JP2021101744A - 組換えタンパク質の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】組換え細胞の細胞増殖を低減しつつ、組換えタンパク質の生産能を高める、組換えタンパク質の製造方法を提供すること。【解決手段】組換えタンパク質を発現する組換え細胞の細胞増殖を低減させる増殖低減工程と、組換え細胞を、細胞増殖が低減された状態で、タンパク質生産培地中で培養して組換えタンパク質を生産する生産工程と、を備え、増殖低減工程において、組換え細胞として、少なくとも一つの改変された形態形成制御因子を含む組換え細胞を用いることで、組換え細胞の細胞増殖を低減させる、組換えタンパク質の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、組換えタンパク質の製造方法に関する。本発明はまた、組換えタンパク質の細胞あたりの生産量を増加させる方法にも関する。
組換え細胞を用いた組換えタンパク質の生産において、細胞増殖の旺盛さが組換えタンパク質の生産能に必ずしも結びつかないことが知られている。例えば、特許文献1には、フィブロイン様タンパク質をコードする遺伝子を有するエシェリヒア・コリを培地で培養すること、フィブロイン様タンパク質をコードする遺伝子の発現を誘導すること、およびフィブロイン様タンパク質を採取することを含む、フィブロイン様タンパク質の製造法であって、前記発現誘導後の菌体増殖が低減されていることを特徴とする、方法が開示されている。
国際公開第2015/178466号
本発明は、組換え細胞の細胞増殖を低減しつつ、組換えタンパク質の生産能を高める、組換えタンパク質の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、組換えタンパク質の製造において、改変された形態形成制御因子を有する細胞を宿主として用いることで、組換え細胞の細胞増殖が低減されると共に、細胞あたりの組換えタンパク質の生産量が向上することを見出した。本発明は、この新規な知見に基づくものである。
本発明は、例えば、以下の各発明に関する。
[1]
組換えタンパク質を発現する組換え細胞の細胞増殖を低減させる増殖低減工程と、
上記組換え細胞を、細胞増殖が低減された状態で、タンパク質生産培地中で培養して上記組換えタンパク質を生産する生産工程と、を備え、
上記増殖低減工程において、上記組換え細胞として、少なくとも一つの改変された形態形成制御因子を含む組換え細胞を用いることで、上記組換え細胞の細胞増殖を低減させる、組換えタンパク質の製造方法。
[2]
上記改変された形態形成制御因子が、変異型細胞骨格タンパク質である、[1]に記載の製造方法。
[3]
上記変異型細胞骨格タンパク質が、変異型MreBである、[2]に記載の製造方法。
[4]
上記変異型形態形成制御因子が、MreBと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、[3]に記載の製造方法。
[5]
上記変異型形態形成制御因子が、MreBの第53番目のアミノ酸残基アラニンに変異を有するものである、[3]又は[4]に記載の製造方法。
[6]
上記変異型形態形成制御因子が、MreBの第53番目のアミノ酸残基アラニンがスレオニンに置換された変異を有するものである、[3]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]
上記組換え細胞は、細胞骨格タンパク質の機能を制御するタンパク質の発現カセットが導入されたものである、[1]に記載の製造方法。
[8]
上記細胞骨格タンパク質の機能を制御するタンパク質が、sulAである、[7]に記載の製造方法。
[9]
上記タンパク質生産培地が、天然由来成分を含む、[1]〜[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10]
上記組換えタンパク質の疎水度が−1.0以上である、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の製造方法。
[11]
上記組換えタンパク質が構造タンパク質である、[1]〜[10]のいずれかに記載の製造方法。
[12]
上記組換えタンパク質がフィブロインである、[1]〜[11]のいずれかに記載の製造方法。
[13]
上記組換えタンパク質がクモ糸フィブロインである、[1]〜[12]のいずれかに記載の製造方法。
[14]
上記組換え細胞が、桿菌である、[1]〜[13]のいずれかに記載の製造方法。
[15]
上記組換え細胞が、エシェリヒア属に属する微生物である、[1]〜[14]のいずれかに記載の製造方法。
[16]
組換えタンパク質の細胞あたりの生産量を増加させる方法であって、
組換えタンパク質を発現する組換え細胞の細胞増殖を低減させる増殖低減工程と、
上記組換え細胞を、細胞増殖が低減された状態で、タンパク質生産培地中で培養して上記組換えタンパク質を生産する生産工程と、を含み、
上記増殖低減工程において、上記組換え細胞として、少なくとも一つの改変された形態形成制御因子を含む組換え細胞を用いることで、上記組換え細胞の細胞増殖を低減させる、方法。
[17]
上記改変された形態形成制御因子が、変異型細胞骨格タンパク質である、[16]に記載の方法。
[18]
上記組換え細胞は、細胞骨格タンパク質の機能を制御するタンパク質の発現カセットが導入されたものである、[16]に記載の方法。
本発明によれば、組換え細胞の細胞増殖を低減しつつ、組換えタンパク質の生産能を高める、組換えタンパク質の製造方法を提供することが可能となる。
MreB変異株及び野生型MreB株の平均粒子径を培養時間に対してプロットしたグラフである。 生産培養開始後16時間におけるMreB変異株及び野生型MreB株の細胞自体の重量(乾燥菌体重量から生産された組換えタンパク質の重量を除いたもの)を示すグラフである。 MreB変異株及び野生型MreB株の生産培養開始後16時間における細胞の増殖を示すグラフである。 MreB変異株及び野生型MreB株の改変フィブロイン生産量(細胞あたりの生産量)を示すグラフである。 MreB変異株及び野生型MreB株の改変フィブロイン生産量(培地あたりの生産量)を示すグラフである。 sulA誘導発現株及びControl株の平均粒子径を培養時間に対してプロットしたグラフである。 sulA誘導発現株及びControl株の細胞増殖(細胞濃度)を培養時間に対してプロットしたグラフである。 sulA誘導発現株及びControl株の生産培養開始後24時間における細胞数を示すグラフである。 sulA誘導発現株及びControl株の改変フィブロイン生産量(細胞あたりの生産量)を示すグラフである。 sulA誘導発現株及びControl株の改変フィブロイン生産量(培地あたりの生産量)を示すグラフである。 HK022ファージが溶原化する機構を利用して、改変フィブロイン発現カセットを宿主ゲノムDNA中に組み込む方法の概要を示す概略図である。 φ80ファージが溶原化する機構を利用して、改変フィブロイン発現カセットを宿主ゲノムDNA中に組み込む方法の概要を示す概略図である。 λファージが有する相同組換えシステムを利用して、改変フィブロイン発現カセットを宿主ゲノムDNA中に組み込む方法の概要を示す概略図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
〔組換えタンパク質の製造方法〕
本実施形態に係る組換えタンパク質の製造方法は、組換えタンパク質を発現する組換え細胞の細胞増殖を低減させる増殖低減工程と、組換え細胞を、細胞増殖が低減された状態で、タンパク質生産培地中で培養して組換えタンパク質を生産する生産工程と、を少なくとも備える。また、本実施形態に係る組換えタンパク質の製造方法は、増殖低減工程において、組換え細胞として、少なくとも一つの改変された形態形成制御因子を含む組換え細胞を用いることで、組換え細胞の細胞増殖を低減させるものである。
(形態形成制御因子)
本明細書において、「形態形成制御因子」とは、細胞の形態形成又は形態制御に関連するタンパク質を意味する。細胞の形態には、例えば、細胞の剛性、形状、サイズが含まれる。形態形成制御因子としては、例えば、細胞伸長、細胞幅及び細胞極性の形成又は制御に関連するタンパク質が挙げられる。形態形成制御因子の具体例としては、細胞骨格タンパク質、細胞骨格タンパク質の機能を制御するタンパク質及びペプチドグリカン合成酵素等が挙げられる。
原核細胞において、例えば、大腸菌など多くの細菌は、細胞がペプチドグリカン(短いペプチドによって架橋された糖鎖)により覆われている。これらの細菌では、細胞の伸長及び分裂にあたって、すでに存在するペプチドグリカンの分解、及び新たに合成されたペプチドグリカンの挿入が厳密に制御されることによって、細胞が破裂することなく、その形態を維持することが可能となっている。細胞骨格タンパク質の機能の一つは、ペプチドグリカン合成酵素の細胞内局在を制御することであると考えられる。すなわち、細胞の形態を最終的に決めるのはペリプラズム領域にあるペプチドグリカンであるが、それを合成する酵素を制御するのは細胞質内にある細胞骨格タンパク質である。
細菌の細胞骨格タンパク質としては、例えば、FtsZチューブリン及びMreBアクチンを挙げることができる。ペプチドグリカン合成酵素としては、例えば、PBP3(FtsI)及びPBP2を挙げることができる。FtsZチューブリンは、分裂関連タンパク質の中で一番始めに分裂面に局在し、分裂環(Zリング)を形成する。さらに十数種類の関連タンパク質を次々とZリングへと集合させ、PBP3とdivisomeと呼ばれる超分子複合体を形成する。MreBは、細胞伸長に必須のPBP2などとelongasomeと呼ばれる複合体を形成している。他に、elongasomeの構成因子としては、RodZ、RodA、MreC、及びMreD等が挙げられる。
真核細胞の細胞骨格タンパク質としては、例えば、クレセンチン、細胞骨格のParMとSopA等が挙げられる。
(改変された形態形成制御因子)
本明細書において、「改変された形態形成制御因子」とは、置換、欠失、挿入、付加または突然変異若しくは人為的発現調節によって改変された形態形成制御因子を意味する。人為的発現調節とは、核酸もしくは遺伝子の発現を誘導、低下または抑制して、蛋白質またはポリペプチドの生成を、それぞれ誘導、低下または抑制することを意味する。形態形成制御因子の発現量は、形態形成制御因子が発現カセット中に組み込まれて細胞内に導入することにより改変することができる。さらに、形態形成制御因子の発現量は、形態形成制御因子の配列にエンハンサーまたはその他の調節配列等の追加により改変することができる。別の改変を含んでも良い。または前記の組合せでも良い。
(変異型形態形成制御因子)
本明細書において、「変異型形態形成制御因子」とは、野生型の形態形成制御因子のアミノ酸配列と比較して、1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列を有する形態形成制御因子を意味する。なお、変異型形態形成制御因子には、野生型の形態形成制御因子が完全に欠失している(例えば、当該形態形成制御因子をコードする遺伝子が染色体DNAから脱落している、当該形態形成制御因子をコードする遺伝子が発現しなくなっている等によりタンパク質として発現していない)ことも含む。変異型形態形成制御因子は、野生型の形態形成制御因子のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなることが好ましく、95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなることがより好ましく、99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなることが更に好ましい。変異型形態形成制御因子は、野生型の形態形成制御因子が有する生物活性の一部又は全部が失われているものであってよい。
変異型形態形成制御因子を有する細胞は、例えば、自然界に存在する細胞のスクリーニングによる方法、A22(S−(3,4−Dichlorobenzyl)−isothiourea)等の薬剤処理及び/又は紫外線照射等の突然変異を誘発したうえでスクリーニングする手法、遺伝子工学的手法により変異型形態形成制御因子を有する細胞を取得する方法により得ることができる。
遺伝子工学的手法を利用した方法としては、例えば、ランダムに変異を導入する方法、部位特異的に変異を導入する方法がある。前者のランダムに変異を導入する方法には、例えば、ランダム変異導入用キット(BD Diversify PCR Random Mutagenesis(CLONTECH社製))を用いてもよい。また、後者の部位特異的に変異を導入する方法には、例えば、部位特異的変異導入用キット(Mutan−K(タカラバイオ社製))を用いてもよい。
これらの中でも、遺伝子工学的手法を利用した方法で変異型形態形成制御因子を有する細胞を取得するのが好ましいが、この方法に限定されるわけではない。
変異型形態形成制御因子としては、変異型細胞骨格タンパク質であることが好ましく、変異型MreBであることがより好ましい。変異型MreBは、野生型のMreBのアミノ酸配列(配列番号1)と比較して、1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列を有する。
変異型MreBとしては、例えば、野生型のMreB(配列番号1)の第14番目アミノ酸残基S、第20番目アミノ酸残基A、第23番目アミノ酸残基L、第53番目アミノ酸残基A、第74番目アミノ酸残基R、第84番目アミノ酸残基F、第143番目アミノ酸残基E、第158番目位アミノ酸残基T、第185番目アミノ酸残基S、第207番目アミノ酸残基G、第209番目アミノ酸残基L、第276番目アミノ酸残基E及び第322番目アミノ酸残基L等の1又は複数のアミノ酸残基に変異を有するものが挙げられる。変異型MreBとして好ましくは、野生型のMreB(配列番号1)の第53番目アミノ酸残基A、第74番目アミノ酸残基R、第84番目アミノ酸残基F及び第185番目アミノ酸残基Sから選ばれる1又は複数のアミノ酸残基に変異を有するものが挙げられる。
変異型MreBのより具体的な例としては、例えば、野生型のMreB(配列番号1)に対して、S14A、A20V、L23R、A53T、R74C、R74L、F84V、E143A、A158T、S185F、G207C、L209R、E276D及びL322Q等の1又は複数のアミノ酸残基が置換されたことに相当するアミノ酸配列を有するものが挙げられる。変異型MreBとしては、野生型のMreB(配列番号1)に対して、E143A、R74L、A53T、S185F、F84V、より好ましくは、R74L、A53T、S185F、F84V、G207C及びL208Rから選択される1又は複数のアミノ酸残基が置換されたことに相当するアミノ酸配列を有するものが好ましく、A53T、S185F及びF84Vから選択される1又は複数のアミノ酸残基が置換されたことに相当するアミノ酸配列を有するものがより好ましい。
(細胞骨格タンパク質の機能を制御するタンパク質)
形態形成制御因子である細胞骨格タンパク質の機能を制御するタンパク質としては、例えば、原核生物においては、sulA、yeeV、slmA及びMinファミリータンパク質(MinC、D、及びE)が挙げられる。これらに加え、Bacillus属等の一部の微生物では、ezrA及びNocが挙げられる。
sulAは、SOSシステムの構成因子であり、FtsZと相互作用することでFtsZの重合を阻害する。sulAが細胞内に蓄積すると、その細胞は隔壁がなく長い糸状細胞になる(Journal of bacteriology,1993年,175:1118−1125.)。野生型のsulAは、配列番号6に示すアミノ酸配列を有し、これをコードするsulA遺伝子は、例えば配列番号7に示す核酸配列を有する。本実施形態における形態形成制御因子sulAをコードする核酸配列は、配列番号7に記載の核酸配列と少なくとも90%、好ましくは93%、95%、98%又は99%の配列同一性を有する。
yeeV(CbtA)は、タイプIVのtoxin−antitoxin(TA)システムのToxinである。yeeVは、FtsZ及びMreBのそれぞれと相互作用し、阻害的に働く。FtsZにおいては、そのGTP依存的な重合を阻害し、MreBにおいては、そのATP依存的な重合を阻害する。FtsZ及びMreBは、細胞の大きさ及び形態を制御するため、それらを阻害するyeeVを過剰に発現すると、細胞が大きくなることが知られている(Molecular microbiology,2011年,79:109−118、及び、PLoS genetics,2017年,13:e1007007.)。
(改変された形態形成制御因子を含む組換え細胞)
改変された形態形成制御因子を含む組換え細胞には、野生型の形態形成制御因子を遺伝子工学的手法等の人為的な操作を用いて改変された形態制御因子を細胞内に有するもの、自然界における突然変異を経て野生型とは異なる形態形成制御因子を細胞内に有するもの、形態形成制御因子が発現カセット中に組み込まれて細胞内に導入されて形態形成制御因子の発現量が改変されたもの等が含まれる。
(組換え細胞)
本実施形態に係る組換え細胞は、組換えタンパク質を発現するものである。本実施形態に係る組換え細胞は、例えば、組換えタンパク質(以下、「目的タンパク質」ともいう。)をコードする核酸配列と、当該核酸配列に作動可能に連結された1又は複数の調節配列とを含む(以下、「目的タンパク質発現カセット」ということもある。)ものであってよい。本実施形態に係る組換え細胞は、発現カセットを1つ含むものであってもよく、複数(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ)含むものであってもよい。
調節配列は、宿主における組換えタンパク質(目的タンパク質)の発現を制御する配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合配列、転写終結配列等)であり、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。調節配列は、外来性のものであってもよく、内在性のもの(宿主由来の調節配列)であってもよい。
目的タンパク質発現カセットを含む組換え細胞は、例えば、少なくとも目的タンパク質をコードする核酸配列を含む発現ベクターで宿主細胞を形質転換する方法により得ることができる。当該発現ベクターは、目的タンパク質発現カセットを含むものであってもよい。本実施形態に係る組換え細胞は、目的タンパク質発現カセットをゲノムDNA外に有するものであってもよく、目的タンパク質発現カセットがゲノムDNA中に組み込まれたものであってもよいが、目的タンパク質発現カセットがゲノムDNA中に組み込まれたものであるのが好ましい。
宿主細胞を形質転換する方法としては、公知の方法を使用することができ、例えば、プラスミドベクターを用いて宿主細胞を形質転換することが挙げられる。
目的タンパク質発現カセットをゲノムDNA中へ組み込む方法としては、公知の方法を使用することができ、例えば、λファージの2重鎖切断修復における組換え機構を応用したλred法、Red/ET相同組換え法、pUT−mini Tn5を用いたトランスポゾン活性を利用した転移法が挙げられる。例えば、バイオメダル社の「トランスポゾンによる遺伝子導入キット:pUTmini−Tn5 Kit」等を用い、キットに記載の方法に準じて、目的タンパク質発現カセットを宿主細胞のゲノムDNA中に組み込むことができる。このとき、少なくとも目的タンパク質をコードする核酸配列を含むDNA断片を宿主細胞のゲノムDNA中の1又は複数の調節配列と作動可能に連結するように組み換えることで、目的タンパク質発現カセットを宿主細胞のゲノムDNA中に組み込んでもよい。
宿主細胞を形質転換する方法としては、λファージのインテグラーゼにより宿主細胞のゲノムDNA中のアタッチメント・サイト(attB部位)とベクター上のアタッチメント・サイト(attP部位)を介して目的タンパク質発現カセットを宿主細胞のゲノムDNA中に組み込む方法、及び相同組換えに不可欠な3つの遺伝子エキソ(exo)、ベータ(bet)、ガンマ(gam)遺伝子を有するヘルパープラスミドpKD46を用いたレッド−リコンビナーゼ・システムを使用して目的タンパク質発現カセットを宿主細胞のゲノムDNA中に組み込む方法が好ましい。
宿主細胞として、細菌等の原核生物の細胞、並びに酵母細胞、糸状真菌細胞、昆虫細胞、動物細胞、及び植物細胞等の真核生物の細胞のいずれも用いることができる。ただし、増殖が速くかつ培養コストを削減する観点から、宿主細胞は細菌等の原核細胞の細胞であることが好ましい。宿主細胞は、球菌、らせん菌、桿菌のいずれであってもよいが、桿菌であることが好ましい。
細菌等の原核生物の宿主細胞としては、エシェリヒア属、ブレビバチルス属、セラチア属、バチルス属、ミクロバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属及びシュードモナス属等に属する微生物を挙げることができる。原核生物の好ましい例としては、例えば、大腸菌、バチルス・ズブチリス、シュードモナス、コリネバクテリウム、及びラクトコッカス等を挙げることができる。宿主細胞は、エシェリヒア属に属する微生物、特に大腸菌(Escherichia coli)であることが好ましい。
エシェリヒア属に属する微生物として、例えば、エシェリヒア・コリ BL21(ノバジェン社)、エシェリヒア・コリ BL21(DE3)(ライフテクノロジーズ社)、エシェリヒア・コリ BLR(DE3)(メルクミリポア社)、エシェリヒア・コリ DH1、エシェリヒア・コリ GI698、エシェリヒア・コリ HB101、エシェリヒア・コリ JM109、エシェリヒア・コリ K5(ATCC 23506)、エシェリヒア・コリ KY3276、エシェリヒア・コリ MC1000、エシェリヒア・コリ MG1655(ATCC 47076)、エシェリヒア・コリ No.49、エシェリヒア・コリ Rosetta(DE3)(ノバジェン社)、エシェリヒア・コリ TB1、エシェリヒア・コリ Tuner(ノバジェン社)、エシェリヒア・コリ Tuner(DE3)(ノバジェン社)、エシェリヒア・コリ W1485、エシェリヒア・コリ W3110(ATCC 27325)、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)XL1−Blue、エシェリヒア・コリ XL2−Blue等を挙げることができる。宿主細胞は、大腸菌(Escherichia coli)であることが好ましい。
上記宿主細胞を形質転換する方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができる。例えば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69,2110(1972)〕、プロトプラスト法(特開昭63−248394号公報)、又はGene,17,107(1982)やMolecular & General Genetics,168,111(1979)に記載の方法等を挙げることができる。
ブレビバチルス属に属する微生物の形質転換は、例えば、Takahashiらの方法(J.Bacteriol.,1983,156:1130−1134)や、Takagiらの方法(Agric.Biol.Chem.,1989,53:3099−3100)、又はOkamotoらの方法(Biosci.Biotechnol.Biochem.,1997,61:202−203)により実施することができる。
形質転換に使用するベクター(以下、単に「ベクター」という。)の種類は、プラスミドベクター、ウイルスベクター、コスミドベクター、フォスミドベクター、人工染色体ベクター等、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。ベクターとしては、例えば、pBTrp2、pBTac1、pBTac2(いずれもベーリンガーマンハイム社より市販)、pKK233−2(Pharmacia社製)、pSE280(Invitrogen社製)、pGEMEX−1(Promega社製)、pQE−8(QIAGEN社製)、pKYP10(特開昭58−110600号公報)、pKYP200〔Agric.Biol.Chem.,48,669(1984)〕、pLSA1〔Agric.Biol.Chem.,53,277(1989)〕、pGEL1〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82,4306(1985)〕、pBluescript II SK(−)(Stratagene社製)、pTrs30〔Escherichiacoli JM109/pTrS30(FERM BP−5407)より調製〕、pTrs32〔Escherichia coli JM109/pTrS32(FERM BP−5408)より調製〕、pGHA2〔Escherichia coli IGHA2(FERM B−400)より調製、特開昭60−221091号公報〕、pGKA2〔Escherichia coli IGKA2(FERM BP−6798)より調製、特開昭60−221091号公報〕、pTerm2(米国特許4686191号、米国特許4939094号、米国特許5160735号)、pSupex、pUB110、pTP5、pC194、pEG400〔J.Bacteriol.,172,2392(1990)〕、pGEX(Pharmacia社製)、pETシステム(Novagen社製)等を挙げることができる。
宿主細胞として大腸菌を用いる場合は、pUC18、pBluescriptII、pSupex、pET22b、pCold等を好適なベクターとして挙げることができる。
ブレビバチルス属に属する微生物に好適なベクターの具体例として、枯草菌ベクターとして公知であるpUB110、又はpHY500(特開平2−31682号公報)、pNY700(特開平4−278091号公報)、pHY4831(J.Bacteriol.,1987,1239−1245)、pNU200(鵜高重三、日本農芸化学会誌1987,61:669−676)、pNU100(Appl.Microbiol.Biotechnol.,1989,30:75−80)、pNU211(J.Biochem.,1992,112:488−491)、pNU211R2L5(特開平7−170984号公報)、pNH301(Appl.Environ.Microbiol.,1992,58:525−531)、pNH326、pNH400(J.Bacteriol.,1995,177:745−749)、pHT210(特開平6−133782号公報)、pHT110R2L5(Appl.Microbiol.Biotechnol.,1994,42:358−363)、又は大腸菌とブレビバチルス属に属する微生物とのシャトルベクターであるpNCO2(特開2002−238569号公報)等を挙げることができる。
プロモーターとしては、宿主細胞中で機能するものであれば制限されない。例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーター、T7プロモーター等の大腸菌又はファージ等に由来するプロモーターを挙げることができる。またPtrpを2つ直列させたプロモーター(Ptrp×2)、tacプロモーター、lacT7プロモーター、let Iプロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。
リボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ(Shine−Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。転写終結配列は必ずしも必要ではないが、目的タンパク質をコードする遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。
真核生物の宿主細胞としては、例えば、酵母及び糸状真菌(カビ等)を挙げることができる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属、クリベロマイセス(Kluyveromyces)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、シワニオミセス(Schwanniomyces)属、ピキア(Pichia)属、キャンディダ(Candida)属、ヤロウィア属及びハンゼヌラ属等に属する酵母を挙げることができる。
酵母を宿主細胞として用いる場合のベクターは通常、複製起点(宿主細胞における増幅が必要である場合)及び大腸菌中でのベクターの増殖のための選抜マーカー、酵母における組換えタンパク質発現のための誘導性プロモーター及びターミネータ、並びに酵母のための選抜マーカーを含むことが好ましい。
ベクターが非組込みベクターの場合、さらに自己複製配列(ARS)を含むことが好ましい。これにより細胞内におけるベクターの安定性を向上させることができる(Myers、A.M.、et al.(1986)Gene 45:299−310)。
酵母を宿主細胞として用いる場合のベクターとしては、例えば、YEP13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)、YCp50(ATCC37419)、YIp、pHS19、pHS15、pA0804、pHIL3Ol、pHIL−S1、pPIC9K、pPICZα、pGAPZα、pPICZ B等を挙げることができる。
酵母を宿主細胞とした場合のプロモーターの具体例として、ガラクトース誘導性のgal 1プロモーター及びgal 10プロモーター;銅誘導性のCUP 1プロモーター;チアミン誘導性のnmt1プロモーター;並びにメタノール誘導性のAOX1プロモーター、AOX2プロモーター、DHASプロモーター、DASプロモーター、FDHプロモーター、FMDHプロモーター、MOXプロモーター、ZZA1、PEX5−、PEX8−及びPEX14−プロモーター等を挙げることができる。
酵母へのベクターの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法(Methods Enzymol.,194,182(1990))、スフェロプラスト法(Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,81,4889(1984))、酢酸リチウム法(J.Bacteriol.,153,163(1983))、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1929(1978)記載の方法等を挙げることができる。
糸状真菌としては、例えば、アクレモニウム(Acremonium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ウスチラーゴ(Ustilago)属、トリコデルマ(Trichoderma)属、ノイロスポラ(Neurospora)属、フザリウム(Fusarium)属、フミコーラ(Humicola)属、ペニシリウム(Penicillium)属、マイセリオフトラ(Myceliophtora)属、ボトリティス(Botryts)属、マグナポルサ(Magnaporthe)属、ムコア(Mucor)属、メタリチウム(Metarhizium)属、モナスカス(Monascus)属、リゾプス(Rhizopus)属、及びリゾムコア属に属する菌等を挙げることができる。
糸状真菌を宿主細胞とした場合のプロモーターの具体例として、サリチル酸誘導性PR1aプロモーター;シクロヘキシミド誘導性Placcプロモーター;及びキナ酸誘導性Pqa−2プロモーター等を挙げることができる。
糸状真菌へのベクターの導入は,従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、Cohenらの方法(塩化カルシウム法)[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69:2110(1972)]、プロトプラスト法[Mol.Gen.Genet.,168:111(1979)]、コンピテント法[J.Mol.Biol.,56:209(1971)]、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
本実施形態に係る組換え細胞の作製にあたり、目的タンパク質発現カセットの組み込み、及び形態形成制御因子への変異導入の順序は問わない。すなわち、改変された形態形成制御因子を有する宿主細胞に目的タンパク質発現カセットを組み込んでもよく、目的タンパク質発現カセットを有する宿主細胞に対して改変された形態形成制御因子を導入してもよい。
(目的タンパク質)
本実施形態に係る組換えタンパク質の製造方法により生産する目的タンパク質は、特に制限されず、任意のタンパク質を使用することができる。ここで、目的タンパク質とは、本実施形態に係る製造方法により生産した後、回収等して利用することを目的とするタンパク質のことを意味する。目的タンパク質としては、工業規模での製造が好ましい任意のタンパク質を挙げることができ、例えば、工業用に利用できるタンパク質、医療用に利用できるタンパク質、及び構造タンパク質等を挙げることができる。工業用又は医療用に利用できるタンパク質の具体例としては、酵素、制御タンパク質、受容体、ペプチドホルモン、サイトカイン、膜又は輸送タンパク質、予防接種に使用する抗原、ワクチン、抗原結合タンパク質、免疫刺激タンパク質、アレルゲン、及び完全長抗体又は抗体フラグメント若しくは誘導体等を挙げることができる。構造タンパク質の具体例としては、フィブロイン(例えば、スパイダーシルク、カイコシルク等)、ケラチン、コラ−ゲン、エラスチン、レシリン、及びこれらタンパク質の断片、並びにこれら由来のタンパク質等を挙げることができる。
本明細書においてフィブロインは、天然由来のフィブロインと改変フィブロインとを含む。本明細書において「天然由来のフィブロイン」とは、天然由来のフィブロインと同一のアミノ酸配列を有するフィブロインを意味し、「改変フィブロイン」とは、天然由来のフィブロインとは異なるアミノ酸配列を有するフィブロインを意味する。
フィブロインは、クモ糸フィブロインであってよい。「クモ糸フィブロイン」には、天然クモ糸フィブロイン、及び天然クモ糸フィブロインに由来する改変フィブロインが含まれる。天然クモ糸フィブロインとしては、例えば、クモ類が産生するスパイダーシルクタンパク質が挙げられる。
フィブロインは、例えば、式1:[(A)モチーフ−REP]、又は式2:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むタンパク質であってもよい。本実施形態に係るフィブロインは、ドメイン配列のN末端側及びC末端側のいずれか一方又は両方に更にアミノ酸配列(N末端配列及びC末端配列)が付加されていてもよい。N末端配列及びC末端配列は、これに限定されるものではないが、典型的には、フィブロインに特徴的なアミノ酸モチーフの反復を有さない領域であり、100残基程度のアミノ酸からなる。
本明細書において「ドメイン配列」とは、フィブロイン特有の結晶領域(典型的には、アミノ酸配列の(A)モチーフに相当する。)と非晶領域(典型的には、アミノ酸配列のREPに相当する。)を生じるアミノ酸配列であり、式1:[(A)モチーフ−REP]、又は式2:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるアミノ酸配列を意味する。ここで、(A)モチーフは、アラニン残基を主とするアミノ酸配列を示し、アミノ酸残基数は2〜27である。(A)モチーフのアミノ酸残基数は、2〜20、4〜27、4〜20、8〜20、10〜20、4〜16、8〜16、又は10〜16の整数であってよい。また、(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数の割合は40%以上であればよく、60%以上、70%以上、80%以上、83%以上、85%以上、86%以上、90%以上、95%以上、又は100%(アラニン残基のみで構成されることを意味する。)であってもよい。ドメイン配列中に複数存在する(A)モチーフは、少なくとも7つがアラニン残基のみで構成されてもよい。REPは2〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示す。REPは、10〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列であってもよい。mは2〜300の整数を示し、10〜300の整数であってもよい。複数存在する(A)モチーフは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。複数存在するREPは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。
天然由来のフィブロインとしては、例えば、式1:[(A)モチーフ−REP]、又は式2:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むタンパク質を挙げることができる。天然由来のフィブロインの具体例としては、例えば、昆虫又はクモ類が産生するフィブロインが挙げられる。
昆虫が産生するフィブロインとしては、例えば、ボンビックス・モリ(Bombyx mori)、クワコ(Bombyx mandarina)、天蚕(Antheraea yamamai)、柞蚕(Anteraea pernyi)、楓蚕(Eriogyna pyretorum)、蓖蚕(Pilosamia Cynthia ricini)、樗蚕(Samia cynthia)、栗虫(Caligura japonica)、チュッサー蚕(Antheraea mylitta)、ムガ蚕(Antheraea assama)等のカイコが産生する絹タンパク質、及びスズメバチ(Vespa simillima xanthoptera)の幼虫が吐出するホーネットシルクタンパク質が挙げられる。
昆虫が産生するフィブロインのより具体的な例としては、例えば、カイコ・フィブロインL鎖(GenBankアクセッション番号M76430(塩基配列)、及びAAA27840.1(アミノ酸配列))が挙げられる。
クモ類が産生するフィブロインとしては、例えば、オニグモ、ニワオニグモ、アカオニグモ、アオオニグモ及びマメオニグモ等のオニグモ属(Araneus属)に属するクモ、ヤマシロオニグモ、イエオニグモ、ドヨウオニグモ及びサツマノミダマシ等のヒメオニグモ属(Neoscona属)に属するクモ、コオニグモモドキ等のコオニグモモドキ属(Pronus属)に属するクモ、トリノフンダマシ及びオオトリノフンダマシ等のトリノフンダマシ属(Cyrtarachne属)に属するクモ、トゲグモ及びチブサトゲグモ等のトゲグモ属(Gasteracantha属)に属するクモ、マメイタイセキグモ及びムツトゲイセキグモ等のイセキグモ属(Ordgarius属)に属するクモ、コガネグモ、コガタコガネグモ及びナガコガネグモ等のコガネグモ属(Argiope属)に属するクモ、キジロオヒキグモ等のオヒキグモ属(Arachnura属)に属するクモ、ハツリグモ等のハツリグモ属(Acusilas属)に属するクモ、スズミグモ、キヌアミグモ及びハラビロスズミグモ等のスズミグモ属(Cytophora属)に属するクモ、ゲホウグモ等のゲホウグモ属(Poltys属)に属するクモ、ゴミグモ、ヨツデゴミグモ、マルゴミグモ及びカラスゴミグモ等のゴミグモ属(Cyclosa属)に属するクモ、及びヤマトカナエグモ等のカナエグモ属(Chorizopes属)に属するクモが産生するスパイダーシルクタンパク質、並びにアシナガグモ、ヤサガタアシナガグモ、ハラビロアシダカグモ及びウロコアシナガグモ等のアシナガグモ属(Tetragnatha属)に属するクモ、オオシロカネグモ、チュウガタシロカネグモ及びコシロカネグモ等のシロカネグモ属(Leucauge属)に属するクモ、ジョロウグモ及びオオジョロウグモ等のジョロウグモ属(Nephila属)に属するクモ、キンヨウグモ等のアズミグモ属(Menosira属)に属するクモ、ヒメアシナガグモ等のヒメアシナガグモ属(Dyschiriognatha属)に属するクモ、クロゴケグモ、セアカゴケグモ、ハイイロゴケグモ及びジュウサンボシゴケグモ等のゴケグモ属(Latrodectus属)に属するクモ、及びユープロステノプス属(Euprosthenops属)に属するクモ等のアシナガグモ科(Tetragnathidae科)に属するクモが産生するスパイダーシルクタンパク質が挙げられる。スパイダーシルクタンパク質としては、例えば、MaSp(MaSp1及びMaSp2)、ADF(ADF3及びADF4)等の牽引糸タンパク質、MiSp(MiSp1及びMiSp2)等が挙げられる。
ケラチン由来のタンパク質として、例えば、カプラ・ヒルクス(Capra hircus)のタイプIケラチン等を挙げることができる。
コラーゲン由来のタンパク質としては、例えば、式3:[REP2]で表されるドメイン配列を含むタンパク質(ここで、式3中、pは5〜300の整数を示す。REP2は、Gly−X−Yから構成されるアミノ酸配列を示し、X及びYはGly以外の任意のアミノ酸残基を示す。複数存在するREP2は、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。)を挙げることができる。
エラスチン由来のタンパク質としては、例えば、NCBIのGenBankのアクセッション番号AAC98395(ヒト)、I47076(ヒツジ)、NP786966(ウシ)等のアミノ酸配列を有するタンパク質を挙げることができる。
レシリン由来のタンパク質としては、例えば、式4:[REP3]で表されるドメイン配列を含むタンパク質(ここで、式4中、qは4〜300の整数を示す。REP3はSer−J−J−Tyr−Gly−U−Proから構成されるアミノ酸配列を示す。Jは任意アミノ酸残基を示し、特にAsp、Ser及びThrからなる群から選ばれるアミノ酸残基であることが好ましい。Uは任意のアミノ酸残基を示し、特にPro、Ala、Thr及びSerからなる群から選ばれるアミノ酸残基であることが好ましい。複数存在するREP4は、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。)を挙げることができる。
目的タンパク質は、親水性タンパク質であってもよく、疎水性タンパク質であってもよい。目的タンパク質としては、目的タンパク質を構成する全てのアミノ酸残基の疎水性指標(ハイドロパシー・インデックス、HI)の総和を求め、次にその総和を全アミノ酸残基数で除した値(平均HI、以下「疎水度」とも表す。)が−1.0以上であるものが好ましい。アミノ酸残基の疎水性指標については、公知の指標(Hydropathy index:Kyte J,&Doolittle R(1982)“A simple method for displaying the hydropathic character of a protein”,J.Mol.Biol.,157,pp.105−132)を使用する。具体的には、各アミノ酸の疎水性指標は、下記表1に示すとおりである。
Figure 2021101744
本発明の一実施形態において、目的タンパク質の疎水度は、−0.9以上、−0.8以上、−0.7以上、−0.6以上、−0.5以上、−0.4以上、−0.3以上、−0.2以上、−0.1以上、0以上、0.1以上、0.2以上、0.3以上、又は0.4以上であってよく、また、目的タンパク質の疎水度は、1.0以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、又は0.5以下であってよい。
目的タンパク質の分子量は、特に限定されないが、例えば、10kDa以上700kDa以下であってよい。目的タンパク質の分子量は、例えば、20kDa以上、30kDa以上、40kDa以上、50kDa以上、60kDa以上、70kDa以上、80kDa以上、90kDa以上、又は100kDa以上であってよく、例えば、600kDa以下、500kDa以下、400kDa以下、300kDa以下、又は200kDa以下であってよい。一般にタンパク質の分子量が大きくなる程凝集しやすくなる傾向にある。
(増殖低減工程)
増殖低減工程は、組換えタンパク質を発現する組換え細胞の細胞増殖を低減させる工程である。本実施形態に係る組換えタンパク質の製造方法では、組換え細胞として、上述した組換え細胞(少なくとも一つの改変された形態形成制御因子を含む組換え細胞)を用いることで、組換え細胞の細胞増殖を低減させる。
増殖低減工程では、少なくとも一つの改変された形態形成制御因子を含む組換え細胞を、後述するタンパク質生産培地で培養することにより、当該組換え細胞の細胞増殖を低減させることができる。
(生産工程)
生産工程は、組換え細胞を、細胞増殖が低減された状態で、タンパク質生産培地中で培養して組換えタンパク質を生産する工程である。増殖低減工程と生産工程は、同時に実施することもできる。
組換え細胞を培養するためのタンパク質生産培地は特に限定されず、組換え細胞の種類に応じて、公知の天然培地又は合成培地から選択することができる。タンパク質生産培地としては、例えば、炭素源、窒素源、リン酸源、硫黄源、ビタミン類、ミネラル、栄養要求性により要求される栄養素、及びその他の各種有機成分や無機成分から選択される成分を必要に応じて含有する液体培地を用いることができる。培地成分の種類や濃度は、当業者が適宜設定してよい。
タンパク質生産培地は、天然由来成分を含むことが好ましい。天然由来成分は、天然物(例えば、酵母)そのもの、天然物からの抽出物(例えば、Yeast Extract)等の成分を意味する。天然由来成分は、通常、含まれる成分の種類及びそれぞれの含有量は完全に特定されていないものである。天然由来成分は、例えば、ビタミン類、低分子のペプチド(例えば、アミノ酸残基数2〜20のペプチド)及びアミノ酸からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
炭素源としては、グルコース、シュクロース、ラクトース、ガラクトース、フラクトースやでんぷんの加水分解物等の糖類、グリセロール、ソルビトール等のアルコール類、フマール酸、クエン酸、コハク酸等の有機酸類が挙げられる。
炭素源としては、1種類であってもよく、2種類以上の炭素源を任意の比率で混合してもよい。タンパク質生産培地における炭素源の濃度は、0.1w/v%〜50w/v%程度、好ましくは0.5w/v%〜40w/v%程度、より好ましくは1w/v%〜30w/v%程度、特に好ましくは5w/v%〜20w/v%程度であってよい。本実施形態において、炭素源としてグリセロール又はグルコースを用いることが好ましく、グリセロール又はグルコースと他の炭素源とを任意の比率で混合してもよい。炭素源中のグリセロール又はグルコースの比率は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上であることが望ましい。培養開始時の炭素源の好ましい初発濃度は上記のとおりであるが、培養中の炭素源の消費に応じて、炭素源を適宜に添加してもよい。
窒素源としては、硝酸塩、アンモニウム塩、アンモニアガス、アンモニア水等の無機窒素塩、アミノ酸、ペプトン、エキス類、コーンスターチ製造工業における副産物であるコーンスティープリカー(CSL)等の有機窒素源が挙げられる。ペプトン類としては、カゼインペプトン、獣肉ペプトン、心筋ペプトン、ゼラチンペプトン、又は大豆ペプトン等が挙げられる。エキス類としては、肉エキス、酵母エキス、心臓浸出液(ハートインフュージョン)等が挙げられる。アミノ酸又はペプチドを含む窒素源としては、より低分子のペプチド及びアミノ酸の含有量が高いほうが好ましい。
リン酸源としては、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2カリウム等のリン酸塩、ピロリン酸等のリン酸ポリマーが挙げられる。
硫黄源としては、硫酸塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩等の無機硫黄化合物、システイン、シスチン、グルタチオン等の含硫アミノ酸が挙げられる。
ビタミン類としては、ビオチン、塩化コリン、シアノコバラミン、葉酸、イノシトール、ニコチン酸、4−アミノ安息香酸、パントテン酸、ピリドキシン、リボフラビン、チアンミン、チムジン等が挙げられる。ビタミン類の源としては、麦芽エキス、ポテトエキス、トマトジュース等の各種エキスが挙げられる。
ミネラルとしては、リン(P)の他に、イオウ(S)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、ナトリウム(Na)等が挙げられる。
生産工程における培養は、例えば、通気培養又は振盪培養により、好気的に行うことができる。培養は、回分培養(batch culture)、流加培養(fed−batch culture)、連続培養(continuous culture)、又はそれらの組み合わせにより実施することができる。タンパク質生産培地のpHは、例えば、3.0〜9.0であってよい。培養温度は、例えば、15〜40℃であってよい。培養時間は、例えば、1〜60時間であってよい。
培養条件は、上記組換え細胞が増殖でき、かつ目的タンパク質を発現している組換え細胞において目的タンパク質を蓄積させることができる限り、特に制限されない。なお、目的タンパク質が発現している期間においては、組換え細胞は増殖してもよく、しなくてもよい。培養条件は、目的タンパク質が発現する前の期間と発現を開始した後の期間において同一であってもよく、同一でなくてもよい。
培養温度は、通常、細胞の増殖に対して大きな影響を与える。一般的にいえば、増殖の下限の温度は細胞中の水分の凍結温度である0℃又はそれよりやや低い温度であり、上限の温度はタンパク質、核酸などの高分子化合物の変性温度で定まる。ある菌株について増殖可能な温度範囲は比較的せまく、例えば、大腸菌では増殖の下限温度は0〜15℃、上限は46℃、増殖至適温度は36〜42℃付近にある。増殖至適温度によって微生物を分類すると、20℃以下に至適温度のある好低温菌、20〜45℃に至適温度のある好中温菌、45℃以上に至適温度のある好熱菌にわけられる。ここで増殖至適温度とは、培養する微生物が最大の比増殖速度を得られる温度をいい、また、比増殖速度とは、単位微生物量あたりの増殖速度をいい、微生物に固有の値で、培養条件により変化する。
本発明の一実施形態において、「増殖至適温度」とは、pH、溶存酸素濃度などの培養温度以外の条件が、培養開始時に一定の場合に、微生物が最大の比増殖速度を得ることができる温度をいう。本発明の一実施形態において、組換え細胞が目的タンパク質を発現している際(目的タンパク質の発現が誘導性の場合には発現誘導後)に、培養温度の調整等により、組換え細胞の増殖至適温度よりも低い温度に上記組換え細胞を冷却又は維持することで、組換え細胞において目的タンパク質の発現量を増加させることができる。組換え細胞の増殖至適温度よりも低い温度とは、例えば、組換え細胞の増殖至適温度の下限値よりも3〜25℃低い温度であってよく、8〜20℃低い温度であってよく、10〜18℃低い温度であってよく、12℃〜18℃低い温度であってよく、14℃〜17℃低い温度であってよく、3〜10℃低い温度であってよく、5〜8℃低い温度であってよい。
(組換えタンパク質の発現誘導)
本実施形態に係る組換え細胞は、目的タンパク質の発現が誘導できるものであってもよい。組換えタンパク質の発現の誘導は、誘導性プロモーターによる転写(目的とするタンパク質をコードする核酸の転写)を活性化することにより行われる。誘導性プロモーターの活性化は、誘導性プロモーターの種類に応じて、当該技術分野で公知の方法に従って行うことができる。
例えば、イソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(IPTG)等の誘導物質(発現誘導剤)の存在により活性化される誘導性プロモーターを使用した場合、当該誘導物質を培養液に添加することにより、組換えタンパク質の発現を誘導することができる。誘導物質は、1度に、又は複数回に分けて培養液に添加してもよく、また、連続フィードにより培養液に添加してもよい。流加基質溶液に誘導物質を含有させてフィードしてもよい。添加する誘導物質の量は、誘導物質及び誘導性プロモーターの種類に応じて設定することができるが、例えば、組換え細胞の乾燥重量1g当たり0.1〜30μgの範囲とすることができ、好ましくは、0.5〜20μgの範囲である。
また例えば、温度の上昇又は低下により活性化される誘導性プロモーターを使用した場合、培養液の温度を上昇又は低下させることにより、組換えタンパク質の発現を誘導することができる。例えば、温度上昇により活性化されるλファージのPRプロモーター又はPLプロモーターを使用した場合、増殖時の培養液の温度を20〜37℃の範囲とすることで増殖時の組換えタンパク質の発現は抑えられ、次いで培養液の温度を38〜44℃に上昇させることにより、組換えタンパク質の発現を誘導させることができる。このときに熱ショックタンパク質による影響を緩和させるために、特開平6−292563号公報に記載のように増殖時の培養液のpHを6.5〜7.5とし、組換えタンパク質の発現誘導を開始する時点で培養液のpHを4.5〜6.5と変動させることにより、より安定した発現誘導を行うことができる。
組換え細胞の増殖を行う段階から、組換えタンパク質の発現を誘導する段階へ移行する時期には、特に制限はなく、培養システムの構成、生産プロセスの設計に応じて適宜設定することができる。組換えタンパク質の生産を効率よく行う観点からは、組換え細胞の増殖が対数増殖期の中期〜後期に達した時に、組換えタンパク質の発現の誘導を開始するのが好ましい。
組換え細胞の増殖は、遅延期又は誘導期(培養初期の細胞数の増加が遅い時期)から始まり、対数増殖期(単位時間ごとに細胞数が2倍と対数的に増加する時期)を経て、定常期(細胞の正味の数に変動の見られない時期)に至る。対数増殖期の中期とは、遅延期における細胞数と定常期における細胞数の中間程度の細胞数になる時期をいい、対数増殖期の後期とは、中期から定常期までの時期をいう。組換えタンパク質の発現の誘導を開始する時期の具体例として、例えば、定常期におけるOD600の値が約150になる組換え細胞の場合、OD600の値が30〜110に達した時期であるのが好ましく、40〜90に達した時期であるのがより好ましく、50〜80に達した時期であるのが更に好ましい。
組換えタンパク質の発現を誘導する時間は、使用する宿主、目的タンパク質の種類に応じて、設定した生産量に達するまで行えばよい。培養液の温度等の培養条件により生産速度は変化するため、組換えタンパク質の発現を誘導する時間を一義的に決める必要はない。次工程の組換えタンパク質の分離及び精製の進行に合わせて組換えタンパク質の発現を誘導する時間を設定してもよい。また、並行して行っている組換え細胞の増殖、及び当該増殖した組換え細胞の移送に影響がないように組換えタンパク質の発現を誘導する時間を設定することが、工業的生産においては好ましい。
(前培養工程)
本実施形態に係る組換えタンパク質の製造方法は、前培養工程を更に備えていてもよい。前培養工程は、増殖抑制工程の前に、組換え細胞を前培養培地で培養する工程である。前培養培地の具体的な態様は、上述したタンパク質生産培地で説明した態様と同様である。
本実施形態に係る組換えタンパク質の製造方法では、前培養培地として、タンパク質生産培地よりも栄養成分が豊富な培地を用いることが好ましい。これにより、増殖抑制工程及び生産工程に供する組換え細胞の数を増やすことができる。
〔組換えタンパク質の細胞あたりの生産量を増加させる方法〕
上述した本発明は、組換えタンパク質の細胞あたりの生産量を増加させる方法として捉えることもできる。すなわち、一実施形態に係る組換えタンパク質の細胞あたりの生産量を増加させる方法は、組換えタンパク質を発現する組換え細胞の細胞増殖を低減させる増殖低減工程と、組換え細胞を、細胞増殖が低減された状態で、タンパク質生産培地中で培養して組換えタンパク質を生産する生産工程と、を含み、増殖低減工程において、組換え細胞として、少なくとも一つの改変された形態形成制御因子を含む組換え細胞を用いることで、組換え細胞の細胞増殖を低減させる、方法である。当該方法の具体的な態様及び好ましい態様は、上述したとおりである。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(1)組換え細胞(改変フィブロインを発現する大腸菌株)の作製
(目的タンパク質)
ネフィラ・クラビペス(Nephila clavipes)由来のフィブロイン(GenBankアクセッション番号:P46804.1、GI:1174415)の塩基配列及びアミノ酸配列に基づき、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有する改変フィブロイン(以下、「PRT966」ともいう。)を設計した。配列番号2で示されるアミノ酸配列は、ネフィラ・クラビペス由来のフィブロインのアミノ酸配列に対して、生産性の向上を目的としてアミノ酸残基の置換、挿入及び欠失を施したアミノ酸配列を有し、さらにN末端に配列番号3で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)が付加されている。
次に、PRT966をコードする核酸を合成した。当該核酸には、5’末端にNdeIサイト、終止コドン下流にEcoRIサイトを付加した。この核酸をクローニングベクター(pUC118)にクローニングした。その後、同核酸をNdeI及びEcoRIで制限酵素処理して切り出した後、pET−22b(+)ベクターに組み換えて、pET−22(+)/PRT966ベクターを得た。
(改変フィブロイン発現カセットの大腸菌ゲノムDNA中への組込み)
宿主として大腸菌(Escherichia coli)BL21(DE3)株を用い、以下(a)〜(c)の手法を用いて改変フィブロイン発現カセットをゲノムDNA中の3箇所に組み込み、改変フィブロイン発現カセットを3つ有する組換え細胞を取得した。
(a)attHK022
1つ目の改変フィブロイン発現カセットは、HK022ファージが溶原化する機構を利用してゲノムDNA中に組み込んだ。当該機構は、宿主ゲノムDNA中の特定部位(attBサイト)とファージゲノムの特定部位(attP(HK022)サイト)との間での配列特異的な組み換えである。
図11は、HK022ファージが溶原化する機構を利用して、改変フィブロイン発現カセットを宿主ゲノムDNA中に組み込む方法の概要を示す概略図である。まず、pET−22(+)/PRT966ベクターからNdeI及びEcoRIで制限酵素処理して、PRT966をコードする核酸を切り出した後、attP(HK022)サイトを有するプラスミドベクターattHK022−Cm2に組み換えて、attHK022−T7p−PRT966−T7t−FRT−Cm2−ori_R6K−FRTベクターを得た。次に、attHK022−T7p−PRT966−T7t−FRT−Cm2−ori_R6K−FRTベクターを宿主に導入して、宿主ゲノムDNA中のattBサイトと同ベクターのattP(HK022)サイトとの間での配列特異的な組み換えにより改変フィブロイン(PRT966)発現カセットを宿主ゲノムDNA中に組み込んだ。なお、宿主には、あらかじめint遺伝子を有するヘルパープラスミドpAH69(J.Bact 183:6384−6393)を導入してインテグラーゼを発現させた。その後、ヘルパープラスミドpCP20(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97: 6640−6645)を導入してFLPを発現させることにより、FRT配列で挟まれたクロラムフェニコール耐性遺伝子とori_R6K領域を除去した。
(b)attφ80
2つ目の改変フィブロイン発現カセットは、φ80ファージが溶原化する機構を利用して宿主ゲノムDNA中に組み込んだ。当該機構は、宿主ゲノムDNA中の特定部位(attBサイト)とファージゲノムの特定部位(attP(φ80)サイト)との間での配列特異的な組み換えである。
図12は、φ80ファージが溶原化する機構を利用して、改変フィブロイン発現カセットを宿主ゲノムDNA中に組み込む方法の概要を示す概略図である。まず、pET−22(+)/PRT966ベクターからNdeI及びEcoRIで制限酵素処理して、PRT966をコードする核酸を切り出した後、attP(φ80)サイトを有するプラスミドベクターattφ80−Km1_1に組み換えて、attφ80−ori_R6K−FRT−Km1−FRT−SPT3p−PRT966−T7t−FRTベクターを得た。次に、上記(a)の方法で1つ目の改変フィブロイン発現カセットを組み込んだ宿主にattφ80−ori_R6K−FRT−Km1−FRT−SPT3p−PRT966−T7t−FRTベクターを導入して、宿主ゲノムDNA中のattBサイトと同ベクターのattP(φ80)サイトとの間での配列特異的な組み換えにより2つ目の改変フィブロイン(PRT966)発現カセットを宿主ゲノムDNA中に組み込んだ。その後、ヘルパープラスミドpCP20を導入してFLPを発現させることにより、FRT配列で挟まれたカナマイシン耐性遺伝子を除去した。
(c)λRed_manX
3つ目の改変フィブロイン発現カセットは、λファージが有する相同組換えシステムを利用して宿主ゲノムDNA中に組み込んだ。当該相同組換えシステムは、ファージゲノムのRed領域にあるexo、bet、gam遺伝子産物により相同組換えを生じるものである。
図13は、λファージが有する相同組換えシステムを利用して、改変フィブロイン発現カセットを宿主ゲノムDNA中に組み込む方法の概要を示す概略図である。まず、pET−22(+)/PRT966ベクターを鋳型としてT7プロモーターに改変を導入するプライマーを用いたPCR法により改変フィブロイン発現カセット(manX5’相同配列−SPT3プロモーター−PRT966−T7ターミネータ−をこの順に含む。)を増幅した。同様に、pKD13−Cmベクターを鋳型としてPCR法によりクロラムフェニコール耐性遺伝子発現カセット(T7ターミネーター相同配列−FRT−クロラムフェニコール耐性遺伝子−FRT−manX3’相同配列をこの順に含む。)を増幅した。両PCR産物をIn−Fusion(登録商標)クローニングシステム(タカラバイオ株式会社製)を使用して連結した。次に、上記(a)及び(b)の方法で1つ目の改変フィブロイン発現カセット及び2つ目の改変フィブロイン発現カセットを組み込んだ宿主に連結したDNA断片を導入して、宿主ゲノムDNA中のmanX5’相同配列とDNA断片上のmanX5’相同配列との間の相同組み換え、及び宿主ゲノムDNA中のmanX3’相同配列とDNA断片上のmanX3’相同配列との間の相同組み換えにより、3つ目の改変フィブロイン(PRT966)発現カセットを宿主ゲノムDNA中に組み込んだ。なお、宿主には、あらかじめexo、bet及びgam遺伝子をもつヘルパープラスミドpKD46(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97:6640−6645)を導入して、それぞれの遺伝子を発現させた。その後、ヘルパープラスミドpCP20を導入してFLPを発現させることにより、FRT配列で挟まれたクロラムフェニコール耐性遺伝子を除去した。
(2)MreB変異の導入
MreB遺伝子のタンパク質をコードする領域(CDS)をPCR法によって取得し、In−Fusion mix(タカラバイオ)を用いてpKOVプラスミド(J.Bacteriology 179:6228−6237)にクローニングした。第53番目のアミノ酸をスレオニンに変換するため、A2T−Fプライマー(5’−AGCGTAACTGCAGTAGGTCATG−3’)及びA2T−Rプライマー(5’−TACTGCAGTTACGCTTTTCGGT−3’)を使用したPCR法により変異を導入したMreBをコードする核酸を増幅した後、In−Fusion mixで反応させた後に上記(1)で取得した組換え細胞を形質転換した。得られた株を用い、J.Bacteriology 179:6228−6237に記載の方法で、当該株のゲノム中にMreB−A53T変異を導入し、MreB(A53T)変異株を得た。
(3)改変フィブロインの発現及び評価
上記(1)及び(2)の方法で取得した組換え細胞(改変フィブロイン発現カセットを3つゲノムDNA中に有し、かつMreB(A53T)変異を有する組換え細胞。以下、「MreB変異株」ともいう。)を以下の方法で培養し、改変フィブロインの発現量解析を行った。比較として、上記(1)の方法で取得した組換え細胞(改変フィブロイン発現カセットを3つゲノムDNA中に有し、MreBに変異を有しない組換え細胞。以下、「野生型MreB株」ともいう。)も同様に評価した。
MreB変異株及び野生型MreB株は、それぞれ2mLのLB培地で15時間培養した。当該培養液を、100mLの前培養培地(表2のシード培養用培地)にOD600が0.005となるように添加した。培養液温度を30℃に保ち、OD600が5になるまでフラスコ培養を行い(約15時間)、シード培養液を得た。
Figure 2021101744
当該シード培養液を500mLのタンパク質生産培地(表3の生産培地)を添加したジャーファーメンターにOD600が0.05となるように添加した。培養液温度を37℃に保ち、pH6.9で一定に制御して培養した。また培養液中の溶存酸素濃度を、溶存酸素飽和濃度の20%に維持するようにした。
Figure 2021101744
タンパク質生産培地中のグルコースが完全に消費された直後に、フィード液(表4の流加基質溶液)を6g/時間の速度で添加した。培養液温度を37℃に保ち、pH6.9で一定に制御して培養した。また培養液中の溶存酸素濃度を、溶存酸素飽和濃度の20%に維持するようにし、16時間培養を行った。その後、1Mのイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(IPTG)を培養液に対して終濃度0.1mMになるよう添加し、改変フィブロインを発現誘導させた。IPTG添加前とIPTG添加後の培養液から調製した菌体を用いてSDS−PAGEを行い、IPTG添加に依存した目的とする改変フィブロインサイズのバンドの出現により、目的とする改変フィブロインの発現を確認した。
Figure 2021101744
回収した菌体を20mM Tris−HCl buffer(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の菌体を約1mMのPMSFを含む20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)に懸濁させ、高圧ホモジナイザー(GEA Niro Soavi社製)で細胞を破砕した。破砕した細胞を遠心分離し、沈殿物を得た。得られた沈殿物を、高純度になるまで20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の沈殿物を100mg/mLの濃度になるように8M グアニジン緩衝液(8M グアニジン塩酸塩、10mM リン酸二水素ナトリウム、20mM NaCl、1mM Tris−HCl、pH7.0)で懸濁し、60℃で30分間、スターラーで撹拌し、溶解させた。溶解後、透析チューブ(三光純薬株式会社製のセルロースチューブ36/32)を用いて水で透析を行った。透析後に得られた白色の凝集タンパク質を遠心分離により回収し、凍結乾燥機で水分を除き、凍結乾燥粉末を回収することにより、改変フィブロイン(PRT966)を得た。
得られた凍結乾燥粉末に対して、ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、Totallab(nonlinear dynamics ltd.)を用いて画像解析を行い、改変フィブロインの生産量を評価した。凍結乾燥粉末の重量から計算した各改変フィブロインの生産量(細胞あたりの生産量)を、野生型MreB株における誘導時間32時間の値を100%としたときの相対値として、算出した。
培養期間中、定期的に培養液の一部を取り出し、粒子計数分析装置(CDA―1000、シスメックス)により、組換え細胞の平均粒子径を測定した。
(4)結果
図1は、MreB変異株及び野生型MreB株の平均粒子径を培養時間に対してプロットしたグラフである。横軸のC0はシード培養から生産培養に切り替わった時点であり、T0は発現誘導剤により組換えタンパク質の生産が始まった時点である。MreB変異株は、シード培養時の栄養豊富な培地において、盛んに細胞分裂して増殖するとともに細胞の幅が野生型MreB株よりも増大した。その後に生産培地に移したところ、図1のC0(生産培地への移植時点)からT0(発現誘導時点)までの間に示されるように、生産培地の栄養成分が資化されても野生型MreB株が細胞分裂を続けたのに対してMreB変異株は増殖が緩やかであった結果として、野生型MreB株の平均粒子径が急速に減少したのに対してMreB変異株はほとんど平均粒子径の変化がなく、改変フィブロインの発現誘導以降、MreB変異株の平均粒子径は野生型MreB株よりも30%程度増大したままであった。
図2は、生産培養開始後16時間におけるMreB変異株及び野生型MreB株の細胞自体の重量(乾燥菌体重量から生産された組換えタンパク質の重量を除いたもの)を示すグラフである。
図3は、MreB変異株及び野生型MreB株の生産培養開始後16時間における細胞の増殖を示すグラフである。図2および図3に示すように、MreB変異株の増殖は野生型MreB株よりも低減していることが理解できる。
図4は、MreB変異株及び野生型MreB株の改変フィブロイン生産量(細胞あたりの生産量)を示すグラフである。図4に示すように、MreB変異株による改変フィブロイン生産量は、野生型MreB株と比べて、発現誘導後16時間で33%、発現誘導後32時間で35%程度上昇した。
図5は、MreB変異株及び野生型MreB株の改変フィブロイン生産量(培地あたりの生産量)を示すグラフである。図5に示すように、MreB変異株による改変フィブロイン生産量は、野生型MreB株と比べて、発現誘導後16時間で33%程度上昇した。
結果として、MreB変異株を用いることによって、改変フィブロインの生産培養時に細胞増殖が低減されたことにより、細胞あたりの改変フィブロインの収率が顕著に高まった。加えて、目的タンパク質に比べて菌体数が少ないことから、破砕する操作も軽減できる点でも、野生型MreB株を用いるよりもMreB変異株を用いたほうが改変フィブロインタンパク質の製造において有利であることが確認できた。
[実施例2]
(1)改変フィブロインを誘導発現する大腸菌株の作製
実施例1と同様に、改変フィブロインPRT966を有するpET−22(+)/PRT966ベクターを得た。また、実施例1と同様に、大腸菌BL21(DE3)株を宿主として、改変フィブロイン発現カセットを3つ有する組換え細胞を取得した。
(2)形態形成制御因子sulAを誘導発現する大腸菌株の作製
(形態形成制御因子の発現カセットベクターの作製)
下記のsulA_F及びsulA_Rのプライマーセットを用いたPCRによって、sulA遺伝子のタンパク質をコードする領域(CDS)を増幅した。また、下記のRBS−4及びpET−MCS_Fのプライマーセットを用いたPCRによって、attP(P21)サイトを有するプラスミドベクターattP21−KmR2を直鎖化、増幅した。増幅したこれら2断片をNEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mix(ニュー・イングランド・バイオラボ・ジャパン株式会社)を用いて、添付マニュアルに従い、連結し、attP21−T7p−sulA−T7t−FRT−KmR2−ori_R6K−FRTベクターを得た。
sulA_F:5’-TTTAAGAAGGAGATATACATATGTACACTTCAGGCTATGCAC-3’(配列番号8)
sulA_R:5’-TGTCGACGGAGCTCGAATTCTTAATGATACAAATTAGAGTGAATTTTTAGCCCGG-3’(配列番号9)
RBS-4:5’-ATGTATATCTCCTTCTTAAAGTTAAACAAA-3’(配列番号10)
pET-MCS_F:5’-GAATTCGAGCTCCGTCGAC-3’(配列番号11)
sulAを増幅するPCRは、終濃度がそれぞれ0.2μMのプライマー、及びOD〜0.01のBL21(DE3)細胞懸濁液を添付のマニュアルに従って、PrimeSTAR(登録商標)Max(タカラバイオ株式会社製)と混合し、98℃10秒、55℃5秒、72℃30秒の条件を30サイクル行った。attP21−KmR2を直鎖化、増幅するPCRも、同様に終濃度がそれぞれ0.2μMのプライマー、及びPrimeSTAR(登録商標)Max(タカラバイオ株式会社製)を用いて、1ngのattP21−KmR2ベクターを鋳型として、98℃10秒、55℃5秒、72℃30秒の条件を30サイクル行った。得られた発現ベクターの塩基配列は、サンガー法によって確認した。
(形態形成制御因子の発現カセットの宿主染色体上への組込み)
次に、(1)の方法で取得した改変フィブロイン発現カセットを3つ染色体上に有する組換え細胞を宿主細胞として、attP21−T7p−sulA−T7t−FRT−KmR2−ori_R6K−FRTベクターを宿主に導入して、宿主染色体上のattBサイトと同ベクターのattP(P21)サイトとの間での配列特異的な組み換えによりsulA発現カセットを宿主染色体上に組み込んだ。なお、宿主には、あらかじめint遺伝子を有するヘルパープラスミドpAH121(J.Bact 183:6384−6393)を導入してインテグラーゼを発現させた。
(3)改変フィブロインの発現及び評価
上記(1)及び(2)の方法で取得した組換え細胞(改変フィブロイン発現カセットを3つ染色体上に有し、かつsulAの発現カセットを有する組換え細胞。以下、「sulA誘導発現株」ともいう。)を、実施例1と同様な方法にて培養し、改変フィブロインの発現量解析を行った。比較として、上記(1)の方法で取得した組換え細胞(改変フィブロイン発現カセットを3つ染色体上に有し、sulAの発現カセットを有しない組換え細胞。以下、「Control株」ともいう。)も同様に評価した。
培養期間中、定期的に培養液の一部を取り出し、粒子計数分析装置(CDA―1000、シスメックス)により、組換え細胞の粒子濃度(細胞濃度)を測定した。
(4)結果
図6は、sulA誘導発現株及びControl株の平均粒子径を培養時間に対してプロットしたグラフである。横軸のT0は発現誘導剤により組換えタンパク質(改変フィブロイン)の生産が始まった時点であり、Tの後の数字は発現誘導後の経過時間を表す。改変フィブロインの発現誘導以降、sulA誘導発現株の平均粒子径が増大した一方で、Control株にはほとんど変化が見られなかった。
図7は、改変フィブロインの発現誘導時(T0)のControl株を基準(100%)としたときのControl株及びsulA誘導発現株の細胞濃度(細胞数)の相対値の変化を示すグラフである。図7に示すように、Control株が改変フィブロインの発現誘導後24時間で細胞濃度(細胞数)が127%に増加したのに対して、sulA誘導発現株の細胞濃度(細胞数)はむしろ低減されていた。
図8は、改変フィブロインの発現誘導後24時間におけるControl株(100%)に対するsulA誘導発現株の細胞濃度(細胞数)の相対値を示すグラフである。
図9は、Control株を基準(100%)としたときのsulA誘導発現株の改変フィブロインの細胞あたりの生産量の相対値を示すグラフである。図9に示すように、sulA誘導発現株による改変フィブロインの細胞あたりの生産量は、Control株と比べて、発現誘導後24及び28時間で約200%以上に増加した。
図10は、Control株を基準(100%)としたときのsulA誘導発現株の改変フィブロインの培地あたりの生産量の相対値を示すグラフである。図10に示すように、sulA誘導発現株による改変フィブロインの培地あたりの生産量は、Control株と比べて、発現誘導後24時間で約126%に増加した。
結果として、sulA誘導発現株を用いることによって、改変フィブロインの生産培養時に細胞増殖が低減されたことにより、細胞あたりの改変フィブロインの収率が顕著に高まった。加えて、目的タンパク質に比べて菌体数が少ないことから、破砕する操作も軽減できる点でも、通常の改変フィブロイン発現組換え細胞(Control株)を用いるよりもsulA誘導発現株を用いたほうが改変フィブロインタンパク質の製造において有利であることが確認できた。

Claims (1)

  1. 組換えタンパク質を発現する組換え細胞の細胞増殖を低減させる増殖低減工程と、
    前記組換え細胞を、細胞増殖が低減された状態で、タンパク質生産培地中で培養して前記組換えタンパク質を生産する生産工程と、を備え、
    前記増殖低減工程において、前記組換え細胞として、少なくとも一つの改変された形態形成制御因子を含む組換え細胞を用いることで、前記組換え細胞の細胞増殖を低減させる、組換えタンパク質の製造方法。

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