段階で走査を得た。帯電を調整するためにフラッドガンを使用し、結合エネルギーは、284.6eVで元素炭素の表面を仕上げるために参照した。アルゴンスパッタ法を用いて、深さ方向分析を受けた。
X線光電子分光(XPS)測定法は、通過エネルギー20eVで収束(300μmスポット)単色Al‐kαX線放射を用いて、VG ESALAB 220i XL装置上で行った。50meVの段階で走査を得た。帯電を調整するためにフラッドガンを使用し、結合エネルギーは、284.6eVで元素炭素の表面を仕上げるために参照した。アルゴンスパッタ法を用いて、深さ方向分析を受けた。
2組の4重被覆Ag‐TiO2薄膜、1組はUV光に曝露し、1組は出来上がったときのまま、X線光電子分光法(XPS)を受けた。両者は同じXPS分析結果を与えた。酸素原子に対するチタンの比は、予想通り、2:1であり、数%の炭素および珪素以外にはさらに成分は検出されなかった。炭素の割合は、それがXPSチャンバー内からの残余炭素であることが示すエッチング中に劇的に減少した。Siの存在量は、エッチングによらず一定であり、おそらくは、チタン被覆中の小さなヒビがあって、とりわけ、4つの試料のうちの1つのみにしか見られなかった領域上の基礎をなすガラスへの突破の結果であった。銀は、薄膜の表面と間中との両方に存在し、その存在量は、スパッタ深さで不変であった。銀は典型的には、1原子%未満‐最初のゾル中よりも著しく低いが、WDX解析によって解析されるものと同程度(約0.2原子%の範囲の値だが、それ未満のレベルだと正確な定量は困難であった)‐で検出された。装置の検出限界は、約0.1原子%であり、定量性については0.2原子%である。XPSスペクトルを集めて、元素標準の基準とした。458.6eVおよび530.1eVのTi 2p3/2およびO 1s結合エネルギーシフトは、TiO2の文献上の値と正確に一致する(NIST X−ray Photoelectron Spectroscopy Database, http://srdata.nist. gov/xps/ (10/01/2006))。測定直前に、UV光に曝露された試料では、TiとOのピークの両方に、Ti2O3に相当する小さな肩があった。興味深いことに、銀3d5/2XPSは、銀金属368.3eVよりもむしろAg2O(文献報告では、367.7‐367.9eV)に最も一致する、367.8eVに集まった単一環境を示した(NIST X−ray Photoelectron Spectroscopy Database, http://srdata.nist. gov/xps/ (10/01/2006))。従って、XPSは、銀は、薄膜中では金属形態よりもむしろ、Ag(I)として酸化されていることとつじつまが合っている。さらに、スパッタ研究では、スパッタ深さでの銀環境には変化がないことを示した。これは、銀は、Ag2O被覆されたAg粒子としてではなく、Ag2Oとして存在していることを示し、そうでなければ、ピークの形状に非対称性が生じていただろう。
XANES
X線吸収端近傍構造(XANES)測定を、CCLRCダーズベリーシンクロトロン放射源のステーション9.3上で行った。シンクロトロンは、2GeVの電子エネルギーを有し、測定中の平均電流は150mAだった。試料の20層を効果的に供与するために10枚の薄膜をまとめて用いて、蛍光モードで室温中、薄膜に対するAg K端広域X線吸収微細構造(EXAFS)スペクトルを集めた。Ag2O、AgO、およびAg金属粉末を、Ag金属箔基準と共に標準として用い、スペクトルを標準伝達モード中で集めた。粉末化した材料を粉末状のポリビニルピロリジン希釈剤と十分に混ぜ、13mmIRプレス機中でペレットにプレスすることによって、標準を調製した。スペクトルは、典型的には、k=16Å−1に集め、ノイズに対するシグナル比を改善するために数回のスキャンを行った。これらの測定のために、ペレット中の試料の量は、約μd=1の吸光度を与えるように調整した。データを、ダーズベリーのEXAFSプログラム一式;EXCALIBおよびEXBACKを用いて、定法で処理した(N. Binsted, J. W. Campbell, S. J. Gurman and P. C. Stephenson SERC Daresbury Program Library, 1992. N. Binsted EXCURV98: CCLRC Daresbury Laboratory computer program, 1998.)。
X線吸収端近傍構造(XANES)測定を、CCLRCダーズベリーシンクロトロン放射源のステーション9.3上で行った。シンクロトロンは、2GeVの電子エネルギーを有し、測定中の平均電流は150mAだった。試料の20層を効果的に供与するために10枚の薄膜をまとめて用いて、蛍光モードで室温中、薄膜に対するAg K端広域X線吸収微細構造(EXAFS)スペクトルを集めた。Ag2O、AgO、およびAg金属粉末を、Ag金属箔基準と共に標準として用い、スペクトルを標準伝達モード中で集めた。粉末化した材料を粉末状のポリビニルピロリジン希釈剤と十分に混ぜ、13mmIRプレス機中でペレットにプレスすることによって、標準を調製した。スペクトルは、典型的には、k=16Å−1に集め、ノイズに対するシグナル比を改善するために数回のスキャンを行った。これらの測定のために、ペレット中の試料の量は、約μd=1の吸光度を与えるように調整した。データを、ダーズベリーのEXAFSプログラム一式;EXCALIBおよびEXBACKを用いて、定法で処理した(N. Binsted, J. W. Campbell, S. J. Gurman and P. C. Stephenson SERC Daresbury Program Library, 1992. N. Binsted EXCURV98: CCLRC Daresbury Laboratory computer program, 1998.)。
Ag濃度5%、10%、および20%を有するゾルから作られた3つのAgドープされたTiO2薄膜、Ag金属箔、Ag金属粉末、Ag2OならびにAgO粉末に対する、Ag K端XASスペクトルを集めた。そのなかにおいて全てのスペクトルのエネルギースケールは常に、25518eVでAg K端に標準化されており、観察の容易さからY軸にスペクトルをシフトしている、Ag金属粉末、Ag2OならびにAgOに対応するデータと共にドープされた試料に対する、Ag K端XANESデータのプロットは、Ag原子の局所環境は、XANESスペクトルの形状に確かな効果を有することを示す。これは、AgドープされたTiO2薄膜中のAg原子の局所環境を同定するのにもちいることができる。それぞれのケースで、ドープされた薄膜に対するXANESスペクトルの形状は、Ag2O標準に一致し、銀はAg2Oとして薄膜中に存在していることを示している。銀金属のパターンは、観察されるものと非常に異なり、測定された試料中には検出されえなかった。XANESの実験のいずれにおいても、端の前ではバンドは検出されなかった。さらに、XASは、Ag2Oに非常に一致したため、異なる端形状パターンを与えるだろうから、銀は、不連続の固溶体AgxTi2−xO2としてチタン格子中に存在しているわけではないようである。従って、薄膜は、最も良い表現をしたとしても少量の均質に分散した酸化銀(I)を持つアナターゼチタンの混合物である。
実施例3:白色光下での抗菌機能
薄膜の抗菌機能の性質を、電球型蛍光ランプ(以下、白色光源と記載する)による照射の下、評価した。光源は、4000Kの色温度を持つGeneral Electric 28W BiaxTM 2DTMランプ(白色光)、General Electric part no: F282DT5/840/4Pであった。この光源は、イギリスの病院で用いられる蛍光灯と同じ特徴をもつとして選択した(V. Decraene, J. Pratten and M. Wilson, App. Environ. Microbiol, 2006, 72, 4436.)。ランプのスペクトルプロファイルは、約405、435、495、545、588、および610nmのピークからなる。ランプチューブのデザインは、ランプによって生じるUV Aを少ない割合にし、UV BまたはUV Cを実質的になくして、照射紫外線照射の出力を最小している(General Electric Company BiaxTM 2 DTM Lamps Technical Datasheet v 1.6; 2005.)。20cmの距離におけるランプの放射照度は、365nm波長で1×10−5W/cm2(1×10−8W/cm2)(General Electric Company BiaxTM 2 DTM Lamps Technical Datasheet v 1.6; 2005.)未満である。これは、0.4mW/cm2(4×10−4W/cm2)オーダーの曇りの日において測定される太陽の放射照度未満である。
薄膜の抗菌機能の性質を、電球型蛍光ランプ(以下、白色光源と記載する)による照射の下、評価した。光源は、4000Kの色温度を持つGeneral Electric 28W BiaxTM 2DTMランプ(白色光)、General Electric part no: F282DT5/840/4Pであった。この光源は、イギリスの病院で用いられる蛍光灯と同じ特徴をもつとして選択した(V. Decraene, J. Pratten and M. Wilson, App. Environ. Microbiol, 2006, 72, 4436.)。ランプのスペクトルプロファイルは、約405、435、495、545、588、および610nmのピークからなる。ランプチューブのデザインは、ランプによって生じるUV Aを少ない割合にし、UV BまたはUV Cを実質的になくして、照射紫外線照射の出力を最小している(General Electric Company BiaxTM 2 DTM Lamps Technical Datasheet v 1.6; 2005.)。20cmの距離におけるランプの放射照度は、365nm波長で1×10−5W/cm2(1×10−8W/cm2)(General Electric Company BiaxTM 2 DTM Lamps Technical Datasheet v 1.6; 2005.)未満である。これは、0.4mW/cm2(4×10−4W/cm2)オーダーの曇りの日において測定される太陽の放射照度未満である。
紫外光のもと被覆に対して前記詳述したように同様に手法で抗菌活性評価を行った‐実験手法の唯一の変化は、365nm不可視光から電球型蛍光白色光源に変わったことである。TiO2対照ならびにAg:Ti比が5%および10%のゾル由来の被覆を、この方法で調べた。10%Ag:Ti溶液由来の被覆は、白色光照射下、6時間照射された時の対照または5%由来被覆よりも著しく活性であった。結果の数的概要を表6に示す。
実施例4:
暗中における10%ゾル由来の活性被覆(L−S+)は、実証できる殺菌効果を有することは、実施例3において述べられた。予備実験によって、これを詳細に調べた。これは、本試料による殺菌が、照射前の後の残存している潜在的な光活性によるものであるのか、または表面から分散する、例えばAg+などのような別要因によるものなのかどうかを調べるために行った。活性化前/滅菌段階後、48時間滅菌したペトリ皿中で暗中に置いた、L−S+およびL−S−試料のみに対して調べるように本実験を設計した。その他の点では、白色光源下の実験と厳格に同様の手法で実験を行った。本実験の数的データは、以下の表7に与える。
暗中における10%ゾル由来の活性被覆(L−S+)は、実証できる殺菌効果を有することは、実施例3において述べられた。予備実験によって、これを詳細に調べた。これは、本試料による殺菌が、照射前の後の残存している潜在的な光活性によるものであるのか、または表面から分散する、例えばAg+などのような別要因によるものなのかどうかを調べるために行った。活性化前/滅菌段階後、48時間滅菌したペトリ皿中で暗中に置いた、L−S+およびL−S−試料のみに対して調べるように本実験を設計した。その他の点では、白色光源下の実験と厳格に同様の手法で実験を行った。本実験の数的データは、以下の表7に与える。
Ag2O/TiO2被覆は、暗中でほぼ1log単位の殺菌を示す。薄膜の任意の潜在的光活性は、48時間暗中で消失するため、殺菌効果は、ほぼおそらく、SEM下で被覆表面に観察される不規則に分散したAg2Oナノ粒子によって生み出されるAg+イオンの結果である。被覆は、暗い間での殺菌活性を維持するだろうし、白色/不可視光への依存も減ることから、この効果は潜在的に有用である。消毒レベルは、おそらく唯一殺菌方法として照射を行ったときよりも低い。消毒は、光触媒とAg+イオン殺菌方法との両方を行ったように、白色光源に曝露されることによって、高められる。Ag+イオンがこれらの薄膜に対するL−S+殺菌効果の原因かどうかを決めるために、さらに実験がおこなわれる必要があってもよい。
Claims (10)
- 酸化銀ナノ粒子を含む、二酸化チタンホストマトリックスからなる薄膜。
- 薄膜が、二酸化チタンホストマトリックスの5重量%の酸化銀ナノ粒子を含む、請求項1に記載の薄膜。
- 銀が酸化される条件下で、銀金属ナノ粒子または銀合金ナノ粒子と二酸化チタン薄膜とを堆積させることを含む、請求項1または請求項2に記載の薄膜の製造方法。
- 酸化銀ナノ粒子と酸化チタン薄膜とを堆積させることを含む、請求項1または請求項2に記載の薄膜の製造方法。
- 抗菌剤としての請求項1または請求項2に記載の薄膜の使用。
- 薄膜が、薄膜中の二酸化チタンのバンドギャップ以下の単一または複数の波長を有する放射線に曝露される、請求項5に記載の使用。
- 請求項1または請求項2に記載の薄膜がその上に被覆されている基材。
- 基材が、ガラス、金属、酸化金属、窒化物、炭化物、ケイ化物またはセラミックを含む、請求項7に記載の基材。
- 基材が、医療用機器または装置を含む、請求項7または請求項8に記載の基材。
- 基材が、タイル、加工物の表面、ドアハンドル、蛇口またはベッドを含む、請求項7または請求項8に記載の基材。
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