JP2021097660A - 細胞用培地添加剤およびその利用 - Google Patents

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Abstract

【課題】細胞用培地添加剤、該添加剤を含む細胞用培地、およびスフェロイドまたは生理活性物質の製造方法の提供。【解決手段】樹脂微粒子を含む、あるいは平均粒子径が30〜500nmおよびゼータ電位が−20mV以下または20mV以上であるを該樹脂微粒子を含む、あるいは分配係数LogPが0.8〜10である単量体を含む単量体混合物の重合体である該樹脂微粒子を含む、あるいは糖、リン脂質、アミノ酸系化合物および反応性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種で表面が被覆されている該樹脂微粒子を含む細胞用培地添加剤、該添加剤を含む細胞用培地、該細胞用培地中で培養することを特徴とするスフェロイドまたは生理活性物質の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、動物細胞培養時における生理活性物質の高産生化に適し、更に細胞の活性、増殖、スフェロイド形成に優れた細胞用培地添加剤に関する。
さらに本発明は該細胞用培地添加剤を含有する培地を用いた生理活性物質の製造方法に関する。
近年、動物細胞を大量培養することにより、モノクローナル抗体をはじめ有用な生理活性物質(ホルモン、神経伝達物質、サイトカイン、ビタミンやミネラル、酵素、核酸など) を工業的に量産することが非常に多くなってきている。その際には増殖因子として、ウシ胎児血清(FBS)などの動物血清が頻繁に使用される。具体的にはRPM11640、イーグルMEM、Ham‘sF12などの合成基礎培地に10〜20%程度のウシ胎児血清(FBS)などの動物血清を添加した培養液が一般に用いられる。
しかしながら、ウシ胎児血清(FBS)などの動物血清は、その供給に制限があり、一般的に高価なものである。これにより、培地のコスト上昇を招き、生理活性物質の製造コストの上昇へとつながる。また、血清由来のタンパク質を含む培養液から目的とする生理活性物質を単離することが困難になる欠点にもつながる。さらに、血清にはロット間に品質のばらつきがみられる。そこで血清の使用に先立ってロットチェックを十分に行い、使用可能な血清を選択する必要があるが、この血清の選択には多くの労力を要する。それに加え、動物由来の血清に関しては、狂牛病、ウシ海綿状脳症、感染性海綿状脳、更にはクロイツフェルト・ヤコブ病といったプリオン関連の疾患に関する問題点の他、動物由来の血清はオートクレーブ等で滅菌できないため、ウイルス又はマイコプラズマ汚染される可能性があり、感染症などのリスク(安全性面)の問題が生じる。
上記の問題を解決すべく、血清を用いない培地(無血清培地)の検討が行われてきた。
例えば、特許文献1には、グリシルグリシンを培地に添加することで、動物細胞に高濃度に有用物質を生産させることができることが開示されている。また、特許文献2では、多糖類を培地に添加することで、タンパク質の産生を促進させることができることが開示されている。また、特許文献3には、疎水性D−アミノ酸を含有する培地が、細胞増殖を促進させ、有用物質の生産量を増大させることが開示されている。
しかし、このような血清代替物を含む培地の多くは、抗体産生細胞の増殖性、生存性および抗体生産性の面で血清含有培地に比べて十分なものとは言えない。さらに血清代替物も天然物由来のものが多く、供給制限があり、一般的に高価である。
また、特許文献4には、リン脂質類似構造を有するポリマーを含有する培地で細胞培養した場合に、生理活性物質を効率的に生産できることが開示されている。特許文献5には、リン脂質を含む界面活性剤を用いて、脂質をエマルジョン化し、細胞培養培地に分散させ、生理活性物質の生産にも利用できることが開示されている。しかし、表面にリン脂質が被覆された樹脂微粒子を含む培地添加剤として用いた知見は無い。
以上のことから、ウシ胎児血清(FBS)に代わる血清代替物の開発が期待されている。
また、iPS細胞やES細胞等の幹細胞を用いた再生医療では、これらの細胞を効率よく増殖させ、その後に目的の組織へ分化させ移植を行うことが想定される。このような再生医療の産業化には安定的に細胞を培養し供給できるシステムが不可欠であり、その為の培地及び該培地の製造方法の開発が求められている。
細胞培養には培地(培養液)が必須となるが、高価な成分が必要となる場合が多く十分な量の細胞を確保することは困難である。従って、細胞培養の効率化、低コスト化が求められる。そこで、細胞増殖を促進することができ、且つ安価で大量供給可能な素材の探索が進められている。その一環として、合成高分子材料について種々検討が為されているが、いずれも基材やハイドロゲルの形態で用いる方法であり、その多くは高分子材料を容器表面に固着させる必要があり煩雑さを伴う、制限のあるものであった(特許文献6)。
特開平7−23780号公報 特許第6218285号 特開2015−027265号公報 特開平4−304882号公報 特許第2788270号 US 20120208276 A1
このように、生理活性物質の高産生化や細胞培養法の報告や特許出願がされているが、いずれの方法も、コストや手間の増加に伴わずに、大量供給可能な素材の探索が求められていた。
本発明者は、上記課題を解決するため検討を行った結果、所定の樹脂粒子を作製し、これを培地に添加することにより、高い生理活性物質の生成能、更に細胞の活性、スフェロイド形成を見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[16]を提供するものである。
[1] 樹脂微粒子(A)を含む細胞用培地添加剤。
[2] 樹脂微粒子(A)が、下記(1)および(2)の条件を満たす前記[1]記載の細胞用培地添加剤。
(1) 平均粒子径が30〜500nmである。
(2) ゼータ電位が、−20mV以下、または20mV以上である。
[3] 樹脂微粒子(A)が、分配係数LogPが0.8〜10である単量体(a1)を含む単量体混合物の重合体であり、前記単量体混合物総量中に前記単量体(a1)を10〜80質量%含む、前記[1]または[2]に記載の細胞用培地添加剤。
[4] 前記単量体混合物の総量中に、架橋性単量体(a2)を0.1〜10質量%含む、前記[1]〜[3]に記載の細胞用培地添加剤。
[5] 前記樹脂微粒子(A)の表面が、糖、リン脂質、アミノ酸系化合物、および反応性界面活性剤(c1)からなる群より選ばれる少なくとも1種で被覆されている前記[1]〜[4]いずれかに記載の細胞用培地添加剤。
[6] 糖が単糖類もしくは多糖類である、前記[5]に記載の細胞用培地添加剤。
[7] 樹脂微粒子(A)は、糖由来の界面活性剤を用いて乳化重合された重合体である、前記[5]または[6]に記載の細胞用培地添加剤。
[8] リン脂質が、レシチンである、前記[5]〜[7]いずれかに記載の細胞用培地添加剤。
[9] 樹脂微粒子(A)は、リン脂質を用いて乳化重合された重合体である、前記[5]〜[8]いずれかに記載の細胞用培地添加剤。
[10] アミノ酸系化合物が、アミノ酸構造および/またはペプチド構造を含む、前記[5]〜[9]いずれかに記載の細胞用培地添加剤。
[11] 樹脂微粒子(A)は、アミノ酸系界面活性剤を用いて乳化重合された重合体である、前記[5]〜[10]いずれかに記載の細胞用培地添加剤。
[12] 前記単量体混合物の総量に対して、反応性界面活性剤(c1)を0.5〜10質量%含む、前期[5]〜[11]いずれかに記載の細胞用培地添加剤。
[13] 前記[1]〜[12]に記載の細胞用培地添加剤を含む、細胞用培地。
[14] 樹脂微粒子(A)の培地中の濃度が0.001〜0.5質量%である、[13]に記載の細胞用培地。
[15] 前記[13]または[14]記載の細胞用培地中で細胞を培養することを特徴とするスフェロイドまたは生理活性物質の製造方法。
本発明の細胞用培地添加剤は、該添加剤を細胞用培地に添加し、得られた培地を用いて、生理活性物質の産生可能な細胞を培養した際に、生理活性物質の生産量を増大させることが可能である。特にDNA量あたりの生理活性物質の産生性を高めることができる。また、本発明の細胞用培地添加剤を添加することにより、所望の生理活性物質の産生性を促進することができるため、製造コストや手間を少なくすることができる点でも有用である。例えば、抗体の場合では抗体医薬品等のバイオ医薬品の製造に関して、大量供給に大きく貢献することができる。
また、本発明の細胞用培地添加剤は、該添加剤を細胞用培地に添加し、得られた培地を用いて、細胞の活性、増殖、スフェロイド形成に優れる細胞が得られる。本細胞用培地添加剤を用いて細胞培養を行った場合、細胞機能を向上することができるため、創薬スクリーニング等の用途において展開可能である。
本発明の細胞用培地添加剤は、樹脂微粒子(A)を含むものである。
樹脂微粒子は特に限定されないが、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン樹脂、アミド樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。これらの共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体および、ポリマーブレンド等を用いてもよい。
<樹脂微粒子(A)>
[平均粒子径]
樹脂微粒子(A)の平均粒子径は、30〜500nmが好ましく、50〜300nmがより好ましく、70〜200nmがさらに好ましい。平均粒子径が30nm以上であることで、表面エネルギーによる粘度上昇を抑える効果が高い。また、平均粒子径が500nm以下であることで経時安定性がより向上する。
樹脂微粒子(A)の平均粒子は、動的光散乱法(DLS)による測定で求めることができる。具体的には、以下のようにして行うことができる。樹脂微粒子(A)を固形分に応じて200〜1000倍に水で希釈し、固形分0.05〜0.2質量%程度に調整しておく。該希釈液約5mLを測定装置[[マルバーン社製ゼータサイザーナノ]]のセルに注入し、サンプルに応じた溶剤(本発明では水)および樹脂の屈折率条件を入力後、測定を行う。この時得られた体積粒子径分布データ(ヒストグラム)のピークを本発明の平均粒子径とする。
[ゼータ電位]
樹脂粒子(A)のゼータ電位が、−20mV以下、または20mV以上であることが好ましく、より好ましくは、−40mV以下、または40mV以上である。ゼータ電位を−20mV以下、または20mV以上であることで、樹脂微粒子(A)の安定性が向上する。
樹脂微粒子(A)のゼータ電位は、レーザードップラー式電気泳動法による測定で求めることができる。具体的には、以下のようにして行うことができる。樹脂微粒子(A)を固形分に応じて200〜1000倍に水で希釈し、固形分0.05〜0.2質量%程度に調整しておく。該希釈液約5mLを測定装置[[マルバーン社製ゼータサイザーナノ]]のセルに注入し、サンプルに応じた溶剤(本発明では水)を入力後、測定を行う。この時得られたゼータ電位分布データ(ヒストグラム)のピークを本発明のゼータ電位とする。
樹脂微粒子(A)は、分配係数LogPが0.8〜10である単量体(a1)を含む単量体混合物の重合体であることが好ましい。単量体(a1)は、分配係数LogPが0.8〜10であり、1分子中に1つのエチレン性不飽和基を有する。単量体混合物総量中の前記単量体(a1)は、10〜80質量%が好ましく、さらに20〜80質量%がより好ましく、30〜80質量%がさらに好ましい。単量体(a1)が80質量%以下であることにより、樹脂微粒子(A)が水中で安定して分散でき、凝集物や沈殿の発生を抑えることが期待できる。
[LogP]
分配係数LogPが0.8〜10であり、1分子中に1つのエチレン性不飽和基を有する単量体(a1)としては、特に限定はされないが、例えば、
メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、nーブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、へプチル(メタ)アクリレート、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等のアルキルエステル(メタ)アクリレート;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族エステル(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、クロロスチレン、アリルベンゼン、エチニルベンゼン等の芳香族ビニル単量体が挙げられる。
これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
分配係数LogPは、化学物質の性質を表す数値の1つであり、添加量に依存しない一定の値である。対象とする物質が水と1−オクタノールの混合液において、水相とオクタノール相が接した系中で平衡状態にある場合を対象として、各相の濃度をその常用対数で示したものである。LogPが大きくなると、比較的に疎水性が増大する傾向にあり、LogPが小さくなると、比較的に親水性が増大する傾向にある。
LogPの測定は、一般にJIS日本工業規格Z7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、LogPは実測に代わって、計算化学的手法、あるいは経験的方法により見積もることも可能である。LogPの計算に用いる方法やソフトウェアについては公知のものを用いることができるが、本発明ではCambridgeSoft社のシステム:ChemdrawPro11.0に組み込まれたプログラムを用いて、LogPを求めている。
[単量体(b1)]
分配係数LogPが0.8〜10の範囲外の単量体(b1)としては、例えば、2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有単量体;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などのカルボン酸含有単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのアミド基含有単量体;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸などのスルホン酸基含有単量体;(2−ヒドロキシエチル)メタクリレートアシッドホスフェートなどのリン酸基含有単量体などが挙げられる。
[架橋性単体(a2)]
架橋性単体(a2)はエチレン性不飽和基に加え、ビニル基または(メタ)アクリロイル基、アルコシキシリル基、アセトアセトキシ基、グリシジル基などの架橋反応性官能基を有する単量体であり、単量体混合物の総量中が0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がさらに好ましい。上記の単量体が0.1質量%以上であることで、樹脂微粒子(A)の分子内に架橋構造が組み込まれ、凝集力の向上や、熱耐性の向上が期待できる。また、上記の単量体が5質量%以下であることで、樹脂微粒子(A)を安定して合成ができ、合成後の分散状態を安定に保持することができる。
架橋性単量体(a2)としては、例えば、
アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、アジピン酸ジビニル、イソフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等のビニル基または(メタ)アクリロイル基含有単量体;
γ−メタクリロキシプロピルトリメトシキシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメイルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトシキシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメイルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシメチルトリメトシキシラン、γ−メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシメチルトリメトシキシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランなどのアルコシキシリル基含有単量体;
ダイアセトンアクリルアミド、アジピン酸ジヒドラジドなどのアセトアセトキシ基含有の単量体;
グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルなどのグリシジル基含有単量体が挙げられる。
グリシジル基含有単量体を使用する際には0.1〜10質量%の水酸基もしくはカルボン酸含有単量体を同時に使用することが好ましい。水酸基含有単量体は、例えば、2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。カルボン酸含有単量体は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などが挙げられる。
樹脂微粒子(A)の合成方法としては、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合が挙げられる。有機溶剤中で重合した方法(溶液重合など)に関しては、最終的に有機溶剤を除去した後、水に置換して用いることができる。樹脂微粒子(A)の合成は、特に乳化重合が好ましい。
乳化重合は、界面活性剤および保護コロイドの少なくともいずれかの存在下で行うことが好ましい。界面活性剤は、イオン種としてアニオン、カチオン、ノニオンが好ましく、アニオンおよびノニオンがより好ましい。また、分子内にラジカル重合可能な不飽和二重結合を1個以上有する反応性界面活性剤(c1)が好ましい。
[反応性界面活性剤(c1)]
反応性界面活性剤(c1)は、分子内にラジカル重合可能な不飽和二重結合を1個以上有する界面活性剤のことであり、単量体混合物の総量に対して、0.5〜10質量%の範囲で含むが好ましく、1〜5質量%がさらに好ましい。上記の反応性界面活性剤が、0.5質量%以上であることで、樹脂微粒子(A)の安定性がより向上する。上記の反応性界面活性剤が多いほど、平均粒子径が小さくすることができる。
反応性界面活性剤(c1)としては、イオン性の反応性界面活性剤と非イオン性(ノニオン性)の反応性界面活性剤があり、イオン性の反応性界面活性剤としては、アニオン性反応性界面活性剤、カチオン性反応性界面活性剤、両性反応性界面活性剤がある。カチオン性反応性界面活性剤を用いると、ゼータ電位をプラスにすることができ、アニオン性反応性界面活性剤を用いると、ゼータ電位をマイナスにすることができる。乳化容易性、市販品の種類の多さから、ノニオン性反応性界面活性剤、またはアニオン性反応性界面活性剤が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
アニオン性のものとしては、例えば、主骨格がアルキルエーテル、アルキルフェニルエーテル、アルキルフェニルエステル、スルホコハク酸エステル、(メタ)アクリレート硫酸エステル、リン酸エステルであるものが挙げられる。
ノニオン性のものとしては、例えば、主骨格がアルキルエーテル、アルキルフェニルエーテル、アルキルフェニルエステル、(メタ)アクリレート硫酸エステルであるものが挙げられる。
具体例としては、ラテムル PD−104(花王株式会社)やアデカリアソープ SR−10、ER−10(株式会社ADEKA)、アクアロン KH−10(第一工業製薬株式会社)が挙げられる。
[非反応性界面活性剤(c2)]
反応性界面活性剤(c1)に加えて、非反応性界面活性剤(c2)を用いてもよく、イオン性非反応性界面活性剤と非イオン性非反応性界面活性剤のいずれを用いても良い。重合安定性の観点から、アニオン性非反応性界面活性剤、またはノニオン性非反応性界面活性剤が好ましい。
アニオン性のものとしては、例えば、
オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩類;
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩類;
ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩類;
ポリエキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類;
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類;
モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸ナトリウムなどのアルキルスルホコハク酸エステル塩およびその誘導体類;
ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩類などが挙げられる。
ノニオン性のものであれば、例えば、
ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類;
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;
ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレートなどのポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類;
オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステル類;
ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンで構成されるブロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルなどが挙げられる。
界面活性剤は、単量体混合物100質量部に対して、1〜10質量部を含むことが好ましい。これらは1種類または2種類以上を混合して使用することができる。
保護コロイドをとしては、特に水溶性保護コロイドが好ましい。
例えば、アクリルポリマー、スチレンアクリルポリマー、スチレンマレイン酸共重合体、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類;
ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩などのセルロース誘導体などが挙げられる。これらは1種類または2種類以上を混合して使用することができる。
水溶性保護コロイドの使用量としては重合時の安定性の理由から、単量体の合計100質量部に対して0.1〜10質量部であり、さらに好ましくは0.5〜5質量部である。
また、必要に応じて、緩衝剤、連鎖移動剤、塩基性化合物等を使用できる。
緩衝剤としては、例えば、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムなどが挙げられる。
連鎖移動剤としては、例えば、オクチルメルカプタン、ターシャリードデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、メルカプト酢酸2−エチルヘキシル、メルカプト酢酸オクチル、メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル、メルカプトプロピオン酸オクチルなどが挙げられる。
塩基性化合物としては、中和に使用し、例えば、
トリメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミンなどのアルキルアミン;
2−ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノールなどのアルコールアミン;
モルホリン、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
[重合開始剤]
乳化重合には、ラジカル重合開始剤(以下、重合開始剤という)を使用することが好ましい。ラジカル重合を開始する能力を有するものであれば使用でき、公知の油溶性重合開始剤や水溶性重合開始剤を使用することができる。
油溶性重合開始剤としては、例えば、
ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物;
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス−シクロヘキサン−1−カルボニトリルなどのアゾビス化合物などが挙げられる。
これらは1種類または2種類以上を混合して使用することができる。これら重合開始剤は、エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、0.1〜10質量部の量を用いるのが好ましい。
本発明においては水溶性重合開始剤を使用することが好ましく、水溶性重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]・四水和物、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]・二塩酸塩、2,2’ −アゾビス[2-(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩・二水和物、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]など、従来既知のものを好適に使用することができる。
乳化重合を行うに際して、所望により重合開始剤とともに還元剤を併用することができる。これにより、乳化重合速度を促進したり、低温において乳化重合を行ったりすることが容易になる。このような還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、エルソルビン酸、酒石酸、クエン酸、ホルムアルデヒドスルホキシラートなどの金属塩などの還元性有機化合物、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウムなどの還元性無機化合物、塩化第一鉄、ロンガリット、二酸化チオ尿素などが挙げられる。これら還元剤は、全エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、0.05〜5質量部の量を用いるのが好ましい。
[糖]
樹脂微粒子(A)は、表面が糖で被覆されていることが好ましい。糖で被覆する方法としては、糖由来の界面活性剤を乳化重合の際に使用する方法と、保護コロイドとして糖類を使用する方法と、糖を含まない界面活性剤を使用し、微粒子を合成した後に糖類を加える方法が挙げられる。糖で被覆されていれば、どの方法を用いても構わない。
糖としては、単糖類、多糖類が挙げられるが、樹脂微粒子(A)は、表面が単糖類もしくは多糖類で被覆されていることが好ましい。本発明で用いる多糖類は、単糖が二種類以上結合した糖を意味する。
糖由来の界面活性剤としては、例えば、
多糖類由来のものとして、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ベヘニン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル、ショ糖混合脂肪酸エステルなどのショ糖脂肪酸エステル;
単糖類由来のものとして、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノラウレートなどのソルビタン脂肪酸エステル;
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタントリイソステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、などのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;
メチル-α-D-グルコシドステアリン酸エステル、メチル-α-D-グルコシドパルミチン酸エステル、メチル-α-D-グルコシドミリスチン酸エステル、メチル-α-D-グルコシドオレイン酸エステル、メチル-α-D-グルコシドラウリル酸エステルなどのグルコシド脂肪酸エステルなどが挙げられる。
なかでも、重合安定性の観点からHLB値が10以上である糖由来の界面活性剤が好ましい。
保護コロイドとして使用できる単糖類としては、例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースなどが挙げられる。
多糖としては、例えば、でんぷん誘導体;メチルセルロースなどのセルロース誘導体;キサンタンガム、プルラン、カードランなどの微生物産生多糖類;タマリンドシードガム、グアガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、カラヤガム、ペクチン、ペクチン酸、ペクチン硫酸、カラギナン、アルギン酸などの植物由来の多糖類;ヘパリン、ヘパリチン酸、ケラト硫酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルタマン硫酸、ラムナン硫酸、キチン、キトサンなどの動物性多糖類が挙げられる。
保護コロイドの使用量としては重合時の安定性の理由から、単量体の合計100質量部に対して0.1〜10質量部であり、さらに好ましくは0.5〜5質量部である。
微粒子を合成した後に糖類を加える場合は、保護コロイドとして使用できる単糖類、もしくは多糖類と同じものが使用できる。使用量も保護コロイドで用いる量と同じ量を使用できる。
[リン脂質]
樹脂微粒子(A)は、表面がリン脂質で被覆されていることが好ましい。リン脂質は、ホスファチドとも言われ、構造中にリン酸エステル部位をもつ脂質の総称である。リン脂質は、グリセリンを中心骨格とするグリセロリン脂質と、スフィンゴシンを中心骨格とするスフィンゴリン脂質に分けられる。グリセロリン脂質としては、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチリン酸(PA)、レシチン等が挙げられる。スフィンゴリン脂質としては、スフィンゴミエリン等が挙げられる。本発明に用いられるリン脂質は、グリセロリン脂質、及び、スフィンゴリン脂質のいずれであってもよい。なかでもグリセロリン脂質が好ましく、グリセロリン脂質としてはレシチンがより好ましい。
本発明で用いられるリン脂質は、動植物から抽出、精製した天然物であっても、化学合成したものでもよく、水素添加、水酸化処理など加工されたものであってもよい。
本発明に用いられるリン脂質としてはレシチンが好ましい。レシチンとは、各種リン脂質を主成分とする脂質の混合物の慣用的な名称である。市販のレシチンには、ホスファチジルコリン(PC)を主成分とし、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチリン酸(PA)等のリン脂質が含まれる。
本発明の細胞用添加剤に用いられるレシチンは大豆由来、卵黄由来をはじめとする、いずれの動植物由来のレシチンも使用することができ、水素添加や水酸化処理、酵素処理など加工されたものであってもよい。なかでも、動物由来のものは感染症などのリスクがあるため、植物由来の大豆由来レシチン(以下大豆レシチンと称する)が好ましい。
本発明の細胞用添加剤に用いられるレシチンとしては、リン脂質の含有量が70質量%以上であるものが好ましく、リン脂質の含有量が80質量%以上であるものがより好ましく、リン脂質の含有量が90質量%以上であるものがさらに好ましい。
また、レシチン中に含まれるホスファチジルコリン(PC)の含有量は、通常10質量%〜100質量%の範囲であるが、本発明に用いられるレシチンとしては、PCの含有量が30質量%〜90質量%であるものが好ましく、50質量%〜90質量%であるものがより好ましい。
リン脂質で被覆する方法としては、乳化重合の際にリン脂質を界面活性剤として使用する方法と、リン脂質を含まない界面活性剤を使用し、微粒子を合成した後にリン脂質を加える方法が挙げられる。リン脂質で被覆されていれば、どの方法を用いても構わない。
[アミノ酸系化合物]
樹脂微粒子(A)は、表面がアミノ酸系化合物で被覆されていることが好ましい。アミノ酸系化合物は、アミノ酸構造を含む化合物であれば特に限定されない。例えば、アミノ酸、ペプチド、タンパク質やこれらの構造を含む界面活性剤等が挙げられ、アミノ酸構造またはペプチド構造を含むものが好ましい。
<アミノ酸>
アミノ酸は、その分子内にアミノ基(−NH)とカルボキシル基(−COOH)を持つ化合物の総称であり、特に限定されないが、生体内を構成するアミノ酸が好ましい。また、アミノ酸は、D体またはL体、またはその混合物であるDL体やラセミ体のいずれであってもよく、特に生体を構成するアミノ酸であることから、L−アミノ酸が好ましい。その中でも、生体を構成するアミノ酸であるバリン、ロイシン、イソロイシン、アラニン、アルギニン、グルタミン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、システイン、トレオニン、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン、グリシン、セリンがより好ましい。
これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
<ペプチド>
ペプチドは、2個以上のアミノ酸が、ペプチド結合で結合された化合物であれば特に限定されず、天然物、または化学的に合成されたペプチドのどちらであってもよい。例えば、アミノ酸が2個結合したジペプチド、3個結合したトリペプチド、10個以下結合したオリゴペプチド等が挙げられ、50個以下結合したものが好ましい。
本発明で用いられるペプチドとしては、例えば、
フィブロネクチン由来の細胞接着性を示すアミノ酸配列として、株式会社永井出版発行「病態生理」Vol.9、No.7、1990年、527頁に記載されている
Arg−Gly−Asp配列、Leu−Asp−Val配列、Arg−Glu−Asp−Val配列、Tyr−Ile−Gly−Ser−Arg配列、Pro−Asp−Ser−Gly−Arg配列、Arg−Tyr−Val−Val−Leu−Pro−Arg配列、Leu−Gly−Thr−Ile−Pro−Gly配列、Arg−Asn−Ile−Ala−Glu−Ile−Ile−Lys Asp Ile配列、Ile−Lys−Val−Ala−Val配列、Leu−Arg−Glu配列、Asp−Gly−Glu−Ala配列、His−Ala−Val配列を含むペプチドが挙げられる。
また、その他にもシルクフィブロイン由来の熱安定性が高まるアミノ酸配列として、Gly−Ala−Gly−Ala−Gly−Ser配列も用いることができる。
これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
ペプチドの製造方法は特に限定されず、ペプチドを合成する従来既知の方法と同様にして製造することができ、例えば、有機合成法(固相合成法、液相合成法等)及び生化学的合成法[遺伝子組換微生物(酵母、細菌、大腸菌等)]等によって合成することができる。有機合成法に関しては、例えば、日本生化学学会編「続生化学実験講座2、タンパク質の化学(下)」第641〜694頁(昭和62年5月20日;株式会社東京化学同人発行)に記載されている方法等が用いられる。生化学的合成法に関しては、例えば、特表平3−502935号公報に記載されている方法等が用いられる。
<アミノ酸系界面活性剤>
アミノ酸系界面活性剤とは、アミノ酸構造を有する界面活性剤であり、親水的部分と疎水的部分を持つ両親媒性分子で構成された界面活性剤のうち、その親水性を担う部分にアミノ酸構造を持つ化合物を指す。アミノ酸構造は、ペプチドであってもよい。
アミノ酸のアミノ基とカルボキシル基は、それぞれが反応性に富む官能基であることから多様な構造の界面活性剤に誘導することができる。従って、これらのアミン、カルボン酸の持つ反応性を利用して、疎水性基である脂肪酸などを導入して、アミノ酸系界面活性剤を合成することができる。
自然界には多くのアミノ酸系界面活性剤が存在することが知られており、生体機能の発現・維持に不可欠であると考えられている。さらに、アミノ酸系界面活性剤は生体組織に不必要な影響を与えず、安全で機能性の高い素材であることが期待され、化粧品原料や洗浄剤原料として有用とされている。
アミノ酸系界面活性剤は、動植物から抽出、精製した天然物であっても、化学合成したものでもよく、水素添加、水酸化処理など加工されたものであってもよい。
本発明においてアミノ酸系界面活性剤を合成する方法は制限されないが、代表的な方法として例えば、アミノ基と脂肪酸とを縮合させて得られるN−アシルアミノ酸塩が挙げられる。縮合方法は、脂肪酸を三塩化リンなどでアシルクロライドにした後、アルカリ存在下にて反応させる方法が工業的に採用されている。アミノ酸の種類により反応性が異なるため、それぞれに工夫がされているが、中性アミノ酸は操作が簡単で収率も高い。
また、エチレン性不飽和基にアミノ酸のアミノ基をマイケル付加させて合成することもできる。
さらには、原料にアミノ酸を用いずアミノ酸骨格を界面活性剤に導入することも可能であり、例えば、グリシン、β-アラニン、アスパラギン酸骨格の界面活性剤は、アルキルアミンと、それぞれモノクロロ酢酸、アクリル酸エステル、マレイン酸を原料にして合成することができる。
本発明に用いられるアミノ酸系界面活性剤としては、例えば、脂肪酸にアミノ酸を反応させて得られるN−脂肪酸アシルアミノ酸、またはそのアルカリ金属塩、アミン塩、アンモニウム塩が挙げられる。また、アミノ酸系界面活性剤は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
前記N−脂肪酸アシルアミノ酸の原料となる脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸、パーム油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
また、前記N−脂肪酸アシルアミノ酸の原料となるアミノ酸としては、α−アミノ酸(例、アラニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、リジン、グリシン)、β−アミノ酸(例、β−アラニン、パントテン酸)、γ−アミノ酸(例、γ−アミノ酪酸)、δ−アミノ酸、ε−アミノ酸(例、トラネキサム酸)が挙げられる。アミノ酸は、L体であってもD体であってもよい。
ペプチドとしては、ジペプチド(例、グルタミルリジン、γ−グルタミルシステイン)、トリペプチド(例、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸、グルタミルバリルグリシン、グルタチオン)、テトラペプチド(例、キャピキシル)、ペンタペプチド(例、ロイファシル)やこれらの塩が挙げられる。ペプチドを構成するアミノ酸は、L体であってもD体であってもよい。
N−脂肪酸アシルアミノ酸をアルカリ金属塩とする際に用いるアルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。また、N−脂肪酸アシルアミノ酸をアミン塩とする際に用いるアミン化合物としては、例えば、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン等が挙げられる。さらに、N−脂肪酸アシルアミノ酸をアンモニウム塩とする場合には、アンモニア水を用いる。
前記アミノ酸系界面活性剤の具体例としては、N−ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸、N−ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシン、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシントリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシルアラニン、N−ヤシ油脂肪酸アシルアラニントリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシルサルコシン、N−ヤシ油脂肪酸アシルサルコシントリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシルアラニンナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシルサルコシンナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸カリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシルアラニンカリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシルサルコシンカリウム等のヤシ油脂肪酸由来のアミノ酸系界面活性剤;N−牛脂脂肪酸アシルグルタミン酸、N−牛脂脂肪酸アシルグルタミン酸トリエタノールアミン、N−牛脂脂肪酸アシルグリシン、N−牛脂脂肪酸アシルグリシントリエタノールアミン、N−牛脂脂肪酸アシルアラニン、N−牛脂脂肪酸アシルアラニントリエタノールアミン、N−牛脂脂肪酸アシルサルコシン、N−牛脂脂肪酸アシルサルコシントリエタノールアミン、N−牛脂脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム、N−牛脂脂肪酸アシルグリシンナトリウム、N−牛脂脂肪酸アシルアラニンナトリウム、N−牛脂脂肪酸アシルサルコシンナトリウム、N−牛脂脂肪酸アシルグルタミン酸カリウム、N−牛脂脂肪酸アシルグリシンカリウム、N−牛脂脂肪酸アシルアラニンカリウム、N−牛脂脂肪酸アシルサルコシンカリウム等の牛脂脂肪酸由来のアミノ酸系界面活性剤;
N−パーム油脂肪酸アシルグルタミン酸、N−パーム油脂肪酸アシルグルタミン酸トリエタノールアミン、N−パーム油脂肪酸アシルグリシン、N−パーム油脂肪酸アシルグリシントリエタノールアミン、N−パーム油脂肪酸アシルアラニン、N−パーム油脂肪酸アシルアラニントリエタノールアミン、N−パーム油脂肪酸アシルサルコシン、N−パーム油脂肪酸アシルサルコシントリエタノールアミン、N−パーム油脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム、N−パーム油脂肪酸アシルグリシンナトリウム、N−パーム油脂肪酸アシルアラニンナトリウム、N−パーム油脂肪酸アシルサルコシンナトリウム、N−パーム油脂肪酸アシルグルタミン酸カリウム、N−パーム油脂肪酸アシルグリシンカリウム、N−パーム油脂肪酸アシルアラニンカリウム、N−パーム油脂肪酸アシルサルコシンカリウム等のパーム油脂肪酸由来のアミノ酸系界面活性剤;
N−パーム核油脂肪酸アシルグルタミン酸、N−パーム核油脂肪酸アシルグルタミン酸トリエタノールアミン、N−パーム核油脂肪酸アシルグリシン、N−パーム核油脂肪酸アシルグリシントリエタノールアミン、N−パーム核油脂肪酸アシルアラニン、N−パーム核油脂肪酸アシルアラニントリエタノールアミン、N−パーム核油脂肪酸アシルサルコシン、N−パーム核油脂肪酸アシルサルコシントリエタノールアミン、N−パーム核油脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム、N−パーム核油脂肪酸アシルグリシンナトリウム、N−パーム核油脂肪酸アシルアラニンナトリウム、N−パーム核油脂肪酸アシルサルコシンナトリウム、N−パーム核油脂肪酸アシルグルタミン酸カリウム、N−パーム核油脂肪酸アシルグリシンカリウム、N−パーム核油脂肪酸アシルアラニンカリウム、N−パーム核油脂肪酸アシルサルコシンカリウム等のパーム核油脂肪酸由来のアミノ酸系界面活性剤;
N−ラウロイルアシルグルタミン酸、N−ラウロイルアシルグルタミン酸トリエタノールアミン、N−ラウロイルアシルグリシン、N−ラウロイルアシルグリシングルトリエタノールアミン、N−ラウロイルアシルアラニン、N−ラウロイルアシルアラニントリエタノールアミン、N−ラウロイルアシルサルコシン、N−ラウロイルアシルサルコシントリエタノールアミン、N−ラウロイルアシルグルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイルアシルグリシンナトリウム、N−ラウロイルアシルアラニンナトリウム、N−ラウロイルアシルサルコシンナトリウム、N−ラウロイルアシルグルタミン酸カリウム、N−ラウロイルアシルグリシングルカリウム、N−ラウロイルアシルアラニンカリウム、N−ラウロイルアシルサルコシンカリウム等のラウリン酸由来のアミノ酸系界面活性剤;
N−ミリストイルアシルグルタミン酸、N−ミリストイルアシルグルタミン酸トリエタノールアミン、N−ミリストイルアシルグリシン、N−ミリストイルアシルグリシントリエタノールアミン、N−ミリストイルアシルアラニン、N−ミリストイルアシルアラニントリエタノールアミン、N−ミリストイルアシルサルコシン、N−ミリストイルアシルサルコシントリエタノールアミン、N−ミリストイルアシルグルタミン酸ナトリウム、N−ミリストイルアシルグリシンナトリウム、N−ミリストイルアシルアラニンナトリウム、N−ミリストイルアシルサルコシンナトリウム、N−ミリストイルアシルグルタミン酸カリウム、N−ミリストイルアシルグリシンカリウム、N−ミリストイルアシルアラニンカリウム、N−ミリストイルアシルサルコシンカリウム等のミリスチン酸由来のアミノ酸系界面活性剤;
N−パルミトイルアシルグルタミン酸、N−パルミトイルアシルグルタミン酸トリエタノールアミン、N−パルミトイルアシルグリシン、N−パルミトイルアシルグリシントリエタノールアミン、N−パルミトイルアシルアラニン、N−パルミトイルアシルアラニントリエタノールアミン、N−パルミトイルアシルサルコシン、N−パルミトイルアシルサルコシントリエタノールアミン、N−パルミトイルアシルグルタミン酸ナトリウム、N−パルミトイルアシルグリシンナトリウム、N−パルミトイルアシルアラニンナトリウム、N−パルミトイルアシルサルコシンナトリウム、N−パルミトイルアシルグルタミン酸カリウム、N−パルミトイルアシルグリシンカリウム、N−パルミトイルアシルアラニンカリウム、N−パルミトイルアシルサルコシンカリウム等のパルミチン酸由来のアミノ酸系界面活性剤;
N−ステアロイルアシルグルタミン酸、N−ステアロイルアシルグルタミン酸トリエタノールアミン、N−ステアロイルアシルグリシン、N−ステアロイルアシルグリシントリエタノールアミン、N−ステアロイルアシルアラニン、N−ステアロイルアシルアラニントリエタノールアミン、N−ステアロイルアシルサルコシン、N−ステアロイルアシルサルコシントリエタノールアミン、N−ステアロイルアシルグルタミン酸ナトリウム、N−ステアロイルアシルグリシンナトリウム、N−ステアロイルアシルアラニンナトリウム、N−ステアロイルアシルサルコシンナトリウム、N−ステアロイルアシルグルタミン酸カリウム、N−ステアロイルアシルグリシンカリウム、N−ステアロイルアシルアラニンカリウム、N−ステアロイルアシルサルコシンカリウム等のステアリン酸由来のアミノ酸系界面活性剤などが挙げられる。
上記のアミノ酸系界面活性剤の中でも、酸性アミノ酸であるアスパラギン酸、グルタミン酸を用いたものが好ましく、N−ラウロイルグルタミン酸又はその塩、N−ラウロイルアスパラギン酸又はその塩等がより好ましい。
アミノ酸系化合物で被覆する方法として、乳化重合の際にアミノ酸系化合物を界面活性剤として用いる方法と、アミノ酸系化合物を含まない界面活性剤を使用し、微粒子を合成した後にアミノ酸系化合物を加える方法が挙げられる。表面がアミノ酸系化合物で被覆されていれば、どの方法を用いても構わない。
<細胞用培地>
樹脂微粒子(A)を添加する細胞用培地としては、従来公知の細胞用培地を使用することができる。例えば、市販されている各種培地(αMEM、MEM、DMEM、IMDEM、RPMI1640、DMEM/F12等)や、これらの組み合わせが挙げられる。
細胞用培地添加剤である樹脂微粒子(A)の培地中の濃度は0.001〜0.5質量%が好ましく、0.01〜0.1質量%がより好ましい。
細胞用培地には、必要に応じて、各種増殖因子(上皮成長因子やインスリン様成長因子、神経成長因子、肝細胞増殖因子、血管内皮増殖因子、塩基性繊維芽細胞増殖因子、トランスフェリン、ステロイドホルモン、2−メルカプトエタノール等)や各種動物血清(ウシ胎児血清(FBS)やウシ血清等)、血清代替物などを添加するのが好ましい。
<生理活性物質、スフェロイドの製造方法>
本発明の細胞用培地中で細胞を培養することで、生理活性物質を高効率で生産することができる。また、本発明の細胞用培地中で細胞を培養することで、スフェロイドを形成することができる。
<生理活性物質>
本実施形態に係る生理活性物質とは、例えば、抗体タンパク質(以下抗体という)やアルブミンなどである。ここで産生される抗体は特に限定されず、例えば、マウスモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体またはヒトモノクローナル抗体である。また、免疫グロブリンのクラスは特に限定されないが、例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2など)である。
本発明の培養方法または製造方法において、培養を行う際、通常培養に用いられている容器または装置を使用することができる。例えば、マルチウェルプレート、シャーレ、培養フラスコ、スピナーフラスコ、ジャーファーメンター、ファーメンター、ローラーボトル、ホローファイバー、マイクロキャリアーなどが挙げられる。
<細胞>
本発明の培養方法で培養される動物細胞は特に限定されず、細胞については生理活性物質の生産に使用可能な細胞であれば特に限定されず、特に抗体生産可能な細胞であれば、例えば、CHO細胞、BHK細胞、HepG2細胞、rodentmyeloma細胞、(SP2/O細胞、NSO細胞等のマウス骨髄腫細胞など)、ハイブリドーマ、昆虫細胞、および、それらの細胞に外来遺伝子を導入した形質転換細胞が挙げられるが、例えばCHO細胞、SP2/O細胞またはNSO細胞等を細胞融合することによって得られるハイブリドーマ等を抗体産生細胞として採用することができる。
本実施形態における培養条件は、通常の動物細胞の培養条件でよく、例えば、5体積%CO2雰囲気下で、温度37℃である条件とすることができる。
培養液から細胞を採取するには、浮遊細胞の場合は、例えば、培養液を直接遠心分離機やろ過機にかけて集める。接着細胞の場合は、例えば0.25%トリプシン−0.02%EDTA液を添加して細胞を浮遊させた後、遠心分離やろ過により集める。
細胞培養によって生産される生理活性物質、特に抗体は、その物質が培養液中に蓄積される場合、ろ過または遠心分離により上澄み液を得て、これから採取される。また、細胞内に蓄積される物質の場合には、ろ過または遠心分離により得た細胞をホモジナイズ、超音波処理、化学薬品処理等を施し、生産物を抽出した上澄み液を得る。
上記上澄みから抗体を分離、精製するには、公知の方法を適宜組み合わせて行う。例えば、硫安沈殿、透析、限外ろ過、電気泳動、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィなどが好ましい。
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。尚、実施例および比較例における「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を表す。
<アミノ酸系界面活性剤の製造>
<製造例1>アミノ酸系界面活性剤1の製造
還流器および撹拌機を具備する反応容器に、ラウリルアクリレート100部、ピロリジン−2−カルボン酸48部、エタノール222部を仕込んだ。次いで、窒素を導入し、撹拌しながら昇温した後、約75℃で8時間反応させた。反応の終点は薄層クロマトグラフィにより、原料のスポットが消失したことで判断した。反応後、減圧乾燥により溶媒を除去し、アセトンで再結晶をおこなった。得られた生成物について、1 H−NMR、および元素分析をおこなった。収率は88.0%であった。
[1H−NMRスペクトル]
(δ値)0.83−0.89(3H)、1.18−1.34(18H)、1.54−166(2H)、1.84−1.99(2H)、2.13−2.35(3H)、2.64−2.81(3H)、3.05−3.15(1H)、3.35−3.44(1H)、3.5 3−3.60(1H) 、4.05−4.11(2H)
[元素分析]
C20H37O4N1として
理論値(%):H=10.49 C=67.57 N=3.94
実測値(%):H=10.62 C=67.49 N=3.99
なお、1 H−NMR、および元素分析は下記の装置を用いて測定した。
<1H−NMR>
NMRスペクトルは、日本電子製ECX−400P(400MHz)を使用して測定した。測定時の重溶媒には重クロロホルム(CDCL)を用いた。
<元素分析>
元素分析は、パーキンエルマー社製、2400CHNを使用して測定した。
<製造例2〜6>アミノ酸系界面活性剤2〜6の製造
表1に示す配合組成と温度、反応時間に変更した以外は、製造例1と同様の方法で、製造例1〜6のアミノ酸系界面活性剤をそれぞれ得た。尚、表中の数値は、単位の記載のない項目は「部」を表す。
表1に記載した疎水性単量体を下記に示す。
<疎水性単量体>
・LA:ラウリルアクリレート
・BA:n−ブチルアクリレート
・SA:ステアリルアクリレート
・OAAm:n−オクチルアクリルアミド
・HDA:ヘキサデシルアクリレート
・ALE−200:ノニルフェノキシ− ポリエチレングリコール− モノアクリレート(日油製、エチレンオキサイドの平均付加モル数30)
Figure 2021097660

<細胞培養用培地添加剤の製造>
<実施例1>細胞用培地添加剤1
分配係数LogPが0.8〜10である単量体(a1)として、スチレン100部を滴下槽に仕込んだ。別途、還流冷却器、攪拌機、温度計、窒素導入管、原料投入口を具備する4つ口フラスコを反応容器とし、該反応容器にイオン交換水150部を仕込んだ。次いで、窒素を導入し、攪拌しながら、液温を約70℃に加熱した。滴下槽から上記モノマーを3時間かけて連続的に滴下し、過硫酸アンモニウム(APS)2部を使用することで液温を約80℃に保ちつつ乳化重合を行った。滴下終了後、更に2時間、乳化重合を継続した。その後、30℃ まで冷却し、得られた溶液を200メッシュのポリエステル製の濾布で濾過することで樹脂微粒子(A−1)を得た。その後、25%アンモニア水を添加し、pHを6.8に調整した。得られた樹脂微粒子(A−1)の固形分(不揮発分)は、150℃20分で焼き付け残分により求め、40%であった。
次に10倍濃度のリン酸緩衝生理食塩水(以下、PBSという)とイオン交換水を加え、10%となるように調整し、細胞培養用添加剤1を得た。PBSで希釈しても、凝集せずに安定して存在していることが示された。
<実施例15>細胞用培地添加剤15
分配係数LogPが0.8〜10である単量体(a1)として、スチレン70部とラウリルメタクリレート10部、その他の単量体として、アクリル酸20部、糖由来の界面活性剤として、L−1695 1.8部、イオン交換水50部を混合してモノマープレエマルジョンを調製し、滴下槽に仕込んだ。別途、還流冷却器、攪拌機、温度計、窒素導入管、原料投入口を具備する4つ口フラスコを反応容器とし、該反応容器に水100部を仕込んだ。次いで、窒素を導入し、攪拌しながら、液温を約70℃に加熱した。そして、反応容器中に、L−1695 0.2部を添加し、滴下槽から上記モノマープレエマルジョンを3時間かけて連続的に滴下した。過硫酸アンモニウム0.2部を使用することで液温を約80℃に保ちつつ乳化重合を行った。滴下終了後、更に2時間、乳化重合を継続した。その後、30℃まで冷却し、得られた溶液を200メッシュのポリエステル製の濾布で濾過することで樹脂微粒子(A−15)を得た。その後、25%アンモニア水を添加し、pHを6.8に調整した。得られた樹脂微粒子(A−15)の固形分(不揮発分)は、150℃20分で焼き付け残分により求め、40%であった。
次に10倍濃度のリン酸緩衝生理食塩水(以下、PBSという)とイオン交換水を加え、10%となるように調整し、細胞培養用添加剤1を得た。PBSで希釈しても、凝集せずに安定して存在していることが示された。
<実施例2〜91>細胞用培地添加剤2〜91
表2〜4に示す配合組成に変更した以外は、実施例1または実施例15と同様の方法で樹脂微粒子(A−2〜91)を得た。その後、10倍濃度のPBSとイオン交換水を用いて、10%に希釈することにより、細胞用培地添加剤2〜91を得た。尚、表中の数値は、単位の記載のない項目は「部」を表し、空白は使用していないことを表す。
<実施例92>細胞用培地添加剤92
樹脂微粒子(A−26)の100部にカラギナンを0.5部加えて樹脂微粒子(A−92を得)、混合後、10倍濃度のPBSとイオン交換水を用いて、10%に希釈することにより、細胞用培地添加剤92を得た。
<実施例93〜113>細胞用培地添加剤93〜113
表5に示す配合組成に変更した以外は、実施例92と同様の方法で、細胞用培地添加剤93〜113を得た。尚、表中の数値は、単位の記載のない項目は「部」を表し、空白は使用していないことを表す。
表2〜5に記載した単量体を下記に示す。
<分配係数LogPが0.8〜10である単量体(a1)>
・St:スチレン、LogP=2.67
・EA:エチルアクリレート、LogP=0.98
・BA:n−ブチルアクリレート、LogP=1.88
・LA:ラウリルアクリレート、LogP=5.22
・SA:ラウリルアクリレート、LogP=7.72
・BeA:ベヘニルアクリレート、LogP=9.39
・2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート、LogP=3.52
・EMA:エチルメタクリレート、LogP=1.33
・BMA:n−ブチルメタクリレート、LogP=2.23
・LMA:ラウリルメタクリレート、LogP=5.57
・CHMA:シクロヘキシルメタクリレート、LogP=2.54
・MMA:メチルメタクリレート、LogP=0.99
<その他の単量体(b1)>
・MEA:2−メトキシエチルアクリレート
・THFA:テトラヒドロフルフリルアクリレート
・HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
・DM:ジメチルアミノエチルアクリレート
・AA:アクリル酸
・MAA:メタクリル酸
・DMAA:N,N−ジメチルアクリルアミド
<架橋性単量体(a2)>
・MAPTMS:γ−メタクリロキシプロピルトリメトシキシラン
・EGDMA:ジエチレングルコールジメタクリレート
・GMA:グリシジルメタクリレート
表2〜5に記載した界面活性剤を下記に示す。
<反応性界面活性剤(c1)>
・ラテムル PD−104(ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム、花王株式会社)
・アデカリアソープ SR−10(エーテルサルフェートアンモニウム塩、株式会社ADEKA)
表2〜5に記載した糖由来の界面活性剤を下記に示す。
・リョートーシュガーエステル S−1670(ショ糖ステアリン酸エステル、三菱ケミカルフーズ株式会社)
・リョートーシュガーエステルP−1670(ショ糖パルミチン酸エステル、三菱ケミカルフーズ株式会社)
・リョートーシュガーエステルM−1695(ショ糖ミリスチン酸エステル、三菱ケミカルフーズ株式会社)
・リョートーシュガーエステルO−1570(ショ糖オレイン酸エステル、三菱ケミカルフーズ株式会社)
・リョートーシュガーエステルL−1695(ショ糖ラウリン酸エステル、三菱ケミカルフーズ株式会社)
・レオドール TW−L120(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、花王株式会社)
・レオドール TW−P120(ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、花王株式会社)
・レオドール TW−S120V(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、花王株式会社)
表2〜5に記載したリン脂質とレシチンを下記に示す。
・COATSOME MC−1010(ジパルミトイルホスファチジルコリン、日油株式会社)
・SPLホワイト(辻製油株式会社)
・SPL−PC70HS(辻製油株式会社)
・レシノール S−10E(日光ケミカルズ株式会社)
・COARSOME NC−21(日油株式会社)
・COARSOME NC−61(日油株式会社)
表2〜5に記載したアミノ酸系界面活性剤を下記に示す。
・エヌジェボン ASP−12H(ラウリルアスパラギン酸、新日本理化株式会社)
・アミソフト LS−11(ラウロイルグルタミン酸、味の素ヘルシーサプライ株式会社)
・ソフティルト AS−L(ラウロイルメチルアラニンNa、日油株式会社)
・アミノフォーマー FLMA−P1(ラウロイルアスパラギン酸Na、旭化成ファインケム株式会社)
Figure 2021097660
Figure 2021097660
Figure 2021097660
Figure 2021097660

<比較例1〜6、8、9>
表8に記載した下記の添加剤を培地添加剤として用いた。
・PVP:ポリビニルピロリドン、平均分子量=10000
・PVAc:ポリビニル酢酸、平均分子量=25000
・MC:メチルセルロース、平均分子量=50000
・CS:コンドロイチン硫酸、平均分子量=5000
・NC−21:リン脂質
・ラウリルホスホリルコリン:リン脂質類似構造を有する界面活性剤
・ピロリジン−2−カルボン酸:アミノ酸
<比較例7>脂質エマルジョン1の合成
SPLホワイト2部を水88部に溶解し、そこにオレイン酸8部とグリセリン2部を加え、ホモジナイザーにより26,000rpmで10分間高速攪拌し、脂質エマルションを調製した。この脂質エマルションを培地添加剤として用いた。
<比較例10>脂質エマルジョン2の合成
ソフティルトAS−L2部を水88部に溶解し、そこにオレイン酸8部とグリセリン2部を加え、ホモジナイザーにより26,000rpmで10分間高速攪拌し、脂質エマルションを調製した。この脂質エマルションを培地添加剤として用いた。
[評価]
得られた細胞培養培地添加剤について、以下の評価を実施した。結果を表2〜8に示す。
(1)細胞用培地添加剤の評価
<平均粒子径>
得られた樹脂微粒子(A)の平均粒子径は、動的光散乱法(DLS)による測定で求めることができる。具体的には、以下のようにして測定した。樹脂微粒子(A)を、水で希釈し、固形分0.05〜0.2質量%程度に調整した。該希釈液約2mLを測定装置[マルバーン社製ゼータサイザーナノ]のセルに注入し、測定をした。結果を表2〜5に示す。
<ゼータ電位>
得られた樹脂微粒子(A)の平均粒子径は、電気泳動光散乱による測定で求めることができる。具体的には、平均粒子径を測定したのと同様に、マルバーン社製ゼータサイザーナノを用いて測定した。結果を表2〜5に示す。
<粘度評価>
得られた細胞用培地添加剤について、粘度を評価した。細胞用培地添加剤は低粘度であると添加が容易であり、高濃度化が可能であるなど工業的に優れているといえる。粘度はB型粘度計(株式会社東京計器製)により、PBSを用いて10%に希釈した水溶液を#3ローターを使用して10rpmの回転数で測定したときの粘度を示す。評価結果を表2〜5に示す。
<PBS中の安定性>
得られた細胞用培地添加剤について、リン酸緩衝生理食塩水(PBS溶液)での安定性を評価した。PBS溶液は細胞生物学や生化学等の細胞を扱う実験で使用される緩衝液であり、生体内に存在する普遍的なイオンで構成されている。この溶液中で凝集・沈降しないことが粒子としての安定性を意味する。市販の10倍濃縮のPBS溶液を用いて、樹脂微粒子(A)の濃度が10質量%となるように希釈し、細胞培養用培地添加剤とした。希釈後、細胞用培地添加剤を100メッシュ金網で濾過し、金網上の凝集物の乾燥質量W(g)を測定して、次式より、発生凝集物量(%)を求めて下記のように評価した。
発生凝集物量(%)=W(g)/[使用量(g)×樹脂固形分(%)]×100
評価基準を下記に示す。評価結果を表6〜8に示す。
◎:0.1%未満(極めて良好)
○:0.1以上、0.5%未満(良好)
△:0.5以上、2%未満(やや不良)
×:2%以上(不良)
<経時安定性評価>
得られた細胞用培地添加剤について、細胞用培地添加剤の濃度が10質量%となるように水で希釈をし、50℃の恒温槽内で30日保管後の安定性を評価した。保管後の細胞用培地添加剤を100メッシュ金網で濾過し、金網上の凝集物の乾燥質量W(g)を測定して、次式より、発生凝集物量(%)を求めて下記のように評価した。
発生凝集物量(%)=W(g)/[使用量(g)×樹脂固形分(%)]×100
評価基準を下記に示す。評価結果を表6〜8に示す。
◎:0.1%未満(極めて良好)
○:0.1以上、0.5%未満(良好)
△:0.5以上、2%未満(やや不良)
×:2%以上(不良)
<細胞毒性評価>
10%FBS−DMEM培地に樹脂微粒子を含む細胞用培地添加剤を最終濃度0.5質量%または0.05質量%となるように添加し、攪拌をすることで培地組成物を調製した。ヒト肝がん細胞株HepG2細胞を100,000cells/mLとなるように、上記の樹脂微粒子を含む細胞用培地添加剤を添加した培地組成物を播種した後、96ウェル平底マイクロプレートのウェルに1ウェルあたり100μLになるように分注した。その後、本プレートをCOインキュベーター(37℃、5%CO)内にて静置状態で3日間培養した。3日間培養後の肝細胞を含む培養液にWST−8試薬(株式会社同人社研究所社製)を10μL添加した後、COインキュベーター(37℃、5%CO)内に2時間静置した。2時間後、マイクロプレートリーダーにて450nmの吸光度を測定し、WST−8試薬を添加していない培養液の吸光度を差し引くことで細胞毒性を評価した。樹脂微粒子を含む細胞用培地添加剤を加えないで培養した場合の成績を1とした場合の相対値で判定した。評価結果を表6〜8に示す。
◎:1.0以上(非常に良好)
○:0.90以上〜1.0未満(良好)
×:0.90未満(不良)
<ハンドリング性能評価>
培地にはダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)にウシ胎児血清(FBS)を10%添加したものを使用した(以下、「10%FBS−DMEM培地」とも呼ぶ)。この10%FBS−DMEM培地に樹脂微粒子を含む細胞用培地添加剤を最終濃度0.5%(w/v)となるように添加し、攪拌をすることで培地組成物を調製した。本培地組成物の粘度は3 7 ℃ 条件下でB型粘度計(株式会社東京計器製)により、#3ローターを使用して100rpmの回転数で5分間測定したときの粘度を示す。評価結果を表6〜8に示す。
◎:50mPas未満(非常に良好)
○:50mPas以上、100mPas未満(良好)
△:100mPas以上、500mPas未満(やや不良)
×:500mPas以上(不良)
(2)生理活性物質の生産量の評価
<抗体産生性評価>
培地はDynamis Medium(Gibco製)を用い、L−Glutaminを1.0質量%になるように添加した。以後、これを基礎培地と呼ぶ。これを2セット用意し、得られた樹脂微粒子を含む細胞用培地添加剤を濃度が0.5質量%、あるいは0.05質量%になるようにそれぞれ添加した。樹脂微粒子を含む細胞用培地添加剤の濃度が異なる2種の培地にそれぞれIgG遺伝子を導入しIgG抗体を分泌産生するCHO細胞株(ATCC製CRL−12455)を加え、CHO細胞株の濃度が1,000,000cells/mLとなる細胞懸濁液を作製した。得られた細胞懸濁液20mLを、125mLの三角フラスコに播種し、37℃にて培養した。なお、培養中、栄養源が枯渇する前に3〜4日に一度、上澄み液15mLを回収し、新たな基礎培地15mLと交換し、これを5回繰り返した。培地交換を5回繰り返した後の細胞培養液を遠心分離することで、培地上清を回収した。培地中の抗体量を、Bethyl Laboratories,Inc製のHuman IgG ELISA Quantitation Setを用いて測定した。また、沈降した細胞群のDNA量も定量し、単位DNA量あたりの抗体生産量として算出した。樹脂微粒子を含む細胞用培地添加剤を加えないで培養した場合の成績を1とした場合の相対値で判定した。評価結果を表6〜8に示す。
◎:1.2以上(非常に良好)
○:1以上〜1.2未満(良好)
×:1未満(不良)
<アルブミン産生性評価>
10%FBS−DMEM培地に樹脂微粒子を含む細胞用培地添加剤を最終濃度0.5質量%、または0.05質量%となるように添加し、攪拌をすることで培地組成物を調製した。ヒト肝がん細胞株HepG2細胞を250,000cells/mLとなるように、上記の樹脂微粒子を含む細胞用培地添加剤を添加した培地組成物を播種した後、96ウェルU底マイクロプレートのウェルに1ウェルあたり200μLになるように分注した。その後、本プレートをCOインキュベーター(37℃、5%CO)内にて静置状態で3日間培養した。3日間培養後の肝細胞を含む培養液を回収し、遠心分離にすることで培地上清を回収した。培地中のアルブミン量を、Bethyl Laboratories,Inc製Albumin ELISA Quantitation Setを用いて測定した。また、沈降した細胞群のDNA量も定量し、単位DNA量あたりの抗体生産量として算出した。樹脂微粒子を含む細胞用培地添加剤を加えないで培養した場合の成績を1とした場合の相対値で判定した。評価結果を表6〜8に示す。
◎:1.2以上(非常に良好)
○:1以上〜1.2未満(良好)
×:1未満(不良)
(3)細胞の活性、スフェロイド形成性の評価
<ATP活性>
10%FBS−DMEM培地に樹脂微粒子を含む細胞用培地添加剤を最終濃度0.5質量%、または0.05質量%となるように添加し、攪拌をすることで培地組成物を調製した。ヒト肝がん細胞株HepG2細胞を100,000cells/mLとなるように、上記の樹脂微粒子を含む細胞用培地添加剤を添加した培地組成物を播種した後、96ウェル平底マイクロプレートのウェルに1ウェルあたり100μLになるように分注した。その後、本プレートをCOインキュベーター(37℃、5%CO)内にて静置状態で5日間培養した。
ATP活性は、1、5日後にATPアッセイを行うことによって評価した。
具体的には、培養後のウェルに100μLのATP試薬(『塊』のATP測定試薬:東洋ビーネット社製)を添加、5回ピペッティングし、5分間室温で静置した後、100mlの試薬・細胞溶解液を別プレートに分取し1分間撹拌した。これをMithrasLB940(Berthold社製)を用いて発光量を測定した。評価結果を表6〜8に示す。

ATP活性=(培養5日後の発光量)/(培養1日後の発光量)×100
◎:120%≦ATP活性、 ATP活性がかなり高い。
〇:50%≦ATP活性<120% ATP活性が高い。
△: 20%≦ATP活性<50% ATP活性がやや高い。
×:ATP活性<20% ATP活性が低い
<スフェロイドの形成性>
10%FBS−DMEM培地に樹脂微粒子を含む細胞用培地添加剤を最終濃度0.05質量%、または0.5質量%となるように添加し、攪拌をすることで培地組成物を調製した。
ヒト肝がん細胞株(HepG2細胞)を100,000cells/mLとなるように、上記の樹脂微粒子を含む細胞用培地添加剤を添加した培地組成物を播種した後、マイクロプレート(住友ベーラクイト社製 PrimeSurfaceMS−9096U)のウェルに1ウェルあたり100μLになるように分注した。その後、本プレートをCO2インキュベーター(37℃、5%CO2)内にて静置状態で3日間培養した。
スフェロイド形成性は、3日後に細胞培養状態を透過式光学顕微鏡40倍で写真撮影し、細胞の形態を観察することによって、以下の基準で判定した。評価結果を表6〜8に示す。
〇:1つのスフェロイドを形成(良好)
△:複数個のスフェロイドを形成(可)
×:スフェロイドを形成しない(不良)
Figure 2021097660
Figure 2021097660
Figure 2021097660

<結果>
表6〜8の結果から、実施例1〜113の細胞培養用培地添加剤は、経時安定性に優れ、細胞毒性も低く、優れた抗体産生性やアルブミン産生性を示すことが分かった。一方で、比較例1〜10の添加剤は、経時安定性、細胞毒性、ハンドリング性、抗体産生性、アルブミン産生性、ATP活性ともに実施例1〜113の細胞培養用添加剤に劣る結果となった。
本発明の細胞用培地添加剤は、細胞用培地に添加することにより、生理活性物質の生産量を増大させることができる。
また、本発明の細胞用培地添加剤を使用することで、所望の生理活性物質の産生性を促進することができ、製造コストや手間を少なくすることができる点でも有用である。例えば、抗体医薬品等のバイオ医薬品の製造に関して、大量供給に大きく貢献することができる。





Claims (15)

  1. 樹脂微粒子(A)を含む細胞用培地添加剤。
  2. 樹脂微粒子(A)が、下記(1)および(2)の条件を満たす請求項1記載の細胞用培地添加剤。
    (1)平均粒子径が30〜500nmである。
    (2)ゼータ電位が−20mV以下、または20mV以上である。
  3. 樹脂微粒子(A)が、分配係数LogPが0.8〜10である単量体(a1)を含む単量体混合物の重合体であり、前記単量体混合物総量中に前記単量体(a1)を10〜80質量%含む、請求項1または2に記載の細胞用培地添加剤。
  4. 前記単量体混合物の総量中に、架橋性単量体(a2)を0.1〜10質量%含む、請求項3に記載の細胞用培地添加剤。
  5. 前記樹脂微粒子(A)の表面が、糖、リン脂質、アミノ酸系化合物、および反応性界面活性剤(c1)からなる群より選ばれる少なくとも1種で被覆されている請求項1〜4いずれかに記載の細胞用培地添加剤。
  6. 糖が単糖類もしくは多糖類である、請求項5に記載の細胞用培地添加剤。
  7. 樹脂微粒子(A)は、糖由来の界面活性剤を用いて乳化重合された重合体である、請求項5または6に記載の細胞用培地添加剤。
  8. リン脂質が、レシチンである、請求項5〜7いずれかに記載の細胞用培地添加剤。
  9. 樹脂微粒子(A)は、リン脂質を用いて乳化重合された重合体である、請求項5〜8いずれかに記載の細胞用培地添加剤。
  10. アミノ酸系化合物が、アミノ酸構造および/またはペプチド構造を含む、請求項5〜9いずれかに記載の細胞用培地添加剤。
  11. 樹脂微粒子(A)は、アミノ酸系界面活性剤を用いて乳化重合された重合体である、請求項5〜10いずれかに記載の細胞用培地添加剤。
  12. 前記単量体混合物の総量に対して、反応性界面活性剤(c1)を0.5〜10質量%含む、請求項5〜11いずれかに記載の細胞用培地添加剤。
  13. 請求項1〜12いずれかに記載の細胞用培地添加剤を含む、細胞用培地。
  14. 樹脂微粒子(A)の培地中の濃度が0.001〜0.5質量%である、請求項13に記載の細胞用培地。
  15. 請求項13または14記載の細胞用培地中で細胞を培養することを特徴とするスフェロイドまたは生理活性物質の製造方法。






















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