JP2021127364A - 血液含有液体吸収性向上材料、該材料を含有する生理用品および血液含有液体の吸収方法 - Google Patents

血液含有液体吸収性向上材料、該材料を含有する生理用品および血液含有液体の吸収方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高吸水性ポリマーは生理用品に採用されているが、血液を含有する液体に対する吸収性能が十分でない。また、カチオン性高分子材料を併用することにより、吸収性能を向上させることが検討されているが、人体への安全性の面で懸念がある。本発明の目的は、カチオン性高分子材料を含まず、血液を含有する液体に対する高吸水性ポリマーの吸収性能を高めることができる材料及び該材料を使用した生理用品を提供することにある。【解決手段】カルボキシル基含有重合体またはカルボキシル基含有複合体を含み、pHが3.0〜8.5である材料であって、前記カルボキシル基含有重合体および前記カルボキシル基含有複合体がカルボキシル基を0.2〜8.0mmol/g有し、水膨潤度が10倍以下であるものであることを特徴とする血液含有液体吸収性向上材料。【選択図】なし

Description

本発明は、高吸水性ポリマーの血液含有液体に対する吸収性を向上させるために用いられる血液含有液体吸収性向上材料および該材料を用いた生理用品に関する。さらに、本発明は血液含有液体の吸収方法に関する。
生理用ナプキン等の生理用品には経血の吸収のため、水分の吸収及び保持が可能な高吸水性ポリマーが含まれている。高吸水性ポリマーによる水分の吸収は、水分の種類によって異なることが知られており、血液に対しては吸収性が低下する。この低下の要因として、高吸水性ポリマーは固体成分を吸収することができず、血液の吸収に伴い高吸水性ポリマーの表面に血液中の固形成分が蓄積して被膜が形成され、血液の吸収が阻害されることが挙げられている(特許文献1参照)。
一方、生理用ナプキン等の生理用品においては装着性が重要となり、その薄型化が求められるため、高吸水性ポリマーを増量して吸収性の低下を補う方策は採用しづらい。
このような観点から、生理用品として十分な吸収性能を保持させつつ薄型化を達成するために、血液に対しても高吸水性ポリマーの吸収性能を低下させないようにする方策が検討されている。例えば特許文献1や2には、強く正に帯電したカチオン性高分子材料を用いて血液中の固形成分を凝集分離して、高吸水性ポリマー上での被膜形成を抑制する方法が開示されている。しかしながら、カチオン性高分子材料は生体毒性の点で懸念があり、生理用品等の衛生物品には安全性の点で好ましくない側面があった(非特許文献1参照)。
特開2017−217455号公報 特開2002−528232号公報
北野大,「高分子物質の人と環境に対する安全性評価」,日本ゴム協会誌,1993年,第66巻,第7号,p.454−472
上述のように、高吸水性ポリマーは生理用品に採用されているが、血液を含有する液体に対する吸収性能が十分でない。また、カチオン性高分子材料を併用することにより、吸収性能を向上させることが検討されているが、人体への安全性の面で懸念がある。本発明の目的は、カチオン性高分子材料を含まず、血液を含有する液体に対する高吸水性ポリマーの吸収性能を高めることができる材料及びこれらを使用した生理用品を提供することにある。
本発明者は、上述の目的を達成するために鋭意検討を進めた結果、カルボキシル基を有し、水膨潤度が抑制されており、かつ、pHが特定の範囲内である材料が高吸水性ポリマーの血液含有液体に対する吸収性能を高めることができることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(10)により構成される。
(1) カルボキシル基含有重合体またはカルボキシル基含有複合体を含み、pHが3.0〜8.5である材料であって、前記カルボキシル基含有重合体および前記カルボキシル基含有複合体がカルボキシル基を0.2〜8.0mmol/g有し、水膨潤度が10倍以下であるものであることを特徴とする血液含有液体吸収性向上材料。
(2) カルボキシル基含有重合体およびカルボキシル基含有複合体が、繊維形状を有するものであることを特徴とする(1)に記載の血液含有液体吸収性向上材料。
(3) カルボキシル基含有重合体およびカルボキシル基含有複合体が、パルプ形状を有するものであることを特徴とする(1)に記載の血液含有液体吸収性向上材料。
(4) カルボキシル基含有重合体が、共有結合による架橋構造を実質的に有さない重合体で構成されているアクリロニトリル系繊維であって、繊維中のカルボキシル基量が0.2〜4.5mmol/gであり、かつ水膨潤度が10倍以下であるカルボキシル基含有アクリロニトリル系繊維であることを特徴とする(2)または(3)に記載の血液含有液体吸収性向上材料。
(5) カルボキシル基含有重合体が、共有結合による架橋構造を有し、カルボキシル基量が0.2〜8.0mmol/gであり、かつ水膨潤度が10倍以下である架橋アクリレート系繊維であることを特徴とする(2)または(3)に記載の血液含有液体吸収性向上材料。
(6) シート形状を有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の血液含有液体吸収性向上材料。
(7) (6)に記載の血液含有液体吸収性向上材料を高吸水性ポリマー層よりも肌側に配置したことを特徴とする生理用品。
(8) (1)〜(6)のいずれかに記載の血液含有液体吸収性向上材料と高吸水性ポリマーを混合させた構造体を有することを特徴とする生理用品。
(9) (1)〜(6)のいずれかに記載の血液含有液体吸収性向上材料および高吸水性ポリマーに血液含有液体を接触させることを特徴とする血液含有液体の吸収方法。
(10) 血液含有液体吸収性向上材料に血液含有液体を接触させた後、高吸水性ポリマーに血液含有液体を吸収させることを特徴とする請求項9に記載の血液含有液体の吸収方法。
本発明の血液含有液体吸収性向上材料は血液含有液体に含まれる固形成分(赤血球、白血球、血小板など)の凝集を促進する効果、または、該固形成分を減少させる効果を有すると考えられる。このため、該材料を高吸水性ポリマーと併用することにより、高吸水性ポリマー表面での血液含有液体中の固形成分による被膜形成が抑制され、高吸水性ポリマーの血液含有液体の吸収性能を高めることができる。かかる本発明の血液含有液体吸収性向上材料は生理用品などの高吸水性ポリマーにより血液含有液体を吸収させる物品において、その吸収性能を向上させる材料として有用である。
本発明の血液含有液体吸収性向上材料は、カルボキシル基含有重合体またはカルボキシル基含有複合体を含む材料である。本発明においては、かかるカルボキシル基が、血液含有液体中の固形成分の表面の電荷に作用する、または、血液含有液体中の固形成分の分散性や流動性に影響を与える血漿中のタンパク質等を吸着することによって、血液含有液体中の固形成分の凝集を促進するものと考えられる。あるいは、カルボキシル基が血液含有液体中の固形成分を吸着することによって、血液含有液体中の固形成分を減少させる効果を有すると考えられる。
上記のカルボキシル基含有重合体としては、カルボキシル基含有単量体を構成単位として含む重合体やカルボキシル基に変換することが可能な官能基を有する重合体に化学的な処理を施して、該官能基をカルボキシル基に変換した重合体などが挙げられる。前者におけるカルボキシル基含有単量体としてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などを挙げることができる。また、後者のカルボキシル基に変換することが可能な官能基としては、加水分解によりカルボキシル基に変換できるエステル基やニトリル基を挙げることができる。
上記のカルボキシル基含有重合体の形状としては粒子形状、繊維形状、パルプ形状などを挙げることができる。ここで、パルプ形状とは繊維を叩解して得られる形状のことをいう。
次に、上記のカルボキシル基含有複合体としては、粒子形状、繊維形状またはパルプ形状などの形状を有する基材にカルボキシル基含有化合物を含有させたものを挙げることができる。ここで、カルボキシル基含有化合物としては、クエン酸、リンゴ酸等の低分子化合物であってもよく、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等の高分子化合物であってもよい。また、基材の材質としては特に制限はなく、公知の粒子、繊維、パルプなどから適宜選択すればよい。さらに、カルボキシル基含有化合物を基材に含有させる方法としては、直接あるいはバインダーを用いて付着させる方法、溶液や分散液として付与し溶媒や分散媒を加熱等により除去する方法などを挙げることができる。
次に、本発明に採用するカルボキシル基含有重合体およびカルボキシル基含有複合体のカルボキシル基の含有量としては、後述する方法により求められる値において、0.2〜8.0mmol/gであり、好ましくは0.5〜6.0mmol/g、より好ましくは0.5〜5.0mmol/gである。カルボキシル基量が上記範囲の下限に満たない場合には、後述する吸収性向上効果が十分に得られないことがあり、上限を超える場合には、親水性が強くなり過ぎて吸湿や吸水した際の材料の強度が弱くなったり、粘着性が出てきたりして取り扱いが困難となることがある。
また、カルボキシル基の状態としては、COOHの形であるものに限らず、対イオンがLi、Na、K等のアルカリ金属、Ca、Ba等のアルカリ土類金属、Cu、Zn、Al、Mn、Ag、Fe、Co、Ni等の金属、NH、アミン等の陽イオンであるものであってもよく、これらのうちの複数種類の陽イオンが混在していてもよい。
さらに、本発明に採用するカルボキシル基含有重合体およびカルボキシル基含有複合体は、水膨潤度が10倍以下であり、好ましくは5倍以下、より好ましくは2倍以下である。水膨潤度が10倍を超える場合には、血液含有液体に接触した際の膨潤による体積増加が問題となりうる。すなわち、後述する生理用品などに利用した場合に、血液含有液体の通過経路が塞がれて高吸水性ポリマーまで血液含有液体が到達しなくなったり、生理用品の形状をいびつにしたりする恐れがある。一方、水膨潤度の下限については特に限定はないが、親水性のカルボキシル基を有していることから、通常0.05倍を下回ることは技術的に難しい。
また、本発明の血液含有液体吸収性向上材料は、上述したカルボキシル基含有重合体および/またはカルボキシル基含有複合体のみからなるものであってもよいが、これら以外の素材を含んでいてもよい。かかる素材としては、公用されている天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維、パルプ、無機繊維、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられ、消臭剤、抗菌剤等の機能性添加剤を併用してもよい。
なお、本発明の血液含有液体吸収性向上材料におけるカルボキシル基含有重合体およびカルボキシル基含有複合体の含有率としては、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上とすることが、本発明の趣旨である高吸水性ポリマーの吸収性を向上させる観点から望ましい。
また、本発明の血液含有液体吸収性向上材料のpHとしては後述する測定方法において3.0〜8.5であることが望ましい。該材料が肌に接触または近接する状態で使用される可能性を考慮すると、pHが8.5を超える場合には、肌への安全性の点で懸念される。また、pHが3.0未満の場合には、該材料に接触した後の血液含有液体のpHが低くなり、高吸水性ポリマーの吸収性が低下する恐れがある。なお、かかるpHは、後述するカルボキシル基の対イオンのイオン交換によって調整することができる。
上述の繊維形状であるカルボキシル基含有重合体の代表的な例としては、共有結合による架橋構造を実質的に有さない重合体で構成されているアクリロニトリル系繊維であって、繊維中のカルボキシル基量が0.2〜4.5mmol/gであり、かつ水膨潤度が10倍以下であるカルボキシル基含有アクリロニトリル系繊維からなるものを挙げることができる。かかるカルボキシル基含有アクリロニトリル系繊維は、アクリロニトリル系繊維の製造工程途中で得られる未乾燥状態のゲル状アクリロニトリル系繊維を加水分解することによって得ることができる。以下にその製造方法を記述する。
まず、繊維を構成するアクリロニトリル系重合体は重合組成としてアクリロニトリル(以下、ANともいう)を好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上含有するものである。AN系重合体は、AN単独重合体のほかに、ANと他の単量体との共重合体であってもよい。他の単量体としては、ハロゲン化ビニル及びハロゲン化ビニリデン、(メタ)アクリル酸エステル、メタリルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー及びその塩、アクリルアミド、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられるが、ANと共重合可能な単量体であれば特に限定されない。尚、(メタ)の表記は、メタの語の付いたもの及び付かないものの両方を表す。
次に、かかるAN系重合体を用いて、湿式紡糸により繊維化を行うが、溶剤として、ロダン酸ソーダ等の無機塩を用いた場合で説明すれば以下のようになる。まず、上述のAN系重合体を溶剤に溶解し紡糸原液を作製する。この紡糸原液には必要により金属酸化物が添加される。該紡糸原液をノズルから紡出後、凝固、水洗、延伸の各工程を経て、延伸後の未乾燥繊維(本発明において、ゲル状アクリロニトリル系繊維ともいう)の水分率を20〜250重量%、好ましくは25〜130重量%、より好ましくは30〜100重量%とする。
ここで、加水分解処理を施される原料繊維として上記のような未乾燥状態のゲル状アクリロニトリル系繊維を使用すると、後述するように、カルボキシル基を繊維全体にわたって均一に存在させることが可能となる。このため、通常であればカルボキシル基の親水性によって水膨潤性が高まり繊維が大きく脆化してしまうところ、膨潤抑制のための架橋剤を使用することなく、膨潤度を抑えることができるようになる。
ただし、ゲル状アクリロニトリル系繊維の水分率が20重量%未満の場合には、後述する加水分解処理において薬剤が繊維内部に浸透せず、カルボキシル基を繊維全体にわたって生成させることができなくなる場合がある。また、250重量%を超える場合には繊維内部に水分を多く含み、繊維強度が低くなりすぎるため、可紡性が低下し好ましくない。繊維強度の高さをより重視する場合には、25〜130重量%の範囲内とするのが望ましい。また、ゲル状アクリロニトリル系繊維の水分率を上記範囲内に制御する方法は多数あるが、例えば、凝固浴温度としては−3〜15℃、好ましくは−3〜10℃、延伸倍率としては5〜20倍、好ましくは7〜15倍程度が望ましい。
かかるゲル状アクリロニトリル系繊維の加水分解処理の手段としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アンモニア等の塩基性水溶液、あるいは、硝酸、硫酸、塩酸等の水溶液を含浸、または浸漬した状態で加熱処理する手段が挙げられる。具体的な処理条件としては、上述したカルボキシル基量の範囲などを勘案し、処理薬剤の濃度、反応温度、反応時間等の諸条件を適宜設定すればよいが、一般的には、0.5〜20重量%、好ましくは1.0〜15重量%の処理薬剤を含浸、絞った後、湿熱雰囲気下で、温度100〜140℃、好ましくは110〜135℃で10〜60分処理する条件の範囲内で設定することが工業的、繊維物性的にも好ましい。なお、湿熱雰囲気とは、飽和水蒸気または過熱水蒸気で満たされた雰囲気のことを言う。該処理により、ゲル状アクリロニトリル系繊維中のニトリル基が加水分解され、カルボキシル基含有アクリロニトリル系繊維が生成される。
なお、上述のようにして得られたカルボキシル基含有アクリロニトリル系繊維中には、加水分解処理に用いられたアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アンモニア等の種類に応じたアルカリ金属やアンモニウムなどのカチオンを対イオンとする塩型カルボキシル基が生成しているが、引き続き、必要に応じてカルボキシル基の対イオンを変換する処理を行ってもよい。硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩などの金属塩水溶液によるイオン交換処理を行えば、所望の金属イオンを対イオンとする塩型カルボキシル基とすることができ、酸水溶液で処理すれば水素イオンを対イオンとする酸型カルボキシル基とすることができる。さらに、水溶液のpHや金属塩濃度・種類を調整することで、異種の対イオンを混在させたり、その割合を調整したりすることも可能である。
ここで、上述の製造方法によって得られるカルボキシル基含有アクリロニトリル系繊維においては未乾燥状態のゲル状アクリロニトリル系繊維を加水分解処理することから、繊維表面から順次加水分解するのではなく、薬剤が繊維内奥部にも浸透し、繊維全体にわたって加水分解するものと考えられる。さらに微視的に見ると、一般にアクリロニトリル系繊維にはAN系重合体が配向している結晶部分と構造が乱れている非晶部分とが混在している。このため、結晶部分はその外側から加水分解されるが、非晶部分は全体的に加水分解されると考えられる。この結果、加水分解後においては、微視的には、結晶部分ではその一部が加水分解を受けないままニトリル基濃度の高い部分として残り、非晶部分はカルボキシル基濃度が高い部分になるものと考えられる。
すなわち、カルボキシル基含有アクリロニトリル系繊維の構造は、カルボキシル基濃度が高い部分とニトリル基濃度の高い部分が繊維全体にわたって均一に存在している構造であると推測される。そして、このような構造であるがゆえに、共有結合による架橋構造を有さずとも、吸湿・吸水時の繊維物性の低下が抑制されると考えられる。
また、上述の繊維形状であるカルボキシル基含有重合体の別の例としては、カルボキシル基含有重合体が共有結合による架橋構造を有し、カルボキシル基量が0.2〜8.0mmol/gであり、かつ水膨潤度が10倍以下である架橋アクリレート系繊維を挙げることができる。かかる架橋アクリレート系繊維としては、従来さまざまなものが知られており、例えば特開2000−314082号公報に記載のように、アクリロニトリル含有率が85〜95重量%であるアクリロニトリル系繊維に対するヒドラジン系化合物による架橋処理によって導入される窒素含有量の増加が1.0〜5.0重量%であり、残存ニトリル基の一部が3.0〜6.0mmol/gのアルカリ金属塩型カルボキシル基に変換されている架橋アクリレート系繊維が挙げられる。かかる架橋アクリレート系繊維においても、上述のカルボキシル基含有アクリロニトリル系繊維と同様にイオン交換処理によって、カルボキシル基の対イオンをさまざまな金属イオンや水素イオンに変換することができる。
上述してきた本発明の血液含有液体吸収性向上材料の形状としては、特に限定されないが、シート形状であることが好ましい。シート形状の血液含有液体吸収性向上材料は、生理用品において、高吸水性ポリマー層よりも肌側に配置することにより、血液含有液体中の固形成分を事前に凝集分離し、高吸水性ポリマーによる血液含有液体の吸収量を効率的に向上させることができると思われる。かかる観点からかかるシート形状の血液含有液体吸収性向上材料としては、血液含有液体を通過させることのできる構造を有するものであることが好ましい。具体的には不織布、紙、メッシュ、穴あきフィルムなどが挙げられ、不織布であることが好ましい。
さらに、本発明の血液含有液体吸収性向上材料は、高吸水性ポリマーと混合して構造体を形成し、これを生理用品等の吸収部材として使用してもよい。このような場合においては、上述したシート形状の血液含有液体吸収性向上材料を高吸水性ポリマー層の肌側に配置した場合とは異なり、血液含有液体が高吸水性ポリマーに到達する前に固形成分が凝集分離されるわけではないが、本発明の血液含有液体吸収性向上材料による固形成分の凝集は起こるため、高吸水性ポリマー表面上での固形成分の蓄積は抑制されて、高吸水性ポリマーの血液含有液体の吸収性が向上する。
かかる構造体としては、不織布形状の血液含有液体吸収性向上材料に高吸水性ポリマーの粉末を充填あるいは固着させたもの、粒子形状の血液含有液体吸収性向上材料と高吸水性ポリマーの粉末を不織布などの通液性のある材料で構成された袋状物内に充填したもの、または粒子形状の血液含有液体吸収性向上材料を高吸水性ポリマーからなるシート内に添加したものなどを挙げることができる。
以下に本発明の理解を容易にするために実施例を示すが、これらはあくまで例示的なものであり、本発明の要旨はこれらにより限定されるものではない。実施例中、部及び百分率は特に断りのない限り重量基準で示す。なお、各特性の測定は以下の方法により求めた。
<カルボキシル基量の測定>
試料を約1g秤量し、1mol/l塩酸50mlに30分浸漬後、水洗し浴比1:500で純水に15分間浸漬する。浴pHが4以上となるまで水洗した後、熱風乾燥機にて105℃で5時間乾燥させる。乾燥した試料を約0.2g精秤し(W1[g])、これに100mlの水と0.1mol/l水酸化ナトリウム15ml、塩化ナトリウム0.4gを加えて攪拌する。次いで金網を用いて試料を漉しとり、水洗する。得られたろ液(水洗液も含む)にフェノールフタレイン液を2〜3滴を加え、0.1mol/l塩酸で常法に従って滴定を行い消費された塩酸量(V1[ml])を求め、次式により全カルボキシル基量を算出する。
全カルボキシル基量[mmol/g]=(0.1×15−0.1×V1)/W1
<水膨潤度>
試料を純水中に浸漬した後、卓上遠心脱水機で1200rpmにて5分間脱水する。脱水後の試料の重量を測定(W2[g])後、かかる試料を115℃で3時間乾燥して重量を測定(W3[g])し、次式により水膨潤度を算出する。
水膨潤度[倍]=W2/W3−1
<血液含有液体中の固形成分の凝集分離の評価(高吸水性ポリマー(SAP)の膨潤度測定)>
評価サンプル0.25gを詰めたカラム(内径15mm)に馬血5mlを加え、次いでカラム上部から手動ポンプにて空気を送り込んで馬血を押し出す。押し出された馬血から2mlを採取してSAP(ポリアクリル酸系粒状高吸水性ポリマー)50mgに加え、10分間静置する。次いで、ろ紙を敷いたブフナー漏斗上で吸引ろ過を行い、ろ別したSAPの重さ(W4[g])を測定する。得られた測定値から下記式にて膨潤度を計算する。
膨潤度[倍]=W4/0.05−1
なお、評価サンプルを加えずに評価した場合の膨潤度は17.9倍であり、膨潤度がこの数値よりも大きいほど固形成分の凝集分離効果が高いと評価できる。
<サンプルのpHの測定>
0.1Mの塩化カリウム水溶液を500mlに評価サンプルを1g加え時々撹拌しながら30分浸漬した後、液のpHを測定し、これをサンプルのpHの値とした。
<延伸後の未乾燥繊維の水分率の測定>
延伸後の未乾燥繊維を純水中に浸漬した後、遠心脱水機(国産遠心機(株)社製TYPE H−770A)で遠心加速度1100G(Gは重力加速度を示す)にて2分間脱水する。脱水後重量を測定(W5[g]とする)後、該未乾燥繊維を120℃で15分間乾燥して重量を測定(W6[g]とする)し、次式により計算する。
延伸後の未乾燥繊維の水分率(%)=(W5−W6)/W5×100
<実施例1>
AN90%及びアクリル酸メチル10%からなるAN系重合体10部を44%のチオシアン酸ナトリウム水溶液90部に溶解した紡糸原液を、−2.5℃の凝固浴に紡出し、凝固、水洗、12倍延伸して水分率が35%のゲル状アクリロニトリル系繊維を得た。該繊維を4.0%の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、絞った後に、湿熱雰囲気中で、123℃×25分間加水分解処理を行い、水洗、乾燥することによって、カルボキシル基の対イオンとしてNaイオンを含むカルボキシル基含有アクリロニトリル系繊維からなる本発明の血液含有液体吸収性向上材料を得た。得られた血液含有液体吸収性向上材料の評価結果を表1に示す。
<実施例2>
実施例1で得られた血液含有液体吸収性向上材料を浴比50倍で、3%の硝酸水溶液中で80℃×1時間処理を行った後、水洗、乾燥を行い、カルボキシル基の対イオンが水素イオンであるカルボキシル基含有アクリロニトリル系繊維からなる本発明の血液含有液体吸収性向上材料を得た。得られた血液含有液体吸収性向上材料の評価結果を表1に示す。
<実施例3>
実施例1で得られた血液含有液体吸収性向上材料を浴比50倍で、2%の硝酸マグネシウム6水和物水溶液中で80℃×1時間処理を行った後、水洗、乾燥することによって、カルボキシル基の対イオンとしてMgイオンを含むカルボキシル基含有アクリロニトリル系繊維からなる本発明の血液含有液体吸収性向上材料を得た。得られた血液含有液体吸収性向上材料の評価結果を表1に示す。
<実施例4>
実施例1において水酸化ナトリウム水溶液の濃度を1.0%に変更したこと以外は同様にして得られたカルボキシル基含有アクリロニトリル系繊維を浴比50倍で、3%の硝酸水溶液中で80℃×1時間処理を行った後、水洗、乾燥することによって、カルボキシル基の対イオンが水素イオンであるカルボキシル基含有アクリロニトリル系繊維からなる本発明の血液含有液体吸収性向上材料を得た。得られた血液含有液体吸収性向上材料の評価結果を表1に示す。
<実施例5>
アクリロニトリル90重量%、アクリル酸メチルエステル10重量%のアクリロニトリル系重合体を48%のロダンソーダ水溶液で溶解して、紡糸原液を調製した。該紡糸原液を用いて、常法に従って紡糸を行い、アクリロニトリル系繊維を得た。次に水加ヒドラジンの20%水溶液中で、98℃×5時間架橋導入処理を行い、洗浄した。架橋導入された繊維を、3%硝酸水溶液中に浸漬し、90℃×2時間酸処理を行った。続いて3.5%水酸化ナトリウム水溶液中で90℃×2時間の加水分解処理を行い、3%の硝酸水溶液中で80℃×1時間処理を行った後、水洗、乾燥することによって、カルボキシル基の対イオンが水素イオンである架橋アクリレート系繊維を得た。次に、得られた架橋アクリレート系繊維と後述する比較例1のアクリロニトリル系繊維を1:9の割合で混綿し、本発明の血液含有液体吸収性向上材料を得た。得られた血液含有液体吸収性向上材料の評価結果を表1に示す。
<実施例6>
AN90%及びアクリル酸メチル10%からなるAN系重合体10部を44%のチオシアン酸ナトリウム水溶液90部に溶解した紡糸原液を、−2.5℃の凝固浴に紡出し、凝固、水洗、12倍延伸して水分率が35%のゲル状アクリロニトリル系繊維を得た。該繊維を湿熱雰囲気中で、123℃×25分間熱処理を行い、水洗、乾燥して、アクリロニトリル系繊維を得た。10%のポリアクリル酸(東亜合成製 ジュリマーAC−10L)水溶液に含浸後、遠心脱水にて絞り率を174%に調整後、乾燥させ、カルボキシル基含有複合体からなる本発明の血液含有液体吸収性向上材料を得た。得られた繊維の評価結果を表1に示す。
<比較例1>
AN90%及びアクリル酸メチル10%からなるAN系重合体10部を44%のチオシアン酸ナトリウム水溶液90部に溶解した紡糸原液を、−2.5℃の凝固浴に紡出し、凝固、水洗、12倍延伸して水分率が35%のゲル状アクリロニトリル系繊維を得た。該繊維を湿熱雰囲気中で、123℃×25分間熱処理を行い、水洗、乾燥して、比較例1のアクリロニトリル系繊維を得た。得られた繊維の評価結果を表1に示す。
<比較例2>
実施例5で得られた架橋アクリレート系繊維のみを用いて評価した結果を表1に示す。
Figure 2021127364
表1からわかるように、実施例1〜6においては、高吸水性ポリマーの膨潤度が17.9倍を超えており、高吸水性ポリマーの血液含有液体吸収性を向上させることができた。一方、比較例1においては、カルボキシル基含有重合体とカルボキシル基含有複合体のいずれも使用していないため、高吸水性ポリマーの膨潤度、すなわち血液含有液体の吸収性を向上させることができなかった。また比較例2においては、架橋アクリレート系繊維のみを使用したため、pHが低くなりすぎて、高吸水性ポリマーの膨潤度、すなわち血液含有液体の吸収性が低下した。

Claims (10)

  1. カルボキシル基含有重合体またはカルボキシル基含有複合体を含み、pHが3.0〜8.5である材料であって、前記カルボキシル基含有重合体および前記カルボキシル基含有複合体がカルボキシル基を0.2〜8.0mmol/g有し、水膨潤度が10倍以下であるものであることを特徴とする血液含有液体吸収性向上材料。
  2. カルボキシル基含有重合体およびカルボキシル基含有複合体が、繊維形状を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の血液含有液体吸収性向上材料。
  3. カルボキシル基含有重合体およびカルボキシル基含有複合体が、パルプ形状を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の血液含有液体吸収性向上材料。
  4. カルボキシル基含有重合体が、共有結合による架橋構造を実質的に有さない重合体で構成されているアクリロニトリル系繊維であって、繊維中のカルボキシル基量が0.2〜4.5mmol/gであり、かつ水膨潤度が10倍以下であるカルボキシル基含有アクリロニトリル系繊維であることを特徴とする請求項2または3に記載の血液含有液体吸収性向上材料。
  5. カルボキシル基含有重合体が、共有結合による架橋構造を有し、カルボキシル基量が0.2〜8.0mmol/gであり、かつ水膨潤度が10倍以下である架橋アクリレート系繊維であることを特徴とする請求項2または3に記載の血液含有液体吸収性向上材料。
  6. シート形状を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の血液含有液体吸収性向上材料。
  7. 請求項6に記載の血液含有液体吸収性向上材料を高吸水性ポリマー層よりも肌側に配置したことを特徴とする生理用品。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の血液含有液体吸収性向上材料と高吸水性ポリマーを混合させた構造体を有することを特徴とする生理用品。
  9. 請求項1〜6のいずれかに記載の血液含有液体吸収性向上材料および高吸水性ポリマーに血液含有液体を接触させることを特徴とする血液含有液体の吸収方法。
  10. 血液含有液体吸収性向上材料に血液含有液体を接触させた後、高吸水性ポリマーに血液含有液体を吸収させることを特徴とする請求項9に記載の血液含有液体の吸収方法。
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