以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。全図を通じて同一の要素には同一の符号を付す。また、本発明の実施の形態の説明及び図面では、上・下・前・後・左・右の用語を用いるが、これらは、方向を説明するために用いるのであって、本発明を限定する趣旨ではない。
<実施の形態1>
(インダクタ100の構成)
本発明の実施の形態1に係るインダクタ100は、斜視図である図1、分解斜視図である図2、平面図である図3、図3のIV−IV線における断面図である図4に示すように、磁性コア101と、複数の永久磁石102と、ホルダ103と、導体104とを備える。
ここで、図1では、磁性コア101を透視して示している。図2では、永久磁石102はホルダ103に保持された状態を示す。図4(a)はインダクタ100全体の断面図、図4(b)は(a)の一点鎖線DL1で囲んだ部分を拡大した断面図である。
インダクタ100は、永久磁石102によるバイアス効果を利用するインダクタであり、例えば導体104を流れる電流のノイズ抑制に利用される。インダクタ100は、大電流が流れる導体104に特に好適である。ここでの大電流とは、例えば、200〜400[A]程度である。
磁性コア101は、概ね角筒状の磁性体であって、前方から見て矩形の第1貫通孔105が前後方向に貫通している。磁性コア101は、例えばフェライトによって構成される。
なお、磁性コア101は第1貫通孔105が設けられていればよく、例えば円筒状であってもよい。前方から見た磁性コア101の外形及び第1貫通孔105の形状は、矩形に限られず、その他の多角形、円形、楕円形などであってもよく、両者が異なる形状であってもよい。
磁性コア101は、概ね上下方向に間隔を空けて互いに対向するスリット面部106を右方の側壁に含む。
上方及び下方のスリット面部106は、それぞれ、下方及び上方を向く平面を形成している。このようなスリット面部106によってスリットが右方の側壁に形成されており、当該スリットは、磁性コア101の右方の側壁を左右方向に貫通して第1貫通孔105を外部に接続する。
なお、本実施の形態に係るスリット面部106が形成する面は、平面に限られず、全体的に又は部分的に湾曲又は屈曲していてもよい。
スリット面部106は、磁性コア101の前後方向の全体にわたって延びることによって磁性コア101を前後方向に貫通している。従って、本実施の形態に係るスリットは、左右方向の各端部だけでなく、前後方向の各端部も開放している。
複数の永久磁石102は、細長い矩形平板状の4つの焼結磁石から構成される。複数の永久磁石102は、ホルダ103に保持されることでスリット面部106の間においてスリット面部106の各々から離間して配置されている。本実施の形態では、複数の永久磁石102は、上下方向にスリット面部106の概ね中央に配置される。
複数の永久磁石102は、スリット面部106の概ね全面を通じて磁性コア101の内部に磁場を形成するように配置されている。そのため、本実施の形態に係る複数の永久磁石102は、全体の外形が上方から見てスリット面部106と概ね一致するように、各々の長さ方向を前後方向に向けて左右方向に等間隔で並べられている。
また、複数の永久磁石102は、各々によって磁性コア101の内部に形成される磁束の方向が同じ方向になるように磁極の極性を揃えて配置される。本実施の形態では、永久磁石102の各々の上面がN極の磁極である。これによって、永久磁石102によって磁性コア101の内部に形成される磁束の方向は、図4の矢印MFで示すように前方から見て左回りになる。
なお、永久磁石102は、焼結磁石に限られず、ボンド磁石、プラスチックマグネットなどであってもよい。
ホルダ103は、複数の永久磁石102及び導体104を保持する絶縁性の部材であって、磁性コア101の第1貫通孔105及びスリットに配置される。ホルダ103は、例えば、樹脂で一体的に形成される。なお、例えば絶縁層が設けられるなどの絶縁処理が導体104の表面に施されている場合には、ホルダ103は、導電性の材料で作られていてもよい。
詳細には、ホルダ103は、斜視図である図5(a),(b)に示すように、筒状部107と、延在部108と、第1係止部109と、第2係止部110と、弾性部111と、導体押圧部112とを含む。
ここで、図5(a)はホルダを左斜め上前方から見た図であり、図5(b)はホルダを左斜め上後方から見た図である。
筒状部107は、前後方向に貫通する第2貫通孔113が設けられた概ね角筒状の部位であり、第1貫通孔105に配置される。本実施の形態に係る第2貫通孔113は、前方から見て概ね矩形である。
なお、本実施の形態に係る筒状部107は、第1貫通孔105と第2貫通孔113との貫通方向を揃えて第1貫通孔105に配置できる形状の筒状であればよく、その外形は前方から見て矩形に限られない。また、第2貫通孔113を前方から見た形状は、矩形に限られず、その他の多角形、円形などであってもよい。
より詳細には、筒状部107は、第2貫通孔113を形成する内面部に、第2貫通孔113へ突き出す比較的小さな略四角柱状の第1突部114、第2突部115及び第3突部116を有する。
ここで、本実施の形態に係る第2貫通孔113は、上述の通り前方から見て概ね矩形であるため、これを形成する内面部は、上下左右それぞれの上内面部、下内面部、左内面部及び右内面部から構成される。
第1突部114及び第2突部115は、上内面部に設けられて下方に突き出しており、前端中央及び後端中央にそれぞれ設けられる。第3突部116は、下内面部の後端中央に設けられて上方へ突き出す。従って、第1突部114と第2突部115とは前後方向に並んでおり、第2突部115と第3突部116とは上下方向に互いに対向している。
なお、第1突部114、第2突部115及び第3突部116の形状は、四角柱状に限られず、その他の柱状、半球状などであってもよい。また、第1突部114、第2突部115及び第3突部116が設けられる箇所は、内面部の前後の端部に限られず、内面部の前後の端部近傍に設けられればよい。
ここで、「近傍」とは、ある箇所(例えば端部近傍の場合は、端部)及び当該箇所から予め定められた距離離れた箇所を意味する。
延在部108は、筒状部107の右方の外面部に設けられた概ね矩形平板状の部位であり、当該外面部の上下方向の概ね中央で右方へ延びる。これにより、延在部108は、スリット面部106の間(すなわち、スリット)に配置される。なお、延在部108は、スリットに配置できる形状であればよく、矩形平板状に限られない。
より詳細には、延在部108は、上方を向く主面に4つの永久磁石102を配置するための凹部117を含む。
本実施の形態に係る凹部117は、前後方向に長い溝を形成する4つの磁石用溝部118を含む。4つの永久磁石102は、磁石用溝部118のそれぞれに嵌め込まれることによって、左右方向に等間隔で並んで延在部108に保持される。
図4(b)に示すように、凹部117の深さH1は、永久磁石102の厚さMtよりも深い。そのため、永久磁石102の上面は、上方のスリット面部106と互いに接触することなく離間している。
また、永久磁石102の下面は磁石用溝部118の底部に覆われるので、永久磁石102の下面と下方のスリット面部106との間には延在部108が介在する。そのため、永久磁石102の下面は、下方のスリット面部106と互いに接触することなく離間している。
第1係止部109は、筒状部107の前端近傍の外表面から外方へ突き出す部位である。第1係止部109は、磁性コア101の前面(前方の外表面)のうちの前端開口部の周囲に係止される。「前端開口部」は、磁性コア101の第1貫通孔105の前端を形成する部位である。
第2係止部110は、筒状部107の後端近傍の外表面よりも外方へ突き出す部位である。本実施の形態に係る第2係止部110は、詳細後述する弾性部111の弾性によって、係止位置と解除位置との間を左右方向に変位可能に構成される。
係止位置の第2係止部110は、上述の通り、筒状部107の後端近傍の外表面よりも外方へ突き出しており、これによって磁性コア101の後面(後方の外表面)のうちの後端開口部の周囲に係止される。
「後端開口部」は、磁性コア101の第1貫通孔105の後端を形成する部位である。
第2係止部110が係止位置にあるとき、第1係止部109及び係止位置の第2係止部110が磁性コア101の前端開口部の周囲と後端開口部の周囲に係止されるので、ホルダ103は、磁性コア101に対して固定される。
解除位置の第2係止部110は、係止位置から内方(本実施の形態では、右方)へ変位することによって、その左端と筒状部107の右方の外表面との幅(左右方向の長さ)が第1貫通孔105の幅(左右方向の長さ)以下となる。そのため、解除位置の第2係止部110は、磁性コア101の後端開口部に係止されず、ホルダ103を磁性コア101に着脱することができる。
弾性部111は、筒状部107の左壁部に設けられた片持ち梁状の部位であって、その後端に第2係止部110が接続している。弾性部111は、弾性を有することによって、上述の通り第2係止部110を係止位置と解除位置との間で変位させる。
より詳細には、筒状部107の左壁部には上下方向に並んで概ね平行に後端から前方へ延びる一対の切込みが設けられており、弾性部111は、この一対の切込みの間に形成されている。従って、弾性部111は、筒状部107の左壁部に接続する前端を固定端とし、後端を自由端とする片持ち梁状である。
第2係止部110に外力が加わっていないとき、第2係止部110は係止位置に位置付けられる。そして、内方(本実施の形態では右方)へ押圧する外力を第2係止部110に加えると弾性部111が撓むことによって、第2係止部110を解除位置に位置付けることができる。
なお、第1係止部109が、第2係止部110と同様に変位可能に構成されてもよい。
導体押圧部112は、図4(a)及び図5(a),(b)に示すように、下内面部の概ね中央に設けられて上方へ突き出す低い突起である。導体押圧部112は、第2貫通孔113に配置された導体104(詳細後述)の下面を押圧する。これによって、導体104が第2貫通孔113から抜け出すことを防止することができる。
なお、導体押圧部112は、第2貫通孔113に配置された導体104を押圧できるように内面部に設けられればよく、その位置は適宜変更されてもよい。
導体104は、図1〜3及び図4(a)に示すように、他の導体など(図示せず)に接続される前後方向に長い角棒状の部材であって、例えば銅などの金属から構成される。
本実施の形態では、導体104は第2貫通孔113を貫通して配置され、筒状部107は上述の通り第1貫通孔105に配置される。従って、本実施の形態に係る導体104は、筒状部107が磁性コア101との間に介在した状態で第1貫通孔105に配置されるので、筒状部107により磁性コア101と絶縁される。
なお、導体104は、前後方向に第2貫通孔113を貫通できればよく、その形状は角棒状に限られず、多角柱状、円柱状などであってもよい。
詳細には、導体104は、斜視図である図6に示すように、第1ボルト穴119と、第2ボルト穴120と、第1溝部121と、第2溝部122とを有する。
第1ボルト穴119と第2ボルト穴120とは、導体104を他の導体などに固定して接続するためのボルト(図示せず)を貫通した状態で配置するための貫通孔である。第1ボルト穴119は、導体104の前端近傍に設けられ、第2ボルト穴120は、導体104の後端近傍に設けられる。
本実施の形態に係る第1ボルト穴119と第2ボルト穴120とは、いずれも円柱状であり、第1ボルト穴119は第2ボルト穴120よりも径が大きい。
第1溝部121は、導体104の上面にその後端中央から前方へ導体104全体よりも短い長さで延びる溝を形成する部位である。導体104が第2貫通孔113に配置された状態では、第1突部114及び第2突部115が第1溝部121に嵌まり、第1溝部121の前端が第1突部114に接触する。
第2溝部122は、導体104の下面にその後端中央から前方へ第1溝部121よりも短い長さで延びる溝を形成する部位である。導体104が第2貫通孔113に配置された状態では、第3突部116が第2溝部122に嵌まり、第2溝部122の前端が第3突部116に接触する。
これまで、本発明の実施の形態1に係るインダクタ100の構成について説明した。ここから、本実施の形態に係るインダクタ100の使用方法について説明する。
(インダクタ100の使用方法)
インダクタ100では、導体104に電流が流れると、電流による磁束と永久磁石102による磁束とが形成される。「電流による磁束」は、導体104を流れる電流によって磁性コア101の内部に形成される磁束である。「永久磁石102による磁束」は、永久磁石102の自発磁化によって磁性コア101の内部に形成される磁束である。
永久磁石102によるバイアス効果を利用するには、電流による磁束と永久磁石102による磁束が逆方向であることが必要である。仮に両磁束が同方向であると、磁性コア101は、永久磁石102を設けない場合よりも低電流域で磁気飽和し、インダクタ100の電流重畳特性が低下するためである。
すなわち、バイアス効果を利用したインダクタ100では、永久磁石102による磁束の方向に応じて、第1ボルト穴119及び第2ボルト穴120のそれぞれに接続されるべき電極の極性が定まる。
本実施の形態では、上述したようにN極を上方へ向けて永久磁石102を配置する。そのため、永久磁石102による磁束の方向は、上述した通り前方から見て左回りになり(図4(a)参照)、導体104には前方から後方へ(図4(a)では紙面手前から奥方へ)電流を流す必要がある。
本実施の形態では、第1ボルト穴119を前方に配置し、第2ボルト穴120を後方に配置するので、インダクタ100は使用時には、第1ボルト穴119には正極側が接続され、第2ボルト穴120には負極側が接続される。
本実施の形態では、第1ボルト穴119と第2ボルト穴120とは、孔の大きさが異なるので、これらの大きさを見ることで、それぞれに正負いずれの電極を接続すればよいかを容易に判別することができる。このように、第1ボルト穴119と第2ボルト穴120とは、導体104の各端部近傍に接続される電極の極性を示す極性提示部として機能する。
これまで、本発明の実施の形態1に係るインダクタ100の使用方法について説明した。本実施の形態に係るインダクタの製造方法について説明する。
(インダクタの製造方法)
本実施の形態に係るインダクタの製造方法は、インダクタ100を製造するための方法であって、その流れを示す図7を参照して説明する。インダクタの製造方法は、例えば、磁性コア101、4つの永久磁石102、ホルダ103及び導体104を準備した後に開始される。
図7に示すように、永久磁石102がホルダ103に取り付けられる(工程1)。
詳細には、永久磁石102がN極を上方へ向けて、各磁石用溝部118に嵌め込まれる。これによって、永久磁石102がホルダ103に取り付けられ、図8の斜視図に示すように永久磁石102を保持したホルダ103が作製される。
工程1において永久磁石102は、接着剤、両面テープ、圧入などによって磁石用溝部118に固定されるとよい。
次に、ホルダ103は、その後方を先頭として、筒状部107及び延在部108が第1貫通孔105及びスリットのそれぞれに嵌まるように磁性コア101の前方から挿入される。これにより、図7に示すように、磁性コア101に取り付けられる(工程2)。
詳細には、ホルダ103が磁性コア101に接触するまでは、第2係止部110は係止位置にあるとよい。筒状部107及び延在部108が第1貫通孔105及びスリットのそれぞれに嵌まるようにホルダ103を磁性コア101に近づけると、第2係止部110の後端近傍が、磁性コア101の前端開口部に接触する。
ここで、第2係止部110は、図5に示すように、後端から前方へ向かって、筒状部107の外表面から外方に突き出す量が大きくなるように傾斜している。
そのため、第2係止部110が磁性コア101の前端開口部に接触してから、さらに後方へホルダ103を押し込むと、第2係止部110が磁性コア101の前端開口部から力を受けて、弾性部111が撓む。これにより、第2係止部110は解除位置に位置付けられる。
さらに後方へホルダ103を押し込むと、第2係止部110は、第1貫通孔105を形成する第1貫通孔部から力を受ける。そのため、第2係止部110は、解除位置に位置付けられた状態を保って第1貫通孔105を通過する。
その後、第1係止部109が磁性コア101の前端開口部の周囲に接触するまでホルダ103が押し込まれると、第2係止部110が第1貫通孔105の後端から抜け出る。このとき、弾性部111の弾性力によって、第2係止部110は係止位置に戻る。
その結果、第1係止部109と第2係止部110との間に磁性コア101を挟むことになるので、ホルダ103は、筒状部107及び延在部108が第1貫通孔105及びスリットのそれぞれに配置された状態で磁性コア101に固定される。凹部117の深さH1は、上述の通り永久磁石102の厚さMtよりも深いので、4つの永久磁石102は、スリット面部106の間において当該スリット面部106の各々から離間した状態で配置される。
なお、ホルダ103を磁性コア101から取り外す場合には、第2係止部110を手や治具などで押圧することによって解除位置に第2係止部110を変位させて、ホルダ103を前方へ押せばよい。
続けて、導体104が第2貫通孔113に挿入される。これにより、図7に示すように、導体104がホルダ103に取り付けられる(工程3)。
ここで、図9は、本実施の形態において導体104がホルダ103に正しく取り付けられた状態(以下、単に「正しい取付状態」という。)を示す図である。同図では、図を簡明にするため磁性コア101を省略している。また、図1,3及び4に示すインダクタ100では、導体104が正しい取付状態で取り付けられている。
正しい取付状態は、第1ボルト穴119及び第2ボルト穴120を極性提示部として機能させることができる導体104の状態である。
すなわち、正しい取付状態では、第1ボルト穴119及び第2ボルト穴120が完全に露出しているので、これらのボルト穴119,120を利用して導体104を他の導体などに接続できる。また、正しい取付状態では、第1ボルト穴119はホルダ103の前方に位置し、第2ボルト穴120はホルダ103の後方に位置している。これにより、第1ボルト穴119及び第2ボルト穴120のそれぞれを、上述の通り、予め定められた正極側及び負極側を示す極性提示部として機能させることができる。
仮に、第1ボルト穴119及び第2ボルト穴120は、これらの磁性コア101に対する前後の位置関係を誤った状態で導体104が取り付けられると、極性提示部として機能しなくなる。
本実施の形態に係る筒状部107では、前方に1つの突部(第1突部114)が設けられ、後方に2つの突部(第2突部115及び第3突部116)が設けられている。また、導体104には、一端のみが開放した溝を形成する溝部(第1溝部121及び第2溝部122)が設けられている。
これにより、導体104を第2貫通孔113に挿入させることができる方向が規定され、その結果、ほぼ間違えることなく正しい取付状態で導体104をホルダ103に取り付けることができる。すなわち、突部114〜116と溝部121〜122とは、正しい取付状態で取り付けるために導体104が挿入される方向を示す方向提示部として機能する。
この点、図10(a)〜(c)を参照して説明する。図10は、導体104を誤った向きで第2貫通孔113に挿入した状態を示す斜視図であり、(a)は導体104の上下方向の向きを誤った場合を示し、(b)は導体104の前後方向の向きを誤った場合を示し、(c)は導体104の上下方向及び前後方向の向きを誤った場合を示す。
導体104を第2貫通孔113に挿入するには、突部114〜116を溝部121〜122に嵌め込む必要がある。そのため、工程3にて導体104を挿入する際の先頭は、導体104の端部のうち溝部121〜122の開放端を含む端部、すなわち本実施の形態では導体104の後端に定まる。
そして、導体104がその上下方向の向きを誤った状態で第2貫通孔113に挿入されたとする。すなわち、導体104が、その後端を先頭として第1溝部121を下方に向けた状態で第2貫通孔113の前方から第2貫通孔113に挿入されたとする。この場合、導体104が第2貫通孔113の後端から突き出る前に、第2溝部122が第1突部114に係止される。そのため、図10(a)に示すように、導体104は第2貫通孔113を貫通することができない。
また導体104が第2貫通孔113にその前後誤った方向から挿入されたとする。すなわち、導体104が、その後端を先頭として第1溝部121を上方に向けた状態で第2貫通孔113の後方から第2貫通孔113に挿入されたとする。この場合、導体104が第2貫通孔113の前端から突き出る前に、第2溝部122が第3突部116に係止される。そのため、図10(b)に示すように、導体104は第2貫通孔113を貫通することができない。
さらに導体104がその上下方向の向きを誤った状態で第2貫通孔113にその前後誤った方向から挿入されたとする。すなわち、導体104が、その後端を先頭として第1溝部121を下方に向けた状態で第2貫通孔113の後方から第2貫通孔113に挿入されたとする。この場合、導体104が第2貫通孔113の前端から突き出る前に、第2溝部122が第2突部115に係止される。そのため、図10(c)に示すように、導体104は第2貫通孔113を貫通することができない。
このように、本実施の形態では、導体104の後端を先頭として、第1溝部121を上方に向けて第2貫通孔113の前方から挿入した場合にのみ、正しい取付状態で導体104をホルダ103に取り付けることができる。従って、上述の通り、ほぼ間違えることなく正しい取付状態で導体104をホルダ103に取り付けることができる。
また工程3において、導体104を第2貫通孔113に挿入する途中で、導体押圧部112が導体104の下面に接触する。導体押圧部112は、導体104の挿入を阻害しない程度に低くなだらかに設けられており、導体104は、導体押圧部112と接触しながら、その上方を通過する。
そのため、工程3を経て第2貫通孔113に配置された導体104は、導体押圧部112に下方から押圧されることになる。これにより、導体104は、上内面部と導体押圧部112とに挟まれて、容易に抜け出さないように筒状部107に保持される。
このように、導体104が挿入されることで、本実施の形態に係るインダクタ100(例えば、図1参照)が完成する。
これまで、本発明の実施の形態1について説明した。
本実施の形態では、スリット面部106の間に配置された永久磁石102を備える。これにより、磁性コア101は、導体104に流れる電流が比較的大きくなっても永久磁石102のバイアス効果によって磁気飽和し難くなる。そのため、インダクタ100を小型化することができる。
また、本実施の形態では、永久磁石102は、ホルダ103に保持されて、スリット面部106の各々から離間して配置される。すなわち、永久磁石102は、スリット面部106と接触しないように配置される。
ここで、本実施の形態とは異なり、永久磁石102がスリット面部106に接触して配置されたインダクタを大電流(例えば、200〜400[A])に適用した場合について、発明者はシミュレーションを行った。このシミュレーションの結果(図示せず)によれば、0[A]から大電流までのうち特に低電流域でインダクタンスの変化が大きくなる。これは、永久磁石102がスリット面部106に接触した部分の近傍で永久磁石102の磁場の影響が強くなり、磁性コア101が部分的に磁気飽和してしまうためと考えられる。
これに対して、スリット面部106の間でこれらに接触しないように永久磁石102を配置した本実施の形態に係るインダクタ100では、0[A]から大電流までの全体でインダクタンスの変化を小さくすることができる。これは、永久磁石102がスリット面部106の各々から離間しているため、スリット面部106に接触している場合とは異なり、磁性コア101が磁気飽和しないためと考えられる。特に、永久磁石102を上下方向にスリット面部106の中央に配置することで、永久磁石102の影響が小さくなる。その結果、磁性コア101が永久磁石102の磁場で磁気飽和し難くなるため、良好なインダクタンス特性のインダクタ100を得ることができる。
従って、小型で、かつ、大電流に対応することが可能になる。
また例えば、本実施の形態とは異なり、複数の永久磁石102と同等の面積を有する1枚の永久磁石をスリットの左右いずれかに偏らせて配置した場合、発明者が行ったシミュレーションの結果(図示せず)によると、低電流域及び高電流域におけるインダクタンスが低下することがある。これは、磁性コア101のうち永久磁石による磁場が形成される部分と当該磁場が形成されない部分との間で磁気飽和する電流値に差が生じるためと考えられる。
本実施の形態では、永久磁石102は、スリット面部106の概ね全面を通じて磁性コア101に磁場を形成するように設けられる。これにより、低電流域及び高電流域におけるインダクタンスの低下を抑制することができる。従って、小型で、かつ、より良好に大電流に対応することが可能になる。
さらに本実施の形態では、永久磁石102は複数であり、複数の永久磁石102が第1貫通孔105の貫通方向と交差する方向に間隔を空けて並べられている。
例えば適切なバイアス効果を得るために、永久磁石102全体の磁力を調整することが通常である。例えば1つの永久磁石で磁力を弱くする場合に、その厚さを薄くすることがあるが、永久磁石を薄くすることには製造上の限界があり、限界まで薄い永久磁石でもなお磁力が強すぎることもある。
このような場合に、複数の永久磁石102を第1貫通孔105の貫通方向と交差する方向に間隔を空けて配置することで、永久磁石102全体の磁力を弱くしつつ、スリット面部106の概ね全面を通じて磁性コア101に磁場が形成されるように複数の永久磁石102を設けることができる。なお、複数の永久磁石102を並べる方向は、第1貫通孔105の貫通方向と交差する方向に限られず、例えば貫通方向など適宜の方向に間隔を空けて配置されてもよい。
これにより、永久磁石102による適切なバイアス効果を実現しつつ、低電流域及び高電流域におけるインダクタンスの低下を抑制することができる。また、1つの永久磁石102を薄くすることで同程度の磁力とした場合よりも、周波数特性を向上させることができる。
従って、小型で、かつ、より一層良好に大電流に対応することが可能になる。
さらに本実施の形態では、複数の永久磁石102を第1貫通孔105の貫通方向と直交する左右方向に間隔を空けて並べられている。第1貫通孔105の貫通方向に長い永久磁石102を左右方向に間隔を空けて並べることによって、少ない数の永久磁石102でスリット面部106の概ね全面を通じて磁性コア101に磁場が形成されるように複数の永久磁石102を設けることができる。従って、インダクタ100の製造を容易にすることが可能になる。
さらに本実施の形態では、複数の永久磁石102は等間隔で並べられている。これにより、永久磁石102の間隔が異なる場合よりも均一な磁場を、スリット面部106の概ね全面を通じて磁性コア101に形成することができる。従って、小型で、かつ、さらに一層良好に大電流に対応することが可能になる。
さらに本実施の形態では、ホルダ103は、第1貫通孔105に配置される筒状部107と、筒状部107の外面から延びてスリットに配置される延在部108とを含む。筒状部107には第2貫通孔113が設けられており、延在部108は永久磁石102を保持する部位である。
これにより、永久磁石102を容易に磁性コア101に配置することができる。また、筒状部107の第2貫通孔113に導体104を配置することで、導体104と磁性コア101とを確実に絶縁しつつ、導体104を容易に磁性コア101に対して配置することができる。従って、インダクタ100の製造を容易にすることが可能になる。
さらに本実施の形態では、延在部108は、平板状であり、一方の主面である上面に永久磁石102が配置される凹部117が設けられている。これにより、スリット面部106の間であってスリット面部106の各々から離間した位置に永久磁石102を確実かつ容易に配置することができる。従って、インダクタ100の製造をさらに容易にすることが可能になる。
さらに本実施の形態では、複数の磁石用溝部118が凹部117に設けられている。これにより、スリット面部106の間であってスリット面部106の各々から離間した位置に複数の永久磁石102を確実かつ容易に配置することができる。従って、永久磁石102を複数備える場合においても、インダクタ100の製造を容易にすることが可能になる。
さらに本実施の形態では、ホルダ103は、筒状部107の前端近傍と後端近傍とのそれぞれの外表面から外方へ突き出す第1係止部109と第2係止部110とを含む。第1係止部109と第2係止部110とは、それぞれ、第1貫通孔105の前端開口部と後端開口部との周囲に係止される。
これにより、筒状部107が磁性コア101に対して固定されるので、ホルダ103は磁性コア101から外れ難くなる。従って、インダクタ100を製品に搭載する際などの取り扱いが容易になる。従って、利用し易いインダクタ100を提供することが可能になる。
さらに本実施の形態では、第2係止部110は、外力が加わっていない場合に弾性部111の弾性力によって筒状部107の他方の端部近傍の外表面よりも外方へ突き出す。これにより、筒状部107を磁性コア101に対して取り外し可能に固定することができるので、必要に応じてインダクタ100を分解することができる。従って、より利用し易いインダクタ100を提供することが可能になる。
さらに本実施の形態では、インダクタ100は、導体104の各端部近傍に接続される電極の極性を示す極性提示部を含む。これにより、導体104の各端部近傍に正負の極性を誤って電極を接続するミスを低減することができる。従って、より一層利用し易いインダクタ100を提供することが可能になる。
さらに本実施の形態では、極性提示部は、大きさが異なる第1ボルト穴119及び第2ボルト穴120を含む。
ボルト穴は、他の導体などにボルトを用いて接続するために、一般的に導体104の各端部近傍に設けられることがある。このようなボルト穴の大きさを異なるものとすることによって極性提示部として機能させるので、本実施の形態に係る極性提示部は容易に設けることができる。従って、より一層利用し易いインダクタ100を容易に提供することが可能になる。
さらに本実施の形態では、インダクタ100は、導体104が挿入される方向を示す方向提示部を備える。
極性提示部を有する導体104では、上述したように、永久磁石102による磁束の向きに応じた正しい取付状態が定まる。方向提示部を備えることによって、導体104を誤った状態で磁性コア101に取り付けるミスを軽減することができる。従って、さらに一層利用し易いインダクタ100を提供することが可能になる。
さらに本実施の形態では、方向提示部は、第1突部114、第2突部115、第3突部116、第1溝部121及び第2溝部122を含む。これにより、ほぼ間違えることなく正しい取付状態で導体104をホルダ103に取り付けることができる。従って、さらに一層利用し易いインダクタ100を提供することが可能になる。
(実施の形態2)
実施の形態1では、インダクタ100が複数の永久磁石102を備える例を説明した。本実施の形態では、永久磁石102が1つのみである例を説明する。
本発明の実施の形態2に係るインダクタ200は、磁性コア101を透視した斜視図である図11、断面図である図12に示すように、実施の形態1と同様の磁性コア101及び導体104と、実施の形態1とは異なる永久磁石202及びホルダ203とを備える。
ここで、図12(a)は、図3のIV−IV線に相当する箇所におけるインダクタ200全体の断面図であり、図12(b)は(a)の一点鎖線DL2で囲んだ部分を拡大した断面図である。
永久磁石202は、概ね矩形平板状の1つの焼結磁石から構成される。永久磁石202は、実施の形態1に係る永久磁石102と同様に、ホルダ203に保持されることでスリット面部106の間においてスリット面部106の各々から離間して配置されている。
永久磁石202は、スリット面部106の概ね全面を通じて磁性コア101の内部に磁場を形成するように配置されている。詳細には、永久磁石202は、その外形が上方から見てスリット面部106と概ね一致するように配置されている。
本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、永久磁石202の上面がN極の磁極であり、この永久磁石102によって磁性コア101の内部には図12の矢印MFで示すように前方から見て左回りの磁束が形成される。
ホルダ203は、永久磁石202及び導体104を保持する部材であって、実施の形態1に係るホルダ103と同様に磁性コア101の第1貫通孔105及びスリットに配置される。
詳細には、ホルダ203は、実施の形態1に係る延在部108に代わる延在部208を含んでおり、この点を除いて、概ね実施の形態1に係るホルダ103と同様に構成されるとよい。また、延在部208は、実施の形態1に係る凹部117に代わる凹部217を含んでおり、この点を除いて、概ね実施の形態1に係る延在部108と同様に構成されるとよい。
凹部217は、図12(b)に示すように、上方を向く主面に永久磁石202を配置するための部位である。凹部217は、磁石用溝部118を含まない点で実施の形態1に係る凹部117と異なっており、概ね直方体状の凹みを形成する。
凹部217の深さH2は、永久磁石202の厚さMtよりも深い。そのため、永久磁石202の上面は、実施の形態1に係る永久磁石102の上面と同様に、上方のスリット面部106と互いに接触することなく離間している。
また、永久磁石202の下面は凹部217の底部に覆われるので、永久磁石202の下面と下方のスリット面部106との間には延在部208が介在する。そのため、永久磁石202の下面は、実施の形態1に係る永久磁石102の下面と同様に、下方のスリット面部106と互いに接触することなく離間している。
これまで、本発明の実施の形態2に係るインダクタ200の構成について説明した。本実施の形態に係るインダクタ200の使用方法は、上述した実施の形態1に係るインダクタ100の使用方法と同様である。ここから、本実施の形態に係るインダクタの製造方法について説明する。
(インダクタの製造方法)
本実施の形態に係るインダクタの製造方法は、インダクタ200を製造するための方法であって、その流れは概ね実施の形態1と同様であるため、本実施の形態においても図7を参照してインダクタの製造方法を説明する。
本実施の形態に係るインダクタの製造方法は、例えば、磁性コア101、永久磁石202、ホルダ203及び導体104を準備した後に開始される。
図7に示すように、永久磁石202がホルダ203に取り付けられる(工程1)。
詳細には、永久磁石202がN極を上方へ向けて、延在部208に設けられた凹部217に嵌め込まれる。これによって、永久磁石202がホルダ203に取り付けられる。工程1において永久磁石202は、実施の形態1に係る永久磁石102と同様に、接着剤、両面テープ、圧入などによって凹部217に固定されるとよい。
本実施の形態における工程2〜工程3(図7参照)は、実施の形態1に係るそれぞれと概ね同様である。これにより、本実施の形態に係るインダクタ200(図11参照)が完成する。
本実施の形態によれば、実施の形態1において実施の形態2と異なる構成から得られる効果を除いて、実施の形態1と同様の効果を奏する。
本実施の形態では、永久磁石202が1つのみであるので、実施の形態1に係るインダクタ100よりも容易にインダクタ200を製造することが可能になる。
これまで、本発明の実施の形態1,2を説明したが、これらの実施の形態は例えば以下のように変形されてもよい。
(変形例1)
実施の形態1,2では、ホルダ103,203が導体104及び永久磁石102,202を保持する例を説明した。しかし、ホルダは、スリット面部106の間においてスリット面部106の各々から離間するように永久磁石102,202を保持すればよい。
例えば、ホルダは、筒状部107を含まず、永久磁石102又は202を保持してスリットに配置される部分(実施の形態1,2に係る延在部108又は208に相当する部分)のみから構成されてもよい。
また例えば、ホルダは、筒状部107を含まず、永久磁石102又は202を上下から挟む2つの樹脂製の矩形平板或いは矩形の枠体から構成されてもよい。この場合、永久磁石102又は202は、接着剤、両面テープなどでホルダに固定されるとよい。
このような筒状部107を含まないホルダが実施の形態1,2のホルダ103又は203に代えて採用される場合、導体104は、第1貫通孔105に直接挿入して配置されるとよい。このとき、導体104の外面のうち第1貫通孔105に配置される部分及びその近傍には、絶縁層が設けられとよい。
本変形例によっても、永久磁石102,202は、スリット面部106の間においてスリット面部106の各々から離間して配置される。そのため、永久磁石102,202のバイアス効果を利用しつつ、0[A]から大電流までの全体でインダクタンスの変化を小さくすることができる。従って、実施の形態1,2と同様に、小型で、かつ、大電流に対応することが可能になる。
(変形例2)
実施の形態1,2では、ホルダ103,203が一体的に構成される例を説明した。しかし、ホルダは、複数の部品から構成されてもよい。また、実施の形態1,2では、永久磁石102,202の上面と上方のスリット面部106との間は、すき間が設けられる例を説明した。しかし、永久磁石102,202の上面と上方のスリット面部106との間に、カバーが設けられてもよい。
本変形例に係るホルダ303は、図13に示すように、実施の形態1と同様の第1係止部109と、実施の形態1とは異なる筒状部307、延在部308、カバー323及び第2係止部310とを含む。
ここで、図13は、変形例2に係るホルダ303の斜視図であり、(a)はホルダ303の全体を左斜め上前方から見た図であり、(b)はホルダ303の後端近傍を左斜め上後方から見た図である。ホルダ303は実施の形態1,2のいずれにも適用できるが、同図では、ホルダ303が実施の形態1に係るホルダ103に代えて採用される例を示す。
筒状部307は、第1筒状部307aと第2筒状部307bとに分割可能に構成されている。第1筒状部307aは、実施の形態1と同様の第1係止部109及び第1突部114を含む。第2筒状部307bは、実施の形態1と同様の第2突部115及び第3突部116と、実施の形態1とは異なる第2係止部310を含む。筒状部307は、実施の形態1に係る弾性部111に相当する構成を含んでいない。
第2筒状部307bは、その前端が第1筒状部307aの後端と互いに嵌り合うように構成されており、その右端に延在部308が嵌まる切欠き部324が設けられている。延在部308は、第1筒状部307aの右外面から右方に延びており、実施の形態1,2に係る延在部108又は208と概ね同様に構成されるとよい。
カバー323は、延在部308に設けられる凹部117又は217の上部に嵌め込まれており、望ましくは圧入、接着剤などで固定されている。カバー323によって、永久磁石102又は202の上方が覆われる。
第2係止部310は、第2筒状部307bの後端近傍の外表面よりも外方へ突き出す部位であり、磁性コア101の後面(後方の外表面)のうち第1貫通孔105の後端開口部の周囲に係止される。第2係止部310は、実施の形態1に係る第2係止部110とは異なり弾性力によって左右に変位しない。
変形例3に係る筒状部307をインダクタ100,200に採用する場合、実施の形態1,2のそれぞれの製造方法(図7参照)において、工程の一部を例えば以下のように変更するとよい。
工程1では、永久磁石102又は202を磁石用溝部118又は凹部217に配置した後に、カバー323が凹部117,217に嵌め込まれて固定されるとよい。
工程2では、第1筒状部307aを第2貫通孔113に配置した後に、第2筒状部307bを後方から第1筒状部307aに嵌め込むように第2貫通孔113に配置すればよい。
このとき、延在部308が切欠き部324に圧入されることで、第1筒状部307aと第2筒状部307bとが固定されるとよい。また、第1筒状部307aと第2筒状部307bとは適宜接着剤などで固定されてもよい。
そして、実施の形態1,2と同様の工程3を経て、実施の形態1,2のそれぞれに係るホルダ103又は203に代えて筒状部307を採用したインダクタが完成する。なお、本変形例では工程2,3の順序が入れ替えられてもよい。
本変形例によれば、第1係止部109及び第2係止部310によって筒状部307は磁性コア101に対して固定されるので、ホルダ303は磁性コア101から外れ難くなる。従って、実施の形態1,2と同様に、インダクタ100を製品に搭載する際などの取り扱いが容易になる。
(変形例3)
実施の形態1,2では、第1ボルト穴119と第2ボルト穴120とが、大きさが異なることによって極性提示部として機能する例を説明した。
しかし、極性提示部としての第1ボルト穴119及び第2ボルト穴120は、例えば、これらの形状が異なっていてもよく、大きさ及び形状が異なっていてもよい。これによっても、第1ボルト穴119及び第2ボルト穴120を極性提示部として機能させることができるので、実施の形態1,2と同様に、より一層利用し易いインダクタを容易に提供することが可能になる。
(変形例4)
極性提示部は、第1ボルト穴119及び第2ボルト穴120に限られない。
実施の形態1,2に係る第1溝部121及び第2溝部122は、導体104の一方の端部では開放しているが、他方の端部までは延びていない。そのため、第1溝部121及び第2溝部122の開放端を含む導体104の端部を正極側又は負極側と予め定めることによって、第1溝部121及び第2溝部122は極性提示部としても機能する。
さらに、極性提示部は、導体104の各端部近傍に刻まれた或いは記載された「+」「−」などの印などであってもよい。この場合に、極性提示部を設ける箇所は、導体104に限られず、ホルダ103、磁性コア101などであってもよい。
このような極性提示部によっても、導体104の各端部近傍に正負の極性を誤って電極を接続するミスを低減することができることは実施の形態1,2と同様である。従って、より一層利用し易いインダクタを提供することが可能になる。
(変形例5)
実施の形態1,2では、方向提示部として、突部114〜116と溝部121〜122とを備える例を説明した。しかし、方向提示部の構成は、これに限られない。
例えば、第1溝部121、第1突部114及び第2突部115は、前後方向に並ぶ両突部114及び115が第1溝部121に嵌まるように設けられればよく、これらの大きさや左右方向の位置は適宜変更されてもよい。第2溝部122及び第3突部116についても同様に、第3突部116が第2溝部122に嵌まるように設けられればよく、これらの大きさや左右方向の位置は適宜変更されてもよい。
また例えば、第1突部114及び第2突部115と、第3突部116とは、内面部のうちの同じ面部に設けられてもよい。この場合、第1溝部121と第2溝部122とは、前者に第1突部114及び第2突部115が嵌まり、後者に第3突部116が嵌まるように、導体104の同じ面に設けられるとよい。
また例えば、方向提示部は、第2〜第3突部115〜116及び第2溝部122を含まず、第1突部114及び第1溝部121のみから構成されてもよい。また、この場合、第1突部114は、前後方向の中央以外であれば、上内面部、下内面部、右内面部及び左内面部のいずれに設けられてもよい。第1溝部121は、正しい取付状態で、その閉じた端部が第1突部114と接触して嵌るように設けられればよい。
これらによっても、ほぼ間違えることなく正しい取付状態で導体104をホルダ103に取り付けることができる。従って、さらに一層利用し易いインダクタ100を提供することが可能になる。
(変形例6)
方向提示部は、突部114〜116や溝部121〜122に限られない。方向提示部は、例えば導体104に設けられた極性提示部に対応付けて、ホルダ103、磁性コア101などに付された目印(例えば、正極を示す極性提示部に対応付けて、ホルダ103の前面に付された「+」や矢印などの刻印や印字)であってもよい。また、方向提示部は、少なくとも1つ設けられればよい。これにより、導体104の各端部近傍に正負の極性を誤って電極を接続するミスを低減することができる。従って、より一層利用し易いインダクタ100を提供することが可能になる。
ここから、本発明の実施例について説明する。
(実施例1〜2)
図14は、実施例1〜2に係るインダクタ100,200及び比較例に係るインダクタの寸法などを示す図である。
同図の永久磁石の数から分かるように、実施例1に係るインダクタ100は、実施の形態1に係るインダクタの一例である。実施例2に係るインダクタ200は、実施の形態2に係るインダクタの一例である。
実施例1〜2に係るインダクタ100,200は、磁性コア101、第1貫通孔105、スリットの寸法が同じである。
具体的には、磁性コア101については、幅(左右方向の長さ)Cwが24[mm]、高さ(上下方向の長さ)Chが29[mm]、厚さ(前後方向の長さ)Ctが20[mm]、材質がMnZnフェライトである(幅Cw、高さChにつき、図4(a)及び図12(a)参照)。
第1貫通孔105については、幅(左右方向の長さ)Hwが9[mm]、高さ(上下方向の長さ)Hhが11.7[mm]である(幅Hw、高さHhにつき、図4(a)及び図12(a)参照)。
スリット面部106の間に形成されるすき間であるスリットについては、幅(左右方向の長さ)Swが7.5[mm]、高さ(上下方向の長さ、すなわちスリット面部106の間隔)Shが1[mm]である(幅Sw、高さShにつき、図4(b)及び図12(b)参照)。
第1貫通孔105及びスリットは、前後方向には磁性コア101を貫通しているので、これらの前後方向の長さは、図示していないが、磁性コア101の厚さCtと同じ20[mm]である。
実施例1〜2に係るインダクタ100,200は、図14に示すように、各々に備えられる永久磁石102,202の数、寸法に違いがある。
実施例1に係るインダクタ100は、4つの永久磁石102を備える。実施例1に係る永久磁石102の各々について、幅(左右方向の長さ)Mwは1[mm]、厚さ(上下方向の長さ)Mtは0.35[mm]、材質はサマリウムコバルト磁石である(幅Mw、厚さMtにつき、図4(b)及び図12(b)参照)。図示していないが、実施例1に係る永久磁石102の各々の前後方向の長さは、磁性コア101の厚さCtと同じ20[mm]である。
なお、サマリウムコバルト磁石は、残留磁束密度Brが1.05〜1.12[Tesla]、保磁力HCBが676〜836[kA/m]、最大エネルギー積(BH)max199〜247[kJ/m3]、保磁力HcJが1592以上[kA/m]の特性を有する材料である。
実施例1に係るインダクタ100において、4つの永久磁石102は、左右方向に等しい間隔を空けて、全体が磁性コア101のスリットに納まるように配置されている。また、上下方向には、4つの永久磁石102は、スリットの中央に配置されている。
実施例2に係るインダクタ200は、1つの永久磁石202を備える。実施例2に係る永久磁石202について、幅Mwは7.5[mm]であり、厚さMtは0.2[mm]であり、材質及び前後方向の長さ(図示せず)は実施例1に係るインダクタ100と同じである。
実施例2に係るインダクタ200において、永久磁石202は、全体が磁性コア101のスリットに納まるように配置されている。また、上下方向には、永久磁石202は、スリットの中央に配置されている。
また、実施例1〜2に係るインダクタ100,200は、絶縁層が表面に設けられていない銅製角棒状であって同じ寸法の導体104を備える。この導体104の寸法は、図示していないが、奥行き(前後方向の長さ)は60[mm]であり、幅(左右方向の長さ)は7[mm]であり、高さ(上下方向の長さ)は9.7[mm]である。
比較例に係るインダクタは、永久磁石102,202を備えておらず、この点を除いて、実施例1〜2に係るインダクタ100,200と同様の構成を備える。
実施例1〜2に係るインダクタ100,200及び比較例に係るインダクタについて、発明者は、直流重畳特性及び周波数特性のシミュレーションを行った。これらのシミュレーションの結果を図15〜16に示す。
図15は、実施例1〜2に係るインダクタ100,200及び比較例に係るインダクタの直流重畳特性を示す図である。図15において、横軸は、電流値I[A]であり、縦軸は、インダクタンスL[μH]である。実線、破線、二点鎖線は、それぞれ、実施例1に係るインダクタ100、実施例2に係るインダクタ200、比較例に係るインダクタを用いたシミュレーションの結果を示す。
図15を参照すると分かるように、比較例では、電流値Iが200[A]前後でインダクタンスLの変化が大きくなり、電流値Iが200[A]を超えた辺りで、インダクタンスLが急激に小さくなる。
これに対して、実施例1〜2では電流値Iが300[A]を超えた辺りまでインダクタンスLの急激な変化はない。すなわち、実施例1〜2に係るインダクタ100,200の場合、電流値Iが0〜300[A]の範囲において、インダクタンスLの変化は小さく、インダクタンスLは安定している。
このようなシミュレーションの結果から、実施例1〜2では、比較例と同じ大きさであっても、比較例よりも大電流に適用できることが分かる。なお、発明者が別に行ったシミュレーションの結果(図示せず)によれば、永久磁石102,202を備えないインダクタで実施例1〜2と同程度の大電流に適用できるようにするには、磁性コア101の体積を約30%大きくする必要がある。
従って、実施例1〜2では、小型で、かつ、大電流に対応することが可能になる。
また、実施例2では永久磁石202の厚さMtを0.2[mm]としてシミュレーションを行ったが、このような厚さMtの永久磁石202を実際に製造することは困難なことがある。このような場合に、実施例1のように、永久磁石102を複数に分割して間隔を空けて配置することが有効であることが分かる。
図16は、実施例1〜2に係るインダクタ100,200及び比較例に係るインダクタの周波数特性を示す図である。図16において、横軸は、周波数f[kHz]であり、縦軸は、インダクタンスL[μH]である。実線、破線、二点鎖線は、それぞれ、実施例1に係るインダクタ100、実施例2に係るインダクタ200、比較例に係るインダクタを用いたシミュレーションの結果を示す。
図16を参照すると分かるように、実施例2では、周波数fが30[kHz]を超えた辺りからインダクタンスLが低下しており、30[kHz]を超えた周波数fにおけるインダクタンスLは比較例よりも低くなっている。
これに対して、実施例1では、周波数fが0〜約1000[kHz]の範囲でインダクタンスLが比較例と同程度である。このことから、30[kHz]を超える比較的高い周波数では、複数の永久磁石102を等間隔で配置した実施例1の方が、永久磁石202が1つだけである実施例2よりも優れた周波数特性となることが分かる。
従って、複数の永久磁石102を備える実施例1では、1つの永久磁石202を備える実施例2よりも小型で、かつ、大電流により良好に対応することが可能になる。
以上、本発明の実施の形態、実施例などについて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。本発明は、例えば、実施の形態に変更を加えた態様、実施の形態と変形例とを適宜組み合わせた態様、これらの態様に適宜変更を加えた態様などを含む。