図面を参照して、本発明の実施形態に係る作業機械について説明する。本実施形態では、作業機械が、クローラ式の油圧ショベルである例について説明する。
図1は、油圧ショベル1の側面図である。説明の便宜上、図1に示すように油圧ショベル1の前後及び上下方向を規定する。つまり、本実施形態では、特に断り書きのない場合は、運転席の前方(同図中では左方向)を油圧ショベル1の前方とする。油圧ショベル1は、機体(車体)4と、機体4に取り付けられる作業装置10と、を備える。機体4は、走行体2と、走行体2上に旋回可能に設けられた旋回体3と、を備え、旋回体3の前部に作業装置10が取り付けられている。走行体2は、左右一対のクローラを走行モータ2aによって駆動することにより走行する。
旋回体3は、ベース部材となる旋回フレーム8と、旋回フレーム8の前部左側に設けられる運転室7と、旋回フレーム8の後部に設けられるカウンタウエイト9と、旋回フレーム8における運転室7の後側に設けられるエンジン室6と、を有する。エンジン室6には、動力源であるエンジンや油圧機器等が収容されている。旋回フレーム8の前部中央には作業装置10が回動可能に連結されている。
作業装置10は、回動可能に連結される複数のフロント部材及びフロント部材を駆動する複数の油圧シリンダを有する多関節型の作業装置である。本実施形態では、3つのフロント部材としてのブーム11、アーム12及びバケット13が、直列的に連結される。ブーム11は、その基端部が旋回フレーム(ベース部材)8の前部においてブームピン11bによって回動可能に連結される。アーム12は、その基端部がブーム11の先端部においてアームピン12bによって回動可能に連結される。バケット13は、アーム12の先端部においてバケットピン13bによって回動可能に連結される。ブームピン11b、アームピン12b及びバケットピン13bは、互いに平行に配置され、それぞれの部材(8,11,12,13)は同一面内で相対回転可能とされている。
ブーム11は、アクチュエータである油圧シリンダ(以下、ブームシリンダ11aとも記す)によって駆動され、旋回フレーム8に対して回動する。アーム12は、アクチュエータである油圧シリンダ(以下、アームシリンダ12aとも記す)によって駆動され、ブーム11に対して回動する。バケット13は、アクチュエータである油圧シリンダ(以下、バケットシリンダ13aとも記す)によって駆動され、アーム12に対して回動する。ブームシリンダ11aは、その一端側がブーム11に接続され他端側が旋回フレーム8に接続されている。アームシリンダ12aは、その一端側がアーム12に接続され他端側がブーム11に接続されている。バケットシリンダ13aは、その一端側がリンク部材を介してバケット13に接続され他端側がアーム12に接続されている。
ブーム11には、旋回体3に対するブーム11の角度(ブーム角度)を測定するためのブーム角度センサ50aが取り付けられる。アーム12には、ブーム11に対するアーム12の角度(アーム角度)を測定するためのアーム角度センサ50bが取り付られる。バケット13とアーム12とを接続するリンク部材には、アーム12に対するバケット13の角度(バケット角度)を測定するためのバケット角度センサ50cが取り付けられる。旋回体3には基準面(例えば水平面)に対する旋回体3(機体4)の傾斜角を測定するための旋回体角度センサ50dが取り付けられている。なお、角度センサ50a,50b,50cは、それぞれ基準面(水平面)に対する傾斜角(すなわち対地角)を検出可能な角度センサに代替可能である。
図2は、運転室7の内部を運転席75の後側から前方に向かって見たときの概略図である。図2に示すように、運転室7内には、オペレータが着座する運転席75と、油圧ショベル1の各部を操作するための操作レバー(B1〜B4)と、油圧ショベル1の動作を制御する制御装置100と、制御装置100からの信号に基づいて所定の表示画像を表示画面に表示させる表示装置18と、が設けられている。運転席75の右側には、バケット13の操作及びブーム11の操作を行うための右操作レバーB1が設けられ、運転席75の左側には、旋回体3の操作及びアーム12の操作を行うための左操作レバーB2が設けられている。運転席75の前側には左右一対の走行レバー(左走行レバーB4及び右走行レバーB3)が設けられている。左走行レバーB4は左側のクローラの操作を行うための操作レバーであり、右走行レバーB3は右側のクローラの操作を行うための操作レバーである。
左側の操作レバーB2の左側には、ゲートロックレバー(パイロットシャットオフレバー)B5が設けられている。ゲートロックレバーB5は、運転室7の出入りを許可するロック位置(上げ位置)と、運転室7の出入りを禁止するロック解除位置(下げ位置)との間で操作が可能な部材である。
表示装置18は、例えば、液晶パネル等から構成され、制御装置100に接続されており、制御装置100からの表示制御信号に基づき、油圧ショベル1の稼働情報等を表す表示画像を表示画面に表示させる。表示装置18は、運転席75側からみて右側のピラー76に取り付けられている。制御装置100は、運転室7における運転席75の後方に設けられている。
図3は、油圧ショベル1に搭載される油圧システム30及び制御装置100を示す図である。なお、以下では、油圧ショベル1に搭載される走行モータ(油圧モータ)、旋回モータ(油圧モータ)、ブームシリンダ(油圧シリンダ)11a、アームシリンダ(油圧シリンダ)12a及びバケットシリンダ(油圧シリンダ)13aを総称して油圧アクチュエータとも記す。油圧システム30には、複数の油圧アクチュエータが設けられているが、図3では、作業装置10のフロント部材を駆動するための油圧シリンダ37(例えば、ブームシリンダ11a)を代表して図示している。また、油圧アクチュエータを操作する電気式の操作装置34及び操作装置34の操作に応じて駆動される制御弁40は、複数の油圧アクチュエータ毎に設けられるが、図3では、代表して、一つの操作装置(例えば、操作レバーB1(34a)を有する操作装置)34と、一つの制御弁40と、を図示している。
油圧システム30は、メインポンプ31及びパイロットポンプ32と、メインポンプ31から吐出される作動流体としての作動油によって駆動される油圧シリンダ37と、メインポンプ31から油圧シリンダ37への作動油の流れを制御する制御弁40と、制御弁40の受圧部41a,41b(41)への指令パイロット圧を生成する電磁比例減圧弁(以下、電磁弁と記す)33a,33b(33)と、を備える。
メインポンプ31及びパイロットポンプ32は、エンジン80に接続され、エンジン80によって駆動されて作動油(圧油)を吐出する。メインポンプ31は可変容量型の油圧ポンプであり、パイロットポンプ32は固定容量型の油圧ポンプである。エンジン80は、油圧ショベル1の動力源であり、例えば、ディーゼルエンジン等の内燃機関により構成される。油圧シリンダ37は、一端が閉塞された有底筒状のシリンダチューブ37sと、シリンダチューブ37sの他端の開口を塞ぐヘッドカバーと、ヘッドカバーを貫通し、シリンダチューブ37sに挿入されるピストンロッド37rと、ピストンロッド37rの先端に設けられ、シリンダチューブ37s内をロッド室とボトム室とに区画するピストンと、を備える。
電磁弁33a,33bは、パイロット油圧源であるパイロットポンプ32の吐出圧(油圧)を元圧として、制御弁40の受圧部41a,41bへ出力する指令パイロット圧を生成する。電磁弁33a,33bは、制御装置100からの信号に基づいて制御される。操作装置34は、操作レバー(操作部材)34aの操作量に応じた信号を制御装置100に出力する。制御装置100は、操作装置34からの信号に基づいて電磁弁33a,33bを制御する。
電磁弁33aによって生成された指令パイロット圧が、中立位置(N)に位置している制御弁40の受圧部41aに作用すると、制御弁40が一方に駆動して、制御弁40が中立位置(N)から第1位置(P1)に切り換えられる。これにより、メインポンプ31から吐出された圧油が油圧シリンダ37(ブームシリンダ11a)のボトム室に導かれるとともにロッド室からタンク39に作動油が排出され、油圧シリンダ37(ブームシリンダ11a)が伸長する。その結果、フロント部材(ブーム11)が第1の方向(上方向)に回動する。
電磁弁33bによって生成された指令パイロット圧が、中立位置(N)に位置している制御弁40の受圧部41bに作用すると、制御弁40が他方に駆動して、制御弁40が中立位置(N)から第2位置(P2)に切り換えられる。これにより、メインポンプ31から吐出された圧油が油圧シリンダ37(ブームシリンダ11a)のロッド室に導かれるとともにボトム室からタンク39に作動油が排出され、油圧シリンダ37(ブームシリンダ11a)が収縮する。その結果、フロント部材(ブーム11)が第2の方向(下方向)に回動する。
電磁弁33a,33b(33)と制御弁40の受圧部41a,41b(41)とを接続するパイロットラインには、受圧部41に作用する作動油の圧力である指令パイロット圧を検出する圧力センサ38a,38b(38)が設けられている。圧力センサ38a,38bは、後述する制御装置100に接続されており、検出した指令パイロット圧に関する信号を制御装置100に出力する。
メインポンプ31から吐出された作動油は、制御弁40を通じて油圧シリンダ37に供給され、作業装置10が駆動される。なお、図示しないが、メインポンプ31から吐出された作動油は、制御弁を通じて旋回用油圧モータ及び走行用油圧モータに供給され、旋回体3及び走行体2のそれぞれが駆動される。
ゲートロックレバーB5(図2参照)がロック位置に操作されると、パイロットポンプ32と電磁弁33との間のパイロットラインに設けられた切換弁36が遮断位置に切り換えられる。これにより、電磁弁33へのパイロット元圧が遮断され、操作レバー34aによる操作が無効化される。ゲートロックレバーB5がロック解除位置に操作されると、パイロットポンプ32と電磁弁33との間のパイロットラインに設けられた切換弁36が連通位置に切り換えられる。このため、ゲートロックレバーB5がロック解除位置にある状態では、操作レバー34aの操作量に応じた指令パイロット圧が電磁弁33によって生成され、操作された操作レバー34aに対応する油圧アクチュエータが動作する。
油圧ショベル1は、油圧ショベル1に搭載される各機器を制御するための制御装置100と、オペレータによって操作されることにより所定の信号を制御装置100に入力する入力装置19と、制御装置100から出力される信号に基づいて所定の画像を表示画面に表示させる表示装置18と、を備える。
制御装置100は、動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)111、記憶装置としてのROM(Read Only Memory)112、記憶装置としてのRAM(Random Access Memory)113、入力インタフェース114及び出力インタフェース115、その他の周辺回路を備えたマイクロコンピュータで構成される。制御装置100は、1つのマイクロコンピュータで構成してもよいし、複数のマイクロコンピュータで構成してもよい。制御装置100のROM112は、EEPROM等の不揮発性メモリであり、各種演算が実行可能なプログラムが格納されている。すなわち、制御装置100のROM112は、本実施形態の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶媒体である。RAM113は揮発性メモリであり、CPU111との間で直接的にデータの入出力を行うワークメモリである。RAM112は、CPU111がプログラムを演算実行している間、必要なデータを一時的に記憶する。なお、制御装置100は、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等の記憶装置をさらに備えていてもよい。
CPU111は、ROM112に記憶された制御プログラムをRAM113に展開して演算実行する処理装置であって、制御プログラムに従って入力インタフェース114及びROM112,RAM113から取り入れた信号に対して所定の演算処理を行う。入力インタフェース114には、入力装置19、圧力センサ38a,38b、温度センサ20、姿勢検出装置50、操作装置34の操作センサ34bからの信号が入力される。入力インタフェース114は、入力された信号をCPU111で演算可能なように変換する。出力インタフェース115は、CPU111での演算結果に応じた出力用の信号を生成し、その信号を油圧システム30の電磁弁33a,33b及び表示装置18に出力する。
温度センサ20は、パイロットポンプ32から吐出される作動油の温度Tを検出し、検出結果を表す信号を制御装置100に出力する。操作センサ34bは、操作レバー34aの操作角θ(操作量)を検出し、検出結果を表す信号を制御装置100に出力する。操作センサ34bで検出される操作レバー34aの操作角θは、中立位置のときに0°であり、中立位置から傾けるほど、その絶対値が大きくなる。
姿勢検出装置50は、ブーム角度センサ50a、アーム角度センサ50b、バケット角度センサ50c及び旋回体角度センサ50dを有する。これらの角度センサ50a,50b,50c,50dは、作業装置10の姿勢に関する情報を取得し、その情報に応じた信号を出力する。すなわち、角度センサ50a,50b,50c,50dは、作業装置10の姿勢を検出する姿勢センサとして機能している。
例えば、角度センサ50a,50b,50cには、姿勢に関する情報としてブーム角度、アーム角度及びバケット角度を取得し、取得した角度に応じた信号(電圧)を出力するポテンショメータを採用することができる。また、旋回体角度センサ50dには、姿勢に関する情報として直交3軸の角速度及び加速度を取得し、この情報に基づき旋回体3(機体4)の傾斜角を演算し、傾斜角を表す信号を制御装置100に出力するIMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)を採用することができる。なお、旋回体3(機体4)の傾斜角の演算は、IMUの出力信号に基づき、制御装置100が行うようにしてもよい。また、本実施形態の角度センサ50a,50b,50cは、各フロント部材11,12,13の角度を検出するポテンショメータを採用する場合に限定されず、ポテンショメータに代えて各フロント部材11,12,13の角度を検出可能なIMUを角度センサ50a,50b,50cとして採用してもよい。
図4は、制御装置100の機能ブロック図である。図4に示すように、制御装置100は、ROM112に記憶されているプログラムを実行することにより、目標パイロット圧演算部101、目標電流演算部102、電流供給部103、シリンダストローク演算部104、ストローク変位量演算部105、第1異常判定部106、第2異常判定部107及び表示制御部108として機能する。
目標パイロット圧演算部101は、操作センサ34bで検出された操作レバー34aの操作角θ(操作量)に基づいて、目標パイロット圧Ptを演算する。目標パイロット圧Ptは、制御弁40の受圧部41a,41bに作用させる指令パイロット圧の目標値である。
図5は、操作レバー34aの操作角θと目標パイロット圧Ptとの関係を示す図である。制御装置100のROM112には、図5に示す特性N1がルックアップテーブル形式で記憶されている。特性N1は、操作角θの絶対値が大きくなるほど目標パイロット圧Ptが大きくなる特性である。目標パイロット圧演算部101は、図5に示す特性N1のテーブルを参照し、操作センサ34bで検出された操作角θに基づいて、目標パイロット圧Ptを演算する。目標パイロット圧Ptは、操作レバー34aが中立位置(操作角θ=0)を含む不感帯にあるときには最小値Ptminとなり、操作レバー34aが最大操作位置(操作角θ=θmax)に操作されているときには最大値Ptmaxとなる。
図4に示す目標電流演算部102は、目標パイロット圧演算部101で演算された目標パイロット圧Ptに基づいて、目標電流Itを演算する。目標電流Itは、電磁弁33のソレノイドに供給される制御電流の目標値である。
図6は、目標パイロット圧Ptと目標電流Itとの関係を示す図である。制御装置100のROM112には、図6に示す特性N2がルックアップテーブル形式で記憶されている。特性N2は、目標パイロット圧Ptが大きくなるほど目標電流Itが大きくなる特性である。目標電流演算部102は、図6に示す特性N2のテーブルを参照し、目標パイロット圧演算部101で演算された目標パイロット圧Ptに基づいて、目標電流Itを演算する。目標電流Itは、目標パイロット圧Ptが最小値Ptminであるときには最小値Itminとなり、目標パイロット圧Ptが最大値Ptmaxであるときには最大値Itmaxとなる。
図4に示す電流供給部103は、目標電流演算部102で演算された目標電流Itに基づいて、電磁弁33のソレノイドに供給する制御電流の大きさを調節する。本実施形態では、電磁弁33は、ソレノイドに入力される制御電流の増加に伴い減圧度が小さくなるように構成されている。つまり、電磁弁33は、入力される制御電流が大きくなるほど、発生する指令パイロット圧(2次圧力)が大きくなるポジティブ型の電磁比例減圧弁である。
シリンダストローク演算部104は、油圧ショベル1の寸法データ、及び、姿勢検出装置50での検出結果に基づいて、油圧シリンダ37のストローク(長さ)を演算する。図7を参照して、油圧シリンダ37のストロークの演算方法の一例として、ブームシリンダ11aのストロークBmSt(すなわちブームシリンダ11aのボトム側のピンの中心点Pからブームシリンダ11aのロッド側のピンの中心点Qまでの長さ)の演算方法について説明する。図7は、ブームシリンダ11aのストロークBmStの演算に用いる寸法データ(AP,AQ,∠BAQ,∠PAX)を示す図である。シリンダストローク演算部104は、旋回体3の旋回中心軸をz軸、ブームピン11b及び旋回中心軸のそれぞれに直交する軸をx軸としたショベル基準座標系(車体座標系)でストロークBmStを演算する。
ブームシリンダ11aのストロークBmStは、余弦定理により、油圧ショベル1の寸法データ(AP,AQ,∠BAQ,∠PAX)、及び、姿勢検出装置50での検出結果に基づいて演算されるブーム角度BmAngによって、式(1)により表される。
ここで、APは、ブームピン11bの中心点Aからブームシリンダ11aのボトム側のピンの中心点Pまでの長さであり、AQは、ブームピン11bの中心点Aからブームシリンダ11aのロッド側のピンの中心点Qまでの長さである。∠BAQは、中心点Aと中心点Qを結ぶ直線である線分(AQ)と、中心点Aとアームピン12bの中心点Bを結ぶ直線である線分(AB)と、のなす角である。∠PAXは、中心点Aと中心点Pを結ぶ直線である線分(AP)とx軸とのなす角である。これらの寸法データ(AP,AQ,∠BAQ,∠PAX)は、予めROM112に記憶されている。BmAngは、線分(AB)とx軸とのなす角であり、姿勢検出装置50での検出結果に基づいて演算されたブーム角度に相当する。
図4に示すシリンダストローク演算部104は、同様に、アームシリンダ12aのストローク及びバケットシリンダ13aのストロークを演算する。以下、シリンダストローク演算部104で演算されたブームシリンダ11aのストロークBmSt、アームシリンダ12aのストローク、及びバケットシリンダ13aのストロークを総称してストロークStと記す。
ストローク変位量演算部105は、シリンダストローク演算部104で演算されたストロークStに基づいて、ストローク変位量Δxを演算する。ストローク変位量Δxは、シリンダストローク演算部104で演算されたストロークSt(今回値)と、所定の制御周期前(例えば、1制御周期前)にシリンダストローク演算部104で演算されたストロークSt´(前回値)と、の差の絶対値に相当する(Δx=|St−St´|)。
第1異常判定部106及び第2異常判定部107は、電磁弁33に異常が発生しているか否かを判定する。ここで、電磁弁33の異常とは、電磁弁33aの内部に異物が入り込み、駆動部分に異物が引っ掛かることに起因して電磁弁33aの弁体が動かなくなる固着現象であるコンタミスティックが発生し、電磁弁33が操作装置34の操作に応じた適切な動作が不能となっていることを指す。
第1異常判定部106及び第2異常判定部107は、操作装置34の操作レバー34aが操作されている状態であって、かつ、その操作装置34の操作レバー34aの操作に対応する作業装置10の油圧シリンダ37が動作していない状態が、所定時間以上継続している場合、電磁弁33が閉側で固着している閉側固着異常が発生していると判定する。なお、閉側固着異常とは、電磁弁33を介してパイロットポンプ32と受圧部41とが遮断されている状態が維持されるように、電磁弁33の弁体が固着している異常のことを指す。
例えば、操作レバーB1によってブーム上げ操作がなされているにもかからず、所定時間以上、ブームシリンダ11aが動作していない場合、第1異常判定部106及び第2異常判定部107は電磁弁33aが閉側で固着している閉側固着異常が発生していると判定する。
第1異常判定部106及び第2異常判定部107は、作業装置10の油圧シリンダ37が動作している状態であって、かつ、その油圧シリンダ37を駆動するための操作装置34の操作レバー34aが操作されていない状態が、所定時間以上継続している場合、電磁弁33が開側で固着している開側固着異常が発生していると判定する。なお、開側固着異常とは、電磁弁33を介してパイロットポンプ32と受圧部41とが連通している状態が維持されるように、電磁弁33の弁体が固着している異常のことを指す。
例えば、操作レバーB1によるブーム上げ操作に応じてブームシリンダ11aが伸長動作している状態から操作レバーB1が中立位置に戻された後、操作レバーB1が操作されていないにもかかわらず、所定時間以上、ブームシリンダ11aが動作している場合、第1異常判定部106及び第2異常判定部107は、電磁弁33aが開側で固着している開側固着異常が発生していると判定する。
第1異常判定部106は、目標パイロット圧演算部101で演算された目標パイロット圧Ptと、ストローク変位量演算部105で演算されたストローク変位量Δxと、に基づいて、電磁弁33の異常が発生しているか否かを判定する。
第2異常判定部107は、目標パイロット圧演算部101で演算された目標パイロット圧Ptと、圧力センサ38で検出された指令パイロット圧Ppと、に基づいて、電磁弁33の異常が発生しているか否かを判定する。
以下、第1異常判定部106及び第2異常判定部107による異常判定方法について、それぞれ詳しく説明する。
第1異常判定部106は、目標パイロット圧Ptが閾値Pt0以上である場合、操作装置34の操作レバー34aが操作されていると判定し、目標パイロット圧Ptが閾値Pt0未満である場合、操作装置34の操作レバー34aは操作されていないと判定する。なお、閾値Pt0は、操作レバー34aが操作されているか否かを判定する閾値であり、予め制御装置100のROM112に記憶されている。閾値Pt0は、上述した最小値Ptminよりも大きく最大値Ptmaxよりも小さい値である(Ptmin<Pt0<Ptmax)。
また、第1異常判定部106は、ストローク変位量Δxが閾値x0以上である場合、作業装置10の油圧シリンダ37が動作していると判定し、ストローク変位量Δxが閾値x0未満である場合、作業装置10の油圧シリンダ37は動作していないと判定する。なお、閾値x0は、油圧シリンダ37が伸縮あるいは収縮動作を行っているか否かを判定するための閾値であり、本実施形態では、油圧シリンダ37の動き始めとして判断できる程度の値が設定されている。操作装置34の操作レバー34aが操作されたとき、その操作量(操作角θ)に応じたシリンダ速度に達するまでには、所定の時間を要する。このため、本実施形態では、操作量(操作角θ)に応じたシリンダ速度に達する前段階における、所定の制御周期間のストローク変位量を閾値x0として設定する。
第1異常判定部106は、目標パイロット圧Ptが閾値Pt0未満であり(操作レバー34aが非操作状態であり)、かつ、ストローク変位量Δxが閾値x0以上である(油圧シリンダ37が動作状態である)場合、制御装置100に内蔵されている第1タイマにより時間の計測を行う。第1異常判定部106は、目標パイロット圧Ptが閾値Pt0未満であり、かつ、ストローク変位量Δxが閾値x0以上である状態において第1タイマにより計測される時間t1が時間閾値ta以上になると、電磁弁33が開側で固着している開側固着異常が発生していると判定する。時間閾値taは、開側固着異常が発生しているか否かを判定するための閾値であり、予め制御装置100のROM112に記憶されている。第1異常判定部106は、開側固着異常が発生していると判定すると、第1開側固着フラグFo1をオンに設定する(Fo1=1)。
また、第1異常判定部106は、目標パイロット圧Ptが閾値Pt0以上であり(操作レバー34aが操作状態であり)、かつ、ストローク変位量Δxが閾値x0未満である(油圧シリンダ37が停止状態である)場合、制御装置100に内蔵されている第1タイマにより時間の計測を行う。第1異常判定部106は、目標パイロット圧Ptが閾値Pt0以上であり、かつ、ストローク変位量Δxが閾値x0未満である状態において第1タイマにより計測される時間t1が時間閾値tb以上になると、電磁弁33が閉側で固着している閉側固着異常が発生していると判定する。時間閾値tbは、閉側固着異常が発生しているか否かを判定するための閾値であり、予め制御装置100のROM112に記憶されている。本実施形態では、時間閾値ta及び時間閾値tbは、同じ値に設定しているが、異なる値に設定してもよい。第1異常判定部106は、閉側固着異常が発生していると判定すると、第1閉側固着フラグFc1をオンに設定する(Fc1=1)。
第1異常判定部106は、目標パイロット圧Ptが閾値Pt0以上であり、かつ、ストローク変位量Δxが閾値x0以上である場合、第1タイマをリセットして計測時間t1を0(ゼロ)にするとともに、第1閉側固着フラグFc1をオフに設定する(Fc1=0)。第1異常判定部106は、目標パイロット圧Ptが閾値Pt0未満であり、かつ、ストローク変位量Δxが閾値x0未満である場合、第1タイマをリセットして計測時間t1を0(ゼロ)にするとともに、第1開側固着フラグFo1をオフに設定する(Fo1=0)。
第2異常判定部107は、第1異常判定部106と同様、目標パイロット圧Ptが閾値Pt0以上である場合、操作装置34の操作レバー34aが操作されていると判定し、目標パイロット圧Ptが閾値Pt0未満である場合、操作装置34の操作レバー34aは操作されていないと判定する。
また、第2異常判定部107は、圧力センサ38で検出された指令パイロット圧Ppが閾値Pp0以上である場合、作業装置10の油圧シリンダ37が動作していると判定し、指令パイロット圧Ppが閾値Pp0未満である場合、作業装置10の油圧シリンダ37は動作していないと判定する。なお、閾値Pp0は、油圧シリンダ37が伸縮あるいは収縮動作を行っているか否かを判定するための閾値であり、本実施形態では、油圧シリンダ37の動き始めとして判断できる程度の値が設定されている。
第2異常判定部107は、目標パイロット圧Ptが閾値Pt0未満であり(操作レバー34aが非操作状態であり)、かつ、指令パイロット圧Ppが閾値Pp0以上である(油圧シリンダ37が動作状態である)場合、制御装置100に内蔵されている第2タイマにより時間の計測を行う。第2異常判定部107は、目標パイロット圧Ptが閾値Pt0未満であり、かつ、指令パイロット圧Ppが閾値Pp0以上である状態において第2タイマにより計測される時間t2が時間閾値tc以上になると、電磁弁33が開側で固着している開側固着異常が発生していると判定する。第2異常判定部107は、開側固着異常が発生していると判定すると、第2開側固着フラグFo2をオンに設定する(Fo2=1)。
また、第2異常判定部107は、目標パイロット圧Ptが閾値Pt0以上であり(操作レバー34aが操作状態であり)、かつ、指令パイロット圧Ppが閾値Pp0未満である場合(油圧シリンダ37が停止状態である)、制御装置100に内蔵されている第2タイマにより時間の計測を行う。第2異常判定部107は、目標パイロット圧Ptが閾値Pt0以上であり、かつ、指令パイロット圧Ppが閾値Pp0未満である状態において第2タイマにより計測される時間t2が時間閾値td以上になると、電磁弁33が閉側で固着している閉側固着異常が発生していると判定する。第2異常判定部107は、閉側固着異常が発生していると判定すると、第2閉側固着フラグFc2をオンに設定する(Fc2=1)。
ここで、作動油の温度Tが低く作動油の粘度が高い状態のときには、操作レバー34aを中立位置から最大操作位置まで操作したときの指令パイロット圧Ppの上昇速度は、作動油の温度が高いときに比べて遅くなる。また、作動油の温度Tが低い状態のときには、操作レバー34aを最大操作位置から中立位置まで戻したときの指令パイロット圧の低下速度は、作動油の温度が高いときに比べて遅くなる。
このため、作動油の温度Tが低い状態のときに、第2異常判定部107の判定に用いる時間閾値tc,tdを、第1異常判定部106の判定に用いる時間閾値ta,tbと同程度の時間閾値とした場合、誤判定が生じるおそれがある。本実施形態では、作動油の温度Tが低い状態のときの誤判定を防止するために、時間閾値tc,tdを作動油の温度Tに基づいて設定する。第2異常判定部107は、図8に示す閾値設定テーブルを参照し、温度センサ20で検出される作動油の温度Tに基づいて、時間閾値tc,tdを演算する。図8は、作動油の温度Tと時間閾値tc,tdとの関係を示す図である。
図8に示すように、本実施形態では、時間閾値tc,tdは、作動油の温度Tが第1温度T1未満では最大値tmax(例えば、1.0[sec]程度)となり、作動油の温度Tが第1温度T1以上第2温度T2未満では、作動油の温度Tが高くなるにしたがって短くなり、作動油の温度Tが第2温度T2以上では最小値tmin(例えば、0.2[sec]程度)となる。図中、作動油の温度Tが十分に高い状態(T≧T2)において設定される時間閾値tc=td=tminは、第1異常判定部106での異常判定に用いられる時間閾値ta,tbと同じ値である。本実施形態では、時間閾値tc及び時間閾値tdの演算に用いる閾値設定テーブルに同じものを採用したが、時間閾値tc及び時間閾値tdの演算に用いる閾値設定テーブルに異なるものを採用してもよい。
図4に示す第2異常判定部107は、目標パイロット圧Ptが閾値Pt0以上であり、かつ、指令パイロット圧Ppが閾値Pp0以上である場合、第2タイマをリセットして計測時間t2を0(ゼロ)にするとともに、第2閉側固着フラグFc2をオフに設定する(Fc2=0)。第2異常判定部107は、目標パイロット圧Ptが閾値Pt0未満であり、かつ、指令パイロット圧Ppが閾値Pp0未満である場合、第2タイマをリセットして計測時間t2を0(ゼロ)にするとともに、第2開側固着フラグFo2をオフに設定するFo2=0)。
表示制御部108は、第1異常判定部106または第2異常判定部107によって、電磁弁33に異常が発生していると判定された場合、報知装置としての表示装置18に所定の表示制御信号を出力する報知処理を実行する。報知処理において、制御装置100から所定の表示制御信号が表示装置18に出力されると、表示装置18は、電磁弁33に異常が発生していることを表す表示画像を表示画面に表示することにより、電磁弁33に異常が発生していることをオペレータに知らせるための報知を行う。
以上のとおり、本実施形態に係る制御装置100は、電気式の操作装置34からの信号に基づいて、操作装置34により作業装置10に対する操作がなされているか否かを判定し、姿勢検出装置50からの信号に基づいて、作業装置10が動作しているか否かを判定し、操作装置34により作業装置10に対する操作がなされているか否かの判定結果と、作業装置10が動作しているか否かの判定結果と、に基づいて、電磁弁33に異常が発生しているか否かを判定する。
以下、図9〜図11を参照して、制御装置100により実行される処理の内容について説明する。なお、説明の便宜上、オペレータの操作対象となる油圧シリンダ37がブームシリンダ11aである場合を例に説明する。図9は、制御装置100により実行される報知処理の内容について示すフローチャートである。図9に示すフローチャートの処理は、イグニッションスイッチ(不図示)がオンされることにより開始され、図示しない初期設定が行われた後、所定の制御周期で繰り返し実行される。初期設定において、フラグFo1,Fc1,Fo2,Fc2はオフに設定される(Fo1=Fc1=Fo2=Fc2=0。なお、ステップS10,S15の処理と、ステップS20,S25の処理は、並列処理として実行される。
図9に示すように、ステップS10において、制御装置100は、第1開側固着フラグFo1及び第1閉側固着フラグFc1のいずれかがオン(Fo1=1またはFc1=1)であるか否かを判定する。ステップS10において、第1開側固着フラグFo1及び第1閉側固着フラグFc1のいずれかがオンであると判定された場合、ステップS15へ進み、第1開側固着フラグFo1及び第1閉側固着フラグFc1のいずれもオンでない(すなわちオフ(Fo1=Fc1=0)である)と判定された場合、図9のフローチャートに示す処理を終了する。
ステップS15において、制御装置100は、第1報知処理を実行し、図9のフローチャートに示す処理を終了する。第1報知処理S15において、制御装置100は、第1開側固着フラグFo1がオンに設定されている場合には、電磁弁33が開側で固着している異常状態であることを示すメッセージを表示装置18の表示画面に表示させる。第1報知処理S15において、制御装置100は、第1閉側固着フラグFc1がオンに設定されている場合には、電磁弁33が閉側で固着している異常状態であることを示すメッセージを表示装置18の表示画面に表示させる。
ステップS20において、制御装置100は、第2開側固着フラグFo2及び第2閉側固着フラグFc2のいずれかがオン(Fo2=1またはFc2=1)であるか否かを判定する。ステップS20において、第2開側固着フラグFo2及び第2閉側固着フラグFc2のいずれかがオンであると判定された場合、ステップS25へ進み、第2開側固着フラグFo2及び第2閉側固着フラグFc2のいずれもオンでない(すなわちオフ(Fo2==Fc2=0)である)と判定された場合、図9のフローチャートに示す処理を終了する。
ステップS25において、制御装置100は、第2報知処理を実行し、図9のフローチャートに示す処理を終了する。第2報知処理S25において、制御装置100は、第2開側固着フラグFo2がオンに設定されている場合には、電磁弁33が開側で固着している異常状態であることを示すメッセージを表示装置18の表示画面に表示させる。第2報知処理S25において、制御装置100は、第2閉側固着フラグFc2がオンに設定されている場合には、電磁弁33が閉側で固着している異常状態であることを示すメッセージを表示装置18の表示画面に表示させる。
図10は、制御装置100により実行される第1の異常判定処理の内容について示すフローチャートである。図11は、制御装置100により実行される第2の異常判定処理の内容について示すフローチャートである。図10及び図11に示すフローチャートの処理は、イグニッションスイッチ(不図示)がオンされることにより開始され、図示しない初期設定が行われた後、所定の制御周期で繰り返し実行される。初期設定において、フラグFo1,Fc1,Fo2,Fc2はオフに設定され(Fo1=Fc1=Fo2=Fc2=0、第1タイマによる計測時間t1及び第2タイマによる計測時間t2はリセットされる(t1=0,t2=0)。
なお、ブームシリンダ11aを駆動させる電磁弁33が異常であるか否かを判定するフロー、アームシリンダ12aを駆動させる電磁弁33が異常であるか否かを判定するフロー、及び、バケットシリンダ13aを駆動させる電磁弁33が異常であるか否かを判定するフロー、はそれぞれ同様のフローである。このため、以下では、代表して、ブームシリンダ11aを駆動させる電磁弁33が異常であるか否かを判定するフローについて説明する。
図10に示すように、ステップS102において、制御装置100は、姿勢検出装置50からフロント部材の角度(ブーム角度BmAng)を取得し、ステップS104へ進む。
ステップS104において、制御装置100は、エンジン80が動作中であるか否かを判定する。ステップS104において、エンジン80が動作中であると判定されるとステップS106へ進み、エンジン80は動作中でない(すなわち停止中である)と判定されるとステップS148へ進む。エンジン80が停止中である場合には、操作装置34に応じて作業装置10が動作することはない。このため、エンジン80の動作判定処理(S104)を行い、エンジン80が動作している場合に限って、第1開側固着フラグFo1及び第1閉側固着フラグFc1の設定処理を行う。
ステップS106において、制御装置100は、油圧ショベル1の寸法データと、ステップS102で取得したフロント部材の角度と、に基づいて、油圧シリンダ37のストロークSt(ブームシリンダ11aのストロークBmSt)を算出し、ステップS108へ進む。
ステップS108において、制御装置100は、ストローク変位量Δxを算出し、ステップS110へ進む。ストローク変位量Δxは、本制御周期におけるステップS106で演算されたストロークStと、所定制御周期前(例えば、1制御周期前)のステップS106で演算されたストロークStに相当する前回値St´と、の差の絶対値である。
ステップS110において、制御装置100は、操作装置34の操作レバー34a(操作レバーB1)が操作されているか否かを判定する。ステップS110において、操作レバー34aが操作されていると判定されるとステップS132へ進み、操作レバー34aが操作されていないと判定されるとステップS112へ進む。
ステップS112において、制御装置100は、ステップS108で算出されたストローク変位量Δxが閾値x0以上であるか否かを判定する。ステップS112において、ストローク変位量Δxが閾値x0以上であると判定されるとステップS121へ進み、ストローク変位量Δxが閾値x0未満であると判定されるとステップS115へ進む。
ステップS115において、制御装置100は、第1タイマをリセットして(t1=0)、ステップS118へ進む。
ステップS118において、制御装置100は、第1開側固着フラグFo1をオフに設定し(Fo1=0)、ステップS148へ進む。
ステップS121において、制御装置100は、第1タイマによる時間の計測処理、すなわち計測時間t1に制御周期に相当する時間Δtを加算するタイマカウントアップ処理(t1=t1+Δt)を実行し、ステップS123へ進む。
ステップS123において、制御装置100は、第1タイマにより計測された時間t1が時間閾値ta以上であるか否かを判定する。ステップS123において、計測時間t1が時間閾値ta未満であると判定された場合、ステップS148へ進む。ステップS123において、計測時間t1が時間閾値ta以上であると判定された場合、ステップS126へ進む。
ステップS126において、制御装置100は、第1開側固着フラグFo1をオンに設定し(Fo1=1)、ステップS148へ進む。
ステップS132において、制御装置100は、ステップS108で算出されたストローク変位量Δxが閾値x0未満であるか否かを判定する。ステップS132において、ストローク変位量Δxが閾値x0未満であると判定されるとステップS141へ進み、ストローク変位量Δxが閾値x0以上であると判定されるとステップS135へ進む。
ステップS135において、制御装置100は、第1タイマをリセットして(t1=0)、ステップS138へ進む。
ステップS138において、制御装置100は、第1閉側固着フラグFc1をオフに設定し(Fc1=0)、ステップS148へ進む。
ステップS141において、制御装置100は、第1タイマによる時間の計測処理、すなわち計測時間t1に制御周期に相当する時間Δtを加算するタイマカウントアップ処理(t1=t1+Δt)を実行し、ステップS143へ進む。
ステップS143において、制御装置100は、第1タイマにより計測された時間t1が時間閾値tb以上であるか否かを判定する。ステップS143において、計測時間t1が時間閾値tb未満であると判定された場合、ステップS148へ進む。ステップS143において、計測時間t1が時間閾値tb以上であると判定された場合、ステップS146へ進む。
ステップS146において、制御装置100は、第1閉側固着フラグFc1をオンに設定し(Fc1=1)、ステップS148へ進む。
ステップS148において、制御装置100は、ステップS106で算出されたストロークStを本制御周期後の所定の制御周期(例えば、本制御周期後の次の制御周期)のステップS108で用いる前回値St´としてRAM113に記憶し、本制御周期における図10のフローチャートに示す処理を終了する。
図11に示すように、ステップS152において、制御装置100は、圧力センサ38で検出される指令パイロット圧Ppを取得し、ステップS154へ進む。
ステップS154において、制御装置100は、ステップS104と同様、エンジン80が動作中であるか否かを判定する。ステップS104において、エンジン80が動作中であると判定されるとステップS160へ進み、エンジン80は動作中でない(すなわち停止中である)と判定されると、本制御周期における図11のフローチャートに示す処理を終了する。上述のとおり、エンジン80が停止中である場合には、操作装置34に応じて作業装置10が動作することはない。このため、エンジン80の動作判定処理(S154)を行い、エンジン80が動作している場合に限って、第2開側固着フラグFo2及び第2閉側固着フラグFc2の設定処理を行う。
ステップS160において、制御装置100は、ステップS110と同様、操作装置34の操作レバー34a(操作レバーB1)が操作されているか否かを判定する。ステップS160において、操作レバー34aが操作されていると判定されるとステップS182へ進み、操作レバー34aが操作されていないと判定されるとステップS162へ進む。
ステップS162において、制御装置100は、ステップS152で取得した指令パイロット圧Ppが閾値Pp0以上であるか否かを判定する。ステップS162において、指令パイロット圧Ppが閾値Pp0以上であると判定されるとステップS171へ進み、指令パイロット圧Ppが閾値Pp0未満であると判定されるとステップS165へ進む。
ステップS165において、制御装置100は、第2タイマをリセットして(t2=0)、ステップS168へ進む。
ステップS168において、制御装置100は、第2開側固着フラグFo2をオフに設定し(Fo2=0)、本制御周期における図11のフローチャートに示す処理を終了する。
ステップS171において、制御装置100は、第2タイマによる時間の計測処理、すなわち計測時間t2に制御周期に相当する時間Δtを加算するタイマカウントアップ処理(t2=t2+Δt)を実行し、ステップS173へ進む。
ステップS173において、制御装置100は、第2タイマにより計測された時間t2が時間閾値tc以上であるか否かを判定する。ステップS173において、計測時間t2が時間閾値tc未満であると判定された場合、本制御周期における図11のフローチャートに示す処理を終了する。ステップS173において、計測時間t2が時間閾値tc以上であると判定された場合、ステップS176へ進む。
ステップS176において、制御装置100は、第2開側固着フラグFo2をオンに設定し(Fo2=1)、本制御周期における図11のフローチャートに示す処理を終了する。
ステップS182において、制御装置100は、ステップS152で取得した指令パイロット圧Ppが閾値Pp0未満であるか否かを判定する。ステップS182において、指令パイロット圧Ppが閾値Pp0未満であると判定されるとステップS191へ進み、指令パイロット圧Ppが閾値Pp0以上であると判定されるとステップS185へ進む。
ステップS185において、制御装置100は、第2タイマをリセットして(t2=0)、ステップS188へ進む。
ステップS188において、制御装置100は、第2閉側固着フラグFc2をオフに設定し(Fc2=0)、本制御周期における図11のフローチャートに示す処理を終了する。
ステップS191において、制御装置100は、第2タイマによる時間の計測処理、すなわち計測時間t2に制御周期に相当する時間Δtを加算するタイマカウントアップ処理(t2=t2+Δt)を実行し、ステップS193へ進む。
ステップS193において、制御装置100は、第2タイマにより計測された時間t2が時間閾値td以上であるか否かを判定する。ステップS193において、計測時間t2が時間閾値td未満であると判定された場合、本制御周期における図11のフローチャートに示す処理を終了する。ステップS193において、計測時間t2が時間閾値td以上であると判定された場合、ステップS196へ進む。
ステップS196において、制御装置100は、第2閉側固着フラグFc2をオンに設定し(Fc2=1)、本制御周期における図11のフローチャートに示す処理を終了する。
本実施形態の動作の一例について説明する。オペレータは、図2に示す運転室7の運転席75に着座し、イグニッションスイッチ(エンジンキースイッチ)をオフ位置からオン位置を経由してスタート位置に操作することにより、エンジン80を始動させることができる。イグニッションスイッチは、スタート位置についてはモーメンタリ動作を行うように構成されており、オペレータがスタート位置への操作を止めると自動的にオン位置まで戻る。ゲートロックレバーB5がロック解除位置(下げ位置)にある状態では、操作レバー(B1〜B4)の操作に応じて、対応する油圧アクチュエータが動作可能な状態となっている。
操作レバー34a(B1)が中立位置から一方側(ブーム上げ操作側)の最大操作位置まで傾けられると、制御装置100は、操作レバー34a(B1)の操作角θ(θ=θmax)に基づいて目標パイロット圧Pt(Pt=Ptmax)を演算し、目標パイロット圧Ptに基づいて目標電流It(It=Itmax)を演算する。制御装置100は、電磁弁33aのソレノイドへの制御電流が目標電流It(It=Itmax)となるように制御電流を調整する。
これにより、電磁弁33aによって目標パイロット圧Pt(Pt=Ptmax)に相当する指令パイロット圧Pp(Pp=Ppmax)が発生し、指令パイロット圧Pp(Pp=Ppmax)が制御弁40の受圧部41aに作用する。受圧部41aに指令パイロット圧Ppが作用すると、制御弁40が位置(P1)に切り換えられ、メインポンプ31から吐出された圧油が油圧シリンダ37(ブームシリンダ11a)のボトム室に導かれ、油圧シリンダ37が伸長する。その結果、フロント部材(ブーム11)が第1の方向(上方向)に回動する。
その後、オペレータが操作レバー34a(B1)を中立位置に戻すと、制御装置100は、操作レバー34a(B1)の操作角θ(θ=0)に基づいて目標パイロット圧Pt(Pt=Ptmin)を演算し、目標パイロット圧Pt(Pt=Ptmin)に基づいて目標電流It(It=Itmin)を演算する。制御装置100は、電磁弁33aのソレノイドへの制御電流が目標電流It(It=Itmin(待機電流))となるように制御電流を調整する。
このように、通常の状態では、オペレータが操作レバー34aを最大操作位置まで操作すると、フロント部材は操作量に応じた速度で動作し、第1閉側固着フラグFc1及び第2閉側固着フラグFc2はそれぞれオフに設定される(図10のステップS110でY→S132でN→S135→S138、図11のステップS160でY→S182でN→S185→S188)。同様に、通常の状態では、オペレータが中立位置に戻し操作すると、フロント部材は停止し、第1開側固着フラグFo1及び第2開側固着フラグFo2はそれぞれオフに設定される(図10のステップS110でN→S112でN→S115→S118、図11のステップS160でN→S162でN→S165→S168)。
これに対して、電磁弁33aの内部に異物が入り込み、駆動部分に異物が引っ掛かることに起因して電磁弁33aの弁体が動かなくなる固着現象であるコンタミスティックが発生すると、オペレータの操作に応じてフロント部材(ブーム11)が適切に動作しなくなる。
電磁弁33aが、パイロットポンプ32と受圧部41aとを遮断している閉側の位置で固着した場合について説明する。オペレータが操作レバー34aを中立位置から最大操作位置まで操作すると、目標パイロット圧Ptは最大値Ptmaxとなり、目標電流Itは最大値Itmaxとなる。
制御装置100によって、電磁弁33aに供給される制御電流の大きさが最大値Itmaxとなるように調節されると、コンタミスティックが発生していない通常状態であれば、上述したように、電磁弁33aから最大指令パイロット圧Ppmaxが出力される。しかしながら、コンタミスティックが発生し、電磁弁33aが閉側で固着している異常状態になると、パイロットポンプ32と受圧部41aとが電磁弁33aによって遮断される状態が維持される。このため、操作レバー34aが最大操作位置まで操作している状態となったとしても、ストローク変位量Δxは閾値Δx0未満(例えば、Δx=0)となり、所定時間その状態が継続されることにより、第1閉側固着フラグFc1がオンに設定される(図10のステップS110でY→S132でY→S141→S143でY→S146)。
その結果、制御装置100は、表示装置18によって、電磁弁33が閉側で固着している異常状態であることを報知させる(図9のステップS10でY→S15)。
電磁弁33aが、パイロットポンプ32と受圧部41aとを連通している開側の位置で固着した場合について説明する。オペレータが操作レバー34aを最大操作位置から中立位置に戻すと、目標パイロット圧Ptは最小値Ptmin(タンク圧)となり、目標電流Itは最小値Itmin(待機電流)となる。
制御装置100によって、電磁弁33aに供給される制御電流の大きさが最小値Itmin(待機電流)となるように調節されると、コンタミスティックが発生していない通常状態であれば、パイロットポンプ32と受圧部41aとが電磁弁33aによって遮断され、受圧部41aはタンク39に連通する。しかしながら、コンタミスティックが発生し、電磁弁33aが開側で固着している異常状態になると、パイロットポンプ32と受圧部41aとが電磁弁33aによって連通する状態が維持される。このため、操作レバー34aが中立位置にある非操作状態となったとしても、ストローク変位量Δxが閾値Δx0以上となり、所定時間その状態が継続されることにより、第1開側固着フラグFo1がオンに設定される(図10のステップS110でN→S112でY→S121→S123でY→S126)。
その結果、制御装置100は、表示装置18によって、電磁弁33が開側で固着している異常状態であることを報知させる(図9のステップS10でY→S15)。なお、図示はしないが、制御装置100は、第1開側固着フラグFo1がオンに設定されると、パイロットポンプ32と電磁弁33との間のパイロットラインに設けられる電磁切換弁(不図示)を連通位置から遮断位置に切り換え、電磁弁33の元圧をカットするとともに、エンジン80を停止させ、作業装置10の動作を強制的に停止させる機能も有する。
第2異常判定部107の異常判定方法では、上述したように、誤判定を防止するために、作動油の温度Tが低い状態のとき(例えば、作動油の温度T=T1のとき)には、時間閾値tc,tdが、第1異常判定部106による異常判定に用いられる時間閾値ta,tb(=tmin)に比べて長い値(例えば、tc,td=tmax)が設定される(図8参照)。換言すれば、第1異常判定部106の異常判定方法では、作動油の温度Tにかかわらず、比較的短い時間閾値ta,tbを用いることができる。これにより、第2異常判定部107によって電磁弁33の異常が検知されるよりも早く、第1異常判定部106によって電磁弁33の異常を検知することができる。換言すれば、姿勢検出装置50からの信号に基づいて電磁弁33の異常を検知する場合、圧力センサ38からの信号に基づいて電磁弁33の異常を検知する場合に比べて、電磁弁33の異常を検知するまでに要する時間を短縮することができる。
なお、本実施形態では、姿勢検出装置50からの信号に基づいて、電磁弁33に異常が発生しているか否かを判定するだけでなく、圧力センサ38からの信号に基づいて、電磁弁33に異常が発生しているか否かを判定する。このため、姿勢検出装置50が故障した場合に、圧力センサ38からの信号に基づいて、電磁弁33に異常が発生しているか否かを判定することができる。
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
(1)制御装置100は、操作装置34からの信号に基づいて、操作装置34により作業装置10に対する操作がなされているか否かを判定し、角度センサ(姿勢センサ)50a,50b,50cを有する姿勢検出装置50からの信号に基づいて、作業装置10が動作しているか否かを判定し、操作装置34により作業装置10に対する操作がなされているか否かの判定結果と、作業装置10が動作しているか否かの判定結果と、に基づいて、電磁弁33に異常が発生しているか否かを判定する。
制御装置100は、操作装置34により作業装置10に対する操作がなされていると判定され、かつ、その操作に対応する作業装置10の油圧アクチュエータが動作していないと判定された場合、電磁弁33が開側で固着している開側固着異常が発生していると判定する。また、制御装置100は、作業装置10の油圧アクチュエータが動作していると判定され、かつ、その油圧アクチュエータに対応する操作装置34による操作がなされていないと判定された場合、電磁弁33が閉側で固着している閉側固着異常が発生していると判定する。制御装置100は、電磁弁33に異常が発生していると判定されると(すなわち、異常を検知すると)、表示装置(報知装置)18に制御信号を出力し、表示装置18によって電磁弁33に異常が発生していることを報知させる。
このように、本実施形態では、姿勢検出装置50からの信号に基づいて作業装置10が動作しているか否かの判定を行うため、作動油の温度の影響を受ける圧力センサ38の検出結果に基づいて作業装置10が動作しているか否かの判定を行う場合に比べて、電磁弁33の異常が検知されるまでにかかる時間を短くすることができる。つまり、本実施形態によれば、作動油の温度が低い状態のときであっても、作動油の温度が高い状態のときと同様に、電磁弁33の異常を速やかに検知することができる。その結果、作動油の温度が低い状態のときであっても、電磁弁33の異常を速やかにオペレータに知らせることができる。
(2)制御装置100は、姿勢検出装置50からの信号に基づいて、作業装置10が動作しているか否かを判定する第1動作判定(図10のステップS112,S132)と、圧力センサ38からの信号に基づいて、作業装置10が動作しているか否かを判定する第2動作判定(図11のステップS162,S182)と、を行う。制御装置100は、操作装置34により作業装置10に対する操作がなされているか否かの判定結果と、第1動作判定の判定結果と、に基づいて、電磁弁33に異常が発生しているか否かを判定する第1異常判定(図10参照)と、操作装置34により作業装置10に対する操作がなされているか否かの判定結果と、第2動作判定の判定結果と、に基づいて、電磁弁33に異常が発生しているか否かを判定する第2異常判定(図11参照)と、を行う。制御装置100は、少なくとも第1異常判定の判定結果及び第2異常判定の判定結果のいずれかが、電磁弁33に異常が発生していると判定した判定結果である場合、電磁弁33に異常が発生していることを表示装置(報知装置)18により報知させる(図9参照)。これにより、制御装置100は、姿勢検出装置50が故障した場合(例えば、断線、短絡等が発生した場合)であっても、圧力センサ38からの信号に基づいて異常判定を行って、電磁弁33に異常があると判定された場合には、表示装置18によってオペレータにその旨を知らせることができる。
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
<変形例1>
図12を参照して本実施形態の変形例1に係る制御装置100について説明する。図12は、図9と同様の図であり、本実施形態の変形例1に係る制御装置100により実行される報知処理の内容について示すフローチャートである。図12に示すフローチャートの処理は、イグニッションスイッチ(不図示)がオンされることにより開始され、図示しない初期設定が行われた後、所定の制御周期で繰り返し実行される。
図12に示すように、ステップS30において、制御装置100は、姿勢検出装置50に異常があるか否かを判定する。例えば、制御装置100は、姿勢検出装置50から出力される電圧値が所定の範囲内(第1電圧閾値以上第2電圧閾値未満)である場合、姿勢検出装置50に異常はないと判定する。すなわち、制御装置100は、姿勢検出装置50は故障していないと判定する。また、制御装置100は、姿勢検出装置50から出力される電圧値が所定の範囲内(第1電圧閾値以上第2電圧閾値未満)にない場合、姿勢検出装置50に異常があると判定する。すなわち、制御装置100は、姿勢検出装置50は故障していると判定する。第1電圧閾値は、姿勢検出装置50において断線が生じているか否かを判定するための閾値であり、予め制御装置100のROM112に記憶されている。第2電圧閾値は、姿勢検出装置50において短絡が生じているか否かを判定するための閾値であり、予め制御装置100のROM112に記憶されている。
ステップS30において、姿勢検出装置50に異常はないと判定されるとステップS40へ進み、姿勢検出装置50に異常があると判定されるとステップS45へ進む。
ステップS40において、制御装置100は、第1異常判定部106によって設定される第1開側固着フラグFo1及び第1閉側固着フラグFc1のいずれかがオンに設定されているか否かを判定する。ステップS40において、第1開側固着フラグFo1及び第1閉側固着フラグFc1のいずれかがオンに設定されていると判定された場合、ステップS50へ進み、第1開側固着フラグFo1及び第1閉側固着フラグFc1のいずれもオフに設定されている場合、図12のフローチャートに示す処理を終了する。
ステップS45において、制御装置100は、第2異常判定部107によって設定される第2開側固着フラグFo2及び第2閉側固着フラグFc2のいずれかがオンに設定されているか否かを判定する。ステップS45において、第2開側固着フラグFo2及び第2閉側固着フラグFc2のいずれかがオンに設定されていると判定された場合、ステップS50へ進み、第2開側固着フラグFo2及び第2閉側固着フラグFc2のいずれもオフに設定されている場合、図12のフローチャートに示す処理を終了する。
ステップS50において、制御装置100は、オンに設定されているフラグFo1,Fc1,Fo2,Fc2に応じて、電磁弁33に異常が発生していることを表示装置18により報知させる。
このように、本変形例1では、姿勢検出装置50に異常がない場合には、制御装置100は、姿勢検出装置50からの信号に基づいて、作業装置10が動作しているか否かを判定する。一方、姿勢検出装置50に異常がある場合には、制御装置100は、圧力センサ38からの信号に基づいて、作業装置10が動作しているか否かを判定する。このような本変形例1によれば、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
<変形例2>
上記実施形態では、制御装置100が、姿勢検出装置50からの信号に基づいてフロント部材の角度を演算し、演算されたフロント部材の角度に基づいて油圧シリンダ37のストローク変位量Δxを演算し、演算されたストローク変位量Δxに基づいて作業装置10が動作しているか否かを判定する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
<変形例2−1>
例えば、制御装置100Bは、姿勢検出装置50からの信号に基づいてフロント部材の角度を演算し、演算されたフロント部材の角度に基づいて油圧シリンダ37のシリンダ速度を演算し、演算されたシリンダ速度に基づいて作業装置10が動作しているか否かを判定してもよい。
図13は、本実施形態の変形例2−1に係る制御装置100Bの機能ブロック図である。図13に示すように、制御装置100Bは、ROM112に記憶されているプログラムを実行することにより、目標パイロット圧演算部101、目標電流演算部102、電流供給部103、シリンダストローク演算部104、シリンダ速度演算部205、第1異常判定部206、第2異常判定部107及び表示制御部108として機能する。
シリンダ速度演算部205は、油圧ショベル1の寸法データ、及び、姿勢検出装置50での検出結果に基づいて、シリンダチューブ37sに対するピストンロッド37rの軸方向の速度である油圧シリンダ37のシリンダ速度を演算する。油圧シリンダ37のシリンダ速度の演算方法の一例として、ブームシリンダ11aのシリンダ速度BmSpdの演算方法について説明する。
ブームシリンダ11aのシリンダ速度BmSpdは、上式(1)の両辺を時間微分することにより、式(2)により表される。
なお、ωは、式(3)により表される。
ここで、θ=∠BAQ+∠PAX+BmAngである。
シリンダ速度演算部205は、同様に、アームシリンダ12aのシリンダ速度及びバケットシリンダ13aのシリンダ速度を演算する。以下、シリンダ速度演算部205で演算されたブームシリンダ11aのシリンダ速度BmSpd、アームシリンダ12aのシリンダ速度、及びバケットシリンダ13aのシリンダ速度を総称してシリンダ速度Svと記す。
第1異常判定部206は、シリンダ速度Svが閾値v0以上である場合、作業装置10の油圧シリンダ37が動作していると判定し、シリンダ速度Svが閾値v0未満である場合、作業装置10の油圧シリンダ37は動作していないと判定する。なお、閾値v0は、油圧シリンダ37が伸縮あるいは収縮動作を行っているか否かを判定するための閾値であり、本実施形態では、油圧シリンダ37の動き始めとして判断できる程度の値が設定されている。操作装置34の操作レバー34aが操作されたとき、その操作量(操作角θ)に応じたシリンダ速度に達するまでには、所定の時間を要する。このため、本変形例では、操作量(操作角θ)に応じたシリンダ速度に達する前段階におけるシリンダ速度を閾値v0として設定する。
第1異常判定部206は、目標パイロット圧Ptが閾値Pt0未満であり(操作レバー34aが非操作状態であり)、かつ、シリンダ速度Svが閾値v0以上である(油圧シリンダ37が動作状態である)場合、制御装置100に内蔵されている第1タイマにより時間の計測を行う。第1異常判定部206は、目標パイロット圧Ptが閾値Pt0未満であり、かつ、シリンダ速度Svが閾値v0以上である状態において第1タイマにより計測される時間t1が時間閾値ta以上になると、電磁弁33が開側で固着している開側固着異常が発生していると判定する。第1異常判定部206は、開側固着異常が発生していると判定すると、第1開側固着フラグFo1をオンに設定する(Fo1=1)。
また、第1異常判定部206は、目標パイロット圧Ptが閾値Pt0以上であり(操作レバー34aが操作状態であり)、かつ、シリンダ速度Svが閾値v0未満である(油圧シリンダ37が停止状態である)場合、制御装置100に内蔵されている第1タイマにより時間の計測を行う。第1異常判定部206は、目標パイロット圧Ptが閾値Pt0以上であり、かつ、シリンダ速度Svが閾値v0未満である状態において第1タイマにより計測される時間t1が時間閾値tb以上になると、電磁弁33が閉側で固着している閉側固着異常が発生していると判定する。第1異常判定部206は、閉側固着異常が発生していると判定すると、第1閉側固着フラグFc1をオンに設定する(Fc1=1)。
図14は、本実施形態の変形例2−1に係る制御装置100Bにより実行される第1の異常判定処理の内容について示すフローチャートである。図14のフローチャートでは、図10のフローチャートのステップS108,S112,S132の処理に代えて、ステップS208,S212,S232の処理が行われる。なお、図14のフローチャートでは、図10のフローチャートのステップS148の処理は行われない。なお、図14において、図10の処理と同じ処理には同じ符号(ステップ番号)を付し、図10の処理と異なる部分を主に説明する。このフローチャートに示す処理は、図示しないイグニッションスイッチのオンにより開始され、図示しない初期設定が行われた後、所定の制御周期で繰り返し実行される。
図14に示すように、ステップS208において、制御装置100Bは、油圧ショベル1の寸法データと、ステップS102で取得したフロント部材の角度と、ステップS106で演算した油圧シリンダ37のストロークSt(例えば、ブームシリンダ11aのストロークBmSt)に基づいて、油圧シリンダ37のシリンダ速度Sv(例えば、ブームシリンダ速度BmSpd)を算出し、ステップS110へ進む。
ステップS212において、制御装置100Bは、ステップS208で算出されたシリンダ速度Svが閾値v0以上であるか否かを判定する。ステップS212において、シリンダ速度Svが閾値v0以上であると判定されるとステップS121へ進み、シリンダ速度Svが閾値v0未満であると判定されるとステップS115へ進む。
ステップS232において、制御装置100Bは、ステップS208で算出されたシリンダ速度Svが閾値v0未満であるか否かを判定する。ステップS232において、シリンダ速度Svが閾値v0未満であると判定されるとステップS141へ進み、シリンダ速度Svが閾値v0以上であると判定されるとステップS135へ進む。
このように、上記実施形態で説明したストローク変位量Δxに代えて、シリンダ速度Svに基づいて作業装置10が動作しているか否かを判定する場合においても、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
<変形例2−2>
制御装置100は、姿勢検出装置50からの信号に基づいて、フロント部材の角度変位量を演算し、演算された角度変位量に基づいて作業装置10が動作しているか否かを判定してもよい。
<変形例2−3>
制御装置100は、姿勢検出装置50からの信号に基づいて、フロント部材の角速度(回動速度)ωを演算し、演算されたフロント部材の角速度ωに基づいて作業装置10が動作しているか否かを判定してもよい。
<変形例3>
上記実施形態では、機体4に対する作業装置10の姿勢を検出する姿勢センサとして、フロント部材の角度を検出する角度センサ50a,50b,50cを採用する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。姿勢センサとして、フロント部材を駆動する油圧シリンダ37のストロークを検出するストロークセンサを採用してもよい。この場合、ストロークセンサからの信号に基づいて、ストローク変位量を演算することにより、上記実施形態と同様、電磁弁33の異常を速やかに検知することができる。
<変形例4>
制御装置100は、寒冷地で油圧ショベル1を稼働させたり、冬季に油圧ショベル1を稼働させたりする場合に適切な低温稼働モードと、温暖地で油圧ショベル1を稼働させたり、夏季に油圧ショベル1を稼働させたりする場合に適切な高温稼働モードと、を切り替えることができるようにしてもよい。
運転室7には、低温稼働モードと高温稼働モードのいずれかに稼働モードを設定することのできるモード切換スイッチが設けられている。なお、図3に示す入力装置19にモード切換スイッチとしての機能を持たせることができる。モード切換スイッチが、低温稼働モード位置に操作されると、制御装置100は、稼働モードを低温稼働モードに設定する。モード切換スイッチが、高温稼働モード位置に操作されると、制御装置100は、稼働モードを高温稼働モードに設定する。
低温稼働モードが設定されている場合、制御装置100は、上記実施形態と同様の異常判定処理を実行し、第1の異常判定処理(図10参照)及び第2の異常判定処理(図11参照)のいずれかの処理において、電磁弁33に異常があると判定されると、電磁弁33の異常が検知されたことを表示装置18により報知させる。
高温稼働モードが設定されている場合、制御装置100は、第1の異常判定処理(図10参照)及び第2の異常判定処理(図11参照)の双方で電磁弁33に異常があると判定された場合に、電磁弁33の異常が検知されたことを表示装置18により報知させる。
本実施形態の変形例4に係る制御装置100は、稼働モードに低温稼働モードが設定されると、図9のフローチャートに示す処理を実行し、稼働モードに高温稼働モードが設定されると、図15のフローチャートに示す処理を実行する。図15は、本実施形態の変形例4に係る制御装置100により実行される報知処理の内容について示すフローチャートである。
図15に示すように、ステップS340において、制御装置100は、第1開側固着フラグFo1及び第1閉側固着フラグFc1のいずれかがオンに設定されているか否かを判定する。ステップS340において、第1開側固着フラグFo1及び第1閉側固着フラグFc1のいずれかがオンに設定されていると判定された場合、ステップS345へ進み、第1開側固着フラグFo1及び第1閉側固着フラグFc1のいずれもオフに設定されている場合、図15のフローチャートに示す処理を終了する。
ステップS345において、制御装置100は、第2開側固着フラグFo2及び第2閉側固着フラグFc2のいずれかがオンに設定されているか否かを判定する。ステップS345において、第2開側固着フラグFo2及び第2閉側固着フラグFc2のいずれかがオンに設定されていると判定された場合、ステップS350へ進み、第2開側固着フラグFo2及び第2閉側固着フラグFc2のいずれもオフに設定されている場合、図15のフローチャートに示す処理を終了する。
ステップS350において、制御装置100は、オンに設定されているフラグFo1,Fc1,Fo2,Fc2に応じて、電磁弁33に異常が発生していることを表示装置18により報知させる。
このような変形例によれば、作動油の温度が高い状態において、高温稼働モードが設定されると、電磁弁33の異常の検知の信頼性を向上することができる。なお、稼働モードは、オペレータによって操作されるモード切換スイッチによって、低温稼働モード及び高温稼働モードのいずれかに切り替えられることに限定されない。制御装置100は、温度センサ20によって検出された作動油の温度Tが所定値以上のときには高温稼働モードに設定し、温度センサ20によって検出された作動油の温度Tが所定値未満のときには低温稼働モードに設定してもよい。
<変形例5>
上記実施形態では、作動油の温度Tに応じて時間閾値tc,tdが設定される例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、作動油の温度Tにかかわらず、作動油の温度が低い状態のときの誤判定を防止できる時間tmaxを時間閾値tc,tdとして設定してもよい。
<変形例6>
上記実施形態では、電磁弁33が、入力される制御電流が大きくなるほど、発生する指令パイロット圧が大きくなるポジティブ型の電磁弁を採用する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。ポジティブ型の電磁弁に代えて、入力される制御電流が大きくなるほど、発生する指令パイロット圧が小さくなるネガティブ型の電磁弁を採用してもよい。この場合、図6に示す特性N2に代えて、目標パイロット圧Ptが大きくなるほど目標電流Itが小さくなる特性が採用される。
<変形例7>
上記実施形態では、電磁弁33に異常が発生していることを報知する報知装置が表示装置18である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。音を出力することによって、電磁弁33に異常が発生していることを報知するスピーカ等の音出力装置を報知装置として採用してもよい。
<変形例8>
上記実施形態では、目標パイロット圧Ptに基づいて、操作装置34の操作レバー34aが操作されているか否かを判定する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。制御装置100は、操作レバー34aの操作角θが予め定めた閾値θ0以上である場合、操作装置34の操作レバー34aが操作されていると判定し、操作角θが閾値θ0未満である場合、操作装置34の操作レバー34aは操作されていないと判定してもよい。また、制御装置100は、目標電流Itに基づいて、操作装置34の操作レバー34aが操作されているか否かを判定してもよい。
<変形例9>
上記実施形態では、制御装置100は、エンジン80が動作中である場合には異常判定を行い、エンジン80が停止中である場合には異常判定を行わない例について説明したが、本発明はこれに限定されない。制御装置100は、エンジン80が動作中であり、かつ、ゲートロックレバーB5がロック解除位置にある場合には異常判定を行い、エンジン80が停止中である、または、ゲートロックレバーB5がロック位置にある場合には異常判定を行わないようにしてもよい。
<変形例10>
上記実施形態では、作業装置10が、複数のフロント部材(ブーム11、アーム12及びバケット13)で構成される例について説明したが、本発明はこれに限定されない。作業装置10の構造、関節の数等は、任意に構成することができる。例えば、バケット13の代わりに、油圧で開閉して物体を把持するグラップル、繰り返し打撃を行うことにより岩盤の掘削等を行うブレーカ等のアタッチメントを装備してもよい。
<変形例11>
上記実施形態では、作業装置10を構成する部材を駆動する油圧アクチュエータが、油圧シリンダ37である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。油圧アクチュエータとしての油圧モータによって部材が駆動することにより、所定の作業を行うことのできる作業装置に本発明を適用することもできる。
<変形例12>
上記実施形態では、作業機械がクローラ式の油圧ショベル1である場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。ホイール式の油圧ショベル、ホイールローダ、クローラクレーン、ダンプトラック等、油圧アクチュエータによって動作する作業装置を備える種々の作業機械に本発明を適用することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。