JP2021108598A - 農作業車 - Google Patents

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Abstract

【課題】自動走行での旋回走行において、機体が境界線を超えることで機体が緊急停止するような事態を回避できる農作業車の提供。【解決手段】農作業車は、境界物によって境界付けられた圃場面での機体の位置である機体位置を算出する機体位置算出部52と、機体と境界物との接触を避けるために設定された境界線と機体位置とに基づいて、機体が境界線を越える走行を禁止する越境防止制御部57bと、機体の旋回走行時の軌跡である旋回軌跡を推定する旋回軌跡推定部57cと、推定された旋回軌跡に基づいて実際の旋回走行で機体が境界線を越えるかどうかを判定する旋回時越境判定部57dとを備える。【選択図】図7

Description

本発明は、境界物によって境界付けられた圃場面を走行する自動走行可能な農作業車に関する。
特許文献1による農作業車は、衛星測位システムを用いて走行機体の位置を検出する計測装置と、設定された作業走行ラインに沿って走行機体を自動走行させる自動走行制御部と、圃場面と畦との間の境界線である畦際ラインに走行機体が接近すると走行機体を停止させる自動減速部とを備えている。
特開2018−117559号公報
農作業車は、畔などの境界物によって境界付けられた圃場全体を走行するために、境界物に向かう前進走行と、境界物に接近した場合に行われる旋回走行(方向転換走行)とを繰り返す。旋回走行の場合、旋回の開始タイミングや圃場の路面状態や旋回時車速などにより、想定されている旋回軌跡とは異なる旋回軌跡で機体が旋回することがある。特許文献1のような自動走行される農作業車が、境界線の近くで旋回走行する場合、機体が想定されている旋回軌跡より境界線寄りに旋回すると、機体の位置が境界線に達し、機体が緊急停止する。自動走行中に機体が緊急停止すると、手動運転に切り換えられ、手動で境界線を越えないような旋回走行を行う必要がある。このような越境回避旋回走行は手間がかかるため、作業が遅延する。
このため、自動走行での旋回走行において、機体が境界線を超えることで機体が緊急停止するような事態をできるだけ回避できる農作業車が要望されている。
本発明による農作業車は、境界物によって境界付けられた圃場面を自動走行で走行可能であり、前記圃場面での機体の位置である機体位置を算出する機体位置算出部と、前記機体と前記境界物との接触を避けるために設定された境界線と前記機体位置とに基づいて、前記機体が前記境界線を越える走行を禁止する越境防止制御部と、前記機体の旋回走行時の軌跡である旋回軌跡を推定する旋回軌跡推定部と、推定された前記旋回軌跡に基づいて実際の旋回走行で前記機体が前記境界線を越えるかどうかを判定する旋回時越境判定部とを備える。
この構成によれば、機体が旋回走行する際には、予めその旋回走行での旋回軌跡が推定されるので、その推定された旋回軌跡に基づいて、実際の旋回走行で前記機体が前記境界線を越えるかどうかが判定される。旋回軌跡推定部による旋回軌跡の推定及び旋回時越境判定部による判定は、実際の旋回走行の前、及び実際の旋回走行の途中のいずれか、あるいはその両方で行うことが可能である。境界線を越えるとの判定結果が出た場合には、越境防止制御部によって機体の走行が禁止される前に、リカバリー処置が行われる。このリカバリー処理は、手動または自動のどちらでも可能である。そのようなリカバリー処置は、越境防止制御部によって機体の走行が禁止されてから行われることに比べて、容易であるだけでなく、時間的なロスも少なくなる利点が得られる。
リカバリー処理としては、機体が境界線を越えてしまう前に、予定されている旋回走行を取り止めて旋回走行開始点の移動や旋回半径の変更などによる越境回避旋回走行を行うことである。従って、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記旋回時越境判定部によって前記機体が前記境界線を越えると判定された場合、越境回避旋回走行が行われる。
越境回避旋回走行の一例は、予定されている旋回走行の操舵角が最大操舵角未満であれば、最大操舵角を用いた旋回走行での旋回軌跡を推定し、その推定された旋回軌跡に基づく旋回時越境判定の結果が良ければ、最大操舵角での旋回走行によって境界線越えを回避することができる。従って、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記越境回避旋回走行には、最大操舵角での旋回走行が含まれる。より確実に境界線越えを回避するには、一般に切り返し走行と呼ばれている後進を用いた方向転換走行(旋回走行に一種)が好適である。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記越境回避旋回走行に後進が含まれる。
農作業車による圃場における多くの農作業では、作業対象となる圃場面は、外周領域とこの外周領域の内側に位置する内部領域とに分けられ、内部領域の作業は、作業を行う直進走行と方向転換のために作業を行わない旋回走行(主にUターン走行)との繰り返しで行われる。このことから、内部領域での直進走行から外周領域での旋回走行に移行する前に、機体が一時停止するように制御されることが少なくない。このような制御を利用すべく、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記圃場面は、前記境界線に沿った外周領域と前記外周領域の内側に位置する内部領域とに分けられ、前記内部領域での自動走行作業が、前記内部領域での直進走行と前記外周領域での前記旋回走行とを繰り返しによって行われ、前記直進走行から前記旋回走行への移行時に前記機体の一時停止が行われ、前記一時停止の間に、前記旋回軌跡を推定と旋回時越境判定とが行われる。これにより、直進走行から旋回走行への移行時に発生する機体の一時停止が有効利用できる。なお、本願発明において用いられている直進走行なる語句は、直線走行のみを意味するわけではなく、大きな曲率半径でもって湾曲する湾曲走行なども含まれる。
旋回走行の前に、その旋回走行の走行軌跡を推定して機体の越境はないと判定されても、旋回走行の途中でスリップ等により、機体の越境が生じる可能性がある。これを避けるためには、旋回走行の途中でも、その時点で推定される旋回軌跡に基づく越境判定を行い、越境が発生すると判定された場合には、一旦機体を停止させて、越境が回避される新たな旋回走行に切り換える必要がある。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記旋回走行の途中で前記旋回時越境判定部によって前記機体が前記境界線を越えると判定された場合、前記機体が停止され、新たな回避旋回が模索される。
境界線と機体位置と基づいて境界物との干渉を避ける制御が行われるので、境界線の算出及び機体位置は、同じ方式で算出されることが好ましい。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記機体位置算出部は衛星測位を用いて前記機体位置を算出し、前記境界線の位置は、前記圃場面の最外周に沿った周回走行時の前記機体位置(走行軌跡)に基づいて算出される。
農作業車の一例である田植機の側面図である。 自動走行による苗植付作業の流れを示すフローチャートである。 障害物検出器の配置を示す模式図である。 走行経路が設定される圃場の領域分割を示す説明図である。 外周領域に設定される周回走行経路と田植機の走行とを説明する説明図である。 内部領域に設定される往復走行経路と田植機の走行とを説明する説明図である。 田植機の制御系を示す機能ブロック図である。 越境防止ルーチンの一例を示すフローチャートである。
本発明による農作業車の実施形態として、乗用型の田植機を取り上げて、以下に説明される。この田植機は、境界物によって境界付けられた圃場面を自動走行することができる。なお、本明細書では、特に断りがない限り、「前」は機体前後方向(走行方向)に関して前方を意味し、「後」は機体前後方向(走行方向)に関して後方を意味する。また、左右方向または横方向は、機体前後方向に直交する機体横断方向(機体幅方向)を意味する。「上」または「下」は、機体の鉛直方向(垂直方向)での位置関係であり、地上高さにおける関係を示す。
図1は、田植機の側面図である。田植機は、乗用型で四輪駆動形式の走行機体(以下、機体1と称する)を備えている。機体1は、機体1の後部に昇降揺動可能に連結された平行四連リンク形式のリンク機構11、リンク機構11を揺動駆動する油圧式の昇降シリンダ11a、リンク機構11の後端部にローリング可能に連結される苗植付装置3(農用資材投与装置の一例)、及び、機体1の後端部から苗植付装置3にわたって架設されている施肥装置4などを備えている。
機体1は、走行のための機構として車輪12、エンジン13、及び油圧式の無段変速装置14を備えている。車輪12は、操舵可能な左右の前輪12Aと、操舵不能な左右の後輪12Bとを有する。エンジン13及び無段変速装置14は、機体1の前部に搭載されている。エンジン13からの動力は、無段変速装置14などを介して前輪12A、後輪12Bなどに供給される。
苗植付装置3は、一例として8条植え形式に構成されている。苗植付装置3は、苗載せ台31、8条分の植付機構32などを備えている。なお、この苗植付装置3は、図示されていない各条クラッチの制御により、2条植え、4条植え、6条植えなどの形式に変更可能である。
苗載せ台31は、8条分のマット状苗を載置する台座である。苗載せ台31は、マット状苗の左右幅に対応する一定ストロークで左右方向に往復移動し、縦送り機構33は、苗載せ台31が左右のストローク端に達するごとに、苗載せ台31上の各マット状苗を苗載せ台31の下端に向けて所定ピッチで縦送りする。8個の植付機構32は、ロータリ式で、植え付け条間に対応する一定間隔で左右方向に配置されている。そして、各植付機構32は、機体1からの動力により、苗載せ台31に載置された各マット状苗の下端から一株分の苗を切り取って、整地後の泥土部に植え付ける。
苗植付装置3には、植付機構32による苗取り量を調節する苗取り量調節機能が備えられている。植付機構32は、苗載せ台31の下端を摺動案内するガイドレールに形成された苗取り出し口を通過して一株分の苗を取り出して植え付ける。苗載せ台31及び苗載せ台31の下端を摺動案内するガイドレールを上下に位置変更することにより苗取り量を調節する。
図1に示すように、施肥装置4は、横長のホッパ41、繰出機構42、電動式のブロワ43、複数の施肥ホース44、及び、条毎に備えられた作溝器45を備えている。ホッパ41は、粒状または粉状の肥料を貯留する。繰出機構42は、エンジン13から伝達される動力で作動し、ホッパ41から2条分の肥料を所定量ずつ繰り出す。この施肥装置4は、繰出機構42による肥料の繰出し量を変更する繰出し量調節機能を有する。
ブロワ43は、機体1に搭載されたバッテリ(図示せず)からの電力で作動し、各繰出機構42により繰り出された肥料を圃場の泥面に向けて搬送する搬送風を発生させる。施肥装置4は、ブロワ43などの断続操作により、ホッパ41に貯留した肥料を所定量ずつ圃場に供給する作動状態と、供給を停止する非作動状態とに切り換えることができる。
各施肥ホース44は、搬送風で搬送される肥料を各作溝器45に案内する。各作溝器45は、各整地フロート15に配備されている。そして、各作溝器45は、各整地フロート15と共に昇降し、各整地フロート15が接地する作業走行時に、水田の泥土部に施肥溝を形成して肥料を施肥溝内に案内する。
機体1は、その後部側に運転部20を備えている。運転部20には、手動走行操作具として、前輪操舵用のステアリングホイール21、無段変速装置14の変速操作を行うことで車速を調整する主変速レバー22、副変速装置の変速操作を可能にする副変速レバー23、苗植付装置3の昇降操作と作動状態の切り換えなどを可能にする作業操作レバー25などが備えられている。さらに運転席16の前方には、汎用端末9が設けられている。汎用端末9は、各種の情報を表示してオペレータに報知する報知デバイスや各種の情報の入力を受け付けるタッチパネルを備えている。ステアリングホイール21の周辺には、運転者による運転モード切替操作具24が設けられている。さらに、運転部20の前方に、予備苗を収容する予備苗フレーム17が設けられている。
ステアリングホイール21は、非図示の操舵機構を介して前輪12Aと連結されており、ステアリングホイール21の回転操作を通じて、前輪12Aの操舵角が調整される。操舵機構には、ステアリングモータM1も連結されており、自動走行時には、操舵信号に基づいてステアリングモータM1が動作することにより、前輪12Aの操舵角が調整される。さらに、主変速レバー22を自動操作するための変速操作用モータM2も備えられており、自動走行時には、変速信号に基づいて変速操作用モータM2が動作することにより、無段変速装置14の変速位置が調整される。
予備苗フレーム17の上部には、上方に延びた延長フレーム17aが設けられている。この延長フレーム17aには、外部に田植機の状態を報知する複数のカラーランプが縦方向に並んだ積層灯18と、測位ユニット8が取り付けられている。測位ユニット8は、機体1の位置及び方位(機体方位)を算出するための測位データを出力する。測位ユニット8には、全地球航法衛星システム(GNSS)の衛星からの電波を受信する衛星測位モジュール8Aと、機体1の三軸の傾きや加速度を検出する慣性計測モジュール8Bが含まれている。
この田植機による自動走行と手動走行とを組み合わせた苗植付作業における処理手順の一例が図2に示されている。図2の例では、この苗植付作業には、作業前処理#A、マップ作成処理#B、境界線算出処理#C、経路生成処理#D、作業開始点誘導処理#E、内側往復植付処理#F、外周植付処理#Hが含まれている。
作業前処理#Aでは、田植機の制御系の各ユニット間の通信チェックや測位ユニット8の通信チェックなどが行われる。さらに、田植機では、リモコン90(図1参照)を用いた遠隔制御や障害物検出器80(図3参照)による障害物検出が行われるので、リモコン90や障害物検出器80の機能チェックも前処理として行われる。図3に示すように、この実施形態での障害物検出器80はソナータイプであり、機体1の前方を検出範囲とする4つのフロントソナー80f、機体1の左右を検出範囲とする2つのサイドソナー80s、機体1の前方を検出範囲とする2つのリアソナー80rからなる。
マップ作成処理#Bは、作業対象となっている圃場のマップ、つまり圃場面の外形を測定する処理である。田植機が圃場面を境界付ける畔などの境界物に沿って、つまり圃場面の最外周に沿って、手動走行(マップ作成ティーチング走行)した時に得られる測位ユニット8からの位置信号に基づいて走行軌跡が算出される。この走行軌跡からから、圃場面の地図情報としての圃場輪郭線、つまり圃場マップが得られる。
境界線算出処理#Cでは、図4に示すように、マップ作成処理#Bで算出された走行軌跡から、田植機が圃場の境界物との接触を避けるための限界となる機体1の位置を示す境界線が算出される。田植機の通常の走行において、機体1の位置がこの境界線(越境ラインとも呼ばれる)を越えない限り、田植機が畔などの境界物と接触しない。機体1の位置が境界線に達すると、機体1は強制的に停止する。この田植機は自動走行可能であることから、不測のスリップや操舵のふらつきなどが生じても、田植機が畔などの境界物と接触しないように安全距離を付加して、最終的な境界線の位置が決定される。
経路生成処理#Dでは、マップ作成処理#Bで作成された圃場マップ内に設定される自動走行の目標となる走行経路が所定のアルゴリズムによって作成される。自動走行での苗植付作業のために生成された走行経路について以下に説明する。
圃場マップによって規定された圃場面は、図4に示すように、外周領域と内部領域とに区分けされる。生成される走行経路は、外周領域に設定される周回走行経路(図5参照)と、内部領域設定される往復走行経路(図6参照)とからなる。田植機は、最初に往復走行経路に沿って内部領域に対する苗植付作業(自動走行作業の一種)を行い(内部作業走行モードと称する)、その後に、周回走行経路に沿って外周領域に対する苗植付作業を行う(周回作業走行モードと称する)。
周回走行経路は、圃場境界物(畔)に平行に延びる周回直線経路と、周回直線経路どうしをつなぐために前進と後進とを取り入れた方向転換経路とからなる。なお、図5において、周回直線経路には符号R1が付与され、方向転換経路には符号R2が付与されている。往復走行経路は、多数の互いに略平行な直進経路と、直進経路どうしをつなぐ旋回経路(Uターン経路)からなる。それぞれの直進経路において、植付開始位置(旋回終了位置でもある)から苗の植え付けが開始され、植付終了位置(旋回開始位置でもある)で苗の植え付けが終了される。なお、図6において、植付開始位置には符号USが付与され植付終了位置には符号UFが付与され、直進経路にはR3が付与され、旋回経路には符号R5が付与されている。図5および図6において、往復走行経路から周回走行経路に移行するための移行経路には符号R4が付与されている。ここでの例では、移行経路は、旋回経路と類似している。さらに、図5および図6には、田植機の作業幅が符号Wで示され、田植機の圃場への出入口が斜線で描かれ、符号GAが付与されている。図6には、出入口から往復走行経路の走行開始位置(図6で符号Sが付与されている)までの開始案内経路(図6で符号R6が付与されている)が示されている。旋回経路、方向転換経路、開始案内経路、移行経路では、田植機は作業を行わずに走行するので、これらの経路は点線で示される。周回直線経路および直進経路では、田植機は作業を行いながら走行するので、これらの経路は実線で示される。
作業開始点誘導処理#Eでは、まず、田植機は手動走行で、出入口を通じて圃場に進入して、所定位置で停止する。その後、苗植付作業の開始点である走行開始位置までの走行経路である開始案内経路に沿って、田植機は自動走行で走行開始位置まで走行する。
内側往復植付処理#Fでは、走行モードは内部作業走行モードとなり、図6に示された往復走行経路に沿って自動走行され、内部領域の苗植付作業が行われる。苗補給が必要な場合、苗補給処理#Gが行われる。
内側往復植付処理#Fが終了すると、走行モードは周回作業走行モードとなり、図5で示された周回走行経路に沿った苗植付作業である外周植付処理#Hが実行される。この実施形態では、周回走行経路は、最初に走行する内側一周分の内周回走行経路と、その後に走行する外側一周分の外周回走行経路とからなる。基本的には、外周回走行経路の終了位置は圃場の出入口となっているので、外周回走行経路に沿った苗植付作業の後、田植機は、出入口を通じて圃場から出る。内周回走行経路に沿った苗植付作業は自動走行で行われる。外周回走行経路に沿った苗植付作業は、精密な走行が必要とされるので、自動走行であっても、監視者としての運転者が搭乗する有人自動走行が好ましい。
図7には、この田植機の制御系の制御ブロック図が示されている。田植機の制御系は、田植機の各種動作を制御する制御装置100と、制御装置100とのデータ交換が可能な汎用端末9とリモコン90とからなる。制御装置100には、測位ユニット8、運転モード切替操作具24、走行センサ群28、作業センサ群29、障害物検出器80からの信号が入力されている。制御装置100からの制御信号が、走行機器群1Aと作業機器群1Bとに出力される。
走行機器群1Aには、例えば、ステアリングモータM1や変速操作用モータM2が含まれており、制御装置100からの制御信号に基づいて、ステアリングモータM1が制御されることで操舵角が調節され、変速操作用モータM2が制御されることで車速が調節される。
作業機器群1Bには、例えば、苗植付装置3を昇降調整する昇降シリンダ11a、植付機構32による苗取り量を調節する苗取り量調節機器、繰出機構42による肥料の繰出し量を変更する繰出し量調節機器などが含まれている。
走行センサ群28には、操舵角、車速、エンジン回転数などの状態及びそれらに対する設定値を検出する各種センサが含まれている。作業センサ群29には、リンク機構11、苗植付装置3、施肥装置4の状態を検出する各種センサが含まれている。
制御装置100には、走行制御部6、作業制御部51、機体位置算出部52、走行経路管理部53、運転制御状態検知部55、越境管理部57、入力信号処理部50a、通信部50bが備えられている。
入力信号処理部50aは、田植機に設けられている各種センサ、スイッチ、レバーなどからの信号を処理して、制御装置100に構築されている機能部に転送する。通信部50bは、無線通信機能を有し、外部とのデータ通信、例えばリモコン90とのデータ通信を行ない、受信データは入力信号処理部50aに転送される。
走行制御部6には、自動走行制御部6Aと手動走行制御部6Bと制御管理部6Cとが備えられている。自動走行制御部6Aは、自動走行時の速度制御や操舵制御を行う。走行経路管理部53によって設定された目標となる走行経路と機体位置算出部52によって算出された機体位置とを比較して算出される横偏差及び方位偏差に基づいて、横偏差及び方位偏差が縮小するように、操舵制御が行われる。
この田植機では、目標となる走行経路に沿って自動走行する自動走行モード以外に、少なくとも2点によって規定される基準線の方位を維持するように自動で直進走行する直線維持運転モードが備えられている。直線維持運転モードで用いられる基準線として、走行経路管理部53によって管理されている直進走行経路が流用可能である。
手動運転モードでは、手動走行制御部6Bが、ステアリングホイール21の操作量に基づいて、ステアリングモータM1を制御する。制御管理部6Cは、運転モード切替操作具24からの信号に基づいて、自動走行モード、直線維持運転モード、手動運転モードのいずれかを選択する。
作業制御部51は、自動走行では、前もって与えられているプログラムに基づいて自動的に作業機器群1Bを制御し、手動走行では、運転者の操作に基づいて、作業機器群1Bを制御する。機体位置算出部52は、測位ユニット8から逐次送られてくる衛星測位データに基づいて、機体1の地図座標(機体位置)を算出する。
この実施形態では、汎用端末9に、圃場情報格納部91、圃場マップ作成部92、走行経路生成部93、境界線算出部94、走行軌跡生成部95が備えられている。圃場情報格納部91は、作付け種や圃場の入口(出口)位置や苗補給可能位置など圃場に関する情報が格納されている。圃場マップ作成部92は、図2を用いて説明されたマップ作成処理を行う。走行経路生成部93は、圃場マップ作成部92によって作成された圃場マップに基づいて圃場をと内部領域とに区分けし、外周領域を走行するための周回走行経路と、内部領域の往復走行経路を生成する。境界線算出部94は、図2を用いて説明された境界線算出処理を行う。圃場マップ作成部92によるマップ作成処理や境界線算出部94による境界線算出処理には、マップ作成ティーチング走行における走行軌跡が必要である。走行軌跡生成部95は、機体位置算出部52によって算出された機体位置に基づいて、機体1の走行軌跡を生成する。
走行経路管理部53は、走行経路生成部93によって生成された走行経路を汎用端末9から受け取って管理し、自動走行モードでの機体操舵の目標となる走行経路を順次設定する。
運転制御状態検知部55は、制御装置100で取り扱われている制御情報に基づいて、走行制御状態や作業制御状態を検知する。
越境管理部57は、境界線算出部94で算出された境界線(境界線データ)を機体1が超えることで、機体1が畦などの境界物と接触することを回避するための機能を有する。このため、越境管理部57は、境界線記憶部57a、越境防止制御部57b、旋回軌跡推定部57c、旋回時越境判定部57dを備えている。
境界線記憶部57aは、境界線算出部94から受け取った境界線を格納する。越境防止制御部57bは、機体位置に基づいて機体1が境界線を越えないかどうかを判定し、機体1が境界線を越える走行を禁止する停止指令を走行制御部6に与える。越境防止制御部57bは、直進走行する機体1に対して越境防止を行う直進越境防止モードと、旋回走行する機体1に対して越境防止を行う旋回越境防止モードとを有する。
直進越境防止モードでは、越境防止制御部57bは、機体位置算出部52から与えられた機体位置と、境界線記憶部57aから読み出した機体進行方向に向き合う境界線とから、機体1と境界線との間の離間距離を算出する。算出された離間距離が所定距離以内になると、越境防止制御部57bは、停止指令を走行制御部6に与える。
旋回走行の際は、機体1の後端部又は先端部が横振りするので、直進越境防止モードのような離間距離の算出に基づくような越境防止制御は用いられず、旋回越境防止モードによる越境防止制御が行われる。この旋回越境防止モードでは、機体1の推定される旋回軌跡に基づいた越境防止制御が、旋回軌跡推定部57cと旋回時越境判定部57dとを用いて行われる。旋回軌跡推定部57cは機体1の旋回走行時の軌跡である旋回軌跡を推定する。旋回時越境判定部57dは、推定された旋回軌跡に基づいて実際の旋回走行で前記機体が前記境界線を越えるかどうかを判定する。
次に、図8のフローチャートを用いて、越境管理部57による越境防止の制御ルーチン(越境防止ルーチン)が説明される。このルーチンでは、まず、設定されている自動走行のための走行経路から旋回走行の開始が迫っているかどうかチェックされる(#01)。旋回走行の開始が迫っていなければ、ステップ#01が繰り返される。旋回開始の直前になれば(#01Yes分岐)、さらに機体1の少なくとも一部が、予め設定された越境防止エリア(この実施形態では、越境線より内部領域側に設定された越境防止線と畦などの境界物との間の領域、あるいは上述した外周領域でもよい)に入っているかどうかチェックされる(#02)。機体1が越境防止エリアの外であれば(#02「外」分岐)、ステップ#01に戻る。機体1が越境防止エリアの内であれば(#02「内」分岐)、以下の旋回走行前越境判定処理が行われる。
旋回走行前越境判定処理では、機体位置と旋回走行に用いられる操舵角とから、旋回走行時の旋回軌跡が旋回軌跡推定部57cによって推定される(#11)。次に、旋回時越境判定部57dによって、推定された旋回軌跡に基づいてこれからの実際の旋回走行で機体1が境界線を越えるかどうかを判定される(#12)。この越境判定の結果が「非越境」であれば(#12「非越境」分岐)、今回の旋回走行は許可され(#21)、旋回走行が開始される(#22)。
越境判定の結果が「越境」であれば(#12「越境」分岐)、越境防止制御部57bが越境を回避する第1の越境回避旋回走行を設定し(#13)、この設定された越境回避旋回走行での旋回軌跡が、旋回軌跡推定部57cによって推定される(#14)。推定された旋回軌跡に基づいてこの越境回避旋回走行で機体1が境界線を越えるかどうかを判定される(#12)。この越境判定の結果が「非越境」であれば(#12「非越境」分岐)、越境回避旋回走行は許可され(#21)、旋回走行が開始される(#22)。越境判定の結果が「越境」であれば(#12「越境」分岐)、ステップ#13に戻り、第2の越境回避旋回走行が設定される。後進を用いた越境回避走行(いわゆる切り返し走行)は、確実な越境回避となるが、時間ロスが生じる。前進だけの越境回避走行(最大操舵角や左右輪の速度差を用いた旋回走行)は確実な越境回避ではないが、時間ロスはすくない。このため、第1の越境回避旋回走行には前進だけの越境回避走行が用いられ、第2の越境回避旋回走行には後進を用いた越境回避走行が用いられる。
旋回走行が開始されると、旋回走行が終了したがどうか、運転制御状態検知部55からの情報に基づいてチェックされる(#23)。旋回走行が終了すると(#23Yes分岐)、ステップ#01に戻って、この越境防止ルーチンが繰り返される。旋回走行の途中であれば(#23No分岐)、以下の旋回中越境判定処理が行われる。
旋回中越境判定処理では、まず、現位置で機体1の少なくとも一部が越境しているかどうかを判定する実越境判定が行われる(#31)。実越境判定の結果が「非越境」であれば(#31「非越境」分岐)、ステップ#23に戻り、旋回走行が続行される。実越境判定の結果が「越境」であれば(#12「越境」分岐)、越境防止制御部57bが停車指令を走行制御部6に与え、機体1は停止する(#33)。次いで、越境防止制御部57bが越境線から後進を用いて離脱する越境回避旋回走行を設定し(#34)、この設定された越境回避旋回走行での旋回軌跡が、旋回軌跡推定部57cによって推定される(#35)。推定された旋回軌跡に基づいてこの越境回避旋回走行で機体1が境界線を越えるかどうかを判定される(#36)。この越境判定の結果が「非越境」であれば(#36「非越境」分岐)、この越境回避旋回走行が許可され、旋回走行が再開され(#37)、制御はステップ#23に戻る。
越境判定の結果が「越境」であれば(#12「越境」分岐)、汎用端末9を通じて、機体1が自動走行では境界線から離脱することができないという警告が報知される(#41)。同時に、自動運転が解除され(#42)、この越境防止ルーチンが終了する。その後は、越境防止制御をオフにして、手動走行で、慎重に機体1と境界物との干渉を避けながら機体1を境界線の外に離脱させる。
ステップ#02で、機体1の状態が旋回開始の直前で、かつ機体1が越境防止エリアに入っておれば、一旦、機体1を一時停止させてから次のステップに進んでもよい。
〔別実施の形態〕
(1)上記実施形態では、ステップ#13、#14、#15において、越境回避旋回走行として、前進だけの第1の越境回避旋回走行と後進を用いた第2の越境回避旋回走行とが順番で適用されたが、第2の越境回避旋回走行だけでもよい。
(2)上記実施形態では、圃場マップ作成部92や走行経路生成部93や境界線算出部94、走行軌跡生成部95が汎用端末9に構築されていたが、そのうちの少なくとも一部は、制御装置100に構築されてもよい。さらには、制御装置100との間でデータ交換可能な外部の管理コンピュータに構築されてもよい。
(3)自動走行制御部6Aによる旋回経路での操舵角は、生成された旋回経路に沿うような制御で行ってもよいし、あるいは、所定の旋回経路になるように予め決められた操舵角を用いるような制御で行ってもよい。
(4)上記実施形態では、農作業車として田植機が採用されたが、コンバインやトラクタ、直播機、噴霧(散布)用管理機などの農作業車であってもよい。
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
本発明は、自動走行可能な農作業車に適用可能である。
1 :機体
6 :走行制御部
8 :測位ユニット
8A :衛星測位モジュール
8B :慣性計測モジュール
9 :汎用端末
52 :機体位置算出部
53 :走行経路管理部
55 :運転制御状態検知部
57 :越境管理部
57a :境界線記憶部
57b :越境防止制御部
57c :旋回軌跡推定部
57d :旋回時越境判定部
94 :境界線算出部
95 :走行軌跡生成部
100 :制御装置

Claims (7)

  1. 境界物によって境界付けられた圃場面を走行する自動走行可能な農作業車であって、
    前記圃場面での機体の位置である機体位置を算出する機体位置算出部と、
    前記機体と前記境界物との接触を避けるために設定された境界線と前記機体位置とに基づいて、前記機体が前記境界線を越える走行を禁止する越境防止制御部と、
    前記機体の旋回走行時の軌跡である旋回軌跡を推定する旋回軌跡推定部と、
    推定された前記旋回軌跡に基づいて実際の旋回走行で前記機体が前記境界線を越えるかどうかを判定する旋回時越境判定部と、
    を備える農作業車。
  2. 前記旋回時越境判定部によって前記機体が前記境界線を越えると判定された場合、越境回避旋回走行が行われる請求項1に記載の農作業車。
  3. 前記越境回避旋回走行には、最大操舵角での旋回走行が含まれる請求項2に記載の農作業車。
  4. 前記越境回避旋回走行には、後進が含まれる請求項2または3に記載の農作業車。
  5. 前記圃場面は、前記境界線に沿った外周領域と前記外周領域の内側に位置する内部領域とに分けられ、前記内部領域での自動走行作業が、前記内部領域での直進走行と前記外周領域での前記旋回走行とを繰り返しによって行われ、前記直進走行から前記旋回走行への移行時に前記機体の一時停止が行われ、前記一時停止の間に、前記旋回軌跡を推定と旋回時越境判定とが行われる請求項1から4のいずれか一項に記載の農作業車。
  6. 前記旋回走行の途中で前記旋回時越境判定部によって前記機体が前記境界線を越えると判定された場合、前記機体が停止され、新たな回避旋回が模索される請求項1から5のいずれか一項に記載の農作業車。
  7. 前記機体位置算出部は衛星測位を用いて前記機体位置を算出し、前記境界線の位置は、前記圃場面の最外周に沿った周回走行時の前記機体位置に基づいて算出される請求項1から6のいずれか一項に記載の農作業車。
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