JP2008246695A - 金属張積層体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ステンレス層とポリイミド樹脂層の熱圧着における密着性を改善できる金属張積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】金属張積層体の製造方法は、ステンレス層11となるステンレス基材の表面をプラズマで処理する表面処理工程と、ステンレス基材の表面処理された面にポリイミド樹脂層12となる樹脂板を重ね合わせ、熱圧着する工程と、を備えている。ポリイミド樹脂層12は単一層又は複数層からなり、且つ、少なくともステンレス基材の表面処理された面に接する層を構成するポリイミド樹脂が、0.6〜1.5重量%の範囲内の吸湿率を有する熱可塑性ポリイミド樹脂である。
【選択図】図2
【解決手段】金属張積層体の製造方法は、ステンレス層11となるステンレス基材の表面をプラズマで処理する表面処理工程と、ステンレス基材の表面処理された面にポリイミド樹脂層12となる樹脂板を重ね合わせ、熱圧着する工程と、を備えている。ポリイミド樹脂層12は単一層又は複数層からなり、且つ、少なくともステンレス基材の表面処理された面に接する層を構成するポリイミド樹脂が、0.6〜1.5重量%の範囲内の吸湿率を有する熱可塑性ポリイミド樹脂である。
【選択図】図2
Description
本発明は、ステンレス層とポリイミド樹脂層とを積層してなる金属張積層体の製造方法に関し、より詳しくは磁気ヘッドを含むスライダを弾性的に支持する配線一体型サスペンションの製造に用いられる金属張積層体の製造方法に関する。
ハードディスク装置では、磁気ヘッドを含むスライダが、サスペンションによって弾性的に支持されて、記録媒体に対向するように配置される。記録媒体が回転すると、記録媒体とスライダとの間を通過する空気流によってスライダに揚力が生じ、スライダは、この揚力によって記録媒体の表面からわずかに浮上するようになっている。従って、サスペンションの剛性等の機械的な特性は、スライダの浮上量や姿勢に大きな影響を与える。従来、ハードディスクドライブに搭載されているサスペンション(以下、「HDDサスペンション」と記す)として、ワイヤレスタイプのHDDサスペンションが使用されている。しかし、近年の高容量化の進展に従い、記憶媒体であるディスクに対し浮力と位置精度が安定した配線一体型のHDDサスペンションへと大半が置き換わっている。配線一体型HDDサスペンションとしては、トレース・サスペンション・アッセンブリ(TSA)法と呼ばれる、ステンレス箔−ポリイミド樹脂(絶縁体樹脂層)−銅箔(導体層)の積層体をエッチング加工により所定形状に加工して使用するタイプのものが知られている。
ステンレス箔とポリイミド樹脂のシートと加熱圧着して形成されるHDDサスペンション用積層体の製造方法として、特許文献1が提案されている。特許文献1では、ステンレス箔と接するポリイミド樹脂層に、良好な接着性を示す熱可塑性ポリイミド樹脂が用いられている。しかしながら、このような熱可塑性ポリイミド樹脂を使用しても、高温・高湿度の条件においては、ステンレス箔とポリイミド樹脂層との接着強度を保持しにくい場合があり、ステンレス箔の剥離が生じるという問題があった。
また、例えば特許文献2および特許文献3では、ステンレス基材上にポリイミド樹脂層及び銅箔層が遂次に形成されてなるHDDサスペンション用積層体及びその製造方法が提案されている。これら特許文献2および3には、ステンレス基材上に、ポリイミド樹脂溶液又はポリイミド前駆体樹脂溶液を塗布する工程を含む技術が記載されている。しかし、特許文献2および3の製造方法では、加熱圧着された銅箔とポリイミド樹脂の面内での密着性にばらつきが生じることがあり、特に、配線を微細回路化する場合に銅細線が剥離しやすいという問題があった。
さらに、例えば特許文献4では、ステンレス表面を親水性ポリマーでコーティングするための前処理として、ステンレス鋼の表面を炭化水素プラズマに曝露して、金属表面に炭化水素残基を電着させる方法が開示されている。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、ステンレス層とポリイミド樹脂層の熱圧着における密着性を改善できる金属張積層体の製造方法を提供することにある。また、本発明の第2の目的は、さらに、導体層とポリイミド樹脂層の密着性についても改善できる金属張積層体の製造方法を提供することにある。
本発明の第1の観点の金属張積層体の製造方法は、ステンレス層にポリイミド樹脂層を積層してなる金属張積層体の製造方法であって、
前記ステンレス層となるステンレス基材の表面をプラズマで処理する表面処理工程と、
前記ステンレス基材の表面処理された面に前記ポリイミド樹脂層となる樹脂板を重ね合わせ、熱圧着する工程と、
を備えている。
前記ステンレス層となるステンレス基材の表面をプラズマで処理する表面処理工程と、
前記ステンレス基材の表面処理された面に前記ポリイミド樹脂層となる樹脂板を重ね合わせ、熱圧着する工程と、
を備えている。
本発明の第2の観点の金属張積層体の製造方法は、ステンレス層、ポリイミド樹脂層及び導電性金属層を積層してなる金属張積層体の製造方法であって、
前記ステンレス層となるステンレス基材の表面をプラズマで処理する表面処理工程と、
前記ポリイミド樹脂層と前記導電性金属層とを積層してなる樹脂板のポリイミド樹脂層面と前記ステンレス基材の表面処理された面とを重ね合わせ、熱圧着する工程と、
を備えている。
前記ステンレス層となるステンレス基材の表面をプラズマで処理する表面処理工程と、
前記ポリイミド樹脂層と前記導電性金属層とを積層してなる樹脂板のポリイミド樹脂層面と前記ステンレス基材の表面処理された面とを重ね合わせ、熱圧着する工程と、
を備えている。
本発明の第2の観点の金属張積層体の製造方法において、前記樹脂板が、前記導電性金属層となる導電性金属膜の表面にポリイミド前駆体樹脂溶液を塗布した後、熱処理して乾燥及び硬化させることにより形成されていてもよい。
また、上記第1および第2の観点の金属張積層体の製造方法において、前記ポリイミド樹脂層が単一層又は複数層からなり、且つ、少なくとも前記ステンレス基材の表面処理された面に接する層を構成するポリイミド樹脂が、熱可塑性ポリイミド樹脂であってもよい。この場合、熱可塑性ポリイミド樹脂が、0.6〜1.5重量%の範囲内の吸湿率を有するものであってもよい。
本発明の第3の観点の配線一体型サスペンションの製造方法は、磁気ヘッドを含むスライダを記録媒体に対向するように弾性的に支持する配線一体型サスペンションの製造方法であって、
上記第1の観点または第2の観点の金属張積層体の製造方法により金属張積層体を製造する工程と、
前記金属張積層体を加工して配線一体型サスペンションを製造する工程と、
を備えている。
上記第1の観点または第2の観点の金属張積層体の製造方法により金属張積層体を製造する工程と、
前記金属張積層体を加工して配線一体型サスペンションを製造する工程と、
を備えている。
本発明の第4の観点の金属張積層体の製造方法は、第1のステンレス層、ポリイミド樹脂層及び第2のステンレス層を積層してなる金属張積層体の製造方法であって、
前記第1のステンレス層となる第1のステンレス基材の表面及び/又は前記第2のステンレス層となる第2のステンレス基材の表面をプラズマで処理する表面処理工程と、
前記第1のステンレス基材と前記第2のステンレス基材との間に前記ポリイミド樹脂層となる樹脂板が位置し、かつ、前記第1のステンレス基材の表面処理された面及び/又は前記第2のステンレス基材の表面処理された面に前記樹脂板が接した状態に重ね合わせ、熱圧着する工程と、
を備えている。
前記第1のステンレス層となる第1のステンレス基材の表面及び/又は前記第2のステンレス層となる第2のステンレス基材の表面をプラズマで処理する表面処理工程と、
前記第1のステンレス基材と前記第2のステンレス基材との間に前記ポリイミド樹脂層となる樹脂板が位置し、かつ、前記第1のステンレス基材の表面処理された面及び/又は前記第2のステンレス基材の表面処理された面に前記樹脂板が接した状態に重ね合わせ、熱圧着する工程と、
を備えている。
本発明の第4の観点の金属張積層体の製造方法において、前記ポリイミド樹脂層が単一層又は複数層からなり、且つ、前記第1のステンレス基材及び/又は前記第2のステンレス基材の表面処理された面に接する層を構成するポリイミド樹脂が、熱可塑性ポリイミド樹脂であってもよい。この場合、熱可塑性ポリイミド樹脂が、0.6〜1.5重量%の範囲内の吸湿率を有していてもよい。
本発明の第5の観点のロードビームの製造方法は、磁気ヘッドを含むスライダを記録媒体に対向するように弾性的に支持する配線一体型サスペンションにおけるロードビームの製造方法であって、
上記第4の観点の金属張積層体の製造方法により金属張積層体を製造する工程と、
前記金属張積層体を加工してロードビームを製造する工程と、
を備えている。
上記第4の観点の金属張積層体の製造方法により金属張積層体を製造する工程と、
前記金属張積層体を加工してロードビームを製造する工程と、
を備えている。
本発明の金属張積層体の製造方法によれば、ステンレス基材の表面をプラズマで処理する簡便な表面処理により、熱圧着によるステンレス層とポリイミド樹脂層との接着力を飛躍的に向上させることができる。また、本発明方法は、熱圧着による接着強度の保持が困難であった吸湿率の高い種類のポリイミド樹脂に適用した場合でも、十分な接着力向上効果が得られる。したがって、本発明の金属張積層体の製造方法を、HDDサスペンションの製造に適用することで、ステンレス層とポリイミド樹脂層との剥離が生じにくく、信頼性の高いHDDサスペンションを高い歩留まりで製造できるという効果を奏する。
以下、図面を参照して、本発明の一実施の形態に係るHDDサスペンション用金属張積層体の製造方法について詳細に説明する。はじめに、図1を参照して、本実施の形態が適用されるサスペンション用金属張積層体を用いて製造される配線一体型HDDサスペンションの構成の一例について説明する。図1は、配線一体型HDDサスペンションの平面図である。この配線一体型HDDサスペンションは、磁気ヘッドを含むスライダを、記録媒体に対向するように弾性的に支持するものである。
図1に示した配線一体型HDDサスペンションは、例えばステンレス鋼によって形成された板ばね状のロードビーム1、このロードビーム1の一端部に取り付けられたフレキシャ2とを備えている。フレキシャ2の一端部には、磁気ヘッドを含む図示しないスライダが取り付けられるようになっている。フレキシャ2は、スライダに適度な自由度を与えるものである。フレキシャ2において、スライダが取り付けられる部分には、スライダの姿勢を一定に保つためのジンバル部3が設けられている。ロードビーム1の他端部は、図示しないアクチュエータに取り付けられるようになっている。このアクチュエータは、スライダが記録媒体のトラック横断方向に移動するようにHDDサスペンションを駆動する。フレキシャ2は、一端が磁気ヘッドに接続される配線4を含んでいる。
なお、本実施の形態が適用されるHDDサスペンション用金属張積層体を用いて製造されるHDDサスペンションの構成は、図1に示したものに限らない。例えば、HDDサスペンションは、図1におけるロードビーム1およびフレキシャ2の代わりに、これらが一体化されたHDDサスペンション本体を備えたものであってもよい。この場合には、HDDサスペンション本体が配線4を含む。そして、本実施の形態が適用されるHDDサスペンション用金属張積層体は、HDDサスペンション本体を製造するために用いられる。
[第1の実施の形態]
次に、図2を参照して、第1の実施の形態に係る金属張積層体の製造方法によって製造される金属張積層体(以下、単に「積層体」と言う。)10について説明する。図2は、積層体10の一部を示す断面図である。積層体10は、ステンレス層11と、ポリイミド樹脂層12とを備えている。本実施の形態におけるステンレス層11は、ステンレスからなる層であればその材質に特に制限はないが、ばね特性や寸法安定性の観点から、例えばSUS304のような高弾性、高強度のステンレス箔が好ましく、300℃以上の温度でアニール処理されたSUS304が特に好ましい。
次に、図2を参照して、第1の実施の形態に係る金属張積層体の製造方法によって製造される金属張積層体(以下、単に「積層体」と言う。)10について説明する。図2は、積層体10の一部を示す断面図である。積層体10は、ステンレス層11と、ポリイミド樹脂層12とを備えている。本実施の形態におけるステンレス層11は、ステンレスからなる層であればその材質に特に制限はないが、ばね特性や寸法安定性の観点から、例えばSUS304のような高弾性、高強度のステンレス箔が好ましく、300℃以上の温度でアニール処理されたSUS304が特に好ましい。
ポリイミド樹脂層12は、ポリイミド樹脂を含む層であれば特に限定されるものではない。ポリイミド樹脂層12となる樹脂板12a(図5参照)は、例えばポリイミド樹脂からなるフィルム(シート)であってもよく、あるいは、例えばステンレス箔、銅箔、ガラス板、樹脂フィルム等の基材にポリイミド樹脂膜が積層された状態のものであってもよい。しかし、ポリイミド樹脂層12となる樹脂板12aの少なくとも片面は、表面にポリイミド樹脂が露出した状態で存在し、表面処理されたステンレス層11と重ね合わせた際に、熱圧着される面を有している。
ポリイミド樹脂層12を形成するポリイミド樹脂としては、いわゆるポリイミド樹脂を含めて、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリイミドエステル、ポリエーテルイミド、ポリシロキサンイミド等の構造中にイミド基を有する耐熱性樹脂を挙げることができる。また、市販のポリイミド樹脂又はポリイミドフィルムも利用可能である。
ポリイミド樹脂層12は、単一層のポリイミド樹脂で構成されるものでもよいが、好ましくは複数のポリイミド樹脂薄層からなる積層構造のものがよい。図3に、ポリイミド樹脂層12が、ポリイミド樹脂薄層121、ポリイミド樹脂薄層122およびポリイミド樹脂薄層123からなる積層構造である例を示した。ポリイミド樹脂層12を複数のポリイミド樹脂薄層121,122,123から構成する場合、上記のような表面処理されたステンレス層11の表面処理面と接するポリイミド樹脂薄層121には、ステンレス層11に対して良好な接着性を示すものを使用することが好ましい。ステンレス層11と良好な接着性を示すポリイミド樹脂薄層121としては、熱可塑性のポリイミド樹脂が好ましく選択される。このようなポリイミド樹脂は、そのガラス転移温度が350℃以下、より好ましくは200〜320℃の範囲内のものがよい。なお、図3に示したポリイミド樹脂層12は、あくまで例示であり、3層のポリイミド薄層からなるものに限るものではなく、2層もしくは4層以上でもよい。
ポリイミド樹脂は、ジアミンと酸無水物とを溶媒の存在下で反応させることにより製造できる。ポリイミド樹脂を構成するジアミンとしては、例えば、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノ-2’-メトキシ-ベンズアニリド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニル、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノベンズアニリド、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[1-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[1-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4,4'-(4-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、ビス[4,4'-(3-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、9,9-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’-メチレンジ-o-トルイジン、4,4’-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4’-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、3,3’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、ベンジジン、3,3’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシベンジジン、4,4''-ジアミノ-p-テルフェニル、3,3''-ジアミノ-p-テルフェニル、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4'-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン等を挙げることができる。これらの中でも特に、表面処理されたステンレス層11と接するポリイミド樹脂層12を構成する好ましいジアミンとしては、1,3-ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2-ジメチルプロパン(DANPG)、2,2-ビス[4-(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、1,3−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、パラフェニレンジアミン(p-PDA)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DAPE34)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DAPE44)から選ばれる1種以上のジアミンが挙げられる。
また、ポリイミド樹脂を構成する酸無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルフォンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、2,2',3,3'-、2,3,3',4'-又は3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物等が好ましく挙げられる。また、3,3'',4,4''-、2,3,3'',4''-又は2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-又は3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナンスレン-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,3,5,6-シクロヘキサン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,6-又は2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-(又は1,4,5,8-)テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-(又は2,3,6,7-)テトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレン-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物等を挙げることもできる。この中でも特に、表面処理されたステンレス層11と接するポリイミド樹脂層12を構成する好ましい酸無水物としては、無水ピロメリット酸(PMDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルフォンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)から選ばれる1種以上の酸無水物が挙げられる。上記ジアミン及び酸無水物については、それぞれその1種のみを使用してもよいし、あるいは2種以上を併用することもできる。上記のジアミン及び酸無水物を使用することで、ポリイミド樹脂層12とステンレス層11との接着性が向上する。
また、上記以外のジアミン及び酸無水物を併用することもでき、この場合、上記以外のジアミン又は酸無水物の使用割合は90モル%以下、好ましくは50モル%以下とすることがよい。ジアミン及び酸無水物の種類や、2種以上のジアミン又は酸無水物を使用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、ポリイミド樹脂層12の熱膨張性、接着性、ガラス転移温度等を制御することができる。
本実施の形態において、表面処理されたステンレス層11との熱圧着による密着性の効果が発揮できるポリイミド樹脂層12の材質として、その吸湿率が0.6〜1.5重量%の性質を有する熱可塑性のポリイミド樹脂が好ましく選ばれる。このような性質を有する熱可塑性のポリイミド樹脂によって構成されるポリイミド樹脂層12は、高温高湿度における環境下における接着強度の低下が生じやすいことから、表面処理による効果が顕著に現れる。このような熱可塑性のポリイミド樹脂を構成するジアミンは、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン(DANPG)、2,2−ビス[4-(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、1,3-ビス-(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、パラフェニレンジアミン(p-PDA)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DAPE34)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DAPE44)から選ばれる1種以上をジアミン成分全体の50モル%以上、好ましくは80モル%以上含むジアミンが挙げられる。また、酸無水物は、無水ピロメリット酸(PMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルフォンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)から選ばれる1種以上を酸無水物成分の50モル%以上、好ましくは80モル%以上含む酸無水物が挙げられる。
本実施の形態において、ポリイミド樹脂層12となる樹脂板12aを製造する方法は特に限定されない。例えば、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸の樹脂溶液を任意の基材上に塗布した後に乾燥、イミド化して、基材上にポリイミド樹脂膜を形成せしめる方法がある。ポリアミック酸の樹脂溶液を基材上に塗布する方法としては特に制限されず、例えば、コンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて塗布することが可能である。
ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸の合成に使用する溶媒については、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、n−メチルピロリジノン、2−ブタノン、ジグライム、キシレン等が挙げられ、これらの1種若しくは2種以上を併用することもできる。
合成されたポリアミック酸は溶液とされて使用される。通常、ポリアミック酸は、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。また、ポリアミック酸は一般に溶媒可溶性に優れるので、有利に使用される。
ポリアミック酸を基材に塗布した後の乾燥、イミド化の方法も特に制限されず、例えば、80〜400℃の範囲内の温度条件で、1〜60分間の範囲内の時間加熱するといった熱処理が好適に採用される。このような熱処理を行うことで、ポリアミック酸の脱水閉環が進行するため、基材上にポリイミド樹脂膜を形成させて樹脂板12aを製造することができる。基材上にポリイミド樹脂膜を形成させた場合、そのまま樹脂板12aとして使用してもよく、あるいは、ポリイミド樹脂膜を基材から剥離して樹脂板12aとして使用してもよい。
ポリイミド樹脂層12を複数のポリイミド樹脂薄層の積層構造とする場合(図3参照)、ポリイミド樹脂薄層の上に異なる構成成分からなる他のポリイミド樹脂を順次塗布して形成することができる。ポリイミド樹脂層が3層以上からなる場合、同一の構成のポリイミド樹脂を2回以上使用してもよい。層構造が最も簡単である単層のポリイミド樹脂層12は、工業的に有利に得ることができる。また、ポリイミド樹脂層12の厚みは、3〜100μm、好ましくは3〜50μmの範囲内とすることがよい。
次に、図4および図5を参照して、本実施の形態に係る積層体10の製造方法について説明する。図4および図5は、本実施の形態に係る積層体10の製造方法を説明するための断面図である。本実施の形態に係る積層体10の製造方法は、ステンレス層11となるステンレス基材11aの表面をプラズマで処理する表面処理工程と、表面処理されたステンレス基材11aの上に、樹脂板12aのポリイミド樹脂面を重ね合わせ、熱圧着させてポリイミド樹脂層12を形成する工程とを備えている。
本実施の形態では、まず、ステンレス基材11aのポリイミド樹脂層12と接する面をプラズマで処理する(表面処理工程)。図4は、プラズマで表面処理した後のステンレス基材11aを示しており、符号Sは表面処理面である。プラズマによる表面処理は、以下のように行うことができる。まず、ステンレス基材11aをプラズマ処理装置(図示省略)内に収容する。次に、プラズマ処理装置内でプラズマを生成させて、このプラズマによりステンレス基材11aの表面を処理する。この際、プラズマ処理装置内を例えばArなどの不活性ガス雰囲気に調整し、0.1Pa〜1.3×105Paの範囲内の圧力に保持し、0.1kw〜0.5kwの範囲内の電気量で放電させてプラズマを生成させることが望ましい。上記範囲よりも電力が低い場合、プラズマ放電が安定せず、反対に高い場合は、ステンレス基材11aの表面への影響が大きくなり過ぎて、かえって接着力の安定性が損なわれる。表面処理によって、ステンレス基材11aの表面処理面Sの濡れ性を向上させることができる。
次に、図5に示したように、ステンレス基材11aの表面処理された面に、樹脂板12aのポリイミド樹脂面を重ね合わせ、加圧して熱圧着する(熱圧着工程)。ステンレス基材11aと樹脂板12aを熱圧着する方法は特に制限されず、適宜公知の方法を採用することができる。ステンレス基材11aと樹脂板12aを張り合わせる方法としては、通常のハイドロプレス、真空タイプのハイドロプレス、オートクレーブ加圧式真空プレス、連続式熱ラミネータ等を用いる方法を挙げることができる。これらの方法の中でも、十分なプレス圧力が得られ、残存揮発分の除去も容易に行え、更にステンレス基材11aの酸化を防止することができるという観点から、真空ハイドロプレス、連続式熱ラミネータ等を用いることが好ましい。
また、熱圧着は、150〜450℃の範囲内の温度に加熱しながらステンレス基材11aと樹脂板12aをプレスすることが好ましい。プレス時のより好ましい温度は、150〜400℃の範囲内であり、更に好ましくは150〜380℃の範囲内である。また、プレス圧力については、使用するプレス機器の種類にもよるが、通常、1〜50MPa程度の範囲内の圧力が適当である。
熱圧着に使用する樹脂板12aは、前記のようにポリイミド樹脂膜の片面に導電性金属膜(図示省略)が積層されたものであってもよい。積層する導電性金属膜は、例えば銅箔又は合金銅箔から形成されることが好ましい。ここで、合金銅箔とは、銅を必須として含有し、クロム、ジルコニウム、ニッケル、シリコン、亜鉛、ベリリウム等の銅以外の少なくとも1種以上の異種の元素を含有する合金箔を意味し、銅含有率90重量%以上のものを言う。合金銅箔としては、銅含有率95重量%以上のものを使用することが好ましい。また、導電性金属膜の厚みは5〜25μmの範囲内とすることができ、好ましくは7〜12μmの範囲内、更に好ましくは8〜10μmの範囲内とすることができる。
以上のようにして製造される積層体10は、ステンレス基材11aの表面をプラズマで処理したことにより、ステンレス層11とポリイミド樹脂層12の密着性に優れたものとなる。したがって、ステンレス層11とポリイミド樹脂層12との剥離が発生しにくく、積層体10を用いるHDDサスペンションの信頼性と歩留まりを向上させることができる、という効果を奏する。
[第2の実施の形態]
次に、図6〜図9を参照しながら、本発明の第2の実施の形態に係る金属張積層体の製造方法について説明する。図6は、本実施の形態により製造される積層体20の一部を示す断面図である。積層体20は、ステンレス層11と、例えば銅箔などからなる導体層13と、ステンレス層11と導体層13との間に配置されたポリイミド樹脂層12とを備えている。この積層体20を用いて、フレキシャ2またはHDDサスペンション本体を製造する場合には、エッチング等によって導体層13をパターニングして配線4を形成する。また、積層体20は、フレキシャ2またはHDDサスペンション本体となるように、エッチング等によって所定の形状に加工される。つまり、本実施の形態を利用した配線一体型のHDDサスペンションの製造方法は、本実施の形態の金属張積層体の製造方法により積層体20を製造する工程と、積層体20を加工して配線一体型サスペンションを製造する工程と、を備える。
次に、図6〜図9を参照しながら、本発明の第2の実施の形態に係る金属張積層体の製造方法について説明する。図6は、本実施の形態により製造される積層体20の一部を示す断面図である。積層体20は、ステンレス層11と、例えば銅箔などからなる導体層13と、ステンレス層11と導体層13との間に配置されたポリイミド樹脂層12とを備えている。この積層体20を用いて、フレキシャ2またはHDDサスペンション本体を製造する場合には、エッチング等によって導体層13をパターニングして配線4を形成する。また、積層体20は、フレキシャ2またはHDDサスペンション本体となるように、エッチング等によって所定の形状に加工される。つまり、本実施の形態を利用した配線一体型のHDDサスペンションの製造方法は、本実施の形態の金属張積層体の製造方法により積層体20を製造する工程と、積層体20を加工して配線一体型サスペンションを製造する工程と、を備える。
本実施の形態の積層体20を、HDDサスペンションとして適用する場合、ステンレス層11の厚みの範囲は、10〜30μmの範囲内が好ましく、15〜25μmの範囲内がより好ましい。ステンレス層11の厚みが10μm未満であると、スライダの浮上量を十分に抑えるバネ性を確保できない問題が生じる場合がある。一方、ステンレス層11の厚みが30μmを超えると、剛性が高くなり、搭載されるスライダの低浮上化が困難となる場合がある。
本実施の形態におけるポリイミド樹脂層12は、ポリイミド樹脂からなる。ポリイミド樹脂層12は単一層で構成されてもよいが、複数層のポリイミド樹脂薄層からなるものが好ましい。ポリイミド樹脂層12を、複数層のポリイミド樹脂薄層で構成する場合、3層以上のポリイミド樹脂薄層を導体層13上に積層形成することが好ましい。多層のポリイミド樹脂層12の形成に際しては、後述のように、ポリアミック酸溶液を導体層13となる導電性金属膜の表面に塗布・乾燥してポリイミド樹脂薄層を形成する操作を繰り返す方法によって行うことが好ましい。導電性金属膜の表面へのポリアミック酸溶液の直接塗布によってポリイミド樹脂を形成することにより、導体層13とポリイミド樹脂層12との密着性が良好となる。このようにして形成されるポリイミド樹脂層12は、例えば図7に示したように、表面処理されたステンレス層11の面に熱圧着される熱可塑性ポリイミド樹脂からなる第1のポリイミド樹脂薄層121と、導体層13の面と密着させる熱可塑性ポリイミド樹脂からなる第3のポリイミド樹脂薄層123と、両者の間に形成される線熱膨張係数が1×10−6〜30×10−6(1/K)以下の低熱膨張性ポリイミド樹脂からなる第2のポリイミド樹脂薄層122との3層を少なくとも有することが好ましい。
第2のポリイミド樹脂薄層122の線熱膨張係数は、第1のポリイミド樹脂薄層121および第3のポリイミド樹脂薄層123の線熱膨張係数よりも小さい。第1のポリイミド樹脂薄層121および第3のポリイミド樹脂薄層123の線熱膨張係数は、20×10-6〜100×10-6(1/K)の範囲内にあることが好ましく、25×10-6〜80×10-6(1/K)の範囲内にあることがより好ましく、30×10-6〜70×10-6(1/K)の範囲内にあることが更に好ましい。第2のポリイミド樹脂薄層122の線熱膨張係数は、1×10-6(1/K)以上30×10-6(1/K)以下であることが好ましく、5×10-6〜25×10-6(1/K)の範囲内であることがより好ましく、10×10-6〜20×10-6(1/K)の範囲内であることが更に好ましい。
第1のポリイミド樹脂薄層121の線熱膨張係数と第2のポリイミド樹脂薄層122の線熱膨張係数との差および第3のポリイミド樹脂薄層123の線熱膨張係数と第2のポリイミド樹脂薄層122の線熱膨張係数との差はいずれも、5×10-6(1/K)以上であることが好ましく、10×10-6(1/K)以上であることがより好ましい。
第2のポリイミド樹脂薄層122の厚みを第1および第3のポリイミド樹脂薄層121,123の厚みの和で除した値は、1〜40の範囲内にあることが好ましく、2〜30の範囲内にあることがより好ましい。
なお、第1のポリイミド樹脂薄層121および第3のポリイミド樹脂薄層123の線熱膨張係数と厚みは、それぞれ等しくてもよいし異なっていてもよい。第1のポリイミド樹脂薄層121と第3のポリイミド樹脂薄層123の材料も、同じでもよいし異なっていてもよい。
第2のポリイミド樹脂薄層122は、それぞれ第1のポリイミド樹脂薄層121および第3のポリイミド樹脂薄層123の線熱膨張係数よりも小さい線熱膨張係数を有する複数のポリイミド樹脂薄層が積層されて構成されていてもよい。この場合、複数のポリイミド樹脂層の線熱膨張係数は、それぞれ、前述の第2のポリイミド樹脂層122の線熱膨張係数の好ましい範囲内にあることが好ましい。なお、複数のポリイミド樹脂薄層の線熱膨張係数と厚みは、それぞれ等しくてもよいし異なっていてもよい。また、複数のポリイミド樹脂薄層の材料も、同じでもよいし異なっていてもよい。
また、ポリイミド樹脂層12は、第1ないし第3のポリイミド樹脂薄層121,122,123のみによって構成されていてもよいし、第1ないし第3のポリイミド樹脂薄層121,122,123に加えて他のポリイミド樹脂薄層を含んでいてもよい。例えば、第2のポリイミド樹脂薄層122が、それぞれ第1のポリイミド樹脂薄層121および第3のポリイミド樹脂薄層123の線熱膨張係数よりも小さい線熱膨張係数を有する2つのポリイミド樹脂薄層を含み、この2つのポリイミド樹脂薄層の間に、第4のポリイミド樹脂薄層が挿入されていてもよい。この場合、第2のポリイミド樹脂薄層122に含まれる2つのポリイミド樹脂薄層の線熱膨張係数は、それぞれ、前述の第2のポリイミド樹脂層122の線熱膨張係数の好ましい範囲内にあることが好ましい。なお、第2のポリイミド樹脂薄層122に含まれる2つのポリイミド樹脂薄層の線熱膨張係数と厚みは、それぞれ等しくてもよいし異なっていてもよい。また、この2つのポリイミド樹脂薄層の材料も、同じでもよいし異なっていてもよい。
また、第4のポリイミド樹脂薄層の線熱膨張係数は、第2のポリイミド樹脂薄層122に含まれる2つのポリイミド樹脂薄層の線熱膨張係数よりも大きくてもよい。この場合、第4のポリイミド樹脂薄層の線熱膨張係数は、前述の第1のポリイミド樹脂薄層121および第3のポリイミド樹脂薄層123の線熱膨張係数の好ましい範囲内にあってもよい。また、第4のポリイミド樹脂薄層の線熱膨張係数は、各ポリイミド樹脂薄層121〜123の好ましい範囲外にあってもよい。
なお、ポリイミド樹脂薄層12の構成としては、第1ないし第3のポリイミド樹脂薄層121,122,123のみを含み、且つ第2のポリイミド樹脂薄層122が単層である構成が最も好ましい。
また、本実施の形態により製造される積層体20を加工して、HDDサスペンションとして適用する場合、ポリイミド樹脂層12の全体の厚みは、5〜50μmの範囲内が好ましいく、5〜20μmの範囲内がより好ましい。ポリイミド樹脂層12の全体の厚みが5μm未満では、電気的な絶縁の信頼性が低下する傾向にある。一方、ポリイミド樹脂層12の全体の厚みが50μmを超えると、ポリイミド樹脂層12を形成する際の乾燥効率が低下する傾向にある。本実施の形態に係る積層体20を加工してHDDサスペンションを得る方法は、特に制限されず、適宜公知の方法で加工できる。
導体層13は、例えば銅箔又は合金銅箔から形成されることが好ましい。ここで、合金銅箔とは、銅を必須として含有し、クロム、ジルコニウム、ニッケル、シリコン、亜鉛、ベリリウム等の銅以外の少なくとも1種以上の異種の元素を含有する合金箔を意味し、銅含有率90重量%以上のものを言う。合金銅箔としては、銅含有率95重量%以上のものを使用することが好ましい。また、導体層13の厚みは5〜25μmの範囲内とすることができ、好ましくは7〜12μmの範囲内、更に好ましくは8〜10μmの範囲内とすることができる。
本実施の形態の積層体20における他の構成は、第1の実施の形態と同様であるので、同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
次に、図8および図9を参照して、本実施の形態に係る積層体20の製造方法について説明する。図8および図9は、本実施の形態に係る積層体20の製造方法を説明するための断面図である。本実施の形態に係る積層体20の製造方法は、ステンレス層11となるステンレス基材11aの表面をプラズマで処理する表面処理工程と、表面処理されたステンレス基材11aに、ポリイミド樹脂層12と導体層13とが積層された樹脂板120を、ポリイミド樹脂層12の面がステンレス基材11aの表面処理された面に当接するように重ね合わせ、加圧下で熱圧着する工程とを備えている。
本実施の形態では、まず、ステンレス基材11aのポリイミド樹脂層12と接する面をプラズマで処理する(表面処理工程)。図8は、プラズマで表面処理した後のステンレス基材11aを示しており、符号Sは表面処理面である。表面処理工程におけるプラズマの種類、処理圧力、電力などの条件は、第1の実施の形態と同様である。表面処理によって、ステンレス基材11aの表面処理面Sの濡れ性を向上させることができる。
次に、図9に示したように、ステンレス基材11aの表面処理された面に、樹脂板120のポリイミド樹脂層12を重ね合わせ、加圧して熱圧着する(熱圧着工程)。ステンレス基材11aと、ポリイミド樹脂層12を含む樹脂板120とを熱圧着する方法は特に制限されず、熱圧着の温度やプレス圧力も、第1の実施の形態と同様に行うことができる。
なお、樹脂板120を製造する方法は特に限定されないが、例えば、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸の樹脂溶液を導体層13となる導電性金属膜上に塗布した後に乾燥、イミド化して、基材上にポリイミド樹脂膜を形成せしめる方法が挙げられる。ポリアミック酸の樹脂溶液を基材上に塗布する方法としては特に制限されず、例えば、コンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて塗布することが可能である。
ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸の合成に使用する溶媒については、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、n−メチルピロリジノン、2−ブタノン、ジグライム、キシレン等が挙げられ、これらの1種若しくは2種以上を併用することもできる。
合成されたポリアミック酸は溶液として使用される。通常、ポリアミック酸は、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。また、ポリアミック酸は一般に溶媒可溶性に優れるので、有利に使用される。
ポリアミック酸を導電性金属膜に塗布した後の乾燥、イミド化の方法も特に制限されず、例えば、80〜400℃の範囲内の温度条件で、1〜60分間の範囲内の時間加熱するといった熱処理が好適に採用される。このような熱処理を行うことで、ポリアミック酸の脱水閉環が進行するため、導体層13にポリイミド樹脂層12が積層された樹脂板120を形成できる。
以上のようにして製造される積層体20は、ステンレス基材11aの表面をプラズマで処理したことにより、ステンレス層11とポリイミド樹脂層12の密着性に優れたものとなる。したがって、ステンレス層11とポリイミド樹脂層12との剥離が発生しにくく、積層体10を用いるHDDサスペンションの信頼性と歩留まりを向上させることができる、という効果を奏する。
[第3の実施の形態]
次に、図10〜図13を参照しながら、本発明の第3の実施の形態に係る金属張積層体の製造方法について説明する。図10は、本実施の形態により製造される積層体30の一部を示す断面図である。積層体30は、ステンレス層11(第1のステンレス層)と、ステンレス層14(第2のステンレス層)、これらステンレス層11とステンレス層14との間に配置されたポリイミド樹脂層12とを備えている。この積層体30は、HDDサスペンションのロードビーム1となるように、エッチング等によって所定の形状に加工される。つまり、本実施の形態を利用したHDDサスペンション用ロードビームの製造方法は、本実施の形態の金属張積層体の製造方法により積層体30を製造する工程と、積層体30を加工してロードビームを製造する工程と、を備える。
次に、図10〜図13を参照しながら、本発明の第3の実施の形態に係る金属張積層体の製造方法について説明する。図10は、本実施の形態により製造される積層体30の一部を示す断面図である。積層体30は、ステンレス層11(第1のステンレス層)と、ステンレス層14(第2のステンレス層)、これらステンレス層11とステンレス層14との間に配置されたポリイミド樹脂層12とを備えている。この積層体30は、HDDサスペンションのロードビーム1となるように、エッチング等によって所定の形状に加工される。つまり、本実施の形態を利用したHDDサスペンション用ロードビームの製造方法は、本実施の形態の金属張積層体の製造方法により積層体30を製造する工程と、積層体30を加工してロードビームを製造する工程と、を備える。
本実施の形態におけるステンレス層11およびステンレス層14としては、第1の実施の形態のステンレス層11と同様のものを用いることができる。本実施の形態に係る積層体30をHDDサスペンションのロードビーム1として適用する場合、ステンレス層11およびステンレス層14の厚みは、それぞれ15〜100μmの範囲内とすることが好ましく、20〜40μmの範囲内とすることがより好ましい。また、ステンレス層11とステンレス層14の合計厚みは、30〜100μmの範囲内とすることが好ましい。ステンレス層11とステンレス層14を構成するステンレスの種類や厚みは、同一であっても、異なっていてもよいが、いずれも上記で好ましいとして記載した種類又は厚みのものを用いることがよい。
また、本実施の形態においても、ポリイミド樹脂層12は、単一層で構成されるものでもよいが、好ましくは複数層のポリイミド樹脂薄層からなるものがよい。このようにして形成されるポリイミド樹脂層12は、図11に示したように、ステンレス層11に密着した熱可塑性ポリイミド樹脂からなる第1のポリイミド樹脂薄層121と、表面処理されたステンレス層14の面に熱圧着される熱可塑性ポリイミド樹脂からなる第3のポリイミド樹脂薄層123と、両者の間に形成される線熱膨張係数が1×10−6〜30×10−6(1/K)の低熱膨張性ポリイミド樹脂からなる第2のポリイミド樹脂薄層122との3層を少なくとも有することが好ましい。本実施の形態において、ポリイミド樹脂層12を構成する各ポリイミド樹脂薄層は、第2の実施の形態と同様の構成とすることができる。
また、本実施の形態により製造される積層体30を加工して、HDDサスペンションのロードビーム用途として適用する場合、ポリイミド樹脂層12の厚みは8〜150μmとすることが好ましい。本実施の形態に係る積層体30を加工してHDDサスペンションのロードビーム1を得る方法は、特に制限されず、適宜公知の方法で加工できる。
本実施の形態の積層体30における他の構成は、第2の実施の形態と同様であるので、同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
次に、図12および図13を参照して、本実施の形態に係る積層体30の製造方法について説明する。図12および図13は、本実施の形態に係る積層体30の製造方法を説明するための断面図である。本実施の形態では、フィルム(シート)状のポリイミド樹脂(ポリイミド樹脂フィルム)112をステンレス層11となるステンレス基材11a及びステンレス層14となるステンレス基材14aで挟み込み、熱圧着することによって、積層体30を製造する。この場合、ステンレス基材11a及び14aのうち、少なくとも1つのステンレス基材のポリイミド樹脂フィルム112と接する面を表面処理する。好ましくはステンレス基材11a及び14aの両方のステンレス基材においてポリイミド樹脂フィルム112と接する面を表面処理する。
つまり、本実施の形態に係る積層体30の製造方法は、ステンレス層11となるステンレス基材11aの表面および/またはステンレス層14となるステンレス基材14aの表面をプラズマで処理する表面処理工程と、表面処理されたステンレス基材11aとステンレス基材14aとの間にポリイミド樹脂フィルム112を挟み込むようにして重ね合わせ、加圧下で熱圧着する工程とを備えている。
本実施の形態では、まず、ステンレス基材11aおよび14aのポリイミド樹脂フィルム112と接する面をプラズマで処理する(表面処理工程)。図12は、プラズマで表面処理した後のステンレス基材11aおよび14aを示しており、符号S1,S2は表面処理面である。表面処理工程におけるプラズマの種類、処理圧力、電力などの条件は、第1の実施の形態と同様である。表面処理によって、ステンレス基材11aおよび14aの表面処理面S1,S2の濡れ性が向上する。
次に、図13に示したように、ステンレス基材11aと14aの表面処理面S1,S2が対向するように配置し、その間にポリイミド樹脂フィルム112を挟み込むようにしてこれらを重ね合わせ、加圧下で熱圧着する(熱圧着工程)。ステンレス基材11a、14aと、ポリイミド樹脂フィルム112とを熱圧着する方法は特に制限されず、熱圧着の温度やプレス圧力も、第1の実施の形態と同様に行うことができる。
以上のようにして製造される積層体30は、ステンレス基材11a,14aの表面をプラズマで処理したことにより、ステンレス層11およびステンレス層14とポリイミド樹脂層12の密着性に優れたものとなる。したがって、ステンレス層11,14とポリイミド樹脂層12との剥離が発生しにくく、積層体30をロードビームとして加工して用いるHDDサスペンションの信頼性と歩留まりを向上させることができる、という効果を奏する。
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態に係る金属張積層体の製造方法について説明する。本実施の形態の製造方法により製造される金属張積層体の構造は、第3の実施の形態と同様であるため、これを援用して図示および説明を省略する(図10および図11参照)。本実施の形態では、第3の実施の形態の金属張積層体の製造方法との相違点として、ポリイミド樹脂層12の片面に予めステンレス層11を積層した樹脂板(図示省略)を用意して、この樹脂板のポリイミド樹脂面をステンレス基材14aの表面処理された面と重ね合わせ、熱圧着することにより、金属張積層体30を製造する。
次に、本発明の第4の実施の形態に係る金属張積層体の製造方法について説明する。本実施の形態の製造方法により製造される金属張積層体の構造は、第3の実施の形態と同様であるため、これを援用して図示および説明を省略する(図10および図11参照)。本実施の形態では、第3の実施の形態の金属張積層体の製造方法との相違点として、ポリイミド樹脂層12の片面に予めステンレス層11を積層した樹脂板(図示省略)を用意して、この樹脂板のポリイミド樹脂面をステンレス基材14aの表面処理された面と重ね合わせ、熱圧着することにより、金属張積層体30を製造する。
つまり、本実施の形態に係る積層体30の製造方法は、少なくとも、ステンレス層14となるステンレス基材14aの表面をプラズマで処理する表面処理工程と、表面処理されたステンレス基材14aにステンレス層11とポリイミド樹脂層12を積層した樹脂板のポリイミド樹脂層12の面を重ね合わせ、加圧下で熱圧着する工程とを備えている。この場合、ステンレス基材14aの表面処理は必須であるが、ステンレス基材11a及び14aの両方のステンレス基材において、ポリイミド樹脂層12と接する面を表面処理してもよい。本実施の形態では、ステンレス基材11aにポリアミック酸溶液を塗布し、続く熱処理で乾燥及び硬化をおこなうことにより樹脂板を用意することが好ましい。ポリアミック酸溶液を用いる樹脂板の形成は、第1の実施の形態や第2の実施の形態に準じて行うことができる。
また、本実施の形態においても、ポリイミド樹脂層12は、単一層で構成されるものでもよいが、好ましくは複数層のポリイミド樹脂薄層からなるものがよい。ポリイミド樹脂層12を、複数層のポリイミド樹脂薄層で構成する場合、3層以上のポリイミド樹脂薄層をステンレス基材11aに積層形成する方法として、ポリアミック酸溶液をステンレス基材11aの表面に塗布・乾燥する操作を繰り返す方法によって行うことが好ましい。本実施の形態において、ポリイミド樹脂層12を構成するポリイミド樹脂薄層は、第2の実施の形態と同様の構成とすることができる。
本実施の形態におけるプラズマ処理の条件や熱圧着の条件などは、適宜第1〜第3の実施の形態と同様に行うことができる。
[実施例]
以下、実験において作製した実施例および比較例について説明する。実施例は本実施の形態に対応するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。まず、実施例および比較例で用いる略号は、次の通りである。
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BTDA:3,3’,4,4’ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
MABA:4,4’-ジアミノ-2’-メトキシベンズアニリド
DAPE:4,4’-ジアミノジフェニルエーテル
DANPG:1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-2,2-ジメチルプロパン
APB:1,3-ビス-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン
BAPP:2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
以下、実験において作製した実施例および比較例について説明する。実施例は本実施の形態に対応するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。まず、実施例および比較例で用いる略号は、次の通りである。
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BTDA:3,3’,4,4’ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
MABA:4,4’-ジアミノ-2’-メトキシベンズアニリド
DAPE:4,4’-ジアミノジフェニルエーテル
DANPG:1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-2,2-ジメチルプロパン
APB:1,3-ビス-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン
BAPP:2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
合成例1
PDA75.7g(0.70モル)及びDAPE60.1g(0.30モル)を5リットルのセパラブルフラスコ中で攪拌しながら2010gのDMAcに溶解させた。次にその溶液に窒素気流中で218.1g(1モル)のPMDAを加えた。その後3時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリイミド前駆体Aの溶液を得た。
PDA75.7g(0.70モル)及びDAPE60.1g(0.30モル)を5リットルのセパラブルフラスコ中で攪拌しながら2010gのDMAcに溶解させた。次にその溶液に窒素気流中で218.1g(1モル)のPMDAを加えた。その後3時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリイミド前駆体Aの溶液を得た。
合成例2
APB16.34g(0.056モル)及びDANPG6.86g(0.024モル)を1リットルのセパラブルフラスコ中で攪拌しながら255gのDMAcに溶解させた。次にその溶液に窒素気流中で8.80g(0.040モル)のPMDAと13.00g(0.040モル)のBTDAを加えた。その後3時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリイミド前駆体Bの溶液を得た。
APB16.34g(0.056モル)及びDANPG6.86g(0.024モル)を1リットルのセパラブルフラスコ中で攪拌しながら255gのDMAcに溶解させた。次にその溶液に窒素気流中で8.80g(0.040モル)のPMDAと13.00g(0.040モル)のBTDAを加えた。その後3時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリイミド前駆体Bの溶液を得た。
合成例3
BAPP414.2g(1モル)を5リットルのセパラブルフラスコ中で攪拌しながら3486gのDMAcに溶解させた。次にその溶液に窒素気流中で299.8g(1モル)のBPDAを加えた。その後3時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリイミド前駆体Cの溶液を得た。
BAPP414.2g(1モル)を5リットルのセパラブルフラスコ中で攪拌しながら3486gのDMAcに溶解させた。次にその溶液に窒素気流中で299.8g(1モル)のBPDAを加えた。その後3時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリイミド前駆体Cの溶液を得た。
上記合成例に示した樹脂を用いて、以下の実施例及び比較例の方法で積層体を作成し、得られた積層体について、以下に挙げる各種の評価を行った。
[接触角の測定]
接触角については、下記実施例及び比較例で得た積層体に使用したステンレス箔のポリイミド樹脂層と圧着する表面における水の接触角を測定した。測定には協和界面科学社製の自動接触角計CA-Z型を用いた。また、温度23℃、湿度50%の雰囲気下で測定を行った。
接触角については、下記実施例及び比較例で得た積層体に使用したステンレス箔のポリイミド樹脂層と圧着する表面における水の接触角を測定した。測定には協和界面科学社製の自動接触角計CA-Z型を用いた。また、温度23℃、湿度50%の雰囲気下で測定を行った。
[接着力の測定]
金属層と樹脂層との接着力は、以下のようにして測定した。先ず、金属箔上にポリイミド樹脂層を形成した後、更にステンレス箔を熱圧着して両面金属箔の積層体を作成した。その積層体を形成加工することにより1/8インチ配線幅の測定試験片を作成した。このサンプルを圧着直後の初期接着力と、温度85℃、湿度85%で336時間放置(環境試験)した後の吸湿後接着力とをそれぞれ測定した。測定方法は、サンプルを固定板に貼り付け、圧着部位のステンレス層をそれぞれ引張試験機(東洋精機株式会社製、STROGRAPH-R1)を用いて90°方向に引き剥がし強さを測定した。
金属層と樹脂層との接着力は、以下のようにして測定した。先ず、金属箔上にポリイミド樹脂層を形成した後、更にステンレス箔を熱圧着して両面金属箔の積層体を作成した。その積層体を形成加工することにより1/8インチ配線幅の測定試験片を作成した。このサンプルを圧着直後の初期接着力と、温度85℃、湿度85%で336時間放置(環境試験)した後の吸湿後接着力とをそれぞれ測定した。測定方法は、サンプルを固定板に貼り付け、圧着部位のステンレス層をそれぞれ引張試験機(東洋精機株式会社製、STROGRAPH-R1)を用いて90°方向に引き剥がし強さを測定した。
[吸湿率の測定]
ポリアミック酸を、ステンレス箔(新日本製鐵株式会社製、SUS304、テンションアニール処理品、厚み20μm)上に、硬化後の厚みが10μmになるように塗布して110℃で3分間乾燥した。更に130〜360℃の範囲で段階的な熱処理によりイミド化を完成させ、ステンレス層上にポリイミド樹脂層の厚み10μmの積層体を得た。その積層体のステンレス箔をエッチングしてポリイミド樹脂フィルムを作成した。その後、前記ポリイミド樹脂フィルムを80℃の温度条件で2時間乾燥させ、乾燥後のポリイミド樹脂フィルムの質量aを測定した。次に、乾燥後のポリイミド樹脂フィルムを温度23℃、湿度50%で24時間放置(環境試験)し、24時間放置後のポリイミド樹脂フィルムの質量bを測定した。このようにして測定されたポリイミド樹脂フィルムの質量を利用して下記式(1)にしたがって吸湿率を求めた。
ポリアミック酸を、ステンレス箔(新日本製鐵株式会社製、SUS304、テンションアニール処理品、厚み20μm)上に、硬化後の厚みが10μmになるように塗布して110℃で3分間乾燥した。更に130〜360℃の範囲で段階的な熱処理によりイミド化を完成させ、ステンレス層上にポリイミド樹脂層の厚み10μmの積層体を得た。その積層体のステンレス箔をエッチングしてポリイミド樹脂フィルムを作成した。その後、前記ポリイミド樹脂フィルムを80℃の温度条件で2時間乾燥させ、乾燥後のポリイミド樹脂フィルムの質量aを測定した。次に、乾燥後のポリイミド樹脂フィルムを温度23℃、湿度50%で24時間放置(環境試験)し、24時間放置後のポリイミド樹脂フィルムの質量bを測定した。このようにして測定されたポリイミド樹脂フィルムの質量を利用して下記式(1)にしたがって吸湿率を求めた。
[吸湿率(%)]={(重量b−重量a)/重量a}×100 … (1)
この吸湿率を測定した結果を表1に示した。
[実施例1]
ステンレス箔(新日本製鐵株式会社製、SUS304、テンションアニール処理品、厚み20μm)をアルゴンガスが注入された部屋に入れ、常圧下で、印可電圧4kV以下、出力1000W以下の電力を入力してプラズマ放電を生じさせ、ステンレス箔を表面処理した。このプラズマ表面処理をしたステンレス箔の接触角を測定した結果を表1に示した。
ステンレス箔(新日本製鐵株式会社製、SUS304、テンションアニール処理品、厚み20μm)をアルゴンガスが注入された部屋に入れ、常圧下で、印可電圧4kV以下、出力1000W以下の電力を入力してプラズマ放電を生じさせ、ステンレス箔を表面処理した。このプラズマ表面処理をしたステンレス箔の接触角を測定した結果を表1に示した。
合成例2で得られたポリイミド前駆体Bの溶液をステンレス箔(新日本製鐵株式会社製、SUS304、テンションアニール処理品、厚み20μm)上に、硬化後の厚みが1μmになるように塗布して110℃で1分間乾燥した。次に、乾燥させた塗布膜の上に合成例1で得られたポリイミド前駆体Aの溶液を硬化後の厚さが7μmとなるように塗布して110℃で3分間乾燥した。更に、その上に合成例2で得られたポリイミド前駆体Bの溶液を硬化後の厚みが2μmとなるように塗布して110℃で1分間乾燥した。その後、更に130〜360℃の範囲で段階的な熱処理によりイミド化を完成させ、ステンレス層上にポリイミド樹脂層の厚みが10μmの樹脂板を得た。
次に上記プラズマ表面処理をしたステンレス箔をこの樹脂板に重ね合わせ、真空プレス機を用いて面圧15MPa、温度320℃、プレス時間20分の条件で加熱圧着してステンレス層/ポリイミド樹脂層/ステンレス層=20μm/10μm/20μmの厚さの積層体を得た。この積層体の圧着部位の接着力を測定した結果を表1に示した。
[実施例2]
ステンレス箔(新日本製鐵株式会社製、SUS304、テンションアニール処理品、厚み20μm)をアルゴンガスが注入された部屋に入れ、常圧下で、印可電圧4kV以下、出力1000W以下の電力を入力してプラズマ放電を生じさせ、ステンレス箔を表面処理した。このプラズマ表面処理をしたステンレス箔の接触角を測定した結果を表1に示した。
ステンレス箔(新日本製鐵株式会社製、SUS304、テンションアニール処理品、厚み20μm)をアルゴンガスが注入された部屋に入れ、常圧下で、印可電圧4kV以下、出力1000W以下の電力を入力してプラズマ放電を生じさせ、ステンレス箔を表面処理した。このプラズマ表面処理をしたステンレス箔の接触角を測定した結果を表1に示した。
合成例2で得られたポリイミド前駆体Bの溶液をステンレス箔(新日本製鐵株式会社製、SUS304、テンションアニール処理品、厚み20μm)上に、硬化後の厚みが1μmになるように塗布して110℃で1分間乾燥した。次に、乾燥させた塗布膜の上に合成例1で得られたポリイミド前駆体Aの溶液を硬化後の厚さが7μmとなるように塗布して110℃で3分間乾燥した。更に、その上に合成例2で得られたポリイミド前駆体Bの溶液を硬化後の厚みが2μmとなるように塗布して110℃で1分間乾燥した。その後、更に130〜360℃の範囲で段階的な熱処理によりイミド化を完成させ、ステンレス層上にポリイミド樹脂層の厚みが10μmの樹脂板を得た。
次に上記プラズマ表面処理をしたステンレス箔をこの樹脂板に重ね合わせ、真空プレス機を用いて面圧15MPa、温度320℃、プレス時間20分の条件で加熱圧着してステンレス層/ポリイミド樹脂層/ステンレス層=20μm/10μm/20μmの厚さの積層体を得た。この積層体の圧着部位の接着力を測定した結果を表1に示した。
[実施例3]
ステンレス箔(新日本製鐵株式会社製、SUS304、テンションアニール処理品、厚み20μm)をアルゴンガスが注入された部屋に入れ、常圧下で、印可電圧4kV以下、出力1000W以下の電力を入力してプラズマ放電を生じさせ、ステンレス箔を表面処理した。このプラズマ表面処理をしたステンレス箔の接触角を測定した結果を表1に示した。
ステンレス箔(新日本製鐵株式会社製、SUS304、テンションアニール処理品、厚み20μm)をアルゴンガスが注入された部屋に入れ、常圧下で、印可電圧4kV以下、出力1000W以下の電力を入力してプラズマ放電を生じさせ、ステンレス箔を表面処理した。このプラズマ表面処理をしたステンレス箔の接触角を測定した結果を表1に示した。
市販の非熱可塑性ポリイミドフィルム(東レ・ディポン株式会社製、商品名:カプトンEN、厚み:12.5μm)上に合成例2で得られたポリイミド前駆体Bの溶液を硬化後の厚みが2μmになるように塗布して110℃で3分間乾燥した。次に、その逆面に合成例2で得られたポリイミド前駆体Bの溶液を硬化後の厚みが2μmとなるように塗布して110℃で3分間乾燥した。更に130〜360℃の範囲で段階的な熱処理によりイミド化を完成させ、厚みが16.5μmで3層構造のポリイミドフィルムの樹脂板を得た。
次に上記方法で得たポリイミドフィルムの両面に上記プラズマ表面処理をしたステンレスを重ね合わせ、真空プレス機を用いて面圧15MPa、温度320℃、プレス時間20分の条件で加熱圧着してステンレス層/ポリイミド樹脂層/ステンレス層=20μm/16.5μm/20μmの厚さの積層体を得た。この積層体の圧着部位の接着力を測定した結果を表1に示した。
[実施例4]
ステンレス箔(新日本製鐵株式会社製、SUS304、テンションアニール処理品、厚み20μm)をアルゴンガスが注入された部屋に入れ、常圧下で、印可電圧4kV以下、出力1000W以下の電力を入力してプラズマ放電を生じさせ、ステンレス箔を表面処理した。このプラズマ表面処理をしたステンレス箔の接触角を測定した結果を表1に示した。
ステンレス箔(新日本製鐵株式会社製、SUS304、テンションアニール処理品、厚み20μm)をアルゴンガスが注入された部屋に入れ、常圧下で、印可電圧4kV以下、出力1000W以下の電力を入力してプラズマ放電を生じさせ、ステンレス箔を表面処理した。このプラズマ表面処理をしたステンレス箔の接触角を測定した結果を表1に示した。
合成例3で得られたポリイミド前駆体Cの溶液を銅箔(日鉱マテリアルズ製 NK120 厚み12μm)上に、硬化後の厚みが1μmになるように塗布して110℃で1分間乾燥した。次に、乾燥させた塗布膜の上に合成例1で得られたポリイミド前駆体Aの溶液を硬化後の厚さが7μmとなるように塗布して110℃で3分間乾燥した。更にその上に合成例3で得られたポリイミド前駆体Cの溶液を硬化後の厚みが2μmとなるように塗布して110℃で1分間乾燥した。その後、更に130〜360℃の範囲で段階的な熱処理によりイミド化を完成させ、銅箔上にポリイミド樹脂層の厚みが10μmの樹脂板を得た。
次に上記プラズマ表面処理をしたステンレスをこの樹脂板に重ね合わせ、真空プレス機を用いて面圧15MPa、温度320℃、プレス時間20分の条件で加熱圧着して銅層/ポリイミド樹脂層/ステンレス層=12μm/10μm/20μmの厚さの積層体を得た。この積層体の圧着部位の接着力を測定した結果を表1に示した。
[比較例1]
合成例2で得られたポリイミド前駆体Bの溶液を銅箔(日鉱マテリアルズ製 NK120 厚み12μm)上に、硬化後の厚みが1μmになるように塗布して110℃で1分間乾燥した。次に、乾燥させた塗布膜の上に合成例1で得られたポリイミド前駆体Aの溶液を硬化後の厚さが7μmとなるように塗布して110℃で3分間乾燥した。更にその上に合成例2で得られたポリイミド前駆体Bの溶液を硬化後の厚みが2μmとなるように塗布して110℃で1分間乾燥した。その後、更に130〜360℃の範囲で段階的な熱処理によりイミド化を完成させ、銅箔上にポリイミド樹脂層の厚みが10μmの樹脂板を得た。
合成例2で得られたポリイミド前駆体Bの溶液を銅箔(日鉱マテリアルズ製 NK120 厚み12μm)上に、硬化後の厚みが1μmになるように塗布して110℃で1分間乾燥した。次に、乾燥させた塗布膜の上に合成例1で得られたポリイミド前駆体Aの溶液を硬化後の厚さが7μmとなるように塗布して110℃で3分間乾燥した。更にその上に合成例2で得られたポリイミド前駆体Bの溶液を硬化後の厚みが2μmとなるように塗布して110℃で1分間乾燥した。その後、更に130〜360℃の範囲で段階的な熱処理によりイミド化を完成させ、銅箔上にポリイミド樹脂層の厚みが10μmの樹脂板を得た。
次にステンレス箔(新日本製鐵株式会社製、SUS304、テンションアニール処理品、厚み20μm)をこの樹脂板に重ね合わせ、真空プレス機を用いて面圧15MPa、温度320℃、プレス時間20分の条件で加熱圧着して銅層/ポリイミド樹脂層/ステンレス層=12μm/10μm/20μmの厚さの積層体を得た。この積層体の圧着部位の接着力を測定した結果を表1に示した。
[比較例2]
合成例2で得られたポリイミド前駆体Bの溶液をステンレス箔(新日本製鐵株式会社製、SUS304、テンションアニール処理品、厚み20μm)上に、硬化後の厚みが1μmになるように塗布して110℃で1分間乾燥した。次に、乾燥させた塗布膜の上に合成例1で得られたポリイミド前駆体Aの溶液を硬化後の厚さが7μmとなるように塗布して110℃で3分間乾燥した。更にその上に合成例2で得られたポリイミド前駆体Bの溶液を硬化後の厚みが2μmとなるように塗布して110℃で1分間乾燥した。その後、更に130〜360℃の範囲で段階的な熱処理によりイミド化を完成させ、ステンレス上にポリイミド樹脂層の厚みが10μmの樹脂板を得た。
合成例2で得られたポリイミド前駆体Bの溶液をステンレス箔(新日本製鐵株式会社製、SUS304、テンションアニール処理品、厚み20μm)上に、硬化後の厚みが1μmになるように塗布して110℃で1分間乾燥した。次に、乾燥させた塗布膜の上に合成例1で得られたポリイミド前駆体Aの溶液を硬化後の厚さが7μmとなるように塗布して110℃で3分間乾燥した。更にその上に合成例2で得られたポリイミド前駆体Bの溶液を硬化後の厚みが2μmとなるように塗布して110℃で1分間乾燥した。その後、更に130〜360℃の範囲で段階的な熱処理によりイミド化を完成させ、ステンレス上にポリイミド樹脂層の厚みが10μmの樹脂板を得た。
次にステンレス箔(新日本製鐵株式会社製、SUS304、テンションアニール処理品、厚み20μm)をこの樹脂板に重ね合わせ、真空プレス機を用いて面圧15MPa、温度320℃、プレス時間20分の条件で加熱圧着してステンレス層/ポリイミド樹脂層/ステンレス層=20μm/10μm/20μmの厚さの積層体を得た。この積層体の圧着部位の接着力を測定した結果を表1に示した。
[比較例3]
合成例3で得られたポリイミド前駆体Cの溶液を銅箔(日鉱マテリアルズ製 NK120 厚み12μm)上に、硬化後の厚みが1μmになるように塗布して110℃で1分間乾燥した。次に、乾燥させた塗布膜の上に合成例1で得られたポリイミド前駆体Aの溶液を硬化後の厚さが7μmとなるように塗布して110℃で3分間乾燥した。更にその上に合成例3で得られたポリイミド前駆体Cの溶液を硬化後の厚みが2μmとなるように塗布して110℃で1分間乾燥した。その後、更に130〜360℃の範囲で段階的な熱処理によりイミド化を完成させ、銅箔上にポリイミド樹脂層の厚みが10μmの樹脂板を得た。
合成例3で得られたポリイミド前駆体Cの溶液を銅箔(日鉱マテリアルズ製 NK120 厚み12μm)上に、硬化後の厚みが1μmになるように塗布して110℃で1分間乾燥した。次に、乾燥させた塗布膜の上に合成例1で得られたポリイミド前駆体Aの溶液を硬化後の厚さが7μmとなるように塗布して110℃で3分間乾燥した。更にその上に合成例3で得られたポリイミド前駆体Cの溶液を硬化後の厚みが2μmとなるように塗布して110℃で1分間乾燥した。その後、更に130〜360℃の範囲で段階的な熱処理によりイミド化を完成させ、銅箔上にポリイミド樹脂層の厚みが10μmの樹脂板を得た。
次にステンレス箔(新日本製鐵株式会社製、SUS304、テンションアニール処理品、厚み20μm)をこの樹脂板に重ね合わせ、真空プレス機を用いて面圧15MPa、温度320℃、プレス時間20分の条件で加熱圧着して銅層/ポリイミド樹脂層/ステンレス層=12μm/10μm/20μmの厚さの積層体を得た。この積層体の圧着部位の接着力を測定した結果を表1に示した。
表1で得られた結果をプラズマ処理の有無、ステンレス箔と熱圧着したポリイミド樹脂種毎に表2にまとめた。また、下記式(2)からプラズマ処理した場合の接着性の変化率を表2に示した。なお、式(2)において、Xは、プラズマ処理有りでの接着力、Yは、プラズマ処理無しでの接着力を意味する。
接着性変化率={X/Y}×100 … (2)
表1、2より、ステンレス箔にプラズマ処理を施した実施例では、プラズマ処理をしなかった比較例に比べて、吸湿による接着力の低下が少ないことが示された。また、吸湿による接着力の低下を抑制するプラズマ処理の作用は、ポリイミド前駆体Bを用いた場合に特に顕著に発揮された。以上の結果から、ステンレス基材をプラズマで表面処理することによって、ポリイミド樹脂層とステンレス層との密着性を高めることが可能であることが示された。従って、本発明は、ポリイミド樹脂層とステンレス層との密着性に優れ、剥離が生じにくく信頼性の高いHDDサスペンション用金属張積層体を高い歩留まりで製造できるという効果を奏することが確認された。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された要件の範囲内で種々の変更が可能である。
1…ロードビーム、2…フレキシャ、3…ジンバル部、4…配線、10…金属張積層体、11…ステンレス層、11a…ステンレス基材、12…ポリイミド樹脂層、12a…樹脂板、13…導体層、14…ステンレス層、14a…ステンレス基材、20…金属張積層体、30…金属張積層体、120…樹脂板、121…第1のポリイミド樹脂薄層、122…第2のポリイミド樹脂薄層、123…第3のポリイミド樹脂薄層。
Claims (10)
- ステンレス層にポリイミド樹脂層を積層してなる金属張積層体の製造方法であって、
前記ステンレス層となるステンレス基材の表面をプラズマで処理する表面処理工程と、
前記ステンレス基材の表面処理された面に前記ポリイミド樹脂層となる樹脂板を重ね合わせ、熱圧着する工程と、
を備えたことを特徴とする金属張積層体の製造方法。 - ステンレス層、ポリイミド樹脂層及び導電性金属層を積層してなる金属張積層体の製造方法であって、
前記ステンレス層となるステンレス基材の表面をプラズマで処理する表面処理工程と、
前記ポリイミド樹脂層と前記導電性金属層とを積層してなる樹脂板のポリイミド樹脂層面と前記ステンレス基材の表面処理された面とを重ね合わせ、熱圧着する工程と、
を備えたことを特徴とする金属張積層体の製造方法。 - 前記樹脂板が、前記導電性金属層となる導電性金属膜の表面にポリイミド前駆体樹脂溶液を塗布した後、熱処理して乾燥及び硬化させることにより形成されることを特徴とする請求項2記載の金属張積層体の製造方法。
- 前記ポリイミド樹脂層が単一層又は複数層からなり、且つ、少なくとも前記ステンレス基材の表面処理された面に接する層を構成するポリイミド樹脂が、熱可塑性ポリイミド樹脂であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の金属張積層体の製造方法。
- 熱可塑性ポリイミド樹脂が、0.6〜1.5重量%の範囲内の吸湿率を有することを特徴とする請求項4記載の金属張積層体の製造方法。
- 磁気ヘッドを含むスライダを記録媒体に対向するように弾性的に支持する配線一体型サスペンションの製造方法であって、
請求項1ないし5のいずれかに記載の金属張積層体の製造方法により金属張積層体を製造する工程と、
前記金属張積層体を加工して配線一体型サスペンションを製造する工程と、
を備えたことを特徴とする配線一体型サスペンションの製造方法。 - 第1のステンレス層、ポリイミド樹脂層及び第2のステンレス層を積層してなる金属張積層体の製造方法であって、
前記第1のステンレス層となる第1のステンレス基材の表面及び/又は前記第2のステンレス層となる第2のステンレス基材の表面をプラズマで処理する表面処理工程と、
前記第1のステンレス基材と前記第2のステンレス基材との間に前記ポリイミド樹脂層となる樹脂板が位置し、かつ、前記第1のステンレス基材の表面処理された面及び/又は前記第2のステンレス基材の表面処理された面に前記樹脂板が接した状態に重ね合わせ、熱圧着する工程と、
を備えたことを特徴とする金属張積層体の製造方法。 - 前記ポリイミド樹脂層が単一層又は複数層からなり、且つ、前記第1のステンレス基材及び/又は前記第2のステンレス基材の表面処理された面に接する層を構成するポリイミド樹脂が、熱可塑性ポリイミド樹脂であることを特徴とする請求項7に記載の金属張積層体の製造方法。
- 熱可塑性ポリイミド樹脂が、0.6〜1.5重量%の範囲内の吸湿率を有することを特徴とする請求項8記載の金属張積層体の製造方法。
- 磁気ヘッドを含むスライダを記録媒体に対向するように弾性的に支持する配線一体型サスペンションにおけるロードビームの製造方法であって、
請求項7ないし9のいずれかに記載の金属張積層体の製造方法により金属張積層体を製造する工程と、
前記金属張積層体を加工してロードビームを製造する工程と、
を備えたことを特徴とするロードビームの製造方法。
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2007
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