JP2020175396A - 液冷ジャケットの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】材種の異なるアルミニウム合金を好適に接合することができる液冷ジャケットの製造方法を提供することを課題とする。【解決手段】回転する回転ツールFの先端側ピンF3を封止体3に挿入し、先端側ピンF3の外周面を周壁段差部12の段差側面12bにわずかに接触させつつ、基端側ピンF2の外周面を封止体3の表面3aに接触させた状態で、封止体3の外周側面3cよりも内側に設定された設定移動ルートL1に沿って所定の深さで封止体3の廻りに一周させて第一突合せ部J1を摩擦攪拌する本接合工程と、を含み、本接合工程において、設定移動ルートL1よりもさらに内側に終了位置を設定し、第一突合せ部J1に対する摩擦攪拌接合の後、回転ツールFを終了位置に移動させつつ先端側ピンF3を封止体3から徐々に引き抜いて終了位置で封止体3から回転ツールFを離脱させることを特徴とする。【選択図】図17
Description
本発明は、液冷ジャケットの製造方法に関する。
例えば、特許文献1には、液冷ジャケットの製造方法が開示されている。図22は、従来の液冷ジャケットの製造方法を示す断面図である。従来の液冷ジャケットの製造方法では、アルミニウム合金製のジャケット本体101の段差部に設けられた段差側面101cと、アルミニウム合金製の封止体102の側面102cとを突き合わせて形成された突合せ部J10に対して摩擦攪拌接合を行うというものである。また、従来の液冷ジャケットの製造方法では、回転ツールF40の攪拌ピンF42のみを突合せ部J10に挿入して摩擦攪拌接合を行っている。また、従来の液冷ジャケットの製造方法では、回転ツールF40の回転中心軸Zを突合せ部J10に重ねて相対移動させるというものである。
ここで、ジャケット本体101は複雑な形状となりやすく、例えば、4000系アルミニウム合金の鋳造材で形成し、封止体102のように比較的単純な形状のものは、1000系アルミニウム合金の展伸材で形成するというような場合がある。このように、アルミニウム合金の材種の異なる部材同士を接合して、液冷ジャケットを製造する場合がある。このような場合は、ジャケット本体101の方が封止体102よりも硬度が高くなることが一般的であるため、図22のように摩擦攪拌接合を行うと、攪拌ピンF42が封止体102側から受ける材料抵抗に比べて、ジャケット本体101側から受ける材料抵抗が大きくなる。そのため、回転ツールF40の攪拌ピンF42によって異なる材種をバランスよく攪拌することが困難となり、接合後の塑性化領域に空洞欠陥が発生し接合強度が低下するという問題がある。
また、攪拌ピンF42を突合せ部J10から離脱させる際、鉛直方向に攪拌ピンF42を移動させるため、摩擦攪拌の終了位置における摩擦熱が過大となる。これにより、当該終了位置において、ジャケット本体101側の金属が封止体102側に混入しやすくなり、接合不良の一因となるという問題がある。
このような観点から、本発明は、材種の異なるアルミニウム合金を好適に接合することができる液冷ジャケットの製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明は、底部及び前記底部の周縁から立ち上がる周壁部を有するジャケット本体と、前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体とで構成され、前記ジャケット本体と前記封止体とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法であって、前記ジャケット本体は第一アルミニウム合金で形成されており、前記封止体は第二アルミニウム合金で形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、摩擦攪拌で用いる回転ツールは、基端側ピンと、先端側ピンとを備え、前記基端側ピンのテーパー角度は、前記先端側ピンのテーパー角度よりも大きくなっており、前記基端側ピンの外周面には階段状の段差部が形成されており、前記周壁部の内周縁に、段差底面と、当該段差底面から前記開口部に向かって立ち上がる段差側面と、を有する周壁段差部を形成するとともに、前記封止体の板厚を、前記周壁段差部の前記段差側面の高さ寸法よりも大きくなるように形成する準備工程と、前記ジャケット本体に前記封止体を載置することにより前記周壁段差部の前記段差側面と前記封止体の外周側面とを突き合わせて第一突合せ部を形成するとともに、前記周壁段差部の段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第二突合せ部を形成する載置工程と、回転する前記回転ツールの前記先端側ピンを前記封止体に挿入し、前記先端側ピンの外周面を前記周壁段差部の前記段差側面にわずかに接触させつつ、前記基端側ピンの外周面を前記封止体の表面に接触させた状態で、前記封止体の外周側面よりも内側に設定された設定移動ルートに沿って所定の深さで前記封止体の廻りに一周させて前記第一突合せ部を摩擦攪拌する本接合工程と、を含み、前記本接合工程において、前記設定移動ルートよりもさらに内側に終了位置を設定し、前記第一突合せ部に対する摩擦攪拌接合の後、前記回転ツールを前記終了位置に移動させつつ前記先端側ピンを前記封止体から徐々に引き抜いて前記終了位置で前記封止体から前記回転ツールを離脱させることとを特徴とする。
また、本発明は、底部及び前記底部の周縁から立ち上がる周壁部を有するジャケット本体と、前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体とで構成され、前記ジャケット本体と前記封止体とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法であって、前記ジャケット本体は第一アルミニウム合金で形成されており、前記封止体は第二アルミニウム合金で形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、摩擦攪拌で用いる回転ツールは、基端側ピンと、先端側ピンとを備え、前記基端側ピンのテーパー角度は、前記先端側ピンのテーパー角度よりも大きくなっており、前記基端側ピンの外周面には階段状の段差部が形成されており、前記周壁部の内周縁に、段差底面と、当該段差底面から前記開口部に向かって立ち上がる段差側面と、を有する周壁段差部を形成するとともに、前記封止体の板厚を、前記周壁段差部の前記段差側面の高さ寸法よりも大きくなるように形成する準備工程と、前記ジャケット本体に前記封止体を載置することにより前記周壁段差部の前記段差側面と前記封止体の外周側面とを突き合わせて第一突合せ部を形成するとともに、前記周壁段差部の段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第二突合せ部を形成する載置工程と、回転する前記回転ツールの前記先端側ピンを前記封止体に挿入し、前記先端側ピンの外周面を前記周壁段差部の前記段差側面にわずかに接触させつつ、前記基端側ピンの外周面を前記封止体の表面に接触させた状態で、前記封止体の外周側面よりも内側に設定された設定移動ルートに沿って所定の深さで前記封止体の廻りに一周させて前記第一突合せ部を摩擦攪拌する本接合工程と、を含み、前記本接合工程において、前記設定移動ルート上に終了位置を設定し、前記第一突合せ部に対する摩擦攪拌接合の後、前記回転ツールを前記終了位置に移動させつつ前記先端側ピンを前記封止体から徐々に引き抜いて前記終了位置で前記封止体から前記回転ツールを離脱させることを特徴とする。
かかる製造方法によれば、封止体と攪拌ピンとの摩擦熱によって第一突合せ部の主として封止体側の第二アルミニウム合金が攪拌されて塑性流動化され、第一突合せ部において段差側面と封止体の外周側面とを接合することができる。また、攪拌ピンの外周面をジャケット本体の段差側面にわずかに接触させるに留めるため、ジャケット本体から封止体への第一アルミニウム合金の混入を極力少なくすることができる。これにより、第一突合せ部においては主として封止体側の第二アルミニウム合金が摩擦攪拌されるため、接合強度の低下を抑制することができる。また、回転ツールを終了位置に向かって移動させつつ徐々に離脱させるため、設定移動ルート上で摩擦熱が過大になるのを防ぐことができる。
また、本発明は、底部及び前記底部の周縁から立ち上がる周壁部を有するジャケット本体と、前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体とで構成され、前記ジャケット本体と前記封止体とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法であって、前記ジャケット本体は第一アルミニウム合金で形成されており、前記封止体は第二アルミニウム合金で形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、摩擦攪拌で用いる回転ツールは、基端側ピンと、先端側ピンとを備え、前記基端側ピンのテーパー角度は、前記先端側ピンのテーパー角度よりも大きくなっており、前記基端側ピンの外周面には階段状の段差部が形成されており、前記周壁部の内周縁に、段差底面と、当該段差底面から前記開口部に向かって立ち上がる段差側面と、を有する周壁段差部を形成するとともに、前記封止体の板厚を、前記周壁段差部の前記段差側面の高さ寸法よりも大きくなるように形成する準備工程と、前記ジャケット本体に前記封止体を載置することにより前記周壁段差部の前記段差側面と前記封止体の外周側面とを突き合わせて第一突合せ部を形成するとともに、前記周壁段差部の段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第二突合せ部を形成する載置工程と、回転する前記回転ツールの前記先端側ピンを前記封止体に挿入し、前記先端側ピンの外周面を前記周壁段差部の前記段差側面にわずかに接触させつつ、前記基端側ピンの外周面を前記封止体の表面に接触させた状態で、前記封止体の外周側面よりも内側に設定された設定移動ルートに沿って所定の深さで前記封止体の廻りに一周させて前記第一突合せ部を摩擦攪拌する本接合工程と、を含み、前記本接合工程では、前記第一突合せ部に第一領域及び第二領域を設定し、前記第二領域に係る前記ジャケット本体及び封止体をクランプした後に、前記第一領域を摩擦攪拌する第一本接合工程と、前記第一領域に係る前記ジャケット本体及び封止体をクランプした後に、前記第二領域を摩擦攪拌する第二本接合工程と、を行い、前記第一本接合工程及び前記第二本接合工程において、前記設定移動ルートよりもさらに内側に終了位置を設定し、前記第一突合せ部に対する摩擦攪拌接合の後、前記回転ツールを前記終了位置に移動させつつ前記先端側ピンを前記封止体から徐々に引き抜いて前記終了位置で前記封止体から前記回転ツールを離脱させることを特徴とする。
また、本発明は、底部及び前記底部の周縁から立ち上がる周壁部を有するジャケット本体と、前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体とで構成され、前記ジャケット本体と前記封止体とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法であって、前記ジャケット本体は第一アルミニウム合金で形成されており、前記封止体は第二アルミニウム合金で形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、摩擦攪拌で用いる回転ツールは、基端側ピンと、先端側ピンとを備え、前記基端側ピンのテーパー角度は、前記先端側ピンのテーパー角度よりも大きくなっており、前記基端側ピンの外周面には階段状の段差部が形成されており、前記周壁部の内周縁に、段差底面と、当該段差底面から前記開口部に向かって立ち上がる段差側面と、を有する周壁段差部を形成するとともに、前記封止体の板厚を、前記周壁段差部の前記段差側面の高さ寸法よりも大きくなるように形成する準備工程と、前記ジャケット本体に前記封止体を載置することにより前記周壁段差部の前記段差側面と前記封止体の外周側面とを突き合わせて第一突合せ部を形成するとともに、前記周壁段差部の段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第二突合せ部を形成する載置工程と、回転する前記回転ツールの前記先端側ピンを前記封止体に挿入し、前記先端側ピンの外周面を前記周壁段差部の前記段差側面にわずかに接触させつつ、前記基端側ピンの外周面を前記封止体の表面に接触させた状態で、前記封止体の外周側面よりも内側に設定された設定移動ルートに沿って所定の深さで前記封止体の廻りに一周させて前記第一突合せ部を摩擦攪拌する本接合工程と、を含み、前記本接合工程では、前記第一突合せ部に第一領域及び第二領域を設定し、前記第二領域に係る前記ジャケット本体及び封止体をクランプした後に、前記第一領域を摩擦攪拌する第一本接合工程と、前記第一領域に係る前記ジャケット本体及び封止体をクランプした後に、前記第二領域を摩擦攪拌する第二本接合工程と、を行い、前記第一本接合工程及び前記第二本接合工程において、前記設定移動ルート上に終了位置を設定し、前記第一突合せ部に対する摩擦攪拌接合の後、前記回転ツールを前記終了位置に移動させつつ前記先端側ピンを前記封止体から徐々に引き抜いて前記終了位置で前記封止体から前記回転ツールを離脱させることを特徴とする。
かかる製造方法によれば、封止体と攪拌ピンとの摩擦熱によって第一突合せ部の主として封止体側の第二アルミニウム合金が攪拌されて塑性流動化され、第一突合せ部において段差側面と封止体の外周側面とを接合することができる。また、攪拌ピンの外周面をジャケット本体の段差側面にわずかに接触させるに留めるため、ジャケット本体から封止体への第一アルミニウム合金の混入を極力少なくすることができる。これにより、第一突合せ部においては主として封止体側の第二アルミニウム合金が摩擦攪拌されるため、接合強度の低下を抑制することができる。また、回転ツールを終了位置に向かって移動させつつ徐々に離脱させるため、設定移動ルート上で摩擦熱が過大になるのを防ぐことができる。また、本接合工程においてジャケット本体及び封止体のクランプする位置及び摩擦攪拌する位置をそれぞれ分けて行うことにより、効率良く摩擦攪拌作業を行うことができる。
また、前記本接合工程の前記所定の深さは、前記先端側ピンが前記周壁段差部の前記段差底面にわずかに接触する位置に設定することが好ましい。
かかる製造方法によれば、封止体への第一アルミニウム合金の混入を極力防ぎつつ、第二突合せ部の接合強度を高めることができる。
また、前記本接合工程では、所定の回転速度で前記回転ツールを回転させて摩擦攪拌を行い、前記本接合工程において前記先端側ピンを離脱させるとき、前記所定の回転速度よりも徐々に回転速度を上げながら前記終了位置まで移動させることが好ましい。
かかる製造方法によれば、摩擦攪拌をより好適に行うことができる。
また、前記準備工程では、前記周壁部の内周縁に、段差底面と、当該段差底面から前記開口部に向かって外側に広がるように斜めに立ち上がる段差側面と、を有する周壁段差部を形成することが好ましい。
かかる製造方法によれば、回転ツールと段差側面とが過剰に接触するのを避けつつ、確実に接合することができる。
また、前記準備工程では、前記ジャケット本体をダイキャストで形成するとともに少なくとも前記封止体が表面側に凸となるように形成することが好ましい。
かかる製造方法によれば、予め凸としておくことで摩擦熱に起因する熱収縮を利用して液冷ジャケットを平坦にすることができる。
また、前記本接合工程に先だって前記第一突合せ部を仮接合する仮接合工程をさらに含むことが好ましい。
かかる製造方法によれば、本接合工程における第一突合せ部の目開きを防ぐことができる。
本発明に係る液冷ジャケットの製造方法によれば、材種の異なるアルミニウム合金を好適に接合することができる。
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。まずは、本実施形態に係る接合方法で用いる回転ツールについて説明する。回転ツールは、摩擦攪拌接合に用いられるツールである。図1に示すように、回転ツールFは、例えば工具鋼で形成されており、基軸部F1と、基端側ピンF2と、先端側ピンF3とで主に構成されている。基軸部F1は、円柱状を呈し、摩擦攪拌装置の主軸に接続される部位である。
基端側ピンF2は、基軸部F1に連続し、先端に向けて先細りになっている。基端側ピンF2は、円錐台形状を呈する。基端側ピンF2のテーパー角度Aは適宜設定すればよいが、例えば、135〜160°になっている。テーパー角度Aが135°未満であるか、又は、160°を超えると摩擦攪拌後の接合表面粗さが大きくなる。テーパー角度Aは、後記する先端側ピンF3のテーパー角度Bよりも大きくなっている。図2に示すように、基端側ピンF2の外周面には、階段状のピン段差部F21が高さ方向の全体に亘って形成されている。ピン段差部F21は、右回り又は左回りで螺旋状に形成されている。つまり、ピン段差部F21は、平面視して螺旋状であり、側面視すると階段状になっている。本第一実施形態では、回転ツールFを右回転させるため、ピン段差部F21は基端側から先端側に向けて左回りに設定している。
なお、回転ツールFを左回転させる場合は、ピン段差部F21を基端側から先端側に向けて右回りに設定することが好ましい。これにより、ピン段差部F21によって塑性流動材が先端側に導かれるため、被接合金属部材の外部に溢れ出る金属を低減することができる。ピン段差部F21は、段差底面F21aと、段差側面F21bとで構成されている。隣り合うピン段差部F21の各頂点F21c,F21cの距離X1(水平方向距離)は、後記する段差角度C及び段差側面F21bの高さY1に応じて適宜設定される。
段差側面F21bの高さY1は適宜設定すればよいが、例えば、0.1〜0.4mmで設定されている。高さY1が0.1mm未満であると接合表面粗さが大きくなる。一方、高さY1が0.4mmを超えると接合表面粗さが大きくなる傾向があるとともに、有効段差部数(被接合金属部材と接触しているピン段差部F21の数)も減少する。
段差底面F21aと段差側面F21bとでなす段差角度Cは適宜設定すればよいが、例えば、85〜120°で設定されている。段差底面F21aは、本実施形態では水平面と平行になっている。段差底面F21aは、ツールの回転中心軸から外周方向に向かって水平面に対して−5°〜15°内の範囲で傾斜していてもよい(マイナスは水平面に対して下方、プラスは水平面に対して上方)。距離X1、段差側面F21bの高さY1、段差角度C及び水平面に対する段差底面F21aの角度は、摩擦攪拌を行う際に、塑性流動材がピン段差部F21の内部に滞留して付着することなく外部に抜けるとともに、段差底面F21aで塑性流動材を押えて接合表面粗さを小さくすることができるように適宜設定する。
図1に示すように、先端側ピンF3は、基端側ピンF2に連続して形成されている。先端側ピンF3は円錐台形状を呈する。先端側ピンF3の先端は回転中心軸に対して垂直な平坦面F4になっている。先端側ピンF3のテーパー角度Bは、基端側ピンF2のテーパー角度Aよりも小さくなっている。図2に示すように、先端側ピンF3の外周面には、螺旋溝F31が刻設されている。螺旋溝F31は、右回り、左回りのどちらでもよいが、本第一実施形態では回転ツールFを右回転させるため、基端側から先端側に向けて左回りに刻設されている。
なお、回転ツールFを左回転させる場合は、螺旋溝F31を基端側から先端側に向けて右回りに設定することが好ましい。これにより、螺旋溝F31によって塑性流動材が先端側に導かれるため、被接合金属部材の外部に溢れ出る金属を低減することができる。螺旋溝F31は、螺旋底面F31aと、螺旋側面F31bとで構成されている。隣り合う螺旋溝F31の頂点F31c,F31cの距離(水平方向距離)を長さX2とする。螺旋側面F31bの高さを高さY2とする。螺旋底面F31aと、螺旋側面F31bとで構成される螺旋角度Dは例えば、45〜90°で形成されている。螺旋溝F31は、被接合金属部材と接触することにより摩擦熱を上昇させるとともに、塑性流動材を先端側に導く役割を備えている。
回転ツールFは、適宜設計変更が可能である。図3は、本発明の回転ツールの第一変形例を示す側面図である。図3に示すように、第一変形例に係る回転ツールFAでは、ピン段差部F21の段差底面F21aと段差側面F21bとのなす段差角度Cが85°になっている。段差底面F21aは、水平面と平行である。このように、段差底面F21aは水平面と平行であるとともに、段差角度Cは、摩擦攪拌中にピン段差部F21内に塑性流動材が滞留して付着することなく外部に抜ける範囲で鋭角としてもよい。
図4は、本発明の回転ツールの第二変形例を示す側面図である。図4に示すように、第二変形例に係る回転ツールFBでは、ピン段差部F21の段差角度Cが115°になっている。段差底面F21aは水平面と平行になっている。このように、段差底面F21aは水平面と平行であるとともに、ピン段差部F21として機能する範囲で段差角度Cが鈍角となってもよい。
図5は、本発明の回転ツールの第三変形例を示す側面図である。図5に示すように、第三変形例に係る回転ツールFCでは、段差底面F21aがツールの回転中心軸から外周方向に向かって水平面に対して10°上方に傾斜している。段差側面F21bは、鉛直面と平行になっている。このように、摩擦攪拌中に塑性流動材を押さえることができる範囲で、段差底面F21aがツールの回転中心軸から外周方向に向かって水平面よりも上方に傾斜するように形成されていてもよい。上記の回転ツールの第一〜第三変形例によっても、下記の実施形態と同等の効果を奏することができる。
[第一実施形態]
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。第一実施形態に係る液冷ジャケット1は、図6に示すように、ジャケット本体2と封止体3とで構成されている。液冷ジャケット1は、内部に流体を流通させて、配置される発熱体を冷却する機器である。ジャケット本体2と封止体3とは摩擦攪拌接合で一体化される。以下の説明における「表面」とは、「裏面」の反対側の面を意味する。
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。第一実施形態に係る液冷ジャケット1は、図6に示すように、ジャケット本体2と封止体3とで構成されている。液冷ジャケット1は、内部に流体を流通させて、配置される発熱体を冷却する機器である。ジャケット本体2と封止体3とは摩擦攪拌接合で一体化される。以下の説明における「表面」とは、「裏面」の反対側の面を意味する。
ジャケット本体2は、底部10及び周壁部11で主に構成されている。ジャケット本体2は、摩擦攪拌可能な金属であれば特に制限されないが、本実施形態では第一アルミニウム合金を主に含んで形成されている。第一アルミニウム合金は、例えば、JISH5302 ADC12(Al-Si-Cu系)等のアルミニウム合金鋳造材を用いている。
底部10は、矩形を呈する板状部材である。周壁部11は、底部10の周縁部から矩形枠状に立ち上がる壁部である。底部10及び周壁部11で凹部13が形成されている。周壁部11の内周縁には周壁段差部12が形成されている。周壁段差部12は、段差底面12aと、段差底面12aから斜めに立ち上がる段差側面12bとで構成されている。図7に示すように、段差側面12bの傾斜角度βは、適宜設定すればよいが、例えば、本実施形態では図11に示す回転ツールFの先端側ピンF3の傾斜角度αと同一になっている。
なお、段差側面12bは、段差底面12aに対して垂直でもよい。また、本実施形態のジャケット本体2は一体形成されているが、例えば、周壁部11を分割構成としてシール部材で接合して一体化してもよい。
封止体3は、ジャケット本体2の開口部を封止する部材である。封止体3は、摩擦攪拌可能な金属であれば特に制限されないが、本実施形態では第二アルミニウム合金を主に含んで形成されている。第二アルミニウム合金は、第一アルミニウム合金よりも硬度の低い材料である。第二アルミニウム合金は、例えば、JIS A1050,A1100,A6063等のアルミニウム合金展伸材で形成されている。
次に、本実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。本実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法では、準備工程と、載置工程と、本接合工程とを行う。
準備工程は、ジャケット本体2及び封止体3を準備する工程である。ジャケット本体2及び封止体3は、製造方法については特に制限されないが、ジャケット本体2は、例えば、ダイキャストで成形する。封止体3は、例えば押出成形により成形する。
載置工程は、図7に示すように、ジャケット本体2に封止体3を載置する工程である。載置工程によって、封止体3の外周側面3cと周壁段差部12の段差側面12bとが突き合わされて第一突合せ部J1が形成される。段差側面12bは外側に傾斜しているため、第一突合せ部J1には断面V字状の隙間が形成される。第一突合せ部J1は、封止体3の周囲に沿って平面視矩形状に形成される。また、周壁段差部12の段差底面12aと、封止体3の裏面3bとが突き合わされて第二突合せ部J2が形成される。封止体3の板厚は、適宜設定すればよいが、本実施形態では段差側面12bの高さ寸法よりも大きくなっている。
図8に示すように、第一突合せ部J1のうち封止体3上に設定された中間線X10よりも一方側(図8では上側)の領域を第一領域R1とする。また、第一突合せ部J1のうち中間線X10よりも他方側(図8では下側)の領域を第二領域R2とする。中間線X10は封止体3の長手方向の中間の位置の線分である。
図9に示すように、ジャケット本体2に封止体3を載置したら、3つのクランプK1で第二領域R2(図8参照)に係るジャケット本体2及び封止体3を移動不能にクランプする。また、第一突合せ部J1よりも内側に「設定移動ルートL1」(一点鎖線)を設定する。設定移動ルートL1は、後記する本接合工程において、第一突合せ部J1を接合するために必要な回転ツールFの移動ルートである。後記するように、本実施形態では先端側ピンF3を段差側面12bにわずかに接触させるため、設定移動ルートL1は、外周側面3cよりも内側において、平面視矩形状に設定する。
本接合工程は、図10A及び図11に示すように、回転ツールFを用いて第一突合せ部J1を摩擦攪拌接合する工程である。本実施形態では、第一突合せ部J1のうち第一領域R1(図8参照)を接合する第一本接合工程と、第一突合せ部J1のうち第二領域R2(図8参照)を接合する第二本接合工程と、をそれぞれ行う。
図10Aに示すように、第一本接合工程では、開始位置SP1から中間点S1までの押入区間と、設定移動ルートL1上の中間点S1から中間点S2までの本区間と、中間点S2から終了位置EP1までの離脱区間の三つの区間を連続して摩擦攪拌する。中間点S1,S2は、中間線X10と設定移動ルートL1とが交差する位置に設定されている。開始位置SP1は、封止体3の表面3aにおいて、設定移動ルートL1よりも内側の位置に設定されている。本実施形態では、開始位置SP1と中間点S1とを結ぶ線分と、第一領域R1(図8参照)における設定移動ルートL1とのなす角度が鈍角となる位置に設定している。
第一本接合工程の押入区間では、図10Aに示すように、開始位置SP1から中間点S1までの摩擦攪拌を行う。押入区間では、右回転させた先端側ピンF3を開始位置SP1に挿入し、中間点S1まで移動させる。この際、図10Bに示すように、少なくとも中間点S1に到達するまでに予め設定された「所定の深さ」に達するように先端側ピンF3を徐々に押し入れていく。つまり、回転ツールFを一ヶ所に留まらせることなく、回転ツールFを設定移動ルートL1に移動させながら徐々に下降させていく。
中間点S1に達したらそのまま本区間の摩擦攪拌接合に移行する。図10A及び図11に示すように、本区間では、先端側ピンF3の回転中心軸Zと設定移動ルートL1とが重なるように回転ツールFを移動させる。本区間では、先端側ピンF3の「所定の深さ」を、先端側ピンF3の平坦面F4が段差底面12aにわずかに接触する程度に設定する。なお、先端側ピンF3の「所定の深さ」は、適宜設定すればよく、例えば、先端側ピンF3が段差底面12aに達しない位置に設定してもよい。
第一本接合工程の本区間では、図11に示すように、段差側面12bに先端側ピンF3の外周面がわずかに接触するように設定移動ルートL1を設定している。また、第一本接合工程の本区間では、回転ツールFの基端側ピンF2の外周面が封止体3の表面3aに接触するように挿入深さを設定する。ここで、段差側面12bに対する先端側ピンF3の外周面の接触代をオフセット量Nとする。本実施形態のように、先端側ピンF3の平坦面F4を周壁段差部12の段差底面12aよりも深く挿入し、かつ、先端側ピンF3の外周面を段差側面12bに接触させる場合は、オフセット量Nを、0<N≦1.0mmの間で設定し、好ましくは0<N≦0.85mmの間で設定し、より好ましくは0<N≦0.65mmの間で設定する。
先端側ピンF3の外周面と段差側面12bとが接触しないように設定すると、第一突合せ部J1の接合強度が低くなる。また、先端側ピンF3の外周面と段差側面12bとのオフセット量Nが1.0mmを超えるとジャケット本体2の第一アルミニウム合金が、封止体3側に大量に混入して接合不良となるおそれがある。
図12Aに示すように、先端側ピンF3が中間点S2に到達したら、そのまま離脱区間に移行する。離脱区間では、図12Bに示すように、中間点S2から終了位置EP1に向かうまでの間に先端側ピンF3を徐々に上方に移動させて、終了位置EP1で封止体3から先端側ピンF3を離脱させる。つまり、回転ツールFを一ヶ所に留まらせることなく、回転ツールFを終了位置EP1に移動させながら徐々に引き抜いていく(上昇させていく)。終了位置EP1は、終了位置EP1と中間点S2とが結ぶ線分と第一領域R1(図8参照)における設定移動ルートL1とでなす角度が鈍角となる位置に設定する。回転ツールFの移動軌跡には塑性化領域W1が形成される。
第一本接合工程が終了したら、クランプK1を一旦解除し、図13に示すように、第一領域R1(図8参照)に係るジャケット本体2及び封止体3を3つのクランプK1で移動不能にクランプする。
第二本接合工程は、第二領域R2(図8参照)の第一突合せ部J1に対して摩擦攪拌接合を行う工程である。図13に示すように、第二本接合工程では、開始位置SP2から中間点S2までの押入区間と、設定移動ルートL1上の中間点S2から中間点S1までの本区間と、中間点S1から終了位置EP2までの離脱区間の三つの区間を連続して摩擦攪拌する。開始位置SP2は、封止体3の表面3aにおいて、設定移動ルートL1よりも内側の位置に設定されている。本実施形態では、開始位置SP2と中間点S2とを結ぶ線分と、第二領域R2(図8参照)における設定移動ルートL1とのなす角度が鈍角となる位置に設定している。
第二本接合工程の押入区間では、図13に示すように、開始位置SP2から中間点S2までの摩擦攪拌を行う。押入区間では、右回転させた先端側ピンF3を開始位置SP2に挿入し、中間点S2まで移動させる。この際、少なくとも中間点S2に到達するまでに予め設定された「所定の深さ」に達するように先端側ピンF3を徐々に押し入れていく。
中間点S2に達したらそのまま本区間の摩擦攪拌接合に移行する。図13に示すように、本区間では、先端側ピンF3の回転中心軸Zと設定移動ルートL1とが重なるように回転ツールFを移動させる。第二本接合工程の本区間では、第一本接合工程の本区間と同じ要領で摩擦攪拌を行う。
先端側ピンF3が中間点S1に到達したら、そのまま離脱区間に移行する。離脱区間では、中間点S1から終了位置EP2に向かうまでの間に先端側ピンF3を封止体3から徐々に引き抜いて(上昇させて)、終了位置EP2で封止体3から先端側ピンF3を離脱させる。終了位置EP2は、終了位置EP2と中間点S1とが結ぶ線分と第二領域R2(図8参照)における設定移動ルートL1とでなす角度が鈍角となる位置に設定する。回転ツールFの移動軌跡には塑性化領域W2が形成される。
以上説明した本実施形態における液冷ジャケットの製造方法によれば、封止体3と先端側ピンF3との摩擦熱によって第一突合せ部J1の主として封止体3側の第二アルミニウム合金が攪拌されて塑性流動化され、第一突合せ部J1において段差側面12bと封止体3の外周側面3cとを接合することができる。また、先端側ピンF3の外周面をジャケット本体2の段差側面12bにわずかに接触させるに留めるため、ジャケット本体2から封止体3への第一アルミニウム合金の混入を極力少なくすることができる。これにより、第一突合せ部J1においては主として封止体3側の第二アルミニウム合金が摩擦攪拌されるため、接合強度の低下を抑制することができる。つまり、本接合工程では、先端側ピンF3の回転中心軸Zに対して一方側と他方側で、先端側ピンF3が受ける材料抵抗の不均衡を極力少なくすることができる。これにより、塑性流動材がバランス良く摩擦攪拌されるため、接合強度の低下を抑制することができる。また、封止体3の板厚を大きくすることにより、接合部の金属不足を防止することができる。
また、本実施形態では、本接合工程において、基端側ピンF2の外周面と封止体3とを接触させ、塑性流動材を押さえながら摩擦攪拌を行うため、バリの発生を抑制することができる。また、基端側ピンF2の外周面で塑性流動材を押えることができるため、接合表面(封止体3の表面3a)に形成される段差凹溝を小さくすることができるとともに、段差凹溝の脇に形成される膨出部を無くすか若しくは小さくすることができる。また、基端側ピンF2の階段状のピン段差部F21は浅く、かつ、出口が広いため、塑性流動材を段差底面F21aで押えつつ塑性流動材がピン段差部F21の外部に抜けやすくなっている。そのため、基端側ピンF2で塑性流動材を押えても基端側ピンF2の外周面に塑性流動材が付着し難い。よって、接合表面粗さを小さくすることができるとともに、接合品質を好適に安定させることができる。
また、第一本接合工程及び第二本接合工程の押入区間では、開始位置SP1,SP2から設定移動ルートL1と重複する位置まで回転ツールFを移動させつつ所定の深さとなるまで先端側ピンF3を徐々に押入することにより、設定移動ルートL1上で回転ツールFが停止して摩擦熱が過大になるのを防ぐことができる。
同様に、第一本接合工程及び第二本接合工程の離脱区間では、設定移動ルートL1から終了位置EP1,EP2まで回転ツールFを移動させつつ所定の深さから先端側ピンF3を徐々に上昇させて離脱させることにより、設定移動ルートL1上で回転ツールFが停止して摩擦熱が過大になるのを防ぐことができる。
これらにより、設定移動ルートL1上で摩擦熱が過大となり、ジャケット本体2から封止体3へ第一アルミニウム合金が過剰に混入して接合不良となるのを防ぐことができる。
同様に、第一本接合工程及び第二本接合工程の離脱区間では、設定移動ルートL1から終了位置EP1,EP2まで回転ツールFを移動させつつ所定の深さから先端側ピンF3を徐々に上昇させて離脱させることにより、設定移動ルートL1上で回転ツールFが停止して摩擦熱が過大になるのを防ぐことができる。
これらにより、設定移動ルートL1上で摩擦熱が過大となり、ジャケット本体2から封止体3へ第一アルミニウム合金が過剰に混入して接合不良となるのを防ぐことができる。
また、先端側ピンF3を段差側面12b及び段差底面12aの両方にわずかに接触させた状態で摩擦攪拌接合を行うことにより、第一突合せ部J1及び第二突合せ部J2を確実に接合することができる。また、段差側面12bと先端側ピンF3とをわずかに接触させるとともに、段差底面12aと先端側ピンF3とをわずかに接触させるに留めるため、ジャケット本体2から封止体3への第一アルミニウム合金の混入を極力防ぐことができる。
また、本接合工程において、開始位置SP1,SP2の位置は適宜設定すればよいが、開始位置SP1,SP2と設定移動ルートL1とのなす角度が鈍角となるように設定することにより、中間点S1,S2で回転ツールFの移動速度が低下することなくスムーズに本区間に移行する。これにより、設定移動ルートL1上で回転ツールFが停止又は移動速度が低下することにより、摩擦熱が過大となることを防ぐことができる。また、終了位置EP1,EP2においても、開始位置SP1,PS2と同じ要領で設定することで、本区間から離脱区間にスムーズに回転ツールFを移動させることができる。
また、本実施形態の本接合工程では、回転ツールFの回転方向及び進行方向は適宜設定すればよいが、回転ツールFの移動軌跡に形成される塑性化領域W1のうち、ジャケット本体2側がシアー側となり、封止体3側がフロー側となるように回転ツールFの回転方向及び進行方向を設定した。ジャケット本体2側がシアー側となるように設定することで、第一突合せ部J1の周囲における先端側ピンF3による攪拌作用が高まり、第一突合せ部J1における温度上昇が期待でき、第一突合せ部J1において段差側面12bと封止体3の外周側面3cとをより確実に接合することができる。
なお、シアー側(Advancing side)とは、被接合部に対する回転ツールの外周の相対速度が、回転ツールの外周における接線速度の大きさに移動速度の大きさを加算した値となる側を意味する。一方、フロー側(Retreating side)とは、回転ツールの移動方向の反対方向に回転ツールが回動することで、被接合部に対する回転ツールの相対速度が低速になる側を言う。
また、ジャケット本体2の第一アルミニウム合金は、封止体3の第二アルミニウム合金よりも硬度の高い材料になっている。これにより、液冷ジャケット1の耐久性を高めることができる。また、ジャケット本体2の第一アルミニウム合金をアルミニウム合金鋳造材とし、封止体3の第二アルミニウム合金をアルミニウム合金展伸材とすることが好ましい。第一アルミニウム合金を例えば、JISH5302 ADC12等のAl−Si−Cu系アルミニウム合金鋳造材とすることにより、ジャケット本体2の鋳造性、強度、被削性等を高めることができる。また、第二アルミニウム合金を例えば、JIS A1000系又はA6000系とすることにより、加工性、熱伝導性を高めることができる。
また、本実施形態のように、本接合工程の設定移動ルートL1が閉ルートとなっている場合、本接合工程を行う際に回転ツールFとクランプK1とが干渉してしまい、作業が煩雑になるという問題がある。しかし、本実施形態によれば、第一本接合工程、第二本接合工程でクランプする位置と摩擦攪拌接合する位置を分けて行うことで、効率良く摩擦攪拌作業を行うことができる。
また、本接合工程においては、第一本接合工程及び第二本接合工程で第一突合せ部J1の全周を摩擦攪拌接合できるため、液冷ジャケットの気密性及び水密性を高めることができる。また、例えば、第二本接合工程の終端部分において、回転ツールFが中間点S1を完全に通過してから終了位置EP2に向かうように離脱工程を行ってもよい。つまり、第一本接合工程によって形成された塑性化領域W1及び第二本接合工程によって形成された塑性化領域W2の各端部同士をオーバーラップさせることにより、より気密性及び水密性を高めることができる。
また、先端側ピンF3の傾斜角度αと段差側面12bの傾斜角度βとを同一(平行)に設定することにより、段差側面12bの高さ方向の全体に亘って均一に先端側ピンF3を接触させることができる。これにより、バランス良く摩擦攪拌接合を行うことができる。
なお、本接合工程では、回転ツールFの回転速度を一定としてもよいが、可変させてもよい。第一本接合工程の押入区間において、開始位置SP1における回転ツールFの回転速度をV1、中間点S1〜S2間における回転ツールFの回転速度をV2とすると、V1>V2としてもよい。回転速度のV2は、設定移動ルートL1における予め設定された一定の回転速度である。つまり、開始位置SP1では、回転速度を高く設定しておき、押入区間内で徐々に回転速度を低減させながら本区間に移行してもよい。
また、第一本接合工程の離脱区間において、中間点S1〜S2間における回転ツールFの回転速度をV2、終了位置EP1において離脱させるときの回転ツールFの回転速度をV3とすると、V3>V2としてもよい。つまり、離脱区間に移行したら、終了位置EP1に向けて徐々に回転数を上げながら封止体3から回転ツールFを離脱させてもよい。回転ツールFを封止体3に押し入れる際又は封止体3から離脱させる際に、前記のように設定することで、押入区間又は離脱区間における少ない押圧力を、回転速度で補うことができるため、摩擦攪拌を好適に行うことができる。押入区間又は離脱区間に当該回転ツールFの回転速度を可変させてもよいことは、第二本接合工程でも他実施形態でも同様である。
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。第二実施形態では、図14に示すように、本接合工程における開始位置SP1及び終了位置EP1の位置が第一実施形態と相違する。開始位置SP2及び終了位置EP2についても同様である。第二実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
次に、本発明の第二実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。第二実施形態では、図14に示すように、本接合工程における開始位置SP1及び終了位置EP1の位置が第一実施形態と相違する。開始位置SP2及び終了位置EP2についても同様である。第二実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
第二実施形態に係る液冷ジャケットの製造では、準備工程と、載置工程と、本接合工程と、を行う。準備工程及び載置工程は、第一実施形態と同一である。
本接合工程では、第一突合せ部J1のうち第一領域R1(図8参照)に対して摩擦攪拌接合を行う第一本接合工程と、第二領域R2(図8参照)に対して第二本接合工程とを行う。図14に示すように、本実施形態の第一本接合工程では、開始位置SP1を設定移動ルートL1上のうち中間点S1よりも第二領域R2(図8参照)側に設定する。また、本実施形態の第二本接合工程では、終了位置EP1を設定移動ルートL1上のうち中間点S2よりも第二領域R2(図8参照)側に設定する。
第一本接合工程では、開始位置SP1から中間点S1までの押入区間と、設定移動ルートL1上の中間点S1から中間点S2までの本区間と、中間点S2から終了位置EP1までの離脱区間の三つの区間を連続して摩擦攪拌する。中間点S1,S2は、中間線X10と設定移動ルートL1とが交差する位置に設定されている。
第一本接合工程の押入区間では、図14に示すように、開始位置SP1から中間点S1までの摩擦攪拌を行う。押入区間では、右回転させた先端側ピンF3を開始位置SP1に挿入し、中間点S1まで移動させる。この際、少なくとも中間点S1に到達するまでに予め設定された「所定の深さ」に達するように先端側ピンF3を徐々に押し入れていく。
中間点S1に達したらそのまま本区間の摩擦攪拌接合に移行する。図14及び図15に示すように、本区間では、先端側ピンF3の回転中心軸Zと設定移動ルートL1とが重なるように回転ツールFを移動させる。先端側ピンF3と段差側面12bとのオフセット量、先端側ピンF3の挿入深さは第一実施形態と同一である。
先端側ピンF3が中間点S2に到達したら、そのまま離脱区間に移行する。離脱区間では、中間点S2から終了位置EP1に向かうまでの間に先端側ピンF3を封止体3から徐々に引き抜いて(上昇させて)、設定移動ルートL1上に設定された終了位置EP1で封止体3から先端側ピンF3を離脱させる。
第一本接合工程が終了したら、クランプK1を一旦解除し、図15に示すように、第一領域R1(図8参照)に係るジャケット本体2及び封止体3を3つのクランプK1で移動不能にクランプする。
第二本接合工程は、第二領域R2(図8参照)の第一突合せ部J1に対して摩擦攪拌接合を行う工程である。図15に示すように、第二本接合工程では、開始位置SP2から中間点S2までの押入区間と、設定移動ルートL1上の中間点S2から中間点S1までの本区間と、中間点S1から終了位置EP2までの離脱区間の三つの区間に連続して摩擦攪拌する。
図15に示すように、本実施形態の第二本接合工程では、開始位置SP2を設定移動ルートL1上のうち中間点S2よりも第一領域R1(図8参照)側に設定する。また、本実施形態の第二本接合工程では、終了位置EP2を設定移動ルートL1上のうち中間点S1よりも第一領域R1側に設定する。つまり、開始位置SP2及び終了位置EP2は、いずれも塑性化領域W1上に設定される。
第二本接合工程の押入区間では、図15に示すように、開始位置SP2から中間点S2までの摩擦攪拌を行う。押入区間では、右回転させた先端側ピンF3を開始位置SP2に挿入し、中間点S2まで移動させる。この際、少なくとも中間点S2に到達するまでに予め設定された「所定の深さ」に達するように先端側ピンF3を徐々に押し入れていく。
中間点S2に達したらそのまま本区間の摩擦攪拌接合に移行する。図15に示すように、本区間では、先端側ピンF3の回転中心軸Zと設定移動ルートL1とが重なるように回転ツールFを移動させる。第二本接合工程の本区間では、第一本接合工程の本区間と同じ要領で摩擦攪拌を行う。
先端側ピンF3が中間点S1に到達したら、そのまま離脱区間に移行する。離脱区間では、中間点S1から終了位置EP2に向かうまでの間に先端側ピンF3を封止体3から徐々に引き抜いて(上昇させて)、終了位置EP2で封止体3から先端側ピンF3を離脱させる。
以上説明した第二実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法によっても第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。第二実施形態のように本接合工程における開始位置SP1,SP2及び終了位置EP1,EP2は、設定移動ルートL1上に設定してもよい。
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。第三実施形態では、図16及び図17に示すように、二回に分けずに一回で本接合工程を行う点で前記した実施形態と相違する。本実施形態では、第一実施形態と異なる点を中心に説明する。
次に、本発明の第三実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。第三実施形態では、図16及び図17に示すように、二回に分けずに一回で本接合工程を行う点で前記した実施形態と相違する。本実施形態では、第一実施形態と異なる点を中心に説明する。
本実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法では、準備工程と、載置工程と、本接合工程と、を行う。準備工程及び載置工程は第一実施形態と同一である。本接合工程では、右回転させた回転ツールFを開始位置SP3に挿入し、第一突合せ部J1に対して摩擦攪拌接合を行う。
図16及び図17に示すように、本接合工程では、開始位置SP1から中間点S1までの押入区間と、設定移動ルートL1上の中間点S1から封止体3の廻りを一周して基準点S3までの本区間と、基準点S3から終了位置EP3までの離脱区間の三つの区間を連続して摩擦攪拌する。中間点S1は、中間線X10と設定移動ルートL1とが交差する位置に設定されている。基準点S3は第一領域R1(図8参照)における設定移動ルートL1上に設定されている。
開始位置SP3は、封止体3の表面3aにおいて、設定移動ルートL1よりも内側の位置に設定されている。本実施形態では、開始位置SP3と中間点S1とを結ぶ線分と、第一領域R1(図8参照)における設定移動ルートL1とのなす角度が鈍角となる位置に設定している。
第一本接合工程の押入区間では、図16に示すように、開始位置SP3から中間点S1までの摩擦攪拌を行う。押入区間では、右回転させた先端側ピンF3を開始位置SP3に挿入し、中間点S1まで移動させる。この際、少なくとも中間点S1に到達するまでに予め設定された「所定の深さ」に達するように先端側ピンF3を徐々に押し入れていく。
中間点S1に達したらそのまま本区間の摩擦攪拌接合に移行する。図16及び図17に示すように、本区間では、先端側ピンF3の回転中心軸Zと設定移動ルートL1とが重なるように回転ツールFを移動させる。先端側ピンF3と段差側面12bとのオフセット量、基端側ピンF2及び先端側ピンF3の挿入深さは第一実施形態と同一である。
回転ツールFを封止体3の廻りに一周させて、先端側ピンF3が中間点S1を通過して基準点S3に到達したら、そのまま離脱区間に移行する。離脱区間では、基準点S3から終了位置EP3に向かうまでの間に先端側ピンF3を徐々に上方に移動させて、終了位置EP3で封止体3から先端側ピンF3を離脱させる。
以上説明した第三実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法においても、第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。また、第三実施形態によれば、一度の工程で摩擦攪拌接合を行うことができるため作業効率を高めることができる。
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。第四実施形態では、図18及び図19に示すように、二回に分けずに一回で本接合工程を行う点で前記した第二実施形態と相違する。本実施形態では、第二実施形態と異なる点を中心に説明する。
次に、本発明の第四実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。第四実施形態では、図18及び図19に示すように、二回に分けずに一回で本接合工程を行う点で前記した第二実施形態と相違する。本実施形態では、第二実施形態と異なる点を中心に説明する。
本実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法では、準備工程と、載置工程と、本接合工程と、を行う。準備工程及び載置工程は前記した実施形態と同一である。本接合工程では、右回転させた回転ツールFを開始位置SP4に挿入し、第一突合せ部J1に対して摩擦攪拌接合を行う。
図18に示すように、本実施形態の第一本接合工程では、開始位置SP4を設定移動ルートL1上のうち中間点S1よりも第二領域R2(図8参照)側に設定する。また、終了位置EP4を設定移動ルートL1上のうち中間点S1よりも第一領域R1(図8参照)側に設定する。
図18に示すように、本接合工程では、開始位置SP4から中間点S1までの押入区間と、設定移動ルートL1上の中間点S1から封止体3の廻りを一周して基準点S3までの本区間と、基準点S3から終了位置EP4までの離脱区間の三つの区間を連続して摩擦攪拌する。基準点S3は、設定移動ルートL1上のうち中間点S1よりも第二領域R2(図8参照)側に設定する。
本接合工程の押入区間では、図18に示すように、開始位置SP4から中間点S1までの摩擦攪拌を行う。押入区間では、右回転させた先端側ピンF3を開始位置SP4に挿入し、中間点S1まで移動させる。この際、少なくとも中間点S1に到達するまでに予め設定された「所定の深さ」に達するように先端側ピンF3を徐々に押し入れていく。
中間点S1に達したらそのまま本区間の摩擦攪拌接合に移行する。図18及び図19に示すように、本区間では、先端側ピンF3の回転中心軸Zと設定移動ルートL1とが重なるように回転ツールFを移動させる。先端側ピンF3と段差側面12bとのオフセット量、基端側ピンF2及び先端側ピンF3の挿入深さは第二実施形態と同一である。
回転ツールFを封止体3の廻りに一周させて、先端側ピンF3が中間点S1を通過して基準点S3に到達したら、そのまま離脱区間に移行する。離脱区間では、基準点S3から終了位置EP4に向かうまでの間に先端側ピンF3を封止体3から離脱する方向に徐々に引き抜いて(上昇させて)、終了位置EP4で封止体3から先端側ピンF3を離脱させる。
以上説明した第四実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法においても、第二実施形態と略同等の効果を得ることができる。また、第四実施形態によれば、一度の工程で摩擦攪拌接合を行うことができるため作業効率を高めることができる。
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。図20に示すように、本発明の第一変形例に係る載置工程では、段差側面12bと外周側面3cとを面接触させて突き合わせている点で上記した実施形態と相違する。当該変形例では、封止体3の外周側面3cを外側に傾斜するように形成し、載置工程において外周側面3cと段差側面12bとを突き合わせる。このようにしても、上記した実施形態と同等の効果を得ることができる。なお、当該変形例のように、段差側面12bの高さ寸法と封止体3の板厚とが同一になるようにして、周壁端面11aと、封止体3の表面3aとを面一としてもよい。
図21に示すように、本発明の第二変形例に係る載置工程では、封止体3の表面3a側が凸となるようにして湾曲させた状態でジャケット本体2に載置する点で前記した実施形態と相違する。摩擦攪拌接合によって、摩擦熱が発生すると熱収縮によって封止体3が凹状に反ってしまうおそれがある。しかし、当該変形例によれば、予め封止体3を表面3a側に凸としておくことで、熱収縮を利用して液冷ジャケットを平坦にすることができる。
なお、本発明の第二変形例に係るジャケット本体2は、周壁部11の一部に枠状のシール部5が形成されている。ジャケット本体2は、ダイキャストで一体形成してもよいし、このように枠状部と板状部をシール部5で接合して一体化してもよい。
なお、本発明の第二変形例に係るジャケット本体2は、周壁部11の一部に枠状のシール部5が形成されている。ジャケット本体2は、ダイキャストで一体形成してもよいし、このように枠状部と板状部をシール部5で接合して一体化してもよい。
また、本実施形態では、二回に分けてクランプしつつ摩擦攪拌を行ったが、一回で行ってもよいし、三回以上に分けてクランプしつつ摩擦攪拌を行ってもよい。また、本接合工程を行う前に、ジャケット本体2と封止体3とを仮接合する仮接合工程を行ってもよい。これにより、本接合工程時におけるジャケット本体2と封止体3との目開きを防ぐことができる。仮接合工程では、仮接合用回転ツールを用いて摩擦攪拌で行ってもよいし、溶接で行ってもよい。また、押入区間及び離脱区間においては、回転ツールFの移動軌跡が平面視して曲線(例えば、円弧)を描くように移動ルートを設定してもよい。これにより、押入区間から本区間、又は、本区間から離脱区間への移行をスムーズに行うことができる。
1 液冷ジャケット
2 ジャケット本体
3 封止体
F 回転ツール
F2 基端側ピン
F3 先端側ピン
J1 第一突合せ部
J2 第二突合せ部
W 塑性化領域
2 ジャケット本体
3 封止体
F 回転ツール
F2 基端側ピン
F3 先端側ピン
J1 第一突合せ部
J2 第二突合せ部
W 塑性化領域
Claims (11)
- 底部及び前記底部の周縁から立ち上がる周壁部を有するジャケット本体と、前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体とで構成され、前記ジャケット本体と前記封止体とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法であって、
前記ジャケット本体は第一アルミニウム合金で形成されており、前記封止体は第二アルミニウム合金で形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、
摩擦攪拌で用いる回転ツールは、基端側ピンと、先端側ピンとを備え、
前記基端側ピンのテーパー角度は、前記先端側ピンのテーパー角度よりも大きくなっており、前記基端側ピンの外周面には階段状の段差部が形成されており、
前記周壁部の内周縁に、段差底面と、当該段差底面から前記開口部に向かって立ち上がる段差側面と、を有する周壁段差部を形成するとともに、前記封止体の板厚を、前記周壁段差部の前記段差側面の高さ寸法よりも大きくなるように形成する準備工程と、
前記ジャケット本体に前記封止体を載置することにより前記周壁段差部の前記段差側面と前記封止体の外周側面とを突き合わせて第一突合せ部を形成するとともに、前記周壁段差部の段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第二突合せ部を形成する載置工程と、
回転する前記回転ツールの前記先端側ピンを前記封止体に挿入し、前記先端側ピンの外周面を前記周壁段差部の前記段差側面にわずかに接触させつつ、前記基端側ピンの外周面を前記封止体の表面に接触させた状態で、前記封止体の外周側面よりも内側に設定された設定移動ルートに沿って所定の深さで前記封止体の廻りに一周させて前記第一突合せ部を摩擦攪拌する本接合工程と、を含み、
前記本接合工程において、前記設定移動ルートよりもさらに内側に終了位置を設定し、前記第一突合せ部に対する摩擦攪拌接合の後、前記回転ツールを前記終了位置に移動させつつ前記先端側ピンを前記封止体から徐々に引き抜いて前記終了位置で前記封止体から前記回転ツールを離脱させることを特徴とする液冷ジャケットの製造方法。 - 底部及び前記底部の周縁から立ち上がる周壁部を有するジャケット本体と、前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体とで構成され、前記ジャケット本体と前記封止体とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法であって、
前記ジャケット本体は第一アルミニウム合金で形成されており、前記封止体は第二アルミニウム合金で形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、
摩擦攪拌で用いる回転ツールは、基端側ピンと、先端側ピンとを備え、
前記基端側ピンのテーパー角度は、前記先端側ピンのテーパー角度よりも大きくなっており、前記基端側ピンの外周面には階段状の段差部が形成されており、
前記周壁部の内周縁に、段差底面と、当該段差底面から前記開口部に向かって立ち上がる段差側面と、を有する周壁段差部を形成するとともに、前記封止体の板厚を、前記周壁段差部の前記段差側面の高さ寸法よりも大きくなるように形成する準備工程と、
前記ジャケット本体に前記封止体を載置することにより前記周壁段差部の前記段差側面と前記封止体の外周側面とを突き合わせて第一突合せ部を形成するとともに、前記周壁段差部の段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第二突合せ部を形成する載置工程と、
回転する前記回転ツールの前記先端側ピンを前記封止体に挿入し、前記先端側ピンの外周面を前記周壁段差部の前記段差側面にわずかに接触させつつ、前記基端側ピンの外周面を前記封止体の表面に接触させた状態で、前記封止体の外周側面よりも内側に設定された設定移動ルートに沿って所定の深さで前記封止体の廻りに一周させて前記第一突合せ部を摩擦攪拌する本接合工程と、を含み、
前記本接合工程では、前記第一突合せ部に第一領域及び第二領域を設定し、
前記第二領域に係る前記ジャケット本体及び封止体をクランプした後に、前記第一領域を摩擦攪拌する第一本接合工程と、
前記第一領域に係る前記ジャケット本体及び封止体をクランプした後に、前記第二領域を摩擦攪拌する第二本接合工程と、を行い、
前記第一本接合工程及び前記第二本接合工程において、前記設定移動ルートよりもさらに内側に終了位置を設定し、前記第一突合せ部に対する摩擦攪拌接合の後、前記回転ツールを前記終了位置に移動させつつ前記先端側ピンを前記封止体から徐々に引き抜いて前記終了位置で前記封止体から前記回転ツールを離脱させることを特徴とする液冷ジャケットの製造方法。 - 前記本接合工程の前記所定の深さは、前記先端側ピンが前記周壁段差部の前記段差底面にわずかに接触する位置に設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液冷ジャケットの製造方法。
- 前記本接合工程では、所定の回転速度で前記回転ツールを回転させて摩擦攪拌を行い、
前記本接合工程において前記先端側ピンを離脱させるとき、前記所定の回転速度よりも徐々に回転速度を上げながら前記終了位置まで移動させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の液冷ジャケットの製造方法。 - 底部及び前記底部の周縁から立ち上がる周壁部を有するジャケット本体と、前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体とで構成され、前記ジャケット本体と前記封止体とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法であって、
前記ジャケット本体は第一アルミニウム合金で形成されており、前記封止体は第二アルミニウム合金で形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、
摩擦攪拌で用いる回転ツールは、基端側ピンと、先端側ピンとを備え、
前記基端側ピンのテーパー角度は、前記先端側ピンのテーパー角度よりも大きくなっており、前記基端側ピンの外周面には階段状の段差部が形成されており、
前記周壁部の内周縁に、段差底面と、当該段差底面から前記開口部に向かって立ち上がる段差側面と、を有する周壁段差部を形成するとともに、前記封止体の板厚を、前記周壁段差部の前記段差側面の高さ寸法よりも大きくなるように形成する準備工程と、
前記ジャケット本体に前記封止体を載置することにより前記周壁段差部の前記段差側面と前記封止体の外周側面とを突き合わせて第一突合せ部を形成するとともに、前記周壁段差部の段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第二突合せ部を形成する載置工程と、
回転する前記回転ツールの前記先端側ピンを前記封止体に挿入し、前記先端側ピンの外周面を前記周壁段差部の前記段差側面にわずかに接触させつつ、前記基端側ピンの外周面を前記封止体の表面に接触させた状態で、前記封止体の外周側面よりも内側に設定された設定移動ルートに沿って所定の深さで前記封止体の廻りに一周させて前記第一突合せ部を摩擦攪拌する本接合工程と、を含み、
前記本接合工程において、前記設定移動ルート上に終了位置を設定し、前記第一突合せ部に対する摩擦攪拌接合の後、前記回転ツールを前記終了位置に移動させつつ前記先端側ピンを前記封止体から徐々に引き抜いて前記終了位置で前記封止体から前記回転ツールを離脱させることを特徴とする液冷ジャケットの製造方法。 - 底部及び前記底部の周縁から立ち上がる周壁部を有するジャケット本体と、前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体とで構成され、前記ジャケット本体と前記封止体とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法であって、
前記ジャケット本体は第一アルミニウム合金で形成されており、前記封止体は第二アルミニウム合金で形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、
摩擦攪拌で用いる回転ツールは、基端側ピンと、先端側ピンとを備え、
前記基端側ピンのテーパー角度は、前記先端側ピンのテーパー角度よりも大きくなっており、前記基端側ピンの外周面には階段状の段差部が形成されており、
前記周壁部の内周縁に、段差底面と、当該段差底面から前記開口部に向かって立ち上がる段差側面と、を有する周壁段差部を形成するとともに、前記封止体の板厚を、前記周壁段差部の前記段差側面の高さ寸法よりも大きくなるように形成する準備工程と、
前記ジャケット本体に前記封止体を載置することにより前記周壁段差部の前記段差側面と前記封止体の外周側面とを突き合わせて第一突合せ部を形成するとともに、前記周壁段差部の段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第二突合せ部を形成する載置工程と、
回転する前記回転ツールの前記先端側ピンを前記封止体に挿入し、前記先端側ピンの外周面を前記周壁段差部の前記段差側面にわずかに接触させつつ、前記基端側ピンの外周面を前記封止体の表面に接触させた状態で、前記封止体の外周側面よりも内側に設定された設定移動ルートに沿って所定の深さで前記封止体の廻りに一周させて前記第一突合せ部を摩擦攪拌する本接合工程と、を含み、
前記本接合工程では、前記第一突合せ部に第一領域及び第二領域を設定し、
前記第二領域に係る前記ジャケット本体及び封止体をクランプした後に、前記第一領域を摩擦攪拌する第一本接合工程と、
前記第一領域に係る前記ジャケット本体及び封止体をクランプした後に、前記第二領域を摩擦攪拌する第二本接合工程と、を行い、
前記第一本接合工程及び前記第二本接合工程において、前記設定移動ルート上に終了位置を設定し、前記第一突合せ部に対する摩擦攪拌接合の後、前記回転ツールを前記終了位置に移動させつつ前記先端側ピンを前記封止体から徐々に引き抜いて前記終了位置で前記封止体から前記回転ツールを離脱させることを特徴とする液冷ジャケットの製造方法。 - 前記本接合工程の前記所定の深さは、前記先端側ピンが前記周壁段差部の前記段差底面にわずかに接触する位置に設定することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の液冷ジャケットの製造方法。
- 前記本接合工程では、所定の回転速度で前記先端側ピンを回転させて摩擦攪拌を行い、
前記本接合工程において前記先端側ピンを離脱させるとき、前記所定の回転速度よりも徐々に回転速度を上げながら前記終了位置まで移動させることを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか一項に記載の液冷ジャケットの製造方法。 - 前記準備工程では、前記周壁部の内周縁に、段差底面と、当該段差底面から前記開口部に向かって外側に広がるように斜めに立ち上がる段差側面と、を有する周壁段差部を形成することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の液冷ジャケットの製造方法。
- 前記準備工程では、前記ジャケット本体をダイキャストで形成するとともに少なくとも前記封止体が表面側に凸となるように形成することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の液冷ジャケットの製造方法。
- 前記本接合工程に先だって前記第一突合せ部を仮接合する仮接合工程をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の液冷ジャケットの製造方法。
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WO2023079891A1 (ja) | 2021-11-05 | 2023-05-11 | 日本軽金属株式会社 | 接合体の製造方法 |
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- 2019-04-15 JP JP2019077046A patent/JP2020175396A/ja active Pending
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JP7452496B2 (ja) | 2021-06-07 | 2024-03-19 | 日本軽金属株式会社 | 接合体の製造方法および接合装置 |
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