JP2021098791A - ゴム組成物及びその製造方法 - Google Patents

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昌浩 森田
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Abstract

【課題】硬度及び低〜中間領域のモジュラスの過度の低下を抑制しつつ、破断伸び及び破断強度を向上し得るゴム組成物の製造方法を提供すること。【解決手段】アニオン変性セルロースと、疎水化剤と、ゴム成分と、を混合して混合物を得る工程と、混合物を、多価金属塩とアルカリ成分を含む抽出溶媒により抽出処理してゴム組成物を得る工程と、を含むゴム組成物の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、ゴム組成物及びその製造方法に関する。
近年、セルロースナノファイバーと呼ばれる、植物繊維をナノレベルまで細かくほぐすことによって製造される素材をゴム組成物に含有させることにより、引張強度などゴム組成物における各種強度を向上させる技術が知られている。例えば、ゴム成分とセルロース系繊維とを含み、強度の良好なゴム組成物が提案されている(特許文献1参照)。
特許文献1に記載のゴム組成物において、セルロース系繊維としてセルロースナノファイバーを調製している。セルロースナノファイバーの調製には、ナノ繊維まで解繊可能な装置を用いる必要がある。そのため、工程数及びエネルギーが増加するという問題がある。
ゴム組成物をより簡便に製造する技術として、水分含有量が低いゴムにナノ化していないセルロース繊維を配合したゴム組成物の製造方法が提案されている(特許文献2参照)。特許文献2の方法によれば、疎水性のゴムと親水性のセルロースとのドライ混練が可能となる。
特開2018−193465号公報 特開2017−52942号公報
特許文献2に記載の方法でゴム組成物を製造したところ、破断伸び及び破断強度の引張特性は良好な値を示したが、低〜中間領域のモジュラス及び特許文献2には示されていない硬度が劣るものであった(本願の比較例1参照)。
そのため、セルロース繊維を配合したゴム組成物において、硬度及び低〜中間領域のモジュラスを向上する方法が望まれている。
本発明の課題は、硬度及び低〜中間領域のモジュラスの過度の低下を抑制しつつ、破断伸び及び破断強度を向上し得るゴム組成物の製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、疎水化剤と、アニオン変性セルロースと、ゴム成分と、を混合した後、多価金属塩とアルカリ成分を含む抽出溶媒により抽出処理することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明者らは、下記の〔1〕〜〔11〕を提供する。
〔1〕アニオン変性セルロースと、疎水化剤と、ゴム成分と、を混合して混合物を得る工程と、前記混合物を、多価金属塩とアルカリ成分を含む抽出溶媒により抽出処理してゴム組成物を得る工程と、を含むゴム組成物の製造方法。
〔2〕前記アニオン変性セルロースが、酸化セルロース、カルボキシメチル化セルロース、又はリン酸エステル化セルロースである、上記〔1〕に記載のゴム組成物の製造方法。
〔3〕前記疎水化剤が、ポリエーテル骨格の末端に1級アミノ基を有するポリエーテルアミンを含む、上記〔1〕又は〔2〕に記載のゴム組成物の製造方法。
〔4〕前記ポリエーテルアミンが、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールアミンである、上記〔3〕に記載のゴム組成物の製造方法。
〔5〕前記疎水化剤が、炭素原子数3〜30のアルケニル基を有するアミン化合物又は炭素原子数3〜30のアルケニル基を有する第4級アンモニウム塩をさらに含む、上記〔3〕又は〔4〕に記載のゴム組成物の製造方法。
〔6〕前記アミン化合物が、オレイルアミンである、上記〔5〕に記載のゴム組成物の製造方法。
〔7〕前記第4級アンモニウム塩が、ジオレイルジメチルアンモニウム塩である、上記〔5〕に記載のゴム組成物の製造方法。
〔8〕上記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載のゴム組成物の製造方法により製造され、ゴム成分と、アニオン変性セルロースと、を少なくとも含むゴム組成物。
〔9〕ゴム成分と、アニオン変性セルロースと、を少なくとも含み、含有金属量が0.10〜1.00質量%であり、減衰全反射法によって赤外分光スペクトルを測定したとき、1300〜1500cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(α)と、1000〜1300cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(β)との比(α/β)が1以上である、ゴム組成物。
〔10〕前記アニオン変性セルロースが、酸化セルロース、カルボキシメチル化セルロース、又はリン酸エステル化セルロースである、上記〔8〕又は〔9〕に記載のゴム組成物。
〔11〕前記ゴム成分の含有量が、60〜95重量%である、上記〔8〕〜〔10〕のいずれかに記載のゴム組成物。
本発明によれば、硬度及び低〜中間領域のモジュラスの過度の低下を抑制しつつ、破断伸び及び破断強度を向上し得るゴム組成物の製造方法を提供することができる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。なお、本明細書中、「AA〜BB」という表記(但し、AA及びBBは、それぞれ数字を意味する)は、AA以上BB以下を示す。
[1.ゴム組成物の製造方法]
本発明のゴム組成物の製造方法は、アニオン変性セルロースと、疎水化剤と、ゴム成分と、を混合して混合物を得る工程(以下、「混合工程」ともいう)と、混合物を、多価金属塩とアルカリ成分を含む抽出溶媒により抽出処理してゴム組成物を得る工程(以下、「抽出処理工程」ともいう)と、を含む。
本発明者等は、特許文献2に記載の方法のゴム組成物を鋭意検討したところ、疎水化剤の存在によりセルロースがゴム成分中に分散して、破断伸び及び破断強度を向上する一方で、疎水化剤の存在が架橋を阻害する結果、硬度及び低〜中間領域のモジュラスを低下すると考えた。そこで、混合によりゴム成分中にセルロースを分散した後、疎水化剤を抽出することで、硬度及び低〜中間領域のモジュラスを過度に低下することなく、破断伸び及び破断強度を向上し得ると推測した。実際に試験をしたところ、疎水化剤は、架橋を阻害する一方、可塑剤としての機能を有する可能性があるという知見を得た。当該知見を基に、分散したアニオン変性セルロースから、抽出処理により疎水化剤を適度に抽出することで、ゴムの物性を設計可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
[1−1.混合工程]
混合工程は、アニオン変性セルロースと、疎水化剤と、ゴム成分と、を混合して混合物を得る工程である。
疎水化剤の存在下で混合することで、アニオン変性セルロースをゴム成分中に均一に分散して、破断伸び及び破断強度を向上し得る。
(アニオン変性セルロース)
アニオン変性セルロースとしては、例えば、酸化セルロース、カルボキシメチル化セルロース、リン酸エステル化セルロースが挙げられる。中でも、酸化セルロース又はカルボキシメチル化セルロースが好ましい。
アニオン変性セルロースの平均繊維径は、0.1〜50μmが好ましく、1〜40μmがより好ましく、10〜30μmがさらに好ましい。また、アニオン変性セルロースの平均繊維長は、0.1〜5000μmが好ましく、1〜3500μmがより好ましく、10〜2000μmがさらに好ましい。平均繊維径及び平均繊維長が斯かる数値範囲を満たすアニオン変性セルロースを用いると、ゴム組成物を製造した際、破断伸び及び破断強度を向上し得る。
アニオン変性セルロースの平均繊維径、平均繊維長は、それぞれ、ファイバーテスター(Lorentzen&Wettre社製)を用いて測定される、長さ加重平均繊維幅、長さ加重平均繊維長である。
アニオン変性セルロースの原料(以下、「セルロース原料」ともいう)は、木材由来のクラフトパルプ又はサルファイトパルプ、それらを高圧ホモジナイザーやミル等で粉砕した粉末セルロース、或いはそれらを酸加水分解等の化学処理により精製した微結晶セルロース粉末等であってもよい。この他に、ケナフ、麻、イネ、バガス、竹等の植物由来の原料も使用し得る。量産化やコストの観点からは、粉末セルロース、微結晶セルロース粉末、或いはクラフトパルプ又はサルファイトパルプのような化学パルプが好ましい。化学パルプを用いる場合は、公知の漂白処理を施してリグニンを除去することが好ましい。漂白済みパルプとしては、例えば、白色度(ISO 2470)が80%以上の漂白済みクラフトパルプ又は漂白済みサルファイトパルプを用いることができる。
粉末セルロースは、木材パルプの非結晶部分を酸加水分解により除去した後、粉砕及び篩い分けすることで得られる微結晶性又は結晶性セルロースからなる棒軸状粒子である。粉末セルロースにおいて、セルロースの重合度は100〜500程度であり、X線回折法による粉末セルロースの結晶化度は70〜90%であり、レーザー回折式粒度分布装置による体積平均粒子径は通常100μm以下であり、好ましくは50μm以下である。そのような粉末セルロースは、精選パルプを酸加水分解した後に得られる未分解残渣を精製及び乾燥し、粉砕及び篩い分けすることにより調製してもよいし、KCフロック(登録商標)(日本製紙社製)、セオラス(登録商標)(旭化成ケミカルズ社製)、アビセル(登録商標)(FMC社製)等の市販品を用いてもよい。
漂白方法は、塩素工程(C)、二酸化塩素漂白(D)、アルカリ抽出(E)、次亜塩素酸塩漂白(H)、過酸化水素漂白(P)、アルカリ性過酸化水素工程段(Ep)、アルカリ性過酸化水素・酸素工程段(Eop)、オゾン工程(Z)、キレート工程(Q)等を組合せて行うことができる。例えば、C/D−E−H−D、Z−E−D−P、Z/D−Ep−D、Z/D−Ep−D−P、D−Ep−D、D−Ep−D−P、D−Ep−P−D、Z−Eop−D−D、Z/D−Eop−D、Z/D−Eop−D−E−D等のシーケンスで行なうことができる。なお、シーケンス中の「/」は、「/」の前後の工程を洗浄なしで連続して行なうことを意味する。
また、上記したセルロース原料を高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式等の分散装置や、湿式の高圧又は超高圧ホモジナイザー等で微細化したものをセルロース原料として使用することもできる。
(酸化セルロース)
酸化セルロースは、セルロース分子鎖の少なくとも一部が、グルコピラノース単位のC6位の1級水酸基を有する炭素原子が選択的に酸化されたカルボキシ基を有する構成単位で構成されることが好ましい。
ここで、グルコピラノース単位とは、下記式(0)で表される構成単位をいう。
Figure 2021098791
酸化セルロースのカルボキシ基量は、酸化セルロースの絶乾質量に対して、0.6〜2.0mmol/gが好ましく、1.0〜2.0mmol/gがより好ましく、1.4〜1.6mmol/gがさらに好ましい。カルボキシ基量が0.6mmol/g以下であると、ゴム成分に配合した際に分散不良となりやすい。また、2.0mmol/g以上であると、破断伸び及び破断強度の向上が不十分な場合がある。
カルボキシ基量は以下のようにして算出することができる。酸化セルロースの0.5質量%スラリー(水分散液)60mlを調製する。調製したスラリーに0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5に調整する。次いで0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定する。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いてカルボキシ基量を算出することができる:
カルボキシ基量〔mmol/g酸化セルロース〕=a〔ml〕×0.05/酸化セルロース質量〔g〕
酸化セルロースは、酸化剤を用いてセルロース原料を酸化して調製し得る。酸化反応は、N−オキシル化合物と、臭化物、ヨウ化物又はこれらの混合物と、の存在下で酸化剤を用いて行うことが好ましい。このような酸化方法によりセルロース原料を酸化すると、セルロース分子鎖を構成するグルコピラノース単位のC6位の1級水酸基を有する炭素原子が選択的に酸化されて、カルボキシ基を有する構成単位を得ることができる。
当該酸化方法により得られる酸化セルロースの部分構造を下記一般式(1)に示す。
Figure 2021098791
(一般式(1)中、Mは、カチオン塩を示す。)
一般式(1)中、Mとして表されるカチオン塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、ホスホニウム塩、イミダゾリニウム塩、アンモニウム塩、スルホニウム塩が挙げられる。
天然のセルロースは、直鎖上のセルロース分子鎖が水素結合により多数収束したミクロフィブリル構造を有している。N−オキシル化合物を用いてセルロース原料を酸化すると、上記の通り、セルロース分子鎖を構成するグルコピラノース単位のC6位の1級水酸基を有する炭素原子が選択的にアルデヒド基を経てカルボキシ基に酸化される。そのため、ミクロフィブリル構造の表面に高密度でカルボキシ基が導入される。
N−オキシル化合物は、ニトロキシラジカルを発生し得る化合物である。N−オキシル化合物としては、目的の酸化反応を行う化合物であれば、いずれの化合物も使用できる。N−オキシル化合物としては、例えば、下記一般式(2)〜(5)、(7)で表される化合物や下記式(6)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2021098791
(一般式(2)中、R〜Rは、同一又は異なっていてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、Rは、水素原子又はヒドロキシ基を示す。)
Figure 2021098791
(一般式(3)〜(5)中、Rは、炭素原子数1〜4の直鎖状又は分岐状の炭化水素基を示す。)
Figure 2021098791
(一般式(7)中、R〜Rは、同一若しくは異なっていてもよい、水素原子又は炭素原子数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を示す。)
一般式(2)中、R〜Rで表される炭素原子数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。中でも、メチル基又はエチル基が好ましい。
一般式(3)〜(5)中、Rで表される炭素原子数1〜4の直鎖状又は分岐状の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基が挙げられる。中でも、メチル基又はエチル基が好ましい。
一般式(7)中、R〜Rで表される炭素原子数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基が挙げられる。中でも、メチル基又はエチル基が好ましい。
一般式(2)で表される化合物としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシラジカル(以下、「TEMPO」ともいう)、又は4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシラジカル(以下、「4−ヒドロキシTEMPO」ともいう)が挙げられる。
N−オキシル化合物は、TEMPO又は4−ヒドロキシTEMPOの誘導体であってもよい。4−ヒドロキシTEMPOの誘導体としては、例えば、一般式(3)で表される化合物、即ち、4−ヒドロキシTEMPOの水酸基を、炭素原子数4以下の直鎖状又は分岐状の炭化水素基を有するアルコールでエーテル化して得られる誘導体や、一般式(4)又は(5)で表される化合物、即ち、カルボン酸又はスルホン酸でエステル化して得られる誘導体が挙げられる。
4−ヒドロキシTEMPOをエーテル化する際には、炭素原子数が4以下のアルコールを用いれば、アルコール中の飽和、不飽和結合の有無に関わらず、得られる誘導体が水溶性となり、酸化触媒として良好に機能する。
N−オキシル化合物は、式(6)で表される化合物、即ち、4−アミノTEMPOのアミノ基がアセチル化された化合物であると、適度な疎水性が付与され、安価であり、均一な酸化セルロースを得ることができるので好ましい。また、N−オキシル化合物は、一般式(7)で表される化合物、即ち、アザアダマンタン型ニトロキシラジカルであると、短時間で、均一な酸化セルロースを得ることができるので好ましい。
N−オキシル化合物の使用量は、セルロース原料を酸化できる触媒量であれば特に限定されない。例えば、絶乾1gのセルロース原料に対して、0.01〜10mmolが好ましく、0.01〜1mmolがより好ましく、0.01〜0.5mmolがさらに好ましい。
セルロース原料の酸化の際に用いられる臭化物とは臭素を含む化合物であり、その例には、水中で解離してイオン化可能なアルカリ金属の臭化物が含まれる。また、ヨウ化物とはヨウ素を含む化合物であり、その例には、アルカリ金属のヨウ化物が含まれる。
臭化物又はヨウ化物の使用量は、目的の酸化反応を促進できる範囲で調整し得る。臭化物及びヨウ化物の合計量は、例えば、絶乾1gのセルロース原料に対して、0.1〜100mmolが好ましく、0.1〜10mmolがより好ましく、0.5〜5mmolがさらに好ましい。
酸化剤としては、例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸又はそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物等の公知の酸化剤を使用することができる。中でも、安価で環境負荷の少ない次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
酸化剤の使用量は、酸化反応を行う量であればよく、例えば、絶乾1gのセルロース原料に対して、0.5〜500mmolが好ましく、0.5〜50mmolがより好ましく、2.5〜25mmolがさらに好ましい。
セルロース原料の酸化反応は、比較的温和な条件であっても反応が効率よく進行する。そのため、反応温度は、15〜30℃程度の室温であってもよい。但し、反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシ基が生成するため、反応液のpH値が低下する。そのため、酸化反応を効率よく進行させるために、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性溶液を適時反応系中に添加する。反応液のpH値は、通常、9〜12程度に維持し、10〜11程度に維持することが好ましい。反応媒体は、取扱い性の容易さや、副反応が生じ難いこと等から、水が好ましい。
酸化反応における反応時間は、酸化の進行の程度に従って適宜設定することができ、通常、0.5〜6時間程度であり、0.5〜4時間程度が好ましい。
また、酸化反応は、2段階に分けて実施してもよい。例えば、1段目の反応終了後に濾別して得られた酸化セルロースのカチオン塩を、再度、同一又は異なる反応条件で酸化することにより、1段目の反応で副生する塩による反応阻害を受けることなく、セルロース原料に効率よくカルボキシ基を導入することができる。
酸化反応で得られる酸化セルロースにおいて、セルロース原料に導入したカルボキシ基は、通常、ナトリウム塩等のアルキル金属塩(即ち、カルボキシレート基)である。酸化セルロースのアルカリ金属塩を、ホスホニウム塩、イミダゾリニウム塩、アンモニウム塩、スルホニウム塩等の他のカチオン塩に置換してもよい。置換は、公知の方法で行うことができる。
酸化方法の他の例として、オゾンを含む気体とセルロース原料を接触させることにより酸化する方法が挙げられる。この酸化反応によれば、グルコピラノース環の少なくとも2位及び6位の水酸基を有する炭素原子が酸化されると共に、セルロース鎖の分解が起こる。
オゾンを含む気体中のオゾン濃度は、50〜250g/mが好ましく、50〜220g/mがより好ましい。セルロース原料に対するオゾン添加量は、セルロース原料の固形分を100質量部とした際に、0.1〜30質量部が好ましく、5〜30質量部がより好ましい。オゾン処理温度は、0〜50℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。オゾン処理時間は、特に限定されないが、通常、1〜360分程度であり、30〜360分程度が好ましい。オゾン処理の条件がこれらの範囲内であると、セルロースが過度に酸化及び分解されることを防ぐことができ、酸化セルロースの収率が良好となる。
オゾン処理を施した後に、酸化剤を用いて、追酸化処理を行ってもよい。追酸化処理に用いる酸化剤は、特に限定されないが、二酸化塩素、亜塩素酸ナトリウム等の塩素系化合物や、酸素、過酸化水素、過硫酸、過酢酸等が挙げられる。例えば、これらの酸化剤を水又はアルコール等の極性有機溶媒中に溶解して酸化剤溶液を調製し、溶液中にセルロース原料を浸漬させることにより追酸化処理を行うことができる。
酸化反応で得られた酸化セルロースは、副反応を避ける観点から、洗浄することが好ましい。洗浄方法は特に限定されず、公知の方法で行うことができる。
(カルボキシメチル化セルロース)
カルボキシメチル化セルロースの部分構造を、一般式(8)に示す。
Figure 2021098791
(一般式(8)中、Rは、水素原子、アルカリ金属又は一般式(9)で表される基を示す。)
Figure 2021098791
(一般式(9)中、Mは、水素原子又はアルカリ金属を示す。)
一般式(8)中のR、一般式(9)中のMとして表されるアルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウムが挙げられる。中でも、ナトリウムが好ましい。
カルボキシメチル化セルロースのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度は、0.01〜0.50であり、0.01〜0.40が好ましく、0.05〜0.35がより好ましい。グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.01以下であると、ゴム成分に配合した際に分散不良となりやすい。一方、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.50以上であると、破断伸び及び破断強度の向上が不十分な場合がある。
グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度は、下記の方法で算出し得る。カルボキシメチル化セルロース(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL共栓付き三角フラスコに入れる。メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振とうして、塩型のカルボキシメチル化セルロース(以下、「塩型CM化セルロース」ともいう)を酸型のカルボキシメチル化セルロース(以下、「酸型CM化セルロース」ともいう)に変換する。酸型CM化セルロース(絶乾)を1.5〜2.0g精秤し、300mL共栓付き三角フラスコに入れる。80%メタノール15mLで酸型CM化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうする。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのHSOで過剰のNaOHを逆滴定し、次式によってカルボキシメチル置換度(DS)を算出し得る:
A=[(100×F−(0.1NのHSO(mL))×F’)×0.1]/(酸型CM化セルロースの絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1−0.058×A)
A:酸型CM化セルロースを1g中和するのに要する1NのNaOH量(mL)
F’:0.1NのHSOのファクター
F:0.1NのNaOHのファクター
カルボキシメチル化セルロースは、セルロース原料をマーセル化剤によりマーセル化処理した後、カルボキシメチル化剤と反応させて得ることができる。
マーセル化処理は、通常、セルロース原料、溶媒、及びマーセル化剤を混合することで行う。
溶媒は、水及び低級アルコールの少なくともいずれかが好ましく、水がより好ましい。また、溶媒の使用量は、質量換算で、セルロース原料の3〜20倍が好ましい。
低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、第3級ブチルアルコールが挙げられる。
なお、低級アルコールは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせた混合媒体として用いてもよい。
溶媒が低級アルコールを含む場合、その混合割合は、60〜95質量%が好ましい。
マーセル化剤としては、アルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムがより好ましい。また、マーセル化剤の使用量は、セルロース原料の無水グルコース残基当たり、モル換算で、0.5〜20倍が好ましい。
マーセル化処理の反応温度は、通常、0〜70℃であり、10〜60℃が好ましい。また、マーセル化処理の反応時間は、通常、15分〜8時間であり、30分〜7時間が好ましい。マーセル化処理は、撹拌下で行ってもよい。
マーセル化処理の後、カルボキシメチル化剤を反応系に添加してセルロースにカルボキシメチル基を導入する。カルボキシメチル化剤としては、下記一般式(10)で表される化合物が好ましく、モノクロロ酢酸又はモノクロロ酢酸ナトリウムがより好ましい。また、カルボキシメチル化剤の添加量は、セルロース原料のグルコース残基当たり、モル換算で、0.05〜10.0倍が好ましい。
Figure 2021098791
(一般式(10)中、Xは、ハロゲン原子を示し、Mは、水素原子又はアルカリ金属を示す。)
一般式(10)中のXとして表されるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。中でも、塩素原子が好ましい。
一般式(10)中のMとして表されるアルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウムが挙げられる。中でも、ナトリウムが好ましい。
カルボキシメチル化反応の反応温度は、通常、30〜90℃であり、40〜80℃が好ましい。反応時間は、通常、30分〜10時間であり、1〜4時間が好ましい。
(リン酸エステル化セルロース)
リン酸エステル化セルロースは、リン酸基を有する化合物でリン酸エステル化セルロースされたセルロースである。リン酸基を有する化合物としては、例えば、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ポリホスホン酸、これらのエステルや塩が挙げられる。これらの化合物は、低コストであり、扱い易い。
リン酸基を有する化合物としては、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、メタリン酸アンモニウムが挙げられる。中でも、リン酸エステル化の効率が高く、かつ工業的に適用し易いという理由で、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムがより好ましい。
なお、リン酸基を有する化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上の組み合わせて用いてもよい。
リン酸エステル化セルロースにおいて、リン酸エステル化セルロース1g(重量)あたりのリン酸基の導入量の下限は、0.1mmоl/g以上が好ましい。0.1mmоl/g未満であると、ゴム成分に配合した際に分散不良となりやすい。また、リン酸基の導入量の上限は、3.5mmоl/g以下が好ましい。3.5mmоl/g超であると、破断伸び及び破断強度の向上が不十分な場合がある。
リン酸エステル化セルロース1g(重量)あたりのリン酸基の導入量は、0.1〜3.5mmolが好ましい。
リン酸エステル化反応は、例えば、セルロース原料に対し、リン酸基を有する化合物を反応させて行う。セルロース原料とリン酸基を有する化合物を反応させる方法としては、例えば、セルロース原料にリン酸基を有する化合物の粉末又は水溶液を混合する方法、セルロース原料のスラリーにリン酸基を有する化合物の水溶液を添加する方法が挙げられる。
これらの中でも、反応の均一性が高まり、かつリン酸エステル化効率が高くなるという理由で、セルロース原料又はそのスラリーにリン酸基を有する化合物の水溶液を混合する方法が好ましい。リン酸基を有する化合物の水溶液のpHは、リン酸基の導入の効率を高める観点から、7以下が好ましく、加水分解を抑える観点から、3〜7がより好ましい。
リン酸基を有する化合物の添加量の下限は、セルロース原料100質量部に対して、リン原子換算で、0.2質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。斯かる範囲であることにより、リン酸エステル化セルロースの収率を向上し得る。一方、その上限は、500質量部以下が好ましく、400質量部以下がより好ましい。斯かる範囲であることにより、リン酸基を有する化合物の添加量に見合った収率を効率よく得ることができる。
リン酸基を有する化合物の添加量は、0.2〜500質量部が好ましく、1〜400質量部がより好ましい。
セルロース原料とリン酸基を有する化合物を反応させる際、さらに塩基性化合物を反応系に加えてもよい。塩基性化合物を反応系に加える方法としては、例えば、セルロース原料のスラリー、リン酸基を有する化合物の水溶液、又はセルロース原料とリン酸基を有する化合物のスラリーに、添加する方法が挙げられる。
塩基性化合物は特に限定されないが、塩基性を示す窒素含有化合物が好ましい。「塩基性を示す」とは、通常、フェノールフタレイン指示薬の存在下で塩基性化合物の水溶液が桃〜赤色を呈すること、または塩基性化合物の水溶液のpHが7より大きいことを意味する。
塩基性を示す窒素含有化合物は、本発明の効果を奏する限り特に限定されない。中でも、アミノ基を有する化合物が好ましい。例えば、尿素、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンが挙げられる。これらの中でも、低コストで扱いやすいという理由で、尿素が好ましい。
塩基性化合物の添加量は、2〜1000質量部が好ましく、100〜700質量部がより好ましい。反応温度は、0〜95℃が好ましく、30〜90℃がより好ましい。反応時間は特に限定されないが、通常、1〜600分程度であり、30〜480分が好ましい。反応条件がこれらのいずれかの範囲内であると、セルロースに過度にリン酸基が導入されて溶解し易くなることを防ぐことができ、リン酸エステル化セルロースの収率を向上し得る。
セルロース原料にリン酸基を有する化合物を反応させた後、通常、懸濁液が得られる。懸濁液を必要に応じて脱水する。脱水後には加熱処理を行うことが好ましい。これにより、セルロース原料の加水分解を抑えることができる。加熱温度は、100〜170℃が好ましく、加熱処理の際に水が含まれている間は130℃以下(更に好ましくは110℃以下)で加熱し、水を除いた後、100〜170℃で加熱することがより好ましい。
リン酸エステル化セルロースは、煮沸後、冷水で洗浄する等の洗浄処理を施すことが好ましい。
(疎水化剤)
疎水化剤は、ポリエーテル骨格の末端に1級アミノ基を有するポリエーテルアミン(以下、「ポリエーテルアミン」ともいう)を含むことが好ましい。
疎水化剤としてポリエーテルアミンを用いることで、ゴム組成物を製造した際、破断伸び及び破断強度を向上し得る。
ポリエーテルアミンとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドをポリエーテル骨格とし、片末端又は両末端に1級アミノ基を有するポリエーテルアミンが挙げられる。複数のアルキレンオキサイドを用いてポリエーテル骨格を構成する場合、ポリエーテル骨格は、ランダム状であってもよく、ブロック状であってもよい。このようなポリエーテルアミンとしては、下記一般式(11)〜(15)で表される構造を有するポリエーテルアミンが挙げられる。
Figure 2021098791
(一般式(11)中、xは、エチレンオキサイドの平均付加モル数を表し、1〜35の整数であり、yは、プロピレンオキサイドの平均付加モル数を表し、3〜30の整数である。)
Figure 2021098791
(一般式(12)中、xは、プロピレンオキサイドの平均付加モル数を表し、1〜70の整数である。)
Figure 2021098791
(一般式(13)中、xとzは、プロピレンオキサイドの平均付加モル数を表し、合計が1〜6の整数であり、yは、エチレンオキサイドの平均付加モル数を表し、2〜40の整数である。)
Figure 2021098791
(一般式(14)中、R10は、水素原子又はエチル基を表し、nは、0又は1であり、xとyとzは、プロピレンオキサイドの平均付加モル数を表し、合計が5〜90の整数である。)
Figure 2021098791
(一般式(15)中、xは、プロピレンオキサイドの平均付加モル数を表し、10〜15の整数である。)
ポリエーテルアミンの平均分子量は、ゴム組成物の所望の性質を発現する観点から、200〜7,000が好ましく、220〜6,000がより好ましい。ポリエーテルアミンの平均分子量は、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドの平均付加モル数とその末端構造の分子量から算出し得る。
ポリエーテルアミンとしては、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールアミン(一般式(11)で表される構造を有するポリエーテルアミン)が好ましく、平均分子量が600〜3000の一般式(11)で表される構造を有するポリエーテルアミンがより好ましい。
ポリエーテルアミンは、公知の方法で調製し得る。例えば、プロピレングリコールアルキルエーテルにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドを所望量付加させた後、水酸基末端をアミノ化すればよい。
ポリエーテルアミンは、市販品を用いてもよい。このような市販品としては、HUNTSMAN社製のJEFFAMINE M Series(M−600、M−1000、M−2005、M−2070)、JEFFAMINE D Series(D−230、D−400、D−2000、D−4000)、JEFFAMINE ED Series(HK−511、ED−600、ED−900、ED−2003)、JEFFAMINE T Series(T−403、T−3000、T−5000)、JEFFAMINE XJT−436が挙げられる。なお、JEFFAMINEは、登録商標である。
疎水化剤は、ポリエーテルアミン以外の疎水化剤(以下、「他の疎水化剤」ともいう)を含んでもよい。このような他の疎水化剤としては、例えば、炭素原子数3〜30のアルケニル基を有するアミン化合物又は炭素原子数3〜30のアルケニル基を有する第4級アンモニウム塩が挙げられる。
疎水化剤として他の疎水化剤を含む場合、ゴム組成物の硬度をより向上し得る。
炭素原子数3〜30のアルケニル基を有するアミン化合物としては、例えば、1−ヘキセニルアミン、1−ドデセニルアミン、オレイルアミン、9,12−オクタデカジエニルアミン(リノールアミン)、9,12,15−オクタデカトリエニルアミン、リノレイルアミンが挙げられる。
炭素原子数3〜30のアルケニル基を有するアミン化合物は、モノアルケニルアミンが好ましく、オレイルアミンがより好ましい。
炭素原子数3〜30のアルケニル基を有する第4級アンモニウム塩としては、例えば、モノオレイルトリメチルアンモニウムクロライド、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライド、ポリアルキレンオキシモノメチルジオレイルアンモニウムクロライド、ビス(ポリアルキレンオキシ)モノメチルモノオレイルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩が挙げられる。
炭素原子数3〜30のアルケニル基を有する第4級アンモニウム塩は、ジアルケニルジアルキルアンモニウム塩が好ましく、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライドがより好ましい。
酸処理前の疎水化剤として、ポリエーテルアミンを使用する場合、アニオン変性セルロースへのポリエーテルアミン修飾率は、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。ポリエーテルアミン修飾率が30%未満であると、ゴム組成物中のセルロースの分散不良が起こる可能性がある。
酸処理前のアニオン変性セルロースに対する疎水化剤の質量比(疎水化剤/アニオン変性セルロース)は、0.5〜7.0が好ましく、1.5〜6.0がより好ましく、2.5〜5.0がさらに好ましい。(疎水化剤/アニオン変性セルロース)が7.0超であると、ゴム組成物の低〜中間領域のモジュラス及び硬度の低下の抑制が不十分な場合がある。また、(疎水化剤/アニオン変性セルロース)が0.5未満であると、ゴム組成物中のセルロースの分散不良が起こる場合がある。
(ゴム成分)
ゴム成分とは、ゴムの原料であり、架橋してゴムとなるものをいう。ゴム成分としては、天然ゴム用のゴム成分と合成ゴム用のゴム成分が存在する。
天然ゴム用のゴム成分としては、例えば、化学修飾を施さない狭義の天然ゴム(NR);塩素化天然ゴム、クロロスルホン化天然ゴム、エポキシ化天然ゴム等の化学修飾した天然ゴム;水素化天然ゴム;脱タンパク天然ゴムが挙げられる。
合成ゴム用のゴム成分としては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム等のジエン系ゴム;ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM、EPDM)、アクリルゴム(ACM)、エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO)、フッ素ゴム(FKM)、シリコーンゴム(Q)、ウレタンゴム(U)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)等の非ジエン系ゴムが挙げられる。これらの中でも、ジエン系のゴムが好ましく、ジエン系の天然ゴムがより好ましい。
ゴム成分は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
(添加剤)
本発明の効果を害しない限り、公知の添加剤を混合してもよい。公知の添加剤としては、カチオン性界面活性剤等の分散剤や変性ポリオレフィン樹脂が挙げられる。
(混合方法)
アニオン変性セルロースと、疎水化剤と、ゴム成分と、の混合方法は、以下の例に挙げるような方法を用いて行い得る。
なお、混合における各成分の添加の順序は、特に限定されず、各成分を一度に混合してもよいし、いずれかの成分を先に混合した後で残りの成分を混合してもよい。
第1の例としては、アニオン変性セルロースと疎水化剤を反応させた後、ゴム成分を混合する方法が挙げられる。
アニオン変性セルロースと疎水化剤の反応は、1〜100℃の温度条件下、1〜60分撹拌することで行い得る。アニオン変性セルロースは、通常、水等の溶媒に分散された形態で調製されるので、撹拌は、アニオン変性セルロースの調製時に残存する水等の溶媒の存在下で撹拌し得る。
なお、アニオン変性セルロース又は疎水化剤は、一括添加してもよく、逐次添加してもよい。
アニオン変性セルロースと疎水化剤の反応物は、通常、水等の溶媒に分散された形態で調製される。アニオン変性セルロースと疎水化剤の反応物は、疎水性のゴム成分と混合するので、水等の溶媒を乾燥して除去してもよい。
乾燥方法は特に限定されるものではなく、例えば、スプレードライ、圧搾、風乾、熱風乾燥、又は真空乾燥が挙げられる。乾燥装置としては、例えば、連続式のトンネル乾燥装置、バンド乾燥装置、縦型乾燥装置、垂直ターボ乾燥装置、多重段円板乾燥装置、通気乾燥装置、回転乾燥装置、気流乾燥装置、スプレードライヤ乾燥装置、噴霧乾燥装置、円筒乾燥装置、ドラム乾燥装置、スクリューコンベア乾燥装置、加熱管付回転乾燥装置、振動輸送乾燥装置、回分式の乾燥装置(例えば、箱型乾燥装置、通気乾燥装置、真空箱型乾燥装置、又は撹拌乾燥装置)が挙げられる。中でも、ドラム乾燥装置は、均一に被乾燥物に熱エネルギーを直接供給できるのでエネルギー効率が高く、かつ必要以上に熱を加えずに直ちに乾燥物を回収できるので好ましい。
これらの乾燥装置は、単独で用いてもよいし、2つ以上を組合せて用いてもよい。
アニオン変性セルロースと疎水化剤の反応物は、乾燥物を粉砕した粉砕物であってもよい。
乾燥物の粉砕は、公知の粉砕機を用いて行い得る。公知の粉砕機としては、例えば、カッティング式ミル:メッシュミル(ホーライ製)、アトムズ(山本百馬製作所製)、ナイフミル(パルマン社製)、カッターミル(東京アトマイザー製造社製)、CSカッタ(三井鉱山社製)、ロータリーカッターミル(奈良機械製作所製)、パルプ粗砕機(瑞光製)、シュレッダー(神鋼パンテック社製)等、ハンマー式ミル:ジョークラッシャー(マキノ製)、ハンマークラッシャー(槇野産業社製)、衝撃式ミル:パルベライザ(ホソカワミクロン社製)、ファインインパクトミル(ホソカワミクロン社製)、スーパーミクロンミル(ホソカワミクロン社製)、イノマイザ(ホソカワミクロン社製)、ファインミル(日本ニューマチック工業社製)、CUM型遠心ミル(三井鉱山社製)、イクシードミル(槇野産業社製)、ウルトラプレックス(槇野産業社製)、コントラプレックス(槇野産業社製)、コロプレックス(槇野産業社製)、サンプルミル(セイシン製)、バンタムミル(セイシン製)、アトマイザー(セイシン製)、トルネードミル(日機装社製)、ネアミル(ダルトン製)、HT形微粉砕機(ホーライ製)、自由粉砕機(奈良機械製作所製)、ニューコスモマイザー(奈良機械製作所製)、ギャザーミル(西村機械製作所製)、スパーパウダーミル(西村機械製作所製)、ブレードミル(日清エンジニアリング社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、Npaクラッシャー(三庄インダストリー社製)、ウイレー粉砕機(三喜製作所製)、パルプ粉砕機(瑞光製)、ヤコブソン微粉砕機(神鋼パンテック社製)、ユニバーサルミル(徳寿工作所製)、気流式ミル:CGS型ジェットミル(三井鉱山社製)、ミクロンジェット(ホソカワミクロン社製)、カウンタジェットミル(ホソカワミクロン社製)、クロスジェットミル(栗本鐵工所製)、超音速ジェットミル(日本ニューマチック工業社製)、カレントジェット(日清エンジニアリング社製)、ジェットミル(三庄インダストリー社製)、エバラジェットマイクロナイザ(荏原製作所製)、エバラトリアードジェット(荏原製作所製)、セレンミラー(増幸産業社製)、ニューミクロシクトマット(増野製作所製)、クリプトロン(川崎重工業社製)、竪型ローラーミル:竪型ローラーミル(シニオン社製)、縦型ローラーミル(シェフラージャパン社製)、ローラーミル(コトブキ技研工業社製)、VXミル(栗本鐵工所)、KVM型竪形ミル(アーステクニカ)、ISミル(IHIプラントエンジニアリング)、ターボミル(フロイント産業社製)が挙げられる。
これらの中では、微粉砕性に優れる、トルネードミル(日機装社製)、ブレードミル(日清エンジニアリング社製)、自由粉砕機(奈良機械製作所製)、ターボミル(フロイント産業社製)を用いることが好ましい。
アニオン変性セルロースと疎水化剤の反応物とゴム成分の混合は、例えば、2本ロール、3本ロールなどの開放式混練機、噛合式バンバリーミキサー、接線式バンバリーミキサー、加圧ニーダーなどの密閉式混練機を使用して行うことが可能である。また、多段階の混合工程を経る工程も可能で、例えば、第一段階で密閉式混練機による混合を行い、その後開放式混練機で再混合することができる。
混合温度は、常温程度(例えば、15〜30℃程度)でよいが、ある程度高温に加熱してもよい。例えば、温度の上限は、通常200℃以下であり、180℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましい。温度の下限は、通常15℃以上であり、20℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましい。混合温度は、15〜200℃が好ましく、20〜180℃がより好ましく、30〜160℃がさらに好ましい。
第2の例としては、アニオン変性セルロースの分散液とゴム成分の分散液(ラテックス)をミキサー等により撹拌して混合した後、疎水化剤を添加してさらに混合し、水を除去する方法が挙げられる。
第3の例としては、アニオン変性セルロース、ゴム成分、疎水化剤を一度に混合し、水を除去する方法が挙げられる。これにより、いずれの成分をも均一に分散させることができる。
混合物から水を除去する方法は、特に制限されず、例えば、オーブンなどの乾燥器で乾燥させる方法、塩化ナトリウム等の塩を添加し凝固させる方法が挙げられる。
アニオン変性セルロースと疎水化剤の反応物と、ゴム成分と、の混合物において、ゴム成分100質量部に対する、アニオン変性セルロースと疎水化剤の反応物の合計の配合部数は、20〜120質量部が好ましく、40〜100質量部がより好ましく、60〜80質量部がさらに好ましい。配合部数が20質量部未満であると、混合物中に抽出溶媒が浸透せず、疎水化剤の抽出が十分に行なわれない場合がある。また、120質量部超であると、混合物中に抽出溶媒が過剰浸透するため、疎水化剤だけでなく、アニオン変性セルロースも抽出される場合がある。
[1−2.抽出処理工程]
抽出処理工程は、混合物を、多価金属塩とアルカリ成分を含む抽出溶媒により抽出処理してゴム組成物を得る工程である。
混合物を抽出処理することで、混合物に含まれる疎水化剤を抽出し得るので、硬度及び低〜中間領域のモジュラスの過度の低下を抑制し得る。なお、抽出処理により、混合物から抽出する疎水化剤を適度に抽出することできるので、硬度、低〜中間領域のモジュラス、破断伸び及び破断強度のゴムの物性を設計可能である。
抽出処理は、多価金属塩とアルカリ成分を含む抽出溶媒中で、混合物を10〜600分撹拌することで行い得る。多価金属塩を添加しないと、疎水化剤のみならず、アニオン変性セルロースも抽出され、破断伸び及び破断強度の向上効果が小さくなる場合がある。アルカリ成分を添加しないと、抽出化剤が効率よく抽出されない。
また、撹拌時間が10分未満であると、疎水化剤の抽出が不十分であり、低〜中間領域のモジュラス及び硬度の低下抑制が不十分となる場合がある。一方、600分超であると、アニオン変性セルロースが加水分解され、破断伸び及び破断強度の向上効果が小さくなる場合がある。
なお、抽出処理の撹拌は、通常、室温で行う。
多価金属塩は、発生する金属イオンの価数が2価以上の金属を意味する。多価金属塩を含ませる目的は、多価金属塩から遊離する金属イオンにより、アニオン変性セルロースを架橋させ、アニオン変性セルロースの歩留まりを向上させることにある。このため多価金属塩は、2価或いは3価の多価金属の塩が好ましく、カルシウムイオン、バリウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、及びアルミニウムイオンからなる群から選択されるイオンを発生させることのできる多価金属の塩がより好ましく、カルシウムの塩、又はマグネシウムの塩がさらに好ましい。多価金属塩は、例えば、前記の多価金属の水酸化物、塩化物、アルコラート類;上記の多価金属と、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の有機カルボン酸とから得られるアシレート類が挙げられる。多価金属塩は、多価金属の水酸化物(例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム8水和物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム)、前記多価金属の塩化物(例えば、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム)がより好ましい。
アルカリ成分としては、抽出溶媒に溶解するものであれば特に限定されない。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属;アンモニア;ヒドロキシアミン、エタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン化合物が挙げられる。
抽出溶媒は、水であってもよく、親水性有機溶媒であってもよく、水と親水性有機溶媒の混合溶媒であってもよい。中でも、抽出溶媒として強アルカリ成分を含む水溶液を用いると、アニオン変性セルロースが疎水化剤を解離しやすく、疎水化剤の抽出を行い易くするので、水又は水と親水性有機溶媒の混合溶媒が好ましい。強アルカリ成分を含む水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液が挙げられる。なお、親水性有機溶媒は、水と親和性のある有機溶媒を意味する。水と親水性有機溶媒を用いると、多価金属による疎水化剤の抽出量を制御でき、ゴムの物性を設計可能である。
親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、i−プロピルアルコール等のアルコール類やアセトンが挙げられる。
抽出溶媒における多価金属塩の配合量は、アニオン変性セルロースのアニオン性基量に対して0.1〜10当量が好ましく、0.5〜5当量がより好ましく、1〜3当量がさらに好ましい。
抽出溶媒におけるアルカリ成分の配合量は、アニオン変性セルロースのアニオン性基量に対して0.1〜5当量が好ましく、0.3〜3当量がより好ましく、0.5〜2当量がさらに好ましい。
多価金属塩に対するアルカリ成分の配合量は、0.1〜1.0当量が好ましく、0.2〜0.9当量がより好ましく、0.3〜0.8当量がさらに好ましい。
抽出処理に用いる混合物100質量部に対する抽出溶媒の配合部数は、100〜2000質量部が好ましく、300〜1500質量部がより好ましく、500〜1000質量部がさらに好ましい。配合部数が100質量部未満であると、混合物中に抽出溶媒が浸透せず、疎水化剤の抽出が十分に行なわれない場合がある。また、2000質量部超であると、抽出溶媒中の電解質濃度が低く、イオン化しやすくなるため、疎水化剤だけでなく、アニオン変性セルロースも抽出される場合がある。
[2.ゴム組成物]
本発明のゴム組成物の一実施形態は、上記の本発明のゴム組成物の製造方法により製造されたものであって、ゴム成分と、アニオン変性セルロースと、を少なくとも含む。
また、本発明のゴム組成物の他の実施形態は、ゴム成分と、アニオン変性セルロースと、を少なくとも含み、含有金属量が0.10〜1.00質量%であり、減衰全反射法によって赤外分光スペクトルを測定したとき、1300〜1500cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(α)と、1000〜1300cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(β)との比(α/β)が1以上である。
本発明のゴム組成物の一実施形態は、本発明のゴム組成物の製造方法によって得られるものである。すなわち、ゴム成分と、疎水化剤と、アニオン変性セルロースを混合して、ゴム成分中にアニオン変性セルロースを分散した後、疎水化剤を抽出処理により抽出するので、架橋を阻害する疎水化剤の量を低減し、アニオン変性セルロースを主として配合したものといえる。
本発明のゴム組成物の他の実施形態は、ゴム成分と、アニオン変性セルロースと、を少なくとも含み、含有金属量が0.10〜1.00質量%であり、減衰全反射法によって赤外分光スペクトルを測定したとき、1300〜1500cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(α)と、1000〜1300cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(β)との比(α/β)が1以上である。
比(α/β)は、1以上が好ましく、3以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないけれども、通常、10以下である。
最大ピーク高さ(α)は、ゴム組成物中のゴム成分に由来するC−H変角振動に帰属される吸光度の最大ピーク高さであり、波数1300〜1500cm−1の赤外光波数領域において吸収極大を有する吸収ピークである。
最大ピーク高さ(β)は、ゴム組成物中の疎水化剤に由来するC−O伸縮振動に帰属される吸光度の最大ピーク高さであり、波数1000〜1300cm−1の赤外光波数領域において吸収極大を有する吸収ピークである。
すなわち、ゴム組成物中の疎水化剤の割合が多い場合、βの数値が大きく、相対的にαの数値が小さくなる、換言すると比(α/β)は小さくなる。一方、ゴム組成物中の疎水化剤の割合が少ない場合、βの数値が小さい、相対的にαの数値が大きくなる、換言すると比(α/β)は大きくなる。
よって、比(α/β)を測定することで、酸処理工程での疎水化剤の抽出割合を定性的に確認し得る。本発明のゴム組成物の他の実施形態においては、比(α/β)が1以上のため、ゴム組成物中の疎水化剤の割合が少ないものといえる。
減衰全反射法による赤外分光スペクトルの測定条件は、以下の通りである。
PerkinElmer社製のFrontierFT IRで測定を行い、クリスタルはダイヤモンド、積算回数は32回とする。なお、規格化の設定条件は、1315−1316cm−1を強度1A、1850cm−1を強度0Aとする。
ゴム組成物中の含有金属量は、0.10〜1.00質量%であり、0.13〜0.80質量%が好ましく、0.15〜0.60質量%がより好ましい。含有金属量は、抽出処理に用いる抽出溶媒の多価金属塩に由来する量である。
含有金属量は、ISO6101に準拠して測定することができる。
本発明のゴム組成物は、抽出処理後にゴム成分を別途添加し、組成物中のゴム成分の割合を変更してもよい。
ゴム組成物中のゴム成分の含有量は、60〜95重量%が好ましく、80〜90重量%がより好ましい。
本発明のゴム組成物は、補強剤(例えば、カーボンブラック、シリカ等)、シランカップリング剤、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤(例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸)、オイル、硬化レジン、ワックス、老化防止剤、着色剤等の配合剤を添加した後、架橋して成型することでゴム製品とし得る。
これらの添加量は、配合剤の種類等に応じて適宜決定すればよく、特に限定されない。
ゴム組成物が未加硫ゴム組成物又は最終製品である場合、架橋剤及び加硫促進剤を含むことが好ましい。架橋剤としては、例えば、硫黄、ハロゲン化硫黄、有機過酸化物、キノンジオキシム類、有機多価アミン化合物、メチロール基を有するアルキルフェノール樹脂が挙げられる。これらの中でも硫黄が好ましい。架橋剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対し、1.0質量部以上が好ましく、1.5質量部以上がより好ましく、1.7質量部以上がさらに好ましい。上限は、10質量部以下が好ましく、7質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましい。
加硫促進剤としては、例えば、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドが挙げられる。加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対し、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.4質量部以上がさらに好ましい。上限は、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を好適に説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。なお、物性値等の測定方法は、別途記載がない限り、上記に記載した測定方法である。また、「部」とは、質量部を意味する。
[硬度]:ISO M 6518に準拠し、ゴム硬度(Shore A)を測定した。
[50又は100%ひずみ時における応力(MPa)]:JIS K 6251(2017)「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に従い、測定した。
[破断応力(MPa)]:JIS K 6251(2017)「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に従い、測定した。
[破断伸び(%)]:JIS K 6251(2017)「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に従い、測定した。
[比(α/β)]:ゴム組成物を減衰全反射法によって赤外分光スペクトルを測定し、1300〜1500cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(α)と、1000〜1300cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(β)から算出した。なお、赤外分光スペクトルの測定条件は、下記のとおりである。
装置名:PerkinElmer社製のFrontierFT IR
クリスタル:ダイヤモンド
積算回数:32回
規格化:1315−1316cm−1を強度1A、1850cm−1を0A
[含有金属量(質量%)]:ISO6101に準拠してゴム成分中の含有金属(カルシウム)量を測定した。
(製造例1:酸化セルロースの調製)
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)50.0g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)390mg(絶乾1gのセルロースに対し0.05mmol)と臭化ナトリウム5.14g(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液5lに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を次亜塩素酸ナトリウムが5.5mmol/gになるように添加し、室温にて酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターで濾過して分離し、分離された生成物を十分に水洗して、酸化セルロースを得た。この時の収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシ基量は1.42mmol/gであった。
(製造例2:カルボキシメチル化セルロースの調製)
パルプを混ぜることができる撹拌機に、パルプ(NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、日本製紙社製)を乾燥質量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥質量で111g(出発原料の無水グルコース残基当たり2.25倍モル)加え、パルプ固形分が20%(w/v)になるように水を加えた。その後、30℃で30分攪拌した後にモノクロロ酢酸ナトリウムを216g(有効成分換算、パルプのグルコース残基当たり1.5倍モル)添加した。30分撹拌した後に、70℃まで昇温し1時間撹拌した。その後、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度0.25のカルボキシルメチル化セルロースを得た。
(実施例1)
製造例1で得た酸化セルロースの固形分濃度1.00%(w/v)の水分散液5kgと、疎水化剤としてJEFFAMINE(登録商標)M−2070(HUNTSMAN社製、分子量2,000)142gと、を添加し、ホモディスパー(商品名「高速分散機ホモディスパー」、PRIMIX社製)を用いて3,000rpmで15分間撹拌して、アニオン変性セルロースと疎水化剤の反応物を調製した。当該反応物を70℃で1日オーブン乾燥した。
反応物を小型のミル(商品名「イージーカットミルEG−45」、カリタ社製)で粗粉砕した後、ゴム成分(エチレンプロピレンジエンゴム、商品名「EP24」、JSR社製)を、ゴム成分100部に対して反応物が76.8部(酸化セルロース換算で20部)となるよう配合し、密閉式二軸混練機を用いて160℃で10分間混合を行った。混合物60gを塩化カルシウム2.14gと水酸化ナトリウム0.39gを溶解した塩化カルシウムの水酸化ナトリウム水溶液300g中で1時間撹拌して抽出処理した後、イオン交換水で3回洗浄し、70℃で1日オーブン乾燥したところ、混合物中に含まれるゴム成分以外の成分の配合部数が21.7部であった。
乾燥した混合物に、ゴム成分に対してゴム成分以外の成分の配合量が10部になるようゴム成分をさらに加えた後、ジクミルパーオキサイド(ゴム成分に対して3部)、添加し、30℃で混練した後、170℃で10分間、架橋及び成形してゴム組成物を得た。得られたゴム組成物を用いて、硬度、50%、100%又は300%ひずみ時における応力、破断応力、破断伸びの評価試験を行った。結果を表1に示す。
(実施例2)
乾燥した混合物にさらに加えたゴム成分の添加量を、ゴム成分に対してゴム成分以外の成分の配合量が20部になるように変更したこと以外は、実施例1と同様にゴム組成物を得、各種評価試験を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
アニオン変性セルロースの種類を、製造例2で得たカルボキシメチル化セルロースに変更したこと以外は、実施例1と同様にゴム組成物を得、各種評価試験を行った。なお、抽出処理後の混合物中に含まれるゴム成分以外の成分の配合部数は22.5部になった。結果を表1に示す。
(実施例4)
乾燥した混合物にさらに加えたゴム成分の添加量を、ゴム成分に対してゴム成分以外の成分の配合量が20部になるように変更したこと以外は、実施例3と同様にゴム組成物を得、各種評価試験を行った。結果を表1に示す。
Figure 2021098791
(比較例1)
製造例1で得た酸化セルロースの固形分濃度1.00%(w/v)の水分散液5kgと、疎水化剤としてJEFFAMINE(登録商標)M−2070(HUNTSMAN社製、分子量2,000)142gと、を添加し、ホモディスパー(商品名「高速分散機ホモディスパー」、PRIMIX社製)を用いて3,000rpmで15分間撹拌して、アニオン変性セルロースと疎水化剤の反応物を調製した。当該反応物を70℃で1日オーブン乾燥した。
反応物を小型のミル(商品名「イージーカットミルEG−45」、カリタ社製)で粗粉砕した後、ゴム成分(エチレンプロピレンジエンゴム、商品名「EP24」、JSR社製)を、ゴム成分100部に対して反応物が38.4部(酸化セルロース換算で10部)となるよう配合し、密閉式二軸混練機を用いて160℃で10分間混合を行った。
ジクミルパーオキサイド(ゴム成分に対して3部)を加え、30℃で混練した後、170℃で15分間、架橋及び成形してゴム組成物を得た。得られたゴム組成物を用いて、硬度、50%、100%又は300%ひずみ時における応力、破断応力、破断伸びの評価試験を行った。結果を表2に示す。
(比較例2〜4)
ゴム組成物の調製に用いたアニオン変性セルロースの種類、添加量及びゴム成分の添加量を表2に変更したこと以外は、比較例1と同様にゴム組成物を得、各種評価試験を行った。結果を表2に示す。
(比較例5)
ゴム成分(エチレンプロピレンジエンゴム、商品名「EP24」、JSR社製)に、ジクミルパーオキサイド(ゴム成分に対して3部)を加え、30℃で混練した後、170℃で15分間、架橋及び成形してゴム組成物を得た。得られたゴム組成物を用いて、硬度、50%、100%又は300%ひずみ時における応力、破断応力、破断伸びの評価試験を行った。結果を表2に示す。
(比較例6)
ゴム成分(エチレンプロピレンジエンゴム、商品名「EP24」、JSR社製)に、疎水化剤としてJEFFAMINE(登録商標)M−2070(HUNTSMAN社製、分子量2,000)(ゴム成分に対して28.4部)、ジクミルパーオキサイド(ゴム成分に対して3部)を加え、30℃で混練した後、170℃で15分間、架橋及び成形してゴム組成物を得た。得られたゴム組成物を用いて、硬度、50%、100%又は300%ひずみ時における応力、破断応力、破断伸びの評価試験を行った。結果を表2に示す。
Figure 2021098791
表1からわかるように、本発明のゴム組成物の製造方法で製造したゴム組成物は、硬度及びモジュラスを低下することなく、破断強度及び破断伸びが向上しているである(実施例1〜4参照)。
これに対して、抽出処理を行わないゴム組成物(比較例1〜4)は、セルロースを配合しないゴム組成物(比較例5)と比較しても、硬度及び低〜中間領域のモジュラスが明らかに劣るものであった。また、アニオン変性セルロースを配合しないゴム組成物(比較例6)は、セルロースを配合しないゴム組成物(比較例5)と比較しても、破断伸びが向上する一方で、破断強度に向上は観測されず、硬度及び低〜中間領域のモジュラスが明らかに劣るものであった。

Claims (11)

  1. アニオン変性セルロースと、疎水化剤と、ゴム成分と、を混合して混合物を得る工程と、
    前記混合物を、多価金属塩とアルカリ成分を含む抽出溶媒により抽出処理してゴム組成物を得る工程と、を含むゴム組成物の製造方法。
  2. 前記アニオン変性セルロースが、
    酸化セルロース、カルボキシメチル化セルロース、又はリン酸エステル化セルロースである、請求項1に記載のゴム組成物の製造方法。
  3. 前記疎水化剤が、ポリエーテル骨格の末端に1級アミノ基を有するポリエーテルアミンを含む、請求項1又は2に記載のゴム組成物の製造方法。
  4. 前記ポリエーテルアミンが、
    ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールアミンである、請求項3に記載のゴム組成物の製造方法。
  5. 前記疎水化剤が、炭素原子数3〜30のアルケニル基を有するアミン化合物又は炭素原子数3〜30のアルケニル基を有する第4級アンモニウム塩をさらに含む、請求項3又は4に記載のゴム組成物の製造方法。
  6. 前記アミン化合物が、オレイルアミンである、請求項5に記載のゴム組成物の製造方法。
  7. 前記第4級アンモニウム塩が、ジオレイルジメチルアンモニウム塩である、請求項5に記載のゴム組成物の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のゴム組成物の製造方法により製造され、
    ゴム成分と、
    アニオン変性セルロースと、を少なくとも含むゴム組成物。
  9. ゴム成分と、
    アニオン変性セルロースと、を少なくとも含み、
    含有金属量が0.1〜1.0質量%であり、
    減衰全反射法によって赤外分光スペクトルを測定したとき、1300〜1500cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(α)と、1000〜1300cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(β)との比(α/β)が1以上である、ゴム組成物。
  10. 前記アニオン変性セルロースが、
    酸化セルロース、カルボキシメチル化セルロース、又はリン酸エステル化セルロースである、請求項8又は9に記載のゴム組成物。
  11. 前記ゴム成分の含有量が、60〜95重量%である、請求項8〜10のいずれか1項に記載のゴム組成物。
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