JP2021121657A - 研磨用砥粒分散液 - Google Patents

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Abstract

【課題】高速で研磨することができ、高面精度を達成することができ、砥粒の沈降性、沈降した砥粒の再分散性あるいは砥粒等の残留が改善された研磨用砥粒分散液の提供。【解決手段】異形シリカ系粒子および非異形シリカ系粒子からなるシリカ系粒子群を含むシリカ系粒子分散液に、ポリカルボン酸塩からなる分散剤が分散してなる研磨用砥粒分散液であって、前記異形シリカ系粒子は内部に細孔を有するコアおよび被覆シリカ層を有し、さらに次の条件を満たす研磨用砥粒分散液。シリカ系粒子群の重量平均粒子径、比表面積換算粒子径および異形度が特定範囲にあること。シリカ系粒子群の体積基準粒子径分布を波形分離すると多峰分布となること。ポリカルボン酸塩は重量平均分子量が特定範囲であり、カルボニル炭素に直接結合する炭素原子の個数が特定範囲であること。シリカ系粒子群と前記ポリカルボン酸塩の質量比が特定範囲であること。【選択図】図1

Description

本発明は、シリカ系粒子分散液等に関する。詳細には、研磨材として好ましい粒子径、粒子径分布、異形度等を有するシリカ系粒子群を含み、特に、磁気ディスク製造においてNiPメッキされた被研磨基板およびシリカ系基板を化学機械的研磨(ケミカルメカニカルポリッシング、CMP)により平坦化するための研磨用砥粒分散液として好適なシリカ系粒子分散液等に関する。
磁気ディスクや半導体などの製造プロセスでは、Siウエハ、ガラスHD、アルミHDなどの基板を平坦化させるために、化学機械的研磨(CMP)が適用されている。この化学機械的研磨では、シリカやセリアなどの砥粒を水に分散させ、さらに研磨性能を制御するためにケミカル成分を添加した、いわゆる研磨スラリーが用いられている。特に、砥粒は研磨性能に大きな影響を及ぼすことが知られており、砥粒に求められる性能としては、高い研磨速度を得ることができ且つ研磨面にスクラッチ(線条痕)などのディフェクト(欠陥)が生じない事が挙げられる。
高い研磨速度を得る方法としては、大きな粒子径の砥粒を使用する事が一般的である。しかし、砥粒の粒子径が大きくなり過ぎると、質量当たりの砥粒個数が減少するため逆に研磨速度が低下し、さらにスクラッチも増加する傾向にある。そこで、スクラッチを増加させることなく高い研磨速度を得るために、砥粒を非球形とする、つまり砥粒を異形形状の粒子(異形粒子)とすることが有効である事が知られている。
研磨材に適した粒子径を有する異形シリカ粒子を含むシリカ粒子群を調製する方法としては、水ガラスを原料として核生成時にシリカ粒子を凝集させる方法や、この方法などから調製した異形のシード粒子に珪酸液を添加して粒子径を大きく成長させる方法(特許文献1)が従来から知られている。
また、異形シリカゾルは粒子径が大きい程、静置した場合の粒子沈降が生じ易く、例えば、異形シリカゾルの保存容器底部には、硬質化した沈降物が溜まることが知られている。この様な粒子沈降が生じた場合、再分散させるために長時間の撹拌が必要となるので、特に比較的大きな異形シリカゾルにおいては、実用的な使用を妨げる要因となっていた。粒子沈降の抑止の手段として、各種分散剤の使用が知られており、例えば、ビニルアルコール重合体及びその誘導体、ベタイン、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等(特許文献2)が従来から知られている。
特許第5,127,452号公報 特許第5,862,720号公報
異形粒子においては、異形度(重量平均粒子径と投影面積相当粒子径との比)も研磨性能に大きく影響を与える。具体的には異形度が大きな粒子は研磨速度が高い傾向にある。一方で、異形度が小さい粒子は、真球状あるいは楕円状に近い粒子であるため、研磨速度が低くなる傾向にある。しかし、異形粒子はその形状が非球形であることから、通常は、球形または略球形の粒子(非異形粒子)と比較するとスクラッチが発生しやすい傾向にあり、特に、異形度が高い場合にその傾向が顕著となる。
また、一般に、研磨砥粒の粒子径と、粒子径分布が研磨性能に大きく影響することが知られており、粒子径が大きな砥粒は、研磨速度は高いものの、研磨基板の面精度(表面粗さ、うねり、スクラッチ等)は悪化する傾向にある。一方で、粒子径が小さな砥粒は、基板表面は平滑に仕上げることができ、スクラッチも生じ難いが、研磨速度が遅くなる。これは球形粒子に限らず、異形粒子の場合も同様である。
異形粒子といっても、その粒子径分布は多種多様であるが、通常、粒子径が比較的大きな粒子は研磨速度が高いため、高い研磨速度が要求される場合は、できるだけ平均粒子径が大きい異形粒子が用いられる。しかし、平均粒子径が比較的大きな異形粒子の場合、粒子径分布の裾が大粒子径側に大きく広がる傾向にあるので、平均粒子径に比して粗大な粒子を微量ながら含むことが多い。そして、このような粗大な粒子に起因して、研磨基板にスクラッチが生じたり、基板の表面粗さやうねりが悪化したりする傾向にある。そのため、高い研磨速度が要求される研磨に使用する砥粒として、平均粒子径が比較的大きく、且つ粗粒や過剰な大粒子(これらは総称して「粗大粒子」と呼ばれる)が極めて少ない異形粒子が望まれる。
さらに、粒子径が比較的小さい粒子は、球状粒子又は異形粒子を問わず、砥粒1個の研磨量が小さいことから研磨速度が低くなる傾向にある。また、粒子径が比較的小さい粒子は、研磨後に砥粒が基板上に残留し易い(これは「砥粒残り」と呼ばれる)。この砥粒残りは、研磨後の洗浄工程でも除去し難い傾向にある。この傾向は平均粒子径が比較的大きな異形粒子においても同様に見られるものであり、平均粒子径が比較的大きな異形粒子であっても、粒子径分布の裾が小粒子径側に広がったような分布の異形粒子は、砥粒残りが発生し易いといえる。
したがって、高い研磨速度と高い面精度を両立する好適な化学機械的研磨を実現するために、比較的大きな異形粒子を含む砥粒であって、質量当たりの砥粒個数が多く、研磨性能を低下させるような粗大粒子をできるだけ含まず、更に砥粒残りの原因となるような比較的小さい粒子をできるだけ含まない砥粒が望まれる。
しかしながら、水ガラスを原料として核生成時にシリカ粒子を凝集させる方法では、比表面積換算粒子径が100nm以上の異形シリカ粒子を得ることは困難であった。さらに、この方法では、核生成時のシリカ粒子凝集工程において、一部の核粒子が暴走反応を生じ、粗大な凝集体が生じてしまう可能性があり、この粗大な凝集体がスクラッチの原因となるという問題があった。また、この方法で得られるような比表面積換算粒子径100nm以下の異形シリカ粒子をシード粒子として用い、このシード粒子に珪酸液を添加して粒子径を大きく成長させる方法では、比表面積換算粒子径が100nm以上となるように珪酸液を使用して粒子を成長させると、シード粒子は球状または略球状に成長するため、異形のシード粒子を異形のまま成長させて比較的大きな異形シリカ粒子を得ることは困難であった。
さらに、本発明者らは、異形シリカ粒子を含むシリカ粒子群を調製する別の方法として、湿式シリカを粉砕することにより異形シリカ粒子を得る方法を検討したところ、異形シリカ粒子は得られたものの、ゲル構造の湿式シリカは、粉砕あるいは解砕によって粒子径や粒度分布制御を行うにはその粒子強度が弱く、また得られた異形シリカ粒子も同じく粒子強度が弱いため、この異形シリカ粒子を含むシリカ粒子群を砥粒として使用した場合、必要な研磨速度を得ることができなかった。
そこで本発明は、研磨用途に適用した場合、例えば、シリカ系基板あるいはNiPメッキされた被研磨基板等に対して、高い研磨速度及び高面精度を達成することが可能なシリカ系粒子群(比較的大きな異形粒子を含む砥粒であって、特定の粒子径分布を示し、必要な粒子強度を有する異形粒子を含むシリカ系粒子群)を含む研磨用砥粒分散液を提供することを目的とする。
このような研磨用砥粒分散液は、比較的大きな異形粒子を含むが粒子の沈降性および再分散性が優れるため、より実用性が高い。
本発明者は上記課題を解決するため、シード粒子として、従来の水ガラスから得られた異形シード粒子に代えて、多孔質シリカ系ゲルを特定の条件で解砕し得られた異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子を用い、さらに、珪酸液を加えて該シード粒子を成長させる方法を検討した。この異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子は、柔らかい多孔質シリカ系ゲルをアルカリ性下で湿式解砕して得られたものであり、また、粗大粒子が殆ど無く比較的粒度の揃ったものであり、原料の多孔質シリカ系ゲルが有する内部の細孔構造を概ね保持したものである。
このような異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子をシード粒子として用い、珪酸液の共存下でシード粒子を成長させることにより、珪酸はシード粒子の一次粒子間の細孔(一次粒子間の凹部)かつ表層部から優先的に沈着するため、該シード粒子の内部は多孔質な構造を備え、一方、表面の凸部に対しては、沈着速度は遅いが一定の割合で珪酸が沈着するので、異形を保ちながら成長させることができた。また、シード粒子として粗大粒子の少ない異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子を用いているので、得られた異形シリカ系粒子を含むシリカ系粒子群は、解砕時に粗大粒子が優先的に解砕され粗大粒子を殆ど含まない。このシリカ系粒子群を砥粒として使用することで、研磨速度が比較的高く、且つ研磨面上でのスクラッチの発生を大幅に抑制し、表面粗さやうねりが小さい研磨面が得られることを見出した。そして、このような高い研磨速度を得ることができるこのシリカ系粒子群に含まれる多孔質な構造を備えた異形シリカ系粒子は、緻密な粒子と比べ比較的密度が低くなり、この異形シリカ系粒子を含むシリカ粒子群の粒子個数が増える。一方、その表層部は一次粒子間のネック部が補強されているので、その粒子強度が一定の水準を超えている。つまりその粒子強度が研磨時の圧力に耐えうる程度に高められているといえる。
前記知見に基づき、本発明者は、研磨材として好適な粒子径、粒子径分布、異形度および粒子強度を有する異形シリカ系粒子および非異形シリカ系粒子からなるシリカ系粒子群と特定の分散剤とを含む研磨用砥粒分散液である本発明を完成させた。
本発明は以下の(1)〜(10)である。
(1)異形シリカ系粒子および非異形シリカ系粒子からなるシリカ系粒子群を含むシリカ系粒子分散液に、ポリカルボン酸塩からなる分散剤が分散してなる研磨用砥粒分散液であって、前記異形シリカ系粒子は、内部に複数の細孔を有するコアおよびそれを被覆する被覆シリカ層を有し、さらに下記[1]〜[5]を満たす研磨用砥粒分散液。
[1]前記シリカ系粒子群の重量平均粒子径(D1)が100〜600nmであり、比表面積換算粒子径(D2)が30〜300nmであること。
[2]前記シリカ系粒子群の重量平均粒子径(D1)と投影面積相当粒子径(D3)との比で表される異形度D(D=D1/D3)が1.1〜5.0の範囲にあること。
[3]前記シリカ系粒子群の体積基準粒子径分布を波形分離すると、分離ピークが3つ以上検出される多峰分布となること。
[4]前記ポリカルボン酸塩は、重量平均分子量が20,000〜140,000の範囲にあり、カルボニル炭素に直接結合する炭素原子の個数をm、カルボニル炭素に直接結合しない炭素原子の個数をnとしたとき、m/(m+n)×100の値が40〜50%の範囲にあること。
[5]前記シリカ系粒子群と、前記ポリカルボン酸塩の質量比が100:0.1〜100:10の範囲にあること。
(2)前記分散剤がポリアクリル酸塩からなることを特徴とする、上記(1)に記載の研磨用砥粒分散液。
(3)前記コアの内部細孔の平均細孔径が20nm以下であることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の研磨用砥粒分散液。
(4)前記被覆シリカ層が、平均厚さ1〜50nmの範囲で、シリカを主成分とすることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の研磨用砥粒分散液。
(5)前記シリカ系粒子群が、その体積基準粒子径分布において、歪度が−20〜20の範囲にあることを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の研磨用砥粒分散液。
(6)前記シリカ系粒子群の体積基準粒子径分布を波形分離した結果得られた分離ピークのうち、最大粒子成分の体積割合が75%以下であることを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の研磨用砥粒分散液。
(7)前記シリカ系粒子群のSEM画像解析により得られる個数基準粒子径分布において、小粒子側成分のアスペクト比が1.05〜5.0の範囲にあることを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の研磨用砥粒分散液。
(8)前記シリカ系粒子群の体積基準粒子径分布の粒子径の変動係数が30%以上であることを特徴とする、上記(1)〜(7)の何れかに記載の研磨用砥粒分散液。
(9)前記シリカ系粒子群における、画像解析法による平均面積(S1)に対する画像解析法による平均外周長と等価な円の面積(S2)の比であらわされる平滑度S(S=S2/S1)が1.1〜5.0の範囲にあることを特徴とする、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の研磨用砥粒分散液。
(10)前記シリカ系粒子群の体積基準粒子径分布において、全体積(Q1)に対する0.7μm以上の粒子の体積(Q2)の割合Q(Q=Q2/Q1)が1.2%以下であることを特徴とする、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の研磨用砥粒分散液。
本発明の異形シリカ系粒子および非異形シリカ系粒子からなるシリカ系粒子群は、研磨材として好適な粒子径、粒子径分布、異形度および粒子強度を有しているので、これと特定の分散剤とを含む研磨用砥粒分散液を用いて研磨した場合、対象がNiPメッキされた被研磨被膜およびシリカ系基板であっても、高速で研磨することができ、砥粒の基材への突き刺さりが無く、同時に高面精度(スクラッチが少ない、被研磨基板の表面粗さ(Ra)やうねり(Wa)が小さいなど)を達成することができる。
また、本発明の研磨用砥粒分散液に含まれるシリカ系粒子群は、その表面が平滑でなく、微小な突起を有しており、多孔質であるため、研磨時に発生する研磨屑やイオン成分、オリゴマー成分、有機物等を吸着するスカベンジャー効果も備えている。そのため、研磨基板へのこれらの成分の再付着を防止でき、残渣の少ない研磨表面を達成することができる。
また、本発明の研磨用砥粒分散液は、砥粒として比較的大きな異形粒子を含むことに起因する実用上の問題、即ち、砥粒の沈降性が高く、沈降した砥粒の再分散性が低く、砥粒等の残留も多いといった問題が解決されている。具体的には、本発明者は、本発明の異形シリカ系粒子および非異形シリカ系粒子からなるシリカ系粒子群に好適な分散剤を見出し、研磨用砥粒分散液として、砥粒の沈降性、沈降した砥粒の再分散性あるいは砥粒等の残留を改善することに成功した。
粒子径分布における尖度の説明図 粒子径分布における歪度の説明図
本発明の異形シリカ系粒子および非異形シリカ系粒子からなるシリカ系粒子群、およびこれを含むシリカ系粒子分散液、更には、本発明のポリカルボン酸塩からなる分散剤、および本発明の研磨用砥粒分散液について具体的に説明する。なお、本発明において「粒子群」の文言は、多数の粒子の集合を意味する。
<重量平均粒子径(D1)>
本発明のシリカ系粒子群の重量平均粒子径(D)は100〜600nmであり、110〜400nmが好ましく、120〜300nmであることが最も好ましい。重量平均粒子径(D)が100〜600nmの範囲にあるシリカ系粒子群を砥粒として用いた場合は、高い研磨速度を得ることができ、且つスクラッチが発生しにくい。なお、重量平均粒子径(D)が100nm未満であるシリカ系粒子群を砥粒として用いた場合は、必要な研磨速度が得にくく、さらに小さな粒子が研磨後の基板に残留しやすい傾向にある。また、重量平均粒子径(D)が600nm超であるシリカ系粒子群を砥粒として用いた場合は、スクラッチが発生しやすい傾向にあり、また重量平均粒子径をこれ以上大きくしても質量当たりの砥粒個数が減少するため、研磨速度が向上しない場合がある。
ここで、本発明において重量平均粒子径(D1)とは、測定対象である研磨用砥粒分散液を0.05質量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液で希釈し、固形分濃度で2質量%としたものを、従来公知のディスク遠心式粒子径分布測定装置(例えば、CPS Instriment社製など)に0.1ml、シリンジで注入して、8%から24%のショ糖の密度勾配溶液中で18000rpmの条件で測定して得た重量基準粒子径分布から求める平均粒子径である。つまり、本発明においては、この重量平均粒子径(D)は「重量換算粒子径分布の平均粒子径」を意味する。
<比表面積換算粒子径(D2)>
本発明のシリカ系粒子群の比表面積換算粒子径(D2)は30〜300nmであり、40〜250nmが好ましく、50〜200nmであることがより好ましく、60〜150nmであることが最も好ましい。比表面積換算粒子径(D2)が30〜300nmの範囲にあるシリカ系粒子群を砥粒として用いた場合は、高い研磨速度を得ることができ、且つスクラッチが発生しにくい。なお、比表面積換算粒子径(D2)が30nm未満であるシリカ系粒子群を砥粒として用いた場合は、必要な研磨速度が得にくく、さらに小さな粒子が研磨後の基板に残留しやすい傾向にある。また、比表面積換算粒子径(D2)が300nm超であるシリカ系粒子群を砥粒として用いた場合は、スクラッチが発生したり研磨後の基板の表面粗さが悪化したりする傾向にある。さらに、比表面積換算粒子径(D2)をこれ以上大きくしても、質量当たりの砥粒個数が減少するため、逆に研磨速度が低下する傾向にある。
なお、本発明において比表面積換算粒子径(D2)とは、比表面積換算の平均粒子径を意味し、BET法により測定される比表面積(SA:m2/g)と、粒子の密度(ρ)[シリカの場合ρ=2.2]を用い、D2=6000/(SA×ρ)の式から算出される。
ここでBET法とは、次のような方法である。
初めに、測定対象であるシリカゾル(研磨用砥粒分散液)50mlを硝酸によりpHを3.5に調整し、これに1−プロパノールを40ml加えて110℃で16時間乾燥した試料について、乳鉢で粉砕後、マッフル炉にて500℃、1時間焼成して測定用試料とする。そして、公知の比表面積測定装置(例えばユアサアイオニクス製、型番マルチソーブ12など)を使用し、窒素吸着法(BET法)を用いて窒素の吸着量からBET1点法により比表面積を算出する。比表面積測定装置では、焼成後の試料0.5gを測定セルに取り、窒素30vol%/ヘリウム70vol%混合ガス気流中、300℃で20分間脱ガス処理を行い、その上で試料を上記混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させる。次いで、上記混合ガスを流しながら試料温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量を検出し、予め作成した検量線により試料中のシリカ微粒子の比表面積(SA)を算出する。
また、シリカ系粒子群の比表面積が高い場合には、BET法における焼成時に焼結が進むため、その比表面積(SA)が100m2/g以上となる場合には、タイトレーション法により比表面積(SA)を求める。
ここでタイトレーション法とは、次のような方法である。
まず初めに、SiO2として1.5gに相当する試料をビーカーに採取してから、恒温反応槽(25℃)に移し、純水を加えて液量を90mlにする(以下の操作は、25℃に保持した恒温反応槽中にて行う)。次に、pH3.6になるように0.1モル/L塩酸水溶液をここに加える。さらに、塩化ナトリウムを30g加え、純水で150mlに希釈し、10分間攪拌する。そして、pH電極をセットし、攪拌しながら0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液を滴下してpH4.0に調整する。さらに、pH4.0に調整した試料を0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液で滴定し、pH8.7〜9.3の範囲での滴定量とpH値を4点以上記録して、0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液の滴定量をX軸、その時のpH値をY軸として、検量線を作る。そして、V=(A×f×100×1.5)/(W×C)の式からSiO21.5g当たりのpH4.0〜9.0までに要する0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液の消費量V(ml)を求め、これを用いて、SA=29.0V−28の式に従って比表面積を求める。
なお、上記式中において、AはSiO21.5g当たりpH4.0〜9.0までに要する0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液の滴定量(ml)、fは0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液の力価、Cは試料のSiO2濃度(%)、Wは試料採取量(g)を意味する。
<異形度>
異形度は、前述の重量平均粒子径(D1)を、投影面積相当粒子径(D3)で割ることによって表わされる。なお、投影面積相当粒子径(D3)とは、次のような方法により測定、算出されたものである。まず、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、シリカ系粒子表面の任意の箇所を、倍率3000倍で1視野当たり1.1×10-3mm2の面積で15視野撮影する。そして、この各視野において撮影された個々の画像に含まれる全てのシリカ微粒子について、画像解析システムを用いた画像解析法によって個々の粒子の投影面積を測定し、この測定された各面積に相当する円形の粒子の粒子径(円の直径)を算出し、これらの個数平均(算術平均径)を投影面積相当粒子径(D3)とする。
本発明のシリカ系粒子群は、異形度D(D=D1/D3)が1.1〜5.0の範囲であり、1.1〜4.0の範囲が好ましく、1.1〜3.0の範囲がより好ましく、1.1〜2.5の範囲がより好ましい。異形度が高いシリカ系粒子群とは、すなわち粒子群の平均アスペクト比(「最小内接四角の長径/短径比」の平均値)が高い事を示しており、この平均アスペクト比が高い場合、研磨時にはおもに粒子の長径において基板と接触し、基板との接触面積が高くなり、研磨速度が高くなるため好ましいが、この異形度が5.0超の場合は、これ以上異形度を高めても研磨速度は向上せず、さらにスクラッチやうねりが発生しやすい傾向にある。また、この異形度が1.1未満の場合は、粒子の形状が真球状に近い形状であることを示しており、そのようなシリカ系粒子群を含むシリカ系粒子分散液を用いて研磨を行った場合、研磨速度が低下する傾向にある。
なお、ここでアスペクト比は粒子が内接する長方形(正方形を含む)の中で最も面積が小さいものにおける、長辺と短辺の比(長辺/短辺)を意味する。また、平均アスペクト比は、50個以上の粒子のアスペクト比の単純平均値を意味する。
なお、本発明に係るシリカ系粒子群を含むシリカ系粒子分散液に含まれる、異形シリカ系粒子の割合は、前記[1]、[2]及び[3]の要件を満たす限り、格別に制限されるものではないが、アスペクト比が1.1以上の異形シリカ系粒子の個数が全体(前記シリカ系粒子群)に占める割合として、50%以上が好ましく、更に好ましくは55%以上が推奨される。
なお、アスペクト比が1.1以上である異形シリカ系粒子の個数割合の測定方法は、後述する実施例に示す通りである。
<尖度>
本発明のシリカ系粒子群の体積基準粒子径分布における尖度は−20〜20であることが好ましく、−10〜10がより好ましく、−5〜3が最も好ましい。尖度がこの範囲であるシリカ系粒子群を砥粒として用いた場合は、より高い研磨速度を得ることができ、且つ研磨後においてより平滑な(表面粗さ(Ra)が小さく、基板のうねり(Wa)も小さく、スクラッチが少ない)表面の基板を得ることができる。
ここで尖度とは、粒子の形状や大きさには関係なく、粒子径分布のみから算出されるものであり、尖度がゼロ(正規分布)に近い場合は、正規分布に近い粒子径分布であることを示している。また尖度がゼロよりも大きな値を取る粒子径分布は、ピークの中央が正規分布と比較して尖り、分布の裾の左右が広がった分布である事を示し(図1(a))、尖度がゼロよりも小さな値を示す粒子径分布は、ピークが平坦で分布の裾の左右が広がっていない形状である事を示している(図1(b))。
本発明においては、シリカ系粒子群の体積基準粒子径分布における尖度は、負の値でも構わない。尖度が負の場合は、ピークが平坦で分布の左右の小粒子および大粒子成分が少なく、ピークが平坦な比較的粒度の揃った粒子径分布であることを示している。このような小粒子成分および大粒子成分が少ないシリカ系粒子群を砥粒として用いた場合、砥粒残りも少なく研磨速度も高いため、好ましい。
<歪度>
本発明のシリカ系粒子群の体積基準粒子径分布における歪度は−20〜20であることが好ましく、−15〜15がより好ましく、−10〜10が最も好ましい。歪度がこの範囲であるシリカ系粒子群を砥粒として用いた場合は、より高い研磨速度を得ることができ、且つ研磨後においてより平滑な(表面粗さ(Ra)が小さく、基板のうねり(Wa)も小さく、スクラッチが少ない)表面の基板を得ることができる。
ここで歪度とは、尖度と同様に粒子の形状や大きさには関係なく、粒子径分布からのみ算出されるものであり、歪度がゼロに近い場合は正規分布に近い粒子径分布であることを示している。また歪度がゼロよりも大きな値を取る粒子径分布は、分布の左側(粒子径が小さい側)にピークを有し、右に裾の長い分布である事を示している(図2(a))のに対し、歪度がゼロよりも小さな値を取る粒子径分布は、分布の右側(粒子径が大きい側)にピークを有して、左に裾の長い分布である事を示している(図2(b))。
通常、解砕および粉砕法によって得たシリカ系粒子群の体積基準粒子径分布における歪度は正の値を取る事が多く、ビルドアップ法で得た粒子は正規分布となり易いことから歪度はゼロに近い値を取る事が多い。歪度が正の場合の粒子径分布は、粒子径がやや小さめの位置にピークがあり、大粒子径側に裾が広い分布である。このように小粒子径側にピークがある粒子径分布を有するシリカ系粒子群を砥粒として使用すると、粒子径が小さめの成分が多いため、研磨後に平滑な表面が得られやすい傾向にある。一方で歪度が著しく大きなシリカ系粒子群は、大粒子径側に裾が大きく広がった粒子径分布となり、平均粒子径にもよるが、砥粒として使用すると、スクラッチが発生しやすい傾向にある。
本発明においては、シリカ系粒子群の体積基準粒子径分布における歪度は、負の値であっても構わない。歪度が負の値のシリカ系粒子群は、粒子径が大きめの位置にピークがあり、小粒子側に裾が広がった粒子径分布となるが、粒子径分布の大粒子側のきれが良いため(すなわち著しい大粒子が少ないため)、砥粒として使用してもスクラッチは発生しにくい。しかし歪度が−20よりも小さいシリカ系粒子群は、小粒子側の裾が広くなり過ぎた粒子径分布となり、小粒子成分が増えるため、砥粒として使用すると砥粒残りが発生する傾向にある。
<体積基準粒子径分布の測定および尖度・歪度の算出方法>
本発明では、シリカ系粒子群の体積基準粒子径分布を遠心沈降法によって測定する。例えば、シリカ系粒子分散液を0.05質量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液で希釈し、固形分濃度で2質量%に調整し、公知のディスク遠心式粒子径分布測定装置(例えば、CPS Instriment社製など)を用いて体積基準粒子径分布を測定することができる。
このようにして得られた体積基準粒子径分布の平均値や標準偏差等から従来公知の式によって尖度および歪度を算出する。例えば、SAS Institute Japan社製JMP Ver.13.2を用いて尖度および歪度を算出できる。なお、体積基準粒子径粒度分布において、まれに所定の粒子径の頻度が負の値を取る事があるが、そのような場合は頻度をゼロとして算出する。
<多峰分布>
本発明のシリカ系粒子群の体積基準粒子径分布は、下記の方法で波形分離すると、分離ピークが3つ以上検出される多峰分布となる。単峰分布となる粒子群の場合は、粒子径に応じた研磨速度とうねりが発生し、粒子径が大きい場合は研磨速度は高いがうねりが大きくなり、粒子径が小さい場合はうねりは良化するが研磨速度は低くなる。これに対して多峰分布となる粒子群の場合は、それぞれの成分の粒子径に応じた研磨痕を残しながら研磨が進行し、これらの総和がうねりおよび研磨速度となる。従って、大粒子成分と同時に、小粒子成分が十分な研磨速度を示すような分布(小粒子も大粒子も多く含まれているような、例えば台形の分布で、波形分離すると多峰となる分布)であれば、研磨速度とうねりが両立できる。
波形分離は、前述のディスク遠心式粒子径分布測定装置にて得られた体積基準粒子径分布を、グラフ作成・データ解析ソフト Origin(OriginLab Corporation社製)のピークアナライザを使用して解析することにより行う。まず、基線を0、ピークタイプをGaussianに設定し、粒度分布の極大点をピーク位置として選択して、重み付けなしでピークフィッティングを行い、算出されたピークが以下の条件1および2から逸脱していないことを確認し、逸脱している場合は、下記条件1および2を満たすまでピーク位置を分布範囲内の任意の位置にずらしてピークフィッティングを繰り返す。その後、補正R二乗値が0.99以下である場合は分布範囲内の任意の位置にピークを追加し、補正R二乗値が0.99以上になるまでピークフィッティングを繰り返す。このときの分離されたピークの数をピークの個数とする。
条件1:算出されたそれぞれのピークが元の分布より大きい値を取らないこと。
条件2:算出されたそれぞれのピークが負の値を取らないこと。
このような体積基準粒子径分布が多峰分布となるシリカ系粒子群は、大粒子から小粒子まで分布が幅広く(分布がブロードであり)、より好適な研磨性能を有する。
具体的には、波形分離した最大粒子成分の体積割合が、全体の体積のうち75%以下である事が望ましい。最大粒子成分の体積割合が75%以下の場合は、分布がブロードになり、波形分離した場合、分離ピークが3以上の多峰分布となる傾向にあるからである。
この最大ピークの体積割合が75%超の場合は、実質的に単峰分布に近い分布であり、このような体積基準粒子径分布を波形分離しても、分離ピークは3未満となる傾向にある。
さらには、本発明のシリカ系粒子群は、その体積基準粒子径分布を波形分離した際に検出された分離ピークのうち、最大粒子成分の体積割合が75%以下であることが好ましく、73%以下であることがより好ましい。このようなシリカ系粒子群を砥粒として使用すると、大粒子成分が少ないことにより、研磨時において基板の表面粗さやうねりがより良化する。ここで、本発明において「最大粒子成分」とは、シリカ系粒子群の体積基準粒子径分布を波形分離した際に、粒子径が最も大きい粒子側にある分離ピークに含まれる粒子成分を意味する。
<アスペクト比>
本発明のシリカ系粒子群は、SEM画像解析の結果、得られる個数基準粒子径分布において、小粒子側成分のアスペクト比が1.05〜5.0の範囲にあることが好ましく、1.05〜3.0の範囲にあることがより好ましく、1.05〜2.0の範囲にあることがより好ましく、1.05〜1.5の範囲にあることが更に好ましい。なお、SEM画像解析により得られる個数基準粒子径分布における小粒子側成分のアスペクト比とは、以下のような方法により測定、算出されたものである。まず、公知の走査型電子顕微鏡(SEM)および公知の画像解析システムを用いて、倍率3000倍で1視野当たり1.1×10-3mm2の面積で15視野撮影し、シリカ系粒子群の総粒子数をカウントする。また、各粒子の面積を、その面積と等しい面積の円の直径を求め、それを粒子径とする。そして、得られた粒子径をサイズ順にならべ、小さい側から数えて粒子個数の1/3までの粒子を小粒子側成分とし、小粒子側成分の粒子の各々についてアスペクト比(最小内接四角の長径/短径比)を求め、それらの単純平均値を「小粒子側成分のアスペクト比」とする。
本発明のシリカ系粒子群の小粒子側成分のアスペクト比は、通常、シリカ系粒子群の平均アスペクト比よりも小さくなる。小粒子側成分のアスペクト比が1.05未満の場合、そのような粒子は実質的に球形粒子と同等であるため研磨速度が低く、シリカ系粒子群の研磨速度も低下する傾向にある。しかし、小粒子側成分のアスペクト比が1.05以上であるシリカ系粒子群を砥粒として使用すると、小粒子側成分も高い研磨速度を示すため、シリカ系粒子群の研磨速度をより高くすることができ、ディフェクト等も生じにくく、高い面精度が得られる傾向にある。また、小粒子側成分のアスペクト比が5.0より大きい場合、シリカ系粒子群全体の平均アスペクト比もさらに高くなるので、研磨速度は高くなるものの、基板にディフェクトが生じやすくなり、更に基板表面の粗さと、基板表面のうねりも悪化する傾向にある。
ここで、単粒子が結合したアスペクト比が高い粒子を作る方法としては、例えば数十nmの粒子をイオン強度調整や高分子などを利用して会合させてアスペクト比を高める方法や、粒子の調合時に核生成と同時にイオン強度等を調整することで粒子を会合させ、更に生成した異形シード粒子を粒子成長させてアスペクト比が高い粒子を得る方法がある。しかし、これらの方法の場合、アスペクト比が高い粒子が生成すると同時に、会合しない粒子も残存し易いため、粒子径の小さな粒子は、球形に近くアスペクト比が小さな粒子となる傾向にあり、球形粒子は研磨速度が低いため、粒子群全体として、研磨速度が低くなる傾向にある。これに対し、本発明の異形シリカ系粒子を含むシリカ系粒子群は、解砕工程の緻密化作用のため、小粒子側成分にも異形粒子を含むことから、高い研磨速度を得ることができる。
<変動係数(CV値)>
本発明に係るシリカ系粒子群の体積基準粒子径分布の粒子径の変動係数は、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。前記変動係数を所定の範囲とすることで、体積基準粒子径分布がブロードとなり、つまり幅広い粒子径分布を有するシリカ系粒子群となり、より好適な研磨性能を発揮する。なお、本発明において「変動係数(CV値)」とは、その標準偏差を平均値で割った値を百分率で示したものであり、相対的なばらつきを示している。
なお、本発明のCV値は、ディスク遠心式粒子径分布測定装置(CPS Instriment社製)を用いた体積基準粒子径分布から求めたものとする。
<平滑度S>
本発明のシリカ系粒子群における、画像解析法による平均面積(S1)に対する画像解析法による平均外周長と等価な円の面積(S2)の比であらわされる平滑度S(S=S2/S1)は、1.1〜5.0の範囲であることが好ましく、1.3〜4.0の範囲であることがより好ましい。S値が1.0よりも高い場合は、シリカ系粒子群に含まれる異形シリカ系粒子の表面が平滑でなく微小な凹凸を有した形状であることを示している。これは異形シード粒子が一次粒子の集合体であり、多孔質であるため、このシード粒子の表面も微小な突起を有しており、このシード粒子を粒子成長させた異形シリカ系粒子は、微小な突起が維持された形状となるからである。さらに異形シリカ系粒子表面に適度な微小突起を有する異形シリカ系粒子を含むシリカ系粒子群を研磨砥粒として用いた場合、突起部に研磨圧力が集中するため、高い研磨速度が得られる。なお、粒子表面の突起が過剰な場合は、研磨後の基板表面の表面粗さやうねりは悪化しないが、砥粒が摩耗し易く、研磨速度が低下する傾向にある。
ここで、シリカ系粒子群における、画像解析法による平均面積(S1)および画像解析法による平均外周長と等価な円の面積(S2)の測定および算出について説明する。
これらは、以下のような方法で測定、算出されたものである。初めに、公知の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、粒子表面の任意の箇所を、倍率3000倍で1視野当たり1.1×10-3mm2の面積で15視野撮影する。この各視野において撮影された個々の画像に含まれる全てのシリカ微粒子について、公知の画像解析システムを用いて各粒子の面積および外周長を測定し、この測定された各面積および各外周長データから平均面積(S1)(単純平均値)および平均外周長(単純平均値)を算出し、さらにこの平均外周長から、平均外周長と等価な円(平均外周長と同じ円周である円)の面積(S2)を算出する。
<Q2/Q1
本発明のシリカ系粒子群は、その体積基準粒子径分布において、全体積(Q1)に対する0.7μm以上の粒子の体積(Q2)の割合Q(Q=Q2/Q1、百分率により表示)が1.2%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましい。このようなシリカ系粒子群は、粗大粒子の割合が少ないことにより、研磨時においてスクラッチなどのディフェクトがより発生しにくく、研磨基板の表面粗さをより小さくすることができる。
なお、本発明のシリカ系粒子群の体積基準粒子径分布における全体積(Q1)、これを波形分離した結果得られた分離ピークの各成分の体積割合、最大粒子成分の体積割合および0.7μm以上の粒子の体積(Q2)についても、前述のディスク遠心式粒子径分布測定装置を用いた方法により測定することができる。
<内部細孔および被覆シリカ層>
本発明のシリカ系粒子群に含まれる異形シリカ系粒子は、異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子をシード粒子として用い、珪酸液を用いてこのシード粒子を成長させることにより得る。この粒子成長の際に、シード粒子中の一次粒子間のネック部が優先的に珪酸によって埋められるが、その一部の細孔は残存する。そのため、本発明の異形シリカ系粒子は、その粒子内部(コア)に微小な複数の内部細孔を有しており、内部が密なシリカ系粒子よりも粒子密度は低いが、その割には強度が高い。この内部細孔の平均細孔径は、20nm以下であることが好ましい。この内部細孔径が大きくなりすぎると、粒子の強度が低下する傾向があるからである。
そして、その粒子表面には、上記した微小な複数の内部細孔を有するコアを被覆する被覆シリカ層を備える。この被覆シリカ層は内部細孔が少なく、また、その平均厚さが1〜50nmの範囲でシリカを主成分とすることが好ましい。この平均厚さが1nm未満の場合は粒子の強度が向上しにくく、またこの平均厚さが50nm超では粒子の内部細孔が減少し、さらに異形度も低下して、研磨速度が低くなる。
さらに、被覆シリカ層が無いあるいは1nmより薄い場合には、強度が弱く研磨時に粒子が崩壊するため、研磨速度は向上しにくく、また繰り返し研磨を行った場合に、研磨速度のばらつきが大きくなる傾向にある。
ここで、本発明において「主成分」とは、含有率が90質量%以上であることを意味する。すなわち、被覆シリカ層におけるシリカの含有率は90質量%以上であることが好ましい。この含有率は95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましく、99.5質量%以上であることが最も好ましい。
また、内部に細孔を備える粒子の細孔容積は0.01〜1.00ml/gの範囲が望ましい。細孔容積が0.01ml/g未満の場合は、実質的に内部に細孔を持たないため、粒子群の粒子個数増加による研磨速度向上効果は得られにくい。また細孔容積が1.00ml/gを超えると、粒子の強度が不足し、研磨時に粒子が崩壊するため、研磨速度が低下する傾向がある。
なお、細孔容積の測定方法は以下の通りである。
試料(異形シリカ系粒子および非異形シリカ系粒子からなるシリカ系粒子群を含むシリカ系粒子分散液(シリカ濃度30質量%))1〜2gをルツボに取り、500℃−1Hr焼成後、ガラスセルに約0.03g測りとり、300℃で2時間真空脱気する。その後、マイクロトラックベル社製のBELSORP-miniにセットし、試料にN2を吸着させ吸着等温線を得た。相対圧(P/P0):0.990の時の値を細孔容積とした。
なお、本発明のシリカ系粒子群に含まれる異形シリカ系粒子のコア内部細孔の平均細孔径および被覆シリカ層の平均厚さの測定法は以下の通りである。
初めに、透過型電子顕微鏡(TEM)によって本発明の異形シリカ系粒子を20万倍で観察し、1つの粒子の最大径を長軸とし、その長軸上において長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線がこの粒子の外縁と交わる2点を求め、この2点間を短軸とする。そして、この長軸及び短軸の両側の被覆シリカ層の厚さを求め、これらを単純平均してこの粒子1つの被覆シリカ層の平均厚さとする。同様に任意の20個の粒子について被覆シリカ層の厚みを求め、これらを単純平均したものを異形シリカ系粒子における被覆シリカ層の平均厚さとする。
さらに、長軸および短軸上に存在する細孔径を求め、その平均を粒子1つの平均細孔径とする。同様に任意の20個の粒子について細孔径を求め、これらを単純平均したものを異形シリカ系粒子における平均細孔径とする。
本発明の異形シリカ系粒子は、このような内部に微小な複数の細孔を有するコアおよびそれを被覆する被覆シリカ層を備えることによって、水に置換される細孔が減少し、その粒子密度が低くなる。粒子密度が低くなると、質量当たりの粒子個数が増えるため、基板との接触面積が増え、研磨速度が高くなる。また、粒子個数が増えると、粒子1個にかかる荷重が小さくなる。そのため、粒子が基板を浅く研削するため、基板の表面粗さ、うねりが良化する傾向にある。さらに、内部は細孔を有しているが、外層は緻密な被覆シリカ層を備えているため、粒子の強度が高くなり、研磨圧力による粒子破壊を防ぐことができる。そのため研磨速度が高くなる。一方、このような被覆シリカ層を備えていない多孔質シリカ系粒子は、研磨圧力で粒子の破壊が生じるため、研磨速度が著しく低下する。
本発明の研磨用砥粒分散液は、前記異形シリカ系粒子および非異形シリカ系粒子からなるシリカ系粒子群を含むシリカ系粒子分散液を含み、更に特定のポリカルボン酸塩からなる分散剤を含むものである。
係る特定のポリカルボン酸塩からなる分散剤は、重量平均分子量が20,000〜140,000の範囲にある。
また、係るポリカルボン酸における、カルボニル炭素に直接結合する炭素原子の個数をm、カルボニル炭素に直接結合しない炭素原子の個数をnとしたとき、m/(m+n)×100の値が40〜50%の範囲にあり、45〜49%の範囲にあることが好ましい。このような範囲内であると、本発明の研磨用砥粒分散液の沈降率、再分散率、残存率がより優れたものとなる。
なお、m、nの測定方法は後述する。
ポリカルボン酸塩の重量平均分子量が20,000〜140,000の範囲の場合、ポリカルボン酸からなる分散剤を添加しない場合に比べて、砥粒の沈降率が低くなり、砥粒の再分散率は高くなり、砥粒等の残存率が低く抑えられる。
ポリカルボン酸塩の重量平均分子量が20,000未満の場合は、ポリカルボン酸塩の界面活性剤としての性質が発現し、研磨用砥粒分散液の液面で発泡が発生するため、研磨スラリーとして適さない。同じく重量平均分子量が140,000を超える場合は、ポリカルボン酸塩の分子の長さが長くなり、シリカ粒子間で、ある種の架橋構造が形成されため、見かけ上の粒子径大きくなるため、より沈降性が悪化する。
係る重量平均分子量は、70,000〜110,000の範囲が更に好ましい。
本発明の研磨用砥粒分散液において、前記シリカ系粒子群と、前記ポリカルボン酸塩の質量比は100:0.1〜100:10の範囲にあることが好ましい。係る質量比がこの範囲にあれば、優れた研磨性能を示し、更に沈降率、再分散率、残存率などに優れた性能を示すことができる。
シリカ系粒子群100質量部に対し0.1質量部未満では、カルボン酸塩が過少のため、分散剤添加による沈降率、再分散率、残存率などの効果が見られない。他方、同じく10質量部を超えると、カルボン酸塩が過剰となり、塩濃度の上昇のため、粒子が凝集する問題が生じ易くなる。
本発明の研磨用砥粒分散液における前記シリカ系粒子群と、前記ポリカルボン酸塩の質量比は、好ましくは100:0.5〜100:2の範囲が推奨される。
本発明の研磨用砥粒分散液における前記分散剤の使用量は、研磨用砥粒分散液の1L中、0.001〜10gとすることが好ましく、0.01〜5gとすることがより好ましく0.1〜3gとすることが特に好ましい。
なお、界面活性剤および/または親水性化合物の含有量は、充分な効果を得る上で、研磨用砥粒分散液の1L中、0.001g以上が好ましく、研磨速度低下防止の点から10g以下が好ましい。
本発明の研磨用砥粒分散液に分散剤として使用されるカルボン酸塩としてはポリアクリル酸塩が好ましく、具体的には、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリアクリル酸カリウム塩、ポリアクリル酸リチウム塩、などを挙げることができる。
本発明のシリカ系粒子群を分散溶媒に分散したシリカ系粒子分散液(本発明のシリカ系粒子群を含むシリカ系粒子分散液)に、ポリカルボン酸塩からなる分散剤が分散してなるは、研磨用砥粒分散液(以下では「本発明の研磨用砥粒分散液」ともいう)として好ましく用いることができる。
特に、磁気ディスクを研磨するために好ましく用いることができる。さらに、SiO2絶縁膜が形成された半導体基板の平坦化用の研磨用砥粒分散液として好適に使用することができる。また、研磨性能を制御するためにケミカル成分を添加し、研磨スラリーとしても好適に用いることができる。
そして、本発明の研磨用砥粒分散液は磁気ディスクや半導体基板などを研磨する際の研磨速度が高く、また研磨時に研磨面のスクラッチが少ない、基板への砥粒の残留が少ないなどの効果に優れ、研磨作業の効率を格段に高めることができる。
本発明の研磨用砥粒分散液は、分散溶媒として水および/または有機溶媒を含む。この分散溶媒として、例えば純水、超純水、イオン交換水のような水を用いることが好ましい。さらに、本発明の研磨用砥粒分散液に、研磨性能を制御するための添加剤として、研磨促進剤、界面活性剤、複素環化合物、pH調整剤、pH緩衝剤および沈降抑制剤からなる群より選ばれる1種以上を添加することで、研磨スラリーとしてより好適に用いられる。
<研磨促進剤>
本発明の研磨用砥粒分散液に、被研磨材の種類によっても異なるが、必要に応じて従来公知の研磨促進剤を添加することで研磨スラリーとして、使用することができる。この様な例としては、過酸化水素、過酢酸、過酸化尿素など及びこれらの混合物を挙げることができる。このような過酸化水素等の研磨促進剤を含む研磨材組成物を用いると、被研磨材が金属の場合には効果的に研磨速度を向上させることができる。
研磨促進剤の別の例としては、硫酸、硝酸、リン酸、シュウ酸、フッ酸等の無機酸、酢酸等の有機酸、あるいはこれら酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩およびこれらの混合物などを挙げることができる。これらの研磨促進剤を含む研磨用組成物の場合、複合成分からなる被研磨材を研磨する際に、被研磨材の特定の成分についての研磨速度を促進することにより、最終的に平坦な研磨面を得ることができる。
本発明の研磨用砥粒分散液が研磨促進剤を含有する場合、その含有量としては、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
<界面活性剤>
本発明の研磨用砥粒分散液は、前記の特定のカルボン酸塩を含むので、それ以外に分散性向上を目的とした分散剤の添加は不要であるが、研磨用砥粒分散液の適用用途あるいは研磨用砥粒分散液に更に他の成分を添加した場合等においては、本発明の研磨用砥粒分散液の性能を低下させない範囲で、他の公知の分散剤(カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性系の界面活性剤または親水性化合物等)を添加することができる。
<複素環化合物>
本発明の研磨用砥粒分散液については、被研磨基材に金属が含まれる場合に、金属に不動態層または溶解抑制層を形成させて、被研磨基材の侵食を抑制する目的で、複素環化合物を含有させても構わない。ここで、「複素環化合物」とはヘテロ原子を1個以上含んだ複素環を有する化合物である。ヘテロ原子とは、炭素原子、または水素原子以外の原子を意味する。複素環とはヘテロ原子を少なくとも一つ持つ環状化合物を意味する。ヘテロ原子は複素環の環系の構成部分を形成する原子のみを意味し、環系に対して外部に位置していたり、少なくとも一つの非共役単結合により環系から分離していたり、環系のさらなる置換基の一部分であるような原子は意味しない。ヘテロ原子として好ましくは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、およびホウ素原子などを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。複素環化合物の例として、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、テトラゾールなどを用いることができる。より具体的には、1,2,3,4−テトラゾール、5−アミノ−1,2,3,4−テトラゾール、5−メチル−1,2,3,4−テトラゾール、1,2,3−トリアゾール、4−アミノ−1,2,3−トリアゾール、4,5−ジアミノ−1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−アミノ1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明の研磨用砥粒分散液に複素環化合物を配合する場合の含有量については、0.001〜1.0質量%であることが好ましく、0.001〜0.7質量%であることがより好ましく、0.002〜0.4質量%であることがさらに好ましい。
<pH調整剤>
上記各添加剤の効果を高めるためなどに必要に応じて酸または塩基およびそれらの塩類化合物を添加して研磨用組成物のpHを調節することができる。
本発明の研磨用砥粒分散液をpH7以上に調整するときは、pH調整剤として、アルカリ性のものを使用する。望ましくは、水酸化ナトリウム、アンモニア水、炭酸アンモニウム、エチルアミン、メチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルアミンなどのアミンが使用される。
本発明の研磨用砥粒分散液をpH7未満に調整するときは、pH調整剤として、酸性のものが使用される。例えば、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリセリン酸などのヒドロキシ酸類の様な、塩酸、硝酸などの鉱酸が使用される。
<pH緩衝剤>
本発明の研磨用砥粒分散液のpH値を一定に保持するために、pH緩衝剤を使用しても構わない。pH緩衝剤としては、例えば、リン酸2水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム、4ホウ酸アンモ四水和水などのリン酸塩およびホウ酸塩または有機酸塩などを使用することができる。
<沈降抑制剤>
本発明の研磨用砥粒分散液は、沈降を抑制し、仮に沈降した場合であって易分散化させる目的で沈降抑制剤を添加しても構わない。沈降抑制剤としては特に制限はないが、ポリカルボン酸系界面活性剤、陰イオン系高分子界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボン酸系共重合体ナトリウム塩、カルボン酸系共重合体アンモニウム塩、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸、スルホン酸系共重合体ナトリウム塩、脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩エステル、アルキル硫酸トリエタノールアミン、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、アルキルピリジウムクロリド、アルキルカルボキシベタイン、スチレン・無水マレイン酸共重合体、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン結合物、カルボキシメチルセルロース、オレフィン・無水マレイン酸共重合物、アルギン酸ソーダ、ポリビニルアルコール、ポリアルキレンポリアミン、ポリアクリルアミド、ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレンブロック、ポリマーでんぷん、ポリエチレンイミン、アミノアルキルアクリレート共重合体、ポリビニルイミダソリン、サトキンサンなどが挙げられる。
なお、本発明の研磨用砥粒分散液に沈降抑制剤を配合する場合の含有量については、総量として、研磨用砥粒分散液の1L中、0.001〜10gとすることが好ましく、0.01〜5gとすることがより好ましく、0.1〜3gとすることが特に好ましい。この含有量は、充分な効果を得る上で、研磨用砥粒分散液の1L中、0.001g以上が好ましく、研磨速度低下防止の点から10g以下が好ましい。
また、本発明の研磨用砥粒分散液の分散溶媒として、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルイソカルビノールなどのアルコール類;アセトン、2−ブタノン、エチルアミルケトン、ジアセトンアルコール、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、3,4−ジヒドロ−2H−ピランなどのエーテル類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、エチレンカーボネートなどのエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、1,2−ジクロルエタン、ジクロロプロパン、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;N−メチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドンなどのピロリドン類などの有機溶媒を用いることができる。これらを水と混合して用いてもよい。
本発明の研磨用砥粒分散液に含まれる固形分濃度は0.3〜50質量%の範囲にあることが好ましい。この固形分濃度が低すぎると研磨速度が低下する可能性がある。逆に固形分濃度が高すぎても研磨速度はそれ以上向上する場合は少ないので、不経済となり得る。
<本発明の研磨用砥粒分散液の製造方法>
次に、本発明の研磨用砥粒分散液の製造方法を具体的に説明する。
これは、多孔質シリカ系ゲルをアルカリ性下で湿式解砕して異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子を含む溶液にする工程aと、前記異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子を含む溶液にアルカリ性下で珪酸液を添加して加温し、前記異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子の一次粒子間の細孔を前記珪酸液に含まれる珪酸との反応によって埋めながら異形のまま粒子を成長させて異形シリカ系粒子にする工程bと、成長した前記異形シリカ系粒子を含むシリカ系粒子群を濃縮して回収する工程cと、特定のポリカルボン酸からなる分散液を分散させる工程dとを備える方法である。
[工程a]
この工程は、出発原料として多孔質シリカ系ゲルを用いる。多孔質シリカ系ゲルは、多孔質なシリカ系のゲルであれば、シリカゲルだけでなく、シリカ・アルミナゲル、シリカ・チタニアゲル、シリカ・ジルコニアゲルなどの複合体ゲルであっても構わない。またゲルの状態は、ヒドロゲルであってもキセロゲルであっても、オルガノゲルであっても構わない。そして、このような多孔質なシリカ系ゲルをアルカリ性下で湿式解砕して、異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子を含む溶液にする工程である。多孔質シリカ系ゲルを粉砕してシード粒子として使用することによって、このシード粒子も多孔質となり、また、このシード粒子は真球状のものがほとんど得られず、異形粒子となる。この傾向は、粉砕により粒子径の大きいシード粒子を調製した場合に顕著で、シードサイズが小さくなるように粉砕すると異形度は低くなる傾向にある。そして、後の工程bにおいて、添加する珪酸液が異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子(シード粒子)のシリカ表面および内部数十nm程度に侵入しながら沈積し、溶解度差によって、粒子径に関与しない細孔と珪酸が優先的に反応して該細孔が埋められながら、粒子外表面にシリカが沈着して、粒子の成長を促す(以下の説明において、これをビルドアップという)。このビルドアップによって、粒子外表面の凸部はより外径の増加に寄与し、凹部は外形への寄与が小さいので、成長粒子の強度が高くなると共に粒子の異形が崩れるのが抑制され、粒子径の大きな異形シリカ系粒子を製造することができる。なお、粒子径の大きなシード粒子(例えば粒子径が100nm以上のシード粒子)をビルドアップすると、珪酸液は数十nm程度しか細孔内に侵入できないため、表面の数十nmを埋めた後は、シリカが粒外表面に沈着するだけになり、内部に細孔が残存することになる。そして、粒子径が大きなシード粒子は、異形度が高く、ビルドアップにより、内部に複数の細孔を有するコアおよびそれを被覆する被覆シリカ層を有した構造の異形シリカ系粒子を形成する。一方、粒子径の小さいシード粒子をビルドアップした場合は、一次粒子間の細孔がほとんどシリカで埋まり、密なシリカ系粒子に近い状態となる傾向が強い。
また、本発明では製造原料として多孔質シリカ系ゲルを用いているが、このシリカ系ゲルは多孔質であるため、その強度は弱い。そのため、重量平均粒子径が数百nmとなるように多孔質シリカ系ゲルを粉砕しても、粉砕時に数十nm程度の微粒も同時に発生する。したがって、多孔質シリカ系ゲルを製造原料として使用した場合、その粉砕によって得られた粒子は小粒子から大粒子まで幅広い。そして前述の通り、粒子径の大きなシード粒子をビルドアップしたものは、内部に細孔を有した構造をとり、一方で、粒子径の小さなシード粒子をビルドアップしたものは、内部の細孔が埋まりやすい傾向にある。そのため、本発明のシリカ系粒子群は、重量平均粒子径が大きく、微粒も同時に備えるため、歪度および尖度が高くなる。
ここで製造原料として使用する多孔質シリカ系ゲルは、解砕され易いゲルが好ましく、例えば、水ガラス法のゲルを洗浄したウエットのヒドロゲルや、キセロゲル、ホワイトカーボン、アルコキシド法によるゲルなどが好ましい。アルコキシド法によるゲルは、脱水縮合する水酸基が少ないためその乾燥パウダーは軟らかく、生産性の良い乾燥パウダーとして用いることができる。多孔質シリカ系ゲルを解砕して得られる異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子の粒度分布は、一定範囲に制御されていることが好ましく、解砕し難い大きなゲルの塊であると、解砕に時間がかかり、粒度分布が広くなる傾向があるので好ましくない。
多孔質シリカ系ゲルの多孔性を示すパラメーターとして細孔容積や比表面積が挙げられ、オープンな細孔の場合は、細孔径が同じであれば比表面積と細孔容積は概ね比例関係にある。なお、本発明では多孔質シリカ系ゲルの多孔性を示すパラメーターとして比表面積(SA)を用いた。
本発明で使用する多孔質シリカ系ゲルは、比表面積が300〜800m2/gの範囲が好ましい。比表面積が300m2/gより小さいと、多孔質シリカ系ゲルの一次粒子間の細孔が少ないため、解砕して得た異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子を含む溶液に珪酸液を添加したときに、異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子の一次粒子間の細孔に浸透する珪酸の量が少なく、この細孔が珪酸との反応によって埋められ難くなってしまい、添加した珪酸液は粒子を丸く成長させるように消費され、異形を保ち難くなる傾向がある。また、比表面積が800m2/gより大きいと、粒子強度が弱すぎ、解砕して得た異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子内部を珪酸との反応によってビルドアップして部分的に埋めても十分な強度の異形シリカ系粒子を得ることが難しい傾向がある。
また多孔質シリカ系ゲルのサイズ(粒子径)は、1μm〜10mmの範囲が望ましい。
そして、前記多孔質シリカ系ゲルは、アルカリ性下で湿式解砕して異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子にするが、特に比表面積が300〜800m2/g程度の比較的柔らかいシリカ系ゲルをビーズミルなどの強いシェアの下で変形と解砕を同時に行うことによって、異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子を好適に調製できる。解砕は、例えば、ガラスメジアを入れたサンドミル粉砕機やビーズミルなどを用いると良い。解砕は複数回行うのが好ましい。
通常、ビーズミルなどで粉体を粉砕する場合には、粉砕時間に比例して粉体の粒子径が小さくなるが、シリカ系ゲルのような高表面積で柔らかいものは、粉砕時間に対する粒子径の変化が緩慢であり、重量平均粒子径が80〜550nm程度の粒子に解砕され、この異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子は解砕前の比表面積を保ったまま、一次粒子間のネックあるいは細孔をかなり多く含んだ粗な構造を有している。従って、この粒子をそのまま研磨材として用いても、強度不足のため崩れやすく、非常に低い研磨速度しか得られない。そこで、本発明では、後の工程bにおいて、異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子を含む溶液に珪酸液を添加して、異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子内部の一次粒子間の細孔を珪酸液でビルドアップして埋めることによって粒子の強度を高めている。ここで、ビルドアップに使用する珪酸液は、アルコキシド由来であっても、珪酸ナトリウム由来であっても、珪酸アミンであっても構わない。また一次粒子間を埋めることができれば珪酸に限定されず、珪酸のアルカリ塩、アルカリ土類塩などの珪酸塩類であっても構わない。
工程aにおいて、多孔質シリカ系ゲルはアルカリ性下、つまりアルカリ性条件で湿式解砕し、そのアルカリ性はpH8.0〜11.5の範囲が好ましい。pHがアルカリ領域より下がるにつれて徐々にマイナスの電位が下がり、中性領域〜酸性領域では不安定になるため、解砕により生じた粒子が安定に存在できずに直ぐ凝集してしまう傾向がある。また、pHが11.5超であるとシリカの溶解が促進されるため、やはり凝集する傾向がある。前記湿式解砕時のpHは好適には、8.5〜11.0の範囲が推奨される。
なお、ここでpHを調整する方法は特に限定されない。例えば水酸化ナトリウムなどを添加して調整することができる。
前記湿式解砕により得られた異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子の重量平均粒子径は、80〜550nmの範囲であることが好ましい。異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子の重量平均粒子径が80nmより小さいと、その後珪酸液を添加して粒子を成長させても、研磨材に適する大きさの粒子径にするのが難しい場合がある。また、異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子の重量平均粒子径が550nmより大きいと、研磨材に適する粒子径を超える場合があるのであまり好ましくない。このような研磨材に適する粒子径を超える粗大な粒子は、スクラッチの原因となる可能性がある。解砕によって粗大粒子や大粒子は優先的に解砕される傾向にあるが、異形多孔質シリカ系ゲルに残存した粗大粒子を除去することを目的として、遠心分離を行っても構わない。前記異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子の重量平均粒子径は好ましくは、120〜400nmの範囲が推奨される。
ここで異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子の重量平均粒子径は、前述のシリカ系粒子群の重量平均粒子径(D1)と同様の方法によって測定して得た値を意味するものとする。
なお、この解砕は、材質、大きさの異なるメジアで多段階に行うことができる。例えば、多孔質シリカ系ゲルをサイズの大きなジルコニアメジアで解砕を行うと、強い剪断力により、高速で短時間に1段目解砕を行うことができる。次に1段目よりもサイズの小さなガラスメジアで2段目の解砕を行うと、中程度の剪断力によって解砕が進行し、所望の粒子径に調整することができる。この際、一次粒子間の強度の弱い部分から破壊されるため、微細化と同時に形状の異形化が生じる傾向にある。またアルカリ性条件下での湿式解砕であるため、異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子の一部が溶解し、一次粒子間のネック部を優先的に埋めることができるため、解砕時には過度な微細化は進まない。
[工程b]
この工程は、異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子を含む溶液にアルカリ性下で珪酸液を添加して加温し、異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子の一次粒子間の細孔を珪酸との反応によって埋めると共に異形のまま粒子を成長させるビルドアップ工程である。前記異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子を含む溶液のSiO2濃度は、1〜10質量%の範囲が好ましい。異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子を含む溶液のSiO2濃度が1質量%より少ないと、異形シリカ系粒子を製造する効率が低下する傾向がある。また、SiO2濃度が10質量%より多いと、微小シリカ核が発生し、異形性が保てず、異形シリカ系粒子の粒子成長が不均一になりやすい傾向がある。
なお、この工程bは、異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子を水熱処理しながら珪酸液を添加する方法で行ってもよい。この方法では、添加した珪酸液によって過飽和となり、さらに粒子の一部の溶解も生じながら、シリカが沈着して粒子成長するが、一次粒子間のネック部は溶解よりも沈着速度が早いため、一次粒子間の細孔が優先的に埋まっていく。
前記加温温度は60℃〜170℃の範囲が好ましい。60℃より低いと異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子の成長が遅い傾向があり、170℃より高いと得られる異形シリカ系粒子が球状になりやすいからである。前記加温温度は、より好適には60℃〜100℃の範囲が推奨される。
さらに、異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子を含む溶液に珪酸液を添加する時のpHは9〜12.5の範囲が好ましい。pHが9未満ではシリカの溶解度が低いため、過飽和度が著しく高くなり、添加した珪酸液は粒子成長に消費されずに微粒子として生成し易い。また負の電位も低くなるため、粒子が凝集し易くなる。さらに、水酸基の解離が不十分なので一次粒子との反応性が低下し、ネック部の補強が十分でなくなる。また、pH12.5より高いとシリカの溶解が促進される可能性がある。
異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子を含む溶液は、pHを前述の範囲とするために、必要に応じてpHを調整する。調整手段は格別に制限されるものではないが、通常はアルカリ性物質を添加して調整する。この様なアルカリ性物質の例としては、水酸化ナトリウム、水ガラスなどを挙げることができる。異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子を含む溶液に珪酸液を添加する時のpHとして好適には、9.5〜12.0の範囲が推奨される。
珪酸液の添加量は、前記異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子を含む溶液のSiO2モル濃度に対して該珪酸液のSiO2モル濃度が0.5〜20モル倍になる範囲が好ましい。珪酸液の添加量が前記範囲より少ないと、一次粒子間の強度を十分に高めることができず、また被覆シリカ層が十分な厚さにならないため、粒子の強度が低下する傾向にあるからである。また珪酸液などを添加して、粒子成長させると、通常、異形度やアスペクト比が低下するが、珪酸液の添加量が前記範囲よりも多いと、粒子の異形度が著しく低下し、所望の異形度が保てなくなる傾向にあるからである。さらに、粒子成長時には大粒子成分と比較して小粒子成分が優先的に粒子成長するため、珪酸液の添加量が前記範囲よりも多いと、所望のアスペクト比を備える小粒子側成分が得にくくなる傾向にある。
また、珪酸液は連続的または断続的に添加することが望ましい。
珪酸液は、異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子の一次粒子間の細孔を通じて粒子内部に浸透し、該粒子のネック部に沈着し比表面積を小さくすることで、該粒子の強度を高める。この工程bにおいて、異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子の比表面積は、100m2/g以下、より好ましくは比表面積15m2/g〜50m2/gの範囲にすることが望ましい。異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子の比表面積が100m2/gより大きいと、得られる異形シリカ系粒子の強度が不足し、砥粒として使用したときに崩れやすく研磨速度が遅くなる傾向がある。
なお、異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子の比表面積は、後記の実施例の「比表面積の測定」に記したとおり、BET法によって測定する。
外部から滴下される珪酸液は、液相から一様に異形多孔質シリカ系ゲルの表面に降り注ぎ、異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子の外表面に結合して粒子の外形を成長させるので、異形を保ったままで粒子径の大きな異形シリカ系粒子を得ることができる。粒子成長後の異形シリカ系粒子の粒子径は、重量平均粒子径100〜600nmの範囲となることが好ましい。
ここで異形シリカ系粒子の重量平均粒子径は、前述のシリカ系粒子群の重量平均粒子径(D1)と同様の方法によって測定して得た値を意味するものとする。
[工程c]
この工程は、成長した異形シリカ系粒子を含むシリカ系粒子群を濃縮し、回収する工程である。具体的には、例えば、成長した異形シリカ系粒子を含む溶液を室温〜40℃程度に冷却し、限外ろ過膜などを用いて濃縮し、エバポレータなどを用いてさらに濃縮して残ったシリカ系粒子群を回収すればよい。さらに粗大な粒子を除去するために、遠心分離をしてもよい。乾燥による粗大な凝集塊が生じ難いという観点から、濃縮は、限外ろ過膜による濃縮が好ましい。
〔工程d〕
前工程で得られたシリカ系粒子群を含むシリカ系粒子分散液に、前記の特定のカルボン酸塩からなる分散剤を添加し攪拌して本発明の研磨用砥粒分散液を得ることができる。ここで攪拌条件としては、室温で卓上撹拌装置を使用して、1時間ほど撹拌する程度で構わない。
以下、本発明の実施例を比較例と共に示す。なお、実施例および比較例において、研磨用砥粒分散液の沈降率、再分散性、残存率およびポリカルボン酸塩の分子量等の測定、ならびに、シリカ系粒子群の比表面積の測定、比表面積換算粒子径(D2)の算出、重量平均粒子径(D1)の測定、投影面積相当粒子径(D3)の測定・算出、体積基準粒子径分布における歪度・尖度の算出、体積基準粒子径分布の波形分離、体積基準粒子径分布における体積の測定、小粒子側成分のアスペクト比算出、変動係数の算出、平均面積(S1)・平均外周長と等価な円の面積(S2)の測定・算出、異形シリカ系粒子のコア内部細孔の平均細孔径測定・算出、異形シリカ系粒子の被覆シリカ層の平均厚さ測定・算出、多孔質シリカ系ゲルのサイズの測定、異形シリカ系粒子および非異形シリカ系粒子からなるシリカ系粒子群を含むシリカ系粒子分散液に含まれる、異形シリカ系粒子の割合の測定および研磨試験は以下のように行った。
[研磨用砥粒分散液の沈降率(沈降率の定義と測定方法)]
研磨用砥粒分散液の沈降性を沈降率(%)で評価した。沈降率は全スラリー量(g)に対する沈降量(g)の割合である。
各実施例および比較例において得られた研磨用砥粒分散液500gを入れた500ml容器を1か月静置し、その後、上澄みを除去した。そして、残余を沈降分(沈降成分A)として計量し、沈降率を算出した。
[研磨用砥粒分散液の再分散性および残存率]
沈降率算出時に除去した上澄みを500ml容器に戻し、超音波処理を1時間行い、再分散させた。そして、容器の上下を逆さとした状態で1分間静置した後、再び上澄み成分を除去した。
そして、残余を再分散できなかった沈降分(沈降成分B)として計量し、以下の式より、再分散率を求めた。
また、超音波処理後も再分散できなかった沈降分(沈降成分B)を残存固形分とし、最初に導入した全スラリー量で除して、以下の式より残存率を求めた。
・再分散率=(沈降成分A−沈降成分B)/沈降成分A
・残存率=沈降成分B/500g(全スラリー量)
[ポリカルボン酸塩からなる分散剤の分子量等の測定方法の説明]
ポリカルボン酸塩からなる分散剤の重量平均分子量は、GPC測定にて求めた。測定条件は以下の通りとした。
・分析方法:GPC測定
・装置:Water社製、2695 HPLC
・カラム:Water Ultrahydrogen 500 + Water Ultrahydrogen 120 カラム温度40℃
・試料注入量:20μml
・移動相:50mlリン酸ナトリウム水溶液(pH=7):アセトニトリル=9:1、流量0.8mL/min
・検出器:Water社製 2410RI
・標準物質:ポリエチレングリコール
サンプル0.2mlに重水0.4mlを加え、5分間超音波分散を行った液体を5mmφのパイレックス試料管に入れ、NMR装置(日本電子製ECZ−400R)の液体用プローブにて、Hについてシングルパルス法で測定した。パルスのフリップ角は45°、パルス繰り返し時間は5秒、積算回数は16回とした。シフト標準としてテトラメチルシランの5%重クロロホルム溶液を用い、ピーク位置を0ppmとした。得られたスペクトルについて装置に付属するソフトDeltaにて各ピークの積分比を算出した。そして、1.8〜3.0ppm間の積分比をカルボニル酸素に直結する炭素源原子とし、その個数をmとし、1.0〜1.8ppm間の積分比をカルボニル炭素に直結しない炭素原子とし、その個数をnとした。
このようにして求めたm、nを用いて、m/(m+n)×100を算出した。
[比表面積の測定]
実施例1〜2、および比較例1〜5については、工程aにおいて投入する多孔質シリカゲルおよび工程bにおいて得られる異形シリカ系粒子の比表面積をBET法により測定、算出した。具体的には、測定対象物の50mlを硝酸によりpHを3.5に調整し、これに1−プロパノールを40ml加えて110℃で16時間乾燥した試料について、乳鉢で粉砕後、マッフル炉にて500℃、1時間焼成して測定用試料とした。そして、比表面積測定装置(ユアサアイオニクス製、型番マルチソーブ12)を使用し、窒素吸着法(BET法)を用いて窒素の吸着量からBET1点法により比表面積を算出した。
比表面積測定装置では、焼成後の試料0.5gを測定セルに取り、窒素30v%/ヘリウム70v%混合ガス気流中、300℃で20分間脱ガス処理を行い、その上で試料を上記混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させた。次いで、上記混合ガスを流しながら試料温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量を検出し、予め作成した検量線により試料中のシリカ微粒子の比表面積を算出した。
[比表面積換算粒子径(D2)の算出]
上記のBET法によって測定した比表面積(SA)と、粒子の密度(ρ=2.2)を用い、D2=6000/(SA×ρ)の式から、シリカ系粒子群の比表面積換算粒子径(D2)を算出した。
[重量平均粒子径(D1)の測定]
シリカ系粒子分散液を0.05質量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液で希釈し、固形分濃度で2質量%としたものを、ディスク遠心式粒子径分布測定装置(型番:DC24000UHR、CPS instruments社製)に、0.1mlをシリンジで注入して、8〜24質量%のショ糖の密度勾配溶液中で18000rpmの条件で重量平均粒子径(D1)の測定を行った。多孔質シリカ系ゲルの解砕品(異形多孔質シリカ系ゲルからなる粒子)についても、同様の方法で測定を行った。
[投影面積相当粒子径(D3)の測定・算出]
シリカ系粒子群における投影面積相当粒子径(D3)の測定・算出は、画像解析法により行った。具体的には、まず走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、シリカ系粒子表面の任意の箇所を、倍率3000倍で1視野当たり1.1×10-3mm2の面積で15視野撮影した。そして、この各視野において撮影された個々の画像に含まれる全てのシリカ微粒子について、画像解析システムを用いた画像解析法によって個々の粒子の投影面積を測定し、この測定された各面積に相当する円形の粒子の粒子径(円の直径)を算出し、これらの個数平均を投影面積相当粒子径(D3)とした。
[体積基準粒子径分布における尖度・歪度の算出]
前述のディスク遠心式粒子径分布測定装置を用いた方法により、体積基準粒子径分布も測定した。そして、得られた体積基準粒子径分布データを使用して、SAS Institute Japan社製JMP Ver.13.2を用いて尖度および歪度を算出した。なお、体積基準粒子径粒度分布において、所定の粒子径の頻度が負の値の場合は、頻度をゼロとして算出した。
[体積基準粒子径分布の波形分離]
前述の体積基準粒子径分布測定データを、グラフ作成・データ解析ソフト Origin(OriginLab Corporation社製)のピークアナライザを使用して解析した。まず、基線を0、ピークタイプをGaussianに設定し、粒度分布の極大点をピーク位置として選択して、重み付けなしでピークフィッティングを行い、算出されたピークが以下の条件1および2から逸脱していないことを確認し、逸脱している場合は、下記条件1および2を満たすまでピーク位置を分布範囲内の任意の位置にずらしてピークフィッティングを繰り返した。その後、補正R二乗値が0.99以下である場合は分布範囲内の任意の位置にピークを追加し、補正R二乗値が0.99超になるまでピークフィッティングを繰り返した。このときの分離されたピークの数をピークの個数とした。
条件1:算出されたそれぞれのピークが元の分布より大きい値を取らないこと。
条件2:算出されたそれぞれのピークが負の値を取らないこと。
[体積基準粒子径分布における体積の測定]
シリカ系粒子群の体積基準粒子径分布における全体積(Q1)、これを波形分離した結果得られた分離ピークの各成分の体積割合、最大粒子成分の体積割合および0.7μm以上の粒子の体積(Q2)は、前述のディスク遠心式粒子径分布測定装置を用いて測定した。
[小粒子側成分のアスペクト比算出]
小粒子側成分のアスペクト比は、初めに、走査型電子顕微鏡(SEM)および画像解析システムを用いてシリカ系粒子群の総粒子数をカウントし、また、各粒子の面積を算出し、その面積と等しい面積の円の直径を求め、それを粒子径とした。そして、得られた粒子径をサイズ順にならべ、小さい側から数えて粒子個数の1/3までの粒子を小粒子側成分とし、そのアスペクト比(最小内接四角の長径/短径比)の平均値を「小粒子側成分のアスペクト比」とした。
[変動係数の算出]
シリカ系粒子群の体積基準粒子径分布を波形分離して得られた分離ピークの各成分の体積割合の変動係数、および体積基準粒子径分布の粒子径の変動係数は、前述の体積基準粒子径分布測定データからそれぞれの標準偏差および平均値を算出し、この標準偏差を前記平均値で割り、これを百分率で示すことにより算出した。
[平均面積(S1)・平均外周長と等価な円の面積(S2)の測定・算出]
シリカ系粒子群における平均面積(S1)および平均外周長と等価な円の面積(S2)の測定は、画像解析法により行った。具体的には、まず走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、シリカ系粒子表面の任意の箇所を、倍率3000倍で1視野当たり1.1×10-3mm2の面積で15視野撮影した。そして、この各視野において撮影された個々の画像に含まれる全てのシリカ微粒子について、画像解析システムを用いた画像解析法によってそれぞれ面積および外周長を測定し、この測定された各面積および各外周長データから平均面積(S1)および平均外周長(単純平均値)を算出し、さらにこの平均外周長から、平均外周長と等価な円(平均外周長と同じ円周である円)の面積(S2)を算出した。
[異形シリカ系粒子のコア内部細孔の平均細孔径、および被覆シリカ層の平均厚さ測定・算出]
異形シリカ系粒子のコア内部細孔の平均細孔径、および被覆シリカ層の平均厚さ測定・算出は、次のように行った。初めに、透過型電子顕微鏡(TEM)によって異形シリカ系粒子を20万倍で観察し、この粒子の最大径を長軸とし、その長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線が粒子の外縁と交わる2点を求め、この2点間を短軸とした。そして、この長軸及び短軸の両側の被覆シリカ層の厚さを求め、これらを単純平均してこの粒子1つの被覆シリカ層の平均厚みとした。同様に任意の20個の粒子についてシリカ層の厚みを求め、これらを単純平均したものを異形シリカ系粒子における被覆シリカ層の平均厚さとした。
さらに、長軸および短軸上に存在する細孔径を求め、その平均を粒子1つの平均細孔径とした。同様に任意の20個の粒子について細孔径を求め、これらを単純平均したものを異形シリカ系粒子における平均細孔径とした。
[多孔質シリカ系ゲルのサイズ測定方法]
多孔質シリカ系ゲルのサイズ測定は、HORIBA社製 LA-950を用いて、以下の測定条件により行った。
LA−950V2のバージョンは7.02、アルゴリズムオプションは標準演算、固体の屈折率1.450、溶媒(純水)の屈折率1.333、反復回数は15回、サンプル投入バスの循環速度は5、撹拌速度は2とし、あらかじめこれらを設定した測定シーケンスを使用して測定を行った。そして、測定サンプルをスポイトを使用して原液のまま装置のサンプル投入口に投入した。ここで、透過率(R)の数値が90%になるように投入した。そして、透過率(R)の数値が安定した後、超音波を5分間照射し粒子径の測定を行った。
[異形シリカ系粒子および非異形シリカ系粒子からなるシリカ系粒子群を含むシリカ系粒子分散液に含まれる、異形シリカ系粒子の割合の測定方法]
電子顕微鏡(日立製作所社製、型番「S−5500」)により、シリカ系粒子分散液を倍率25万倍(ないしは50万倍)で写真撮影して得られる写真投影図において、任意の100個の粒子について、それぞれのアスペクト比(最小内接四角の長径/短径比)を求めた。ここでアスペクトが1.1以上であった粒子が異形シリカ系粒子である。そして、アスペクト比が1.1以上の粒子の個数と、測定した粒子の個数(100個)から、前記異形シリカ系粒子の割合を求めた。
[研磨試験]
被研磨基板
被研磨基板として、ハードディスク用ニッケルメッキをコーティングしたアルミ基板(東洋鋼鈑社製ニッケルメッキサブストレート)を使用した。本基板はドーナツ形状の基板である(外径95mmφ、内径25mmφ、厚さ1.27mm)。
研磨試験
各実施例および比較例について、9質量%の研磨用砥粒分散液344gを作製し、これに31質量%過酸化水素水を5.65g加えた後に10質量%硝酸にてpHを1.5に調整して研磨スラリーを作製した。
上記被研磨基板を研磨装置(ナノファクター社製:NF300)にセットし、研磨パッド(FILWEL社製「ベラトリックスNO178」)を使用し、基板荷重0.05MPa、定盤回転数50rpm、ヘッド回転数50rpmで、研磨スラリーを40g/分の速度で供給しながら1μm研磨を行った。
研磨速度
研磨前後の研磨基板の重量差と研磨時間より研磨速度を算出した。
うねり
研磨したドーナツ状のアルミ基板において、その外円と内円を2等分する任意の箇所についてうねり波長数十〜数百μmでの微少な凹凸の振幅を測定した。
次にその測定箇所とドーナツ状のアルミ基板における中心点とを結ぶ直線上であって、その中心点がその測定箇所との2等分点となる箇所においても、同様にうねり波長数十〜数百μmでの微少な凹凸の振幅を測定した。そして、これら2つの値の平均値をうねりの測定値とした。測定条件は下記の通りである。
機器:ZygoNewView7200
レンズ:2.5倍
ズーム比:1.0
フィルター:50〜500μm
測定エリア:3.75mm×2.81mm
[合成例A1]
攪拌機、還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管を備えた500ml四口丸底フラスコに、n−ヘキサン228mlを採り、ついで、これに界面活性剤としてソルビタンモノステアレ−ト1.8gを添加して溶解した後、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。
別に、三角フラスコ中にアクリル酸を30g採り、冷却しながら、水26g及び48%化成ソーダ26gを加え、アクリル酸ナトリウム塩水溶液を調製した。
この水溶液に過硫酸ナトリウム0.1gを溶解した後、窒素ガスを吹き込んで水溶液中に存在する酸素を除去した。
このようにして得られたアクリル酸ナトリウム塩水溶液を、前記の界面活性剤を溶解したn−ヘキサン中に加えて分散させ、窒素ガスを少しずつ導入しながら、65℃で6時間撹拌して重合を行った。
得られたポリアクリル酸ナトリウム塩(A1)は直鎖状で、重量平均分子量が84,000であった。また、カルボキシル基のカルボニル炭素原子に直結結合した炭素原子の割合(m/(m+n)×100の値)は47%であった。
[合成例A2]
攪拌機、還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管を備えた500ml四口丸底フラスコに、n−ヘキサン228mlを採り、ついで、これに界面活性剤としてソルビタンモノステアレ−ト1.8gを添加して溶解した後、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。
別に、三角フラスコ中にアクリル酸を30g採り、冷却しながら、水26g及び29%アンモニア水18.3gを加えアクリル酸アンモニウム塩水溶液を調製した。
この水溶液に過硫酸ナトリウム0.08gを溶解した後、窒素ガスを吹き込んで水溶液中に存在する酸素を除去した。
このようにして得られたアクリル酸アンモニウム塩水溶液を、前記の界面活性剤を溶解したn−ヘキサン中に加えて分散させ、窒素ガスを少しずつ導入しながら、65℃で6時間撹拌して重合を行った。
得られたポリアクリル酸アンモニウム塩(A2)は直鎖状で、重量平均分子量:100,000であった。また、カルボキシル基のカルボニル炭素原子に直結結合した炭素原子の割合(m/(m+n)×100の値)は48%であった。
[合成例B2]
攪拌機、還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管を備えた500ml四口丸底フラスコに、n-ヘキサン228mlを採り、ついで、これに界面活性剤としてソルビタンモノステアレ−ト1.8gを添加して溶解した後、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。
別に、三角フラスコ中にアクリル酸を30g採り、冷却しながら、水26g及び48%化成ソーダ26gを加えアクリル酸ナトリウム塩水溶液を調製した。
この水溶液に過硫酸ナトリウム1.0gを溶解した後、窒素ガスを吹き込んで水溶液中に存在する酸素を除去した。
このようにして得られたアクリル酸ナトリウム塩水溶液を、前記の界面活性剤を溶解したn-ヘキサン中に加えて分散させ、窒素ガスを少しずつ導入しながら、65℃で6時間撹拌して重合を行った。
得られたポリアクリル酸ナトリウム塩(B2)は直鎖状で、重量平均分子量が13,000であった。また、カルボキシル基のカルボニル炭素原子に直結結合した炭素原子の割合(m/(m+n)×100の値)は47%であった。
[合成例B3]
攪拌機、還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管を備えた500ml四口丸底フラスコに、n−ヘキサン228mlを採り、ついで、これに界面活性剤としてソルビタンモノステアレ−ト1.8gを添加して溶解した後、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。
別に、三角フラスコ中にアクリル酸を30g採り、冷却しながら、水26g及び28%アンモニア水溶液19gを加えアクリル酸アンモニウム塩水溶液を調製した。
この水溶液に過硫酸ナトリウム0.05gを溶解した後、窒素ガスを吹き込んで水溶液中に存在する酸素を除去した。
このようにして得られたアクリル酸アンモニウム塩水溶液を、前記の界面活性剤を溶解したn-ヘキサン中に加えて分散させ、窒素ガスを少しずつ導入しながら、65℃で6時間撹拌して重合を行った。
得られたポリアクリル酸アンモニウム塩(B3)は直鎖状で、重量平均分子量が150,000であった。また、カルボキシル基のカルボニル炭素原子に直結結合した炭素原子の割合(m/(m+n)×100の値)は48%であった。
[合成例B4]
攪拌機、還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管を備えた500ml四口丸底フラスコに、n−ヘキサン228mlを採り、ついで、これに界面活性剤としてソルビタンモノステアレ−ト1.8g、架橋剤としてメタクリル酸グリンジル10gを添加して溶解した後、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。
別に、三角フラスコ中にアクリル酸を30g採り、冷却しながら、水26g及び48%化成ソーダ26gを加えアクリル酸ナトリウム塩水溶液を調製した。
この水溶液に過硫酸ナトリウム1.0gを溶解した後、窒素ガスを吹き込んで水溶液中に存在する酸素を除去した。
このようにして得られたアクリル酸ナトリウム塩水溶液を、前記の界面活性剤を溶解したn−ヘキサン中に加えて分散させ、窒素ガスを少しずつ導入しながら、65℃で6時間撹拌して重合を行った。
得られたポリアクリル酸ナトリウム塩(B4)は直鎖状で、重量平均分子量が200,000であった。また、カルボキシル基のカルボニル炭素原子に直結結合した炭素原子の割合(m/(m+n)×100の値)は34%であった。
[合成例B5]
攪拌機、還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管を備えた500ml四口丸底フラスコに、n−ヘキサン228mlを採り、ついで、これに界面活性剤としてソルビタンモノステアレ−ト1.8gを添加して溶解した後、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。
別に、三角フラスコ中にアクリル酸を30g採り、冷却しながら、水26g及び48%化成ソーダ26gを加え、アクリル酸ナトリウム塩水溶液を調製した。
この水溶液に過硫酸ナトリウム1.1gを溶解した後、窒素ガスを吹き込んで水溶液中に存在する酸素を除去した。
このようにして得られたアクリル酸ナトリウム塩水溶液を、前記の界面活性剤を溶解したn−ヘキサン中に加えて分散させ、窒素ガスを少しずつ導入しながら、65℃で6時間撹拌して重合を行った。
得られたポリアクリル酸ナトリウム塩(B5)は直鎖状で、重量平均分子量が12,000であった。また、カルボキシル基のカルボニル炭素原子に直結結合した炭素原子の割合(m/(m+n)×100の値)は53%であった。
<シリカ系粒子分散液の調製>
精製シリカヒドロゲルの調整
珪酸ナトリウム462.5gに純水を加え、SiO2換算で24質量%の珪酸ナトリウム水溶液を調製し、pHが4.5となるように25質量%の硫酸を添加してシリカヒドロゲルを含む溶液を得た。このシリカヒドロゲル溶液を、恒温槽で21℃の温度に維持し、5.75時間静置して熟成を行ったのち、シリカヒドロゲルに含まれるSiO2に対し、硫酸ナトリウムの含有量が0.05質量%となるまで純水で洗浄して精製シリカヒドロゲル(多孔質シリカ系ゲル)を得た。この精製シリカヒドロゲルの濃度は、SiO2濃度が5.0質量%であり、また比表面積は600m2/gで、サイズは84μmであった。
異形多孔質シリカ系ゲルの調製
<異形多孔質シリカ系ゲル微粒子分散液(1)>
2Lのガラスビーカーに前記SiO2濃度5.0質量%の精製シリカヒドロゲル500gを加え、4.8質量%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH9.8に調整した。これに1.0mmφのジルコニアメジアを2390g加え、サンドミル粉砕機にかけて、重量平均粒子径が530nmになるまで解砕を行い(1段目粉砕)、SiO2濃度4.0質量%の異形多孔質シリカ系ゲル微粒子分散液(1)を得た。
<異形多孔質シリカ系ゲル微粒子分散液(2)>
次に、異形シリカ多孔質シリカ系ゲル微粒子分散液(1)に0.25mmφのガラスメジアを1135g加えて、重量平均粒子径が248nmになるまで解砕を行い(2段目粉砕)、SiO2濃度3.5質量%の異形多孔質シリカ系ゲル微粒子分散液(2)1900gを得た。
異形シリカ系粒子および非異形シリカ系粒子からなるシリカ系粒子群の調製
得られた異形多孔質シリカ系ゲル微粒子分散液(2)にイオン交換水を添加してSiO2濃度2.76質量%の溶液2716gを得た。次に、4.8質量%の水酸化ナトリウム水溶液とイオン交換水を加え、pHが10.7でSiO2濃度2.5質量%の溶液に調整した。ついで98℃に昇温して30分間98℃に保持した。次に温度を98℃に保持したまま4.6質量%の酸性珪酸液5573.1gを20時間かけて添加し、更に温度を98℃に保持したまま1時間攪拌を継続した。この時の固形分の比表面積は30m2/gであった。
この調合液を室温まで冷却後に、限外濾過膜(旭化成社製SIP−1013)でSiO2濃度12質量%まで濃縮した。更にロータリーエバポレーターで30質量%まで濃縮し、異形シリカ系粒子および非異形シリカ系粒子からなるシリカ系粒子群が水に分散してなるシリカ系粒子分散液(1)を得た。ここで、これに含まれるシリカ系粒子群の重量平均粒子径は261nmであった。
このようにして得られたシリカ系微粒子分散液(1)の性状を測定した。結果を第1表に示す。
また、上記のようにして、シリカ系微粒子分散液(1)を得る過程における各種性状等を、第2表に示す。
[実施例1]
研磨用砥粒分散液の調製
上記のようにして得たシリカ系粒子分散液(1)(SiO2濃度:30質量%)150gに、ポリアクリル酸ナトリウム塩(A1)0.45g(シリカ100質量部に対し、ポリアクリル酸ナトリウム塩1質量部相当)を添加し、室温にて60分間攪拌することによって研磨用砥粒分散液A1を調製した。
[実施例2]
研磨用砥粒分散液の調製
上記のようにして得たシリカ系粒子分散液(1)(SiO2濃度:30質量%)150gに、ポリアクリル酸アンモニウム塩(A2)0.45g(シリカ100質量部に対し、ポリアクリル酸アンモニウム塩1質量部相当)を添加し、室温にて60分間攪拌することによって研磨用砥粒分散液A2を調製した。
[比較例1]
研磨用砥粒分散液の調製
上記のようにして得たシリカ系粒子分散液(1)(SiO2濃度:30質量%)150gを、研磨用砥粒分散液B1とした。
[比較例2]
研磨用砥粒分散液の調製
上記のようにして得たシリカ系粒子分散液(1)(SiO2濃度:30質量%)150gに、ポリアクリル酸ナトリウム塩(B2)0.45g(シリカ100質量部に対し、ポリアクリル酸ナトリウム塩1質量部相当)を添加し、室温にて60分間攪拌することによって研磨用砥粒分散液B2を調製した。
[比較例3]
研磨用砥粒分散液の調製
上記のようにして得たシリカ系粒子分散液(1)(SiO2濃度:30質量%)150gに、ポリアクリル酸アンモニウム塩(B3)0.45g(シリカ100質量部に対し、ポリアクリル酸アンモニウム塩1質量部相当)を添加し、室温にて60分間攪拌することによって研磨用砥粒分散液B3を調製した。
[比較例4]
研磨用砥粒分散液の調製
上記のようにして得たシリカ系粒子分散液(1)(SiO2濃度:30質量%)150gに、ポリアクリル酸ナトリウム塩(B4)0.45g(シリカ100質量部に対し、ポリアクリル酸ナトリウム塩1質量部相当)を添加し、室温にて60分間攪拌することによって研磨用砥粒分散液B4を調製した。
[比較例5]
研磨用砥粒分散液の調製
上記のようにして得たシリカ系粒子分散液(1)(SiO2濃度30質量%)150kgにポリアクリル酸ナトリウム塩(BX)0.45g(シリカ100質量部に対し、ポリアクリル酸ナトリウム塩1質量部相当)を添加し、室温にて60分間攪拌することに研磨用砥粒分散液B5を調製した。
上記実施例および比較例について、前述した各測定および算出データを第3表にまとめた。なお、第3表には、各実施例および各比較例における研磨用砥粒分散液A1〜A2およびB1〜B5について粘度測定、泡立ちの有無の観察結果、沈降物の性状の観察結果についても示した。ここで粘度はB型粘度計を用いて測定した。第3表中では「スラリー状態/粘度」、「スラリー状態/泡立ちの有無」、「沈降物の性状」と表した。
所定の製造方法により得られた実施例の研磨用砥粒分散液は、研磨材として好適な粒子径、粒子径分布および異形度を有し、また、これらシリカ系粒子群を含むシリカ系粒子分散液は、研磨用砥粒分散液として使用した際に高い研磨速度が得られ、同時に高面精度を達成することができる。また、この研磨用砥粒分散液は、優れた分散性と再分散性を示し、残留物も抑制されたものである。
Figure 2021121657
Figure 2021121657
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本発明のシリカ系粒子群は、好適な粒子径、粒子径分布、異形度および粒子強度を有しているため、これを含むシリカ系粒子分散液は、NiPメッキされた被研磨基板やシリカ系基板などの表面研磨に好ましく用いることができる。

Claims (10)

  1. 異形シリカ系粒子および非異形シリカ系粒子からなるシリカ系粒子群を含むシリカ系粒子分散液に、ポリカルボン酸塩からなる分散剤が分散してなる研磨用砥粒分散液であって、前記異形シリカ系粒子は、内部に複数の細孔を有するコアおよびそれを被覆する被覆シリカ層を有し、さらに下記[1]〜[5]を満たす研磨用砥粒分散液。
    [1]前記シリカ系粒子群の重量平均粒子径(D1)が100〜600nmであり、比表面積換算粒子径(D2)が30〜300nmであること。
    [2]前記シリカ系粒子群の重量平均粒子径(D1)と投影面積相当粒子径(D3)との比で表される異形度D(D=D1/D3)が1.1〜5.0の範囲にあること。
    [3]前記シリカ系粒子群の体積基準粒子径分布を波形分離すると、分離ピークが3つ以上検出される多峰分布となること。
    [4]前記ポリカルボン酸塩は、重量平均分子量が20,000〜140,000の範囲にあり、カルボニル炭素に直接結合する炭素原子の個数をm、カルボニル炭素に直接結合しない炭素原子の個数をnとしたとき、m/(m+n)×100の値が40〜50%の範囲にあること。
    [5]前記シリカ系粒子群と、前記ポリカルボン酸塩の質量比が100:0.1〜100:10の範囲にあること。
  2. 前記分散剤がポリアクリル酸塩からなることを特徴とする、請求項1に記載の研磨用砥粒分散液。
  3. 前記コアの内部細孔の平均細孔径が20nm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の研磨用砥粒分散液。
  4. 前記被覆シリカ層が、平均厚さ1〜50nmの範囲で、シリカを主成分とすることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の研磨用砥粒分散液。
  5. 前記シリカ系粒子群が、その体積基準粒子径分布において、歪度が−20〜20の範囲にあることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の研磨用砥粒分散液。
  6. 前記シリカ系粒子群の体積基準粒子径分布を波形分離した結果得られた分離ピークのうち、最大粒子成分の体積割合が75%以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の研磨用砥粒分散液。
  7. 前記シリカ系粒子群のSEM画像解析により得られる個数基準粒子径分布において、小粒子側成分のアスペクト比が1.05〜5.0の範囲にあることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の研磨用砥粒分散液。
  8. 前記シリカ系粒子群の体積基準粒子径分布の粒子径の変動係数が30%以上であることを特徴とする、請求項1〜7の何れかに記載の研磨用砥粒分散液。
  9. 前記シリカ系粒子群における、画像解析法による平均面積(S1)に対する画像解析法による平均外周長と等価な円の面積(S2)の比であらわされる平滑度S(S=S2/S1)が1.1〜5.0の範囲にあることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の研磨用砥粒分散液。
  10. 前記シリカ系粒子群の体積基準粒子径分布において、全体積(Q1)に対する0.7μm以上の粒子の体積(Q2)の割合Q(Q=Q2/Q1)が1.2%以下であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の研磨用砥粒分散液。
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