JP2021110128A - 構造物の補強方法及び構造物の補強に用いられる補強具 - Google Patents

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Naoya Miyazato
直也 宮里
茂紀 北
Shigenori Kita
茂紀 北
仁 松田
Hitoshi Matsuda
仁 松田
馨 永峰
Kaoru Nagamine
馨 永峰
ともみ 甚野
Tomomi Jinno
ともみ 甚野
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Abstract

【課題】構造物に対する加工の承認が得られる前においても構造物を補強することを可能にする補強技術を提供することを目的とする。【解決手段】本出願は、構造物を補強する補強方法を開示する。補強方法は、前記構造物の躯体に加工を要することなく前記躯体に取付可能に構成された補強具を、前記躯体に取り付けることにより前記構造物を補強することを備えている。【選択図】図1

Description

本発明は、構造物を補強するための補強方法及び構造物の補強に用いられる補強具に関する。
構造物を補強するために、構造物の躯体には補強具が取り付けられる(特許文献1を参照)。補強具を取り付けるために、構造物の躯体(すなわち、柱や梁)には、穴空け加工や他の必要な加工が施与される。
詳細には、特許文献1の補強方法では、構造物の柱、土台や梁にアンカーボルトを固定するために用いられる固定穴が形成される。アンカーボルトには、弾性変形可能な合成樹脂製の長尺部材及び比較的高い剛性を有している長尺部材が結び付けられる。弾性変形可能な長尺部材は、張力が生じた状態で架け渡される一方で、高い剛性の長尺部材は、弛んだ状態で架け渡されている。構造物の変形が開始すると、弾性変形可能な長尺部材は、構造物の変形に応じて伸長する。この結果、構造物が変形を開始したときにアンカーボルトの固定部位に加わる衝撃力が緩和される。構造物の変形は、高い剛性の長尺部材の弛みがなくなると、この長尺部材によって停止される。
特開2016−205112号公報
構造物に対する加工を行う場合(たとえば、アンカーボルトを固定するための固定穴を形成する加工が行われる場合)に、構造物を管理する管理者の承認が必要とされることがある。たとえば、構造物が重要文化財である場合には、関係省庁からの加工の承認が必要とされ、加工の承認を得るために長い期間がかかることがある。この場合、加工の承認が得られるまでの期間、構造物に対して補強がなされていない状態が維持されることになる。
構造物への加工に対する承認の下で補強具が取り付けられた後には、構造物の変形時において構造物に加わる衝撃力が問題となる。伸長しない構造の補強具が用いられた場合には、構造物の変形開始時において補強具の取付部位に加わる衝撃力が大きくなる。この衝撃力を抑制すべく、特許文献1の補強具が用いられた場合には、構造物の変形に対する抗力は、弾性変形可能な長尺部材の伸長量に略比例するので、構造物の変形初期における抗力は小さくなる。構造物の変形に対する抗力が小さい間、補強具は、構造物の変形エネルギを十分に吸収できない。言い換えると、補強具が構造物の変形エネルギを十分に吸収するためには、補強具は大きく伸長する必要がある。
本発明は、構造物に対する加工の承認が得られる前においても構造物を補強することを可能にする補強方法を提供することを目的とする。また、本発明は、構造物の変形エネルギを伸長量によらず略一定に吸収することが可能な補強具を提供することを目的とする。
本発明の一の局面に係る補強方法は、構造物を補強するために利用可能である。補強方法は、前記構造物の躯体に加工を要することなく前記躯体に取付可能に構成された補強具を、前記躯体に取り付けることにより前記構造物を補強することを備えていてもよい。
上記の構成によれば、構造物への加工に対する承認が必要な場合であっても、補強具は、構造物の躯体への加工を要することなしに躯体へ取り付け可能であるので、承認が得られるまでの間、補強具を用いて構造物を応急的に補強することができる。
上記の構成に関して、前記補強具を取り付ける工程において、前記補強具の一部を構成している押圧部材及び前記押圧部材に対向配置された対向部材で、前記躯体上の取付部位を挟み、前記押圧部材及び前記対向部材が前記躯体を圧接するように前記押圧部材及び前記対向部材を連結してもよい。
上記の構成によれば、躯体上の取付部位において、押圧部材及び対向部材が躯体を圧接するように押圧部材が対向部材に連結されるので、押圧部材と躯体との間及び対向部材と躯体との間に静止摩擦力が生じ、躯体が垂直に立設された柱であっても取付位置で保持される。補強具は、静止摩擦力を利用して躯体上で固定されるので、躯体に対する加工は必要とされない。
上記の構成に関して、補強方法は、前記補強具を取り外すことと、前記補強具よりも前記躯体上の取付位置からの経時的な位置ずれを生じにくい他の補強具を取り付けられるように、前記躯体に穴あけ加工を施与することと、形成された穴部を利用して、前記他の補強具を前記躯体に固定することと、を更に備えていてもよい。
補強具は、構造物を応急的に補強することができるが、恒久的な補強には、穴あけ加工を必要とする他の補強具が用いられることが好ましい。他の補強具は、応急的な補強に用いられた補強具の取付位置に形成された穴部を利用して躯体に固定されるので、他の補強具の一部は躯体の内部に入り込み、他の補強具は、取付位置からずれることなく構造物を補強することができる。
上記の構成に関して、前記補強具を取り付ける工程において、前記押圧部材が押し当てられた前記躯体上の面の向く方向とは反対方向に前記躯体から離間した位置に配置された他の躯体が有している面のうち前記押圧部材が押し当てられた前記面とは反対向きの面に他の押圧部材を押し当て、前記押圧部材と前記他の押圧部材との間で長尺の架渡部材を架け渡してもよい。
上記の構成によれば、押圧部材が押し当てられた面と他の押圧部材が押し当てられた面との間の距離が長くなるように構造物が変形すると、これらの押圧部材の間で架け渡された架渡部材の張力が増大する。架渡部材の張力の増大の結果、躯体に対するこれらの押圧部材の圧接力が増し、押圧部材及び押圧部材に連結された対向部材は、取付位置で保持される。
上記の構成に関して、前記補強具を取り付ける工程において、前記押圧部材と前記躯体の前記取付部位との間に緩衝部材を配置してもよい。
上記の構成によれば、躯体の取付部位は緩衝部材を介して押圧部材によって押圧されるので、押圧部材が躯体を損傷させることが緩衝部材によって防止される。
本発明の一の局面に係る補強具は、構造物上の2つの取付部位間に架け渡されて使用され、前記構造物を補強するように構成されている。補強具は、前記2つの取付部位のうち一方に取付可能に構成されているとともに一方向に延設された第1部分と、前記2つの取付部位のうち他方に取付可能に前記第1部分とは別体に構成された第2部分とを備えている。前記第2部分は、前記2つの取付部位間の距離が大きくなるような前記構造物の変形が生じたときに前記第1部分に対して前記第1部分の延設方向に摺動する摺動部を含んでいる。
上記の構成によれば、構造物上の2つの取付部位間の距離が大きくなるように構造物が変形すると、第2部分は第1部分に対して相対的に変位し、補強具は伸長する。伸長しない構造の補強具が用いられた場合には、構造物の変形開始時において構造物に対する補強具の取付部位に強い力が作用するけれども、上述の補強具は、構造物の変形に合わせて伸長するので、取付部位に加わる力が抑制される。
第1部分に対して第2部分が相対的に変位すると、第2部分の摺動部は、第1部分に対して摺動する。このため、第1部分と第2部分との間に摩擦力が作用する。摩擦力の大きさは、第1部分と摺動部との間の摩擦係数及び第1部分に対する摺動部の垂直抗力の大きさによって定められ、補強具の伸長量とは無関係に設定可能である。したがって、補強具は、構造物の変形エネルギを補強具の伸長量によらず略一定に吸収することできる。
上述の構成に関して、補強具は、前記変形が生じたときに前記第1部分に対して前記第2部分が相対的に移動する方向において、前記摺動部から離間した位置で前記第1部分に固定されたストッパを更に備えていてもよい。前記ストッパは、前記移動方向に移動している前記摺動部と接触することにより前記摺動部の移動を停止させるように構成されていてもよい。
上記の構成によれば、ストッパは、構造物の変形時における摺動部の移動方向において、摺動部から離間した位置で前記第1部分に固定されているので、摺動部は、ストッパに接触するまでは第1部分に沿って摺動することができる。ストッパが摺動部に接触すると、摺動部の移動が停止され、補強具の伸長が止まる。この結果、構造物の変形が停止する。
上記の構成に関して、前記第2部分は、前記摺動部が収容された閉空間を形成している筒体を含んでいてもよい。
上記の構成によれば、摺動部は、筒体の閉空間内に収容されているので、第1部分及び摺動部の接続部分は、筒体の外の環境から筒体によって保護される。この結果、第1部分に対する摺動部の摩擦特性の経時的な変化(たとえば、第1部分に埃が付着したときの摩擦係数の変化)が抑制される。
上記の構成に関して、前記第2部分は、前記他方の取付部位と前記筒体との間で架け渡し可能に延設された延設部を含んでいてもよい。前記延設部は、前記筒体から取り外し可能であってもよい。
上記の構成に関して、前記第2部分は、前記他方の取付部位と前記摺動部との間で架け渡し可能に延設された延設部を含んでいてもよい。前記延設部は、前記摺動部から取り外し可能であってもよい。
上記の構成に関して、前記第1部分は、前記摺動部によって摺接されるように構成された摺接体と、前記一方の取付部位と前記摺接体との間で架け渡し可能に延設された延設部を含んでいてもよい。前記延設部は、前記摺接体から取り外し可能であってもよい。
上記の構成によれば、延設部は、筒体、摺動部又は摺接体から取り外し可能であるので、補強具の長さが構造物に適していない場合には、延設部を長さにおいて異なる他の延設部と交換することによって、構造物に適した補強具の長さを得ることができる。
上述の補強方法は、構造物に対する加工の承認が得られる前においても構造物を補強することを可能にする。上述の補強具は、構造物の変形エネルギを伸長量によらず略一定に吸収することができる。
補強具によって補強された構造物の概略図である。 補強具の端部の概略的な斜視図である。 補強具の架渡部材の概略図である。 他の補強具の概略的な断面図である。 伸長された補強具の概略的な断面図である。 伸長可能な補強具の概略的な断面図である。 伸長可能な補強具の概略的な断面図である。 他の補強具の概略的な断面図である。 伸長された補強具の概略的な断面図である。 躯体の周面を囲むように構成された補強具の端部の概略的な平面図である。 補強具の端部の概略的な正面図である。 躯体を挟持することなく躯体に取付可能な補強具によって補強された構造物の概略図である。 補強具の端部の概略的な平面図である。 補強具の端部の概略的な平面図である。 補強具の押圧部材又は対向部材の概略的な斜視図である。 補強具の押圧部材又は対向部材の概略的な斜視図である。 補強具の緩衝部材の概略図である。 補強具の緩衝部材の概略図である。 躯体を挟持することなく躯体に取付可能な補強具によって補強された構造物の概略図である。
図1は、補強具100a,100bによって応急的に補強された構造物200の概略図である。図2及び図3は、補強具100a,100bを構成している部品の概略図である。図1乃至図3を参照して、補強具100a,100bが説明される。
構造物200は、水平方向に離間した位置で立設された2つの柱101,102を有している。構造物200は、これらの柱101,102の間の空間において2つの補強具100a,100bが架け渡されることにより補強されている。本実施形態において、これらの補強具100a,100bは、柱101,102に取り付けられているけれども、構造物200の梁、土台あるいは補強具100a,100bの取付に適した他の部位に取り付けられてもよい。
補強具100aの一端部は、柱101の比較的高い位置において設けられた取付部位に取り付けられている一方で、補強具100aの他端部は、柱102の比較的低い位置に設けられた取付部位に取り付けられている。補強具100aは、これらの端部の間で斜めに延設されている。補強具100bの一端部は、柱101の比較的低い位置において設けられた取付部位に取り付けられている一方で、補強具100aの他端部は、柱102の比較的高い位置に設けられた取付部位に取り付けられている。補強具100bは、これらの端部の間で斜めに延設されている。したがって、補強具100a,100bは、柱101,102の間の空間内でX字状に交差している。
補強具100a,100bそれぞれのこれらの端部は、柱101,102に対して加工を要することなく対応する取付部位に取付可能に構成されている。たとえば、補強具100aの端部の概略的な構造が、図2に概略的に示されている。補強具100aに関する説明は、補強具100bにも援用可能である。
補強具100aの端部は、構造物200の躯体(たとえば、柱101,102)を挟むように対向配置された押圧部材110及び対向部材116と、押圧部材110及び対向部材116を連結するように構成された複数の連結部材120とによって構成されている。押圧部材110は、躯体に向けて押しつけられる押板部111と、押板部111の曲げ変形を抑制するように構成された変形抑制部112とを含んでいる。対向部材116は、押圧部材110と同じ構造を有している。押圧部材110及び対向部材116は、補強具100aが構造物200に取り付けられるときにおいてそれぞれの押板部111が離間した位置で対向するように配置される。
押板部111は、補強具100aが取り付けられる躯体の太さよりも幅広になるように設計された矩形板状の部分である。したがって、押板部111が柱101又は102に押し当てられたときには、押板部111は、柱101又は102から左右にはみ出す。押板部111には、柱101又は102からはみ出す位置に複数の貫通孔が形成されている。これらの貫通孔は、連結部材120を挿通させるために利用される。
変形抑制部112は、一対の第1補強板部113と、第2補強板部114とを含んでいる。一対の第1補強板部113は、押板部111の長手方向に延びる一対の縁部においてそれぞれ屈曲されている。または、一対の第1補強板部113は、押板部111の長手方向に延びる一対の縁部に接続されている。第2補強板部114は、押板部111の長手方向における略中間位置においてこれらの第1補強板部113及び押板部111に接続されている。第2補強板部114には、貫通孔115が形成されている。貫通孔115は、図3に示されている架渡部材130の連結に利用される。
連結部材120は、ボルト121とナット122とによって構成される。ボルト121は、押圧部材110の押板部111に形成された貫通孔に挿通可能な太さである。押圧部材110及び対向部材116が対向配置された状態で、ナット122が押圧部材110及び対向部材116の貫通孔に挿通されたボルト121に螺合されると、押圧部材110及び対向部材116が連結される。
押圧部材110及び対向部材116が躯体の面を傷つけることを防止するために、押板部111と躯体の面との間及び対向部材116と躯体の面との間に緩衝部材140が介挿されてもよい。緩衝部材140は、押板部111と別体であってもよいし、補強具100aが躯体に取り付けられる前において押板部111に接着され、押板部111と一体化されていてもよい。緩衝部材140は、ゴム製であってもよいし、躯体の面を傷つけない他の軟質材料から構成されていてもよい。
架渡部材130は、柱101,102間で架け渡される部材である。架渡部材130は、長尺部材131(たとえば、ワイヤやロープ)と、一対の結束部材132とを含んでいる。長尺部材131は、2カ所で折り返され、架渡部材130の両端部において輪状部133を形成している。結束部材132は、折り返されることによって重なった長尺部材131の部分を束ねるように構成されている。結束部材132は、補強作業を行う作業者によって操作されるように構成されている。結束部材132として、作業者の操作の下で長尺部材131に対する結束部材132の結束状態が長尺部材131の中央部分に対して折り返された部分の相対的な変位を阻止する状態から相対的な変位を許容する状態に変わるクランプ金物が利用可能である。長尺部材131の輪状部133は、第2補強板部114に形成された貫通孔115に挿通されている。
補強具100a,100bを用いた構造物200の補強方法が以下に説明される。
作業者は、一対の押圧部材110を架渡部材130でつなぎ、取付位置において、柱101又は102を押圧部材110及び対向部材116で挟む。詳細には、作業者は、押圧部材110の押板部111を柱101又は102の1つの面に対向させ、対向部材116の押板部111を柱101又は102の反対側の面に対向させる。すなわち、2つの第1補強板部113及び第2補強板部114が躯体とは反対側に押板部111から突出する姿勢で押圧部材110及び対向部材116を柱101又は102の面に隣接させる。このとき、作業者は、押板部111と柱101又は102の対応する面との間に緩衝部材140を介挿する。
作業者は、押板部111の貫通孔にボルト121を挿通し、ナット122をボルト121に螺合する。この結果、押圧部材110及び対向部材116の押板部111間の距離が狭まり、柱101又は102は、押圧部材110及び対向部材116によって押圧される。このとき、柱101,102の面上には、押圧部材110及び対向部材116を取付位置において固定するのに十分な大きさの静止摩擦力が生ずる。すなわち、補強具100a,100bの両端部は、柱101,102上の取付部位において静止摩擦力によって固定される。補強具100a,100bの両端部が柱101,102に固定されると、架渡部材130は、これらの柱101,102間で架け渡された状態になる。
作業者は、結束部材132を操作し、結束部材132を長尺部材131の中央部分に対して折り返された部分の相対的な変位を許容する状態にする。その後、作業者は、折り返し部分を引っ張り、構造物200の補強に適した張力を補強具100a,100bに作用させる。
上述の補強方法では、補強具100a,100bの固定の際に柱101,102に対する加工(たとえば、穴あけ加工)は必要とされない。したがって、柱101,102に対する加工がなされる場合には、関係省庁の加工への承認が必要とされる構造物200(たとえば、重要文化財として指定された構造物200)に対しても、上述の補強方法は加工への承認を受けることなく適用可能である。したがって、上述の補強方法は、加工への承認を受けるまでの期間において構造物200を応急的に補強するのに好適に利用可能である。しかしながら、上述の補強方法は、構造物200に対する恒久的な補強に関して、以下の課題を有している。
上述の補強方法に用いられる補強具100a,100bは、柱101,102の内部に入り込む部分を有していないので、補強具100a,100bの取付位置が意図せず変動してしまうことが想定される。たとえば、押圧部材110及び対向部材116に対して上下方向の外力が意図せず加わったり、ナット122がボルト121から緩んでしまったりした場合には、補強具100a,100bは、柱101,102上の取付位置からずれてしまう。したがって、柱101,102への加工に対する承認が得られた後には、補強具100a,100bは、柱101,102への固定に穴あけ加工を必要とする他の補強具に交換されてもよい。
穴あけ加工が行われた後に従来の補強具が取り付けられた場合、以下の問題が生ずることがある。たとえば、補強具が伸長を許容しなければ、柱101,102上の取付部位は、構造物200の変形開始時において大きな衝撃力を受ける。補強具が弾性変形可能な長尺の樹脂部品を用いて構成されている場合には、構造物200の変形開始時における衝撃力は抑制される。しかしながら、弾性変形量が小さい間、補強具は、構造物200の変形エネルギを十分に吸収することはできない。したがって、補強具として弾性変形可能な長尺部材が用いられている場合には、構造物200の大きな変形エネルギを吸収するためには、補強具は、大きく弾性変形しなければならない。
これらの課題(すなわち、変形の開始時における衝撃及び補強具による小さな変形エネルギ吸収量の課題)を解消するように構成された補強具300が、図4を参照して説明される。図4は、補強具300の概略的な断面図である。
補強具300は、構造物200上の2つの取付部位間で架け渡されたときに、2つの取付部位間の距離が大きくなるような構造物200の変形に合わせて伸長可能に構成されている。詳細には、補強具300は、第1端部311を含んでいる第1部分310と、第1端部311とは反対側の第2端部321を含んでいる第2部分320とを有している。補強具300は、第1端部311と第2端部321とを離間させる方向の外力が補強具300に作用したときに伸長するように構成されている。
第1部分310の第1端部311は、構造物200上の2つの取付部位のうち一方に固定可能に形成された取付金具によって構成されている。この取付金具は、構造物200の躯体(たとえば、柱101,102)に穿設された穴部を利用して躯体に固定可能である。第1部分310は、第1端部311に加えて、第1端部311から一方向に延設された摺接体312を含んでいる。摺接体312は、第2部分320に連結された棒状部材である。摺接体312の延設方向は、補強具300の伸長方向に相当している。
第2部分320の第2端部321は、構造物200上の2つの取付部位のうち他方に固定可能に形成された取付金具によって構成されている。この取付金具も、構造物200の躯体に穿設された穴部を利用して躯体に固定可能である。第2部分320は、第2端部321に加えて、延設部322、筒体323及び摺動部324を含んでいる。
延設部322は、例えば、構造物200の変形の際に補強具300に加わる張力に耐えるのに十分な引張強度を有するワイヤによって構成されている。延設部322は、摺接体312の延設方向に延設されている。延設部322の一端部には、第2端部321を構成している取付金具が取り付けられている。取付金具は、延設部322の端部から取り外し可能である。延設部322の他端部は、カシメられ、このカシメ部分は、筒体323との連結に利用される。
筒体323は、第1部分310の摺接体312の延設方向に延設された筒部材325と、筒部材325の両端部を閉じているリング部材326,327とを含んでいる。筒部材325の両端部の内周面には、雌ねじが形成されている。リング部材326の外周面には、筒部材325の内周面の雌ねじに螺合する雄ねじが形成されている。リング部材326は、第2端部321側における筒部材325の端部に螺合することにより取り付けられている。
リング部材326の中心の貫通孔には、延設部322が挿通されている。リング部材326の貫通孔の直径は、延設部322の端部のカシメ部分の直径よりも小さく設定され、延設部322がリング部材326から抜け出ることが防止される。リング部材327の外周面には、筒部材325の内周面の雌ねじに螺合する雄ねじが形成されている。リング部材327は、第1端部311側における筒部材325の端部に螺合することにより取り付けられている。リング部材327の中心の貫通孔には、摺接体312が挿通されている。リング部材327の貫通孔の直径は、摺接体312の直径よりも若干大きく設定されていてもよい。
筒部材325及びリング部材326,327によって囲まれた閉空間内には、摺接体312の一部及び摺動部324が配置されている。摺動部324は、第2部分320に設けられているとともに摺接体312が挿通されたリング状の部材である。摺動部324は、閉空間内においてリング部材327に隣接している。摺動部324の内周面は、摺接体312の外周面に接触している。摺動部324は、摺動部324に対して第2端部321に向く方向の外力が作用すると摺動部324が第2端部321に向けて摺動可能に摺接体312に取り付けられている。摺動部324の移動の間において摺動部324の内周面と摺接体312の外周面との間に生ずる摩擦力を強めるために、摺動部324は径方向にカシメられていてもよい。
補強具300は、第2端部321への摺動部324の移動を停止させるためのストッパ328を更に備えている。ストッパ328は、摺接体312に対する摺動部324の取付位置から第2端部321側に離間した位置において摺接体312に固定されたリング部材であってもよい。ストッパ328は、摺動部324とは異なり、摺接体312に対して移動不能である。ストッパ328と摺動部324との間における摺接体312の延設区間は、摺動部324が摩擦を生じさせながら移動する部分である。
補強具300は、構造物200(たとえば、柱101,102)への穴あけ加工に対する承認が得られた後に構造物200に取り付けられる。補強具100a,100bが取り付けられる前において、補強具100a,100bが柱101,102から取り外される。その後、補強具100a,100bが取り付けられていた位置において穴あけ加工が施与される。
柱101,102に形成された穴に、延設部322及び摺接体312が挿通される。柱102の穴から露出した摺接体312の端部に第1端部311が連結され、第1端部311は柱102に固定される。柱101の穴から露出した延設部322の端部に第2端部321が連結され、柱101に固定される。
補強具300が構造物200に取り付けられた後に、第1端部311が取り付けられた躯体上の取付位置と第2端部321が取り付けられた躯体上の取付位置との間の距離が拡がるように構造物200が変形すると、補強具300に張力が作用する。このとき、補強具300は、図5に示されるように、第2端部321が第1端部311から離間するように変形する。
第2端部321が第1端部311から離間する方向に移動すると、構造物200から第2端部321に作用している外力は、延設部322を通じて筒体323に伝わる。延設部322のカシメられた端部は、リング部材326に引っ掛かっているので、第2端部321が第1端部311から離間する方向に移動すると、筒体323も第1端部311から離間する方向に移動する。このとき、摺動部324は、リング部材327とともに第1端部311から離間する方向に移動する。摺動部324の内周面は、摺接体312の外周面に接触しているので、摺動部324の移動の間において、摺動部324の内周面と摺接体312の外周面との間に摩擦力が生ずる。摺動部324が移動し続けると、最終的に、摺動部324は、図5に示されるようにストッパ328に到達し、ストッパ328に接触する。ストッパ328は、摺接体312に対して移動不能に固定されているので、摺動部324の移動は、ストッパ328によって停止される。
上述の如く、構造物200上の2つの取付部位間の距離が大きくなるように構造物200が変形すると、補強具300は、第1部分310及び第2部分320の接続位置(すなわち、摺接体312に対する摺動部324の接触位置)が移動する。この結果、補強具300は、構造物200の変形に合わせて伸長することができる。したがって、構造物200の変形の開始時において、これらの取付位置に作用する衝撃力が小さくなる。この結果、構造物200の上述の2つの取付部位は、衝撃力から保護される。
構造物200の変形開始時における衝撃力を抑制する効果は、弾性変形することにより伸長する補強具によっても得られる。しかしながら、このような補強具は、弾性変形量が小さい間は、構造物200の変形に対して十分な抗力を与えられないという課題を有している。言い換えると、構造物200の大きな変形エネルギを吸収するためには、補強具は、大きく弾性変形する必要があるという課題が存在している。
一方、上述の補強具300が構造物200の変形に対して与える抗力は、補強具300の変形量によらず略一定である。詳細には、補強具300は、摺接体312と摺動部324との間の摩擦力が構造物200の変形に対する抗力として作用するので、構造物200の変形に対する抗力の大きさは、補強具300の伸長量とは無関係になる。構造物200の変形に対する抗力は、摺動部324をカシメることによって大きな値に設定可能である。
摺動部324及び摺動部324が摺動する摺接体312の部分は、筒体323の閉空間内に収容されている。したがって、これらは、筒体323の外の環境の影響を受けにくい。たとえば、摺動部324及び摺動部324が摺動する摺接体312に埃が付着しにくくなり、摩擦係数の経時的な変化が抑制される。
補強具300の長さは、以下の如く調整され得る。リング部材326は、筒部材325にネジ構造により取り付けられているので、リング部材326は、筒部材325から分離可能である。筒部材325がリング部材326から取り外されると、延設部322も筒部材325から分離される。第2端部321は、延設部322から取り外し可能であるので、第2端部321を延設部322から取り外した後、リング部材326を延設部322から抜き取ることができる。その後、長さにおいて異なる他の延設部322をリング部材326に挿通され、この新たな延設部322の端部に第2端部321が取り付けられる。その後、リング部材326を筒部材325に螺合されると、長さにおいて異なる補強具300が完成する。
上述の実施形態に関して、補強具300の延設部322は、筒体323に接続されている。代替的に、延設部322は、図6に示されるように摺動部324に接続されていてもよい。図6に示されている補強具300は、複数の延設部322を有している。これらの延設部322それぞれの一端部には、第2端部321が取り付けられている。第2端部321は、延設部322から取り外し可能である。これらの延設部322それぞれの他端部は、カシメられている。
補強具300は、筒体323を有しておらず、摺動部324は、外部に露出している。摺動部324には、複数の貫通孔が形成され、これらの貫通孔には延設部322が挿通されている。延設部322のカシメられた端部は、摺動部324に引っ掛かっている。
第2端部321が第1端部311から離間するように補強具300が伸長すると、摺動部324は、延設部322のカシメられた端部によってストッパ328側へ押される。この結果、摺動部324は、ストッパ328に向けて摺接体312に対して摩擦力を生じさせながら移動することができる。
延設部322は、第2端部321が延設部322から取り外された後に、摺動部324から第1端部311側に抜き取ることができる。補強具300の長さが構造物200の補強に適していない場合には、作業者は、延設部322を取り外した後、長さにおいて異なる他の延設部322を取り付けることができる。
上述の実施形態に関して、補強具300の第1部分310は、摺接体312と第1端部311とを含んでいる。追加的に、第1部分310は、図7に示されるように、延設部313とコネクタ部材314とを含んでいてもよい。延設部313は、構造物200の変形の際に補強具300に加わる張力に耐えるのに十分な引張強度を有するワイヤによって構成されている。コネクタ部材314は、延設部313の端部を摺接体312の端部に連結するために設けられている。コネクタ部材314は、作業者が所定の操作をコネクタ部材314に対して行うと延設部313と摺接体312との間の連結を解除するように構成されている。コネクタ部材314が取り付けられた延設部313の端部とは反対側の端部には、第1端部311を構成している取付金具が取り付けられている。第1端部311は、延設部313の端部から取り外し可能であってもよい。
図7の補強具300の長さは、延設部313を長さにおいて異なる他の延設部313に交換することによって調整され得る。第2端部321側の延設部322に加えて延設部313も交換可能であるので、補強具300の長さの調整範囲は広くなる。
上述の補強具300は、棒状部分の外周面が摩擦力を生ずる部分となるように設計されている。代替的に、補強具300は、筒状部分の内周面が摩擦力を生ずる部分になるように設計されてもよい(図8を参照)。
図8の補強具300では、第1部分310の摺接体312は筒状に形成され、この摺接体312の内周面に第2部分320の摺動部324の外周面が摺接されている。以下に、図8の補強具300の構造が説明される。
摺接体312の両端部には、雌ねじが形成されている。第1端部311側の摺接体312の端部には、リング部材326が螺合されている。リング部材326と第1端部311との間において延設部322が延設され、これらは、延設部322によって連結されている。摺接体312の他端部(すなわち、第2端部321側の端部)には、ストッパとして機能するリング部材327が螺合されている。リング部材326,327及び延設部322は、第2部分320ではなく第1部分310を構成している。
第2部分320は、上述の摺動部324に加えて、筒状の摺接体312内に部分的に挿入されるように第2端部321から延設された棒状の連結体329を含んでいる。摺動部324は、摺接体312内で連結体329の先端近くにおいて連結体329に固定されたリング状の部材である。摺動部324の外周面は、筒状の摺接体312の内周面に全体的に接触している。
第2端部321を第1端部311から引き離す方向の外力が補強具300に作用すると(図9を参照)、摺動部324及び連結体329は、摺動部324がリング部材327に接近するように変位する。この間、摺動部324の外周面は、筒状の摺接体312との間で摩擦を生じさせる。摺動部324がリング部材327に接触する位置まで移動すると、摺動部324及び連結体329の移動は、リング部材327によって停止される。
リング部材327は、ストッパとしても機能するので、図8及び図9の補強具300は、比較的少数の部品を用いて構成される。
上述の補強具300の摺動構造は、図1を参照して説明された補強具100a,100bに組み込まれてもよい。たとえば、補強具100a,100bの長尺部材131の中間位置に、補強具300の筒体323、摺接体312及び延設部322が配置されてもよい。この場合、筒体323から突出した摺接体312及び延設部322は、コネクタ部材を用いて長尺部材131に連結されてもよい。
補強具100a,100bの押圧部材110の形状は、構造物200に対する補強方向に合わせて変更されてもよい。1つの躯体に対して4つの方向に補強可能に構成された押圧部材110が図10及び図11を参照して説明される。図10は、押圧部材110の概略的な平面図である。図11は、押圧部材110の概略的な正面図である。
図10には、2つの押圧部材110、2つの対向部材116及び4つの緩衝部材140及び矩形断面を有している躯体103が示されている。4つの緩衝部材140は、躯体103を周方向に囲むように配置されている。押圧部材110及び対向部材116は、緩衝部材140に重なるように配置されている。
押圧部材110及び対向部材116それぞれは、平面視において略W字状の断面を有するように形成された2つの板状部材117により構成されている。詳細には、これらの板状部材117それぞれは、躯体103の角部にあてがわれるように屈曲した中間板部151と、中間板部151の一対の端縁(躯体103の延設方向に延びる縁部)から躯体103とは反対向きに突出した一対の端板部152とを含んでいる。4つの板状部材117が躯体103の周囲に配置されたときに隣り合う2つの板状部材117の端板部152は、互いに離間した位置で対向している。
躯体103の延設方向(図10の紙面の垂直方向)において互いに離間した位置にある一対の縁部の近くにおいて、端板部152には貫通孔が形成されている。これらの貫通孔に、連結部材120が挿通され、隣り合う押圧部材110は互いに連結される。
連結部材120用の貫通孔に加えて、端板部152の略中心において、貫通孔153が形成されている。貫通孔153は、図3を参照して説明された架渡部材130の長尺部材131の輪状部133の連結に利用される。
4つの板状部材117が躯体103を周方向に囲むように配置されると、これらの板状部材117の端板部152は、躯体103の四面に対してそれぞれ略直角な4つの方向に突出する。これらの端板部152には長尺部材131用の貫通孔153が形成されている。隣り合う端板部152の貫通孔153に架渡部材130の端部が取り付けられる。架渡部材130が取り付けられた2つの板状部材117によって、押圧部材110が構成される。残りの2つの板状部材117によって、対向部材116が構成される。なお、図10では、右側の2つの板状部材117が押圧部材110を構成し、左側の2つの板状部材117が対向部材116を構成している。
上述の実施形態に関して、図1に示される押圧部材110は、柱101,102の互いに対向する面上で固定されている。柱101,102上における押圧部材110の固定位置間の距離が大きくなるように構造物200が変形した場合、架渡部材130には張力が作用する。この張力は、押圧部材110を柱101,102上の固定面から離間させるように作用する。すなわち、柱101,102に対する押圧部材110の圧接力が弱くなり、構造物200の変形の間における押圧部材110の位置ずれが生じやすくなる。このような位置ずれを防止するために、押圧部材110は、強い力で対向部材116に連結される必要がある。このような課題を解消するための補強構造が、図12及び図13を参照して説明される。
補強具100a,100bそれぞれは、2つの押圧部材110と、2つの対向部材116と、4つの連結部材120と、2つの架渡部材130と、4つの緩衝部材140とを用いて構成されている。図12において、補強具100a,100bそれぞれについて、2つの連結部材120及び架渡部材130が示されている。残りの連結部材120及び架渡部材130は、柱101,102を挟むように、奥行方向において図12に示されている連結部材120及び架渡部材130に重なっている。
補強具100a,100bの押圧部材110は、柱101,102の互いに外向きの面に取り付けられている。すなわち、押圧部材110が取り付けられる柱101の面は、柱102とは反対側に向いており、押圧部材110が取り付けられる柱102の面は、柱101とは反対側に向いている。補強具100aの2つの押圧部材110のうち一方は、柱101の下部で固定されている一方で、他方の押圧部材110は、柱102の上部で固定されている。補強具100bの2つの押圧部材110のうち一方は、柱101の上部で固定されている一方で、他方の押圧部材110は、柱102の下部で固定されている。
押圧部材110は、柱101,102の太さよりも長い丸筒状の部材であり、平面視において、押圧部材110の両端は、柱101,102からはみ出している。押圧部材110の両端部それぞれには、2つの環状溝161が押圧部材110の軸方向において間隔を空けて形成されている。環状溝161が形成されていることにより、押圧部材110に掛け回される架渡部材130及び連結部材120の位置がずれにくくなる。押圧部材110は、アルミニウム製であってもよいし、ステンレス製であってもよいし、鉄であってもよいし、木製であってもよい。
補強具100a,100bの対向部材116,116は、柱101,102の互いに対向する面(すなわち、押圧部材110が取り付けられた面とは反対側の面)に取り付けられている。対向部材116は、対応する押圧部材110と柱101,102を挟むように配置されている。すなわち、補強具100aの2つの対向部材116のうち一方は、柱101の下部に配置され、柱101の下部に配置された補強具100aの押圧部材110と柱101を挟んでいる。補強具100aの他方の対向部材116は、柱102の上部に配置され、柱102の上部に配置された補強具100aの押圧部材110と柱102を挟んでいる。補強具100bの2つの対向部材116のうち一方は、柱101の上部に配置され、柱101の上部に配置された補強具100bの押圧部材110と柱101を挟んでいる。補強具100bの他方の対向部材116は、柱102の下部に配置され、柱102の下部に配置された補強具100bの押圧部材110と柱102を挟んでいる。
対向部材116の形状及び大きさは、押圧部材110と同一である。対向部材116は、アルミニウム製であってもよいし、ステンレス製であってもよいし、鉄であってもよいし、木製であってもよい。
連結部材120は、対向配置された押圧部材110及び対向部材116に架け渡された輪状の紐部材である。図12の奥行方向に重なった連結部材120のうち一方の両端部は、押圧部材110及び対向部材116の一端部に形成された2つの環状溝161のうち一方に収容されている。他方の連結部材の端部は、押圧部材110及び対向部材116の他端部に形成された2つの環状溝161のうち一方に収容されている。
連結部材120は、長さ調整可能に構成されている。すなわち、連結部材120の長さを調整することにより、対向配置された押圧部材110及び対向部材116間で作用する連結部材120の張力を調整することが可能になっている。たとえば、連結部材120として、ポリプロピレン製のバンド部材が利用可能である。
緩衝部材140は、柱101,102と押圧部材110との間及び柱101,102と連結部材120との間に配置されている。
補強具100a,100bの架渡部材130は、柱101,102間においてX字状に架け渡されている。補強具100aの架渡部材130の一端部を形成している輪状部133は、柱101の下部に取り付けられた押圧部材110の環状溝161(連結部材120が取り付けられていない方の環状溝161)にはめ込まれている。補強具100aの架渡部材130の他端部を形成している輪状部133は、柱102の上部に取り付けられた押圧部材110の環状溝161(連結部材120が取り付けられていない方の環状溝161)にはめ込まれている。補強具100bの架渡部材130の一端部を形成している輪状部133は、柱101の上部に取り付けられた押圧部材110の環状溝161(連結部材120が取り付けられていない方の環状溝161)にはめ込まれている。補強具100bの架渡部材130の他端部を形成している輪状部133は、柱102の下部に取り付けられた押圧部材110の環状溝161(連結部材120が取り付けられていない方の環状溝161)にはめ込まれている。
補強具100a,100bの取付に関して、押圧部材110及び対向部材116は、緩衝部材140を介して、それぞれの取付位置(すなわち、柱101の上部又は下部、もしくは、柱102の上部又は下部)において、柱101又は102を挟むように配置される。すなわち、押圧部材110及び対向部材116は、柱101又は102を挟んで対向配置される。
対向配置された押圧部材110及び対向部材116に連結部材120が架け渡される。押圧部材110及び対向部材116が柱101又は102上の取付位置からずれ落ちない程度の張力が得られるように、連結部材120の長さが調整される。
連結部材120によって、押圧部材110及び対向部材116が柱101又は102上の取付位置に固定された後、架渡部材130が柱101,102間でX字状に架け渡される。柱101,102間で架け渡された架渡部材130に弛みが生じないように、架渡部材130の長さが調整される。
補強具100a,100bの端部の固定位置の間隔が大きくなるように柱101,102のうちいずれか一方又は両方が傾斜したとき、架渡部材130の張力が増加し、柱101,102の傾斜の進行が抑制される。架渡部材130の張力の増加に伴って、柱101,102に対する押圧部材110の押圧力も増加する。したがって、柱101,102が傾斜している間における押圧部材110の位置ずれは、架渡部材130の張力の増加によって抑制される。柱101,102の傾斜にともなって柱101,102に対する押圧部材110の固定力が増すので、柱101,102が傾斜する前においては、押圧部材110及び対向部材116が取付位置からずり落ちない程度の連結部材120の張力が確保されていればよい。連結部材120の張力を過度に大きな値に設定する必要はないので、補強具100a,100bが柱101,102を損傷させる事態は生じにくくなっている。
図12及び図13に示されている補強具100a,100bでは、押圧部材110及び対向部材116を連結する連結部材120として、輪状の部材が用いられている。しかしながら、図14に示されるように、連結部材120として、ボルト121及びナット122が用いられてもよい。この場合、押圧部材110及び対向部材116それぞれの両端部に一対の貫通孔がこれらの直径方向に穿設される。ボルト121は、これらの貫通孔に挿通される。貫通孔から突出したボルト121の先端部のネジ部にナット122が螺合され、押圧部材110及び対向部材116が連結される。ナット122の締付力は、押圧部材110及び対向部材116が取付位置からずり落ちない程度の大きさに設定可能である。ナット122を過度に強く締め付けなくてもよいので、補強具100a,100bが柱101,102を損傷させる事態は生じにくくなっている。
図12及び図13に示されている補強具100a,100bでは、押圧部材110及び対向部材116として丸筒状の部材が用いられている。代替的に、図15及び図16に示されるように馬蹄筒状の部材(平板状の側壁とU字状に湾曲した側壁とを有している筒部材)又は角筒状の部材が押圧部材110及び対向部材116として用いられてもよい。
上述の如く、押圧部材110及び対向部材116として様々な断面形状を有する部材を利用することができる。押圧部材110及び対向部材116の形状に合わせて、緩衝部材140の形状が定められていてもよい。押圧部材110及び対向部材116として、丸筒状の部材が用いられるならば、図17に示されるように、丸筒状の部材が押し当てられる緩衝部材140の面141には、丸筒状の部材の外周面の湾曲形状に合わせた凹溝が形成されていてもよい。この場合、丸筒状の部材の上下位置が、緩衝部材140の凹溝によって定められるとともに広い面接触領域が確保される。一方、押圧部材110及び対向部材116として、馬蹄筒状又は角筒状の部材が用いられる場合には、これらの部材の平坦な面が緩衝部材140の面141に接触するので、面141に凹溝が形成されなくとも、広い面接触領域が得られる。したがって、馬蹄筒状又は角筒状の部材が用いられる場合には、緩衝部材140の面141に凹溝が形成されなくてもよい(図18を参照)。
緩衝部材140の面141とは反対側の面142は、柱101又は102に接触する。図17及び図18に示されるように、緩衝部材140の面142には、柱101又は102に対する摩擦係数を増やすように表面加工が施与されてもよい。この場合、柱101又は102上の取付位置からの緩衝部材140の位置ずれ、ひいては、押圧部材110及び対向部材116の位置ずれが抑制される。
上述の実施形態に関して、架渡部材130の両端の輪状部133の形成に用いられる結束部材132としてクランプ金物が利用されている。代替的に、結束部材132として、圧着スリーブが用いられてもよい。
上述の実施形態に関して、架渡部材130は、両端に輪状部133が形成された構造を有している。代替的に、図19に示されるように、架渡部材130は、全体的に輪状の構造を有していてもよい。図19に示されている架渡部材130は、長尺部材131の両端部をターンバックル134で繋いだ構造を有している。この場合、架渡部材130の長さ(ひいては、架渡部材130の張力)は、ターンバックル134を操作することによって調整可能である。
上述の実施形態に関連して説明された技術は、構造物の補強に好適に利用される。
100a,100b・・・・・・・・・・・・・・補強具
101,102・・・・・・・・・・・・・・・・柱(躯体)
110・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・押圧部材
116・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・対向部材
130・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・架渡部材
140・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・緩衝部材
200・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・構造物
300・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・補強具
310・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・第1部分
311・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・第1端部
312・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・摺接体
313,322・・・・・・・・・・・・・・・・延設部
320・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・第2部分
321・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・第2端部
323・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・筒体
324・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・摺動部
328・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ストッパ

Claims (11)

  1. 構造物を補強する補強方法であって、
    前記構造物の躯体に加工を要することなく前記躯体に取付可能に構成された補強具を、前記躯体に取り付けることにより前記構造物を補強することを備えている、補強方法。
  2. 前記補強具を取り付ける工程において、
    前記補強具の一部を構成している押圧部材及び前記押圧部材に対向配置された対向部材で、前記躯体上の取付部位を挟み、
    前記押圧部材及び前記対向部材が前記躯体を圧接するように前記押圧部材及び前記対向部材を連結する、請求項1に記載の補強方法。
  3. 前記補強具を取り外すことと、
    前記補強具よりも前記躯体上の取付位置からの経時的な位置ずれを生じにくい他の補強具を取り付けられるように、前記躯体に穴あけ加工を施与することと、
    形成された穴部を利用して、前記他の補強具を前記躯体に固定することと、を更に備えている、請求項2に記載の補強方法。
  4. 前記補強具を取り付ける工程において、
    前記押圧部材が押し当てられた前記躯体上の面の向く方向とは反対方向に前記躯体から離間した位置に配置された他の躯体が有している面のうち前記押圧部材が押し当てられた前記面とは反対向きの面に他の押圧部材を押し当て、
    前記押圧部材と前記他の押圧部材との間で長尺の架渡部材を架け渡す、請求項2又は3に記載の補強方法。
  5. 前記補強具を取り付ける工程において、
    前記押圧部材と前記躯体の前記取付部位との間に緩衝部材を配置する、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の補強方法。
  6. 構造物上の2つの取付部位間に架け渡されて使用され、前記構造物を補強する補強具であって、
    前記2つの取付部位のうち一方に取付可能に構成されているとともに一方向に延設された第1部分と、
    前記2つの取付部位のうち他方に取付可能に前記第1部分とは別体に構成された第2部分と、を備え、
    前記第2部分は、前記2つの取付部位間の距離が大きくなるような前記構造物の変形が生じたときに前記第1部分に対して前記第1部分の延設方向に摺動する摺動部を含んでいる、補強具。
  7. 前記変形が生じたときに前記第1部分に対して前記第2部分が相対的に移動する方向において、前記摺動部から離間した位置で前記第1部分に固定されたストッパを更に備え、
    前記ストッパは、前記移動方向に移動している前記摺動部と接触することにより前記摺動部の移動を停止させるように構成されている、請求項6に記載の補強具。
  8. 前記第2部分は、前記摺動部が収容された閉空間を形成している筒体を含んでいる、請求項6又は7に記載の補強具。
  9. 前記第2部分は、前記他方の取付部位と前記筒体との間で架け渡し可能に延設された延設部を含み、
    前記延設部は、前記筒体から取り外し可能である、請求項8に記載の補強具。
  10. 前記第2部分は、前記他方の取付部位と前記摺動部との間で架け渡し可能に延設された延設部を含み、
    前記延設部は、前記摺動部から取り外し可能である、請求項7に記載の補強具。
  11. 前記第1部分は、前記摺動部によって摺接されるように構成された摺接体と、前記一方の取付部位と前記摺接体との間で架け渡し可能に延設された延設部を含み、
    前記延設部は、前記摺接体から取り外し可能である、請求項6乃至8のいずれか1項に記載の補強具。
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