以下の説明では、各実施形態の駆動装置が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、鉛直方向を規定して説明する。すなわち、以下の各実施形態において説明する鉛直方向に対する相対位置関係は、駆動装置が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合に少なくとも満たしていればよい。
図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向である。+Z側は、鉛直方向上側であり、−Z側は、鉛直方向下側である。以下の説明では、鉛直方向上側を単に「上側」と呼び、鉛直方向下側を単に「下側」と呼ぶ。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって駆動装置が搭載される車両の前後方向である。以下の各実施形態において、+X側は、車両の前側であり、−X側は、車両の後側である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の左右方向、すなわち車幅方向である。以下の各実施形態において、+Y側は、車両の左側であり、−Y側は、車両の右側である。前後方向および左右方向は、鉛直方向と直交する水平方向である。
なお、前後方向の位置関係は、以下の各実施形態の位置関係に限られず、+X側が車両の後側であり、−X側が車両の前側であってもよい。この場合には、+Y側は、車両の右側であり、−Y側は、車両の左側である。
各図に適宜示すモータ軸J1は、鉛直方向と交差する方向に延びる。より詳細には、モータ軸J1は、鉛直方向と直交するY軸方向、すなわち車両の左右方向に延びる。以下の説明においては、特に断りのない限り、モータ軸J1に平行な方向を単に「軸方向」と呼び、モータ軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、モータ軸J1を中心とする周方向、すなわち、モータ軸J1の軸回りを単に「周方向」と呼ぶ。また、周方向のうち車両の左側(+Y側)から見て反時計回りに進む側を「周方向一方側」と呼び、周方向のうち車両の左側から見て時計回りに進む側を「周方向他方側」と呼ぶ。周方向一方側は、各図に適宜示す矢印θが進む側であり、周方向他方側は、矢印θが進む側と逆側である。なお、本明細書において、「平行な方向」は略平行な方向も含み、「直交する方向」は略直交する方向も含む。
<第1実施形態>
図1に示す本実施形態の駆動装置1は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、モータを動力源とする車両に搭載され、その動力源として使用される。図1に示すように、駆動装置1は、モータ2と、減速装置4および差動装置5を含む伝達装置3と、ハウジング6と、オイルポンプ96と、クーラー97と、冷媒噴射部10と、を備える。なお、本実施形態において、駆動装置1はインバータユニットを含まない。言い換えると、駆動装置1はインバータユニットと別体構造となっている。
ハウジング6は、内部にモータ2および伝達装置3を収容する。ハウジング6は、モータ収容部61と、ギヤ収容部62と、隔壁61cと、を有する。モータ収容部61は、内部に後述するロータ20およびステータ30を収容する部分である。モータ収容部61は、後述するステータコア32を径方向外側から囲む。ギヤ収容部62は、内部に伝達装置3を収容する部分である。ギヤ収容部62は、モータ収容部61の左側に位置する。モータ収容部61の底部61aは、ギヤ収容部62の底部62aより上側に位置する。隔壁61cは、モータ収容部61の内部とギヤ収容部62の内部とを軸方向に区画する。隔壁61cには、隔壁開口68が設けられる。隔壁開口68は、モータ収容部61の内部とギヤ収容部62の内部とを繋ぐ。隔壁61cは、ステータ30の左側に位置する。
ハウジング6は、内部に冷媒としてのオイルOを収容する。本実施形態では、モータ収容部61の内部およびギヤ収容部62の内部に、オイルOが収容される。ギヤ収容部62の内部における下部領域には、オイルOが溜るオイル溜りPが設けられる。オイル溜りPのオイルOは、後述する油路90によってモータ収容部61の内部に送られる。モータ収容部61の内部に送られたオイルOは、モータ収容部61の内部における下部領域に溜まる。モータ収容部61の内部に溜まったオイルOの少なくとも一部は、隔壁開口68を介してギヤ収容部62に移動し、オイル溜りPに戻る。
なお、本明細書において「ある部分の内部にオイルが収容される」とは、モータが駆動している最中の少なくとも一部において、ある部分の内部にオイルが位置していればよく、モータが停止している際には、ある部分の内部にオイルが位置していなくてもよい。例えば、本実施形態においてモータ収容部61の内部にオイルOが収容されるとは、モータ2が駆動している最中の少なくとも一部において、モータ収容部61の内部にオイルOが位置していればよく、モータ2が停止している際においては、モータ収容部61の内部のオイルOがすべて隔壁開口68を通ってギヤ収容部62に移動してしまっていてもよい。なお、後述する油路90によってモータ収容部61の内部へと送られたオイルOの一部は、モータ2が停止した状態において、モータ収容部61の内部に残っていてもよい。
オイルOは、後述する油路90内を循環する。オイルOは、減速装置4および差動装置5の潤滑用として使用される。また、オイルOは、モータ2の冷却用として使用される。オイルOとしては、潤滑油および冷却油の機能を奏するために、比較的粘度の低いオートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF:Automatic Transmission Fluid)と同等のオイルを用いることが好ましい。
図2および図3に示すように、ハウジング6は、モータ収容部61の内周面から径方向内側に突出する支持部65を有する。支持部65は、後述するステータコア本体32aの外周面と接触する。支持部65は、第1支持部63と、第2支持部64と、を含む。本実施形態において第1支持部63と第2支持部64とは、複数ずつ設けられる。第1支持部63と第2支持部64とは、例えば、2つずつ設けられる。2つの第1支持部63は、周方向に間隔を空けて配置される。2つの第2支持部64は、周方向に間隔を空けて配置される。本実施形態において第1支持部63は、モータ軸J1よりも上側で、かつ、モータ軸J1よりも後側に位置する。本実施形態において第2支持部64は、モータ軸J1よりも上側で、かつ、モータ軸J1よりも前側に位置する。
図3に示すように、第1支持部63および第2支持部64は、軸方向に延びる。第1支持部63の径方向内側面および第2支持部64の径方向内側面は、曲面である。図2に示すように、第1支持部63の径方向内側面および第2支持部64の径方向内側面は、軸方向に見て、モータ軸J1を中心とする円弧状である。第1支持部63の径方向内側面および第2支持部64の径方向内側面は、後述するステータコア本体32aの外周面と接触する。
図3に示すように、第1支持部63は、第1支持部63を周方向に貫通する第1貫通溝63aを有する。第1貫通溝63aは、径方向外側に窪む。第1貫通溝63aは、例えば、第1支持部63ごとに軸方向に間隔を空けて複数設けられる。第1貫通溝63aは、例えば、第1支持部63ごとに2つずつ設けられる。一方の第1支持部63に設けられた2つの第1貫通溝63aの各軸方向位置は、例えば、他方の第1支持部63に設けられた2つの第1貫通溝63aの各軸方向位置と同じである。
第2支持部64は、第2支持部64を周方向に貫通する第2貫通溝64aを有する。第2貫通溝64aは、径方向外側に窪む。第2貫通溝64aは、例えば、第2支持部64ごとに軸方向に間隔を空けて複数設けられる。第2貫通溝64aは、例えば、第2支持部64ごとに2つずつ設けられる。一方の第2支持部64に設けられた2つの第2貫通溝64aの各軸方向位置は、例えば、他方の第2支持部64に設けられた2つの第2貫通溝64aの各軸方向位置と同じである。
各第1支持部63における一方の第1貫通溝63aの軸方向位置と各第2支持部64における一方の第2貫通溝64aの軸方向位置とは、例えば、互いに同じである。各第1支持部63における他方の第1貫通溝63aの軸方向位置と各第2支持部64における他方の第2貫通溝64aの軸方向位置とは、例えば、互いに同じである。
なお、本明細書において「或るパラメータ同士が互いに同じである」とは、或るパラメータ同士が厳密に互いに同じである場合に加えて、或るパラメータ同士が互いに略同じである場合も含む。「或るパラメータ同士が互いに略同じである」とは、例えば、公差の範囲内で、或るパラメータ同士が僅かにずれていることを含む。
図2に示すように、ハウジング6は、モータ収容部61の内周面に設けられた突出部66を有する。突出部66は、モータ収容部61の内周面から径方向内側に突出する。突出部66は、後述するステータコア32に向かって突出する。突出部66は、後述する上側固定部32fと第1冷媒噴射部11との周方向の間に位置する。より詳細には、突出部66の径方向内端部は、上側固定部32fの上端部と第1冷媒噴射部11の上端部との周方向の間に位置する。
本実施形態においてモータ2は、インナーロータ型のモータである。モータ2は、ロータ20と、ステータ30と、ベアリング26,27と、を備える。ロータ20は、水平方向に延びるモータ軸J1を中心として回転可能である。ロータ20は、シャフト21と、ロータ本体24と、を有する。図示は省略するが、ロータ本体24は、ロータコアと、ロータコアに固定されるロータマグネットと、を有する。ロータ20のトルクは、伝達装置3に伝達される。
シャフト21は、モータ軸J1を中心として軸方向に沿って延びる。シャフト21は、モータ軸J1を中心として回転する。シャフト21は、内部に中空部22が設けられた中空シャフトである。シャフト21には、連通孔23が設けられる。連通孔23は、径方向に延びて中空部22とシャフト21の外部とを繋ぐ。
シャフト21は、ハウジング6のモータ収容部61とギヤ収容部62とに跨って延びる。シャフト21の左側の端部は、ギヤ収容部62の内部に突出する。シャフト21の左側の端部には、伝達装置3の後述する第1のギヤ41が固定される。シャフト21は、ベアリング26,27により回転可能に支持される。
ステータ30は、ロータ20と径方向に隙間を介して対向する。より詳細には、ステータ30は、ロータ20の径方向外側に位置する。ステータ30は、ステータコア32と、コイルアセンブリ33と、を有する。すなわち、モータ2は、ステータコア32と、コイルアセンブリ33と、を有する。ステータコア32は、ロータ20の径方向外側に位置する。ステータコア32は、ロータ20を囲む。ステータコア32は、モータ収容部61の内周面に固定される。
図2および図4に示すように、ステータコア32は、ステータコア本体32aと、固定部32bと、を有する。ステータコア本体32aの外周面は、ロータ20を囲む円筒状である。ステータコア本体32aの外周面は、例えば、モータ軸J1を中心とする円筒状である。図2に示すように、ステータコア本体32aは、軸方向に延びる円筒状のコアバック32dと、コアバック32dから径方向内側に延びる複数のティース32eと、を有する。コアバック32dの外周面は、ステータコア本体32aの外周面である。複数のティース32eは、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。
固定部32bは、ステータコア本体32aの外周面から径方向外側に突出する。固定部32bは、ハウジング6に固定される部分である。図4に示すように、固定部32bは、軸方向に延びる。固定部32bは、例えば、ステータコア本体32aの左側(+Y側)の端部からステータコア本体32aの右側(−Y側)の端部まで延びる。固定部32bは、周方向に沿って間隔を空けて複数設けられる。図2に示すように、固定部32bは、例えば、4つ設けられる。
固定部32bは、上側固定部32fと、下側固定部32gと、前側固定部32hと、後側固定部32iと、を含む。上側固定部32fは、ステータコア本体32aから上側に突出する。下側固定部32gは、ステータコア本体32aから下側に突出する。前側固定部32hは、ステータコア本体32aから前側に突出する。後側固定部32iは、ステータコア本体32aから後側に突出する。上側固定部32fと下側固定部32gと前側固定部32hと後側固定部32iとは、例えば、周方向の一周に亘って等間隔に配置される。
なお、本明細書において「或る対象が他の対象から或る側に突出する」とは、或る対象が、他の対象から離れるに従って或る側に位置する向きに突出すればよい。例えば、「固定部32bがステータコア本体32aから上側に突出する」とは、固定部32bが、ステータコア本体32aから径方向外側に離れるに従って上側に位置する向きに突出すればよい。すなわち、「固定部32bがステータコア本体32aから上側に突出する」とは、例えば、固定部32bがステータコア本体32aから鉛直方向真上に突出することと、固定部32bがステータコア本体32aから鉛直方向真上に対して90°未満の範囲内で傾いた方向に突出することと、を含む。
本実施形態のようにモータ軸J1を中心とする円筒状の面から径方向外側に固定部32bが突出する場合に、固定部32bがステータコア本体32aから径方向外側に離れるに従って上側に位置する向きに突出すると、固定部32bの径方向外端部は、モータ軸J1よりも上側に位置する。すなわち、本実施形態において「固定部32bがステータコア本体32aから上側に突出する」とは、固定部32bの径方向外端部がモータ軸J1よりも上側に位置することも含む。
上側固定部32fは、例えば、上側斜め前方に突出する。上側固定部32fの径方向外端部は、モータ軸J1よりも上側に位置する。上側固定部32fは、モータ収容部61の内周面から離れて配置される。図5に示すように、上側固定部32fの周方向の寸法は、径方向外側に向かうに従って小さくなる。上側固定部32fの径方向外端部の外形は、軸方向に見て、径方向外側に凸となる円弧状である。上側固定部32fの径方向外端部は、ステータコア本体32aの上端部よりも上側に位置する。
上側固定部32fの周方向他方側(−θ側)の面は、周方向他方側に向かうに従って下側に位置する。本実施形態において上側固定部32fの周方向他方側の面は、曲面である。上側固定部32fの周方向他方側の面は、ステータコア本体32aの外周面のうち、上側固定部32fの周方向他方側(−θ側)の端部との境界BPにおいて、ステータコア本体32aの外周面と滑らかに繋がる。
上側固定部32fの上側の端部は、ステータコア本体32aの上側の頂点VPよりも周方向一方側(+θ側)に位置する。頂点VPは、ステータコア本体32aの外周面のうち最も上側に位置する部分である。軸方向に見て、頂点VPは、ステータコア本体32aの外周面のうち、モータ軸J1を通って鉛直方向に延びる仮想線IL1と交わる部分である。
本実施形態では、上側固定部32fの周方向一方側(+θ側)の端部は、頂点VPよりも周方向一方側に位置する。上側固定部32fの周方向他方側(−θ側)の端部は、頂点VPよりも周方向他方側に位置する。すなわち、本実施形態において頂点VPの位置には、上側固定部32fが設けられる。より詳細には、頂点VPの位置には、上側固定部32fの周方向他方側の部分が設けられる。
そのため、頂点VPは、外部から視認できない。この場合、図5に示すように、頂点VPは、上側固定部32fが設けられた部分におけるステータコア本体32aの外周面を仮想的に示す仮想曲線IL4上に位置する。仮想曲線IL4は、モータ軸J1を中心とする円弧状であり、ステータコア本体32aの外周面のうち上側固定部32fの周方向両側に位置する部分同士を滑らかに繋ぐ。このように、固定部32b等によってステータコア本体32aの上側の頂点が視認できない場合には、ステータコア本体32aの外周面のうち視認できる部分から想定される仮想的な延長線上のうち最も上側に位置する部分を、ステータコア本体32aの上側の頂点とする。
本実施形態において、ステータコア本体32aの外周面のうち、上側固定部32fの周方向他方側(−θ側)の端部との境界BPは、頂点VPよりも周方向他方側に位置する。上側固定部32fとモータ収容部61の内周面との間の径方向の距離L2は、少なくとも一部において、境界BPとモータ収容部61の内周面との間の径方向の距離L1よりも小さい。本実施形態では、上側固定部32fのいずれの部分においても、距離L2は、距離L1よりも小さい。本実施形態において距離L1は、境界BPと突出部66の径方向内側面との間の径方向の距離である。
図2に示すように、下側固定部32gは、例えば、下側斜め後方に突出する。前側固定部32hは、例えば、前側斜め下方に突出する。後側固定部32iは、例えば、後側斜め上方に突出する。本実施形態において、下側固定部32g、前側固定部32h、および後側固定部32iは、モータ収容部61の内周面から離れて配置される。下側固定部32gの形状、前側固定部32hの形状、および後側固定部32iの形状は、例えば、上側固定部32fの形状と同様である。
固定部32bは、固定部32bを軸方向に貫通する貫通孔32cを有する。貫通孔32cには、軸方向に延びるボルト34が通される。ボルト34は、右側(−Y側)から貫通孔32cに通され、図6に示す雌ネジ穴35に締め込まれる。雌ネジ穴35は、隔壁61cに設けられる。ボルト34が雌ネジ穴35に締め込まれることで、固定部32bは、隔壁61cに固定される。このようにしてステータ30は、ボルト34によってハウジング6に固定される。
図1に示すように、コイルアセンブリ33は、周方向に沿ってステータコア32に取り付けられる複数のコイル31を有する。複数のコイル31は、図示しないインシュレータを介してステータコア32の各ティース32eにそれぞれ装着される。複数のコイル31は、周方向に沿って配置される。より詳細には、複数のコイル31は、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。図示は省略するが、コイルアセンブリ33は、各コイル31を結束する結束部材等を有してもよいし、各コイル31同士を繋ぐ渡り線を有してもよい。
コイルアセンブリ33は、ステータコア32から軸方向に突出するコイルエンド33a,33bを有する。コイルエンド33aは、ステータコア32から右側に突出する部分である。コイルエンド33bは、ステータコア32から左側に突出する部分である。コイルエンド33aは、コイルアセンブリ33に含まれる各コイル31のうちステータコア32よりも右側に突出する部分を含む。コイルエンド33bは、コイルアセンブリ33に含まれる各コイル31のうちステータコア32よりも左側に突出する部分を含む。図4に示すように、本実施形態においてコイルエンド33a,33bは、モータ軸J1を中心とする円環状である。図示は省略するが、コイルエンド33a,33bは、各コイル31を結束する結束部材等を含んでもよいし、各コイル31同士を繋ぐ渡り線を含んでもよい。
図1に示すように、ベアリング26,27は、ロータ20を回転可能に支持する。ベアリング26,27は、例えば、ボールベアリングである。ベアリング26は、ロータ20のうちステータコア32よりも右側に位置する部分を回転可能に支持するベアリングである。本実施形態においてベアリング26は、シャフト21のうちロータ本体24が固定される部分よりも右側に位置する部分を支持する。ベアリング26は、モータ収容部61のうちロータ20およびステータ30の右側を覆う壁部61bに保持される。
ベアリング27は、ロータ20のうちステータコア32よりも左側に位置する部分を回転可能に支持するベアリングである。本実施形態においてベアリング27は、シャフト21のうちロータ本体24が固定される部分よりも左側に位置する部分を支持する。ベアリング27は、隔壁61cに保持される。
伝達装置3は、ハウジング6のギヤ収容部62に収容される。伝達装置3は、モータ2に接続される。より詳細には、伝達装置3は、シャフト21の左側の端部に接続される。伝達装置3は、減速装置4と、差動装置5と、を有する。モータ2から出力されるトルクは、減速装置4を介して差動装置5に伝達される。
減速装置4は、モータ2に接続される。減速装置4は、モータ2の回転速度を減じて、モータ2から出力されるトルクを減速比に応じて増大させる。減速装置4は、モータ2から出力されるトルクを差動装置5へ伝達する。減速装置4は、第1のギヤ41と、第2のギヤ42と、第3のギヤ43と、中間シャフト45と、を有する。
第1のギヤ41は、シャフト21の左側の端部における外周面に固定される。第1のギヤ41は、シャフト21とともに、モータ軸J1を中心に回転する。中間シャフト45は、モータ軸J1と平行な中間軸J2に沿って延びる。中間シャフト45は、中間軸J2を中心として回転する。第2のギヤ42および第3のギヤ43は、中間シャフト45の外周面に固定される。第2のギヤ42と第3のギヤ43は、中間シャフト45を介して接続される。第2のギヤ42および第3のギヤ43は、中間軸J2を中心として回転する。第2のギヤ42は、第1のギヤ41に噛み合う。第3のギヤ43は、差動装置5の後述するリングギヤ51と噛み合う。
モータ2から出力されるトルクは、シャフト21、第1のギヤ41、第2のギヤ42、中間シャフト45、および第3のギヤ43をこの順に介して差動装置5のリングギヤ51へ伝達される。各ギヤのギヤ比およびギヤの個数等は、必要とされる減速比に応じて種々変更可能である。本実施形態において減速装置4は、各ギヤの軸芯が平行に配置される平行軸歯車タイプの減速機である。
差動装置5は、減速装置4を介しモータ2に接続される。差動装置5は、モータ2から出力されるトルクを車両の車輪に伝達するための装置である。差動装置5は、車両の旋回時に、左右の車輪の速度差を吸収しつつ、左右両輪の車軸55に同トルクを伝える。このように、本実施形態において伝達装置3は、減速装置4および差動装置5を介して、車両の車軸55にモータ2のトルクを伝達する。差動装置5は、リングギヤ51と、図示しないギヤハウジングと、図示しない一対のピニオンギヤと、図示しないピニオンシャフトと、図示しない一対のサイドギヤと、を有する。リングギヤ51は、モータ軸J1と平行な差動軸J3を中心として回転する。リングギヤ51には、モータ2から出力されるトルクが減速装置4を介して伝えられる。
モータ2には、ハウジング6の内部においてオイルOが循環する油路90が設けられる。油路90は、オイル溜りPからオイルOをモータ2に供給し、再びオイル溜りPに導くオイルOの経路である。油路90は、モータ収容部61の内部とギヤ収容部62の内部とに跨って設けられる。
なお、本明細書において「油路」とは、オイルの経路を意味する。したがって、「油路」とは、定常的に一方向に向かうオイルの流動を作る「流路」のみならず、オイルを一時的に滞留させる経路およびオイルが滴り落ちる経路をも含む概念である。オイルを一時的に滞留させる経路とは、例えば、オイルを貯留するリザーバ等を含む。
油路90は、第1の油路91と、第2の油路92と、を有する。第1の油路91および第2の油路92は、それぞれハウジング6の内部でオイルOを循環させる。第1の油路91は、かき上げ経路91aと、シャフト供給経路91bと、シャフト内経路91cと、ロータ内経路91dと、を有する。また、第1の油路91の経路中には、第1のリザーバ93が設けられる。第1のリザーバ93は、ギヤ収容部62内に設けられる。
かき上げ経路91aは、差動装置5のリングギヤ51の回転によってオイル溜りPからオイルOをかき上げて、第1のリザーバ93でオイルOを受ける経路である。第1のリザーバ93は、上側に開口する。第1のリザーバ93は、リングギヤ51がかき上げたオイルOを受ける。また、モータ2の駆動直後などオイル溜りPの液面Sが高い場合等には、第1のリザーバ93は、リングギヤ51に加えて第2のギヤ42および第3のギヤ43によってかき上げられたオイルOも受ける。
シャフト供給経路91bは、第1のリザーバ93からシャフト21の中空部22にオイルOを誘導する。シャフト内経路91cは、シャフト21の中空部22内をオイルOが通過する経路である。ロータ内経路91dは、オイルOがシャフト21の連通孔23からロータ本体24の内部を通過して、ステータ30に飛散する経路である。
シャフト内経路91cにおいて、ロータ20の内部のオイルOには、ロータ20の回転に伴い遠心力が付与される。これにより、オイルOは、ロータ20から径方向外側に連続的に飛散する。また、オイルOの飛散に伴い、ロータ20内部の経路が負圧となり、第1のリザーバ93に溜るオイルOが、ロータ20の内部に吸引され、ロータ20内部の経路にオイルOが満たされる。
ステータ30に到達したオイルOは、ステータ30から熱を奪う。ステータ30を冷却したオイルOは、下側に滴下され、モータ収容部61内の下部領域に溜る。モータ収容部61内の下部領域に溜ったオイルOは、隔壁61cに設けられた隔壁開口68を介してギヤ収容部62に移動する。以上のようにして、第1の油路91は、オイルOをロータ20およびステータ30に供給する。
第2の油路92においてオイルOは、オイル溜りPから引き上げられてステータ30に供給される。第2の油路92には、オイルポンプ96と、クーラー97と、冷媒噴射部10と、が設けられる。第2の油路92は、第1の流路92aと、第2の流路92bと、第3の流路92cと、第4の流路94と、を有する。
第1の流路92a、第2の流路92b、および第3の流路92cは、ハウジング6の壁部に設けられる。第1の流路92aは、オイル溜りPとオイルポンプ96とを繋ぐ。第2の流路92bは、オイルポンプ96とクーラー97とを繋ぐ。第3の流路92cは、クーラー97と第4の流路94とを繋ぐ。第3の流路92cは、例えば、モータ収容部61の壁部のうち前側(+X側)の壁部に設けられる。
第4の流路94は、隔壁61cに設けられる。第4の流路94は、冷媒噴射部10のうち後述する第1冷媒噴射部11と第2冷媒噴射部12とを繋ぐ。図6に示すように、第4の流路94は、流入部94aと、第1分岐部94cと、第2分岐部94fと、を有する。流入部94aは、第4の流路94のうち第3の流路92cからオイルOが流入する部分である。流入部94aは、第3の流路92cから後側(−X側)に延びる。流入部94aは、シャフト21の前側(+X側)に位置し、径方向のうち前後方向に直線状に延びる。流入部94aの内径は、前側の端部において大きくなっている。本実施形態において流入部94aの前側の端部は、流入部94aの径方向外側の端部である。
流入部94aの前側(+X側)の端部は、固定部32bよりも径方向外側に位置する。流入部94aの後側(−X側)の端部は、固定部32bよりも径方向内側に位置する。すなわち、本実施形態において流入部94aは、固定部32bよりも径方向外側から固定部32bよりも径方向内側まで前後方向に延びる。流入部94aは、前側固定部32hよりも上側に位置する。
流入部94aの後側(−X側)の端部は、第1分岐部94cと第2分岐部94fとがそれぞれ繋がる接続部94bである。流入部94aの内径は、接続部94bにおいて大きくなっている。接続部94bは、固定部32bよりも径方向内側に位置する。
流入部94aのうち接続部94bを除く部分は、例えば、ハウジング6の前側(+X側)からドリルで穴加工を施されて作られる。流入部94aの前側の端部は、ボルト95aが締め込まれることで塞がれる。流入部94aの接続部94bは、例えば、隔壁61cの左側(+Y側)からドリルで穴加工を施されて作られる。図示は省略するが、接続部94bの左側の端部は、ボルトが締め込まれることで塞がれる。
第1分岐部94cは、流入部94aから分岐して後述する第1冷媒噴射部11まで延びる部分である。第1分岐部94cは、流入部94aの後側(−X側)の端部、すなわち接続部94bから上側斜め後方に延びる。第1分岐部94cは、隔壁61cのうち、上側固定部32fよりも下側で、かつ、シャフト21の上側に位置する部分を通って、隔壁61cの上側の端部まで延びる。第1分岐部94cの上側の端部における径方向位置は、固定部32bの径方向位置とほぼ同じである。第1分岐部94cの上側の端部は、上側固定部32fよりも後側に位置する。
第1分岐部94cは、接続部94bから上側斜め後方に直線状に延びる延伸部94dと、延伸部94dの上側の端部に繋がる接続部94eと、を有する。接続部94eは、第1分岐部94cの上側の端部であり、後述する第1冷媒噴射部11が繋がる部分である。接続部94eの内径は、延伸部94dの内径よりも大きい。接続部94eは、例えば、ハウジング6の上側からドリルで穴加工が施されることで作られる。接続部94eの上側の端部は、ボルト95bが締め込まれることで塞がれる。延伸部94dは、例えば、ハウジング6の上側から接続部94eの内部を介して、ドリルで下側斜め前方に穴加工が施されることで作られる。
第2分岐部94fは、流入部94aから分岐して後述する第2冷媒噴射部12まで延びる部分である。本実施形態において第2分岐部94fは、接続部94bから前側斜め上方に延びる。第2分岐部94fは、前後方向に対して右側(−Y側)に傾いて直線状に延びる。第2分岐部94fの前側(+X側)の端部における径方向位置は、固定部32bの径方向位置とほぼ同じである。第2分岐部94fの前側(+X側)の端部は、前側固定部32hよりも上側に位置する。第2分岐部94fの前側の端部と前側固定部32hとは、前後方向においてほぼ同じ位置に配置される。第2分岐部94fは、例えば、隔壁61cの左側(+Y側)から、接続部94bの内部を介してドリルで穴加工が施されることで作られる。
第4の流路94において、流入部94aの後側部分、延伸部94dのうち上側の端部を除く部分、および第2分岐部94fの後側部分は、隔壁61cのうち固定部32bよりも径方向内側に位置する部分に設けられる。すなわち、本実施形態において第4の流路94は、固定部32bよりも径方向内側を通る部分を有する。
図1に示すように、冷媒噴射部10は、軸方向に延びる。冷媒噴射部10の左側の端部は、隔壁61cに固定される。図4に示すように、冷媒噴射部10は、第1冷媒噴射部11と、第2冷媒噴射部12と、を含む。すなわち、駆動装置1は、第1冷媒噴射部11と、第2冷媒噴射部12と、を備える。
本実施形態において第1冷媒噴射部11および第2冷媒噴射部12は、モータ軸J1の軸方向に延びるパイプである。より詳細には、第1冷媒噴射部11および第2冷媒噴射部12は、軸方向に直線状に延びる円筒状である。第1冷媒噴射部11と第2冷媒噴射部12とは、互いに平行である。図2に示すように、第1冷媒噴射部11および第2冷媒噴射部12は、ハウジング6の内部に収容される。第1冷媒噴射部11および第2冷媒噴射部12は、ステータ30の径方向外側に位置する。第1冷媒噴射部11と第2冷媒噴射部12とは、互いに周方向に間隔を空けて配置される。第1冷媒噴射部11の径方向位置と第2冷媒噴射部12の径方向位置とは、例えば、互いに同じである。
なお、本明細書において「第1冷媒噴射部および第2冷媒噴射部がモータ軸の軸方向に直線状に延びる」とは、第1冷媒噴射部および第2冷媒噴射部が厳密に軸方向に直線状に延びる場合に加えて、第1冷媒噴射部および第2冷媒噴射部が略軸方向に直線状に延びる場合も含む。すなわち、本実施形態において「第1冷媒噴射部11および第2冷媒噴射部12が軸方向に直線状に延びる」とは、例えば、第1冷媒噴射部11および第2冷媒噴射部12が軸方向に対して僅かに傾いて延びていてもよい。この場合、第1冷媒噴射部11が軸方向に対して傾く向きと第2冷媒噴射部12が軸方向に対して傾く向きとは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
本実施形態において第1冷媒噴射部11は、ステータ30の上側に位置する。ここで、本明細書において「或る対象が他の対象の所定方向一方側に位置する」とは、駆動装置が水平面に配置された状態で、或る対象と他の対象とを所定方向一方側から見た際に、或る対象と他の対象とが互いに重なり、かつ、或る対象が他の対象よりも手前側に位置することを含む。すなわち、本実施形態では、駆動装置1が水平面に配置された状態で、第1冷媒噴射部11とステータ30とを上側から見た際、第1冷媒噴射部11とステータ30とは、互いに重なり、かつ、第1冷媒噴射部11は、ステータ30よりも手前側に位置する。なお、本明細書において「駆動装置が水平面に配置された状態」とは、駆動装置が搭載された車両が水平な路面上に配置されることを含む。
第1冷媒噴射部11は、第2冷媒噴射部12よりも上側に位置する。本実施形態において第1冷媒噴射部11の径方向位置は、固定部32bの径方向位置と同じである。第1冷媒噴射部11は、上側固定部32fの後側(−X側)に位置する。第1冷媒噴射部11は、上側固定部32fの周方向他方側(−θ側)に位置する。第1冷媒噴射部11の径方向外端部における径方向位置は、上側固定部32fの径方向外端部における径方向位置とほぼ同じである。第1冷媒噴射部11は、上側固定部32fと第1支持部63との周方向の間に位置する。本実施形態において第1支持部63は、第1冷媒噴射部11の周方向他方側に位置する。
図7に示すように、第1冷媒噴射部11は、第1パイプ本体部11aと、第1パイプ本体部11aの左側(+Y側)の端部に設けられた小径部11bと、第1パイプ本体部11aの右側(−Y側)の端部に設けられた小径部11cと、を有する。
小径部11bは、第1冷媒噴射部11の左側(+Y側)の端部である。小径部11cは、第1冷媒噴射部11の右側(−Y側)の端部である。小径部11b,11cの外径は、第1パイプ本体部11aの外径よりも小さい。第1冷媒噴射部11は、小径部11bが隔壁61cに右側から挿し込まれて、隔壁61cに固定される。小径部11bは、左側に開口する。図6に示すように、小径部11bは、第1分岐部94cの接続部94eに開口する。これにより、第1冷媒噴射部11は、第4の流路94と繋がる。
図7に示すように、第1冷媒噴射部11の右側(−Y側)の端部には、取付部材16が設けられる。取付部材16は、板面が軸方向を向く長方形板状である。取付部材16は、左側(+Y側)の面から右側に窪む凹部16aを有する。凹部16aには、第1冷媒噴射部11の右側の端部、すなわち小径部11cが嵌め合わされて固定される。第1冷媒噴射部11の右側の端部は、取付部材16によって塞がれる。
取付部材16は、取付部材16を軸方向に貫通する孔部16bを有する。図4に示すように、孔部16bには、右側(−Y側)からボルト18が通される。ボルト18は、孔部16bを貫通して、図2に示す第1支持部63に右側から締め込まれる。ボルト18が第1支持部63に締め込まれることで、取付部材16は、第1支持部63に固定される。これにより、第1冷媒噴射部11の右側の端部は、取付部材16を介してモータ収容部61に固定される。
図7に示すように、第1冷媒噴射部11は、供給口13と、第1噴射口14と、を有する。供給口13と第1噴射口14とは、第1冷媒噴射部11の外側面に設けられる。供給口13および第1噴射口14は、例えば、円形状である。供給口13および第1噴射口14からは、第1冷媒噴射部11内に流入したオイルOが吐出される。供給口13および第1噴射口14は、第1冷媒噴射部11の壁部を内周面から外周面まで貫通する孔の開口部のうち、第1冷媒噴射部11の外周面に開口する開口部である。具体的には、図5に示すように、第1噴射口14は、第1冷媒噴射部11の壁部を内周面から外周面まで貫通する孔11dの開口部のうち、第1冷媒噴射部11の外周面に開口する開口部である。
図7に示すように、本実施形態において供給口13は、第1パイプ本体部11aの軸方向の両端部に複数ずつ設けられる。供給口13は、例えば、第1パイプ本体部11aの軸方向の両端部に4つずつ設けられる。第1パイプ本体部11aの右側(−Y側)の端部に設けられた4つの供給口13は、周方向に沿ってジグザグに配置される。第1パイプ本体部11aの右側の端部に設けられた4つの供給口13は、真下に開口する1つの供給口13と、下側斜め前方に開口する2つの供給口13と、下側斜め後方に開口する1つの供給口13と、を含む。第1パイプ本体部11aの左側(+Y側)の端部に設けられた4つの供給口13は、軸方向の位置を除いて、第1パイプ本体部11aの右側の部分に設けられた4つの供給口13と同様に配置される。
図4に示すように、複数の供給口13のうち右側(−Y側)に設けられる4つの供給口13は、コイルエンド33aの上側に位置する。複数の供給口13のうち左側(+Y側)に設けられる4つの供給口13は、コイルエンド33bの上側に位置する。そのため、供給口13から吐出されたオイルOは、コイルエンド33a,33bに上側から供給される。このようにして供給口13は、コイルエンド33a,33bにオイルOを供給する。したがって、コイルエンド33a,33bを冷却することができる。
特に、本実施形態では、第1冷媒噴射部11は、ステータ30の上側に位置するため、供給口13からのオイルOをコイルエンド33a,33bの上側から供給できる。これにより、供給口13からのオイルOをコイルエンド33a,33bの上側から下側に重力を利用して流すことができる。したがって、コイルエンド33a,33b全体にオイルOを供給しやすく、コイルエンド33a,33b全体を冷却しやすい。
また、本実施形態によれば、第1冷媒噴射部11の供給口13は、各コイルエンド33a,33bの上側に複数ずつ配置される。そのため、第1冷媒噴射部11からコイルエンド33a,33bに供給されるオイルOの量を多くできる。これにより、発熱体であるコイル31を好適に冷却でき、ステータ30をより好適に冷却できる。
また、本実施形態によれば、各コイルエンド33a,33bの上側に位置する複数の供給口13は、周方向に沿ってジグザグに配置される。そのため、周方向に沿って配置される複数の供給口13の軸方向位置が交互にずれて配置される。これにより、各コイルエンド33a,33bの上側に位置する複数の供給口13の軸方向位置が互いに同じである場合よりも、各コイルエンド33a,33bの全体にオイルOを供給しやすい。
また、本実施形態によれば、各コイルエンド33a,33bの上側に位置する供給口13は、下側斜め前方を向く供給口13と、下側斜め後方を向く供給口13と、を含む。そのため、複数の供給口13から供給されるオイルOをコイルエンド33a,33bの前側部分および後側部分の両方に供給しやすく、コイルエンド33a,33bの全体にオイルOを供給しやすい。これにより、コイルエンド33a,33bをより好適に冷却でき、ステータ30をさらに好適に冷却できる。
第1噴射口14は、ステータコア32にオイルOを噴射する噴射口である。すなわち、第1冷媒噴射部11の噴射口は、第1噴射口14を含む。第1噴射口14は、第1冷媒噴射部11のうち径方向外側から見てステータコア32と重なる部分に設けられる。本実施形態において第1噴射口14は、第1パイプ本体部11aに、軸方向に間隔を空けて2つ設けられる。2つの第1噴射口14は、第1パイプ本体部11aの軸方向一端部に設けられた複数の供給口13と、第1パイプ本体部11aの軸方向他端部に設けられた複数の供給口13との軸方向の間に位置する。
図5に示すように、第1噴射口14は、上側固定部32fの周方向他方側に位置する。すなわち、上側固定部32fは、第1噴射口14の周方向一方側に位置する。第1噴射口14は、上側固定部32fの後側に間隔を空けて対向して配置される。第1噴射口14は、ステータコア本体32aの頂点VPよりも周方向他方側(−θ側)に位置する。第1噴射口14は、上側固定部32fの上側の端部よりも下側に位置する。
第1噴射口14が開口する向きD1は、鉛直方向真下を向く向きよりも周方向一方側(+θ側)に傾いた向きである。本実施形態においてステータコア32にオイルOを噴射する噴射口のうちで第1冷媒噴射部11の噴射口は、鉛直方向真下を向く向きよりも周方向一方側に傾いた向きに開口する第1噴射口14のみを含む。
第1噴射口14が開口する向きD1は、例えば、モータ軸J1を向く向きに対して、周方向一方側に傾いた向きである。モータ軸J1を向く向きとは、径方向内側向きである。第1冷媒噴射部11においてモータ軸J1を向く向きとは、例えば、仮想線IL3に沿って径方向内側を向く向きを含む。仮想線IL3は、軸方向に見て、モータ軸J1と第1冷媒噴射部11の中心点CPとを通って径方向に延びる仮想線である。中心点CPは、軸方向に見て、円筒状の第1冷媒噴射部11の中心に位置する点である。
第1噴射口14が開口する向きD1は、ステータコア本体32aの外周面のうち、上側固定部32fの周方向他方側(−θ側)の端部との境界BPよりも周方向他方側に位置する部分を向く向きである。
ここで、軸方向に見て、第1噴射口14とモータ軸J1とを通る仮想線IL2が、ステータコア本体32aの外周面と交わる点を交点IPとする。交点IPは、第1噴射口14の径方向内側に位置する部分である。仮想線IL2は、軸方向に見て、第1噴射口14の中心とモータ軸J1とを通り、径方向に延びる。本実施形態において第1噴射口14が開口する向きD1は、ステータコア本体32aの外周面のうち境界BPと交点IPとの周方向の間に位置する領域Rgを向く向きである。領域Rgは、ステータコア本体32aの外周面のうち、境界BPから第1噴射口14の径方向内側に位置する部分までの間の部分である。領域Rgは、周方向他方側(−θ側)に向かうに従って下側に位置する。本実施形態において第1噴射口14を向きD1に沿ってステータコア本体32aの外周面に投影した投影領域Paは、全体が領域Rgに位置する。
なお、本明細書において「噴射口が開口する向き」とは、噴射口の中心を通り、噴射口の中心に対して垂直な法線に沿った向きを含む。例えば、図5において向きD1として示す二点鎖線は、第1噴射口14の中心を通り、第1噴射口14の中心に対して垂直な法線である。
本実施形態によれば、第1噴射口14が開口する向きD1は、鉛直方向真下を向く向きよりも周方向一方側に傾いた向きであり、かつ、ステータコア本体32aの外周面のうち、上側固定部32fの周方向他方側の端部との境界BPよりも周方向他方側に位置する部分を向く向きである。第1噴射口14が鉛直方向真下を向く向きよりも周方向一方側に傾いた向きに開口することで、図8に示すように、第1噴射口14から噴射されたオイルO1をステータコア32の外周面に沿って周方向一方側に流しやすくできる。そのため、第1噴射口14から噴射されたオイルO1が、第1噴射口14の周方向一方側に位置する上側固定部32fを乗り越えやすくできる。
一方、第1噴射口14は、ステータコア本体32aの外周面のうち境界BPよりも周方向他方側に位置する部分に向けて開口する。そのため、第1噴射口14が上側固定部32fに向けて開口する場合に比べて、第1噴射口14から噴射されたオイルO1が上側固定部32fを乗り越えにくくできる。また、第1噴射口14が上側固定部32fの上側の端部よりも下側に位置するため、第1噴射口14から噴射されたオイルO1が上側固定部32fを乗り越えにくくできる。
以上のように、上側固定部32fに対して、第1噴射口14の位置および第1噴射口14が開口する向きD1を決めることで、第1噴射口14から噴射されたオイルO1の全てが上側固定部32fを乗り越えることを抑制しつつ、第1噴射口14から噴射されたオイルO1の全てが上側固定部32fを乗り越えないことも抑制できる。これにより、第1噴射口14から噴射されたオイルO1を、上側固定部32fを乗り越えるオイルO1aと、上側固定部32fを乗り越えないオイルO1bと、に分岐させやすくできる。
上側固定部32fを乗り越えるオイルO1aは、上側固定部32fを周方向一方側に乗り越えて、ステータコア本体32aの前側部分の外周面に沿って前側かつ下側に流れる。上側固定部32fを乗り越えないオイルO1bは、上側固定部32fの周方向他方側の面の途中で、流れる向きが逆向き、すなわち周方向他方側向きになり、ステータコア本体32aの後側部分の外周面に沿って後側かつ下側に流れる。これにより、ステータコア32の上側部分から、ステータコア本体32aの外周面に沿って周方向両側にオイルOを好適に流すことができる。したがって、第1冷媒噴射部11によって、ステータコア32の全体にオイルOを供給しやすくでき、ステータコア32の冷却効率を向上できる。
図9に示すように、上側固定部32fを乗り越えないオイルO1bは、例えば、上側固定部32fの周方向他方側の面の途中で周方向他方側に折り返す際、第1噴射口14よりも右側(+Y側)に流れるオイルO1bと、第1噴射口14よりも左側(−Y側)に流れるオイルO1bと、に分岐する。
また、本実施形態によれば、第1噴射口14が開口する向きD1は、モータ軸J1を向く向きに対して、周方向一方側に傾いた向きである。そのため、第1噴射口14から噴射されたオイルO1を、ステータコア32の外周面に沿って、より周方向一方側に流しやすくできる。これにより、上側固定部32fを乗り越えるオイルO1aの量を多くできる。
また、本実施形態によれば、上側固定部32fとモータ収容部61の内周面との間の径方向の距離L2は、少なくとも一部において、境界BPとモータ収容部61の内周面との間の径方向の距離L1よりも小さい。そのため、上側固定部32fとモータ収容部61の内周面との隙間が比較的狭くなる。これにより、上側固定部32fとモータ収容部61の内周面との隙間を介して、上側固定部32fを乗り越えられるオイルO1aの量を制限できる。したがって、上側固定部32fを乗り越えるオイルO1aの量が多くなり過ぎることを抑制できる。一方、上側固定部32fとモータ収容部61の内周面との隙間を通過できないオイルO1は、上側固定部32fを乗り越えられず、周方向他方側に流れるオイルO1bとなる。これにより、上側固定部32fを乗り越えないオイルO1bの量を増加させることができる。したがって、ステータコア32の上側部分から周方向両側にそれぞれ流れるオイルOの量を均等にしやすい。
また、本実施形態によれば、上側固定部32fの周方向他方側の面は、周方向他方側に向かうに従って下側に位置する。そのため、上側固定部32fを乗り越えないオイルO1bを上側固定部32fの周方向他方側の面に沿って周方向他方側に流しやすくできる。これにより、上側固定部32fを乗り越えないオイルO1bがステータコア32の上側部分において溜まることを抑制でき、オイルO1bをステータコア本体32aの後側の外周面に好適に供給することができる。したがって、ステータコア32の冷却効率をより向上できる。
また、本実施形態によれば、ステータコア本体32aの外周面のうち、境界BPから、第1噴射口14の径方向内側に位置する部分、すなわち交点IPまでの間の部分は、周方向他方側に向かうに従って下側に位置する。そのため、上側固定部32fの周方向他方側の面に沿って周方向他方側に流れてステータコア本体32aの外周面に流れたオイルO1bを、重力を利用して、ステータコア本体32aの外周面に沿って周方向他方側に流すことができる。これにより、オイルO1bがステータコア32の上側部分において溜まることをより抑制でき、オイルO1bをステータコア本体32aの後側の外周面に、より好適に供給することができる。したがって、ステータコア32の冷却効率をより向上できる。
また、本実施形態によれば、上側固定部32fの周方向他方側の面は、曲面であり、かつ、境界BPにおいて、ステータコア本体32aの外周面と滑らかに繋がる。そのため、上側固定部32fの周方向他方側の面の途中で周方向他方側に向きを変えて流れるオイルO1bを、上側固定部32fの周方向他方側の面からステータコア本体32aの外周面へと滑らかに流すことができる。これにより、上側固定部32fを乗り越えないオイルO1bをより周方向他方側に流しやすくできる。したがって、ステータコア32の冷却効率をより向上できる。
本実施形態では、上側固定部32fの周方向他方側の面から周方向他方側に向かって、ステータコア本体32aの外周面のうち第1冷媒噴射部11よりも周方向他方側に位置する部分に到達するまでの間において、オイルO1bが流れる面は、周方向他方側に向かって滑らかに延びる曲面であり、かつ、周方向他方側に向かうに従って下側に位置する。そのため、上側固定部32fの周方向他方側の面において周方向他方側へと向きを変えたオイルO1bを、重力を利用して好適に周方向他方側に流すことができる。
また、本実施形態によれば、上側固定部32fの上側の端部は、ステータコア本体32aの上側の頂点VPよりも周方向一方側に位置し、第1噴射口14は、頂点VPよりも周方向他方側に位置する。そのため、本実施形態のように、上側固定部32fの周方向他方側の面から周方向他方側に向かって、ステータコア本体32aの外周面のうち第1冷媒噴射部11よりも周方向他方側に位置する部分に到達するまでの間において、オイルO1bが流れる面を、周方向他方側に向かうに従って下側に位置する面とする構成を採用しやすい。
また、本実施形態によれば、第1冷媒噴射部11の周方向他方側に位置する第1支持部63は、第1支持部63を周方向に貫通する第1貫通溝63aを有する。そのため、第1冷媒噴射部11よりも周方向他方側に流れてきたオイルO1bを、第1貫通溝63aを介して、第1支持部63よりも周方向他方側に流すことができる。これにより、オイルO1bをより周方向他方側に流しやすくでき、ステータコア32の全周にオイルOを供給しやすくできる。したがって、ステータコア32の冷却効率をより向上できる。また、第1支持部63でステータコア本体32aの外周面を支持することができるため、ステータコア32が振動することを抑制できる。
また、本実施形態によれば、第1冷媒噴射部11は、パイプである。そのため、例えばハウジング6の壁部に孔を設けて第1冷媒噴射部11を作る場合に比べて、第1冷媒噴射部11を容易に作ることができる。また、第1冷媒噴射部11をハウジング6から取り外して交換することも容易である。
また、本実施形態によれば、ステータコア32に冷媒を噴射する噴射口のうち第1冷媒噴射部11の噴射口は、鉛直方向真下を向く向きよりも周方向一方側に傾いた向きに開口する第1噴射口14のみを含む。そのため、例えば鉛直方向真下を向く向きよりも周方向他方側に傾いた向きに開口する噴射口が第1冷媒噴射部11に設けられる場合に比べて、第1冷媒噴射部11に設けられた開口の数を少なくしやすい。これにより、第1冷媒噴射部11内のオイルOの圧力が低下することを抑制できる。したがって、第1冷媒噴射部11の第1噴射口14から噴射されるオイルO1の勢いが低下することを抑制できる。そのため、第1噴射口14から噴射されるオイルO1の一部に、上側固定部32fを好適に乗り越えさせやすくできる。
図2および図4に示すように、第2冷媒噴射部12は、ステータ30の前側(+X側)に位置する。第2冷媒噴射部12は、第1冷媒噴射部11よりも下側かつ前側に位置する。本実施形態において第2冷媒噴射部12の径方向位置は、固定部32bの径方向位置と同じである。第2冷媒噴射部12は、前側固定部32hの上側に位置する。第2冷媒噴射部12は、第1冷媒噴射部11の周方向一方側に位置する。第1冷媒噴射部11と第2冷媒噴射部12との周方向の間には、上側固定部32fが位置する。すなわち、第1冷媒噴射部11と第2冷媒噴射部12とは、周方向に固定部32bを挟んで配置される。
図4に示すように、第2冷媒噴射部12は、第2パイプ本体部12aと、第2パイプ本体部12aの左側(+Y側)の端部に設けられた小径部12bと、を有する。また、図示は省略するが、第2冷媒噴射部12は、第1冷媒噴射部11と同様に、第2パイプ本体部12aの右側(−Y側)の端部に設けられた小径部を有する。
小径部12bは、第2冷媒噴射部12の左側(+Y側)の端部である。小径部12bの外径は、第2パイプ本体部12aの外径よりも小さい。第2冷媒噴射部12は、小径部12bが隔壁61cに右側(−Y側)から挿し込まれて、隔壁61cに固定される。小径部12bは、左側に開口する。図6に示すように、小径部12bは、第2分岐部94fの前側(+X側)の端部に開口する。これにより、第2冷媒噴射部12は、第4の流路94と繋がる。したがって、第1冷媒噴射部11と第2冷媒噴射部12とは、第4の流路94を介して互いに繋がる。より詳細には、第1冷媒噴射部11と第2冷媒噴射部12とは、第1分岐部94c、接続部94b、および第2分岐部94fを介して互いに繋がる。
図4に示すように、第2冷媒噴射部12の右側(−Y側)の端部には、取付部材17が設けられる。取付部材17は、板面が軸方向を向く長方形板状である。第2冷媒噴射部12の右側の端部は、第1冷媒噴射部11と同様にして、取付部材17に固定される。第2冷媒噴射部12の右側の端部は、取付部材17によって塞がれる。図示は省略するが、取付部材17は、図2に示す突出部61eにボルトで固定される。これにより、第2冷媒噴射部12の右側の端部は、取付部材17を介してモータ収容部61に固定される。突出部61eは、モータ収容部61の内周面において径方向内側に突出する。
図4に示すように、第2冷媒噴射部12は、第2噴射口15を有する。第2噴射口15は、ステータコア32にオイルOを噴射する噴射口である。すなわち、第2冷媒噴射部12の噴射口は、第2噴射口15を含む。第2噴射口15は、第2冷媒噴射部12の外側面に設けられる。第2噴射口15は、例えば、円形状である。第2噴射口15からは、第2冷媒噴射部12内に流入したオイルOが吐出される。図2に示すように、第2噴射口15は、第2冷媒噴射部12の壁部を内周面から外周面まで貫通する孔12dの開口部のうち、第2冷媒噴射部12の外周面に開口する開口部である。
図4に示すように、第2噴射口15は、第2冷媒噴射部12のうち径方向外側から見てステータコア32と重なる部分に設けられる。本実施形態において第2噴射口15は、第2パイプ本体部12aに、軸方向に間隔を空けて6つ設けられる。図2に示すように、第2噴射口15は、上側固定部32fの周方向一方側に位置する。第2噴射口15は、ステータコア32の前側(+X側)に位置する。本実施形態において第2噴射口15は、ステータコア32の上側の端部よりも下側に位置する。本実施形態においてステータコア32の上側の端部とは、例えば、上側固定部32fの上側の端部である。本実施形態において第2噴射口15は、ステータコア本体32aの上側の端部よりも下側に位置し、モータ軸J1よりも上側に位置する。
第2噴射口15は、上側固定部32fの周方向一方側の位置において周方向他方側に開口する。なお、本明細書において「噴射口が或る側に開口する」とは、噴射口が開口する向きが、或る側向きの成分を含んでいればよい。すなわち、「第2噴射口15が周方向他方側に開口する」とは、第2噴射口15が開口する向きが、周方向他方側向きの成分を含んでいればよく、第2噴射口15が径方向と直交する向きに開口してもよいし、径方向と直交する向きに対して傾いて開口してもよい。第2噴射口15は、径方向と直交する向きに対して径方向内側に傾いて開口する。第2噴射口15は、例えば、上側斜め後方に開口する。
上側固定部32fと第2冷媒噴射部12との周方向の間には、第2支持部64が位置する。第2噴射口15は、例えば、第2支持部64に設けられた第2貫通溝64aを向いて開口する。第2噴射口15から噴射されたオイルO2は、上側斜め後方に飛び、第2貫通溝64aを通ってステータコア32の上側部分の外周面まで到達する。第2冷媒噴射部12から噴射されたオイルO2は、上側固定部32fまで到達してもよいし、上側固定部32fまで到達しなくてもよい。ステータコア32の上側部分の外周面に到達したオイルO2は、例えば上側固定部32fに遮られて、噴射された向きとほぼ逆向きにステータコア本体32aの外周面上を流れる。以上により、第2噴射口15から噴射されたオイルO2によって、ステータコア32の前側部分を冷却できる。したがって、第2噴射口15を設けることで、ステータコア32をより好適に冷却できる。
また、本実施形態によれば、支持部65は、上側固定部32fと第2冷媒噴射部12との周方向の間に位置する第2支持部64を含む。そのため、第1噴射口14から噴射されて上側固定部32fを乗り越えたオイルO1aが、第2支持部64によって遮られて、第2支持部64よりも周方向一方側に流れにくくなる虞もある。この場合であっても、第2冷媒噴射部12の第2噴射口15からオイルO2を噴射することで、第2支持部64よりも周方向一方側に位置するステータコア本体32aの外周面にオイルO2を供給することができる。
また、本実施形態によれば、第2支持部64は、第2支持部64を周方向に貫通する第2貫通溝64aを有する。そのため、第1噴射口14から噴射されて上側固定部32fを乗り越えたオイルO1aを、第2貫通溝64aを介して、第2支持部64よりも周方向一方側に流すことができる。また、上述したように、第2噴射口15から噴射されたオイルO2を、第2貫通溝64aを介して、第2支持部64よりも周方向他方側に送ることもできる。これらにより、第1噴射口14および第2噴射口15から噴射されたオイルOをより広範囲に亘ってステータコア32の外周面に供給することができる。したがって、ステータコア32の冷却効率をより向上できる。
また、本実施形態によれば、第2冷媒噴射部12は、パイプである。そのため、例えばハウジング6の壁部に孔を設けて第2冷媒噴射部12を作る場合に比べて、第2冷媒噴射部12を容易に作ることができる。また、第2冷媒噴射部12をハウジング6から取り外して交換することも容易である。
図1に示すオイルポンプ96は、冷媒としてのオイルOを送るポンプである。本実施形態においてオイルポンプ96は、電気により駆動する電動ポンプである。オイルポンプ96は、第1の流路92aを介してオイル溜りPからオイルOを吸い上げて、第2の流路92b、クーラー97、第3の流路92c、第4の流路94、および冷媒噴射部10を介して、オイルOをモータ2に供給する。すなわち、オイルポンプ96は、ハウジング6の内部に収容されたオイルOを、第4の流路94、第1冷媒噴射部11、および第2冷媒噴射部12に送る。そのため、第1冷媒噴射部11および第2冷媒噴射部12に容易にオイルOを送ることができる。
オイルポンプ96によって第3の流路92cまで送られたオイルOは、流入部94aから第4の流路94に流入する。図6に示すように、流入部94aに流入したオイルOは、後側(−X側)に流れて、第1分岐部94cと第2分岐部94fとのそれぞれに分岐して流入する。第1分岐部94cに流入したオイルOは、第1冷媒噴射部11の左側(+Y側)の端部から第1冷媒噴射部11に流入する。第1冷媒噴射部11に流入したオイルOは、第1冷媒噴射部11内を右側(−Y側)に流れ、供給口13および第1噴射口14からステータ30に供給される。一方、第2分岐部94fに流入したオイルOは、第2冷媒噴射部12の左側の端部から第2冷媒噴射部12に流入する。第2冷媒噴射部12に流入したオイルOは、第2冷媒噴射部12内を右側に流れ、第2噴射口15からステータ30に供給される。
このようにして、第1冷媒噴射部11および第2冷媒噴射部12からステータ30にオイルOを供給でき、ステータ30を冷却できる。また、流入部94aに流入したオイルOを第1分岐部94cと第2分岐部94fとに分岐させて第1冷媒噴射部11と第2冷媒噴射部12とにそれぞれ供給できる。そのため、第1冷媒噴射部11と第2冷媒噴射部12との一方の冷媒噴射部10から他方の冷媒噴射部10へとオイルOが流れる場合に比べて、第1冷媒噴射部11に供給されるオイルOの量と第2冷媒噴射部12に供給されるオイルOの量とに偏りが生じることを抑制しやすい。また、各冷媒噴射部10にオイルOが供給されるまでの経路を共に短くしやすいため、ステータ30に供給されるオイルOの温度を比較的低いままに維持しやすい。したがって、ステータ30を好適に冷却しやすい。
第1冷媒噴射部11および第2冷媒噴射部12からステータ30に供給されたオイルOは、下側に滴下され、モータ収容部61内の下部領域に溜る。モータ収容部61内の下部領域に溜ったオイルOは、隔壁61cに設けられた隔壁開口68を介してギヤ収容部62のオイル溜りPに移動する。以上のようにして、第2の油路92は、オイルOをステータ30に供給する。
図1に示すクーラー97は、第2の油路92を通過するオイルOを冷却する。クーラー97には、第2の流路92bおよび第3の流路92cが接続される。第2の流路92bおよび第3の流路92cは、クーラー97の内部流路を介して繋がる。クーラー97には、図示しないラジエータで冷却された冷却水を通過させる冷却水用配管98が接続される。クーラー97の内部を通過するオイルOは、冷却水用配管98を通過する冷却水との間で熱交換されて冷却される。
本実施形態によれば、第1冷媒噴射部11と第2冷媒噴射部12とは、第4の流路94によって繋がれる。そのため、例えば、本実施形態のように第4の流路94の流入部94aにオイルOを送ることで、第1冷媒噴射部11と第2冷媒噴射部12との両方にオイルOを供給することができる。すなわち、第1冷媒噴射部11と第2冷媒噴射部12とのそれぞれに対してオイルOを供給する別々の油路を設ける場合に比べて、ハウジング6に設ける油路を少なくできる。そのため、ハウジング6が大型化することを抑制できる。
また、第4の流路94は、ステータ30の左側に位置する隔壁61cに設けられる。そのため、ステータ30と軸方向に重なる位置に第4の流路94を配置できる。これにより、ステータ30の固定部32bと干渉を避けて第4の流路94を配置しやすい。また、例えば第4の流路94をステータ30の径方向外側に設ける場合に比べて、ハウジング6が径方向に大型化することを抑制できる。また、第4の流路94はハウジング6の隔壁61cに設けられるため、ハウジング6の外側に配管等によって第1冷媒噴射部11と第2冷媒噴射部12とを繋ぐ流路を設ける場合に比べて、駆動装置1全体を小型化しやすい。したがって、本実施形態によれば、駆動装置1が大型化することを抑制できる。
また、本実施形態によれば、第4の流路94は、固定部32bよりも径方向内側を通る部分を有する。そのため、第4の流路94を、より固定部32bを避けて配置しやすく、かつ、ハウジング6が径方向に大型化することをより抑制できる。したがって、駆動装置1が大型化することをより抑制できる。
また、本実施形態によれば、第1冷媒噴射部11と第2冷媒噴射部12とは、周方向に固定部32bを挟んで配置される。そのため、第1冷媒噴射部11および第2冷媒噴射部12を固定部32bに干渉しない位置に配置しつつ、かつ、第1冷媒噴射部11および第2冷媒噴射部12をステータコア本体32aに対して径方向に近づけて配置できる。したがって、第1冷媒噴射部11および第2冷媒噴射部12からステータ30にオイルOを供給しやすくでき、かつ、駆動装置1が径方向に大型化することを抑制できる。
また、本実施形態によれば、第1冷媒噴射部11および第2冷媒噴射部12は、軸方向に直線状に延びる。そのため、第1冷媒噴射部11および第2冷媒噴射部12が径方向に曲がって延びる等の場合に比べて、駆動装置1が径方向に大型化することを抑制できる。また、第1冷媒噴射部11の形状および第2冷媒噴射部12の形状を単純な形状にできるため、第1冷媒噴射部11および第2冷媒噴射部12を作りやすい。また、第1冷媒噴射部11および第2冷媒噴射部12を、軸方向の広範囲に亘ってステータ30と対向させて配置しやすい。そのため、第1冷媒噴射部11および第2冷媒噴射部12からステータ30の軸方向の広範囲にオイルOを供給しやすい。したがって、ステータ30をより好適に冷却できる。
また、本実施形態によれば、モータ軸J1は、鉛直方向と直交する水平方向に延びる。そのため、冷媒噴射部10からステータ30の上側にオイルOを供給することで、オイルOをステータ30の上側から下側に重力を利用して流すことができる。これにより、ステータ30全体に容易にオイルOを供給しやすく、ステータ30全体をオイルOによって冷却しやすい。
また、本実施形態によれば、第1冷媒噴射部11の右側の端部は、取付部材16によって塞がれ、第2冷媒噴射部12の右側の端部は、取付部材17によって塞がれる。本実施形態において第1冷媒噴射部11の右側の端部は、第1冷媒噴射部11にオイルOが流入する側と逆側の端部である。第2冷媒噴射部12の右側の端部は、第2冷媒噴射部12にオイルOが流入する側と逆側の端部である。すなわち、各パイプの軸方向端部のうち、オイルOが流入する側と逆側の端部は、塞がれる。そのため、各パイプの軸方向端部のうちオイルOが流入する側と逆側の端部が開放される場合に比べて、各パイプ内を流れるオイルOの圧力を大きくしやすい。これにより、各パイプのオイル供給口からオイルOを勢いよく噴射させやすい。したがって、各オイル供給口から吐出されるオイルOをステータ30に好適に供給しやすい。
特に、本実施形態の第2冷媒噴射部12では第2噴射口15が上側を向く。そのため、第2噴射口15から上側に勢いよくオイルO2を噴射できる。これにより、第2噴射口15から吐出されたオイルO2を、ステータコア32のうち、より上側に位置する部分まで到達させやすい。したがって、第2冷媒噴射部12から吐出されるオイルO2をステータコア32の広範囲に亘って供給しやすく、ステータコア32をより好適に冷却できる。
<第2実施形態>
図10に示すように、本実施形態の第1冷媒噴射部111の噴射口は、第3噴射口119を含む。第3噴射口119は、例えば、第1冷媒噴射部111の壁部を内周面から外周面まで貫通する孔111eの開口部のうち、第1冷媒噴射部111の外周面に開口する開口部である。第3噴射口119は、周方向他方側に開口する。第3噴射口119は、周方向において、第1噴射口14に対して逆側に開口する。第3噴射口119は、例えば、下側斜め後方に開口する。第3噴射口119が開口する向きは、径方向と直交する向きよりも径方向内側に傾いた向きである。
図示は省略するが、本実施形態において第3噴射口119は、軸方向に間隔を空けて複数設けられる。第1噴射口14と第3噴射口119とは、例えば、2つずつ設けられる。各第3噴射口119の軸方向位置は、例えば、各第1噴射口14の軸方向位置と同じである。第1噴射口14と第3噴射口119とは、例えば、軸方向に見て、仮想線IL3に対して線対称に配置される。第1噴射口14の開口面積と第3噴射口119の開口面積とは、例えば、互いに同じである。なお、第3噴射口119の開口面積は、第1噴射口14の開口面積より大きくてもよいし、第1噴射口14の開口面積より小さくてもよい。
第3噴射口119から噴射されるオイルO3は、周方向他方側に向けて噴射される。そのため、ステータコア32のうち第1冷媒噴射部111よりも周方向他方側に位置する部分に対して、よりオイルOを好適に供給することができる。これにより、ステータコア32をより好適に冷却できる。第1冷媒噴射部111のその他の構成は、第1実施形態の第1冷媒噴射部11のその他の構成と同様にできる。
<第3実施形態>
図11に示すように、本実施形態のステータコア232において、上側固定部232fは、上述した第1実施形態の上側固定部32fよりも周方向一方側に位置する。上側固定部232fは、上側斜め前方に突出する。第1冷媒噴射部211は、上側固定部232fの周方向他方側に位置する。第1冷媒噴射部211は、モータ軸J1よりも前側に位置する。第1冷媒噴射部211は、ステータコア本体32aの上側に位置する。本実施形態において第1冷媒噴射部211の第1噴射口214が開口する向きは、鉛直方向真下を向く向きであり、かつ、ステータコア本体32aの外周面のうち、上側固定部232fの周方向他方側の端部との境界よりも周方向他方側に位置する部分を向く向きである。そのため、第1噴射口214が鉛直方向真下よりも周方向他方側に傾いて開口する場合に比べて、第1噴射口214から噴射されたオイルOを周方向一方側に流しやすい。これにより、上述した第1実施形態と同様に、第1噴射口214から噴射されたオイルOを、上側固定部232fを乗り越えるオイルOと、上側固定部232fを乗り越えないオイルOと、に分けやすい。これにより、ステータコア232を好適に冷却することができる。したがって、ステータコア232の冷却効率を向上できる。
第1冷媒噴射部211の第1噴射口214が開口する向きは、モータ軸J1を向く向きに対して、周方向一方側に傾いた向きである。そのため、第1噴射口214から噴射されるオイルOをより周方向一方側に流しやすい。第1冷媒噴射部211のその他の構成は、第1実施形態の第1冷媒噴射部11のその他の構成と同様にできる。駆動装置201のその他の構成は、第1実施形態の駆動装置1のその他の構成と同様にできる。
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成を採用することもできる。上述した実施形態では、冷媒がオイルOである場合について説明したが、これに限られない。冷媒は、ステータに供給されてステータを冷却できるならば、特に限定されない。冷媒は、例えば、絶縁液であってもよいし、水であってもよい。冷媒が水である場合、ステータの表面に絶縁処理を施してもよい。
第1冷媒噴射部および第2冷媒噴射部がパイプである場合において、各パイプは多角筒状のパイプであってもよい。第1冷媒噴射部および第2冷媒噴射部は、パイプでなくてもよい。第1冷媒噴射部および第2冷媒噴射部は、ハウジングに設けられた油路であってもよい。第1冷媒噴射部は、コイルエンドに冷媒を供給する供給口を含まなくてもよい。第2冷媒噴射部は、設けられなくてもよい。第1噴射口は、同じ軸方向位置に複数設けられてもよい。第1噴射口は、1つのみ設けられてもよい。第1噴射口が開口する向きは、モータ軸を向く向きに対して、周方向一方側に傾いた向きであり、かつ、ステータコア本体の外周面のうち、上側固定部の周方向他方側の端部との境界よりも周方向他方側に位置する部分を向く向きであれば、鉛直方向の向きは、特に限定されない。第1噴射口が開口する向きは、例えば、上側を向く向きであってもよい。
ステータコアの固定部の形状は、特に限定されない。上側固定部の全体は、ステータコア本体の上側の頂点より周方向一方側に位置してもよいし、ステータコア本体の上側の頂点より周方向他方側に位置してもよい。上側固定部とモータ収容部の内周面との間の径方向の距離は、一部のみにおいて、上側固定部の周方向他方側の端部との境界と、モータ収容部の内周面との間の径方向の距離よりも小さくてもよい。上側固定部とモータ収容部の内周面との間の径方向の距離は、上側固定部の周方向他方側の端部との境界と、モータ収容部の内周面との間の径方向の距離より大きくてもよい。
上側固定部は、ステータコアのうち最も鉛直方向上側に位置する部分に設けられてもよい。この場合、上側固定部は、鉛直方向真上に突出してもよい。また、この場合、第1冷媒噴射部と、第1冷媒噴射部とは異なる第3冷媒噴射部と、がステータコアの鉛直方向上側に位置し、かつ、上側固定部を周方向に挟んで配置されてもよい。第3冷媒噴射部は、ステータコアにオイルOを噴射する噴射口を有する。また、この場合、第1冷媒噴射部と第3冷媒噴射部とは、モータ軸の軸方向に見て、モータ軸を通って鉛直方向に延びる仮想線を挟んで線対称に配置されてもよい。また、この場合、第1冷媒噴射部の第1噴射口が開口する向き、および第3冷媒噴射部の噴射口が開口する向きは、鉛直方向真下を向く向きであってもよい。第3冷媒噴射部の噴射口の開口面積は、第1噴射口の開口面積と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
第1支持部は、第1貫通溝を有しなくてもよい。第2支持部は、第2貫通溝を有しなくてもよい。支持部は、第1支持部と第2支持部とのうち一方を含まなくてもよい。支持部は、設けられなくてもよい。
駆動装置は、モータを動力源として対象となる物体を動かすことができる装置であれば、特に限定されない。駆動装置は、伝達機構を備えなくてもよい。モータのトルクがモータのシャフトから直接対象に出力されてもよい。この場合、駆動装置は、モータそのものに相当する。モータ軸が延びる方向は、鉛直方向と交差する方向であれば、特に限定されない。なお、本明細書において「モータ軸が鉛直方向と直交する水平方向に延びる」とは、モータ軸が厳密に水平方向に延びる場合に加えて、モータ軸が略水平方向に延びる場合も含む。すなわち、本明細書において「モータ軸が鉛直方向と直交する水平方向に延びる」とは、モータ軸が水平方向に対して僅かに傾いていてもよい。また、上述した実施形態では、駆動装置がインバータユニットを含まない場合について説明したが、これに限られない。駆動装置は、インバータユニットを含んでいてもよい。言い換えると、駆動装置がインバータユニットと一体構造となっていてもよい。
駆動装置の用途は、特に限定されない。駆動装置は、車両に搭載されなくてもよい。本明細書において説明した構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。