JP2021115824A - 賦形磁気カード - Google Patents

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Abstract

【課題】 凹凸を賦形する箇所の制約を弱め、デザインの自由度を高めた賦形磁気カードを提供する。【解決手段】 カードの面方向において所定の方向を長手方向とする磁気層15を備えた賦形磁気カード10であって、微細凹凸部を有する万線43が賦形された賦形層16が、磁気層15に重ねて形成されており、賦形磁気カード10の面方向において、万線43が延びる方向と磁気層15の長手方向とのなす角度が75°以下であることを特徴とする賦形磁気カード10。【選択図】 図1

Description

本発明は、磁気層を備えた磁気カードに凹凸の賦形を施した賦形磁気カードに関する。
従来、カードに意匠性を持たせるため、カードの表面に凹凸を賦形することが行われている。カードの表面に凹凸を賦形する手法としては、グラビア印刷用の彫刻版をカードに押し当てる手法が用いられていた。近年では、カードの表面に凹凸を賦形する手法として、フレキソ印刷により凹凸を形成することにより、安価で短時間に版を作成する技術なども提案されている(特許文献1参照)。
特開2019−84719号公報
一方、依然として、情報を記録するカードとして、磁気テープを備えた磁気カードが利用されている。このような磁気カードの意匠性を高めるためにも、上記のような凹凸をカードの表面に形成したいという要望もある。しかしながら、上記凹凸が磁気テープと重なってしまうと、磁気テープの読み取り精度が低くなることがある。このため、磁気カードのデザインに制約が生じるという問題がある。
そこで、本発明は、凹凸を賦形する箇所の制約を弱め、デザインの自由度を高めた賦形磁気カードを提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明では、
カードの面方向において所定の方向を長手方向とする磁気層を備えた磁気カードであって、
微細凹凸部を有する万線が賦形された賦形層が、前記磁気層に重ねて形成されており、
前記磁気カードの面方向において、前記万線が延びる方向と、前記磁気層の長手方向とのなす角度が75°以下であることを特徴とする賦形磁気カードを提供する。
また、本発明に係る賦形磁気カードは、
前記万線は直線状に延びることを特徴とする。
また、本発明に係る賦形磁気カードは、
前記万線は曲線状であって、前記万線が延びる方向と前記磁気層の長手方向とのなす角度は、前記磁気層の長手方向に沿う直線である前記磁気層の中心線と、当該中心線と前記万線の交点における接線とのなす角度であることを特徴とする。
また、本発明に係る賦形磁気カードは、
前記賦形層に賦形された万線は、艶部と微細凹凸部を交互に備えた構成であり、前記艶部と前記微細凹凸部は、シート基材の表面に艶部と微細凹凸部を交互に備えた万線が形成された賦形シートの表面形状を前記賦形層に賦形することにより得られたものであることを特徴とする。
また、本発明に係る賦形磁気カードは、
前記賦形シートの前記シート基材は、プラスチックシートからなり、
前記賦形シートの断面構造は、前記シート基材の上に万線で形成された下刷り層と、前記シート基材の上に形成された表面層を備え、前記下刷り層が前記表面層をはじく層であり、前記下刷り層の上が前記微細凹凸部であり、前記下刷り層が形成されていない前記表面層の表面が前記艶部であることを特徴とする。
本発明によれば、凹凸を賦形する箇所の制約を弱め、デザインの自由度を高めた賦形磁気カードを提供することが可能となる。
本発明の一実施形態に係る賦形磁気カードの構造を示す図である。 賦形磁気カードの賦形層の詳細を示す断面図である。 賦形磁気カードにおける万線の平面構造の詳細を示す図である。 本実施形態で用いられる賦形シートの断面構造を示す図である。 賦形シートにおける万線の平面構造の詳細を示す図である。 賦形磁気カードの製造工程を示す図である。 賦形磁気カードへの賦形工程を示す図である。 変形例に係る賦形磁気カードの平面図である。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
<1.賦形磁気カードの構造>
図1は、本発明の一実施形態に係る賦形磁気カードの構造を示す図である。このうち、図1(a)は、賦形磁気カード10のおもて面側から見た平面図であり、図1(b)は、図1(a)におけるA−A線に対応する断面図であり、図1(c)は、図1(a)におけるB−B線に対応する断面図である。
図1において、10は賦形磁気カード、11、12はコアシート、13、14はオーバーシート、15は磁気層、16は賦形層、43は万線である。図1の例では、おもて面側において、磁気層15、万線43が存在する領域以外は、無地の状態で示しているが、実際には、文字や絵柄等の様々な情報を印刷することが可能である。賦形磁気カード10のサイズは、適宜設定することができるが、例えば、一般に(ISO/IEC7810)やJIS(JISX6301) によって規定されているサイズとすることができる。具体的には、長辺の長さ(図1(a)における左右方向)が85.60mm、短辺の長さ(図1(a)における上下方向)が53.98mmとすることができる。
万線43は、微細凹凸部を有しており、様々な領域に様々な態様で形成することができる。これにより、一見するだけでは視認が困難な潜像が形成される。本実施形態では、図1(a)に示すように、賦形磁気カード10の平面方向において、直線状の万線43を、磁気層15の長手方向となす角が所定の角度αとなるように形成している。この所定の角度αについては、後述する。本実施形態の賦形磁気カード10はキャッシュカード、ポイントカード、クレジットカード、IDカード等のカード類に用いることができ、微細凹凸部を有する万線により潜像を形成することにより偽造防止、不正コピー防止などの効果があり、万線により表現される潜像は用途に応じて決定される。
図1(b)(c)の断面図においては、説明の便宜上、賦形磁気カード10のサイズ(図面左右方向)に比べて各層の厚さ(図面上下方向)が大きく描かれているが、賦形磁気カード10はカード状またはシート状であるため、現実には、各層は、より薄く形成されている。例えば、図1における幅(図面左右方向)が、数cm〜数十cmであるのに対して、厚さ(図面上下方向)は、数十μm〜数百μm程度である。図1(b)(c)の断面図に示す層構成において、現実には上下の区別はないが、説明の便宜上、図面上側(賦形層16側)を上層、図面下側(オーバーシート14側)を下層と表現することにする。したがって、図1(b)(c)においては、最上層が賦形層16、最下層がオーバーシート14となっている。また、本明細書においては、図1(a)に示したような賦形層16を有する面をおもて面、他方の面であるオーバーシート14側を裏面として説明していくが、実際には、どちらをおもて面としてどちらを裏面としてもよい。
図1(b)(c)の断面図に示すように、賦形磁気カード10は、2枚のコアシート11、12を中心層として、その両側にオーバーシート13、14を積層した構成になっている。コアシートは単層でも良いが、2層にすることにより表裏両面に印刷する場合には製造が容易になる場合がある。本実施形態では、コアシート11、12として白色のものを使用し、オーバーシート13、14として透明なものを使用している。オーバーシート13の外面には、磁気層15が形成されている。
オーバーシート13と接するコアシート11面には黒色のベタ印刷層(全面印刷層)17がシルクスクリーン印刷により形成されている。磁気層15は、バリウムフェライト材料等の公知の磁気材料を用いて形成することができる。磁気層15は、薄くて細長い帯状の磁気テープの形態で形成されている。磁気層15は磁気材料特有の濃色であって、白色のコアシート11面との対比ではコントラストが大きくなり過ぎる。そのため、黒色のベタ印刷層17を形成することにより、おもて面側(上層側)から見た場合に、背景を黒色にしてコントラストを低減させ目立たなくしている。オーバーシート13の上層側には、賦形層16が形成されている。賦形層16には、微細凹凸部により万線43が形成されている。
図2は、賦形層16の詳細を示す断面図である。図2に示すように、賦形層16は、上層側から順に保護層22、印刷層23、接着層24により構成されている。詳細には、オーバーシート13の上層側には、接着層24を介して印刷層23が形成されている。印刷層23の上層側には、保護層22が形成されている。印刷層23は、後述するように転写法で形成されるのが一般的であり、保護層22は転写材料において剥離層として使われていた材料が転写後に、被転写体である賦形磁気カード10の保護材料としても機能することを意味している。従って、転写前は剥離層、転写後は保護層と称することができる。
図3は、賦形磁気カード10における万線の平面構造の詳細を示す図である。図3においては、図1(a)に示した万線43の一部を拡大した状態となっている。賦形層16の平面構造は、図3に示すように賦形層16の上に艶部41からなる線と微細凹凸部42からなる線を交互に備えた万線43を有する構造となっている。図3において、ハッチングで示した部分は、微細凹凸部42を示している。
図3において、一点鎖線で示したDは、磁気層15の長手方向(図1(a)における左右方向)に平行な直線である。したがって、図3の左右方向は、磁気層15の長手方向に平行である。図3に示すように、万線43は、磁気層15の長手方向と万線43の延びる方向とのなす角が角度αであるように形成されている。
磁気層15の長手方向は、読み取り装置が備える磁気ヘッドの読み取り方向に対応している。磁気ヘッドの読み取り方向に対して、凹凸が形成されている場合、凹凸の形成方向が、ある角度になると、その凹凸に重ねて形成された磁気層から記録情報の読み取り精度が低下する。したがって、賦形磁気カード10における読み取り精度を高めるためには、磁気層15の長手方向と万線43の延びる方向とのなす角度αの大きさを所定の範囲に設定することが必要となる。
具体的には、負の角度を考慮せず、0°〜90°の範囲で角度αを規定した際に、角度αの範囲を0°以上75°以下とすることが好ましい。なお、図3において、直線Dとなす角度を鈍角側で見た場合、すなわち、負の角度を考慮せず、90°〜180°の範囲で角度αを規定した際には、105°以上180°以下となる。要するに、磁気層15の長手方向と万線43の延びる方向とのなす角度αは、直角(90°)に近い、75°以上105°以下の範囲を除いたものが好ましい。なお、図1(a)、図3に示した例では、角度αは45°(135°)となっている。
図3に示すw1は万線43の艶部41からなる線の幅、w2は万線43の微細凹凸部42からなる線の幅を示す。万線の艶部からなる線の幅w1、万線の微細凹凸部からなる線の幅w2は0.05〜0.3mmが好ましい。0.05mm未満では艶部41と微細凹凸部42の光沢差が十分に得られず潜像が不鮮明となる。0.3mmを超えると潜像が見えることがあるので十分な偽造防止効果が得られない。
また、図1(a)の例では、磁気層15、万線43が形成されている箇所以外を、地(白紙)の状態とし、絵柄等を省略しているが、実際には、印刷層23による絵柄等が視認可能となっている。印刷層23を形成するための印刷は、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷法で行うことができる。
賦形磁気カード10の断面構造は、図1(b)に示すように、コアシート11、12の両面にオーバーシート13、14がそれぞれ積層された構成からなり、一方のオーバーシート13の表出面に艶部41と微細凹凸部42を交互に備えた万線43が形成された賦形層16を備えている。オーバーシート13のコアシート11、12と対向する側にはベタ印刷層17が設けられる。賦形磁気カード10のコアシートは単層としてもよく、2層以上の多層にすることもできる。賦形磁気カード10を構成するコアシート11、12、オーバーシート13、14はプラスチックシートが好ましく、プラスチックシートに使用できる樹脂としては、剛性があり強度的に優れた熱可塑性樹脂であれば特に限定されないが、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、PET−G等の共重合ポリエステル樹脂、ABS樹脂等が使用できる。オーバーシート13、14は透明性のプラスチックシートが使用され、コアシート11、12は白色に着色したもの、または白色に着色したものにベタ印刷(全面印刷)されたものが通常使用される。また、キャッシュカード等の用途の場合には所定位置にICチップが設けられることもある。
次に、本実施形態に係る賦形磁気カード10に賦形層16を形成するための賦形シート50について説明する。図4は、本実施形態で用いられる賦形シートの断面構造を示す図である。本実施形態に係る賦形磁気カード10の賦形層16に微細凹凸を賦形するために用いる賦形シート50は、シート基材51の一方の面に艶部31と微細凹凸部32を交互に備えた万線33を備えている。
賦形シート50の平面構造は、シート基材51の上に、賦形磁気カード10と同様、艶部31からなる線と微細凹凸部32からなる線を交互に備えた万線33を有する構造となっている。賦形シート50における艶部31、微細凹凸部32、万線33は、賦形磁気カード10に転写することにより、艶部41、微細凹凸部42、万線43を形成するためのものである。
図5は、賦形シート50における万線の平面構造の詳細を示す図である。図5に示した万線33は、図3に示した賦形磁気カード10上の万線43を形成するための万線であるため、磁気層15の長手方向に沿って、賦形磁気カード10上の万線43を反転した構造となっている。具体的には、賦形シート50に形成された万線33の平面構造は、図5に示すようにシート基材51の上に艶部31からなる線と微細凹凸部32からなる線を交互に備えた万線33を有する構造となっている。図5において、ハッチングで示した部分は、微細凹凸部32を示している。
図5において、一点鎖線で示したD´は、図3と同様、磁気層15の長手方向(図1(a)における左右方向)に平行な直線である。したがって、図5の左右方向は、磁気層15の長手方向に平行である。図5に示すように、万線33は、想定される磁気層15の長手方向と万線33の延びる方向とのなす角が角度βであるように形成されている。
上述のように、賦形シート50における万線33は、賦形磁気カード10上の万線43を形成するための万線であるため、磁気層15の長手方向に沿って、賦形磁気カード10上の万線43を反転した構造となっている。そのため、磁気層15の長手方向と万線33の延びる方向とのなす角度βは、角度α+角度β=180°となるように設定する必要がある。
したがって、上述のように、角度αの範囲を0°以上75°以下とする場合、角度βの範囲は105°以上180°以下とする必要がある。したがって、図5において、直線D´となす角度を鈍角側で見た場合は、0°以上75°以下となる。すなわち、角度αと同様、磁気層15の長手方向と万線43の延びる方向とのなす角度が直角(90°)に近い、75°以上105°以下の範囲を除いたものとなる。なお、図1(a)、図3に示した例では、角度αは45°(135°)であるため、図5に示した例では、角度βは135°(45°)となっている。
結局、図3、図5を用いて説明した内容を総合すると、賦形磁気カード10、賦形シート50のいずれにおいても、磁気層15の長手方向と万線33、万線43の延びる方向とのなす角度が直角(90°)に近い、75°以上105°以下の範囲を除くことが好ましい条件となる。磁気層15の長手方向と万線33、万線43の延びる方向とのなす角度が直角(90°)に近い、75°以上105°以下の範囲以外である場合に、磁気層15の長手方向に沿って磁気ヘッドが読み取りを行った場合に、精度の高い記録情報の読み取りが可能となる。
また、図5に示すw1は万線33の艶部31からなる線の幅、w2は万線33の微細凹凸部32からなる線の幅を示す。転写により賦形磁気カード10に万線を形成するためのものであるので、万線33の艶部31からなる線の幅は、万線43の艶部41からなる線の幅と同じw1であり、万線33の微細凹凸部32からなる線の幅は、万線43の微細凹凸部42からなる線の幅と同じw2である。なお、賦形磁気カード10におけるw1、w2の値と、賦形シート50におけるw1、w2の値は、製造上の若干の誤差が生じるのが通常である。
賦形シート50の断面構造は、図4(a)に示すように、シート基材51の上に例えばオフセット印刷により下刷り層52が万線で設けられ、さらに、シート基材51および下刷り層52の表面上に例えばコーティングにより表面層53が設けられている。このとき、図4(b)に示すように、下刷り層52が形成されている部分では、下刷り層52が表面層53をはじくので、その上の表面層53を形成するためのコート剤がはじかれる。これにより、下刷り層52の上が微細凹凸部32となる。一方、下刷り層52が形成されていない部分では、表面層53を形成するためのコート剤がはじかれることなく艶部31となっている。
賦形シート50のシート基材51としては、耐熱性のあるプラスチックシート(フィルム)が好ましい。プラスチックシートの樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート等が挙げられるが、経済性、作業性などからポリエチレンテレフタレートが好ましい。プラスチックシートの厚さとしては50μm〜300μm程度である。なお、シート基材51に紙を用いることもできるが熱転写作業における賦形シート50の耐久性を考慮するとプラスチックシートが好ましい。
<2.賦形磁気カードの製造方法>
次に、賦形磁気カードの製造方法について説明する。まず、万線を賦形する前の磁気カードの製造工程を説明する。図6は、磁気カードの製造工程を示す図である。まず、図6に示すように、中心層となるコアシート11、12と透明なオーバーシート13、14と印刷層の転写材料20を一体に積層した状態でプレス機に挿入し、鏡面板に挟んで熱と圧を加えてプレスする。転写材料20は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の平面性の優れたフィルム基材21に保護層(剥離層)22を介して、印刷層23を形成し、さらに接着層24を塗工した材料である。
この転写工程と、コアシート11、12およびオーバーシート13、14を一体に熱融着させる工程は1回の熱プレスの工程で行う。コアシートとオーバーシートが、ポリ塩化ビニルやPET−Gのように熱融着性材料である場合は、シート間に接着材料を使用しないで融着するが、熱融着性でないシート材料の場合は、ホットメルト性の接着剤等を併用して熱プレスする。
転写材料20は、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)等のフィルム基材21に、保護層(剥離層)22を介して、印刷層23を形成したものである。オーバーシート13との接触面に薄層(厚み1〜2μm以内)の接着層24を有している。熱プレス後、転写材料20のフィルム基材21は剥離除去される。賦形層16は、転写の際には、剥離層としての機能を果たすが、転写後は、ベタ印刷層17側に残して保護層としての機能も果たす。
一般的に、磁気層15の表面から磁気ヘッドまでの間隔が15μm以内であれば、磁気読み取りの障害とならないとされている。そのため、賦形層16を構成する各層をできる限り薄くするのが好ましい。本実施形態では、賦形層16の厚みは、15μm以下となっている。
次に、賦形磁気カード10の賦形層16に賦形を行うための賦形シート50を用意する。賦形シート50は、上述の説明のように、図4、図5に示したような構造となっている。まず、このような賦形シート50の製造方法について説明する。まず、シート基材51の表面に紫外線硬化型インキをパターン印刷することにより下刷り層52を形成する。パターン印刷はオフセット印刷法またはフレキソ印刷法が好ましく、オフセット印刷法がより好ましい。パターン印刷は万線で形成されることが好ましく、万線で形成された下刷り層52はその上に塗布される表面層を形成するコート剤をはじく性質を備えている。万線33の詳細は図4、図5を用いて既に説明した通りであるため省略する。
パターン印刷された下刷り層52は紫外線照射され、硬化される。その後、シート基材51及び下刷り層52の上にフレキソ印刷法により紫外線硬化型のコート剤を塗布する。そのとき、下刷り層52はコート剤をはじき、下刷り層52の上には微細凹凸模様が形成される。このため、下刷り層52が形成されていない部分は平坦であり、その後、紫外線照射され、コート剤が硬化され、表面層53が形成される。このようにして紫外線照射により硬化された下刷り層52及び表面層53は、下刷り層52の上に微細凹凸部32が形成され、下刷り層52が形成されていない部分は表面層53により表面が艶部31に形成される。下刷り層52をオフセット印刷法により形成するとき、インラインで表面層53のコート剤をフレキソ印刷法で塗布することが好ましい。そうすることにより賦形シート50の意匠性の評価が即断でき品質管理が容易となる。
また、下刷り層52及び表面層53は既存の紫外線照射装置を搭載したオフセット印刷機械に紫外線照射装置を備えたコーターを接続した製造装置を用いることによりインラインで製造することができる。表面層53の形成にフレキソ印刷法を用いることにより艶部31と微細凹凸部32の深さ感が得られ、賦形シート50の表面形状を賦形磁気カード10の賦形層16の表出面に転写したとき、意匠性の際立った賦形磁気カード10が得られる。下刷り層52に使用する下刷り用インキは、紫外線硬化型ニスが好ましい。また、表面層53のコート剤とのはじき具合を調整するために下刷り用インキには公知の撥液剤を含有させてもよい。表面層53のコート剤としては、紫外線硬化型コート剤が好ましい。コート剤としては、少なくともポリマー、モノマー、光重合開始剤を混合した公知の材料が使用できる。
次に、得られた賦形シート50を用いて、賦形磁気カード10の賦形層16に賦形を行う。図7は、磁気カードの賦形工程を示す図である。賦形磁気カード10のおもて面の賦形層16に賦形する方法は、図7に示すように、賦形層16上の所定の位置に対応させて賦形シート50のシート基材51に形成された万線33が接するように賦形シート50を重ね合わせて熱プレスすることにより、賦形シート50の表面形状が賦形磁気カード10の賦形層16の表出面に熱転写され、賦形層16に賦形が行われる。この結果、図1に示したように賦形磁気カード10の上に艶部41(図3参照)と微細凹凸部42(図3参照)からなる万線43を備えた賦形層16を有する賦形磁気カード10が得られる。熱プレスにより賦形層16を賦形する際、温度としては80〜150℃程度が好ましい。温度が150℃を超えて高くなると基材が歪む可能性があり、温度が80℃未満では微細凹凸部42の形成が困難となる。
このようにして得られた賦形磁気カード10は、一見しただけでは万線43による潜像を視認することは困難であるが、目視角度を変化させると万線43による潜像が浮かび上がる角度があり視認することができる。さらにカラーコピー機等で複写しても潜像の複写が困難である。したがって、本実施形態の賦形磁気カード10は、意匠性に優れ、潜像の視認性に優れ、偽造防止及び不正コピー防止に優れたものとなる。また、従来のようにエンボス金型に替えて賦形シート50を型にしてエンボスができるので賦形シート50における万線33の変更が容易になり、金型代のコストダウンを図ることができる。
<3.各層の構成>
コアシート11、12は、賦形磁気カードの中心層となるシートである。コアシート11、12としては、白色または着色したプラスチックシートを幅広く各種のものを使用でき、以下に挙げる単独フィルムあるいはそれらの複合フィルムを使用できる。ポリエチレンテレフタレート(PET)、PET−G(テレフタル酸−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体)、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン系、ABS、ポリアクリル酸エステル、ポリプロピレン、ポリウレタン等である。コアシートの膜厚は、賦形磁気カードの全体厚みを勘案して適宜に選択する。
オーバーシート13、14は、中心層である2枚のコアシート11、12の両側に積層するシートである。オーバーシート13、14としては、コアシートと同様の単独フィルムあるいはそれらの複合フィルムを用いることができる。できれば、コアシートと同質の材料を使用することが好ましい。一般に、0.05〜0.1mm厚程度の透明材料が使用されることが多い。
転写材料20のフィルム基材21としては、プラスチックフィルムや紙基材など、幅広く各種のものを使用できる。プラスチックフィルムとしては、コアシートと同様に、上記した各種の材料を使用できる。紙基材としては、以下のもの等を使用できる。上質紙、コート紙、クラフト紙、グラシン紙、合成紙、ラテックスやメラミン含浸紙。
剥離層としても機能する保護層22を形成するための剥離剤の材質としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ゴム系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂などのほか、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂などのコポリマーを使用できる。保護層22に硬さが必要な場合は、紫外線硬化性樹脂などの光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などの放射線硬化樹脂なども使用できる。
<4.変形例>
次に、賦形磁気カードの変形例について説明する。図8は、変形例に係る賦形磁気カードの平面図である。図8は、図1(a)に対応しており、賦形磁気カードをおもて面側から見たものとなっている。図8において、破線で示した矩形E、E´は、磁気層15と万線が交差する箇所を示しており、一点鎖線で示した直線Lは、磁気層15の中心線であり、磁気層15の長手方向に延びている。この中心線Lは、磁気層15の長手方向(図8の左右方向)に平行である。図1に示した例では、賦形磁気カードの平面方向において、万線が直線状に延びる構造であったが、図8に示す変形例では、賦形磁気カードの平面方向において、万線43が楕円形を構成している。そのため、図8に示す変形例では、磁気層15と交差する範囲(矩形E、E´に含まれる範囲)において、曲線状の万線が形成されることになる。
図8に示したように、曲線状の万線が磁気層15と交差する場合は、曲線状の万線と中心線Lとの交点における万線の接線と、磁気層15の中心線Lのなす角度の条件を規定する。すなわち、曲線状の万線の場合、その接線と磁気層15の中心線Lとなす角度が、図3に示した角度αに相当する。したがって、万線の接線と磁気層15の中心線Lとなす角度αが0°以上75°以下であることが好ましい。なお、中心線Lとなす角を鈍角側でみた場合は、105°以上180°以下となる。言い換えると、この場合も、磁気層15の長手方向と万線43の延びる方向とのなす角度が直角(90°)に近い、75°以上105°以下の範囲を除いたものとなる。
<5.実施例>
フィルム基材21として厚み100μmの2軸延伸PETフィルムを、ポリエステル樹脂系の薄層(1〜2μm)の保護層(剥離層)22をグラビア印刷し、その面にシルクスクリーン印刷による印刷層23を設けたものを、転写材料20として使用した。印刷層23は接着層24を兼ねるものとした。磁気層15のおもて面側の面と賦形磁気カード10のおもて面までの各層の合計厚みは、8〜10μm程度となった。
シート基材51として厚み188μmの2軸延伸PETフィルムを用いて、紫外線照射装置を搭載した6色オフセット枚葉印刷機械に接続された紫外線照射装置を搭載したインラインコーターにより、賦形シート50をインラインで一貫製造した。下刷りニス、及び表面層のコート剤には下記の紫外線硬化型材料を使用し、下刷り層52をオフセット印刷して形成した。下刷りニスとしては、「T&K TOKA社製 UV HJK下刷りニス」を用いた。また、表面コート剤としては、「T&K TOKA社製 UV コートニスHTA−W」を用いた。下刷り層52としては、艶部31を形成する線の幅w1、微細凹凸部32を形成する線の幅w2ともに0.2mmとした。また、艶部31、微細凹凸部32の長手方向と、想定される磁気層15の長手方向(図5における直線D´)とのなす角度βが所定の角度となるように下刷り層52を形成した。その後、表面層53のコート剤をフレキソ印刷して塗布し、下刷り層52及び表面層53を硬化させて賦形シート50を得た。
次に、非結晶性ポリエステル系樹脂(商品名「PET−G」)からなる白色のコアシート(厚み360μm)11、12を中心層として、その両側に同質材料からなる透明なオーバーシート(厚み50μm)13、14を積層し、さらに、上記転写材料20を積層して、プレス機の鏡面板に導入し、150°C、25kg/cm2、15分の条件で熱圧プレスした。なお、オーバーシート13の上層には、磁気層15が予め転写され、コアシート11面には黒色のベタ印刷層17がシルクスクリーン印刷により、厚み3〜5μmに印刷されたものである。
得られた賦形シート50を用いて賦形磁気カード10の賦形層16の表出面に賦形シート50の表面形状を温度120℃で熱プレスすることにより転写し、賦形磁気カード10の賦形層16の表出面に微細凹凸からなる万線43を形成し、賦形磁気カード10を作製した。賦形磁気カード10の賦形層16に形成された万線43を構成する艶部41を形成する線の幅w1、微細凹凸部42を形成する線の幅w2はともに0.2mmであり、艶部41、微細凹凸部42の長手方向と、磁気層15の長手方向(図5における直線D)とのなす角度αは180°−βであった。
上記実施例による角度βを180°〜90°まで10°単位で変更して賦形シート50を得て、賦形シート50を用いて、角度αの異なる賦形磁気カード10を得た。各実施例により得られた賦形磁気カード10について、視点からの傾きを変えたところ、全ての実施例において、万線43による潜像が確認できた。そして、磁気カードリーダライタによる読み取り試験を行った。読み取り試験は、磁気カードをリーダライタにより、1000回読み取り書き込みする試験を行い、エラーの無いものを「良好」、1回以上のエラーがあったものを「不良」とした。また、「良好」と「不良」の境界となる角度において、5°だけ角度を変更して試験を行った。試験結果を表1に示す。
Figure 2021115824
表1に示す試験結果から、実施例1〜9のように、賦形磁気カード10における磁気層15の長手方向と万線43の延びる方向とのなす角度αが0°≦α≦75°を満たすとき、磁気カードとして問題なく使用できることが確認できた。比較例1、2のように、賦形磁気カード10における磁気層15の長手方向と万線43の延びる方向とのなす角度αがα>75°となる場合には、読み取り/書き込みの精度が低下することが確認できた。以上より、賦形磁気カード10における磁気層15の長手方向と万線43の延びる方向とのなす角度αは、0°以上75°以下であることが好ましい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、賦形磁気カードに賦形を行うための賦形シートを、パターン印刷された下刷り層およびシート基材の上にフレキソ印刷法により紫外線硬化型のコート剤を塗布することにより、製造するようにしたが、万線を構成する微細凹凸を形成することができる手法であれば、どのような手法で賦形シートを製造するようにしてもよい。
10・・・賦形磁気カード
11、12・・・コアシート
13、14・・・オーバーシート
15・・・磁気層
16・・・賦形層
17・・・ベタ印刷層(全面印刷層)
20・・・転写材料
21・・・フィルム基材
22・・・保護層(剥離層)
23・・・印刷層
24・・・接着層
31・・・艶部
32・・・微細凹凸部
33・・・万線
41・・・艶部
42・・・微細凹凸部
43・・・万線
50・・・賦形シート
51・・・シート基材
52・・・下刷り層
53・・・表面層
w1・・・万線33、43の艶部31、41からなる線の幅
w2・・・万線33、43の微細凹凸部32、42からなる線の幅

Claims (5)

  1. カードの面方向において所定の方向を長手方向とする磁気層を備えた磁気カードであって、
    微細凹凸部を有する万線が賦形された賦形層が、前記磁気層に重ねて形成されており、
    前記磁気カードの面方向において、前記万線が延びる方向と前記磁気層の長手方向とのなす角度が75°以下であることを特徴とする賦形磁気カード。
  2. 前記万線は直線状に延びることを特徴とする請求項1に記載の賦形磁気カード。
  3. 前記万線は曲線状であって、前記万線が延びる方向と前記磁気層の長手方向とのなす角度は、前記磁気層の長手方向に沿う直線である前記磁気層の中心線と、当該中心線と前記万線の交点における接線とのなす角度であることを特徴とする請求項1に記載の賦形磁気カード。
  4. 前記賦形層に賦形された万線は、艶部と微細凹凸部を交互に備えた構成であり、前記艶部と前記微細凹凸部は、シート基材の表面に艶部と微細凹凸部を交互に備えた万線が形成された賦形シートの表面形状を前記賦形層に賦形することにより得られたものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の賦形磁気カード。
  5. 前記賦形シートの前記シート基材は、プラスチックシートからなり、
    前記賦形シートの断面構造は、前記シート基材の上に万線で形成された下刷り層と、前記シート基材の上に形成された表面層を備え、前記下刷り層が前記表面層をはじく層であり、前記下刷り層の上が前記微細凹凸部であり、前記下刷り層が形成されていない前記表面層の表面が前記艶部であることを特徴とする請求項4に記載の賦形磁気カード。


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