添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
(第1の実施形態)
本開示の第1の実施形態のPLL回路Pの概要構成及び詳細構成を図10及び図11に示す。本開示の第1の実施形態のPLL回路Pは、第1の位相比較器1−1、第2の位相比較器1−2、第1のチャージポンプ2−1、第2のチャージポンプ2−2、ループフィルタ3、発振器4、分周器5及び移相器6から構成される。
発振器4は、電圧信号に基づいて発振周波数を制御する。分周器5は、発振器4が出力する発振信号を、基準信号refの周波数とほぼ同じ周波数に分周する。移相器6は、PLL回路Pに入力される基準信号refの位相を、移相量θだけ移相する。移相器6は、例えば、TDC(Time to Digital Converter)を使える。
第1の位相比較器1−1は、PLL回路Pに入力される基準信号refの位相に対する、分周器5が出力する帰還信号fbの位相の差分に応じて、発振器4の発振周波数の上昇を指示する第1の上昇信号up1及び発振器4の発振周波数の下降を指示する第1の下降信号dw1を出力する。第1の位相比較器1−1は、ディレイフリップフロップ回路11−1、12−1及びAND回路13−1を備える。
ディレイフリップフロップ回路11−1は、CK端子において、そのままの基準信号refを入力され、D端子において、High信号“1”を入力され、Reset端子において、後述のAND回路13−1の出力信号を入力され、Q端子において、上昇信号up1を出力する。
ディレイフリップフロップ回路12−1は、CK端子において、そのままの帰還信号fbを入力され、D端子において、High信号“1”を入力され、Reset端子において、後述のAND回路13−1の出力信号を入力され、Q端子において、下降信号dw1を出力する。
AND回路13−1は、入力端子において、ディレイフリップフロップ回路11−1が出力する上昇信号up1及びディレイフリップフロップ回路12−1が出力する下降信号dw1を入力され、出力端子において、Reset信号を出力する。
第2の位相比較器1−2は、移相器6が出力する基準信号refxの位相に対する、分周器5が出力する帰還信号fbの位相の差分に応じて、発振器4の発振周波数の上昇を指示する第2の上昇信号up2及び発振器4の発振周波数の下降を指示する第2の下降信号dw2を出力する。第2の位相比較器1−2は、ディレイフリップフロップ回路11−2、12−2及びAND回路13−2を備える。
ディレイフリップフロップ回路11−2は、CK端子において、移相された基準信号refxを入力され、D端子において、High信号“1”を入力され、Reset端子において、後述のAND回路13−2の出力信号を入力され、Q端子において、上昇信号up2を出力する。
ディレイフリップフロップ回路12−2は、CK端子において、そのままの帰還信号fbを入力され、D端子において、High信号“1”を入力され、Reset端子において、後述のAND回路13−2の出力信号を入力され、Q端子において、下降信号dw2を出力する。
AND回路13−2は、入力端子において、ディレイフリップフロップ回路11−2が出力する上昇信号up2及びディレイフリップフロップ回路12−2が出力する下降信号dw2を入力され、出力端子において、Reset信号を出力する。
第1のチャージポンプ2−1は、第1の位相比較器1−1が出力する第1の上昇信号up1及び第1の下降信号dw1のパルス幅に応じて、第1の電流信号Icp1を出力する。第1のチャージポンプ2−1は、定電流源21−1、22−1及びスイッチ23−1、24−1を備える。
スイッチ23−1は、上昇信号up1がHigh信号“1”であるとき、ONとなり、上昇信号up1がLow信号“0”であるとき、OFFとなる。定電流源21−1は、スイッチ23−1がONであるとき、後述のコンデンサ31に電荷を供給する。
スイッチ24−1は、下降信号dw1がHigh信号“1”であるとき、ONとなり、下降信号dw1がLow信号“0”であるとき、OFFとなる。定電流源22−1は、スイッチ24−1がONであるとき、後述のコンデンサ31から電荷を引き抜く。
第2のチャージポンプ2−2は、第2の位相比較器1−2が出力する第2の上昇信号up2及び第2の下降信号dw2のパルス幅に応じて、第2の電流信号Icp2を出力する。第2のチャージポンプ2−2は、定電流源21−2、22−2及びスイッチ23−2、24−2を備える。
スイッチ23−2は、上昇信号up2がHigh信号“1”であるとき、ONとなり、上昇信号up2がLow信号“0”であるとき、OFFとなる。定電流源21−2は、スイッチ23−2がONであるとき、後述のコンデンサ31に電荷を供給する。
スイッチ24−2は、下降信号dw2がHigh信号“1”であるとき、ONとなり、下降信号dw2がLow信号“0”であるとき、OFFとなる。定電流源22−2は、スイッチ24−2がONであるとき、後述のコンデンサ31から電荷を引き抜く。
ループフィルタ3は、コンデンサ31及び抵抗32を有し、第1のチャージポンプ2−1が出力する第1の電流信号Icp1及び第2のチャージポンプ2−2が出力する第2の電流信号Icp2を統合し、発振器4に入力される電圧信号に変換する。ここで、ループフィルタ3は、コンデンサ31及び抵抗32を直列つなぎに接続したものに限られない。そして、第1の電流信号Icp1及び第2の電流信号Icp2を統合して電流信号Icpoを生成する。
本開示の第1の実施形態において、移相器6がPLL回路Pに入力される基準信号refの位相を移相量60°だけ遅延させるときにおける、PLL回路Pの位相比較器1−1、1−2及びチャージポンプ2−1、2−2の出力波形を図12から図14までに示す。第1、2の上昇信号up1、up2及び第1、2の下降信号dw1、dw2の生成方法は、図3に示した上昇信号up及び下降信号dwの生成方法と同様である。第1、2の上昇信号up1、up2及び第1、2の下降信号dw1、dw2に対しては、第1、2の位相比較器1−1、1−2の回路遅延に応じた狭いパルスが出力されており白地で示す。第1、2の電流信号Icp1、Icp2及び電流信号Icpoに対しては、第1、2の位相比較器1−1、1−2の回路遅延に応じた狭いパルスは出力されていない。第1、2の位相比較器1−1、1−2の回路遅延に応じた狭いパルスの期間は、コンデンサに電荷を供給するためのスイッチと、コンデンサから電荷を引き抜くためのスイッチが、両方ともONになるからである。
帰還信号fbの位相が基準信号refの位相より30°早いときを図12の上段に示す。第1の下降信号dw1は、そのままの基準信号refに対するそのままの帰還信号fbの位相の進み30°に応じたパルス幅を有する。第2の下降信号dw2は、遅延された基準信号refxに対するそのままの帰還信号fbの位相の進み90°に応じたパルス幅を有する。第1の電流信号Icp1は、第1の下降信号dw1のパルス幅に応じたコンデンサ31からの電荷引抜を行う。第2の電流信号Icp2は、第2の下降信号dw2のパルス幅に応じたコンデンサ31からの電荷引抜を行う。電流信号Icpoは、位相30°+90°=120°に比例したコンデンサ31からの電荷引抜を行う。
帰還信号fbの位相が基準信号refの位相に等しいときを図12の下段に示す。第2の下降信号dw2は、遅延された基準信号refxに対するそのままの帰還信号fbの位相の進み60°に応じたパルス幅を有する。第2の電流信号Icp2は、第2の下降信号dw2のパルス幅に応じたコンデンサ31からの電荷引抜を行う。電流信号Icpoは、位相60°に比例したコンデンサ31からの電荷引抜を行う。
帰還信号fbの位相が基準信号refの位相より30°遅いときを図13の上段に示す。第1の上昇信号up1は、そのままの基準信号refに対するそのままの帰還信号fbの位相の遅れ30°に応じたパルス幅を有する。第2の下降信号dw2は、遅延された基準信号refxに対するそのままの帰還信号fbの位相の進み30°に応じたパルス幅を有する。第1の電流信号Icp1は、第1の上昇信号up1のパルス幅に応じたコンデンサ31への電荷供給を行う。第2の電流信号Icp2は、第2の下降信号dw2のパルス幅に応じたコンデンサ31からの電荷引抜を行う。電流信号Icpoは、コンデンサ31への電荷供給やコンデンサ31からの電荷引抜を行わない。
つまり、基準信号refの位相に対する帰還信号fbの位相の差分60°/2=30°で、発振器4の発振周波数はロックされ、基準信号refの位相に対する帰還信号fbの位相の差分60°/2=30°の近傍で、第1の上昇信号up1及び第2の下降信号dw2は位相の差分60°/2=30°に応じた広いパルス幅を有する。
帰還信号fbの位相が基準信号refの位相より60°遅いときを図13の下段に示す。第1の上昇信号up1は、そのままの基準信号refに対するそのままの帰還信号fbの位相の遅れ60°に応じたパルス幅を有する。第1の電流信号Icp1は、第1の上昇信号up1のパルス幅に応じたコンデンサ31への電荷供給を行う。電流信号Icpoは、位相60°に比例したコンデンサ31への電荷供給を行う。
帰還信号fbの位相が基準信号refの位相より90°遅いときを図14に示す。第1の上昇信号up1は、そのままの基準信号refに対するそのままの帰還信号fbの位相の遅れ90°に応じたパルス幅を有する。第2の上昇信号up2は、遅延された基準信号refxに対するそのままの帰還信号fbの位相の遅れ30°に応じたパルス幅を有する。第1の電流信号Icp1は、第1の上昇信号up1のパルス幅に応じたコンデンサ31への電荷供給を行う。第2の電流信号Icp2は、第2の上昇信号up2のパルス幅に応じたコンデンサ31への電荷供給を行う。電流信号Icpoは、位相90°+30°=120°に比例したコンデンサ31への電荷供給を行う。
本開示の第1の実施形態において、移相器6がPLL回路Pに入力される基準信号refの位相を移相量60°だけ遅延させるときにおける、PLL回路Pの第1、2の位相比較器1−1、1−2及び第1、2のチャージポンプ2−1、2−2の位相検波特性を図15に示す。横軸は、基準信号refの位相に対する帰還信号fbの位相の差分を、ロック点60°/2=30°を基準として示す。破線の位相検波特性は、第1の系統による位相検波特性であり、一点鎖線の位相検波特性は、第2の系統による位相検波特性であり、実線の位相検波特性は、第1、2の系統を統合した系統による位相検波特性である。
第1、2の従来技術から本開示の第1の実施形態へと移行するにあたり、PLLの帯域幅等の諸元を揃えるため、図15に示した位相検波特性の傾きを図4、7に示した位相検波特性の傾きと同じにする必要があり、本開示の第1の実施形態の各チャージポンプの電流を第1、2の従来技術の各チャージポンプの電流の半分にする必要がある。
図15に示したように、基準信号refの周波数が高いPLL回路Pにおいて、第1、2の上昇信号up1、up2及び第1、2の下降信号dw1、dw2に対してスルーレートが低くても、周波数判別機能を有しつつ、第1、2の位相比較器1−1、1−2及び第1、2のチャージポンプ2−1、2−2の位相検波特性の直線性を改善することができる。
本開示の第1の実施形態において、移相器6がPLL回路Pに入力される基準信号refの位相を移相量120°だけ遅延させるときにおける、PLL回路Pの位相比較器1−1、1−2及びチャージポンプ2−1、2−2の出力波形を図16から図19までに示す。第1、2の上昇信号up1、up2及び第1、2の下降信号dw1、dw2の生成方法は、図3に示した上昇信号up及び下降信号dwの生成方法と同様である。第1、2の上昇信号up1、up2及び第1、2の下降信号dw1、dw2に対しては、第1、2の位相比較器1−1、1−2の回路遅延に応じた狭いパルスが出力されており白地で示す。第1、2の電流信号Icp1、Icp2及び電流信号Icpoに対しては、第1、2の位相比較器1−1、1−2の回路遅延に応じた狭いパルスは出力されていない。第1、2の位相比較器1−1、1−2の回路遅延に応じた狭いパルスの期間は、コンデンサに電荷を供給するためのスイッチと、コンデンサから電荷を引き抜くためのスイッチが、両方ともONになるからである。
帰還信号fbの位相が基準信号refの位相より30°早いときを図16の上段に示す。第1の下降信号dw1は、そのままの基準信号refに対するそのままの帰還信号fbの位相の進み30°に応じたパルス幅を有する。第2の下降信号dw2は、遅延された基準信号refxに対するそのままの帰還信号fbの位相の進み150°に応じたパルス幅を有する。第1の電流信号Icp1は、第1の下降信号dw1のパルス幅に応じたコンデンサ31からの電荷引抜を行う。第2の電流信号Icp2は、第2の下降信号dw2のパルス幅に応じたコンデンサ31からの電荷引抜を行う。電流信号Icpoは、位相30°+150°=180°に比例したコンデンサ31からの電荷引抜を行う。
帰還信号fbの位相が基準信号refの位相に等しいときを図16の下段に示す。第2の下降信号dw2は、遅延された基準信号refxに対するそのままの帰還信号fbの位相の進み120°に応じたパルス幅を有する。第2の電流信号Icp2は、第2の下降信号dw2のパルス幅に応じたコンデンサ31からの電荷引抜を行う。電流信号Icpoは、位相120°に比例したコンデンサ31からの電荷引抜を行う。
帰還信号fbの位相が基準信号refの位相より30°遅いときを図17の上段に示す。第1の上昇信号up1は、そのままの基準信号refに対するそのままの帰還信号fbの位相の遅れ30°に応じたパルス幅を有する。第2の下降信号dw2は、遅延された基準信号refxに対するそのままの帰還信号fbの位相の進み90°に応じたパルス幅を有する。第1の電流信号Icp1は、第1の上昇信号up1のパルス幅に応じたコンデンサ31への電荷供給を行う。第2の電流信号Icp2は、第2の下降信号dw2のパルス幅に応じたコンデンサ31からの電荷引抜を行う。電流信号Icpoは、位相90°−30°=60°に比例したコンデンサ31からの電荷引抜を行う。
帰還信号fbの位相が基準信号refの位相より60°遅いときを図17の下段に示す。第1の上昇信号up1は、そのままの基準信号refに対するそのままの帰還信号fbの位相の遅れ60°に応じたパルス幅を有する。第2の下降信号dw2は、遅延された基準信号refxに対するそのままの帰還信号fbの位相の進み60°に応じたパルス幅を有する。第1の電流信号Icp1は、第1の上昇信号up1のパルス幅に応じたコンデンサ31への電荷供給を行う。第2の電流信号Icp2は、第2の下降信号dw2のパルス幅に応じたコンデンサ31からの電荷引抜を行う。電流信号Icpoは、コンデンサ31への電荷供給やコンデンサ31からの電荷引抜を行わない。
つまり、基準信号refの位相に対する帰還信号fbの位相の差分120°/2=60°で、発振器4の発振周波数はロックされ、基準信号refの位相に対する帰還信号fbの位相の差分120°/2=60°の近傍で、第1の上昇信号up1及び第2の下降信号dw2は位相の差分120°/2=60°に応じた広いパルス幅を有する。
帰還信号fbの位相が基準信号refの位相より90°遅いときを図18の上段に示す。第1の上昇信号up1は、そのままの基準信号refに対するそのままの帰還信号fbの位相の遅れ90°に応じたパルス幅を有する。第2の下降信号dw2は、遅延された基準信号refxに対するそのままの帰還信号fbの位相の進み30°に応じたパルス幅を有する。第1の電流信号Icp1は、第1の上昇信号up1のパルス幅に応じたコンデンサ31への電荷供給を行う。第2の電流信号Icp2は、第2の下降信号dw2のパルス幅に応じたコンデンサ31からの電荷引抜を行う。電流信号Icpoは、位相90°−30°=60°に比例したコンデンサ31への電荷供給を行う。
帰還信号fbの位相が基準信号refの位相より120°遅いときを図18の下段に示す。第1の上昇信号up1は、そのままの基準信号refに対するそのままの帰還信号fbの位相の遅れ120°に応じたパルス幅を有する。第1の電流信号Icp1は、第1の上昇信号up1のパルス幅に応じたコンデンサ31への電荷供給を行う。電流信号Icpoは、位相120°に比例したコンデンサ31への電荷供給を行う。
帰還信号fbの位相が基準信号refの位相より150°遅いときを図19に示す。第1の上昇信号up1は、そのままの基準信号refに対するそのままの帰還信号fbの位相の遅れ150°に応じたパルス幅を有する。第2の上昇信号up2は、遅延された基準信号refxに対するそのままの帰還信号fbの位相の遅れ30°に応じたパルス幅を有する。第1の電流信号Icp1は、第1の上昇信号up1のパルス幅に応じたコンデンサ31への電荷供給を行う。第2の電流信号Icp2は、第2の上昇信号up2のパルス幅に応じたコンデンサ31への電荷供給を行う。電流信号Icpoは、位相150°+30°=180°に比例したコンデンサ31への電荷供給を行う。
本開示の第1の実施形態において、移相器6がPLL回路Pに入力される基準信号refの位相を移相量120°だけ遅延させるときにおける、PLL回路Pの第1、2の位相比較器1−1、1−2及び第1、2のチャージポンプ2−1、2−2の位相検波特性を図20に示す。横軸は、基準信号refの位相に対する帰還信号fbの位相の差分を、ロック点120°/2=60°を基準として示す。破線の位相検波特性は、第1の系統による位相検波特性であり、一点鎖線の位相検波特性は、第2の系統による位相検波特性であり、実線の位相検波特性は、第1、2の系統を統合した系統による位相検波特性である。
第1、2の従来技術から本開示の第1の実施形態へと移行するにあたり、PLLの帯域幅等の諸元を揃えるため、図20に示した位相検波特性の傾きを図4、7に示した位相検波特性の傾きと同じにする必要があり、本開示の第1の実施形態の各チャージポンプの電流を第1、2の従来技術の各チャージポンプの電流の半分にする必要がある。
図20に示したように、基準信号refの周波数が高いPLL回路Pにおいて、第1、2の上昇信号up1、up2及び第1、2の下降信号dw1、dw2に対してスルーレートが低くても、周波数判別機能を有しつつ、第1、2の位相比較器1−1、1−2及び第1、2のチャージポンプ2−1、2−2の位相検波特性の直線性を改善することができる。
ここで、分周器5が、MASHを用いる、MASH次数がMであり小数点分周数がNである、小数点分周器であるとき、MASHの位相の振り幅は、2M/N×2πである。そこで、第1、2の位相比較器1−1、1−2及び第1、2のチャージポンプ2−1、2−2の位相検波特性の直線性が改善された入力位相差幅θ/2の中に、MASHの位相の振り幅2M/N×2πが含まれることが望ましい。
θ/2>2M/N×2πであるとき、MASHの位相の振り幅2M/N×2πに渡って、第1、2の位相比較器1−1、1−2及び第1、2のチャージポンプ2−1、2−2の位相検波特性の直線性を改善することができる。
θ/2=2M/N×2πであるとき、MASHの位相の振り幅2M/N×2πに渡って、第1、2の位相比較器1−1、1−2及び第1、2のチャージポンプ2−1、2−2の位相検波特性の直線性を改善することができる限度内で、第1、2のチャージポンプ2−1、2−2のスイッチ23−1、23−2、24−1、24−2のON時間を低減し、第1、2のチャージポンプ2−1、2−2の出力雑音を低減することができる。
本開示の第1の実施形態のPLL回路Pでは、本開示の第2の実施形態のPLL回路Pと比べて、第1、2の位相比較器1−1、1−2及び第1、2のチャージポンプ2−1、2−2の位相検波特性の直線性が成り立つ範囲を拡大することができる。
以上の説明では、移相器6は、PLL回路Pに入力される基準信号refの位相を、移相量θだけ移相し、第2の位相比較器1−2は、移相器6が出力する基準信号refxの位相に対する、分周器5が出力する帰還信号fbの位相の差分に応じて、第2の上昇信号up2及び下降信号dw2を出力し、ロック点は+θ/2である。
変形例として、図21に示したように、移相器6は、分周器5が出力する帰還信号fbの位相を、移相量θだけ移相してもよく、第2の位相比較器1−2は、PLL回路Pに入力される基準信号refの位相に対する、移相器6が出力する帰還信号fbxの位相の差分に応じて、第2の上昇信号up2及び下降信号dw2を出力してもよく、ロック点は−θ/2であってもよい。
なお、帰還信号fbの周波数が基準信号refの周波数より高いとき、初期に遅れ位相による上昇信号upを出力していても、一度進み位相による下降信号dwを出力し始めれば、その後進み位相による下降信号dwを出力し続ける。逆に、帰還信号fbの周波数が基準信号refの周波数より低いとき、初期に進み位相による下降信号dwを出力していても、一度遅れ位相による上昇信号upを出力し始めれば、その後遅れ位相による上昇信号upを出力し続ける。よって、PLL回路Pは、不安定な状態に遷移しない。
(第2の実施形態)
本開示の第2の実施形態のPLL回路Pの概要構成及び詳細構成を図22及び図23に示す。本開示の第2の実施形態のPLL回路Pは、第1の位相比較器1−1、第2の位相比較器1−2、チャージポンプ2、ループフィルタ3、発振器4、分周器5、移相器6、上昇信号統合器7及び下降信号統合器8から構成される。
発振器4は、電圧信号に基づいて発振周波数を制御する。分周器5は、発振器4が出力する発振信号を、基準信号refの周波数とほぼ同じ周波数に分周する。移相器6は、PLL回路Pに入力される基準信号refの位相を、移相量θだけ移相する。移相器6は、例えば、TDC(Time to Digital Converter)を使える。
第1の位相比較器1−1は、PLL回路Pに入力される基準信号refの位相に対する、分周器5が出力する帰還信号fbの位相の差分に応じて、発振器4の発振周波数の上昇を指示する第1の上昇信号up1及び発振器4の発振周波数の下降を指示する第1の下降信号dw1を出力する。第1の位相比較器1−1は、ディレイフリップフロップ回路11−1、12−1及びAND回路13−1を備える。
ディレイフリップフロップ回路11−1は、CK端子において、そのままの基準信号refを入力され、D端子において、High信号“1”を入力され、Reset端子において、後述のAND回路13−1の出力信号を入力され、Q端子において、上昇信号up1を出力する。
ディレイフリップフロップ回路12−1は、CK端子において、そのままの帰還信号fbを入力され、D端子において、High信号“1”を入力され、Reset端子において、後述のAND回路13−1の出力信号を入力され、Q端子において、下降信号dw1を出力する。
AND回路13−1は、入力端子において、ディレイフリップフロップ回路11−1が出力する上昇信号up1及びディレイフリップフロップ回路12−1が出力する下降信号dw1を入力され、出力端子において、Reset信号を出力する。
第2の位相比較器1−2は、移相器6が出力する基準信号refxの位相に対する、分周器5が出力する帰還信号fbの位相の差分に応じて、発振器4の発振周波数の上昇を指示する第2の上昇信号up2及び発振器4の発振周波数の下降を指示する第2の下降信号dw2を出力する。第2の位相比較器1−2は、ディレイフリップフロップ回路11−2、12−2及びAND回路13−2を備える。
ディレイフリップフロップ回路11−2は、CK端子において、移相された基準信号refxを入力され、D端子において、High信号“1”を入力され、Reset端子において、後述のAND回路13−2の出力信号を入力され、Q端子において、上昇信号up2を出力する。
ディレイフリップフロップ回路12−2は、CK端子において、そのままの帰還信号fbを入力され、D端子において、High信号“1”を入力され、Reset端子において、後述のAND回路13−2の出力信号を入力され、Q端子において、下降信号dw2を出力する。
AND回路13−2は、入力端子において、ディレイフリップフロップ回路11−2が出力する上昇信号up2及びディレイフリップフロップ回路12−2が出力する下降信号dw2を入力され、出力端子において、Reset信号を出力する。
上昇信号統合器7は、第1の位相比較器1−1が出力する第1の上昇信号up1及び第2の位相比較器1−2が出力する第2の上昇信号up2の論理和を算出し、統合上昇信号UPを出力する。上昇信号統合器7は、NOT回路71、72及びNAND回路73を備える。
NOT回路71は、入力端子において、第1の上昇信号up1を入力され、出力端子において、NOT信号を出力する。NOT回路72は、入力端子において、第2の上昇信号up2を入力され、出力端子において、NOT信号を出力する。NAND回路73は、入力端子において、NOT回路71、72が出力するNOT信号を入力され、NAND信号を出力する。ここで、このNAND信号は、統合上昇信号UPである。
下降信号統合器8は、第1の位相比較器1−1が出力する第1の下降信号dw1及び第2の位相比較器1−2が出力する第2の下降信号dw2の論理和を算出し、統合下降信号DWを出力する。下降信号統合器8は、NOT回路81、82及びNAND回路83を備える。
NOT回路81は、入力端子において、第1の下降信号dw1を入力され、出力端子において、NOT信号を出力する。NOT回路82は、入力端子において、第2の下降信号dw2を入力され、出力端子において、NOT信号を出力する。NAND回路83は、入力端子において、NOT回路81、82が出力するNOT信号を入力され、NAND信号を出力する。ここで、このNAND信号は、統合下降信号DWである。
チャージポンプ2は、上昇信号統合器7が出力する統合上昇信号UP及び下降信号統合器8が出力する統合下降信号DWのパルス幅に応じて、電流信号Icpoを出力する。チャージポンプ2は、定電流源21、22及びスイッチ23、24を備える。
スイッチ23は、統合上昇信号UPがHigh信号“1”であるとき、ONとなり、統合上昇信号UPがLow信号“0”であるとき、OFFとなる。定電流源21は、スイッチ23がONであるとき、後述のコンデンサ31に電荷を供給する。
スイッチ24は、統合下降信号DWがHigh信号“1”であるとき、ONとなり、統合下降信号DWがLow信号“0”であるとき、OFFとなる。定電流源22は、スイッチ24がONであるとき、後述のコンデンサ31から電荷を引き抜く。
ループフィルタ3は、コンデンサ31及び抵抗32を有し、チャージポンプ2が出力する電流信号Icpoを、発振器4に入力される電圧信号に変換する。ここで、ループフィルタ3は、コンデンサ31及び抵抗32を直列つなぎに接続したものに限られない。
本開示の第2の実施形態において、移相器6がPLL回路Pに入力される基準信号refの位相を移相量60°だけ遅延させるときにおける、PLL回路Pの位相比較器1−1、1−2及びチャージポンプ2の出力波形を図24から図26までに示す。第1、2の上昇信号up1、up2及び第1、2の下降信号dw1、dw2の生成方法は、図3に示した上昇信号up及び下降信号dwの生成方法と同様である。第1、2の上昇信号up1、up2及び第1、2の下降信号dw1、dw2に対しては、第1、2の位相比較器1−1、1−2の回路遅延に応じた狭いパルスが出力されており白地で示す。統合上昇信号UP、統合下降信号DW及び電流信号Icpoに対しては、第1、2の位相比較器1−1、1−2の回路遅延に応じた狭いパルスは出力されていない。第1、2の位相比較器1−1、1−2の回路遅延に応じた狭いパルスの期間は、コンデンサに電荷を供給するためのスイッチと、コンデンサから電荷を引き抜くためのスイッチが、両方ともONになるからである。
帰還信号fbの位相が基準信号refの位相より30°早いときを図24の上段に示す。第1の下降信号dw1は、そのままの基準信号refに対するそのままの帰還信号fbの位相の進み30°に応じたパルス幅を有する。第2の下降信号dw2は、遅延された基準信号refxに対するそのままの帰還信号fbの位相の進み90°に応じたパルス幅を有する。統合下降信号DWは、第1の下降信号dw1及び第2の下降信号dw2の論理和として、位相90°に比例したパルス幅を有する。電流信号Icpoは、位相90°に比例したコンデンサ31からの電荷引抜を行う。
帰還信号fbの位相が基準信号refの位相に等しいときを図24の下段に示す。第2の下降信号dw2は、遅延された基準信号refxに対するそのままの帰還信号fbの位相の進み60°に応じたパルス幅を有する。統合下降信号DWは、第1の下降信号dw1及び第2の下降信号dw2の論理和として、位相60°に比例したパルス幅を有する。電流信号Icpoは、位相60°に比例したコンデンサ31からの電荷引抜を行う。
帰還信号fbの位相が基準信号refの位相より30°遅いときを図25の上段に示す。第1の上昇信号up1は、そのままの基準信号refに対するそのままの帰還信号fbの位相の遅れ30°に応じたパルス幅を有する。第2の下降信号dw2は、遅延された基準信号refxに対するそのままの帰還信号fbの位相の進み30°に応じたパルス幅を有する。統合上昇信号UPは、第1の上昇信号up1及び第2の上昇信号up2の論理和として、位相30°に比例したパルス幅を有する。統合下降信号DWは、第1の下降信号dw1及び第2の下降信号dw2の論理和として、位相30°に比例したパルス幅を有する。電流信号Icpoは、コンデンサ31への電荷供給やコンデンサ31からの電荷引抜を行わない。
つまり、基準信号refの位相に対する帰還信号fbの位相の差分60°/2=30°で、発振器4の発振周波数はロックされ、基準信号refの位相に対する帰還信号fbの位相の差分60°/2=30°の近傍で、第1の上昇信号up1及び第2の下降信号dw2は位相の差分60°/2=30°に応じた広いパルス幅を有する。
帰還信号fbの位相が基準信号refの位相より60°遅いときを図25の下段に示す。第1の上昇信号up1は、そのままの基準信号refに対するそのままの帰還信号fbの位相の遅れ60°に応じたパルス幅を有する。統合上昇信号UPは、第1の上昇信号up1及び第2の上昇信号up2の論理和として、位相60°に比例したパルス幅を有する。電流信号Icpoは、位相60°に比例したコンデンサ31への電荷供給を行う。
帰還信号fbの位相が基準信号refの位相より90°遅いときを図26に示す。第1の上昇信号up1は、そのままの基準信号refに対するそのままの帰還信号fbの位相の遅れ90°に応じたパルス幅を有する。第2の上昇信号up2は、遅延された基準信号refxに対するそのままの帰還信号fbの位相の遅れ30°に応じたパルス幅を有する。統合上昇信号UPは、第1の上昇信号up1及び第2の上昇信号up2の論理和として、位相90°に比例したパルス幅を有する。電流信号Icpoは、位相90°に比例したコンデンサ31への電荷供給を行う。
本開示の第1の実施形態において、移相器6がPLL回路Pに入力される基準信号refの位相を移相量60°だけ遅延させるときにおける、PLL回路Pの第1、2の位相比較器1−1、1−2及びチャージポンプ2の位相検波特性を図27に示す。横軸は、基準信号refの位相に対する帰還信号fbの位相の差分を、ロック点60°/2=30°を基準として示す。破線の位相検波特性は、第1の系統による位相検波特性であり、一点鎖線の位相検波特性は、第2の系統による位相検波特性であり、実線の位相検波特性は、第1、2の系統を統合した系統による位相検波特性である。
第1、2の従来技術から本開示の第2の実施形態へと移行するにあたり、PLLの帯域幅等の諸元を揃えるため、図27に示した位相検波特性の傾きを図4、7に示した位相検波特性の傾きと同じにする必要があり、本開示の第2の実施形態の各チャージポンプの電流を第1、2の従来技術の各チャージポンプの電流の半分にする必要がある。
図27に示したように、基準信号refの周波数が高いPLL回路Pにおいて、第1、2の上昇信号up1、up2及び第1、2の下降信号dw1、dw2に対してスルーレートが低くても、周波数判別機能を有しつつ、第1、2の位相比較器1−1、1−2及びチャージポンプ2の位相検波特性の直線性を改善することができる。
ここで、統合上昇信号UPは、第1の上昇信号up1及び第2の上昇信号up2の論理和信号である。そして、統合下降信号DWは、第1の下降信号dw1及び第2の下降信号dw2の論理和信号である。よって、ロック点60°/2=30°から±30°離れた点において、第1、2の系統を統合した系統による位相検波特性はキンクを有する。
本開示の第2の実施形態において、移相器6がPLL回路Pに入力される基準信号refの位相を移相量120°だけ遅延させるときにおける、PLL回路Pの位相比較器1−1、1−2及びチャージポンプ2の出力波形を図28から図31までに示す。第1、2の上昇信号up1、up2及び第1、2の下降信号dw1、dw2の生成方法は、図3に示した上昇信号up及び下降信号dwの生成方法と同様である。第1、2の上昇信号up1、up2及び第1、2の下降信号dw1、dw2に対しては、第1、2の位相比較器1−1、1−2の回路遅延に応じた狭いパルスが出力されており白地で示す。統合上昇信号UP及び統合下降信号DW及び電流信号Icpoに対しては、第1、2の位相比較器1−1、1−2の回路遅延に応じた狭いパルスは出力されていない。第1、2の位相比較器1−1、1−2の回路遅延に応じた狭いパルスの期間は、コンデンサに電荷を供給するためのスイッチと、コンデンサから電荷を引き抜くためのスイッチが、両方ともONになるからである。
帰還信号fbの位相が基準信号refの位相より30°早いときを図28の上段に示す。第1の下降信号dw1は、そのままの基準信号refに対するそのままの帰還信号fbの位相の進み30°に応じたパルス幅を有する。第2の下降信号dw2は、遅延された基準信号refxに対するそのままの帰還信号fbの位相の進み150°に応じたパルス幅を有する。統合下降信号DWは、第1の下降信号dw1及び第2の下降信号dw2の論理和として、位相150°に比例したパルス幅を有する。電流信号Icpoは、位相150°に比例したコンデンサ31からの電荷引抜を行う。
帰還信号fbの位相が基準信号refの位相に等しいときを図28の下段に示す。第2の下降信号dw2は、遅延された基準信号refxに対するそのままの帰還信号fbの位相の進み120°に応じたパルス幅を有する。統合下降信号DWは、第1の下降信号dw1及び第2の下降信号dw2の論理和として、位相120°に比例したパルス幅を有する。電流信号Icpoは、位相120°に比例したコンデンサ31からの電荷引抜を行う。
帰還信号fbの位相が基準信号refの位相より30°遅いときを図29の上段に示す。第1の上昇信号up1は、そのままの基準信号refに対するそのままの帰還信号fbの位相の遅れ30°に応じたパルス幅を有する。第2の下降信号dw2は、遅延された基準信号refxに対するそのままの帰還信号fbの位相の進み90°に応じたパルス幅を有する。統合上昇信号UPは、第1の上昇信号up1及び第2の上昇信号up2の論理和として、位相30°に比例したパルス幅を有する。統合下降信号DWは、第1の下降信号dw1及び第2の下降信号dw2の論理和として、位相90°に比例したパルス幅を有する。電流信号Icpoは、位相90°−30°=60°に比例したコンデンサ31からの電荷引抜を行う。
帰還信号fbの位相が基準信号refの位相より60°遅いときを図29の下段に示す。第1の上昇信号up1は、そのままの基準信号refに対するそのままの帰還信号fbの位相の遅れ60°に応じたパルス幅を有する。第2の下降信号dw2は、遅延された基準信号refxに対するそのままの帰還信号fbの位相の進み60°に応じたパルス幅を有する。統合上昇信号UPは、第1の上昇信号up1及び第2の上昇信号up2の論理和として、位相60°に比例したパルス幅を有する。統合下降信号DWは、第1の下降信号dw1及び第2の下降信号dw2の論理和として、位相60°に比例したパルス幅を有する。電流信号Icpoは、コンデンサ31への電荷供給やコンデンサ31からの電荷引抜を行わない。
つまり、基準信号refの位相に対する帰還信号fbの位相の差分120°/2=60°で、発振器4の発振周波数はロックされ、基準信号refの位相に対する帰還信号fbの位相の差分120°/2=60°の近傍で、第1の上昇信号up1及び第2の下降信号dw2は位相の差分120°/2=60°に応じた広いパルス幅を有する。
帰還信号fbの位相が基準信号refの位相より90°遅いときを図30の上段に示す。第1の上昇信号up1は、そのままの基準信号refに対するそのままの帰還信号fbの位相の遅れ90°に応じたパルス幅を有する。第2の下降信号dw2は、遅延された基準信号refxに対するそのままの帰還信号fbの位相の進み30°に応じたパルス幅を有する。統合上昇信号UPは、第1の上昇信号up1及び第2の上昇信号up2の論理和として、位相90°に比例したパルス幅を有する。統合下降信号DWは、第1の下降信号dw1及び第2の下降信号dw2の論理和として、位相30°に比例したパルス幅を有する。電流信号Icpoは、位相90°−30°=60°に比例したコンデンサ31への電荷供給を行う。
帰還信号fbの位相が基準信号refの位相より120°遅いときを図30の下段に示す。第1の上昇信号up1は、そのままの基準信号refに対するそのままの帰還信号fbの位相の遅れ120°に応じたパルス幅を有する。統合上昇信号UPは、第1の上昇信号up1及び第2の上昇信号up2の論理和として、位相120°に比例したパルス幅を有する。電流信号Icpoは、位相120°に比例したコンデンサ31への電荷供給を行う。
帰還信号fbの位相が基準信号refの位相より150°遅いときを図31に示す。第1の上昇信号up1は、そのままの基準信号refに対するそのままの帰還信号fbの位相の遅れ150°に応じたパルス幅を有する。第2の上昇信号up2は、遅延された基準信号refxに対するそのままの帰還信号fbの位相の遅れ30°に応じたパルス幅を有する。統合上昇信号UPは、第1の上昇信号up1及び第2の上昇信号up2の論理和として、位相150°に比例したパルス幅を有する。電流信号Icpoは、位相150°に比例したコンデンサ31への電荷供給を行う。
本開示の第2の実施形態において、移相器6がPLL回路Pに入力される基準信号refの位相を移相量120°だけ遅延させるときにおける、PLL回路Pの第1、2の位相比較器1−1、1−2及びチャージポンプ2の位相検波特性を図32に示す。横軸は、基準信号refの位相に対する帰還信号fbの位相の差分を、ロック点120°/2=60°を基準として示す。破線の位相検波特性は、第1の系統による位相検波特性であり、一点鎖線の位相検波特性は、第2の系統による位相検波特性であり、実線の位相検波特性は、第1、2の系統を統合した系統による位相検波特性である。
第1、2の従来技術から本開示の第2の実施形態へと移行するにあたり、PLLの帯域幅等の諸元を揃えるため、図32に示した位相検波特性の傾きを図4、7に示した位相検波特性の傾きと同じにする必要があり、本開示の第2の実施形態の各チャージポンプの電流を第1、2の従来技術の各チャージポンプの電流の半分にする必要がある。
図32に示したように、基準信号refの周波数が高いPLL回路Pにおいて、第1、2の上昇信号up1、up2及び第1、2の下降信号dw1、dw2に対してスルーレートが低くても、周波数判別機能を有しつつ、第1、2の位相比較器1−1、1−2及びチャージポンプ2の位相検波特性の直線性を改善することができる。
ここで、統合上昇信号UPは、第1の上昇信号up1及び第2の上昇信号up2の論理和信号である。そして、統合下降信号DWは、第1の下降信号dw1及び第2の下降信号dw2の論理和信号である。よって、ロック点120°/2=60°から±60°離れた点において、第1、2の系統を統合した系統による位相検波特性はキンクを有する。
ここで、分周器5が、MASHを用いる、MASH次数がMであり小数点分周数がNである、小数点分周器であるとき、MASHの位相の振り幅は、2M/N×2πである。そこで、第1、2の位相比較器1−1、1−2及びチャージポンプ2の位相検波特性の直線性が確保された入力位相差幅θ/2の中に、MASHの位相の振り幅2M/N×2πが含まれることが望ましい。
θ/2>2M/N×2πであるとき、MASHの位相の振り幅2M/N×2πに渡って、第1、2の位相比較器1−1、1−2及びチャージポンプ2の位相検波特性の直線性を改善することができる。
θ/2=2M/N×2πであるとき、MASHの位相の振り幅2M/N×2πに渡って、第1、2の位相比較器1−1、1−2及びチャージポンプ2の位相検波特性の直線性を改善することができる限度内で、チャージポンプ2のスイッチ23、24のON時間を低減し、チャージポンプ2の出力雑音を低減することができる。
本開示の第2の実施形態のPLL回路Pでは、本開示の第1の実施形態のPLL回路Pと比べて、チャージポンプ2を1系統のみ配置するため、チャージポンプ2の消費電流を低減することができる。
以上の説明では、移相器6は、PLL回路Pに入力される基準信号refの位相を、移相量θだけ移相し、第2の位相比較器1−2は、移相器6が出力する基準信号refxの位相に対する、分周器5が出力する帰還信号fbの位相の差分に応じて、第2の上昇信号up2及び下降信号dw2を出力し、ロック点は+θ/2である。
変形例として、図33に示したように、移相器6は、分周器5が出力する帰還信号fbの位相を、移相量θだけ移相してもよく、第2の位相比較器1−2は、PLL回路Pに入力される基準信号refの位相に対する、移相器6が出力する帰還信号fbxの位相の差分に応じて、第2の上昇信号up2及び下降信号dw2を出力してもよく、ロック点は−θ/2であってもよい。
なお、帰還信号fbの周波数が基準信号refの周波数より高いとき、初期に遅れ位相による上昇信号upを出力していても、一度進み位相による下降信号dwを出力し始めれば、その後進み位相による下降信号dwを出力し続ける。逆に、帰還信号fbの周波数が基準信号refの周波数より低いとき、初期に進み位相による下降信号dwを出力していても、一度遅れ位相による上昇信号upを出力し始めれば、その後遅れ位相による上昇信号upを出力し続ける。よって、PLL回路Pは、不安定な状態に遷移しない。