JP2021095431A - 化学機械研磨組成物及びそれを用いた化学機械研磨方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】改善されたPOUフィルタ濾過性を示す化学機械研磨組成物を提供する。【解決手段】本発明の化学機械研磨組成物は、基材を研磨するためのものであり、研磨剤、200,000以下の重量平均分子量を有するヒドロキシエチルセルロース、塩基性成分、界面活性剤、及び水性キャリヤーを含有する。【選択図】図1

Description

本発明は、化学機械研磨組成物及びそれを用いた化学機械研磨方法に関する。
半導体デバイスの製造に用いられるシリコンウェハ等の基材は、その表面品質が厳密に要求されるものであり、高い表面品質を確保するために、従来から化学機械研磨(CMP)技術が利用されている。一般的に、シリコンウェハ等の基材のCMPは複数の工程からなり、例えば、予備研磨工程と仕上げ研磨工程とを含む。予備研磨工程後の仕上げ研磨工程では、通常、予備研磨工程に比べて研磨力の弱い研磨組成物(CMPスラリーとも呼ばれる)を用いることで基材の表面品質、例えば表面欠陥やヘイズ特性等の表面品質が向上される。
シリコンウェハ等の基材の表面欠陥の管理には一般的に表面欠陥検査装置が用いられる。当該表面欠陥検査装置によって検出される欠陥には、研磨工程やその後のリンス工程等で除去しきれなかった基材上の異物及び残渣が含まれる。このような表面欠陥検査装置としては、例えば、レーザー光などの光を基材表面に照射し、当該基材表面で発生した反射光又は散乱光を検出することにより、基材表面に存在する欠陥を検出するものが一般に知られている。
一方で、基材表面にこのような強い光を照射すると、基材表面の粗さに起因する乱反射により曇りが見られることがある。この曇りはヘイズと呼ばれ、ヘイズは基材の表面粗さと密接に関係していることから、当該表面粗さの尺度として用いることができる。近年、表面欠陥検査装置の急速な進歩により、表面欠陥をナノレベルまで観察できるようになったものの、基材表面にヘイズがあると、当該ヘイズにより生じる乱反射光がバックグラウンドノイズとなって表面欠陥検査装置による欠陥検出の妨げになることがある。
上述した表面欠陥やヘイズを低減するためには、特に、仕上げ研磨工程で用いる化学機械研磨組成物の管理、より具体的には、使用時(研磨時)において実際に基材に向けて供給されるCMPスラリーの管理が重要である。シリコンウェハ等の基材のCMPのための化学機械研磨組成物においては、シリカ等の研磨剤やアンモニア等の塩基性化合物の他に、基材表面の濡れ性を高める等の目的で、水溶性高分子としてヒドロキシエチルセルロース(HEC)が使用されることが知られている(例えば、特許文献1及び2)。これに関連して、HECの代替品として、別の水溶性高分子を使用する技術も開示されている(例えば、特許文献3)。
特開2015−159259号公報 特開2017−117847号公報 特開2013−222863号公報
CMPスラリー中で水溶性高分子として使用することができるセルロース誘導体の1つのHECは、シリコンウェハ等の基材の被研磨面の濡れ性を高め、当該基材表面を親水性に維持することができる。そのため、HECの使用により、基材とスラリーとの相互作用が良好に起こり、基材の表面品質を向上させることができる。このようなHECの特性は、基材のCMP、特にシリコンウェハの仕上げCMP研磨において極めて有効であり、水性溶媒への高い分散性のような利便性も相まって、研磨組成物中でHECを使用することが要求される。
他方で、研磨組成物中に存在する凝集体や不純物等を除去するために、CMPを行う直前にCMPスラリーをフィルタにより濾過する場合がある。これは、POU(Point Of Use)フィルタ濾過と呼ばれ、研磨される基材の表面品質を向上させるために有効なプロセスである。また、フィルタの孔径が小さくなると、より小さな凝集体等を濾過により除去できるため、基材の表面品質がさらに向上する。よって、研磨組成物には、POUフィルタ濾過をより小さい孔径のフィルタで行うことが望まれる。すなわち、研磨組成物には、小孔径のフィルタを使用した場合であっても、例えばフィルタの目詰まりが良好に抑制されるといった、優れた濾過性を有することが要求される。一方、化学機械研磨に使用されるCMPスラリーは、ユーザーの所望の研磨条件や基材に要求される仕様等に応じて、購入時又は保管時の状態から希釈して使用されることがある。この場合、上記のような濾過は希釈されたCMPスラリーで行われるため、希釈された後であっても、フィルタでの目詰まりを抑制してPOUフィルタ濾過性を改善することが重要である。
上述したようなHECの特性により、特にシリコンウェハのCMPに用いるスラリー中でHECを使用することが強く望まれる。一方で、研磨剤と、HECと、一般に機械研磨の促進剤として使用される塩基性成分(例えばアンモニア)とを含有するCMPスラリーにおいては、HECはシリカ等の研磨剤に吸着して凝集体を形成する傾向があるため、希釈による配合比の変化等により希釈前のスラリーに比べて分散性に劣り、濾過性が低下する傾向がある。よって、HECを含有する研磨組成物は、特に当該組成物が希釈された場合に、HECを含有しない研磨組成物に比べて濾過性に劣り、より小さい孔径でのPOUフィルタ濾過が困難となるため、基材の表面品質の向上が制限される。そのため、研磨剤、HEC及び塩基性成分を含有するCMPスラリーに対して生じる希釈後のPOUフィルタ濾過性の低下という課題を解決するためのニーズが存在している。
そこで、本発明は、希釈後において、小孔径のフィルタでもPOUフィルタ濾過可能な改善されたPOUフィルタ濾過性を示す、HECを含有する化学機械研磨組成物及びそれを用いた化学機械研磨方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明は下記のとおりである。
(1)
研磨剤、
200,000以下の重量平均分子量を有するヒドロキシエチルセルロース、
塩基性成分、
界面活性剤、及び
水性キャリヤーを含有する、基材を研磨するための化学機械研磨組成物。
(2)
前記ヒドロキシエチルセルロースが150,000以下の重量平均分子量を有する、(1)に記載の化学機械研磨組成物。
(3)
前記研磨剤が50nm以下の一次粒子サイズを有する、(1)又は(2)に記載の化学機械研磨組成物。
(4)
前記研磨剤が20〜40nmの一次粒子サイズを有する、(1)又は(2)に記載の化学機械研磨組成物。
(5)
前記界面活性剤が、アルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルのうち少なくとも1種を含む、(1)〜(4)のいずれか1つに記載の化学機械研磨組成物。
(6)
前記界面活性剤が、アルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルの両方を含む、(5)に記載の化学機械研磨組成物。
(7)
前記界面活性剤がアルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体を含み、前記アルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体が、アルキレン基及びポリアルキレンオキシド基がN原子に結合した3級アミンを含む繰り返し構造単位を少なくとも2個含む、(1)〜(6)のいずれか1つに記載の化学機械研磨組成物。
(8)
前記界面活性剤がポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含み、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが、式(i)RO−(AO)n−Hで表され、式中、Rは直鎖又は分岐鎖のC1〜C15アルキル基であり、Aはエチレン基、プロピレン基及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるアルキレン基であり、nはAOの平均付加モル数を表し、2〜30の数である、(1)〜(7)のいずれか1つに記載の化学機械研磨組成物。
(9)
ポリビニルアルコール構造単位を含む重合体を含む水溶性高分子をさらに含有する、(1)〜(8)のいずれか1つに記載の化学機械研磨組成物。
(10)
前記ポリビニルアルコール構造単位を含む重合体が、主鎖にポリビニルアルコール構造単位を含み、側鎖にポリアルキレンオキシド構造単位を含むポリビニルアルコール−ポリアルキレンオキシドグラフト共重合体、又は、主鎖にポリアルキレンオキシド構造単位を含み、側鎖にポリビニルアルコール構造単位を含むポリビニルアルコール−ポリアルキレンオキシドグラフト共重合体である、(9)に記載の化学機械研磨組成物。
(11)
前記研磨剤が、アルミナ、シリカ、セリア、ジルコニア及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、(1)〜(10)のいずれか1つに記載の化学機械研磨組成物。
(12)
20〜40nmの一次粒子サイズを有するシリカ、
150,000以下の重量平均分子量を有するヒドロキシエチルセルロース、
アンモニア、
アルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルのうち少なくとも1種を含む界面活性剤、
ポリビニルアルコール構造単位を含む重合体を含む水溶性高分子、及び
水性キャリヤーを含有する、(1)に記載の化学機械研磨組成物。
(13)
前記基材がシリコン基材である、(1)〜(12)のいずれか1つに記載の化学機械研磨組成物。
(14)
基材を研磨パッド及び(1)〜(13)のいずれか1つに記載の化学機械研磨組成物と接触させる接触工程、
前記基材に対して前記研磨パッドを前記化学機械研磨組成物をそれらの間に置いて動かす工程、並びに
前記基材の少なくとも一部をすり減らして前記基材を研磨する工程
を含む、基材の化学機械研磨方法。
(15)
前記接触工程の前に、前記化学機械研磨組成物を希釈し、次いで、5μm以下の孔径のフィルタで濾過する工程を含む、(14)に記載の基材の化学機械研磨方法。
本発明によれば、研磨剤、塩基性成分及び水性キャリヤーを含有する化学機械研磨組成物において、重量平均分子量が小さいHEC、より具体的には200,000以下の重量平均分子量を有するHECを界面活性剤(例えばノニオン性界面活性剤)と組み合わせて使用することで、希釈後において、改善されたPOUフィルタ濾過性を示すHEC含有化学機械研磨組成物を提供することが可能となる。また、本発明によれば、このような化学機械研磨組成物を使用して化学機械研磨を行うことで、従来の研磨組成物を使用した場合に比べて基材の表面品質(表面欠陥、ナノ研磨欠陥)を改善することが可能となる。
実施例で使用した研磨組成物についての濾過時間に対する濾過量を示すグラフである。 実施例で使用した研磨組成物についての濾過時間に対する濾過量を示すグラフである。 実施例で使用した研磨組成物についての濾過時間に対する濾過量を示すグラフである。
<化学機械研磨組成物>
本発明の化学機械研磨組成物は、基材を研磨するためのものであり、
研磨剤、
200,000以下の重量平均分子量を有するヒドロキシエチルセルロース、
塩基性成分、
界面活性剤、及び
水性キャリヤーを含有することを特徴としている。
シリコンウェハ等の基材を研磨するための化学機械研磨組成物において、水溶性高分子として一般的に使用されるセルロース誘導体は、基材の被研磨面の濡れ性を高めるのに極めて有用である。この濡れ性の向上は、セルロース誘導体が基材の表面を親水性に維持することができる性質を有するためにもたらされる。CMPスラリーの基材表面との濡れ性が高まると、スラリーと基材との間の相互作用が良好に起こり、研磨が良好かつ均一になされ、高い表面品質(表面欠陥、ナノ研磨欠陥)を得ることが可能となる。また、セルロース誘導体の中でも、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)は、水性溶媒への分散性が良好で高い溶解性を示すだけでなく、界面活性剤(例えばノニオン性界面活性剤)との相溶性にも優れるため、実用性が高い。そのため、基材のCMP、特にシリコンウェハのCMP仕上げ研磨で用いるCMPスラリーでは、HECの使用が強く望まれている。一方で、HECはセルロース誘導体の1種であり、天然起源のセルロースを原料とするため、セルロース由来の水不溶物をもたらすことがあり、シリカ等の研磨剤が当該水不溶物に吸着して凝集体が生成される場合がある。また、HEC自体も研磨剤に対して高い吸着性を示すため、研磨剤の凝集を生じさせるという性質を有する。このような凝集体が含まれるCMPスラリーで研磨を行うと、被研磨表面の欠陥を増加させたり、ナノサイズの研磨傷(ナノ研磨欠陥)を生じたりと、基材の表面品質に悪影響を及ぼし得る。
他方、研磨組成物中に存在する凝集体や不純物等を除去するために、CMP装置により化学機械研磨を行う直前にフィルタにより濾過を行うことができる。例えば、スラリー供給部からCMP装置の使用場所までの間にフィルタを設置することができる。このような使用場所付近でのフィルタ濾過は、POUフィルタ濾過と呼ばれ、シリコンウェハ等の基材の表面品質を向上させるために有効なプロセスであり、フィルタの孔径が小さくなるほど、より小さな凝集体等を濾過により除去できるため、基材の表面品質がさらに向上する。また、化学機械研磨に使用される研磨組成物は、ユーザーの所望の研磨条件や基材に要求される仕様等に応じて、購入時又は保管時の状態から希釈して使用されることがある。よって、より小孔径のフィルタを用いて研磨組成物の濾過を効率的に行うことができるように、希釈後スラリーにおいても、フィルタでの目詰まりを抑制してPOUフィルタ濾過性を改善することが重要である。従来では、研磨組成物の濾過性(すなわち希釈する前の研磨組成物の濾過性)の改善のために様々な開発が行われてきた。しかし、上述したように、当該研磨組成物はCMPに使用される直前に希釈されて使用されることがある。特にシリコンウェハのCMPに有用な、HEC、研磨剤及び塩基性成分(例えばアンモニア)を含有する研磨組成物が希釈されると、当該組成物の配合比等が変化し、HECがシリカ等の研磨剤に吸着して凝集体を形成する又はセルロース由来の水不溶物が生じる傾向があるため、HECを含有する研磨組成物は、HECを含有しない研磨組成物に比べて希釈後の濾過性に劣ることが知られている。よって、希釈後において、改善されたPOUフィルタ濾過性を示す化学機械研磨組成物の開発が望まれており、その中でも特に、優れた濡れ性をもたらすが濾過性に不利に働き得るHECに加えて、シリカ等の研磨剤とアンモニア等の塩基性成分とを含有する化学機械研磨組成物において、より小孔径のフィルタを使用して濾過が可能な高いPOUフィルタ濾過性を有することが望まれている。
そこで、本発明者らは、HEC、研磨剤及び塩基性成分を含有する研磨組成物が希釈した後に高いPOUフィルタ濾過性を有するように、研磨組成物の各構成成分について様々な検討を行った結果、低い重量平均分子量、より具体的には200,000以下、好ましくは150,000以下の重量平均分子量を有するHECを界面活性剤と組み合わせて使用することで、研磨組成物が、希釈前だけでなく、例えば約20倍程度に希釈した場合であっても高いフィルタ濾過性を示すことを見出した。より詳細には、より低い分子量のHECを用いることで、HEC自体の分子サイズが小さくなり、HEC及びHECが付着した研磨剤がフィルタを通過するのを容易にし、さらにその上で、界面活性剤を添加して研磨組成物の分散安定性を向上させることで、研磨剤やHEC等を良好に分散させこれらがフィルタを通過しやすくすることができることを見出した。このような本発明の効果は、研磨剤が如何なるサイズ(特に一次粒子サイズ)を有する場合であっても良好に発揮されるが、当該効果は、シリコン基材の仕上げCMP研磨工程で好適に使用される20〜40nmの平均一次粒子を有する研磨剤と組み合わせて使用する場合でも良好に発揮される。したがって、本発明に係る化学機械研磨組成物は、特にシリコン基材の仕上げ研磨工程において、極めて実用性の高いものである。なお、当然のことながら、本発明に係る化学機械研磨組成物は、他の研磨工程及び/又は他の基材の研磨にも使用することが可能である。
[研磨剤]
本発明における研磨剤は、シリコンウェハ等の半導体基材の化学機械研磨において当業者に公知の任意の適切な研磨剤であってよい。特に限定されないが、研磨剤は、例えば、アルミナ(例えば、α−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナ、及びヒュームドアルミナ)、シリカ(例えば、コロイダルシリカ、沈殿シリカ、ヒュームドシリカ)、セリア、チタニア、ジルコニア、ゲルマニア、マグネシア、それらの共形成された製品、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される研磨剤であってよい。好ましくは、研磨剤は、アルミナ、シリカ、セリア、ジルコニア及びそれらの組み合わせからなる群より選択され、より好ましくは、シリカ、特にはコロイダルシリカ又はセリアであり、最も好ましくはコロイダルシリカである。
本発明においては、研磨剤は、任意の適切な粒子サイズを有することができる。特に限定されないが、例えば、研磨剤は、5nm以上、10nm以上、15nm以上、又は20nm以上の平均一次粒子サイズを有することができる。研磨速度を確保しつつ、研磨剤の凝集を十分に抑制して、より改善されたPOUフィルタ濾過性を得るために、研磨剤は15nm以上の平均一次粒子サイズを有することが好ましく、20nm以上の平均一次粒子サイズを有することがより好ましい。また、研磨剤は、200nm以下、150nm以下、100nm以下、80nm以下、60nm以下、50nm以下又は40nm以下の平均一次粒子サイズを有することができる。より改善されたPOUフィルタ濾過性を得て表面欠陥を低減するために、研磨剤は50nm以下の平均一次粒子サイズを有することが好ましく、40nm以下の平均一次粒子サイズを有することがより好ましい。したがって、研磨剤は、例えば、5〜200nm、10〜200nm、20〜200nm、5〜100nm、10〜100nm、20〜100nm、5〜50nm、10〜50nm、20〜50nm、5〜40nm、10〜40nm又は20〜40nmの範囲の平均一次粒子サイズを有することができ、POUフィルタ濾過性をさらに向上させる観点から、研磨剤は20〜40nmの範囲の平均一次粒子サイズを有することが特に好ましい。よって、本発明において最も好ましい研磨剤としては、20〜40nmの平均一次粒子サイズを有するシリカ(例えばコロイダルシリカ)である。
さらに、一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には、研磨速度を向上させるという観点及び被研磨物である基材の表面品質を改善させるという観点から、研磨剤は、好ましくは0.02〜3μm、より好ましくは0.02〜1.0μm、最も好ましくは0.02〜0.2μmの平均二次粒子サイズを有する。研磨剤の平均一次粒子サイズは、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)により観察して画像解析を行うことにより求めることができる。また、平均二次粒子サイズは、レーザー光散乱法を用いて体積平均粒子サイズとして測定することができる。
研磨剤は、水性キャリヤーとその中に溶解又は懸濁している全成分の質量に基づいて、例えば、0.01質量%以上、0.02質量%以上、0.05質量%以上、又は0.1質量%以上であり、かつ20質量%以下、15質量%以下、12質量%以下、又は10質量%以下の量で化学機械研磨組成物中に存在してよい。研磨剤は、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.05〜15質量%、最も好ましくは0.1〜10質量%の量で化学機械研磨組成物中に存在してよい。濃縮状態(希釈前)の化学機械研磨組成物は、例えば、1〜15質量%、好ましくは1〜10質量%の研磨剤を含んでもよい。また、希釈後(研磨使用時)の化学機械研磨組成物は、例えば、0.01〜3質量%、好ましくは0.01〜1質量%の研磨剤を含んでもよい。
[ヒドロキシエチルセルロース(HEC)]
本発明に係る化学機械研磨組成物において、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)は必須の成分である。HECは主に濡れ剤として作用することができる。このような濡れ剤は、シリコンウェハ等の基材の表面を親水性に維持するのに有効である。本発明においては、改善されたPOUフィルタ濾過性を得るために、HECの重量平均分子量(Mw)を低く設定することが重要である。具体的には、本発明におけるHECは200,000以下のMwを有し、好ましくは150,000以下のMwを有し、より好ましくは120,000以下のMwを有する。低MwのHECを、後述する界面活性剤と共に用いることで、研磨組成物が希釈された後において、改善されたPOUフィルタ濾過性を示す化学機械研磨組成物を提供することが可能となる。一方で、HECの分子量が大きくなる(例えば、Mw:250,000)と、特に、研磨組成物が希釈された後の濾過時に、フィルタが目詰まりしてしまい、研磨組成物が十分に濾過されなくなり、POUフィルタ濾過性が悪化する。このような場合、CMPに使用可能なスラリーの歩留まりが顕著に下がり、実用性に欠ける場合がある。さらに、その都度フィルタの洗浄又は交換が必要となり、循環的かつ連続的にスラリーを供給することができず使用上好ましくない。
HECは、水性キャリヤーとその中に溶解又は懸濁している全成分の質量に基づいて、例えば、0.001質量%以上、0.002質量%以上、0.005質量%以上、又は0.01質量%以上であり、かつ2.0質量%以下、1.5質量%以下、1.2質量%以下、又は1.0質量%以下の量で化学機械研磨組成物中に存在してよい。HECは、好ましくは0.001〜2.0質量%、より好ましくは0.005〜1.5質量%、最も好ましくは0.01〜1.0質量%の量で化学機械研磨組成物中に存在してよい。
[塩基性成分]
本発明における塩基性成分は、シリコンウェハ等の半導体基材の表面に化学的に作用して研磨剤による機械研磨を助けることができる。特に限定されないが、塩基性成分は、例えば、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−メチルピペラジン、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される化合物であってよい。好ましくは、塩基性成分は、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、及び炭酸ナトリウムからなる群より選択される。より好ましくは、塩基性成分は、アンモニア、水酸化カリウム、又は水酸化ナトリウムであり、最も好ましくはアンモニアである。
塩基性成分は、水性キャリヤーとその中に溶解又は懸濁している全成分の質量に基づいて、例えば、0.001質量%以上、0.002質量%以上、0.005質量%以上、0.01質量%以上、又は0.1質量%以上であり、かつ5.0質量%以下、3.0質量%以下、1.5質量%以下、1.2質量%以下、又は1.0質量%以下の量で化学機械研磨組成物中に存在してよい。塩基性成分は、好ましくは0.001〜5.0質量%、より好ましくは0.005〜1.5質量%、最も好ましくは0.01〜1.0質量%の量で化学機械研磨組成物中に存在してよい。
[界面活性剤]
本発明における界面活性剤は、本発明に係る化学機械研磨組成物において必須の成分であるが、界面活性剤の種類は、シリコンウェハ等の半導体基材の化学機械研磨において当業者に公知の任意の適切な界面活性剤であってよい。上述した低い重量平均分子量を有するHECと界面活性剤を組み合わせて使用することで、希釈後の研磨組成物のPOUフィルタ濾過性を向上させることができる。一方、界面活性剤を使用しないと、研磨組成物の分散性が十分でなく、低い重量平均分子量を有するHECを使用しても、希釈後の研磨組成物のPOUフィルタ濾過性が不十分になるおそれがある。特に限定されないが、界面活性剤は、典型的に、アニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤であることができ、好ましくはノニオン性界面活性剤である。界面活性剤としてノニオン性界面活性剤を用いると、pHの調整が容易になるだけでなく、HECとの相溶性に優れるため好ましい。また、界面活性剤を含有する化学機械研磨組成物を用いてシリコンウェハ等の基材を研磨することで、優れた表面品質(例えばヘイズ)を達成することが可能となる。
ノニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンイソプロピルエーテル、ポリオキシエチレンイソブチルエーテル、ポリオキシエチレンsec−ブチルエーテル、ポリオキシエチレン−t−ブチルエーテル、ポリオキシエチレンイソペンチルエーテル、ポリオキシエチレンイソヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンイソヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンイソオクチルエーテル、ポリオキシエチレンイソノニルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレン2−プロピルヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンウンデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソウンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンイソラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンペンタデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソペンタデシルエーテル、ポリオキシプロピレンメチルエーテル、ポリオキシプロピレンエチルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシプロピレン−2−エチルヘキシルエーテルなど);ポリオキシアルキレンフェニルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテルなど);アルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体;ポリオキシアルキレンアルキルアミン(例えば、ポリオキシエチレンベヘニルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンセチルアミン、ポリオキシエチレンラウリルアミンなど);ポリオキシアルキレンアルキルアミド(例えば、ポリオキシエチレンラウリルアミド、ポリオキシエチレンステアリルアミド、ポリオキシエチレンオレイルアミドなど);エチレンオキシド単位(EO)及びプロピレンオキシド単位(PO)を含む共重合体;ポリエーテルポリオール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、EO及びPOの交互共重合体、EO及びPOのブロック共重合体、EO及びPOのランダム共重合体など);ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンモノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンモノオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンモノラウリン酸エステルなど);ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコールなど);グリセリン脂肪酸エステル(例えば、レシチン、高分子乳化剤、親油型モノステアリン酸グリセリンなど);ポリグリセリン脂肪酸エステル(例えば、モノオレイン酸ポリグリセリル、ペンタオレイン酸ポリグリセリル、デカオレイン酸ポリグリセリルなど);ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル(例えば、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリンなど);ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタンなど);ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなど);ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル(例えば、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビット、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビットなど);ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油など)が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明における界面活性剤は、使用する界面活性剤の種類に応じて決定されるが、水性キャリヤーとその中に溶解又は懸濁している全成分の質量に基づいて、例えば、0.01ppm以上、0.05ppm以上、0.1ppm以上、0.5ppm以上、1ppm以上、2ppm以上、5ppm以上、又は10ppm以上であり、かつ5000ppm以下、3000ppm以下、1000ppm以下、500ppm以下、300ppm以下、100ppm以下の量で化学機械研磨組成物中に存在してよい。界面活性剤は、好ましくは0.1〜5000ppm(0.00001〜0.5質量%)、より好ましくは1〜1000ppm(0.0001〜0.1質量%)、最も好ましくは5〜1000ppm(0.0005〜0.1質量%)の量で化学機械研磨組成物中に存在してよい。
より改善されたPOUフィルタ濾過性を達成し、表面品質をより向上させる、特にヘイズを低減する観点から、本発明における界面活性剤は、アルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルのうち少なくとも1種を含むことが好ましい。より好ましくは、本発明における界面活性剤は、アルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルの両方を含むとよい。これらの界面活性剤は、基材のヘイズを低減するのに極めて有効な界面活性剤である。
(アルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体)
本発明の化学機械研磨組成物は、より改善されたPOUフィルタ濾過性及び/又は優れたヘイズ特性を達成するために、界面活性剤としてアルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体を含んでいると好ましい。さらに、本発明の化学機械研磨組成物がアルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体を含む場合、当該アルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体は、アルキレン基及びポリアルキレンオキシド基がN原子に結合した3級アミンを含む繰り返し構造単位を少なくとも2個含むものであるとより好ましい。上記のとおり、本発明に係る化学機械研磨組成物において、当該アルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体を使用することで、より改善されたPOUフィルタ濾過性を得つつ、より高いヘイズの低減効果を達成することが可能となる。当然のことながら、化学機械研磨組成物においてアルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体を使用する場合、他の界面活性剤と共に使用することができる。
上記のアルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体は、特に限定されないが、例えば、以下の式:
Figure 2021095431
で表され、式中、R1は、直鎖又は分岐鎖のC1〜C10アルキレン基であり、好ましくは直鎖又は分岐鎖のC1〜C4アルキレン基、より好ましくはエチレン基であり、R2はエチレン基、プロピレン基、ブチレン基及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるアルキレン基であり、xは2〜1000、好ましくは2〜20の整数であり、yは2〜10000、好ましくは2〜500の整数である。R2は、好ましくはエチレン基及び/又はプロピレン基から選択される。R2がエチレン基とプロピレン基の両方を含む場合には、エチレン基とプロピレン基は、モル比で、80:20〜90:10であることが好ましい。
上記のアルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体は、9〜10の溶解性パラメータ(SP)を有することが好ましい。本発明において、溶解性パラメータ(SP)とは、上田ら、塗料の研究、No.152、Oct.2010年、第41〜46頁において記載されているFedorsの方法を使用して計算したものを言う。
アルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体は、例えば、5,000〜100,000又は10,000〜80,000の平均分子量を有することができる。平均分子量が5,000未満の場合には、十分にヘイズを改善することができないおそれがある。一方で、平均分子量が100,000を超える場合には、アルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体によって得られる効果、例えばヘイズ向上の効果に関する添加量依存性が大きくなりすぎるため好ましくない。
アルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体は、水性キャリヤーとその中に溶解又は懸濁している全成分の質量に基づいて、例えば、1ppm以上、2ppm以上、5ppm以上、又は10ppm以上であり、かつ5000ppm以下、3000ppm以下、1000ppm以下、又は500ppm以下の量で化学機械研磨組成物中に存在してよい。アルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体は、好ましくは1〜5000ppm(0.0001〜0.5質量%)、より好ましくは2〜1000ppm(0.0002〜0.1質量%)、最も好ましくは5〜1000ppm(0.0005〜0.1質量%)の量で化学機械研磨組成物中に存在してよい。
上記のアルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体は、当業者に公知の任意の方法により製造することができる。例えば、アルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体は、分子内に2個以上の第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有し、かつN原子を4〜100個を含むポリアミン化合物の活性水素に、アルキレンオキシドを付加重合させることにより製造することができる。より具体的には、当該ポリアミン化合物にアルカリ触媒下100〜180℃及び1〜10気圧でアルキレンオキシドを付加重合(グラフト重合)することにより製造することができる。ポリアミン化合物に対するアルキレンオキシドの付加重合の態様に特に制限はなく、2種以上のアルキレンオキシドが付加している場合、その形態はブロック状であってもランダム状であってもよい。
主鎖構造を与えるポリアミン化合物としては、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミンなどのポリエチレンポリアミン、及びエチレンイミンの重合によって得られるポリエチレンイミンなどのポリアルキレンイミンなどを挙げることができる。これらの化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用して、ポリアミンの主鎖構造を形成してもよい。当該主鎖構造に付加させるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びブチレンオキシドなどを挙げることができる。これらのアルキレンオキシドは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)
本発明の化学機械研磨組成物は、より改善されたPOUフィルタ濾過性及び/又は優れたヘイズ特性を達成するために、界面活性剤として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含んでいると好ましい。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、上述したアルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体の代替として含んでもよく、その両方を含んでもよいが、POUフィルタ濾過性及び/又はヘイズ特性の改善の観点から、両方含むことが最も好ましい。当然のことながら、化学機械研磨組成物においてポリオキシアルキレンアルキルエーテルを使用する場合、他の界面活性剤と共に使用することができる。さらに、本発明の化学機械研磨組成物がポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含む場合、当該ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、式(i)RO−(AO)n−Hで表され、式中、Rは直鎖又は分岐鎖のC1〜C15アルキル基であり、Aはエチレン基、プロピレン基及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるアルキレン基であり、nはAOの平均付加モル数を表し、2〜30の数であるポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含むものであってもよい。このようなポリオキシアルキレンアルキルエーテルを添加成分として含むことで、POUフィルタ濾過性を改善するだけでなく、当該ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含まない場合と比較して基材表面のヘイズを低減することができ、さらには、当該ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等の添加成分が研磨パッド中に蓄積することによって生じ得る基材表面の濡れ性の低下を顕著に又は完全に防ぐことができる。したがって、当該ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含む化学機械研磨組成物を用いた場合、基材表面の濡れ性の低下に起因する表面欠陥の発生を確実に排除することが可能となり、ひいては研磨パッドの寿命を向上させることも可能となる。
式(i)中のR基の炭素数が16以上であっても、特定のポリオキシアルキレンアルキルエーテルについては、基材表面のヘイズを低減することは可能である。しかしながら、式(i)中のR基の炭素数が16以上になると、このようなポリオキシアルキレンアルキルエーテル、例えば、ポリオキシエチレンセチルエーテル又はポリオキシエチレンステアリルエーテルは研磨パッド中に蓄積されやすいため、各研磨工程の前に実施されるパッドコンディショニング等によっては完全に除去することができない場合がある。このため、基材の研磨を繰り返していくうちに研磨パッド上にポリオキシアルキレンアルキルエーテルが次第に蓄積されてしまう可能性がある。蓄積されたポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、基材表面の濡れ性を低下させ、場合によってはそれ自体が研磨の際に基材表面に欠陥を生じさせる要因となり得る。また、基材表面の濡れ性が低下すると、研磨により生じた削りかすや他の異物が基材に付着しやすくなり、その結果として、基材表面に欠陥を引き起こす要因となり得る。
したがって、本発明においては、式(i)中のRは直鎖又は分岐鎖のC1〜C15アルキル基であるとよく、基材表面のヘイズの低減及び研磨パッド中へのポリオキシアルキレンアルキルエーテルの蓄積に起因する基材表面の濡れ性の低下をより確実に防ぐためには、Rは直鎖又は分岐鎖のC1〜C13アルキル基であることが好ましい。また、本発明の別の好ましい態様においては、Rは分岐鎖のC11〜C15アルキル基であってもよく、分岐鎖のC12〜C14アルキル基であるか、又は分岐鎖のC13アルキル基(例えば、イソトリデシル基)であってもよい。
式(i)中のAは、エチレン基とプロピレン基のいずれであってもよく、1つ又は複数のエチレン基と1つ又は複数のプロピレン基の任意の組み合わせであってもよい。本発明の特定の好ましい態様においては、Aはエチレン基であるか又はエチレン基とプロピレン基の組み合わせである。
式(i)中のnはAOの平均付加モル数を表し、例えば、2〜30の範囲内で適切に決定すればよい。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが研磨パッド中に蓄積されることによる基材表面の濡れ性の低下を改善するという観点からは、nはより大きな値であることが好ましく、例えば、5以上、6以上、8以上、10以上、11以上又は12以上であってよい。また、nは28以下であってもよく、例えば25以下又は23以下であってもよい。なお、本発明において、AOの平均付加モル数とは、1モルのポリオキシアルキレンアルキルエーテル中に含まれるオキシアルキレン単位のモル数の平均値を言うものである。
上記のポリオキシアルキレンアルキルエーテルの具体例としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンイソプロピルエーテル、ポリオキシエチレンイソブチルエーテル、ポリオキシエチレンsec−ブチルエーテル、ポリオキシエチレン−t−ブチルエーテル、ポリオキシエチレンイソペンチルエーテル、ポリオキシエチレンイソヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンイソヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンイソオクチルエーテル、ポリオキシエチレンイソノニルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレン2−プロピルヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンウンデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソウンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンイソラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンペンタデシルエーテル、及びポリオキシエチレンイソペンタデシルエーテル等が挙げられる。
好ましくは、上記のポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレン2−プロピルヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、及びポリオキシエチレンイソトリデシルエーテルのうち少なくとも1種を含み、最も好ましくは、ポリオキシエチレンオキシプロピレン2−プロピルヘプチルエーテル、及びポリオキシエチレンイソトリデシルエーテルのうち少なくとも1種を含む。これらのポリオキシアルキレンアルキルエーテルは当業者に公知の任意の方法によって合成してもよいし又は商業的に入手することも可能である。
本発明において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルのHLB値は、グリフィン法に従って算出され、より具体的には以下の式によって算出される。
HLB値=20×(親水部の式量の総和)/(分子量)
ここで、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの親水部は、ポリオキシアルキレンすなわち式(i)中の(AO)n部に相当することから、HLB値は、R基の炭素数とオキシアルキレン(AO)の平均付加モル数に依存して変化することが明らかである。しかしながら、本発明の効果、とりわけ基材表面の濡れ性の向上については、式(i)中のR基の炭素数が支配的なパラメータであり、このためHLB値によって基材表面の濡れ性が大きく左右されることはない。したがって、本発明におけるポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、任意の好適なHLB値を有することができる。一般的には、HLB値は12〜18の範囲内において適宜決定すればよい。
本発明において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、任意の適切な分子量を有することができる。特に限定されないが、当該ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、約100〜約2,000の平均分子量を有することができる。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、水性キャリヤーとその中に溶解又は懸濁している全成分の質量に基づいて、例えば、0.01ppm以上、0.02ppm以上、0.05ppm以上、又は0.1ppm以上であり、かつ5000ppm以下、3000ppm以下、1000ppm以下、又は500ppm以下の量で化学機械研磨組成物中に存在してよい。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、好ましくは0.1〜5000ppm(0.00001〜0.5質量%)、より好ましくは0.1〜1000ppm(0.00001〜0.1質量%)、最も好ましくは0.1〜500ppm(0.00001〜0.05質量%)の量で化学機械研磨組成物中に存在してよい。
[水性キャリヤー]
水性キャリヤーは、当該水性キャリヤー中に溶解又は懸濁している全成分を研磨されるべき好適な基材表面に適用することを促進するのに用いられる。水性キャリヤーは、典型的には水のみから構成されてもよく、水と水溶性溶剤を含んでもよく、又はエマルジョンであってもよい。好ましい水溶性溶剤としては、アルコール、例えば、メタノール、エタノールなどが挙げられる。水性キャリヤーは、好ましくは水、より好ましくは脱イオン水である。
本発明の化学機械研磨組成物は、任意の好適なpHを有することができ、具体的なpH値は研磨速度等を考慮して適宜決定すればよい。例えば、化学機械研磨組成物は、7〜12のpHを有することができ、好ましくは8〜12、より好ましくは8.5〜12のpHを有する。pH値は、必要に応じてpH調整剤を添加することにより調整することができる。pH調整剤は、任意のアルカリ性物質であってよく、上記の塩基性成分と同じであっても又は異なっていてもよい。好ましくは、pH調整剤は、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸ナトリウムからなる群より選択される。より好ましくは、pH調整剤は、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、又は水酸化テトラエチルアンモニウムであり、最も好ましくは水酸化カリウムである。
[水溶性高分子]
本発明の化学機械研磨組成物は、HECの他に、任意選択で、水溶性高分子をさらに含んでもよい。このような水溶性高分子としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアセトアミド、セルロース誘導体(ただしHECを除く)及びポリビニルアルコール構造単位を含む重合体からなる群より選択される少なくとも1種を挙げることができ、ポリビニルアルコール構造単位を含む重合体を含むことが好ましい。
水溶性高分子(HECを除く)は、使用する水溶性高分子の種類に応じて決定されるが、水性キャリヤーとその中に溶解又は懸濁している全成分の質量に基づいて、例えば、0.1ppm以上、1ppm以上、2ppm以上、5ppm以上、10ppm以上、20ppm以上又は50ppm以上であり、かつ5000ppm以下、3000ppm以下、1000ppm以下、又は500ppm以下の量で化学機械研磨組成物中に存在してよい。当該水溶性高分子は、好ましくは0.1〜5000ppm(0.00001〜0.5質量%)、より好ましくは1〜3000ppm(0.0001〜0.3質量%)、最も好ましくは2〜1000ppm(0.0002〜0.1質量%)の量で化学機械研磨組成物中に存在してよい。
(セルロース誘導体)
HECの他に、水溶性高分子としてセルロース誘導体を使用する場合、当該セルロース誘導体としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びそれらの任意の組み合わせから選択することができる。
(ポリビニルアルコール構造単位を含む重合体)
化学機械研磨においては、基材と研磨組成物(スラリー)との間で機械的な相互作用を利用するため、スラリー中に含まれる研磨剤及び/又はスラリー中で凝集した他のパーティクルなどによって研磨の際にナノ研磨欠陥やPID等の基材上の連続した表面欠陥が発生する場合がある。本発明においては、ナノ研磨欠陥やPID等の基材上の連続した表面欠陥を低減するために、化学機械研磨組成物は、ポリビニルアルコール構造単位を含む重合体を含有することができる。
ポリビニルアルコール構造単位を含む重合体はまた、濡れ剤として機能することもできる。したがって、本発明の化学機械研磨組成物において、基材表面を親水性に維持するために、HECに加えて、ポリビニルアルコール構造単位を含む重合体を使用してもよい。また、当該ポリビニルアルコール構造単位を含む重合体は、研磨組成物中において、上述したアルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルのうちの少なくとも1種と共に使用されるのが好ましく、アルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルの両方と共に使用されるのがより好ましい。当該重合体をこれらの界面活性剤と共に使用することで、スラリーの品質がより良好に安定する。
ポリビニルアルコール構造単位を含む重合体としては、ポリビニルアルコール構造単位を含む任意の重合体であってよい。例えば、ポリビニルアルコール構造単位を含む重合体は、単にポリビニルアルコールであってもよく、又はポリビニルアルコールに加えて、ポリエチレングリコール等のポリアルキレンオキシドを含むものであってもよい。さらに、ポリビニルアルコール構造単位を含む重合体は、例えば、重合体の主鎖又は側鎖にポリビニルアルコール構造単位を含むものであってよく、さらに当該ポリビニルアルコール構造単位の一部がアシロキシ基で置換されたものであってもよい。重合体の主鎖にポリビニルアルコール構造単位を含む重合体としては、例えば、主鎖にポリビニルアルコール構造単位を含み、側鎖にポリアルキレンオキシド構造単位を含むポリビニルアルコール−ポリアルキレンオキシドグラフト共重合体が挙げられ、当該ポリアルキレンオキシド構造単位は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つを含むものであってよい。このような共重合体において、ポリビニルアルコール構造単位とポリアルキレンオキシド構造単位は、例えば、モル比で、95:5〜60:40又は90:10〜70:30の範囲において存在してもよい。
このような共重合体の好ましい例としては、例えば、下記一般式:
Figure 2021095431
で表され、式中、R3は、水酸基、又はR’COO−で表されるアシロキシ基(式中、R’はC1〜C8アルキル基である)(例えばCH3COO−基等)であり、R4は、水素原子、又はR”CO−で表されるアシル基(式中、R”はC1〜C8アルキル基である)(例えばCH3CO−基等)であり、aは1〜10,000の整数であり、M1及びM2はそれぞれ0mol%超100mol%未満の実数であり、M1+M2=100mol%であるポリビニルアルコール−ポリエチレンオキシドグラフト共重合体が挙げられる。上記一般式の共重合体は、R3について水酸基とアシロキシ基が混在した構造であってよく、より具体的にはアシロキシ基の一部が水酸基にケン化された構造であってよい。この場合のケン化度は、特に限定されないが、70〜100%、80〜100%、90〜100%又は95〜100%であってよい。M1及びM2の値は、主鎖を構成するポリビニルアルコール構造単位と側鎖を構成するポリエチレンオキシド構造単位の存在比に応じて適切に決定することができる。
上記一般式のポリビニルアルコール−ポリエチレンオキシドグラフト共重合体のより具体的な例としては、下記一般式:
Figure 2021095431
で表され、式中、aは1〜10,000の整数であり、M1及びM2はそれぞれ0mol%超100mol%未満の実数であり、M1+M2=100mol%であるポリビニルアルコール−ポリエチレンオキシドグラフト共重合体が挙げられる。上記化学式中の主鎖を構成するポリビニルアルコール構造単位の水酸基は、その一部がR’COO−で表されるアシロキシ基(式中、R’はC1〜C8アルキル基である)で置換されていてもよく、同様に、一般式中の側鎖を構成するポリエチレンオキシド構造単位の末端水酸基は、その一部がR”CO−で表されるアシル基(式中、R”はC1〜C8アルキル基である)で置換されていてもよい。
一方、重合体の側鎖にポリビニルアルコール構造単位を含む重合体としては、例えば、主鎖にポリアルキレンオキシド構造単位を含み、側鎖にポリビニルアルコール構造単位を含むポリビニルアルコール−ポリアルキレンオキシドグラフト共重合体が挙げられ、当該ポリアルキレンオキシド構造単位は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つを含むものであってよい。このような共重合体において、ポリビニルアルコール構造単位とポリアルキレンオキシド構造単位は、例えば、モル比で、95:5〜60:40又は90:10〜70:30の範囲において存在してもよい。
このような共重合体の好ましい例としては、例えば、下記一般式:
Figure 2021095431
で表され、式中、R5は、水酸基、又はR’COO−で表されるアシロキシ基(式中、R’はC1〜C8アルキル基である)(例えばCH3COO−基等)であり、R6及びR7はそれぞれ独立して直鎖又は分岐鎖のC2〜C3アルキレン基であり、bは2〜10,000の整数であり、N1及びN2はそれぞれ0mol%超100mol%未満の実数であり、N1+N2=100mol%であるポリビニルアルコール−ポリエチレンオキシドグラフト共重合体が挙げられる。上記一般式の共重合体は、Rについて水酸基とアシロキシ基が混在した構造であってよく、より具体的にはアシロキシ基の一部が水酸基にケン化された構造であってよい。この場合のケン化度は、特に限定されないが、70〜100%、80〜100%、90〜100%又は95〜100%であってよい。N1とN2の値は、主鎖を構成するポリエチレンオキシド構造単位と側鎖を構成するポリビニルアルコール構造単位の存在比に応じて適切に決定することができる。
上記一般式のポリビニルアルコール−ポリエチレンオキシドグラフト共重合体のより具体的な例としては、下記一般式:
Figure 2021095431
で表され、式中、bは2〜10,000の整数であり、N1及びN2はそれぞれ0mol%超100mol%未満の実数であり、N1+N2=100mol%であるポリビニルアルコール−ポリエチレンオキシドグラフト共重合体が挙げられる。上記化学式中の側鎖を構成するポリビニルアルコール構造単位の水酸基は、その一部がR’COO−で表されるアシロキシ基(式中、R’はC1〜C8アルキル基である)で置換されていてもよい。
ポリビニルアルコール構造単位を含む重合体がポリビニルアルコールであるか、又はポリビニルアルコールとポリアルキレンオキシドの混合物である場合には、ポリビニルアルコール及びポリアルキレンオキシドは、例えば1,000〜10,000,000の平均分子量を有することができる。一方、ポリビニルアルコール構造単位を含む重合体が上記のポリビニルアルコール−ポリエチレンオキシドグラフト共重合体である場合には、当該ポリビニルアルコール−ポリエチレンオキシドグラフト共重合体は、例えば、5,000〜500,000、10,000〜300,000、又は10,000〜200,000の平均分子量を有することができる。
ポリビニルアルコール構造単位を含む重合体は、水性キャリヤーとその中に溶解又は懸濁している全成分の質量に基づいて、例えば、0.1ppm以上、1ppm以上、2ppm以上、又は5ppm以上であり、かつ5000ppm以下、3000ppm以下、1000ppm以下、又は500ppm以下の量で化学機械研磨組成物中に存在してよい。ポリビニルアルコール構造単位を含む重合体は、好ましくは0.1〜5000ppm(0.00001〜0.5質量%)、より好ましくは1〜3000ppm(0.0001〜0.3質量%)、最も好ましくは2〜1000ppm(0.0002〜0.1質量%)の量で化学機械研磨組成物中に存在してよい。
[他の添加剤]
本発明に係る化学機械研磨組成物は、任意選択で、他の添加剤、例えば、研磨速度促進剤、キレート剤等をさらに含んでもよい。研磨速度促進剤としては、例えば、ヒドロキサム酸(例えばアセトヒドロキサム酸)、窒素含有ヘテロ環式化合物(例えば1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール類)又はそれらの組み合わせを挙げることができる。また、キレート剤としては、例えば、シュウ酸、クエン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、酒石酸、フタル酸等の有機酸、グリシン、セリン、プロリン、ロイシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、バリン、リジン等のアミノ酸、及び、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)等のポリアミン複合物を挙げることができる。
[化学機械研磨方法]
本発明の基材の化学機械研磨方法は、
基材を研磨パッド及び上で説明した化学機械研磨組成物と接触させる工程、
前記基材に対して前記研磨パッドを前記化学機械研磨組成物をそれらの間に置いて動かす工程、並びに
前記基材の少なくとも一部をすり減らして前記基材を研磨する工程
を含むことを特徴としている。
基材を化学機械研磨する本発明の方法は、化学機械研磨(CMP)装置とともに使用するのに特に適している。典型的には、この装置は、使用の際に動き、軌道、直線又は円運動から生じる速度を有するプラテンと、このプラテンと接触し、プラテンが動くとそれとともに動く研磨パッドと、研磨パッドの表面に対して接触し動くことにより研磨すべき基材を保持するキャリヤーとを含む。基材の研磨は、基材を研磨パッド及び本発明の化学機械研磨組成物と接触させることにより行われ、次いで研磨パッドを基材に対して動かして基材の少なくとも一部をすり減らして基材を研磨するようにする。
基材は、任意の好適な研磨パッドとともに化学機械研磨組成物で平坦化又は研磨することができる。基材は、シリコン基材だけでなく、ポリシリコン膜、SiO2膜又は金属配線膜が形成されたシリコン基材、サファイア基材、SiC基材、GaAs基材、GaN基材、及びTSV形成用基材などであってもよい。好適な研磨パッドとしては、例えば、織及び不織の研磨パッドが挙げられる。さらに、好適な研磨パッドは、種々の密度、硬度、厚さ、圧縮性、圧縮に対する反発力、及び圧縮弾性率の任意の好適なポリマーを含むことができる。好適なポリマーとしては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ナイロン、フッ化炭素、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリプロピレン、それらの共形成製品、及びそれらの混合物が挙げられる。
本発明の方法は、事前に化学機械研磨組成物のスラリーを調製しておき、当該スラリーを基材に供給しながら研磨パッドで研磨する方法に加え、希釈液及びスラリー原液を研磨パッド上に供給し、研磨パッド近傍で研磨用のスラリーを調製する方法においても実施することができる。
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下の実施例において、種々の化学機械研磨組成物を調製し、それらを希釈したものを用いてフィルタ濾過試験を行うことにより各組成物のPOUフィルタ濾過性を調べ、一部の化学機械研磨組成物については、シリコンウェハを研磨したときの被研磨面のライトポイント欠陥(LPD)及びナノ研磨欠陥についても調べた。
[例1の研磨組成物の調製]
水に、5.0質量%のコロイダルシリカ(平均一次粒子サイズ:約25nm、平均二次粒子サイズ:約45nm)、0.20質量%のアンモニア、0.28質量%のHEC(重量平均分子量:120,000)、及び0.050質量%のアルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体(エチレンオキシド:プロピレンオキシド=8:2、平均窒素数:5個、分子量=46,000)を添加して、例1の研磨組成物を調製した。
[例2の研磨組成物の調製]
例1の研磨組成物のアルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体を0.005質量%のポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル(炭素鎖長:13個、分岐鎖、エチレンオキシド=8個)に変えた以外は、例1の研磨組成物と同様にして例2の研磨組成物を調製した。
[例3の研磨組成物の調製]
例1の研磨組成物に、0.005質量%のポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル(炭素鎖長:13個、分岐鎖、エチレンオキシド=8個)と、水溶性高分子として0.010質量%のポリビニルアルコール−ポリエチレンオキサイドグラフト共重合体(80:20mol%、分子量:93,600、ケン化度:98.5%、主鎖:ポリビニルアルコール、側鎖:ポリエチレンオキサイド)とを加えた以外は、例1の研磨組成物と同様にして例3の研磨組成物を調製した。
[比較例1の研磨組成物の調製]
水に、5.0質量%のコロイダルシリカ(平均一次粒子サイズ:約25nm、平均二次粒子サイズ:約45nm)、0.20質量%のアンモニア、及び0.28質量%のHEC(重量平均分子量:250,000)を添加して、比較例1の研磨組成物を調製した。
[比較例2の研磨組成物の調製]
比較例1の研磨組成物のHECの重量平均分子量を250,000から120,000に変えた以外は、比較例1の研磨組成物と同様の比較例2の研磨組成物を調製した。
[比較例3の研磨組成物の調製]
比較例1の研磨組成物の成分に、例3で用いた0.050質量%のアルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体、0.005質量%のポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル及び0.010質量%のポリビニルアルコール−ポリエチレンオキサイドグラフト共重合体を加えた以外は、比較例1の研磨組成物と同様にして比較例3の研磨組成物を調製した。
例1〜3及び比較例1〜3の研磨組成物の構成を以下の表1に示す。表中の「シリカサイズ」はコロイダルシリカの平均一次粒子サイズ、「HEC Mw」はHECの重量平均分子量、「界面活性剤A」はアルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体、「界面活性剤B」はポリオキシエチレンイソトリデシルエーテルを示す。
Figure 2021095431
次に、コロイダルシリカの平均一次粒子サイズを変更して、上記の例1〜3及び比較例1〜3の研磨組成物と同様に以下の例4及び比較例4〜6の研磨組成物、並びに例5及び比較例7の研磨組成物を調製した。
Figure 2021095431
Figure 2021095431
[POUフィルタ濾過試験]
上記の表1〜3に記載の各研磨組成物を脱イオン水で20倍希釈して、希釈後の研磨組成物のフィルタ濾過試験を行い、POUフィルタ濾過性を評価した。フィルタは、日本ポール社製の「ウルチポア(登録商標)N66」(直径47mm、定格濾過精度0.2μm)を用い、試験温度:20℃、濾過差圧:100kPa(定圧濾過)の条件で行った。各研磨組成物について、上記条件でフィルタ濾過試験を実施し、濾過を開始してからの時間(秒)を関数とした濾過量(スループット)(g)を調べた。表1〜3の各研磨組成物について得られた結果をそれぞれ図1〜3に示す。
表1及び図1を参照すると、200,000以下のMwのHECが界面活性剤と共に使用された例1〜3は、200,000超のMwのHECを用いた、及び/又は、界面活性剤を使用しなかった比較例1〜3に比べて、経過時間に対して濾過量が多くなり、POUフィルタ濾過性が改善されたことを理解することができる。より詳細には、各組成物について600秒後の濾過量(スループット)を比較すると、例1:401g、例2:219g、例3:353g、比較例1:18g、比較例2:165g、比較例3:20gとなり、例1〜3は比較例1〜3に比べて優れたPOUフィルタ濾過性を有することがわかる。特に、アルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体を用いた場合にPOUフィルタ濾過性が顕著に向上した。
表2及び図2を参照すると、図1と同様に、研磨剤の平均一次粒子サイズが35nmの場合でも、200,000以下のMwのHECが界面活性剤と共に使用された例4は、200,000超のMwのHECを用いた、及び/又は、界面活性剤を使用しなかった比較例4〜6に比べてPOUフィルタ濾過性が改善されたことを理解することができる。より詳細には、600秒後の濾過量(スループット)を比較すると、例4:479g、比較例4:18g、比較例5:276g、比較例6:232gとなり、例4は比較例4〜6に比べて優れたPOUフィルタ濾過性を有することがわかる。
表3及び図3を参照すると、図1及び図2と同様に、研磨剤の平均一次粒子サイズが15nmの場合でも、200,000以下のMwのHECが界面活性剤と共に使用された例5は、界面活性剤を使用しなかった比較例7に比べてPOUフィルタ濾過性が改善されたことを理解することができる。より詳細には、600秒後の濾過量(スループット)を比較すると、例5:199g、比較例7:40gとなり、例5は比較例7に比べて優れたPOUフィルタ濾過性を有することがわかる。
低重量平均分子量のHEC及び界面活性剤を用いた本発明に係る研磨組成物では、HECを含有する研磨組成物であるにもかかわらず、フィルタの目詰まりを十分に抑制でき、小孔径サイズのフィルタを用いた場合に十分なPOUフィルタ濾過性が達成できた。また、同成分構成におけるシリカサイズ間の濾過性を比較すると、一次粒子サイズが大きいほど濾過性に優れる傾向が見られた。所望の濾過性能と研磨性能とのバランスに応じて、最適な粒子径サイズを選択(使用)することができる。例えば、基材の表面品質をより重視する場合は、一次粒子サイズを小さいものを用いるとよい。
[CMP後の表面品質の評価]
例3の研磨組成物及び比較例3の研磨組成物を脱イオン水で20倍希釈して、希釈後の各研磨組成物を上記のフィルタで濾過した後、その濾過後のスラリーを用いてシリコンウェハの基材を化学機械研磨(CMP)して、研磨後のシリコンウェハの表面品質(ライトポイント欠陥(LPD)、ナノ研磨欠陥)を評価した。
[研磨操作]
まず、抵抗率0.1〜100Ω・cm及び結晶方位<100>の12インチp型シリコンウェハ(シリコン基材)をフッ化水素酸(0.5%)を用いて23℃で2分間洗浄して自然酸化膜を除去し、次いで、得られたシリコンウェハを、例3の研磨組成物及び比較例3の研磨組成物を純水で20倍希釈(質量比)したスラリーを用いて以下の条件下で化学機械研磨処理した。希釈後のスラリーのpHは水酸化カリウムで約10とした。
(1)CMP装置:12インチ片面研磨機、岡本機械製作所製SPP800S
(2)ウェハヘッド:テンプレート方式
(3)研磨パッド:フジボウ愛媛社製POLYPAS 27NX−PS
(4)定盤回転数:31rpm
(5)研磨ヘッド回転数:33rpm
(6)研磨圧:2.2psi=152g/cm2=15kPa
(7)スラリー供給量:500mL/分(かけ流し)
研磨後、シリコンウェハを、SC−1(アンモニア(29質量%水溶液):過酸化水素(31質量%水溶液):純水=2:1:10(体積比)の溶液)を用いて23℃で20分間バッチ洗浄した。次に、シリコンウェハを芝浦メカトロニクス製SC−200Sにより、SC−1(アンモニア(29質量%水溶液):過酸化水素(31質量%水溶液):純水=1:4:20(体積比)の溶液)及びPVAブラシを用いて23℃でスクラブ洗浄し、次いで純水洗浄した。
[欠陥の測定]
さらに、研磨後のシリコンウェハのライトポイント欠陥(LPD)の形成について調べた。より具体的には、LPDは、同じくKLA Tencor社製のSurfscan SP2を用い、暗視野コンポジット斜入射チャネル(DCO)におけるLPDの値を用いた。ナノ研磨欠陥は、LPDシグナルよりも強度が低く、表面からの散乱強度がベースライン強度よりも局所的に強いシグナルの量として定義した。設定した領域内において観測された該当するシグナルをカウントして判定した。
例3の研磨組成物は、比較例3の研磨組成物に比べ、研磨速度は同等程度に維持しつつ、ナノ研磨欠陥が約8%改善し、LPDが約2%改善した。よって、本発明に係る化学機械研磨組成物は、高いPOUフィルタ濾過性を有し実用性が高いだけでなく、基材の表面品質を向上させることができる。

Claims (15)

  1. 研磨剤、
    200,000以下の重量平均分子量を有するヒドロキシエチルセルロース、
    塩基性成分、
    界面活性剤、及び
    水性キャリヤーを含有する、基材を研磨するための化学機械研磨組成物。
  2. 前記ヒドロキシエチルセルロースが150,000以下の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の化学機械研磨組成物。
  3. 前記研磨剤が50nm以下の一次粒子サイズを有する、請求項1又は2に記載の化学機械研磨組成物。
  4. 前記研磨剤が20〜40nmの一次粒子サイズを有する、請求項1又は2に記載の化学機械研磨組成物。
  5. 前記界面活性剤が、アルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルのうち少なくとも1種を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化学機械研磨組成物。
  6. 前記界面活性剤が、アルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルの両方を含む、請求項5に記載の化学機械研磨組成物。
  7. 前記界面活性剤がアルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体を含み、前記アルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体が、アルキレン基及びポリアルキレンオキシド基がN原子に結合した3級アミンを含む繰り返し構造単位を少なくとも2個含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化学機械研磨組成物。
  8. 前記界面活性剤がポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含み、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが、式(i)RO−(AO)n−Hで表され、式中、Rは直鎖又は分岐鎖のC1〜C15アルキル基であり、Aはエチレン基、プロピレン基及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるアルキレン基であり、nはAOの平均付加モル数を表し、2〜30の数である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化学機械研磨組成物。
  9. ポリビニルアルコール構造単位を含む重合体を含む水溶性高分子をさらに含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化学機械研磨組成物。
  10. 前記ポリビニルアルコール構造単位を含む重合体が、主鎖にポリビニルアルコール構造単位を含み、側鎖にポリアルキレンオキシド構造単位を含むポリビニルアルコール−ポリアルキレンオキシドグラフト共重合体、又は、主鎖にポリアルキレンオキシド構造単位を含み、側鎖にポリビニルアルコール構造単位を含むポリビニルアルコール−ポリアルキレンオキシドグラフト共重合体である、請求項9に記載の化学機械研磨組成物。
  11. 前記研磨剤が、アルミナ、シリカ、セリア、ジルコニア及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化学機械研磨組成物。
  12. 20〜40nmの一次粒子サイズを有するシリカ、
    150,000以下の重量平均分子量を有するヒドロキシエチルセルロース、
    アンモニア、
    アルキレンポリアルキレンオキシドアミン重合体及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルのうち少なくとも1種を含む界面活性剤、
    ポリビニルアルコール構造単位を含む重合体を含む水溶性高分子、及び
    水性キャリヤーを含有する、請求項1に記載の化学機械研磨組成物。
  13. 前記基材がシリコン基材である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化学機械研磨組成物。
  14. 基材を研磨パッド及び請求項1〜13のいずれか1項に記載の化学機械研磨組成物と接触させる接触工程、
    前記基材に対して前記研磨パッドを前記化学機械研磨組成物をそれらの間に置いて動かす工程、並びに
    前記基材の少なくとも一部をすり減らして前記基材を研磨する工程
    を含む、基材の化学機械研磨方法。
  15. 前記接触工程の前に、前記化学機械研磨組成物を希釈し、次いで、5μm以下の孔径のフィルタで濾過する工程を含む、請求項14に記載の基材の化学機械研磨方法。
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