JP2021112937A - 鞍乗り型車両 - Google Patents

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Abstract

【課題】エアバッグを備えた鞍乗り型車両において、正面衝突時の乗員の保護性能の向上を図る。【解決手段】自動二輪車1は、乗員が着座するシート60の前方に展開するエアバッグと、車体フレーム30に対して前輪2を転舵可能に支持する前輪懸架装置10と、前輪2を転舵する転舵アクチュエータ173と、自車両の前方の物体を検出する前方検出装置120と、前方検出装置120の検出結果に基づいて自車両の正面衝突が発生するか否かを判定する衝突判定部と、正面衝突が発生すると判定された場合に、前輪2を中央位置から離れる方向に転舵させるように、転舵アクチュエータ173を制御するアクチュエータ制御部と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、鞍乗り型車両に関するものである。
鞍乗り型車両において、正面衝突時に効果的にエネルギー吸収を行う構成が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1には、フロントバンパーが前輪操舵部において、車体の左右方向の中心から左右いずれか一方に偏位して配置された構成が開示されている。
特開2008−80881号公報
ところで、エアバッグを備えた鞍乗り型車両においては、車両の正面衝突時にエアバッグが乗員を正面から受け止めるために、正面衝突時の車両の挙動を工夫する必要がある。
そこで本発明は、エアバッグを備えた鞍乗り型車両において、正面衝突時の乗員の保護性能の向上を図ることを目的とする。
本発明の鞍乗り型車両は、乗員が着座するシート(60)の前方に展開するエアバッグ(71)と、車体フレーム(30)に対して前輪(2)を転舵可能に支持する懸架装置(10)と、前記前輪(2)を転舵するアクチュエータ(173)と、自車両の前方の物体を検出する物体検出手段(120)と、前記物体検出手段(120)の検出結果に基づいて自車両の正面衝突が発生するか否かを判定する衝突判定部(141)と、正面衝突が発生すると判定された場合に、前記前輪(2)を中央位置(Nw)から離れる方向に転舵させるように前記アクチュエータ(173)を制御するアクチュエータ制御部(172)と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、前輪を転舵することで、車両の前端部を後退させることができる。ここで、自車両が前方の物体に正面衝突すると、車両後部が持ち上がるノーズダイブが発生する場合がある。ノーズダイブが発生すると、車両前方の物体と前輪との接触点よりも上方で、車両における第2の接触点が車両前方の物体に接触する。車両の前端部を後退させると、車両の前端部と第2の接触点との前後方向の間隔が狭くなる。車両の前端部と第2の接触点との前後方向の間隔を狭くすることで、ノーズダイブによるシートの浮き上がり量を小さくすることができる。これにより、乗員に対する水平方向の前方にエアバッグを展開できる。したがって、エアバッグを備えた鞍乗り型車両において、正面衝突時の乗員の保護性能の向上を図ることができる。
上記の鞍乗り型車両において、前記物体検出手段(120)は、前記懸架装置(10)に配置された転舵側手段(80)を備えていてもよい。
本発明によれば、前輪の転舵角度によらず、前輪と車両前方の物体との位置関係を容易に把握できる。このため、自車両の正面衝突が発生するか否かを衝突判定部によって精度よく判定できる。
上記の鞍乗り型車両において、前記物体検出手段(120)は、前記車体フレーム(30)に対して固定的に配置された車体側手段(81)を備えていてもよい。
本発明によれば、車体側手段との組み合わせにより、車両前方の物体の形状をより正確に把握することが可能となる。このため、自車両の正面衝突が発生するか否かを衝突判定部によって精度よく判定できる。そのため、エアバッグの展開時期を適切にできるので、正面衝突時の乗員の保護性能を向上できる。
上記の鞍乗り型車両において、前記懸架装置(10)と相対回転可能に配置されたハンドル(20)と、前記ハンドル(20)を中央位置(Nh)に固定するハンドル固定機構(174)と、正面衝突が発生すると判定された場合に、前記ハンドル(20)を中央位置(Nh)に保持するように前記ハンドル固定機構(174)を制御するハンドル制御部(172)と、を備えていてもよい。
本発明によれば、前輪の転舵角度によらず、乗員を車両前方に向かせることができる。このため、自車両に正面衝突が発生した際に、乗員の前方に展開したエアバッグによって、乗員を受け止めやすくすることができる。そのため、正面衝突時の乗員の保護性能を向上できる。
上記の鞍乗り型車両において、前記アクチュエータ制御部(172)は、正面衝突が発生すると判定された場合に、前記前輪(2)が転舵している方向に前記前輪(2)をさらに転舵させるように前記アクチュエータ(173)を制御してもよい。
本発明によれば、前輪が転舵している方向とは反対側に前輪を転舵させる構成と比較して、車両の前端部を速やかに後退させることができる。このため、正面衝突が発生すると判定されてから実際に正面衝突が発生するまでの短い時間で、乗員を保護する態勢を整えることができる。そのため、正面衝突時の乗員の保護性能を向上できる。
本発明によれば、エアバッグを備えた鞍乗り型車両において、正面衝突時の乗員の保護性能の向上を図ることができる。
実施形態の自動二輪車の左側面図である。 実施形態の車両システムの構成図である。 実施形態のステアリング装置の構成を示すブロック図である。 前輪の転舵方向を説明する図であって、前輪を上方から見た平面図である。 操向ハンドルの操舵方向を説明する図であって、操向ハンドルを上方から見た平面図である。 実施形態の制御装置による処理の流れの一例を示すフローチャートである。 実施形態の制御装置による回避意思の有無の判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。 本実施形態の作用を示す図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。なお、以下の説明における前後上下左右等の方向は、特に記載のない限り以下に説明する車両における方向と同一とする。また、以下の説明に用いる図中において、矢印UPは上方、矢印FRは前方、矢印LHは左方をそれぞれ示している。
<車両全体>
図1は、実施形態の自動二輪車の左側面図である。
図1に示すように、自動二輪車1(鞍乗り型車両)は、前輪懸架装置10と、操向ハンドル20と、車体フレーム30と、パワーユニット40と、燃料タンク50と、シート60と、エアバッグ装置70と、を備える。車体フレーム30の前端部は、前輪懸架装置10を介して前輪2を支持している。車体フレーム30の前端部は、フロントカバー35によって前方から覆われている。フロントカバー35は、車体フレーム30に対して固定的に配置されている。フロントカバー35には、ヘッドライト36が設けられている。ヘッドライト36は、車両上部の前端部を形成している。車体フレーム30は、前輪懸架装置10の後方でパワーユニット40、燃料タンク50およびシート60を支持している。
前輪懸架装置10は、車体フレーム30に対して前輪2を転舵可能に支持している。前輪懸架装置10は、車体フレーム30の前端部に回動可能に支持されている。前輪懸架装置10は、前輪2を回転可能に支持する一対のフロントフォーク11と、一対のフロントフォーク11に連結され、車体フレーム30の前端部に回転可能に支持されたステアリングステムと、を備える。前輪懸架装置10には、前輪2を上方から覆うフロントフェンダ13が取り付けられている。前輪懸架装置10には、転舵アクチュエータ173が接続されている。転舵アクチュエータ173は、車体フレーム30に支持され、車体フレーム30に対して前輪懸架装置10を回動させることにより前輪2を転舵する。
操向ハンドル20は、乗員による操舵操作が入力される操舵部材である。操向ハンドル20は、シート60よりも前方に配置され、車体フレーム30の上部に相対回転可能に結合されている。操向ハンドル20は、前輪懸架装置10から機械的に切り離されている。操向ハンドル20には、反力アクチュエータ174が接続されている。反力アクチュエータ174は、車体フレーム30に支持されている。反力アクチュエータ174は、操向ハンドル20の操舵角度や操舵トルク等に基づいて操向ハンドル20を回転させることにより、操向ハンドル20に反力トルクを付与する。
パワーユニット40は、ガソリンエンジン等の内燃機関、電動機、または内燃機関および電動機の組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、または、二次電池もしくは燃料電池の放電電力を使用して動作する。
エアバッグ装置70は、自車両の正面衝突発生時等に乗員を衝撃から保護する。エアバッグ装置70は、前後方向において操向ハンドル20とシート60との間に配置されている。エアバッグ装置70は、シート60よりも前方、かつ燃料タンク50の上方に展開するエアバッグ71(図6参照)を有する。エアバッグ71は、自車両の正面衝突発生等の所定の条件が成立した際に、乗員の前方に展開される。
<車両システム>
図2は、実施形態の車両システムの構成図である。
図2に示す車両システム100は、自動二輪車1に搭載されている。例えば、車両システム100は、車両センサ110と、前方検出装置120(物体検出手段)と、運転操作子130と、制御装置140と、走行駆動力出力装置150と、ブレーキ装置160と、ステアリング装置170と、を備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、図2に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
車両センサ110は、自車両の状態を検出する。車両センサ110は、前後輪それぞれの回転速度を検出する車輪速センサ111と、自車両の角速度を検出するジャイロセンサ113と、を含む。
前方検出装置120は、自車両の前方の物体を検出する。例えば、前方検出装置120は、カメラ121、レーダ装置122およびファインダ123の一部または全部を含む。なお、前方検出装置120は、ソナーをさらに備えていてもよい。
カメラ121は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ121は、例えば、周期的に繰り返し自車両の前方を撮像する。
レーダ装置122は、自車両Mの前方にミリ波等の電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置122は、FM−CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
ファインダ123は、LIDAR(Light Detection and Ranging)である。ファインダ123は、自車両の前方に光を照射し、散乱光を測定する。ファインダ123は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。
運転操作子130は、例えば、アクセルグリップや、ブレーキペダル、ブレーキレバー、シフトペダル、操向ハンドル20等の操作子を含む。運転操作子130には、操作量または操作の有無を検出するセンサが取り付けられている。センサの検出結果は、制御装置140、または、走行駆動力出力装置150、ブレーキ装置160、およびステアリング装置170のうち一部もしくは全部に出力される。
制御装置140は、一体または複数体の電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)として構成されている。制御装置140の少なくとも一部は、ソフトウェアおよびハードウェアの協働によって実現されてもよい。制御装置140は、衝突判定部141と、転舵判定部142と、転舵制御部143と、を備える。
衝突判定部141は、前方検出装置120による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、自車両の前方の物体の位置や種類、速度などを認識する。衝突判定部141は、自車両の前方の物体の認識結果に基づいて、自車両の正面衝突が発生するか否かを判定する。具体的に、衝突判定部141は、自車両の前方の物体の認識結果と、自車両の車速や加速度等の情報と、に基づき、自車両に正面衝突が発生するか否かを判定する。
転舵判定部142は、前輪2が転舵しているか否かを判定する。具体的に、転舵判定部142は、操向ハンドル20に取り付けられたセンサからの出力等に基づき、前輪2が転舵しているか否かを判定する。
転舵制御部143は、衝突判定部141の判定結果、および転舵判定部142の判定結果に基づいて、ステアリング装置170を制御する。転舵制御部143は、転舵指令およびハンドル固定指令をステアリング装置170に出力する。
走行駆動力出力装置150は、自車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪(後輪)に出力する。走行駆動力出力装置150は、例えば、上述したパワーユニット40や変速機等の組み合わせと、これらを制御するECUと、を備える。ECUは、運転操作子130から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
ブレーキ装置160は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUと、を備える。ブレーキECUは、運転操作子130から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクを各車輪に出力させる。ブレーキ装置160は、運転操作子130に含まれるブレーキレバーまたはブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置160は、上記説明した構成に限らず、運転操作子130から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
図3は、実施形態のステアリング装置の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、ステアリング装置170は、ステアリングセンサ171と、アクチュエータ制御部172と、上述した転舵アクチュエータ173および反力アクチュエータ174と、を備える。ステアリングセンサ171は、操向ハンドル20の操舵角度や操舵トルク等を測定する。アクチュエータ制御部172は、ステアリングセンサ171の検出値、または転舵制御部143からの指令に基づいて、転舵アクチュエータ173および反力アクチュエータ174を制御する。反力アクチュエータ174は、操向ハンドル20を固定して任意の位置に保持可能である。ステアリング装置170は、操向ハンドル20から機械的に切り離された前輪2を転舵アクチュエータ173によって転舵するステアバイワイヤ装置として形成されている。なお、アクチュエータ制御部172は、制御装置140に組み込まれていてもよい。
図1に戻り、自動二輪車1には、前方検出装置120が取り付けられている。前方検出装置120は、前輪懸架装置10に対して固定的に配置された転舵側センサ80(転舵側手段)と、車体フレーム30に対して固定的に配置された車体側センサ81(車体側手段)と、を備える。転舵側センサ80および車体側センサ81のそれぞれは、上述したカメラ121、レーダ装置122およびファインダ123の一部または全部を含む。転舵側センサ80は、前輪2の回転中心に対して固定的な位置に配置されている。転舵側センサ80は、前輪2を挟んで車幅方向の両側に配置されている。左右の転舵側センサ80は、互いに同じ高さ位置に配置されている。転舵側センサ80は、フロントフォーク11に支持されている。転舵側センサ80は、車幅方向から見て前輪2の車軸と重なる位置に配置されている。車体側センサ81は、車体前部に配置されている。車体側センサ81は、転舵側センサ80とは上下方向および前後方向で異なる位置に配置されている。車体側センサ81は、転舵側センサ80よりも上方に配置されている。車体側センサ81は、転舵側センサ80よりも後方に配置されている。車体側センサ81は、左右の転舵側センサ80よりも車幅方向の内側に配置されている。例えば、車体側センサ81は、車幅中心上に配置されている。
ここで、前輪2の転舵方向、および操向ハンドル20の操舵方向について説明する。
図4は、前輪の転舵方向を説明する図であって、前輪を上方から見た平面図である。図5は、操向ハンドルの操舵方向を説明する図であって、操向ハンドルを上方から見た平面図である。
図4に示すように、前輪2は、中央位置Nwを基準として、前端が右側を向くように右側へ転舵、または前端が左側を向くように左側へ転舵可能となっている。なお、前輪2の中央位置Nwは、直進状態における前輪2の位置であって、転舵角度が0の位置である。図5に示すように、操向ハンドル20は、中央位置Nhを基準として、右側のグリップが後方に移動するように右側へ操舵、または左側のグリップが後方に移動するように左側へ操舵可能となっている。なお、操向ハンドル20の中央位置Nhは、左右のグリップが前後方向で同じ位置に位置する位置であって、操向ハンドルと前輪とが機械的に結合した従来構成における直進状態での操向ハンドルの位置に対応している。
<制御装置の機能>
以下、本実施形態に係る制御装置140による処理の流れについて図6を参照して説明する。この処理フローは、自車両が所定の速度以上で前進している状態で繰り返し実施される。
図6は、実施形態の制御装置による処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6に示すように、ステップS10において、衝突判定部141は、自車両に正面衝突が発生するか否かを判定する。自車両に正面衝突が発生すると判定された場合(S10:YES)、制御装置140はステップS20の処理に移行する。自車両に正面衝突が発生しないと判定された場合(S10:NO)、制御装置140は一連の処理を終了する。
ステップS20において、制御装置140は、衝突被害軽減のアシストが必要か否かを判定する。アシストが必要であると判定された場合(S20:YES)、制御装置140はステップS30の処理に移行する。アシストが必要でないと判定された場合(S20:NO)、制御装置140は一連の処理を終了する。ステップS20の処理の詳細については後述する。
ステップS30において、転舵判定部142は、前輪2が転舵しているか否かを判定する。前輪2が転舵していると判定された場合(S30:YES)、制御装置140はステップS40の処理に移行する。前輪2が転舵していないと判定された場合(S30:NO)、制御装置140はステップS50の処理に移行する。
ステップS40において、転舵制御部143はアクチュエータ制御部172に第1の転舵指令を出力する。アクチュエータ制御部172は、第1の転舵指令を受信すると、前輪2を中央位置Nwから離れる方向に転舵させるように、転舵アクチュエータ173を制御する。具体的に、アクチュエータ制御部172は、前輪2が転舵している方向に、前輪2をさらに転舵させるように転舵アクチュエータ173を制御する。続いて、制御装置140はステップS60の処理に移行する。
ステップS50において、転舵制御部143はアクチュエータ制御部172に第2の転舵指令を出力する。アクチュエータ制御部172は、第2の転舵指令を受信すると、前輪2をいずれか一方に転舵させるように転舵アクチュエータ173を制御する。前輪2の転舵方向は、衝突判定部141によって認識された自車両の前方の物体の形状や位置、自車周囲の他車両の位置等に基づいて決定されてもよい。続いて、制御装置140はステップS60の処理に移行する。
ステップS60では、転舵制御部143は、操向ハンドル20を中央位置Nhに保持するように、アクチュエータ制御部172にハンドル固定指令を出力する。アクチュエータ制御部172は、ハンドル固定指令を受信すると、操向ハンドル20を中央位置Nhまで回転させた上で操向ハンドル20を中央位置Nhに保持させるように反力アクチュエータ174を制御する。これを以て、制御装置140は一連の処理を終了する。
図7は、実施形態の制御装置による衝突被害軽減のアシストの要否の判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。図7に示すフローチャートは、図6のフローチャートのステップS20における処理を、より詳細に説明したものである。
ステップS110において、制御装置140は、乗員によって操舵操作が行われているか否かを判定する。例えば、制御装置140は、操向ハンドル20の操舵角度、および操向ハンドル20に加わる操舵トルクの大きさのいずれか一方または両方に基づいて、操舵操作の有無を判定する。操舵操作が行われていないと判定された場合(S110:NO)、制御装置140はステップS120の処理に移行する。操舵操作が行われていると判定された場合(S110:YES)、乗員による衝突対象の物体からの回避意思があるため、制御装置140はアシストを必要としないと判定する(ステップS130)。
ステップS120において、制御装置140は、前輪2の転舵角度が所定値以下か否かを判定する。前輪2の転舵角度が所定値以下の場合(S120:YES)、制御装置140はアシストが必要であると判定する(ステップS140)。前輪2の転舵角度が所定値よりも大きい場合(S120:NO)、制御装置140はアシストが必要でないと判定する(ステップS130)。なお、操舵操作が行われておらず、かつ前輪2の転舵角度が0よりも大きい状態は、例えばセルフステアによって前輪2が転舵している状態である。
以上に説明したように、本実施形態の自動二輪車1は、前輪2を転舵可能に支持する前輪懸架装置10と、前輪2を転舵する転舵アクチュエータ173と、自車両の前方の物体を検出する前方検出装置120と、前方検出装置120の検出結果に基づいて自車両の正面衝突が発生するか否かを判定する衝突判定部141と、正面衝突が発生すると判定された場合に、前輪2を中央位置Nwから離れる方向に転舵させるように、転舵アクチュエータ173を制御するアクチュエータ制御部172と、を備える。この構成によれば、前輪2を転舵することで、車両の前端部を後退させることができる。ここで、自車両が前方の物体に正面衝突すると、車両の重心G(図1参照)が車両前方の物体と前輪2との接触点よりも上方に位置する場合、車両後部が持ち上がるノーズダイブが発生する場合がある。ノーズダイブが発生すると、車両前方の物体と前輪2との接触点よりも上方で、車両における第2の接触点(例えばヘッドライト36)が車両前方の物体に接触する。車両の前端部を後退させると、車両の前端部と第2の接触点との前後方向の間隔が狭くなる。
図8は、本実施形態の作用を示す図である。
図8に示すように、車両の前端部Pを後退させ、車両の前端部Pとヘッドライト36との前後方向の間隔を狭くすることで、ノーズダイブが発生した際のシート60の浮き上がり量を小さくすることができる。これにより、乗員に対する水平方向の前方にエアバッグ装置70のエアバッグ71を展開できる。したがって、エアバッグ71を備えた自動二輪車1において、正面衝突時の乗員の保護性能の向上を図ることができる。
前方検出装置120は、前輪懸架装置10に配置された転舵側センサ80を備える。この構成によれば、前輪2の転舵角度によらず、前輪2と車両前方の物体との位置関係を容易に把握できる。このため、自車両の正面衝突が発生するか否かを衝突判定部141によって精度よく判定できる。そのため、エアバッグ71の展開時期を適切にできるので、正面衝突時の乗員の保護性能を向上できる。
前方検出装置120は、車体フレーム30に対して固定的に配置された車体側センサ81を備える。この構成によれば、転舵側センサ80との組み合わせにより、車両前方の物体の形状をより正確に把握することが可能となる。このため、自車両の正面衝突が発生するか否かを衝突判定部141によって精度よく判定できる。そのため、エアバッグ71の展開時期を適切にできるので、正面衝突時の乗員の保護性能を向上できる。
特に本実施形態では、車体側センサ81は、転舵側センサ80とは上下方向で異なる位置に配置されているので、車幅方向から見た際の車両前方の物体の形状を把握できる。したがって、自車両の正面衝突が発生するか否かを衝突判定部141によって精度よく判定できる。そのため、エアバッグ71の展開時期を適切にできるので、正面衝突時の乗員の保護性能を向上できる。
アクチュエータ制御部172は、正面衝突が発生すると判定された場合に、操向ハンドル20を中央位置Nhに保持するように反力アクチュエータ174を制御する。この構成によれば、前輪2の転舵角度によらず、乗員を車両前方に向かせることができる。このため、自車両に正面衝突が発生した際に、乗員の前方に展開したエアバッグ71によって、乗員を受け止めやすくすることができる。そのため、正面衝突時の乗員の保護性能を向上できる。
アクチュエータ制御部172は、正面衝突が発生すると判定された場合に、前輪2が転舵している方向に前輪2をさらに転舵させるように転舵アクチュエータ173を制御する。この構成によれば、前輪2が転舵している方向とは反対側に前輪2を転舵させる構成と比較して、車両の前端部を速やかに後退させることができる。このため、正面衝突が発生すると判定されてから実際に正面衝突が発生するまでの短い時間で、乗員を保護する態勢を整えることができる。そのため、正面衝突時の乗員の保護性能を向上できる。
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、自動二輪車への適用を例に説明したが、車両の用途については何ら限定するものではない。例えば、鞍乗り型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車のみならず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)の車両も含まれる。
上記実施形態では前輪懸架装置のフロントサスペンション構造について詳述していないが、フロントサスペンション構造は特に限定されない。例えば、前輪懸架装置は、テレスコピックフォークを備えたサスペンション構造を有していてもよいし、ダブルウィッシュボーン式サスペンション等のリンク式フォークを備えたサスペンション構造を有していてもよい。いずれの場合であっても、転舵側センサは、前輪の回転中心に対して固定的な位置に配置されていることが望ましい。
上記実施形態では、操向ハンドル20が前輪懸架装置10から機械的に切り離されている。しかしながら、操向ハンドルは前輪懸架装置に機械的に接続されていてもよい。例えば、操向ハンドルは前輪懸架装置に相対回転可能に形成され、かつ操向ハンドルは可動式のピンにより前輪懸架装置に相対回転不能に連結されていてもよい。この場合、自車両に正面衝突が発生すると判定された際にピンによる操向ハンドルおよび前輪懸架装置の連結が解除されて、前輪が操向ハンドルに対して独立して回転するように構成することができる。
上記実施形態では、アクチュエータ制御部172がハンドル固定指令を受信した際に、反力アクチュエータ174の駆動によって操向ハンドル20を保持している。しかしながら、操向ハンドル20を保持する機構はこれに限定されず、例えば操向ハンドル20を車体フレーム30に対して機械的に連結させて固定する機構を備えていてもよい。
上記実施形態では、車両センサ110は、ジャイロセンサ113を含んでいるが、ジャイロセンサ113に代えて、自車両の加速度を検出する加速度センサを含んでいてもよい。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
1…自動二輪車(鞍乗り型車両) 2…前輪 10…前輪懸架装置(懸架装置) 20…操向ハンドル(ハンドル) 30…車体フレーム 60…シート 71…エアバッグ 80…転舵側センサ(転舵側手段) 81…車体側センサ(車体側手段) 120…前方検出装置(物体検出手段) 141…衝突判定部 172…アクチュエータ制御部(ハンドル制御部) 173…転舵アクチュエータ(アクチュエータ) 174…反力アクチュエータ(ハンドル固定機構) Nw…前輪の中央位置 Nh…ハンドルの中央位置

Claims (5)

  1. 乗員が着座するシート(60)の前方に展開するエアバッグ(71)と、
    車体フレーム(30)に対して前輪(2)を転舵可能に支持する懸架装置(10)と、
    前記前輪(2)を転舵するアクチュエータ(173)と、
    自車両の前方の物体を検出する物体検出手段(120)と、
    前記物体検出手段(120)の検出結果に基づいて自車両の正面衝突が発生するか否かを判定する衝突判定部(141)と、
    正面衝突が発生すると判定された場合に、前記前輪(2)を中央位置(Nw)から離れる方向に転舵させるように前記アクチュエータ(173)を制御するアクチュエータ制御部(172)と、
    を備えることを特徴とする鞍乗り型車両。
  2. 前記物体検出手段(120)は、前記懸架装置(10)に配置された転舵側手段(80)を備える、
    ことを特徴とする請求項1に記載の鞍乗り型車両。
  3. 前記物体検出手段(120)は、前記車体フレーム(30)に対して固定的に配置された車体側手段(81)を備える、
    ことを特徴とする請求項2に記載の鞍乗り型車両。
  4. 前記懸架装置(10)と相対回転可能に配置されたハンドル(20)と、
    前記ハンドル(20)を中央位置(Nh)に固定するハンドル固定機構(174)と、
    正面衝突が発生すると判定された場合に、前記ハンドル(20)を中央位置(Nh)に保持するように前記ハンドル固定機構(174)を制御するハンドル制御部(172)と、
    を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の鞍乗り型車両。
  5. 前記アクチュエータ制御部(172)は、正面衝突が発生すると判定された場合に、前記前輪(2)が転舵している方向に前記前輪(2)をさらに転舵させるように前記アクチュエータ(173)を制御する、
    ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の鞍乗り型車両。
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