JP2009113402A - 接着性層を有するポリイミド樹脂層の製造方法及び金属張積板の製造方法 - Google Patents

接着性層を有するポリイミド樹脂層の製造方法及び金属張積板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】簡便な処理によって金属層に対し高い接着性を与える接着性層を有するポリイミド樹脂層を製造する。また、これを使用して均一エッチング性に優れた金属張積層板を製造する。
【解決手段】a)低熱膨張性のポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸層の上に、固形分濃度が0.1〜3重量%である熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体溶液を1.0μm以上の厚みで塗布して、その溶液の一部又は全てをポリアミド酸層に含浸させる含浸層形成工程と、b)含浸層が形成されたポリアミド酸層を、熱処理して乾燥及びイミド化し、ポリイミド樹脂層の上に1.0μm未満の厚みの接着性層を形成する接着性層形成工程、を備える接着性層を有するポリイミド樹脂層の製造方法、及びこのようにして製造された接着性層を有するポリイミド樹脂層の接着性層側に金属層を積層することからなる金属張積層板の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、接着性が改良された接着性層を有するポリイミド樹脂層の製造方法及びその表面に金属層が積層する金属張積層板の製造方法に関し、より詳しくは、プリント配線板用に適した金属張積層板の製造方法に関する。
電子機器の電子回路には、絶縁材と導電材からなる積層板を回路加工したプリント配線板が使用されている。プリント配線板は、絶縁基板の表面(及び内部)に、電気設計に基づく導体パターンを、導電性材料で形成固着したものであり、基材となる絶縁樹脂の種類によって、板状のリジットプリント配線板と、柔軟性に富んだフレキシブルプリント配線板とに大別される。フレキシブルプリント配線板は、可撓性を持つことが特徴であり、常時屈曲を繰り返すような可動部では接続用必需部品となっている。また、フレキシブルプリント配線板は、電子機器内で折り曲げた状態で収納することも可能であるために、省スペース配線材料としても用いられる。フレキシブルプリント配線板の材料となるフレキシブル基板は、基材となる絶縁樹脂にはポリイミドエステルやポリイミド樹脂が多く用いられているが、使用量としては耐熱性のあるポリイミド樹脂が圧倒的に多い。一方、導電材には導電性の点から一般に銅箔が用いられている。
フレキシブル基板は、その構造から3層フレキシブル基板と、2層フレキシブル基板があり、銅箔層等の導電材層とポリイミド樹脂層等の絶縁材層を有する金属張積層板である。3層フレキシブル基板は、ポリイミドなどのベースフィルムと銅箔をエポキシ樹脂やアクリル樹脂などの接着剤で貼り合わせて、ベースフィルム層(絶縁樹脂層の主層)、接着剤層、銅箔層の3層で構成される。一方、2層フレキシブル基板は特殊工法を採用して、接着剤を使用せずに、ベースフィルム層、銅箔層の2層で構成される積層板である。2層フレキシブル基板は、エポキシ樹脂やアクリル樹脂などの耐熱性の低い接着剤層を含まないので、信頼性が高く、回路全体の薄膜化が可能でありその使用量が増加している。一方、別の観点からすると、フレキシブル基板のベースフィルム層は、熱膨張係数が低いことがカールの発生を防止するために望まれているが、熱膨張係数が低いポリイミド樹脂は接着性が劣るため、接着剤を使用せずに全部をポリイミド樹脂とする場合は、良接着性のポリイミド樹脂層を接着面側に接着性付与層として設けることが必要であった。また、両面に銅箔層を有するフレキシブル基板も知られており、片面に銅箔層を有する片面フレキシブル基板を製造したのち、2枚のフレキシブル基板を重ね合わせて積層する方法又は片面フレキシブル基板に銅箔を重ね合わせて積層する方法などが知られている。
近年、電子機器における高性能化、高機能化の要求が高まっており、それに伴って電子デバイスに使用される回路基板材料であるプリント配線板の高密度化が望まれている。プリント配線版を高密度化するためには、回路配線の幅と間隔を小さくする、すなわちファインピッチ化する必要があり、併せて回路加工時の寸法安定性も要求される。また、ポリイミド樹脂層のエッチング加工時におけるエッチング精度に関しても例外ではなく、エッチング後の加工形状等に関してもその要求は厳しい。一般的に、接着性層として使用される熱可塑性ポリイミドは、ポリイミド樹脂層のベースとなる低熱膨張性ポリイミドとはアルカリ処理液等による溶解速度(エッチング速度)が異なるため、エッチング加工時にアンダーカットを生じたり、接着性層が庇状に残存したりする問題が生じた。
そこで、ポリイミド樹脂層のエッチング加工時のエッチング形状を向上させるために、接着性層である熱可塑性ポリイミド層の厚みを薄くした材料が提案されている。例えば、特開平2006−190824号公報(特許文献1)では、COF(チップオンフィルム)の製造工程におけるICチップ実装時の配線沈み込みを防止するために導体と接するポリイミド層の厚みを2.0μm以下の積層板が提案されている。しかしながら、このような積層板は、非熱可塑性ポリイミドと熱可塑性ポリイミドのエッチング速度の違いを考慮しておらず、ポリイミド樹脂層のエッチング加工後の形状不良を生じやすい傾向にあった。一方、非熱可塑性ポリイミドの最外層にある熱可塑性ポリイミドの厚み比率を規定し、ウェットエッチング時のオーバーエッチングやアンダーカットを制御する手法が提案されている(特許文献2)。しかし、この方法では非熱可塑性ポリイミドと熱可塑性ポリイミドのエッチング速度に充分に注意を払う必要があるため、オーバーエッチングやアンダーカット含めたエッチング形状を精度よく制御することは困難であった。また、ポリイミド樹脂層のエッチング加工時のエッチング形状を向上させるために、ポリイミド樹脂層を単一層とした材料が提案されている(特許文献3)。しかしながら、このようなポリイミド樹脂層は熱可塑性ポリイミドをベース層としたものであり、その熱膨張係数は金属と比べて大きいため、材料の寸法安定性を制御することは困難であった。
特開平2006−190824号公報 特開平2005−111858号公報 特開平2004−276413号公報
また、接着性層を有するポリイミド樹脂層の形成方法としては、基材上に非熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体溶液を塗布、乾燥し、その上に熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体溶液を塗布、乾燥し、硬化させる方法が従来知られており、例えば、特許文献1にも開示されている。この場合、熱可塑性ポリイミド樹脂層が接着性層となるが、所望の接着性を付与するためには一定以上の厚みが必要であり、すると上記のようにエッチング形状の問題等が生じる。
本発明は、ポリイミド樹脂層に特定の接着性層を形成することで、金属層との高い接着性を付与し、且つポリイミドエッチング時にアンダーカットや庇状のエッチング残りを発生させない接着性層を有するポリイミド樹脂層の製造方法を提供すると共に、プリント基板のファインピッチ化にも応える十分な接着強度を担保しつつ、絶縁樹脂層の極薄化にも対応できる金属張積層板を提供することを目的とする。他の目的は、両面金属張積層板の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明者等が検討を行ったところ、ポリイミド樹脂層の接着性層の形成を適切に改良することにより、これを用いたポリイミド樹脂層は、金属層との接着強度も高く、ポリイミドエッチング時の形状を制御することが容易となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、接着性層を有するポリイミド樹脂層の製造方法であって、
a)熱線膨張係数が1×10-6 〜30×10-6(1/K)である低熱膨張性のポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸層の上に、固形分濃度が0.1重量%〜3重量%である熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体溶液を1.0μm以上の厚みで塗布して、その溶液の一部又は全てをポリアミド酸層に含浸させる含浸層形成工程と、
b)含浸層が形成されたポリアミド酸層を、熱処理して乾燥及びイミド化し、ポリイミド樹脂層の上に1.0μm未満の厚みの接着性層を形成する接着性層形成工程
を備えることを特徴とする接着性層を有するポリイミド樹脂層の製造方法である。
また、本発明は、熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体が、下記式(1)で表される構造単位を有するものである上記のポリイミド樹脂層の製造方法である。
Figure 2009113402
Figure 2009113402
(式(1)中、Ar1は式(2)、式(3)又は式(4)で表される2価の芳香族基を示し、Ar2は式(5)又は式(6)で表される4価の芳香族基を示す。式(2)〜式(4)及び式(6)において、R1は独立に炭素数1〜6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、nは独立に0〜4の整数を示し、X及びWは独立に単結合又は-C(CH3)2-、-(CH2)m-、-O-、-S-、-CO-、-SO2-、-NH-若しくは-CONH-から選ばれる2価の基を示し、mは1〜5の整数を示す。そして、Ar11モル中に-(CH2)m-、-O-、-S-、-CO-、-SO2-、-NH-及び-CONH-から選ばれる2価の基(Y)を合計で1〜3モル含む。)
上記式(1)において、Ar21モル中に上記2価の基(Y)を合計で0.4〜0.8モル含むこと、又はAr1及びAr2の合計2モル中に上記2価の基(Y)を合計で1.6〜2.4モル含むこと、又はAr2が式(6)で表され、Wが-SO2-である4価の芳香族基を有することのいずれか1以上を満足すると優れた接着性層を与える。
更に、本発明は、金属張積層板の製造方法において、
I)ポリイミド樹脂層の片面に接着性層を形成する接着性層形成工程と、
II)該接着性層の表面に金属層を形成する工程
を備え、工程I)が、上記工程aと工程bを備えることを特徴とする金属張積層板の製造方法である。
ここで、工程II)が、c)接着性層の表面に金属箔を重ね合わせて熱圧着する工程、又はd)接着性層の表面に金属薄膜層を蒸着する工程を有することが適する。
以下、接着性層を有するポリイミド樹脂層の製造方法に関する本発明を説明し、次に金属張積層板の製造方法に関する本発明の説明をするが、共通する部分は同時に説明する。
本発明の製造方法で得られる接着性層を有するポリイミド樹脂層は、ポリイミド樹脂層(1)とその片面又は両面に接着性層(2)を有するものであるが、接着性層(2)もポリイミド樹脂層(2)からなる。そして、接着性層(2)、すなわちポリイミド樹脂層(2)はポリイミド樹脂層(1)より接着性が高い。なお、接着性層を有するポリイミド樹脂層は、有利にはポリイミド樹脂の皮膜又はフィルムである。
以下、ポリイミド樹脂層(1)をポリイミド樹脂層と、接着性層(2)又はポリイミド樹脂層(2)を接着性層というときがある。なお、ポリイミド樹脂層(1)と、接着性層(2)又はポリイミド樹脂層(2)を区別する必要があるときは、前者をポリイミド樹脂層(1)といい、後者を接着性層という。また、ポリイミド樹脂層(1)を形成するポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸を、ポリアミド酸と略称することがある。接着性層(2)又はポリイミド樹脂層(2)を形成する熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体を、前駆体と略称することがある。ポリアミド酸又は前駆体とポリイミド樹脂は、前駆体と製品の関係にあるため、いずれか一方を説明することにより他方の構造が理解される。
接着性層を有するポリイミド樹脂層の態様は特に限定されるものではなく、フィルム(シート)であってもよく、金属箔、ガラス板、樹脂フィルム等の基材に積層した状態のものでもよい。なお、ここでいう基材とはポリイミド樹脂層が積層されるシート状の樹脂又は金属箔等をいう。しかし、ポリイミド樹脂層の片面又は両面に積層する接着性層は表面層として存在する。また、接着性層を有するポリイミド樹脂層の全体厚みは、3〜100μm、好ましくは3〜50μmの範囲にある。
ポリイミド樹脂は、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸を硬化(イミド化)することによって形成することができるが、硬化の詳細については後述する。
ポリイミド樹脂層として適用できるポリイミド樹脂としては、いわゆるポリイミド樹脂を含めて、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリイミドエステル、ポリエーテルイミド、ポリシロキサンイミド等の構造中にイミド基を有する耐熱性樹脂がある。
本発明の接着性層を有するポリイミド樹脂層の製造方法においては、ポリイミド樹脂層(1)としては、低接着性であって、低熱膨張性のポリイミド樹脂層が適する。具体的には、熱線膨張係数が1×10-6 〜30×10-6(1/K)、好ましくは1×10-6 〜25×10-6(1/K)、より好ましくは15×10-6 〜25×10-6(1/K)である低熱膨張性のポリイミド樹脂層に適用すると大きな効果が得られる。したがって、ポリアミド酸層としては、これをイミド化することにより上記ポリイミド樹脂層を与えるものが使用される。
上記ポリイミド樹脂層を構成するポリイミド樹脂としては、一般式(7)で現される構造単位を有するポリイミド樹脂が好ましい。
Figure 2009113402
但し、Ar3は式(8)又は式(9)で表される4価の芳香族基を示し、Ar4は式(10)又は式(11)で表される2価の芳香族基を示し、R2は独立に炭素数1〜6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、V及びYは独立に単結合又は炭素数1〜15の2価の炭化水素基、O、S、CO、SO、SO2若しくはCONHから選ばれる2価の基を示し、mは独立に0〜4の整数を示し、qは構成単位の存在モル比を示し、0.1〜1.0の範囲である。
Figure 2009113402
上記構造単位は、単独重合体中に存在しても、共重合体の構造単位として存在してもよい。構造単位を複数有する共重合体である場合は、ブロックとして存在しても、ランダムに存在してもよい。このような構造単位を有するポリイミド樹脂の中で、好適に利用できるポリイミド樹脂は非熱可塑性のポリイミド樹脂である。非熱可塑性のポリイミド樹脂は低熱膨張性に優れるが、接着性に劣るという特徴を有する。
ポリイミド樹脂は、一般に、酸無水物とジアミンとを反応させて製造されるので、酸無水物とジアミンを説明することにより、ポリイミド樹脂の具体例が理解される。上記一般式(7)において、Ar3は酸無水物の残基ということができ、Ar4はジアミンの残基ということができるので、好ましいポリイミド樹脂を酸無水物とジアミンにより説明する。しかし、この方法によって得られるポリイミド樹脂に限定されない。
酸無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ジフェニルスルフォンテトラカルボン酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸無水物が好ましく挙げられる。
また、2,2',3,3'-、2,3,3',4'-又は3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物等が好ましく挙げられる。また、3,3'',4,4''-、2,3,3'',4''-又は2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-又は3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物等が好ましく挙げられる。
その他の酸無水物として、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナンスレン-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,3,5,6-シクロヘキサン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,6-又は2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-(又は1,4,5,8-)テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-(又は2,3,6,7-)テトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレン-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物等が挙げられる。
ジアミンとしては、例えば、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、2'-メトキシ-4,4'-ジアミノベンズアニリド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2'-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジヒドロキシ-4,4'-ジアミノビフェニル、4,4'-ジアミノベンズアニリド等が好ましく挙げられる。
また、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[1-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[1-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4,4'-(4-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、ビス[4,4'-(3-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、9,9-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン等が好ましく挙げられる。
その他のジアミンとして、2,2−ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4'-メチレンジ-o-トルイジン、4,4'-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4'-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、3,3'-ジアミノジフェニルプロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエタン、3,3'-ジアミノジフェニルエタン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,3'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、ベンジジン、3,3'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメトキシベンジジン、4,4''-ジアミノ-p-テルフェニル、3,3''-ジアミノ-p-テルフェニル、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4'-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン等が挙げられる。
酸無水物、ジアミンはそれぞれ、その1種のみを使用してもよく2種以上を併用して使用することもできる。また、上記一般式(7)に含まれないその他の酸無水物又はジアミンを上記の酸無水物又はジアミンと共に使用することもでき、この場合、その他の酸無水物又はジアミンの使用割合は90モル%以下、好ましくは50モル%以下とすることがよい。酸無水物又はジアミンの種類や、2種以上の酸無水物又はジアミンを使用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張性、接着性、ガラス転移点(Tg)等を制御することができる。
ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸の合成は、ほぼ等モルの酸無水物及びジアミンを溶媒中で反応させることにより行うことができる。使用する溶媒については、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、n-メチルピロリジノン、2-ブタノン、ジグライム、キシレン等が挙げられ、これらの1種若しくは2種以上併用して使用することもできる。
合成されたポリアミド酸は溶液とされて使用される。通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。また、ポリアミド酸は一般に溶媒可溶性に優れるので、有利に使用される。
ポリアミド酸層を形成する方法は特に限定されず、例えば、ポリイミド酸の溶液を基材上に塗布した後に乾燥することで形成できるが、塗布する方法も特に制限されず、コンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて塗布することが可能である。その後、乾燥させてポリアミド酸層とする。
乾燥させる方法としては、特に制限されず、例えば、60〜200℃の温度条件で1〜60分行うことがよい。この乾燥工程においては、接着性層を形成する側において、ポリアミド酸の脱水閉環の進行によるイミド化を完結させないように温度を制御する。このためには、60〜150℃の温度条件で乾燥を行うことが好ましい。接着性層を形成する側にポリアミド酸の状態を残すことは、熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体溶液を含浸させるために必要である。乾燥後のポリアミド酸層は上記のようにポリアミド酸構造の一部がイミド化していても差し支えないが、イミド化率は50%以下、より好ましくは20%以下としてポリアミド酸構造を50%以上残すことがよい。なお、ポリアミド酸のイミド化率は、フーリエ変換赤外分光光度計(市販品:日本分光製FT/IR620)を用い、透過法にてポリイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを測定することによって、1,000cm-1のベンゼン環炭素水素結合を基準とし、1,720cm-1のイミド基由来の吸光度から算出される。
ポリアミド酸層は、単層のみから形成されるものでも、複数層からなるものでもよい。ポリアミド酸層を複数層とする場合、異なる構成成分からなるポリアミド酸層の上に他のポリアミド酸を順次塗布して形成することができる。ポリアミド酸層が3層以上からなる場合、同一の構成のポリアミド酸を2回以上使用してもよい。層構造が簡単である2層又は単層、特に単層は、工業的に有利に得ることができる。なお、複数層の場合は、接着性層に接する側のポリアミド酸層は、上記低熱膨張性のポリイミド樹脂層の前駆体であるポリアミド酸層とする。また、ポリアミド酸層の厚み(乾燥後)は、3〜100μm、好ましくは3〜50μmの範囲にあることがよい。
本発明の接着性層を有するポリイミド樹脂層の製造方法では、a)ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸層の上に、固形分濃度が0.1重量%〜3重量%である熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体溶液を1.0μm以上の厚みで塗布して、その溶液の一部又は全てをポリアミド酸層に含浸させる含浸層形成工程(工程a)を備える。
熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体(以下、前駆体ともいう)は、公知の酸無水物とジアミンから得られる公知の熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体が適用でき、公知の方法で製造することができる。例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンをほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、0〜100℃で30分〜24時間撹拌し重合反応させることで得られる。反応にあたっては、得られるポリイミド前駆体樹脂が有機溶媒中に5〜30重量%、好ましくは10〜20重量%となるように反応成分を溶解することがよい。重合反応する際に用いる有機溶媒については、極性を有するものを使用することがよく、有機極性溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルフォキシド、硫酸ジメチル、フェノール、ハロゲン化フェノール、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム等が挙げられる。これらを2種類以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の一部使用も可能である。
熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体の重量平均分子量は、10,000〜500,000の範囲とすることが好ましく、より好ましくは100,000〜400,000、更に好ましくは200,000〜300,000の範囲とすることがよい。重量平均分子量は、熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体を製造に際し、テトラカルボン酸二無水物とジアミンの使用比率、並びに重合反応の反応温度及び反応時間によって制御できる。
熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体溶液の固形分濃度は0.1重量%〜3重量%、好ましくは0.5重量%〜2.5重量%がよく、より好ましくは1重量%〜2重量%がよいが、ここでいう固形分とは、熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体そのものであると解する。また、固形分濃度の計算に当っては、この固形分の重量をポリイミド前駆体樹脂溶液の重量で除して百分率(%)で表す。固形分濃度が3重量%より高いと接着性層の厚みが1μm以下の極薄となる場合には、金属層との十分な接着強度を確保することが困難となる。
なお、上記ポリイミド前駆体樹脂溶液には未反応の無水物及びジアミン又はオリゴマーが含まれてもよく、これらが有するカルボキシル基又はアミノ基はポリアミド酸層に存在する末端カルボキシル基若しくは末端アミノ基とカップリング反応して接着性を更に改良すると考えられる。
熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体の固形分濃度は、上記範囲内であることで、熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体の重量平均分子量によらず、含浸効果を有効に利用することができる。例えば、重量平均分子量が10,000未満の低分子量タイプのポリイミド前駆体樹脂では、接着性層薄化に伴う接着性層の面内ばらつきを抑制することができ、一方、重量平均分子量が200,000以上の高分子量タイプのポリイミド前駆体樹脂においても、ポリアミド酸層中への含浸を容易とし、ポリアミド酸層の表面上に堆積するポリイミド前駆体樹脂の量を抑えることができる。上記下限未満である場合は、ポリアミド酸層に含浸する前駆体溶液の量が一定であるとしても、熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体の量が不十分であるため、接着強度が低下する傾向になる。また、上記上限を超える場合は、ポリイミド前駆体樹脂溶液の含浸効果が得られにくく、ポリアミド酸層の表面上に堆積するポリイミド前駆体樹脂の量が多くなり、それに伴って、ポリイミド樹脂層全体の厚みが変化する傾向になる。
また、固形分濃度を上記範囲内とすることで、ポリイミド前駆体樹脂溶液の溶媒の接触によるポリアミド酸層の極表面層の膨潤が生じ易くなり、この膨潤部分にポリイミド前駆体樹脂が効果的に含浸されるものと考えられる。この作用は、ポリイミド前駆体樹脂溶液の塗布開始直後、すなわちポリアミド酸層がポリイミド前駆体樹脂溶液と接触した時点から現れるものと考えられ、従って、従来公知の塗布方法で対応でき、例えば、塗布時間を長くするとか、塗布終了後に放置する時間を長くするとか、塗布工程における特段の制御を必要とせず、一定の効果が得られる。
ポリアミド酸層の表面にポリイミド前駆体樹脂溶液を塗布し、その一部又は全部がポリアミド酸層中に含浸させる。有利には、50%以上、好ましくは80%以上を含浸させる。したがって、塗布、含浸後は、ポリアミド酸層、含浸層及び未含浸の前駆体樹脂溶液層(未含浸がある場合)の各層を有し、乾燥、イミド化後はこれらがイミド化した樹脂層を有することになる。ここで、ポリアミド酸層は本発明の接着性層を有するポリイミド樹脂層の基本性能(低熱膨張性等)を与えるポリイミド樹脂層となるものであるから、全体の50%以上の厚みを有することがよい。含浸層及び未含浸の前駆体樹脂溶液層がイミド化されて生じる樹脂層は接着性層を与えるものであるから、1μm未満、有利には0.2〜0.8μmの厚みとすることがよい。含浸量は固形分濃度を上記範囲内で調整することで制御可能である。そして、含浸層から生じるポリイミド樹脂層のエッチング性等の性状は主成分のポリイミド樹脂層(1)とほぼ等しいが、未含浸の前駆体樹脂溶液層から生じるポリイミド樹脂層はポリイミド樹脂層(1)とは異質のポリイミド樹脂層であるため、その厚みは0.5μm未満、有利には0.2μm未満の厚みとすることがよい。別の観点からは、接着性層中の含浸層及び未含浸の前駆体樹脂溶液層の厚みの比は、10:0〜5、好ましくは10:0〜2とすることがよく、接着性層を有するポリイミド樹脂層全体厚み100に対する接着性層の厚みは0.5〜20、好ましくは1〜10とすることがよい。このような厚みに制御するためには、前駆体樹脂溶液の濃度及び前駆体樹脂溶液の塗布厚み及び含浸時間、特に濃度及び塗布厚みを制御することにより可能である。そして、接着性層中の含浸層の厚み割合は80%以上であることがよい。
塗布、含浸後は、乾燥及び熱処理してポリアミド酸及び前駆体を硬化させてポリイミド樹脂とし、ポリイミド樹脂層及び1μmの厚みの接着性層を形成する(工程b)。ここで、熱処理によって形成される接着性層は、上記の前駆体樹脂溶液に由来する層であり、含浸層及び未含浸の前駆体樹脂層からの接着性層の厚みは、透過電子顕微鏡(TEM)によって測定できる。
ポリイミド前駆体樹脂溶液は、上記の反応溶媒溶液を有機極性溶媒で希釈して上記範囲内の濃度としてから使用することが好ましい。有機極性溶媒は、重合反応する際に用いるものが好ましいが、より好ましくは、N, N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンがよく、このような溶媒を希釈溶媒として選択することで、ポリアミド酸層への含浸効果が得られやすくなる。
ポリイミド前駆体樹脂溶液は、その塗布厚み(以下、ウェット厚みという)を1.0μm以上とし、後の接着性層形成工程で形成される接着性層の厚みが1.0μm未満、好ましくは0.05〜0.8μm、より好ましくは0.1〜0.5μmの範囲にあるようにすることがよい。ポリイミド前駆体樹脂溶液のウェット厚みは、好ましくは10〜70μm、より好ましくは20〜50μmがよく、このような範囲に制御することで、接着性層形成工程で形成される接着性層の厚みを上記範囲内とすることが可能となる。また、ポリイミド前駆体樹脂溶液の塗布する方法は特に制限されず、コンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて塗布することができ、塗布は数回に分けて行っても差し支えないが、1回の塗布で上記ウェット厚みにすることが工業的にも有利である。所望のウェット厚みが30μm以上であり、1回のみの塗布によって所望のウェット厚みとする場合には、例えば、ウェット厚みと同等の吐出口高さを有するダイコーターを使用することや、樹脂層面とのギャップ間距離をウェット厚みとするリップコーターを使用することが好ましい。また、含浸方法は、特段の操作を必要とせず、上記の塗布及び後述する乾燥による操作の過程で、含浸を行うことができる。たとえば、乾燥温度を低めに設定することで含浸時間を長くとることが可能である。
また、乾燥及び硬化の方法も特に制限されず、例えば、80〜400℃の温度条件で1〜60分間加熱するといった熱処理が好適に採用される。含浸効果を得るために、乾燥は120〜130℃で1〜3分保持する工程を有することが好ましい。基材上にポリイミド樹脂層を形成させたポリイミド樹脂層はそのまま使用してもよく、剥がすなどして使用してもよい。
熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体は、式(1)で表される構造単位を有するものが好ましい。式(1)において、Ar1は式(2)、式(3)又は式(4)で表される2価の芳香族基を示し、Ar2は式(5)又は式(6)で表される4価の芳香族基を示す。式(2)〜式(4)において、R1は独立に炭素数1〜6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、nは独立に0〜4の整数を示し、X及びWは独立に単結合又は-C(CH3)2-、-(CH2)m-、-O-、-S-、-CO-、-SO2-、-NH-若しくは-CONH-から選ばれる2価の基を示し、mは1〜5の整数を示す。ここで、-(CH2)m-、-O-、-S-、-CO-、-SO2-、-NH-若しくは-CONH-から選ばれる2価の基(以下、2価の基(Y)という)はポリイミド樹脂に柔軟性等を与える屈曲性基であり、単結合及び-C(CH3)2-は剛直性を与える基であるので、そのバランスを制御することにより熱可塑性ポリイミド樹脂の性状を調整することができる。
上記一般式(1)において、Ar1はジアミンの残基ということができ、Ar2は酸無水物の残基ということができるので、好ましいポリイミド樹脂をジアミンと酸無水物により説明する。しかし、この方法によって得られるポリイミド前駆体樹脂に限定されない。
ジアミンとしては、例えば、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、2'-メトキシ-4,4'-ジアミノベンズアニリド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジヒドロキシ-4,4'-ジアミノビフェニル、4,4'-ジアミノベンズアニリド等が挙げられる。その他、上記ポリイミド樹脂の説明で挙げたジアミンを挙げることができる。この中でも、特に好ましいジアミン成分としては、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-2,2-ジメチルプロパン(DANPG)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、パラフェニレンジアミン(p−PDA)、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル(DAPE34)、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル(DAPE44)から選ばれる1種以上のジアミンがよい。
酸無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ジフェニルスルフォンテトラカルボン酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸無水物が挙げられる。その他、上記ポリイミド樹脂の説明で挙げた酸無水物を挙げることができる。この中でも、特に好ましい酸無水物としては、無水ピロメリット酸(PMDA)、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3',4,4'-ジフェニルスルフォンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)から選ばれる1種以上の酸無水物が挙げられる。
ジアミン、酸無水物はそれぞれ、その1種のみを使用してもよく2種以上を併用して使用することもできる。また、上記以外のジアミン及び酸無水物を併用することもできる。
熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体は、式(1)で表される構造単位を単独重合体中に存在しても、共重合体の構造単位として存在してもよく、構造単位を複数有する共重合体である場合は、ブロックとして存在しても、ランダムに存在してもよい。式(1)で表される構造単位は複数であるが、1種であっても2種以上であってもよい。有利には、式(1)で表される構造単位を主成分とすることであり、好ましくは60モル%以上、より好ましくは80モル%以上含むポリイミド前駆体樹脂であることがよい。
屈曲性基である2価の基(Y)は、得られるポリイミド樹脂の接着性に寄与する。ポリイミド樹脂の接着性は、ポリイミド前駆体樹脂中に含まれる2価の基(Y)の割合を、Ar21モルに対して1.0モル以上とすることが好ましいが、2価の基(Y)の割合を多くする程、ポリイミド樹脂そのものの機械強度(例えば、引裂強度)が低下する傾向になるので、2価の基(Y)の割合を、Ar21モルに対して3.0モル以下とすることが好ましい。
また、熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体が、式(1)において、Ar11モルに対してAr2中の2価の基(Y)が0.4〜0.8モル含まれることがよい。好ましくはAr1及びAr2の合計2モルに対して2価の基(Y)が1.6〜2.4モル含まれることがよい。かかる熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体から得られる熱可塑性ポリイミド樹脂は、本発明によるところの含浸効果を有利に活用できるため、接着性層としての機能を向上させることができる。なお、式(1)から明らかなようにAr1及びAr2は等モル存在するので、Ar11モルはAr21モルと計算される。
また、熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体が、式(1)において、好ましくは式(6)中、Wが-SO2-であるものを含むものがよい。このような熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体は、高極性の-SO2-を有することによって、有機極性溶媒との相溶性が向上するので、高い含浸効果が得られるものと考えられる。
本発明で用いる熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体において、好ましいジアミン成分及び酸無水物成分の組合せの具体例を説明する。ジアミン成分を100モル%とした場合、ジアミンとしてAPBを必須成分とし、好ましくは50〜100モル%、より好ましくは60〜90モル%を使用することがよい。また、APB以外のジアミンを併用する場合にはp-PDAを10〜30モル%、より好ましくは10〜30モル%を使用することが好ましい。更に、酸無水物成分を100モル%とした場合、酸無水物としてDSDAを必須成分とし、好ましくは50〜100モル%、より好ましくは60〜90モル%を使用することがよい。またDSDA以外の酸無水物を併用する場合はPMDA及びBPDAの少なくとも1種の10〜40モル%、より好ましくは20〜40モル%を使用することがよい。
次に、本発明の金属張積層板の製造方法について詳細を説明する。工程I)ポリイミド樹脂層の片面に接着性層を形成する接着性層形成工程は、接着性層を有するポリイミド樹脂層の製造方法と同様に行うことができる。この方法で得られたポリイミド樹脂層(以下、接着性ポリイミド樹脂層ともいう)を工程II)に付す。すなわち、金属張積層板の製造方法における工程a及び工程bに付したのち、工程II)に付す。工程II)では該接着性層の表面に金属層を形成するが、この形成方法としては、熱圧着法と蒸着法により金属層を形成する方法が適する。熱圧着法は、工程a及び工程bに加えて、工程cを有する。蒸着等により金属薄膜を形成する方法は、工程a及び工程bに加えて、工程dを有する。
工程cにおいて、金属箔を熱圧着する方法は特に制限されず、適宜公知の方法を採用することができる。金属箔を張り合わせる方法としては、通常のハイドロプレス、真空タイプのハイドロプレス、オートクレーブ加圧式真空プレス、連続式熱ラミネータ等を挙げることができる。金属箔を張り合わせる方法の中でも、十分なプレス圧力が得られ、残存揮発分の除去も容易に行え、更に金属箔の酸化を防止することができるという観点から真空ハイドロプレス、連続式熱ラミネータを用いることが好ましい。
また、熱圧着は、150〜450℃の範囲内に加熱しながら金属箔をプレスすることが好ましい。より好ましくは150〜400℃の範囲内である。更に、好ましくは150〜380℃の範囲内である。別の観点からはポリイミド樹脂層又は改質イミド化層のガラス転移温度以上の温度であることがよい。また、プレス圧力については、使用するプレス機器の種類にもよるが、通常、1〜50MPa程度が適当である。
金属箔としては、鉄箔、ニッケル箔、ベリリウム箔、アルミニウム箔、亜鉛箔、インジウム箔、銀箔、金箔、スズ箔、ジルコニウム箔、ステンレス箔、タンタル箔、チタン箔、銅箔、鉛箔、マグネシウム箔、マンガン箔及びこれらの合金箔が挙げられる。このなかでも、銅箔(銅合金箔)又はステンレス箔が適する。ここでいう銅箔とは、銅又は銅を主成分とする銅合金の箔を言う。好ましくは銅含有率が90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上の銅箔である。銅箔が含有している金属としては、クロム、ジルコニウム、ニッケル、シリコン、亜鉛、ベリリウム等を挙げることができる。また、これらの金属が2種類以上含有される合金箔であっても良い。また、ステンレス箔は、材質に制限はないが、例えばSUS304のようなステンレス箔が好ましい。
金属箔は、ポリイミド樹脂層が積層する面にシランカップリング剤処理が施されていてもよい。シランカップリング剤は、アミノ基又はメルカプト基等の官能基を有するシランカップリング剤が好ましく、より好ましくはアミノ基を有するシランカップリング剤がよい。具体例としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、2-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。この中でも、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン及びN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランから選択される少なくとも1種であることがよい。特に、3-アミノプロピルトリエトキシシラン又は/及び3-アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。
シランカップリング剤は極性溶媒の溶液として使用する。極性溶媒としては、水又は水を含有する極性有機溶媒が適する。極性有機溶媒としては、水との親和性を有する極性の液体であれば、特に限定されない。このような極性有機溶媒として、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。シランカップリング剤溶液は、0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜2.0重量%、より好ましくは0.5〜1.0重量%濃度の溶液がよい。
シランカップリング剤処理は、シランカップリング剤を含む極性溶媒の溶液が接触する方法であれば、特に限定されず、公知の方法を利用することができる。例えば、浸漬法、スプレー法、刷毛塗りあるいは印刷法等を用いることができる。温度は0〜100℃、好ましくは10〜40℃付近の常温でよい。また、浸漬時間は、浸漬法を適用する場合、10秒〜1時間、好ましくは30秒〜15分間処理することが有効である。処理後、乾燥する。乾燥方法は、特に限定されず、自然乾燥、エアガンによる吹きつけ乾燥、あるいはオーブンによる乾燥等を用いることができる。乾燥条件は、極性溶媒の種類にもよるが、10〜150℃で5秒〜60分間、好ましくは25〜150℃で10秒〜30分間、更に好ましくは30〜120℃で1分〜10分間である。
金属箔が銅箔である例としては、フレキシブル基板用途に用いる場合が挙げられる。この用途として用いられる場合の銅箔の好ましい厚みは3〜50μmの範囲であり、より好ましくは5〜30μmの範囲であるが、ファインピッチの要求される用途で用いられる銅張積層板には、薄い銅箔が好適に用いられ、この場合、5〜20μmの範囲が適している。また、本発明は表面粗度が小さい銅箔を用いても樹脂層に対する優れた接着性が得られることから、特に、表面粗度が小さい銅箔を用いる場合に適している。好ましい銅箔の表面粗度は、十点平均粗さで0.1〜3μmの範囲が適している。特にファインピッチの要求される用途で用いられる銅箔については、表面粗度は十点平均粗さで0.1〜1.0μmが適している。
金属箔がステンレス箔である例としては、ハードディスクドライブに搭載されているサスペンション(以下、HDDサスペンション)用途に用いる場合が挙げられる。この用途として用いられる場合のステンレス箔の好ましい厚みは10〜100μmの範囲がよく、より好ましくは15〜70μmの範囲がよく、更に好ましくは15〜50μmの範囲がよい。
この金属張積層板の製造方法によって得られる積層板は、ポリイミド樹脂層の片面又は両面に金属箔を有する積層板である。片面に金属箔を有する積層板は、本発明の接着性層を有するポリイミド樹脂層の製造方法によって得られた接着性層に金属箔を積層することにより得られる。接着性層を有するポリイミド樹脂層がガラス、樹脂フィルム等の基材に積層されている場合は、これを必要により基材から剥離する。接着性層を有するポリイミド樹脂層が銅箔等の金属箔に積層されている場合は、このポリイミド樹脂層側に金属箔を積層することにより両面金属張積層板とすることができる。また、両面に金属箔を有する金属張積層板は、上記の方法の他、接着性層を有するポリイミド樹脂層が、その両面に接着性層を有する場合は、この両面に金属箔を積層することにより得られる。
次に、工程a及び工程bに加えて、工程dを備える本発明の金属張積層板の製造方法について説明する。工程a及び工程bは上記のようにして行ったのち、工程dに付す、すなわち、工程dでの接着性層の表面に金属薄膜層を形成する。
工程dにおいて、金属薄膜層は蒸着法により形成する。蒸着法は、特に限定されないが、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法等を使用でき、特に、スパッタリング法が好ましい。このスパッタリング法はDCスパッタ、RFスパッタ、DCマグネトロンスパッタ、RFマグネトロンスパッタ、ECスパッタ、レーザービームスパッタ等各種手法があるが、特に制限されず、適宜採用することができる。スパッタリング法による金属薄膜層の形成条件については、例えば、アルゴンガスをスパッタガスとして使用し、圧力は好ましくは1×10-2〜1Pa、より好ましくは5×10-2〜5×10-1Paであり、スパッタ電力密度は、好ましくは1〜100Wcm-2、より好ましくは1〜50Wcm-2の条件で行う方法がよい。この場合、金属薄膜層からなる金属層は十分に薄いものとすることができる。このようにして形成した金属薄膜層の上に、適宜、無電解めっき又は電解めっきによって厚膜の導体金属層としてもよい。
蒸着で設ける金属薄膜層に適した金属としては、銅、ニッケル、クロムやこれらの合金がある。蒸着法においては、金属の薄膜を形成できるという利点があるが、厚膜を形成するには不向きである。そこで、金属薄膜層を厚くして電気抵抗を下げたり、強度を高める場合は、その上に比較的厚い銅薄膜層を設けてもよい。
蒸着法による金属薄膜の形成は、銅を薄膜層として用いることが好ましい。この際、接着性をより向上させる下地金属薄膜層を表面処理ポリイミド樹脂層に設け、その上に銅薄膜層を設けてもよい。下地金属薄膜層としては、ニッケル、クロムやこれらの合金層がある。下地金属薄膜層を設ける場合、その厚みは銅薄膜層厚みの1/2以下、好ましくは1/5以下で、1〜50nm程度の厚みとすることがよい。この下地金属薄膜層もスパッタリング法により形成することが好ましい。
ここで用いられる銅は一部に他の金属を含有する合金銅でも良い。スパッタリング法により形成させる銅又は銅合金は好ましくは銅含有率が90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上のものである。銅が含有し得る金属としては、クロム、ジルコニウム、ニッケル、シリコン、亜鉛、ベリリウム等を挙げることができる。また、これらの金属が2種類以上含有される銅合金であってもよい。
工程dにおいて形成される金属薄膜層の厚みは、0.01〜1.0μmの範囲であることがよく、好ましくは0.05〜0.5μm、より好ましくは0.1〜0.5μmである。薄膜層を更に厚くする場合には、無電解めっき又は電解めっきによって、厚膜にしてもよい。このようにして形成される金属層は、サブトラクティブ法ないしはセミアディティブ法で回路形成を行うこともできる。
本発明によれば、簡便な処理によってポリイミド樹脂層に金属層との高い接着性を付与し、且つポリイミドエッチング時にアンダーカットや庇状のエッチング残りを発生させないので、優れた金属張積層板を提供することが可能となる。また、本発明で得られる接着性層は、高温加熱下における発泡の発生による不具合を抑制することができるので、その工業的価値は高いものである。
以下、本発明を実施例により具体例を説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、本発明の実施例において特にことわりない限り各種測定、評価は下記によるものである。
[接着強度の測定]
接着強度は、ストログラフVES05D(東洋精機製作所社製)を用いて、幅1mmの短冊状に切断したサンプルについて、室温で90°、1mmピール強度を測定することにより評価した。
[熱線膨張係数の測定]
線熱膨張係数は、サーモメカニカルアナライザー(セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、サンプルを250℃まで昇温し、更にその温度で10分保持した後、5℃/分の速度で冷却し、240℃から100℃までの平均線熱膨張係数(CTE)を求めることにより評価した。
[接着性層の厚み測定]
接着性層の厚みは、走査型透過電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、透過モードに設定し、サンプルの断面を観察し、改質層の厚みを確認することにより評価した。
[ポリイミドエッチング形状の測定]
まず100mm角の金属張積層板を用い、金属層側をエッチングし、100μm径のビア
を形成して試験片とした。その後、金属層をエッチングマスクとして、水酸化カリウム33.5wt%、エチレンジアミン11wt%、エチレングリコール22wt%からなる水溶液をエッチング液として用い、80℃のエッチング液に、試験片を10〜60秒間浸漬した。浸漬後に試験片を断面研磨し、ポリイミドのサイドエッチング形状を観察した。
次に、以下の実施例に基づいて、本発明を具体的に説明する。本発明はこれに限定されないことは勿論である。なお、本実施例に用いた略号は上記されているとおりである。
作製例1
500mlのセパラブルフラスコの中において、撹拌しながら20.7gの2'-メトキシ-4,4'-ジアミノベンズアニリド(0.08モル)を343gのDMAcに溶解させた。次に、その溶液を窒素気流中で28.5gのPMDA(0.13モル)及び10.3gのDAPE44(0.05モル)を加えた。その後、約3時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリアミド酸溶液Sを得た。
得られたポリアミド酸溶液Sを、ステンレス基材の上に塗布し、130℃で5分間乾燥し、15分かけて360℃まで昇温させてイミド化を完了させ、ステンレス基材に積層されたポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムをステンレス基材から剥離し、25μmの厚みのポリイミドフィルムSを得た。このフィルムSの線熱膨張係数は、14.6×10-6(1/K)であった。
作製例2
5gの3-アミノプロピルトリメトキシシラン、500gのメタノール及び2.5gの水を混合し、2時間撹拌することで、シランカップリング剤溶液を調整した。予め水洗したステンレス箔1(新日本製鐵株式会社製 SUS304 H-TA、厚み20μm、樹脂層側の表面粗度:十点平均粗さRz0.8μm)をシランカップリング剤溶液(液温約20℃)へ30秒間浸漬した後、一旦大気中に引き上げ、余分な液を落とした。次いで圧縮空気を約15秒間吹き付けて乾燥した。その後、110℃で30分間加熱処理を行い、シランカップリング剤処理のステンレス箔2を得た。
合成例1
500mlのセパラブルフラスコの中において、撹拌しながら11.7gのAPB(0.04モル)及び2.2gのp-PDA(0.02モル)を262gのDMAcに溶解させた。次に、その溶液を窒素気流中で4.4gのPMDA(0.02モル)及び14.3gのDSDA(0.04モル)を加えた。その後、約4時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリイミド前駆体樹脂aの溶液を得た。得られたポリイミド前駆体樹脂aの重量平均分子量は、286,000であった。なお、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した標準ポリスチレン換算重量平均分子量の値を求めた。
ここで、ポリイミド前駆体樹脂aは、上記式(1)において、Ar21モルに対してAr1の2価の基(Y)は1.33モル、Ar11モルに対してAr2の2価の基(Y)は0.66モル、Ar11モルに対してAr1及びAr2の2価の基(Y)は1.99モル含む。
合成例2
500mlのセパラブルフラスコの中において、撹拌しながら14.6gのAPB(0.05モル)及び5.4gのp-PDA(0.05モル)を359gのDMAcに溶解させた。次に、その溶液を窒素気流中で8.7gのPMDA(0.04モル)及び21.5gのDSDA(0.06モル)を加えた。その後、約4時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリイミド前駆体樹脂bの溶液を得た。
合成例3
1000mlのセパラブルフラスコの中において、撹拌しながら26.3gのAPB(0.09モル)及び1.1gのp-PDA(0.01モル)を411gのDMAcに溶解させた。次に、その溶液を窒素気流中で8.7gのPMDA(0.04モル)及び21.5gのDSDA(0.06モル)を加えた。その後、約4時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリイミド前駆体樹脂cの溶液を得た。
合成例4
1000mlのセパラブルフラスコの中において、撹拌しながら29.2gのAPB(0.1モル)を409gのDMAcに溶解させた。次に、その溶液を窒素気流中で8.7gのPMDA(0.04モル)及び19.3gのBTDA(0.06モル)を加えた。その後、約3時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリイミド前駆体樹脂dの溶液を得た。
合成例5
1000mlのセパラブルフラスコの中において、撹拌しながら41.1gのBAPP(0.1モル)を524gのDMAcに溶解させた。次に、その溶液を窒素気流中で32.2gのBTDA(0.1モル)を加えた。その後、約2時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリイミド前駆体樹脂eの溶液を得た。
合成例6
500mlのセパラブルフラスコの中において、撹拌しながら28.7gのBAPP(0.07モル)を320gのDMAcに溶解させた。次に、その溶液を窒素気流中で13.1gのPMDA(0.06モル)及び2.9gのBPDA(0.01モル)を加えた。その後、約3時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリイミド前駆体樹脂fの溶液を得た。
合成例1〜合成例6をまとめて、表1に示す。表1において、ジアミン及び酸無水物の使用量の単位はgであり(括弧内の数値はモル数を表す)、「前駆体」とは、得られたポリイミド前駆体樹脂を示し、「Ar1のY」とは、Ar11モル中の2価の基(Y)のモル数を示し、「Ar2のY」とは、Ar21モル中の2価の基(Y)のモル数を示し、「Ar1Ar2のY」とは、Ar1及びAr2の合計2モル中の2価の基(Y)のモル数を示す。
Figure 2009113402
合成例1のポリイミド前駆体樹脂aの溶液47gに、453gのDMAcを加えて、固形分濃度を1重量%に調製したポリイミド前駆体樹脂溶液Aを用意した。
イミド化後の厚みが25μmとなるように、作製例1のポリアミド酸溶液Sをステンレス基材の上に塗布し、130℃で5分間乾燥してポリアミド酸層を作製した。
上記ポリアミド酸層の上に、ダイコーター(吐出口高さ50μm)を用いて、ポリイミド前駆体樹脂溶液Aをウェット厚み50μmで塗布した後、130℃で2分間乾燥し、15分かけて360℃まで昇温させてイミド化を完了させ、接着性層を有するポリイミド樹脂層を作製した。得られた樹脂層を基材から剥離することで、接着性層を有するポリイミドフィルム1を得た。このフィルムの接着性層の厚みは0.4μmであった。また、接着性層のほぼ100%が含浸層であった。
なお、接着性層に占める含浸層の割合W(%)は、ポリアミド酸層のイミド化後の理論厚みF0(μm)と、ポリイミドフィルム1の厚みF1(μm)及び接着性層の厚みT(μm)の測定値(観測値)から、W(%)=[T−(F1−F0)]/T×100(%)として算出した。ここで、「ポリアミド酸層のイミド化後の理論厚み」とは、ポリアミド酸層を形成した後に、熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体溶液を塗布しないで、ポリアミド酸層単味をイミド化してポリイミド樹脂層としたときの厚みをいう。
得られたフィルム1の接着性層面に、作製例2のステンレス箔2のシランカップリング剤処理面を重ね合わせ、高性能高温真空プレス機にて20MPa、温度370℃、プレス時間1分の条件で加熱圧着して、金属張積層板A1を作製した。フィルムと金属の接着強度及び絶縁樹脂層のエッチング形状を評価した。結果を表2に示す。得られた金属張積層板は接着強度、エッチング後の絶縁樹脂層の形状も特に問題はなかった。なお、接着強度は、0.5kN/m以上を問題なしとした。
合成例2のポリイミド前駆体樹脂bの溶液42gに、458gのDMAcを加えて、固形分濃度を1重量%に調製したポリイミド前駆体樹脂溶液Bを用意した。
実施例1におけるポリイミド前駆体樹脂溶液Aの代わりに、ポリイミド前駆体樹脂溶液Bを使用した以外は、実施例1と同様にして、接着性層を有するポリイミドフィルム2及び金属張積層板B2を作製した。なお、フィルム2の接着性層のほぼ100%が含浸層であった。フィルムと金属の接着強度及び絶縁樹脂層のエッチング形状を評価した。結果を表2に示す。
合成例3のポリイミド前駆体樹脂cの溶液42gに、458gのDMAcを加えて、固形分濃度を1重量%に調製したポリイミド前駆体樹脂溶液Cを用意した。
実施例1におけるポリイミド前駆体樹脂溶液Aの代わりに、ポリイミド前駆体樹脂溶液Cを使用した以外は、実施例1と同様にして、接着性層を有するポリイミドフィルム3及び金属張積層板C3を作製した。なお、フィルム3の接着性層のほぼ100%が含浸層であった。フィルムと金属の接着強度及び絶縁樹脂層のエッチング形状を評価した。結果を表2に示す。
合成例4のポリイミド前駆体樹脂dの溶液42gに、458gのDMAcを加えて、固形分濃度を1重量%に調製したポリイミド前駆体樹脂溶液Dを用意した。
実施例1におけるポリイミド前駆体樹脂溶液Aの代わりに、ポリイミド前駆体樹脂溶液Dを使用した以外は、実施例1と同様にして、接着性層を有するポリイミドフィルム4及び金属張積層板D4を作製した。なお、フィルム4の接着性層の90%以上は含浸層であった。フィルムと金属の接着強度及び絶縁樹脂層のエッチング形状を評価した。結果を表2に示す。
合成例5のポリイミド前駆体樹脂eの溶液42gに、458gのDMAcを加えて、固形分濃度を1重量%に調製したポリイミド前駆体樹脂溶液Eを用意した。
実施例1におけるポリイミド前駆体樹脂溶液Aの代わりに、ポリイミド前駆体樹脂溶液Eを使用した以外は、実施例1と同様にして、接着性層を有するポリイミドフィルム5及び金属張積層板E5を作製した。なお、フィルム5の接着性層の80%以上が含浸層であった。フィルムと金属の接着強度及び絶縁樹脂層のエッチング形状を評価した。結果を表2に示す。
合成例6のポリイミド前駆体樹脂fの溶液42gに、458gのDMAcを加えて、固形分濃度を1重量%に調製したポリイミド前駆体樹脂溶液Fを用意した。
実施例1におけるポリイミド前駆体樹脂溶液Aの代わりに、ポリイミド前駆体樹脂溶液Fを使用した以外は、実施例1と同様にして、接着性層を有するポリイミドフィルム6及び金属張積層板F6を作製した。フィルムと金属の接着強度及び絶縁樹脂層のエッチング形状を評価した。なお、フィルム6の接着性層の80%以上が含浸層であった。結果を表2に示す。
合成例1のポリイミド前駆体樹脂aの溶液25gに、495gのDMAcを加えて、固形分濃度を0.5重量%に調製したポリイミド前駆体樹脂溶液Gを用意した。
実施例1におけるポリイミド前駆体樹脂溶液Aの代わりに、ポリイミド前駆体樹脂溶液Gを使用した以外は、実施例1と同様にして、接着性層を有するポリイミドフィルム7及び金属張積層板G7を作製した。フィルムと金属の接着強度及び絶縁樹脂層のエッチング形状を評価した。なお、フィルム7の接着性層のほぼ100%が含浸層であった。結果を表2に示す。
合成例1のポリイミド前駆体樹脂aの溶液93gに、407gのDMAcを加えて、固形分濃度を2重量%に調製したポリイミド前駆体樹脂溶液Hを用意した。
実施例1におけるポリイミド前駆体樹脂溶液Aの代わりに、ポリイミド前駆体樹脂溶液Hを使用した以外は、実施例1と同様にして、接着性層を有するポリイミドフィルム8及び金属張積層板H8を作製した。なお、フィルム8の接着性層のほぼ100%が含浸層であった。フィルムと金属の接着強度及び絶縁樹脂層のエッチング形状を評価した。結果を表2に示す。
実施例1で得た接着性層を有するポリイミドフィルム1を使用し、このフィルムの接着性層面に、金属原料が成膜されるように、RFマグネトロンスパッタリング装置(ANELVA;SPF-332HS)にセットし、槽内を3×10-4Paまで減圧した後、アルゴンガスを導入し真空度を2×10-1Paとし、RF電源にてプラズマを発生した。このプラズマにてニッケル:クロムの合金層[比率8:2、99.9重量%、以下、ニクロム層(第一スパッタリング層)]が膜厚30nmとなるようにポリイミドフィルムへ成膜した。ニクロム層を成膜した後、同一雰囲気にて、このニクロム層上にさらにスパッタリングにより銅(99.99重量%)を0.2μm成膜して第二スパッタリング層を得た。
次いで、上記スパッタ膜(第二スパッタリング層)を電極として電解めっき浴にて8μm厚の銅めっき層を形成した。電解めっき浴としては、硫酸銅浴(硫酸銅100g/L、硫酸220g/L、塩素40mg/L、アノードは含りん銅)を使用し、電流密度2.0A/dm2にてめっき膜を形成した。めっき後には十分な蒸留水で洗浄し乾燥を行い、金属張積層板I9を作製した。フィルムと金属の接着強度及び絶縁樹脂層のエッチング形状を評価した。結果を表2に示す。
接着性層を有するポリイミドフィルム1の代わりに、実施例4で得た接着性層を有するポリイミドフィルム4を使用した以外は、実施例9と同様にして、金属張積層板J10を作製した。フィルムと金属の接着強度及び絶縁樹脂層のエッチング形状を評価した。結果を表2に示す。
接着性層を有するポリイミドフィルム1の代わりに、実施例6で得た接着性層を有するポリイミドフィルム6を使用した以外は、実施例9と同様にして、金属張積層板K11を作製した。フィルムと金属の接着強度及び絶縁樹脂層のエッチング形状を評価した。結果を表2に示す。
比較例1
作製例1のポリイミドフィルムに、作製例2のステンレス箔2のシランカップリング剤処理面を重ね合わせ、高性能高温真空プレス機にて20MPa、温度370℃、プレス時間1分の条件で加熱圧着して、金属張積層板を作製した。フィルムと金属の接着強度は0.1kN/m未満であった。
比較例2
実施例1におけるポリイミド前駆体樹脂溶液Aの代わりに、合成例1で得たポリイミド前駆体樹脂の溶液a(固形分濃度11重量%)を使用した以外は、実施例1と同様にして、金属張積層板を作製した。フィルムと金属の接着強度は0.3kN/mであり、エッチング後の絶縁樹脂層の形状に凹凸が生じた。
比較例3
合成例1で得たポリイミド前駆体樹脂aの溶液234gに、266gのDMAcを加えて、固形分濃度を5重量%に調製したポリイミド前駆体樹脂溶液Mを用意した。
実施例1におけるポリイミド前駆体樹脂溶液Aの代わりに、ポリイミド前駆体樹脂溶液Mを使用した以外は、実施例1と同様にして、金属張積層板を作製した。フィルムと金属の接着強度は0.3kN/mであった。
比較例4
実施例1におけるポリイミド前駆体樹脂溶液Aの代わりに、上記ポリイミド前駆体樹脂溶液Mを使用し、ダイコーター(吐出口高さ50μm)の代わりに、ダイコーター2(吐出口高さ20μm)を用いてポリイミド前駆体樹脂溶液Mをウェット厚み20μmで塗布した以外は、実施例1と同様にして、金属張積層板を作製した。フィルムと金属の接着強度は0.3kN/mであった。
以上の結果をまとめて、表2に示す。表2において、「樹脂溶液」とは、接着性層を形成するために使用したポリイミド前駆体樹脂溶液を示し、「前駆体」とは、ポリイミド前駆体樹脂の種類を示し、「濃度」とは、ポリイミド前駆体樹脂溶液の固形分濃度(重量%)を示し、「接着性層」とは、イミド化を完了させた後の接着性層の厚み(μm)を示し、「形状」とはエッチング後の絶縁樹脂層の形状を示し、凹凸が認められない場合を良好と評価した。
Figure 2009113402

Claims (7)

  1. 接着性層を有するポリイミド樹脂層の製造方法であって、
    a)熱線膨張係数が1×10-6 〜30×10-6(1/K)である低熱膨張性のポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸層の上に、固形分濃度が0.1重量%〜3重量%である熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体溶液を1.0μm以上の厚みで塗布して、その溶液の一部又は全てをポリアミド酸層に含浸させる含浸層形成工程と、
    b)含浸層が形成されたポリアミド酸層を、熱処理して乾燥及びイミド化し、ポリイミド樹脂層の上に1.0μm未満の厚みの接着性層を形成する接着性層形成工程
    を備えることを特徴とする接着性層を有するポリイミド樹脂層の製造方法。
  2. 熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体が、下記式(1)で表される構造単位を有するものであることを特徴とする請求項1記載のポリイミド樹脂層の製造方法。
    Figure 2009113402
    Figure 2009113402
    (式(1)中、Ar1は式(2)、式(3)又は式(4)で表される2価の芳香族基を示し、Ar2は式(5)又は式(6)で表される4価の芳香族基を示す。式(2)〜式(4)及び式(6)において、R1は独立に炭素数1〜6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、nは独立に0〜4の整数を示し、X及びWは独立に単結合又は-C(CH3)2-、-(CH2)m-、-O-、-S-、-CO-、-SO2-、-NH-若しくは-CONH-から選ばれる2価の基を示し、mは1〜5の整数を示す。そして、Ar11モル中に-(CH2)m-、-O-、-S-、-CO-、-SO2-、-NH-及び-CONH-から選ばれる2価の基を合計で1〜3モル含む。)
  3. 式(1)において、Ar21モル中に-(CH2)m-、-O-、-S-、-CO-、-SO2-、-NH-及び-CONH-から選ばれる2価の基を合計で0.4〜0.8モル含むことを特徴とする請求項2記載のポリイミド樹脂層の製造方法。
  4. 式(1)において、Ar1及びAr2の合計2モル中に-(CH2)m-、-O-、-S-、-CO-、-SO2-、-NH-及び-CONH-から選ばれる2価の基を合計で1.6〜2.4モル含むことを特徴とする請求項2又は3記載のポリイミド樹脂層の製造方法。
  5. 式(1)において、Ar2が式(6)で表され、Wが-SO2-である4価の芳香族基を有することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のポリイミド樹脂層の製造方法。
  6. 金属張積層板の製造方法において、
    I)ポリイミド樹脂層の片面に接着性層を形成する接着性層形成工程と、
    II)該接着性層の表面に金属層を形成する工程
    を備え、工程I)が、
    a)熱線膨張係数が1×10-6 〜30×10-6(1/K)である低熱膨張性のポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸層の上に、固形分濃度が0.1重量%〜3重量%である熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体溶液を1.0μm以上の厚みで塗布して、その溶液の一部又は全てをポリアミド酸層に含浸させる含浸層形成工程と、
    b)含浸層が形成されたポリアミド酸層を、熱処理して乾燥及びイミド化し、ポリイミド樹脂層の上に1.0μm未満の厚みの接着性層を形成する接着性層形成工程
    を備えることを特徴とする金属張積層板の製造方法。
  7. 工程II)が、
    c)接着性層の表面に金属箔を重ね合わせて熱圧着する工程、又はd)接着性層の表面に金属薄膜層を蒸着する工程を含む請求項6記載の金属張積層板の製造方法。
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