JP6980434B2 - 転写体、転写型インクジェット記録装置及び転写型インクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
<転写体>
本発明の一実施形態に係る転写型インクジェット記録用の転写体の構成を図1に示す。転写体1は、表層部2を有し、転写体1の画像形成面は、表層部2の表面(転写体の表面)である。この画像形成面に、インクジェットデバイスを用いてインクを付与することにより、インク像が形成される。以下、転写体上に形成されたインク像を中間画像とも称する。
本発明の転写体における表層部とは、転写体の画像形成面側の最表面に位置する画像形成面を含む部分であって、表面層のように層を形成していてもよい。表層部は、中間画像との剥離性が良好な表面を有する。表層部は、その貯蔵弾性率が20MPa以上100MPa以下であり、かつ損失正接が0.100以下である。表層部の粘弾性を上記範囲に規定することにより、高速で繰り返し転写する場合においても、高い転写性を維持でき、かつ、クラックの発生を抑えることができる転写体を得ることができる。
例えば、エポキシ基等の架橋性重合基を有する有機ケイ素化合物を、他の有機ケイ素化合物と共縮合させる場合に、架橋性モノマーである架橋性重合基を有する有機ケイ素化合物の比率を小さくすれば、貯蔵弾性率を小さくすることができる。また、柔軟性を付与する添加剤として、ポリエチレンオキサイドユニットなどのポリアルキレンオキサイドユニットを有する化合物を添加すれば、同様に貯蔵弾性率を小さくすることができる。このとき、該添加剤の添加量としては、有機ケイ素化合物の総量に対して0.1mol%以上20mol%以下が好ましく、1mol%以上10mol%以下がより好ましい。
また、フッ化アルキル基を有する有機ケイ素化合物を用いれば、表層部の表面自由エネルギーを低くすることができる。その際、同時に表層部のタック性も低くなるため、中間画像との剥離性が向上して転写性を高めることができる。
弾性層とは、表層部と圧縮層との間に狭持されていてもよい弾性体を有する層である。弾性層を設けることで、転写時の転写体の表層部表面における記録媒体表面の凹凸形状への追従性が良好になる。また、圧縮層の表面凹凸形状が大きい場合でも、弾性層が圧縮層上に形成されることにより、転写体表面の平滑化に寄与する。
また、弾性層に使用する弾性体の硬度は、デュロメータ・タイプA(JIS K 6253準拠)硬度で、20度以上80度以下であることが好ましく、30度以上60度以下であることがより好ましい。弾性体の硬度を20度以上とすることにより、弾性層の大きな変形を抑制し、弾性層の変形に対する表層部の良好な追従性を担保することができる。また、弾性体の硬度を80度以下とすることにより、特に高速転写時において表層部に掛かる局所的な応力を、弾性層で十分に緩和することができ、転写体の耐クラック性及び転写性を高めることができる。
圧縮層とは、圧力変動を吸収する機能を有する層のことである。圧縮層を設けることで、圧縮層が変形を吸収し、局所的な圧力変動に対してその変動を分散させ、高速印刷時においても良好な転写性を維持することができる。
基材は、転写体の平面方向の強度を高めるため、およびインクジェット記録装置へ装着する転写体のハンドリング性を高めるために設けられる。基材に用いられる材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属材料;アセタール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリウレタン等の樹脂材料;織布、不織布、フェルト等の布材料等である。また、これらを組み合わせて用いることも好ましい。基材は、適用する記録装置の形態または記録媒体への転写態様に合わせて、フィルム状のものを好ましく使用することができる。
本発明に係る転写型インクジェット記録装置の一実施形態を図3に示す。この転写型インクジェット記録装置は、画像形成面を有する本発明の転写体11と、インク付与装置としてのインクジェットデバイス15と、反応液付与装置としてのローラ式塗布装置14と、転写用の押圧部材(転写用の押圧ローラ)18とを有する。押圧ローラ18は、転写体11とともに中間画像(インク像)の転写装置を構成している。インクジェットデバイス15は、インクを吐出するインクジェット記録ヘッドを有する。また、転写型インクジェット記録装置は、必要に応じて転写した後の転写体11の表面をクリーニングするクリーニング部材19を有していてもよい。
転写体11は支持部材12上に支持されている。転写体11の支持方法として、各種接着剤や両面テープを用いてもよい。または、転写体11に金属、セラミック、樹脂等を材質とした設置用部材を取り付けることで、設置用部材を用いて転写体11を支持部材12上に支持してもよい。
支持部材には、その搬送精度や耐久性の観点から、ある程度の構造強度が求められる。支持部材の材質としては、金属、セラミック、樹脂等が好ましく用いられる。中でも、転写時の加圧に耐え得る剛性や寸法精度のほか、動作時のイナーシャを軽減して制御の応答性を向上するために、以下のものが好ましく用いられる。例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属材料;アセタール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリウレタン等の樹脂材料;シリカセラミクス、アルミナセラミクス等のセラミクス材料等である。また、これらを組み合わせて用いることも好ましい。支持部材は、適用する記録装置の形態または記録媒体への転写態様に合わせて、例えばローラ状、ベルト状のものを好ましく使用することができる。ドラム状の支持部材やベルト状の無端ウエブ構成の支持部材を用いると、同一の転写体を連続して繰り返し使用することが可能となり、生産性の面から極めて好ましい。
本発明の転写型インクジェット記録方法は、良好なインク像を形成するために、反応液を転写体上に付与する工程(反応液付与工程)を更に有していることが好ましい。また、転写体には、インクを付与する前に反応液を付与しておくことが好ましい。反応液はインクと接触することによって、転写体上でのインク及び/又はインク組成物の一部の流動性を低下せしめて、インクによる画像形成時のブリーディングや、ビーディングを抑制することができる。具体的には、反応液に含まれる反応剤(インク高粘度化成分とも称する)が、インクを構成している組成物の一部である色材や樹脂等と接触することによって化学的に反応し、あるいは物理的に吸着する。これによって、インク全体の粘度の上昇や、色材などインクを構成する成分の一部が凝集することによる局所的な粘度の上昇を生じさせ、インク及び/又はインク組成物の一部の流動性を低下させることができる。反応液を付与する方法としては、従来知られている各種手法を適宜用いることができる。例えば、ダイコーティング、ブレードコーティング、グラビアローラー、または、これらにオフセットローラーを組み合わせたもの等が挙げられる。また、反応液を高速かつ高精度に付与できる手法として、インクジェットデバイスを用いることも好ましい。
以下、本実施形態に適用される反応液を構成する各成分について詳細に説明する。
反応液は、インクと接触することによりインク中のアニオン性基を有する成分(樹脂、自己分散顔料など)を凝集させるものであり、反応剤を含有する。反応剤としては、例えば、多価金属イオン、カチオン性樹脂などのカチオン性成分や、有機酸など挙げることができる。
多価金属イオンとしては、例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+及びZn2+などの2価の金属イオンや、Fe3+、Cr3+、Y3+及びAl3+などの3価の金属イオンが挙げられる。反応液に多価金属イオンを含有させるためには、多価金属イオンとアニオンとが結合して構成される多価金属塩(水和物であってもよい)を用いることができる。アニオンとしては、例えば、Cl−、Br−、I−、ClO−、ClO2 −、ClO3 −、ClO4 −、NO2 −、NO3 −、SO4 2−、CO3 2−、HCO3 −、PO4 3−、HPO4 2−、及びH2PO4 −などの無機アニオン;HCOO−、(COO−)2、COOH(COO−)、CH3COO−、C2H4(COO−)2、C6H5COO−、C6H4(COO−)2及びCH3SO3 −などの有機アニオンを挙げることができる。反応剤として多価金属イオンを用いる場合、反応液中の多価金属塩換算の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、1.00質量%以上20.00質量%以下であることが好ましい。
有機酸を含有する反応液は、酸性領域(pH7.0未満、好ましくはpH2.0〜5.0)に緩衝能を有することによって、インク中に存在する成分のアニオン性基を酸型にして凝集させるものである。有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピコリン酸、ニコチン酸、チオフェンカルボン酸、レブリン酸、クマリン酸などのモノカルボン酸及びその塩;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、セバシン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、などのジカルボン酸、及びその塩や水素塩;クエン酸、トリメリット酸などのトリカルボン酸及びその塩や水素塩;ピロメリット酸などのテトラカルボン酸及びその塩や水素塩、などを挙げることができる。反応液中の有機酸の含有量(質量%)は、1.00質量%以上50.00質量%以下であることが好ましい。
カチオン性樹脂としては、例えば、1〜3級アミンの構造を有する樹脂、4級アンモニウム塩の構造を有する樹脂などを挙げることができる。具体的には、ビニルアミン、アリルアミン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、エチレンイミン、グアニジンなどの構造を有する樹脂などを挙げることができる。反応液における溶解性を高めるために、カチオン性樹脂と酸性化合物とを併用したり、カチオン性樹脂の4級化処理を施したりすることもできる。反応剤としてカチオン性樹脂を用いる場合、反応液中のカチオン性樹脂の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、1.00質量%以上10.00質量%以下であることが好ましい。
反応剤以外の成分としては、インクに用いることができるものとして先に挙げた、水性媒体、その他の添加剤などと同様のものを用いることができる。
本工程では、反応液を付与した転写体11の画像形成面に、インクジェットデバイス15によってインクが付与され、中間画像が形成される。インクジェットデバイスとしては、例えば電気−熱変換体によりインクに膜沸騰を生じさせ気泡を形成することでインクを吐出する形態、電気−機械変換体によってインクを吐出する形態、静電気を利用してインクを吐出する形態等がある。高速で高密度の印刷を行うためには、電気−熱変換体を利用した形態が好ましく用いられる。インクジェットデバイス全体の形態としては、特に制限はない。転写体の進行方向(ドラム形状の場合は軸方向)にインク吐出口を配列してなるラインヘッド形態のヘッドや、転写体の進行方向と垂直にヘッドを走査しながら記録を行うシャトル形態のヘッドを用いることもできる。
以下、本実施形態に適用されるインクを構成する各成分について詳細に説明する。
色材としては、顔料や染料を用いることができる。インク中の色材の含有量は、インク全質量を基準として、0.5質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがより好ましい。
顔料の具体例としては、カーボンブラック、酸化チタンなどの無機顔料;アゾ、フタロシアニン、キナクリドン、イソインドリノン、イミダゾロン、ジケトピロロピロール、ジオキサジンなどの有機顔料を挙げることができる。
顔料の分散方式としては、分散剤として樹脂を用いた樹脂分散顔料や、顔料の粒子表面に親水性基が結合している自己分散顔料などを用いることができる。また、顔料の粒子表面に樹脂を含む有機基を化学的に結合させた樹脂結合型顔料や、顔料の粒子の表面を樹脂などで被覆したマイクロカプセル顔料などを用いることができる。
顔料を水性媒体中に分散させるための樹脂分散剤としては、アニオン性基の作用によって顔料を水性媒体中に分散させうるものを用いることが好ましい。樹脂分散剤としては、好適には、後述するような樹脂、さらに好適には水溶性樹脂を用いることができる。顔料の含有量(質量%)は、樹脂分散剤の含有量に対する質量比率で(顔料/樹脂分散剤)、0.3倍以上10.0倍以下であることが好ましい。
自己分散顔料としては、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基などのアニオン性基が、直接又は他の原子団(−R−)を介して顔料の粒子表面に結合しているものを用いることができる。アニオン性基は、酸型及び塩型のいずれであってもよく、塩型である場合は、その一部が解離した状態及び全てが解離した状態のいずれであってもよい。アニオン性基が塩型である場合のカウンターイオンとなるカチオンとしては、アルカリ金属カチオン;アンモニウム;有機アンモニウム;などを挙げることができる。また、他の原子団(−R−)の具体例としては、炭素原子数1乃至12の直鎖又は分岐のアルキレン基;フェニレン基やナフチレン基などのアリーレン基;カルボニル基;イミノ基;アミド基;スルホニル基;エステル基;エーテル基などを挙げることができる。また、これらの基を組み合わせた基としてもよい。
染料としては、アニオン性基を有するものを用いることが好ましい。染料の具体例としては、アゾ、トリフェニルメタン、(アザ)フタロシアニン、キサンテン、アントラピリドンなどの染料を挙げることができる。
インクには、樹脂を含有させることができる。インク中の樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上15.0質量%以下であることがさらに好ましい。
樹脂は、(i)顔料の分散状態を安定にする、すなわち上述の樹脂分散剤やその補助として、(ii)記録される画像の各種特性を向上させる、などの理由でインクに添加することができる。樹脂の形態としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、及びこれらの組み合わせなどを挙げることができる。また、樹脂は、水性媒体に水溶性樹脂として溶解した状態であってもよく、水性媒体中に樹脂粒子として分散した状態であってもよい。樹脂粒子は色材を内包するものである必要はない。
本発明において樹脂が水溶性であることとは、その樹脂を酸価と当量のアルカリで中和した場合に、動的光散乱法により粒子径を測定しうる粒子を形成しないものであることとする。樹脂が水溶性であるか否かについては、以下に示す方法にしたがって判断することができる。まず、酸価相当のアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)により中和された樹脂を含む液体(樹脂固形分:10質量%)を用意する。次いで、用意した液体を純水で10倍(体積基準)に希釈して試料溶液を調製する。そして、試料溶液中の樹脂の粒子径を動的光散乱法により測定した場合に、粒子径を有する粒子が測定されない場合に、その樹脂は水溶性であると判断することができる。この際の測定条件は、例えば、SetZero:30秒、測定回数:3回、測定時間:180秒、のように設定することができる。粒度分布測定装置としては、動的光散乱法による粒度分析計(例えば、商品名「UPA−EX150」、日機装製)などを使用することができる。勿論、使用する粒度分布測定装置や測定条件などは上記に限られるものではない。
樹脂の酸価は、水溶性樹脂の場合100mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることが好ましく、樹脂粒子の場合5mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることが好ましい。樹脂の重量平均分子量は、水溶性樹脂の場合3,000以上15,000以下であることが好ましく、樹脂粒子の場合1,000以上2,000,000以下であることが好ましい。樹脂粒子の動的光散乱法(測定条件は上記と同様)により測定される体積平均粒子径は、100nm以上500nm以下であることが好ましい。
アクリル系樹脂としては、親水性ユニット及び疎水性ユニットを構成ユニットとして有するものが好ましい。なかでも、(メタ)アクリル酸に由来する親水性ユニットと、芳香環を有するモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの少なくとも一方に由来する疎水性ユニットと、を有する樹脂が好ましい。特に、(メタ)アクリル酸に由来する親水性ユニットと、スチレン及びα−メチルスチレンの少なくとも一方のモノマーに由来する疎水性ユニットとを有する樹脂が好ましい。これらの樹脂は、顔料との相互作用が生じやすいため、顔料を分散させるための樹脂分散剤として好適に利用することができる。
親水性ユニットは、アニオン性基などの親水性基を有するユニットである。親水性ユニットは、例えば、親水性基を有する親水性モノマーを重合することで形成することができる。親水性基を有する親水性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボン酸基を有する酸性モノマー、これらの酸性モノマーの無水物や塩などのアニオン性モノマーなどを挙げることができる。酸性モノマーの塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンを挙げることができる。疎水性ユニットは、アニオン性基などの親水性基を有しないユニットである。疎水性ユニットは、例えば、アニオン性基などの親水性基を有しない、疎水性モノマーを重合することで形成することができる。疎水性モノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリル酸ベンジルなどの芳香環を有するモノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマーなどを挙げることができる。
ウレタン系樹脂としては、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させて得ることができる。また、鎖延長剤をさらに反応させたものであってもよい。オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを挙げることができる。
インクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有させることができる。水としては、脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。水性インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、水性インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、アルコール類、(ポリ)アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類、含硫黄化合物類などのインクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができる。
インクには、上記成分以外にも必要に応じて、消泡剤、界面活性剤、pH調整剤、粘度調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤など種々の添加剤を含有してもよい。
本発明に係る転写型インクジェット記録方法は、形成された中間画像から液体分を減少させる乾燥工程を有していてもよい。図3に示す転写型インクジェット記録装置では、ヒーター16を用いて加熱することにより、中間画像から液体分を減少させている。中間画像の液体分が過剰であると、次の転写工程において、余剰液体がはみ出したり溢れ出したりすることがある。その結果、中間画像の乱れや転写性の低下が生じる場合がある。液体分を除去する手法としては、一般的に用いられる各種手法をいずれも好ましく適用することができる。例えば、加熱による方法、低湿空気を送風する方法、減圧する方法、吸収体を接触させる方法等が挙げられる。また、これらを複数組み合わせてもよい。あるいは、自然乾燥により乾燥を行うことも可能である。
乾燥工程後、中間画像を記録媒体に接触して、中間画像を転写体の画像形成面から記録媒体へ転写する転写工程により、最終画像を記録した印字物を得る。なお、本発明における記録媒体とは、一般的な印刷で用いられる普通紙や光沢紙のみならず、広く、布、プラスチック、フィルムその他の印刷媒体等も含むものである。中間画像が記録媒体に接触する際には、押圧ローラ18で転写体に向けて記録媒体を押圧することによって、効率良く中間画像が記録媒体に転写されるため好ましい。また、多段階に押圧することも良好な転写性が得られるため好ましい。
転写体は、生産性の観点から繰り返し連続的に用いることがある。その際には、次の画像形成を行う前に、クリーニングローラ19等で転写体の表面を洗浄再生するクリーニング工程を実施することが好ましい。クリーニングを行う手段としては、一般的に用いられている各種手法をいずれも好ましく適用することができる。例えば、シャワー状に洗浄液を当てる方法、濡らしたモルトンローラを表面に当接させて払拭する方法、洗浄液面に接触させる方法、ワイパーブレードで掻き取る方法、各種エネルギーを付与する方法等が挙げられる。また、これらを複数組み合わせてもよい。
まず、下記表1に示す加水分解性有機ケイ素化合物及び添加剤を用いて、転写体の表層部に含有される縮合物を合成した。
以下に示す加水分解性有機ケイ素化合物、添加剤及び水を混合し、得られた混合物を24時間加熱還流させて、縮合物X01を含有する溶液を得た。なお、添加剤としてのBTES−PEOの添加量は、GPMDESとDMDESとの総量に対して3mol%である。
・GPMDES 74.52g
・DMDES 177.94g
・BTES−PEO 67.50g
・水 64.85g
下記表2に示す加水分解性有機ケイ素化合物、添加剤及び水を用いて、縮合物X01の合成と同様に、縮合物X02〜X13を含有する溶液を得た。
続いて、得られた各縮合物を含有する溶液を用いて、転写体を作製した。
縮合物X02を含有する溶液を、エタノール/メチルイソブチルケトン混合溶媒(質量比:4/1)により25質量%に希釈し、光重合開始剤として光カチオン重合開始剤であるCPI−410S(商品名、サンアプロ(株)製)を固形分に対して3質量%添加して、表層部形成用の塗工液を得た。
続いて、基材としての厚さ0.05mmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に、ゴム硬度(デュロメータ・タイプA硬度)40度のシリコーンゴムによって形成した厚さが0.2mmの弾性層を有する積層体を用意した。次に、この積層体の弾性層の表面に大気圧プラズマ処理を施した。そして、この大気圧プラズマ処理を施した積層体の弾性層の表面上に、上記の表層部形成用の塗工液をスピンコートにて塗工して成膜した。その後、塗工された表層部形成用の塗工液に、UVランプを照射して露光させ(露光量:1.74J/m2)、さらに150℃にて2時間加熱することで、上記の塗工液を硬化させて、画像形成面を構成する表層部(表面層)を有する転写体Y01を得た。得られた転写体Y01の表層部の厚さは3.5μmであった。
下記表3に示す縮合物、光重合開始剤、UV露光量及び加熱温度にて、製造例1と同様に、転写体Y02〜Y18を作製した。なお、転写体Y08においては、光重合開始剤として光カチオン重合開始剤であるSP150(商品名、(株)ADEKA製)を使用した。
得られた各転写体の表層部(表面層)の厚さは、いずれも3.5μmであった。さらに、各転写体の表層部について、転写体Y01と同様に動的粘弾性測定を行い、貯蔵弾性率及び損失正接を測定した。結果を表3に示す。
[実施例1〜15、比較例1〜6]
得られた各転写体について、図3に示す転写型インクジェット記録装置を用いて下記の評価を行った。なお、転写体の支持部材12としては、アルミニウム合金からなる円筒形のドラムを用いた。
まず、ローラ式塗布装置を用いて、反応液を転写体の表面に連続的に付与した。反応液としては、以下に示すものを使用した。
Z1:クエン酸の50質量%水溶液に界面活性剤と添加剤を適宜添加して、表面張力及び粘度を調整した溶液
Z2:塩化カルシウム(CaCl2・2H2O)の12.0質量%水溶液に界面活性剤と添加剤を適宜添加して、表面張力及び粘度を調整した溶液
・C.I.ピグメントブルー15 3.0質量部
・スチレン−アクリル酸−アクリル酸エチル共重合体(酸価240、重量平均分子量5000) 1.0質量部
・グリセリン 10.0質量部
・エチレングリコール 5.0質量部
・界面活性剤(商品名:アセチレノールE100、川研ファインケミカル(株)製)
0.5質量部
・イオン交換水 80.5質量部
転写体の表面を光学顕微鏡にて観察し、以下の基準で評価した。
A:転写体の表面にクラックの発生は確認されなかった。
B:転写体の表面に僅かにクラックが確認された。
C:転写体の表面にクラックが確認された。
D:転写体の表面に多くのクラックが確認された。
転写後の転写体上のインク像及び記録媒体上に形成された最終画像の画像品位を光学顕微鏡にて観察し、以下の基準で評価した。
A:転写体にインク像の残りは確認されず、最終画像も良好に形成されていた。
B:転写体にインク像の残りがやや確認されたが、最終画像の品位としては十分であった。
C:転写体にインク像の残りがやや確認され、最終画像の一部は転写が十分でなかった。
D:転写体にインク像の残りが確認され、最終画像は全体的に転写が十分でなかった。
また、貯蔵弾性率が20MPa以上50MPa以下で、かつ損失正接が0.050以下である転写体(実施例1〜4、8、14及び15)は、耐久性が非常に高くなった。一方、比較例1のように貯蔵弾性率が20MPa未満である場合、繰り返し印刷後の表層部には摩耗が生じており、転写性が低下した。
さらに、転写体Y15において反応液の比較を行ったところ(実施例11及び12)、反応液に有機酸を含まない場合には、繰り返し記録後のクラック発生が抑制され、耐久性は向上した。ただし、反応液が有機酸を含まない場合、1.0m/sでの高速印刷時には反応液の凝集効果が低いため転写性がやや低下した。したがって、高速印刷時にも高い転写性を維持するためには、有機酸を含む反応液を使用することが好ましい。なお、その場合、繰り返し記録時の耐久劣化が起こりやすくなるが、本発明の耐久性の高い転写体であれば、実用上問題のない程度のダメージに抑えることができる。
2 表層部
Claims (8)
- 少なくとも基材、弾性層、及び表層部をこの順に有するインクジェット記録用の転写体であって、
前記表層部の貯蔵弾性率が20MPa以上100MPa以下であり、かつ、損失正接(tanδ)が0.100以下であり、かつ、前記貯蔵弾性率及び前記損失正接は、シリコンウエハ上に前記表層部と同じ厚さで前記表層部を形成したものを測定サンプルとして用いて測定されたものであり、
前記表層部の厚さが、1μm以上10μm以下であり、
前記弾性層のデュロメータ・タイプA硬度が、20度以上80度以下であり、
前記弾性層の厚さが、0.01mm以上1.0mm以下であり、
前記基材が、樹脂材料を含み、
前記基材の厚さが、0.01mm以上5mm以下であることを特徴とする、転写体。 - 前記表層部が有機ケイ素化合物の縮合物を含有する、請求項1に記載の転写体。
- 前記表層部の貯蔵弾性率が20MPa以上50MPa以下である、請求項1または2に記載の転写体。
- 前記表層部の損失正接が0.050以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の転写体。
- 前記樹脂材料が、アセタール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、またはポリウレタンである請求項1〜4のいずれか一項に記載の転写体。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の転写体を備えた転写型インクジェット記録装置。
- 転写体上に、インクジェットデバイスを用いてインクを付与することでインク像を形成する工程と、
前記インク像を前記転写体から記録媒体に転写する工程と、
を含むインクジェット記録方法であって、
前記転写体が請求項1〜5のいずれか一項に記載の転写体であることを特徴とする、転写型インクジェット記録方法。 - 前記転写体に、反応液を付与する工程を有する請求項7に記載の転写型インクジェット記録方法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2017138558A JP6980434B2 (ja) | 2017-07-14 | 2017-07-14 | 転写体、転写型インクジェット記録装置及び転写型インクジェット記録方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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