JP6775998B2 - 画像記録方法、処理液、及び、インクと処理液のセット - Google Patents
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Description
本発明者らは先ず、長期的に継続する(繰り返される)高速の画像形成において、画像濃度ムラが抑制され、かつ、画像滲みが抑制された高画質な画像記録ができなかった原因について検討を行った。その結果、処理液中の有機酸と処理液の塗布部を構成する金属部位が接触することにより金属が溶出することがわかった。また、それにより、処理液中の有機酸と金属との塩が析出する可能性があることがわかった。これらから、塗布される処理液中の有機酸量の減少や、金属部位の溶出による塗布装置の不具合が発生することで、高速の画像形成において画像濃度ムラが抑制され、かつ、画像滲みが抑制された高画質な画像が得られなかったと思われる。
(1)有機化合物Aは、特許文献2に開示のベンゾトリアゾールなどの含窒素ヘテロ環化合物及び有機メルカプト化合物のような金属溶出抑制物質に比べ、処理液中への溶解性がよい。また、有機化合物Aは、界面活性能を有するノニオン性の有機化合物のような金属溶出抑制物質に比べ、金属部位表面とイオン結合することから金属部位表面への吸着力が強いと思われる。それらゆえ、前記有機化合物Aは、他の金属溶出抑制物質に比べ、塗布部を構成する金属部位表面に吸着しやすく、金属溶出を抑制すると思われる。そして、それにより、処理液中に含まれる有機酸と金属との塩が析出しなくなると思われる。
また、(2)処理液中の前記有機化合物Aは、インク中の顔料等を高粘度化する成分としても作用するため、インク凝集性をさらに高める。
上記の(1)及び(2)により、長期的に継続する高速の画像形成において画像濃度ムラが抑制され、かつ、画像滲みが抑制された高画質な画像が得られたと発明者らは推測している。
本発明における処理液は、有機酸、有機化合物A、適量の水や有機溶剤、pH調整剤、界面活性剤等を有する。
有機酸には、記録媒体上でのインク及び/又はインク組成物の一部の流動性を低下せしめて、画像形成時のブリーディング、ビーディングを抑制する効果がある。すなわち、インクジェットデバイスを用いた画像形成においては単位面積当たりのインク付与量が多量となる場合があり、そのような時にはインクの滲みや混じり合いであるブリーディング、ビーディングが起こりやすい。しかし、処理液が記録媒体上に付与されていることによって、インクにより画像が形成される時に流動性が低下するためブリーディングやビーディングが起こりにくく、結果として画像が良好に形成・保持されることとなる。
有機化合物Aは、分子構造中に、アニオン性基と、アミノ基または第四級アンモニウムとを有し、かつ、界面活性能を有する。本発明においてアニオン性基とは、処理液中でアニオン性を示す基である。塩を形成している官能基も、処理液中で解離してイオンとして存在し得る場合は、便宜上、「アニオン性基」と表現する。アニオン性基としては、カルボン酸基(−COOM1)、スルホン酸基(−SO3M1)、ホスホン酸基(−PO3HM1、−PO3M1 2)、−COO−、−SO3 −、PO3 2−などが挙げられる。ここで、M1は水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、または有機アンモニウムを表す。これらの中でも、アニオン性基としては、特にカルボン酸基(−COOM1)またはCOO−が好ましい。また、本発明において、アミノ基は、−NH2、−NHR10、−NR11R12を含む。ここで、R10、R11及びR12は、それぞれ独立して、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ベンジル基または複素環基を表す。
また、本発明に係る処理液は、適量の水や有機溶剤を含有させてもよい。例えば、水、或いは水と水溶性有機溶剤との混合溶媒が挙げられる。有機溶剤としては、具体的には、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのアルカンジオール類;ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテルなどのグリコールエーテル類;エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第2ブタノール、第3ブタノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのカルボン酸アミド類;アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オンなどのケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類;グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,2−又は1,4−ブチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのアルキレングリコール類;チオジグリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体などの多価アルコール類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシドなどの含硫黄化合物などが好適に用いられる。また、これらの中から2種類以上を選択して混合して用いることもできる。
処理液には、水素イオン濃度(pH)調整のために中和剤(pH調整剤)を添加してもよい。具体的には、例えば、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。処理液のpHは、高画質形成の観点から0.5〜5であることが好ましい。
本発明の画像記録方法で用いるインクは、顔料を必須成分として含有する顔料インクである。また、インクは、通常、樹脂粒子、水溶性樹脂などの顔料分散剤、水、有機溶剤、界面活性剤、及びpH調整剤などの各種成分を含有してもよい。
顔料の種類は特に限定されず、公知の黒色顔料及び有機顔料を用いることができる。黒色顔料としては、カーボンブラックを用いることが好ましい。また、有機顔料としては、C.I.(カラーインデックス)ナンバーで表される顔料を用いることができる。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.2〜15.0質量%であることが好ましく、0.6〜10.0質量%であることがより好ましい。
本発明の画像記録方法で用いるインクは、樹脂粒子を含有することが好ましい。本発明における「樹脂粒子」とは、粒径を有する状態で溶媒中に分散して存在しうる樹脂を意味する。樹脂粒子の体積平均粒子径(D50)は、10〜1,000nmであることが好ましく、40〜500nmであることがより好ましい。
なお、樹脂粒子の体積平均粒子径は、例えば、純水で50倍(体積基準)に希釈したインクなどの樹脂粒子分散体を測定試料とし、動的光散乱方式の粒度分布測定装置を使用して測定することができる。動的光散乱方式の粒度分布測定装置としては、例えば、「UPA−EX150」(商品名、日機装製)などを使用することができる。また、測定条件としては、例えば、SetZero:30s、測定回数:3回、測定時間:180秒、屈折率:1.5が選択される。
インクには、顔料をインク中に分散させるための顔料分散剤を含有させることができる。顔料分散剤としては、公知のインクジェット用のインクに用いられる顔料分散剤を用いることができる。中でも、その分子構造中に親水性部と疎水性部とを併せ持った水溶性樹脂を顔料分散剤として用いることが好ましい。特に、親水性モノマーと疎水性モノマーとを共重合させて得られる水溶性樹脂からなる顔料分散剤が好ましい。親水性モノマーとしては、アニオン性の官能基であるカルボキシ基を有するアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸などを挙げることができる。また、疎水性モノマーとしては、スチレン、スチレン誘導体、アルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
インクに含まれる顔料と顔料分散剤の質量比は、顔料:顔料分散剤=1:0.1〜1:3であることが好ましい。なお、顔料分散剤を用いることなく、顔料自体を表面改質してインク中に分散可能とした、いわゆる自己分散性顔料を用いることも好ましい。
インクには、必要に応じて、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、水溶性樹脂の中和剤、及び塩などの種々の添加剤を含有させてもよい。また、インクには、表面張力を調整するために界面活性剤を含有させることができる。界面活性剤としては、保存安定性が低下する等の悪影響をインクに対して及ぼさないものであれば用いることができる。用いることができる界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類、アセチレンアルコール類、アセチレングリコール類等のノニオン性界面活性剤を挙げることができる。これらの界面活性剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の画像記録方法は、インクジェット方式の記録ヘッドからインクを吐出させて記録媒体に付与する工程、及び、処理液を記録媒体に付与する工程を有する。処理液は、インクを付与する領域と少なくとも一部で重なるように付与し、これによって記録媒体においてインク及び処理液を互いに接触させて画像を形成する。さらに、インクを付与する前後に記録媒体を加熱する工程を有してもよい。この際に、上記で説明した本発明の処理液とインクとを含むインクと処理液のセットを用いることを特徴とする。本発明の画像記録方法では、インクはインクジェット方式の記録ヘッドから吐出させて付与すればよく、処理液の付与は、インクと同様に記録ヘッドから処理液を吐出させて付与する方法や、ローラーなどで塗布する方法などにより行うことができる。本発明の画像記録方法を行うための装置の構成としては、インクジェット記録装置やこれに塗布機構を設けたものが挙げられ、公知のいずれの構成も採用することができる。本発明においては、ローラーで記録媒体に塗布する方法を用いることが好ましい。
中間転写型の画像記録方法は、記録媒体が中間転写体(以下、「第一の記録媒体」とも称する)であり、該中間転写体上にインク及び処理液を付与して形成された画像を、紙などの中間転写体とは別の記録媒体(以下、「第二の記録媒体」とも称する)に転写することによって、画像を記録する方法である。
直接描画型の画像記録方法は、紙などの記録媒体に直接インク及び処理液を付与し、画像を記録する方法である。
以下、それぞれの画像記録方法に関し、説明を行う。
中間転写型の画像記録方法においては、「中間転写体」が「第一の記録媒体」に該当する。また、最終的に中間画像を転写する紙などの記録媒体は「第二の記録媒体」として説明を行う。
図1に中間転写型の画像記録装置の一例を示す模式図を示した。図1において、第一の記録媒体である中間転写体10は、回転可能なドラム形状の支持部材12と、支持部材12の外周面上に配設された表層部材11とを備える。中間転写体10は、回転軸13を中心として矢印方向(図の反時計回り)に回転駆動する。そして、中間転写体10の回転と同期して、中間転写体10の周囲に配置された各構成が作動するように構成されている。処理液は、塗布ローラーなどの処理液塗布装置14によって、中間転写体10に付与される。インクは、インクジェット方式の記録ヘッド15から付与され、所望の画像がミラー反転した中間画像が中間転写体10に形成される。次いで、温度調整機構17によって、中間転写体上に形成された中間画像の温度が所望の温度になるように調整してもよい。また、このとき、液体除去機構16によって、中間転写体上に形成された中間画像中の液体を除去してもよい。次いで、加圧ローラー19を用いて、第二の記録媒体18と中間転写体10を接触させることで、第二の記録媒体18に中間画像が転写される。中間転写体の表面を洗浄する工程として、クリーニングユニット20を有してもよい。
以下、第一の記録媒体(中間転写体)及び第二の記録媒体、ならびに、中間転写型の画像記録方法の各工程について説明する。
中間転写体は、処理液やインクを保持し、中間画像が記録される記録媒体である。中間転写体は、例えば、それ自体をハンドリングして必要な力を伝達するための支持部材と、中間画像が記録される表層部材とを備えるものが挙げられる。なお、支持部材と表層部材は一体となっていてもよい。中間転写体の形状としては、シート形状、ローラー形状、ドラム形状、ベルト形状、無端ウエブ形状などを挙げることができる。また、中間転写体のサイズは、記録可能な第二の記録媒体のサイズに合わせて適宜設定することができる。
また、中間転写体の表面の、水に対する接触角は、50度以上110度以下が好ましく、60度以上100度以下がより好ましい。
本発明において、第二の記録媒体としては、一般的な印刷に用いられる紙だけでなく、布、プラスチック、フィルムなども広く包含される。第二の記録媒体は、所望のサイズに予めカットされたものであってもよい。また、ロール状に巻かれたシートを用い、画像記録後に所望のサイズにカットされるものであってもよい。
[インク付与工程]
インク付与工程では、インクを中間転写体に付与する。インクの中間転写体への付与手段としては、インクジェット方式を用いることが好ましい。特に、インクに熱エネルギーを作用させて記録ヘッドの吐出口からインクを吐出させる方式がより好ましい。
インクジェット方式の記録ヘッドとしては、ラインヘッドやシリアルヘッドなどを用いることができる。なお、ラインヘッド形態のインクジェットヘッドは、中間転写体の回転方向と直交する方向(ドラム形状の場合は軸方向)にインク吐出口が配列されている。また、シリアルヘッドは、中間転写体の回転方向と直交する方向にヘッドを走査して記録するヘッドである。
処理液付与工程では、中間転写体に処理液を付与する。処理液の中間転写体への付与手段としては、ローラーコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法などの塗布方式や、インクジェット方式などが挙げられる。特に、塗布方式を用いることが好ましい。
中間転写型の画像記録方法においては、インク付与工程に先立って、処理液付与工程を設けることが好ましい。中間転写体への処理液の付与量は、処理液と反応させるインクの構成によって適宜調整すればよい。本発明においては、得られる画像の均一性や定着性などの観点から、中間転写体への処理液の付与量は、0.2〜10.0g/m2が好ましく、0.5〜6.0g/m2であることがより好ましい。なお、中間転写体の大きさ(面積:m2)に対して、処理液を付与する領域が、ある一部分のみである場合は、中間転写体の全面に付与したと仮定して、処理液の付与量の値(g/m2)を求め、この値が上記の範囲を満足することが好ましい。
インク及び処理液の付与により中間画像を形成した後、かつ、転写工程に先立って、中間転写体に形成された中間画像から液体を除去する液体除去工程を有してもよい。中間画像に過剰な液体が含有されていると、転写工程において、過剰な液体が溢れ出るなどして、得られる画像の画質低下を引き起こす場合がある。したがって、液体除去工程において、中間画像から過剰な液体を除去することが好ましい。液体を除去する方法としては、加熱する方法や、低湿空気を送風する方法、減圧する方法、自然乾燥法、またこれらを組み合わせた方法などが挙げられる。
転写工程では、中間転写体に記録された中間画像に第二の記録媒体を接触させることで、中間画像を、第一の記録媒体である中間転写体から第二の記録媒体へと転写し、第二の記録媒体に記録する。中間画像を第二の記録媒体に転写する際には、例えば加圧ローラーなどを使用し、中間転写体と第二の記録媒体の両側から加圧することが好ましい。加圧することで、転写効率を向上することができる。このとき、多段階に加圧してもよい。
また、上述の通り、近年では、高速記録への需要の高まりに伴い、速い転写速度においても高い転写効率を達成することが求められる。したがって、本発明において、転写速度は第二の記録媒体の搬送速度を意味し、0.4m/秒以上であることが好ましく、1.0m/秒以上であることがより好ましく、2.0m/秒以上であることがさらに好ましい。
また、転写の際に、中間画像を加熱することが好ましい。中間画像を加熱する方法としては、加圧ローラーを所定の転写温度に加熱しておく方法や、別途ヒーターを設ける方法が挙げられる。転写工程における加圧ローラーの加熱温度は、用いる樹脂粒子に応じて設定することが好ましいが、25℃以上200℃以下であることがより好ましい。
転写工程の後に、中間画像が転写された第二の記録媒体をローラー等の加圧部材で加圧する定着工程を有してもよい。加圧することで、画像の平滑性を高めることができる。また、画像が転写された第二の記録媒体を加圧部材で加圧する際に、加圧部材を加熱しておくことが好ましい。加熱した加圧部材で加圧することにより、画像の堅牢性を高めることができ、さらに、加熱温度を調整することにより、得られる画像の光沢性を制御することもできる。
転写工程の後に、中間転写体の表面をクリーニングするクリーニング工程を有してもよい。中間転写体をクリーニングする方法としては、従来用いられている方法を何れも使用することができる。具体的には、洗浄液をシャワー状にして中間転写体に付与する方法、濡らしたモルトンローラを中間転写体に当接させて払拭する方法、洗浄液面に中間転写体を接触させる方法、ワイパーブレードで中間転写体の残留物を払拭する方法、各種エネルギーを中間転写体に付与する方法、及び、これらの方法を複数組み合わせた方法などが挙げられる。
図2に直接描画型の画像記録装置の一例を示す模式図を示した。図2において、記録媒体21は、搬送ステージ22上にセットされ、矢印方向に搬送される。そして、処理液は、塗布ローラーなどの処理液塗布装置23によって、記録媒体21に付与される。インクは、インクジェット方式の記録ヘッド24から付与され、所望の画像が形成される。
以下、記録媒体、及び、直接描画型の画像記録方法の各工程について説明する。
直接描画型の画像記録方法において、記録媒体としては、上記中間転写型の画像記録方法における第二の記録媒体として用いられるものと同様のものを用いることができる。具体的には、記録媒体は、一般的な印刷に用いられる紙だけでなく、布、プラスチック、フィルムなども広く包含される。本発明の画像記録方法に用いる記録媒体は、所望のサイズに予めカットされたものであってもよい。また、ロール状に巻かれたシートを用い、画像記録後に所望のサイズにカットされるものであってもよい。
[インク付与工程]
インク付与工程では、インクを記録媒体に付与する。インクの記録媒体への付与手段としては、インクジェット方式を用いることが好ましい。特に、インクに熱エネルギーを作用させて記録ヘッドの吐出口からインクを吐出させる方式がより好ましい。
インクジェット方式の記録ヘッドとしては、ラインヘッドやシリアルヘッドなどを用いることができる。なお、ラインヘッド形態のインクジェットヘッドは、記録媒体の搬送方向と直交する方向にインク吐出口が配列されている。また、シリアルヘッドは、記録媒体の搬送方向と直交する方向にヘッドを走査して記録するヘッドである。
処理液付与工程では、記録媒体に処理液を付与する。処理液の記録媒体への付与手段としては、ローラーコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法などの塗布方式や、インクジェット方式などが挙げられる。特に、塗布方式を用いることが好ましい。
直接描画型の画像記録方法においては、インク付与工程に先立って、処理液付与工程を設けることが好ましい。記録媒体への処理液の付与量は、処理液と反応させるインクの構成によって適宜調整すればよい。本発明においては、得られる画像の均一性や定着性などの観点から、記録媒体への処理液の付与量は、0.2〜10.0g/m2が好ましく、0.5〜6.0g/m2であることがより好ましい。なお、記録媒体の大きさ(面積:m2)に対して、処理液を付与する領域が、ある一部分のみである場合は、記録媒体の全面に付与したと仮定して、処理液の付与量の値(g/m2)を求め、この値が上記の範囲を満足することが好ましい。
インク付与工程または処理液付与工程の後に、画像が形成された記録媒体をローラー等の加圧部材で加圧する定着工程を有してもよい。加圧することで、画像の平滑性を高めることができる。また、画像が形成された記録媒体を加圧部材で加圧する際に、加圧部材を加熱しておくことが好ましい。加熱した加圧部材で加圧することにより、画像の堅牢性を高めることができ、さらに、加熱温度を調整することにより、得られる画像の光沢性を制御することもできる。
本発明に用いられる処理液は、表1に示す組成のように調製した。
A−1:2−ヤシアルキル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチル−4,5−ジヒドロイミダゾリニウムハイドロオキサイド
A−2:ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム
A−3:ドデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン
B−1:ベンゾトリアゾール
B−2:2−フェニル−1−メルカプトトリアゾール
B−3:チオ尿素
B−4:POE(10)アセチレングリコール
F−444:メガファックF−444(商品名、DIC株式会社製)
なお、有機化合物Aに該当するA−1〜A−3は、いずれも水に0.1質量%添加したとき、水の静的表面張力(測定方法:wihelmy法)を60mN/m以下に変化させた。
顔料[カーボンブラック(商品名:モナク1100、キャボット社製)]10部、樹脂水溶液(スチレン−アクリル酸エチル−アクリル酸共重合体、酸価:150mgKOH/g、重量平均分子量:8,000、固形分:20質量%の水溶液、中和剤:水酸化カリウム)15部、純水75部を混合し、バッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に仕込み、0.3mm径のジルコニアビーズを200部充填し、水冷しつつ、5時間分散処理を行った。この分散液を遠心分離機にかけて粗大粒子を除去した後、顔料濃度が約10質量%のブラック顔料分散液を得た。
顔料としてC.I.ピグメントブルー15:3を用いた以外はブラック顔料分散液と同様に調製し、顔料濃度が約10質量%のシアン顔料分散液を得た。
水溶性樹脂1として、スチレン−アクリル酸ブチル−アクリル酸共重合体(酸価:121mgKOH/g、重量平均分子量:7,000、固形分:20質量%の水溶液、中和剤:水酸化カリウム)を用いた。
エチルメタクリレート18部、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)2部、n−ヘキサデカン2部を混合し、0.5時間攪拌した。この混合物を、スチレン−アクリル酸ブチル−アクリル酸共重合体(酸価:130mgKOH/g、重量平均分子量:7,000)の6質量%水溶液78部に滴下して、0.5時間攪拌した。次に、超音波照射機で超音波を3時間照射した。続いて、窒素雰囲気下、80℃にて4時間重合反応を行い、室温冷却後にろ過して、樹脂の含有量が40.0質量%である樹脂粒子分散体1を調製した。樹脂粒子の重量平均分子量は250,000、体積平均粒子径(D50)は200nmであった。
下記表2の組成からなるインクをそれぞれ調製した。具体的には、表2の成分を混合し、十分攪拌した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過することにより調製した。なお、ブラックインク1及び2の顔料分散液には、上記ブラック顔料分散液を用い、シアンインク1及び2の顔料分散液には、上記シアン顔料分散液を用いた。なお、表2において、AE100は、アセチレノールE100(商品名、川研ファインケミカル(株)製)を表す。
後述の方法で画像を記録し、画像濃度ムラと画像滲みを確認することで、画質を評価した。なお、下記の画像記録装置では、解像度1,200dpi×1,200dpiで1/1,200インチ×1/1,200インチの単位領域に3.0n(ナノ)gのインク滴を1滴付与する条件を、記録デューティが100%であると定義される。
画像記録に際しては、記録媒体を1000mm/secの搬送速度で送りつつ、1000枚描画した後、そのまま24時間放置した。そして、再び同様にして1000枚描画した後、以下の各評価を実施した。
先ずは、以下の方法で、第一の記録媒体である中間転写体を用意した。
中間転写体は、支持部材を表層部材とから構成される二層構造とした。中間転写体の支持部材としては、本構成においては、転写時の加圧に耐え得る剛性や寸法精度等、要求される特性から、アルミニウム合金からなる平板を用いた。中間転写体の表層部材としては、加水分解性有機ケイ素化合物を原料とするシロキサン化合物表面層を、以下の手法で形成した。グリシドキシプロピルトリエトキシシランとメチルトリエトキシシランとをモル比1:1で混合し、塩酸を触媒として水溶媒中で24時間以上加熱還流を行い、加水分解性縮合物溶液を得た。加水分解性縮合物溶液をメチルイソブチルケトンにより10〜20質量%に希釈し、光カチオン重合開始剤SP150(ADEKA製)を固形分に対して5質量%添加して所望のコーティング溶液を得た。次に、上記組成のコーティング用液を用いて、スピンコートにて支持部材上に成膜を行った。支持体の前処理として、表面にプラズマ処理を行い、塗布性及び表層との密着性を向上させた。次に、UVランプを照射して露光を行い、130℃にて3時間の加熱を行い、硬化物を得た。このときの硬化物による表面層の膜厚は約0.3μmであった。
上記で得られた中間転写体を備えた中間転写型の画像記録装置(図1)に、上記で得られた処理液及びインクを表3に記載の組合せで装着した。
中間転写型の画像記録装置を用いて、先ず、上記で得られた処理液を、塗布ローラー(材質:SUS316)またはインクジェット方式の記録ヘッドを用いて、第一の記録媒体である上記中間転写体に0.6g/m2の塗布量で塗布した。そして、処理液を塗布した中間転写体に、インクジェット方式の記録ヘッドから、シアンインクを吐出し、記録デューティが100%の中間画像(5cm×5cmのベタ画像)を形成した。そして、中間転写体上に形成された中間画像を第二の記録媒体に5kg/cm2の転写圧で転写した。なお、第二の記録媒体としては、A4サイズのコート紙(商品名:オーロラコート127.9g/m2、日本製紙(株)製)を用いた。光学顕微鏡で、その第二の記録媒体上に形成されたべタ画像の濃度ムラを観察した。なお、画像濃度ムラは下記の基準で評価した。画像濃度ムラの評価結果を表5に示した。
<画像濃度ムラの評価基準>
A:濃度ムラがなく極めて良好
B:濃度ムラなく良好
C:一部濃度ムラがあるが許容範囲
D:濃度ムラがあり許容範囲外
中間転写型の画像記録装置を用いて、先ず、上記で得られた処理液を、塗布ローラーまたはインクジェット方式の記録ヘッドを用いて、記録媒体である上記中間転写体に0.6g/m2の塗布量で塗布した。そして、処理液を塗布した中間転写体に、インクジェット方式の記録ヘッドから、シアンインクを吐出し、記録デューティが100%の画像(5cm×5cmのベタ画像)を記録した。そのシアンインクの描画部にブラックインクを着弾させることで評価画像を形成した。なお、本実施例のインク間の着弾時間差は50msecとした。そして、中間転写体上に形成された中間画像を第二の記録媒体に5kg/cm2の転写圧で転写した。なお、第二の記録媒体としては、A4サイズのコート紙(商品名:オーロラコート127.9g/m2、日本製紙(株)製)を用いた。光学顕微鏡で、その第二の記録媒体上に形成された画像の滲みの有無を観察した。画像滲みの評価結果を表5に示した。
<画像滲み評価基準>
画質は、光学顕微鏡でduty100質量%上の後弾ドットの滲みの有無を観察し、下記の基準で評価した。
A:滲みなく極めて良好
B:滲みなく良好
C:一部滲みがあるが許容範囲
D:滲みがあり許容範囲外
直接描画型の画像記録装置(図2)に、上記で得られた処理液及びインクを表4に記載の組合せで装着した。
直接描画型の画像記録装置を用いて、先ず、上記で得られた処理液を、塗布ローラー(材質:SUS316)またはインクジェット方式の記録ヘッドを用いて、記録媒体であるA4サイズのコート紙(商品名:オーロラコート127.9g/m2、日本製紙(株)製)に1.0g/m2の塗布量で塗布した。そして、処理液を塗布した記録媒体に、インクジェット方式の記録ヘッドから、シアンインクを吐出し、記録デューティが100%の画像(5cm×5cmのベタ画像)を形成した。そして、光学顕微鏡で、その記録媒体上に形成されたべタ画像の濃度ムラを観察した。なお、画像濃度ムラは下記の基準で評価した。画像濃度ムラの評価結果を表6に示した。
<画像濃度ムラの評価基準>
A:濃度ムラがなく極めて良好
B:濃度ムラなく良好
C:一部濃度ムラがあるが許容範囲
D:濃度ムラがあり許容範囲外
直接描画型の画像記録装置を用いて、先ず、上記で得られた処理液を、塗布ローラーまたはインクジェット方式の記録ヘッドを用いて、記録媒体であるA4サイズのコート紙(商品名:オーロラコート127.9g/m2、日本製紙(株)製)に1.0g/m2の塗布量で塗布した。そして、処理液を塗布した記録媒体に、インクジェット方式の記録ヘッドから、シアンインクを吐出し、記録デューティが100%の画像(5cm×5cmのベタ画像)を記録した。そのシアンインクの描画部にブラックインクを着弾させることで評価画像を形成した。なお、本実施例のインク間の着弾時間差は50msecとした。そして、光学顕微鏡で、その記録媒体上に形成された画像の滲みの有無を観察した。画像滲みの評価結果を表6に示した。
<画像滲みの評価基準>
画質は、光学顕微鏡でduty100質量%上の後弾ドットの滲みの有無を観察し、下記の基準で評価した。
A:滲みなく極めて良好
B:滲みなく良好
C:一部滲みがあるが許容範囲
D:滲みがあり許容範囲外
11 表層部材
12 支持部材
13 回転軸
14 処理液塗布装置
15 記録ヘッド
16 液体除去機構
17 温度調整機構
18 第二の記録媒体
19 加圧ローラー
20 クリーニングユニット
21 記録媒体
22 搬送ステージ
23 処理液塗布装置
24 記録ヘッド
Claims (12)
- 顔料を含有するインクを記録媒体に付与する工程と、
有機酸を含有する処理液を、前記インクを付与する領域と少なくとも一部で重なるように前記記録媒体に付与する工程と、
を有する画像記録方法であって、
前記処理液は、
分子構造中に
アニオン性基と、
アミノ基または第四級アンモニウムと
を有し、かつ、
界面活性能を有する有機化合物を少なくとも1種含有し、
前記有機化合物が、下記一般式(1)で表される2−アルキル−N−カルボキシアルキル−N−ヒドロキシアルキルイミダゾリニウムベタイン及び下記一般式(2)で表されるβ−アルキルアミノカルボン酸のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする画像記録方法。
- 前記処理液のpHが0.5〜5であることを特徴とする請求項1に記載の画像記録方法。
- 前記有機酸が、シュウ酸、ギ酸、酢酸、酪酸、プロピオン酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、レブリン酸、コハク酸、グルタル酸、グルタミン酸、フマル酸、クエン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、酒石酸、乳酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ビリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、オキシコハク酸、ジオキシコハク酸、またはピクリン酸であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像記録方法。
- 前記有機酸の第一pKaが0.5〜4.5であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像記録方法。
- 前記処理液中における前記有機酸の含有量が、前記処理液の全質量に対して、10質量%以上99質量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像記録方法。
- 前記処理液中における前記有機化合物の濃度が0.1〜10質量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像記録方法。
- 前記界面活性能が、水に0.1質量%添加したときに水の静的表面張力を60mN/m以下に変化させる能力であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像記録方法。
- 前記処理液が水を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像記録方法。
- 前記インクがインクジェット方式の記録ヘッドから前記記録媒体に付与され、前記処理液がローラーで前記記録媒体に塗布される請求項1〜8のいずれか1項に記載の画像記録方法。
- 前記記録媒体が中間転写体であり、該中間転写体上に形成された画像を中間転写体とは別の記録媒体に転写することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の画像記録方法。
- 記録媒体に付与される顔料を含有するインクを凝集させるために用いられる処理液であって、
分子構造中に
アニオン性基と、
アミノ基または第四級アンモニウムとを有し、かつ、
界面活性能を有する有機化合物を少なくとも1種含有し、
前記有機化合物が、下記一般式(1)で表される2−アルキル−N−カルボキシアルキル−N−ヒドロキシアルキルイミダゾリニウムベタイン及び下記一般式(2)で表されるβ−アルキルアミノカルボン酸のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする処理液。
- 顔料を含有するインクと、
記録媒体に付与される前記顔料を含有するインクを凝集させるために用いられる処理液と、を含むインクと処理液のセットであって、
前記処理液は、
分子構造中に
アニオン性基と、
アミノ基または第四級アンモニウムとを有し、かつ、
界面活性能を有する有機化合物を少なくとも1種含有し、
前記有機化合物が、下記一般式(1)で表される2−アルキル−N−カルボキシアルキル−N−ヒドロキシアルキルイミダゾリニウムベタイン及び下記一般式(2)で表されるβ−アルキルアミノカルボン酸のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とするインクと処理液のセット。
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