JP2021098795A - インクジェット捺染用インク組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】印捺物の風合いを損なわず、擦れ等の外的応力に対する耐久性に優れる捺染用インク組成物、インクジェット捺染用インクセット、及びインクジェット捺染方法を提供する。【解決手段】[1]顔料、定着用樹脂、及び水を含有するインクジェット捺染用インク組成物であって、該顔料が顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子の形態であり、該水不溶性ポリマーの酸価が100〜350mgKOH/gであり、該定着用樹脂のシリコーン基含有量が20〜85質量%、該定着用樹脂の23℃における弾性率が1×104〜1×107Pa、インク組成物中の該定着用樹脂の含有量が1〜10質量%である、インクジェット捺染用インク組成物、[2]前記インク組成物と、多価金属塩を含有する処理液とを含む、インクジェット捺染用インクセット、及び[3]特定の工程を有するインクジェット捺染方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット捺染用インク組成物、インクジェット捺染用インクセット、及びインクジェット捺染方法に関する。
捺染とは布地や繊維製品等の布帛に模様をつける着色方法であり、スクリーン捺染法、ローラー捺染法が広く用いられているが、近年、インクジェット印刷方式を利用したインクジェット捺染方法が検討されている。
インクジェット捺染方法は、インク液滴を吐出させ、布帛に付着させて印刷を行う方法であり、その機構が比較的簡便で、高精細、高品位な画像を形成できるという利点がある。また、従来法とは異なり版作成の必要がないため、手早く階調性に優れた画像を形成できるので、少量多品種生産の対応でき、さらに画像として必要な少量のインクしか使用しないため廃液が少ない等、環境的にも優れている。
捺染用インクとしては、染料インクと顔料インクがある。顔料インクは、耐光性が高く、また洗浄等の後処理が不要という点で、染料インクに比べ有利である。
しかし、顔料インクは顔料を繊維に定着させて堅牢性を向上させるために、バインダー成分として定着用樹脂を添加する必要がある。定着用樹脂は、水系インクの液滴が布帛の表面に着弾した後、加熱されることで、布帛の表面に薄い膜を形成する。定着用樹脂を含有する水系インクは、上記膜の中に顔料が保持されることにより、布帛に形成された画像の堅牢性を高めることができると考えられる。しかしながら定着用樹脂由来の硬さにより布帛がごわごわした触感になってしまい、染料インクと比較して繊維の風合いが劣るという問題がある。
印捺物の風合、耐久性等を改善するためのインクジェット捺染用インクとして、種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、風合が損なわれず、塗膜耐久性等に優れる染色物が得られるインクジェット捺染用白色インク組成物として、白色顔料、高分子分散剤、ノニオン性樹脂エマルジョン、水性媒体を含有するインク組成物であって、高分子分散剤が、特定のガラス転移温度(Tg)、酸価、質量平均分子量を有するアニオン性水溶性樹脂を中和して得られる高分子分散剤(A)であり、ノニオン性樹脂エマルジョンがTg20℃以下のノニオン性樹脂エマルジョン(B)であり、かつ前記(A)、(B)が特定の質量比であるインク組成物が開示されている。
特許文献2には、耐擦性、柔軟性に優れる印捺物が得られるインクジェット捺染用インク組成物として、顔料、ウレタン樹脂エマルジョン、エマルジョン型シリコーン化合物、及び水を含有し、ウレタン樹脂エマルジョンの含有量が3.5〜14質量%、エマルジョン型シリコーン化合物の含有量が0.4〜3質量%、水の含有量が20〜80質量%である、インク組成物が開示されている。
特許文献3には、捺染物の風合いを損なうことなく、印字画像の鮮明性、引っかき、擦れ等の外的応力に対する耐久性を有するインクジェット捺染用インク組成物として、着色顔料、高分子分散剤、結着成分、水性媒体及びポリアルキルシロキサンエマルジョンワックスを含有するインク組成物が開示されている。
特開2008−195767号公報 特開2013−194222号公報 特開2011−105915号公報
特許文献1では、布帛の風合いを維持するために、インク中にTgが20℃以下のアクリル系のノニオン性樹脂エマルジョンを定着用樹脂として用いているが、かかる樹脂では得られる布帛の風合いが不十分であった。
特許文献2では、インク中に顔料とウレタン系定着樹脂に加えて、エマルジョン型シリコーンオイルを併用することで柔軟性を改善する試みがなされているが、シリコーンオイルが液体であるため、塗膜の耐久性の点で不十分であった。
特許文献3では、顔料とアクリル系定着用樹脂に加えて、ポリアルキルシロキサンエマルジョンワックスを併用することで風合いを改善する試みがなされているが、印刷後、ポリアルキルシロキサンが表面に浮き上がって疎水膜を形成するため、他色インクとの重ね合わせ適性が低下するという問題があった。
本発明は、印捺物の風合いを損なわず、擦れ等の外的応力に対する耐久性に優れるインクジェット捺染用インク組成物、インクジェット捺染用インクセット、及びインクジェット捺染方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、顔料として、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子の形態であり、該水不溶性ポリマーの酸価が100〜350mgKOH/gであるものを用い、定着用樹脂として、柔軟性と潤滑効果のあるシリコーン基を20〜85質量%含有し、23℃における弾性率が1×10〜1×10Paであるものを用いることにより、上記課題を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明は、次の[1]〜[3]を提供する。
[1]顔料、定着用樹脂、及び水を含有するインクジェット捺染用インク組成物であって、
該顔料が顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子の形態であり、該水不溶性ポリマーの酸価が100mgKOH/g以上350mgKOH/g以下であり、
該定着用樹脂がシリコーン基を有し、かつ、該シリコーン基の含有量が20質量%以上85質量%以下であり、
該定着用樹脂の23℃における弾性率が1×10Pa以上1×10Pa以下であり、
インク組成物中の該定着用樹脂の含有量が1質量%以上10質量%以下である、
インクジェット捺染用インク組成物。
[2]前記[1]に記載のインク組成物と、多価金属塩を含有する処理液とを含む、インクジェット捺染用インクセット。
[3]下記の工程1〜3、又は工程2及び3を有する、インクジェット捺染方法。
工程1:多価金属塩を含有する処理液を布帛に付着させて、処理布帛を得る工程
工程2:工程1で得られた処理布帛又は未処理の布帛に、前記[1]に記載のインク組成物をインクジェット方式で付与して、捺染布帛を得る工程
工程3:工程2で得られた捺染布帛を乾燥させる工程
本発明によれば、印捺物の風合いを損なわず、擦れ等の外的応力に対する耐久性に優れるインクジェット捺染用インク組成物、インクジェット捺染用インクセット、及びインクジェット捺染方法を提供することができる。
[インクジェット捺染用インク組成物]
本発明のインクジェット捺染用インク組成物(以下、単に「本発明インク」ともいう)は、顔料、定着用樹脂、及び水を含有するインクジェット捺染用インク組成物であって、
該顔料が顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子の形態であり、該水不溶性ポリマーの酸価が100mgKOH/g以上350mgKOH/g以下であり、
該定着用樹脂がシリコーン基を有し、かつ、該シリコーン基の含有量が20質量%以上85質量%以下であり、
該定着用樹脂の23℃における弾性率が1×10Pa以上1×10Pa以下であり、
インク組成物中の該定着用樹脂の含有量が1質量%以上10質量%以下である。
本明細書において、「インクジェット捺染」とは、インクジェット方式を利用して印刷媒体である布帛の表面にインクを印刷することをいい、「印捺物」とは、印刷媒体である布帛の表面にインクが印捺(印刷)されて画像が形成されたものをいう。
本発明インクによれば、布帛の風合いを損なうことなく、擦れ等の外的応力に対する耐久性に優れる印捺物を得ることができる。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
本発明においては、定着用樹脂としてシリコーン基含有量が20質量%以上85質量%以下であり、その23℃における弾性率が1×10Pa以上1×10Pa以下であるものを用いることにより、布帛上にインクが着弾して水が繊維に吸着された後、定着用樹脂が速やかに布帛の繊維表面に均一に広がり、顔料粒子を外部からの応力から保護することができると考えられる。
また、この定着用樹脂の塗膜は柔軟性を維持しており、その含有量をインク組成物中、1質量%以上10質量%以下とすることで、布帛の繊維表面の被覆が適切に行われ、ごわつきの発生と繊維のへたりを抑制できると考えられる。
さらに、顔料が顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子の形態であり、該水不溶性ポリマーの酸価が100mgKOH/g以上350mgKOH/g以下であることで、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子が上記定着用樹脂によって強固に布帛に定着され、耐久性が高められると考えられる。
<顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子>
本発明においては、印捺物の風合いを損なわず、外的応力に対する耐久性を向上させる観点から、顔料は、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子(以下、「顔料含有ポリマー粒子」ともいう)の形態で用いる。
本明細書において、顔料含有ポリマー粒子とは、水不溶性ポリマーが顔料を包含した形態の粒子、水不溶性ポリマーと顔料からなる粒子の表面に顔料の一部が露出している形態の粒子、水不溶性ポリマーが顔料の一部に吸着している形態の粒子のいずれか又はこれらの混合物を意味する。
(顔料)
本発明で用いられる顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物等が挙げられ、黒色インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。白色インクにおいては、二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等の金属酸化物等が挙げられる。これらの金属酸化物は、チタンカップリング剤、シランカップリング剤、高級脂肪酸金属塩等の公知の疎水化処理剤で表面処理されたものであってもよい。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
色相は特に限定されず、有彩色インクにおいては、イエロー、マゼンタ、シアン、レッド、ブルー、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。
前記顔料は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
(顔料含有ポリマー粒子を構成するポリマー)
顔料含有ポリマー粒子は、前記の顔料と、顔料分散能を有する水不溶性ポリマー(以下、「ポリマーa」ともいう)とからなる。
本明細書において「水不溶性ポリマー」とは、105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを、25℃の水100gに飽和するまで溶解させたときに、その溶解量が10g未満であるものをいい、その溶解量は、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下である。ポリマーaがアニオン性ポリマーの場合、その溶解量は、ポリマーaのアニオン性基を水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。
(ポリマーa)
ポリマーaは、水を主成分とする水系媒体に顔料を分散させる顔料分散能を有するポリマーである。ポリマーaとしては、ビニル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー等が挙げられる。これらの中では、印捺物の風合いを損なわず、外的応力に対する耐久性を向上させる観点から、ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物等のビニル単量体の付加重合により得られるビニル系ポリマーが好ましい。
ビニル系ポリマーは、イオン性基を有することが好ましい。ポリマーaのイオン性基は、顔料含有ポリマー粒子の分散安定性、保存安定性を向上させる観点から、(a−1)イオン性モノマー(以下「(a−1)成分」ともいう)によりポリマーaの骨格に導入されてなるものが好ましい。
また、ポリマーaは疎水性基を有することが好ましい。ポリマーaの疎水性基は、上記と同様の観点から、(a−2)疎水性モノマー(以下「(a−2)成分」ともいう)によりポリマーaの骨格に導入されてなるものが好ましい。
すなわち本発明において、ビニル系ポリマーは、(a−1)イオン性モノマーと、(a−2)疎水性モノマーとを含むモノマー混合物A(以下、「モノマー混合物A」ともいう)を共重合させてなるビニル系ポリマーがより好ましい。
ポリマーaは、上記と同様の観点から、更にノニオン性基を有することができる。ポリポリマーaのノニオン性基は、(a−3)ノニオン性モノマーによりポリマーaの骨格に導入することができる。
〔(a−1)イオン性モノマー〕
(a−1)イオン性モノマーとしては、アニオン性モノマー、カチオン性モノマーが挙げられるが、アニオン性モノマーが好ましく、酸基を有するモノマーがより好ましく、カルボン酸モノマーが更に好ましい。
(a−1)イオン性モノマーの具体例としては、特開2018−80255号公報の段落〔0017〕に記載のものが挙げられる。それらの中では、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上が好ましい。
本発明において、(a−1)イオン性モノマーによってポリマーaに導入されたイオン性基は、顔料含有ポリマー粒子を構成する際、その一部又は全部が塩基性化合物によって中和されていることが好ましい。ポリマーaが中和されている状態であれば、ポリマーaはイオン性を帯び、顔料を水系媒体中で分散させることができる。
〔(a−2)疎水性モノマー〕
(a−2)疎水性モノマーとは、モノマーを25℃のイオン交換水100gへ飽和するまで溶解させたときに、その溶解量が10g未満であるものをいい、その溶解量は、顔料への定着性の観点から、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下である。
(a−2)疎水性モノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、芳香環含有モノマー、マクロモノマーから選ばれる1種以上が好ましく、芳香環含有モノマー及びマクロモノマーから選ばれる1種以上がより好ましい。
(a−2)疎水性モノマーの具体例としては、特開2018−80255号公報の段落〔0018〕に記載のものが挙げられる。これらの中では、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー、ベンジル(メタ)アクリレート、及びスチレンマクロマーから選ばれる1種以上が好ましい。
〔(a−3)ノニオン性モノマー〕
(a−3)ノニオン性モノマーとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上が好ましい。
ノニオン性モノマー(a−3)の具体例としては、特開2018−80255号公報の段落〔0022〕に記載のものが挙げられる。それらの中では、メトキシポリエチレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、フェノキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上が好ましい。
上記(a−1)〜(a−3)成分は、それぞれ、各成分に含まれるモノマー成分を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(モノマー混合物A中の各成分又はポリマーa中の各構成単位の含有量)
ポリマーa製造時における、(a−1)〜(a−3)成分のモノマー混合物A中の含有量(未中和量としての含有量。以下同じ)又はポリマーa中における(a−1)〜(a−3)成分由来の構成単位の含有量は、顔料含有ポリマー粒子の分散安定性を向上させる観点から、次のとおりである。
(a−1)成分の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
(a−2)成分の含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
(a−3)成分を含有する場合、その含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
(a−2)成分に対する(a−1)成分の質量比[(a−1)/(a−2)]は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上であり、そして、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.0以下、更に好ましくは0.8以下である。
本発明においてポリマーa中における(a−1)〜(a−3)成分由来の構成単位の含有量は、測定により求めることができるし、ポリマーaの製造時における(a−1)〜(a−3)成分を含む原料モノマーの仕込み比率で代用することもできる。このうち(a−1)成分の含有量は電位差滴定法で求めるのが好適であり、(a−2)成分と(a−3)成分の含有量は原料モノマーの仕込み比率を用いるのが好適である。
本発明において顔料含有ポリマー粒子は、後述するように、その一部又は全部に架橋構造を有するものが好ましい。架橋構造とは、顔料含有ポリマー粒子を構成するポリマーaのイオン性基の一部又は全部が、イオン性基と反応可能な官能基を2以上有する化合物、すなわち架橋剤と反応して網目状となった構造をいう。
すなわち、本明細書において「顔料含有ポリマー粒子」は、顔料を含有するポリマー粒子と、顔料を含有する架橋ポリマー粒子の両方を意味する。
(ポリマーaの製造)
ポリマーaは、モノマー混合物Aを公知の重合法で共重合させることにより製造することができる。重合法としては溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒に制限はないが、水、低級脂肪族アルコール、ケトン、エーテル類、エステル類等の極性溶媒が好ましく、ポリマーの溶媒への溶解性の観点から、炭素数3以上5以下のケトンが好ましい。重合の際には、過硫酸塩、水溶性アゾ化合物等の重合開始剤や、メルカプタン類等の重合連鎖移動剤を用いることができる。
重合温度は、使用する重合開始剤、モノマー、溶媒の種類等によって異なるが、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上であり、そして、好ましくは95℃以下、より好ましくは80℃以下である。
ポリマーaの重量平均分子量は、顔料の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは6000以上、より好ましくは8000以上,更に好ましくは1万以上であり、そして、好ましくは30万以下、より好ましくは20万以下、更に好ましくは10万以下である。
ポリマーaの重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定される。
ポリマーaの酸価は、本発明インクの保存安定性を向上させる観点から、100mgKOH/g以上であり、好ましくは110mgKOH/g以上、更に好ましくは120mgKOH/g以上である。ポリマーaの酸価は、印捺物の風合いを損なわず、外的応力に対する耐久性を向上させる観点から、350mgKOH/g以下であり、好ましくは300mgKOH/g以下、より好ましくは270mgKOH/g以下である。
ポリマーaの酸価は、インク又は顔料水分散体の状態で電位差滴定で測定する方法や、用いたポリマー、架橋剤の仕込み量から算出する方法で求めることができる。より具体的には、実施例に記載の方法により測定される。
ポリマーaは、商業的に入手しうるものを用いてもよい。ポリマーaの市販品例としては、「ジョンクリル67」、「ジョンクリル611」、「ジョンクリル678」、「ジョンクリル680」、「ジョンクリル690」、「ジョンクリル819」(以上、BASFジャパン株式会社製)等のスチレン−アクリル系樹脂等が挙げられる。
〔顔料含有ポリマー粒子の製造〕
顔料含有ポリマー粒子は、効率的に製造する観点、及び印捺物の風合いを損なわず、外的応力に対する耐久性を向上させる観点から、顔料を含有するポリマー粒子を架橋し、顔料を含有する架橋ポリマー粒子とすることが好ましい。その製造は、下記の工程I及び工程IIIを有する方法により、顔料を含有する架橋ポリマー粒子を水系媒体に分散させた顔料分散体Aとして得ることが好ましい。
工程I:ポリマーaを溶媒に溶解してポリマーaの溶液を得た後、顔料、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を加えて混合し、顔料混合物からなる顔料分散体Aを得る工程
工程Iにおいては、顔料を効率的にポリマー粒子に含有させるために、溶媒が有機溶剤を含むことが好ましく、その場合、工程Iに加えて、更に下記工程IIを有してもよい。
工程II:工程Iで得られた顔料混合物から有機溶剤を除去して、顔料分散体Aを得る工程
工程III:工程I又は工程IIで得られた顔料分散体Aと、架橋剤とを混合し、顔料を含有する架橋ポリマー粒子を得る工程
(工程I)
工程Iにおいて、ポリマーaを溶解させる溶媒に制限はないが、顔料への濡れ性、ポリマーaの溶解性、及び顔料への吸着性の観点から、水、低級脂肪族アルコール、ケトン、エーテル類、エステル類等から選ばれる1種以上が好ましく、水、炭素数3以上5以下のケトンから選ばれる1種以上がより好ましく、水とケトンの併用が更に好ましい。ポリマーaを溶液重合法で合成した場合には、重合で用いた溶媒をそのまま用いてもよい。
ポリマーaがアニオン性ポリマーの場合、中和することが好ましい。中和剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、各種アミン等の塩基が挙げられる。また、ポリマーaを予め中和しておいてもよい。
ポリマーaのアニオン性基の中和度は、本発明インクの保存安定性を向上させる観点から、ポリマーaのアニオン性基のモル当量数に対する中和剤のモル当量の比で、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、更に好ましくは50モル%以上であり、そして、好ましくは250モル%以下、より好ましくは200モル%以下、更に好ましくは150モル%以下である。
工程Iにおいて、得られた顔料混合物に機械力を付与して分散処理することが好ましい。機械力を付与する方法に特に制限はないが、例えば、特開2018−83938号公報の段落〔0032〕に記載の方法が挙げられる。機械力を付与する装置としては、顔料を効率よく小粒子径化する観点から、メディア式分散機が好ましい。
分散処理を行う場合、分散圧力等を制御することにより、顔料を所望の粒径になるように調整することができる。
(工程II)
工程IIにおいて得られる顔料分散体A中の有機溶剤は実質的に除去されていることが好ましいが、本発明の目的を損なわない限り、残存していてもよい。
顔料分散体A中の顔料を含有するポリマー粒子の平均粒径は、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは60nm以上、より好ましくは70nm以上、更に好ましくは80nm以上であり、そして、好ましくは300nm以下、より好ましくは250nm以下、更に好ましくは200nm以下である。
下記の工程IIIで、架橋処理した場合も、得られる顔料分散体A中の顔料含有架橋ポリマー粒子の平均粒径は、前記顔料を含有するポリマー粒子の平均粒径と同等である。
なお、前記平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
(工程III)
工程IIIで、顔料を含有するポリマー粒子を構成するポリマーaのカルボキシ基の一部を架橋し、顔料を含有するポリマー粒子の表層部の一部又は全部に架橋構造を形成させることができる。この架橋処理によりポリマーaの膨潤等が抑制されて、インクの保存安定性、外的応力に対する耐久性が向上すると考えられる。
架橋剤の具体例としては特開2018−80255号公報の段落〔0041〕に記載のものが挙げられる。それらの中では、水不溶性の化合物が好ましく、炭素数3以上8以下の炭化水素基を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル化合物がより好ましく、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル及びトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルから選ばれる1種以上が更に好ましい。
架橋剤を使用する場合、架橋率は、ポリマーaのカルボキシ基のモル当量数に対する架橋剤の架橋性官能基のモル当量数の比で、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上であり、そして、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは60モル%以下である。
架橋処理の温度は、反応性と経済性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは55℃以上であり、そして、好ましくは95℃以下、より好ましくは80℃以下である。
顔料分散体Aの固形分濃度は、顔料分散体の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
固形分濃度は、実施例に記載の方法により測定される。
顔料分散体A中の顔料の含有量は、分散安定性の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
顔料分散体A中の顔料を含有する架橋ポリマー粒子を構成するポリマーaと架橋剤の合計と、顔料の質量比[(ポリマーa+架橋剤)/顔料]は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.2以上であり、そして、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.7以下、更に好ましくは0.5以下である。
<定着用樹脂>
本発明インクは、印捺物の風合いを損なわず、外的応力に対する耐久性を向上させる観点から、シリコーン基を有し、特定の弾性率を有する定着用樹脂を含有する。
定着用樹脂のシリコーン基含有量、すなわち、定着用樹脂全体に対するシリコーン基の占める割合は、布帛の風合いを良好に保つ観点から、20質量%以上であり、好ましくは25質量%以上、より好ましくは28質量%以上、更に好ましくは35質量%以上、より更に好ましくは40質量%以上であり、そして、85質量%以下であり、好ましくは82質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下、より更に好ましくは65質量%以下である。
また、定着用樹脂の23℃における弾性率は、外的応力に対する耐久性を向上させる観点から、1×10Pa以上であり、好ましくは2×10Pa以上、より好ましくは4×10Pa以上、更に好ましくは6×10Pa以上であり、得られる布帛の風合いを良好に保つ観点から、1×10Pa以下であり、好ましくは7×10Pa以下、より好ましくは3×10Pa以下、更に好ましくは1×10Pa以下である。
弾性率は実施例に記載の方法により測定される。
本発明において、定着用樹脂はエマルジョン状態で本発明インク中に含有されることが好ましい。
定着用樹脂は合成することもできるが、市販品を用いてもよい。
<水溶性有機溶媒>
本発明インクは水溶性有機溶媒を含むことが好ましい。水溶性有機溶媒は、定着用樹脂と顔料含有ポリマー粒子との間に均一な皮膜を形成させ、更にこの皮膜を布帛に密着させるために用いられる。
水溶性有機溶媒は、上記の観点から、アルキレングリコールを含有することが好ましい。
アルキレングリコールとしては、定着用樹脂との親和性を高める観点から、好ましくは炭素数2以上6以下、より好ましくは炭素数3以上5以下、更に好ましくは炭素数3又は4の脂肪族ジオールから選ばれる1種以上が好ましく、プロピレングリコール(沸点187℃)、1,2−ブタンジオール(沸点190℃)、1,3−ブタンジオール(沸点207℃)等から選ばれる1種以上がより好ましく、プロピレングリコールが更に好ましい。
水溶性有機溶媒は、本発明インクにおいて、良好な皮膜を形成させる観点から、アルキレングリコールエーテルを含有してもよい。アルキレングリコールとしては、アルキレン基の炭素数が1以上6以下、好ましくは3以上6以下のモノアルキレングリコールエーテルが挙げられる。アルキレングリコールエーテルを構成するグリコールエーテルとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプロピルエーテル等が挙げられる。
<界面活性剤>
本発明インクは、吐出安定性を向上させる観点から、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、非イオン界面活性剤が好ましく、シリコーン系界面活性剤及びアセチレングリコール系界面活性剤から選ばれる一種以上がより好ましく、シリコーン系界面活性剤の少なくとも一種とアセチレングリコール系界面活性剤を少なくとも二種を組み合わせて用いることが更に好ましい。
シリコーン系界面活性剤の市販品例としては、日信化学工業株式会社製の「シルフェイス」シリーズ、信越化学工業株式会社の「KF」シリーズ、ビッグケミー社製の「BYK」シリーズ等が挙げられる。
アセチレングリコール系界面活性剤の市販品例としては、エアープロダクツアンドケミカルズ社製又は日信化学工業株式会社製の「サーフィノール」シリーズ、「オルフィン」シリーズ、川研ファインケミカル株式会社製の「アセチレノール」シリーズ等が挙げられる。
[インクジェット捺染用インク組成物の製造]
本発明インクは、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子、定着用樹脂、水と、必要に応じて、水溶性有機溶媒、界面活性剤等とを混合することにより、効率的に製造することができる。それらの混合方法に特に制限はない。
本発明インクの各成分の含有量、インク物性は、印捺物の風合いを損なわず、外的応力に対する耐久性を向上させる観点、印捺濃度を向上させる観点から、以下のとおりである。
(顔料の含有量)
本発明インク中の顔料の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、そして、好ましくは12質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましく8質量%以下である。
(顔料含有ポリマー粒子の含有量)
本発明インク中の顔料含有ポリマー粒子の含有量は、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
(定着用樹脂の含有量)
本発明インク中の定着用樹脂の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下である。
顔料含有ポリマー粒子に対する定着用樹脂の質量比〔定着用樹脂/顔料含有ポリマー粒子〕は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.4以上、更に好ましくは0.6以上であり、そして、好ましくは2以下、より好ましくは1.8以下、更に好ましくは1.5以下である。
(水溶性有機溶媒の含有量)
本発明インクが水溶性有機溶媒を含む場合、その含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
水溶性有機溶媒がプロピレングリコールを含む場合、水溶性有機溶媒全体に対するプロピレングリコールの割合は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下であり、100質量%が最も好ましい。
(界面活性剤の含有量)
本発明インクが界面活性剤を含む場合、その含有量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.7質量%以上、更に好ましくは0.9質量%以上であり、そして、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.7質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下である。
本発明インクがシリコーン系界面活性剤を含む場合、その含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上であり、そして、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以下である。
本発明インクがアセチレングリコール系界面活性剤を含む場合、その含有量は、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、そして、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.3質量%以下、更に好ましくは1.2質量%以下である。
(水の含有量)
本発明インク中の水の含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である。
<水系インクの物性>
本発明インク中の32℃における粘度は、好ましくは2mPa・s以上、より好ましくは3mPa・s以上、更に好ましくは4mPa・s以上であり、そして、好ましくは20mPa・s以下、より好ましくは15mPa・s以下、更に好ましくは12mPa・s以下である。
20℃におけるインクのpHは、好ましくは5以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは7以上であり、そして、好ましくは11以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは9.5以下である。
[インクジェット捺染用インクセット]
本発明のインクジェット捺染用インクセット(以下、単に「インクセット」ともいう)は、本発明インクと、多価金属塩を含有する処理液とを含む。
前記処理液は、本発明インクに含まれる顔料含有ポリマー粒子、定着用樹脂等の成分と反応することで、それらを凝集させると共に、定着用樹脂を析出させて、布帛上のインクドットに強固な被膜を形成させ、固定化する作用を有する。
(多価金属塩)
多価金属塩とは、2価以上の金属イオンとアニオンから構成される化合物である。2価以上の金属イオンとしては、カルシウム、マグネシウム、銅、ニッケル、亜鉛、バリウム、アルミニウム、チタン、ストロンチウム、クロム、コバルト、鉄等のイオンが挙げられる。これらの中では、印捺物の風合いを損なわず、外的応力に対する耐久性を向上させる観点から、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンが好ましく、カルシウムイオンがより好ましい。
多価金属塩を構成するアニオン(多価金属の対イオン)としては、無機イオン又は有機イオンがあり、無機イオンとしては、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、水酸化物イオン等が挙げられ、有機イオンとしては、カルボン酸イオン等の有機酸イオンが挙げられる。
多価金属塩の具体例としては、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、塩化バリウム、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、硝酸銅等が挙げられる。多価金属塩は、原料形態において水和水を有していてもよい。これらの中でも、水溶性を確保し、凝集剤の跡残りを低減する観点から、硝酸カルシウム、塩化カルシウムが好ましく、硝酸カルシウムがより好ましい。
上記の多価金属塩は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明で用いられる処理液は、必要に応じて、有機酸、カチオン性樹脂、金属キレート剤等の凝集剤を更に含有することができる。
有機酸としては、ポリ(メタ)アクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸等が挙げられる。
カチオン性樹脂としては、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
金属キレート剤としては、アルミニウム、亜鉛、カドミウム、ニッケル、コバルト、銅、カルシウム、バリウム、チタン、マンガン、鉄、鉛、ジルコニウム、クロム、スズ等の金属に窒素含有基を有するアセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、乳酸エチル、サリチル酸メチル等が配位した金属キレート化合物等が挙げられる。
本発明のインクセットは、色相の異なる2種以上のインクを含むことが好ましい。
色相の異なる2種以上のインクとは、黒色、白色及び有彩色から選ばれる2種以上のインクをいう。有彩色には、減法混色の3原色であるマゼンタ、イエロー及びシアンの他、ライトシアン、ダークイエロー、ライトマゼンタ、ライトブラック等の濃さが異なる色が含まれる。更に、レッド、ブルー、オレンジ、グリーン、バイオレットから選ばれる1種以上の色を追加すると、色再現範囲を広くすることができて好ましい。
本発明のインクセットは、これらの2種以上のインクの組み合わせを含み、2色インクセット、3色インクセット、4色インクセット、5色インクセット、6色インクセット、7色インクセット等を備えたインクセットが好ましい。
本発明においては、インクジェット印刷装置の各色用インクカートリッジに、本発明インクを2種以上含むインクセットを装着し、各インクカートリッジに対応する各吐出ノズルからインク液滴をそれぞれ吐出させて、布帛に印刷させることができる。
[インクジェット捺染方法]
本発明のインクジェット捺染方法は、下記の工程1〜3、又は工程2及び3を有する。
工程1:多価金属塩を含有する処理液を布帛に付着させて、処理布帛を得る工程
工程2:工程1で得られた処理布帛又は未処理の布帛に、本発明インクをインクジェット方式で付与して、捺染布帛を得る工程
工程3:工程2で得られた捺染布帛を乾燥させる工程
工程1は、処理液を布帛に付着させる工程である。処理液を、布帛の印捺領域に付着させる方法に特に制限はない。布帛に非接触又は接触させる方式のどちらを採用してもよい。非接触で付着させる方式としては、インクジェット印刷装置を用いる方法、エアスプレー等のように流速を有する気体に微小液滴を同伴させる方法等が挙げられる。また、接触させて付着させる方式としては、ローラー圧着法、ブラッシング法、浸漬法等が挙げられる。これらの中では、液体成分の布帛への付与量をできる限り少なくする観点から、布帛に非接触で付着させる方式が好ましい。
前処理剤の布帛への付着量は、印捺濃度の観点から、乾燥後質量で、好ましくは1g/m以上、より好ましくは2g/m以上、更に好ましくは3g/m以上、より更に好ましくは4g/m以上であり、そして、風合いを損なわないようする観点から、好ましくは40g/m以下、より好ましくは30g/m以下、更に好ましくは20g/m以下、より更に好ましくは15g/m以下である。
印刷媒体である布帛としては、特に限定されず、例えば、綿、絹、麻等の天然繊維、レーヨン繊維、アセテート繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維等の合成繊維からなる布帛、及びこれら繊維の2種以上からなる混紡布帛等が挙げられる。
工程2では、工程1で得られた処理布帛又は未処理の布帛に、本発明インクをインクジェット方式で付与して、捺染布帛を得るが、処理液を付着させた部分に、本発明インクを付与して、捺染布帛を得ることが好ましい。
インクジェット捺染装置としては、ドロップオンデマンド型の装置が挙げられる。この装置としては、ヘッドに配設された圧電素子を用いたピエゾ式、ヘッドに配設された発熱抵抗素子のヒーター等による熱エネルギーを用いたサーマル式等が挙げられる。これらの中では、ピエゾ式のインクジェット捺染装置がより好ましい。
インクジェットヘッドの印捺解像度は、印捺濃度の観点から、600dpi(Dots Per Inch)以上であることが好ましく、720dpi以上であることがより好ましい。
工程3では、工程2で得られた捺染布帛を乾燥させる。
布帛を乾燥方法に特に制限はないが、処理液の定着性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上で、そして、布帛及び処理液の劣化防止の観点から、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下で、1分間以上1時間以下加熱して乾燥することができる。
加熱方法としては、ヒートプレス法、熱風乾燥法、常圧〜高圧スチーム法、及び赤外線(ランプ)によるサーモフィックス法等が挙げられる。これらの乾燥法は単独で用いても、複数を併用してもよい。これらの中では、布帛等へのダメージを軽減し効率よく乾燥させる観点から、熱風乾燥法が好ましい。
乾燥後は、印捺物を水洗し、必要に応じて、未固着の処理液を洗い落とすソーピング処理を行ってもよい。
このようにして、布帛上に、本発明のインクセットに由来する画像が形成された印捺物を得ることができる。
以下の製造例、調製例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。なお、各物性等の測定方法は以下のとおりである。
(1)ポリマーの重量平均分子量及び数平均分子量の測定
N,N−ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲルクロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8120GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSK−GEL、α−M×2本)、流速:1mL/min〕により、標準物質として分子量既知の単分散ポリスチレンを用いて測定した。
(2)顔料含有ポリマー粒子を構成するポリマーの酸価の測定
電位差自動滴定装置(京都電子工業株式会社製、電動ビューレット、型番:APB−610)に樹脂をトルエンとアセトン(2+1)を混合した滴定溶剤に溶かし、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体を投入して電位差滴定法により0.1N水酸化カリウム/エタノール溶液で滴定し、滴定曲線上の変曲点を終点とした。電位差滴定はJISK0070−1992に記載の「化学製品の酸価,けん化価,エステル価,よう素価,水酸基価及び不けん化物の試験方法」の酸価の項に準拠して行った。
(3)シリコーン基量の測定
シリコーン基含有樹脂の水分散体を乾固し、その100mgをテトラメチルシランを含有しない重クロロホルム(NMR用クロロホルム−d1(重水素化率99.8%)、関東化学株式会社製)2.0mlで希釈し、直径5.0mmの1H−NMR用チューブを用いて、Agilent-NMR-vnmrs400(varian社製、400MHz)により、パルス幅:45μs(45°パルス)、観測幅:6410Hz、待ち時間:10s、積算回数:8回、測定温度:室温の条件下で、プロトンNMR測定を行い、ケミカルシフト値0−0.5ppm(テトラメチルシランのメチル基の水素のケミカルシフト値を0とする)の範囲のプロトンの積分値を算出する。また既知の濃度のテトラメチルシランを同NMR装置で測定した結果から該積分値に基づき、シリコーンのSi元素に直接結合したメチル基(CH3)のプロトン(H)とみなしてシリコーン基含有樹脂におけるシラン原子の質量を算出し、シリコーン基量(質量%)とした。
(4)顔料水分散体の固形分濃度の測定
30mlのポリプロピレン製容器(φ:40mm、高さ:30mm)にデシケーター中で恒量化した硫酸ナトリウム10.0gを量り取り、そこへサンプル約1.0gを添加して、混合させた後、正確に秤量し、105℃、ゲージ圧−0.08MPaの環境下にて2時間維持して、揮発分を除去し、更に室温(25℃)のデシケーター内で更に15分間放置したのちに、質量を測定した。揮発分除去後のサンプルの質量を固形分として、添加したサンプルの質量で除して固形分濃度とした。
(5)顔料水分散体の平均粒径の測定
レーザー粒子解析システム「ELS−8000」(大塚電子株式会社製)を用いてキュムラント解析を行い、平均粒径を測定した。測定する粒子の濃度が5×10-3重量%(固形分濃度換算)になるよう水で希釈した分散液を用いた。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力し、得られたキュムラント平均粒径を顔料分散体中の粒子の平均粒径とした。
(6)定着用樹脂の弾性率の測定
ポリプロピレン製ディスポビ−カー1L(アズワン株式会社製)に樹脂固形分が3gになるように樹脂分散液を滴下し、さらに全量が30gになるよう精製水を添加した。25℃、ゲージ圧−0.08MPaの環境下にて、72時間乾燥させた後に、常圧に戻し、80℃まで昇温した状態で6時間乾燥させた。樹脂膜を取り出した後にシリコーンフィルムの上に乗せ、さらに150℃の温度で3分間維持し、乾燥樹脂膜を得た。
スライド式 M-30 u-mate デジタルマイクロメータ(ソニーマグネスケール株式会社製)を用いて該乾燥樹脂膜の厚みを測定し、測定部の厚みが0.5mmの部分を選んで、試験片をJIS K7160〜2に規定の寸法にてダンベル型に切り出した。テンシロン万能材料試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、TENSIRON RTC-1150A)を用いて荷重フルスケール50N、引っ張り速度5mm/minの条件にて、23℃の環境雰囲気下のもと乾燥樹脂膜試験片の引っ張り試験を行った。
得られた応力−ひずみ曲線の傾きより、樹脂弾性率を算出した。またその他詳細な条件に関してはJIS−K7161を参考にして測定を行った。
〔顔料分散ポリマーの製造〕
製造例a1(ポリマーa1の製造)
アクリル酸62部、スチレン129部、α−メチルスチレン9部を混合しモノマー混合液を調製した。
反応容器内に、メチルエチルケトン20部及び2−メルカプトエタノール(重合連鎖移動剤)0.3部、前記モノマー混合液の10%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行った。
別途、滴下ロートに、前記モノマー混合液の残りの90%、前記重合連鎖移動剤0.27部、メチルエチルケトン60部、及びアゾ系ラジカル重合開始剤(富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名:V−65、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル))2.2部の混合液を入れ、窒素雰囲気下、反応容器内の前記モノマー混合液を撹拌しながら65℃まで昇温し、滴下ロート中の混合液を3時間かけて滴下した。滴下終了から65℃で2時間経過後、前記重合開始剤0.3部をメチルエチルケトン5部に溶解した溶液を加え、さらに65℃で2時間、70℃で2時間熟成させ、ポリマーa1(重量平均分子量:12,500)の溶液を得た。
ポリマーa1の酸価は原料モノマーの仕込み比から241mgKOH/gと計算される。
比較製造例a2(ポリマーa2の製造)
2つの滴下ロート1及び2を備えた反応容器内に、ベンジルメタクリレート39.9部、スチレンマクロマー(東亜合成株式会社製、商品名:AS−6S、固形分50%)14.0部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステルM90G)14.0部、メチルエチルケトン16.8部、2−メルカプトエタノール0.4部を入れて混合し、窒素ガス置換を行い、初期仕込みモノマー溶液を得た。
一方、メタクリル酸72.8部、ベンジルメタクリレート319.2部、スチレンマクロマー126.0部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート112.0部、メチルエチルケトン173.3部、2−メルカプトエタノール2.4部、アゾ系ラジカル重合開始剤(V−65)5.6部を混合して滴下ロート1中に入れて、窒素ガス置換を行った。
また、メタクリル酸18.2部、ベンジルメタクリレート39.9部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート14.0部、メチルエチルケトン126.0部、2−メルカプトエタノール0.7部、アゾ系ラジカル重合開始剤(V−65)1.4部を混合して、滴下ロート2中に入れて、窒素ガス置換を行った。
窒素雰囲気下、反応容器内の初期仕込みモノマー溶液を攪拌しながら77℃に維持し、滴下ロート1中の内容物を3時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。次いで滴下ロート2中の内容物を2時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。滴下終了後、反応容器内の混合溶液を77℃で0.5時間攪拌した。次いで前記の重合開始剤(V−65)1.1部をメチルエチルケトン47.3部に溶解した重合開始剤溶液を調製し、該混合溶液に加え、77℃で0.5時間攪拌することで熟成を行った。前記重合開始剤溶液の調製、添加及び熟成を更に5回行った。
次いで反応容器内の反応溶液を80℃に1時間維持し、固形分濃度は45.2%になるようにメチルエチルケトン約200部を加えてポリマーa2(重量平均分子量:30000)の溶液を得た。
ポリマーa2の酸価は原料モノマーの仕込み比から85mgKOH/gと計算される。
<顔料水分散体の調製>
調製例I−1(顔料水分散体I−1の調製)
(1)製造例a1で得られた顔料分散ポリマーa1の溶液を減圧乾燥により溶媒を完全に除去して得られたポリマーA1 32部をイオン交換水202部と混合し、更に、5N水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム固形分16.9%)12.8部(中和度40モル%)を加え、温浴を用いて90℃まで加熱し、1時間撹拌してポリマーを水中に完全に分散させ、室温(25℃)まで冷却して、ポリマー分散液を得た。
(2)上記(1)で得られたポリマー分散液に、カーボンブラック顔料(C.I.ピグメント・ブラック7、キャボット社製、商品名:Monarch717)100部を加え、ディスパー(淺田鉄工株式会社製、商品名:ウルトラディスパー)を用いて、20℃でディスパー翼を6,000rpmで回転させる条件で3時間撹拌した。次いで、イオン交換水124部を加え、マイクロフルイダイザー(MICROFLUIDICS社製、商品名)で150MPaの圧力で15パス分散処理した。得られた分散液を500mlアングルローターに投入し、高速冷却遠心機(日立工機株式会社製、商品名:himac CR22G、設定温度20℃)を用いて3,660rpmで20分間遠心分離した後、液層部分を回収して5μmのメンブランフィルター(ザルトリウス社製、商品名:ミニザルト)で濾過して顔料水分散体1を得た。このとき顔料水分散体1の固形分濃度は25%、顔料水分散体1に含まれる顔料粒子の平均粒径は99nmであった。
(3)上記(2)で得られた顔料水分散体1のうちの100部をねじ口付きガラス瓶に取り、イオン交換水32部を加え、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、水不溶性架橋剤、商品名:デナコールEX−321LT、エポキシ価140)1.8部を加えて密栓し、スターラーで撹拌しながら70℃で5時間加熱した。このとき、ポリマー中に含まれるカルボキシ基の総数の50%と反応できるエポキシ量の架橋剤量にて架橋処理を行った(架橋率50モル%)。5時間経過後、室温(25℃)まで降温し、前記5μmのフィルターを取り付けた容量25mLの針なしシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過して、顔料を含有するポリマー粒子1の顔料水分散体I−1を得た(固形分濃度:20質量%)。顔料を含有するポリマー粒子1の電位差滴定による酸価は121mgKOH/gであった。
比較調製例I−2(顔料水分散体I−2の調製)
(1)比較製造例a2で得られた顔料分散ポリマーa2の溶液を減圧乾燥により溶媒を完全に除去して得られたポリマーA2 32部をイオン交換水202部と混合し、更に、5N水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム固形分16.9%)4.6部(中和度40モル%)を加え、温浴を用いて90℃まで加熱し、1時間撹拌を行うことでポリマーを水中に完全に分散させ、室温(25℃)まで冷却して、ポリマー分散液を得た。
(2)上記(1)で得られたポリマー分散液を用いて、製造例I−1(2)と同様にして顔料水分散体2を得た。このとき顔料水分散体2の固形分濃度は25%、顔料水分散体2に含まれる顔料粒子の平均粒径は108nmであった。
(3)上記(2)で得られた顔料水分散体2のうちの100部をねじ口付きガラス瓶に取り、イオン交換水32部を加え、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、水不溶性架橋剤、商品名:デナコールEX−321LT、エポキシ価140)0.6部を加えて密栓し、スターラーで撹拌しながら70℃で5時間加熱した。このとき、ポリマー中に含まれるカルボキシ基の総数の50%と反応できるエポキシ量の架橋剤量にて架橋処理を行った(架橋率50モル%)。5時間経過後、室温(25℃)まで降温し、前記5μmのフィルターを取り付けた容量25mLの針なしシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過して、顔料を含有するポリマー粒子2の顔料水分散体I−2を得た(固形分濃度:20質量%)。顔料を含有するポリマー粒子2の電位差滴定による酸価は43mgKOH/gであった。
比較調製例I−3(顔料水分散体I−3の調製)
自己分散カーボンブラック分散液(SENSIENT社製、商品名:SENSIJET BLACK SDP100、固形分濃度15%)1000gをスターラーで撹拌しながら、1Nの水酸化ナトリウム水溶液19.3gを1g/秒の速度で滴下した。次いでロータリーエバポレーター(東京理化器械株式会社製、商品名:N-1000S)を用いて、温浴を62℃に調整し、圧力を0.01MPaに下げて4時間保持し、一部の水を除去し、顔料濃度を23〜25%とした。
次いで顔料の合計濃度を測定し、イオン交換水で顔料の濃度が20%となる様に調整した。次いで5μmと1.2μmのメンブランフィルター(ザルトリウス社製、商品名:ミニザルト)を用いて順に濾過し、自己分散カーボンブラックの顔料水分散体I−3(分散ポリマーなし)を得た。
〔定着用樹脂の製造〕
製造例b1(アクリル系ポリマーb1の水分散体の製造)
1,000mLセパラブルフラスコ中に、メタクリル酸5部、メチルメタクリレート145部、2−エチルヘキシルアクリレート50部、ポリオキシエチレン(18)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液(商品名:ラテムルE−118B、花王株式会社製、有効分濃度:26%)を有効分として18.5部、イオン交換水96部、過硫酸カリウム0.4部を仕込み、撹拌羽で撹拌を行い(300rpm)モノマー乳化液を得た。
反応容器内に、前記モノマー乳化液の5%、ラテムルE−118Bを有効分として4.6部、イオン交換水186部、過硫酸カリウム0.08部を入れ窒素ガス置換を十分行った。窒素雰囲気下、撹拌羽で撹拌(200rpm)しながら80℃まで昇温し、滴下ロート中に仕込んだ残りの前記モノマー乳化液95%を3時間かけて滴下後、1時間反応させ、アクリル系ポリマーb1(重量平均分子量:50万、弾性率:3×10Pa)を水分散体(固形分濃度:41%)の形態で得た。このアクリル系ポリマーb1の水分散体の平均粒径は115nmであった。
製造例b2(アクリルシリコーン系ポリマーb2の水分散体の製造)
製造例b1において、メタクリル酸5部、メチルメタクリレート145部、2−エチルヘキシルアクリレート50部を、メチルメタクリレート10部、2−エチルヘキシルアクリレート20部、ブチルアクリレート20部、シリコーンマクロマー(信越化学工業株式会社製、メタクリル変性シリコーンオイルKF-2012)150部に変更した以外は、製造例b1と同様にして、シリコーン比率75%のアクリルシリコーン樹脂1(重量平均分子量:15万、弾性率:10×10Pa)を水分散体(固形分濃度:40%)の形態で得た。このアクリルシリコーン系ポリマーb2の水分散体の平均粒径は435nmであった。
実施例1〜4、比較例1〜5(水系インクII−1〜II−9の調製)
ガラス製容器に表1に記載の顔料水分散体I−1、I−2又はI−3を添加し、さらに定着用樹脂エマルジョン、イオン交換水を添加し、マグネチックスターラーで10分間撹拌し、混合物Qを得た。
次いで、混合物Qを撹拌しながらそれぞれプロピレングリコール、シリコーン系界面活性剤(信越化学工業株式会社製、シルフェイスSAG005)、アセチレン系界面活性剤(日信化学工業株式会社製、サーフィノール465)、及びアセチレン系界面活性剤(日信化学工業株式会社製、サーフィノール420)を添加し、そのまま1時間撹拌した。その後、5μmのディスポーザルメンブレンフィルター(ザルトリウス社製、商品名「ミニザルト」)を用いて濾過を行い、水系インクII−1〜II−9を得た。
表1に記載の定着用樹脂の詳細は以下のとおりである。
(シリコーンアクリル系樹脂水系エマルジョン)
・シャリーヌFE230N(日信化学工業株式会社製、シリコーン基含有量:50%、弾性率:8.4×10Pa、固形分30.7%)
・シャリーヌFE502(日信化学工業株式会社製、シリコーン基含有量:50%、弾性率:25×10Pa、固形分29.2%)
・シャリーヌNS−651(日信化学工業株式会社製、シリコーン基含有量:30%、弾性率:89×10Pa、固形分42.6%)
・シャリーヌLC−190(日信化学工業株式会社製、シリコーン基含有量:90%、弾性率:28×10Pa、固形分43.5%)
(その他)
・KF643(信越化学工業株式会社製、ポリエーテル変性シリコーンオイル、シリコーン基量:100%、弾性率:1×10Pa未満、有効分100%)
(シリコーン系界面活性剤)
・シルフェイスSAG005(日信化学工業株式会社製、ポリエーテル変性シリコーン、有効分100%)
(アセチレン系界面活性剤)
・サーフィノール465(日信化学工業株式会社製、サーフィノール104(2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール)のエチレンオキシド(EO)付加物、EO平均付加モル数:10、有効分100%)
・サーフィノール420(日信化学工業株式会社製、サーフィノール104のEO付加物、EO平均付加モル数:1.3、有効分100%)
調製例II−1(多価金属塩を含有する処理液の調製)
ガラス製容器に硝酸カルシウム・四水和物(富士フイルム和光製薬株式会社製、固形分100%)8質量%、シリコーン系界面活性剤(ビッグケミージャパン株式会社製、商品名:BYK−348、有効分100%)0.1質量%、スチレン/アクリル系エマルジョン(ジャパンコーティングレジン株式会社製、商品名:モビニール966A、固形分45% 5.6質量%と、イオン交換水86.3質量%を添加し、マグネチックスターラーで10分間撹拌して多価金属塩を含有する処理液を得た。
<印捺物の作製、評価>
実施例1〜4、比較例1〜5で得られた水系インクII−1〜II−9を用いて、以下の条件で印捺し、評価した。結果を表1に示す。
実施例5は、布帛の1平方メートルあたり多価金属塩が5.0g/mとなるような塗布量で、調製例II−1で得られた多価金属塩を含有する処理液を均一にスプレー塗布し、その後150℃の定温乾燥機にて1分間加熱乾燥させてから室温23±1℃に戻した後に、実施例3で得られた水系インクを用いて、実施例3と同様にして印捺した。
(1)印捺物の作製
室温23±1℃、相対湿度50±5%の環境で、テキスタイルプリンター(株式会社マスターマインド製、商品名:MMP8130、4色仕様)に黒色水系インクを充填した。印刷モード(白生地ダイレクト、1440×1440dpi、片方向印字)の条件にて、布帛(株式会社色染社製、綿、ブロード40、シルケット加工あり、A4サイズに裁断)にDuty100%のベタ画像を印捺し、印捺物を作製した。(黒色インクの付着量15g/m)。得られた印捺物は直ぐに150℃の定温乾燥機にて3分間加熱乾燥させた。
(2)風合いの評価
得られた印捺物の2ヶ所を両手の人差し指と親指でつまみ、上下、前後、左右方向へ両手をそれぞれ逆方向に動かすことで布帛の風合いを、以下の評価基準で評価した。
(評価基準)
5:印刷前後にて布帛の柔らかさに変化がない。
4:印刷前後にてごくわずかに布帛の柔らかさに変化が見られる。
3:印刷前後にてわずかに布帛が硬くなる。
2:印刷前後にて布帛が硬くなる。
1:印刷前後にて非常に布帛が硬くなる。
評価基準が3以上であれば実用上問題はない。
(3)指擦りによる耐久性の評価
得られた印捺物を水平で平滑な机上に印捺面を上にして置き、右手親指で印捺面を200gの加重を維持したまま左から右に3回擦過し、目視により印捺物上のインクの剥がれ具合を、以下の評価基準で耐久性を評価した。
(評価基準)
3:記録物上にインク剥がれが見られない。
2:記録物上にインク剥がれがごくわずかにみられる。
1:記録物上にインク剥がれが容易にみられる。
評価基準が2以上であれば実用上問題はない。
Figure 2021098795
表1から、実施例1〜4及び5で得られたインクを用いて得られた印捺物は、比較例1〜5のインクを用いて得られた印捺物と比べて、風合いと指擦り耐久性のバランスに優れていることが分かる。

Claims (6)

  1. 顔料、定着用樹脂、及び水を含有するインクジェット捺染用インク組成物であって、
    該顔料が顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子の形態であり、該水不溶性ポリマーの酸価が100mgKOH/g以上350mgKOH/g以下であり、
    該定着用樹脂がシリコーン基を有し、かつ、該シリコーン基の含有量が20質量%以上85質量%以下であり、
    該定着用樹脂の23℃における弾性率が1×10Pa以上1×10Pa以下であり、
    インク組成物中の該定着用樹脂の含有量が1質量%以上10質量%以下である、
    インクジェット捺染用インク組成物。
  2. 前記定着用樹脂がエマルジョン状態でインク組成物中に含有されている、請求項1に記載のインク組成物。
  3. 前記顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマーが架橋構造を有する、請求項1又は2に記載のインク組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のインク組成物と、多価金属塩を含有する処理液とを含む、インクジェット捺染用インクセット。
  5. 色相の異なる2種以上のインクを含む、請求項4に記載のインクセット。
  6. 下記の工程1〜3、又は工程2及び3を有する、インクジェット捺染方法。
    工程1:多価金属塩を含有する処理液を布帛に付着させて、処理布帛を得る工程
    工程2:工程1で得られた処理布帛又は未処理の布帛に、請求項1〜3のいずれかに記載のインク組成物をインクジェット方式で付与して、捺染布帛を得る工程
    工程3:工程2で得られた捺染布帛を乾燥させる工程
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