JP2021116299A - 吸血害虫忌避組成物、及び当該組成物を用いた吸血害虫忌避方法 - Google Patents

吸血害虫忌避組成物、及び当該組成物を用いた吸血害虫忌避方法 Download PDF

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Tomohiro Tamaru
友裕 田丸
宏文 下方
Hirofumi Shimokata
宏文 下方
幸治 中山
Koji Nakayama
幸治 中山
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Abstract

【課題】吸血害虫に対する忌避機能を果たすとともに衣料に付着する悪臭を持続的に消臭可能な吸血害虫忌避組成物を提供する。【解決手段】害虫忌避成分と香料成分とを含有する吸血害虫忌避組成物であって、害虫忌避成分は、3−(N−ブチルアセトアミド)プロピオン酸エチル、イカリジン、p−メンタン−3,8−ジオール、及びN,N−ジエチルトルアミドからなる群から選択される少なくとも一つであり、香料成分は、ベンゼン環、安息香酸エステル構造、又はサリチル酸エステル構造に由来する電子共役部以外の電子共役部を有さず、炭素数が6〜18であり、分子量が98〜270であり、炭素原子、水素原子、及び酸素原子を有し、硫黄原子、窒素原子、及びハロゲン原子を有さない化合物である。【選択図】なし

Description

本発明は、害虫忌避成分と香料成分とを含有する吸血害虫忌避組成物、及び当該組成物を用いた吸血害虫忌避方法に関する。
従来、吸血性の蚊、アブ、ブユ等の吸血害虫による吸血行動から温血動物(ヒト、家畜、ペット等)の身を守ることを目的に様々な吸血害虫防除製品が開発されている。例えば、常温揮散性を有するピレスロイド系忌避成分を有効成分とする吸血害虫防除製品が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
特許文献1の吸血害虫防除製品は、テトラフルオロベンジル骨格を有するピレスロイド系忌避成分を皮膚または皮膚の被覆材に施用し、吸血性の蚊等に対して優れた忌避効果を発揮することが記載されている。
特開2006−188503号公報
衣料には、着用中に着用する人に由来する汗臭、ミドル脂臭、加齢臭等の悪臭が付着することがある。これらの悪臭は周囲に不快感をもたらし、時としてスメルハラスメント等の問題を引き起こす場合がある。また、蚊等の吸血害虫は肌や衣料に付着した汗臭等の悪臭に引き寄せられる傾向がある。そのため、外出中に肌や衣料に付着した悪臭を持続的に消臭できることは、吸血害虫に接触する機会を減らすことにもつながり、さらに、周囲への不快感を減らすことができるため、望まれる。
特許文献1に記載の吸血害虫防除製品は、高い害虫忌避効果を示す成分を有効成分にしていることから、皮膚や皮膚の被覆材に施用し、優れた吸血害虫忌避効果を示すものである。しかし、吸血害虫忌避の際の、肌や衣料の消臭効果については十分な検討がされておらず、依然として検討の余地が残されている。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、吸血害虫忌避機能を果たすとともに肌や衣料に付着する悪臭を持続的に消臭可能な吸血害虫忌避組成物を提供することを目的とする。さらに、一回の処理で肌や衣料に害虫忌避効果と持続的な消臭効果とを同時に付与可能な吸血害虫忌避方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明に係る吸血害虫忌避組成物の特徴構成は、
害虫忌避成分と香料成分とを含有する吸血害虫忌避組成物であって、
前記害虫忌避成分は、3−(N−ブチルアセトアミド)プロピオン酸エチル、イカリジン、p−メンタン−3,8−ジオール、及びN,N−ジエチルトルアミドからなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記香料成分は、ベンゼン環、安息香酸エステル構造、又はサリチル酸エステル構造に由来する電子共役部以外の電子共役部を有さず、炭素数が6〜18であり、分子量が98〜270であり、炭素原子、水素原子、及び酸素原子を有し、硫黄原子、窒素原子、及びハロゲン原子を有さない化合物であることである。
本構成の吸血害虫忌避組成物は、本発明者らが、様々な吸血害虫忌避組成物を調製して種々試験を繰り返す中で、上記特定の害虫忌避成分と香料成分を含有する吸血害虫忌避組成物が吸血害虫に対する忌避機能を果たすとともに、肌や衣料に付着する悪臭を持続的に消臭可能であることを新たに見出したことにより、完成するに至ったものである。本構成の吸血害虫忌避組成物によれば、上記の特定の害虫忌避成分と香料成分を含有する吸血害虫忌避組成物は、吸血害虫に対する忌避機能を果たすとともに、害虫忌避成分と香料成分との相乗効果により、香料成分による消臭機能を長期に亘って持続させることができる。そのため、本発明の吸血害虫忌避組成物を外出前に肌や衣料に処理しておくことで、外出中の吸血害虫の忌避に加えて、外出中に香料成分による消臭機能が持続し、肌や衣料に付着した悪臭により不快感が生じることを防ぐことができる。
本発明に係る吸血害虫忌避組成物において、
前記香料成分は、シス−3−ヘキセノール、ジヒドロミルセノール、エチルリナロール、リナロール、ゲラニオール、テトラヒドロゲラニオール、テルピネオール、フェニルエチルアルコール、ヘリオナール、リリアール、安息香酸ベンジル、サリチル酸ベンジル、シス−3−ヘキセニルサリチレート、ジヒドロジャスモン酸メチル、リナリルアセテート、ラズベリーケトン、ガラクソリド、エチレンブラシレート、シクロペンタデカノリド、メントン、リモネン、シトロネロール、シトロネラール、1,8−シネオール、α−テルピネオール、ボルネオール、カンファー、パチュリアルコール、β−ヒマカレン、ベンジルアセテート、ベンジルアルコール、ゲラニルフォーメート、オイゲノール、ビサボロールオキシドA、及びα−ピネンからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
本構成の吸血害虫忌避組成物によれば、上記の香料成分を含有することにより、害虫忌避成分と香料成分との相乗効果が大きくなり、消臭機能の持続性を向上させることができる。
本発明に係る吸血害虫忌避組成物において、
前記香料成分の含有量が0.1〜2.0w/v%であることが好ましい。
本構成の吸血害虫忌避組成物によれば、香料成分の含有量が適切な範囲にあるため、肌や衣料に付着した悪臭を芳香によってマスクして、十分な消臭性を得ることができる。
本発明に係る吸血害虫忌避組成物において、
前記香料成分(a)と前記害虫忌避成分(b)との配合比(a/b)が、重量比として、0.01〜1.5であることが好ましい。
本構成の吸血害虫忌避組成物によれば、配合比が適切な範囲にあるため、害虫忌避成分による吸血害虫に対する忌避機能を十分に発揮しつつ、害虫忌避成分と香料成分との相乗効果を十分に発揮することができ、香料成分による消臭機能を長期に亘って持続させることができる。
上記課題を解決するための本発明に係る吸血害虫忌避方法の特徴構成は、
前記の何れか一つの吸血害虫忌避組成物を用いた吸血害虫忌避方法であって、
処理対象の肌又は衣料に前記吸血害虫忌避組成物を噴霧する噴霧工程と、
前記肌又は衣料に対して前記吸血害虫忌避組成物を噴霧する位置を変更する変更工程と、
を包含することにある。
本構成の吸血害虫忌避方法によれば、処理対象の肌又は衣料に吸血害虫忌避組成物を噴霧し、さらに、当該肌又は衣料に対して吸血害虫忌避組成物を噴霧する位置を変更することで、肌又は衣料全体に害虫忌避効果及び消臭機能を付与することができる。特定の害虫忌避成分及び香料成分を含む吸血害虫忌避組成物は、害虫忌避成分が吸血害虫に対する忌避機能を果たすとともに、害虫忌避成分と香料成分との相乗効果により、香料成分による消臭機能を長期に亘って持続させることができる。そのため、外出前に本発明の吸血害虫忌避方法に従って、肌や衣料に対して本発明の吸血害虫忌避組成物を一回噴霧処理するだけで、外出中の吸血害虫の忌避に加えて、外出中に香料成分による消臭機能が持続し、肌や衣料に付着した悪臭により不快感が生じることを防ぐことができる。
以下、本発明の吸血害虫忌避組成物、及び吸血害虫忌避方法について説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態に記載される構成に限定されることを意図しない。
<吸血害虫忌避組成物>
本発明の吸血害虫忌避組成物は、香料成分と、害虫忌避成分とを含有する。
本発明の吸血害虫忌避組成物の主成分の一つである害虫忌避成分としては、3−(N−ブチルアセトアミド)プロピオン酸エチル(以下、「IR3535」と表記する)、イカリジン(別名、「1−メチルプロピル 2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペリジンカルボキシレート」)、p−メンタン−3,8−ジオール(以下、「PMD」と表記する)、及びN,N−ジエチルトルアミド(以下、「ディート」と表記する)が使用される。これらは、単独で使用可能であるが、二種以上の混合物の形態で使用しても構わない。IR3535、イカリジン、PMD、及びディートは、揮散性を有し、吸血害虫(但し、シラミを除く。)、特に蚊成虫、ブユ(ブヨ)、アブ、ヌカカ、マダニ、ツメダニ、コナダニ、又はネコノミに対して高い忌避効果を有する。また、ユスリカ、チョウバエやアリ等の不快害虫に対しても忌避効果を有する。このように、IR3535、イカリジン、PMD、及びディートは、従来は害虫忌避剤として使用されていたが、本発明者らが、IR3535、イカリジン、PMD、及びディートを使用して様々な吸血害虫忌避組成物を調製する中で、IR3535、イカリジン、PMD、及びディートが、前述の吸血害虫忌避効果に加えて、後述する特定の香料成分の消臭機能を持続させる持続機能を有することを新たに見出した。本発明の吸血害虫忌避組成物は、噴霧処理等により肌や衣料へ付着させることで、肌や使用中の衣料から害虫忌避成分を揮散させて吸血害虫の接近又は接触を防止し、吸血害虫による吸血を予防しつつ、肌や衣料に付着した悪臭の消臭を長期に亘って持続させることができる。着用中の衣料では、使用者の体温によって害虫忌避成分の揮散が促進されるため、吸血害虫の接近又は接触をより効果的に防止することができる。また、蚊などの吸血害虫を引き寄せる悪臭を消臭することができるので、相乗的な忌避効果を発揮することができる。IR3535、イカリジン、PMD、及びディートは人体に対する安全性が高いため、腕や足等の肌に直接噴霧処理することも可能である。また、IR3535、イカリジン、及びPMDは、繊維製品に対してシミや変色等の影響を生じにくく、さらに、ほとんど無臭である。そのため、本発明の吸血害虫忌避組成物は、衣料へのダメージや、害虫忌避成分の臭いを気にすることなく、着衣に使用することができる。吸血害虫忌避組成物中の害虫忌避成分の含有量は、0.4〜30.0w/v%であることが好ましい。このような範囲であれば、吸血害虫忌避組成物を噴霧処理等により肌や衣料に付着させることで、吸血害虫に対する忌避効果を発揮しつつ、後述する特定の香料成分との相乗効果を奏して、消臭機能の持続性を向上することができる。
本発明の吸血害虫忌避組成物の主成分の一つである香料成分としては、ベンゼン環、安息香酸エステル構造、又はサリチル酸エステル構造に由来する電子共役部以外の電子共役部を有さず、炭素数が6〜18であり、分子量が98〜270であり、炭素原子、水素原子、及び酸素原子を有し、硫黄原子、窒素原子、及びハロゲン原子を有さない化合物が使用される。このような化合物は、肌や衣料に付着した悪臭(汗臭、ミドル脂臭、加齢臭等)を芳香によってマスクする優れた消臭機能を有するとともに、本発明において害虫忌避成分として使用されるIR3535、イカリジン、PMD、及びディートとの相乗効果により、その消臭機能を長時間に亘って持続させることができる。このような化合物としては、下記式(1):
Figure 2021116299
で示されるシス−3−ヘキセノール(以下、「化合物A」と称する。)、下記式(2):
Figure 2021116299
で示されるジヒドロミルセノール(以下、「化合物B」と称する。)、下記式(3):
Figure 2021116299
で示されるエチルリナロール(以下、「化合物C」と称する。)、下記式(4):
Figure 2021116299
で示されるリナロール(以下、「化合物D」と称する。)、下記式(5):
Figure 2021116299
で示されるゲラニオール(以下、「化合物E」と称する。)、下記式(6):
Figure 2021116299
で示されるテトラヒドロゲラニオール(以下、「化合物F」と称する。)、下記式(7):
Figure 2021116299
で示されるテルピネオール(以下、「化合物G」と称する。)、下記式(8):
Figure 2021116299
で示されるフェニルエチルアルコール(以下、「化合物H」と称する。)、下記式(9):
Figure 2021116299
で示されるヘリオナール(以下、「化合物I」と称する。)、下記式(10):
Figure 2021116299
で示されるリリアール(以下、「化合物J」と称する。)、下記式(11):
Figure 2021116299
で示される安息香酸ベンジル(以下、「化合物K」と称する。)、下記式(12):
Figure 2021116299
で示されるサリチル酸ベンジル(以下、「化合物L」と称する。)、下記式(13):
Figure 2021116299
で示されるシス−3−ヘキセニルサリチレート(以下、「化合物M」と称する。)、下記式(14):
Figure 2021116299
で示されるジヒドロジャスモン酸メチル(以下、「化合物N」と称する。)、下記式(15):
Figure 2021116299
で示されるリナリルアセテート(以下、「化合物O」と称する。)、下記式(16):
Figure 2021116299
で示されるラズベリーケトン(以下、「化合物P」と称する。)、下記式(17):
Figure 2021116299
で示されるガラクソリド(以下、「化合物Q」と称する。)、下記式(18):
Figure 2021116299
で示されるエチレンブラシレート(以下、「化合物R」と称する。)、下記式(19):
Figure 2021116299
で示されるシクロペンタデカノリド(以下、「化合物S」と称する。)、下記式(20):
Figure 2021116299
で示されるメントン(以下、「化合物T」と称する。)、下記式(21):
Figure 2021116299
で示されるリモネン(以下、「化合物U」と称する。)、下記式(22):
Figure 2021116299
で示されるシトロネロール(以下、「化合物V」と称する。)、下記式(23):
Figure 2021116299
で示されるシトロネラール(以下、「化合物W」と称する。)、下記式(24):
Figure 2021116299
で示される1,8−シネオール(以下、「化合物X」と称する。)、下記式(25):
Figure 2021116299
で示されるα−テルピネオール(以下、「化合物Y」と称する。)、下記式(26):
Figure 2021116299
で示されるボルネオール(以下、「化合物Z」と称する。)、下記式(27):
Figure 2021116299
で示されるカンファー(以下、「化合物a」と称する。)、下記式(28):
Figure 2021116299
で示されるパチュリアルコール(以下、「化合物b」と称する。)、下記式(29):
Figure 2021116299
で示されるβ−ヒマカレン(以下、「化合物c」と称する。)、下記式(30):
Figure 2021116299
で示されるベンジルアセテート(以下、「化合物d」と称する。)、下記式(31):
Figure 2021116299
で示されるベンジルアルコール(以下、「化合物e」と称する。)、下記式(32):
Figure 2021116299
で示されるゲラニルフォーメート(以下、「化合物f」と称する。)、下記式(33):
Figure 2021116299
で示されるオイゲノール(以下、「化合物g」と称する。)、下記式(34):
Figure 2021116299
で示されるビサボロールオキシドA(以下、「化合物h」と称する。)、下記式(35):
Figure 2021116299
で示されるα−ピネン(以下、「化合物i」と称する。)等が挙げられる。
上記の化合物A〜Z、a〜iは、単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。また、これらの香料成分を含有するハッカ油、ラベンダー油、ローズ油、ゼラニウム油、ユーカリ油、レモン油、ローズマリー油、ベルガモット油、シトロネラ油、オレンジ油、ラバンジン油、パチュリ油、シダーウッド油、ジャスミン油、プチグレン油、レモンユーカリ油、グレープフルーツ油、ライム油、パインオイル、カミツレ油、チョウジ油、及びテレビン油等の精油として配合しても良い。なお、本発明においては、精油として配合されたとしても、上記の香料成分が精油中に1.0質量%以上含まれている場合、個々の香料成分として配合されたものと定義する。香料成分の含有量は、0.1〜2.0w/v%が好ましい。香料成分の含有量がこのような範囲であれば、肌や衣料に付着した悪臭をマスクして、十分な消臭性を得ることができる。
本発明の吸血害虫忌避組成物において、上記香料成分がメントン、リモネン、テルピネオール、リナロール、又はリナリルアセテートを含有する場合は、吸血害虫忌避機能においても相乗効果が見られるため好ましい。なかでもリナロール、及びリナリルアセテートを含有することがより好ましく、リナロールとリナリルアセテートとを含有することで、害虫忌避成分と香料成分との消臭機能の相乗効果がより大きくなり、香料成分による消臭機能が持続性をさらに向上させることができる。また、リナロールとリナリルアセテートとの配合重量比は、0.5〜2.0に調整するのが好ましい。
本発明の吸血害虫忌避組成物において、香料成分(a)と害虫忌避成分(b)との配合比(a/b)は、重量比として、0.01〜1.5に調整することが好ましい。配合比(a/b)がこのような範囲であれば、害虫忌避成分と香料成分との相乗効果が大きくなり、香料成分による消臭機能が長期に亘って持続する。
本発明の吸血害虫忌避組成物は、上記成分に加え、害虫忌避成分の安定化剤、カビ類や菌類等を対象とした防カビ剤、抗菌剤、殺菌剤、帯電防止剤、消泡剤、清涼剤等を適宜配合することもできる。例えば、害虫忌避成分としてIR3535を使用する場合、トリエタノールアミンを配合することができる。トリエタノールアミンを含有することで、酸性条件下で分解し易いIR3535の安定性を向上させ、長期間に亘って吸血害虫忌避組成物を保存した場合にもIR3535の含有量が過度に減少することを防止することができる。吸血害虫忌避組成物中のトリエタノールアミンの含有量は、0.05〜0.2w/v%であることが好ましい。このような範囲であれば、IR3535の安定性を十分に向上させることができるため、吸血害虫忌避組成物は、長期保存性に優れた使い勝手のよいものとなる。害虫忌避成分としてIR3535を使用する場合、トリエタノールアミンに加えてメントールを併用することが好ましい。吸血害虫忌避組成物中のメントールの含有量は、0.1〜1.5w/v%であることが好ましい。このような範囲であれば、トリエタノールアミンとメントールとの相乗効果により、IR3535の安定性をより向上させることができ、また、清涼感を付与することもできる。一方、害虫忌避成分としてイカリジン、PMD又はディートを使用する場合、メントールを配合することができる。吸血害虫忌避組成物中のメントールの含有量は、0.1〜1.5w/v%であることが好ましい。このような範囲であれば、メントールの安定性向上効果により、イカリジン、PMD又はディートの安定性をより向上させることができ、また、清涼感を付与することもできる。なお、メントールは、従来は香料として使用されていたが、本発明者らが、様々な吸血害虫忌避組成物を調製したところ、メントールの含有量が上記の範囲である場合、メントールは肌や衣料に付着した悪臭を消臭する消臭機能を示さなかった。また、消臭機能を示す程度にメントールの含有量を上記の範囲より大きくした場合にも、IR3535、イカリジン、PMD及びディートによって消臭機能が持続することがなかった。このため、本発明の香料成分としては、メントールを含まない。防カビ剤、抗菌剤、及び殺菌剤としては、ヒノキチオール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(4−チアゾリル)ベンツイミダゾール、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、トリホリン、3−メチル−4−イソプロピルフェノール、オルト−フェニルフェノール等が挙げられる。
本発明の吸血害虫忌避組成物は、上掲の各成分を適切な重量比で配合し、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、ブタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール系溶剤、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、フェノキシエタノール等のグリコールエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、ノルマルヘキサン、n−パラフィン、イソパラフィン等の炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸エチル等のエステル系溶剤、水等を添加して各成分の濃度が適切となるように調整される。なかでも、水、及びアルコール類、あるいは、水、及びグリコールエーテル類が添加されることが好ましい。アルコール類としては、炭素数が2〜3の低級アルコールが好ましく、エタノールが特に好適である。グリコールエーテル類としては、グリコールモノエーテルが好ましく、フェノキシエタノールが特に好適である。
<製品形態>
本発明の吸血害虫忌避組成物の製品形態は、スプレー製品、ジェル製品・塗布製品、パウダー製品、シート製品などが挙げられる。以下、各製品形態について説明する。
<吸血害虫防除用スプレー製品>
本発明の吸血害虫忌避組成物の好ましい一製品形態は、スプレー製品である。例えば、スプレー容器に、本発明の吸血害虫忌避組成物と、必要に応じて噴射剤とを封入することで、吸血害虫防除用スプレー製品が構成される。スプレー容器としては、プッシュダウン式スプレーもしくはトリガー式スプレーヤーを備えるものが好ましい。これにより、スプレーしたときに吸血害虫忌避組成物が拡散し、処理対象の肌や衣料への吸血害虫忌避組成物の付着量が略均一となる。また、スプレー回数に応じて処理対象の肌や衣料に正確な量の吸血害虫忌避組成物を付与することができる。
<吸血害虫防除用ジェル製品>
本発明の吸血害虫忌避組成物の好ましい一製品形態は、ジェル製品である。例えば、ジェル容器に、吸血害虫忌避組成物と、ゲル基剤と、ゲル化剤とを封入することで、吸血害虫防除用ジェル製品が構成される。ゲル基剤としては、カルボキシビニルポリマーや、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、アクリル酸共重合体、アクリル酸/メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド共重合体等のアクリル酸系高分子化合物、アルギン酸及びその塩類等の多糖類等が挙げられ、特に、カルボキシビニルポリマーが好ましい。ゲル化剤としては、トリエタノールアミン、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン等のアミン類、水酸化ナトリウム、アミノメチルプロパノール等が挙げられる。
<吸血害虫防除用塗布製品>
本発明の吸血害虫忌避組成物の好ましい一製品形態は、塗布製品である。例えば、ドロップポンプ容器に、本発明の吸血害虫忌避組成物を封入することで、吸血害虫防除用塗布製品が構成される。塗布製品としては、例えば、クリーム、液剤、乳剤、水溶剤、マイクロエマルジョン等が挙げられる。
<吸血害虫防除用パウダー製品>
本発明の吸血害虫忌避組成物の好ましい一製品形態は、パウダー製品である。例えば、パウダー容器に、吸血害虫忌避組成物と、水分保持剤と、油分吸収剤とを封入することで吸血害虫防除用パウダー製品が構成される。水分保持剤としては、タルク、カオリン、ベントナイト等が挙げられ、特に、タルクが好ましい。油分吸収剤としては、無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、疎水性シリカ、ケイソウ土等のケイ酸化合物が挙げられ、特に、油分吸収効果が高い無水ケイ酸が好ましい。
<吸血害虫防除用シート製品>
本発明の吸血害虫忌避組成物の好ましい一製品形態は、シート製品である。例えば、シート状基材に、本発明の吸血害虫忌避組成物を含侵させることで、吸血害虫防除用シート製品が構成される。吸血害虫忌避組成物をシート状基材に含浸させる方法は、例えば、スプレー、エアーガン等を用いて吸血害虫忌避組成物をシート状基材に噴霧して含浸させる方法や、スリット型のノズル等を用いて吸血害虫忌避組成物を直接シート状基材に塗布して含浸させる方法、また、シート状基材を包装容器に収容した後に吸血害虫忌避組成物を含浸させる方法などがある。シート状基材としては、天然繊維、合成繊維並びにこれらを混紡した不織布及び織布の何れについても使用することができる。具体的には、例えば、キュプラ、レーヨン、アセテート、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、コットン、並びにこれらを混紡したものの不織布及び織布、さらに、湿式及び乾式パルプシート、熱可塑性樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等)で強化したパルプシート等が挙げられる。
<衣料消臭方法>
本発明の吸血害虫忌避組成物を、特に衣料に噴霧処理することで、例えば、上述の吸血害虫防除用スプレー製品を用いて衣料消臭方法を実施することができる。具体的には、使用者が吸血害虫防除用スプレー製品のスプレーヘッドを押下して衣類や帽子等の衣料に向けて吸血害虫忌避組成物を噴霧することや、吸血害虫防除用スプレー製品のトリガーを把持し、衣類や帽子等の衣料に向けて吸血害虫忌避組成物を噴霧すること等が挙げられる。これらにより、衣料の表面に吸血害虫忌避組成物が付着する。本発明の吸血害虫忌避組成物では人体に対する安全性が高いIR3535、イカリジン、PMD、及びディートを害虫忌避成分として用いるため、着用した状態で衣料に噴霧処理をすることも可能である吸血害虫忌避組成物の噴霧処理を実施すると、吸血害虫に対する優れた忌避効果、及び持続的な消臭機能が付与される。その結果、吸血害虫の接近又は接触を防止し、吸血害虫による吸血を予防しつつ、衣料に付着した悪臭を消臭することができる。また、腕や足の肌に直接噴霧処理を行うことも可能である。
<吸血害虫忌避方法>
本発明の吸血害虫忌避方法は、処理対象の肌や衣料に害虫忌避成分と香料成分とを含有する吸血害虫忌避組成物を噴霧する噴霧工程と、肌や衣料において十分な害虫忌避効果及び消臭効果が持続するように、当該肌や衣料に対して吸血害虫忌避組成物を噴霧する位置を変更する変更工程とを実行するものである。本発明の吸血害虫忌避消臭方法では、肌や衣料全体に吸血害虫忌避組成物が付着するように、使用者は吸血害虫防除用スプレー製品を適切に動かしながら噴霧すればよい。例えば、衣料のうち特に臭いが気になる箇所(例えば、脇下、首回り、脚周辺部など)については、念入りに噴霧処理を行うことで、衣料に効果的な害虫忌避効果と持続的な消臭効果とを同時に付与することができる。このように、本発明の吸血害虫忌避消臭方法を実施すれば、一回の処理で肌や衣料に害虫忌避効果と持続的な消臭効果とを同時に付与することができる。そして、本発明の吸血害虫忌避方法によって処理された肌や衣料は、後述する害虫忌避成分と香料成分との相乗効果により、香料成分による消臭機能が長期に亘って持続するため、例えば、一日中外出するような場合であっても、吸血害虫が寄り付かず、かつ臭いも気にならずに長時間快適に活動することができる。
本発明に係る吸血害虫忌避組成物は、害虫忌避成分に特定の香料成分を組み合わせることによって、害虫忌避成分と香料成分との相乗効果により、香料成分による消臭機能を長期に亘って持続させることができる。消臭機能の持続期間は、害虫忌避成分と香料成分との組み合わせ、両成分の配合割合、吸血害虫忌避組成物の使用条件等により異なるが、おおよそ半日ないし一日、消臭機能を持続させることは十分に可能である。このため、この吸血害虫忌避組成物を用いて実行される本発明の吸血害虫忌避方法に従って、外出前に噴霧処理を実施すれば、例えば、12時間程度の外出の間は香料成分による消臭機能が持続し、肌や衣料に付着した悪臭により不快感が生じることを防ぐことができる。
本発明の吸血害虫忌避組成物について、消臭機能の持続性を確認するため、本発明の特徴構成を備えた吸血害虫忌避組成物(実施例1〜60)を準備し、消臭機能確認試験を実施した。また、比較のため、本発明の特徴構成を備えていない吸血害虫忌避組成物(比較例1〜61)を準備し、同様の消臭機能確認試験を実施した。なお、実施例1〜60、及び比較例1〜61では重量の単位として「g」が示されているが、任意の倍率でスケールアップが可能である。すなわち、単位「g」は、「重量部」と読み替えることができる。
<実施例1〜21>
害虫忌避成分としてIR3535を使用する下記の処方1により、吸血害虫忌避組成物(実施例1〜21)を調製した。実施例1〜19の吸血害虫忌避組成物においては、化合物A〜Sを香料成分として使用した。実施例20の吸血害虫忌避組成物においては、化合物B、H、L、N、及びQを等量ずつ混合した調合香料(以下、「調合香料1」と称する。)を香料成分として使用した。実施例21の吸血害虫忌避組成物においては、化合物L、N、Q、β−ダマスコン、及びカシュメランを等量ずつ混合した調合香料(以下、「調合香料2」と称する。)を香料成分として使用した。
処方1:
香料成分を0.5g(0.5w/v%)、IR3535を3.5g(3.5w/v%)、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)を0.1g(0.1w/v%)、メントールを1.0g(1.0w/v%)、トリエタノールアミン(TEA)を0.05g(0.05w/v%)、精製水を40g(40w/v%)、並びに、無水エタノールを残分(バランス)混合し、全量100mLに調製した。処方1において、香料成分(a)と害虫忌避成分(b)との配合比(a/b)は、重量比として、0.14である。
<実施例22〜27>
害虫忌避成分としてIR3535を使用する下記の処方2により、吸血害虫忌避組成物(実施例22〜27)を調製した。実施例22〜27の吸血害虫忌避組成物においては、化合物B、H、L、N、Q、及び調合香料1を香料成分として使用した。
処方2:
香料成分を0.5g(0.5w/v%)、IR3535を0.5g(0.5w/v%)、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)を0.1g(0.1w/v%)、メントールを1.0g(1.0w/v%)、トリエタノールアミン(TEA)を0.05g(0.05w/v%)、精製水を40g(40w/v%)、並びに、無水エタノールを残分(バランス)混合し、全量100mLに調製した。処方2において、香料成分(a)と害虫忌避成分(b)との配合比(a/b)は、重量比として、1.00である。
<実施例28〜48>
害虫忌避成分としてイカリジンを使用する下記の処方3により、吸血害虫忌避組成物(実施例28〜48)を調製した。実施例28〜48の吸血害虫忌避組成物においては、化合物A〜S、調合香料1、及び調合香料2を香料成分として使用した。
処方3:
香料成分を0.5g(0.5w/v%)、イカリジンを3.5g(3.5w/v%)、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)を0.1g(0.1w/v%)、メントールを1.0g(1.0w/v%)、トリエタノールアミン(TEA)を0.05g(0.05w/v%)、精製水を40g(40w/v%)、並びに、無水エタノールを残分(バランス)混合し、全量100mLに調製した。処方3において、香料成分(a)と害虫忌避成分(b)との配合比(a/b)は、重量比として、0.14である。
<実施例49〜54>
害虫忌避成分としてイカリジンを使用する下記の処方4により、吸血害虫忌避組成物(実施例49〜54)を調製した。実施例49〜54の吸血害虫忌避組成物においては、化合物B、H、L、N、Q、及び調合香料1を香料成分として使用した。
処方4:
香料成分を0.5g(0.5w/v%)、イカリジンを0.5g(0.5w/v%)、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)を0.1g(0.1w/v%)、メントールを1.0g(1.0w/v%)、トリエタノールアミン(TEA)を0.05g(0.05w/v%)、精製水を40g(40w/v%)、並びに、無水エタノールを残分(バランス)混合し、全量100mLに調製した。処方4において、香料成分(a)と害虫忌避成分(b)との配合比(a/b)は、重量比として、1.00である。
<実施例55>
害虫忌避成分としてIR3535を使用する前述の処方1により、吸血害虫忌避組成物(実施例55)を調製した。実施例55の吸血害虫忌避組成物においては、化合物D、及びOを等量ずつ混合した調合香料(以下、「調合香料3」と称する。)を香料成分として使用した。
<実施例56>
害虫忌避成分としてイカリジンを使用する前述の処方3により、吸血害虫忌避組成物(実施例56)を調製した。実施例56の吸血害虫忌避組成物においては、調合香料3を香料成分として使用した。
<実施例57〜59>
害虫忌避成分としてイカリジンを使用する前述の処方3により、吸血害虫忌避組成物(実施例57〜59)を調製した。実施例57〜59の吸血害虫忌避組成物においては、化合物V、化合物X、及び化合物Yを香料成分として使用した。
<実施例60>
害虫忌避成分としてイカリジンを使用する下記の処方5により、吸血害虫忌避組成物(実施例60)を調製した。実施例60の吸血害虫忌避組成物においては、シトロネラ油を配合することにより、化合物E、化合物V、及び化合物Wを香料成分として使用した。
処方5:
シトロネラ油(化合物E(20重量%)、化合物V(10重量%)、化合物W(20重量%)、及びその他成分を含有)を1.0g(1.0w/v%)、イカリジンを3.5g(3.5w/v%)、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)を0.1g(0.1w/v%)、メントールを1.0g(1.0w/v%)、トリエタノールアミン(TEA)を0.05g(0.05w/v%)、精製水を40g(40w/v%)、並びに、無水エタノールを残分(バランス)混合し、全量100mLに調製した。シトロネラ油1.0g中に含有される香料成分は、化合物Eが0.2g、化合物Vが0.1g、化合物Wが0.2gであり、処方5において、香料成分(a)と害虫忌避成分(b)との配合比(a/b)は、重量比として、0.14である。
<比較例1〜21>
害虫忌避成分を配合しない下記の処方6により、吸血害虫忌避組成物(比較例1〜21)を調製した。比較例1〜21の吸血害虫忌避組成物においては、化合物A〜S、調合香料1、及び調合香料2を香料成分として使用した。
処方6:
香料成分を0.5g(0.5w/v%)、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)を0.1g(0.1w/v%)、メントールを1.0g(1.0w/v%)、トリエタノールアミン(TEA)を0.05g(0.05w/v%)、精製水を40g(40w/v%)、並びに、無水エタノールを残分(バランス)混合し、全量100mLに調製した。
<比較例22>
害虫忌避成分としてIR3535を使用する下記の処方7により、吸血害虫忌避組成物(比較例22)を調製した。比較例22の吸血害虫忌避組成物においては、香料成分を配合していない。
処方7:
IR3535を3.5g(3.5w/v%)、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)を0.1g(0.1w/v%)、メントールを1.0g(1.0w/v%)、トリエタノールアミン(TEA)を0.05g(0.05w/v%)、精製水を40g(40w/v%)、並びに、無水エタノールを残分(バランス)混合し、全量100mLに調製した。処方7において、香料成分(a)と害虫忌避成分(b)との配合比(a/b)は、重量比として、0.00である。
<比較例23>
害虫忌避成分としてイカリジンを使用する下記の処方8により、吸血害虫忌避組成物(比較例23)を調製した。比較例23の吸血害虫忌避組成物においては、香料成分を配合していない。
処方8:
イカリジンを3.5g(3.5w/v%)、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)を0.1g(0.1w/v%)、メントールを1.0g(1.0w/v%)、トリエタノールアミン(TEA)を0.05g(0.05w/v%)、精製水を40g(40w/v%)、並びに、無水エタノールを残分(バランス)混合し、全量100mLに調製した。処方8において、香料成分(a)と害虫忌避成分(b)との配合比(a/b)は、重量比として、0.00である。
<比較例24〜34>
害虫忌避成分としてIR3535を使用する前述の処方1により、吸血害虫忌避組成物(比較例24〜34)を調製した。比較例24〜34の吸血害虫忌避組成物においては、ベンゼン環、安息香酸エステル構造、又はサリチル酸エステル構造に由来する電子共役部以外の電子共役部を有する化合物を香料成分として使用した。具体的には、比較例24の吸血害虫忌避組成物においては、下記式(36):
Figure 2021116299
で示されるクマリン(以下、「化合物C1」と称する。)を香料成分として使用した。
比較例25の吸血害虫忌避組成物においては、下記式(37):
Figure 2021116299
で示されるβ-ヨノン(以下、「化合物C2」と称する。)を香料成分として使用した。
比較例26の吸血害虫忌避組成物においては、下記式(38):
Figure 2021116299
で示されるβ-ダマスコン(以下、「化合物C3」と称する。)を香料成分として使用した。
比較例27の吸血害虫忌避組成物においては、下記式(39):
Figure 2021116299
で示されるダマセノン(以下、「化合物C4」と称する。)を香料成分として使用した。
比較例28の吸血害虫忌避組成物においては、下記式(40):
Figure 2021116299
で示されるシトラール(以下、「化合物C5」と称する。)を香料成分として使用した。
比較例29の吸血害虫忌避組成物においては、下記式(41):
Figure 2021116299
で示されるシンナムアルデヒド(以下、「化合物C6」と称する。)を香料成分として使用した。
比較例30の吸血害虫忌避組成物においては、下記式(42):
Figure 2021116299
で示されるカリクソール(以下、「化合物C7」と称する。)を香料成分として使用した。
比較例31の吸血害虫忌避組成物においては、下記式(43):
Figure 2021116299
で示されるカシュメラン(以下、「化合物C8」と称する。)を香料成分として使用した。
比較例32の吸血害虫忌避組成物においては、下記式(44):
Figure 2021116299
で示されるマルトール(以下、「化合物C9」と称する。)を香料成分として使用した。
比較例33の吸血害虫忌避組成物においては、下記式(45):
Figure 2021116299
で示されるカルボン(以下、「化合物C10」と称する。)を香料成分として使用した。
比較例34の吸血害虫忌避組成物においては、下記式(46):
Figure 2021116299
で示されるファルネセン(以下、「化合物C11」と称する。)を香料成分として使用した。
<比較例35〜45>
害虫忌避成分としてイカリジンを使用する前述の処方3により、吸血害虫忌避組成物(比較例35〜45)を調製した。比較例35〜45の吸血害虫忌避組成物においては、ベンゼン環、安息香酸エステル構造、又はサリチル酸エステル構造に由来する電子共役部以外の電子共役部を有する化合物C1〜C11を香料成分として使用した。
<比較例46〜56>
害虫忌避成分を配合しない前述の処方6により、吸血害虫忌避組成物(比較例46〜56)を調製した。比較例46〜56の吸血害虫忌避組成物においては、ベンゼン環、安息香酸エステル構造、又はサリチル酸エステル構造に由来する電子共役部以外の電子共役部を有する化合物C1〜C11を香料成分として使用した。
<比較例57>
害虫忌避成分を配合しない前述の処方6により、吸血害虫忌避組成物(比較例57)を調製した。比較例57の吸血害虫忌避組成物においては、調合香料3を香料成分として使用した。
<比較例58〜60>
害虫忌避成分を配合しない前述の処方6により、吸血害虫忌避組成物(比較例58〜60)を調製した。比較例58〜60の吸血害虫忌避組成物においては、化合物V、化合物X、及び化合物Yを香料成分として使用した。
<比較例61>
害虫忌避成分を配合しない下記の処方9により、吸血害虫忌避組成物(比較例61)を調製した。比較例61の吸血害虫忌避組成物においては、シトロネラ油を配合することにより、化合物E、化合物V、及び化合物Wを香料成分として使用した。
処方9:
シトロネラ油(化合物E(20重量%)、化合物V(10重量%)、化合物W(20重量%)、及びその他成分を含有)を1.0g(1.0w/v%)、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)を0.1g(0.1w/v%)、メントールを1.0g(1.0w/v%)、トリエタノールアミン(TEA)を0.05g(0.05w/v%)、精製水を40g(40w/v%)、並びに、無水エタノールを残分(バランス)混合し、全量100mLに調製した。シトロネラ油1.0g中に含有される香料成分は、化合物Eが0.2g、化合物Vが0.1g、化合物Wが0.2gである。
実施例1〜60、及び比較例1〜61の吸血害虫忌避組成物の処方、及び香料成分を表1、2に示す。
Figure 2021116299
Figure 2021116299
[消臭機能確認試験]
汗臭、ミドル脂臭、加齢臭に対する消臭機能確認試験を実施した。汗臭については、腰高シャーレ(外径75mm、高さ60mm)に試験綿布(5cm×5cm綿布(金巾3号))を置き、イソ吉草酸(ナカライテスク株式会社製)のエタノール溶液を供試悪臭としてスプレーバイアルにて適量噴霧した。ミドル脂臭については、腰高シャーレに試験綿布を置き、ジアセチル(ナカライテスク株式会社製)のエタノール溶液を供試悪臭としてスプレーバイアルにて適量噴霧した。加齢臭については、腰高シャーレに試験綿布を置き、2−ノネナール(東京化成工業株式会社製)のエタノール溶液を供試悪臭としてスプレーバイアルにて適量噴霧した。
汗臭については、悪臭を付加させたそれぞれの試験綿布に対し、実施例1〜60、及び比較例1〜61の試験溶液をスプレーバイアルにて0.03mL噴霧し、試験溶液噴霧直後、3時間後、及び12時間後に、腰高シャーレ内の臭気を評価した。ミドル脂臭、加齢臭については、悪臭を付加させたそれぞれの試験綿布に対し、実施例1〜56、及び比較例1〜57の試験溶液をスプレーバイアルにて0.03mL噴霧し、試験溶液噴霧直後、3時間後、及び12時間後に、腰高シャーレ内の臭気を評価した。臭気の評価は以下の5段階臭気強度表示法で5人のテスターにより評価し、平均点を求めた。平均点0以上2未満を○、2以上3未満を△、3以上4以下を×とした。
なお、実施例1において、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)、メントール、トリエタノールアミン(TEA)の本試験への影響を確認するために、これらの成分を全く含まないもの、及び何れか1種又は2種を含むものでそれぞれ同様の試験を行った。その結果、これらの成分は本試験の結果に影響を及ぼさないことを確認した。
0:香りを感じない
1:かすかに感じる
2:弱く感じる
3:明らかに感じる
4:強く感じる
汗臭に対する消臭機能確認試験の結果を表3、4に示す。
Figure 2021116299
Figure 2021116299
ミドル脂臭に対する消臭機能確認試験の結果を表5、6に示す。
Figure 2021116299
Figure 2021116299
加齢臭に対する消臭機能確認試験の結果を表7、8に示す。
Figure 2021116299
Figure 2021116299
消臭機能確認試験の結果、本発明の特徴構成を備えた吸血害虫忌避組成物は、害虫忌避成分としてIR3535を含有する実施例1〜27、及び害虫忌避成分としてイカリジンを含有する実施例28〜60の何れであっても、汗臭、ミドル脂臭、加齢臭に対して、試験溶液の噴霧処理から12時間後も優れた消臭性を示した。このことから、本発明の特徴構成を備えた吸血害虫忌避組成物を、外出前に肌や衣料へ噴霧処理しておくことで、12時間程度の外出の間は香料成分による消臭機能が持続し、肌や衣料に付着した悪臭により不快感が生じることを防ぐことができると考えられる。
一方、害虫忌避成分を含有していない比較例1〜21、及び57〜61の吸血害虫忌避組成物は、害虫忌避成分としてIR3535を含有する実施例1〜27、及び害虫忌避成分としてイカリジンを含有する実施例28〜60と、同一の香料成分を含有しているが、汗臭、ミドル脂臭、加齢臭の何れに対しても、試験溶液の噴霧処理から3時間後までの消臭性を示すに留まり、試験溶液の噴霧処理から12時間後には十分な消臭性を示さなかった。
比較例22の吸血害虫忌避組成物は、実施例1〜27と同様に害虫忌避成分としてIR3535を含有しており、比較例23の吸血害虫忌避組成物は、実施例28〜56と同様に害虫忌避成分としてイカリジンを含有しているが、比較例22及び23は何れも香料成分を含有していない。このような比較例22及び23の吸血害虫忌避組成物は、汗臭、ミドル脂臭及び加齢臭の何れに対しても消臭性を示さなかった。このことから、害虫忌避成分であるIR3535、及びイカリジンは単独では消臭性を有していないことが確認された。害虫忌避成分であるIR3535、及びイカリジンが単独では消臭性を有していないにもかかわらず、比較例1〜21の吸血害虫忌避組成物と比較して、これらに害虫忌避成分を配合しただけの実施例1〜56の吸血害虫忌避組成物において消臭機能が長時間持続したのは、害虫忌避成分が本発明において規定する特定の香料成分と何らかの相乗効果を奏するためと考えられる。
また、ベンゼン環、安息香酸エステル構造、又はサリチル酸エステル構造に由来する電子共役部以外の電子共役部を有する化合物を香料成分として使用した比較例24〜56は、汗臭、ミドル脂臭及び加齢臭の何れに対しても、試験溶液の噴霧処理から3時間後までの消臭性を示すに留まり、試験溶液の噴霧処理から12時間後には十分な消臭性を示さなかった。害虫忌避成分としてIR3535を含有する場合(比較例24〜34)、及び害虫忌避成分としてイカリジンを含有する場合(比較例35〜45)でも、消臭機能が長時間持続しなかったのは、本発明において規定する特定の香料成分を使用していないために、害虫忌避成分と香料成分との相乗効果が得られなかったためと考えられる。
以上の結果から、本発明の特徴構成を備えた吸血害虫忌避組成物(実施例1〜60)は、特定の害虫忌避成分と特定の香料成分との組み合わせにより、害虫忌避成分と香料成分との相乗効果が得られ、香料成分による消臭機能が長時間に亘って持続することが確認された。
[屋外性能確認試験1]
本発明の吸血害虫忌避組成物をポンプスプレー製品(実施例61〜64)として調製し、実際に衣料に噴霧処理して屋外での性能を確認した。
<実施例61>
メントンを0.5g(0.5w/v%)、イカリジンを5.0g(5.0w/v%)、精製水を40g(40w/v%)、並びに、無水エタノールを残分(バランス)混合し、全量100mLの吸血害虫忌避組成物を調製した。本吸血害虫忌避組成物の香料成分(a)と害虫忌避成分(b)との配合比(a/b)は、重量比として、0.10であった。調製した吸血害虫忌避組成物をプッシュダウン式ポンプスプレー容器に充填して吸血害虫忌避用スプレー製品1を得た。
<実施例62>
リモネンを2.0g(2.0w/v%)、イカリジンを30.0g(30.0w/v%)、精製水を40g(40w/v%)、並びに、無水エタノールを残分(バランス)混合し、全量100mLの吸血害虫忌避組成物を調製した。本吸血害虫忌避組成物の香料成分(a)と害虫忌避成分(b)との配合比(a/b)は、重量比として、0.07であった。調製した吸血害虫忌避組成物をプッシュダウン式ポンプスプレー容器に充填して吸血害虫忌避用スプレー製品2を得た。
<実施例63>
リナロールを0.9g(0.9w/v%)、イカリジンを15.0g(15.0w/v%)、精製水を40g(40w/v%)、並びに、無水エタノールを残分(バランス)混合し、全量100mLの吸血害虫忌避組成物を調製した。本吸血害虫忌避組成物の香料成分(a)と害虫忌避成分(b)との配合比(a/b)は、重量比として、0.06であった。調製した吸血害虫忌避組成物をプッシュダウン式ポンプスプレー容器に充填して吸血害虫忌避用スプレー製品3を得た。
<実施例64>
ラベンダー油(リナロール30%、リナリルアセテート40%、及びその他成分を含有)を0.9g(0.9w/v%)、イカリジンを5.0g(5.0w/v%)、精製水を40g(40w/v%)、並びに、無水エタノールを残分(バランス)混合し、全量100mLの吸血害虫忌避組成物を調製した。ラベンダー油0.9g中に含有される香料成分(a)は、リナロールが0.27g、リナリルアセテートが0.36gであり、本吸血害虫忌避組成物の香料成分(a)と害虫忌避成分(b)との配合比(a/b)は、重量比として、0.13であった。調製した吸血害虫忌避組成物をプッシュダウン式ポンプスプレー容器に充填して吸血害虫忌避用スプレー製品4を得た。
4人のパネラー(30代男性、40代男性、50代男性、60代男性の各1名ずつ)が上記吸血害虫忌避用スプレー製品1〜4(実施例61〜64)から1人1本ずつ選び各自の衣料に噴霧し、晴れた日の午前10時から午後16時まで公園を自由に散策した。4人のパネラーは何れも散策中、蚊等の吸血害虫に吸血されることはなく、また、衣料からの臭いも気にならずに快適にすごすことができた。特に、香料成分として「リナロール」と「リナリルアセテート」とを使用した実施例64の吸血害虫忌避用スプレー製品4は、他の香料成分を使用した実施例61〜63の吸血害虫忌避用スプレー製品1〜3と比べて、吸血害虫に対する忌避効果及び消臭効果が非常に優れたものとなった。この「リナロール」と「リナリルアセテート」との組み合わせが特異的に高い効果を示すことは、本発明者らが香料成分を種々組み合わせて行った試行錯誤から見出した新たな知見である。
[屋外性能確認試験2]
本発明の吸血害虫忌避組成物をポンプスプレー製品(実施例65)として調製し、実際に衣料に噴霧処理して屋外での性能を確認した。
<実施例65>
ハッカ油(メントール60%、メントン20%、及びその他成分を含有)を0.9g(0.9w/v%)、イカリジンを5.0g(5.0w/v%)、精製水を40g(40w/v%)、並びに、無水エタノールを残分(バランス)混合し、全量100mLの吸血害虫忌避組成物を調製した。ハッカ油0.9g中に含有される香料成分(a)は、メントンが0.18gであり、本吸血害虫忌避組成物の香料成分(a)と害虫忌避成分(b)との配合比(a/b)は、重量比として、0.036であった。調製した吸血害虫忌避組成物をプッシュダウン式ポンプスプレー容器に充填して吸血害虫忌避用スプレー製品5を得た。
2人のテスター(30代男性、50代男性の各1名ずつ)が上記吸血害虫忌避用スプレー製品5を各自の衣料に噴霧し、晴れた日の午前10時から午後16時まで公園を自由に散策した。2人のテスターは何れも散策中、蚊等の吸血害虫に吸血されることはなく、また、衣料からの臭いも気にならずに快適にすごすことができた。
本発明の吸血害虫忌避組成物、及び吸血害虫忌避方法は、スポーツ、レジャー、旅行等の主に屋外環境で長時間活動する場面において利用できるのは勿論のこと、食事、団らん、就寝等の主に屋内環境に留まっている場面において予防的に利用することも可能である。

Claims (5)

  1. 害虫忌避成分と香料成分とを含有する吸血害虫忌避組成物であって、
    前記害虫忌避成分は、3−(N−ブチルアセトアミド)プロピオン酸エチル、イカリジン、p−メンタン−3,8−ジオール、及びN,N−ジエチルトルアミドからなる群から選択される少なくとも一つであり、
    前記香料成分は、ベンゼン環、安息香酸エステル構造、又はサリチル酸エステル構造に由来する電子共役部以外の電子共役部を有さず、炭素数が6〜18であり、分子量が98〜270であり、炭素原子、水素原子、及び酸素原子を有し、硫黄原子、窒素原子、及びハロゲン原子を有さない化合物である吸血害虫忌避組成物。
  2. 前記香料成分は、シス−3−ヘキセノール、ジヒドロミルセノール、エチルリナロール、リナロール、ゲラニオール、テトラヒドロゲラニオール、テルピネオール、フェニルエチルアルコール、ヘリオナール、リリアール、安息香酸ベンジル、サリチル酸ベンジル、シス−3−ヘキセニルサリチレート、ジヒドロジャスモン酸メチル、リナリルアセテート、ラズベリーケトン、ガラクソリド、エチレンブラシレート、シクロペンタデカノリド、メントン、リモネン、シトロネロール、シトロネラール、1,8−シネオール、α−テルピネオール、ボルネオール、カンファー、パチュリアルコール、β−ヒマカレン、ベンジルアセテート、ベンジルアルコール、ゲラニルフォーメート、オイゲノール、ビサボロールオキシドA、及びα−ピネンからなる群から選択される少なくとも一つである請求項1に記載の吸血害虫忌避組成物。
  3. 前記香料成分の含有量が0.1〜2.0w/v%である請求項1又は2に記載の吸血害虫忌避組成物。
  4. 前記香料成分(a)と前記害虫忌避成分(b)との配合比(a/b)が、重量比として、0.01〜1.5である請求項1〜3の何れか一項に記載の吸血害虫忌避組成物。
  5. 請求項1〜4の何れか一項に記載の吸血害虫忌避組成物を用いた吸血害虫忌避方法であって、
    処理対象の肌又は衣料に前記吸血害虫忌避組成物を噴霧する噴霧工程と、
    前記肌又は衣料に対して前記吸血害虫忌避組成物を噴霧する位置を変更する変更工程と、
    を包含する吸血害虫忌避方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2024144579A1 (en) * 2022-12-26 2024-07-04 Eczacibasi Tuketim Urunleri Sanayi Ve Ticaret Anonim Sirketi Biocidal skin product
WO2024185700A1 (ja) * 2023-03-08 2024-09-12 大日本除蟲菊株式会社 害虫防除製品

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