以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は、「X以上Y以下」を意味し、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」および「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
本発明は、n段階(nは3以上の整数)の研磨段(ただし、n段階ある各研磨段の研磨条件がすべて同じになることはない)を有する、半導体基板を連続的に製造する方法であって、所定の研磨段m(3≦m≦nであり、かつ、mは整数)で使用された研磨用組成物を、第m−1段から第2段の間の少なくとも1段の研磨段で再使用することを有する、半導体基板を連続的に製造する方法である。
このような構成によって、研磨用組成物の調達コストおよび廃棄コストの低減や、環境保護にも配慮しながら、簡便な方法で、より効率的に、未使用の研磨用組成物で研磨する場合と同様に高品質な半導体基板を連続的に製造する方法を提供することができる。
本発明の製造方法においては、通常、研磨対象物の表面と、研磨装置に備えられる研磨パッドとを接触させ、その接触部分に研磨用組成物を供給しながら相対摺動させることによって、研磨対象物の表面を研磨する。また、本発明の製造方法においては、n段階(nは3以上の整数)の研磨段が含まれる。このようにn段階(nは3以上の整数)を有し、それぞれの研磨段で研磨対象物の表面を研磨することで、高品質な半導体基板を連続的に製造していく。
ここで「研磨段」の概念について説明する。本発明の一実施形態によると、高品質な半導体基板を製造すべく、予備研磨工程、仕上げ研磨工程などの複数の研磨工程が含まれ、場合によってリンス工程が含まれる。また、本発明の一実施形態によると、これら予備研磨工程自体、仕上げ研磨工程自体およびリンス工程自体の少なくとも一工程が複数含まれる。このように、複数の研磨工程を含んだり、研磨工程自体を複数行ったりすることによって、高品質な半導体基板を製造する。このように、予備研磨工程、仕上げ研磨工程、および、(場合によって)リンス工程を含むとき、これらの工程をそれぞれ「研磨段」と称し、また、これら工程自体を複数回行うときも、各回を「研磨段」と称する。
ここで「工程自体を複数回行う」場合の「研磨段」の概念について、仕上げ研磨工程を例に挙げて説明する。ある研磨対象物に対して仕上げ研磨工程を行う場合であって、研磨が終わって研磨装置自体を切り替えてまた仕上げ研磨を行うとき、「研磨段」が一段増えることになる。また、研磨装置自体を切り替えなくとも、供給する研磨用組成物の切り替えを行ったり、同じ回転定盤上で別のウエハホルダに移動されて研磨されたりする場合も、「研磨段」が一段増えることになる。なお、仕上げ研磨工程自体を複数段行う場合、高品質な半導体基板を効率よく作製する観点では2〜4段程度が好ましい。
「研磨段」の概念についてさらに具体的に説明すると、ある研磨対象物に対して、第1回目の研磨を行うことを第1段の研磨(つまり、n=1)と称する。続いて、その第1段の研磨が行われた研磨対象物に対して、第2回目の研磨を行うことを第2段の研磨(つまり、n=2)と称する。第1段の研磨は、通常、予備研磨工程となる。第2段の研磨としては、仕上げ研磨工程を行ってもよいし、リンス工程を行ってもよい。あるいは、必要に応じて、第1段の研磨と同様に予備研磨工程を再度行っても構わない。しかし、半導体基板を効率的に製造することを鑑みると、リンス工程や、仕上げ研磨工程を行うことが好ましい。このように、同じ研磨対象物に対して、n段階(nは3以上の整数)の研磨段にて研磨を行うことによって、高品質な半導体基板を製造することができる。「研磨段」のnの数も3以上の整数であれば特に制限はないが、より効率的に半導体基板を製造するとの観点から、10以下の整数が好ましく、8以下の整数がより好ましく、6以下の整数がさらに好ましい。
ここで、予備研磨工程と、仕上げ研磨工程とについて説明を行う。平たく言うと、予備研磨工程とは、研磨対象物の粗研磨を行う工程であり、仕上げ研磨工程とは、粗研磨された研磨対象物を、表面がキズや不純物の無い高品質なものとなるように研磨する工程である。予備研磨工程は、通常、両面研磨機を用いて、研磨対象物を両面研磨することによって行われ、仕上げ研磨工程は、通常、研磨対象物を片面研磨することによって行われる。特に、研磨対象物としてシリコンウエハを用いる場合であって、かかるシリコンウエハが、300mm、450mmのような大口径のとき、予備研磨工程では両面研磨を行い、仕上げ研磨工程では片面研磨を行うことが好ましい。また、予備研磨工程における単位時間当たりの研磨対象物の研磨量と、仕上げ研磨工程における単位時間当たりの研磨対象物の研磨量とを比較すると、前者の方が相対的に多いことが一般である。予備研磨工程と、仕上げ研磨工程とからなる製造方法においては、研磨段が大きくなるにつれて、単位時間当たりの研磨対象物の研磨量を単調減少させることが好ましい。また、研磨対象物に対して、仕上げ研磨工程における研磨を行った後は、再度、予備研磨工程における研磨を行うことはない。
またリンス工程について説明を行う。リンス工程とは、通常、研磨屑の除去や、研磨対象物の表面を保護することを目的として行われるものであり、本発明においては、リンス工程も「研磨段」として数える。本発明の一実施形態によれば、リンス工程は、高品質な半導体基板を製造するとの観点から、少なくとも、予備研磨工程と、仕上げ研磨工程との間に行う。
また、上記のように、本発明の製造方法において、n段階ある各研磨段の研磨条件は、すべて同じになることはない。このように、一つの研磨対象物を、予備研磨工程、仕上げ研磨工程などを含む、複数の研磨条件で研磨することによって、高品質な半導体基板を製造することができる。なおここでいう「研磨条件」の相違は、研磨装置の設定条件だけでなく、使用する研磨用組成物の組成も含む概念である。
さて、本発明の製造方法においては、所定の研磨段m(3≦m≦nであり、かつ、mは整数)で使用された研磨用組成物を、第m−1段から第2段の間の少なくとも1段の研磨段で再使用することを特徴とする。
ここで「所定の研磨段m(3≦m≦nであり、かつ、mは整数)で使用された研磨用組成物を、第m−1段から第2段の間の少なくとも1段の研磨段で再使用する」についていくつか実施形態を挙げて説明する。
まず、本発明の製造方法における一実施形態として、3段階の研磨段を有する場合(つまり、n=3)で、所定の研磨段mで使用された研磨用組成物を、第m−1段から第2段の間の少なくとも1段の研磨段で再使用することについて説明する。
図1は、3段階の研磨段を有する場合の本発明の一実施形態について示す簡略フロー図である。図1に示されるように、第1段は、予備研磨工程であり、第2段は、仕上げ研磨工程であり、第3段も、仕上げ研磨工程である。また、本実施形態において、予備研磨工程では、研磨対象物を4枚同時に研磨することができ、仕上げ研磨工程では、研磨対象物を2枚同時に研磨することができる。
ここで、図1Aに示されるように、第1段の予備研磨工程において、研磨対象物A1〜A4の4枚がセットされ、それらが同時に研磨される。その後、図1Bに示されるように、予備研磨がなされた研磨対象物A1〜A4のうちの2枚(ここでは、研磨対象物A1、A2)が、第2段の仕上げ研磨工程に搬送される。そして、第2段の仕上げ研磨工程において、これら研磨対象物A1、A2が研磨される。その後、図1Cに示されるように、これら研磨対象物A1、A2は、第3段の仕上げ研磨工程に搬送され、他方で、予備研磨がなされた研磨対象物A3、A4が、第2段の仕上げ研磨工程に搬送される。
ここで、本実施形態においては、第2段の仕上げ研磨工程における研磨対象物A3、A4を研磨するための研磨用組成物として、研磨対象物A1、A2に対して第3段(=所定の研磨段m)の仕上げ研磨工程で使用された研磨用組成物が再使用される。
そして、それと並行し、第1段の予備研磨工程において、新たに研磨対象物A5〜A8の4枚がセットされ4枚同時研磨が行われる。このようなプロセスが連続されることによって、半導体基板を連続的に製造していく。
なお、上記説明で明らかなように、3段階の研磨段を有する場合(つまり、n=3)、所定の研磨段mは、必然的に「3」となる(3≦mであるため)。また、再使用する研磨段は、必然的に第2段となる(再使用される研磨段として第2段が最小であるため)。
続いて、本発明の製造方法における一実施形態として、5段階の研磨段を有する場合(つまり、n=5)であって、所定の研磨段mで使用された研磨用組成物を、第m−1段から第2段の間の少なくとも1段の研磨段で再使用することについて説明する。
図2は、5段階の研磨段を有する場合の本発明の一実施形態について示す簡略フロー図である。図2に示されるように、本実施形態においては、第1段は、予備研磨工程であり、第2段は、リンス工程であり、第3段は、仕上げ研磨工程であり、第4段も、仕上げ研磨工程であり、第5段も、仕上げ研磨工程である。また、本実施形態において、予備研磨工程においては、研磨対象物を4枚同時に研磨することができ、リンス工程においては研磨対象物を2枚同時にリンスすることができ、仕上げ研磨工程においては、研磨対象物を2枚同時に研磨することができる。
本実施形態においては、5段階の研磨段を有するため、先の実施形態のように所定の研磨段mは「3」に制限されず、「3」、「4」または「5」となる。ここで、所定の研磨段mが「3」である場合、再使用する研磨段は必然的に第2段となる。また、所定の研磨段mが「4」である場合、再使用できる研磨段は、第3段(4−1)または第2段となる。また、所定の研磨段mが「5」である場合は、再使用できる研磨段は、第4段(5−1)、第3段または第2段となる。
ここで、図2Aに示されるように、第1段の予備研磨工程において、研磨対象物A1〜A4の4枚がセットされ、それらが同時に研磨される。その後、図2Bに示されるように、予備研磨された研磨対象物A1〜A4のうちの2枚(ここでは、研磨対象物A1、A2)が、第2段のリンス工程に搬送される。そして、これら研磨対象物A1、A2が、第2段のリンス工程においてリンスされる。その後、これら研磨対象物A1、A2は、図2Cに示されるように、第3段の仕上げ研磨工程に搬送され、他方で、第1段で予備研磨がなされた研磨対象物A3、A4が、第2段のリンス工程に搬送される。ここで、第2段のリンス工程における研磨対象物A3、A4を研磨するための研磨用組成物として、第3段(=所定の研磨段m)における仕上げ研磨工程で、研磨対象物A1、A2に対して使用された研磨用組成物を再使用してもよい。また、それと並行し、第1段の予備研磨工程において、新たに研磨対象物A5〜A8の4枚がセットされ4枚同時研磨が行われている。
続いて、図2Dに示されるように、第3段の仕上げ研磨工程がなされた研磨対象物A1、A2は、第4段の仕上げ研磨工程に搬送され研磨される。その後、図2Eに示されるように、第4段の仕上げ研磨工程がなされた研磨対象物A1、A2は、第5段の仕上げ研磨工程に搬送され研磨される。そして研磨対象物A3以降についても同様なプロセスが行われていく。
本実施形態では、第4段(=所定の研磨段m)における仕上げ研磨工程で研磨対象物A1、A2に対して使用された研磨用組成物は、第2段または第3段において研磨対象物A3以降を研磨するための研磨用組成物として再使用することができる。
また、本実施形態では、第5段(=所定の研磨段m)における仕上げ研磨工程で研磨対象物A1、A2に対して使用された研磨用組成物は、第2段、第3段または第4段において研磨対象物A3以降を研磨するための研磨用組成物として再使用することができる。
このような、最終研磨段(第5段)における研磨用組成物を再使用する場合、通常、研磨によって除去される研磨取りしろ(研磨量)は一番少なく設定される。よって、最終研磨段以外の研磨段と比較し、研磨屑や不純物の混入が少なく、凝集物も少ない。そのため、特に、最終研磨段における研磨用組成物を再使用する場合、未使用の研磨用組成物で研磨する場合と同様の精度で半導体基板を製造することができ、研磨用組成物の調達コストおよび廃棄コストの低減と、環境保護という、一見相反する課題を同時に解決することができる。なお、本実施形態においては、第4段で使用された研磨用組成物も、最終研磨段のものと有意に近いため、同様の効果を達成することができる。
なお、本実施形態においては、研磨対象物A1、A2に対して第5段で使用された研磨用組成物を第4段で再使用し、他方で、研磨対象物A1、A2に対して第4段で使用された研磨用組成物を第3段で再使用するような、すなわち、複数の研磨段での再使用を行ってもよい。本形態のように、複数の研磨段で再使用が行われることは、研磨用組成物の調達コストおよび廃棄コストの低減や、環境保護に特に有利となる。
また、本実施形態においては、仕上げ研磨工程で使用された研磨用組成物は、仕上げ研磨工程にて再使用することが好ましい。仕上げ研磨工程における各研磨段の研磨条件は互いに近しいため、使用済みの研磨用組成物で研磨しても高品質な半導体基板を製造することができる。
一方で、使用済みの研磨用組成物を同一の研磨段(つまり、m)で再使用すると、必然的に新液での研磨を経た研磨対象物と、使用済研磨用組成物での研磨を経た研磨対象物と、2種類製造されることになり、半導体基板の品質がばらつく。よって、第m−1段から第2段の間の少なくとも1段の研磨段で再使用する必要がある。また、他方で、使用済みの研磨用組成物を第1段で使用してしまうと、研磨速度が不十分であるため不適である。
このように、所定の研磨段mで使用された、使用済の研磨用組成物を、第m−1段から第2段の間の少なくとも1段の研磨段で再使用することによって、研磨用組成物の調達コストおよび廃棄コストの低減や、環境保護にも配慮しながら、簡便な方法で、より効率的に、未使用の研磨用組成物で研磨する場合と同様に高品質な半導体基板を連続的に製造することができる。
なお、本発明の製造方法の一実施形態によれば、再使用された研磨用組成物を2回以上再使用してもよいが、研磨対象物の表面精度(ヘイズと呼ばれるウエハの曇りやPIDやLLSと呼ばれる欠陥)を特に重視する場合は1回再使用したら廃棄することが好ましい。1回の再使用後に廃棄をすると、効率的に半導体基板を生産することができ、加えて研磨対象物の表面精度が悪化しないという利点がある。
また、本発明の製造方法の一実施形態によれば、再使用に供される研磨用組成物の量が不足する場合は、研磨途中から新品の研磨用組成物に切り替えるあるいは新品の研磨用組成物を混合して用いてもよい。その場合、研磨対象物の表面精度が向上するという効果がある。
また、本発明の製造方法の一実施形態によれば、再使用される研磨段は、研磨速度が不十分であるため予備研磨工程を行う研磨段ではない方が好ましい。
本発明の製造方法の一実施形態によれば、研磨用組成物は濾過した後に再使用することが好ましい。このような形態によって、研磨対象物の表面精度を向上させることができ、より高品質な半導体基板の製造に繋がる。
なお、濾過をする場合、常圧状態で行う自然濾過の他に、吸引濾過、加圧濾過、または遠心濾過を適用してもよい。フィルタの目開きは0.05μm以上であり、好ましくは0.1μm以上である。また、フィルタの目開きは50μm以下であり、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは0.3μm以下である。フィルタの目開きの縮小によって、表面品質を高めることがさらに容易となる。
また、濾過をする場合、濾過速度Rは、吸引圧50kPaにおいて、0.005[mL/(分・mm2)]以上であることが好ましく、より好ましくは0.010[mL/(分・mm2)]以上、さらに好ましくは0.015[mL/(分・mm2)]以上である。濾過速度Rを速めることは、濾過工程の効率化に寄与する。また、濾過速度Rは、吸引圧50kPaにおいて、10[mL/(分・mm2)]以下であることが好ましく、より好ましくは8[mL/(分・mm2)]以下、さらに好ましくは5[mL/(分・mm2)]以下である。濾過速度Rを低下させることによって、異物の除去効率を高め、結果として表面品質を高めることがさらに容易となる。
よって、本発明の好ましい実施形態によれば、再使用に供される研磨用組成物が、目開き0.05μmのフィルタを用いて吸引圧50kPaで濾過した場合に、濾過速度R 0.005mL/(分・mm2)以上のものであることが好ましい。このような形態によれば、研磨用組成物中の凝集物等が少なく、品質を安定させて半導体基板を製造することができる。
フィルタの材質は、水系溶媒中の粒子除去に適した材質であれば特に限定されない。フィルタの材質の具体例としては、セルロース、ナイロン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリカーボネート、セルロース混合エステルタイプ等が挙げられる。フィルタの種類としては、例えばメンブレンフィルタ、デプスフィルタ等が挙げられる。フィルタの形状は、特に限定されず、例えば平膜状、プリーツ状、中空糸状等が挙げられる。
続いて、研磨装置についての説明を行う。図3は、本発明の一実施形態による片面研磨装置を示す斜視図である。図3に示すように、片面研磨装置11は、上面に研磨パッド14が貼り付けられた円板状の回転定盤12を備えている。回転定盤12は、図3の矢印13a方向に回転する第1シャフト13に対して一体回転可能に設けられている。回転定盤12の上方には少なくとも一つのウエハホルダ15が設けられている。ウエハホルダ15は、図3の矢印16a方向に回転する第2シャフト16に対して一体回転可能に設けられている。ウエハホルダ15の底面には、セラミックプレート17および図示しないウレタンシートを介して、四つのウエハ保持孔18を有するウエハ保持プレート19が取り外し可能に取り付けられている。片面研磨装置11は、研磨用組成物供給機21および図示しないリンス用組成物供給機をさらに備えていてもよい。研磨用組成物供給機21は、ノズル21aを通じて、予備研磨用組成物や、仕上げ研磨用組成物(好ましくは仕上げ研磨用組成物)を吐出し、また、図示しないリンス用組成物供給機からは図示しないノズルを通じてリンス用組成物が吐出されてもよい。その場合、研磨用組成物供給機21に代わってリンス用組成物供給機が回転定盤12の上方に配置される。片面研磨装置11の稼働条件を研磨用の設定からリンス用の設定に切り替えた後、リンス用組成物供給機からリンス用組成物が吐出されて研磨パッド14上にリンス用組成物が供給される。これにより、研磨パッド14と接するウエハの面がリンスされる。なおリンス用組成物は、研磨用組成物供給機21のノズル21aを通じて吐出されてもよい。これは両面研磨装置においても同様である。
ウエハを研磨するときには、図3に示すように研磨用組成物供給機21が、回転定盤12の上方に配置される。研磨すべきウエハはウエハ保持孔18内に吸引されてウエハホルダ15に保持される。まず、ウエハホルダ15および回転定盤12の回転が開始され、研磨用組成物供給機21からは予備研磨用組成物や、仕上げ研磨用組成物(好ましくは仕上げ研磨用組成物)、あるいは場合によってはリンス用組成物が吐出されて研磨パッド14上に供給される。そして、ウエハを研磨パッド14に押し付けるべく、ウエハホルダ15が回転定盤12に向かって移動させられる。これにより、研磨パッド14と接するウエハの片面が研磨され、あるいはリンスされる。研磨パッドは、特に限定されないが、ポリウレタンタイプ、不織布タイプ、スウェードタイプなどを用いることができる。
また、研磨パッドが貼り付けられた円板状の回転定盤をもう一つ備えることで、図3に示す仕上げ研磨装置を、ウエハの両面を研磨する予備研磨装置として利用することができる。図4は、本発明の一実施形態による両面研磨装置を示す斜視図である。
図4に示されるように、両面研磨装置の一実施形態としては、研磨パッドが貼り付けられた円板状の回転定盤をさらに上部に設けて、研磨パッド14が貼り付けられた上部回転定盤(上定盤24)とし、下定盤23に貼り付けられた研磨パッド14と、上定盤24に貼り付けられた研磨パッド14とで、ウエハ保持孔18に保持されたウエハを挟持する。上部回転定盤は、研磨用組成物供給機21から吐出された予備研磨用組成物や、仕上げ研磨用組成物(好ましくは予備研磨用組成物)(あるいは場合によってリンス用組成物)が下部に流れ出るようにする通流孔(研磨用組成物供給樋26)を有している。
上部回転定盤(上定盤24)と、下部回転定盤(下定盤23)とは、矢印13a、矢印16aで示されるように、互いに逆方向に回転し、研磨用組成物供給機21からは、予備研磨用組成物、仕上げ研磨用組成物、あるいは場合によってはリンス用組成物が吐出されて、両方の研磨パッド14がウエハの両面を押し付けながら回転することで、ウエハの両面が研磨され、あるいはリンスされる。
図4に示されるように、両面研磨装置22では、図3に図示されたウエハホルダ15は不要であるが、代わりに一つのウエハ保持孔18を有するウエハ保持プレート19が必要になり、それら全体をウエハホルダあるいは加工キャリア25と呼ぶ。図4で示される形態によれば、1つの保持プレートあたり1枚のウエハが入っており、それを3つ備えているが、別の形態によれば、1枚のウエハが入る保持プレートを5つ備える場合や1つの保持プレートにウエハが3枚入る場合もある。本発明では、いかような装置を用いることも可能であり、保持プレートの数にも、一つの保持プレートが保持するウエハの数にも特に制限されず、従来公知の装置を、そのまま、あるいは適宜改良して使用することができる。
また、本発明では、n段階(nは3以上の整数)の研磨段(ただし、n段階ある各研磨段の研磨条件がすべて同じになることはない)を有する、半導体基板を連続的に製造する方法における、所定の研磨段m(3≦m≦nであり、かつ、mは整数)で使用された研磨用組成物であって、第m−1段から第2段の間の少なくとも1段の研磨段で再使用する、(使用済)研磨用組成物が提供される。かかる(使用済)研磨用組成物については、上記または下記の説明が同様に妥当する。
以下、本発明を構成しうる要件について説明する。
<研磨対象物>
本発明の製造方法に用いられる研磨対象物としては、特に制限はないが、シリコン、アルミニウム、ニッケル、タングステン、銅、タンタル、チタン、ステンレス鋼等の金属もしくは半導体ウエハ、またはこれらの合金;炭化ケイ素、窒化ガリウム、ヒ化ガリウム等の化合物半導体基板材料などが挙げられる。なかでも、シリコンからなる表面を備えたシリコンウエハが好ましく、特に好ましくは単結晶または多結晶シリコンからなる表面を備えた研磨対象物である。
本発明に用いられるシリコンウエハは、p型であってもn型であってもよい。また、シリコンウエハの結晶方位としても特に制限はなく、<100>、<110>、<111>のいずれでもよい。また、シリコンウエハの抵抗率にも特に制限はない。また、シリコンウエハの厚さは、例えば600〜1000μmであるが、特に限定されるものではない。また、本発明の製造方法では、200mm、300mm、450mmなどどのような口径のウエハにも適応可能である。無論、これら以外の口径のものを使用してもよい。
シリコンウエハの加工プロセスの好ましい形態について簡単に説明すると、シリコン単結晶インゴットがスライスされ、シリコンウエハが作製される(スライス工程)。その後、シリコンウエハの縁部の面取りがなされる(ベベル工程)。そして、ラッピングによりウエハ表面が研磨され所定の外形に整えられる(ラッピング工程)。さらにラッピングによって変質したシリコンウエハの表層を除去し(ウエハの加工変質層を除去し)、シリコンウエハはエッチングされる(エッチング工程)。エッチングの後、シリコンウエハのエッジおよび表面(両面または片面)は研磨される(研磨工程)。このような工程を経て、半導体基板が製造される。本発明は、この「研磨工程」において、適用される。
<研磨用組成物>
研磨用組成物には、砥粒、水溶性高分子、塩基性化合物、水、キレート剤、界面活性剤などの少なくとも2種が含まれ、また当業界で使用される各種添加剤を含んでもよい。
研磨用組成物の調製には、例えば翼式攪拌機、超音波分散機、ホモミキサーなどの周知の混合装置を用いることができる。研磨用組成物の各原料は、同時に混合されてもよいし、混合順序を適宜設定されてもよい。
(砥粒)
砥粒は、研磨対象物の表面を機械的に研磨する働きを有する。
砥粒の具体例としては、シリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア、チタニアなどの金属酸化物からなる粒子、炭化ケイ素、炭酸カルシウム、ダイヤモンドなどからなる粒子が挙げられる。砥粒は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。砥粒の中でも、シリカ粒子が好ましく、シリカ粒子としてはコロイダルシリカ、フュームドシリカなどが挙げられる。
シリカ粒子の中でも、コロイダルシリカが好ましい。コロイダルシリカまたはフュームドシリカを使用した場合、特にコロイダルシリカを使用した場合には、研磨工程においてシリコンウエハの表面に発生するスクラッチが減少する。
予備研磨工程に用いられる砥粒の含有量は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.2質量%以上であることがさらに好ましく、0.5質量%以上であることが特に好ましい。また、仕上げ研磨工程に用いられる砥粒の含有量は、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。砥粒の含有量の増加によって、研磨対象となる面に対する研磨速度などの表面加工性能が向上する。また、予備研磨工程に用いられる砥粒の含有量は、50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下であり、最も好ましくは3質量%以下である。また、仕上げ研磨工程に用いられる砥粒の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下であり、さらにより好ましくは1質量%以下であり、最も好ましくは0.5質量%以下である。砥粒の含有量の減少によって、研磨用組成物の分散安定性が向上し、かつ、研磨された面の砥粒の残渣が低減する傾向となる。
予備研磨工程に用いられる砥粒の平均一次粒子径は、5nm以上が好ましく、より好ましくは10nm以上であり、さらに好ましくは20nm以上で、さらにより好ましくは30nm以上であり、特に好ましくは40nm以上である。また、仕上げ研磨工程に用いられる砥粒の平均一次粒子径は、5nm以上が好ましく、より好ましくは10nm以上であり、さらに好ましくは20nm以上である。また、予備研磨工程に用いられる砥粒の平均一次粒子径は、100nm以下が好ましく、より好ましくは80nm以下であり、さらに好ましくは60nm以下である。また、仕上げ研磨工程に用いられる砥粒の平均一次粒子径は、60nm以下が好ましく、より好ましくは50nm以下であり、さらに好ましくは40nm以下である。
なお、予備研磨工程に用いられる砥粒の平均一次粒子径/仕上げ研磨工程に用いられる砥粒の平均一次粒子径は、研磨対象物の効率的な除去および欠陥抑制の観点から、好ましくは1.0〜2.5、より好ましくは1.1〜2.2である。
また、予備研磨工程に用いられる砥粒の平均二次粒子径は、効率的な自然酸化膜除去の観点から、50nm以上であることが好ましく、80nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましい。また、ウエハエッジ部の局所的な平坦度を示すESFQR向上の観点から、250nm以下であることが好ましく、180nm以下であることがより好ましく、150nm以下がさらに好ましい。また、仕上げ研磨工程に用いられる砥粒の平均二次粒子径は、LLS低減の観点から、30nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましい。また同じ観点から100nm以下であることが好ましく、80nm以下であることがより好ましく、75nm以下であることがさらに好ましい。
なお、予備研磨に用いられる砥粒の平均二次粒子径/仕上げ研磨に用いられる砥粒の平均二次粒子径は、研磨対象物の効率的な除去および欠陥抑制の観点から、好ましくは1.0〜2.5、より好ましくは1.1〜2.2である。
ここで、ESFQR(Edge flatness metric, Sector based, Front surface referenced, least squares fit reference plane, Range of the data within sector)とは、ウエハ全周の外周部域に形成した扇型の領域(セクター)内のSFQRを測定したものであり、ESFQRmaxとは、ウエハ上の全セクターのESFQRの中の最大値を示し、ESFQRmeanは、全セクターのESFQRの平均値を示すものである。本発明でESFQRとは、ESFQRmeanの値をいう。本発明で規定する、ESFQRは、平坦度測定器(KLA-Tencor社製:WaferSight2)を用い、エッジ除外領域(Edge Exclusion、ウエハ上で、デバイスが形成されない外周部分の幅)が1mmで、ウエハ全周を5°間隔で72分割し、サイトを構成する径方向の一辺の長さが35mmとしたサイト内のSFQRを測定した値である。SFQR(Site Front Least Squares Range)とは、設定されたサイト内でデータを最小二乗法にて算出したサイト内平面を基準平面とし、この平面からの+側(すなわち、ウエハの表面を上に向け水平に置いた場合の上側)、−側(同下側)の最大偏差のことである。
なお、砥粒の平均一次粒子径や平均二次粒子径の値は、例えば、BET法により測定される比表面積から算出される。砥粒の比表面積の測定は、例えば、マイクロメリテックス社製の“Flow SorbII 2300”を用いて行うことができる。
(水溶性高分子)
水溶性高分子は、研磨される面の濡れ性を高める働きを有する。水溶性高分子は、1種であっても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
水溶性高分子としては、分子中に、カチオン基、アニオン基およびノニオン基から選ばれる少なくとも一種の官能基を有するものを使用することができる。具体的な水溶性高分子としては、分子中に水酸基、カルボキシル基、アシルオキシ基、スルホ基、第四級アンモニウム構造、複素環構造、ビニル構造、ポリオキシアルキレン構造などを含むものが挙げられる。凝集物の低減や洗浄性向上などの観点から、ノニオン性の水溶性高分子を好ましく採用し得る。好適例として、オキシアルキレン単位を含むポリマー、窒素原子を含有するポリマー(含窒素水溶性高分子)、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、デンプン誘導体などが例示される。
より好ましくは、オキシアルキレン単位を含むポリマー、窒素原子を含有するポリマー、ポリビニルアルコールおよびセルロース誘導体から選ばれる少なくとも1種である。さらに好ましくは、窒素原子を含有するポリマーおよびセルロース誘導体である。
オキシアルキレン単位を含むポリマーとしては、ポリエチレンオキサイド(PEO)、エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)とのブロック共重合体、EOとPOとのランダム共重合体などが挙げられる。EOとPOとのブロック共重合体は、ポリエチレンオキサイド(PEO)ブロックとポリプロピレンオキサイド(PPO)ブロックとを含むジブロック体、トリブロック体などであり得る。上記トリブロック体には、PEO−PPO−PEO型トリブロック体およびPPO−PEO−PPO型トリブロック体が含まれる。通常は、PEO−PPO−PEO型トリブロック体がより好ましい。EOとPOとのブロック共重合体またはランダム共重合体において、該共重合体を構成するEOとPOとのモル比(EO/PO)は、水への溶解性や洗浄性などの観点から、1より大きいことが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上(例えば5以上)であることがさらに好ましい。
窒素原子を含有するポリマーとしては、単量体単位中に窒素原子を1個以上有するもの、または、側鎖の一部に窒素原子を1個以上有するものであれば特に限定されず、例えばアミン、イミン、アミド、イミド、カルボジイミド、ヒドラジド、ウレタン化合物などが用いれられ、鎖状、環状、1級、2級、3級のいずれでもよい。また、窒素原子をカチオンとして形成される塩の構造を有する含窒素水溶性高分子であってもよい。また、主鎖に窒素原子を含有するポリマーおよび側鎖官能基(ペンダント基)に窒素原子を有するポリマーのいずれも使用可能である。塩の構造を有する含窒素水溶性高分子としては、例えば、第四級アンモニウム塩が挙げられる。含窒素水溶性高分子としては、例えば、水溶性ナイロンなどの重縮合系ポリアミド、水溶性ポリエステルなどの重縮合系ポリエステル、重付加系ポリアミン、重付加系ポリイミン、重付加系(メタ)アクリルアミド、アルキル主鎖の少なくとも一部に窒素原子を有する水溶性高分子、側鎖の少なくとも一部に窒素原子を有する水溶性高分子などが挙げられる。なお、側鎖に窒素原子を有する水溶性高分子は、側鎖に第四級窒素を有する水溶性高分子も含む。重付加系の含窒素水溶性高分子の具体例としては、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピロリドン、ポリN−ビニルホルムアミド、ポリビニルカプロラクタム、ポリビニルピペリジンなどが挙げられる。また、含窒素水溶性高分子は、ビニルアルコール構造、メタクリル酸構造、ビニルスルホン酸構造、ビニルアルコールカルボン酸エステル構造、オキシアルキレン構造などの親水性を有する構造を部分的に有するものであってもよい。また、これらのジブロック型やトリブロック型、ランダム型、交互型といった複数種の構造を有する重合体であってもよい。含窒素水溶性高分子は、分子中の一部または全部にカチオンを持つもの、アニオンを持つもの、アニオンとカチオンとの両方を持つもの、ノニオンを持つのものいずれであってもよい。主鎖に窒素原子を含有するポリマーの例としては、N−アシルアルキレンイミン型モノマーの単独重合体および共重合体が挙げられる。N−アシルアルキレンイミン型モノマーの具体例としては、N−アセチルエチレンイミン、N−プロピオニルエチレンイミン等が挙げられる。ペンダント基に窒素原子を有するポリマーとしては、例えばN−(メタ)アクリロイル型のモノマー単位を含むポリマー、N−ビニル型のモノマー単位を含むポリマー等が挙げられる。ここで「(メタ)アクリロイル」とは、アクリルおよびメタクリルを包括的に指す意味である。例えば、N−(メタ)アクリロイルモルホリンの単独重合体および共重合体、N−ビニルピロリドンの単独重合体および共重合体等を採用し得る。なお、本明細書中において共重合体とは、特記しない場合、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等の各種の共重合体を包括的に指す意味である。
ポリビニルアルコールは、けん化度は特に限定されない。また、ポリビニルアルコールとして、第四級アンモニウム構造等の等のカチオン性基を有するカチオン化ポリビニルアルコールを使用してもよい。上記カチオン化ポリビニルアルコールは、例えば、ジアリルジアルキルアンモニウム塩、N−(メタ)アクリロイルアミノアルキル−N,N,N−トリアルキルアンモニウム塩等のカチオン性基を有するモノマーに由来するものであり得る。
セルロース誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどなどのセルロース誘導体およびプルランが挙げられる。セルロース誘導体の中でも、研磨された面に濡れ性を与える能力が高く、良好な洗浄性を有する点から、ヒドロキシエチルセルロースが好ましい。
デンプン誘導体としては、アルファ化デンプン、プルラン、シクロデキストリンなどが挙げられる。なかでもプルランが好ましい。
水溶性高分子の重量平均分子量は、研磨用組成物の分散安定性およびシリコン基板の洗浄性の観点から、ポリエチレンオキサイド換算で2,000,000以下であることが好ましく、より好ましくは1,000,000以下、さらに好ましくは500,000以下、最も好ましくは300,000以下である。また、研磨用組成物中の水溶性高分子の重量平均分子量は10,000以上であることが好ましく、20,000以上であることがより好ましく、30,000以上であることがさらに好ましい。
分子量が100,000以上の場合、研磨された面に濡れ性を与えるという観点で好ましい。そのような濡れ性を与える効果の高いものとしては、上記の窒素原子を含有するポリマーおよびセルロース誘導体などが好適である。他方で、分子量が100,000未満の場合、分散性効果の高いという点で好ましい。そのような分散性効果の高いものとしては、好ましくは、上記のオキシアルキレン単位を含むポリマー、窒素原子を含有するポリマー、さらに好ましくは、窒素原子を含有するポリマーである。
なお、研磨用組成物中の水溶性高分子の含有量(二種以上用いる場合はその合計量)としては、研磨面の濡れ性を向上させる観点から、好ましくは0.0001質量%以上であり、より好ましくは0.001質量%以上であり、さらに好ましくは0.005質量%以上である。他方で、研磨速度を向上させる観点から好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0.02質量%以下である。
上記のうち、特に、研磨用組成物中の水溶性高分子として、セルロース誘導体(例えばヒドロキシエチルセルロース)を用いる場合、ポリビニルピロリドンと併用するとよい。セルロース誘導体(例えばヒドロキシエチルセルロース)は、研磨された面に濡れ性を与える能力が高く、良好な洗浄性を有するという特性を有しているが、同時に砥粒への吸着が強いため凝集しやすいという性質も有している。この点、ポリビニルピロリドンは砥粒に対して競争吸着するため、ヒドロキシエチルセルロースのみの系と比較して砥粒同士の凝集力が弱まり、結果として分散性が向上すると考えられる、表面品質を向上させるだけでなく、濾過のフィルタの目詰まりも起こさないため好ましい。
他に、凝集をさせないという観点から、合成系水溶性高分子を用いることも好適である。かかる合成系水溶性高分子は、単独で用いても凝集をしにくく、濾過のフィルタの目詰まりも抑制することができる。合成系水溶性高分子の具体例は、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルチミン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルなどがある。
(塩基性化合物)
塩基性化合物は、研磨対象物の面を化学的に研磨する働き、および研磨用組成物の分散安定性を向上させる働きを有する。
塩基性化合物の具体例としては、アルカリ土類金属、アルカリ金属の水酸化物または塩、第四級アンモニウム化合物、アンモニア、アミンなどが挙げられる。
アルカリ土類金属としては、カルシウム、アルカリ金属としては、カリウム、ナトリウムなどが挙げられる。塩としては、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、酢酸塩などが挙げられる。より具体的には、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、および炭酸ナトリウムなどがある。
第四級アンモニウム化合物としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムなどの水酸化物または、塩化物、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの塩である。具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウムなどの水酸化テトラアルキルアンモニウム、炭酸テトラメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウムなどの水酸化テトラアルキルアンモニウム塩が挙げられる。
アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−メチルピペラジン、グアニジンなどが挙げられる。これらの塩基性化合物は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで、予備研磨用組成物における塩基性化合物としては、研磨速度向上の観点から、水酸化テトラメチルアンモニウムなどの水酸化第四級アンモニウム化合物を用いることが好ましい。また、予備研磨用組成物の塩基性化合物としては、研磨速度向上の観点から、炭酸塩または炭酸水素塩などを含むことが好ましく、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、または炭酸ナトリウムなどを含むことが好適である。さらに、水酸化第四級アンモニウム化合物と炭酸塩または炭酸水素塩との混合物を塩基性化合物として用いると、研磨用組成物が緩衝作用を持ち、研磨工程毎のpHの安定の観点から好ましい。
また、仕上げ研磨用組成物における塩基性化合物としては、研磨後の研磨対象物に付着して残らないという観点から、アルカリ土類金属、アルカリ金属、遷移金属を含まないものが好まれる。例えば水酸化第四級アンモニウム、アミン、アンモニアであることが好ましく、取り扱いのしやすさという観点から、水酸化第四級アンモニウム、アンモニアがさらに好ましく、アンモニアが最も好ましい。
研磨用組成物中の塩基性化合物の含有量(二種以上用いる場合はその合計量)は、0.005質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.007質量%以上である。塩基性化合物の含有量を増加させることによって、高い研磨速度が得られ易くなる。他方で、0.2質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以下である。塩基性化合物の含有量を減少させることによって、研磨対象物の端部の形状が維持され易くなる。
なお、最終研磨段に近づくにつれて、塩基性化合物の含有量を段階的に少なくしていくとよい。一例を示すと、予備研磨用組成物の塩基性化合物の含有量が最も多く、仕上げ研磨用組成物における塩基性化合物の含有量の好ましくは2〜10倍とする。
(水)
水は、他の成分を溶解または分散させる働きを有する。水は、他の成分の働きを阻害されることを極力回避するため、遷移金属イオンの合計含有量が100ppb以下とされることが好ましい。例えば、イオン交換樹脂を用いる不純物イオンの除去、フィルタによる異物の除去、蒸留などの操作によって水の純度を高めることができる。具体的には、例えば、イオン交換水、純水、超純水、蒸留水などを用いることが好ましい。
研磨用組成物のpHは8〜12の範囲が好ましく、より好ましくは9〜11の範囲である。再使用する際に、必要に応じてpHが上記範囲になるように調整してもよい。pHの調整には、公知のpH調整剤を用いてもよいし、塩基性化合物を用いてもよい。
(キレート剤)
研磨用組成物にはキレート剤を含有させることができる。研磨用組成物のキレート剤は、研磨用組成物中に元々含まれている金属不純物や研磨中に研磨対象物や研磨装置から生じる、あるいは外部から混入する金属不純物を捕捉して錯体を作ることで、研磨対象物への金属不純物の残留を抑制する。特に、研磨対象物が半導体の場合、金属不純物の残留を抑制することで半導体の金属汚染を防止し、半導体の品質低下を抑制する。
キレート剤としては、例えば、アミノカルボン酸系キレート剤および有機ホスホン酸系キレート剤が挙げられる。アミノカルボン酸系キレート剤の具体例としては、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
有機ホスホン酸系キレート剤の具体例としては、2−アミノエチルホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、エタン−1,1,−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸などが挙げられる。これらのキレート剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
キレート剤の中でも、有機ホスホン酸系キレートが好ましく、より好ましくはエチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)である。
研磨用組成物中のキレート剤の含有量は0.0001質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.0005質量%以上であり、さらに好ましくは0.005質量%以上である。キレート剤の含有量を増加させることによって、研磨対象物に残留する金属不純物を抑制する効果が高まる。また、研磨用組成物中のキレート剤の含有量は0.5質量%未満であることが好ましく、より好ましくは0.3質量%未満であり、さらにより好ましくは0.1質量%未満であり、最も好ましくは0.05質量%未満である。キレート剤の含有量を減少させることによって、研磨用組成物の保存安定性がより保たれる。
(界面活性剤)
界面活性剤は、研磨対象物の研磨面の荒れを抑制する。これにより、研磨面のヘイズレベルを低減することが容易となる。特に、研磨用組成物に塩基性化合物を含有させた場合には、塩基性化合物による化学的研磨(ケミカルエッチング)によって研磨対象物の研磨面に荒れが生じ易くなる傾向となる。このため、塩基性化合物と界面活性剤との併用は特に有効である。
界面活性剤としては、重量平均分子量が1000未満のものが好ましく、アニオン性またはノニオン性の界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の中でも、ノニオン性界面活性剤が好適に用いられる。ノニオン性界面活性剤は、起泡性が低いため、研磨用組成物の調製時や使用時の取り扱いが容易となる。また、例えばイオン性の界面活性剤を用いた場合よりも、pH調整が容易となる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシアルキレン重合体や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のポリオキシアルキレン付加物等や、複数種のオキシアルキレンの共重合体(ジブロック型、トリブロック型、ランダム型、交互型)が挙げられる。
具体的には、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンプロピルエーテル、ポリオキシエチレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンペンチルエーテル、ポリオキシエチレンヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミド、ポリオキシエチレンオレイルアミド、ポリオキシエチレンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンモノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンモノオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジオレイン酸エステル、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルチミン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。これらの界面活性剤の中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、特にポリオキシエチレンデシルエーテルが好適に用いられる。界面活性剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(防腐剤・防カビ剤)
研磨用組成物には防腐剤・防カビ剤を含ませることができる。防腐剤および防カビ剤の具体例としては、イソチアゾリン系化合物、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール等が挙げられる。
(添加剤)
研磨用組成物は、必要に応じて研磨用組成物に一般に含有されている公知の添加剤、例えば有機酸、有機酸塩、無機酸、無機酸塩、等をさらに含有してもよい。
有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等のモノカルボン酸、安息香酸、フタル酸等の芳香族カルボン酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸等のジカルボン酸、クエン酸、(メタ)アクリル酸(メタクリル酸ともいう)等のポリカルボン酸、並びに、有機スルホン酸、および有機ホスホン酸が挙げられる。有機酸塩としては、例えば、有機酸のナトリウム塩およびカリウム塩等のアルカリ金属塩、またはアンモニウム塩が挙げられる。
無機酸としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、および炭酸が挙げられる。無機酸塩としては、無機酸のナトリウム塩およびカリウム塩等のアルカリ金属塩、またはアンモニウム塩が挙げられる。
有機酸およびその塩、並びに無機酸およびその塩は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、上記で説明した研磨用組成物は、一剤型であってもよいし、二剤以上から構成する多剤型であってもよい。また、上記で説明した研磨用組成物は、そのまま研磨に使用されてもよいし、研磨用組成物の濃縮液を、水を加えて希釈する、あるいは多剤型の研磨用組成物の場合は水と構成成分の一部を含有する水溶液で希釈することにより調製して研磨に使用されてもよい。例えば、研磨用組成物の濃縮液を保管または輸送した後に、使用時に希釈して研磨用組成物を調製することができる。すなわち、ここに開示される技術における研磨用組成物の概念には、研磨対象物に供給されて該研磨対象物の研磨に用いられる研磨液(ワーキングスラリー)と、希釈して研磨液として用いられる濃縮液(研磨液の原液)との双方が包含される。
濃縮された形態の研磨用組成物は、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から有利である。濃縮倍率は、例えば、体積換算で2倍〜100倍程度とすることができ、通常は5倍〜50倍程度が適当である。好ましい一態様に係る研磨用組成物の濃縮倍率は10倍〜40倍であり、例えば15倍〜25倍である。
<研磨条件:研磨装置の設定条件>
続いて、研磨条件について説明する。
研磨装置の回転速度は、適宜選択することができるが、予備研磨工程では、両面研磨装置が好適に使用でき、通常10〜50rpm程度であり、好適には15〜20rpm程度である。この際、上部回転定盤と下部回転定盤との回転速度は別であってもよいが、通常はウエハに対して同じ相対速度に設定される。また、仕上げ研磨工程では、片面研磨装置が好適に使用でき、通常10〜100rpm程度であり、好適には20〜50rpm程度であり、より好適には25〜50rpm程度である。このような回転速度であると、研磨対象物の表面のヘイズレベルを顕著に低減することができ、また、欠陥を有意に低減させることができ、ESFQRの数値を改善させることができる。また、上記のように、研磨対象物は、通常、定盤により加圧されている。この際の圧力は、適宜選択することができるが、予備研磨工程では、通常50〜250g/cm2程度が好ましく、100〜200g/cm2程度であることがより好ましい。また、仕上げ研磨工程の場合、通常50〜250g/cm2程度が好ましく、100〜150g/cm2程度であることがより好ましい。このような圧力であると、研磨対象物の表面のヘイズレベルを顕著に低減することができ、また、欠陥を有意に低減させることができ、ESFQRの数値を改善させることができる。
また、研磨用組成物の供給速度も定盤のサイズに応じて適宜選択することができるが、経済性を考慮すると、予備研磨工程の場合、通常1〜10L/分程度が好ましく、好適には2〜5L/分程度である。仕上げ研磨工程の場合、通常0.1〜5L/分程度が好ましく、好適には0.5〜2L/分程度である。かような供給速度により、研磨対象物の表面を効率よく研磨し、研磨対象物の表面のヘイズレベルを顕著に低減することができ、また、欠陥を有意に低減させることができ、ESFQRの数値を改善させることができる。
また、研磨用組成物の研磨装置における保持温度としても特に制限はないが、研磨速度の安定性、ヘイズレベルの低減といった観点から、いずれも通常15〜40℃程度が好ましく、18〜25℃程度がより好ましい。
なお、研磨量については、最終研磨段に近づくにつれ、段階的に、研磨によって除去される研磨取りしろ(研磨量)を少なくするように設定することがよい。予備研磨工程では高い研磨能力が必要となるが、より最終に近い研磨段では研磨能力よりも面の精度を高める必要があり、同じ研磨時間の場合、仕上げ研磨用組成物を予備研磨工程で用いると、通常、研磨量は1/10〜1/15程度になる。よって、具体的な研磨量について、一実施形態では、予備研磨工程においては通常5〜25μm程度であり、あるいは10〜20μm程度である。また、仕上げ研磨が3段階ある場合、1段目では0.1〜0.5μm程度であり、2段目では0.01〜0.2μm程度であり、3段目では0.01〜0.1μm程度である。
また、本発明の一実施形態で、再使用するための研磨用組成物は、通常、0.2μm以下の研磨量であったものが好ましく、より好ましくは0.1μm以下の研磨量であり、さらに好ましくは0.05μm以下の研磨量である。このように研磨量が少なかった研磨用組成物を再使用することによって未使用の研磨用組成物で研磨する場合と同様に高品質な半導体基板を連続的に製造することができ、研磨用組成物の調達コストおよび廃棄コストの低減や、環境保護という課題も解決できる。なお、この場合、現実としては0.01μm以上の研磨量であり、あるいは0.02μm以上の研磨量である。
なお、上記の研磨条件(研磨装置の設定)に関しては単に一例を述べただけであり、上記の範囲を外れてもよいし、適宜設定を変更することもできる。このような条件は当業者であれば適宜設定可能である。
最後にリンス工程について説明する。リンス工程で使用されるリンス用組成物は、基本的に上記で説明した研磨用組成物の説明が同様に妥当される。
本発明の一実施形態においては、リンス工程が行われる研磨段に1を足した研磨段で使用する予定の研磨用組成物と同じ組成や、かかる組成から砥粒を除いた組成や、または、かかる組成の水量を低減させたものを好適に使用できる。
本発明の一実施形態においては、リンス工程が行われる研磨段から1を引いた研磨段で使用する研磨用組成物と同じ組成や、かかる組成から砥粒を除いた組成や、または、かかる組成の水量を低減させたものを好適に使用できる。
本発明の一実施形態においては、リンス工程の研磨条件は、段階的に研磨対象物の表面精度を高める観点から、リンス工程が行われる研磨段から1を引いた研磨段の研磨条件と同じであることが好ましい。
なお、本発明の一実施形態において、研磨対象物の表面のLine状PID個数は、少なければ少ないほど好ましいが、好ましくは30個以下であり、より好ましくは25個未満であり、さらに好ましくは20個以下であり、さらにより好ましくは15個以下であり、特に好ましくは10個以下であり、さらに特に好ましくは6個以下である。なお、本発明のLine状PID個数は実施例に記載の測定方法によって算出された値を言うものとする。
また、本発明の一実施形態において、研磨対象物の表面の37nm以下のLLS個数は、好ましくは70個以下であり、より好ましくは50個以下であり、より高品質を求めるのであれば、好ましくは40個以下、35個以下、30個以下、25個以下あるいは20個以下である。少なければ少ないほど好ましい。なお、本発明のLLS個数は実施例に記載の測定方法によって算出された値を言うものとする。
また、本発明の一実施形態において、研磨対象物の表面のヘイズ(相対値)は、小さければ小さいほどよく、具体的には、32以下、30以下、28以下、26以下、25以下、24以下、23以下、22以下、21以下、20以下、19以下である。ただし、実質的な下限は10程度である。なお、ヘイズ(相対値)は、実施例に記載の測定方法によって算出された値を言うものとする。
次に、実施例および比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
<予備研磨用組成物>
予備研磨用組成物は、コロイダルシリカ(BET粒子径50nm、平均二次粒子径100nm)0.6質量%と;水酸化テトラメチルアンモニウム0.05質量%と;炭酸カリウム0.03質量%と;をイオン交換水に混合することによって調製した。
<リンス用組成物の調製>
リンス用組成物は、コロイダルシリカ(BET粒子径35nm、平均二次粒子径70nm)0.45質量%と;ヒドロキシエチルセルロース(重量平均分子量(ポリエチレンオキサイド換算):500000)0.012質量%と;アンモニア0.03質量%と;をイオン交換水に混合することによって調製した。
<仕上げ研磨用組成物1の調製>
仕上げ研磨用組成物1は、コロイダルシリカ(BET粒子径35nm、平均二次粒子径70nm)0.45質量%と;ヒドロキシエチルセルロース(重量平均分子量(ポリエチレンオキサイド換算):500000)0.012質量%と;アンモニア0.03質量%;をイオン交換水に混合することによって調製した。
<仕上げ研磨用組成物2の調製>
仕上げ研磨用組成物2は、コロイダルシリカ(BET粒子径35nm、平均二次粒子径70nm)0.45質量%と;ヒドロキシエチルセルロース(重量平均分子量(ポリエチレンオキサイド換算):250000)0.016質量%と;ポリビニルピロリドン(重量平均分子量(ポリエチレンオキサイド換算):45000)0.005質量%と;アンモニア0.01質量%と;をイオン交換水に混合することによって調製した。
<仕上げ研磨用組成物3の調製>
仕上げ研磨用組成物3は、コロイダルシリカ(BET粒子径35nm、平均二次粒子径70nm)0.45質量%と;ヒドロキシエチルセルロース(重量平均分子量(ポリエチレンオキサイド換算):250000)0.016質量%と;ポリビニルピロリドン(質量平均分子量(ポリエチレンオキサイド換算):45000)0.005質量%と;アンモニア0.01質量%と;をイオン交換水に混合することによって調製した。
<仕上げ研磨用組成物2Aの調製>
仕上げ研磨用組成物2Aは、コロイダルシリカ(BET粒子径35nm、平均二次粒子径70nm)0.45質量%と;ヒドロキシエチルセルロース(重量平均分子量(ポリエチレンオキサイド換算):250000)0.016質量%と;アンモニア0.01質量%;をイオン交換水に混合することによって調製した。
<仕上げ研磨用組成物3Aの調製>
仕上げ研磨用組成物3Aは、コロイダルシリカ(BET粒子径35nm、平均二次粒子径70nm)0.45質量%と;ヒドロキシエチルセルロース(重量平均分子量(ポリエチレンオキサイド換算):250000)0.016質量%と;アンモニア0.01質量%と;イオン交換水に混合することによって調製した。
なお、“BET粒子径”および“平均二次粒子径”は、それぞれ、マイクロメリテックス社製の“Flow SorbII 2300”を用いて測定した比表面積(BET法)から算出した平均一次粒子径および平均二次粒子径を示す。
<参考例1>
予備研磨用組成物を用いて、シリコンウエハ(直径が300mm、伝導型がP型、結晶方位が<100>、抵抗率が1Ω・cm以上100Ω・cm未満)を、表2に記載の研磨条件1で両面研磨を1回行い、予備研磨を経たシリコンウエハを得た。
当該予備研磨を経たシリコンウエハを、リンス用組成物を用いて、表2に記載の研磨条件1で両面研磨を1回行い(ただし研磨時間は3分とする)、予備研磨を経て、リンス研磨も経た、シリコンウエハを得た。
このシリコンウエハを、仕上げ研磨用組成物1を用いて表2に記載の研磨条件2で片面研磨を1回行い、仕上げ研磨用組成物2を用いて表2に記載の研磨条件3で片面研磨を1回行い、最後に、仕上げ研磨用組成物3を用いて表2に記載の研磨条件4で片面研磨を1回行うことによって、研磨済シリコンウエハを得た。結果を表1に示す。
<参考例2>
仕上げ研磨用組成物2を仕上げ研磨用組成物2Aに変更し、仕上げ研磨用組成物3を仕上げ研磨用組成物3Aに変更した以外は、参考例1と同様にして、研磨済シリコンウエハを得た。結果を表1に示す。
<実施例1>
第4段の研磨で、参考例1の第5段で使用された研磨用組成物を濾過したものを使用した以外は、参考例1と同様にして、研磨済シリコンウエハを得た。結果を表1に示す。
なお、濾過の条件は、表3に示している。結果、通液量は2.88mL/mm2であり、濾過速度Rは、0.576mL/(分・mm2)であった。実施例2〜6においても、同様の濾過条件で行い、同様の結果となった。
<実施例2>
第3段の研磨で、参考例1の第5段で使用された研磨用組成物を濾過したものを使用した以外は、参考例1と同様にして、研磨済シリコンウエハを得た。結果を表1に示す。
<実施例3>
第3段の研磨で、参考例1の第4段で使用された研磨用組成物を濾過したものを使用した以外は、参考例1と同様にして、研磨済シリコンウエハを得た。結果を表1に示す。
<実施例4>
第3段の研磨で、参考例1の第4段で使用された研磨用組成物を濾過したものを使用し、
第4段の研磨で、参考例1の第5段で使用された研磨用組成物を濾過したものを使用した以外は、参考例1と同様にして、研磨済シリコンウエハを得た。結果を表1に示す。
<実施例5>
第2段の研磨で、参考例1の第5段で使用された研磨用組成物を濾過したものを使用した以外は、参考例1と同様にして、研磨済シリコンウエハを得た。結果を表1に示す。
<実施例6>
第2段の研磨で、参考例1の第4段で使用された研磨用組成物を濾過したものを使用した以外は、参考例1と同様にして、研磨済シリコンウエハを得た。結果を表1に示す。
<実施例7>
濾過を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、研磨済シリコンウエハを得た。結果を表1に示す。
<仕上げ研磨トータルでの研磨速度>
研磨速度は、KLAテンコール社製のシリコンウエハ平坦度測定装置WaferSight2を用いて研磨前および研磨後のシリコンウエハ平均厚みを引き算し、それを研磨時間(分)で除した数値により算出し、さらに参考例1を100とした相対値で表した。なお、「仕上げ研磨トータルでの研磨速度」は、第3段〜第5段までの研磨速度を相加することによって算出している。
<Line状 PID個数>
Line状PID個数は、レーザーテック社製のウエハ検査装置“MAGICS M5350”を用いて測定し、ウエハ全面(ただし外周5mmは除く)に存在する合計欠陥個数のうちLine状となる欠陥個数をカウントした。
<LLS個数>
LLS(Localized Light Scatters)の個数は、ケーエルエー・テンコール社製のウエハ検査装置“Surfscan SP2”を用いて、ウエハ全面(ただし外周2mmは除く)に存在する欠陥個数をカウントした。
<ヘイズ(相対値)>
表1の“ヘイズ(相対値)”欄には、研磨した後のシリコンウエハ表面におけるヘイズレベルを測定した結果を示す。具体的には、ケーエルエー・テンコール社製のウエハ検査装置“Surfscan SP2”を用いて測定した。
<原液使用量(相対値);削減率>
原液使用量(相対値)は、1枚のシリコンウエハを研磨するのに必要とした原液の量である。
参考例1を100%とした削減率として表すと、再使用する段が多くなると、削減率が上がることが分かる(実施例4)。なお、それぞれの研磨段で使用する研磨用組成物の量は異なるため、値が変わりうる(実施例5、6はリンス研磨で再使用しており、それら以外は、仕上げ研磨で再使用している)。