JP2021119227A - インクジェットインク及び錠剤 - Google Patents
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Abstract
Description
可食性を有するインクジェットインクには、例えば、アルコール溶媒を含んだものがある。また、可食性を有するインクジェットインクには、例えば、黒色顔料として植物炭末色素等のカーボンを含んだものがある。
本実施形態に係るインクジェットインクは、水と、アルコール溶媒と、カーボンと、分散剤とを少なくとも含んでいる。本実施形態に係るアルコール溶媒は、イソプロピルアルコール(IPA)及びノルマルプロピルアルコール(NPA)の少なくとも一方を含み、その含有量(濃度)は、インクジェットインク全体に対して35質量部以下である。また、本実施形態に係る分散剤は、HLB値が11以上20以下の範囲内であるショ糖脂肪酸エステルを含み、その含有量は、インクジェットインクに含まれるカーボンに対して48質量%以上100質量%以下の範囲内である。このような構成であれば、カーボンインクジェットインクにおけるアルコール溶媒の添加量を増加させて乾燥性を高めた場合であっても、印刷再開性の低下を低減することができる。以下、各成分の詳細について説明する。
本実施形態に係るインクジェットインクに含まれるカーボンは、特に限定されるものではなく、例えば、薬用炭や、備長炭、あるいは竹炭等の植物炭末色素、経口摂取可能なカーボン、または工業用の石油由来のカーボンブラックである。これらカーボンの中でも、特に経口摂取可能なものが好ましい。経口摂取可能なカーボンを用いる場合、本実施形態に係るインクジェットインクを錠剤表面への直接印刷、食品への直接印刷、医薬品及び食品に直接触れるパッケージに用いることができる。
本実施形態に係るインクジェットインクは、黒色顔料としての上記カーボンの他に、インクの色味を調整するため、適宜、経口摂取可能な色素を有してもよい。経口摂取可能な色素としては、例えば食用色素として、公知の合成食用色素及び天然食用色素が適宜選択して用いられる。
本実施形態に係るインクジェットインクは、前述のカーボンを分散させるための溶媒を含んでいる。そして、その溶媒は、主溶媒としての水と、乾燥溶媒としてのアルコール溶媒とを含んでいる。以下、この主溶媒と乾燥溶媒とについて説明する。
・主溶媒
本実施形態に係るインクジェットインクに含まれる主溶媒は水であり、例えば、精製水である。なお、上記「主溶媒」とは、溶媒全体における質量比が最も大きい成分を意味する。本実施形態に係るインクジェットインクに含まれる主溶媒としての水の割合は、例えば、インクジェットインク全体の50質量%以上である。
本実施形態に係るインクジェットインクに含まれる乾燥溶媒はアルコール溶媒であり、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)及びノルマルプロピルアルコール(NPA)の少なくとも一方を含んだアルコール溶媒である。このアルコール溶媒の濃度は、インクジェットインク全体に対して35質量部以下である。なお、アルコール溶媒の濃度がインクジェットインク全体に対して35質量部を超えると、インクの乾燥性が過度になり、印刷再開性が低下する傾向がある。また、アルコール溶媒の濃度の下限値は、特に制限されるものではないが、例えばインクジェットインク全体に対して0.001質量部以上である。上記数値範囲内であれば、印刷再開性の低下を低減することができる。
本実施形態に係るインクジェットインクは、前述のカーボンや溶媒以外に、分散剤を含有している。本実施形態に係るインクジェットインクに添加可能な分散剤は、前述のカーボンの分散性を高めることができ、且つ可食性を有するものであればよく、例えばHLB値が11以上20以下の範囲内であるショ糖脂肪酸エステルである。ショ糖脂肪酸エステルの含有量は、前述のカーボンに対して48質量%以上100質量%以下の範囲内である。なお、分散剤であるショ糖脂肪酸エステルの含有量が前述のカーボンに対して48質量%未満であると、カーボンの分散安定性が低下する傾向がある。また、分散剤であるショ糖脂肪酸エステルの含有量が前述のカーボンに対して100質量%を超えると、乾燥性が低下する傾向がある。
本実施形態に係るインクジェットインクは、前述のカーボンや溶媒、分散剤以外に、湿潤剤を含有してもよく、その含有量は、インクジェットインク全体に対して0.001質量部以上20質量部以下の範囲内であってもよい。このような構成であれば、インクジェットインクに使用する上で十分な乾燥性を付与することができ、且つ印刷再開性の低下をより低減することができる。なお、湿潤剤の含有量がインクジェットインク全体に対して0.001質量部未満であると、印刷再開性が低下する傾向がある。また、湿潤剤の含有
量がインクジェットインク全体に対して20質量部を超えると、インクジェットインクに十分な乾燥性を付与することが困難となる傾向がある。
本実施形態に係るインクジェットインクに添加可能な湿潤剤は、湿潤剤として一般にインクジェットインクに添加されるものであれば特に制限されることはなく使用可能である。なお、本実施形態に係る湿潤剤は、高沸点のものであればより効果的である。ここで、「高沸点」とは、例えば、140℃以上を意味する。
また、本実施形態に係る湿潤剤は、例えば、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態に係るインクジェットインクは、前述のカーボンや溶媒、分散剤、湿潤剤以外に、バインダーを含有してもよい。本実施形態に係るインクジェットインクに添加可能なバインダーは、バインダーとして一般にインクジェットインクに添加されるものであれば特に制限されることはなく、例えば、多糖類を含むものである。また、本実施形態に係るバインダーに含まれる多糖類は、その重量平均分子量が1,000以上10,000以下の範囲内にあるものであればより好ましい。このような構成であれば、インクジェットインクに十分な乾燥性を付与することができ、且つ印刷再開性の低下をさらに低減することができる。なお、バインダーである多糖類の重量平均分子量が1,000未満であると、インクジェットインクに十分な乾燥性を付与することが困難となる傾向がある。また、バインダーである多糖類の重量平均分子量が10,000を超えると、印刷再開性が低下する傾向がある。
本実施形態に係るバインダーとしては、例えば、マルトデキストリン、エリスリトール、PVP(ポリビニルピロリドン)、デキストラン、ポリデキストロース、あるいはトウモロコシ及び小麦等のデンプン物質、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシメチルセルロース等のセルロース系物質、アルギン酸ナトリウム、アラビヤゴム、ローカストビーンガム、トラントガム、グアーガム、及びタマリンド種子等の多糖類が挙げられる。
本実施形態に係るインクジェットインクは、印刷方法について特に限定されず、市販のインクジェットプリンタ等のインクジェット装置を用いた印刷が可能である。このため、本実施形態に係るインクジェットインクは、応用範囲が広く、非常に有用である。例えば、本実施形態に係るインクジェットインクは、ピエゾ素子(圧電セラミックス)をアクチュエータとする、所謂ドロップオンデマンド方式のインクジェット装置で印刷し得るし、他の方式のインクジェット装置でも印刷し得る。
本実施形態では、本実施形態に係るインクジェットインクを、前述の印刷方法を用いて、例えば錠剤の表面に印字、印画してもよい。以下、実施形態に係るインクジェットインクで印刷した印刷画像(印刷部)を備える錠剤の構成について説明する。
本実施形態に係る錠剤は、例えば、医療用錠剤である。ここで、「医療用錠剤」とは、例えば、素錠(裸錠)、糖衣錠、腸溶錠、口腔内崩壊錠等のほか、錠剤の最表面に水溶性表面層が形成されているフィルムコーティング錠等を含むものである。
図2(a)及び(b)は、本実施形態に係る医療用錠剤の第2の構成例を示す平面図と、この平面図をX2−X’2で切断した断面図である。図2(a)及び(b)に示す医療用錠剤はフィルムコーティング錠であり、基剤1を覆うフィルム5の表面に画像9が印刷されている。図2(a)及び(b)に示す画像9も、図1(a)及び(b)に示した画像9と同様、前述したインクジェットインクを使用して、インクジェット印刷法により印刷されたものである。
(1)本実施形態に係るインクジェットインクは、水と、アルコール溶媒と、カーボンと、分散剤とを含むインクジェットインクであって、アルコール溶媒は、イソプロピルアルコール及びノルマルプロピルアルコールの少なくとも一方を含み、アルコール溶媒の濃度は、インクジェットインク全体に対して35質量部以下であり、分散剤は、HLB値が11以上20以下の範囲内であるショ糖脂肪酸エステルを含み、そのショ糖脂肪酸エステルの含有量は、カーボンに対して48質量%以上100質量%以下の範囲内である。
このような構成であれば、カーボンインクジェットインクにおけるアルコール溶媒の添加量を増加させて乾燥性を高めた場合であっても、従来技術と比較して、印刷再開性の低下を低減することができる。
このような構成であれば、インクジェットインクに使用する上で十分な乾燥性を付与することができ、且つ印刷再開性の低下をより低減することができる。
(3)また、本実施形態に係るインクジェットインクに含まれる湿潤剤の含有量は、インクジェットインク全体に対して3質量部以下であってもよい。
このような構成であれば、インクジェットインクに十分な乾燥性を付与することができ、且つ印刷再開性の低下をさらに低減することができる。
このような構成であれば、インクジェットインクに十分な乾燥性を付与することができ、且つ印刷再開性の低下をさらに低減することができる。
(5)また、本実施形態に係るインクジェットインクは、バインダーをさらに含み、そのバインダーは、多糖類を含むものであってもよい。
このような構成であれば、インクジェットインクに十分な乾燥性を付与することができ、且つ印刷再開性の低下をさらに低減することができる。
このような構成であれば、インクジェットインクに十分な乾燥性を付与することができ、且つ印刷再開性の低下をさらに低減することができる。
(7)また、本実施形態に係るインクジェットインクは、錠剤表面への直接印刷、食品への直接印刷、医薬品及び食品に直接触れるパッケージに用いられるものであってもよい。
このような構成であれば、錠剤表面への直接印刷、食品への直接印刷が可能となり、また、医薬品及び食品に直接触れるパッケージに使用可能となる。
このような構成であれば、錠剤の表面に印刷された印刷画像部分に対しても可食性を付与することができる。
(9)また、本実施形態に係る錠剤は、医療用錠剤であってもよい。
このような構成であれば、医療用錠剤の表面に印刷された印刷画像部分に対しても可食性を付与することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は、実施例により何ら限定されるものではない。
(インクジェットインクの製造)
以下、インクジェットインクの調製手順を説明する。
インクジェットインクは、色素、有機溶媒、水、分散剤、その他必要に応じた添加剤の各成分を含んでいる。調製の順序としては、最初に、水と有機溶媒とを混合して混合溶媒を得た。次に、その混合溶媒に、分散剤と色材とを添加した後にその他の添加剤を添加した。最後に、この混合液をペイントシェーカー等の分散機に入れ、規定時間微細化して分散させた。こうして、本実施例に係るインクジェットインクを調製した。以下、具体的に各種成分について説明する。
有機溶媒には、乾燥溶媒として、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールを用いた。
湿潤剤には、プロピレングリコール、グリセリンを用いた。
分散剤には、ショ糖脂肪酸エステルを用いた。
バインダーには、マルトデキストリン、ポリデキストロースを用いた。
上記成分を21種類の異なる処方のインクとして調製した。その組成を表1に示す。
なお、前述の各インクを、それぞれメンブレンフィルターを通過させることによって液中の固体異物を除去した。具体的には、口径5.0μmのメンブレンフィルター(酢酸セルロース膜)を1回透過させ、続いて口径0.8μmのメンブレンフィルター(酢酸セルロース膜)を1回透過させることで精製インクを得た。
実施例1〜14、比較例1〜7の各インクジェットインクを40℃にて14日間放置し、カーボンのメジアン径を計測した。メジアン径の増大は、カーボンの粒子が凝集していることを意味し、分散安定性が低いことを意味する。なお、評価基準は以下の通りである。
○:メジアン径に大きな変化が生じていない
×:明らかに増粒径している
前述の「メジアン径に大きな変化が生じていない」とは、インク調製直後のメジアン径に対し、40℃にて14日間放置後のメジアン径の増加幅が10nm以下であることを指す。また、「明らかに増粒径している」とは、メジアン径の増加幅が10nmを超えることを指す。
実施例1〜14の分散安定性はいずれも「○」であるのに対し、比較例1〜3の分散安定性は「×」であった。
以下の2種類の錠剤1、2に、印刷解像度が主走査方向600dpi、副走査方向(錠剤等の記録媒体の搬送方向)600dpi、トータルノズル数2,656の圧電セラミック駆動のドロップオンデマンド型インクジェットヘッドを用い、1ドロップ12plの印刷ドロップ量にて画像をそれぞれ印刷した。
・錠剤1(フィルムコーティング錠)
錠剤の表面に、ヒドロキシプロピルセルロースやヒドロキシプロピルメチルセルロース等にポリエチレングリコールや酸化チタン顔料等を含有させて被覆層を形成した錠剤種
・錠剤2(難印刷錠)
錠剤の表面に、ポリビニルアルコールにポリエチレングリコールや酸化チタン顔料等を含有させて被覆層を形成した錠剤種
◎:インクの転写がない場合
○:インクの転写がごく僅かであり、目視確認が難しい場合
△:転写されたインクの色は薄いが、容易に目視確認できる場合
×:インクが色濃く転写した場合
実施例1〜14の乾燥性はいずれも「◎」または「○」であるのに対し、比較例4〜5の乾燥性は「×」であった。
インクジェットヘッドには、印刷解像度が主走査方向600dpi、副走査方向(錠剤等の記録媒体の搬送方向)600dpi、トータルノズル数2,656の圧電セラミック駆動のドロップオンデマンド型インクジェットヘッドを用いた。規定時間(30分〜120分間)フラッシングなく上記インクを上記インクジェットヘッド内にて放置した後、上記インクジェットヘッドを用いて、1ドロップ6plの印刷ドロップ量にてテストパターンを印刷した。そして、テストパターンの印刷状況から、全ノズルから不吐出量なく吐出できているか否かを確認した。なお、表1では、印刷再開性の評価結果として、インクの吐出が可能な放置時間を測定した。評価基準は以下の通りである。
◎:60分間以上120分間未満
○:30分間以上60分間未満
×:30分間未満
実施例1〜14の印刷再開性はいずれも「◎」または「○」であるのに対し、比較例6〜7の印刷再開性は「×」であった。
5 フィルム
9 画像
Claims (10)
- 水と、アルコール溶媒と、カーボンと、分散剤とを含むインクジェットインクであって、
前記インクジェットインクは、湿潤剤をさらに含み、
前記アルコール溶媒は、イソプロピルアルコール及びノルマルプロピルアルコールの少なくとも一方のみを含み、
前記アルコール溶媒の含有量は、前記インクジェットインク全体に対して35質量部以下であり、
前記分散剤は、HLB値が11以上20以下の範囲内であるショ糖脂肪酸エステルを含み、
前記ショ糖脂肪酸エステルの含有量は、前記カーボンに対して48質量%以上100質量%以下の範囲内であり、
前記湿潤剤は、プロピレングリコール及びグリセリンのいずれか一方のみを含むことを特徴とするインクジェットインク。 - 前記湿潤剤の含有量は、前記インクジェットインク全体に対して0.001質量部以上20質量部以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットインク。
- 前記湿潤剤の含有量は、前記インクジェットインク全体に対して3質量部以下であることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットインク。
- バインダーをさらに含み、
前記バインダーは、多糖類を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のインクジェットインク。 - 前記多糖類の重量平均分子量は、1,000以上10,000未満の範囲内であることを特徴とする請求項4に記載のインクジェットインク。
- 錠剤表面への直接印刷、食品への直接印刷、医薬品及び食品に直接触れるパッケージに用いられることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
- バインダーをさらに含み、
前記バインダーは、マルトデキストリン、エリスリトール、デキストラン、ポリデキストロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、またはアルギン酸ナトリウムを含むことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットインク。 - バインダーをさらに含み、
前記バインダーは、マルトデキストリン及びポリデキストロースのいずれか一方のみを含むことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットインク。 - 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のインクジェットインクで印刷した印刷部を備える錠剤。
- 医療用錠剤であることを特徴とする請求項9に記載の錠剤。
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