JP7226254B2 - 液冷ジャケットの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、液冷ジャケットの製造方法に関する。
摩擦攪拌接合を利用した液冷ジャケットの製造方法が行われている。例えば、特許文献1には、液冷ジャケットの製造方法が開示されている。図14は、従来の液冷ジャケットの製造方法を示す断面図である。従来の液冷ジャケットの製造方法では、アルミニウム合金製のジャケット本体101の段差部に設けられた段差側面101cと、アルミニウム合金製の封止体102の側面102cとを突き合わせて形成された突合せ部J10に対して摩擦攪拌接合を行うというものである。また、従来の液冷ジャケットの製造方法では、回転ツールF40の攪拌ピンF42のみを突合せ部J10に挿入して摩擦攪拌接合を行っている。また、従来の液冷ジャケットの製造方法では、回転ツールF40の回転中心軸Zを突合せ部J10に重ねて相対移動させるというものである。
特開2015-131321号公報
ここで、ジャケット本体101は複雑な形状となりやすく、例えば、4000系アルミニウム合金の鋳造材で形成し、封止体102のように比較的単純な形状のものは、1000系アルミニウム合金の展伸材で形成するというような場合がある。このように、アルミニウム合金の材種の異なる部材同士を接合して、液冷ジャケットを製造する場合がある。このような場合は、ジャケット本体101の方が封止体102よりも硬度が高くなることが一般的であるため、図14のように摩擦攪拌接合を行うと、先端側ピンF3が封止体102側から受ける材料抵抗に比べて、ジャケット本体101側から受ける材料抵抗が大きくなる。そのため、回転ツールF40の攪拌ピンF42によって異なる材種をバランスよく攪拌することが困難となり、接合後の塑性化領域に空洞欠陥が発生し接合強度が低下するという問題がある。
また、図14に示すように、攪拌ピンF42を突合せ部J10に挿入する際、所定の深さとなるまで鉛直方向に攪拌ピンF42を押入するため、摩擦攪拌の開始位置における摩擦熱が過大となる。これにより、当該開始位置において、ジャケット本体101側の金属が封止体102側に混入しやすくなり、接合不良の一因となるという問題がある。
このような観点から、本発明は、材種の異なるアルミニウム合金を好適に接合することができる液冷ジャケットの製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明は、底部及び前記底部の周縁から立ち上がる周壁部を有するジャケット本体と、前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体とで構成され、前記ジャケット本体と前記封止体とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法であって、前記ジャケット本体は第一アルミニウム合金で形成されており、前記封止体は第二アルミニウム合金で形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、摩擦攪拌で用いる回転ツールは、基端側ピンと、先端側ピンとを備え、前記基端側ピンのテーパー角度は、前記先端側ピンのテーパー角度よりも大きくなっており、前記基端側ピンの外周面には階段状のピン段差部が形成されており、前記周壁部の端面の外周縁に、前記周壁部の側面に向かうにつれて前記底部側に傾斜する第一傾斜面と、前記第一傾斜面の外側の端部から前記周壁部の側面に向かうにつれてさらに前記底部側に傾斜する第二傾斜面と、を形成するとともに、前記封止体を前記周壁部に載置した際に、前記第一傾斜面の外側の端部よりも前記封止体の側面が周方向に亘って外側に位置するように前記封止体を形成する準備工程と、前記ジャケット本体に前記封止体を載置することにより前記周壁部の端面と前記封止体の裏面とを突き合わせて第一突合せ部を形成する載置工程と、回転する前記回転ツールの前記先端側ピンを前記封止体の側面から挿入し、前記先端側ピンの外周面を前記周壁部の端面の前記第一傾斜面にわずかに接触させつつ、前記基端側ピンの外周面を前記封止体の側面に接触させた状態で、前記第一突合せ部よりも封止体の表面側に設定された設定移動ルートに沿って所定の深さで前記封止体の廻りに一周させて前記第一突合せ部を摩擦攪拌する本接合工程と、を含み、前記本接合工程において、回転する前記先端側ピンを前記設定移動ルートよりもさらに封止体の表面側に設定した開始位置に挿入した後、前記回転ツールの回転中心軸を前記設定移動ルートと重複する位置まで移動させつつ前記所定の深さとなるまで前記先端側ピンを徐々に押入することを特徴とする。
また、本発明は、底部及び前記底部の周縁から立ち上がる周壁部を有するジャケット本体と、前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体とで構成され、前記ジャケット本体と前記封止体とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法であって、前記ジャケット本体は第一アルミニウム合金で形成されており、前記封止体は第二アルミニウム合金で形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、摩擦攪拌で用いる回転ツールは、基端側ピンと、先端側ピンとを備え、前記基端側ピンのテーパー角度は、前記先端側ピンのテーパー角度よりも大きくなっており、前記基端側ピンの外周面には階段状のピン段差部が形成されており、前記周壁部の端面の外周縁に、前記周壁部の側面に向かうにつれて前記底部側に傾斜する第一傾斜面と、前記第一傾斜面の外側の端部から前記周壁部の側面に向かうにつれてさらに前記底部側に傾斜する第二傾斜面と、を形成するとともに、前記封止体を前記周壁部に載置した際に、前記第一傾斜面の外側の端部よりも前記封止体の側面が周方向に亘って外側に位置するように前記封止体を形成する準備工程と、前記ジャケット本体に前記封止体を載置することにより前記周壁部の端面と前記封止体の裏面とを突き合わせて第一突合せ部を形成する載置工程と、回転する前記回転ツールの前記先端側ピンを前記封止体の側面から挿入し、前記先端側ピンの外周面を前記周壁部の端面の前記第一傾斜面にわずかに接触させつつ、前記基端側ピンの外周面を前記封止体の側面に接触させた状態で、前記第一突合せ部よりも封止体の表面側に設定された設定移動ルートに沿って所定の深さで前記封止体の廻りに一周させて前記第一突合せ部を摩擦攪拌する本接合工程と、を含み、前記本接合工程において前記設定移動ルート上に設定した開始位置から前記先端側ピンを挿入し、進行方向に移動させつつ前記所定の深さとなるまで徐々に前記先端側ピンを押入することを特徴とする。
かかる製造方法によれば、封止体と先端側ピン及び基端側ピンとの摩擦熱によって第一突合せ部の主として封止体側の第二アルミニウム合金が攪拌されて塑性流動化され、第一突合せ部において周壁部の端面と封止体の裏面とを接合することができる。また、先端側ピンの外周面をジャケット本体の第一傾斜面にわずかに接触させるに留めるため、ジャケット本体から封止体への第一アルミニウム合金の混入を極力少なくすることができる。これにより、第一突合せ部においては主として封止体側の第二アルミニウム合金が摩擦攪拌されるため、接合強度の低下を抑制することができる。また、回転ツールを設定移動ルートと重複する位置まで移動させつつ所定の深さとなるまで先端側ピンを徐々に押入することにより、設定移動ルート上で摩擦熱が過大になるのを防ぐことができる。また、回転ツールを設定移動ルート上で移動させつつ所定の深さとなるまで先端側ピンを徐々に押入することにより、設定移動ルート上の一点で摩擦熱が過大になるのを防ぐことができる。また、基端側ピンの外周面を封止体の側面に接触させた状態で摩擦攪拌を行うことで、塑性流動材を押さえバリの発生を抑制するとともに、第二傾斜面を備えることで、ジャケット本体と基端側ピンとの接触を無くすか、小さくすることができる。これにより、ジャケット本体から封止体への第一アルミニウム合金の混入をより少なくすることができる。
また、前記本接合工程では、前記基端側ピンの外周面を前記周壁部の端面の前記第二傾斜面にわずかに接触させつつ、前記回転ツールの回転中心軸の鉛直面に対する傾斜角度をγとし、前記第一傾斜面の鉛直面に対する傾斜角度をβとし、前記第二傾斜面の鉛直面に対する傾斜角度をβ’とし、前記先端側ピンの外周面の前記回転中心軸に対する傾斜角度をαとし、前記基端側ピンの外周面の前記回転中心軸に対する傾斜角度をα’とすると、γ=α-β且つγ=α’-β’にした状態で接合を行うことが好ましい。
かかる製造方法によれば、回転ツールの回転中心軸の鉛直面に対する傾斜角度γを、回転ツールの回転中心軸に対する傾斜角度α,α’から鉛直面に対する傾斜角度β,β’を減算した値に一致させることにより、傾斜角度α,α’,β,β’として最適な値を選択することができると共に、先端側ピンの外周面と第一傾斜面とを平行にしつつ、基端側ピンの外周面と第二傾斜面とを平行にして、接触代を高さ方向に亘って均一にすることができる。
また、前記本接合工程の前記所定の深さは、前記先端側ピンが前記周壁部の端面の前記第一傾斜面の内側の端部にわずかに接触する位置に設定することが好ましい。
かかる製造方法によれば、ジャケット本体から封止体への第一アルミニウム合金の混入を少なくしつつ、第一突合せ部の深い位置まで摩擦攪拌することができる。
また、前記本接合工程では、所定の回転速度で前記回転ツールを回転させて摩擦攪拌を行い、前記本接合工程において前記先端側ピンを挿入するとき、前記所定の回転速度よりも高い速度で前記先端側ピンを回転させた状態で挿入し、徐々に回転速度を下げながら前記設定移動ルートまで移動させることが好ましい。
かかる製造方法によれば、好適に摩擦攪拌接合を行うことができる。
本発明に係る液冷ジャケットの製造方法によれば、材種の異なるアルミニウム合金を好適に接合することができる。
本発明の実施形態に係る回転ツールを示す側面図である。 回転ツールの拡大断面図である。 回転ツールの第一変形例を示す断面図である。 回転ツールの第二変形例を示す断面図である。 回転ツールの第三変形例を示す断面図である。 本発明の第一実施形態に係る液冷ジャケットを示す分解斜視図である。 第一実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法の載置工程を示す断面図である。 第一実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法の本接合工程を示す斜視図である。 第一実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法の本接合工程を示す断面図である。 第一実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法の本接合工程を示す斜視図である。 第一実施形態に係る本接合工程の変形例を示す断面図である。 本発明の第二実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法の本接合工程を示す斜視図である。 第二実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法の本接合工程を示す斜視図である。 従来の液冷ジャケットの製造方法を示す断面図である。
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。まずは、本実施形態に係る接合方法で用いる回転ツールについて説明する。回転ツールは、摩擦攪拌接合に用いられるツールである。図1に示すように、回転ツールFは、例えば工具鋼で形成されており、基軸部F1と、基端側ピンF2と、先端側ピンF3とで主に構成されている。基軸部F1は、円柱状を呈し、摩擦攪拌装置の主軸に接続される部位である。
基端側ピンF2は、基軸部F1に連続し、先端に向けて先細りになっている。基端側ピンF2は、円錐台形状を呈する。基端側ピンF2のテーパー角度Aは適宜設定すればよいが、例えば、135~160°になっている。テーパー角度Aが135°未満であるか、又は、160°を超えると摩擦攪拌後の接合表面粗さが大きくなる。テーパー角度Aは、後記する先端側ピンF3のテーパー角度Bよりも大きくなっている。図2に示すように、基端側ピンF2の外周面には、階段状のピン段差部F21が高さ方向の全体に亘って形成されている。ピン段差部F21は、右回り又は左回りで螺旋状に形成されている。つまり、ピン段差部F21は、平面視して螺旋状であり、側面視すると階段状になっている。回転ツールFを右回転させる場合は、ピン段差部F21は基端側から先端側に向けて左回りに設定することが好ましい。
なお、回転ツールFを左回転させる場合は、ピン段差部F21を基端側から先端側に向けて右回りに設定することが好ましい。これにより、ピン段差部F21によって塑性流動材が先端側に導かれるため、被接合金属部材の外部に溢れ出る金属を低減することができる。ピン段差部F21は、段差底面F21aと、段差側面F21bとで構成されている。隣り合うピン段差部F21の各頂点F21c,F21cの距離X1(水平方向距離)は、後記する段差角度C及び段差側面F21bの高さY1に応じて適宜設定される。
段差側面F21bの高さY1は適宜設定すればよいが、例えば、0.1~0.4mmで設定されている。高さY1が0.1mm未満であると接合表面粗さが大きくなる。一方、高さY1が0.4mmを超えると接合表面粗さが大きくなる傾向があるとともに、有効段差部数(被接合金属部材と接触しているピン段差部F21の数)も減少する。
段差底面F21aと段差側面F21bとでなす段差角度Cは適宜設定すればよいが、例えば、85~120°で設定されている。段差底面F21aは、本実施形態では水平面と平行になっている。段差底面F21aは、ツールの回転中心軸から外周方向に向かって水平面に対して-5°~15°内の範囲で傾斜していてもよい(マイナスは水平面に対して下方、プラスは水平面に対して上方)。距離X1、段差側面F21bの高さY1、段差角度C及び水平面に対する段差底面F21aの角度は、摩擦攪拌を行う際に、塑性流動材がピン段差部F21の内部に滞留して付着することなく外部に抜けるとともに、段差底面F21aで塑性流動材を押えて接合表面粗さを小さくすることができるように適宜設定する。
図1に示すように、先端側ピンF3は、基端側ピンF2に連続して形成されている。先端側ピンF3は円錐台形状を呈する。先端側ピンF3の先端は回転中心軸に対して垂直な平坦面F4になっている。先端側ピンF3のテーパー角度Bは、基端側ピンF2のテーパー角度Aよりも小さくなっている。図2に示すように、先端側ピンF3の外周面には、螺旋溝F31が刻設されている。螺旋溝F31は、右回り、左回りのどちらでもよいが、回転ツールFを右回転させる場合は、基端側から先端側に向けて左回りに刻設することが好ましい。
なお、回転ツールFを左回転させる場合は、螺旋溝F31を基端側から先端側に向けて右回りに設定することが好ましい。これにより、螺旋溝F31によって塑性流動材が先端側に導かれるため、被接合金属部材の外部に溢れ出る金属を低減することができる。螺旋溝F31は、螺旋底面F31aと、螺旋側面F31bとで構成されている。隣り合う螺旋溝F31の頂点F31c,F31cの距離(水平方向距離)を長さX2とする。螺旋側面F31bの高さを高さY2とする。螺旋底面F31aと、螺旋側面F31bとで構成される螺旋角度Dは例えば、45~90°で形成されている。螺旋溝F31は、被接合金属部材と接触することにより摩擦熱を上昇させるとともに、塑性流動材を先端側に導く役割を備えている。
回転ツールFは、適宜設計変更が可能である。図3は、本発明の回転ツールの第一変形例を示す側面図である。図3に示すように、第一変形例に係る回転ツールFAでは、ピン段差部F21の段差底面F21aと段差側面F21bとのなす段差角度Cが85°になっている。段差底面F21aは、水平面と平行である。このように、段差底面F21aは水平面と平行であるとともに、段差角度Cは、摩擦攪拌中にピン段差部F21内に塑性流動材が滞留して付着することなく外部に抜ける範囲で鋭角としてもよい。
図4は、本発明の回転ツールの第二変形例を示す側面図である。図4に示すように、第二変形例に係る回転ツールFBでは、ピン段差部F21の段差角度Cが115°になっている。段差底面F21aは水平面と平行になっている。このように、段差底面F21aは水平面と平行であるとともに、ピン段差部F21として機能する範囲で段差角度Cが鈍角となってもよい。
図5は、本発明の回転ツールの第三変形例を示す側面図である。図5に示すように、第三変形例に係る回転ツールFCでは、段差底面F21aがツールの回転中心軸から外周方向に向かって水平面に対して10°上方に傾斜している。段差側面F21bは、鉛直面と平行になっている。このように、摩擦攪拌中に塑性流動材を押さえることができる範囲で、段差底面F21aがツールの回転中心軸から外周方向に向かって水平面よりも上方に傾斜するように形成されていてもよい。上記の回転ツールの第一~第三変形例によっても、下記の実施形態と同等の効果を奏することができる。
[第一実施形態]
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。第一実施形態に係る液冷ジャケット1は、図6に示すように、ジャケット本体2と封止体3とで構成されている。液冷ジャケット1は、内部に流体を流通させて、配置される発熱体を冷却する機器である。ジャケット本体2と封止体3とは摩擦攪拌接合で一体化される。以下の説明における「表面」とは、「裏面」の反対側の面を意味する。
ジャケット本体2は、底部10及び周壁部11で主に構成されている。ジャケット本体2は、摩擦攪拌可能な金属であれば特に制限されないが、本実施形態では第一アルミニウム合金を主に含んで形成されている。第一アルミニウム合金は、例えば、JISH5302 ADC12(Al-Si-Cu系)等のアルミニウム合金鋳造材を用いている。
底部10は、矩形を呈する板状部材である。周壁部11は、底部10の周縁部から矩形枠状に立ち上がる壁部である。底部10及び周壁部11で凹部13が形成されている。図6及び図7に示すように、周壁部11の端面11aの外周縁には、第一傾斜面11b及び第二傾斜面11cが周方向全体にわたって形成されている。
第一傾斜面11bは、端面11aの外側(周壁部11に対して凹部13の反対側)の端部11eから延設され側面11dに向かうにつれて底部10側に傾斜している。第二傾斜面11cは、第一傾斜面11bの外側の端部11fから側面11dに向かうにつれてさらに底部10側に傾斜している。図7に示すように、周壁部11の側面11d及び封止体3の側面3cが鉛直面に対して垂直となるように配置した場合、鉛直面に対する第一傾斜面11bの傾斜角度βは、第二傾斜面11cの傾斜角度β’よりも小さくなっている。
第一傾斜面11bの傾斜角度βは適宜設定すればよいが、例えば、本実施形態では図1に示す回転ツールFの先端側ピンF3の傾斜角度αと同一になっている。また、第二傾斜面11cの傾斜角度β’は適宜設定すればよいが、例えば、本実施形態では図1に示す回転ツールFの基端側ピンF2の傾斜角度α’と同一になっている。
なお、本実施形態のジャケット本体2は一体形成されているが、例えば、周壁部11を分割構成としてシール部材で接合して一体化してもよい。
封止体3は、ジャケット本体2の開口部を封止する部材である。封止体3は、摩擦攪拌可能な金属であれば特に制限されないが、本実施形態では第二アルミニウム合金を主に含んで形成されている。第二アルミニウム合金は、第一アルミニウム合金よりも硬度の低い材料である。第二アルミニウム合金は、例えば、JIS A1050,A1100,A6063等のアルミニウム合金展伸材で形成されている。封止体3は、周壁部11よりも一回り大きな寸法で形成されている。なお、本明細書において硬度はブリネル硬さをいい、JIS Z 2243に準じた方法によって測定することができる。
次に、本実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。本実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法では、準備工程と、載置工程と、本接合工程とを行う。
準備工程は、ジャケット本体2及び封止体3を準備する工程である。ジャケット本体2及び封止体3は、製造方法については特に制限されないが、ジャケット本体2は、例えば、ダイキャストで成形する。封止体3は、例えば押出成形により成形する。
載置工程は、図7に示すように、ジャケット本体2に封止体3を載置する工程である。載置工程によって、封止体3の裏面3bと、周壁部11の端面11a、第一傾斜面11b及び第二傾斜面11cとが突き合わされて第一突合せ部J1が形成される。第一傾斜面11b及び第二傾斜面11cは、封止体3から離間する方向に傾斜しているため、第一突合せ部J1には断面V字状の隙間が形成される。
図7に示すように、封止体3は、周壁部11よりも一回り大きく形成されているため、載置工程を行うと、周方向全体に亘って封止体3の側面3cは、周壁部11の側面11dよりも外側(図7では上側)に位置する。なお、封止体3を周壁部11に載置した際に、少なくとも第一傾斜面11bの外側の端部11fよりも封止体3の側面3cが周方向全体に亘って外側に位置するように封止体3を形成してもよい。
図7及び図8に示すように、第一突合せ部J1よりも封止体3の表面3a側に「設定移動ルートL1」(一点鎖線)を設定する。設定移動ルートL1は、後記する本接合工程において、第一突合せ部J1を接合するために必要な回転ツールFの移動ルートである。
本接合工程は、図8、図9、及び図10に示すように、回転ツールFを用いて第一突合せ部J1を摩擦攪拌接合する工程である。本接合工程では、封止体3の側面3cに設定された開始位置SP1から中間点S1までの押入区間と、設定移動ルートL1上の中間点S1から一周回って中間点S2までの本区間と、中間点S2から側面3cに設定された終了位置EP1までの離脱区間の三つの区間を連続して摩擦攪拌する。
中間点S1,S2は、設定移動ルートL1上に設定されている。開始位置SP1は、封止体3の側面3cにおいて、設定移動ルートL1よりも表面3a側に設定されている。本実施形態では、開始位置SP1と中間点S1とを結ぶ線分と、設定移動ルートL1とのなす角度が鈍角となる位置に設定している。
押入区間では、開始位置SP1から中間点S1までの摩擦攪拌を行う。押入区間では、開始位置SP1において、左回転させた先端側ピンF3を側面3cから挿入し、側面3cと先端側ピンF3とを垂直にしつつ、中間点S1まで移動させる。この際、少なくとも中間点S1に到達するまでに予め設定された「所定の深さ」に達するように先端側ピンF3を徐々に押し入れていく。つまり、回転ツールFを一ヶ所に留まらせることなく、回転ツールFを設定移動ルートL1に移動させながら徐々に下降させていく。
中間点S1に達したらそのまま本区間の摩擦攪拌接合に移行する。図9に示すように、本区間では、先端側ピンF3の回転中心軸Zと設定移動ルートL1とが重なるように回転ツールFを移動させる。本区間では、先端側ピンF3の「所定の深さ」を維持した状態で、第一突合せ部J1に沿って回転ツールFを一周させる。本接合工程では、先端側ピンF3の平坦面F4が第一傾斜面11bの内側の端部11e(図7参照:端面11aの外側の端部)にわずかに接触する程度に設定する。また、先端側ピンF3の外周面と第一傾斜面11bとがわずかに接触するとともに、基端側ピンF2の外周面と第二傾斜面11cとがわずかに接触するように設定する。さらに、基端側ピンF2の外周面と封止体3の側面3cとがわずかに接触するように設定する。
なお、本接合工程において、回転ツールFは、少なくとも先端側ピンF3の外周面が第一傾斜面11bにわずかに接触するとともに、基端側ピンF2の外周面が封止体3の側面3cに接触するように設定移動ルートL1を設定すればよい。
ここで、第一傾斜面11b及び第二傾斜面11cに対する先端側ピンF3及び基端側ピンF2の外周面の接触代をオフセット量Nとする。本実施形態では、オフセット量Nを、0<N≦1.0mmの間で設定し、好ましくは0<N≦0.85mmの間で設定し、より好ましくは0<N≦0.65mmの間で設定する。
先端側ピンF3の外周面と、第一傾斜面11bとがそれぞれ接触しないように設定すると、第一突合せ部J1の接合強度が低くなる。また、先端側ピンF3の外周面と、第一傾斜面11bとのオフセット量Nが1.0mmを超えるとジャケット本体2の第一アルミニウム合金が、封止体3側に大量に混入して接合不良となるおそれがある。
図8に示すように、回転ツールFを一周させて中間点S2に到達したら、そのまま離脱区間に移行する。離脱区間では、図10に示すように、中間点S2から終了位置EP1に向かうまでの間に先端側ピンF3を徐々に上方に移動させて、終了位置EP1で封止体3の側面3cから先端側ピンF3を離脱させる。つまり、回転ツールFを一ヶ所に留まらせることなく、回転ツールFを終了位置EP1に移動させながら徐々に引き抜いていく(上昇させていく)。
終了位置EP1は、終了位置EP1と中間点S2とが結ぶ線分と設定移動ルートL1とでなす角度が鈍角となる位置に設定する。回転ツールFの移動軌跡には塑性化領域W1が形成される。
以上説明した本実施形態における液冷ジャケットの製造方法によれば、封止体3と先端側ピンF3及び基端側ピンF2との摩擦熱によって第一突合せ部J1の主として封止体3側の第二アルミニウム合金が攪拌されて塑性流動化され、第一突合せ部J1において周壁部11と封止体3の裏面3bとを接合することができる。
また、先端側ピンF3及び基端側ピンF2の外周面を、周壁部11の第一傾斜面11b及び第二傾斜面11cにそれぞれわずかに接触させるに留めるため、ジャケット本体2から封止体3への第一アルミニウム合金の混入を極力少なくすることができる。特に、第二傾斜面11cを設けることで、基端側ピンF2と周壁部11とが大きく接触するのを回避できる。
これにより、第一突合せ部J1においては主として封止体3側の第二アルミニウム合金が摩擦攪拌されるため、接合強度の低下を抑制することができる。つまり、本接合工程では、回転ツールFの回転中心軸Zに対して一方側と他方側で、先端側ピンF3及び基端側ピンF2が受ける材料抵抗の不均衡を極力少なくすることができる。これにより、塑性流動材がバランス良く摩擦攪拌されるため、接合強度の低下を抑制することができる。また、封止体3を周壁部11よりも一回り大きく形成しているため、接合部の金属不足を防止することができる。
また、本実施形態では、本接合工程において、基端側ピンF2の外周面と封止体3の側面3c及び周壁部11の側面11dとを接触させ、塑性流動材を押さえながら摩擦攪拌を行うため、バリの発生を抑制することができる。また、基端側ピンF2の外周面で塑性流動材を押えることができるため、接合表面(封止体3の側面3c及び周壁部11の側面11d)に形成される段差凹溝を小さくすることができるとともに、段差凹溝の脇に形成される膨出部を無くすか若しくは小さくすることができる。また、基端側ピンF2の階段状のピン段差部F21は浅く、かつ、出口が広いため、塑性流動材を段差底面F21aで押えつつ塑性流動材がピン段差部F21の外部に抜けやすくなっている。そのため、基端側ピンF2で塑性流動材を押えても基端側ピンF2の外周面に塑性流動材が付着し難い。よって、接合表面粗さを小さくすることができるとともに、接合品質を好適に安定させることができる。
また、本接合工程の所定の深さは、先端側ピンF3が周壁部11の第一傾斜面11bの内側の端部11eにわずかに接触する位置に設定することが好ましい。これにより、ジャケット本体2から封止体3への第一アルミニウム合金の混入を少なくしつつ、第一突合せ部J1の深い位置まで摩擦攪拌することができる。
また、本接合工程の押入区間では、開始位置SP1から設定移動ルートL1と重複する位置まで回転ツールFを移動させつつ所定の深さとなるまで先端側ピンF3を徐々に押入することにより、設定移動ルートL1上で回転ツールFが停止して摩擦熱が過大になるのを防ぐことができる。
同様に、本接合工程の離脱区間では、設定移動ルートL1から終了位置EP1まで回転ツールFを移動させつつ所定の深さから先端側ピンF3を徐々に上昇させて離脱させることにより、設定移動ルートL1上で回転ツールFが停止して摩擦熱が過大になるのを防ぐことができる。
これらにより、設定移動ルートL1上で摩擦熱が過大となり、ジャケット本体2から封止体3へ第一アルミニウム合金が過剰に混入して接合不良となるのを防ぐことができる。
また、本接合工程において、開始位置SP1の位置は適宜設定すればよいが、開始位置SP1と設定移動ルートL1とのなす角度が鈍角となるように設定することにより、中間点S1で回転ツールFの移動速度が低下することなくスムーズに本区間に移行する。これにより、設定移動ルートL1上で回転ツールFが停止又は移動速度が低下することにより、摩擦熱が過大となることを防ぐことができる。また、終了位置EP1においても、開始位置SP1と同じ要領で設定することで、本区間から離脱区間にスムーズに回転ツールFを移動させることができる。
また、本実施形態の本接合工程では、回転ツールFの回転方向及び進行方向は適宜設定すればよいが、回転ツールFの移動軌跡に形成される塑性化領域W1のうち、ジャケット本体2側がシアー側となり、封止体3側がフロー側となるように回転ツールFの回転方向及び進行方向を設定した。ジャケット本体2側がシアー側となるように設定することで、第一突合せ部J1の周囲における先端側ピンF3及び基端側ピンF2による攪拌作用が高まり、第一突合せ部J1における温度上昇が期待でき、第一突合せ部J1において周壁部11と封止体3とをより確実に接合することができる。
なお、シアー側(Advancing side)とは、被接合部に対する回転ツールの外周の相対速度が、回転ツールの外周における接線速度の大きさに移動速度の大きさを加算した値となる側を意味する。一方、フロー側(Retreating side)とは、回転ツールの移動方向の反対方向に回転ツールが回動することで、被接合部に対する回転ツールの相対速度が低速になる側を言う。
また、ジャケット本体2の第一アルミニウム合金は、封止体3の第二アルミニウム合金よりも硬度の高い材料になっている。これにより、液冷ジャケット1の耐久性を高めることができる。また、ジャケット本体2の第一アルミニウム合金をアルミニウム合金鋳造材とし、封止体3の第二アルミニウム合金をアルミニウム合金展伸材とすることが好ましい。第一アルミニウム合金を例えば、JISH5302 ADC12等のAl-Si-Cu系アルミニウム合金鋳造材とすることにより、ジャケット本体2の鋳造性、強度、被削性等を高めることができる。また、第二アルミニウム合金を例えば、JIS A1000系又はA6000系とすることにより、加工性、熱伝導性を高めることができる。
また、本接合工程においては、本接合工程で第一突合せ部J1の全周を摩擦攪拌接合するため、液冷ジャケットの気密性及び水密性を高めることができる。また、本接合工程において、塑性化領域W1の各端部同士をオーバーラップさせることにより、より気密性及び水密性を高めることができる。
また、先端側ピンF3の傾斜角度αと、第一傾斜面11bの傾斜角度βとを同一に設定し、回転ツールFの回転中心軸Zを鉛直方向と平行に設定することにより、第一傾斜面11bの高さ方向の全体に亘って均一に先端側ピンF3を接触させることができる。これにより、バランス良く摩擦攪拌接合を行うことができる。
同様に、基端側ピンF2の傾斜角度α’と、第二傾斜面11cの傾斜角度β’とを同一に設定し、回転ツールFの回転中心軸Zを鉛直方向と平行に設定することにより、第二傾斜面11cの高さ方向の全体に亘って均一に基端側ピンF2を接触させることができる。これにより、バランス良く摩擦攪拌接合を行うことができる。
なお、本接合工程では、回転ツールFの回転速度を一定としてもよいが、可変させてもよい。本接合工程の押入区間において、開始位置SP1における回転ツールFの回転速度をV1、中間点S1~S2間における回転ツールFの回転速度をV2とすると、V1>V2としてもよい。回転速度のV2は、設定移動ルートL1における予め設定された一定の回転速度である。つまり、開始位置SP1では、回転速度を高く設定しておき、押入区間内で徐々に回転速度を低減させながら本区間に移行してもよい。
また、本接合工程の離脱区間において、中間点S1~S2間における回転ツールFの回転速度をV2、終了位置EP1において離脱させるときの回転ツールFの回転速度をV3とすると、V3>V2としてもよい。つまり、離脱区間に移行したら、終了位置EP1に向けて徐々に回転数を上げながら封止体3から回転ツールFを離脱させてもよい。回転ツールFを封止体3に押し入れる際又は封止体3から離脱させる際に、前記のように設定することで、押入区間又は離脱区間における少ない押圧力を、回転速度で補うことができるため、摩擦攪拌を好適に行うことができる。
[変形例]
本接合工程では、図11のように、回転ツールFの回転中心軸Zを鉛直面に対して傾斜角度γで傾斜させてもよい。変形例の本接合工程では、基端側ピンF2の外周面を周壁部11の第二傾斜面11cにわずかに接触させつつ、回転ツールFの回転中心軸Zの鉛直面に対する傾斜角度をγとし、第一傾斜面11bの鉛直面に対する傾斜角度をβとし、第二傾斜面11cの鉛直面に対する傾斜角度をβ’とし、先端側ピンF3の外周面の回転中心軸Zに対する傾斜角度をαとし、基端側ピンF2の外周面の回転中心軸Zに対する傾斜角度をα’とすると、γ=α-β且つγ=α’-β’にした状態で接合を行うことが好ましい。
回転ツールFの回転中心軸Zを傾ける方向は傾斜角度α,βの関係によって決定される。例えば、「α>β」の場合に傾斜角度γは正の値となり、封止体3側に回転ツールFの回転中心軸Zを傾ける。また、「α<β」の場合に傾斜角度γは負の値となり、ジャケット本体2側に回転ツールFの回転中心軸Zを傾ける。また、「α=β」の場合に傾斜角度γは「0(ゼロ)」となり、回転ツールFの回転中心軸Zを傾けずに鉛直面と平行にする。
つまり、回転ツールFの回転中心軸Zを鉛直面に対して傾斜角度γだけ傾斜させているため、第一突合せ部J1においては、回転ツールFとジャケット本体2とが大きく接触するのを回避することができる。また、本実施形態では、回転ツールFの回転中心軸Zの鉛直面に対する傾斜角度γを、先端側ピンF3の外周面の回転中心軸Zに対する傾斜角度αから第一傾斜面11bの鉛直面に対する傾斜角度βを減算した値に一致させ、かつ、基端側ピンF2の外周面の回転中心軸Zに対する傾斜角度α’から第二傾斜面11cの鉛直面に対する傾斜角度β’を減算した値に一致させる。これにより、傾斜角度α,βとして最適な値を選択することができると共に、先端側ピンF3の外周面と第一傾斜面11b、基端側ピンF2の外周面と第二傾斜面11cをそれぞれ平行にして、先端側ピンF3及び基端側ピンF2の外周面と周壁部11とを高さ方向に亘って均一に接触させることができる。
例えば、傾斜角度α,α’は、摩擦攪拌接合(FSW=Friction Stir Welding)の技術分野による回転ツールの設計思想により決定され、また、傾斜角度β,β’は、鋳造分野(例えばダイカスト)による金型の設計思想により決定される。つまり、傾斜角度α,βは共に設計思想によって最適な値があるので、「α=β」にすることは難しい場合がある。しかし、本実施形態によれば、傾斜角度α,βを自由に選択することが可能であるので、傾斜角度α,βとして最適な値を選択することができる。
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。第二実施形態では、図12に示すように、本接合工程における開始位置SP1及び終了位置EP1の位置が第一実施形態と相違する。第二実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
第二実施形態に係る液冷ジャケットの製造では、準備工程と、載置工程と、本接合工程と、を行う。準備工程及び載置工程は、第一実施形態と同一である。
本接合工程では、開始位置SP1及び終了位置EP1を設定移動ルートL1上に設定する。本接合工程では、開始位置SP1から中間点S1までの押入区間と、設定移動ルートL1上の中間点S1から一周して中間点S2までの本区間と、中間点S2から終了位置EP1までの離脱区間の三つの区間を連続して摩擦攪拌する。中間点S1,S2は、設定移動ルートL1上に設定されている。
本接合工程の押入区間では、図12に示すように、開始位置SP1から中間点S1までの摩擦攪拌を行う。押入区間では、開始位置SP1において左回転させた先端側ピンF3を封止体3の側面3cから挿入し、側面3cに対して垂直にしつつ、中間点S1まで移動させる。この際、少なくとも中間点S1に到達するまでに予め設定された「所定の深さ」に達するように先端側ピンF3を徐々に押し入れていく。
中間点S1に達したらそのまま本区間の摩擦攪拌接合に移行する。回転ツールFのオフセット量及び挿入深さは第一実施形態と同一である。
先端側ピンF3が中間点S2に到達したら、そのまま離脱区間に移行する。離脱区間では、中間点S2から終了位置EP1に向かうまでの間に先端側ピンF3を封止体3から徐々に引き抜いて(上昇させて)、設定移動ルートL1上に設定された終了位置EP1で封止体3から先端側ピンF3を離脱させる。
以上説明した第二実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法によっても第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。さらに、第二実施形態に係る本接合工程の押入区間では、回転ツールFを設定移動ルート上で移動させつつ所定の深さとなるまで先端側ピンF3を徐々に押入することにより、設定移動ルートL1上の一点で回転ツールFが停止して摩擦熱が過大になるのを防ぐことができる。また、第二実施形態に係る本接合工程の離脱区間では、回転ツールFを設定移動ルート上で移動させつつ先端側ピンF3を徐々に離脱させることにより、設定移動ルートL1上の一点で回転ツールFが停止して摩擦熱が過大になるのを防ぐことができる。第二実施形態のように本接合工程における開始位置SP1及び終了位置EP1は、設定移動ルートL1上に設定してもよい。なお、第二実施形態においても、第一実施形態の変形例と同じように、回転ツールFの回転中心軸Zを鉛直面に対して傾斜角度γで傾斜させてもよい。
以上本発明の実施形態について説明したが、適宜設計変更が可能である。例えば、本接合工程を行う前に、ジャケット本体2と封止体3とを仮接合する仮接合工程を行ってもよい。これにより、本接合工程時におけるジャケット本体2と封止体3との目開きを防ぐことができる。仮接合工程では、仮接合用回転ツールを用いて摩擦攪拌で行ってもよいし、溶接で行ってもよい。また、押入区間及び離脱区間においては、回転ツールFの移動軌跡が平面視して曲線(例えば、円弧)を描くように移動ルートを設定してもよい。これにより、押入区間から本区間、又は、本区間から離脱区間への移行をスムーズに行うことができる。
1 液冷ジャケット
2 ジャケット本体
3 封止体
3c 側面
10 底部
11 周壁部
11a 端面
11b 第一傾斜面
11c 第二傾斜面
11d 側面
11e 端部
11f 端部
F 回転ツール
F2 基端側ピン
F3 先端側ピン
J1 第一突合せ部
W1 塑性化領域

Claims (8)

  1. 底部及び前記底部の周縁から立ち上がる周壁部を有するジャケット本体と、前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体とで構成され、前記ジャケット本体と前記封止体とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法であって、
    前記ジャケット本体は第一アルミニウム合金で形成されており、前記封止体は第二アルミニウム合金で形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、
    摩擦攪拌で用いる回転ツールは、基端側ピンと、先端側ピンとを備え、
    前記基端側ピンのテーパー角度は、前記先端側ピンのテーパー角度よりも大きくなっており、前記基端側ピンの外周面には階段状のピン段差部が形成されており、
    前記周壁部の端面の外周縁に、前記周壁部の側面に向かうにつれて前記底部側に傾斜する第一傾斜面と、前記第一傾斜面の外側の端部から前記周壁部の側面に向かうにつれてさらに前記底部側に傾斜する第二傾斜面と、を形成するとともに、前記封止体を前記周壁部に載置した際に、前記第一傾斜面の外側の端部よりも前記封止体の側面が周方向に亘って外側に位置するように前記封止体を形成する準備工程と、
    前記ジャケット本体に前記封止体を載置することにより前記周壁部の端面と前記封止体の裏面とを突き合わせて第一突合せ部を形成する載置工程と、
    回転する前記回転ツールの前記先端側ピンを前記封止体の側面から挿入し、前記先端側ピンの外周面を前記周壁部の端面の前記第一傾斜面にわずかに接触させつつ、前記基端側ピンの外周面を前記封止体の側面に接触させた状態で、前記第一突合せ部よりも封止体の表面側に設定された設定移動ルートに沿って所定の深さで前記封止体の廻りに一周させて前記第一突合せ部を摩擦攪拌する本接合工程と、を含み、
    前記本接合工程において、回転する前記先端側ピンを前記設定移動ルートよりもさらに封止体の表面側に設定した開始位置に挿入した後、前記回転ツールの回転中心軸を前記設定移動ルートと重複する位置まで移動させつつ前記所定の深さとなるまで前記先端側ピンを徐々に押入することを特徴とする液冷ジャケットの製造方法。
  2. 前記本接合工程では、前記基端側ピンの外周面を前記周壁部の端面の前記第二傾斜面にわずかに接触させつつ、前記回転ツールの回転中心軸の鉛直面に対する傾斜角度をγとし、前記第一傾斜面の鉛直面に対する傾斜角度をβとし、前記第二傾斜面の鉛直面に対する傾斜角度をβ’とし、前記先端側ピンの外周面の前記回転中心軸に対する傾斜角度をαとし、前記基端側ピンの外周面の前記回転中心軸に対する傾斜角度をα’とすると、γ=α-β且つγ=α’-β’にした状態で接合を行うことを特徴とする請求項1に記載の液冷ジャケットの製造方法。
  3. 前記本接合工程の前記所定の深さは、前記先端側ピンが前記周壁部の端面の前記第一傾斜面の内側の端部にわずかに接触する位置に設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液冷ジャケットの製造方法。
  4. 前記本接合工程では、所定の回転速度で前記回転ツールを回転させて摩擦攪拌を行い、
    前記本接合工程において前記先端側ピンを挿入するとき、前記所定の回転速度よりも高い速度で前記先端側ピンを回転させた状態で挿入し、徐々に回転速度を下げながら前記設定移動ルートまで移動させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の液冷ジャケットの製造方法。
  5. 底部及び前記底部の周縁から立ち上がる周壁部を有するジャケット本体と、前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体とで構成され、前記ジャケット本体と前記封止体とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法であって、
    前記ジャケット本体は第一アルミニウム合金で形成されており、前記封止体は第二アルミニウム合金で形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、
    摩擦攪拌で用いる回転ツールは、基端側ピンと、先端側ピンとを備え、
    前記基端側ピンのテーパー角度は、前記先端側ピンのテーパー角度よりも大きくなっており、前記基端側ピンの外周面には階段状のピン段差部が形成されており、
    前記周壁部の端面の外周縁に、前記周壁部の側面に向かうにつれて前記底部側に傾斜する第一傾斜面と、前記第一傾斜面の外側の端部から前記周壁部の側面に向かうにつれてさらに前記底部側に傾斜する第二傾斜面と、を形成するとともに、前記封止体を前記周壁部に載置した際に、前記第一傾斜面の外側の端部よりも前記封止体の側面が周方向に亘って外側に位置するように前記封止体を形成する準備工程と、
    前記ジャケット本体に前記封止体を載置することにより前記周壁部の端面と前記封止体の裏面とを突き合わせて第一突合せ部を形成する載置工程と、
    回転する前記回転ツールの前記先端側ピンを前記封止体の側面から挿入し、前記先端側ピンの外周面を前記周壁部の端面の前記第一傾斜面にわずかに接触させつつ、前記基端側ピンの外周面を前記封止体の側面に接触させた状態で、前記第一突合せ部よりも封止体の表面側に設定された設定移動ルートに沿って所定の深さで前記封止体の廻りに一周させて前記第一突合せ部を摩擦攪拌する本接合工程と、を含み、
    前記本接合工程において前記設定移動ルート上に設定した開始位置から前記先端側ピンを挿入し、進行方向に移動させつつ前記所定の深さとなるまで徐々に前記先端側ピンを押入することを特徴とする液冷ジャケットの製造方法。
  6. 前記本接合工程では、前記基端側ピンの外周面を前記周壁部の端面の前記第二傾斜面にわずかに接触させつつ、前記回転ツールの回転中心軸の鉛直面に対する傾斜角度をγとし、前記第一傾斜面の鉛直面に対する傾斜角度をβとし、前記第二傾斜面の鉛直面に対する傾斜角度をβ’とし、前記先端側ピンの外周面の前記回転中心軸に対する傾斜角度をαとし、前記基端側ピンの外周面の前記回転中心軸に対する傾斜角度をα’とすると、γ=α-β且つγ=α’-β’にした状態で接合を行うことを特徴とする請求項5に記載の液冷ジャケットの製造方法。
  7. 前記本接合工程の前記所定の深さは、前記先端側ピンが前記周壁部の端面の前記第一傾斜面の内側の端部にわずかに接触する位置に設定することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の液冷ジャケットの製造方法。
  8. 前記本接合工程では、所定の回転速度で前記回転ツールを回転させて摩擦攪拌を行い、
    前記本接合工程において前記先端側ピンを挿入するとき、前記所定の回転速度よりも高い速度で前記先端側ピンを回転させた状態で挿入し、徐々に回転速度を下げながら前記設定移動ルートまで移動させることを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか一項に記載の液冷ジャケットの製造方法。
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