<第1実施形態>
以下の説明では、各図に示す実施形態の駆動装置1およびモータ2が、図示しない水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、鉛直方向を規定して説明する。また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向である。+Z側は、鉛直方向上側であり、−Z側は、鉛直方向下側である。本実施形態では、鉛直方向上側を単に「上側」と呼び、鉛直方向下側を単に「下側」と呼ぶ。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって駆動装置1が搭載される車両の前後方向である。以下の実施形態において、+X側は、車両の前側であり、−X側は、車両の後側である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向の両方と直交する方向であって、車両の左右方向、すなわち車幅方向である。以下の実施形態において、+Y側は、車両の左側であり、−Y側は、車両の右側である。本実施形態では、右側は、軸方向一方側に相当し、左側は、軸方向他方側に相当する。前後方向および左右方向は、鉛直方向と直交する水平方向である。
なお、前後方向の位置関係は、本実施形態の位置関係に限られず、+X側が車両の後側であり、−X側が車両の前側であってもよい。この場合には、+Y側は、車両の右側であり、−Y側は、車両の左側である。
各図に適宜示すモータ軸J1は、Y軸方向、すなわち車両の左右方向に延びる。つまりモータ軸J1は、水平方向に延びる。本実施形態では、特に断りのない限り、モータ軸J1に平行な方向を単に「軸方向」と呼び、モータ軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、モータ軸J1を中心とする周方向、すなわち、モータ軸J1の軸回りを単に「周方向」と呼ぶ。なお、本明細書において、「平行な方向」は略平行な方向も含み、「直交する方向」は略直交する方向も含む。
図1に示す本実施形態の駆動装置1は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、モータを動力源とする車両に搭載され、その動力源として使用される。図1に示すように、駆動装置1は、モータ2と、減速装置4および差動装置5を含む伝達装置3と、ハウジング6と、インバータユニット8と、を備える。
ハウジング6は、モータ収容部81と、ギヤ収容部82と、隔壁61cと、を有する。モータ収容部81は、ハウジング6のうち内部に後述するロータ20およびステータ30を収容する部分である。本実施形態では、モータ収容部81の内部空間、すなわちモータ収容部81と隔壁61cにより画成される室を、ステータ収容室83と呼ぶ場合がある。つまりハウジング6は、ステータ収容室83を有する。ステータ収容室83は、ステータ30を収容する。
ギヤ収容部82は、ハウジング6のうち内部に伝達装置3を収容する部分である。ギヤ収容部82は、モータ収容部81の左側に位置する。モータ収容部81の底部81aは、ギヤ収容部82の底部82aより上側に位置する。隔壁61cは、モータ収容部81の内部とギヤ収容部82の内部とを軸方向に区画する。隔壁61cには、隔壁開口68が設けられる。隔壁開口68は、モータ収容部81の内部とギヤ収容部82の内部とを繋ぐ。
モータ収容部81の内部およびギヤ収容部82の内部には、本実施形態の冷媒であるオイルOが収容される。ギヤ収容部82の内部における下部領域には、オイルOが溜るオイル溜りPが設けられる。オイル溜りPのオイルOは、後述する油路90によってモータ収容部81の内部に送られる。モータ収容部81の内部に送られたオイルOは、モータ収容部81の内部における下部領域に溜まる。モータ収容部81の内部に溜まったオイルOの少なくとも一部は、隔壁開口68を介してギヤ収容部82に移動し、オイル溜りPに戻る。
なお、本明細書において「ある部分の内部にオイルが収容される」とは、モータが駆動している最中の少なくとも一部において、ある部分の内部にオイルが位置していればよく、モータが停止している際には、ある部分の内部にオイルが位置していなくてもよい。例えば、本実施形態においてモータ収容部81の内部にオイルOが収容されるとは、モータ2が駆動している最中の少なくとも一部において、モータ収容部81の内部にオイルOが位置していればよく、モータ2が停止している際においては、モータ収容部81の内部のオイルOがすべて隔壁開口68を通ってギヤ収容部82に移動してしまっていてもよい。なお、後述する油路90によってモータ収容部81の内部へと送られたオイルOの一部は、モータ2が停止した状態において、モータ収容部81の内部に残っていてもよい。
オイルOは、後述する油路90内を循環する。オイルOは、減速装置4および差動装置5の潤滑用として使用される。また、オイルOは、モータ2の冷却用として使用される。オイルOとしては、潤滑油および冷却油の機能を奏するために、比較的粘度の低いオートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF:Automatic Transmission Fluid)と同等のオイルを用いることが好ましい。
本実施形態においてモータ2は、インナーロータ型のモータである。モータ2は、ロータ20と、ステータ30と、モータ収容部81を有するハウジング6と、ベアリング26,27と、クーラー97と、ポンプ96と、リザーバ10と、案内部材77と、栓部材79と、を備える。ロータ20は、モータ軸J1を中心として回転する。ロータ20は、シャフト21と、ロータ本体24と、を有する。ロータ20のトルクは、伝達装置3に伝達される。
シャフト21は、モータ軸J1を中心として軸方向に沿って延びる。シャフト21は、モータ軸J1を中心として回転する。シャフト21は、内部に中空部22が設けられた中空シャフトである。シャフト21には、連通孔23が設けられる。連通孔23は、径方向に延びて中空部22とシャフト21の外部とを繋ぐ。
シャフト21は、ハウジング6のモータ収容部81とギヤ収容部82とに跨って延びる。シャフト21の左側の端部は、ギヤ収容部82の内部に突出する。シャフト21の左側の端部には、伝達装置3の後述する第1のギヤ41が固定される。シャフト21は、ベアリング26,27により回転可能に支持される。
ロータ本体24は、軸方向に延びる円筒状である。ロータ本体24は、シャフト21の外周面と固定される。図示は省略するが、ロータ本体24は、ロータコアと、ロータコアに固定されるロータマグネットと、を有する。
ステータ30は、ロータ20と径方向に隙間をあけて対向する。ステータ30は、ロータ20の径方向外側に位置する。ステータ30は、ステータコア32と、コイルアセンブリ33と、を有する。ステータコア32は、モータ収容部81の内周面に固定される。図2に示すように、ステータコア32は、ステータコア本体32aと、固定部32bと、を有する。図示は省略するが、ステータコア本体32aは、軸方向に延びる円筒状のコアバックと、コアバックから径方向内側に延びる複数のティースと、を有する。
固定部32bは、ステータコア本体32aの外周面から径方向外側に突出する。固定部32bは、ステータコア32のうちモータ収容部81に固定される部分である。固定部32bは、周方向に沿って間隔を空けて複数設けられる。固定部32bのうちの1つは、ステータコア本体32aから上側に突出する。固定部32bは、固定部32bを軸方向に貫通する貫通孔32cを有する。図示は省略するが、ステータ30は、貫通孔32cに通されたネジがモータ収容部81に締め込まれることで、ハウジング6に固定される。
図1に示すように、コイルアセンブリ33は、周方向に沿ってステータコア32に取り付けられる複数のコイル31を有する。複数のコイル31は、図示しないインシュレータを介してステータコア32の各ティースにそれぞれ装着される。複数のコイル31は、周方向に沿って配置される。より詳細には、複数のコイル31は、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。図示は省略するが、コイルアセンブリ33は、各コイル31を結束する結束部材等を有してもよいし、各コイル31同士を繋ぐ渡り線を有してもよい。
コイルアセンブリ33は、ステータコア32から軸方向に突出するコイルエンド33a,33bを有する。コイルエンド33aは、コイルアセンブリ33のうちステータコア32から右側に突出する部分である。コイルエンド33bは、コイルアセンブリ33のうちステータコア32から左側に突出する部分である。コイルエンド33aは、コイルアセンブリ33に含まれる各コイル31のうちステータコア32よりも右側に突出する部分を含む。コイルエンド33bは、コイルアセンブリ33に含まれる各コイル31のうちステータコア32よりも左側に突出する部分を含む。本実施形態においてコイルエンド33a,33bは、モータ軸J1を中心とする円環状である。図示は省略するが、コイルエンド33a,33bは、各コイル31を結束する結束部材等を含んでもよいし、各コイル31同士を繋ぐ渡り線を含んでもよい。
ベアリング26,27は、ロータ20を回転可能に支持する。ベアリング26,27は、例えば、ボールベアリングである。図1に示すように、ベアリング26は、ロータ20のうちステータコア32よりも右側に位置する部分を回転可能に支持するベアリングである。本実施形態においてベアリング26は、シャフト21のうちロータ本体24が固定される部分よりも右側に位置する部分を支持する。ベアリング26は、モータ収容部81の壁部のうち、ロータ20およびステータ30の右側を覆う右壁部81cに保持される。
ベアリング27は、ロータ20のうちステータコア32よりも左側に位置する部分を回転可能に支持するベアリングである。本実施形態においてベアリング27は、シャフト21のうちロータ本体24が固定される部分よりも左側に位置する部分を支持する。ベアリング27は、隔壁61cに保持される。上記以外のモータ2の構成要素については、後述する。
伝達装置3は、ハウジング6のギヤ収容部82に収容される。伝達装置3は、モータ2に接続される。より詳細には、伝達装置3は、シャフト21の左側の端部に接続される。伝達装置3は、減速装置4と、差動装置5と、を有する。モータ2から出力されるトルクは、減速装置4を介して差動装置5に伝達される。
減速装置4は、モータ2に接続される。減速装置4は、モータ2の回転速度を減じて、モータ2から出力されるトルクを減速比に応じて増大させる。減速装置4は、モータ2から出力されるトルクを差動装置5へ伝達する。減速装置4は、第1のギヤ41と、第2のギヤ42と、第3のギヤ43と、中間シャフト45と、を有する。
第1のギヤ41は、シャフト21の左側の端部における外周面に固定される。第1のギヤ41は、シャフト21とともに、モータ軸J1を中心に回転する。中間シャフト45は、モータ軸J1と平行な中間軸J2に沿って延びる。中間シャフト45は、中間軸J2を中心として回転する。第2のギヤ42および第3のギヤ43は、中間シャフト45の外周面に固定される。第2のギヤ42と第3のギヤ43は、中間シャフト45を介して接続される。第2のギヤ42および第3のギヤ43は、中間軸J2を中心として回転する。第2のギヤ42は、第1のギヤ41に噛み合う。第3のギヤ43は、差動装置5の後述するリングギヤ51と噛み合う。
モータ2から出力されるトルクは、シャフト21、第1のギヤ41、第2のギヤ42、中間シャフト45および第3のギヤ43をこの順に介して差動装置5のリングギヤ51へ伝達される。各ギヤのギヤ比およびギヤの個数等は、必要とされる減速比に応じて種々変更可能である。本実施形態において減速装置4は、各ギヤの軸芯が平行に配置される平行軸歯車タイプの減速機である。
差動装置5は、減速装置4を介しモータ2に接続される。差動装置5は、モータ2から出力されるトルクを車両の車輪に伝達するための装置である。差動装置5は、車両の旋回時に、左右の車輪の速度差を吸収しつつ、左右両輪の車軸55に同トルクを伝える。差動装置5は、リングギヤ51と、図示しないギヤハウジングと、図示しない一対のピニオンギヤと、図示しないピニオンシャフトと、図示しない一対のサイドギヤと、を有する。リングギヤ51は、モータ軸J1と平行な差動軸J3を中心として回転する。リングギヤ51には、モータ2から出力されるトルクが減速装置4を介して伝えられる。
モータ2には、ハウジング6の内部においてオイルOが循環する油路90が設けられる。つまりモータ2は、油路90を備える。油路90は、オイル溜りPからオイルOをモータ2に供給し、再びオイル溜りPに導くオイルOの経路である。油路90は、モータ収容部81の内部とギヤ収容部82の内部とに跨って設けられる。
なお、本明細書において「油路」とは、オイルの経路を意味する。したがって、「油路」とは、定常的に一方向に向かうオイルの流動を作る「流路」のみならず、オイルを一時的に滞留させる経路およびオイルが滴り落ちる経路をも含む概念である。オイルを一時的に滞留させる経路とは、例えば、オイルを貯留するリザーバ等を含む。油路90は、本実施形態の冷媒であるオイルOが通る経路であり、冷媒経路と言い換えてもよい。
油路90は、第1の油路91と、第2の油路92と、を有する。第1の油路91および第2の油路92は、それぞれハウジング6の内部でオイルOを循環させる。第1の油路91は、かき上げ経路91aと、シャフト供給経路91bと、シャフト内経路91cと、ロータ内経路91dと、を有する。また、第1の油路91の経路中には、貯留部93が設けられる。貯留部93は、ギヤ収容部82内に設けられる。
かき上げ経路91aは、差動装置5のリングギヤ51の回転によってオイル溜りPからオイルOをかき上げて、貯留部93でオイルOを受ける経路である。貯留部93は、上側に開口し、オイルOを貯留する。貯留部93は、リングギヤ51がかき上げたオイルOを受ける。また、モータ2の駆動直後などオイル溜りPの液面が高い場合等には、貯留部93は、リングギヤ51に加えて第2のギヤ42および第3のギヤ43によってかき上げられたオイルOも受ける。
シャフト供給経路91bは、貯留部93からシャフト21の中空部22にオイルOを誘導する。シャフト内経路91cは、シャフト21の中空部22内をオイルOが通過する経路である。ロータ内経路91dは、オイルOがシャフト21の連通孔23からロータ本体24の内部を通過して、ステータ30に飛散する経路である。
シャフト内経路91cにおいて、ロータ20の内部のオイルOには、ロータ20の回転に伴い遠心力が付与される。これにより、オイルOは、ロータ20から径方向外側に連続的に飛散する。また、オイルOの飛散に伴い、ロータ20内部の経路が負圧となり、貯留部93に溜るオイルOが、ロータ20の内部に吸引され、ロータ20内部の経路にオイルOが満たされる。
ステータ30に到達したオイルOは、ステータ30から熱を奪う。ステータ30を冷却したオイルOは、下側に滴下され、モータ収容部81内の下部領域に溜る。モータ収容部81内の下部領域に溜ったオイルOは、隔壁61cに設けられた隔壁開口68を介してギヤ収容部82に移動する。以上のようにして、第1の油路91は、オイルOをロータ20およびステータ30に供給する。
第2の油路92においてオイルOは、オイル溜りPからステータ30の上側まで引き上げられてステータ30に供給される。すなわち、第2の油路92は、オイルOをステータ30の上側からステータ30に供給する。第2の油路92には、ポンプ96と、クーラー97と、リザーバ10と、が設けられる。第2の油路92は、第1の流路92aと、第2の流路92bと、供給路92cと、を有する。
第1の流路92a、第2の流路92bおよび供給路92cは、ハウジング6の壁部に設けられる。つまりハウジング6は、供給路92cを有する。第1の流路92aは、オイル溜りPとポンプ96とを繋ぐ。第2の流路92bは、ポンプ96とクーラー97とを繋ぐ。
供給路92cは、モータ収容部81の壁部に設けられる。供給路92cには、ステータ30を冷却するオイルOが通過する。供給路92cは、リザーバ10にオイルOを供給する。図1および図3に示すように、供給路92cは、供給路上流部92eと、供給路下流部92fと、を有する。本実施形態では供給路上流部92eが、モータ収容部81の壁部のうち前壁部81dに位置する。供給路上流部92eは、クーラー97から上側に延びる。供給路下流部92fは、供給路上流部92eと繋がり、供給路上流部92eの下流側に位置する。供給路下流部92fは、モータ収容部81の壁部のうち頂壁部81bに位置する。供給路下流部92fは、供給路上流部92eの上端部と接続される。本実施形態では供給路下流部92fが、鉛直方向に延びる。供給路下流部92fは、供給路上流部92eとの接続部分から下側に延びる。供給路下流部92fは、下端部がステータ収容室83に開口する。
本実施形態では、供給路下流部92fが、ハウジング6の頂壁部81bを鉛直方向に貫通する貫通孔81eの一部により構成される。すなわち、ハウジング6は、ハウジング6の壁部を貫通する貫通孔81eを有する。貫通孔81eの一端は、ステータ収容室83に開口し、貫通孔81eの他端は、モータ収容部81の外周面つまりハウジング6の外周面に開口する。貫通孔81eには、供給路92cの後述する開口部92dが配置される。開口部92dは、貫通孔81eの下端部に位置する。
図1から図3に示すように、供給路92cは、リザーバ10の上側に位置しモータ収容部81に開口する開口部92dを有する。開口部92dは、供給路92cのうちステータ収容室83に開口する部分である。すなわち、供給路92cの一端は開口部92dを通してステータ収容室83に開口し、供給路92cの他端はクーラー97を介してポンプ96と繋がる。開口部92dは、供給路下流部92fの一部を構成する。開口部92dは、供給路下流部92fの下端部に配置される。開口部92dは、モータ収容部81の内部にオイルOを供給する。本実施形態によれば、ポンプ96およびクーラー97により、冷えたオイルOを供給路92cからステータ収容室83に噴出することができる。ステータ30等の冷却効率が向上する。
開口部92dは、上方から見て、リザーバ10と一部が重なる。開口部92dは、リザーバ10と少なくとも一部が対向する。詳しくは、開口部92dは、リザーバ10の後述する第1流路部11と少なくとも一部が対向する。
ポンプ96は、電気により駆動する電動ポンプである。図1に示すように、ポンプ96は、クーラー97と接続され、クーラー97にオイルOを送る。詳しくは、ポンプ96は、第1の流路92aを介してオイル溜りPからオイルOを吸い上げて、第2の流路92b、クーラー97、供給路92cおよびリザーバ10を介して、オイルOをステータ30等に供給する。
クーラー97は、第2の油路92を通過するオイルOを冷却する。クーラー97は、オイルOを冷却し、第2の流路92bおよび供給路92cと接続される。第2の流路92bと供給路92cとは、クーラー97の内部流路を介して繋がる。クーラー97には、図示しないラジエータで冷却された冷却水を通過させる冷却水用配管97jが接続される。クーラー97の内部を通過するオイルOは、冷却水用配管97jを通過する冷却水との間で熱交換されて冷却される。なお、冷却水用配管97jの経路中には、インバータユニット8が設けられる。冷却水用配管97jを通過する冷却水は、インバータユニット8を冷却する。
リザーバ10は、第2の油路92の一部を構成する。リザーバ10は、モータ収容部81の内部に位置する。つまりリザーバ10は、ステータ収容室83に配置される。リザーバ10は、ステータ30の上側に位置し、オイルOを貯留する樋状である。図2に示すように、リザーバ10は、ステータ30によって下側から支持され、モータ2に設けられる。リザーバ10は、樹脂製の部分を有する。
なお、以下の説明においては、軸方向においてステータ30の両端部から中心へ向かう方向を「軸方向内側」と呼ぶ場合があり、軸方向においてステータ30の中心から両端部へ向かう方向を「軸方向外側」と呼ぶ場合がある。
リザーバ10は、鉛直方向から見て略矩形枠状に延びる樋状であり、内部にオイルOが流通する。本実施形態においてリザーバ10は、供給路92cを介してモータ収容部81内に供給されたオイルOを貯留する。リザーバ10は上側に開口する樋状であるため、リザーバ10の上側において開口部92dからオイルOを流出させることで、リザーバ10にオイルOを供給できる。
図2および図3に示すように、リザーバ10は、オイルOが流れる流路9を有する。リザーバ10は、流路9を構成する壁部70と、冷媒受入口76と、冷媒供給口17と、リザーバ第1固定部19Aと、リザーバ第2固定部19Bと、支持リブ16と、を有する。壁部70は、底壁部71と、側壁部72と、フランジ部73と、頂壁部74と、突出部75と、を有する。つまりリザーバ10は、底壁部71と、側壁部72と、フランジ部73と、頂壁部74と、突出部75と、を有する。冷媒受入口76は、供給路92cからオイルOを受け入れる。具体的に、冷媒受入口76は、案内部材77を介して、開口部92dからオイルOを受け入れる。冷媒受入口76は、流路9の後述する第1流路部11に配置される。冷媒供給口17は、壁部70の一部である底壁部71を鉛直方向に貫通する。冷媒供給口17は、リザーバ10からステータ30等にオイルOを供給する孔である。なお本実施形態でいうステータ30等には、ステータ30、ベアリング26,27および図示しないサーミスタ等が含まれる。オイルOが供給されることにより、ステータ30が冷却され、ベアリング26,27が潤滑され、サーミスタの機能が良好に維持される。冷媒供給口17は、複数設けられる。複数の冷媒供給口17は、流路9に分散して配置される。冷媒供給口17は、後述する第1流路部11、第2流路部12A,12B、第1コーナ流路部14A,14B、第3流路部13、第2コーナ流路部15A,15B、およびベアリング供給部18A,18Bにそれぞれ配置される。なお図2においては、冷媒供給口17の一部の図示を省略している。
図2に示すように、リザーバ10は、上方から見て、所定方向に延びる第1流路部11と、所定方向とは異なる方向に延びる第2流路部12A,12Bと、第1流路部11と第2流路部12A,12Bとを繋ぐ第1コーナ流路部14A,14Bと、所定方向と直交する方向において、第1流路部11と間隔をあけて配置され、所定方向に延びる第3流路部13と、第2流路部12A,12Bと第3流路部13とを繋ぐ第2コーナ流路部15A,15Bと、ベアリング供給部18A,18Bと、を有する。すなわち、流路9は、第1流路部11と、第2流路部12A,12Bと、第1コーナ流路部14A,14Bと、第3流路部13と、第2コーナ流路部15A,15Bと、ベアリング供給部18A,18Bと、を有する。本実施形態において、所定方向は、軸方向に相当する。本実施形態では、リザーバ10を上方から見て、流路9の一部が延びる方向と直交する方向を、「流路の幅方向」と定義する。なお流路9の一部とは、例えば、上述の各流路部11,12A,12B,14A,14B,13,15A,15Bのいずれかなどである。
図2および図3に示すように、底壁部71は、板状であり、一対の板面が鉛直方向を向く。側壁部72は、板状であり、一対の板面が水平方向を向く。側壁部72は、底壁部71から上側に突出する。側壁部72は、一対設けられる。一対の側壁部72は、流路9の幅方向において、互いに間隔をあけて配置される。頂壁部74は、側壁部72に接続され、底壁部71に上側から間隔をあけて対向する。本実施形態では頂壁部74が、側壁部72の上端部と接続される。頂壁部74は、底壁部71の少なくとも一部に、上側から対向して配置される。本実施形態では頂壁部74が、上方から見て、底壁部71のうちモータ軸J1よりも前側に位置する部分と重なる。本実施形態によれば、リザーバ10が頂壁部74を有するので、リザーバ10に給油されたオイルOが、側壁部72を上側に乗り越えてリザーバ10の外部へ溢れ出ることが頂壁部74により抑制される。本実施形態の駆動装置1によれば、例えば車両が坂道等に位置してモータ2が傾いた状態となっても、リザーバ10からオイルOが溢れ出ることが、頂壁部74により抑制される。
冷媒受入口76は、頂壁部74に開口する部分を有する。本実施形態によれば、冷媒受入口76が頂壁部74に開口するので、リザーバ10のオイルOが冷媒受入口76からリザーバ10の外部へ漏れ出ることが抑制される。リザーバ10の冷媒供給口17からステータ30等にオイルOが安定して供給され、ステータ30等を安定して冷却できる。なお本実施形態では、冷媒受入口76が、頂壁部74に開口する部分と、側壁部72に開口する部分と、を有する。冷媒受入口76の開口面積が大きく確保されるため、オイルOを受け入れやすい。
フランジ部73は、板状であり、一対の板面が鉛直方向を向く。フランジ部73は、側壁部72の下端部と接続される。フランジ部73は、一対設けられる。一対のフランジ部73は、一対の側壁部72の下端部と接続される。フランジ部73は、側壁部72の下端部から、流路9の幅方向において流路9から離れる方向に延びる。フランジ部73の下側を向く板面は、底壁部71の上側を向く面と接触する。フランジ部73と底壁部71とは、互いに固定される。具体的に、フランジ部73と底壁部71とは、例えば、超音波溶着、接着剤、ネジ、スナップフィット構造等により、互いに固定される。本実施形態によれば、側壁部72と底壁部71とが、フランジ部73により安定して固定される。側壁部72と底壁部71との間からリザーバ10の外部にオイルOが漏れ出ることが、フランジ部73により抑制される。
第1流路部11は、上方から見て、軸方向に直線状に延びる。第1流路部11は、モータ軸J1よりも前側に位置する。第1流路部11は、ステータコア32の上側の固定部32bよりも前側に配置される。
第1流路部11は、開口部92dの下側に位置する。これにより、第1流路部11は、開口部92dからモータ収容部81内に供給されるオイルOを受ける。本実施形態において開口部92dは、第1流路部11の軸方向両側の端部よりも軸方向内側に離れた位置に配置される。開口部92dは、上方から見て、第1流路部11の左側寄りの部分と重なる。本実施形態では、上方から見て、開口部92dのうち後側の端部が、第1流路部11と重なる。
図2に示すように、第1コーナ流路部14A,14Bは、所定方向に互いに間隔をあけて一対設けられる。一対の第1コーナ流路部14A,14Bは、第1流路部11の所定方向の両端部に接続される。第1コーナ流路部14Aは、第1流路部11の右側に位置し、第1流路部11の右側の端部と接続される。第1コーナ流路部14Bは、第1流路部11の左側に位置し、第1流路部11の左側の端部と接続される。上方から見て、第1コーナ流路部14Aと開口部92dとの間の距離は、第1コーナ流路部14Bと開口部92dとの間の距離よりも大きい。
第1コーナ流路部14A,14Bは、上方から見て、湾曲状に延びる。第1コーナ流路部14Aは、第1流路部11の右側の端部から、右側つまり軸方向外側へ向かうに従い後側に位置する。第1コーナ流路部14Bは、第1流路部11の左側の端部から、左側つまり軸方向外側へ向かうに従い後側に位置する。第1コーナ流路部14A,14Bは、モータ軸J1よりも前側に位置する。第1コーナ流路部14A,14Bは、ステータコア32の上側の固定部32bよりも前側に配置される。第1コーナ流路部14A,14Bは、ステータコア32よりも軸方向外側に突出する。第1コーナ流路部14A,14Bの流路の幅方向の寸法は、第1流路部11の流路の幅方向の寸法以上である。本実施形態によれば、第1流路部11から第1コーナ流路部14A,14Bに流入するオイルOの圧力損失を小さく抑えることができる。
第2流路部12A,12Bは、所定方向に互いに間隔をあけて一対設けられる。一対の第2流路部12A,12Bは、一対の第1コーナ流路部14A,14Bと接続される。第2流路部12Aは、一対の第1コーナ流路部14A,14Bのうち、右側に位置する第1コーナ流路部14Aの後側の端部と接続される。第2流路部12Bは、一対の第1コーナ流路部14A,14Bのうち、左側に位置する第1コーナ流路部14Bの後側の端部と接続される。第2流路部12A,12Bは、上方から見て、軸方向と直交する方向に直線状に延びる。
第2流路部12Aは、コイルエンド33aの上側に位置する。第2流路部12Aは、上方から見て、コイルエンド33aと重なる。第2流路部12Aは、ステータコア32の右側に位置する。第2流路部12Bは、コイルエンド33bの上側に位置する。第2流路部12Bは、上方から見て、コイルエンド33bと重なる。第2流路部12Bは、ステータコア32の左側に位置する。本実施形態では、リザーバ10の流路9が、第1流路部11、一対の第1コーナ流路部14A,14Bおよび一対の第2流路部12A,12Bを有する。すなわちリザーバ10は、上面視で少なくともU字状の流路部分を有する。具体的に本実施形態では、リザーバ10が、上面視で四角形枠状の流路形状を有する。リザーバ10の流路9を、ステータコア32および一対のコイルエンド33a,33bの上側に配置しやすくなり、ステータ30等を広範囲に効率よく冷却することができる。
第2コーナ流路部15A,15Bは、所定方向に互いに間隔をあけて一対設けられる。一対の第2コーナ流路部15A,15Bは、一対の第2流路部12A,12Bと接続される。第2コーナ流路部15Aは、一対の第2流路部12A,12Bのうち、右側に位置する第2流路部12Aの後側の端部と接続される。第2コーナ流路部15Bは、一対の第2流路部12A,12Bのうち、左側に位置する第2流路部12Bの後側の端部と接続される。第2コーナ流路部15A,15Bは、上方から見て、湾曲状又は屈曲状である。第2コーナ流路部15Aは、第2流路部12Aの後側の端部から、後側へ向かうに従い左側つまり軸方向内側に位置する。第2コーナ流路部15Bは、第2流路部12Bの後側の端部から、後側へ向かうに従い右側つまり軸方向内側に位置する。第2コーナ流路部15A,15Bは、モータ軸J1よりも後側に位置する。第2コーナ流路部15A,15Bは、ステータコア32の上側の固定部32bよりも後側に配置される。第2コーナ流路部15A,15Bは、ステータコア32よりも軸方向外側に位置する。
第3流路部13は、上方から見て、軸方向に直線状に延びる。第3流路部13は、モータ軸J1よりも後側に位置する。第3流路部13は、ステータコア32の上側の固定部32bよりも後側に配置される。第3流路部13の右側の端部は、第2コーナ流路部15Aの左側の端部かつ後側の端部と接続される。第3流路部13の左側の端部は、第2コーナ流路部15Bの右側の端部かつ後側の端部と接続される。本実施形態では、リザーバ10の流路9が、第1流路部11、第1コーナ流路部14A、第2流路部12A、第2コーナ流路部15Aおよび第3流路部13を有する。また流路9が、第1流路部11、第1コーナ流路部14B、第2流路部12B、第2コーナ流路部15Bおよび第3流路部13を有する。すなわちリザーバ10は、上面視で少なくともU字状の流路部分を有する。具体的に本実施形態では、リザーバ10が、上面視で四角形枠状の流路形状を有する。リザーバ10の流路9からステータ30等へ広範囲にオイルOを供給でき、ステータ30等の冷却効率を高めることができる。
ベアリング供給部18A,18Bは、第2流路部12A,12Bから軸方向外側に突出する。ベアリング供給部18Aは、第2流路部12Aから右側に突出し、第2流路部12Aと繋がる。ベアリング供給部18Aは、上方から見て、軸方向と直交する方向に延びる。ベアリング供給部18Aは、ベアリング26の上側に位置する。ベアリング供給部18Aは、上方から見て、ベアリング26と重なる。ベアリング供給部18Bは、第2流路部12Bから左側に突出し、第2流路部12Bと繋がる。ベアリング供給部18Bは、上方から見て、軸方向と直交する方向に延びる。ベアリング供給部18Bは、ベアリング27の上側に位置する。ベアリング供給部18Bは、上方から見て、ベアリング27と重なる。
突出部75は、第1流路部11、第2流路部12A,12Bおよび第1コーナ流路部14A,14Bのいずれかに配置されて流路9内に鉛直方向に向けて突出する。突出部75は、例えばリブ状または突起状であり、本実施形態ではリブ状である。突出部75は、底壁部71および頂壁部74の少なくともいずれかから、流路9内に突出する。突出部75は、流路9を流れるオイルOの流動をガイドする機能を有する。すなわち、突出部75により、流路9を流れるオイルOを整流する作用が得られる。このため突出部75は、ガイド部または整流部と言い換えてもよい。ガイド部(整流部)は、第1流路部11、第2流路部12A,12Bおよび第1コーナ流路部14A,14Bのいずれかに配置され、オイルOつまり冷媒の流れをガイドする。
本実施形態によれば、突出部75つまりガイド部(整流部)により、リザーバ10の流路9の各部を流れるオイルOの流量にばらつきが生じることを抑制できる。つまり、流路9の各部を流れるオイルOの流量を均等化できる。これにより、例えば、複数の冷媒供給口17からステータ30等に供給されるオイルOの供給量を均等化したり、オイルOを供給する対象部材ごとにオイルOの供給量を調整しやすくしたりすることができる。
本実施形態では突出部75が、一対の側壁部72の間において、底壁部71から上側に突出する。突出部75が底壁部71から上側に突出するため、底壁部71上を流れるオイルOの整流作用が、突出部75によって安定して得られる。突出部75は、流路9の幅方向の両端部間に位置する中間部分に配置される。すなわち、突出部75は、流路9の内部のうち、一対の側壁部72から流路9の幅方向に離れた位置に配置される。本実施形態によれば、突出部75が、流路9の幅方向の端部のオイルOの流れを遮ってしまうことが抑制される。オイルOが、流路9の幅方向の全域にわたって分布しやすくなり、流路9の各部でオイルOの流量がばらつくことが、より抑えられる。
突出部75は、少なくとも第1コーナ流路部14A,14Bに配置される部分を有する。本実施形態によれば、第1流路部11から第1コーナ流路部14A,14Bに流入したオイルOが、第1コーナ流路部14A,14Bの流路の幅方向の外側、つまりコーナ外側に偏って流れることを、突出部75により抑制できる。これにより、第1コーナ流路部14A,14Bおよびその下流側に位置する第2流路部12A,12Bを流れるオイルOの流量に、流路9の各部でばらつきが生じることを抑制できる。
リザーバ第1固定部19Aは、第3流路部13に配置される。リザーバ第1固定部19Aは、第3流路部13から上側に突出する。本実施形態では、第3流路部13が、第3流路部13のうち軸方向の両端部間に位置する中間部分において、リザーバ第1固定部19Aにより堰き止められる。すなわち第3流路部13は、リザーバ第1固定部19Aの軸方向一方側に位置する流路部分と、リザーバ第1固定部19Aの軸方向他方側に位置する流路部分と、を有する。
リザーバ第1固定部19Aは、リザーバ第1固定部19Aを軸方向に貫通する取付孔19aを有する。図示は省略するが、取付孔19aには、モータ収容部81に締め込まれるネジが通される。取付孔19aに通されるネジによって、リザーバ第1固定部19Aは、ハウジング6に固定される。なお取付孔19aには、軸方向に延びる円筒状の金属部材が埋め込まれてもよい。この場合、リザーバ第1固定部19Aを固定するネジは、金属部材に通される。
リザーバ第2固定部19Bは、第2流路部12Aに配置される。リザーバ第2固定部19Bは、第2流路部12Aから上側に突出する。具体的に、リザーバ第2固定部19Bは、一対の側壁部72のうち第2流路部12Aの軸方向内側に位置する側壁部72の部分から、上側に突出する。リザーバ第2固定部19Bは、板面が軸方向を向く板状である。
リザーバ第2固定部19Bは、凹部19bを有する。凹部19bは、リザーバ第2固定部19Bの上端から下側に窪む凹状である。凹部19bは、リザーバ第2固定部19Bを軸方向に貫通する。凹部19bの内縁部は、凹部19bの中心軸回りに延びる円弧状である。凹部19bの内縁部は、凹部19bの中心軸回りにおいて、180°を超える範囲にわたって延びる。凹部19bは、軸方向から見て、ステータコア本体32aの上側の固定部32bの貫通孔32cと重なる。凹部19bおよび貫通孔32cには、ステータコア32をモータ収容部81に固定するネジが右側から通される。凹部19bおよび貫通孔32cに通されるネジによって、ステータコア32およびリザーバ第2固定部19Bは、ハウジング6に固定される。
図3に示すように、支持リブ16は、底壁部71から下側に突出する。支持リブ16は、軸方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。支持リブ16の下側を向く端面は、ステータコア本体32aの外周面に上側から接触する。リザーバ10は、支持リブ16を介して、ステータコア32により下側から支持される。
案内部材77は、ハウジング6とリザーバ10との間に配置される。案内部材77は、鉛直方向において、モータ収容部81の頂壁部81bと、リザーバ10の底壁部71との間に位置する。案内部材77は、上方から見て、少なくとも一部がリザーバ10と重なる。案内部材77は、供給路92cの開口部92dに配置され、オイルOの流れを案内する。
図3に示すように、案内部材77は、貫通孔81eの一端部に配置される。本実施形態では案内部材77が、貫通孔81eの下端部に配置される。図3および図4に示すように、案内部材77は、筒状の案内筒78を有する。案内筒78は、有底筒状である。本実施形態において案内筒78は、中心軸Cが鉛直方向に延びる。案内筒78は、上側に開口し、下側が塞がれる有底筒状である。案内筒78は、周壁78aと、底壁78bと、を有する。周壁78aは、鉛直方向に延びる筒状である。底壁78bは、板面が鉛直方向を向く板状である。
周壁78aは、受入口78cと、噴出口78dと、係止突起78fと、を有する。つまり案内部材77は、受入口78cと、噴出口78dと、係止突起78fと、を有する。受入口78cは、周壁78aを貫通する。受入口78cは、周壁78aの前側部分に配置される。つまり受入口78cは、前側に開口する。受入口78cは、周壁78aの前側部分を中心軸Cに沿って切り欠くように開口する。受入口78cは、周壁78aの鉛直方向に沿う略全域にわたって配置される。受入口78cは、開口部92dから案内部材77の内部にオイルOを受け入れる。
噴出口78dは、周壁78aを貫通する。つまり噴出口78dは、案内筒78の周壁78aに開口する。噴出口78dは、周壁78aの後側部分に配置される。つまり噴出口78dは、後側に開口する。噴出口78dは、周壁78aの下側部分に開口する。本実施形態では噴出口78dが、角孔状である。本実施形態では、噴出口78dの中心軸C回りに沿う周方向の開口寸法が、中心軸Cに沿う軸方向の開口寸法よりも大きい。噴出口78dは、オイルOをステータ収容室83に噴出する。本実施形態では、ステータ収容室83に開口する供給路92cの開口部92dに、案内部材77を取り付けることにより、オイルOの噴出方向を所望の向きに容易に変えることができる。このため、案内部材77を通して噴出されるオイルOの向き等の自由度が高められる。本実施形態によれば、ステータ30等にオイルOを安定して供給でき、ステータ30等を効率的に冷却することができる。
噴出口78dは、リザーバ10にオイルOを噴出する。案内部材77は、リザーバ10を介してステータ30にオイルOを供給する。本実施形態によれば、案内部材77からリザーバ10を介して、ステータ30等に広範囲にオイルOを供給できる。ステータ30等の冷却効率が向上する。
図4に示すように、係止突起78fは、周壁78aの下側部分から、中心軸Cと直交する径方向の外側に突出する。係止突起78fは、周壁78aから後側に突出する。本実施形態では係止突起78fが、中心軸Cの軸方向に延びるリブ状である。係止突起78fは、一対設けられる。一対の係止突起78fは、中心軸C回りの周方向において、噴出口78dの両側に配置される。
図3に示すように、底壁78bは、傾斜面78eを有する。傾斜面78eは、案内筒78の中心軸Cと垂直な方向に拡がる図示しない仮想平面に対して、傾斜する。本実施形態では傾斜面78eが、上側を向き、水平方向に対して傾斜する。傾斜面78eは、平面状である。傾斜面78eは、底壁78bの略全域に配置される。傾斜面78eは、後側へ向かうに従い下側に位置する。噴出口78dは、周壁78aのうち傾斜面78eの下端部と対向する部分に配置される。本実施形態によれば、案内部材77に流入したオイルOが、底壁78bの傾斜面78eに沿って斜め下側へ流れ、周壁78aに開口する噴出口78dから噴出する。案内部材77の内部において、所望の向きにオイルOの噴出方向を変えることができる。これにより、ステータ30等に安定してオイルOを供給できる。
噴出口78dは、上方から見て、噴出口78dの全域がリザーバ10と重なる。例えば、モータ収容部81の内部のレイアウトなどの制約により、本実施形態のように開口部92dが、上方から見てリザーバ10と重ならない部分を有していても、開口部92dから案内部材77を介してオイルOをリザーバ10に効率よく供給することができる。
図2に示すように、リザーバ10の冷媒受入口76は、噴出口78dからオイルOを受け入れる。案内筒78は、冷媒受入口76の内縁部に接触することで、案内筒78の中心軸C回りに回り止めされる。具体的には、案内筒78の係止突起78fが、案内筒78の中心軸C回りにおいて、冷媒受入口76の内縁部と接触することにより、案内筒78が中心軸C回りに回転することが抑制される。すなわち、案内筒78と冷媒受入口76とは、案内筒78の中心軸C回りにおいて、所定以上に相対回転することが抑制される。本実施形態によれば、オイルOが噴出口78dから冷媒受入口76へ安定して供給される。案内筒78を回り止めするための別部材を追加することなく、簡素な構造により、供給路92cからリザーバ10へオイルOを安定して供給できる。また、冷媒受入口76の内縁部が案内筒78に接近して配置されるため、冷媒受入口76と案内筒78との間の隙間が小さくなり、この隙間からオイルOがリザーバ10の外部に漏れ出ることを抑制できる。
図5は、リザーバ10の変形例を示す。この変形例では、リザーバ10の壁部70が、底壁部71と、側壁部72と、を有する一方、フランジ部73と、頂壁部74と、突出部75と、を有していない。また底壁部71と側壁部72とは、単一の部材の部分である。底壁部71は、底壁部71から上側に突出する位置決め部71aを有する。位置決め部71aは、第1流路部11に位置する。位置決め部71aは、一対設けられる。一対の位置決め部71aは、第1流路部11が延びる方向つまり軸方向において、互いに間隔をあけて配置される。位置決め部71aは、底壁部71の前端部に配置される。特に図示しないが、位置決め部71aは、案内筒78の中心軸C回りの周方向において、係止突起78fと接触する。これにより、案内筒78は、中心軸C回りに回り止めされる。
また図5の変形例では、流路9が、第3流路部13を有していない。この変形例では、案内部材77の噴出口78dから後側へ噴出するオイルOの一部が、第1流路部11に位置する側壁部72の部分を上側へ乗り越え、ステータコア32のうちモータ軸J1の後側に位置する部分まで到達する。このため、第3流路部13を設けなくても、ステータコア32の後側部分にオイルOを供給できる。
図1に示すように、栓部材79は、モータ収容部81の頂壁部81bに取り付けられる。つまり栓部材79は、ハウジング6に取り付けられる。栓部材79は、例えば、柱状のプラグ部材等である。本実施形態では、図3に示すように貫通孔81eの一端部つまり下端部に、開口部92dおよび案内部材77が配置されており、貫通孔81eの他端部つまり上端部に、栓部材79が配置される。栓部材79は、貫通孔81eの他端側の開口を塞ぐ。なお図3においては、栓部材79の図示を省略する。本実施形態によれば、駆動装置1およびモータ2の製造時に、貫通孔81eを通してハウジング6の外部から、案内部材77を開口部92dに組み付けることができる。また案内部材77を組み付けた後、ハウジング6の外部から栓部材79を貫通孔81eに取り付けることで、貫通孔81eの他端側の開口を塞ぐことができる。このため、製造時の組立作業が容易である。
栓部材79は、貫通孔81eに取り外し可能に固定される。栓部材79を貫通孔81eから取り外すことにより、貫通孔81eを通して、ハウジング6の外部から案内部材77にアクセスできる。案内部材77は、貫通孔81eを通してハウジング6の外周面から取り外し可能である。本実施形態によれば、ハウジング6の外部から作業して、貫通孔81eの案内部材77を交換できる。例えば、噴出口78dからのオイルOの噴出方向を変更したり、新しい案内部材77に交換したりすることが可能になる。ハウジング6に複雑な加工を施すことなく、ステータ30等に効率よく安定してオイルOを供給できる。
図1に示すように、インバータユニット8は、ハウジング6と接続される。インバータユニット8は、モータ2と電気的に接続される。インバータユニット8は、モータ2の回転を制御する。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態の駆動装置100およびモータ200について、図面を参照して説明する。なお第2実施形態では、第1実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付して、その説明を省略する場合がある。
図6に示すように、本実施形態の駆動装置100は、モータ200の構成が前述の実施形態と異なる。モータ200は、リザーバ10を備えていない。このため案内部材77の噴出口78dは、リザーバ10に開口しない。案内部材77は、上方から見て、ステータ30と重なる。噴出口78dは、ステータ30の外面に向けて開口する。本実施形態によれば、冷えたオイルOをステータ30の外面に直接噴出することで、ステータ30の冷却効率を高めることができる。
供給路上流部92eは、少なくとも一部が隔壁61cに位置する。供給路下流部92fは、モータ収容部81の頂壁部81bに配置され、水平方向に延びる。本実施形態では供給路下流部92fが、モータ軸J1の軸方向に延びる。
図7は、モータ200の一部を模式的に示す上面図である。図7に示すように、ハウジング6の貫通孔81eは、モータ収容部81の頂壁部81bに互いに間隔をあけて複数設けられる。本実施形態では貫通孔81eが、供給路下流部92fが延びる方向つまり軸方向に沿って、等ピッチで3つ設けられる。各貫通孔81eは、供給路下流部92fと繋がる。各貫通孔81eの一部は、それぞれ、供給路下流部92fの一部を構成する。各貫通孔81eには、開口部92dがそれぞれ配置される。開口部92dは、供給路下流部92fが延びる方向つまり供給路92cの一部が延びる方向において、互いに間隔をあけて複数設けられる。
案内部材77は、複数設けられる。各案内部材77は、各開口部92dに配置される。本実施形態では、複数の案内部材77のうち第1の案内部材77が、コイルエンド33aの上側に配置される。第1の案内部材77は、上方から見て、コイルエンド33aと重なる。複数の案内部材77のうち第2の案内部材77は、コイルエンド33bの上側に配置される。第2の案内部材77は、上方から見て、コイルエンド33bと重なる。複数の案内部材77のうち第3の案内部材77は、ステータコア32の上側に配置される。第3の案内部材77は、上方から見て、ステータコア32と重なる。本実施形態によれば、複数の案内部材77により、ステータ30等の各部に安定してオイルOを供給できる。
図8は、モータ200の変形例の一部を模式的に示す上面図である。図8に示す変形例では、貫通孔81eが、供給路下流部92fが延びる方向つまり軸方向において、不等ピッチで4つ設けられる。また第3の案内部材77が、軸方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。この変形例によっても、複数の案内部材77により、ステータ30等の各部に安定してオイルOを供給できる。
複数の案内部材77のうち、少なくとも1つを、図9から図20に示す後述の各変形例の案内部材77A,77B,77C,77D,77E,77Fのいずれかとしてもよい。具体的には、例えば、コイルエンド33a,33b上に位置する案内部材77と、ステータコア32上に位置する案内部材77とで、互いに構成が異なっていてもよい。種類が異なる複数の案内部材77を、適宜組み合わせて用いることができる。
図9および図10は、案内部材77の第1変形例である案内部材77Aを模式的に示す。案内部材77Aの底壁78bは、複数の傾斜面78eを有する。複数の傾斜面78eは、互いに傾斜する向きが異なる。複数の傾斜面78eのうち、第1の傾斜面78eは、上側かつ水平方向一方側を向く。複数の傾斜面78eのうち、第2の傾斜面78eは、上側かつ水平方向他方側を向く。また噴出口78dは、複数設けられる。各噴出口78dは、周壁78aのうち各傾斜面78eの下端部と対向する部分にそれぞれ配置される。複数の噴出口78dは、案内筒78の中心軸C回りの周方向において、互いに間隔をあけて配置される。複数の噴出口78dは、中心軸C回りの周方向において、例えば等ピッチで配置される。すなわち、複数の噴出口78dは、案内筒78において互いに異なる向きに開口する。受入口78cは、周壁78aを貫通し、または、筒状の周壁78aの上側の開口により構成される。この第1変形例によれば、受入口78cから案内筒78の内部に流入したオイルOが、複数の傾斜面78eに沿ってそれぞれ異なる向きに流れ、各噴出口78dから互いに異なる方向に噴出される。このため、ステータ30等へ広範囲に効率よくオイルOを供給できる。
図11および図12は、案内部材77の第2変形例である案内部材77Bを模式的に示す。案内部材77Bの底壁78bは、曲面状の傾斜面78eを有する。詳しくは、傾斜面78eは、上側に凸となる円錐面状である。この第2変形例によれば、受入口78cから案内筒78の内部に流入したオイルOが、傾斜面78eにより中心軸C回りの周方向各位置に流れ、複数の噴出口78dから互いに異なる方向に噴出される。このため、ステータ30等へ広範囲に効率よくオイルOを供給できる。
図13および図14は、案内部材77の第3変形例である案内部材77Cを模式的に示す。案内部材77Cの底壁78bは、上側を向く面が中心軸Cと垂直な方向に拡がる。底壁78bは、傾斜面78eを有していない。噴出口78dは、底壁78bを中心軸Cの軸方向に沿って貫通し、鉛直方向に延びる。つまり噴出口78dは、底壁78bを貫通する。本実施形態によれば、案内筒78の内部から、底壁78bに開口する噴出口78dを通してオイルOが噴出させられることにより、例えば、案内部材77から遠い位置にまでオイルOを到達させたり、オイルOの噴出方向の精度を高めたりすることができる。また、例えば、案内筒78の中心軸Cが鉛直方向とは傾斜する方向や水平方向に延びる場合であっても、噴出口78dから噴出されるオイルOの流速を高めて、オイルOを所望の対象部材に正確に供給できる。したがって、ステータ30等に安定してオイルを供給できる。
図15および図16は、案内部材77の第4変形例である案内部材77Dを模式的に示す。案内部材77Dは、底壁78bを貫通する噴出口78dを複数有する。複数の噴出口78dは、底壁78bに互いに間隔をあけて配置される。この第4変形例においても、上述と同様の作用効果が得られる。
図17および図18は、案内部材77の第5変形例である案内部材77Eを模式的に示す。案内部材77Eは、底壁78bを貫通する噴出口78dを有する。噴出口78dは、案内筒78の中心軸Cに沿って案内筒78の内部から外部へ向かうに従い内径が大きくなる。本実施形態では噴出口78dは、底壁78bの上面から下側へ向かうに従い内径が大きくなる。この第5変形例によれば、上述と同様の作用効果が得られる。また、案内筒78の内部のオイルOが、噴出口78dを通ることでシャワー状に拡散して噴出させられる。このため、ステータ30等を冷却する効率が高められる。
図19および図20は、案内部材77の第6変形例である案内部材77Fを模式的に示す。案内部材77Fは、底壁78bを貫通する噴出口78dを有する。噴出口78dは、案内筒78の中心軸Cに沿って案内筒78の内部から外部へ向かうに従い内径が小さくなるテーパ孔部78gと、テーパ孔部78gの最も小径の部分と接続されるミスト発生孔部78hと、を有する。テーパ孔部78gは、円錐孔状であり、底壁78bの上面から下側へ向かうに従い内径が小さくなる。ミスト発生孔部78hは、円孔状であり、テーパ孔部78gの下端部に繋がる。この第6変形例によれば、案内部材77のオイルOが、噴出口78dを通ることでミスト状に噴出させられる。このため、ステータ30等を冷却する効率が高められる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
前述の実施形態では、冷媒がオイルOである例を挙げたが、これに限らず、オイルO以外の冷媒でもよい。
前述の第1実施形態では、リザーバ10の第1流路部11が延びる所定方向が、モータ軸J1の軸方向に相当する例を挙げたが、これに限らない。所定方向は、上方から見て、軸方向と直交する方向でもよく、軸方向に対して傾斜する方向でもよい。
前述の第1実施形態では、リザーバ10の頂壁部74が、上方から見て、底壁部71のうちモータ軸J1よりも前側に位置する部分と重なる例を挙げたが、これに限らず、頂壁部74が、上方から見て、底壁部71のうちモータ軸J1よりも後側に位置する部分と重なってもよい。頂壁部74は、底壁部71の全域にわたって、底壁部71に上側から間隔をあけて対向してもよい。
また、開口部92dの案内部材77から、リザーバ10を介して間接的にステータ30等にオイルOを供給する第1実施形態の構成と、リザーバ10を介さずに直接的にステータ30等にオイルOを供給する第2実施形態の構成とを、適宜組み合わせてもよい。
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例およびなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。