JP2021126784A - 抵抗溶接装置及び抵抗溶接方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】低価格な装置構成で、かつ、短時間で、金属板と合成樹脂との安定した接着強度を達成する、抵抗溶接装置を提供する。【解決手段】金属板よりなるワーク115と熱可塑性樹脂116の異種抵抗溶接を、ワーク表面の温度を直接的に計測することで、定電流制御による加熱を遮断する。すなわち、定温制御を行う。これにより、過剰な加熱を防止し、短時間で異種抵抗溶接を良好に完遂する。【選択図】図1

Description

本発明は、抵抗溶接装置及び抵抗溶接方法に関する。
一般に、工業的製造工程において、合成樹脂と金属を接着する方法は、接着剤を用いる方法と、摩擦攪拌接合(FSW: Friction Stir Welding、以下「FSW」)と、レーザ接合等が挙げられる。
本発明に関係すると思われる先行技術文献として、特許文献1が挙げられる。この特許文献1には、樹脂−金属積層材の溶接方法に関する技術が開示されている。
特開昭58−81121号公報
接着剤を用いる方法は、接着後の強度が接着剤の接着能力に依存することと、硬化に時間がかかるため、短時間に所望の製品を製造する要求に応えられない、という課題がある。
FSWは、主にアルミニウム合金等の軽金属同士の接着では良好な堅牢性を有するものの、樹脂と金属との接着に適用する場合、金属側に摩擦力による温度上昇を与える必要がある。しかし、FSWでは金属における温度の管理が難しく、樹脂が熱くなり過ぎて良好な接着を達成できない等の不具合が生じてしまう。
FSWと同様の不具合はレーザ溶接でも生じる。また、FSW及びレーザ溶接は装置が高価である。
特許文献1には、抵抗溶接を用いて、樹脂と金属が積層された特殊な板同士を接着する方法が開示されている。しかし、特許文献1には、一般的な金属板と樹脂板とを接着するための具体的な技術は開示されていない。
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、低価格な装置構成で、かつ、短時間で、金属板と合成樹脂との安定した接着強度を達成する、抵抗溶接装置及び抵抗溶接方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の抵抗溶接装置は、ワークと被接着部材とを接着する抵抗溶接装置であって、直流電圧が印加され、少なくとも電源電圧ノードと接地ノードとの間にハイサイドスイッチとローサイドスイッチが直列接続されているブリッジ式コンバータスイッチと、一次巻線がブリッジ式コンバータスイッチに接続される高周波トランスとを具備する。更に、高周波トランスの二次巻線に接続され、金属のワークに電流を流すための溶接電極と、高周波トランスの一次巻線及び/または二次巻線に設置される電流センサと、ワークと接触する熱可塑性樹脂よりなる被接着部材と、溶接電極をワークに押圧するための加圧機構とを具備する。更に、電流センサから得られる電流信号に基づいて、溶接電極に流す電流または電力を一定に維持する制御を実施すべくブリッジ式コンバータスイッチを制御するスイッチング制御部と、加圧機構が溶接電極をワークに押圧しているときにスイッチング制御部をオン制御する制御部とよりなる。
スイッチング制御部は、ワークの、抵抗溶接を実施する箇所の温度が所定の閾値を超えたことを検出して、溶接電極を通じてワークに流す電流を遮断または減少させ、ワークの箇所の温度が所定の閾値を下回ったことを検出して、遮断または減少させていた、溶接電極を通じてワークに流す電流または電力を、通常値に復帰させる制御を行う。
本発明によれば、低価格な装置構成で、かつ、短時間で、金属板と合成樹脂との安定した接着強度を達成する、抵抗溶接装置及び抵抗溶接方法を提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本発明の実施形態に係る、抵抗溶接装置の全体構成を示すブロック図である。 スイッチング制御部の回路構成図である。 コンパレータに入力される入力信号と出力信号を示すグラフ及びタイムチャートである。 ワークと被接着部材との前処理を示す概略図である。 抵抗溶接装置の、溶接電極から金属板に流れる電流と、加熱箇所の温度変化と、放射温度計の出力論理を示すグラフとタイムチャートである。 本発明の実施形態に係る抵抗溶接装置の、第一の応用例を示す概略図である。 本発明の実施形態に係る抵抗溶接装置の、第二の応用例を示す回路図の一部抜粋である。
発明者らは、従来技術と比較して、低価格な装置構成で、かつ、短時間で、金属板と合成樹脂との安定した接着強度を達成するには、抵抗溶接が最も相応しいと考え、実験を行った。
出願人が製造販売する製品を含め、従来の抵抗溶接装置は、電圧フィードバック、電流フィードバック、電力フィードバックの何れかを用いて、2個以上の金属同士を接着する装置である。
しかし、従来の抵抗溶接装置をそのまま金属板と熱可塑性樹脂との接着に流用しようとすると、金属板が熱くなり過ぎて、樹脂が必要以上に塑性変形してしまう等の問題が生じた。
そこで発明者らは、暖房器具や加熱装置等で用いられている温度制御の考え方を、抵抗溶接装置に導入してみたところ、極めて良好な結果が得られた。
[抵抗溶接装置101:全体構成]
図1は、本発明の実施形態に係る、抵抗溶接装置101の全体構成を示すブロック図である。
商用電源102から供給される三相交流電力は溶接電源装置103に供給される。三相交流電力は周知のブリッジダイオードD104によって整流され、脈流の直流に変換される。
ブリッジダイオードD104の正極電圧ノードと接地ノードとの間には平滑コンデンサC105が接続される。
更に、ブリッジダイオードD104の正極電圧ノードには、第一IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)106のコレクタが接続される。
第一IGBT106のエミッタには、第二IGBT107のコレクタが接続される。
第二IGBT107のエミッタは、接地ノードに接続される。
更に、ブリッジダイオードD104の正極電圧ノードには、第三IGBT108のコレクタが接続される。
第三IGBT108のエミッタには、第四IGBT109のコレクタが接続される。
第四IGBT109のエミッタは、接地ノードに接続される。
第一IGBT106、第二IGBT107、第三IGBT108及び第四IGBT109のコレクタとエミッタの間には、還流ダイオードD110が接続される。
第一IGBT106、第二IGBT107、第三IGBT108及び第四IGBT109は、周知のフルブリッジコンバータスイッチを構成する。
第一IGBT106、第二IGBT107、第三IGBT108及び第四IGBT109のゲートは、スイッチング制御部111に接続される。スイッチング制御部111は周知のPWM制御にて、フルブリッジコンバータを構成する第一IGBT106、第二IGBT107、第三IGBT108及び第四IGBT109のスイッチングを制御する。
なお、フルブリッジコンバータスイッチはIGBTを使用しているが、MOSFETでもよい。特に、シリコンカーバイド(SiC)を使用するパワーMOSFETは高電圧大電流をスイッチングするIGBTを置換する能力を有する。
第一IGBT106のエミッタと第二IGBT107のコレクタとの接続点と、第三IGBT108のエミッタと第四IGBT109のコレクタとの接続点は、高周波トランス112の一次側巻線が接続される。こうして、スイッチング制御部111によって制御されるフルブリッジコンバータスイッチは、トランスの一次側巻線に例えば2kHzの交流電流を流す。
高周波トランス112の二次側巻線は、溶接電極113に接続される。
溶接電極113は加圧機構114によって押圧され、金属板よりなるワーク115を押圧する。
ワーク115の下には、ワーク115と接着される対象物である熱可塑性樹脂の被接着部材116が、土台117の上に据え置かれる。
なお、金属板よりなるワーク115と熱可塑性樹脂の被接着部材116との抵抗溶接は、熱可塑性樹脂が絶縁体であるため、通電方式は必然的にシリーズ方式通電となる。
本発明の実施形態に係る抵抗溶接装置101は、金属板よりなるワーク115と熱可塑性樹脂の被接着部材116を接着する。これ以降、本明細書において金属と熱可塑性樹脂を抵抗溶接にて接着することを異種抵抗溶接と呼ぶ。
本発明の実施形態に係る抵抗溶接装置101における、異種抵抗溶接の対象となる材料について説明する。
ワーク115を構成する金属板は、必要な強度を有し、融点が熱可塑性樹脂の融点より十分に高ければ、特に材質は問わない。例えば鉄、アルミニウム、銅、ステンレスや真鍮等の合金等が、適用可能である。逆に、鉛や共晶ハンダ等の低融点金属や低融点合金は、ワーク115の対象外である。
熱可塑性樹脂は多種多様なものが利用可能である。例えばポリエチレンテレフタラート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、アクリル等が挙げられる。
高周波トランス112の二次側巻線からは、例えば凡そ2000〜3000Aの電流が発生する。この電流は、溶接電極113を通じてワーク115に流れる。なお、これ以降、本発明の実施形態に係る抵抗溶接装置101では、一例として3000Aの定電流制御を実施するものとする。また、異種抵抗溶接に最適な電流値は接合する材料によって異なり、抵抗溶接機の電流供給能力に応じて例えば0.4A〜16000Aの値を採り得る。
トランスの一次側巻線には、非接触のクランプ式電流センサ118が設置されている。同様に、二次側巻線にも非接触のクランプ式電流センサ119が設置されている。
スイッチング制御部111は、クランプ式電流センサ118、119から一次側巻線の電流または二次側巻線の電流を検出すると共に、放射温度計120からワーク115表面の温度に基づく制御信号を受け、周知のPWM制御を行う。
スイッチング制御部111は、周知のマイコンよりなる制御部121から、起動、停止、目標電流値の設定等の制御を受ける。制御部121にはタッチパネル等の操作部122と液晶ディスプレイ等の表示部123が接続されている。
放射温度計120は、対象物の表面温度を非接触にて、高速に計測する機器である。当該放射温度計120は、対象物の表面温度を100℃から2000℃まで、1msecの計測間隔にて計測が可能である。放射温度計120は計測した温度をアナログ電圧信号にて出力する。放射温度計120のアナログ電圧信号はモニタ124によって所定の温度を閾値に設定した論理信号に変換される。モニタ124には図示しないコンパレータと基準電圧源が内蔵されており、放射温度計120が出力するアナログ電圧信号を基準電圧源が出力する基準電圧と比較する。そして、モニタ124に内蔵されるコンパレータは、放射温度計120が計測した温度が所定の温度閾値を超えたか否かを示す論理信号を出力する。
本発明の実施形態に係る抵抗溶接装置101における、異種抵抗溶接の手順を以下に列挙する。
(1)予め、金属板よりなるワーク115の、熱可塑性樹脂よりなる被接着部材116に対する被接着面に対し、表面処理を施しておく(表面処理工程)。
(2)土台117の上に被接着部材116とワーク115を据え置く(固定工程)。
(3)ワーク115の、抵抗溶接を実施する箇所に2本の溶接電極113を当てて、加圧機構114によって荷重を加える(荷重印加工程)。
(4)ワーク115の、抵抗溶接を実施する箇所に放射温度計120を所定の位置に配置し、センシングの準備をする(センシング準備工程)。
(5)溶接電極113に対し、定電流制御または定電力制御に加え、放射温度計120の計測結果に基づく定温制御にて、所定時間、電流を流す(加熱工程)。この時、放射温度計120及びモニタ124も同時に稼働している。
(6)所定時間が経過して電流を流し終わったら、必要に応じて、発熱した箇所に対し、図示しないエアノズル等で圧縮空気を吹き付ける等の強制冷却を施す。あるいは、自然空冷にて発熱した箇所の冷却を待つ(冷却工程)。
(7)発熱した箇所が十分に冷却されたことを確認後、溶接電極113の荷重を解き、接着されたワーク115と被接着部材116を土台117から取り外す(部材除去工程)。
[スイッチング制御部111:回路構成]
図2は、スイッチング制御部111の回路構成図である。
高周波トランス112の二次巻線に設置されているクランプ式電流センサ119の出力信号は、ブリッジダイオードD201に入力され、脈流の直流信号に変換される。前述のように、二次巻線には2000〜3000Aという、巨大な電流が流れるため、非接触のクランプ式電流センサ119から得られる信号の電圧は高い電圧になる。このため、ブリッジダイオードD201で整流後、アッテネータR202で所定の電圧まで降圧される。
同様に、高周波トランス112の一次巻線に設置されているクランプ式電流センサ118の出力信号も、ブリッジダイオードD203で整流後、アッテネータR204で所定の電圧まで降圧される。
高周波トランス112の二次巻線側の電流信号と一次巻線側の電流信号は、図1に示す制御部121によって制御される切り替えスイッチ205によってどちらか一方が選択される。これ以降、本発明の実施形態では高周波トランス112の二次巻線から得られる電流信号を例示して説明する。
第一オペアンプ206の反転側入力端子には、抵抗R207を介して参照電圧V208が印加される。
第一オペアンプ206の反転側入力端子と出力端子の間には第一ダイオードD209を介して抵抗R210が接続されており、第一オペアンプ206は周知の差動増幅回路を構成する。
第一オペアンプ206の出力信号は、電流信号と参照電圧V208との差動電圧よりなる誤差信号である。
一方、モニタ124はマイコンを内蔵しており、予め閾値温度を例えば500℃に設定している。この閾値温度は、金属板よりなるワーク115が溶融せず、かつ、熱可塑性樹脂の被接着部材116が溶融する温度である。モニタ124のデジタル出力端子は、対象物の表面温度が500℃を超えたことを放射温度計120が検出すると、負論理になる。
モニタ124のデジタル出力端子は周知のオープンコレクタあるいはオープンドレインであり、スイッチング制御部111内部ではプルアップ抵抗R211によって、常時高電位に釣り上げられている。例えば5Vである。
モニタ124のデジタル出力端子は、第二オペアンプ212の反転側入力端子に印加される。
第二オペアンプ212の非反転側入力端子には、例えば3.3Vの参照電圧V213が印加されており、第二オペアンプ212はコンパレータとして動作する。したがって、対象物の表面温度が500℃を下回っているときは、第二オペアンプ212の出力信号は低電位であり、対象物の表面温度が500℃を超えると、第二オペアンプ212の出力信号は高電位になる。
第一オペアンプ206の出力端子は、第一ダイオードD209のアノードに接続されている。
第二オペアンプ212の出力端子は、第二ダイオードD214のアノードに接続されている。
第一ダイオードD209と第二ダイオードD214のカソードは、それぞれコンパレータ215のプラス側入力端子に接続される。
第二オペアンプ212の出力信号が低電位のときは、第二オペアンプ212の出力信号の電位よりも第一オペアンプ206の出力信号の電位が高いので、第一オペアンプ206の出力信号がコンパレータ215のプラス側入力端子に印加される。
第二オペアンプ212の出力信号が高電位のときは、第一オペアンプ206の出力信号の電位よりも第二オペアンプ212の出力信号の電位が高いので、第二オペアンプ212の出力信号がコンパレータ215のプラス側入力端子に印加される。
ここで、図2に加えて図3も参照して、コンパレータ215の入力信号と出力信号と動作を説明する。
図3は、コンパレータ215に入力される入力信号と出力信号を示すグラフ及びタイムチャートである。
コンパレータ215のマイナス側入力端子には、鋸歯状波発振器216から出力される鋸歯状波信号S301が入力される。鋸歯状波信号S301は、例えば最低電圧が0.5Vであり、最高電圧が4.5Vである。コンパレータ215は、プラス側入力端子に入力される制御信号S302と、マイナス側入力端子に入力される鋸歯状波信号S301とを比較する。その結果、コンパレータ215は、周知のPWM信号S303を発する。コンパレータ215の出力信号はローアクティブとなっており、コンパレータ215の出力信号が低電位のときにPWM信号S303のオン状態になる。
しかし、対象物の表面温度が500℃を超えて、第二オペアンプ212の出力信号が高電位になると(5V)、第二オペアンプ212の出力信号の電圧が鋸歯状波発振器216の最高電圧(4.5V)よりも高くなるので、時刻t305以降では、PWM信号S303のオン状態がなくなってしまう。
すなわち、放射温度計120が対象物の温度が500℃を超えたことを検出すると、コンパレータ215からPWM信号S303が出力されなくなる。
コンパレータ215から出力されるPWM信号S303は、PWMスイッチ217を通じてドライバ218に入力される。ドライバ218はPWM信号S303に基づいてフルブリッジコンバータスイッチにゲート制御信号を出力する。
図1に示す制御部121から出力される制御信号は、第一オペアンプ206の非反転入力端子に接続されている切り替えスイッチ205の切り替え制御と、コンパレータ215の出力端子とドライバ218との間に接続されているPWMスイッチ217のオンオフ制御を行う。
制御部121は、押圧機構が溶接電極113をワーク115へ押圧していないことを検出しているときは、PWMスイッチ217をオフ制御する。
放射温度計120が対象物の表面温度が500℃を下回っていることを検出している間は、スイッチング制御部111はクランプ式電流センサ119の信号に基づく定電流制御を行う。このため、ワーク115には大電流が流れ、ワーク115の、溶接電極113が当てられている箇所の温度が上昇する。
しかし、放射温度計120が対象物の表面温度が500℃を超えたことを検出すると、スイッチング制御部111は直ちにPWM信号S303の出力を停止する。このため、ワーク115に流れていた電流は遮断され、ワーク115の、溶接電極113が当てられている箇所の温度が下降する。
なお、図2に示すスイッチング制御部111の、第一オペアンプ206、第二オペアンプ212、第一ダイオードD209、第二ダイオードD214、コンパレータ215及び鋸歯状波発振器216は、市販のスイッチング電源用PWMコントローラで実現可能である。例えば、米テキサスインスツルメント社のTL494等が利用可能である。
図4は、ワーク115と被接着部材116との前処理を示す概略図である。
金属板のワーク115の、被接着部材116と接着される接着面115aは、減圧プラズマ処理や常圧プラズマ処理等の表面処理が施される。表面処理が施された接着面115aの両端は、その裏側から溶接電極113によって押圧される(図4中、押圧箇所P401及びP402)。なお、被接着部材116のワーク115の接着面115aに対向する面に対しては、加熱によって溶融するため、ワーク115の接着面115aに施したような表面処理を施す必要はない。
従来技術における抵抗溶接は、2個の金属よりなるワーク115を接触させ、接触箇所に対し十分な圧力を加えた上で、大電流を流す。すると、ワーク115の接触箇所にジュール熱が発生し、2個の金属相互の接触箇所が瞬時に溶解する。必要な箇所の溶解が進行したら、直ちに電流を止める。すると、大電流によって発生するジュール熱によって溶解したワーク115の接触箇所は、ジュール熱の元となる電流がなくなったことにより発熱が停止され、直ちに冷却される。2個の金属よりなるワーク115が異種類の金属である場合、抵抗溶接によって接触箇所に合金が形成される。
本発明の実施形態に係る抵抗溶接装置101の場合、殆どの場合において、被接着部材116を構成する熱可塑性樹脂の融点は、金属のワーク115の融点より遥かに低い。また、熱可塑性樹脂と金属が合金を形成する可能性は殆どないため、抵抗溶接によって溶解する対象物は熱可塑性樹脂のみであり、金属のワーク115が溶融する可能性は極めて低い。つまり、金属板のワーク115と熱可塑性樹脂の異種抵抗溶接は、熱可塑性樹脂のみが溶融して、金属板のワーク115に接着される。したがって、熱可塑性樹脂が金属板のワーク115に良好に接着されるためには、溶融した熱可塑性樹脂が機械的接着(アンカー効果または投錨効果とも呼ばれる)によって接着面115aに食いつき易くするように、ワーク115の接着面115aに表面処理を施す必要がある。
減圧プラズマ処理や常圧プラズマ処理等のプラズマ処理には、上記の機械的接着に加え、金属の表面に官能基を付与し、親水性を向上させる効果がある。官能基(−OH等)がワーク115の表面に存在すると、ワーク115に加圧と熱を与えることで、異種物質の分子に含まれる水素同士が結合して接合する、水素結合が生じる。この水素結合は分子同士が引き付け合う分子間力(ファンデルワールス力)に基づく物理的接着より強固である。
予め、ワーク115の接着面115aに施す表面処理の具体的手法は様々な手法が考えられる。例えば上記のプラズマ処理の他、微細粒子を高速で叩きつけることで表面を荒らす逆スパッタリング処理、硬い粒子等で対象物を擦ることで表面を荒らすサンディング処理、化学薬品で表面を金属表面に微細なポーラス構造を形成するエッチング処理等が考えられる。何れの手法もアンカー効果による接着強度の向上が期待できる。また、例えば特許第5816763号に開示される、レーザ光で金属表面に溝を設ける接合技術にも、本発明を適用することで、レーザスキャニング加工の要求精度を軽減することが期待できる。
発明者らによる実験では、減圧プラズマ処理及び常圧プラズマ処理で極めて良好な接着強度を達成することができた。
図5Aは、抵抗溶接装置101の、溶接電極113に流れる電流と、放射温度計120が測定した接着箇所の温度変化の一例を示すグラフである。
図5Bは、放射温度計120が測定した接着箇所の温度と、モニタ124が出力する論理信号と、溶接電極113に流れる電流の一例を示すグラフ及びタイムチャートである。図5Bは、図5Aにおける温度変化の一部分を拡大したイメージである。
図5Aに示すように、時刻t501において、溶接電極113を通じてワーク115に3000Aの電流S502が流れると、ワーク115の表面温度S503は上昇する。電流はスイッチング制御部111によって3000Aを維持する制御が行われるが、時刻t504において放射温度計120がワーク115の表面温度S503が500℃を超えたことを検出すると、電流S502は遮断される。そして、時刻t505において放射温度計120がワーク115の表面温度S503が500℃を下回ったことを検出すると、電流S502は再び流れる。このように、時刻t504と時刻t505の状態が繰り返される。
図5Bに、時刻t504と時刻t505の繰り返し状態を、放射温度計120の出力論理と電流と共に拡大して示す。放射温度計120の温度判定信号に基づく電流のオンオフ制御は、放射温度計120とスイッチング制御部111、そしてフルブリッジコンバータスイッチの応答特性により、実際には、500℃を超えて所定の時間が経過した時点、及び500℃を下回って所定の時間が経過した時点で、放射温度計120の出力論理と電流のオンオフの切り替わりが生じる。また、あらゆる加熱される物体の温度特性は、物体そのものに積分要素を有する。このため、ワーク115表面の温度変化にはオーバーシュート及びアンダーシュートが生じる。
すなわち、本発明の実施形態に係る抵抗溶接装置101は、放射温度計120を使用した定温制御を実施する。放射温度計120の計測間隔が長くなってしまうと、ワーク115表面の温度上昇のオーバーシュートが大きくなりすぎて、熱可塑性樹脂が必要以上に溶融してしまう。このため、熱可塑性樹脂の保持すべき原型が崩れてしまう虞が極めて高くなる。したがって、良好な定温制御を実現するためには、放射温度計120の計測間隔は最低でも10msec以下、好ましくは1msec以下が望ましい。
周知のように、ジュール熱は電熱体に投入される電力と時間の積である。ジュール熱の管理さえ適切に行えば、金属板と熱可塑性樹脂の異種抵抗溶接は良好に完遂するものと思われるかも知れない。しかし、金属に対してジュール熱を連続的に発生させれば、時間の経過とともに温度が上昇する。このような場合には、過大なジュール熱は熱可塑性樹脂を必要以上に溶融させてしまい、熱可塑性樹脂の保持すべき原型が崩れてしまう虞が極めて高くなる。
そこで、本発明の実施形態に係る抵抗溶接装置101では、放射温度計120を用いて加熱箇所の表面温度を計測し、加熱箇所の表面温度が予め定めた閾値を超えたら、直ちにワーク115に流す電流を停止することで、被接着部材116を構成する熱可塑性樹脂の過剰な溶融を防止するようにしている。そして、加熱箇所の表面温度が予め定めた閾値を下回ったら、直ちに停止していた電流を再びワーク115に流す。これを繰り返すことで、被接着部材116に対する適切な溶融温度を維持する。溶融温度を維持できる状態であれば、後は溶融時間を適切に管理することで、金属板と熱可塑性樹脂の異種抵抗溶接が良好に完遂できる。
図5Aに示すように、異種抵抗溶接において電流を流す時間はおよそ1.5秒、あるいは1秒以下で完了する。但し、敢えて低電流をワーク115に流して発熱を低く抑え、例えば10秒程度の比較的長時間の通電を行うことで、被接着部材116を構成する熱可塑性樹脂の損傷を少なく抑え、接着強度を高くすることができる可能性も考えられる。
これまで、金属板と熱可塑性樹脂との接着には、エポキシ系接着剤等を用いた、長時間の接着工程が必要であった。本発明の実施形態に係る抵抗溶接装置101を用いれば、極めて短時間で接着工程を完遂できる。したがって、工場等の製造工程において、サイクルタイムの短縮化に貢献できる。
以上、本発明の実施形態に係る抵抗溶接装置101を説明したが、これより抵抗溶接装置101の応用例を説明する。
(1)市販のグルーガンに使用されるホットメルト接着剤では比較的低温で溶融するエチレン酢酸ビニル等が使用されるが、本発明の実施形態に係る抵抗溶接装置101は、ホットメルト接着剤よりも融点が高い、多種多様な熱可塑性樹脂を金属板に接着することが可能である。このことから、本発明の実施形態に係る抵抗溶接装置101では、多様な熱可塑性樹脂をホットメルト接着剤の代わりに使用することが可能である。
図6は、本発明の実施形態に係る抵抗溶接装置101の、第一の応用例を示す概略図である。
溶接電極113の直下には金属板のワーク115が置かれている。ワーク115の直下の、溶接電極113によって押圧される箇所には、熱可塑性樹脂の薄片601が設けられており、更にその下には熱硬化性樹脂あるいは高融点樹脂の被接着部材602が置かれている。
ワーク115と被接着部材602は、そのままでは接着剤なしに接着させることはできない。また、そのままでは本発明の実施形態に係る抵抗溶接装置101で接着することもできない。
通常であれば、十分な接着強度を得るため、ワーク115と樹脂板との接着にはエポキシ系接着剤等が用いられる。しかし、本発明の実施形態に係る抵抗溶接装置101を用いれば、グルーガンには使用できない融点の高い熱可塑性樹脂の薄片601をホットメルト接着剤として使用することができる。そして、エチレン酢酸ビニル等の、グルーガンに使用されるホットメルト接着剤よりも高い接着強度を実現することができる。更に、抵抗溶接装置101は極めて短時間で接着工程を完遂できるので、工場等の製造工程において、サイクルタイムの短縮化に貢献することができる。
なお、図6においても、図4と同様に、ワーク115の接着面115aと共に、被接着部材602の側にも表面処理を施すことが好ましい。
(2)上述の実施形態における抵抗溶接装置101では、DC/DCコンバータトポロジ(DC/DC Converter Topology)としてフルブリッジコンバータスイッチを採用したが、フルブリッジに代えてハーフブリッジコンバータスイッチを採用することも可能である。具体的には、第一IGBT106、第二IGBT107、第三IGBT108及び第四IGBT109のうち、第三IGBT108及び第四IGBT109、または第一IGBT106及び第二IGBT107の何れかを、コンデンサにて置換する。
図7は、本発明の実施形態に係る抵抗溶接装置101の、第二の応用例を示す回路図の一部抜粋である。
図7に示す回路図の一部抜粋において、第三IGBT108の代わりに、コンデンサC701の一端が電源電圧ノードに接続されている。同様に、第四IGBT109の代わりに、コンデンサC702の一端が接地ノードに接続されている。そして、コンデンサC701の他端とコンデンサC702の他端が、高周波トランス112の一次巻線に接続されている。
以上の構成により、フルブリッジコンバータスイッチと比べると出力電圧が半分になるが、上述の実施形態に係る抵抗溶接装置101と同様の動作を実現することができる。
フルブリッジコンバータスイッチ及びハーフブリッジコンバータスイッチを、少なくとも電源電圧ノードと接地ノードとの間にハイサイドスイッチ(第一IGBT106又は第三IGBT108)とローサイドスイッチ(第二IGBT107又は第四IGBT109)が直列接続されているブリッジ式コンバータスイッチと総称できる。
(3)上述の実施形態における抵抗溶接装置101では、電流センサにコイルを用いたクランプ式電流センサ119を採用したが、電流センサは多種多様のものが利用可能である。例えば、ホール素子を用いたホール式電流センサ、磁気抵抗効果素子(MR素子)を用いたMR式電流センサ等も利用可能である。
(4)上述の実施形態における抵抗溶接装置101では、スイッチング制御部111が電流センサから得られる電流信号に基づく定電流制御を行っていた。この定電流制御に代えて、スイッチング制御部111が定電力制御を実施してもよい。
具体的には例えば、クランプ式電流センサ119から得られる電流信号とは別に、高周波トランス112の二次巻線の端子間電圧を検出したアナログ電圧信号を取得する。そして、電流信号と電圧信号をアナログ乗算器で乗算して、電力信号を得る。または、アナログ電流信号とアナログ電圧信号をそれぞれA/D変換した上で、マイコン等で乗算し、得られた電力データをD/A変換して、電力信号を得てもよい。
少なくとも電力信号には電流信号の要素が含まれているため、定電流制御と定電力制御は、電流信号に基づく制御であると言える。
本発明の実施形態においては、抵抗溶接装置101を開示した。
金属板よりなるワーク115と熱可塑性樹脂の異種抵抗溶接を、ワーク115表面の温度を直接的に計測することで、定電流制御による加熱を遮断する。すなわち、定温制御を行う。これにより、過剰な加熱を防止し、短時間で異種抵抗溶接を良好に完遂できる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
101…抵抗溶接装置、102…商用電源、103…溶接電源装置、106…第一IGBT、107…第二IGBT、108…第三IGBT、109…第四IGBT、111…スイッチング制御部、112…高周波トランス、113…溶接電極、114…加圧機構、115…ワーク、115a…接着面、116…被接着部材、117…土台、118…クランプ式電流センサ、119…クランプ式電流センサ、120…放射温度計、121…制御部、122…操作部、123…表示部、124…モニタ、205…スイッチ、206…第一オペアンプ、212…第二オペアンプ、215…コンパレータ、216…鋸歯状波発振器、217…PWMスイッチ、218…ドライバ、601…薄片、602…被接着部材

Claims (7)

  1. 直流電圧が印加され、少なくとも電源電圧ノードと接地ノードとの間にハイサイドスイッチとローサイドスイッチが直列接続されているブリッジ式コンバータスイッチと、
    一次巻線が前記ブリッジ式コンバータスイッチに接続される高周波トランスと、
    前記高周波トランスの二次巻線に接続され、金属のワークに電流を流すための溶接電極と、
    前記高周波トランスの前記一次巻線及び/または前記二次巻線に設置される電流センサと、
    前記ワークと接触する熱可塑性樹脂よりなる被接着部材と、
    前記溶接電極を前記ワークに押圧するための加圧機構と、
    前記電流センサから得られる電流信号に基づいて、前記溶接電極に流す電流または電力を一定に維持する制御を実施すべく前記ブリッジ式コンバータスイッチを制御するスイッチング制御部と、
    前記加圧機構が前記溶接電極を前記ワークに押圧しているときに前記スイッチング制御部をオン制御する制御部と
    よりなる、前記ワークと前記被接着部材とを接着する抵抗溶接装置であって、
    前記スイッチング制御部は、前記ワークの、抵抗溶接を実施する箇所の温度が所定の閾値を超えたことを検出して、前記溶接電極を通じて前記ワークに流す電流を遮断または減少させ、前記ワークの前記箇所の温度が所定の閾値を下回ったことを検出して、前記遮断または減少させていた、前記溶接電極を通じて前記ワークに流す電流または電力を、通常値に復帰させる制御を行う、
    抵抗溶接装置。
  2. 前記所定の閾値は、前記ワークが溶融せず、かつ、前記被接着部材が溶融する温度である、請求項1に記載の抵抗溶接装置。
  3. 更に、
    前記ワークの前記箇所の温度を計測する放射温度計と
    を具備し、
    前記スイッチング制御部は、前記放射温度計の計測結果に基づき、前記ワークの前記箇所の温度が所定の閾値を超えたことを検出して、前記溶接電極を通じて前記ワークに流す電流を遮断させ、前記ワークの前記箇所の温度が所定の閾値を下回ったことを検出して、前記遮断させていた、前記溶接電極を通じて前記ワークに流す電流または電力を、通常値に復帰させる制御を行う、請求項2に記載の抵抗溶接装置。
  4. 前記ワークの、前記被接着部材と接着される接着面は、前記溶接電極を通じて前記ワークに電流を流すに先立ち、表面処理が施されるものである、請求項3に記載の抵抗溶接装置。
  5. 前記表面処理はプラズマ処理である、請求項4に記載の抵抗溶接装置。
  6. 金属板よりなるワークの、熱可塑性樹脂の被接着部材に対する被接着面に対し、表面処理を施す表面処理工程と、
    土台の上に前記被接着部材と前記ワークを据え置く固定工程と、
    前記ワークの、抵抗溶接を実施する箇所に溶接電極を当てて、所定の加圧機構によって荷重を加える荷重印加工程と、
    前記ワークの、前記箇所に放射温度計を所定の位置に配置し、センシングの準備をするセンシング準備工程と、
    前記溶接電極に対し、定温制御にて、所定時間、電流を流すことで前記ワークの前記箇所を加熱させる加熱工程と、
    所定時間が経過して電流を流し終わったら、必要に応じて、発熱した前記箇所の冷却を行う冷却工程と、
    発熱した前記箇所が十分に冷却されたことを確認後、前記溶接電極の荷重を解き、接着された前記ワークと前記被接着部材を前記土台から取り外す部材除去工程と
    を含む、抵抗溶接方法。
  7. 前記表面処理はプラズマ処理である、請求項6に記載の抵抗溶接方法。
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