JP2021115859A - 転写体、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 - Google Patents

転写体、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 Download PDF

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みどり 櫛田
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哲弥 小菅
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Abstract

【課題】繰り返し使用時における画像形成性、転写性、及びクリーニング性が向上した、転写体、この転写体を用いたインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供する。【解決手段】本発明にかかる転写体は、基層と、表面層とを有し、前記表面層の1,2−ヘキサンジオールに対する膨潤率が5%以下であり、前記表面層の貯蔵弾性率が30MPa以上250MPa以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、転写体、かかる転写体を用いたインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置に関する。
インクを転写体の画像形成面にインクジェット法により付与して画像を形成し、その画像を転写体の画像形成面から記録媒体に転写することによって記録媒体上に画像を記録する転写型インクジェット記録方法が知られている。また、転写体の画像形成面に付与したインクを流動させずに、インクを転写体上に保持する目的で、インクの流動性を低下させる反応液(処理液ともいう)を転写体の画像形成面に付与することも提案されている。インクと反応液による画像の形成に用いる転写体の画像形成面は、インク及び反応液による画像の形成に適した濡れ性と、画像の記録媒体への転写性(画像の剥離性)が求められる。さらに、それらの性能を繰り返し利用できるようにクリーニング性も備えていなければならない。転写体をクリーニングして、繰り返し最適な画像形成面を供給する方法は、これまでにいくつか提案されている。特許文献1では、転写体である印刷用ブランケットとブランケット胴を密閉構造により覆い、ブランケットへのインキの膨潤量をセンサによりモニタリングする方法が開示されている。これにより、ブランケットを繰り返し利用する際に膨潤量を一定に保つことができるとされている。特許文献2では、転写体である印刷用ブランケットのシリコーンゴム層の下に高分子材料からなる複数個の孔を開けた補強層と、スポンジ状の圧力吸収層と、芯材とから成るブランケットが提案されている。これにより、シリコーンゴム層が吸収したインキ中の有機溶剤が補強層に形成した複数個の孔を通してスポンジ層に吸収され、シリコーンゴム層の膨潤を抑えることができるとされている。これらの特許文献のように、有機溶剤や樹脂などの複数の要素を含む材料を用いて画像形成を行う転写体の画像形成面は、溶剤等で安定して膨潤した状態にさせるか、膨潤していない状態に復帰させるかのどちらかがクリーニング性能として必要になる。特に、インクのように構成要素の比率が画像形成や転写を行う上で重要である場合、その比率を変化させないためにも膨潤していない初期状態に転写体の表面を戻すことが望ましいと考えられる。
特開2006−224493号公報 特開平6−143858号公報
転写型記録方法においては、ランニングコストの面から、転写体は繰り返して画像の形成に用いられることが望ましい。しかし、転写体は、酸や有機溶剤などの複数の構成成分をもつ反応液やインクを用いて、転写体上での画像の形成を行い、転写後に溶剤成分を含むクリーニング液を用いて、クリーニングを行う工程を繰り返すことがある。このような場合、本発明者らの検討によれば、転写体の表面層が用いた溶剤などの構成成分によって膨潤し、本来の画像形成性や転写性を損なってしまう場合があった。また、特許文献1のように表面層の膨潤量を一定に保つ処理を行った場合は、構成成分の比率が、膨潤している溶剤と混ざることによって最適な比率が損なわれてしまう。一方、特許文献2のようにスポンジ層を設けて表面層の膨潤をなくしたブランケットを用いた場合は、初期の画像形成性や転写性に問題がなくても、連続印刷を行うことにより、表層の下にあるスポンジ層が膨潤し飽和状態になる。このため、本質的には表面層の膨潤を抑えられない。
よって、本発明の目的は、繰り返し使用時における画像形成性、転写性、及びクリーニング性が向上した転写体、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供することにある。
本発明にかかる転写体は、基層と、表面層とを有する転写体であって、前記表面層の1,2−ヘキサンジオールに対する膨潤率が5%以下であり、前記表面層の貯蔵弾性率が30MPa以上250MPa以下であることを特徴とする。
本発明にかかるインクジェット記録方法は、転写体の画像形成面にインクを高粘度化する成分を含む反応液を付与する反応液付与工程と、前記転写体の前記画像形成面にインクを付与してインク像を形成するインク付与工程と、前記インク像を前記転写体から記録媒体に転写する転写工程と、を有するインクジェット記録方法であって、前記転写体が、上記の転写体であることを特徴とする。
本発明にかかるインクジェット記録装置は、転写体の画像形成面にインクを高粘度化する成分を含む反応液を付与する反応液付与装置と、前記転写体の前記画像形成面にインクを付与することによってインク像を形成するインク付与装置と、を有する画像形成ユニットと、前記インク像を前記転写体から記録媒体に転写する転写ユニットと、を有するインクジェット記録装置であって、前記転写体が、上記の転写体であることを特徴とする。
本発明によれば、繰り返し使用時における画像形成性、転写性、及びクリーニング性が向上した転写体、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供することができる。
本発明の一実施形態における転写体の構成を表す模式図である。 本発明の一実施形態におけるインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置の構成を表す模式図である。
以下に、本発明を好適な実施形態を例にして詳細に説明する。好適な実施形態として転写型インクジェット記録方法を用いて説明するが、本発明は転写型インクジェット記録方法に限られない。すなわち、有機溶剤を含有する液体を繰り返し転写体に付与する記録プロセスにおいて、本発明で用いる表面層材料は有効である。
本発明にかかる転写体は、基層と、表面層を有する。表面層は画像形成面を有し、この画像形成面に、インクによりインク像が形成される。この転写体上に形成されるインク像を、中間画像と称することがある。そして、この中間画像を記録媒体に転写することで、記録媒体上にインク像を形成する。そのため、この転写体は転写型記録用の転写体とも称することがある。
転写体の画像形成面(転写体の表面)は、インク像の良好な形成とインク像の記録媒体への転写を両立する表面性を有することが重要である。転写体上に高品位なインク像を形成するためには、インクを高粘度化する成分を含む反応液を均一塗布可能な濡れ性を、画像形成面が有していることが好ましい。一方、同じ転写体を用いて画像形成を繰り返し行う場合には、転写体の画像形成面が反応液とインクとクリーニング液の繰り返し付与に対して膨潤しない特性を有していることが好ましい。
本発明者らは、転写体の画像形成面の物性について検討を行い、画像形成面を含む表面層の膨潤量の増大が、連続印刷時の安定した画像形成と、転写とを妨げる要因であるとの知見を得た。すなわち、表面層が、反応液、インク、及びクリーニング液に含まれるいずれかの構成成分により膨潤した状態で画像形成を行うと、制限された反応液やインクの構成成分の比率が変化して高品位なインク像が形成できなくなる。また、溶剤成分が表面層に残存することにより、転写時の転写残りや中間画像の形成不良の原因になる。
本発明者らは上述した膨潤の、画像形成性と転写性への影響に関して検討を行い、1,2−ヘキサンジオールに対する表面層の膨潤率が、画像形成性と転写性を測る指標になることを明らかにした。ここで用いる1,2−ヘキサンジオールは、インク中にも構成成分として含まれることがある溶剤である。また、化粧品の代表的な保湿成分に用いられ、膨潤を起し易い溶剤として知られている。
本発明者らは上述した各性能を連続印刷時(すなわち、繰り返し使用時)に満たすために必要な1,2−ヘキサンジオールの膨潤率の範囲を検討した。そして、転写体の表面層を適切な膨潤率範囲に制御することによって、転写体が上述した各性能を満たすことができるとの知見を得た。本発明はかかる本発明者らによる知見に基づくものであり、本発明においては、画像形成性と転写性とクリーニング性の向上を、1,2−ヘキサンジオールの膨潤率を5%以下に制御することにより達成した。この範囲の膨潤率が得られるように転写体の表面層の材料を調整することで繰り返し使用時にも、転写体上で高品位なインク像が得られ、高い転写性で記録媒体にインク像を転写することができる。また、表面層内部に反応液、インク、またはクリーニング液が膨潤しにくいことにより、高いクリーニング性で転写体を初期状態に戻すことができる。また、転写体の表面層の貯蔵弾性率は30MPa以上250MPa以下とすることで、画像形成面が連続印刷の転写時の摩耗に耐えると共に、転写時に記録媒体に転写体が追従することができるため、転写性を向上することができる。
以下、好適な実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。なお、転写体を具備するインクジェット記録装置を、以下便宜的に転写型インクジェット記録装置と称し、及び、転写体を用いるインクジェット記録方法を、以下便宜的に転写型インクジェット記録方法と称することがある。また、転写型インクジェット記録用の転写体を、単に転写体と称することがある。
<転写体>
本発明にかかる転写体は、画像形成面を有する表面層を少なくとも有する。また、転写体は、例えば、ハンドリングや転写部への固定に必要な強度を転写体に付与するために基層を更に有する。
基層は、画像形成面を有する表面層を支持し、必要とされる機械的強度や物性を転写体に付与できるものであれば特に限定されないが、基層としては、弾性層、圧縮層、及び補強層のうちの少なくとも一つの層を有することが好ましい。基層を複数層で形成してもよい。複数層からなる基層は、それぞれ作製して得られた各層を接着層などの中間層によって接着した構造を有してもよいし、先に用意あるいは形成した層上で次の層を形成して一体化した積層構造を有してもよい。あるいは、これらの2つの層構造の両方を有してもよい。
図1に、本実施形態にかかる転写体の構成を、厚さ方向における部分断面図として模式的に示す。図示した転写体は、表面層101と、基層としての弾性層102、圧縮層103及び補強層104が、これらの順に積層された構造を有する。尚、弾性層、補強層、圧縮層は一体となっていてもよい。
転写体の形状としては、シート形状、ローラ形状、ドラム形状、ベルト形状、無端ウエブ形状などを挙げることができる。また、転写体のサイズは、記録媒体のサイズ等に合わせて適宜設定することができる。特に、図2の実施形態のようなドラム状の転写体を用いると、同一の転写体を連続して繰り返し使用することが容易となり、生産性の観点からも好適な構成となる。
(支持部材)
支持部材は、転写体に対して搬送性や機械的な耐久性を付与するために、必要に応じて用いることができる。支持部材は、転写体の表面層側の面に対して反対側の面(補強層104側の面)を支持する。
支持部材は、その搬送精度や耐久性の観点から、ある程度の強度を有することが要求される。支持部材の材質としては、金属、セラミックス、樹脂などが好ましい。中でも、アルミニウム、鉄、ステンレス、アセタール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリウレタン、シリカセラミクス、アルミナセラミクスが好ましい。これらから選択された材質で支持部材を構成すると、転写時の加圧に耐えうる剛性や寸法精度を確保できるとともに、動作時のイナーシャを軽減して制御の応答性を向上させることができる。尚、これらの材質は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
支持部材の形状や構造は、転写体を支持できるように設定されていればよく、特に制限はない。例えば、支持部材の形状に関しては、適用するインクジェット記録装置の形態または記録媒体への転写態様、転写体の形状等に合わせて、ローラ状、ドラム状、ベルト状等の形状の支持部材を用いることができる。後述する図2に示すインクジェット記録装置では、ドラム状の支持部材の外周面に転写体を設けている。
(補強層)
補強層は、転写体の搬送精度や機械的な耐久性を向上させるために用いることができる。補強層は支持部材と接触する。補強層104には、搬送精度や耐久性の観点から、ある程度の強度を有することが要求される。補強層104は、布、フィルム、シート等により形成することができる。布の材質としては、綿、ポリエステル、ポリイミド、ナイロン等が挙げられる。フィルムの材質としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド等が挙げられる。補強層の厚さは特に限定されず、目的とする補強機能を有する補強層を得ることができるように設定すればよい。例えば、補強層の厚さは0.1mm以上1.5mm以下とすることが好ましい。また、転写体は、支持部材と接触する補強層(第一の補強層とも称する)とは別に、圧縮層と弾性層との間に更に補強層(第二の補強層とも称する)を有していてもよい。
(圧縮層)
圧縮層103は、転写時に転写体が受ける圧力(転写圧)を均一にするために用いることができる。圧縮層103は、空隙を内包するゴム(スポンジゴム)を有することが好ましい。ここで、空隙は連続気泡、独立気泡のいずれで構成されてもよいが、転写圧による圧縮層の変形回復性の観点から、独立気泡が好ましい。ゴムとしては、ポリブタジエン系ゴム、ニトリル系ゴム、クロロプレン系ゴム、シリコーン系ゴム、フッ素系ゴム、フルオロシリコーン系ゴム、ウレタン系ゴムが好ましい。その他にゴムとしては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマーが好ましい。これらの1種または2種以上を組み合わせて、圧縮層の形成に用いることができる。圧縮層の厚さは、転写圧の均一化及び転写時の転写体の移動方向への歪みの抑制の観点から、好適な変形状態をより効果的に得るためには、0.1mm以上2.0mm以下であることが好ましく、0.2mm以上2.0mm以下であることがより好ましい。
(弾性層)
弾性層102は、転写体の記録媒体への追従性を向上させるために用いることができる。弾性層102を構成する材料としては、樹脂、エラストマー、ゴム、セラミック等の各種材料を適宜用いることができる。これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
加工特性等の点で、各種エラストマー及び各種ゴムが好ましい。ゴムの具体例としては、シリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム等が挙げられる。その他にゴムの具体例としては、スチレンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)等が挙げられる。これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴムは、温度による弾性率の変化が小さく、転写性の点でも好ましい。従って、表面層は、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム及びエチレン・プロピレン・ジエンゴムの少なくとも1種を含むことが好ましい。さらに、シリコーンゴム、フッ素ゴム及びエチレン・プロピレン・ジエンゴムの少なくとも1種を含むことがより好ましい。
弾性層は、弾性層の全質量を基準として、これら樹脂やセラミック、ゴムを、合計で10質量%以上100質量%以下含有していることが好ましい。また、30質量%以上含有していることがより好ましく、50質量%以上含有していることがさらに好ましい。弾性層は前記材料の他に、各種フィラーや添加剤を含有してもよい。
弾性層の圧縮弾性率E2は、0.5MPa以上50MPa以下とされる。また、弾性層の圧縮弾性率E2は3.0MPa以上25.0MPa以下とすることがより好ましく、5.0MPa以上25.0MPa以下とすることが特に好ましい。0.5MPa以上とすることで、弾性層の大きな変形を抑制し、弾性層の変形に表面層を追従させやすくなる。50.0MPa以下とすることで、特に高速時において局所的に表面層にかかる応力を、弾性層で十分に緩和することができ、耐クラック性及び転写性も高めることができる。
弾性層の厚さは、上記の弾性層の機能をより効果的に発揮させるという観点から、0.05mm以上、0.5mm以下であることが好ましい。弾性層の厚さの上限は、0.2mm以下であることが更に好ましい。
(表面層)
表面層101はインク像を形成するための画像形成面を有する層としての機能を有する。表面層101の解放面(弾性層102と接している面とは反対側の面)の少なくとも一部には画像形成面が設けられている。画像形成面は、インク像の形成及び記録媒体への転写に好適な表面性を得るために、水の接触角が85°以上110°以下であることが好ましい。
表面層の材質としては、金属、セラミックス、樹脂などが好ましい。中でも、ポリブタジエン系ゴム、ニトリル系ゴム、クロロプレン系ゴム、シリコーン系ゴム、フッ素系ゴム、フルオロシリコーン系ゴム、ウレタン系ゴムが好ましい。他に、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー、ポリエーテル、ポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、シロキサン化合物、パーフルオロカーボン化合物が好ましい。また表面層は、複数の材料を積層して形成されていてもよい。例えば、ウレタンゴムシートにシリコーンゴムを積層した材料や、ポリエチレンテレフタラートフィルムにシリコーンゴムを積層した材料、ウレタンゴムシートにシロキサン化合物を成膜させた材料などが挙げられる。特に、本発明の転写体の表面層101は有機シラン化合物を縮合して得られる縮合物によって形成されていることが、インク画像形成性、転写性を両立する上で好ましい。
縮合物を得るための有機シラン化合物としては、非加水分解性のアルキル基を有する加水分解性有機シラン化合物、重合性基を有する加水分解性有機シラン化合物を挙げることができる。これらの少なくとも1種を用いて縮合物形成用の組成物を得ることができる。特に、表面層は、加水分解性有機シラン化合物を含むことが好ましい。なお、重合性基を有する加水分解性有機シラン化合物を用いることにより、重合性基の種類に応じて縮合物の重合、あるいは架橋を行い、目的とする硬度の縮合物によって形成される層を得ることができる。また、有機シラン化合物の縮合物に柔軟性を付与するために、柔軟性基と反応性基を有する化合物を適宜添加することが好ましい。反応性基が光重合性基であれば、縮合物と光重合開始剤を配合した塗工液を調製して、塗工層に光照射することにより縮合物の光硬化物からなる層を得ることができる。
縮合物形成用の非加水分解性の炭化水素基を有する加水分解性有機シラン化合物としては、以下の一般式(1)の化合物の少なくとも1種を挙げることができる。
(R30−Si−(R31(4−t) (1)
(式中、R30は、非加水分解性の炭化水素基を表し、R31は加水分解性の基を表し、tは1〜3の整数である。)
非加水分解性の炭化水素基としては、飽和炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等があり、飽和炭化水素はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基を挙げることができる。非加水分解性のアルキル基がフッ素で置換されている場合は、アルキル基の全ての水素原子はフッ素で置換されていることが好ましい。
加水分解性基としては、アルキルオキシ基を挙げることができ、このアルキルオキシ基のアルキル基としては、メチル基、エチル基等を挙げることができる。
一般式(1)の化合物の具体例としては以下の各化合物を挙げることができる。メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、トリメトキシ(3,3,3−トリフルオロプロピル)シラン、トリエトキシ(1H、1H、2H、2H−ノナフルオロヘキシル)シラン、トリエトキシ−1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロ−n−オクチルシラン等。
縮合物形成用の非加水分解性の重合性基を有する加水分解性シラン化合物としては、以下の一般式(2)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2021115859
(式中、R42は非加水分解性の重合性基を、R43は非加水分解性のアルキル基を、R44は加水分解性の基をそれぞれ表し、uは0〜2の整数である。)
非加水分解性の重合性基としては、ビニル基を有する基、あるいは、エポキシ基やオキセタニル基等の環状エーテル基を有する基を挙げることができる。
非加水分解性のアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基を挙げることができる。
加水分解性の基としては、アルキルオキシ基を挙げることができ、このアルキルオキシ基のアルキル基としては、メチル基、エチル基等を挙げることができる。
一般式(2)の化合物の具体例としては以下の各化合物を挙げることができる。
・グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルジエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、2−(エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン。さらには、これらの化合物のエポキシ基をオキセタニル基に置換した化合物等。
・アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン等。
一般式(1)及び(2)の少なくとも1種の化合物を用いる場合のこれらの配合割合は、一般式(1)の化合物:一般式(2)の化合物=0:100〜90:10(モル比)から選択することが好ましい。特に、一般式(1)の化合物:一般式(2)の化合物=50:50〜70:30(モル比)の配合割合で有機シロキサン化合物を縮合することが、より好ましく、耐久性を向上させることができる。
柔軟性基と反応性基を有する化合物の柔軟性基としては、ポリアルキレンオキサイド(PAO)基、直鎖炭化水素基等が挙げられる。これらの基を有する反応性の化合物を添加することで、画像形成面を形成する有機シロキサンの縮合物に弾性を付与し、画像形成面の耐久性を向上させることができる。さらに好ましくは、直鎖炭化水素基を、柔軟性基として有する反応性の化合物を用いることであり、直鎖の炭化水素基が柔軟であり、溶剤に対する膨潤耐性も高いことから好ましい。炭化水素基は、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基のどちらも用いることができる。柔軟性と比べて低膨潤性を重視したい場合は、飽和炭化水素基を、低膨潤性と比べて柔軟性を重視したい場合は、不飽和炭化水素基を用いることがより好ましい。また、ここでいう反応性基としては、アルコール類の水酸基、加水分解性シロキサンの加水分解性基、アミン類のアミノ基、チオール類のメルカプト基などを用いることができる。柔軟性の観点から、直鎖の炭化水素基は下記の一般式(3)で示される構造であることが好ましい。
−(C(2n−m)− (3)
(nは1〜7の整数を、mは0〜2の整数を、pは1〜120の整数を表す。)
柔軟性を付与する反応性基を有する化合物としては、以下の化合物の少なくとも1種を用いることができる。1,4−ブタンジオール、1−ブテン−1,4−ジオール、1,3−ブタジエン−1,4−ジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ペンテン−1,5−ジオール、1,3−ペンタジエン−1,5−ジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−ヘキセン−1,6−ジオール、2,4−ヘキサジエン−1,6−ジオール、1,4−ブタンジチオール、1−ブテン−1,4−ジチオール、1,3−ブタジエン−1,4−ジチオール、1,5−ペンタンジチオール、2−ペンテン−1,5−ジチオール、1,3−ペンタジエン−1,5−ジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、2−ヘキセン−1,6−ジチオール、2,4−ヘキサジエン−1,6−ジチオール、1,4−ブタンジアミン、1−ブテン−1,4−ジアミン、1,3−ブタジエン−1,4−ジアミン、1,5−ペンタンジアミン、2−ペンテン−1,5−ジアミン、1,3−ペンタジエン−1,5−ジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、2−ヘキセン−1,6−ジアミン、2,4−ヘキサジエン−1,6−ジアミン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ブタン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)−1−ブテン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)−1,3−ブタジエン、1,5−ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、1,5−ビス(トリメトキシシリル)−2−ペンテン、1,5−ビス(トリメトキシシリル)−1,3−ペンタジエン、1,6−1,5−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)−2−ヘキセン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)−2,4−ヘキサジエン等。
また、転写体の表面は表面処理を施して用いてもよい。表面処理としては、フレーム処理、コロナ処理、プラズマ処理、研磨処理、粗化処理、活性エネルギー線照射処理、オゾン処理、界面活性剤処理、シランカップリング処理などが挙げられる。これらを複数組み合わせて施して用いてもよい。
縮合物形成用の加水分解性有機シラン化合物は、一般式(1)で表されるパーフルオロアルキル基を有する加水分解性有機シラン化合物及び一般式(2)で表されるエポキシ基を有する加水分解性の有機シラン化合物の少なくとも一方を含むことが好ましい。これらに加えて、柔軟性基と反応性基を有する化合物を併用することが好ましい。すなわち、転写体の画像形成面が、シロキサン結合を有し、エポキシ基を有する加水分解性の有機シロキサンの縮合物と、柔軟性基と反応性基を有する化合物が縮合した有機シロキサンの縮合物から成ることが望ましい。柔軟性を付与する重合性基を有する化合物の配合割合は、(一般式(1)の化合物)+(一般式(2)の化合物):柔軟性を付与する重合性基を有する化合物=95:5〜20:80(モル比)から選択することが好ましい。
(縮合物の製造方法)
有機シラン化合物の縮合物(有機シロキサン化合物)を製造するための縮合反応は、水の存在下で加熱することにより、必要に応じた加水分解と、縮合反応を進行させることによって行うことができる。その結果シロキサン結合が形成される。目的とする縮合物を得るためのモノマーとしての有機シラン化合物を選択し、必要に応じて加水分解、縮合反応を、温度、時間、pH等で適宜制御することで、所望の縮合度及び表面物性を得ることが可能である。また、酸触媒またはアルカリ触媒等を用いてもよい。縮合反応の進行度合(縮合度、シロキサン結合数)は、縮合可能な官能基数に対する縮合した官能基数の割合で定義することができ、Si−NMR測定を用いる公知の方法によって見積もることができる。
縮合度は、有機シラン化合物の種類、合成条件によって異なるが、低すぎる場合には塗布性、成膜性等に影響を与える場合がある。そのため、縮合度は20%以上であることが好ましい。さらには、縮合度を30%以上とすることは塗布性と成膜性の観点でより好ましく、特に、縮合度を50%以上70%以下の範囲に制御することで耐酸性の観点でも好適である。
(表面層の形成方法)
本発明において、表面層の1,2−ヘキサンジオールに対する膨潤率が5%以下であり、また3%以下であることが好ましい。表面層の膨潤率をこの範囲内に調整するために、材料及び形成方法を選択することによって達成することができる。また、転写体の表面層の画像形成面に、上述した膨潤率について目的とする物性を付与するために、表面層が形成される前の表面(例えば、弾性層の表面)に対して表面処理を施して用いてもよい。表面処理としては、フレーム処理、コロナ処理、プラズマ処理、研磨処理、粗化処理、活性エネルギー線照射処理、オゾン処理、界面活性剤処理、シランカップリング処理などが挙げられる。これらを複数組み合わせて施して用いてもよい。
本発明において、表面層の貯蔵弾性率は30MPa以上250MPa以下である。貯蔵弾性率を30MPa以上にすることにより、画像形成面が連続印刷の転写時の摩耗に耐えることができる。また、貯蔵弾性率を250MPa以下にすることにより、転写時に記録媒体へ転写体が追従することができる。表面層の厚さは、0.001mm以上0.020mm以下であることが好ましい。
<インクジェット記録方法>
<画像形成工程>
画像形成工程は、転写体の画像形成面にインクを高粘度化する成分を含む反応液を付与する反応液付与工程と、転写体の画像形成面にインクを付与してインク像を形成するインク付与工程と、を有する。
反応液の付与は、インクの付与前及びインクの付与後の少なくとも一方において行うことができる。インクと反応液は、これらの少なくとも一部が重なり合うように転写体の画像形成面に付与される。反応液によるインクの高粘度化をより効果的に行うには、反応液が付与された転写体の画像形成面にインクを付与することが好ましい。
(反応液)
反応液は、インクを高粘度化する成分(インク高粘度化成分とも称する)を含む。ここで、インクの高粘度化とは、インクを構成している色材や樹脂等が、インク高粘度化成分と接触することによって化学的に反応し、あるいは物理的に吸着し、インク全体の粘度上昇が認められる場合を表す。また、この場合に限らず、色材などインク組成物の一部が凝集することにより局所的に粘度上昇を生じる場合をも含む。なお、ここで、「反応液」における「反応」とは、インクとの間に化学反応が起こるだけでなく、物理的な作用(吸着など)が起こる場合も含む。インク高粘度化成分は、転写体上でのインク、及び/又は、インク組成物の一部の流動性を低下させて、画像形成時のブリーディング、ビーディングを抑制する効果がある。
本実施形態では、酸をインクの高粘度化成分として用いているが、多価の金属イオンや多孔質性微粒子もインク高粘度化成分として用いることができる。また、複数の種類のインク高粘度化成分を含有させることも好適である。なお、反応液中のインク高粘度化成分の含有量は、反応液全質量に対して5質量%以上であることが好ましい。
具体的にインク高粘度化成分として使用できる有機酸としては、例えば、シュウ酸、ポリアクリル酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、レブリン酸、コハク酸、グルタル酸、グルタミン酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ビリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、オキシコハク酸、ジオキシコハク酸等が挙げられる。また、インク高粘度化成分として使用できる無機酸としては、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸、ホウ酸等が挙げられる。これらの1種または2種以上の組合せを高粘度化成分として用いることができる。
反応液は、適量の水や有機溶剤を含有していても良い。この場合に用いる水はイオン交換等により脱イオン化した水であることが好ましい。反応液における水の含有量は反応液全質量を基準として50〜85質量%であることが好ましい。また、反応液に用いることのできる有機溶剤としては特に限定されず、公知の有機溶剤を何れも用いることができる
反応液には、各種樹脂を添加することもできる。例えば、反応液に適当な樹脂を添加することで転写時の、インク像の記録媒体への接着性を良好なものとしたり、最終画像の機械強度を高めたりすることが可能であるため好適である。この樹脂に用いる材料としてはインク高粘度化成分と共存できるものであれば特に制限は無い。後述するインク用として用いることができる樹脂や樹脂微粒子から、インク高粘度化成分と共存できるものを選択して用いてもよい。
また、反応液中に界面活性剤や粘度調整剤を加えて、その表面張力や粘度を適宜、調整して用いることができる。反応液の表面エネルギーは50mN/m以下、好ましくは20mN/m〜40mN/m、より好ましくは20mN/m以下に調整される。
この際に用いる材料としては、インク高粘度化成分と共存できるものであれば特に制限は無い。具体的に用いられる界面活性剤としてはメガファックF−444(商品名、DIC社製)等が挙げられるが、特にフッ素系界面活性剤を含有することが好ましい。
ここで、フッ素系界面活性剤は、分子構造中に少なくとも疎水性のフルオロカーボン鎖と親水性の分子鎖(親水性部)を有する化合物のことである。疎水性のフルオロカーボン鎖を有することにより、前述のように優れた表面張力低下能を発現する。
この中でも特に疎水部にフルオロアルキル鎖、親水性部としてエチレンオキサイド鎖を有しているノニオン性界面活性剤が好適に用いられる。疎水部にフルオロアルキル鎖、親水性部としてエチレンオキサイド鎖を有することにより、溶剤や反応剤との相溶性が高いため、乾燥等により水分量が低下した組成においても優れた溶解性を示すため、反応液層の均一性、及び表面張力低下能を保つことができる。
また、ノニオン性の界面活性剤であることにより、インク組成物との反応後においても構造変化することなくその特性を維持することができるため、反応液層の均一性、及び表面張力低下能を保つことができる。
本発明で好適に用いられるフッ素系の界面活性剤としては、例えば、FSO100、FSN100、FS3100(商品名、Du Pont社製)、F444、F477、F553(商品名、DIC社製)等が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、反応液全質量に対して1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
(反応液の付与(反応液付与工程))
転写体の画像形成面へ反応液を付与する反応液付与工程には、従来知られている各種手法を適宜用いることができる。具体例としてはダイコーティング、ブレードコーティング、グラビアローラーを用いる手法、オフセットローラーを用いる手法、スプレーコーティング等が挙げられる。また、インクジェットデバイスを用いて付与する方法も好適である。さらにいくつかの方法を複数、組み合わせることも極めて好適である。
(インク像の形成(インク付与工程))
反応液が塗布された転写体の画像形成面にインクを付与するインク付与工程により転写体の画像形成面にインク像が形成される。このインク付与工程において、転写体に、反応液を付与する領域と少なくとも一部で重なるようにインクを付与する。
インクの付与には例えば、インクジェットデバイスを使用することができる。インクジェットデバイスとしては例えば、下記の形態等を挙げることができる。
・電気−熱変換体によりインクに膜沸騰を生じさせ気泡を形成することでインクを吐出する形態、
・電気−機械変換体によってインクを吐出する形態、
・静電気を利用してインクを吐出する形態。
上記のように、インクジェット液体吐出技術で提案される各種インクジェットデバイスをいずれも用いることができる。これらの中でも、特に高速で高密度の印刷の観点からは電気−熱変換体を利用した形態が好適に用いられる。
また、インクジェットデバイス全体の形態としては特に制限はなく、例えば、下記のインクジェットヘッドを用いることができる。
・転写体の進行方向と垂直にヘッドを走査しながら記録を行う、いわゆるシャトル形態のインクジェットヘッド。
・転写体の進行方向に対し略垂直(すなわち、転写体がドラム形状の場合は軸方向に略平行)にインク吐出口をライン状に配列した、いわゆるラインヘッド形態のインクジェットヘッド。
(インク)
以下では、インクに用いることのできる各成分について説明する。
(1)色材
インクは、公知の染料や顔料を溶解及び/又は分散させた色材を用いることができる。これらの中でも各種顔料は印刷物の耐久性や品位に特徴があり好適である。
インクは、色材として顔料及び染料の少なくとも一方を含有することができる。染料及び顔料としては、特に限定されず、インクの色材として利用し得るものから選択し、その必要量を用いることができる。例えば、インクジェット用のインクとして公知の染料やカーボンブラック、有機顔料等を用いることができる。染料及び/又は顔料を液媒体に溶解及び/又は分散させたものを用いることができる。この中でも、各種顔料は印刷物の耐久性や品位に特徴があり好適であり、インクは色材として少なくとも顔料を含むことが好ましい。インク中に用いることのできる顔料としては特に限定されず、公知の無機顔料・有機顔料を用いることができる。具体的にはC.I.(カラーインデックス)ナンバーで表わされる顔料を用いることができる。また、黒色顔料としては、カーボンブラックを用いることが好ましい。
インク中の染料及び/又は顔料の含有量は、インク全質量に対し0.5質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがより好ましい。
(2)顔料分散剤
顔料を分散させる顔料分散剤としては、従来公知のインクジェット用インクに用いられるものであれば、いずれも使用することができる。これらの中でも、その分子構造中に親水性部と疎水性部とを併せ持つ水溶性の分散剤を用いることが好ましい。特に、少なくとも親水性のモノマーと疎水性のモノマーとを含んで共重合させた樹脂からなる顔料分散剤が好ましく用いられる。ここで用いられる各モノマーについては特に制限はなく、旧来公知の物が好適に用いられる。具体的には、疎水性モノマーとしてはスチレン、スチレン誘導体、アルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、親水性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等が挙げられる。
分散剤の酸価は50mgKOH/g以上、550mgKOH/g以下であることが好ましい。また、分散剤の重量平均分子量は1000以上、50000以下であることが好ましい。なお、インク中の顔料と分散剤の質量比は1:0.1〜1:3の範囲であることが好ましい。
また、他のインクの態様として、分散剤を用いず、顔料自体を表面改質して分散可能としたいわゆる自己分散性顔料を用いることも好適である。
(3)樹脂微粒子
インクは、色材を有しない各種粒子を含有することができる。これらの中でも、樹脂微粒子は画像品位や定着性の向上に効果がある場合があり、好適である。樹脂微粒子の材質は特に限定されず、公知の樹脂を適宜、用いることができる。具体的には、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリ尿素、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、及びその塩、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル、ポリジエン等の単独重合物等が挙げられる。もしくはこれらを複数、組み合わせた共重合物が挙げられる。樹脂の質量平均分子量は、1,000以上、2,000,000以下の範囲が好適である。また、インク中における樹脂微粒子の含量は、インク全質量に対して1質量%以上、50質量%以下が好ましく、より好ましくは2質量%以上、40質量%以下である。
さらに、樹脂微粒子は、インク中に分散した樹脂微粒子分散体として用いることが好ましい。分散の手法については特に限定はないが、解離性基を有するモノマーを単独重合もしくは複数種、共重合させた樹脂を用いて分散させたいわゆる自己分散型樹脂微粒子分散体が好適である。ここで解離性基としてはカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられ、この解離性基を有するモノマーとしてはアクリル酸やメタクリル酸等が挙げられる。また、乳化剤により樹脂微粒子を分散させたいわゆる乳化分散型樹脂微粒子分散体も、同様に好適に用いることができる。ここで言う乳化剤としては、低分子量、高分子量に関わらず公知の界面活性剤が好適に用いられる。界面活性剤はノニオン性か、もしくは樹脂微粒子と同じ電荷を持つ物が好適である。樹脂微粒子分散体は、10nm以上、1000nm以下の分散粒径をもつことが望ましく、さらに100nm以上500nm以下の分散粒径が望ましい。
また、樹脂微粒子分散体を作製する際に、安定化のために各種添加剤を加えておくことも好ましい。この添加剤としては例えば、n−ヘキサデカン、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、クロロベンゼン、ドデシルメルカプタン、オリーブ油、青色染料(ブルーイング剤:Blue70)、ポリメチルメタクリレート等が好適である。
(4)界面活性剤
インクは、界面活性剤を含んでいても良い。界面活性剤としては、具体的には、アセチレノ−ルEH(商品名、川研ファインケミカル社製)等が挙げられる。インク中の界面活性剤の含量は、インク全質量に対して0.01質量%以上、5.0質量%以下であることが好ましい。
(5)水、及び水溶性有機溶剤
インクは、液媒体として水及び/又は水溶性有機溶剤を含むことができる。水は、イオン交換等により脱イオンした水であることが好ましい。水性インクの液媒体としては、水、あるいは水と水溶性有機溶剤の混合物を含む水性液媒体を用いることができる。水性液媒体に色材を添加することで水性インクを得ることができる。水性インク中の水の含量は、インク全質量に対して30質量%以上、97質量%以下であることが好ましく、50質量%以上95質量%以下であることがより好ましい。また、インク中に用いる水溶性有機溶剤の種類は特に限定されず、公知の有機溶剤をいずれも用いることができる。
具体的には、グリセリン、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、2−ピロリドン等が挙げられる。また、インク中の水溶性有機溶剤の含量は、インク全質量に対して3質量%以上、70質量%以下であることが好ましい。
(6)その他添加剤
インクは、上記成分以外にも必要に応じて、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、水溶性樹脂、及びその中和剤、粘度調整剤など種々の添加剤を含有しても良い。
(インク像の転写(転写工程))
インク像の形成後、転写工程において、転写体のインク像を有する画像形成面を記録媒体に押圧して、インク像を記録媒体に転写することで、最終的な画像を得る。なお、本明細書において「記録媒体」とは、一般的な印刷で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック、フィルムその他の印刷媒体、記録メディアも含めて言う。
転写体を記録媒体に押圧する方法については特に制限はないが、一対の押圧ローラを用いて転写体と記録媒体の両側から加圧する方法は、効率良く画像が転写形成されるため好適である。また、多段階に加圧することも転写不良の軽減に効果が有る場合があり好適である。
(液体成分除去工程)
転写体の画像形成面上に形成されたインク像から液体成分を減少させる工程(液体成分除去工程)を設けることも好ましい。インク像の液体成分が過剰であると転写工程において余剰液体がはみ出したりあふれ出したりして、画像乱れや転写不良の原因となりうる。インク像からの液体成分除去の手法としては旧来用いられている各種手法が何れも好適に適用できる。例えば、加熱による方法、低湿空気を送風する方法、減圧する方法、吸収体を接触させる方法、またこれらを組み合わせる手法がいずれも好適に用いられる。また、自然乾燥により行うことも可能である。
(加熱工程)
インク付与工程の次の工程として、加熱工程により転写体の画像形成面上のインク像を加熱する加熱工程を設けても良い。
加熱工程に用いる加熱装置としては、ヒータ等の発熱による加熱装置、赤外線あるいは近赤外線の照射による加熱装置等を例示することができる。
この加熱工程は、先に説明した液体成分除去工程を兼ねていてもよい。
加熱により転写性が向上するインク像の場合には、インク像を加熱して、その温度(転写温度)を転写に好適な温度にした状態で、転写工程においてインク像を記録媒体に押圧して転写することが好ましい。
加熱温度は、インク像の加熱による転写性の向上と熱による転写体の耐久性の向上の観点から、70℃以上120℃以下であることが好ましい。
また、インクジェット記録方法が前記加熱工程を有する場合、転写体は加熱転写用であることが好ましい。
(クリーニング工程)
以上のように、本発明のインクジェット記録方法の一例では、反応液の付与、インクの付与によるインク像の形成及び転写、ならびに必要に応じて追加されるインク像からの液体成分の除去によって、画像形成は完了する。しかし、転写体は、生産性の観点から繰り返し連続的に用いることがあり、その際には次のインク像の形成を行う前に画像形成面をクリーニングするクリーニング工程を行うことが好ましい。転写体の画像形成面をクリーニングする方法としては、旧来用いられている各種手法を何れも好適に適用でき、例えば、下記の方法を何れも好適に使用できる。
・転写体の表面上にシャワー状にクリーニング液を当てる方法。
・クリーニング液で濡らしたモルトンローラを、転写体の表面に当接させて払拭する方法。
・転写体の表面をクリーニング液面に接触させる方法。
・転写体の表面をワイパーブレードで掻き取る方法。
・転写体の表面に、各種エネルギーを付与する方法。
また、これらの方法を複数、組み合わせる手法も好適である。
さらに好ましくは、反応液やインクの残渣を溶解させて完全に除去するという観点で、シャワー状にクリーニング液を当てる方法であり、ワイパーブレードのように機械的な接触により画像形成面を傷つけないという点でも好ましい。
(定着工程)
転写後に、画像が記録された記録媒体を加熱及び加圧によって、記録媒体と画像の定着性を高める定着工程を有しても良い。
<インクジェット記録装置>
本発明にかかるインクジェット記録装置は、画像形成ユニットと、転写ユニットと、を有する。画像形成ユニットは、転写体の画像形成面にインクを高粘度化する成分を含む反応液を付与する反応液付与装置と、転写体の画像形成面にインクを付与してインク像を形成するインク付与装置を有する。また、反応液付与装置は反応液を収容する反応液収容部を有していてもよい。また、インク付与装置はインクを収容するインク収容部を有していてもよい。
更に、本発明にかかるインクジェット記録装置は、インク像を記録媒体への転写温度に加熱する加熱装置を有してもよい。
図2は、本発明にかかるインクジェット記録装置の一実施形態の概略構成を示す模式図である。
図2において、インクジェット記録装置は、支持部材12によって支持された転写体11、反応液付与装置14、インク付与装置15、送風装置(液体成分除去装置)16、加熱装置17、押圧ローラ(押圧部材)19、クリーニングユニット20を有する。
転写体11として、図1に示す構成の転写体が用いられている。
図2において、転写体11は、回転可能なドラム状の支持部材12の外周面上に配置されている。転写体11は矢印方向に回転軸13を中心として回転駆動し、その回転と同期して、周辺に配置された各装置が作動して、インク像の形成、転写による記録媒体への最終画像の形成が行われる。本実施形態のようなドラム状の転写体11を用いると、同一の転写体11を連続して繰り返し使用することが容易となり、生産性の面からも極めて好適な構成となる。本実施形態における画像形成ユニットは、反応液付与装置14及びインク付与装置15を有する。反応液付与装置14(14a:反応液、14b、14c:反応液塗布ローラ)として、ロールコータを有する反応液付与装置が設けられている。インク付与装置としては、インクジェット記録ヘッドを備えたインクジェットデバイスが設けられている。これらの装置は、転写体11の回転方向における上流側から下流側にこの順に配置されており、インク付与前に反応液が転写体11の画像形成面に付与される。
インクジェットデバイスは、インクジェット記録ヘッドを複数有していてもよい。例えば、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクを用いてそれぞれの色画像を形成する場合、インクジェットデバイスは上記4種類のインクを転写体上にそれぞれ吐出する4つのインクジェット記録ヘッドを有する。
送風装置16は、インク像に送風して、インク像から液体成分の少なくとも一部を除去する液除去処理用として設けられている。
加熱装置17は、支持部材12の内部に設けられたヒータでもよく、加熱装置17により転写体11の画像形成面側からインク像を加熱することができる。
押圧ローラ19とドラム状の支持部材12により、転写用の一対の押圧ローラが形成されている。押圧ローラ19の外周面とドラム状の支持部材12の外周面が接触して形成されたニップ部に、記録媒体18を転写体11のインク像を有する画像形成面に重ね合わせて通過させることで、記録媒体18にインク像を押圧して転写することができる。転写時の温度は、加熱装置17により付与される。本実施形態では、転写用の押圧部材としての押圧ローラ19と、転写体11の支持部材12によって転写ユニットが形成されている。
クリーニングユニット20(20a:クリーニング液、20b、20c:クリーニングローラ)は、転写体11を繰り返し連続的に用いる場合に、転写体11の表面を次のインク像の形成用としてクリーニングするために用いられる。本実施形態では、濡らしたモルトンローラを転写体の画像形成面に当接させて払拭することで、画像形成面をクリーニングするクリーニングユニットが設けられている。
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。また、文中「%」及び「部」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。作製した転写体表面の材料を区別するため、各表面層にアルファベットをそれぞれ振った。
<実施例1>
転写体は図1に示す層構造を有し、第一の補強層104、圧縮層103、第二の補強層(不図示)、弾性層102、及び、表面層101をこの順に積層することで製造した。ここで、第一の補強層104は厚さ2.0mmの一枚の綿糸の織布からなり、圧縮層103は厚さ1.0mmの多孔質性のアクリロニトリル・ブタジエンゴムからなり、第二の補強層は厚さ0.05mmのポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムからなる。転写体の弾性層102、表面層101は以下の通りに製造した。
(弾性層)
圧縮層103上に、厚さ0.05mmのポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムからなる第二の補強層を介して、シリコーンゴム形成用の材料(ポリオルガノシロキサン)を積層し、加硫を行い、シリコーンゴムからなる弾性層102を得た。弾性層102の厚さは、0.20mmであった。
(表面層)
(表面層aの作製に用いるコーティング液Aの調製)
加水分解性有機シラン化合物として、ジメチルジエトキシシランとグリシドキシプロピルジエトキシシランとトリエトキシ−1H、1H、2H、2H−トリデカフルオロ−n−オクチルシランを59:40:1のモル比で混合した。その後、加水分解性有機シラン化合物の総モル数に対して2.4モル当量の水を加え、触媒として酢酸を総重量に対して500ppm加え、100℃で24時間加熱還流を行った。これにより、加水分解性有機シラン化合物を脱水縮合して得られる有機シロキサン化合物を含有する溶液を得た。この溶液をエタノール/メチルイソブチルケトン混合溶媒(重量比4/1)により、有機シロキサン化合物(a)の含有量が35質量%となるように希釈した。柔軟成分として1,5−ペンタンジオールを有機シロキサン化合物のモル数に対して10mol%を添加した。また、光カチオン重合開始剤CPI−410S(商品名、サンアプロ株式会社)を有機シロキサン化合物のモル数に対して3mol%を添加してコーティング液Aを調製した。
(表面層の形成)
コーティング液Aを用いて、プラズマ表面処理を行った弾性層102上にスピンコートにて塗布して成膜を行った。次に、UVランプ(装置名:FUSION LIGHT HAMMER、Alpha UV Systems社製、ピーク波長:365nm)を照射して露光後、150℃にて2時間の加熱を行い、硬化させて、厚さ5μmの表面層101(表面層a)を形成した。尚、表面層aの厚さはスピンコートの回転数を制御することによって調整した。
(転写体の表面層の膨潤率測定)
転写体の表面層の1,2−ヘキサンジオールに対する膨潤率は、10%の1,2−ヘキサンジオール水溶液に転写体を12時間浸漬させたのちに、表面層の膨潤前後(浸漬前後)の厚さの変化量をもとに算出した(下記式)。測定は、Optical NanoGauge 膜厚計(型式:C13027、浜松ホトニクス社製)を用いて、非接触の分光干渉法により行った。
膨潤率[%]=((浸漬後の表面層の厚さ)/(初期(浸漬前)の表面層の厚さ)−1)×100
(転写体の表面層の貯蔵弾性率測定)
転写体の表面層の貯蔵弾性率測定は、転写体の表面層の貯蔵弾性率を測定する方法と、別途シリコンウエハ上に表面層を作製して測定する方法のどちらの方法を用いてもよい。本実施例では、より正確な値を測定するため、別途シリコンウエハ上に表面層を作製し、その表面層の弾性率を測定することにより行った。転写体の表面層を作製する際に用いたコーティング液Aをシリコンウエハ上にスピンコートにて塗工し、UVランプを照射して露光後、150℃にて2時間の加熱を行い、硬化させて厚さ5μmの表面層を得た。測定は、TI950 TriboIndenter(Hysitron社製)を用いて、Berkovich型ダイヤモンド圧子にて、荷重40μN、周波数150Hz、室温の条件で行った。
(画像の形成)
上記の方法により得られた転写体について、図2に示す転写型インクジェット記録装置を用いて後述する項目についての評価を行った。転写体の支持部材は、アルミニウム合金からなる円筒型のドラムを用いた。
下記組成の反応液を、ローラ式塗布装置を用いて、転写体の表面に連続的に付与した。本実施例では有機酸としてクエン酸を利用した。
・クエン酸:20.0部
・グリセリン:5.0部
・メガファックF−444(商品名、DIC社製):1.0部
・イオン交換水:74.0部
続いて、画像形成用のインクを、転写体の画像形成面へとインクジェットデバイスから吐出し、転写体上にインク像(ミラー反転している画像)を形成した。インク像の吐出パターンは、記録デューティが100%のベタ画像を1cm×1cmの範囲に形成した100%ベタ画像パターンを用いた。なお、本画像記録装置では、解像度1,200dpi×1,200dpiで1/1,200インチ×1/1,200インチの単位領域に3.0ngのインク滴を1滴付与する条件を、記録デューティが100%であると定義される。インクジェットデバイスとしては、電気−熱変換体を用い、オンデマンド方式にてインク吐出を行うタイプのデバイスを用いた。インクとしては、下記組成の樹脂分散型顔料インクを用いた。
・C.I.ピグメントブルー15:3:3.0部
・スチレン−アクリル酸−アクリル酸エチル共重合体(酸価240、重量平均分子量50000):1.0部
・グリセリン:10.0部
・エチレングリコール:5.0部
・アセチレノールE100(商品名、川研ファインケミカル社製):0.5部
・1,2−ヘキサンジオール:0.5部
・イオン交換水:80部
記録媒体としてコート紙(商品名:オーロラーコート、日本製紙社製、坪量;73.5g/m)を用い、インク像を記録媒体へと圧着・転写することで、最終画像を形成した。この転写を、1.0m/secの速度で50000回行った。この際のクリーニングは、1,2−ヘキサンジオール20%溶液で濡らしたモルトンローラを、転写体の表面に当接させて払拭する方法で行った。
<実施例2〜9、比較例1〜5>
表1に記載の通り、実施例2〜9及び比較例1〜3では、コーティング液Aの代わりに、以下のコーティング液B〜Lをそれぞれ用い、実施例1と同様にして各転写体の表面層b〜lを作製し、図2に示す転写型インクジェット記録装置を用いて評価を行った。また、比較例4では、弾性層上に表面層を設けず、弾性層自体が表面層となる転写体を用いて評価を行った。さらに、比較例5では、弾性層上にブタジエンゴムによって形成された表面層を有する転写体を用いて評価を行った。
(コーティング液Bの調製、および表面層bの形成)
柔軟成分として1,6−ヘキサンジオールを有機シロキサン化合物のモル数に対して10mol%を混合する以外は、コーティング液Aの調製と同様にして、コーティング液Bを調製し、表面層の形成を表面層aと同様の方法で行い、表面層bを得た。
(コーティング液Cの調製、および表面層cの形成)
柔軟成分として1−ブテン−1,4−ジオールを有機シロキサン化合物のモル数に対して10mol%を混合する以外は、コーティング液Aの調製と同様にしてコーティング液Cを調製し、表面層の形成を表面層aと同様の方法で行い、表面層cを得た。
(コーティング液Dの調製、および表面層dの形成)
柔軟成分として2−ペンテン−1,5−ジオールを有機シロキサン化合物のモル数に対して10mol%を混合する以外は、コーティング液Aの調製と同様にして、コーティング液Dを調製し、表面層の形成を表面層aと同様の方法で行い、表面層dを得た。
(コーティング液Eの調製、および表面層eの形成)
柔軟成分として2−ヘキセン−1,6−ジオールを有機シロキサン化合物のモル数に対して10mol%を混合する以外は、コーティング液Aの調製と同様にしてコーティング液Eを調製し、表面層の形成を表面層aと同様の方法で行い、表面層eを得た。
(コーティング液Fの調製、および表面層fの形成)
柔軟成分として1,3−ブタジエン−1,4−ジオールを有機シロキサン化合物のモル数に対して10mol%を混合する以外はコーティング液Aの調製と同様にしてコーティング液Fを調製し表面層の形成を表面層aと同様の方法で行い表面層fを得た。
(コーティング液Gの調製、および表面層gの形成)
柔軟成分として1,3−ペンタジエン−1,5−ジオールを有機シロキサン化合物のモル数に対して10mol%混合する以外はコーティング液Aの調製と同様にしてコーティング液Gを調製し表面層の形成を表面層aと同様の方法で行い表面層gを得た。
(コーティング液Hの調製、および表面層hの形成)
柔軟成分として2,4−ヘキサジエン−1,6−ジオールを有機シロキサン化合物のモル数に対して10mol%混合する以外はコーティング液Aの調製と同様にして、コーティング液Hを調製し表面層の形成を表面層aと同様の方法で行い表面層hを得た。
(コーティング液Iの調製、および表面層iの形成)
柔軟成分として2,4−ヘキサジエン−1,6−ジオールを有機シロキサン化合物のモル数に対して30mol%を混合する以外はコーティング液Aの調製と同様にしてコーティング液Iを調製し表面層の形成を表面層aと同様の方法で行い表面層iを得た。
(コーティング液Jの調製、および表面層jの形成)
柔軟成分として1,4−ブタンジオールを有機シロキサン化合物のモル数に対して10mol%を混合する以外は、コーティング液Aの調製と同様にして、コーティング液Jを調製し、表面層の形成を表面層aと同様の方法で行い、表面層jを得た。
(コーティング液Kの調製、および表面層kの形成)
柔軟成分としてデナコールEX−830(商品名、ナガセケムテックス社製)を有機シロキサン化合物のモル数に対して10mol%を混合する以外は、コーティング液Aの調製と同様にして、コーティング液Kを調製した。続いて、表面層の形成を表面層aと同様の方法で行い、表面層kを得た。このデナコールEX−830は、両末端にエポキシ基をもち、中央にエチレングリコール鎖を有する柔軟成分である。
(コーティング液Lの調製、および表面層lの形成)
シリコーン樹脂としてKF105(商品名、信越化学工業社製)をメチルイソブチルケトンにより、35質量%となるように希釈した。そして、光カチオン重合開始剤CPI−410S(商品名、サンアプロ社製)を有機シロキサン化合物のモル数に対して3mol%を添加して、コーティング液Lを調製した。表面層の形成は表面層aと同様の方法で行い、高強度シリコーン樹脂を有する表面層lを得た。
(表面層mの形成)
弾性層として用いたシリコーンゴムを利用して、弾性層上に新たに表面層を設けることなく評価を行った。この時のシリコーンゴム表面層を表面層mとした。
(表面層nの形成)
0.1mmのブタジエンゴムを弾性層上に貼り付けて、表面層nを有する転写体を作製した。
以下、表1に実施例1〜9および比較例1〜5で用いた表面層をアルファベットで示し、それら表面層の膨潤率、貯蔵弾性率を示した。また、実施例1〜9および比較例1〜5で用いた表面層の評価として、耐摩耗性、画像形成性、転写性、クリーニング性をそれぞれ評価した。評価は以下の基準で行った。なお、比較例3に関しては、作製した表面層lにひび割れが発生していたため、以下の評価は行わなかった。また、比較例5では、1,2−ヘキサンジオールによって表面層の構成材料が変性してしまったため、表面層の膨潤率を測定することができなかった。
(耐摩耗性評価)
表面層の耐摩耗性評価として、学振試験機(井元製作所社製)で表面層を繰り返し摩耗し、その後の表面層の状態を観察して評価を行った。摩耗は、転写体の表面層にトレシーPW(商品名、東レ社製)のシートを荷重200gで押し当てて1000回往復することにより行った。評価は、以下の基準で行った。A:摩耗による表面変化がない、または、摩耗により表面一部にこすれた痕が残るが、削れてはいない。
B:摩耗により表面全体にこすれた痕が残るが、削れてはいない。
C:摩耗により表面が削れている。
(画像形成性評価)
繰り返しの画像形成プロセスを経た後の画像形成性の評価として、1000回画像形成した後の画像形成性の評価を行った。具体的には、前述の画像形成、転写、クリーニングを1000回繰り返した後に、画像形成のみを行い、そのインク像の画像品位を評価した。評価は以下の基準で行った。
A:反応液が弾きなく均一に塗布され、高品位なインク像が良好に形成されていた。
B:反応液のわずかな弾きが確認されるが、インク像の画像品位としては十分であった。
C:反応液の弾きが確認されインク像の一部で十分とは言えない画像品位となっていた。
(転写性評価)
上記の画像形成性評価において、評価に置用いられるインク像が記録媒体に転写された直後であり、転写体のクリーニングを行う前の転写体の表面の状態を目視により確認して、転写性を評価した。評価は以下の基準で行った。
A:転写体にインク像の残りは確認されず、最終画像も良好に形成されている。
B:転写体にインク像の残りがわずかに確認されるが、最終画像の画像品位としては十分であった。
C:転写体にインク像の残りがやや確認され、最終画像の一部は転写が十分でなかった。
(クリーニング性評価)
上記の画像形成性評価において、評価に用いられるインク像が記録媒体に転写され、その後の転写体の表面をクリーニングした後における転写体の表面の状態を目視により確認して、クリーニング性を評価した。評価は以下の基準で行った。
A:クリーニング後の転写体の表面にインク残渣もしくはクリーニング液残りが確認されなかった。
B:クリーニング後の転写体の表面にインク残渣もしくはクリーニング液残りがわずかに確認されるが、その後の画像形成に影響を与えなかった。
C:クリーニング後の転写体の表面にインク残渣もしくはクリーニング液残りが確認され、その後の画像形成に影響を与えた。
Figure 2021115859
11 転写体
12 支持部材
13 回転軸
14 反応液付与装置
15 インク付与装置
16 送風装置
17 加熱装置
18 記録媒体
19 押圧ローラ
20 クリーニングユニット
101 表面層
102 弾性層
103 圧縮層
104 補強層

Claims (9)

  1. 基層と、表面層とを有する転写体であって、
    前記表面層の1,2−ヘキサンジオールに対する膨潤率が5%以下であり、
    前記表面層の貯蔵弾性率が30MPa以上250MPa以下であることを特徴とする転写体。
  2. 前記表面層が、加水分解性有機シラン化合物の縮合物を含む、請求項1に記載の転写体。
  3. 前記加水分解性有機シランの縮合物が、下記一般式(3)
    −(C(2n−m)− (3)
    (式中、nは1〜7の整数を、mは0〜2の整数を、pは1〜120の整数を表す。)
    で示される炭化水素基を含む、請求項2に記載の転写体。
  4. 前記転写体が、加熱転写用である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の転写体。
  5. 前記表面層の1,2−ヘキサンジオールに対する膨潤率が3%以下である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の転写体。
  6. 転写体の画像形成面にインクを高粘度化する成分を含む反応液を付与する反応液付与工程と、
    前記転写体の前記画像形成面にインクを付与してインク像を形成するインク付与工程と、
    前記インク像を前記転写体から記録媒体に転写する転写工程と、
    を有するインクジェット記録方法であって、
    前記転写体が、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の転写体であることを特徴とするインクジェット記録方法。
  7. 前記インク像を前記記録媒体への転写温度に加熱する加熱工程を有する、請求項6に記載のインクジェット記録方法。
  8. 転写体の画像形成面にインクを高粘度化する成分を含む反応液を付与する反応液付与装置と、前記転写体の前記画像形成面にインクを付与することによってインク像を形成するインク付与装置と、を有する画像形成ユニットと、
    前記インク像を前記転写体から記録媒体に転写する転写ユニットと、
    を有するインクジェット記録装置であって、
    前記転写体が、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の転写体であることを特徴とするインクジェット記録装置。
  9. 前記インク像を前記記録媒体への転写温度に加熱する加熱装置を有する、請求項8に記載のインクジェット記録装置。
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