JP2021099391A - 定着部材の製造方法 - Google Patents

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【課題】本発明の課題は、像形成時の定着部材とトナー画像との分離性と、長時間にわたり使用した後でも優れた分離性を維持し、耐久性に優れる定着部材の製造方法を提供する。【解決手段】本発明の定着部材の製造方法は、基材上に弾性層と離型層を有する定着部材の製造方法で、前記基材と前記離型層の間にゴムを主成分とする弾性層構成材料を用いて弾性層を形成する工程と、前記弾性層を構成するゴムに加硫処理を施す前段加硫工程と後段加硫工程を有し、前記前段加硫工程と前記後段加硫工程との間で、前記離型層表面に対し、機械的手段により凹凸形状を付与する工程を有することを特徴とする。【選択図】図3

Description

本発明は、定着部材の製造方法に関する。さらに詳しくは、画像形成時に、定着部材とトナー画像との分離性及び分離耐久性に優れる定着部材の製造方法に関する。
従来、感光体ドラム上に形成された静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成し、形成されたトナー像を記録用紙に転写し、転写されたトナー像を加熱定着することで、記録用紙上に画像を形成する電子写真方式の画像形成装置が知られている。
このような電子写真方式の画像形成装置を構成する電子写真用部材においては、表面に離型性を求められる部材が多く、例えば、トナーの転写性とクリーニング性が求められる感光体、トナーの転写性が求められる中間転写体、溶融トナーが付着した記録用紙等のメディアの分離性が求められる定着部材等が挙げられ、その中でも、特に溶融トナーが粘着性を有するために、定着部材に離型性を付与する要求が顕著である。
定着装置においては、加熱された定着部材と、トナーが転写済みのメディアとが圧着され、加熱及び加圧処理により、メディア上でトナーの定着は行われるが、その工程の後では、定着部材とメディアを分離する必要がある。
この定着部材とメディアとの分離性を確保するためには、定着部材の表層としてテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)が現在広く用いられており、それに加え、分離爪やメディアの吸引、メディア先頭端部へのエアー吹き付け等の補助手段等を加えることにより、分離性を高めている。
しかしながら、現在、適用されている定着方法では、今後の印刷のより一層の高速化や、省エネルギーやコストダウンを目的とした補助手段レス、分離が困難なコシのない薄紙等のメディア種の拡大等の要望に対しては、いまだ不充分である。加えて、顧客損失に直結するマシンのダウンタイムを削減するために、部材のパーマネント化が求められており、このような状況に鑑み、定着部材とメディアとの分離性を高めるための、定着部材表層の改良が試みられている。
上記問題に対し、定着部を構成する定着部材、例えば、定着ロールの作製方法として、円筒又は円柱基材上にフッ素系樹脂を被覆する方法で、フッ素系樹脂の加熱焼成時に、基材とフッ素系樹脂層の外側に配した面転写部材との間で、フッ素系樹脂層を加圧し、面転写部材の表面に微小の凹凸形状をフッ素系樹脂層表面に形成する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。提案されている方法によれば、所望の表面粗さを備え、安定なフッ素系樹脂被膜を定着基材上に形成することができるとされている。
しかしながら、特許文献1に開示されている方法は、定着部材の表面を構成する離型層に凹凸形状を付与する方法であるが、定着部材を繰り返し使用することにより、定着工程での熱や圧力をうけて、微小な凹凸構造が徐々に消滅していくため、耐久性に乏しいという問題がある。
また、弾性層上に離型層を配置し、離型層として第1の凹凸形状と、当該第1の凹凸形状上に第2の凹凸形状を形成した定着ベルトが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2で開示されている方法によれば、トナー画像の定着時に、トナー画像の定着性と、記録媒体との分離性を両立することができるとされている。しかしながら、上記方法と同様に、定着部材を繰り返し使用することにより、定着工程での熱やニップ部における押圧の繰り返しにより、離型層表面に形成した凹凸構造が徐々に消滅していくため、耐久性に乏しいという問題があった。
特開平9−277378号公報 特開2018−169530号公報
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、画像形成時の定着部材とトナー画像との分離性と、長時間にわたり使用した後でも優れた分離性を維持し、耐久性に優れる定着部材の製造方法を提供することである。
本発明は、上記課題に鑑み鋭意検討を進めた結果、基材上に弾性層と離型層を有する定着部材の製造方法において、弾性層をゴム成分で構成し、ゴム成分の加硫処理(架橋反応)を前段加硫工程と後段加硫工程に分割し、前段加硫工程では弾性層が可塑性を維持する条件で加硫し、次いで、表面よりブラスト処理により離型層表面に所望の凹凸形状を形成し、次いで後段加硫を行うことで高い硬化性を有する凹凸構造を形成することができ、画像形成時の定着部材とトナー画像との分離性と優れた分離性を有し、かつ長時間にわたり使用した後でも凹凸形状を維持でき、耐久性に優れる定着部材の製造方法を得ることができることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明の上記課題は、下記の手段により解決される。
1.少なくとも、基材上に弾性層と離型層を有する定着部材の製造方法であって、
前記基材と前記離型層の間にゴムを主成分とする弾性層構成材料を用いて弾性層を形成する工程と、
前記弾性層を構成するゴムに加硫処理を施す前段加硫工程と後段加硫工程を有し、
前記前段加硫工程と前記後段加硫工程との間で、前記離型層表面に対し、機械的手段により凹凸形状を付与する工程を有することを特徴とする定着部材の製造方法。
2.前記加硫工程の前記前段加硫工程後の弾性層のゴム硬度が、前記後段加硫工程後のゴム硬度の90%以下であることを特徴とする第1項に記載の定着部材の製造方法。
3.前記離型層を、ペルフルオロアルコキシフッ素系樹脂フィルムで形成し、前記弾性層を、少なくともシリコーンゴム原料を含む液体を、前記基材と前記離型層との間に注入して形成した後、前記前段加硫工程による加硫処理を施すことを特徴とする第1項又は第2項に記載の定着部材の製造方法。
4.前記離型層表面に対し、前記凹凸形状を付与する方法が、ブラスト処理法であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の定着部材の製造方法。
5.前記定着部材が、定着ベルトであることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の定着部材の製造方法。
本発明によれば、画像形成時の定着部材とトナー画像との分離性と、長時間にわたり使用した後でも優れた分離性を維持し、耐久性に優れる定着部材の製造方法を提供することができる。
本発明で規定する構成からなる定着部材の技術的特徴とその効果の発現機構は、以下のように推察される。
前述の様に、定着部材として、基材上に離型層を形成する方法で、離型層形成樹脂の加熱焼成時に、凹凸形状を有する面転写部材表面を、離型層表面に圧着させ、微細な凹凸形状を離型層表面及びその下部の弾性層に形成する方法が知られているが、このような方法では、凹凸形状付与による点接触化により、確かに、定着部材とトナー画像との分離性は向上するが、凹凸形状を有する定着部材を繰り返し使用した場合、定着工程での熱や圧力をうけて、微小な凹凸構造が徐々に平坦化するため、耐久性に問題を抱えていることが判明した。
本発明者らは上記問題に対し鋭意検討を進め、離型層表面に対し面転写部材等を用いた機械的な凹凸形状付与方法では、離型層の下部に位置している凹凸構造を有する弾性層、例えば、シリコーンゴムを主成分として構成する弾性層では、分子結合の開裂が生じることで、長期間にわたる加圧や熱エネルギーの付与により、凹凸形状の平坦化を加速させていると推測している。従って、シリコーンゴムの加硫処理(架橋反応)を、前段加硫と後段加硫に分割し、弾性層が十分な可塑性を有する柔らかい状態である前段加硫の後に、ブラスト処理法により凹凸構造を付与し、その後、凹凸構造形成後に、後段加硫として架橋反応を行うことにより、定着部材が、繰り返し熱や圧力をうけても、凹凸構造の平坦化を起こすことなく、優れた耐久性を図ることができたと推測している。
すなわち、本発明の定着部材の製造方法においては、弾性層に対し、前段加硫処理を施し、架橋が少ない状態でマイルドなブラスト処理が可能となることで、弾性層の架橋構造の断裂を低減できること、及びブラスト処理後に、後段加硫処理として、前段加硫より強い条件で架橋の後半を行うことによって、架橋が豊富な耐久性を有する凹凸構造を形成することができたと推測している。
本発明に係る無端ベルト状の定着ベルトの構成の一例を示す概略図 本発明に係る凹凸構造を有する定着部材の製造方法の一例を示す工程フロー図 本発明に係る凹凸構造を有する定着部材の製造方法の一例を示す概略断面図 本発明に適用可能な画像形成装置の全体構成の一例を示す概略図
本発明の定着部材の製造方法は、少なくとも、基材上に弾性層と離型層を有する定着部材の製造方法であって、前記基材と前記離型層の間にゴムを主成分とする弾性層構成材料を用いて弾性層を形成する工程と、前記弾性層を構成するゴムに加硫処理を施す前段加硫工程と後段加硫工程を有し、前記前段加硫工程と前記後段加硫工程との間で、前記離型層表面に対し、機械的手段により凹凸形状を付与する工程を有することを特徴とする。
この特徴は、下記各実施形態に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施形態としては、本発明の目的とする効果をより発現できる観点から、本発明に係る弾性層形成時の前段加硫工程と後段加硫工程の処理条件として、前段加硫工程後の弾性層のゴム硬度を、後段加硫工程後のゴム硬度の90%以下とし、ある程度の可塑性を有する状態とすることが、その後に行うブラスト処理により、マイルドな状態で凹凸構造を形成することができる点で好ましい。
また、離型層をペルフルオロアルコキシフッ素系樹脂フィルムで形成し、弾性層を少なくともシリコーンゴム原料を含む液体を、前記基材と前記離型層との間に注入して形成した後、前記前段加硫工程による加硫処理を施すことが、本発明の目的効果をより発現させることができる点で好ましい。
また、離型層表面及び弾性層に凹凸形状を付与する方法が、ブラスト処理法であることが、安定して所望の形状を有する凹凸構造を安定して形成することができる点で好ましい。
また、定着部材が定着ベルトであることが、本発明の目的効果をより発現させることができる点で好ましい。
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
《定着部材の基本的構成》
本発明に係る定着部材は、少なくとも、基材上に弾性層と離型層を有する。
本発明に係る定着部材の形態は、例えば、ローラー状又は無端のベルト状であってもよい。本発明に係る定着部材の形態としては、例えば、ローラー状の定着部材であれば、金属製の円筒の外周面に上記の弾性層及び離型層が担持されてなる定着スリーブである。本発明においては、特に、定着部材が定着ベルトであることが好ましい態様であり、以下、主に、定着ベルトについて説明する。
図1に、本発明に係る基材上に弾性層と離型層を有する無端ベルト状の定着ベルトの構成の一例を示す。
図1の(a)は、本発明に係る離型層を有する無端ベルト状の定着ベルト1の構成の一例を示す模式図であり、図1の(b)は図1の(a)で示される定着ベルト1に記載の領域Aを拡大した概略断面図である。
定着ベルト1は、図1の(b)で示すように、基材2、弾性層3及び離型層4をこの順で積層してなる無端状のベルトである。
なお、定着部材は、弾性層及び離型層の間に接着機能を有する接着層を有していてもよい。
《定着部材の製造方法》
本発明の定着部材の製造方法においては、少なくとも、基材上に弾性層と離型層を有する定着部材の製造方法であって、
前記基材と前記離型層の間にゴムを主成分とする弾性層構成材料を用いて弾性層を形成する工程と、
前記弾性層を構成するゴムに加硫処理を施す前段加硫工程と後段加硫工程を有し、
前記前段加硫工程と前記後段加硫工程との間で、前記離型層表面に対し、機械的手段により凹凸形状を付与する工程を有することを特徴とする。
更には、離型層をペルフルオロアルコキシフッ素系樹脂フィルムで形成し、弾性層を少なくともシリコーンゴム原料を含む液体を、前記基材と前記離型層との間に注入して形成した後、前記前段加硫工程による加硫処理を施す方法であることが好ましい。
特には、本発明に係る弾性層表面に対し、機械的手段により凹凸構造を形成する手段が、ブラスト粒子を弾性層表面に吹き付けて凹凸形状を形成するブラスト処理法であることが好ましい態様である。
以下、本発明に好適なブラスト処理法を用いて形成した凹凸形状を離型層表面に有する定着ベルトの製造方法について、図を交えて説明する。
[製造工程フロー]
本発明の定着部材の製造方法について、図2で示す製造工程のフロー図と、図3で示す本発明に係る凹凸構造を有する定着部材の製造方法の一例について、概略断面図を用いて説明する。
(ステップS1)
図2で示すステップS1では、図1で示すようなベルト状の基材2、例えば、ポリイミド製の管状物(無端ベルト)を準備する。
(ステップS2)
次いで、図2で示すステップS2では、図3の(a)で示すように、上記準備したベルト状の基材2の外側に、二重円筒形状の型を介し、離型層4として、チューブ状離型層フィルム、例えば、ペルフルオロアルコキシフッ素系樹脂(PFA)フィルムを配置し、基材2と離型層4と間に、弾性層3形成用の間隙Vを設ける。
(ステップS3)
次いで、図2に示すステップ3では、図3の(b)で示すように、基材2と離型層4と間に設けた間隙Vに、ゴムを主成分とする弾性層形成材料、例えば、シリコーンゴムを注入して、未硬化状態の弾性層3Aを形成する。
(ステップS4)
次いで、図2に示すステップS4は前段加硫工程であり、図3の(c)で示すように、注入した弾性層形成材料、例えば、シリコーンゴムに対し、第1加熱処理H1により前段加硫処理を行い、マイルドな加硫処理を施した弾性層3Bとする。この前段加硫処理では、弾性層形成材料の加硫条件(硬化条件)として、完全に硬化を行わずに、ある程度の可塑性を維持するような条件で加硫を行った弾性層3Bとする。具体的には、前段加硫処理条件としては、後述の図2で示すステップS6の後段加硫工程後の弾性層のゴム硬度に対し、前記前段加硫工程後の弾性層のゴム硬度が90%以下となる条件で行うことが好ましい。
本発明に係る弾性層のゴム硬度は、弾性層と同一構成からなる5mm厚のテストピースを作製し、所定の条件で前段加硫処理を行った後、JIS K 6253−3に準拠し、MD−1硬度計(高分子計器(株)製、「マイクロゴム硬度計MD−1型」)を用いて測定することにより求めることができる。
前段加硫条件としては、適用する弾性層形成材料の種類等によりその条件は異なり、一概に規定することができないが、一例としては、加熱温度は、70〜120℃の範囲内で、かつ加熱時間が10〜50分の範囲内であることが好ましい。また、前段加硫処理後のゴム硬度も、適用する弾性層形成材料の種類等により異なるが、おおむね20〜28度の範囲内であることが好ましい。
(ステップS5)
次いで、図2に示すステップS5は、前段加硫処理を行った後、離型層4表面に対し、機械的手段により、図3の(d)で示すように、ブラスト材5、例えば、アルミナビーズやガラスビーズを用いてブラスト処理を行って、凹凸形状6を形成する。
離型層4表面に凹凸形状6を形成する機械的手段としては、特に制限はなく、例えば、型押し処理等が挙げられるが、本発明においては、ブラスト処理を用いて離型層表面に凹凸形状を形成することが、安定して所望の形状からなる凹凸構造群を形成することができる点で好ましい。
〈ブラスト処理〉
本発明に適用可能なブラスト処理としては、サンドプラスト処理が挙げられる。サンドブラスト処理は、離型層の表面にブラスト材を投射して、離型層表面をブラスト材で凹状にへこませて、凹凸形状を形成する処理である。
更に詳しくは、サンドブラスト処理としては、エアーブラスト処理、ウェットサンドブラスト処理、ショットブラスト処理等を挙げることができる。
エアーブラスト処理とは、主としてエアーコンプレッサーなどの圧縮空気を使って、ノズルからブラスト材5を離型層4表面に投射して、凹凸形状6を形成する方法である。
また、ウェットサンドプラスト処理は、水中ポンプや圧縮空気を使って、水及びブラスト材5を含むスラリーを、離型層4表面に投射して、凹凸形状6を形成する方法である。
また、ショットブラスト処理とは、ブラスト材5を投射する動力として、モーターの回転によって高速で回転するブレードを用いて、離型層4表面に投射して、凹凸形状6を形成する方法である。
本発明に係るブラスト処理に適用可能なブラスト材としては、特に制限されず、公知のものを適宜使用することができ、具体的には、ガラスビーズ、アルミナ粒子、シリカ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子などを挙げることができ、有機微粒子としては、例えば、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、架橋化アクリル樹脂粒子などを挙げることができる。本発明においては、ブラスト材としては、弾性層を凹ませるが離型層表面は引き裂かない程度の衝撃力を付与するという観点から、特に、球状ガラスビーズやアルミナビーズが好ましい。これらのブラスト材は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、ブラスト材の体積平均粒径としては、目的とする離型層表面の凹凸サイズにより異なるが、3〜200μmの範囲内であるものが好ましく、10〜100μmの範囲内であるものがより好ましく、20〜80μmの範囲内であることがさらに好ましい。
なお、本発明においては、上記ブラスト材の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定された、体積基準積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径(平均粒径D50)を意味する。
〈離型層表面の凹凸構造パターン〉
本発明に係る離型層4表面の凹凸形状6のパターンやサイズに関しては、特に制限はないが、面最大高さSzとして、20〜80μmの範囲とすることが好ましい。凹凸形状が20μm未満であると、定着ベルトとトナー画像との間に空気が入りにくいため、定着ベルトとトナー画像との接触面積が大きくなり、トナー画像(それを担持する記録媒体)の分離不良になりやすい。逆に、凹凸形状が80μmを超えると、定着ベルトとトナー画像との間に空気が入りすぎて、定着ベルトとトナー画像との接触面積が小さくなり、定着不良が起こりやすい。
凹凸形状を表す離型層表面の最大高さSzは、レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製、VK−X250)を用いた表面性状解析により、基準長さにおける輪郭曲線の山高さZpの最大値Spと、谷深さZvの最大値Svとの和(Sz=Sp+Sv)として求めた。
具体的には、ISO 25178に準拠して、離型層の表面積約62000μmの二次元領域の表面プロファイルをレーザー法により測定した。同一サンプルに対して4か所測定したときの平均値を最大高さSzの値として採用した。
(ステップ6)
最終の図2で示すステップ6は、後段加硫工程であり、図3の(e)で示すように、凹凸形状を形成した定着部材1の弾性層3Bに対し、前段加硫処理よりも高温・長時間で第2加熱処理H2を施し、硬化が完遂した弾性層3Cを形成する。
後段加硫条件としては、適用する弾性層形成材料の種類等によりその条件は異なり、一概に規定することができないが、一例としては、加熱温度は、150〜250℃の範囲内で、かつ加熱時間が2〜4時間の範囲内であることが好ましい。また、後段加硫処理後のゴム硬度も、適用する弾性層形成材料の種類等により異なるが、おおむね28〜35度の範囲内であることが好ましい。
以上のようにして、本発明に係る離型層表面に凹凸形状を有する定着部材を製造することができる。
《定着部材の構成材料》
次いで、本発明に係る定着部材を構成する基材、弾性層及び離型層の具体的構成について説明する。
〔基材〕
定着部材を構成する基材2は、例えば、無端ベルト状の定着部材である場合、耐熱性を有するフレキシブル性を具備した樹脂(耐熱性樹脂)で構成されていることが好ましい。本発明でいう「耐熱性」とは、電子写真方式の画像形成で、トナー画像の記録媒体への定着に上記定着部材を用いる際の温度、例えば、150〜220℃の温度範囲において、変形することなく、十分に安定して所期の物性を発現することを意味する。
上記耐熱性樹脂は、定着部材の上記の使用温度において実質的な変性及び変形を生じない樹脂から適宜に選ばれ、1種でも、2種以上併用してもよい。
本発明に適用可能な耐熱性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン等を挙げることができる。その中でも、耐熱性の観点から、ポリイミドが好ましい。
ポリイミドは、例えば、その前駆体であるポリアミド酸を200℃以上で加熱すること、又は触媒を用いることによる脱水及び環化(イミド化)反応を進めることによって得ることができる。ポリアミド酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを溶媒に溶解し、混合及び加熱による重縮合反応によって製造してもよいし、市販品を用いてもよい。上記ジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物の例としては、特開2013−25120号公報の段落(0123)〜(0130)に記載の化合物を挙げることができる。
耐熱性樹脂は、本発明に係る定着部材の基材を構成する主要材料であり、その含有量は、基材を形成するのに十分な量であればよい。基材における耐熱性樹脂の含有量は、基材作製時における成形性の観点から、基材全質量の50質量%以上であることが好ましく、60〜75質量%であることがより好ましく、76〜90質量%であることがさらに好ましい。
基材2は、本発明が目的とする効果が得られる範囲においては、耐熱性樹脂以外の成分を更に含んでいてもよい。例えば、基材の構成材料として、耐熱性樹脂の他に、フィラーを含有していてもよい。当該フィラーは、例えば、基材の硬さ、伝熱性及び導電性の少なくとも一つの性能向上に寄与する成分である。当該フィラーは、1種でも、2種以上でもよく、フィラーの一例としては、カーボンブラック、ケッチェンブラック、ナノカーボン及び黒鉛等が挙げられる。
本発明において、基材におけるフィラーの含有量は、多すぎると、基材の靱性が低くなって定着部材の定着性及び分離性が低くなることがあり、また、少なすぎると、例えば、適度な導電性の付与などのフィラーによる所望の効果が不十分となることがある。このような観点から、基材におけるフィラーの含有量は、3質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。また、上記の観点から、上記基材における上記フィラーの含有量の上限は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
〔弾性層〕
本発明に係る定着部材1を構成する弾性層3は、定着ニップ部における定着ベルトの表面と、未定着のトナー画像を担持する記録媒体との接触性の向上に寄与する弾性を有する層であり、弾性材料製である。「弾性材料製」とは、弾性層を構成する主な材料が弾性材料であることを意味し、「弾性」とは、電子写真方式の画像形成におけるトナー画像の記録媒体への定着において、定着ベルトが未定着トナー画像を有する記録媒体の表面に対して十分に接する変形を定着ベルトに付与することを意味する。
本発明に適用可能な弾性材料の一例としては、弾性樹脂材料を挙げることができ、その例には、シリコーンゴム、熱可塑性エラストマー及びゴム材料が含まれる。中でも、上記弾性材料は、所期の弾性特性の他に耐熱性の観点から、シリコーンゴムであることが好ましい。
上記シリコーンゴムは、1種でも2種以上併用してもよい。本発明に適用が可能なシリコーンゴムとしては、例えば、ポリオルガノシロキサン又はその加熱硬化物、特開2009−122317号公報に記載の付加反応型シリコーンゴム等を挙げることができる。
当該ポリオルガノシロキサンの例としては、特開2008−255283号公報に記載の、両末端がトリメチルシロキサン基で封鎖され、側鎖にビニル基を有するジメチルポリシロキサンが代表例として挙げることができる。
弾性層3の厚さは、例えば、伝熱性及び弾性を十分に発現させる観点から、5〜500μmの範囲内であることが好ましく、50〜350μmの範囲内であることがより好ましい。
上記弾性層3は、本発明が目的とする効果を得ることができる範囲内において、上記の弾性樹脂材料以外の成分を更に含んでいてもよい。例えば、弾性層は、上記弾性材料の他に、弾性層の伝熱性を高めるための伝熱性フィラーを含んでいてもよい。当該フィラーの材料の例には、シリカ、金属ケイ素、アルミナ、亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、カーボン及び黒鉛が含まれる。上記フィラーの形態は、限定されず、例えば、球状粉末、不定形粉末、扁平粉末又は繊維状である。
弾性層を構成する弾性材料における弾性樹脂材料の含有量は、伝熱性と弾性とを両立させる観点から、弾性層全体積に対し60〜100体積%の範囲内であることが好ましく、75〜100体積%であることがより好ましく、80〜100体積%であることがさらに好ましい。
〔離型層〕
本発明の定着部材を構成する離型層は、定着ニップ部における定着ベルトの表面からの記録媒体上の溶融トナー層に対する分離性の向上に寄与する離型性を有する層であり、トナー成分に対する適度な離型性を有する。上記離型層は、定着時に記録媒体に当接する定着ベルトの外表面を構成する。
上記離型層の構成材料としては熱可塑性樹脂であることが好ましく、更には、フッ素系樹脂、例えば、ペルフルオロアルコキシフッ素系樹脂(PFA)であることが好ましい。
(熱可塑性樹脂)
本発明において、定着部材の離型層を構成する熱可塑性樹脂としては、必要な耐熱性と離型性を備えていれば特に制限はなく、例えば、ビニル系熱可塑性樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール等)、ポリスチレン系熱可塑性樹脂(例えば、ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等)、ポリプロピレン、ポリアセタール、アクリル系熱可塑性樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート、メタクリル・スチレン共重合体等)、ポリカーボネート、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリウレタン系熱可塑性樹脂、フッ素系熱可塑性樹脂(例えば、トリフルオロクロロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ペルフルオロアルコキシフッ素系樹脂(PFA)、パーフルオロポリエーテル化合物(PFPE)等)を挙げることができる。
熱可塑性樹脂に求められる耐熱性としては、トナーの低温定着化の観点からは、連続150℃程度以上で高い離型性を求められる点から、フッ素系樹脂であることが特に好ましい。
(フッ素系樹脂)
本発明に係る離型層において、熱可塑性樹脂がフッ素系樹脂であることが好ましく、フッ素系樹脂の例としては、上記のように、ペルフルオロアルコキシフッ素系樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、パーフルオロポリエーテル化合物(PFPE)等を挙げることができる。より好ましくは、四フッ化エチレンとパーフルオロアルコキシエチレンの共重合体であるペルフルオロアルコキシフッ素系樹脂(PFA)である。具体的には、フィルム状又はチューブ状のペルフルオロアルコキシフッ素系樹脂(PFA)であり、例えば、三井・デュポンフロロケミカル(株)製のソフトPFAをチューブ状に成形したものを適用することができる。
《画像形成装置及び画像形成方法》
次いで、本発明の定着部材を具備した定着装置を組み込んだ画像形成装置とそれを用いた画像形成方法について説明する。
本発明の画像形成装置は、未定着のトナー画像を担持する記録媒体に、定着部材を介してトナー画像を加熱加圧により定着させる定着装置を具備した電子写真方式の画像形成装置であって、定着部材として本発明の定着部材を具備していることを特徴とする。
また、本発明の画像形成方法では、電子写真方式で形成された未定着のトナー画像を、それを担持する記録媒体に、定着部材を介して加熱加圧して定着させる定着工程を有する画像形成方法であって、定着部材に本発明の定着部材を用いることを特徴とする。
代表的な画像形成装置の一例について、図を交えて説明する。
図4は、本発明に適用可能な画像形成装置の全体構成の一例を示す概略図である。
図4に示す画像形成装置15は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置であり、主には、自動原稿搬送部20、スキャナー部30、画像形成部40、給紙部50、記憶部(不図示)、操作表示部(不図示)、制御部100等を備えて構成される。
自動原稿搬送部20は、原稿Dを載置する載置トレイや原稿Dを搬送する機構及び搬送ローラー等を備えて構成され、原稿Dを所定の搬送路に搬送する。
スキャナー部30は、光源や反射鏡等の光学系を備えて構成され、所定の搬送路を搬送された原稿D又はプラテンガラスに載置された原稿Dに光源を照射し、反射光を受光する。また、スキャナー部30は、受光した反射光を電気信号に変換して制御部100に出力する。
画像形成部40は、イエロー作像部Y、マゼンタ作像部M、シアン作像部C、ブラック作像部K、中間転写ベルトT、定着装置F等を備えて構成される。
その他には、感光体ドラム41、帯電装置42、露光装置43、現像装置44、一次転写ローラー45、中間転写ベルトT、二次転写ローラー46等を有するが、その詳細な構成の説明は省略する。
本発明に係る定着部材を具備する定着装置Fは、図4に示すように、主には、用紙Pの下面側に配置される加熱搬送ローラー(搬送ローラー、F1)と、上面側に配置される定着ローラー(第1ローラー、F2)及び定着ローラーF2の上方に配置される加熱ローラー(第2ローラー、F3)と、本発明に係る定着部材である定着ベルト1等、を備えて構成されている。定着装置Fは、加熱搬送ローラーF1及び定着ローラーF2を加熱して圧接することにより形成されたニップ部に用紙Pを通過させることで用紙Pを加熱及び加圧して、転写されたトナー像を用紙Pに定着させるとともに、当該用紙Pを搬送方向下流側に搬送する。
加熱搬送ローラーF1は、ゴムにより円筒状に形成され、加熱ローラーF3と同様、内部に高出力ヒーターを備えている。加熱搬送ローラーF1は、用紙Pの搬送方向に対して順方向に回転し、搬送されてきた用紙Pの非定着面を加熱及び加圧する。
本発明に係る定着部材を具備する定着装置では、定着部材の形態に応じた構成を有する公知の定着装置と同様に構成することができる。例えば、定着部材が上記定着ベルトである場合では、定着装置は、それを用いる構成、つまり二軸張架ベルト定着やパッド押圧ベルト定着、IHベルト定着などを実現する公知の構成を有することが好ましい。
本発明において適用可能な画像形成装置の詳細につては、例えば、特開2017−173445号公報、同2017−194550号公報、同2018−4714号公報、同2018−5016号公報、同2018−25691号公報、同2018−25691号公報、同2018−36449号公報、同2018−36587号公報、同2018−54758号公報、同2018−66768号公報等に記載されている画像形成装置や定着装置を参照することができる。
《トナー》
本発明の定着部材は、電子写真方式の画像形成装置のトナー画像の定着に用いる。
本発明に適用可能な静電潜像現像用トナー(以下、単に「トナー」という。)では、特に制限はなく、例えば、ワックス等の離型剤、結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、外添剤等により構成されている。
本発明に適用可能な現像剤は、トナー母体粒子とその表面に付着している外添剤とによって構成されているトナー粒子のみの一成分現像剤であってもよいし、トナー粒子とこれを担持するキャリア粒子とで構成される二成分現像剤であってもよい。
本発明に適用可能なトナーの詳細な構成とその製造方法に関しては、例えば、特開2018−155912号公報、特開2018−180279号公報、特開2018−205642号公報、特開2019−003101号公報、特開2019−015924号公報、特開2019−015977号公報、特開2019−035906号公報等に記載されている内容を参照することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行った。
《定着ベルトの作製》
〔定着部材1の作製〕
(基材、弾性層及び離型層の積層体ベルト1の作製)
ポリアミド酸と、それに対して8質量%のカーボンブラックとを含有するワニスを円筒金型の外側に回転塗布し、次いで300〜450℃で乾燥させてイミド化して、基材として、内径99mm、長さ360mm、厚さ70μmの円筒形のポリイミド管状物(基材ベルト)を製造した。上記ポリアミド酸は、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンの脱水縮合による重合物である。
次いで、上記基材ベルトの内側に、外径99mmのステンレス製の円筒状の芯金を密着させ、当該基材ベルトの外側に、離型層として、厚さ30μmのペルフルオロアルコキシフッ素系樹脂製のPFAチューブを内周面上に保持する円筒金型を被せ、このようにして上記芯金と上記円筒金型を同軸で保持するとともに、基材と離型層の間にキャビティを形成した。次いで、当該キャビティにシリコーンゴム材料を厚さ200μmとなるように注入して、積層体ベルト1を作製した。
(弾性層の前段加硫処理)
公知の熱風加硫装置を用いて、上記作製した積層体ベルト1を、100℃で30分間の前段加硫処理を行った。弾性層のゴム硬度は、24度であった。
弾性層のゴム硬度は、上記弾性層と同一構成の5mm厚のテストピースを作製し、100℃で30分間の前段加硫処理を行った後、JIS K 6253−3に準拠し、MD−1硬度計(高分子計器(株)製、「マイクロゴム硬度計MD−1型」)を用いて測定した値である。
(ブラスト処理)
次いで、前段加硫処理を施した積層体ベルト1の離型層表面に対し、サンドプラスト処理として、エアーブラスト処理法により、ブラスト材料として、体積平均粒径が70μmのアルミナビーズを用いて、エアー圧0.15MPaで吹付け、図3の(d)で示すような表面凹凸構造を作製した。この凹凸構造は、離型層及び弾性層の表面領域に形成されている。ISO25178に準拠した下記の方法で測定した凹凸構造の面最大高さSzは、62μmであった。
〈面最大高さSzの測定〉
離型層表面の面最大高さSzは、レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製、VK−X250)を用いた表面性状解析により、基準長さにおける輪郭曲線の山高さZpの最大値Spと、谷深さZvの最大値Svとの和(Sz=Sp+Sv)として求めた。詳しくは、ISO 25178に準拠して、離型層の表面積62000μm(287.683μm×215.692μm)の二次元領域の表面プロファイルをレーザー法により測定した。同一サンプルに対して4か所測定したときの平均値を最大高さSzの値として採用した。
(弾性層の後段加硫処理)
公知の熱風加硫装置を用いて、上記作製した凹凸構造を付与した積層体ベルト1を、200℃で2時間の後段加硫処理を行って、定着ベルトである定着部材1を作製した。
上記と同様の方法で測定した弾性層のゴム硬度は、30度であった。
〔定着部材2の作製〕
上記定着部材1の作製において、ブラスト加工で用いたブラスト材料を、アルミナビーズから、同サイズのガラスビーズに変更した以外は同様にして、定着部材2を作製した。
〔定着部材3の作製〕
上記定着部材1の作製において、弾性層の前段加硫処理の条件を、100℃、加熱時間を20分に変更し、ゴム硬度を21度とした以外は同様にして、定着部材3を作製した。
〔定着部材4の作製〕
上記定着部材2の作製において、弾性層の前段加硫処理の条件を、100℃、加熱時間を20分に変更し、ゴム硬度を21度とした以外は同様にして、定着部材4を作製した。
〔定着部材5の作製〕
上記定着部材1の作製において、弾性層の前段加硫処理の条件を、110℃、加熱時間を30分に変更し、ゴム硬度を27度とした以外は同様にして、定着部材5を作製した。
〔定着部材6の作製〕
上記定着部材1の作製において、離型層の膜厚を50μmに変更した以外は同様にして、定着部材6を作製した。
〔定着部材7の作製〕
上記定着部材2の作製において、離型層の膜厚を50μmに変更した以外は同様にして、定着部材7を作製した。
〔定着部材8の作製〕
上記定着部材1の作製において、弾性層に対する加硫処理として、後段加硫処理は行わずに、前段加硫処理を140℃で30分間行った後、続けて200℃で2時間の加硫処理を行った以外は同様にして、定着部材8を作製した。前段加硫処理後の弾性率のゴム硬度は30度であった。
〔定着部材9の作製〕
上記定着部材2の作製において、弾性層に対する加硫処理として、後段加硫処理は行わずに、前段加硫処理を100℃で30分間行った後、続けて200℃で2時間の加硫処理を行った以外は同様にして、定着部材9を作製した。前段加硫処理後の弾性率のゴム硬度は30度であった。
〔定着部材10の作製〕
上記定着部材8の作製において、更にブラスト加工処理を行わなかった以外は同様にして、定着部材10を作製した。
Figure 2021099391
《画像形成装置の作製》
〔画像形成装置1〕
フルカラー複写機「bizhub PRESS C1070」(コニカミノルタ株式会社製)内の定着装置に、上記作製した定着部材1を具備した定着装置を装着した画像形成装置1を作製した。
〔画像形成装置2〜10〕
上記画像形成装置1の作製において、定着部材1に代えて、それぞれ定着部材2〜10を具備した定着装置を装着した以外は同様にして、画像形成装置2〜10を作製した。
《画像形成装置により作成した画像評価》
上記作製した各画像形成装置を用いて画像出力し、下記の評価を行った。
〔初期特性の評価〕
(初期面最大高さSzの測定)
各定着部材の表面を、レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製、VK−X250)を用い、50倍の対物レンズ使用し、ダブルスキャンに設定し、全領域の面最大高さSzを4か所で測定し、その平均値を面最大高さSzとして求めた。
(初期分離性の評価)
A4の普通紙として、mondi社製のカラーコピー用紙(坪量:90g/m)、出力画像として、画像の先端に1mm刻みで任意の余白を有するシアン、マゼンタ2層のべた画像(red)を出力し、定着ベルトに巻き付きがなく通紙できる先端余白を求め、下記の評価基準に従い、初期分離性を評価した。
○:先端余白0mmでも上記ベタ画像の巻き付きなく通紙が可能である
△:先端余白0mmを超え、2mm未満で上記ベタ画像の巻き付きがなく通紙が可能である
×:先端余白が2mm以上、3mm未満で上記ベタ画像の巻き付きがあり、通紙がやや困難である
××:先端余白が3mm以上で上記ベタ画像の巻き付きがあり通紙が、不可能である
〔連続印刷後の評価〕
各画像形成装置を用い、A4普通紙(コニカミノルタ社製 Jペーパー)のY、M、C、Bkの各単色画像を、10%の帯状画像として、10万枚連続して印刷した後、上記初期特性の評価と同様の方法で、面最大高さSzと分離性の評価を行った。
以上により得られた結果を、表IIに示す。
Figure 2021099391
表IIに記載の結果より明らかなように、本発明の構成からなる定着部材及び定着部材を具備した画像形成装置は、初期の面最大高さSz及び定着部材とトナー画像との分離性に優れ、かつ10万枚の印刷を行った後でも、比較例に対しその効果が維持されていることが分かる。
1 定着部材(定着ベルト)
2 基材
3A、3B、3C 弾性層
4 離型層
5 ブラスト材
6 凹凸構造
15 画像形成装置
20 自動原稿搬送部
30 スキャナー部
40 画像形成部
41 感光体ドラム
42 帯電装置
43 露光装置
44 現像装置
45 一次転写ローラー
46 二次転写ローラー
47、48 クリーニング装置
50 給紙部
100 制御部(領域設定部、移動量設定部、ローラー制御部)
B ニップ
D 用紙
F 定着装置(定着ベルト)
F1 加熱搬送ローラー(搬送ローラー)
F2 定着ローラー(第1ローラー)
F3 加熱ローラー(第2ローラー、加熱部)
H1 第1加熱処理
H2 第2加熱処理
V 間隙部

Claims (5)

  1. 少なくとも、基材上に弾性層と離型層を有する定着部材の製造方法であって、
    前記基材と前記離型層の間にゴムを主成分とする弾性層構成材料を用いて弾性層を形成する工程と、
    前記弾性層を構成するゴムに加硫処理を施す前段加硫工程と後段加硫工程を有し、
    前記前段加硫工程と前記後段加硫工程との間で、前記離型層表面に対し、機械的手段により凹凸形状を付与する工程を有することを特徴とする定着部材の製造方法。
  2. 前記加硫工程の前記前段加硫工程後の弾性層のゴム硬度が、前記後段加硫工程後のゴム硬度の90%以下であることを特徴とする請求項1に記載の定着部材の製造方法。
  3. 前記離型層を、ペルフルオロアルコキシフッ素系樹脂フィルムで形成し、前記弾性層を、少なくともシリコーンゴム原料を含む液体を、前記基材と前記離型層との間に注入して形成した後、前記前段加硫工程による加硫処理を施すことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着部材の製造方法。
  4. 前記離型層表面に対し、前記凹凸形状を付与する方法が、ブラスト処理法であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の定着部材の製造方法。
  5. 前記定着部材が、定着ベルトであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の定着部材の製造方法。
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