JP2004180479A - モータの冷却構造 - Google Patents

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孝 恒吉
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【課題】ステータのスロット内部も十分に冷却することのできる冷却構造を提供する。
【解決手段】モータケース6内に配置したステータ3と、ステータ3の内周において回転するロータ5と、モータケース6の内部空間8に冷媒をミスト状にして導入するミスト発生装置7と、ロータ5の回転軸1に取付けた羽根車2とを備える。羽根車2の回転により冷媒ミストを回転軸の軸方向に流し、ステータ3のスロット内部を冷却する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明はモータの冷却構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
モータのステータコイルを冷却するために、モータケース内にオイルチャンバを設け、オイルをコイルに向けて噴射するようにしたものが、特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−23615号公報
【0004】
【発明の解決すべき課題】
しかし、この冷却構造では、ステータのエンドコイルは冷却されても、内部のスロットにまで十分には冷却オイルが届かず、コイル内側の温度が上昇してしまうという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、ステータのスロット内部も十分に冷却することのできる冷却構造を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のモータの冷却構造は、モータケース内の内部空間に冷媒をミスト状にして導入する手段と、ロータの回転軸に取付けられ、ロータと一体に回転するた羽根車とを備える。前記羽根車の回転により冷媒ミストを回転軸の軸方向に流し、ステータ内部を冷却する。
【0007】
【作用・効果】
したがって、羽根車の回転により、冷媒ミストをステータの内部を通して軸方向に送り込むことができ、ステータの内側に位置するコイルまで、十分に冷却することができ、スロット内のコイル温度を低下させられる。また、ロータの回転を利用してオイルミストを圧送する羽根車を回転させるので、特別な駆動機構が必要なく、構成の簡略化とコストの低減が図れる。
【0008】
【実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0009】
まず、第1の実施形態を図1に示す。
【0010】
図1において、1はモータケース6の内部に配置され、ロータ5を支持する回転軸で、モータケース6の内周に固定したステータ3の内側で、前記ロータ5が同軸的に支持される。ステータ3にはコイル4が巻かれ、コイル4はステータ3の軸方向に延びるスロット3aに配置される。なお、スロット3aはステータ3の円周方向の全域に複数が等間隔で配置される。
【0011】
なお、図1は、理解しやすくするために、スロット3aのある上側断面と、ステータコアのある下側断面とが図示されている。
【0012】
ロータケース6は円筒型に形成され、ロータ5を挟んで、その一方の端部付近の上面には冷媒としてのオイルの導入路9aが、他方の端部付近の下面には同じく排出路9bが接続している。
【0013】
導入路9aの端部には、オイルミストの発生装置7として、例えば、超音波振動子15が備えられ、オイルを超音波振動させて微粒子状のオイルミストを生成し、モータケース6の内部空間8にオイルミストを導入する。なお、超音波振動子15は、例えば導入路9aからのオイルが溜められるオイル溜めに配置することで、オイルミストを効果的に発生させられる。
【0014】
前記回転軸1には羽根車2が設けられ、ロータ5の回転により一体に回転し、モータケース内に導入されたオイルミストを軸方向に圧送する。すなわち、羽根車2は回転軸1の軸流方向にオイルミストを送り出す。
【0015】
オイルミストはステータ3のスロット3aを通過して反対側に送り出され、ロータケース6の内部空間8の下側に滴下し、排出路9bより排出される。
【0016】
このように構成されているので、モータケース6の内部空間8に送り込まれるオイルは、オイルミスト発生装置7により霧化され、微粒子状のオイルミストとして内部空間8に導入され、かつその導入部位の近傍に配置された羽根車2がロータ5と一体に回転することにより、軸方向に圧送される。
【0017】
オイルミストは、噴霧流としてステータ3の各スロット3aを通過していき、このときコイル4と熱交換して、ステータ内部まで等しく冷却する。冷却により温度上昇したオイルミストは、ステータ3を通過して反対側の内部空間8に達し、下方に落下し、排出路9bより図示しないオイルのリザーバに戻され、再び図示しないポンプにより導入路9aへと循環される。
【0018】
なお、オイルミストの発生装置7の超音波振動子15の振動数に応じてオイルミストの粒径を調整(振動数を高くするほど粒径は小さくなる)することができ、最適な粒径となるように振動数を設定すればいよい。
【0019】
以上のように、この実施形態によれば、冷媒としてのオイルミストをステータ3の端部から反対側の端部へとスロット3aを通して送り込むことにより、ステータ3の内側に位置するコイル4まで、くまなく冷却することができ、全域的にコイル温度を低下させられる。
【0020】
また、羽根車2が導入路9aの下方近傍にあり、オイルが液滴となって落下する前に強力な軸流によりオイルを圧送するので、多くを噴霧流のまま圧送することで、効率よく冷却を行うことができる。
【0021】
また、ロータ5の回転を利用してオイルミストを圧送する羽根車2を回転させるので、特別な駆動機構が必要なく、構成の簡略化とコストの低減が図れる。
【0022】
なお、冷媒として供給されるオイルは、冷却だけでなく、回転軸1の軸受部の潤滑などにも寄与する。
【0023】
次に図2に示す第2の実施形態を説明する。
【0024】
この実施形態では、羽根車2の回転軸1に対する取付位置が異なり、羽根車2はロータ5の下流側に設けられ、ステータ3のスロット3aを通して上流側の導入路9aからオイルミストを吸引するように構成されている。
【0025】
この場合、導入路9aから、ロータ5の一方の端部側にある内部空間8に流入したオイルミストは、羽根車2の位置から離れているため、均一的に霧化した状態で、ステータ3の全周域からスロット3aを通過し、このためコイル4の冷却効率が全周的に均一化する。
【0026】
図3の第3の実施形態を説明する。
【0027】
この実施形態にあっては、導入路9aの上流には冷却オイルの流量を制御する制御弁13が設けられ、制御弁13はアクチュエータ13aによりその開度が調整され、これによりオイルの流量をコントロールできるようになっている。制御弁13により流量を調整されたオイルは、ミスト発生装置7において霧化され、モータケース6の内部空間8に導入される。
【0028】
冷媒としてのオイルは、リザーバ11に溜められ、ポンプ12により導入路9aに送り出される。また排出路9bはリザーバ11に接続し、モータケース6からのオイルを回収する。
【0029】
したがって、この実施形態では、ステータ3のコイル4を冷却するためのオイルミストの量を最適な状態に制御することが可能となる。
【0030】
このため、図4に示すような、制御弁13の駆動電流を制御する制御回路が備えられる。
【0031】
21はステータ3のコイル4に流す電流を測定するための電流センサであり、この出力はコントローラ20に供給される。コントローラ20はコイル電流の大きさに応じて制御弁13の開度を大きくするように、アクチュエータ13aに供給する制御弁開度信号の指令値を出力する。
【0032】
図5は、コイル4に一定の電流を流したときの、冷却用のオイルの流量とコイル温度の関係を示すものであり、コイル表面の冷却面に液膜が形成される範囲でオイル流量を最小としたときに冷却性能が最も良くなり(図中のA点)、コイル温度が最も低くなる。すなちわ、噴霧流を用いて最大限の冷却性能を得るためには、コイル冷却面に極力薄い液膜ができることが望ましく、冷却面にできる液膜の厚さは、噴霧された冷媒であるオイルの流量と、コイル4の発熱により表面から気化していくオイルの量との相関によって決まる。すなわち、冷却面からのオイルの気化量が供給量よりも多ければ、液膜は薄くなるし、供給量が過剰となると液膜は厚くなる。したがって、図中のA点の薄い液膜が維持される状態にオイルの供給量を制御する。
【0033】
図6は、コイル4に流す電流と冷却用のオイルの要求流量の関係を示すものであって、とくに、冷却例性能が最良となる、図5のA点における、コイル電流に対する要求流量の特性を示している。
【0034】
これからも理解されるように、モータのコイル4に流す電流値が大きくなるほど、冷却用のオイルの要求流量も大きくなり、したがって、コントローラ20はコイル電流に応じて制御弁13の開度が増大するように制御することで、最適な冷却性能を維持することができる。
【0035】
図7に示す第4の実施形態を説明する。
【0036】
この実施形態では、第3の実施形態に対して、制御弁13の代わりにオイルのインジェクタ14を設置し、前記コントローラ20からの信号により、インジェクタ14からオイル噴霧を噴射するようにしたものである。
【0037】
インジェクタ14はコントローラ20からの所定の周波数のオンオフ信号に基づいて開閉し、微細な噴孔よりオイルを噴霧し、オイルミストを生成する。したがって、このインジェクタ14は、制御弁13とミスト発生装置7の機能を併有する。なお、オイルの噴射量をオンオフ時間比率に正確に比例させるために、インジェクタ14にポンプ12から圧送されるオイルの圧力は、図示しないレギュレータなどにより一定圧に制御されることが望ましい。
【0038】
コントローラ20は冷却用のオイル要求流量に応じてオンオフ時間をデューティ制御し、オイル流量を増加するときには、オン比率が高まるように制御信号を出力する。
【0039】
したがってこの実施形態によれば、より微細なオイルの噴霧流を供給でき、冷却効率が高められるし、またミスト発生装置7をインジェクタ14が兼用するので、構成の簡略化も図れる。
【0040】
本発明は上記した実施形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内で、当業者がなしうるさまざまな変更、改良が含まれることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の構成図である。
【図2】第2の実施形態の構成図である。
【図3】第3の実施形態の構成図である。
【図4】同じくその制御回路のブロック図である。
【図5】コイル温度とオイル流量の関係を示す特性図である。
【図6】コイル電流と要求油量(冷媒量)の関係を示す特性図である。
【図7】第4の実施形態を示す構成図である。
【符号の説明】
1 回転軸
2 羽根車
3 ステータ
3a スロット
4 コイル
5 ロータ
6 モータケース
7 オイルミスト発生装置
8 内部空間
9a 導入路
9b 排出路
11 リザーバ
12 ポンプ
13 制御弁
14 インジェクタ
15 超音波振動子
20 コントローラ

Claims (10)

  1. モータの内部を冷媒により冷却する冷却構造において、
    モータケース内に配置したステータと、
    ステータの内周側において回転するロータと、
    モータケース内の内部空間に冷媒をミスト状にして導入する手段と、
    ロータの回転軸に取付けられ、ロータと一体に回転する羽根車と、を備え、
    前記羽根車の回転により冷媒ミストを回転軸の軸方向に流し、ステータ内部を冷却するようにしたことを特徴とするモータの冷却構造。
  2. 前記モータケースの内部空間には、軸方向の端部に冷媒の導入路が設けられ、ロータを挟んで反対側の端部に排出路が設けられ、前記冷媒をミスト状にする手段は前記導入路に設けられる請求項1に記載のモータの冷却構造。
  3. 前記羽根車は、前記ロータ上流の導入路側に配置され、下流側に向けて冷媒ミストを軸方向に圧送する請求項2に記載のモータの冷却構造。
  4. 前記羽根車は、前記ロータ下流の排出路側に配置され、上流側から冷媒ミストを軸方向に吸引する請求項2に記載のモータの冷却構造。
  5. 前記冷媒を圧送するポンプと、ポンプからの冷媒の導入量を制御する制御手段とが備えられ、モータの負荷に応じて流量を変化させる請求項1〜4のいずれか一つに記載のモータの冷却構造。
  6. 前記冷媒の導入量はステータ電流に応じて制御される請求項5に記載のモータの冷却構造。
  7. 前記冷媒をミスト状にする手段が、超音波振動子を備えたミスト発生装置である請求項1〜6のいずれか一つに記載のモータの冷却構造。
  8. 前記超音波振動子の振動数を発生させる冷媒ミストの要求粒径に応じて設定する請求項7に記載のモータの冷却構造。
  9. 前記冷媒をミスト状にする手段が、噴孔から冷媒を噴霧するインジェクタである請求項1〜6のいずれか一つに記載のモータの冷却構造。
  10. 前記冷媒がオイルである請求項1〜9のいずれか一つに記載のモータの冷却構造。
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