JP2021133380A - 熱交換器の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱交換器を低コストで製造することができる熱交換器の製造方法を提供することを課題とする。【解決手段】回転ツールFの攪拌ピンF2のみを押出多孔管2の外周面11fに挿入し、攪拌ピンF2の外周面を蓋体3の段差傾斜面23bにわずかに接触させた状態で、隙間に第二アルミニウム合金を流入させながら、突合せ部J1よりも押出多孔管2側に設定された設定移動ルートL1に沿って所定の深さで押出多孔管2の外周面11fの廻りに一周させて突合せ部J1を摩擦攪拌する本接合工程と、を含み、本接合工程において、蓋体3A,3Bを両外側から一対の保持部32で押圧して保持しつつ、保持部32を用いて押出多孔管2及び蓋体3を回転又は平行移動させて押出多孔管2と蓋体3と摩擦攪拌することを特徴とする。【選択図】図5
Description
本発明は、熱交換器の製造方法に関する。
摩擦攪拌を利用した熱交換器の製造方法が行われている。例えば、特許文献1には、複数の孔部が並設された押出多孔管と、当該押出多孔管の開口部を封止する封止体とを摩擦攪拌で接合する熱交換器の製造方法が開示されている。図9は、従来の熱交換器の製造方法を示す断面図である。
従来の熱交換器の製造方法では、複数のフィン110を備えたアルミニウム合金製の押出多孔管101と、蓋体102の外周に形成された段差部103とを突き合わせて突合せ部J10を形成した後、突合せ部J10に対して回転ツールGを用いて摩擦攪拌接合を行うというものである。段差部103は、段差底面103aと、段差側面103bとで構成されている。突合せ部J10は、押出多孔管101の端面101aと、蓋体102の段差底面103aとを突き合わせて構成されている。回転ツールGは、ショルダ部G1と、ショルダ部G1から垂下する攪拌ピンG2とを備えている。摩擦攪拌工程では、回転させた攪拌ピンG2の回転中心軸線Zを突合せ部J10に重ね合わせて相対移動させるというものである。
特許文献1に係る発明では、回転ツールと押出多孔管の外周面とを垂直にした状態で回転ツールを押出多孔管廻りに一周させるため、回転ツールを、例えば、先端にスピンドルユニット等の回転駆動手段を備えたアームロボットに取り付けるなどして、回転ツールの回転中心軸の角度や挿入位置を変更・調整する必要がある。このため回転ツールを駆動させるための装置等の付帯設備に費用がかかり、結果的に製造コストが高くなるという問題がある。
このような観点から、本発明は、熱交換器を低コストで製造することができる熱交換器の製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は、内部にフィンを有する押出多孔管と、前記押出多孔管の開口部を封止する二つの蓋体とで構成され、前記押出多孔管と前記蓋体とを摩擦攪拌で接合する熱交換器の製造方法であって、前記蓋体は、底部及び前記底部の周縁から立ち上がる周壁部を有し、前記周壁部の外周縁に、段差側面と、当該段差側面から外側に向かって立ち上がる段差面と、を有する周壁段差部を形成し、前記押出多孔管は、両端部に前記フィンが形成されておらず前記周壁部が嵌め合わされる嵌合部を有し、摩擦攪拌で用いる回転ツールは、攪拌ピンを備えており、前記攪拌ピンは、先端側に向けて先細りとなっており、前記押出多孔管の一方の前記嵌合部に一の前記蓋体の前記周壁部を挿入し、前記押出多孔管の他方の前記嵌合部に他の前記蓋体の前記周壁部を挿入することにより、前記押出多孔管の両端部の内周面とそれぞれの前記蓋体の段差側面とを重ね合わせるとともに、前記押出多孔管の一方の端面と一の前記蓋体の前記段差面、及び、前記押出多孔管の他方の端面と他の前記蓋体の前記段差面とをそれぞれ突き合わせて二つの突合せ部を形成する突合せ工程と、回転する前記回転ツールの攪拌ピンのみを少なくとも一方の前記突合せ部に挿入し、前記攪拌ピンのみを前記押出多孔管及び前記蓋体に接触させた状態で、前記突合せ部に沿って所定の深さで前記押出多孔管の外周面の廻りに一周させて前記突合せ部を摩擦攪拌する本接合工程と、を含み、前記本接合工程において、二つの前記蓋体と前記押出多孔管とを各前記蓋体の両外側から一対の保持部で押圧して保持しつつ、前記保持部を用いて前記押出多孔管及び前記蓋体を回転又は平行移動させて前記押出多孔管と少なくとも一つの前記蓋体とを摩擦攪拌することを特徴とする。
かかる製造方法によれば、蓋体の表面を一対の保持部で保持した状態で押出多孔管及び蓋体を回転又は平行移動させるため、本接合工程中に保持部と回転ツールとが干渉しない。つまり、押出多孔管及び蓋体を位置決めするための治具が回転ツールの移動の妨げにならない。これにより、挿入位置等の調整が容易になるとともに、付帯設備の費用も抑えることができる。よって、熱交換器を低コストで製造することができる。
また、前記段差面は、前記段差側面から外側に向かうにつれて前記底部側に近接するように傾斜する段差傾斜面であり、前記押出多孔管は第二アルミニウム合金で形成されており、前記蓋体は第一アルミニウム合金で形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、前記突合せ工程において、前記押出多孔管の端面と前記蓋体の前記段差傾斜面とを突き合わせて突合せ部に断面V字状の隙間を形成し、前記本接合工程において、回転する前記回転ツールの攪拌ピンのみを前記押出多孔管の外周面に挿入し、前記攪拌ピンの外周面を前記蓋体の前記段差傾斜面にわずかに接触させた状態で、前記隙間に前記第二アルミニウム合金を流入させながら、前記突合せ部に沿って所定の深さで前記押出多孔管の外周面の廻りに一周させて前記突合せ部を摩擦攪拌することが好ましい。
かかる製造方法によれば、蓋体と押出多孔管との摩擦熱によって突合せ部の主として押出多孔管側の第二アルミニウム合金が攪拌されて塑性流動化され、突合せ部において蓋体と押出多孔管とを接合することができる。また、攪拌ピンの外周面を蓋体にわずかに接触させるに留めるため、蓋体から押出多孔管への第一アルミニウム合金の混入を極力少なくすることができる。これにより、突合せ部においては主として押出多孔管側の第二アルミニウム合金が摩擦攪拌されるため、接合強度の低下を抑制することができる。
また、前記突合せ工程では、前記蓋体の外周面よりも前記押出多孔管の外周面の方が外側となるように、前記押出多孔管と前記蓋体とを形成することが好ましい。
かかる製造方法によれば、接合部の金属不足を防ぐことができる。
また、前記回転ツールの回転方向及び進行方向を前記突合せ部側がアドバンシング側となるように設定することが好ましい。
かかる製造方法によれば、突合せ部側の摩擦攪拌が促進され、より好適に接合することができる。
また、前記本接合工程では、前記攪拌ピンの先端が前記蓋体の段差側面を突き抜けた状態で前記押出多孔管の外周面の廻りに一周させて前記突合せ部を摩擦攪拌することが好ましい。
かかる製造方法によれば、蓋体と押出多孔管との接合強度を高めることができる。
前記第一アルミニウム合金は鋳造材からなり、前記第二アルミニウム合金は展伸材からなることが好ましい。
本発明に係る熱交換器の製造方法によれば、熱交換器を低コストで製造することができる熱交換器の製造方法を提供することができる。
[第一実施形態]
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。本発明は以下の実施形態のみに限定されるものではない。また、各実施形態における構成要素は一部又は全部を適宜組み合わせることができる。第一実施形態に係る熱交換器1は、図1に示すように、押出多孔管2と、押出多孔管2の両端に配置された蓋体3(3A,3B)とで構成されている。熱交換器1は、内部に流体を流通させて、配置される発熱体を冷却する機器である。押出多孔管2と各蓋体3とは摩擦攪拌接合で一体化される。なお、蓋体3は、必要に応じて蓋体3A,3Bと称して区別する。
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。本発明は以下の実施形態のみに限定されるものではない。また、各実施形態における構成要素は一部又は全部を適宜組み合わせることができる。第一実施形態に係る熱交換器1は、図1に示すように、押出多孔管2と、押出多孔管2の両端に配置された蓋体3(3A,3B)とで構成されている。熱交換器1は、内部に流体を流通させて、配置される発熱体を冷却する機器である。押出多孔管2と各蓋体3とは摩擦攪拌接合で一体化される。なお、蓋体3は、必要に応じて蓋体3A,3Bと称して区別する。
押出多孔管2は、本体部11と、複数のフィン12とで主に構成されている。押出多孔管2は、本実施形態では第二アルミニウム合金を主に含んで形成されている。第二アルミニウム合金は、例えば、JIS A1050,A1100,A6063等のアルミニウム合金展伸材で形成されている。押出多孔管2は、第二アルミニウム合金で形成された押出形材である。
本体部11は、筒状を呈する。本体部11の側部11a,11bは外側(本体部11の幅方向外側)に凸となるように湾曲している。本体部11の基板部11c,11dは平坦になっており、平行に対向している。つまり、本体部11の断面は長丸形状になっている。フィン12は、基板部11c,11dに対して垂直になっている。フィン12は、本体部11の押し出し方向に延設され、それぞれ平行に形成されている。隣り合うフィン12の間には、流体が流通する断面矩形の孔部13が形成されている。
押出多孔管2の両端の開口部には、フィン12が形成されていない嵌合部14が形成されている。嵌合部14は、後記する蓋体3の周壁部22が挿入される部位である。嵌合部14は、フィン12の両端を切削することにより形成されている。押出多孔管2の形状は、上記した形状に限定されるものではない。例えば、押出多孔管2の断面(押出方向に対して垂直な断面)が、円形、楕円形又は角形であってもよい。
蓋体3A,3Bは、押出多孔管2の両端の開口部を封止する部材である。蓋体3A,3Bは、それぞれ同形状になっている。蓋体3は、底部21と、周壁部22とを有する。底部21は、長丸形状を呈する板状部材である。底部21の外形は、押出多孔管2の開口部を封止するように、押出多孔管2の本体部11の外形と概ね同形状になっている。周壁部22は、底部21の周縁部から垂直に立ち上がる部位である。周壁部22は、底部21の形状に沿って長丸の枠状に形成されている。底部21と周壁部22とで凹状のヘッダー流路24が形成されている。
蓋体3の材料は、摩擦攪拌可能な金属であれば特に制限されないが、本実施形態では第一アルミニウム合金を主に含んで形成されている。第一アルミニウム合金は、第二アルミニウム合金よりも硬度の高い材料である。第一アルミニウム合金は、例えば、JISH5302 ADC12(Al-Si-Cu系)等のアルミニウム合金鋳造材を用いている。
図2にも示すように、周壁部22の外周縁には、段差側面23aと、段差側面23aから立ち上がる段差傾斜面(段差面)23bとで構成された周壁段差部23が形成されている。周壁段差部23は、周方向全体にわたって形成されている。段差側面23aは、押し出し方向と平行になっている。段差傾斜面23bは、段差側面23aから外側(本体部11の幅方向外側)に向かうにつれて底部21に近接するように傾斜している。換言すると、段差傾斜面23bは、外側に向かうにつれて本体部11から離間するように傾斜している。段差傾斜面23bの傾斜角度βは、一定の傾斜角度になっている。なお、本実施形態では段差面を段差側面23aに対して傾斜する段差傾斜面23bとしたが、段差側面23aに対して垂直としてもよい。
押出多孔管2の外周面11fと周壁部22の外周面22bとは面一でもよいが、本実施形態では、押出多孔管2及び蓋体3は、後記する突合せ工程を行った後、周壁部22の外周面22bよりも、押出多孔管2の外周面11fが外側となるように設定している。換言すると、段差傾斜面23bの高さ寸法よりも、押出多孔管2の端面11eの高さ(厚さ)寸法の方が大きくなるように設定している。
次に、本実施形態に係る熱交換器の製造方法について説明する。本実施形態に係る熱交換器の製造方法では、準備工程と、突合せ工程と、本接合工程とを行う。
準備工程は、押出多孔管2及び蓋体3を準備する工程である。押出多孔管2及び蓋体3は、製造方法については特に制限されないが、押出多孔管2は、例えば、押出成形で成形する。蓋体3は、例えば、ダイキャストにより成形する。
突合せ工程は、図2に示すように、押出多孔管2に蓋体3を突き合わせる工程である。突合せ工程では、蓋体3の周壁部22に、押出多孔管2の嵌合部14を嵌め合わせる。これにより、蓋体3の段差傾斜面23bと押出多孔管2の端面11eとが突き合わされて突合せ部J1が形成されるとともに、蓋体3の段差側面23aと押出多孔管2の内周面11gとが重ね合わされて突合せ部J2が形成される。周壁部22の端面22aと、フィン12の端面12aとは接触するか、わずかな隙間をあけて対向する。突合せ部J1,J2は、周方向にわたって形成される。突合せ部J1には断面V字状の隙間が形成される。
本接合工程は、回転ツールF(図4参照)を用いて突合せ部J1を摩擦攪拌接合する工程である。本接合工程では、保持工程と、摩擦攪拌工程とを行う。保持工程は、図3に示すように、一対の保持部32を備える挟持装置(治具)で蓋体3A,3Bを両外側から押圧して挟持する。本実施形態では、保持部32と蓋体3Aとの間、保持部32と蓋体3Bとの間にそれぞれ中間プレート31を介設している。保持部32は円柱状を呈し、その端面が中間プレート31,31にそれぞれ面接触する。中間プレート31を設けることで、保持部32の押圧力を分散させて、押出多孔管2及び蓋体3A,3Bを確実に保持することができる。なお、中間プレート31は省略してもよい。
挟持装置の保持部32と押出多孔管2及び蓋体3A,3Bとは同期して回転又は平行移動する。つまり、当該挟持装置は、蓋体3A及び蓋体3Bを保持部32,32でそれぞれ押圧し挟持した状態で、押出多孔管2及び蓋体3A,3Bを周方向に回転させるとともに、上下、左右及び前後方向に直線移動させることができる。
本接合工程では、図4に示すように、まず、突合せ部J1に対して蓋体3から離間する位置に「設定移動ルートL1」(一点鎖線)を設定する。設定移動ルートL1は、後記する本接合工程において、突合せ部J1を接合するために必要な回転ツールFの移動ルートである。設定移動ルートL1については追って詳述する。
図5に示すように、回転ツールFは、連結部F1と、攪拌ピンF2とで構成されている。回転ツールFは、例えば工具鋼で形成されている。連結部F1は、摩擦攪拌装置(図示省略)の回転軸に連結される部位である。連結部F1は円柱状を呈し、ボルトが締結されるネジ孔(図示省略)が形成されている。
攪拌ピンF2は、連結部F1から垂下しており、連結部F1と同軸になっている。攪拌ピンF2は連結部F1から離間するにつれて先細りになっている。回転中心軸線Zに対する攪拌ピンF2の傾斜角度αは、鉛直面に対する段差傾斜面23bの傾斜角度β(図2)と同一になっている。攪拌ピンF2の先端には平坦な平坦面F3を備えている。
攪拌ピンF2の外周面には螺旋溝が刻設されている。本実施形態では、回転ツールFを右回転させるため、螺旋溝は、基端から先端に向かうにつれて左回りに形成されている。言い換えると、螺旋溝は、螺旋溝を基端から先端に向けてなぞると上から見て左回りに形成されている。
なお、回転ツールFを左回転させる場合は、螺旋溝を基端から先端に向かうにつれて右回りに形成することが好ましい。言い換えると、この場合の螺旋溝は、螺旋溝を基端から先端に向けてなぞると上から見て右回りに形成されている。螺旋溝をこのように設定することで、摩擦攪拌の際に塑性流動化した金属が螺旋溝によって攪拌ピンF2の先端側に導かれる。これにより、被接合金属部材(押出多孔管2及び蓋体3)の外部に溢れ出る金属の量を少なくすることができる。回転ツールFは、例えば、先端にスピンドルユニット等の回転駆動手段を備えたロボットアームに取り付けてもよい。
図6に示すように、摩擦攪拌工程では、開始位置SP1から中間点S1までの押入区間と、設定移動ルートL1上の中間点S1から一周廻って中間点S2までの本区間と、中間点S2から終了位置EP1までの離脱区間の三つの区間を連続して摩擦攪拌接合する。中間点S1,S2は、設定移動ルートL1上に設定されている。開始位置SP1は、押出多孔管2の本体部11において、設定移動ルートL1に対して蓋体3から離間する位置に設定されている。本実施形態では、開始位置SP1と中間点S1とを結ぶ線分と、設定移動ルートL1とのなす角度が鈍角となる位置に開始位置SP1を設定している。
押入区間では、開始位置SP1から中間点S1までの摩擦攪拌を行う。押入区間では、本体部11の外周面11fに対して回転中心軸線Zを垂直にしつつ、右回転させた攪拌ピンF2を開始位置SP1に挿入し、中間点S1まで相対移動させる。この際、少なくとも中間点S1に到達するまでに予め設定された「所定の深さ」に達するように攪拌ピンF2を徐々に押し入れていく。つまり、回転ツールFを一ヶ所に留まらせることなく、回転ツールFを設定移動ルートL1に移動させながら徐々に下降させていく。回転ツールFが中間点S1に達したら、そのまま本区間に移行する。所定の深さとは、突合せ部J1上の中間点S1から中間点S2までの本区間において、攪拌ピンF2を差し込む深さを言う。
本区間では、図6に示すように回転ツールFを設定移動ルートL1に沿って一周させる。本区間においては、中間点S1に達した際に、攪拌ピンF2の外周面と段差傾斜面23bとが平行となるように設定する。また、中間点S1に達した際に、攪拌ピンF2の外周面と段差傾斜面23bとがわずかに接触するように設定する。回転ツールFの回転中心軸線Zと、本体部11の外周面11fとが垂直となるように設定し、これらを維持した状態で、突合せ部J1に沿って回転ツールFを相対移動させる。
攪拌ピンF2の外周面と段差傾斜面23bとの接触代(オフセット量)Nは、例えば、0<N≦1.0mmの間で設定し、好ましくは0<N≦0.85mmの間で設定し、より好ましくは0<N≦0.65mmの間で設定する。
設定移動ルートL1は、図6に示すように、平坦面F3の中心が通過する軌跡を示している。つまり、設定移動ルートL1は、突合せ部J1の周方向において、段差傾斜面23bと攪拌ピンF2の外周面とを平行にしつつ両者がわずかに接触するように設定されている。本区間においては、回転ツールFを上方から見た場合に、平坦面F3の中心が、設定移動ルートL1と重なるように回転ツールFを移動させる。なお、攪拌ピンF2の「所定の深さ」は、適宜設定すればよいが、本実施形態では回転ツールFの平坦面F3が、段差側面23aを突き抜ける位置まで挿入する。これにより、突合せ部J2も確実に接合することができる。
攪拌ピンF2の外周面と段差傾斜面23bとが接触しないように設定すると、突合せ部J1の接合強度が低くなる。一方、攪拌ピンF2の段差傾斜面23bの接触代Nが1.0mmを超えると蓋体3の第一アルミニウム合金が、押出多孔管2側に大量に混入して接合不良となるおそれがある。
図6に示すように、回転ツールFを一周させて攪拌ピンF2が中間点S2に到達したら、そのまま離脱区間に移行する。離脱区間では、中間点S2から終了位置EP1に向かうまでの間に攪拌ピンF2を徐々に引き抜いて(上昇させて)、終了位置EP1で押出多孔管2から攪拌ピンF2を離脱させる。つまり、回転ツールFを一ヶ所に留まらせることなく、回転ツールFを終了位置EP1に移動させながら徐々に引抜いていく。終了位置EP1は、終了位置EP1と中間点S2とが結ぶ線分と設定移動ルートL1とでなす角度が鈍角となる位置に設定する。回転ツールFの移動軌跡には塑性化領域W1が形成される。なお、前記したように押出多孔管2と一端側の蓋体3Aとの摩擦攪拌接合が終了したら、同じ要領で押出多孔管2と他端側の蓋体3Bとの摩擦攪拌接合を行う。押出多孔管2と他端側の蓋体3Bとの摩擦攪拌は省略してもよい。つまり、押出多孔管2と少なくとも一つの蓋体3が摩擦攪拌されていればよい。
以上説明した本実施形態における熱交換器の製造方法によれば、蓋体3A,3Bを一対の保持部32で両外側から保持した状態で押出多孔管2及び蓋体3A,3Bを回転又は移動させるため、本接合工程中に保持部32と回転ツールFとが干渉しない。つまり押出多孔管2と蓋体3A,3Bとを位置決めするための治具が、回転ツールFの移動ルート上に無いため回転ツールFの移動の妨げにならない。これにより、挿入位置等の調整が容易になるとともに、付帯設備の費用も抑えることができる。よって、熱交換器を低コストで製造することができる。
また、押出多孔管2と攪拌ピンF2との摩擦熱によって突合せ部J1の主として押出多孔管2側の第二アルミニウム合金が攪拌されて塑性流動化され、突合せ部J1において押出多孔管2の端面11eと蓋体3の段差傾斜面23bとを接合することができる。
また、攪拌ピンF2の外周面を段差傾斜面23bにわずかに接触させるに留めるため、蓋体3から押出多孔管2への第一アルミニウム合金の混入を極力少なくすることができる。これにより、突合せ部J1においては主として押出多孔管2側の第二アルミニウム合金が摩擦攪拌されるため、接合強度の低下を抑制することができる。つまり、本接合工程では、攪拌ピンF2の回転中心軸線Zに対して一方側と他方側で、攪拌ピンF2が受ける材料抵抗の不均衡を極力少なくすることができる。また、攪拌ピンF2の外周面と蓋体3の段差傾斜面23bとを平行に設定しているため、塑性流動材がバランス良く摩擦攪拌され、接合強度の低下を抑制することができる。
また、本接合工程の押入区間では、開始位置SP1から設定移動ルートL1と重複する位置まで回転ツールFを移動させつつ所定の深さとなるまで攪拌ピンF2を徐々に押入することにより、設定移動ルートL1上で回転ツールFが停止して摩擦熱が過大になるのを防ぐことができる。
同様に、本接合工程の離脱区間では、設定移動ルートL1から終了位置EP1まで回転ツールFを移動させつつ所定の深さから攪拌ピンF2を徐々に引き抜いて離脱させることにより、設定移動ルートL1上で回転ツールFが停止して摩擦熱が過大になるのを防ぐことができる。
同様に、本接合工程の離脱区間では、設定移動ルートL1から終了位置EP1まで回転ツールFを移動させつつ所定の深さから攪拌ピンF2を徐々に引き抜いて離脱させることにより、設定移動ルートL1上で回転ツールFが停止して摩擦熱が過大になるのを防ぐことができる。
これらにより、設定移動ルートL1上で摩擦熱が過大となり、蓋体3から押出多孔管2へ第一アルミニウム合金が過剰に混入して接合不良となるのを防ぐことができる。
また、本接合工程において、開始位置SP1及び終了位置EP1の位置は適宜設定すればよいが、開始位置SP1と設定移動ルートL1とのなす角度、終了位置EP1と設定移動ルートL1とのなす角度が鈍角となるように設定することにより、中間点S1,S2で回転ツールFの移動速度が低下することなくスムーズに本区間又は離脱区間に移行することができる。これにより、設定移動ルートL1上で回転ツールFが停止又は移動速度が低下することにより、摩擦熱が過大となることを防ぐことができる。
また、開始位置SP1から設定移動ルートL1に回転ツールFを移動させる際には、上方から見て回転ツールFの軌跡が曲線を描くように移動させてもよいし、直線状に移動させてもよい。また、同様に、設定移動ルートL1から終了位置EP1に回転ツールFを移動させる際には、上方から見て回転ツールFの軌跡が曲線を描くように移動させてもよいし、直線状に移動させてもよい。
また、本実施形態の本接合工程では、回転ツールFの回転方向及び進行方向は適宜設定すればよいが、回転ツールFの移動軌跡に形成される塑性化領域W1のうち、蓋体3側(突合せ部J1側)がシアー側となり、押出多孔管2側がフロー側となるように回転ツールFの回転方向及び進行方向を設定した。蓋体3側がシアー側となるように設定することで、突合せ部J1の周囲における攪拌ピンF2による攪拌作用が高まり、突合せ部J1における温度上昇が期待でき、突合せ部J1において押出多孔管2と蓋体3とをより確実に接合することができる。
なお、シアー側(Advancing side)とは、被接合部に対する回転ツールの外周の相対速度が、回転ツールの外周における接線速度の大きさに移動速度の大きさを加算した値となる側を意味する。一方、フロー側(Retreating side)とは、回転ツールの移動方向の反対方向に回転ツールが回動することで、被接合部に対する回転ツールの相対速度が低速になる側を言う。
また、蓋体3の第一アルミニウム合金は、押出多孔管2の第二アルミニウム合金よりも硬度の高い材料になっている。これにより、熱交換器1の耐久性を高めることができる。また、蓋体3の第一アルミニウム合金をアルミニウム合金鋳造材とし、押出多孔管2の第二アルミニウム合金をアルミニウム合金展伸材とすることが好ましい。第一アルミニウム合金を例えば、JISH5302 ADC12等のAl−Si−Cu系アルミニウム合金鋳造材とすることにより、蓋体3の鋳造性、強度、被削性等を高めることができる。また、第二アルミニウム合金を例えば、JIS A1000系又はA6000系とすることにより、押出多孔管2の加工性、熱伝導性を高めることができる。なお、本明細書において硬度はブリネル硬さをいい、JIS Z 2243に準じた方法によって測定することができる。
また、本接合工程においては、突合せ部J1の全周を摩擦攪拌接合できるため、熱交換器の気密性及び水密性を高めることができる。また、本接合工程の終端部分において、回転ツールFが中間点S1を完全に通過してから終了位置EP1に向かうようにする。つまり、本接合工程によって形成された塑性化領域W1の各端部同士をオーバーラップさせることにより、より気密性及び水密性を高めることができる。
また、本接合工程では、回転ツールFの攪拌ピンF2の基端側を露出した状態で摩擦攪拌を行うため、摩擦攪拌装置に作用する負荷を軽減することができる。また、本実施形態では、突合せ工程を行った後、周壁部22の外周面22bよりも、押出多孔管2の外周面11fが外側となるように設定している。これにより、摩擦攪拌を行う際に、突合せ部J1の金属不足をより防ぐことができる。
また、蓋体3にヘッダー流路24を備えることにより、孔部13に流入又は流出する流体を集約することができる。
なお、本接合工程では、回転ツールFの回転速度を一定としてもよいが、可変させてもよい。本接合工程の押入区間において、開始位置SP1における回転ツールFの回転速度をV1とし、本区間における回転ツールFの回転速度をV2とすると、V1>V2としてもよい。回転速度のV2は、設定移動ルートL1における予め設定された一定の回転速度である。つまり、開始位置SP1では、回転速度を高く設定しておき、押入区間内で徐々に回転速度を低減させながら本区間に移行してもよい。
また、第一本接合工程の離脱区間において、本区間における回転ツールFの回転速度をV2、終了位置EP1において離脱させるときの回転ツールFの回転速度をV3とすると、V3>V2としてもよい。つまり、離脱区間に移行したら、終了位置EP1に向けて徐々に回転速度を上げながら押出多孔管2から回転ツールFを離脱させてもよい。回転ツールFを押出多孔管2に押し入れる際又は押出多孔管2から離脱させる際に、前記のように設定することで、押入区間又は離脱区間時における少ない押圧力を、回転速度で補うことができるため、摩擦攪拌を好適に行うことができる。
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る熱交換器の製造方法について説明する。第二実施形態では、図7,8に示すように、本接合工程における開始位置SP1、中間点S1,S2及び終了位置EP1の位置をいずれも設定移動ルートL1上に設定する点で第一実施形態と相違する。第二実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
次に、本発明の第二実施形態に係る熱交換器の製造方法について説明する。第二実施形態では、図7,8に示すように、本接合工程における開始位置SP1、中間点S1,S2及び終了位置EP1の位置をいずれも設定移動ルートL1上に設定する点で第一実施形態と相違する。第二実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
第二実施形態に係る熱交換器の製造では、準備工程と、突合せ工程と、本接合工程とを行う。準備工程及び突合せ工程は、第一実施形態と同一である。
本接合工程では、図7に示すように、開始位置SP1を設定移動ルートL1上に設定する。本接合工程では、開始位置SP1から中間点S1までの押入区間と、設定移動ルートL1上の中間点S1から一周廻って中間点S2までの本区間と、中間点S2から終了位置EP1までの離脱区間の三つの区間を連続して摩擦攪拌する。
押入区間では、図7に示すように、設定移動ルート上の開始位置SP1から中間点S1までの摩擦攪拌を行う。押入区間では、押出多孔管2の外周面11fに対して回転中心軸線Zを垂直となるようにしつつ、右回転させた攪拌ピンF2を開始位置SP1に挿入し、中間点S1まで相対移動させる。この際、少なくとも中間点S1に到達するまでに予め設定された「所定の深さ」に達するように攪拌ピンF2を徐々に押し入れていく。
また、押入区間においては、回転ツールFを移動させつつ、中間点S1に達した際に、攪拌ピンF2の外周面と段差傾斜面23bとが平行となるように設定しつつ、攪拌ピンF2の外周面と段差傾斜面23bとがわずかに接触するように設定する。そして、その状態を維持しつつ本区間の摩擦攪拌接合に移行する。攪拌ピンF2の外周面と段差傾斜面23bとの接触代(オフセット量)N及び設定移動ルートL1の設定は第一実施形態と同一である。
図8に示すように、回転ツールFを一周させて攪拌ピンF2が中間点S2に到達したら、そのまま離脱区間に移行する。離脱区間では、図8に示すように、中間点S2から終了位置EP1に向かうまでの間に攪拌ピンF2を徐々に引き抜いて(上方に移動させて)、設定移動ルートL1上に設定された終了位置EP1で押出多孔管2から攪拌ピンF2を離脱させる。
以上説明した第二実施形態に係る熱交換器の製造方法によっても第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。第二実施形態のように本接合工程における開始位置SP1、終了位置EP1は、設定移動ルートL1上に設定してもよい。第二実施形態に係る本接合工程の押入区間では、回転ツールFを設定移動ルート上で移動させつつ所定の深さとなるまで攪拌ピンF2を徐々に押入することにより、設定移動ルートL1上の一点で回転ツールFが停止して摩擦熱が過大になるのを防ぐことができる。また、第二実施形態に係る本接合工程の離脱区間では、回転ツールFを設定移動ルート上で移動させつつ攪拌ピンF2を徐々に離脱させることにより、設定移動ルートL1上の一点で回転ツールFが停止して摩擦熱が過大になるのを防ぐことができる。
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、押出多孔管2及び蓋体3は同種の金属としてもよいし、同じ硬度の金属としてもよい。
1 熱交換器
2 押出多孔管
3 蓋体
23a 段差側面
23b 段差傾斜面(段差面)
F 回転ツール
F2 攪拌ピン
F3 平坦面
J1 突合せ部
SP1 開始位置
EP1 終了位置
W1 塑性化領域
2 押出多孔管
3 蓋体
23a 段差側面
23b 段差傾斜面(段差面)
F 回転ツール
F2 攪拌ピン
F3 平坦面
J1 突合せ部
SP1 開始位置
EP1 終了位置
W1 塑性化領域
Claims (6)
- 内部にフィンを有する押出多孔管と、前記押出多孔管の開口部を封止する二つの蓋体とで構成され、前記押出多孔管と前記蓋体とを摩擦攪拌で接合する熱交換器の製造方法であって、
前記蓋体は、底部及び前記底部の周縁から立ち上がる周壁部を有し、前記周壁部の外周縁に、段差側面と、当該段差側面から外側に向かって立ち上がる段差面と、を有する周壁段差部を形成し、
前記押出多孔管は、両端部に前記フィンが形成されておらず前記周壁部が嵌め合わされる嵌合部を有し、
摩擦攪拌で用いる回転ツールは、攪拌ピンを備えており、前記攪拌ピンは、先端側に向けて先細りとなっており、
前記押出多孔管の一方の前記嵌合部に一の前記蓋体の前記周壁部を挿入し、前記押出多孔管の他方の前記嵌合部に他の前記蓋体の前記周壁部を挿入することにより、前記押出多孔管の両端部の内周面とそれぞれの前記蓋体の段差側面とを重ね合わせるとともに、前記押出多孔管の一方の端面と一の前記蓋体の前記段差面、及び、前記押出多孔管の他方の端面と他の前記蓋体の前記段差面とをそれぞれ突き合わせて二つの突合せ部を形成する突合せ工程と、
回転する前記回転ツールの攪拌ピンのみを少なくとも一方の前記突合せ部に挿入し、前記攪拌ピンのみを前記押出多孔管及び前記蓋体に接触させた状態で、前記突合せ部に沿って所定の深さで前記押出多孔管の外周面の廻りに一周させて前記突合せ部を摩擦攪拌する本接合工程と、を含み、
前記本接合工程において、二つの前記蓋体と前記押出多孔管とを各前記蓋体の両外側から一対の保持部で押圧して保持しつつ、前記保持部を用いて前記押出多孔管及び前記蓋体を回転又は平行移動させて前記押出多孔管と少なくとも一つの前記蓋体とを摩擦攪拌することを特徴とする熱交換器の製造方法。 - 前記段差面は、前記段差側面から外側に向かうにつれて前記底部側に近接するように傾斜する段差傾斜面であり、
前記押出多孔管は第二アルミニウム合金で形成されており、前記蓋体は第一アルミニウム合金で形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、
前記突合せ工程において、前記押出多孔管の端面と前記蓋体の前記段差傾斜面とを突き合わせて突合せ部に断面V字状の隙間を形成し、
前記本接合工程において、回転する前記回転ツールの攪拌ピンのみを前記押出多孔管の外周面に挿入し、前記攪拌ピンの外周面を前記蓋体の前記段差傾斜面にわずかに接触させた状態で、前記隙間に前記第二アルミニウム合金を流入させながら、前記突合せ部に沿って所定の深さで前記押出多孔管の外周面の廻りに一周させて前記突合せ部を摩擦攪拌することを特徴とする請求項1に記載の熱交換器の製造方法。 - 前記突合せ工程では、前記蓋体の外周面よりも前記押出多孔管の外周面の方が外側となるように、前記押出多孔管と前記蓋体とを形成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱交換器の製造方法。
- 前記回転ツールの回転方向及び進行方向を前記突合せ部側がアドバンシング側となるように設定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の熱交換器の製造方法。
- 前記本接合工程では、前記攪拌ピンの先端が前記蓋体の段差側面を突き抜けた状態で前記押出多孔管の外周面の廻りに一周させて前記突合せ部を摩擦攪拌することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の熱交換器の製造方法。
- 前記第一アルミニウム合金は鋳造材からなり、前記第二アルミニウム合金は展伸材からなることを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか一項に記載の熱交換器の製造方法。
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